説明

留置針装置

【課題】穿刺後にストッパーのみを抜き去って、内針をシールド内に収納するのを忘れるという誤操作が発生する可能性を低減する。
【解決手段】ハブ140がシールド20の内腔の前端側に位置し且つ内針50が外針30を貫通する初期位置と、ハブがシールドの内腔の後端側に位置し且つ内針がシールドの内腔内に収納される後退位置とにハブが変位可能である。ストッパー170は、シールドの内腔内に挿入される挿入部72と、挿入部の後端に設けられた基部80とを備える。ハブ及び挿入部には、互いに解除可能に係合する係合構造141,171が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質の外針と硬質の内針とを備え、外針の先端から内針の先端を突出させた状態で患者に穿刺し、その後、内針を外針から後退させることができるように構成された留置針装置に関する。
【背景技術】
【0002】
留置針装置は、輸液、輸血、体外血液循環などの処置に広く使用される。このような処置において、金属針を血管内に留置すると血管が傷付けられる可能性がある。そこで、軟質の外針と硬質の内針とを備えた留置針装置が知られている。外針の先端から内針の先端を突出させた状態で外針及び内針を患者の血管に穿刺し、その後、内針を外針から後退させ、外針のみを患者に留置する。留置された軟質の外針は患者の血管を傷付ける可能性は低い。
【0003】
図32は、このような従来の留置針装置900(例えば特許文献1参照)の一例の上方から見た斜視図、図33は、図32の33−33線を含む垂直面に沿った従来の留置針装置900の矢視断面図である。説明の便宜のため、患者に穿刺する側(図32及び図33の紙面の左側)を「前側」、これと反対側を「後側」と呼ぶ。
【0004】
留置針装置900は、略円筒形状を有するシールド筒921と、その一端(前端)に固定された外ハブ925とを含むシールド920を備える。外ハブ925の前端に軟質の外針930が固定されている。
【0005】
シールド筒921の外ハブ925側端近傍の外周面に一対の翼929a,929bが設けられている。翼929a,929bは柔軟性を有しており、上下に揺動可能である。
【0006】
シールド920の内腔内にはハブ940が、シールド920の長手方向(即ち、前後方向)に移動可能に挿入されている。ハブ940の前端には金属製の硬質の内針950が固定され、ハブ940の後端には柔軟なチューブ960の一端が接続されている。内針950とチューブ960とは、ハブ940を前後方向に貫通する縦貫路943を介して連通している。
【0007】
図32、図33では、ハブ940はシールド920の内腔の前端側に位置している。シールド920に対するハブ940のこの位置を「初期位置」と呼ぶ。初期位置では、ハブ940に保持された内針950は外針930を貫通し、内針950の先端は外針930の先端から外部に突出している。
【0008】
ハブ940を初期位置に保持するために、ストッパー970が用いられる。図34はストッパー970の斜視図である。略半円筒形状の基部971から、略半円筒形状の挿入部972及び一対の固定部973が延びている。挿入部972は一対の固定部973の間に配置され、これらは互いに平行である。
【0009】
図33に示されているように、シールド筒921の後端から、ストッパー970の挿入部972を挿入する。挿入部972の先端をハブ940の後端に衝突させてハブ940を前側に押し込むことにより、ハブ940を初期位置に配置することができる。
【0010】
ハブ940を初期位置に保持したまま、内針950及び外針930を患者の血管に穿刺する。穿刺する間、ハブ940を初期位置に維持するためには、シールド920に対してストッパー970が変位するのを防ぐ必要がある。このため、作業者は、2本の指で、ストッパー970の基部971を上下方向に(図32の矢印H91参照)又は水平方向に(図32の矢印H92参照)把持してもよく、あるいは、一対の固定部973を水平方向に(図32の矢印H93参照)把持してもよい。あるいは、一対の固定部973を一対の翼929a,929bとシールド筒921との間で挟んで固定するように一対の翼929a,929bを上方に折り曲げて、重ね合わされた一対の翼929a,929bを2本の指で把持してもよい。
【0011】
その後、シールド920からストッパー970を抜き去り、続いてシールド920からチューブ960を引っ張る。これにより、チューブ960とともにハブ940及び内針950がシールド920に対して後方に移動し、図35に示すように、内針950がシールド920内に収納される。シールド筒921の内周面に形成された環状の係止突起922がハブ940の外周面に形成された嵌合溝948aに嵌入するので、ハブ940の前後方向の移動が制限される。図35に示したシールド920に対するハブ940の位置を「後退位置」と呼ぶ。この状態で粘着テープ等を用いて留置針装置910を患者に固定する。軟質の外針930のみが患者に穿刺された状態で留置針装置910は留置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4506834号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来の留置針装置900では、図35に示したように内針950をシールド920内に収納するために、シールド920に対してチューブ960を引っ張る操作が必要である。この操作に先立って又はこれと同時に、ストッパー970をシールド920から抜き去る(取り除く)ことが必要である。ストッパー970は穿刺する際にハブ940を初期位置に維持するための機能を有するに過ぎず、ストッパー970を抜き去るだけでは内針950を後退させることはできない。
【0014】
ところが、ストッパー970のみをシールド920から抜き去ったことにより、内針950がシールド920内に収納されたと勘違いし、チューブ960を引っ張るのを忘れてしまうという誤操作をする危険がある。その結果、外針930の先端から内針950が突出した状態で患者に留置されるので、硬質の内針950の先端が患者の血管を傷付けてしまう可能性がある。
【0015】
本発明は、穿刺後にストッパーのみを抜き去って、内針をシールド内に収納するのを忘れるという誤操作が発生する可能性を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の留置針装置は、内腔を有するシールドと、前記シールドの前端に固定された軟質の外針と、前記シールドの前記内腔内に配置され、前記シールドの長手方向に移動可能なハブと、前記ハブの前端に固定された硬質の内針と、前記ハブの後端に接続されたチューブと、前記シールドの前記内腔に、前記シールドの後端から挿抜されるストッパーとを備える。前記ハブが前記シールドの前記内腔の前端側に位置し且つ前記内針が前記外針を貫通して前記外針の先端から突出する初期位置と、前記ハブが前記シールドの前記内腔の後端側に位置し且つ前記内針が前記シールドの前記内腔内に収納される後退位置とに前記ハブが変位する。前記ストッパーは、前記シールドの前記内腔内に挿入される挿入部と、前記挿入部の後端に設けられた基部とを備える。前記ハブ及び前記挿入部には、互いに解除可能に係合する係合構造が設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ハブ及びストッパーの挿入部には互いに解除可能に係合する係合構造が設けられているので、ハブとストッパーの挿入部とを係合させた状態でストッパーを後方に引き抜いてハブを後退位置に移動させることができる。これにより、穿刺後にストッパーのみを抜き去って、内針をシールド内に収納するのを忘れるという誤操作が発生する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ハブが初期位置にある、本発明の実施形態1にかかる留置針装置の上方から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1の2−2線を含む垂直面に沿った本発明の実施形態1にかかる留置針装置の矢視断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態1にかかる留置針装置を構成するシールドの後端及びその近傍を示した部分拡大斜視図である。
【図4】図4Aは、本発明の実施形態1にかかる留置針装置に用いられるハブの前側から見た斜視図、図4Bは当該ハブの後ろ側から見た斜視図、図4Cは図4Aの4C−4C線を含む面に沿ったハブの矢視断面図である。
