説明

界面活性剤及びリンカーの相乗混合物を含むグリーンな組成物

ナノエマルジョン又はマイクロエマルジョン形態でかつ1種以上のグリーンな界面活性剤を含む、洗浄組成物について開示する。組成物は、1種以上のグリーンなリンカーを更に含んでもよい。2種以上の界面活性剤を含むことで、組成物の洗浄能力を相乗的に改善することができる。さらに、1種以上のグリーンなリンカーを含むことで、組成物の汚れ除去能力又は筋状跡の発生を低減する能力も相乗的に改善することができる。組成物は、天然香料、天然殺虫剤、天然防虫剤及び天然油等の追加的な天然活性物質を更に含むことで、天然活性物質を制御された方法で持続的に供給することもできる。グリーンな界面活性剤は、本開示の組成物により、環境上の特徴を改善するだけでなく、良好な洗浄性能を有する安定したマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンの形成を室温で可能にするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「グリーンな(green)」界面活性剤と、「グリーンな」リンカー(linker)と、天然香料と、天然殺虫剤と、その他の天然油等を含む天然有機活性物質(natural organic actives)と、を含む、環境に優しい(eco-friendly)又は「グリーンな」組成物について開示する。組成物は、あまり望ましくない環境上の特徴(ecological profile)を有する従来の洗浄製品と同等の性能を持つ天然洗浄製品として使用することができる。組成物は、また、長期間にわたって有機活性物質を供給するために使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
近年、グリーンな(すなわち、環境に優しい)家庭用製品又はパーソナルケア製品に対する消費者の意識が世界的規模でかなり高まってきている。その結果、望ましい環境上の特徴を有する家庭製品の開発に多大な労力が当てられている。例えば、天然資源及び再生可能資源に由来する成分を含む製品、及び自然環境のもとで生分解可能な製品は、この世界的な「環境に優しい」傾向に焦点を合わせたものである。
【0003】
実際、植物等の再生可能資源を原料とする製品は、その閉ざされたCOサイクルによって、温室化ガスの削減に貢献している。具体的には、植物は成長する際に、使用後の生分解によって大気に放出されるのと同量の二酸化炭素(CO)と水(HO)を消費する。そのため、植物等の再生可能資源を原料とする製品は、石油化学系製品に比べると「二酸化炭素排出量」がゼロであるか又は削減されている「グリーンな」ものと考えられている。植物素材等の再生可能資源や石油等の再生不可能な資源は共に、界面活性剤、香料、油及び溶媒のように、家庭用製品に共通の成分として、直接的な又は間接的な原料となり得る。
【0004】
界面活性作用の基本的な方法は、その構造により決定される。親水性頭部と疎水性端部とを有する界面活性剤分子は、油、汚れ及びグリースのようにまとめて「土壌粒子(soil particles)」と呼ばれる非水溶性物質と水との間に入り込む。界面活性剤は、水と空気又は油との境界において高濃度化されることにより、水の表面張力を軽減する。水に高濃度で溶解されると、界面活性剤分子自身は集まって、土壌粒子の周囲に、ミセル(micelle)と呼ばれる球形の構造を形成する。内側に向いた疎水性基は、土壌粒子を取り囲み、溶液に対して不溶性の他の土壌粒子を溶液中に閉じ込める。界面活性剤は、一般的に、親水性基の種類と電荷に応じて、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤に分類される。
【0005】
ほとんどの界面活性剤は石油化学製品を原料としているが、植物系炭化水素由来の界面活性剤も利用できるようになってきている。界面活性剤の製造に適した再生可能原料の一つはグルコースであり、これはアルコールと反応してアルキルポリグリコシド(alkyl polyglycosides)(アルキルポリグルコシド(alkyl polyglucosides)としても知られている。)を生成する。アルキルポリグリコシドは、化粧品や農業用組成物に使用されており、また工業用洗浄剤の界面活性剤としても使用されている。アルキルポリグリコシドには、パーム油又はヤシ油等の飽和熱帯植物油から得られる脂肪族アルコール(例えば、ドデカノール、テトラデカノール)から生成された疎水性(又は親油性)の炭化水素鎖が含まれる。この分子のグルコース又はデキストロースに由来する親水性部分は、デンプン、通常はトウモロコシから生成することができる。
【0006】
前記の望ましい環境上の特徴以外に、アルキルポリグリコシドは、目、皮膚及び粘膜にも良好な適合性を有し、さらには界面活性剤混合物の刺激作用をも軽減する。アルキルポリグリコシドはまた、好気的に及び嫌気的にのどちらでも完全に生分解される。
【0007】
アニオン界面活性剤は、天然資源及び再生可能資源から生成され得る直接前駆体(immediate precursors)を有する場合もある。例えば、長鎖アルキル硫酸塩は、便宜上、ヤシ油由来の脂肪族アルコールから生成される場合がある。特に、ココアルキル硫酸ナトリウム(SCS:Sodium Coco Sulfate)は、純粋なヤシ油を原料とし、アルキル硫酸ナトリウムと主成分であるラウリル硫酸ナトリウムとの混合物を含む。ココアルキル硫酸ナトリウムは、粘度の増加と起泡特性とが重要である様々な消費者製品に用いることができる。それは、シャンプー、ハンドソープ、浴用製品、シェービングクリーム及び薬用軟膏に使用可能である。
【0008】
マイクロエマルジョン又はナノエマルジョンを生成する際、リンカーを用いて水相と油相と界面活性剤(類)との相互作用を促進させる場合がある。具体的には、親油性リンカーは、界面活性剤と汚れとの相互作用を強化し得るのに対して、親水性リンカーは、界面活性剤と水との相互作用を強化し得る。界面活性剤と同様に、それらは元来、石油化学製品を原料としているが、天然資源及び再生可能資源を原料とする「グリーンな」リンカー("green" linker)も利用できるようになってきている。
【0009】
活性物質の放出を制御するための組成物もまた、当該技術分野において知られている。例えば、空気中に香料又は殺虫剤を持続的に放出する単相溶液形態の香料又は殺虫剤組成物が開発されている。しかし、これらの組成物は、一般的には、前記香料又は殺虫剤の放出性能を維持するために、あまり望ましくない環境上の特徴を有している。
【0010】
