説明

異常な細胞の増殖の診断および治療に有効なコバラミン誘導体

本発明は、(a)輸送タンパク質トランスコバラミンII(TCII)への結合親和性が無いかまたは低く、かつ(b)ビタミンB12代用品として活性を保持し、場合により治療薬および/または診断薬、たとえば放射性金属を担持するコバラミン誘導体に関するものである。これらの化合物は、血液および良性の器官、たとえば腎臓および肝臓中の蓄積率は、新生物組織中の蓄積率に比べてはるかに低く、そして血液からより急速に排除される。本発明はさらに、(a)哺乳類を一定期間ビタミンB12欠乏食にさらし、(b)続いて、診断薬および/または治療剤を担持する本発明のコバラミン誘導体を適用することを含む、哺乳類における新生物疾患または微生物による感染の診断方法および治療方法に関するものである。ビタミンB12代用品として働くコバラミン誘導体を選択することにより、新生物組織における耐性子孫の形成の危険性が大きく低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多細胞生物において急速に増殖する望ましくない細胞をイメージングおよび破壊する方法に関するものである。
【0002】
背景技術
異常な細胞の増殖、特に過増殖は、多数の疾患(もっとも重い疾患は癌である)の源である。アメリカ合衆国単独で、毎年、約150万人の人々が癌と診断され、そして50万人がそれがもとで死亡する。癌との戦いは、いくつかは成功したが多数の後退も見られている。腫瘍および転移の早期および正確な定位と同様に、抗癌剤の激しい副作用および癌細胞の耐性子孫の発生が主要な問題である。
【0003】
過増殖する細胞、たとえば多くの癌細胞は、栄養の補給、成長因子、エネルギー、およびビタミンの増加に依存している。細胞の成長に不可欠であり、補給不足であることが多いビタミンの補給ルートを用いて、おそらくは薬物をこれらの不要な細胞に輸送することができるであろう。
【0004】
ビタミンB12としても公知であり、シアノ−コバラミン(CN−CbI)、ヒドロキシル−コバラミン(HO−CbI)、またはアコ−コバラミン(H2O−CbI)として存在するコバラミン(CbI)は、生物に不可欠であり、その体内濃度は極めて低い。ヒトを含む高等生物は、その食物から該ビタミンを得なければならない。コバラミンの生合成は、いくつかの原核生物、たとえば嫌気性バクテリアに限られている。コバラミンは、神経系の適切な機能にとって重要であり、炭水化物、タンパク質、および脂肪の適切な代謝に必要である。コバラミンは、不可欠な細胞内の代謝経路において用いられる。メチル−コバラミン(Me−CbI)として、それはメチオニンシンターゼ用補因子として機能する。5’−デオキシアデノシル−コバラミン(Ado−CbI)として、それはメチルマロニル−CoAをスクシニル−CoAへの転位において、メチルマロニル−CoAムターゼと一緒に機能する。コバラミン欠乏は悪性貧血を招くおそれがある。コバラミンは、DNAを生成するための、リボヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドへの還元的転化にも関与する。
【0005】
哺乳類において、ほとんどの細胞のコバラミンの取り込みは、血清輸送タンパク質および細胞膜受容体により調節されている。血漿中には2つのタイプのコバラミン結合タンパク質:非グリコシル化タンパク質トランスコバラミンII(TCII)ならびにグリコシル化タンパク質トランスコバラミンIおよびIII(TCIおよびTCIII)があり、R−バインダータンパク質またはハプトコリンとも言う。TCIおよびTCIIIは免疫学的に交差反応性であり、おそらくその炭水化物組成物だけが異なる。TCIは循環中に見出された最初のR−バインダーである。簡単にするために、R−バインダータンパク質TCIとTCIIIの両方を意味する場合、用語TCIを使用する。輸送タンパク質(ベクター)TCIおよびTCIIの両方のタイプは、部分的に飽和の(ホロ)である場合も、または部分的に不飽和の(アポ)場合もコバラミンと共に哺乳類の血液中を循環する。通常の細胞中に、幾分低い効率でコバラミンに対するベクターレス取り込みシステムも哺乳類の細胞中に存在する(Sennet, C. and Rosenberg, L. E., Ann. Rev. Biochem., 50, 1053-86 (1981)を参照)。
【0006】
TCIIは、受容体を介したエンドサイトーシスによって、血漿コバラミンを、全ての代謝的に活性な細胞へ送達するのに機能する。腫瘍の新生における加速された細胞の増殖は、循環から受容体を介したエンドサイトーシス取り込みによりTCIIに負荷されたコバラミンの消費の増加を主として伴うことが周知である。チミジンおよびメチオニン製造、DNA合成のメチル化反応、ならびにミトコンドリア代謝を介する細胞のエネルギー使用の増加した代謝の需要を満たすための、TCII受容体の数における上向き調節は、悪性の細胞系において広く実証されている。
【0007】
一般的なTCII受容体は全ての組織中に存在するが、2番目以降の器官特異性の特定のTCII受容体(メガリン(megalin)と呼ばれる)は、腎臓近位尿細管および他のいくかの吸収性上皮中で激しく発現している。エンドサイトーシス内在化の後で、TCIIはリソソーム中で分解され、遊離コバラミンは細胞質および核膜の内側に運ばれ、そこでそれはMe−CbIおよびAdo−CbIに転化される。これらの2つの形態はビタミンB12の活性の補酵素として働く。TCIIの欠くことのできない役割は、遺伝性の先天的なTCIIの欠如は、巨大赤血球性貧血、好ましくない神経障害、さらに過剰なコバラミンで治療しない場合は死亡を導くという観察により、はっきりと立証されている。
【0008】
ほとんど全ての細胞がTCIIを産出することができる。多くの細胞、たとえば肝細胞、線維芽細胞、神経細胞、腸細胞、およびマクロファージは、多量のTCIIを合成する。血管内皮がTCIIの第一の源であると考えられる。循環するコバラミンの約20〜30%は、ホロ−TCIIとしてTCIIに結合されている。これは、全ての組織においてコバラミンの内在化を確かにする代謝的に有効な形態である(Rothenberg, E.et al., in: Chemistry and Biochemistry of B12, ed. R. Banerjee, New York, NY, 1999, pp. 441-473を参照)。