【図5】図5Aは本発明の実施形態1にかかる留置針装置に用いられるストッパーの前側上方から見た斜視図、図5Bはその後ろ側下方から見た斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態1にかかる留置針装置において、ハブとストッパーとを係合させる方法を説明する斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態1にかかる留置針装置において、係合されたハブ及びストッパーの前側から見た斜視図である。
【図8】図8は、ストッパと係合したハブが後退位置にある本発明の実施形態1にかかる留置針装置のハブ及びその近傍部分を示した切り欠き斜視図である。
【図9】図9は、ハブが後退位置にあり且つストッパーが抜き去られた本発明の実施形態1にかかる留置針装置の上方から見た斜視図である。
【図10】図10は、図9の10−10線を含む垂直面に沿った本発明の実施形態1にかかる留置針装置の矢視断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態1にかかる留置針装置におけるハブとストッパーとの係合構造の別の例を示した斜視図である。
【図12】図12は、ハブが初期位置にある、本発明の実施形態2にかかる留置針装置の上方から見た斜視図である。
【図13】図13は、図12の13−13線を含む垂直面に沿った本発明の実施形態2にかかる留置針装置の矢視断面図である。
【図14】図14は、本発明の実施形態2にかかる留置針装置を構成するシールドの後端及びその近傍を示した部分拡大斜視図である。
【図15】図15Aは、本発明の実施形態2にかかる留置針装置に用いられるハブの前側から見た斜視図、図15Bは当該ハブの後ろ側から見た斜視図、図15Cは当該ハブの側面図である。
【図16】図16Aは本発明の実施形態2にかかる留置針装置に用いられるストッパーの前側上方から見た斜視図、図16Bは当該ストッパーの挿入部の前端部分を示した拡大側面図である。
【図17】図17は、本発明の実施形態2にかかる留置針装置において、ハブとストッパーとを係合させる方法を説明する斜視図である。
【図18】図18は、本発明の実施形態2にかかる留置針装置において、係合されたハブ及びストッパーの前側から見た斜視図である。
【図19】図19は、ストッパと係合したハブが後退位置にある本発明の実施形態2にかかる留置針装置のハブ及びその近傍部分を示した切り欠き斜視図である。
【図20】図20は、ハブが後退位置にあり且つストッパーが抜き去られた本発明の実施形態2にかかる留置針装置の上方から見た斜視図である。
【図21】図21は、図20の21−21線を含む垂直面に沿った本発明の実施形態2にかかる留置針装置の矢視断面図である。
【図22】図22は、本発明の実施形態2にかかる留置針装置におけるハブとストッパーとの係合構造の別の例を示した側面図である。
【図23】図23は、ハブが初期位置にある、本発明の実施形態3にかかる留置針装置の上方から見た斜視図である。
【図24】図24は、図23の24−24線を含む垂直面に沿った本発明の実施形態3にかかる留置針装置の矢視断面図である。
【図25】図25Aは、本発明の実施形態3にかかる留置針装置に用いられるハブの前側から見た斜視図、図25Bは当該ハブの後ろ側から見た斜視図である。
【図26】図26Aは本発明の実施形態3にかかる留置針装置に用いられるストッパーの前側上方から見た斜視図、図26Bはその後ろ側下方から見た斜視図である。
【図27】図27は、本発明の実施形態3にかかる留置針装置において、ハブとストッパーとを係合させる方法を説明する斜視図である。
【図28】図28は、本発明の実施形態3にかかる留置針装置において、係合されたハブ及びストッパーの前側から見た斜視図である。
【図29】図29は、ストッパと係合したハブが後退位置にある本発明の実施形態3にかかる留置針装置のハブ及びその近傍部分を示した切り欠き斜視図である。
【図30】図30は、ハブが後退位置にあり且つストッパーが抜き去られた本発明の実施形態3にかかる留置針装置の上方から見た斜視図である。
【図31】図31は、図30の31−31線を含む垂直面に沿った本発明の実施形態3にかかる留置針装置の矢視断面図である。
【図32】図32は、従来の留置針装置の上方から見た斜視図である。
【図33】図33は、図32の33−33線を含む垂直面に沿った従来の留置針装置の矢視断面図である。
【図34】図34は、図32に示した従来の留置針装置に使用されるストッパーの斜視図である。
【図35】図35は、内針がシールド内に収納された、図32に示した従来の留置針装置の、図33と同じ面に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記の本発明の留置針装置において、前記ハブに対して前記シールドの長手方向とは異なる方向に前記ストッパーを移動させることにより、前記係合構造の係合を解除することができることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、係合構造を解除するためのストッパーの移動方向が、ハブを後退位置に移動させるためのストッパーの移動方向と異なるので、係合構造が意図せずに解除されてしまうという誤操作が発生する可能性を低減することができる。
【0020】
あるいは、前記ハブに対して前記シールドの長手方向と平行な方向に前記ストッパーを移動させることにより、前記係合構造の係合を解除することができてもよい。かかる好ましい構成によれば、係合構造を解除するためのストッパーの移動方向が、ハブを後退位置に移動させるためのストッパーの移動方向と一致しているので、ハブを初期位置から後退位置へ移動させるための操作と、係合構造を解除するための操作とを、連続的に行うことができる。
【0021】
あるいは、前記ハブに対して前記ストッパーを回転させることにより、前記係合構造の係合を解除することができてもよい。かかる好ましい構成によれば、係合構造を解除するためのストッパーの移動方向(回転方向)が、ハブを後退位置に移動させるためのストッパーの移動方向と異なるので、係合構造が意図せずに解除されてしまうという誤操作が発生する可能性を低減することができる。
【0022】
前記ハブが前記後退位置にあるときを除いて、前記係合構造の係合を解除することができないことが好ましい。かかる好ましい構成によれば、ストッパーをシールドから取り除いた後に、内針の一部が外針内に挿入されたままであったり、内針を外針から再突出させてしまったりという誤操作が発生する可能性を低減することができる。
【0023】
前記係合構造が、前記ハブ及び前記挿入部にそれぞれ設けられた略L字形状を有する係合片を含んでいてもよい。あるいは、前記係合構造が、前記ハブ及び前記挿入部のうちの一方に設けられた略U字形状を有する第1係合片と、他方に設けられた、前記略U字形状を有する第1係合片に挿入可能な第2係合片とを含んでいてもよい。これらの構成によれば、本発明の係合構造を簡単な構成で実現することができる。
【0024】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、以下の各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0025】
(実施形態1)
図1は、ハブが初期位置にある、本発明の実施形態1にかかる留置針装置100の上方から見た斜視図である。以下の説明の便宜のため、留置針装置100の長手方向をZ軸、Z軸と直交する水平方向軸及び上下方向軸をそれぞれX軸及びY軸とする直交座標系を設定する。Y軸の矢印の側(即ち、図1の紙面の上側)を「上側」、これと反対側を「下側」と呼ぶ。但し、「水平方向」及び「上下方向」は、留置針装置100の実際の使用時の向きを意味するものではない。更に、患者に穿刺する側(Z軸の矢印の側、即ち、図1の紙面の左側)を「前側」、これと反対側を「後側」と呼ぶ。図2は、図1の2−2線を含む垂直面(YZ面)に沿った留置針装置100の矢視断面図である。
【0026】
