異型長尺成形体の熱処理方法
【課題】 本発明は、長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体の成形体に残存する応力を緩和する熱処理方法を提供する。
【解決手段】 長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体を、該異型長尺成形体の断面形状と略同一の異型長尺成形体通路を有する加熱金型の異型長尺成形体通路を通過させて、異型長尺成形体をアニールする熱処理方法であって、異型長尺成形体通路において異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱し、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱することを特徴とする異型長尺成形体の熱処理方法。
【解決手段】 長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体を、該異型長尺成形体の断面形状と略同一の異型長尺成形体通路を有する加熱金型の異型長尺成形体通路を通過させて、異型長尺成形体をアニールする熱処理方法であって、異型長尺成形体通路において異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱し、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱することを特徴とする異型長尺成形体の熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異型長尺成形体の熱処理方法、特に雨樋のような異型長尺成形体を長尺熱可塑性樹脂シートを加熱異型成形により成形する際に、異型長尺成形体に残存する応力を緩和する熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は耐水性、難燃性、機械的特性等が優れ、且つ価格が比較的安価であるので、雨樋等の建築部材の材料として広く使用されている。塩化ビニル系樹脂成形体の線膨張係数は7.0×10-5(1/℃)と大きいので、硬質塩化ビニル系樹脂製雨樋を設置する際には、雨樋の伸縮を吸収しうる継手で接続したり、端部をフリーにしたりする必要があったが、施工される雨樋全体の長さが長くなると、継手や落とし口が多くなり、外観が悪いという欠点があった。
【0003】
そのため、線膨張係数の低い雨樋の検討が種々なされている。例えば、例えば、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、該熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−20℃〜該熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度+20℃の温度の一対のロール間を通して引抜き延伸した後、該ロールの温度より高い温度で一軸延伸して得られた、線膨張率が−1.5×10-5以上0未満であり、引張弾性率が8〜15GPaの熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの両面に熱可塑性樹脂層が積層されていることを特徴とする積層成形体(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開2006−306012号公報
【0004】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂シート及び熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの両面に熱可塑性樹脂層が溶融押出被覆された積層成形体は線膨張係数が低く、耐水性、難燃性、機械的特性等が優れているので、雨樋等の建築部材の材料として好適である。しかし、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂シート又は積層成形体から雨樋等の建築部材を成形する際にはその形状に異型成形する必要がある。雨樋のような長尺の異型成形体を成形するには、熱可塑性ポリエステル系樹脂シート又は積層成形体の変形する位置のみを変形可能に加熱し屈曲して異型成形するのが好ましいが、この成形方法では得られた異型成形体中に加熱された部分と加熱されていない部分が共存することになり、残存応力が残り、経時により変形するという欠点があった。そのため、一般に、成形後長時間比較的低温で保持するというアニールが行われていたが、比較的低温で保持するというアニールでは長時間がかかり、異型成形するインラインで短時間でアニールすることが望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記欠点に鑑み、長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体の成形体に残存する応力を緩和する熱処理方法、特に、インラインで容易に成形体に残存する応力を緩和する熱処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異型長尺成形体の熱処理方法は、長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体を、該異型長尺成形体の断面形状と略同一の異型長尺成形体通路を有する加熱金型の異型長尺成形体通路を通過させて、異型長尺成形体をアニールする熱処理方法であって、異型長尺成形体通路において異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱し、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱することを特徴とする。
【0007】
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、延伸可能な任意の熱可塑性樹脂が使用可能であり、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂等が挙げられるが、線膨張係数が小さく、軽量で、耐衝撃性、耐久性等に優れた熱可塑性ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0008】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリ(L−乳酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリレート)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート/乳酸、ポリブチレンサクシネート/カーボネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレナジペート/テレフタレート、ポリブチレンサクシネート/アジペート/テレフタレート等が挙げられ、耐熱性の優れたポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0009】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度は、低すぎるとシート作成時にドローダウンを起こしやすく、高すぎると、延伸しても機械的強度(特に弾性率)が上昇しないので、0.6〜1.0が好ましい。
【0010】
本発明で使用される熱可塑性樹脂シートは長さ方向に一軸延伸されているが、その製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の任意に一軸延伸方法が採用されればよい。延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法も特に限定されるものではないが、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、該熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度±20℃の温度で引抜延伸した後、引抜延伸温度より高い温度で総延伸倍率が3〜8倍に一軸延伸されるのが好ましい。
【0011】
熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚みは特に限定されないが、0.1mm未満では、延伸後のシート厚みが薄くなりすぎ、取扱いに際しての強度が十分な大きさとならないことがあり、5mmを超えると延伸が困難となることがあるので0.1〜5mmが好ましい。
【0012】
非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度は特に限定されるものではないが、示差走査熱量計で測定した結晶化度が10%未満あることが好ましく、より好ましくは5%未満である。
【0013】
上記非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの引抜延伸する方法は、特に限定されず所定のクリアランスを有する引抜金型を通して引抜延伸してもよいが、一対のロール間を通して引抜延伸するのが、延伸後の厚みを自由にコントロールでき、又、引抜金型の特定部位の磨耗が生じることがないので好ましい。
【0014】
引抜延伸する際の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度は、特に限定されるものではないが、ガラス転移温度付近の温度に予熱されているのが好ましい。予熱温度は、低すぎても高すぎても熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが所定の温度にならないことがあるので、熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−20℃〜熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度+10℃の温度が好ましい。
【0015】
上記引抜延伸する際の温度は、低温であると熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが硬すぎて、引抜こうとしても先に切断されてしまうことがあり、切断されなくてもシートにボイドができて白化してしまうなどの問題があり、逆に、高温になると熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが柔らかくなりシートを引抜く張力によりシートが切断されるので、熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度±20℃の温度範囲であり、好ましくは熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度〜熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度+10℃の温度範囲である。
【0016】