したがって、植物等の天然資源及び再生可能資源を原料とする改良された家庭用製品、又は天然資源及び再生可能資源に由来する成分の割合が高い、改良された家庭用製品が必要とされている。さらには、改良された環境上の特徴を有し、かつあまり望ましくない環境上の特徴を持つ従来の洗浄製品と同等の性能又はそれよりも優れた性能を有する、洗浄製品が必要とされている。最終的には、香料又は殺虫剤等の天然有機活性物質の放出を制限することができる、「グリーンな」組成物("green" composition)が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したようなニーズを満たし、ナノエマルジョン又はマイクロエマルジョン形態でかつ1種以上の「グリーンな」界面活性剤を含む組成物を開示する。組成物は、「グリーンな」リンカーや天然香料等のような他の「グリーンな」成分("green" ingredients)を更に含んでもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示において用いられるとき、「グリーンな」成分とは、天然資源及び再生可能資源から生成される物質、又は天然資源及び再生可能資源から生成される直接前駆体(類)から生成される物質と定義される。
【0013】
本明細書において用いられるとき、ナチュラルインデックス(NI:Natural Index)とは、天然資源及び再生可能資源から直接生成可能な成分又は天然資源及び再生可能資源から直接生成可能な直前モデル(immediate predecessors)から生成される成分を含む組成物の重量割合(weight percentage)と定義される。
【0014】
例えば、水、エタノール、乳酸、クエン酸、苛性ソーダ、天然香料等の成分は、それぞれが天然資源及び再生可能資源から生成されることから、グリーンであり、かつ本開示の組成物のNIに寄与する。同様に、本明細書に開示されるようなアルキルポリグリコシド、アルキルグルコシド、ココアルキル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)等の化合物も、それぞれが天然資源及び再生可能資源から生成される直接前駆体(脂肪族アルコール、グルコース等)から生成され得ることから、グリーンであり、かつ本開示の組成物のNIに寄与する。他方、エトキシル化非イオン界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩アニオン界面活性剤及び4級アンモニウムカチオン界面活性剤等の活性剤は、石油化学製品をベースとしているため、本明細書において定義するようなグリーンなものではなく、しかも組成物のNIに寄与しない。
【0015】
一実施形態において、本開示の組成物は、グリーンな界面活性剤と、1種以上のグリーンな補助界面活性剤と、水と、を含む洗浄組成物である。一改良形態案では、グリーンな非イオン界面活性剤は、アルキルポリグリコシドを含んでもよく、そしてグリーンな補助界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム又はココアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤を含んでもよい。グリーンな界面活性剤類を組み合わせることで、組成物の洗浄性能を相乗的に向上させることができる。
【0016】
他の実施形態において、本開示の組成物は、1種以上のグリーンな界面活性剤と、1種以上のグリーンなリンカーと、水と、を含む洗浄組成物である。一改良形態案において、1種以上のグリーンな界面活性剤は、非イオン性であってもよく、アニオン性であってもよく、又は両者の混合物であってもよい。他の改良形態案において、1種以上のグリーンなリンカーは、グルコシド、アルカノール、エステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される親油性リンカー又は親水性リンカーであってもよい。グリーンな界面活性剤(類)とグリーンなリンカー(類)とを組み合わせることで、洗浄組成物の汚れ除去性能を相乗的に向上させることができる。さらに本開示の組成物は、ガラス洗浄剤として使用した場合に、従来のガラス洗浄製品よりも筋状跡の発生を低減すること(streak reduction)ができる。
【0017】
さらなる実施形態において、本開示の組成物は、1種以上のグリーンな界面活性剤と、1種以上の天然活性物質と、水と、を含む活性物質供給組成物である。一改良形態案において、1種以上のグリーンな界面活性剤は、非イオンであってもよく、アニオンであってもよく、又は両者の混合物であってもよい。他の改良形態案において、1種以上の天然活性物質は、天然香料、天然殺虫剤、天然油及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。グリーンな界面活性剤(類)と天然活性物質(類)とを組み合わせることで、組成物の環境上の特徴を損なわずに、活性物質の放出(active delivery)を改善することができる。
【0018】
本開示における組成物のグリーンな界面活性剤(類)と他のグリーンな成分は、組成物の環境上の特徴を向上させるだけでなく、安定したマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンの自然な形成を室温で可能にすることもできる。本開示の組成物は、溶液又は従来のエマルジョンとしてではなく、マイクロエマルジョン又はナノエマルジョンとして存在させることで、組成物の性能向上に寄与する可能性があると考えられる。
【0019】
汚れ除去又は筋状跡の発生軽減のような本開示の組成物の性能は、本開示の組成物と、あまり望ましくない環境上の特徴を有する(すなわち、本開示の組成物よりも低いナチュラルインデックスを有する)1種以上の主要な市販品との様々な比較試験を通じて評価される。以下にさらに詳述する通り、本開示の組成物の性能は、主要な市販品と少なくとも同等であり、場合により、主要な市販品よりも優れている。
【0020】
本開示の方法及び組成物についての他の利点及び特徴をさらに詳細に説明する。また、当業者が本開示のグリーンな組成物を様々な家庭用の用途に使用するために必要以上に実験を行うことなく適宜に変更されることは、本明細書などから分かるであろう。
【0021】
本開示の組成物を一層完全に理解するために、添付の図面にさらに詳細に表された実施形態を参照するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】グリーンな界面活性剤混合物を含む洗浄組成物についての、相乗的に向上した汚れ除去性能を表すグラフである。
【図2】グリーンな界面活性剤混合物を含む洗浄組成物についての、汚れ除去性能と界面活性剤の合計濃度との関係を表すグラフである。
【図3】シングル・リンカーのみを含む浴室洗浄組成物についての、汚れ除去性能とリンカー濃度との関係を表すグラフである。
【図4】シングル・リンカーのみを含むガラス洗浄組成物についての、汚れ除去性能とリンカー濃度との関係を表すグラフである。