留置針装置100は、シールド20を備える。シールド20は、シールド筒21と、シールド筒21の一端(前端)に固定された外ハブ25とを有する。シールド筒21は、内径が一定の略円筒形状を有する。シールド筒21の外ハブ25とは反対側端(後端)近傍の内周面には、周方向に連続する係止突起22が形成されている。外ハブ25は略漏斗形状を有し、そのシールド筒21とは反対側端(前端)に軟質の外針30が固定されている。外針30は略円筒形状を有する。シールド筒21及び外ハブ25の材料としては、特に制限はないが、硬質材料が好ましく、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン等を用いることができる。シールド筒21及び外ハブ25が透明又は透光性を有すると、その内腔内の血液やハブ140を透視することができるので好ましい。外針30の材料としては、特に制限はないが、軟質材料が好ましく、例えば、ポリプロピレン、ポリウレタン系エラストマー、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等を用いることができる。外針30が透明又は透光性を有すると、その内腔内の血液や内針50を透視することができるので好ましい。なお、外ハブ25及び外針30を、上記の軟質材料を用いて一体に形成してもよい。
【0027】
図3はシールド20の後端及びその近傍を示した部分拡大斜視図である。シールド筒21の後端には、シールド筒21の上側壁の部分がスリット状に除去された切り欠き23が形成されている。切り欠き23は、シールド筒21の後端から係止突起22まで達している。図3では、チューブ60の図示を省略している。
【0028】
図1にもどり、参照符号29a,29bは、X軸と略平行に延びた翼である。翼29a,29bは、略円筒形状の固定部材28に設けられている。固定部材28をシールド筒21の外ハブ25側端近傍の外周面に外装することにより、翼29a,29bがシールド20に装着されている。翼29a,29bの材料としては、特に制限はないが、軟質材料が好ましく、例えば、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエチレン、オレフィン系又はポリスチレン系の熱可塑性エラストマー等を用いることができる。なお、翼29a,29bは、シールド20に一体に成形されていてもよい。
【0029】
図2に示されているように、シールド20の内腔内にはハブ140が、シールド20の長手方向(即ち、前後(Z軸)方向)に移動可能に挿入されている。ハブ140の前端には金属製の硬質の内針50が固定されている。内針50は略円筒形状を有し、その先端は鋭利に加工されている。ハブ140の後端には樹脂製の柔軟なチューブ60の一端が接続されている。チューブ60の他端は、例えば血液透析を行うための血液回路に接続されている。ハブ140の外周面にOリング49が装着されている。Oリング49はシールド筒21の内周面に密着し、シールド20の内腔において、Oリング49よりも外針30側の血液がOリング49よりもチューブ60側に漏洩するのを防ぐ。ハブ140の材料としては、特に制限はないが、硬質材料が好ましく、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等を用いることができる。チューブ60の材料としては、特に制限はないが、軟質材料が好ましく、例えば、塩化ビニル等を用いることができる。
【0030】
図4Aはハブ140の前側から見た斜視図、図4Bはハブ140の後ろ側から見た斜視図、図4Cは図4Aの4C−4C線を含む面に沿ったハブ140の矢視断面図である。ハブ140は、一端(前端)に、円錐面状の外面を有する前部41を有し、他端に円筒面状の外面を有する後部42を有する。縦貫路43が、ハブ140の中心軸40aに沿って前部41から後部42までハブ140を縦貫している。図2に示されているように、内針50は、前部41側から縦貫路43内に挿入されて、ハブ140に保持される。後部42がチューブ60内に挿入されて、ハブ140とチューブ60とが接続される。かくして、内針50とチューブ60とは、ハブ140の縦貫路43を通じて連通される。
【0031】
前部41と後部42との間の、ハブ140の外周面に、周方向に連続する環状溝44が形成されている。図2に示されているように、環状溝44にOリング49が装着される。
【0032】
ハブ140の外周面に、環状溝44と前部41との間に、環状溝44側から径大部45及び径小部46がこの順に形成されている。径小部46は前部41に隣接し、径小部46の外径は、前部41の最大径とほぼ同じであり、且つ、径大部45の外径よりも小さい。前部41、径小部46、及び径大部45には、これらを直径方向(中心軸40aに直交する方向)に横貫する横貫路47が形成されている。横貫路47は、縦貫路43と交差し且つ連通している。
【0033】
後部42の周りに、後部42から離間して、一対の弾性片48及び一対の係合片141が設けられている。一対の弾性片48は上下方向(Y軸方向)に対向し、一対の係合片141は水平方向(X軸方向)に対向している。
【0034】
弾性片48は、片持ち支持構造を有し、ハブ140の中心軸40aに対して略平行に延びている。弾性片48の後部42とは反対側の面には、嵌合溝48aとテーパ面48bとが形成されている。嵌合溝48aは、ハブ140の周方向に沿った凹部(溝)である。テーパ面48bは、嵌合溝48aに対して弾性片48の自由端側に隣接し、嵌合溝48a側で外径が大きな円錐面の一部をなす。一対の弾性片48は、中心軸40aに対して回転対称の関係を有する。
【0035】
係合片141は、側方(X軸と平行な方向)から見たとき略鉤形状(略L字形状)を有し、その後端に、上側に向かって突出した係合突起142を備えている。係合突起142の前部41側の面は、Z軸(即ち、中心軸40a)に対して直交する面(即ち、XY面)に略平行な係合面143である。係合片141の外周面145は、嵌合溝48aの底面を構成する円筒面と同軸且つ同一半径の円筒面である。一対の係合片141は、鏡面対称の関係を有する。
【0036】
図1、図2では、ハブ140はシールド20の内腔の前端側に位置している。シールド20に対するハブ140のこの位置を本発明では「初期位置」と呼ぶ。初期位置では、ハブ140に保持された内針50は外針30を貫通し、その先端は外針30の先端から外部に突出している。
【0037】
ハブ140を初期位置を維持するために、ストッパー170が用いられる。図5Aはストッパー170の前側上方から見た斜視図、図5Bはストッパー170の後ろ側下方から見た斜視図である。ストッパー170は、基部71と、挿入部72と、一対の固定部73とを備える。挿入部72は一対の固定部73の間に配置され、挿入部72及び一対の固定部73は基部71の前端から前側に向かってZ軸と平行に延びている。図5Bでは、挿入部72の構成を示すために、一対の固定部73のうち手前側の固定部の一部を除去している。
【0038】
挿入部72の、その長手方向に垂直な面(即ち、XY面に平行な面)に沿った断面は、下側が開放した略半円筒形状又は略U字形状を有する。挿入部72及び基部71の下面には、Z軸方向と平行な溝74が形成されており、図2に示されているように、この溝74内にチューブ60が嵌入される。
【0039】
挿入部72の前端部分は、その前端から形成されたスリット状の切り欠き175によって一対の係合片171に分割されている。係合片171は、側方(X軸と平行な方向)から見たとき略鉤形状(略L字形状)を有し、その前端に、下側に向かって突出した係合突起172を備えている。係合突起172の基部71側の面は、XY面に略平行な係合面173である。一対の係合片171は、鏡面対称の関係を有する。
【0040】
ハブ140の係合片141とストッパー170の係合片171とは互いに係合させることができる。即ち、図6に示すように、ハブ140に対して、その上方からストッパー170を矢印A1の向きに下降させて、ハブ140の係合片141にストッパー170の係合片171を嵌め合わせることにより、係合片141と係合片171とを係合することができる。
【0041】
図7は、係合状態にあるハブ140及びストッパー170の斜視図である。係合片141の係合面143(図4A参照)と係合片171の係合面173(図5B参照)とが当接している。挿入部72の前端の切り欠き175内に、ハブ140の弾性片48が嵌入している。図7のように係合片141と係合片171とが互いに係合しているときに、ハブ140及びストッパー170にZ軸方向に平行な互いに離す向きの引っ張り力を印加しても、ハブ140及びストッパー170を分離することはできない。係合片141と係合片171との係合の解除は、上記の係合操作とは逆に、ハブ140に対してストッパー170を上方に移動させることにより可能である。
【0042】
このように、係合片141及び係合片171は、ハブ140とストッパー170とを解除可能に係合させる係合構造を構成する。
【0043】