又、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜く際に、ロールは回転している必要はないが、特に熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚みが厚い場合には、せん断発熱によるロールの蓄熱に起因するシートの温度上昇が生じやすいため、引抜方向に回転させるのが好ましい。
【0017】
ロールの回転速度が遅いと、ロールと熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの接触時間が長くなり、摩擦熱が発生し、ロール温度が上昇して、加熱された熱可塑性ポリエステル系樹脂を冷却する効果が低下し、所定の引抜延伸温度を超えてしまい、逆にロールの回転速度が早くなると、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの表面の熱可塑性ポリエステル系樹脂のみが流動し、均一に引抜延伸できなくなり、得られた引抜延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの弾性率が低下する。従って、ロールの回転速度は熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを同一条件の引抜速度でロールが回転していない状態で引き抜いた際の送り速度と実質的に同一又はそれ以下の速度が好ましい。
【0018】
又、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さが厚い(1.5mm以上)場合は、ロールとシートとのせん断による発熱が大きくなるため、ロールの回転速度は上記送り速度の50〜100%が好ましい。また、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さが薄い場合は、ロールによる冷却効果が大きいのでロールの回転速度は遅くてもよい。
【0019】
上記引抜延伸の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、引張強度、引張弾性率に優れたシートが得られず、高くなると延伸時にシートの破断が生じやすくなるので、2〜9倍が好ましく、より好ましくは2.5〜7倍である。
【0020】
引抜延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜延伸の温度より高い温度で一軸延伸する。引抜延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂シートのポリエステル系樹脂は、延伸の阻害要因となる熱による等方的な結晶化及び配向が抑えられた状態で分子鎖は高度に配向しているので強度及び弾性率が優れているが結晶化度は低いので、加熱されると配向は容易に緩和され弾性率は低下してしまうという欠点を有している。しかし、この引抜延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、該引抜延伸の温度より高い温度で一軸延伸することにより配向が緩和されることなく結晶化度が上昇し、加熱されても配向が容易に緩和されない耐熱性の優れた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが得られる。
【0021】
上記一軸延伸する方法としてはロール延伸法が好適に用いられる。ロール延伸法とは、速度の異なる2対のロール間に延伸原反を挟み、延伸原反を加熱しつつ引っ張る方法であり、一軸方向のみに強く分子配向させることができる。
【0022】
上記一軸延伸する際の温度は、引抜延伸の温度より高い温度であればよいが、高すぎると一次延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが溶融して切断されるので、昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度〜融解ピークの立ち上がり温度の温度範囲が好ましい。尚、ポリエチレンテレフタレートの結晶化ピークの立ち上がり温度は約120℃であり、融解ピークの立ち上がり温度は約230℃である。従って、ポリエチレンテレフタレートシートを一軸延伸する際は約120℃〜約230℃で一軸延伸するのが好ましい。
【0023】
上記一軸延伸の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、引張強度、引張弾性係数等の優れたシートが得られず、高くなると延伸時にシートの破断が生じやすくなるので、1.05〜3倍が好ましく、さらに好ましくは1.1〜2倍である。又、引抜延伸倍率と一軸延伸倍率の積である総延伸倍率は、小さすぎても大きすぎても線膨張係数の絶対値が大きくなるので2.5〜10倍が好ましく、より好ましくは3〜8倍である。
【0024】
本発明においては、耐熱性を向上させるために一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一軸延伸温度より高い温度で熱固定するのが好ましい。
【0025】
熱固定温度は、昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度より低いと熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化が進まないので耐熱性が向上せず、融解ピークの立ち上がり温度より高いと熱可塑性ポリエステル系樹脂が溶解して延伸(配向)が消滅し引張弾性率、引張強度等が低下し、一軸延伸温度より30℃以上高くなると、一軸延伸温度で結晶化した結晶の配向が緩和されるので、昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度〜融解ピークの立ち上がり温度であって、一軸延伸温度より30℃以上高くない温度が好ましい。
【0026】
又、熱固定する際に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに大きな張力がかかっていると延伸され、張力がかかっていないか、非常に小さい状態では収縮するので、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの延伸方向の長さが実質的に変化しないようにした状態で行うことが好ましく、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに圧力もかかっていないのが好ましい。
【0027】
即ち、熱固定された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さが、熱固定前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さの0.95〜1.1で、一軸延伸倍率より低い倍率になるように熱固定するのが好ましい。従って、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートをピンチロール等のロールで加熱室内を移動しながら連続的に熱固定する場合は、入口側と出口側の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの送り速度比を0.95〜1.1になるように設定して熱固定するのが好ましい。
【0028】
熱固定する際の加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風、ヒーター等で加熱する方法があげられる。熱固定する時間は、特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さや熱固定温度により異なるが、一般に10秒〜10分が好ましい。
【0029】
更に、上記熱固定された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、ガラス転移温度〜昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度の範囲で、実質的に張力がかからない状態でアニールするのが好ましい。アニールすることにより、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは弾性率等の力学的物性が良好であって、ガラス転移温度以上の温度に加熱されても弾性率等の力学的物性が低下することがなく、且つ、収縮率を低く抑えることができる。
【0030】
又、アニールする際に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに大きな張力がかかっていると延伸されるので、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに実質的に張力がかからない状態でアニールするのが好ましい。即ち、アニールされた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さが、アニール前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さの1.0以下になるようにアニールするのが好ましい。
【0031】
従って、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートをピンチロール等のロールで加熱室内を移動しながら連続的にアニールする場合は、入口側と出口側の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの送り速度比を1.0以下になるように設定してアニールするのが好ましい。
【0032】
アニールする際の加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風、ヒーター等で加熱する方法があげられる。アニールする時間は、特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さやアニール温度により異なるが、一般に10秒以上が好ましく、より好ましくは30秒〜60分であり、更に好ましくは1〜20分である。
【0033】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが衝撃により延伸方向に沿って割れや亀裂が発生しないように保護すると共に、ポリエステル系樹脂が直接雨水や太陽光線に曝されて加水分解や劣化を受け耐久性が低下することを防ぐために、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに熱可塑性樹脂や塗料を積層してもよい。しかし、熱可塑性樹脂や塗料を積層すると、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの線膨張係数の絶対値が上昇するので、0.1〜3mm程度の薄い層にするのが好ましい。