【0009】
TCIは、血液および血漿中、ならびにほとんどの外分泌および他の液体中に存在する。それは主に、前腸組織、胃粘膜、唾液腺、涙腺、および内耳の腺上皮において生成する。TCIは、TCIIとは違って、そのコバラミンを細胞の取り込みのために主として送達するとは思われず、血液中での半減期が長く、したがって任意の特定の瞬間に75%より多い循環するコバラミン(およびコリン(corrin))を保持する。ほとんど全てのTCIはホロ−TCIとして循環する。その役割は完全には理解されていない。全種類のコバラミンおよびコリンの微生物への補給を妨げることにより、静菌剤として機能することが提案されている。それは、アデノシル−コバラミンを安定させることもでき、それを光分解から保護する。循環中でTCIIよりも高い濃度を有するTCIとは異なり、TCIIのレベルは、入ってくるコバラミンに応答してアポTCIIを新規合成することにより極めて速く高めることができる。TCIはややゆっくり生成され、どんな誘引刺激にも、応答して実質的に促される可能性はない(Alpers, D. and Russell, G., in: Chemistry and Biochemistry of B12, supra pp. 411-441を参照)。
【0010】
これまで、哺乳類の細胞におけるコバラミンのベクターレス(vector-less)取り込みは、コバラミン誘導体を過増殖する細胞へ補給する代わりのルートとしては考えられていなかった。哺乳類の良性の細胞によるコバラミンの取り込みの生理的に重要な機構は、ベクターTCIIおよびTCI(および消化管における固有の要因)を必要とすることは明白である。しかし、インビボおよびインビトロデータから、遊離コバラミンはベクタータンパク質の関与なしに形質膜を超えることもできることが分かる。遊離コバラミンを捕捉するさらなる能力の直接の証拠が、TCIIが先天的に全く欠乏している子供の研究によってもたらされ、その子供たちに遊離コバラミンを非経口的投与すると、細胞内のコバラミン欠乏の臨床的および化学的兆候の著しい回復をまねく(Hall, C.E. et. al. Blood, 53, 251-263 (1979)を参照)。インビトロ研究は、HeLa細胞および線維芽細胞における遊離コバラミンの取り込みを示した。HeLa細胞での、遊離コバラミンの取り込みは、TCII−結合されたコバラミンに対する値の1〜2%である。ヒト線維芽細胞を用いた、2時間間隔での遊離コバラミン蓄積は、TCII−結合されたビタミンについて示されたものの約20%に達する。ヒト線維芽細胞中の遊離ビタミン取り込みシステムは、BerlinerおよびRosenbergによりいくらか詳細に研究されている(Berliner, N. and Rosenberg,L.E., Metabolism, 30, 230-236 (1981))。遊離CN−[57Co]−CbIの取り込みは2相システムとして確立されている:最初の取り込み部分は、迅速で、飽和でき、過剰な非標識化したCN−CbIおよびOH−CbIにより特異的に阻害され、30分内で完結する。2番目の取り込み部分は遅く、時間に対して直線性で、過剰な非標識化したコバラミンにより阻害されず、8時間後でも頭打ちにならず、非特異的過程の特有の特質を示唆する。取り込みの最初のモードは、タンパク質を介する高い特異性の膜横断の特性を有し;それはスルフヒドリル試薬に敏感であり、シクロヘキシミドにより著しく阻害される(Sennet, C. and Rosenberg, L.E., Ann. Rev. Biochem. 50, 1053-86 (1981))。これらの特性は、哺乳類における、タンパク質を介し、促進された遊離コバラミンの取り込みシステムの存在と合致している。
【0011】
多くのバクテリアおよび全ての真核原生生物は、ビタミンB12に対して栄養素要求株であり、哺乳類の固有の要因、TCIおよびTCIIよりも高い親和性でそれに結合することができることが明らかに確立されている。バクテリアおよび原生生物のB12−結合タンパクはベクターレス作動細胞表面タンパク質であり種々のコリン(真のコバラミンを含む)と高い結合活性で結合することができる。したがって、放射性標識化したコバラミン誘導体の適用後の、全身像における細菌性感染の検出は、驚くべきことではなかった(Collins, D.A. et al., Mayo Clin. Proc. 75, 568-580(2000))。哺乳類の細胞の過増殖する形態の発生は、すでに存在するベクターレスコバラミン取り込みシステムのより有効な形態の多段階発癌による発生を明らかに伴う。
【0012】
放射性金属同位体を含む種々の生物活性剤に対してコバラミンをキャリヤとして用いる、研究方法が発表され特許化されている(Collins, D.A., US Pat. Appl. No., 2003/0144198を参照)。動物およびヒトにおいて得られた結果は、放射性標識化したコバラミン誘導体を使用する場合、腫瘍組織の標識化を示したが、健康な組織、たとえば腎臓および肝臓中でも、放射能の強い蓄積を示した。したがって、イメージングおよび放射線治療は最適には遠い。体の健康な器官の一部に重大な損傷をまねく可能性が今まで述べた適用を制限する。
【0013】
診断用および治療用のコバラミン誘導体を、急速増殖する細胞に、通常の細胞に比べてより高い濃度で投与するための、化合物、組成物、および方法が明らかに必要とされている。本発明の目的は、異常に高増殖する細胞に対してより高い特異性を有するが、耐性細胞の子孫の発生を回避するコバラミン誘導体を同定し、合成し、特徴づけし、そして適用する新規な方法を提供することである。
【0014】
発明の開示
本発明は、輸送タンパク質トランスコバラミンII(TCII)への結合が無いかまたははるかに低いコバラミン誘導体を、適切に適用した場合、コバラミンそれ自体とは異なり、血液ならびに良性の器官、たとえば腎臓および肝臓中の蓄積率は、腫瘍性組織(新生物組織ともいう)中の蓄積率に比べてはるかに低く、そして血液からより急速に排除されるという観察に基づいている。ビタミンB12代用品として働くコバラミン誘導体を選択することにより、新生物組織における耐性子孫の形成の危険性が大きく低減される。
【0015】
本発明は、