図7に示したように係合片141と係合片171とを係合させた状態で、シールド筒21の後端から、内針50付きのハブ140及びストッパー170の挿入部72をシールド筒21の内腔内に挿入する。ストッパー170をシールド20内に可能なかぎり深く挿入すると、ハブ140の径大部45が外ハブ25の後端に衝突して、図1、図2に示されているように、ハブ140はシールド20の内腔内の初期位置に配置される。ハブ140が初期位置にある状態では、ストッパー170をシールド20内に更に深く押し込むことはできない。ハブ140に接続されたチューブ60は、ストッパー170の下面に形成された溝74(図5B参照)に嵌入する。ストッパー170の一対の固定部73は、シールド20のシールド筒21の両側に位置し、その先端は翼29a,29bの位置まで達している。ストッパー170の基部71は、シールド筒21外に位置している。
【0044】
本実施形態1の留置針装置100は、ハブ140が初期位置に配置された状態で医療現場に提供される。以下に、留置針装置100の使用方法及び作用を説明する。
【0045】
図1、図2に示すように内針50が外針30の先端から突出した状態で、内針50及び外針30を患者の血管に穿刺する。穿刺する際に内針50は反力を受ける。この反力によって内針50及びこれを保持するハブ140が外針30及びシールド20に対して後方に向かって移動するのを防止する必要がある。ストッパー170の挿入部72は、その先端(係合片171)がハブ140の後端(係合片141)と係合しているので、ストッパー170を介してハブ140の移動を制限することができる。具体的には、作業者は、ストッパー170がシールド20に対して移動することがないように留置針装置100を把持しながら穿刺すればよい。留置針装置100のこのような把持方法として、従来の留置針装置900と同様に、概して以下の4通りがある。
【0046】
第1の把持方法では、図1の矢印H11に示すように、ストッパー170の基部71を2本の指(例えば親指と人差し指)で上下方向(Y軸方向)に把持することができる。
【0047】
第2の把持方法では、図1の矢印H12に示すように、ストッパー170の基部71を、2本の指で水平方向(X軸方向)に把持することができる。より詳細には、親指と中指とで基部71を水平方向に把持し且つ人差し指をシールド20の上面に添えてもよく、あるいは、親指と人差し指とで基部71を水平方向に把持してもよい。
【0048】
第3の把持方法では、図1の矢印H13に示すように、ストッパー170の一対の固定部73を、2本の指(例えば親指と人差し指)で水平方向(X軸方向)に把持することができる。このときの把持力によって、一対の固定部73は互いに接近する方向に容易に弾性変形してシールド筒21の外周面に密着する。従って、この第3の把持方法では、一対の固定部73とシールド筒21とを一緒に把持することができる。
【0049】
第4の把持方法では、翼29a,29bを上側に折り曲げ互いに重ね合わせて、2本の指(例えば親指と人差し指)で水平方向(X軸方向)に把持することができる(図示を省略)。このとき、一対の固定部73は、翼29a,29bとシールド筒21との間に挟まれて固定される。従って、この第4の把持方法では、翼29a,29bに加えて、一対の固定部73とシールド筒21とを一緒に把持することができる。
【0050】
上記のいずれかの方法で留置針装置100を把持しながら内針50及び外針30を患者の血管内に穿刺した後、内針50を外針30から後退させてシールド20内に収納する。
【0051】
本実施形態1では、図7に示したように、ハブ140の係合片141とストッパー170の係合片171とが互いに係合している。従って、シールド20に対してストッパー170を後方に移動させれば、ストッパー170と一緒にハブ140及び内針50も後方に移動させることができる。上述したように、係合片141に対して係合片171を上方に移動させれば、係合片141と係合片171との係合は解除される。ところが、係合片141に対して係合片171を上方に移動させて両者の係合を解除できるほどシールド筒21の内径は大きくない。従って、係合片171がシールド20内に存在している限り、係合片141と係合片171との係合を解除することは不可能である。
【0052】
シールド筒21の後端近傍の内周面には係止突起22が形成されている。ストッパー170によってハブ140を係止突起22まで移動させると、ハブ140の弾性片48の外面に形成されたテーパ面48bが係止突起22上を摺動する。このとき弾性片48は後部42側に弾性変形する。次いで、テーパ面48bが係止突起22を乗り越えると、弾性片48が弾性回復し、嵌合溝48aに係止突起22が嵌入する。嵌合溝48aと係止突起22とが嵌合したときの、シールド20に対するハブ140の位置を本発明では「後退位置」と呼ぶ。
【0053】
図8は、ハブ140が後退位置にある留置針装置100においてハブ140及びその近傍部分を示した切り欠き斜視図である。図示されているように、シールド筒21の係止突起22がハブ140の嵌合溝48a内に嵌入している。従って、ハブ140は、シールド20に対して前側及び後ろ側のいずれにも移動することは実質的に困難である。更に、ストッパー170も、その係合片171がハブ140の係合片141と係合しているので、シールド20に対して前側及び後ろ側のいずれにも移動することは困難である。但し、シールド筒21の後端に切り欠き23が形成されているので、この切り欠き23を通じてストッパー170の挿入部72を上方に移動させることができ、これにより係合片141と係合片171との係合を解除することができる。なお、図8では、ストッパー170の固定部73の図示を省略している。
【0054】
図9は、ハブ140が後退位置にあり、且つ、ストッパー170を上方に移動させることによりストッパー170が取り除かれた留置針装置100の上方から見た斜視図である。図10は、図9の10−10線を含む垂直面(YZ面)に沿った留置針装置100の矢視断面図である。図10に示されているように、図8と同様にハブ140の嵌合溝48aとシールド筒21の係止突起22とが嵌合している。また、ハブ140に保持された内針50は外針30から抜き去られ、シールド20の内腔内に収納されている。
【0055】
初期位置(図1、図2参照)に比べると、後退位置では、外針30内の流路の断面積は内針50の断面積分だけ増大するので、血液の流量が増大する。また、後退位置では、外針30からチューブ60に至る流路としては、内針50の内腔及びハブ40の縦貫路43を順に通る第1流路と、シールド20の内面と内針50及びハブ40の各外面との間の空間12、ハブ40の横貫路47、及びハブ40の縦貫路43を順に通る第2流路の2つがあるので、大きな流量で血液を流すことができる。
【0056】
この状態で翼29a,29bの上から粘着テープを患者の皮膚に貼り付け、留置針装置100を患者に固定する。外針30のみが患者に穿刺された状態で留置される。後退位置では、柔軟な外針30内に硬質の内針50が存在しないので、患者が動くなどにより、患者に対する留置針装置100の姿勢が仮に変化しても、外針30が患者の血管等を傷付けることはない。
【0057】
必要な処置が終了すると、翼29a,29bを固定する粘着テープを患者から剥がし、外針30を患者から引き抜く。シールド20に対してチューブ60を押し引きしても、ハブ40の嵌合溝48aとシールド筒21の係止突起22との嵌合状態は解除されない。即ち、内針50を外針30の先端から再度突出させたり、ハブ40とともに内針50をシールド20から引き抜いたりすることはできない。従って、硬質の内針50を誤って穿刺したり、使用済みの留置針装置10を誤って再使用したりするのを防止している。使用済みの留置針装置100は廃棄される。
【0058】
以上のように、本実施形態1によれば、ハブ140とストッパー170とを係合片141及び係合片171を介して係合させることができる。従って、係合片141と係合片171とを係合させた状態でハブ140をシールド20内に初期位置にまで押し込んでおけば、その後、ハブ140を後退位置に移動させるためには、ストッパー170をシールド20から引き抜けばよい。ハブ140が後退位置に到達するまでは、係合片141と係合片171との係合を解除することはできない。ハブ140が後退位置に到達すると、ストッパー170を上方に移動させて係合片141と係合片171との係合を解除することによりストッパー170を取り除くことができる。
【0059】
これに対して、上述した従来の留置針装置900では、ハブ940とストッパー970とは係合していないので、ストッパー970でハブ940をシールド920内に初期位置にまで押し込んだ後に、ストッパー970をシールド920から引き抜いてもハブ940は初期位置にとどまったままである。従って、その後、チューブ960を引っ張って内針950をシールド920内に収納するという作業をすることを忘れる可能性がある。