【0034】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、硬質塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、スチレン樹脂、AS樹脂、メチルメタクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。又、塗料としては、フッ素系塗料、アクリルシリコン系塗料、ウレタン系塗料等が挙げられる。
【0035】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに熱可塑性樹脂層を積層する方法は、特に限定されず、従来公知の任意の積層方法が採用されてよく、例えば、熱可塑性樹脂を溶融押出被覆する方法、接着剤で接着する方法等が挙げられる。
【0036】
上記異型長尺成形体は、一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体である。長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し賦形する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、所定形状のスリットが形成されている複数のプレートのスリットを通過させて長尺熱可塑性樹脂シートを賦形する方法があげられ、この方法においてはプレートのスリット形状は上流から下流方向に行くに従って、平面形状から次第に異型長尺成形体の断面形状になされていればよい。上記プレートはプレートに形成されたスリットを通過させて長尺熱可塑性樹脂シートを賦形するのであるから鉄製のブロックからなるプレートが好ましい。
【0037】
プレートのスリット形状が上流から下流方向に行くに従って、平面形状から次第に異型長尺成形体の断面形状になされている。即ち、一つのプレート(のスリット)を通過するたびに長尺熱可塑性樹脂シートは少しずつ変形され、最後のプレート(のスリット)を通過した際に、製造すべき異型長尺成形体の形状になるように設定されている。プレートの数は特に限定されるものではなく、製造すべき異型長尺成形体の形状が複雑になれば多くのプレートが必要になるが、一般に5〜20個が好ましい。
【0038】
上記賦形方法においては、長尺熱可塑性樹脂シートの変形する位置のみを変形可能に加熱する。言い換えると、プレートのスリットを通過させることにより、スリットの形状に沿うように賦形するのであり、賦形する位置のみを変形可能に加熱する。加熱方法は特に限定されず、従来公知の任意の加熱方法が使用でき、例えば、長尺熱可塑性樹脂シートの賦形する位置のみのノズルから熱風を吹付ける方法、長尺熱可塑性樹脂シートの賦形する位置のみに接触するようになされた加熱ロールを長尺熱可塑性樹脂シートに押し付ける方法等が挙げられる。尚、上記加熱は加熱槽内で長尺熱可塑性樹脂シート全体を適度に加熱しながら行ってもよい。
【0039】
次に、長尺熱可塑性樹脂シートをプレート(のスリット)を通過させてスリットの形状に沿うように賦形する。尚、長尺熱可塑性樹脂シートは長さ方向に一軸延伸されているので、加熱及び賦形する際に、熱収縮しないようにバックテンションをかけてもよい。バックテンションの強度は、長尺熱可塑性樹脂シートが延伸したり収縮しないように設定すればよい。バックテンションの方法は特に限定されず、例えば、パウダーブレーキ、エアーシャフト、3連ロール等で抵抗負荷をかける方法が挙げられる。尚、製造すべき異型長尺成形体の断面形状が複雑な場合や賦形する形状の角度が大きい場合は、長尺熱可塑性樹脂シートがスリットのクリアランス内の壁面で抵抗を受けて熱収縮が制御されるのでバックテンションをかける必要はない。
【0040】
又、異なる長尺熱可塑性樹脂シートの賦形方法として、長尺熱可塑性樹脂シートの変形する位置のみを変形可能に加熱し、長尺熱可塑性樹脂シートにバックテンションをかけながら、長尺熱可塑性樹脂シートの変形する位置をフォーミングロールで押圧して賦形する賦形方法があげられる。
【0041】
この賦形方法は、上記賦形方法におけるプレートに代えてフォーミングロールで、長尺熱可塑性樹脂シートの変形可能に加熱された位置を押圧して賦形する方法である。尚、長尺熱可塑性樹脂シートは長さ方向に一軸延伸されているので、加熱及びフォーミングロールで押圧して賦形する際に、熱収縮しないようにバックテンションをかける必要がある。バックテンションの強度は、長尺熱可塑性樹脂シートが延伸したり収縮しないように設定すればよい。バックテンションの方法は特に限定されず、例えば、パウダーブレ−キ、エアーシャフト、3連ロ−ル等で抵抗負荷をかける方法が挙げられる。
【0042】
本発明においては、賦形された異型長尺成形体を、該異型長尺成形体の断面形状と略同一の異型長尺成形体通路を有する加熱金型の異型長尺成形体通路を通過させて、異型長尺成形体をアニールする。異型長尺成形体を加熱金型の異型長尺成形体通路を通過させる際に、異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱し、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱する。
【0043】
異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、加熱金型として、異型長尺成形体通路の周囲に複数のヒータが、異型長尺成形体の変形した部分が通過する位置からの距離が変形しなかった部分が通過する位置からの距離より遠い位置に埋設されている加熱金型を使用する方法があげられる。
【0044】
上記加熱金型においては、複数のヒータが埋設されており、異型長尺成形体の変形した部分が通過する位置からヒータまでの距離は異型長尺成形体の変形しなかった部分が通過する位置からのヒータまでの距離より遠くなされているので、異型長尺成形体が異型長尺成形体通路を通過する際に異型長尺成形体の変形しなかった部分には異型長尺成形体の変形した部分より多量の熱量が付加される。従って、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱することができる。
【0045】
又、異型長尺成形体通路の周囲に複数のヒータが埋設されている加熱金型において、異型長尺成形体の変形した部分が通過する位置近傍のヒータの温度を異型長尺成形体の変形しなかった部分が通過する位置近傍のヒータの温度より低く設定してもよい。
【0046】
更に、異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱する方法として、異型長尺成形体の変形した部分が通過する異型長尺成形体通路の幅より、変形しなかった部分が通過する異型長尺成形体通路の幅が狭くなされた加熱金型を使用し、異型長尺成形体の変形した部分は異型長尺成形体通路側壁に接触せずに通過させ、異型長尺成形体の変形しなかった部分を異型長尺成形体通路側壁に接触しながら通過させる方法があげられる。
【0047】
上記方法においては、異型長尺成形体の変形しなかった部分は異型長尺成形体通路側壁に接触しながら通過するのに対し、異型長尺成形体の変形した部分は異型長尺成形体通路側壁に接触せずに通過するので、異型長尺成形体が異型長尺成形体通路を通過する際に異型長尺成形体の変形しなかった部分には異型長尺成形体の変形した部分より多量の熱量が付加される。従って、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱することができる。
【0048】
上記加熱金型は、特に限定されるものではなく、例えば、異型長尺成形体の変形しなかった部分は異型長尺成形体通路側壁に接触しながら通過し、異型長尺成形体の変形した部分は異型長尺成形体通路側壁に接触せずに通過するように、異型長尺成形体の変形しなかった部分通過する異型長尺成形体通路の幅を狭くし、異型長尺成形体の変形した部分通過する異型長尺成形体通路の幅を広くした異型長尺成形体通路を有する加熱金型、一定幅の異型長尺成形体通路を有し、異型長尺成形体の変形しなかった部分が通過する部分の金型を移動金型で形成し、移動金型を移動することにより異型長尺成形体通路を狭くして、異型長尺成形体の変形しなかった部分が異型長尺成形体通路側壁に接触しながら通過し、異型長尺成形体の変形した部分は異型長尺成形体通路側壁に接触せずに通過するようにした加熱金型等があげられる。
【0049】
又、異形長尺成形体の表面温度は異型長尺成形体をアニールするのであるから、異型長尺成形体を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度〜昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度の範囲が好ましい。加熱時間は合計熱量が同一になるように、熱可塑性樹脂の種類や加熱温度により任意に設定する。
【発明の効果】
【0050】
本発明の異型長尺成形体の熱処理方法の構成は上述の通りであり、長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体を、熱成形した際に成形体に残存する応力をインラインで容易に緩和することができ、緩和された異型長尺成形体は弾性率等の力学的物性が良好であって、ガラス転移温度以上の温度に加熱されても弾性率等の力学的物性が低下することがなく、且つ、収縮率が低く抑えられている。特に、長尺延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートから得られた異型長尺成形体は線膨張係数が小さく、軽量で、耐衝撃性、耐久性、作業性等が優れており、雨樋、サッシ等の内装及び外装建材として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
次に、本発明の実施例を図面を参照しながら、詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0052】
図1は本発明の異型長尺成形体の熱処理方法の一例を示す側面説明図であり、図2は平面説明図である。図中1は長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの繰出ロールであり、10は繰出された長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートである。
【0053】
図中2は加熱槽であり、加熱槽2には先端がノズルである熱風供給装置3、31、32、33が設置されている。熱風供給装置3、3、31、31は長尺熱可塑性樹脂シート10の上方に設置されており、熱風供給装置3、3及び熱風供給装置31、31はそれぞれ長尺熱可塑性樹脂シート1の長さ方向の同一位置(変形する位置)に熱風を供給できるように配置されている。又、熱風供給装置32、32、33、33は長尺熱可塑性樹脂シート10の下方に設置されており、熱風供給装置32、32及び熱風供給装置33、33はそれぞれ長尺熱可塑性樹脂シート1の長さ方向の同一位置(変形する位置)に熱風を供給できるように配置されている。且つ、熱風供給装置3、3と熱風供給装置32、32及び熱風供給装置31、31と熱風供給装置33、33はそれぞれ長尺熱可塑性樹脂シート1の長さ方向の同一位置(変形する位置)に上下から熱風を供給できるように配置されている。