【図5】デュアル・リンカーを含む洗浄組成物についての、相乗的に向上した汚れ除去性能を表すグラフである。
【図6】デュアル・リンカーを含む洗浄組成物についての、汚れ除去性能とリンカー濃度との関係を表すグラフである。
【0023】
図面の縮尺は必ずしも原寸に比例するものではなく、また、本開示の実施形態が、図表や部分図で表されている場合もあると理解されるべきである。詳細は、場合により、本開示の組成物を理解するのに必ずしも必要不可欠なものではないか、又は他の詳細を分かり難くしている部分が省略されている可能性がある。言うまでもないが、本開示は、本明細書に示した特定の実施形態に限定されるものではないと理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の開示は、一般的には、環境に優しい液体組成物又はエマルジョンに関する。組成物又はエマルジョンの環境上の特徴を評価するために、本明細書では、天然資源及び再生可能資源から直接生成される成分又は天然資源及び再生可能資源から直接生成される直前モデルから生成される成分を含む組成物の重量割合を指す、「ナチュラルインデックス」(NI)という用語を用いる。同様に、「グリーンな」成分は、天然資源及び再生可能資源から生成される物質又は天然資源及び再生可能資源から生成される直接前駆体から生成される物質と定義される。例えば、水、エタノール、乳酸、クエン酸、苛性ソーダ、天然香料のような成分はすべて、天然資源及び再生可能資源から生成されるが、合成香料は天然資源及び再生可能資源から生成されない。同様に、本明細書に開示されるアルキルポリグリコシド、アルキルグルコシド、ココアルキル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)等の化合物も、天然資源及び再生可能資源から生成される直接前駆体(脂肪族アルコール、グルコース等)から生成されてもよい。他方、エトキシル化非イオン界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩アニオン界面活性剤及び4級アンモニウムカチオン界面活性剤等の界面活性剤は、石油化学製品をベースとしているため、グリーンなものではなく、また、組成物のNIに寄与しない。
【0025】
一般的な実施形態において、本開示のグリーンな組成物は、水性であり、しかも天然資源及び再生可能資源から得られる直接前駆体から生成されたグリーンな非イオン界面活性剤を含んでいてもよい。組成物はさらに、香料、親水性リンカー、親油性リンカー、補助界面活性剤、殺虫剤、防虫剤及び油からなる群から選択されるグリーンな副成分を1種以上含んでもよい。一部の実施形態では、本開示の組成物は有機溶媒も含んでもよいが、他の実施形態では、組成物は基本的に有機溶媒を含まない。さらに、組成物は、pH調整剤及び有機酸等の任意の補助剤を含んでもよい。
【0026】
グリーンな界面活性剤
本開示の組成物のグリーンな非イオン界面活性剤は、糖ベースの界面活性剤、ポリオール系界面活性剤、アルキルエーテル及びアルキルカーボネートを含んでもよいが、これらに限定されない。糖ベースの界面活性剤は、ヤシ油中の脂肪アルコールとトウモロコシ中のポリグルコースとから生成されるアルキルポリグリコシド(又はアルキルポリグルコシド)界面活性剤であってよい。アルキルポリグリコシドは、その優れた環境上の特徴に加えて、生分解性であり、ヒトの皮膚に対して非刺激性であり、しかもフレグランスオイルを水に溶解するのに効果がある。
【0027】
本開示のエモーション(emotion)に利用可能なアルキルポリグリコシドは、次の式Iに相当する:
【0028】
【化1】

【0029】
前記式中、Rは炭素原子数約4〜約22の一価の有機ラジカルであり、Zは炭素原子数5又は6の単糖類残基であり、及びaは1〜約6までの値の数である。例えば、Zがグルコース残基である式Iのアルキルポリグリコシドを利用してもよい。このようなアルキルポリグリコシドは、例えば、APG(登録商標)、グルコポン(GLUCOPON)(登録商標)又はプランタレン(PLANTAREN)(登録商標)という界面活性剤としてオハイオ州45232シンシナティ、エステクリーク・ドライブ5051番地のコグニス社(Cognis)から市販されている。
【0030】
本開示の組成物中でグリーンな界面活性剤として用いられる好適なアルキルエーテルとしては、C−O−C結合の両端部にC〜C22アルキル鎖を有するエーテル類(R−O−R)を挙げることができる。アルキル鎖(R、R)は、飽和であっても不飽和であってもよい。一実施形態において、アルキルエーテルはジカプリリルエーテルであってもよい。
【0031】
本開示の組成物においてグリーンな界面活性剤として用いられる好適なアルキルカーボネートとしては、カーボネート基
【化2】



の両端部にC〜C22アルキル鎖を有するカーボネート類を挙げることができる。アルキル鎖は、飽和であっても不飽和であってもよい。一実施形態において、アルキルエステルはジカプリリルカーボネートであってもよい。
【0032】
本開示の組成物に使用するのに適した他のグリーンな非イオン界面活性剤は、アルキルグルコースアミド、トリグリセリド、N−メチルヤシ脂肪酸グルカミド(C12〜14)、アミノ酸系界面活性剤、糖エステル類、ソルビトールエステル、ステロールエステル、糖脂質生物界面活性剤類等を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0033】
一実施形態において、本開示の組成物は、0.000001〜4重量%のグリーンな非イオン界面活性剤(類)を含んでもよい。他の実施形態において、グリーンな非イオン界面活性剤(類)は、0.000001〜3重量%の濃度で含まれてもよい。1種以上のグリーンな追加成分を組成物に添加してその性能を相乗的に向上させる一部の実施形態において、グリーンな非イオン界面活性剤(類)の濃度は、1重量%以下、0.5重量%以下、又は0.25重量%以下まで低下してもよい。
【0034】
グリーンな非イオン界面活性剤の他に、本開示の組成物は、場合により、1種以上のグリーンなアニオン界面活性剤を含んでもよい。グリーンなアニオン界面活性剤は、天然資源及び再生可能資源から生成された直接前駆体から製造されてもよい。一実施形態において、グリーンなアニオン界面活性剤は、1種以上の長鎖アルキル硫酸塩を含む。好適なアルキル硫酸塩には、C〜C20硫酸ナトリウム、C〜C20硫酸アンモニウム、及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
好ましい実施形態において、グリーンなアニオン界面活性剤としては、ココアルキル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。ココアルキル硫酸ナトリウムは、様々な脂肪酸(アルキル鎖の炭素数がわずか8〜約20までの範囲のもの)から構成されたヤシ油を硫酸化することで調製されてよい。ヤシ油中の脂肪酸の大部分、例えば45〜50%は、炭素数12の脂肪酸である。他方、ラウリル硫酸ナトリウムは、ココアルキル硫酸ナトリウムを精製したものである。ラウリル硫酸ナトリウムを製造するときに、ヤシ油を処理して炭素数12以外の脂肪酸の大部分を除去してから、当該脂肪酸を硫酸化する。