【0060】
本実施形態1では、従来の留置針装置900と異なり、シールド20からストッパー170を引き抜く操作を行えば、これと同時にハブ140を後退位置(図9、図10参照)に移動させることができる。従って、穿刺後にストッパー170のみを抜き去って内針50をシールド20内に収納するのを忘れるという誤操作が発生する可能性はない。
【0061】
シールド20からストッパー170を引き抜くためには、図1において、ストッパー170の基部71を2本の指で上下方向(矢印H11の方向)又は水平方向(矢印H12の方向)に把持すればよい。従って、内針50及び外針30を穿刺する際に、上述した第1の把持方法(図1の矢印H11参照)又は第2の把持方法(図1の矢印H12参照)で留置針装置100を把持した場合には、その後、把持位置を変えることなくストッパー170を引き抜いて内針50をシールド20に収納することができる。このように、本実施形態1の留置針装置100は、一連の作業を迅速且つ効率よく行うことができるという付随的効果をも有している。
【0062】
また、本実施形態1では、ストッパー170をシールド20から取り除く(抜き去る)ためには、ハブ140を後退位置に移動させ、ハブ140の嵌合溝48aとシールド筒21の係止突起22とを嵌合させなければならない。換言すれば、ストッパー170を取り除くことができたことは、ハブ140が正しく後退位置に移動されたことを意味する。これに対して、上述した従来の留置針装置900では、ハブ940を後退位置に移動させなくてもストッパー970をシールド920から取り除く(抜き去る)ことができるので、ストッパー970をシールド920から取り除いた後に係止突起922と嵌合溝948aとの嵌合(図35参照)が不完全である場合が発生しうる。そのような場合には、内針950の一部が外針930内に挿入されたままであったり、内針950を外針930から再突出させてしまったりという誤操作が起こりうる。本実施形態1では、このような誤操作が発生する可能性がない。
【0063】
上記の例では、ハブ140が後退位置にあるときに係合片141と係合片171との係合を解除するために、係合片171が上方に移動することができるようにシールド筒21の後端に切り欠き23を形成した。しかしながら、本実施形態1では切り欠き23を省略することができる。切り欠き23を形成しなくても、ハブ140が後退位置にあるときに、例えば係合片141と係合片171との係合部分がシールド20外に露出するなど、係合片171を上方に移動することができるように構成することは可能である。
【0064】
係合片141及び係合片171の形状は、上記の例に限定されず、任意に変更することができる。例えば、上記の例では、ハブ140の係合面143及びストッパー170の係合面173は、いずれもXY面に略平行であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、図11に示すように、係合面143及び係合面173が傾斜していてもよい。図11の係合構造では、ハブ140が後退位置に到達した後、更にストッパー170に後ろ向きの力を印加すると、当該力によって係合面173が係合面143上を摺動しながら上方に移動するので、係合片141と係合片171との係合が解除される。このように、図11の係合構造では係合片141と係合片171との係合を解除するために上記の例のようにストッパー170を意識的に上方に移動させる操作が不要であるので、シールド20からストッパー170を抜き去る(取り除く)作業を連続的に行うことができる。また、当該作業においてストッパー170に後ろ向きに移動させる力によってシールド20や外針30に加えられる衝撃を低減することができる。なお、上述したように係合片171がシールド20内に存在している場合には、係合片171は係合片141に対して上方に移動することができないので、図11の係合構造でも、ハブ140が後退位置にあるとき以外に係合片141と係合片171との係合が解除されることはない。図11では、係合構造の構成の理解を容易にするために、ハブ140及びストッパ170の挿入部72の先端部分以外の図示を省略している。
【0065】
留置針装置100を組み立てるために、ハブ140をシールド筒21の後端からシールド筒21の内腔内に挿入し、初期位置に移動させる必要がある。この過程で、ハブ140の弾性片48の嵌合溝48aとシールド筒21の係止突起22とが嵌合し、ハブ140の移動が困難になるかもしれない。この嵌合は、シールド筒21の後端の開口から針状の部材を挿入して弾性片48を変位させる等により解除することができる。
【0066】
(実施形態2)
本実施形態2の留置針装置200は、ハブとストッパーとの係合構造に関して実施形態1の留置針装置100と異なる。以下の説明で参照する図面において、実施形態1の留置針装置100と同じ部材については同一の符号を付して、それらの説明を省略する。以下、実施形態1と異なる点を中心に本実施形態2の留置針装置200を説明する。
【0067】
図12は、ハブ240が初期位置にある、本実施形態2の留置針装置200の上方から見た斜視図である。図13は、図12の13−13線を含む垂直面(YZ面)に沿った留置針装置200の矢視断面図である。本実施形態2のシールド20は、その後端部分の形状に関して実施形態1のシールド20と異なる。図14は、留置針装置200を構成するシールド20の後端及びその近傍を示した部分拡大斜視図である。シールド筒21の後端には、実施形態1では1つの切り欠き23が形成されていたのに対して、本実施形態2では4つの切り欠き24が形成されている。X軸方向位置が同じである上下の切り欠き24が対をなし、この切り欠き24の対がシールド筒21の中心軸を含む垂直面に対して対称位置に配置されている。切り欠き24は、シールド筒21の後端から係止突起22まで達している。図14では、チューブ60の図示を省略している。シールド20の構成は、上記を除いて実施形態1と同じである。
【0068】
図15Aは、本実施形態2の留置針装置200に用いられるハブ240の前側から見た斜視図、図15Bはハブ240の後ろ側から見た斜視図、図15Cはハブ240の側面図である。本実施形態2のハブ240には、実施形態1の一対の係合片241に代えて一対の係合片241が形成されている。一対の係合片241は、後部42を挟み且つ後部42から離間して、水平方向(X軸方向)に対向して設けられている。
【0069】
係合片241は、側方(X軸と平行な方向)から見たとき、後方が開口した略U字形状を有し、その後端に、開口内に向かって突出した一対の係合突起242を備えている。係合突起242の後ろ側には、後ろ側にいくにしたがって係合片241の開口幅が広がるように傾斜した傾斜面244が形成されている。係合片241の外周面245は、嵌合溝48aの底面を構成する円筒面と同軸且つ同一半径の円筒面である。係合片241は、上下方向(Y軸方向)に対向する係合突起242の間隔が拡大するように弾性変形することができる。後部42を挟んで水平方向に対向する一対の係合片141は、鏡面対称の関係を有する。ハブ240の構成は、上記を除いて実施形態1のハブ140と同じである。
【0070】
図16Aは本実施形態2の留置針装置200に用いられるストッパー270の前側上方から見た斜視図、図16Bはストッパー270の挿入部72の前端部分を示した拡大側面図である。本実施形態2のストッパー270は、挿入部72の前端部分の形状に関して、実施形態1のストッパー170と異なる。本実施形態2では、挿入部72の前端に、水平方向(X軸方向)に対向した一対の係合片271が形成されている。各係合片271は、その前端から所定深さで形成されたZ軸と平行なスリット273により上下に二分割されている。係合片273の前端の、スリット273とは反対側の面には、スリット273とは反対側に突出した一対の係合突起272が形成されている。各係合突起272の前側には、前側にいくにしたがってスリット273に近づくように傾斜した傾斜面274が形成されており、各係合突起272の後ろ側には、後ろ側にいくにしたがってスリット273に近づくように傾斜した傾斜面276が形成されている。係合片271は、スリット273の上下方向(Y軸方向)の間隔が縮小するように弾性変形することができる。水平方向に対向する一対の係合片271は、鏡面対称の関係を有する。ストッパー270の構成は、上記を除いて実施形態1のストッパー170と同じである。