【0054】
4、5、6、7、8及び9は加熱槽2の下流側に設置されたプレートである。図3〜8に示したように、プレート4、5、6、7、8及び9にはそれぞれスリット41、51、61、71、81及び91が形成されている。スリット41は略平面に近く、長尺熱可塑性樹脂シートに賦形する位置がわずかに屈曲されている。そして、スリット41から51、61、71、81、91と屈曲部の角度は次第に小さくなされ、スリット91の形状は製造する異型長尺成形体11の形状になされている。
【0055】
即ち、加熱槽2から送り出された平面形状の長尺熱可塑性樹脂シート1は、図3に示したようにスリット41により熱風供給装置3、31、32、33で加熱された位置(長尺熱可塑性樹脂シート1の変形する部分12)が少しだけ屈曲される。次に、図4に示したようにスリット51により長尺熱可塑性樹脂シート1の少しだけ屈曲された位置(変形する部分12)がもう少しだけ屈曲される。更に、図5〜6に示したように、スリット61、スリット71、スリット81及びスリット91により、長尺熱可塑性樹脂シート1の屈曲部(変形する部分12)が次第に屈曲角度が小さくなるように屈曲され、次いで、加熱金型20により加熱アニールされて異型長尺成形体11が得られる。
【0056】
図9は加熱金型20の一例を示す横断面図である。加熱金型20には、異型長尺成形体11と同一形状の異型長尺成形体通路21が形成され、その周囲に複数のヒータ22、22・・・が埋設されている。異型長尺成形体通路21の屈曲部211は異型長尺成形体11の変形した部分が通過する部分なので、屈曲部211とヒータ22の距離は異型長尺成形体通路21とヒータ22の距離より遠くなされている。
【0057】
図10は加熱金型の異なる例を示す横断面図であり、図11は加熱金型の使用状態を示す横断面図である。加熱金型20’は固定型23、移動型24、25及び26よりなり、固定型23、移動型24、25及び26により異型長尺成形体通路21’が形成されている。又、移動型24は図面において上下方向に移動自在に設置されており、移動型25及び26は図面において左右方向に移動自在に設置されている。
【0058】
異型長尺成形体11を加熱しアニールする際には、移動型24を図面において上方向に移動し、移動型25を図面において右方向に移動し、更に移動型26は図面において左方向に移動して、移動型24、25及び26を異型長尺成形体11に接触させて異型長尺成形体11を通過させ、異型長尺成形体11の変形した部分12’は加熱金型20’に接触することなく通過させる。
【0059】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製、商品名「NEH−2070」、極限粘度0.88)を溶融押出成形した後急冷して得られた厚さ2.5mmのポリエチレンテレフタレートシート(結晶化度1.3%)を延伸装置(協和エンジニアリング社製)に供給し、80℃に予熱した後、74℃に加熱された一対のロール(ロール間隔0.6mm)間を2m/minの速度で引抜いて引抜延伸し、更に熱風加熱槽中でポリエチレンテレフタレートシート表面温度を180℃に加熱し、出口速度2.5m/minに設定してロール延伸して、延伸倍率が約4倍の延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。
【0060】
尚、上記ポリエチレンテレフタレートシートのガラス転移温度は76.7℃、昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での結晶化ピークの立ち上がり温度は約118℃であり、融解ピークの立ち上がり温度は約230℃であった。
【0061】
得られた延伸ポリエチレンテレフタレートシートを、ピンチロールが設置され、200℃に設定されているライン長10mの熱風加熱槽に、入口速度2.5m/minで供給し、出口速度2.75m/minに設定して熱固定を行い、熱固定された延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。熱固定された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さが、熱固定前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さの1.00倍であった。
【0062】
熱固定された延伸ポリエチレンテレフタレートシートを、ピンチロールが設置され、90℃に設定されているライン長14mの熱風加熱槽に、入口速度2.75m/minで供給し、出口速度2.7m/minに設定してアニールを行い、アニールされた延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。アニールされた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さが、アニール前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さの0.98倍であった。
【0063】
得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを用い、JIS K 7197に準拠して線膨張係数を測定したところ−0.34×10 -5 (/℃)であり、JIS K 7113の引張試験方法に準拠して23℃、50%RHで引張弾性率を測定したところ8.7GPaであった。尚、線膨張係数は、得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを0℃、50%RHで24時間保持した後、その長さをマイクロメータで測定し、次に60℃、50%RHで24時間保持した後、その長さをマイクロメータで測定し、その差から計算した。
【0064】
得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを移動金型12’が設置された上記装置に供給し、下記条件で賦形したところ、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが延伸方向に沿って割れることも、収縮することもなく長手方向の一直線上に樋形状の異型長尺成形体が得られた。
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの繰出速度 1.2m/分
熱風供給装置3、31、32、33からの熱風 温度130℃、供給量10m3 /分
異型長尺成形体の引取速度 1.2m/分
加熱金型温度 170℃
加熱金型の通過時間 5秒
【0065】
得られた異型長尺成形体を用い、JIS K 7197に準拠して線膨張係数を測定したところ−0.33×10 -5 (/℃)であり、JIS K 7113の引張試験方法に準拠して23℃、50%RHで引張弾性率を測定したところ7.9GPaであった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の異型長尺成形体の製造方法の一例を示す側面説明図である。
【図2】本発明の異型長尺成形体の製造方法の一例を示す平面説明図である。
【図3】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図4】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図5】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図6】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図7】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図8】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図9】加熱金型の一例を示す横断面図である。
【図10】加熱金型の異なる例を示す横断面図である。
【図11】加熱金型の使用状態を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 繰出ロール
2 加熱槽
3、31、32、33 熱風供給装置
4、5、6、7、8、9 プレート
41、51、61、71、81、91 スリット
10 長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シート
11 異型長尺成形体
20 加熱金型
【技術分野】
【0001】
本発明は、異型長尺成形体の熱処理方法、特に雨樋のような異型長尺成形体を長尺熱可塑性樹脂シートを加熱異型成形により成形する際に、異型長尺成形体に残存する応力を緩和する熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は耐水性、難燃性、機械的特性等が優れ、且つ価格が比較的安価であるので、雨樋等の建築部材の材料として広く使用されている。塩化ビニル系樹脂成形体の線膨張係数は7.0×10-5(1/℃)と大きいので、硬質塩化ビニル系樹脂製雨樋を設置する際には、雨樋の伸縮を吸収しうる継手で接続したり、端部をフリーにしたりする必要があったが、施工される雨樋全体の長さが長くなると、継手や落とし口が多くなり、外観が悪いという欠点があった。
【0003】
そのため、線膨張係数の低い雨樋の検討が種々なされている。例えば、例えば、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、該熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−20℃〜該熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度+20℃の温度の一対のロール間を通して引抜き延伸した後、該ロールの温度より高い温度で一軸延伸して得られた、線膨張率が−1.5×10-5以上0未満であり、引張弾性率が8〜15GPaの熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの両面に熱可塑性樹脂層が積層されていることを特徴とする積層成形体(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開2006−306012号公報