(a)トランスコバラミンIIへの結合親和性が無いかまたは低く、かつ
(b)ビタミンB12代用品として活性を保持する、コバラミン誘導体に関するものである。
【0016】
特に本発明は、
(a)結合テストにおいて、非変性コバラミンの結合親和性に比べた場合、トランスコバラミンIIへの結合親和性が20%未満、好ましくは5%未満であり、かつ
(b)増殖試験において、ビタミンB12代用品として、2%より高い活性を保持する、コバラミン誘導体に関するものである。
【0017】
TCIIに対する結合親和性が低いか無い本発明の化合物の例は、治療剤および/または診断剤、たとえば放射性金属を担持する特定のコバラミン誘導体である。本発明の化合物は、精製したTCIIを用いる結合テストと、テスト生物としてLactobacillus delbrueckiiを用いる増殖試験の双方の結果に基づいて選択される。
【0018】
本発明は、さらに、
(a)腫瘍性疾患(新生物疾患ともいう)または感染を負う疑いのある哺乳類を、一定期間ビタミンB12欠乏食にさらし、
(b)続いて、診断薬を担持する本発明のコバラミン誘導体を適用すること
を含む、哺乳類における新生物疾患または微生物による感染の診断方法に関するものである。
【0019】
本発明は同様に、
(a)治療が必要な哺乳類を一定期間ビタミンB12欠乏食にさらし、
(b)続いて、治療剤を担持する本発明のコバラミン誘導体を適用すること
を含む、新生物疾患または微生物による感染を患う哺乳類の治療方法に関するものである。
【0020】
本発明は、新生物疾患もしくは微生物による感染の診断方法における、または新生物疾患もしくは微生物による感染を患う哺乳類の治療方法における、本発明によるコバラミン誘導体の使用にも関するものである。
【0021】
本発明は、さらに、本発明のコバラミン誘導体を含む薬学的組成物、特に診断用途に適切な薬学的組成物および治療用途に適切な薬学的組成物、ならびに診断方法および治療上の処置方法におけるこのような薬学的組成物の使用に関するものである。
【0022】
本発明は、本発明による診断または治療上の処置において有用な化合物の製造用中間体、特に、結合放射性金属用キレーターで置換されているがキレーターに結合された金属または非放射性金属を有しない化合物にも関するものである。
【0023】
本発明によるコバラミン誘導体は、攻撃的な、急速に進行する新生物疾患、たとえば癌の診断および/または治療ならびに/あるいは病原性微生物による局部感染の診断および/または治療にとって、特に高い価値がある。
【0024】
発明の詳細な説明
コバラミンベクタータンパク質(または輸送タンパク質)TCIIへの結合親和性が無いかまたは極めて低いコバラミン誘導体は、ビタミンB12欠乏食にさらした哺乳類に適用した場合、過増殖する細胞中では高い取り込み率を維持しながら、血液中ならびに重大な器官、たとえば腎臓および肝臓中で大きく低減した蓄積を示し、したがって、新生物疾患および微生物による局部感染のより明確な診断および治療を可能にする。
【0025】
TCIIへの結合親和性が低く、かつビタミンB12活性を維持する本発明の化合物は、たとえば式(I):
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、Rb、Rc、Rd、およびReは、互いに独立に、スペーサー−キレーター基、抗生物質もしくは抗増殖性の治療剤、炭素原子数4〜20の立体的に必要な有機基(sterically demanding organic group)、または水素であり;
Rは、それぞれリンカーZを介して結合する、スペーサー−キレーター基または抗生物質もしくは抗増殖性の治療剤、あるいは水素であり;
ただし、Rb、Rc、Rd、Re、およびRRの少なくとも3個の残基は水素であり、そしてRb、Rc、Rd、およびReの少なくとも1個の残基は、水素とは異なり;
Xは、単座配位子であり;そして
中心コバルト(Co)原子は、場合により放射性同位体の形態である)の化合物である。
【0028】
特定の態様では、Reは水素である。
【0029】
単座配位子Xは、たとえばシアノ;
ハロゲン、たとえばフルオロ、クロロ、ブロモ、もしくはヨード、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、またはイソチオシアナト;
直鎖状または分岐状の、1〜25個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を含むアルキル、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、またはイソブチル、あるいはn−ヘキシル、またはn−デシル、そして場合によりヒドロキシ、メトキシ、またはアミノで置換された、たとえばヒドロキシメチル、メトキシメチル、アミノメチル、ヒドロキシエチル、またはメトキシエチル;
ニトリルR−CN、イソニトリルR−NC、カルボキシレートR−COO-、またはチオレートR−S-(式中、Rは、直鎖状または分岐状の、1〜15個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含むアルキル、またはアリール、たとえばフェニルまたはナフチルである)、たとえばアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、メチルイソシアニド、フェニルイソシアニド、アセテート、プロピオネート、ベンゾエート、メチルチオレート、エチルチオレート、n−ヘキシルチオレート、またはチオフェノレート;
ホスファイト(RO)3P(式中、置換基Rは同じか異なり、1〜6個の炭素原子を含むアルキルまたはアリール、たとえば場合により置換フェニルまたはナフチルを表す)、たとえばトリメチルホスファイト、メチルジフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、またはトリ−o−トリルホスファイト;
ヒドロキシまたはアコ(aquo);あるいは
5’−デオキシアデノシル基または関連するヌクレオシドである。
【0030】
好ましくは、Xは、シアノ、メチル、ヒドロキシ、アコ、または5’−デオキシアデノシル基である。シアノがもっとも好ましい。
【0031】