【0036】
グリーンなアニオン界面活性剤を本開示の組成物に用いることで、汚れ除去等の当該組成物の性能を相乗的に向上させることができる。したがって、比較的低濃度のグリーンなアニオン界面活性剤が必要とされる。例えば、グリーンなアニオン界面活性剤(類)の濃度は、0.000001〜1重量%、0.000001〜0.5重量%、又は0.000001〜0.25重量%であってもよい。一部の実施形態において、本開示の組成物における界面活性剤の合計濃度は、2.5重量%以下であり、1.0重量%、0.5重量%、又は0.1重量%であってもよい。一実施形態において、グリーンな非イオン界面活性剤とアニオン界面活性剤との相乗混合物(Synergistic Blends)では、0.01重量%という低い界面活性剤合計濃度でも汚れ除去を効果的に達成する。
【0037】
本開示の一部の好ましい実施形態ではグリーン界面活性剤のみを使用するが、他の実施形態では、グリーンな界面活性剤とグリーンでない(non-green)界面活性剤(例えば、合成界面活性剤)とを組み合わせて含んでもよく、又はグリーンでない界面活性剤の量が本開示の組成物のナチュラルインデックスをほとんど低下しないのであれば、グリーンでない界面活性剤のみを含んでもよい。
【0038】
グリーンなリンカー
本開示の組成物は、場合により、グリーンなリンカーを1種以上含んでもよい。グリーンなリンカーは、親油性であっても親水性であってもよい。好適な親油性リンカー及び親水性リンカーには、オレイン酸エステル(例えば、グリセロールモノオレエート(GMO)、グリセリルオレエート等)、ステアリン酸エステル(例えば、グリセロールモノステアレート(GMS))、ポリソルベート(例えば、ソルビタンモノラウレート(SML))、アルカノール、グルコシド、エステル、グリセリン、及びこれらの混合物が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0039】
例えば、親油性リンカーは、C12〜C18アルカノールを1種以上含んでもよい。一実施形態において、1種以上のアルカノールは、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール及びこれらの混合物からなる群から選択されてよい。アルカノールは、天然資源及び再生可能資源から生成可能な直前モデル(immediate predecessors)から生成されてもよい。特に、ラウリルアルコールは、ヤシ油中の脂肪酸から生成されてもよく、セチルアルコールは、鯨ろう(マッコウクジラの油から得られる油性物質)から生成されてもよく、また、ミリスチルアルコールは、パーム油、ヤシ油、バター脂肪及び鯨ろう中に含まれるミリスチン酸から生成されてもよい。
【0040】
同様に、親水性リンカーは、天然資源及び再生可能資源から生成可能な直前モデル(immediate predecessors)から生成されてもよい。好適な親水性リンカーは、ヘキシルグルコシド等のアルキルグルコシドを1種以上含んでもよい。本開示の組成物に用いられるヘキシルグルコシドは、イリノイ州60607−3823シカゴ、W.ヴァン・ブーレン・ストリート525番地のアクゾ・ノベル社(Akzo Nobel)から(「AG6206」として)市販されている。グルコース又はデキストロースを原料とするヘキシルグルコシドの親水性部分は、デンプンや、通常はトウモロコシから得られる。
【0041】
本開示の組成物にグリーンな親油性及び/又は親水性リンカーを用いることで、汚れ除去及び/又は筋状跡の発生軽減等の当該組成物の性能を相乗的に向上させることができる。結果として、比較的低濃度のグリーンなリンカー(linker)が必要とされる。一実施形態において、本開示の組成物は、0.000001重量%〜2重量%以下のグリーンなリンカー(類)を含んでもよい。他の実施形態において、グリーンなリンカー(類)は、0.000001〜1重量%、0.000001〜0.5重量%、又は0.000001〜0.1重量%までの濃度で含まれてもよい。1種以上のグリーンなリンカーを組成物に添加することでその性能を相乗的に向上させる一部の実施形態では、グリーンなリンカー(類)の濃度を0.05重量%以下又は0.025重量%以下まで減らしてもよい。
【0042】
特定の理論に束縛されたくはないが、リンカー分子を本開示の組成物に添加することで、界面活性剤と油相(親油性リンカー)又は水相(親水性リンカー)との相互作用は向上するが、親油性リンカーと親水性リンカーを組み合わせると、油と水の界面において自己組織化界面活性剤(self-assembled surfactant)として作用して、安定なマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンの形成を容易にする。さらに、自己組織化の効率は、グリーンな界面活性剤とグリーンなリンカーとの割合、界面活性剤及び/又はリンカーの合計濃度、或いはこれらの両方によって決まる場合がある。一部の実施形態において、親水性リンカーと親油性リンカーを自己組織化してマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンの形成を容易にするには、ほんの少量、例えば0.1重量%以下、0.05重量%以下又は0.01重量%以下のリンカーの存在が必要とされる場合がある。一実施形態において、有効な汚れ除去は、リンカーを0.0012重量%又は0.0024重量%の合計濃度で用いた組成物によって達成される。
【0043】
本開示の好ましい実施形態では、グリーンなリンカーのみを用いる場合があるが、他の実施形態では、グリーンなリンカーとグリーンでないリンカー(例えば、合成リンカー)とを組み合わせて含んでいてもよく、又はグリーンでないリンカーの量が本開示の組成物のナチュラルインデックスをあまり低下しないのであれば、グリーンでないリンカーのみを含んでもよい。
【0044】
天然(グリーンな)香料
本開示の組成物は、植物又は作物等の天然資源及び再生可能資源を原料とする香料を1種以上含んでもよい。さらに、組成物は、天然香料を空気中に、制御された方法で長時間にわたって供給するものであってもよい。そのためには、組成物をマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンとして存在させることにより、香料を一貫して放出し易くすることができる。
【0045】