【0004】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂シート及び熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの両面に熱可塑性樹脂層が溶融押出被覆された積層成形体は線膨張係数が低く、耐水性、難燃性、機械的特性等が優れているので、雨樋等の建築部材の材料として好適である。しかし、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂シート又は積層成形体から雨樋等の建築部材を成形する際にはその形状に異型成形する必要がある。雨樋のような長尺の異型成形体を成形するには、熱可塑性ポリエステル系樹脂シート又は積層成形体の変形する位置のみを変形可能に加熱し屈曲して異型成形するのが好ましいが、この成形方法では得られた異型成形体中に加熱された部分と加熱されていない部分が共存することになり、残存応力が残り、経時により変形するという欠点があった。そのため、一般に、成形後長時間比較的低温で保持するというアニールが行われていたが、比較的低温で保持するというアニールでは長時間がかかり、異型成形するインラインで短時間でアニールすることが望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記欠点に鑑み、長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体の成形体に残存する応力を緩和する熱処理方法、特に、インラインで容易に成形体に残存する応力を緩和する熱処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異型長尺成形体の熱処理方法は、長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体を、該異型長尺成形体の断面形状と略同一の異型長尺成形体通路を有する加熱金型の異型長尺成形体通路を通過させて、異型長尺成形体をアニールする熱処理方法であって、異型長尺成形体通路において異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱し、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱することを特徴とする。
【0007】
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、延伸可能な任意の熱可塑性樹脂が使用可能であり、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂等が挙げられるが、線膨張係数が小さく、軽量で、耐衝撃性、耐久性等に優れた熱可塑性ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0008】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリ(L−乳酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリレート)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート/乳酸、ポリブチレンサクシネート/カーボネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレナジペート/テレフタレート、ポリブチレンサクシネート/アジペート/テレフタレート等が挙げられ、耐熱性の優れたポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0009】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度は、低すぎるとシート作成時にドローダウンを起こしやすく、高すぎると、延伸しても機械的強度(特に弾性率)が上昇しないので、0.6〜1.0が好ましい。
【0010】
本発明で使用される熱可塑性樹脂シートは長さ方向に一軸延伸されているが、その製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の任意に一軸延伸方法が採用されればよい。延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの製造方法も特に限定されるものではないが、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、該熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度±20℃の温度で引抜延伸した後、引抜延伸温度より高い温度で総延伸倍率が3〜8倍に一軸延伸されるのが好ましい。
【0011】
熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚みは特に限定されないが、0.1mm未満では、延伸後のシート厚みが薄くなりすぎ、取扱いに際しての強度が十分な大きさとならないことがあり、5mmを超えると延伸が困難となることがあるので0.1〜5mmが好ましい。
【0012】
非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度は特に限定されるものではないが、示差走査熱量計で測定した結晶化度が10%未満あることが好ましく、より好ましくは5%未満である。
【0013】
上記非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの引抜延伸する方法は、特に限定されず所定のクリアランスを有する引抜金型を通して引抜延伸してもよいが、一対のロール間を通して引抜延伸するのが、延伸後の厚みを自由にコントロールでき、又、引抜金型の特定部位の磨耗が生じることがないので好ましい。
【0014】
引抜延伸する際の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度は、特に限定されるものではないが、ガラス転移温度付近の温度に予熱されているのが好ましい。予熱温度は、低すぎても高すぎても熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが所定の温度にならないことがあるので、熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−20℃〜熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度+10℃の温度が好ましい。
【0015】
上記引抜延伸する際の温度は、低温であると熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが硬すぎて、引抜こうとしても先に切断されてしまうことがあり、切断されなくてもシートにボイドができて白化してしまうなどの問題があり、逆に、高温になると熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが柔らかくなりシートを引抜く張力によりシートが切断されるので、熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度±20℃の温度範囲であり、好ましくは熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度〜熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度+10℃の温度範囲である。
【0016】
又、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜く際に、ロールは回転している必要はないが、特に熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚みが厚い場合には、せん断発熱によるロールの蓄熱に起因するシートの温度上昇が生じやすいため、引抜方向に回転させるのが好ましい。
【0017】
ロールの回転速度が遅いと、ロールと熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの接触時間が長くなり、摩擦熱が発生し、ロール温度が上昇して、加熱された熱可塑性ポリエステル系樹脂を冷却する効果が低下し、所定の引抜延伸温度を超えてしまい、逆にロールの回転速度が早くなると、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの表面の熱可塑性ポリエステル系樹脂のみが流動し、均一に引抜延伸できなくなり、得られた引抜延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの弾性率が低下する。従って、ロールの回転速度は熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを同一条件の引抜速度でロールが回転していない状態で引き抜いた際の送り速度と実質的に同一又はそれ以下の速度が好ましい。
【0018】
又、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さが厚い(1.5mm以上)場合は、ロールとシートとのせん断による発熱が大きくなるため、ロールの回転速度は上記送り速度の50〜100%が好ましい。また、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さが薄い場合は、ロールによる冷却効果が大きいのでロールの回転速度は遅くてもよい。
【0019】
上記引抜延伸の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、引張強度、引張弾性率に優れたシートが得られず、高くなると延伸時にシートの破断が生じやすくなるので、2〜9倍が好ましく、より好ましくは2.5〜7倍である。
【0020】
引抜延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜延伸の温度より高い温度で一軸延伸する。引抜延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂シートのポリエステル系樹脂は、延伸の阻害要因となる熱による等方的な結晶化及び配向が抑えられた状態で分子鎖は高度に配向しているので強度及び弾性率が優れているが結晶化度は低いので、加熱されると配向は容易に緩和され弾性率は低下してしまうという欠点を有している。しかし、この引抜延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、該引抜延伸の温度より高い温度で一軸延伸することにより配向が緩和されることなく結晶化度が上昇し、加熱されても配向が容易に緩和されない耐熱性の優れた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが得られる。
【0021】
上記一軸延伸する方法としてはロール延伸法が好適に用いられる。ロール延伸法とは、速度の異なる2対のロール間に延伸原反を挟み、延伸原反を加熱しつつ引っ張る方法であり、一軸方向のみに強く分子配向させることができる。
【0022】
上記一軸延伸する際の温度は、引抜延伸の温度より高い温度であればよいが、高すぎると一次延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが溶融して切断されるので、昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度〜融解ピークの立ち上がり温度の温度範囲が好ましい。尚、ポリエチレンテレフタレートの結晶化ピークの立ち上がり温度は約120℃であり、融解ピークの立ち上がり温度は約230℃である。従って、ポリエチレンテレフタレートシートを一軸延伸する際は約120℃〜約230℃で一軸延伸するのが好ましい。