置換基Rb、Rc、Rd、Re、またはRRとしてのスペーサー−キレーター基は、コバラミンのNHまたはO官能基にスペーサーを介して結合された金属原子に対するキレーターであり、場合により金属原子、特に放射性金属原子を担持する。
【0032】
スペーサー−キレーター基が金属原子を担持しない式(I)の化合物は、本発明による診断方法および/または治療上の処置において有用な化合物の製造で使用する中間体である。
【0033】
置換基Rb、Rc、Rd、Re、またはRRとしての抗生物質または抗増殖性の治療剤は、アミノグリコシド系抗生物質、たとえばゲンタマイシン、テトラサイクリン系抗生物質、代謝拮抗物質、たとえばセレノメチオニン、マクロライド系抗生物質、たとえばエリスロマイシンおよびトリメトプリムから選択される抗生剤、あるいは、代謝拮抗物質、たとえば5−フルオロウラシル、アルキル化剤、たとえばオキサリプラチン、dacarbazin、シクロホスファミド、もしくはカルボプラチン、細胞周期阻害剤、たとえばビンブラスチンまたはドセタキセル、DNAブレーカー(breaker)(トポイソメラーゼ阻害剤、インターカレーター(intercalator)、ストランドブレーカー(strand breaker))、たとえばドキソルビシン、ブレオマイシン、またはトポテカン、情報伝達経路を干渉する化合物、たとえばカスパーゼ活性調節剤、細胞死受容体のアゴニストまたはアンタゴニスト、ならびにヌクレアーゼ、ホスファターゼ、およびキナーゼの調節剤、たとえばイマチニブメシラート、デキサメタゾン、ホルボールミリステートアセテート、サイクロスポリンA、クエルセチン、またはタモキシフェンから選択される抗増殖剤であり、いずれもコバラミンのNHまたはO官能基に直接に結合されるか、またはスペーサーを介して共有結合される。
【0034】
スペーサーは、1個または2個の炭素原子を窒素および/または酸素原子に代えられていてもよく、そして脂肪族鎖がヒドロキシ、オキソ、またはアミノで置換されていてもよい炭素原子数2〜10、好ましくは炭素原子数2〜6、たとえば炭素原子数2〜5の脂肪鎖である。特に2個の隣接する炭素原子がアミド官能基−NH−CO−またはエステル官能基−O−CO−で置換されていてもよい。
【0035】
コバラミンのNHまたはO官能基をキレーターと結合する顕著なスペーサーは、エチレン、プロピレン、ブチレン、またはペンチレン基、あるいは1個の炭素を酸素もしくは窒素に代えるか、または1個の炭素原子を酸素もしくは窒素に代え、隣接する炭素原子がオキソで置換されたような基である。
【0036】
キレーターは、金属原子と結合するような距離で、窒素、酸素、および硫黄から選択されるドナー原子を2個、3個以上有する化合物である。顕著なキレーターは、互いに金属原子の結合が可能な距離にN、Oおよび/またはSドナー原子を含む3箇所の金属結合部位を有する三座キレーターである。ドナー原子としての窒素原子は、たとえば脂肪族アミン、芳香族アミン、または窒素含有芳香族複素環の一部である。ドナー原子としての酸素原子は、たとえばアルコール、エーテル、エステル、またはカルボキシ官能基である。ドナー原子としての硫黄原子は、たとえばチオエーテルまたはチオールである。ドナーは、たとえば脂肪族の炭素鎖あるいはアミド結合および/またはエーテル官能基を含む鎖により結合することができ、アミノ酸誘導体、ポリエーテルなどとすることができる。
【0037】
好ましいキレーターは、式(II)〜(IX)のキレーターである。カルボキシル基は、金属原子との錯体形成に付随して開裂して配位カルボキシレート基を得るエステルとして含有できる。このようなエステル化されたキレーターにおいて、エステルは、アルキルが直鎖状または分岐状であり、そして1〜25個の炭素原子を含み、場合により1〜5個の炭素原子が窒素または酸素に代えられるか、または1個もしくは2個の炭素原子が硫黄またはリンに代えられ、場合によりフェニル、ピリジル、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、オキソ、またはアミノで置換されたアルキルエステルとすることができる。エステルは、アリールまたはヘテロアリールが、3〜10個の炭素原子と、0、1、もしくは2個の酸素、0、1、2、もしくは3個の窒素、または0もしくは1個の硫黄原子とを有するアリールまたはヘテロアリールエステルとすることもできる。このようなエステル残基は、特定の反応条件下でそれらを開裂可能にするために、たとえばカルボン酸に対する保護基として通常用いるエステルについて記載されているように(Green, T. W., and Wuts, P. G. M., Protective groups in organic synthesis, Wiley 1999を参照)適切に置換されていてもよい。
【0038】
エステル化された、たとえばメチル、エチル、またはシアノエチルでエステル化されたキレーターも、好ましいキレーターの定義に含まれる。
【0039】
【化4】

【0040】
考慮に入れる放射性金属は、放射性同位体、たとえば94mTc、99mTc、188Re、186Re、111In、90Y、64Cu、67Cu、および177Lu、特に99mTc、188Re、186Re、および111Inである。
【0041】
考慮に入れるCoの放射性同位体は、たとえば57Coおよび60Coである。
【0042】
炭素原子数4〜20の立体的に必要な有機基は、たとえば、場合によりヒドロキシ、アルコキシ、オキソ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、またはアルコキシカルボニルで置換されたアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキル基である。アリール基の例は、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、ヒドロキシフェニル、またはナフチルである。ヘテロアリール基の例は、ピリジル、ピロリル、イミダゾリル、またはベンズイミダゾリルである。アルキル鎖において、炭素原子は、窒素または酸素原子に代えられていてもよい。たとえば、アルキル鎖において、1個の炭素原子が窒素(または酸素)原子に代えられていてもよく、隣接する炭素原子がオキソで置換されていてもよく、これによりカルボキサミド(またはエステル官能基、それぞれ)に相当する。立体的に必要な有機基の顕著な例は、イソブチル、t−ブチル、t−ペンチル、o−トリル、o−メチルベンジル、または2,6−ジメチルベンジルである。