例えば、本開示の組成物は、空気清浄用の天然香料を含んでもよい。天然香料は、空気中の1種以上の悪臭を消すこと若しくは空気に良い香りを付けることにより、又はその両方によって、空気をきれいにする。周知のように、香料は、通常、多数の芳香性物質の混合物からなり、芳香性物質はそれぞれ特有の香りを有している。香料中の芳香性物質の数は、一般的には10以上である。使用される芳香性物質の種類は変更可能である。前記材料は、様々な化学物質類からもたらされ、一般的には水不溶性の油である。多くの場合、芳香性物質の分子量は、150よりも大きく、300以内である。
【0046】
本開示の組成物に含まれる天然香料は、消費者が知覚できる良い香りを空気に付けるのに十分な量で含まれていてよい。悪臭がする場合には、天然香料は、空気中の悪臭の少なくともかなりの部分を消す量で含まれていてよい。さらに好ましくは、本開示の組成物に含まれる天然香料は、悪臭を完全に消すだけでなく、消費者が知覚する良い香りをも供給する量で含まれてもよい。
【0047】
天然香料は、本開示の組成物中に0.0001〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%、最も好ましくは0.02〜0.2重量%の量で含まれてもよい。悪臭を消すのに必要な香料の量、及び/又は消費者が知覚する良い香りを与えるのに必要な香料の量は、当業者には自明であろう。
【0048】
本開示に記載の香料は、化学的に活性な蒸気をもたらす芳香性物質(類)を1種以上含んでもよい。一実施形態において、香料は、揮発性の芳香化合物からなるもの及び/又は揮発性の芳香化合物を含んでいてもよく、揮発性の芳香化合物には、天然植物抽出物、エッセンス、フレグランスオイル等が含まれるが、これらに限定されない。当該技術分野において周知のように、多くの精油及びその他の天然植物誘導体は、大部分が、揮発性の高い香りである。そういう意味で、数々の精油、エッセンス及び良い香りのする濃縮物が、香料及び食品を取り扱う企業から市販されている。
【0049】
典型的な油及び抽出物は、次の植物由来のものを含むが、これらに限定されない:アーモンド、アミリス、アニス、ヨモギ(armoise)、ベルガモット、カブリューバ、キンセンカ、カナガ(canaga)、ヒマラヤスギ、カモミール、ココナツ、ユーカリ、ウイキョウ、ジャスミン、ジュニパー、ラベンダー、レモン、オレンジ、ヤシ、ペパーミント、カシア、ローズマリー、タイム等。
【0050】
香料は、花及び果物由来の有機化合物から製造されてもよい。好適な有機化合物の例には、ジミルセトール(dimyrcetol)、フェニルエチルアルコール及びテトラヒドロムグオール、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ウンデシレンアルデヒド、ラウリンアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、エチルメチルフェニルグリシデート、メチルノニルアセトアルデヒド、ミリスチルアルデヒド、ノナラクトン、ノニルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ウンデカラクトン、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、バニリン、ヘリオトロピン、ショウノウ、パラヒドロキシフェノールブタノン、6−アセチル−1,1,3,4,4,6−ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン、α−メチルイオノン、γ−メチルイオノン及びアミルシクロヘキサノン、並びにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
言うまでもないが、本開示のエアゾール組成物に使用するのに適した香料の種類、強さ及び香りのプロフィールは、当業者には自明であるため、本開示の範囲を制限するものではないと解釈すべきである。さらに、本開示の一部の好ましい実施形態は天然香料のみを使用しているが、他の実施形態は、天然香料と合成香料の組み合わせを含んでもよく、又は合成界面活性剤が本開示の組成物のナチュラルインデックスをあまり低下しないのであれば合成界面活性剤のみを含んでいてもよい。
【0052】
天然の(グリーンな)殺虫剤/防虫剤
本開示の組成物は、天然資源及び再生可能資源由来の天然殺虫剤を1種以上及び/又は天然防虫剤を1種以上を含んでもよい。さらに、組成物は、天然殺虫剤及び/又は天然防虫剤を空気中に、制御された方法で長時間にわたって供給することも可能である。そのために、組成物をマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンとして存在させることで、天然殺虫剤及び/又は天然防虫剤を一貫して放出し易くすることができる。
【0053】
本開示の組成物中で使用される天然殺虫剤又は天然防虫剤は、ヒト又はペットに対する毒性が低いものであり得る。本開示の組成物に使用するのに適した天然殺虫剤としては、除虫菊(種の1種である花を原料とする殺虫剤)、ニコチン(アブラムシ、コナジラミ、ヨコバイ及びアザミウマ等の吸汁口または穿孔口を持った昆虫(piercing-sucking insects)に対して主に用いられるタバコ抽出物)、サバジラ(sabadilla)(ユリのような植物の種子から得られ、昆虫に対して接触毒及び消化中毒剤として作用するもの)、ロテノン(rotenone)(アジア産の植物であるデリス(derris)及び南米産の植物であるドクフジ(cube)の根から抽出されるもの)及びニーム油(東南アジア原産で世界中の多くの国にも自生するニーム(学名アザディラクタ・インデカ(azadirachta indica))からの抽出物)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0054】
好適な天然防虫剤は、植物から生成される揮発性の精油であってよい。例えば、天然防虫剤としては、シトロネラ油、レモンユーカリ油、桂皮油、ヒマシ油、ローズマリー油、レモングラス油、シダー油、ペパーミント油、丁子油、ゼラニウム油、バーベナ油、ハッカ油、ラベンダー油、松脂、カユプテ油、バジル油、タイム油、オールスパイス油、大豆油、にんにく油等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0055】
本開示の組成物中で使用するのに適した天然殺虫剤及び/又は天然防虫剤の種類、強さ及び濃度は、当業者には自明であることから、本開示の範囲を制限するものではないと考えるべきである。
【0056】
殺虫剤/防虫剤を持続的に放出する天然(グリーンな)油
本開示の組成物は、天然資源及び再生可能資源を原料とする油を1種以上含んでもよい。さらに、組成物は、天然油を空気中に、制御された方法で長時間にわたって供給するものであってもよい。そのために、組成物をマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンとして存在させることで、天然油を一貫して放出し易くすることができる。