【0023】
上記一軸延伸の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、引張強度、引張弾性係数等の優れたシートが得られず、高くなると延伸時にシートの破断が生じやすくなるので、1.05〜3倍が好ましく、さらに好ましくは1.1〜2倍である。又、引抜延伸倍率と一軸延伸倍率の積である総延伸倍率は、小さすぎても大きすぎても線膨張係数の絶対値が大きくなるので2.5〜10倍が好ましく、より好ましくは3〜8倍である。
【0024】
本発明においては、耐熱性を向上させるために一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一軸延伸温度より高い温度で熱固定するのが好ましい。
【0025】
熱固定温度は、昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度より低いと熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化が進まないので耐熱性が向上せず、融解ピークの立ち上がり温度より高いと熱可塑性ポリエステル系樹脂が溶解して延伸(配向)が消滅し引張弾性率、引張強度等が低下し、一軸延伸温度より30℃以上高くなると、一軸延伸温度で結晶化した結晶の配向が緩和されるので、昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度〜融解ピークの立ち上がり温度であって、一軸延伸温度より30℃以上高くない温度が好ましい。
【0026】
又、熱固定する際に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに大きな張力がかかっていると延伸され、張力がかかっていないか、非常に小さい状態では収縮するので、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの延伸方向の長さが実質的に変化しないようにした状態で行うことが好ましく、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに圧力もかかっていないのが好ましい。
【0027】
即ち、熱固定された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さが、熱固定前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さの0.95〜1.1で、一軸延伸倍率より低い倍率になるように熱固定するのが好ましい。従って、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートをピンチロール等のロールで加熱室内を移動しながら連続的に熱固定する場合は、入口側と出口側の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの送り速度比を0.95〜1.1になるように設定して熱固定するのが好ましい。
【0028】
熱固定する際の加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風、ヒーター等で加熱する方法があげられる。熱固定する時間は、特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さや熱固定温度により異なるが、一般に10秒〜10分が好ましい。
【0029】
更に、上記熱固定された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、ガラス転移温度〜昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度の範囲で、実質的に張力がかからない状態でアニールするのが好ましい。アニールすることにより、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは弾性率等の力学的物性が良好であって、ガラス転移温度以上の温度に加熱されても弾性率等の力学的物性が低下することがなく、且つ、収縮率を低く抑えることができる。
【0030】
又、アニールする際に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに大きな張力がかかっていると延伸されるので、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに実質的に張力がかからない状態でアニールするのが好ましい。即ち、アニールされた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さが、アニール前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さの1.0以下になるようにアニールするのが好ましい。
【0031】
従って、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートをピンチロール等のロールで加熱室内を移動しながら連続的にアニールする場合は、入口側と出口側の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの送り速度比を1.0以下になるように設定してアニールするのが好ましい。
【0032】
アニールする際の加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風、ヒーター等で加熱する方法があげられる。アニールする時間は、特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さやアニール温度により異なるが、一般に10秒以上が好ましく、より好ましくは30秒〜60分であり、更に好ましくは1〜20分である。
【0033】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが衝撃により延伸方向に沿って割れや亀裂が発生しないように保護すると共に、ポリエステル系樹脂が直接雨水や太陽光線に曝されて加水分解や劣化を受け耐久性が低下することを防ぐために、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに熱可塑性樹脂や塗料を積層してもよい。しかし、熱可塑性樹脂や塗料を積層すると、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの線膨張係数の絶対値が上昇するので、0.1〜3mm程度の薄い層にするのが好ましい。
【0034】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、硬質塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、スチレン樹脂、AS樹脂、メチルメタクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。又、塗料としては、フッ素系塗料、アクリルシリコン系塗料、ウレタン系塗料等が挙げられる。
【0035】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに熱可塑性樹脂層を積層する方法は、特に限定されず、従来公知の任意の積層方法が採用されてよく、例えば、熱可塑性樹脂を溶融押出被覆する方法、接着剤で接着する方法等が挙げられる。
【0036】
上記異型長尺成形体は、一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体である。長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し賦形する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、所定形状のスリットが形成されている複数のプレートのスリットを通過させて長尺熱可塑性樹脂シートを賦形する方法があげられ、この方法においてはプレートのスリット形状は上流から下流方向に行くに従って、平面形状から次第に異型長尺成形体の断面形状になされていればよい。上記プレートはプレートに形成されたスリットを通過させて長尺熱可塑性樹脂シートを賦形するのであるから鉄製のブロックからなるプレートが好ましい。
【0037】
プレートのスリット形状が上流から下流方向に行くに従って、平面形状から次第に異型長尺成形体の断面形状になされている。即ち、一つのプレート(のスリット)を通過するたびに長尺熱可塑性樹脂シートは少しずつ変形され、最後のプレート(のスリット)を通過した際に、製造すべき異型長尺成形体の形状になるように設定されている。プレートの数は特に限定されるものではなく、製造すべき異型長尺成形体の形状が複雑になれば多くのプレートが必要になるが、一般に5〜20個が好ましい。
【0038】
上記賦形方法においては、長尺熱可塑性樹脂シートの変形する位置のみを変形可能に加熱する。言い換えると、プレートのスリットを通過させることにより、スリットの形状に沿うように賦形するのであり、賦形する位置のみを変形可能に加熱する。加熱方法は特に限定されず、従来公知の任意の加熱方法が使用でき、例えば、長尺熱可塑性樹脂シートの賦形する位置のみのノズルから熱風を吹付ける方法、長尺熱可塑性樹脂シートの賦形する位置のみに接触するようになされた加熱ロールを長尺熱可塑性樹脂シートに押し付ける方法等が挙げられる。尚、上記加熱は加熱槽内で長尺熱可塑性樹脂シート全体を適度に加熱しながら行ってもよい。
【0039】
次に、長尺熱可塑性樹脂シートをプレート(のスリット)を通過させてスリットの形状に沿うように賦形する。尚、長尺熱可塑性樹脂シートは長さ方向に一軸延伸されているので、加熱及び賦形する際に、熱収縮しないようにバックテンションをかけてもよい。バックテンションの強度は、長尺熱可塑性樹脂シートが延伸したり収縮しないように設定すればよい。バックテンションの方法は特に限定されず、例えば、パウダーブレーキ、エアーシャフト、3連ロール等で抵抗負荷をかける方法が挙げられる。尚、製造すべき異型長尺成形体の断面形状が複雑な場合や賦形する形状の角度が大きい場合は、長尺熱可塑性樹脂シートがスリットのクリアランス内の壁面で抵抗を受けて熱収縮が制御されるのでバックテンションをかける必要はない。
【0040】
又、異なる長尺熱可塑性樹脂シートの賦形方法として、長尺熱可塑性樹脂シートの変形する位置のみを変形可能に加熱し、長尺熱可塑性樹脂シートにバックテンションをかけながら、長尺熱可塑性樹脂シートの変形する位置をフォーミングロールで押圧して賦形する賦形方法があげられる。
【0041】
この賦形方法は、上記賦形方法におけるプレートに代えてフォーミングロールで、長尺熱可塑性樹脂シートの変形可能に加熱された位置を押圧して賦形する方法である。尚、長尺熱可塑性樹脂シートは長さ方向に一軸延伸されているので、加熱及びフォーミングロールで押圧して賦形する際に、熱収縮しないようにバックテンションをかける必要がある。バックテンションの強度は、長尺熱可塑性樹脂シートが延伸したり収縮しないように設定すればよい。バックテンションの方法は特に限定されず、例えば、パウダーブレ−キ、エアーシャフト、3連ロ−ル等で抵抗負荷をかける方法が挙げられる。