【0043】
Rをスペーサー−キレーター基または抗生物質もしくは抗増殖性の治療剤に結合するリンカーZは、ホスフェート、ホスフォネート、カルボン酸エステル、または炭素原子数1〜10のアルキレンおよびこれらの組合せの群から選択される結合またはリンカーである。このようなリンカーは、スペーサー−キレーター基または治療剤(場合により前記定義のスペーサーを含む)を、コバラミンの酸素原子に結合する。
【0044】
Rで誘導体化されているが、Rb、Rc、Rd、およびReが全て水素である化合物は、TCにより認識され、そしてまだ酵素活性であり、したがって本発明の範囲から除外する。
【0045】
本発明の化合物の選択は次の基準に基づいている:
(a)TCIIへの結合親和性が、無いかまたは(非変性の)コバラミンの結合と比べた場合はるかに低く、たとえば20%未満、特に10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満の結合親和性であり;かつ
(b)ビタミンB12依存バクテリアまたは哺乳類の細胞系を用いる増殖テストにおける、ビタミンB12代用品としての活性が、(非変性の)コバラミンのビタミンB12活性に比べた場合、たとえば2%より高い活性、特に10%より高い活性、好ましくは20%より高い活性である。
【0046】
コバラミン(CbI)誘導体のTCIIへの結合親和性をテストするために、ウサギの血液から得た部分的に精製したTCIIを用いてインビトロテストを行う。基質としてE. coli発現システムで調製した組み換えTCIIも使用することができる。
【0047】
本発明のコバラミン誘導体は、そのビタミンB12代用品としての機能を維持しなければならない。このため、細胞増殖速度をより高めることにつながる耐性の発生の危険性は、極めて低くなるであろう。多分、TCIIへの結合活性が低いかまたは無いコバラミン誘導体をもはや捕捉することができない変異細胞は、極めて有効なTCII非依存ビタミンB12取り込み機構のおかげで、高い増殖速度を達成するそれらの先祖細胞の利点を失ってしまうであろう。
【0048】
コバラミン誘導体のビタミンB12活性をテストするために、Lactobacillus delbrueckiiを用いて、シアノコバラミン(CN−CbI)用国際勧告テスト株により試験を行う。シアノコバラミンを含まない試験培地へのシアノコバラミンの追加は、定量固体拡散プレート試験(quantitative solid diffusion plate assay)により測定することができる、シアノコバラミン栄養素要求株の菌株の増殖応答をまねく。該テストは、コバラミン誘導体が生命維持触媒としてシアノコバラミンにどの程度(%)置き換わることができるかを特定するために用いた。
【0049】
本発明は、
(a)哺乳類を一定期間ビタミンB12欠乏食にさらし、
(b)続いて、診断薬または治療剤を担持する本発明のコバラミン誘導体を適用すること
を含む、哺乳類における新生物疾患および微生物による局部感染の診断方法および治療方法、ならびにこのような方法における本発明のコバラミン誘導体の使用に関するものである。
【0050】
ビタミン欠乏食にさらした哺乳類において、TCII非結合シアノコバラミン誘導体適用の、その体内分布へのポジティブな効果を表1に示す。
【0051】
【表1】


実施例5:シアノコバラミン−b−ブチル−PAPAcet
実施例6:シアノコバラミン−b−ブチル−アミノカルボキシメチル−His−OMe
実施例8:シアノコバラミン−c−ブチル−PAPAcet
実施例10:シアノコバラミン−b−エチル−PAMA−OEt
実施例11:シアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−OEt
実施例12:シアノコバラミン−b−ブチル−PAMA−OEt
実施例14:シアノコバラミン−b−ヘキシル−PAMA−OEt
実施例18:シアノコバラミン−d−プロピル−PAMA−OEt
実施例20:シアノコバラミン−b−プロピル−His−OMe
実施例22:シアノコバラミン−b−エチル−トリアミン
実施例25:シアノコバラミン−5’−ホスホコラミン−His−OMe
【0052】
表1に集めた体内分布分析の結果から、TCII非バインダー、たとえば実施例10、11、12、18、および22に記載の本発明の化合物は、腫瘍において比較的高い蓄積、血液中の5倍以上、ならびに問題とすべき器官、腎臓および肝臓中で見られる量の少なくとも半分を有することが分かる。実施例5、6、8、14、20、および25の化合物は、TCIIに結合するので本発明の化合物の定義に該当せず、これらは参照化合物としてのみここで述べる。
【0053】
本発明によるコバラミン誘導体は、攻撃的な、急速に進行する新生物疾患、たとえば癌の診断および/または治療にとって特に高い価値がある。本発明の化合物は、悪性腫瘍、たとえばメラノーマ、線維肉腫、卵巣嚢腫、膵臓腫瘍、骨肉腫、および急性白血病(ごくわずかの例を挙げると)に関与する、高増殖するヒト由来の細胞の治療に用いることができ、TCIIを介したエンドサイトーシスを迂回することができる。本発明の方法は、放射性同位体を担持するまたは/および細胞を破壊する非放射性薬剤を担持するコバラミン誘導体のTCIIを介した好ましくない取り込みからの、良性器官の特定の保護を可能にする。
【0054】
本発明の化合物は、癌画像化(イメージング)および癌治療においてばかりでなく、コバラミンの高い直接の取り込みに依存する微生物による局部感染の視覚化および可能性のある治療にも有用である。
【0055】
抗増殖剤を担持する本発明の化合物は、該薬剤を活性な形態で過増殖する細胞(ここで、細胞内のアミド分解後にその作用を発揮することができる)に輸送するのに有効である。
【0056】
新生物および/または感染性疾患の治療方法において、適切な治療剤を担持する本発明の化合物は、単独でまたは1種以上の他の治療剤と組み合わせて投与することができ、可能な組み合わせ治療は、固定された組合せの形態、あるいは本発明の化合物および1種以上の他の治療剤をずらしてまたは互いに独立に与える投与、あるいは固定された組合せおよび1種以上の他の治療剤を組み合わせた投与を用いる。本発明の化合物は、そのほかにまたはさらに、特に腫瘍治療については、化学療法、免疫療法、外科手術の介入、またはこれらの組み合わせと一緒に投与することができる。長期間の治療は、他の治療計画の状況において補助治療として同様に可能である。