【0057】
一実施形態において、本開示の組成物に使用される天然油は、1種以上の植物油を含んでもよい。本開示の組成物中に使用するのに適した天然油としては、パーム油、大豆油、菜種油、ひまわり油、ピーナッツ油、綿実油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ油、コーン油、ヘーゼルナッツ油、米ぬか油、紅花油、ゴマ油、亜麻仁油、ヒマシ油、キリ油等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0058】
本開示の組成物中に使用するのに適した天然油の種類及び濃度は、当業者には自明であることから、本開示の範囲を制限するものではないと考えるべきである。
【0059】
グリーンな有機溶媒
一部の実施形態において、本開示の組成物は、場合により、1種以上の有機溶媒を含んでもよい。好ましくは、組成物に用いられる有機溶媒は、天然資源及び再生可能資源由来のものであるので、組成物の環境上の特徴(すなわち、ナチュラルインデックス)に悪影響を及ぼさない。しかし、他の実施形態では、組成物には有機溶媒が追加されない。一実施形態において、組成物は揮発性有機化合物を含まない。
【0060】
好適な有機溶媒は、一価アルコール、好ましくは天然資源及び再生可能資源を原料とする、グリーンな低分子量の一価アルコール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール等を1種以上含んでもよい。さらに具体的には、エタノールは糖の発酵によって生成されるものであってよく、プロパノールは糖の発酵の副生成物として生成されるものであってよく、そしてブタノールはバイオマスの発酵によって生成されるものであってよい。結果として、このような有機溶媒を含んでも、本開示の組成物のナチュラルインデックスは低下しない。
【0061】
一実施形態において、組成物は、グリーンなアルコールを0〜5重量%、さらに好ましくは0〜4重量%含む。他の実施形態において、組成物は、エタノールを0.1〜3.9重量%含む。本開示の組成物中に使用するのに適したグリーンな有機溶媒の種類及び濃度は、当業者には自明であることから、本開示の範囲を制限するものではないと考えるべきである。
【0062】
グリーンなpH調整剤
一部の実施形態において、本開示の組成物は、場合により、1種以上のpH調整剤を含んでもよい。好ましくは、組成物に用いられるグリーンなpH調整剤は、天然資源及び再生可能資源由来のものであるので、組成物の環境上の特徴(すなわち、ナチュラルインデックス)に悪影響を及ぼさない。
【0063】
好適なpH調整剤としては、水酸化ナトリウム(塩の溶液を電気分解することで製造されるもの)、炭酸ナトリウム(鉱質沈着物として天然に存在するもの)及び重炭酸ナトリウム(鉱物であるナトロン中に天然に存在するもの)等の塩基を挙げることができる。また、グリーンなpH調整剤は、天然資源又は再生可能資源に由来する有機酸を1種以上含んでもよい。例えば、有機酸は、クエン酸(果物や野菜の中に天然に存在するもの)、乳酸(乳糖、コーンスターチ又はジャガイモを発酵させることによって生成されるもの)、酢酸(デンプン又は果物を発酵させることによって生成されるもの)等であってもよい。乳酸又はクエン酸の使用はまた、石鹸かすや石灰のかすの除去にも効果を発揮し得る。最後に、グリーンなpH調整剤は、前記有機酸の塩、例えばクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等を1種以上含んでもよい。
【0064】
言うまでもないが、本開示の組成物中に使用するのに適したグリーンなpH調整剤の種類及び濃度は、組成物の要求されるpHによって決まると考えられ、本開示を踏まえれば、必要以上の実験を行わなくとも当業者には自明であろう。さらに本開示の一部の好ましい実施形態では、グリーンなpH調整剤のみを使用しているが、他の実施形態は、グリーンなpH調整剤とグリーンでないpH調整剤との組み合わせを含んでもよく、又はグリーンでないpH調整剤の量が本開示の組成物のナチュラルインデックスをほとんど低下させないのであれば、グリーンでないpH調整剤のみを含んでもよい。
【0065】
本開示の組成物の1つの特徴は、マイクロエマルジョン又はナノエマルジョンとしての物理的存在である。特定の理論に束縛されたくはないが、本開示のグリーンな成分のマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンは、従来のエマルジョン、懸濁液(suspensions)又は溶液に比べて改善された組成物の性能、例えば汚れ除去、筋状跡の発生の低減又は活性物質の放出等を示すものと考えられる。
【0066】
本開示の組成物の他の特徴は、その高いナチュラルインデックスである。それ故に、組成物は、その環境上の特徴に悪影響を及ぼすことなく性能改善を達成するものである。例えば、組成物は、95%以上、97%、98%又は98.5%の高いナチュラルインデックスを有していてもよい。一実施形態において、本開示の組成物のナチュラルインデックスは99%以上、99.5%又は99.8%である。
【0067】
性能評価
本開示の組成物の性能を最適化するために、(ガラス洗浄組成物に関しては)筋状跡の発生の低減及び(ガラス洗浄組成物及び浴室洗浄組成物に関しては)汚れ除去を、市販のガラス洗浄剤(ウィンデックス(Windex(登録商標))洗浄剤)及び市販の多目的洗浄剤(ファンタスティーク(Fantastik(登録商標))洗浄剤)と対照して評価する。
【0068】
洗浄組成物についての筋状跡(Streak)の発生又は汚れの除去(Soil Removal)を確認するために、洗浄済みスライドガラス又は焼成済みエナメルタイルを使用前に秤量する。汚れ、例えば実験用に生成した人工の台所油の汚れ25〜29ミリグラムを、スライドガラス又はエナメルタイルの表面に付与する。次に、汚れが付着したスライドガラス又はエナメルタイルを、ガードナー製洗浄機(Gardner Scrub Machine)の中を7往復させる等して検査目的の洗浄組成物で洗浄し、そして再度秤量する。組成物の汚れ除去性能は、スライドガラス又はエナメルタイルから取り除かれた汚れの割合で表される。筋状跡の発生を軽減する組成物の性能は、「筋状跡の発生率」として以下に示す指数(index)で表され、これは、汚れが付着したガラスを洗浄組成物で洗浄した後、最もよく洗浄されたものを0とし、0〜5段階のパネル評価により決定されるものである。
【0069】
グリーンな界面活性剤混合物