【0042】
本発明においては、賦形された異型長尺成形体を、該異型長尺成形体の断面形状と略同一の異型長尺成形体通路を有する加熱金型の異型長尺成形体通路を通過させて、異型長尺成形体をアニールする。異型長尺成形体を加熱金型の異型長尺成形体通路を通過させる際に、異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱し、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱する。
【0043】
異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、加熱金型として、異型長尺成形体通路の周囲に複数のヒータが、異型長尺成形体の変形した部分が通過する位置からの距離が変形しなかった部分が通過する位置からの距離より遠い位置に埋設されている加熱金型を使用する方法があげられる。
【0044】
上記加熱金型においては、複数のヒータが埋設されており、異型長尺成形体の変形した部分が通過する位置からヒータまでの距離は異型長尺成形体の変形しなかった部分が通過する位置からのヒータまでの距離より遠くなされているので、異型長尺成形体が異型長尺成形体通路を通過する際に異型長尺成形体の変形しなかった部分には異型長尺成形体の変形した部分より多量の熱量が付加される。従って、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱することができる。
【0045】
又、異型長尺成形体通路の周囲に複数のヒータが埋設されている加熱金型において、異型長尺成形体の変形した部分が通過する位置近傍のヒータの温度を異型長尺成形体の変形しなかった部分が通過する位置近傍のヒータの温度より低く設定してもよい。
【0046】
更に、異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱する方法として、異型長尺成形体の変形した部分が通過する異型長尺成形体通路の幅より、変形しなかった部分が通過する異型長尺成形体通路の幅が狭くなされた加熱金型を使用し、異型長尺成形体の変形した部分は異型長尺成形体通路側壁に接触せずに通過させ、異型長尺成形体の変形しなかった部分を異型長尺成形体通路側壁に接触しながら通過させる方法があげられる。
【0047】
上記方法においては、異型長尺成形体の変形しなかった部分は異型長尺成形体通路側壁に接触しながら通過するのに対し、異型長尺成形体の変形した部分は異型長尺成形体通路側壁に接触せずに通過するので、異型長尺成形体が異型長尺成形体通路を通過する際に異型長尺成形体の変形しなかった部分には異型長尺成形体の変形した部分より多量の熱量が付加される。従って、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱することができる。
【0048】
上記加熱金型は、特に限定されるものではなく、例えば、異型長尺成形体の変形しなかった部分は異型長尺成形体通路側壁に接触しながら通過し、異型長尺成形体の変形した部分は異型長尺成形体通路側壁に接触せずに通過するように、異型長尺成形体の変形しなかった部分通過する異型長尺成形体通路の幅を狭くし、異型長尺成形体の変形した部分通過する異型長尺成形体通路の幅を広くした異型長尺成形体通路を有する加熱金型、一定幅の異型長尺成形体通路を有し、異型長尺成形体の変形しなかった部分が通過する部分の金型を移動金型で形成し、移動金型を移動することにより異型長尺成形体通路を狭くして、異型長尺成形体の変形しなかった部分が異型長尺成形体通路側壁に接触しながら通過し、異型長尺成形体の変形した部分は異型長尺成形体通路側壁に接触せずに通過するようにした加熱金型等があげられる。
【0049】
又、異形長尺成形体の表面温度は異型長尺成形体をアニールするのであるから、異型長尺成形体を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度〜昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度の範囲が好ましい。加熱時間は合計熱量が同一になるように、熱可塑性樹脂の種類や加熱温度により任意に設定する。
【発明の効果】
【0050】
本発明の異型長尺成形体の熱処理方法の構成は上述の通りであり、長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体を、熱成形した際に成形体に残存する応力をインラインで容易に緩和することができ、緩和された異型長尺成形体は弾性率等の力学的物性が良好であって、ガラス転移温度以上の温度に加熱されても弾性率等の力学的物性が低下することがなく、且つ、収縮率が低く抑えられている。特に、長尺延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートから得られた異型長尺成形体は線膨張係数が小さく、軽量で、耐衝撃性、耐久性、作業性等が優れており、雨樋、サッシ等の内装及び外装建材として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
次に、本発明の実施例を図面を参照しながら、詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0052】
図1は本発明の異型長尺成形体の熱処理方法の一例を示す側面説明図であり、図2は平面説明図である。図中1は長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの繰出ロールであり、10は繰出された長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートである。
【0053】
図中2は加熱槽であり、加熱槽2には先端がノズルである熱風供給装置3、31、32、33が設置されている。熱風供給装置3、3、31、31は長尺熱可塑性樹脂シート10の上方に設置されており、熱風供給装置3、3及び熱風供給装置31、31はそれぞれ長尺熱可塑性樹脂シート1の長さ方向の同一位置(変形する位置)に熱風を供給できるように配置されている。又、熱風供給装置32、32、33、33は長尺熱可塑性樹脂シート10の下方に設置されており、熱風供給装置32、32及び熱風供給装置33、33はそれぞれ長尺熱可塑性樹脂シート1の長さ方向の同一位置(変形する位置)に熱風を供給できるように配置されている。且つ、熱風供給装置3、3と熱風供給装置32、32及び熱風供給装置31、31と熱風供給装置33、33はそれぞれ長尺熱可塑性樹脂シート1の長さ方向の同一位置(変形する位置)に上下から熱風を供給できるように配置されている。
【0054】
4、5、6、7、8及び9は加熱槽2の下流側に設置されたプレートである。図3〜8に示したように、プレート4、5、6、7、8及び9にはそれぞれスリット41、51、61、71、81及び91が形成されている。スリット41は略平面に近く、長尺熱可塑性樹脂シートに賦形する位置がわずかに屈曲されている。そして、スリット41から51、61、71、81、91と屈曲部の角度は次第に小さくなされ、スリット91の形状は製造する異型長尺成形体11の形状になされている。
【0055】
即ち、加熱槽2から送り出された平面形状の長尺熱可塑性樹脂シート1は、図3に示したようにスリット41により熱風供給装置3、31、32、33で加熱された位置(長尺熱可塑性樹脂シート1の変形する部分12)が少しだけ屈曲される。次に、図4に示したようにスリット51により長尺熱可塑性樹脂シート1の少しだけ屈曲された位置(変形する部分12)がもう少しだけ屈曲される。更に、図5〜6に示したように、スリット61、スリット71、スリット81及びスリット91により、長尺熱可塑性樹脂シート1の屈曲部(変形する部分12)が次第に屈曲角度が小さくなるように屈曲され、次いで、加熱金型20により加熱アニールされて異型長尺成形体11が得られる。
【0056】
図9は加熱金型20の一例を示す横断面図である。加熱金型20には、異型長尺成形体11と同一形状の異型長尺成形体通路21が形成され、その周囲に複数のヒータ22、22・・・が埋設されている。異型長尺成形体通路21の屈曲部211は異型長尺成形体11の変形した部分が通過する部分なので、屈曲部211とヒータ22の距離は異型長尺成形体通路21とヒータ22の距離より遠くなされている。
【0057】
図10は加熱金型の異なる例を示す横断面図であり、図11は加熱金型の使用状態を示す横断面図である。加熱金型20’は固定型23、移動型24、25及び26よりなり、固定型23、移動型24、25及び26により異型長尺成形体通路21’が形成されている。又、移動型24は図面において上下方向に移動自在に設置されており、移動型25及び26は図面において左右方向に移動自在に設置されている。
【0058】
異型長尺成形体11を加熱しアニールする際には、移動型24を図面において上方向に移動し、移動型25を図面において右方向に移動し、更に移動型26は図面において左方向に移動して、移動型24、25及び26を異型長尺成形体11に接触させて異型長尺成形体11を通過させ、異型長尺成形体11の変形した部分12’は加熱金型20’に接触することなく通過させる。
【0059】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製、商品名「NEH−2070」、極限粘度0.88)を溶融押出成形した後急冷して得られた厚さ2.5mmのポリエチレンテレフタレートシート(結晶化度1.3%)を延伸装置(協和エンジニアリング社製)に供給し、80℃に予熱した後、74℃に加熱された一対のロール(ロール間隔0.6mm)間を2m/minの速度で引抜いて引抜延伸し、更に熱風加熱槽中でポリエチレンテレフタレートシート表面温度を180℃に加熱し、出口速度2.5m/minに設定してロール延伸して、延伸倍率が約4倍の延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。
【0060】
尚、上記ポリエチレンテレフタレートシートのガラス転移温度は76.7℃、昇温速度10℃/minで測定した示差走査熱量曲線での結晶化ピークの立ち上がり温度は約118℃であり、融解ピークの立ち上がり温度は約230℃であった。
【0061】
得られた延伸ポリエチレンテレフタレートシートを、ピンチロールが設置され、200℃に設定されているライン長10mの熱風加熱槽に、入口速度2.5m/minで供給し、出口速度2.75m/minに設定して熱固定を行い、熱固定された延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。熱固定された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さが、熱固定前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さの1.00倍であった。