【0071】
ハブ240の係合片241とストッパー270の係合片271とは互いに係合させることができる。即ち、図17に示すように、ハブ240に対して、その後方からストッパー270を矢印A2の向きに前進させて、ハブ240の略U字形状を有する係合片241にストッパー270の係合片271を挿入することにより、係合片241と係合片271とを係合することができる。係合片241に係合片271を挿入する際、係合片241の傾斜面244(図15C参照)と係合片271の傾斜面274(図16B参照)とが当接し、係合片241が、その開口幅が広がるように上下方向(Y軸方向)に弾性変形し、且つ、係合片271が、スリット273の間隔が狭まるように上下方向(Y軸方向)に弾性変形する。
【0072】
図18は、係合状態にあるハブ240及びストッパー270の斜視図である。挿入部72の前端の一対の係合片242の間に、ハブ240の弾性片48が嵌入している。係合片241と係合片271との係合の解除は、上記の係合操作とは逆に、ハブ240及びストッパー270にZ軸方向に平行な互いに離す向きの引っ張り力を印加することによって解除することができる。引っ張り力を印加すると、係合片241の係合突起242が係合片271の傾斜面276(図16B参照)に当接し、傾斜面276上を摺動する。この際に、係合片241が、その開口幅が広がるように上下方向(Y軸方向)に弾性変形し、且つ、係合片271が、スリット273の間隔が狭まるように上下方向(Y軸方向)に弾性変形する。
【0073】
このように、係合片241及び係合片271は、ハブ240とストッパー270とを解除可能に係合させる係合構造を構成する。
【0074】
実施形態1と同様に、本実施形態2においても、図18に示したように係合片241と係合片271とを係合させた状態で、シールド筒21の後端から、内針50付きのハブ240及びストッパー270の挿入部72をシールド筒21の内腔内に挿入する。ストッパー270をシールド20内に可能なかぎり深く挿入すると、ハブ240の径大部45が外ハブ25の後端に衝突して、図12、図13に示されているように、ハブ240はシールド20の内腔内の初期位置に配置される。
【0075】
本実施形態2の留置針装置200は、ハブ240が初期位置に配置された状態で医療現場に提供される。留置針装置200の使用方法は、基本的に実施形態1の留置針装置100と同じである。
【0076】
即ち、実施形態1と同様に、ハブ240を初期位置に保持したまま内針50及び外針30を患者の血管に穿刺する。具体的には、作業者は、ストッパー270がシールド20に対して移動することがないように、実施形態1で説明した第1〜第4のいずれかの把持方法で留置針装置100を把持しながら穿刺する。
【0077】
内針50及び外針30を患者の血管内に穿刺した後、内針50を外針30から後退させてシールド20内に収納する。
【0078】
本実施形態2では、図18に示したように、ハブ240の係合片241とストッパー270の係合片271とが互いに係合している。従って、シールド20に対してストッパー270を後方に移動させれば、ストッパー270と一緒にハブ240及び内針50も後方に移動させることができる。上述したように、ハブ240及びストッパー270の間に引っ張り力を印加すれば、係合片241が、その開口幅が広がるように弾性変形することによって、係合片241と係合片271との係合が解除される。ところが、係合片241がこのような弾性変形をすることができるほどシールド筒21の内径は大きくはない。従って、係合片241がシールド20内に存在している限り、係合片241と係合片271との係合を解除することは困難である。
【0079】
従って、実施形態1と同様に、ハブ240はストッパー270と共に後ろ側に移動され後退位置に至る。
【0080】
図19は、ハブ240が後退位置にある留置針装置200においてハブ240及びその近傍部分を示した切り欠き斜視図である。図示されているように、シールド筒21の係止突起22がハブ240の嵌合溝48a内に嵌入している。従って、ハブ240は、シールド20に対して前側及び後ろ側のいずれにも移動することは実質的に困難である。一方、ストッパー270は、その係合片271がハブ240の係合片241と係合しているので、シールド20に対して前側に移動することは困難である。
【0081】
係合片241と上下方向(Y軸方向)に対向するシールド筒21の後端の位置に切り欠き24が形成されている。略U字形状の係合片241が、その開口幅が広がるように弾性変形したとき、係合片241は、その上下の切り欠き24内に嵌入することができる。従って、図19の状態においてストッパー270を後ろ向きに引っ張ると、係合片241が、その開口幅が広がるように弾性変形し、且つ、係合片271が、スリット273の間隔が狭まるように弾性変形することによって、係合片241と係合片271との係合を解除することができる。なお、図19では、ストッパー270の固定部73の図示を省略している。
【0082】
図20は、ハブ240が後退位置にあり、且つ、ストッパー270を後方に引き抜くことによりストッパー270が取り除かれた留置針装置200の上方から見た斜視図である。図21は、図20の21−21線を含む垂直面(YZ面)に沿った留置針装置200の矢視断面図である。図21に示されているように、図19と同様にハブ240の嵌合溝48aとシールド筒21の係止突起22とが嵌合している。また、ハブ240に保持された内針50は外針30から抜き去られ、シールド20の内腔内に収納されている。
【0083】
以上のように、本実施形態2によれば、ハブ240とストッパー270とを係合片241及び係合片271を介して係合させることができる。従って、係合片241と係合片271とを係合させた状態でハブ240をシールド20内に初期位置にまで押し込んでおけば、その後、ハブ240を後退位置に移動させるためには、ストッパー270をシールド20から引き抜けばよい。ハブ240が後退位置に到達するまでは、係合片241と係合片271との係合を解除することは困難である。ハブ20が後退位置に到達すると、ストッパー270を後方にやや強く引っ張って係合片241と係合片271との係合を解除することによりストッパー270を取り除くことができる。
【0084】
即ち、本実施形態2では、従来の留置針装置900と異なり、シールド20からストッパー270を引き抜く操作を行えば、これと同時にハブ240を後退位置(図20、図21参照)に移動させることができる。従って、穿刺後にストッパー270のみを抜き去って内針50をシールド20内に収納するのを忘れるという誤操作が発生する可能性はない。
【0085】
また、実施形態1で説明したように、内針50及び外針30を穿刺する際に、第1の把持方法(図1の矢印H11参照)又は第2の把持方法(図1の矢印H12参照)で留置針装置200を把持した場合には、その後、把持位置を変えることなくストッパー270を引き抜いて内針50をシールド20に収納することができる。従って、実施形態1の留置針装置100と同様に、本実施形態2の留置針装置200も、一連の作業を迅速且つ効率よく行うことができるという付随的効果をも有している。
【0086】
また、実施形態1と同様に、本実施形態2でも、ストッパー270をシールド20から取り除く(抜き去る)ためには、ハブ240を後退位置に移動させ、ハブ240の嵌合溝48aとシールド筒21の係止突起22とを嵌合させなければならない。換言すれば、ストッパー270を取り除くことができたことは、ハブ240が正しく後退位置に移動されたことを意味する。従って、ストッパー270をシールド20から取り除いた後に、内針50の一部が外針30内に挿入されたままであったり、内針50を外針30から再突出させてしまったりという誤操作が発生する可能性がない。
【0087】
上記の例では、ハブ240が後退位置にあるときに係合片241と係合片271との係合を解除するために、略U字形状の係合片241が、その開口幅が広がるように弾性変形することができるようにシールド筒21の後端に切り欠き24を形成した。しかしながら、本実施形態2では切り欠き24を省略することができる。切り欠き24を形成しなくても、ハブ240が後退位置にあるときに、例えば係合片241と係合片271との係合部分がシールド20外に露出するなど、略U字形状の係合片241が、その開口幅が広がるように弾性変形することができるように構成することは可能である。また、上記の例では、シールド筒21の後端に4つの切り欠き24を形成したが、例えば、実施形態1の切り欠き23と同様の広幅の(X軸方向寸法が大きい)切り欠きを、シールド筒21の後端の上側壁及び下側壁に各1つずつ形成してもよい。