【0057】
本発明は、さらに、本発明のコバラミン誘導体を含む薬学的組成物、特に診断用途に適切な薬学的組成物および治療用途に適切な薬学的組成物に関するものである。
【0058】
非経口的投与用薬学的組成物、たとえば静脈内、筋肉内、または皮下の投与が好ましい。組成物は、活性成分を単独でまたは薬学的に許容される担体とともに含む。活性成分の投与量は、治療する疾患、ならびに種類、その年齢、体重、および個々の病状、個々の薬物動態学のデータ、および投与形態に依存する。
【0059】
製造方法
本発明の化合物は、当技術分野において公知の標準的な方法により製造する。
【0060】
好ましくは、シアノコバラミン、すなわち式(I)(式中、Rb、Rc、Rd、Re、およびRRは、水素であり、そしてXはシアノである)の化合物を、制御された条件下、たとえば希鉱酸を用いて加水分解し、得られたモノ酸の混合物(カルバモイル基CONH2の一つがCOOHに転化した)を分離する。ビス酸も同様に得ることができる。
【0061】
次に、シアノコバラミン−b、c、d、またはe−酸、すなわちCONHRb、CONHRc、CONHRd、またはCONHReをそれぞれCOOHに代え、そしてXがシアノである式(I)の化合物を、アミド形成の標準条件、たとえばペプチドの化学において公知の条件下、対応するアミンRb−NH2、Rc−NH2、Rd−NH2、およびRe−NH2それぞれと反応させる。アミド形成を妨げる残基Rb、Rc、Rd、およびRe中の官能基は、保護された形態であるのが好ましく、そしてアミド形成後に標準的な方法により脱保護する。スペーサーがアミド官能基を含む化合物の製造のために、アミド形成の標準条件下、シアノコバラミン−b、c、d、またはe−酸とジアミンH2N(CH2nNH2とを反応させ、得られたH2N(CH2n−官能化されたシアノコバラミンと対応するカルボン酸とを再びアミド形成の標準条件下でさらに縮合して、置換基Rb、Rc、Rd、およびReそれぞれを生成することも可能である。
【0062】
cが水素とは異なる化合物製造のための、好ましい方法は、Brown et al., Inorg. Chem. 1995, 3038に記載のo−ラクトンの形成、次に還元的ラクトン開環反応である。
【0063】
Rが水素とは異なる化合物の製造のために、シアノコバラミン(またはRb、Rc、Rd、またはReが水素とは異なるシアノコバラミン誘導体)と、RR−L(式中、Lはエステル結合を形成するための適切な活性化脱離基で、たとえばハロゲン、混合無水物の残基、または通例のペプチドおよび核酸合成でのカルボン酸、ホスフェート、もしくはホスフォネートエステル形成のための別の通常の活性化残基である)とを反応させる。
【0064】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
実施例
Merck、Dietikon(CH)、AldrichまたはFluka、Buchs(CH)からの試薬グレードの化学物質を、それ以上精製せずに使用した。
【0066】
BOP=1−ベンゾトリアゾリルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
DCC=ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
EDC=1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
Fmoc=(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル
HOSu=N−ヒドロキシスクシンイミド
MES=2−(4−モルホリニル)エタンスルホン酸
RT=室温
TBTU=ベンゾトリアゾール−1−イル−N−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート
TEAP=トリエチルアンモニウムホスフェート
Teoc=2−トリメチルシリル−エトキシカルボニル
TFA=トリフルオロ酢酸
【0067】
HPLC分析を、EG & G Berthold LB 508 radiometric検出器を備えたMerck-Hitachi L-7000 systemで、Waters XTerra RP8カラム(粒子寸法5μm、1×100mm)を用いて、流量1ml/minで行った。クロマトグラムは250および360nmで記録した。溶媒は主に緩衝剤水溶液とした。酢酸ナトリウム緩衝液は、酢酸2.9mlと、水900mlおよびメタノール100ml中の水酸化ナトリウム(2M)4.55mlとを混合することにより調製した。トリス緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(605mg)を水に溶解し、pH8.2に達するまで2MのHClを加え、容量を1000mlに調整し、アセトニトリル(10ml)を加えることにより調製した。溶媒は常にメタノールとした。
【0068】
分取HPLC分離を、Prostar 215ポンプ2個およびProstar 320UV/Vis検出器を備えたVarian Prostar systemで、Waters XTerra Prep RP8カラム(粒子寸法5μm、3×100mmおよび30×100mm)を用いて行った。流量は、3×100mmのカラムに対して4ml/minおよび30×100mmのカラムに対して30ml/minとした。
【0069】
UV/VisスペクトルはVarian Cary 50 spectrometerで記録し、IRスペクトルはBio-Rad FTS-45 spectrometerでKBr錠剤に押し固めたサンプルを用いて記録した。Electrospray ionisation massスペクトル(ESI−MS)は、Merck Hitachi M-8000 spectrometerで記録した。レニウム化合物においては、187Re同位体の値を示した。NMRスペクトルはBruker DRX 500 MHz spectrometerで記録した。化学シフトは、参照として残留の溶媒プロトンに対して示した。
【0070】