【0062】
熱固定された延伸ポリエチレンテレフタレートシートを、ピンチロールが設置され、90℃に設定されているライン長14mの熱風加熱槽に、入口速度2.75m/minで供給し、出口速度2.7m/minに設定してアニールを行い、アニールされた延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。アニールされた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さが、アニール前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの長さの0.98倍であった。
【0063】
得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを用い、JIS K 7197に準拠して線膨張係数を測定したところ−0.34×10 -5 (/℃)であり、JIS K 7113の引張試験方法に準拠して23℃、50%RHで引張弾性率を測定したところ8.7GPaであった。尚、線膨張係数は、得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを0℃、50%RHで24時間保持した後、その長さをマイクロメータで測定し、次に60℃、50%RHで24時間保持した後、その長さをマイクロメータで測定し、その差から計算した。
【0064】
得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを移動金型12’が設置された上記装置に供給し、下記条件で賦形したところ、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが延伸方向に沿って割れることも、収縮することもなく長手方向の一直線上に樋形状の異型長尺成形体が得られた。
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの繰出速度 1.2m/分
熱風供給装置3、31、32、33からの熱風 温度130℃、供給量10m3 /分
異型長尺成形体の引取速度 1.2m/分
加熱金型温度 170℃
加熱金型の通過時間 5秒
【0065】
得られた異型長尺成形体を用い、JIS K 7197に準拠して線膨張係数を測定したところ−0.33×10 -5 (/℃)であり、JIS K 7113の引張試験方法に準拠して23℃、50%RHで引張弾性率を測定したところ7.9GPaであった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の異型長尺成形体の製造方法の一例を示す側面説明図である。
【図2】本発明の異型長尺成形体の製造方法の一例を示す平面説明図である。
【図3】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図4】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図5】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図6】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図7】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図8】プレート(スリット)で長尺熱可塑性樹脂シートが屈曲される状態を説明する部分断面図である。
【図9】加熱金型の一例を示す横断面図である。
【図10】加熱金型の異なる例を示す横断面図である。
【図11】加熱金型の使用状態を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 繰出ロール
2 加熱槽
3、31、32、33 熱風供給装置
4、5、6、7、8、9 プレート
41、51、61、71、81、91 スリット
10 長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シート
11 異型長尺成形体
20 加熱金型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体を、該異型長尺成形体の断面形状と略同一の異型長尺成形体通路を有する加熱金型の異型長尺成形体通路を通過させて、異型長尺成形体をアニールする熱処理方法であって、異型長尺成形体通路において異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱し、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱することを特徴とする異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項2】
長尺熱可塑性樹脂シートの賦形方法が、所定形状のスリットが形成されている複数のプレートのスリットを通過させて長尺熱可塑性樹脂シートを賦形する方法であって、プレートのスリット形状が上流から下流方向に行くに従って、平面形状から次第に異型長尺成形体の断面形状になされていることを特徴とする請求項1記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項3】
長尺熱可塑性樹脂シートの賦形方法が、長尺熱可塑性樹脂シートの変形する位置のみを変形可能に加熱し、長尺熱可塑性樹脂シートにバックテンションをかけながら、長尺熱可塑性樹脂シートの変形する位置をフォーミングロールで押圧して賦形することを特徴とする請求項1記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項4】
加熱金型の異型長尺成形体通路の周囲に複数のヒータが、異型長尺成形体の変形した部分が通過する位置からの距離が変形しなかった部分が通過する位置からの距離より遠い位置に埋設されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項5】
異型長尺成形体の変形した部分が通過する異型長尺成形体通路の幅より、変形しなかった部分が通過する異型長尺成形体通路の幅が狭く、異型長尺成形体の変形した部分は異型長尺成形体通路側壁に接触せずに通過し、異型長尺成形体の変形しなかった部分は異型長尺成形体通路側壁に接触しながら通過するようになされていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項6】
異型長尺成形体が、雨樋であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂シートが延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項8】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、該熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度±20℃の温度で引抜延伸した後、引抜延伸温度より高い温度で総延伸倍率(引抜延伸倍率と一軸延伸倍率の積)が3倍〜8倍に一軸延伸されたシートであることを特徴とする請求項7記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項1】
長さ方向に一軸延伸されている長尺熱可塑性樹脂シートの変形する部分のみを変形可能に加熱し、賦形した異型長尺成形体を、該異型長尺成形体の断面形状と略同一の異型長尺成形体通路を有する加熱金型の異型長尺成形体通路を通過させて、異型長尺成形体をアニールする熱処理方法であって、異型長尺成形体通路において異型長尺成形体の変形した部分より変形しなかった部分をより高熱量で加熱し、加熱賦形の際の熱量とアニールの際の熱量の合計熱量が異型長尺成形体全体のどの部分においても略同一になるように加熱することを特徴とする異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項2】
長尺熱可塑性樹脂シートの賦形方法が、所定形状のスリットが形成されている複数のプレートのスリットを通過させて長尺熱可塑性樹脂シートを賦形する方法であって、プレートのスリット形状が上流から下流方向に行くに従って、平面形状から次第に異型長尺成形体の断面形状になされていることを特徴とする請求項1記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項3】
長尺熱可塑性樹脂シートの賦形方法が、長尺熱可塑性樹脂シートの変形する位置のみを変形可能に加熱し、長尺熱可塑性樹脂シートにバックテンションをかけながら、長尺熱可塑性樹脂シートの変形する位置をフォーミングロールで押圧して賦形することを特徴とする請求項1記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項4】
加熱金型の異型長尺成形体通路の周囲に複数のヒータが、異型長尺成形体の変形した部分が通過する位置からの距離が変形しなかった部分が通過する位置からの距離より遠い位置に埋設されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項5】
異型長尺成形体の変形した部分が通過する異型長尺成形体通路の幅より、変形しなかった部分が通過する異型長尺成形体通路の幅が狭く、異型長尺成形体の変形した部分は異型長尺成形体通路側壁に接触せずに通過し、異型長尺成形体の変形しなかった部分は異型長尺成形体通路側壁に接触しながら通過するようになされていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項6】
異型長尺成形体が、雨樋であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂シートが延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【請求項8】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、該熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度±20℃の温度で引抜延伸した後、引抜延伸温度より高い温度で総延伸倍率(引抜延伸倍率と一軸延伸倍率の積)が3倍〜8倍に一軸延伸されたシートであることを特徴とする請求項7記載の異型長尺成形体の熱処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−213301(P2008−213301A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53895(P2007−53895)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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