グリーンな非イオン界面活性剤とグリーンな補助界面活性剤との相乗効果を調べるために、ラウリル硫酸ナトリウム(スタンダポール(Standapol(登録商標))WAQ−LC又はスタンダポールWAQ−LCK)とグルコポン(Glucopon(登録商標)425N)との混合物を含む2種類の洗浄組成物、及びココアルキル硫酸ナトリウム(スルフォポン(Sulfopon(登録商標))K35)とグルコポン425Nとの混合物を含む洗浄組成物を、合計界面活性剤濃度が1重量%となるように調製した。洗浄組成物中の2種類のグリーンな界面活性剤の比率を0〜100%まで変化させる。3種類の組成物中の、残りの成分は全く同じである。
【0070】
図1に示すように、スタンダポール(Standapol)WAQ−LC/グルコポン(Glucopon)425N混合物(合計濃度1重量%)は、容積比70/30において最も高い洗浄性能(71.3%)を示し、同様にスタンダポールWAQ−LCK/グルコポン425N混合物(合計濃度1重量%)も、同じ容積比において最も高い洗浄性能(79.9%)を達成する。他方、スルフォポン(Sulfopon)K35/グルコポン425N混合物(合計濃度1重量%)は、容積比30/70において最も高い洗浄性能(80.5%)に達する。容積比30/70でのスルフォポンK35/グルコポン425N混合物の洗浄性能及び容積比70/30でのスタンダポールWAQ−LCK/グルコポン425N混合物の洗浄性能は、ファンタスティーク(Fantastik(登録商標))又はウィンデックス(Windex(登録商標))洗浄剤と同程度であるか又はそれらよりも優れている。
【表1】

【0071】
さらに、選択された範囲の容積比において相乗混合物(スルフォポン(Sulfopon)K35/グルコポン(Glucopon)425N及びスタンダポール(Standapol)WAQ−LC/グルコポン425N)両者の合計界面活性剤濃度を0.5%から2.5%まで変化させると、意外なことに、組成物の洗浄性能にわずかに影響が表れる。これは、組成物の洗浄性能に影響を与えることなく、組成物中の合計界面活性剤濃度を一層低濃度まで低減できることを表している。
【0072】
図2に示すように、グリーンな非イオン界面活性剤と補助界面活性剤との混合物における合計界面活性剤濃度は、その汚れ除去性能にほとんど影響を与えずに0.01〜2.50重量%まで変化させることができる。そして、いかなる混合物比であろうと、前記濃度範囲全体では同程度又は同様の高いレベルの汚れ除去性能が維持される。
【0073】
特定の理論に束縛されたくはないが、グリーンな非イオン界面活性剤と補助界面活性剤との相乗混合物は、ターゲット表面上の汚れを自然に乳化又は可溶化することで汚れの除去性能を改善する。これを受けて、グリーンな界面活性剤混合物を含むマイクロエマルジョン(8mL)を調製し、そのコーン油(2mL)の乳化能力を、ウィンデックス(Windex(登録商標))洗浄剤又はファンタスティーク(Fantastik(登録商標))洗浄剤と比較することにより、相乗作用を有する界面活性剤混合物の乳化能力を求めることができる。
【0074】
調製したマイクロエマルジョンの乳化能力又は可溶化能力を調べるために、水性組成物とコーン油との界面張力(IFT)を、ダイナミックモードの回転液滴張力計(spinning drop tensiometer)を用いて20分及び室温で測定した。ここで、IFTは、水性組成物がコーン油を乳化する能力を表す。スルフォポン(Sulfopon)K35/グルコポン(Glucopon)425N混合物及びスタンダポール(Standapol)WAQ−LC(SLS)/グルコポン425N混合物両者のIFTもコーン油と対照して測定する。結果からは、SLSを多く含む範囲ではIFTに相乗効果が表れることが分かる。スルフォポンK35/グルコポン425N混合物が相乗効果を表す容積比範囲は、スタンダポールWAQ−LC(SLS)/グルコポン425N混合物よりも広範である。これらの相乗混合物は、コーン油の可溶化性能及び乳化性能が、ウィンデックス(Windex(登録商標))洗浄剤及びファンタスティーク(Fantastik(登録商標))洗浄剤のどちらよりも優れていることが分かる。
【0075】
グリーンな非イオン界面活性剤と補助界面活性剤との相乗混合物を含む洗浄組成物の非限定例を以下に挙げる。
【表2】


【表3】

【0076】
グリーンな界面活性剤とグリーンなリンカー
グリーンな界面活性剤とグリーンなリンカーとの相乗効果を調べるために、グルコポン(Glucopon(登録商標))425Nとグリーンでないリンカーを含む浴室又はガラス洗浄組成物(それぞれNSB又はNSG)、及びグルコポン(登録商標)425Nと親水性のグリーンなリンカー又は親油性のグリーンなリンカー(テトラデカノール又はヘキシルグルコシド)を含む洗浄組成物を調製した。リンカーの濃度は、0.01重量%〜0.50重量%までである。前記組成物において、残りの成分は全て同一である。
【0077】
図3に示すように、浴室洗浄組成物の汚れ除去性能は、親油性リンカー(テトラデカノール)のみを添加した場合、いずれの濃度範囲においてもほとんど改善されないことが分かる。ところが、親水性リンカー(ヘキシルグルコシド)のみを0.3重量%以上の濃度で添加した場合、ほんのわずかな改善が認められる。
【0078】
さらに、図4に示すように、ガラス洗浄組成物の汚れ除去性能は、親油性リンカー(テトラデカノール)又は親水性リンカー(ヘキシルグルコシド)のどちらを添加しても、テトラデカノールを0.05重量%濃度で添加した場合以外はほとんど改善が認められない。
【0079】
しかし、親水性リンカーと親油性リンカーの両方を0.02重量%〜0.24重量%の濃度範囲で含む場合(「デュアル・リンカー(dual linker)」)は、図5に示すように、浴室洗浄組成物(NSB)とガラス洗浄組成物(NSG)のいずれにおいても汚れ除去にかなりの改善が認められる。それどころか、デュアル・リンカーを含む洗浄組成物の汚れ除去性能は、ウィンデックス(Windex(登録商標))洗浄剤及びファンタスティーク(Fantastik(登録商標))洗浄剤と同等である。
【0080】
さらには、図5に示すように、デュアル・リンカーの合計濃度を0.02%から0.24%まで変化させても、意外なことに、浴室洗浄組成物又はガラス洗浄組成物の汚れ除去性能には大した影響は表れない。このことは、組成物中のデュアル・リンカーの合計濃度が、組成物の洗浄性能に影響を与えることなく、一層低い濃度まで低減できることを表している可能性がある。図6に示すように、洗浄組成物のデュアル・リンカーの合計濃度は、洗浄組成物の汚れ除去性能にほとんど影響を及ぼすことなく、0.0012から0.24重量%まで変化させることができる。
【0081】
グリーンな界面活性剤とグリーンなリンカーとの相乗混合物を含む洗浄組成物の非限定例を以下に挙げる。
【表4】


【表5】

【0082】