コバラミン誘導体(mgの量)は、化合物の水溶液をChromafix RP18ce カートリッジに適用し、次に水で十分にすすぐことにより脱塩した。脱塩した生成物を次にメタノールで溶出し、溶媒を真空中で除去し、生成物を高真空で乾燥した。多量(50mgより多)の場合は、Meth. Enzymol. 1971, 18(3), p. 43に記載のフェノール抽出により脱塩した。
【0071】
(N−3−アミノプロピル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ)酢酸エチルエステル(プロピル−PAMA−OEt)を、ペンチル類似化合物についてSchibli et al. (Nucl. Med. Biol. 2003, 30, 465)に記載されているように製造した。この化合物は塩基性条件下で環化する傾向がある。したがって、Boc保護された中間体を保管し、さらなる官能化の直前に、希釈HCl水溶液中で攪拌することによりBocを除去した。エチルおよびヘキシル誘導体は類似方法で製造した。
【0072】
Re([N−3−アミノプロピル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ]酢酸)(CO)3を、完全に脱保護された(N−3−アミノプロピル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ)酢酸と、(NEt[Re(OH(CO)3]とを反応させることにより製造した。
【0073】
メチル1−カルボキシメチル−N−Fmoc−ヒスチジナートトリフルオロアセテートを、Pak et al. (Chem. Eur. J. 2003, 9, 2053-2061)に記載されているように製造した。化合物をHCl(0.05M)中で攪拌し、次に真空中、室温で蒸発させることにより、対イオンを塩素に交換した。
【0074】
メチル3−アミノプロピル−N−Teoc−ヒスチジナートを、van Staveren et al.(Organic & Molecular Chemistry 2004, 2, 2593)に記載されているように製造した。
【0075】
3−(N−2−シアノエトキシカルボニルメチル)−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ)プロピオン酸4−ニトロ−フェニルエステルを、Kunze(Dissertation, University of Zurich, 2004)に記載されているように製造した。
【0076】
実施例1:シアノコバラミンモノカルボン酸(b、dおよびe)
Pathare et al. (Bioconjugate Chem. 1996, 217) に記載されているように、ビタミンB12(1.88g、1.39mmol)を、HCl0.1M(190ml)中で加水分解した。精製は次のように変更した。フェノール抽出による脱塩後、Dowexカラムで、3つの画分、d−酸だけを含有する画分、b−酸およびd−酸だけを含有する第2の画分、b−酸およびe−酸だけを含有する第3の画分に単離させた。b−酸およびd−酸の混合物を、分取HPLC(カラム:Waters XTerra Prep RP8、5μm、30×100mm;勾配0.5%min-1、100%酢酸緩衝液から出発)により分離した。溶媒としてトリス緩衝液を用いたほかは、同じシステムでb−酸およびe−酸の混合物を分離した。シアノコバラミン−b−酸を収量280.6mg(14.9%)で、シアノコバラミン−d−酸を収量131.5mg(7.0%)で、およびシアノコバラミン−e−酸を収量94.26mg(5.0%)で単離した。
【0077】
実施例2:シアノコバラミン−b−(2−アミノエチル)アミド[シアノコバラミン−b−エチルアミン]
シアノコバラミン−b−(2−アミノエチル)アミドを、ドデカン類似化合物の合成に対してPathare et al. (Bioconjugate Chem. 1996, 217)に記載されているように製造した。エチレンジアミン(132mg;0.147ml;2.2mmol)をDMF/H2O混合物(10ml;1/1v/v)に溶解した。1MのHClの添加によりpHを5に調整した。この溶液にシアノコバラミン−b−酸(60.0mg、44.4μmol)およびKCN(57mg;0.87mmol)を加え、次にpHを5.5に調整した。次に、EDC(84.2mg;0.43mmol)およびHOSu(50.6mg;0.44mmol)を加えた。この混合物をRTで3日間攪拌し、追加分のEDCおよびHOSuを24時間間隔で加えた。最後に、混合物を乾燥するまで真空中で蒸発させ、次に分取HPLC精製(アセテートシステム、勾配:0.5%min-1、100%緩衝液から出発)して、シアノコバラミン−b−(2−アミノエチル)アミド34mg(55%)を得た。
【0078】
【表2】

【0079】
実施例3:シアノコバラミン−b−(4−アミノブチル)アミド[シアノコバラミン−b−ブチルアミン]を、エチル類似化合物の合成について上述したように製造した。
【0080】
【表3】

【0081】
実施例4:シアノコバラミン−b−エチル−PAPAcet
シアノコバラミン−b−エチルアミン(実施例2;24mg;17.2μmol)をDMF/DMSO混合物(5ml;4/1v/v)に溶解した。この混合物に3−[N−2−シアノエトキシ−カルボニルメチル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ]−プロピオン酸4−ニトロフェニルエステル(14mg、34.1μmol)およびDIPEA(5μl、29μmol)を加えた。RTで24時間攪拌後、混合物を乾燥するまで真空中で蒸発させた。分取HPLC(アセテートシステム、勾配:0.5%min-1、100%緩衝液から出発)により精製して、シアノコバラミン−b−エチル−PAPAcet20mg(70%)を赤色固体として得た。
【0082】
【表4】

【0083】
実施例5:シアノコバラミン−b−ブチル−PAPAcet