【0088】
係合片241及び係合片271の形状は、上記の例に限定されず、任意に変更することができる。例えば、係合片271に形成されていたスリット273(図16A、図16B参照)を、図22に示すように省略してもよい。この場合、係合片241と係合片271との係合及びその解除を行う際には、略U字形状を有する係合片241のみが弾性変形する。従って、ハブ240が後退位置以外にあるときに係合片241と係合片271との係合が意図せずに解除されてしまうという誤動作の可能性を低減することができる。また、図22に示すように、係合片241の係合突起242の前側に、前側にいくにしたがって係合片241の開口幅が広がるように傾斜した傾斜面246が形成されていてもよい。また、係合片241と係合片271との係合及びその解除を行うことができるのであれば、傾斜面244,246,274,276のうちの少なくとも1つを省略したり、曲面等の任意形状の面で形成したりしてもよい。図22では、係合構造の構成の理解を容易にするために、ハブ240及びストッパ270の挿入部72の先端部分以外の図示を省略している。
【0089】
上記の例では、ハブ240とストッパー270とを係合させる係合構造として、ハブ240に略U字形状を有する係合片241を設け、ストッパー270に係合片241に挿入される略T字形状を有する係合片271を設けたが、これとは逆に、ストッパー270に係合片241と同様の略U字形状を有する係合片を設け、ハブ240にストッパー270の係合片に挿入可能な、係合片271と同様の略T字形状を有する係合片を設けてもよい。
【0090】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。
【0091】
(実施形態3)
本実施形態3の留置針装置300は、ハブとストッパーとの係合構造に関して実施形態1の留置針装置100と異なる。以下の説明で参照する図面において、実施形態1の留置針装置100と同じ部材については同一の符号を付して、それらの説明を省略する。以下、実施形態1と異なる点を中心に本実施形態3の留置針装置300を説明する。
【0092】
図23は、ハブ340が初期位置にある、本実施形態3の留置針装置300の上方から見た斜視図である。図24は、図23の24−24線を含む垂直面(YZ面)に沿った留置針装置300の矢視断面図である。本実施形態3のシールド20の後端部分には、実施形態1シールド20に形成されていた切り欠き23や実施形態2シールド20に形成されていた切り欠き24が形成されていない。シールド20の構成は、上記を除いて実施形態1と同じである。
【0093】
図25Aは、本実施形態3の留置針装置300に用いられるハブ340の前側から見た斜視図、図25Bはハブ340の後ろ側から見た斜視図である。本実施形態3のハブ340には、実施形態1の一対の係合片241に代えて一対の係合片341が形成されている。一対の係合片341は、後部42を挟み且つ後部42から離間して、水平方向(X軸方向)に対向して設けられている。
【0094】
係合片341は、側方(X軸と平行な方向)から見たとき、実施形態1の係合片141と同様に、略鉤形状(略L字形状)を有し、その後端に係合突起342を備えている。図25Bに示されているように、Z軸方向と平行に後方からハブ340を見たとき、係合突起342は反時計回り方向に向かって突出している。係合突起342の前部41側の面は、Z軸に対して直交する面(即ち、XY面)に略平行な係合面343である。係合片341の外周面345は、嵌合溝48aの底面を構成する円筒面と同軸且つ同一半径の円筒面である。一対の係合片341は、回転対称の関係を有する。ハブ340の構成は、上記を除いて実施形態1のハブ140と同じである。
【0095】
図26Aは本実施形態3の留置針装置300に用いられるストッパー370の前側上方から見た斜視図、図26Bはストッパー370の後ろ側下方から見た斜視図である。本実施形態3のストッパー370は、挿入部72の前端部分の形状に関して、実施形態1のストッパー170と異なる。本実施形態3では、挿入部72の前端に、水平方向(X軸方向)に対向した一対の係合片371が形成されている。係合片371は、側方(X軸と平行な方向)から見たとき、実施形態1の係合片171と同様に、略鉤形状(略L字形状)を有し、その前端に係合突起372を備えている。図26Bに示されているように、Z軸方向と平行に後方からストッパー370を見たとき、係合突起372は時計回り方向に向かって突出している。係合突起372の基部71側の面は、XY面に略平行な係合面373である。一対の係合片371は、回転対称の関係を有する。ストッパー370の構成は、上記を除いて実施形態1のストッパー170と同じである。
【0096】
ハブ340の係合片341とストッパー370の係合片371とは互いに係合させることができる。即ち、図27に示すように、ハブ340に対して、その後方からストッパー370を矢印A31の向きに前進させて、ストッパー370の一対の係合片371の間にハブ340の後部42を挿入し、次いで、矢印A32の向き(後方から見て時計回り方向)にストッパー370をわずかに回転させる。これにより、ハブ340の係合片341にストッパー370の係合片371を嵌め合わせることにより、係合片341と係合片371とを係合することができる。
【0097】
図28は、係合状態にあるハブ340及びストッパー370の斜視図である。係合片341の係合面343(図25A参照)と係合片371の係合面373(図26B参照)とが当接している。挿入部72の前端の一対の係合片342の間に、ハブ340の弾性片48が嵌入している。図28のように係合片341と係合片371とが互いに係合しているときに、ハブ340及びストッパー370にZ軸方向に平行な互いに離す向きの引っ張り力を印加しても、ハブ340及びストッパー370を分離することはできない。係合片341と係合片371との係合の解除は、上記の係合操作とは逆に、最初にハブ340に対してストッパー370を矢印A32(図27参照)とは逆向き(後方から見て反時計回り方向)にわずかに回転させて、次いで、ストッパー370を後方に移動させることにより可能である。
【0098】
このように、係合片341及び係合片371は、ハブ340とストッパー370とを解除可能に係合させる係合構造を構成する。
【0099】
実施形態1と同様に、本実施形態3においても、図28に示したように係合片341と係合片371とを係合させた状態で、シールド筒21の後端から、内針50付きのハブ340及びストッパー370の挿入部72をシールド筒21の内腔内に挿入する。ストッパー370をシールド20内に可能なかぎり深く挿入すると、ハブ340の径大部45が外ハブ25の後端に衝突して、図23、図24に示されているように、ハブ340はシールド20の内腔内の初期位置に配置される。
【0100】
本実施形態3の留置針装置300は、ハブ340が初期位置に配置された状態で医療現場に提供される。留置針装置300の使用方法は、基本的に実施形態1の留置針装置100と同じである。
【0101】
即ち、実施形態1と同様に、ハブ340を初期位置に保持したまま内針50及び外針30を患者の血管に穿刺する。具体的には、作業者は、ストッパー370がシールド20に対して移動することがないように、実施形態1で説明した第1〜第4のいずれかの把持方法で留置針装置100を把持しながら穿刺する。
【0102】
内針50及び外針30を患者の血管内に穿刺した後、内針50を外針30から後退させてシールド20内に収納する。
【0103】
本実施形態3では、図28に示したように、ハブ340の係合片341とストッパー370の係合片371とが互いに係合している。従って、シールド20に対してストッパー370を後方に移動させれば、ストッパー370と一緒にハブ340及び内針50も後方に移動させることができる。上述したように、ハブ340に対してストッパー370を後方から見て反時計回り方向に回転させれば、係合片341と係合片371との係合が解除される。従って、ストッパー370を回転させることなく後方に並進移動することが好ましい。図23から容易に理解できるように、ストッパー370の一対の固定部73と翼29a,29bとは、ストッパー370のシールド20に対する回転を制限するのに役立つ。
【0104】
かくして、実施形態1と同様に、ハブ340はストッパー370と共に後ろ側に移動され後退位置に至る。
【0105】