組成物Cについての筋状跡の発生を軽減する性能を、0が筋状跡が発生しないとして、0〜5段階でパネル評価を行う。評価結果からは、組成物Cの筋状跡の発生率は0.50であるが、リンカーを含まないこと以外は組成物Cと同様のガラス洗浄組成物の場合は、筋状跡の発生率が0.90であることが分かる。したがって、グリーンな界面活性剤を1種以上含むガラス洗浄組成物の筋状跡の発生を低減する性能は、グリーンなリンカーを含むことで相乗的に向上する。
【0083】
最後に、グリーンな界面活性剤混合物(例えば、ココアルキル硫酸ナトリウムとアルキルポリグリコシドの混合物)を含む洗浄組成物は、1種以上のグリーンなリンカーをさらに含むことで、当該洗浄組成物の汚れ除去能力及び/又は筋状跡の発生を軽減する能力を改善することができる。最適化されたグリーンな界面活性剤混合物(ココアルキル硫酸ナトリウム/アルキルポリグリコシドの比が30/70でありかつ合計界面活性剤濃度が1重量%のもの)を含む組成物の洗浄能力は、さらに、デュアル・リンカーを0.02重量%又は0.2重量%のいずれかの濃度で含むことによって少なくとも約5%向上し得ることも分かる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示の組成物は、浴室洗浄(バスタブ、化粧室、タイル、浴室設備、鏡等)、台所洗浄(調理台、換気扇、シンク、キャビネット等)及び他の一般的な家庭用洗浄(家具、室内設備、窓等)を含む様々な清掃作業に使用できるが、これらに限定されない。さらに、組成物は、オフィス、商店及び他の商業施設又は非商業施設においても使用できる。最後に、組成物は、自動車、コンピュータ等の私物品の洗浄にも使用できる。
【0085】
本開示の組成物は、様々な洗浄品と併用してもよい。非限定例として、組成物は、S.C.ジョンソン(S.C.Johnson)から現在販売されているフレッシュ・ブラッシュ(Fresh Brush(登録商標))浴室洗浄システムと併用することで、優れた洗浄効果を得ることができる。
【0086】
特定の実施形態のみを記載してきたが、当業者にとっては、以上の記載から代替案や改良案は自明であろう。これらの及びその他の代替案は同価値であって、しかも本開示の内容及び添付の特許請求の範囲の趣旨及び領域の範囲内にあるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンな非イオン界面活性剤と、
グリーンな補助界面活性剤と、
水と、
を含む、洗浄組成物であって、当該組成物のナチュラルインデックスが少なくとも98%である、洗浄組成物。
【請求項2】
前記組成物の合計界面活性剤濃度が2.5重量%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グリーンな非イオン界面活性剤がアルキルポリグリコシドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記グリーンな補助界面活性剤がグリーンなアニオン界面活性剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記グリーンなアニオン界面活性剤の濃度が0.000001〜1重量%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記グリーンなアニオン界面活性剤がアルキル硫酸塩を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルキル硫酸塩が、ラウリル硫酸ナトリウム又はココアルキル硫酸ナトリウムである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
天然香料、天然殺虫剤、天然防虫剤及び天然油からなる群から選択される天然活性物質をさらに含み、前記天然活性物質を持続的に放出する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物がマイクロエマルジョンとして存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
グリーンな非イオン界面活性剤と、
少なくとも1種のグリーンなリンカーと、
水と、
を含む、洗浄組成物であって、当該組成物のナチュラルインデックスが少なくとも98%である、洗浄組成物。
【請求項11】
前記組成物の合計リンカー濃度が0.5重量%以下である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記グリーンな非イオン界面活性剤がアルキルポリグリコシドを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種のグリーンなリンカーが、グリーンな親水性リンカー及びグリーンな親油性リンカーを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記グリーンな親水性リンカーがヘキシルグルコシドを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記グリーンな親油性リンカーがC12〜C18アルカノールを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
天然香料、天然殺虫剤、天然防虫剤及び天然油からなる群から選択される天然活性物質をさらに含み、前記天然活性物質を持続的に放出する、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物がマイクロエマルジョンとして存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項18】
グリーンな非イオン界面活性剤と、
グリーンな補助界面活性剤と、
少なくとも1種のグリーンなリンカーと、
水と、
を含む、洗浄組成物。
【請求項19】
前記組成物のナチュラルインデックスが少なくとも98%である、請求項18に記載の洗浄組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種のグリーンなリンカーが、グリーンな親水性リンカー及びグリーンな親油性リンカーを含む、請求項18に記載の洗浄組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−508471(P2013−508471A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534164(P2012−534164)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/002748
【国際公開番号】WO2011/046610
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(500106743)エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド (168)
【Fターム(参考)】