図29は、ハブ340が後退位置にある留置針装置300においてハブ340及びその近傍部分を示した切り欠き斜視図である。図示されているように、シールド筒21の係止突起22がハブ340の嵌合溝48a内に嵌入している。従って、ハブ240は、シールド20に対して前側及び後ろ側のいずれにも移動することは実質的に困難である。更に、ストッパー370も、その係合片371がハブ340の係合片341と係合しているので、シールド20に対して前側及び後ろ側のいずれにも移動することは困難である。
【0106】
弾性片48の弾性力が係止突起22を押圧していること、及び、Oリング49がシールド筒21の内周面に密着していることから、ハブ340をシールド筒21に対して回転させるには相対的に大きな力が必要である。従って、シールド20に対してストッパー370を後方から見て反時計回り方向(図29の矢印A33の向き)に回転させると、ハブ240は回転せず、その結果、係合片341と係合片371との係合を解除することができる。その後、ストッパー370を後方に引っ張れば、ストッパー370をシールド20から引き抜く(取り除く)ことができる。なお、図29では、ストッパー370の固定部73の図示を省略している。
【0107】
図30は、ハブ340が後退位置にあり、且つ、ストッパー370が取り除かれた留置針装置300の上方から見た斜視図である。図31は、図30の31−31線を含む垂直面(YZ面)に沿った留置針装置300の矢視断面図である。図31に示されているように、図29と同様にハブ340の嵌合溝48aとシールド筒21の係止突起22とが嵌合している。また、ハブ340に保持された内針50は外針30から抜き去られ、シールド20の内腔内に収納されている。
【0108】
以上のように、本実施形態3によれば、ハブ340とストッパー370とを係合片341及び係合片371を介して係合させることができる。従って、係合片341と係合片371とを係合させた状態でハブ340をシールド20内に初期位置にまで押し込んでおけば、その後、ハブ340を後退位置に移動させるためには、ストッパー370をシールド20から引き抜けばよい。ハブ340が後退位置に到達するまでに係合片341と係合片371との係合が解除される可能性は低い。ハブ20が後退位置に到達すると、ストッパー370をわずかに回転させて係合片341と係合片371との係合を解除し、その後、ストパー370を後方に引くことによりストッパー370を取り除くことができる。
【0109】
即ち、本実施形態3では、従来の留置針装置900と異なり、シールド20からストッパー370を引き抜く操作を行えば、これと同時にハブ340を後退位置(図30、図31参照)に移動させることができる。従って、穿刺後にストッパー370のみを抜き去って内針50をシールド20内に収納するのを忘れるという誤操作が発生する可能性は低い。
【0110】
また、実施形態1で説明したように、内針50及び外針30を穿刺する際に、第1の把持方法(図1の矢印H11参照)又は第2の把持方法(図1の矢印H12参照)で留置針装置300を把持した場合には、その後、把持位置を変えることなくストッパー370を引き抜いて内針50をシールド20に収納することができる。従って、実施形態1の留置針装置100と同様に、本実施形態3の留置針装置300も、一連の作業を迅速且つ効率よく行うことができるという付随的効果をも有している。
【0111】
上記の例では、後方から見てハブ340に対してストッパー370を時計回り方向に回転させた場合にはハブ340とストッパー370とが係合し、反時計回り方向に回転させた場合にはハブ340とストッパー370との係合が解除されたが、係合及び係合の解除のためのストッパー370の回転方向を上記の例と逆に設定することができる。
【0112】
ストッパー370を回転させたときハブ340がストッパー370と一緒に回転するのを防止するための構造を設けてもよい。例えば、後退位置にあるハブ340がシールド20に対して回転できないような構造を設けることができる。この構成によれば、後退位置において、ストッパー370を回転させることによりハブ340とストッパー370との係合の解除を確実に行うことができる。あるいは、初期位置と後退位置との間にあるハブ340がシールド20に対して回転できないような構造を設けることもできる。これにより、ハブ340が初期位置から後退位置に移動する過程で、ハブ340とストッパー370との係合が意図せずに解除される可能性を低減することができる。ハブ340のシールド20に対する回転を防止するための構造としては、特に制限はないが、ハブ340の外周面とシールド20の内周面とに設けた互いに係合し合う形状(例えば凹凸形状等)を例示できる。
【0113】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じである。
【0114】
上記の実施形態1〜3は例示であって、本発明は上記の実施形態1〜3に限定されず、適宜変更することができる。
【0115】
ストッパーの構成は上記の実施形態に示したものに限定されない。例えば、一対の固定部73を省略してもよい。
【0116】
ハブの構成も上記の実施形態に示したものに限定されない。例えば、横貫路47を省略してもよい。
【0117】
後退位置にあるハブとシールドとの嵌合構造は、上記以外の構成を有していてもよい。上記の実施形態では、後退位置にあるハブは前方及び後方のいずれにも移動することができなかったが、例えば前方及び後方のうちの一方又は両方に移動可能であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の利用分野は特に制限はなく、輸液、輸血、体外血液循環などの処置を行う際の留置針装置として広範囲に利用することができる。中でも、血液透析用の留置針装置として好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0119】
100,200,300 留置針装置
20 シールド
21 シールド筒
25 外ハブ
30 外針
140,240,340 ハブ
141,241,341 係合片(ハブ側の係合構造)
50 内針
60 チューブ
71 基部
72 挿入部
73 固定部
170,270,370 ストッパー
171,271,371 係合片(ストッパー側の係合構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内腔を有するシールドと、
前記シールドの前端に固定された軟質の外針と、
前記シールドの前記内腔内に配置され、前記シールドの長手方向に移動可能なハブと、
前記ハブの前端に固定された硬質の内針と、
前記ハブの後端に接続されたチューブと、
前記シールドの前記内腔に、前記シールドの後端から挿抜されるストッパーとを備え、
前記ハブが前記シールドの前記内腔の前端側に位置し且つ前記内針が前記外針を貫通して前記外針の先端から突出する初期位置と、前記ハブが前記シールドの前記内腔の後端側に位置し且つ前記内針が前記シールドの前記内腔内に収納される後退位置とに前記ハブが変位する留置針装置であって、
前記ストッパーは、前記シールドの前記内腔内に挿入される挿入部と、前記挿入部の後端に設けられた基部とを備え、
前記ハブ及び前記挿入部には、互いに解除可能に係合する係合構造が設けられていることを特徴とする留置針装置。
【請求項2】
前記ハブに対して前記シールドの長手方向とは異なる方向に前記ストッパーを移動させることにより、前記係合構造の係合を解除することができる請求項1に記載の留置針装置。
【請求項3】
前記ハブに対して前記シールドの長手方向と平行な方向に前記ストッパーを移動させることにより、前記係合構造の係合を解除することができる請求項1に記載の留置針装置。
【請求項4】
前記ハブに対して前記ストッパーを回転させることにより、前記係合構造の係合を解除することができる請求項1に記載の留置針装置。
【請求項5】
前記ハブが前記後退位置にあるときを除いて、前記係合構造の係合を解除することができない請求項1〜3のいずれかに記載の留置針装置。
【請求項6】
前記係合構造が、前記ハブ及び前記挿入部にそれぞれ設けられた略L字形状を有する係合片を含む請求項1,2,又は4に記載の留置針装置。
【請求項7】
前記係合構造が、前記ハブ及び前記挿入部のうちの一方に設けられた略U字形状を有する第1係合片と、他方に設けられた、前記略U字形状を有する第1係合片に挿入可能な第2係合片とを含む請求項1又は3に記載の留置針装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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