シアノコバラミン−b−ブチルアミン(実施例3、5.5mg、3.9μmol)および3−[N−2−シアノエトキシ−カルボニルメチル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ]プロピオン酸4−ニトロフェニルエステル(2.5mg、6.1μmol)を、乾燥DMSO(0.5ml)およびDMF(0.5ml)の混合物に溶解した。pH8〜9に達するまでDIPEA(5μl、29μmol)を加え、混合物を室温で攪拌した。5時間後、HPLC分析により生成物形成が完結したことを確認した。溶媒を真空中で部分的に蒸発させて、エチルエーテルを添加して生成物を沈殿させた。懸濁液を遠心分離にかけ、3回デカンテーションして、微粉末を得た。分取HPLC(アセテートシステム、勾配:0.5%min-1、100%緩衝液から出発)により精製して、純粋な生成物を収量2.7mg(41%)で得た。
【0084】
【表5】

【0085】
実施例6:シアノコバラミン−b−ブチル−アミノカルボキシメチル−His−OMe
乾燥DMSO(2ml)中シアノコバラミン−b−ブチルアミン(49.6mg、34.8μmol)の溶液を、メチル1−カルボキシメチル−N−Fmoc−ヒスチネート塩酸塩(35.5μmol)およびBOP(46.2mg、104.4μmol)に加えた。DIPEA(12μl、70.0μmol)を加え、この溶液をRTで16時間攪拌した。HPLC分析によりコバラミン出発材料がFmoc保護された中間体へ完全に転化したことを確認した。ジエチルエーテルを加えることにより中間体を沈殿させ、懸濁液を遠心分離にかけ、2回デカンテーションして微粉末を得た。中間体をDMF(5ml)に溶解し、ピペリジン(225μl)を加えた。RTで1.5時間攪拌後、ジエチルエーテルを加えることにより生成物を沈殿させ、懸濁液を遠心分離にかけ、3回デカンテーションして微粉末を得た。分取HPLC(アセテートシステム、勾配:1%min-1、100%緩衝液から出発)により精製して、純粋な生成物を収量17.1mg(32.1%)で得た。
【0086】
【表6】

【0087】
実施例7:シアノコバラミン−c−(4−アミノブチル)−アミド[シアノコバラミン−c−ブチルアミン]
シアノコバラミン−c−酸をBrown et al. (Inorg. Chem. 1995, 3038)に記載されているように製造した。1,4−ジアミノブタン(0.059ml;0.59mmol)をDMF/H2O混合物(10ml;1/1v/v)に溶解した。1MのHClの添加によりpHを5.2に調整した。この溶液にシアノコバラミン−c−酸(16.0mg、11.8μmol)、KCN(15.3mg;0.236mmol)、EDC(9.0mg;47.4μmol)、およびHOSu(5.4mg;47.2μmol)を加えた。混合物をRTで4日攪拌し、追加分のEDCおよびHOSuを加えた。1日おいた後、追加分のEDCおよびHOSuを再び加えた。合計6日後、HPLC分析によりコバラミン誘導体が完全に転化したことを確認した。最後に、混合物を乾燥するまで真空中で蒸発させ、次に分取HPLC精製(RP C18カラム、緩衝液としてHCl1mM、勾配:30分で20%メタノールから50%メタノールまで)して、シアノコバラミン−c−ブチルアミン9.8mg(58%)を得た。
【0088】
【表7】

【0089】
実施例8:シアノコバラミン−c−ブチル−PAPAcet
シアノコバラミン−b−ブチル−PAPAcetの合成(実施例5)で述べたように、シアノコバラミン−c−ブチルアミン(7.0mg、4.9μmol)と3−[N−2−シアノエトキシカルボニルメチル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ]プロピオン酸4−ニトロフェニルエステル(3.8mg、9.2μmol)とを反応させ、精製して、純粋な生成物を収量3.8mg(78%)で得た。
【0090】
【表8】

【0091】
実施例9:シアノコバラミン−b−ブチル−PAPA−Re(CO)3
シアノコバラミン−b−ブチルアミン(実施例3、24.6mg、17.2μmol)およびRe(CO)3(3−[N−カルボキシメチル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ]プロピオン酸)(9.1mg、17.2μmol)をDMSOに溶解した。BOP(22.9mg、51.7μmol)およびDIPEA(2.94μl、17.2μmol)を加え、混合物を室温で攪拌した。DIPEAおよびBOPを4日間毎日加えた。HPLC分析により2種の生成物の形成を確認した。エチルエーテルを添加してこれらを沈殿させた。懸濁液を遠心分離にかけ、3回デカンテーションして微粉末を得た。分取HPLC(アセテートシステム、勾配:0.5%min-1、100%緩衝液から出発)により精製して、主生成物ピークを収量2.3mg(7.0%)で単離させた。
【0092】
【表9】

【0093】
実施例10:シアノコバラミン−b−エチル−PAMA−OEt
シアノコバラミン−b−酸(20.0mg、14.8μmol)をDMSO(0.8ml)に溶解した。続いてDMF(2ml)およびNEt3(0.1ml)を加えた。異なるフラスコ中、(N−2−アミノエチル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ)酢酸エチルエステル(エチル−PAMA−OEt)塩酸塩(無水EtOH/2MのHCl混合物(7.5ml;4/1v/v)中で一晩攪拌し、続いて真空中で揮発分を除去することによる、Boc保護された誘導体の開裂を介して製造した)約5当量を、DMF/NEt3混合物(4.5ml;8/1v/v)に溶解した。2つの溶液を混合し、次にTBTU(32.1mg、0.1mmol)を添加した。RTで45分攪拌した後、真空中で溶媒を除去した。残留物を分取HPLC(アセテートシステム、勾配:1.0%min-1、100%緩衝液から出発)により精製して、シアノコバラミン−b−エチル−PAMA−OEt12mg(51%)を赤色固体として得た。
【0094】
【表10】

【0095】
実施例11:シアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−OEt
水(1ml)中の製造したての(N−3−アミノプロピル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ)酢酸エチルエステル(361μmol)溶液を、シアノコバラミン−b−酸(65.0mg、48.1μmol)に加えた。EDC(46.1mg、240μmol)を加え、NaOH(0.1M)でpHを5.5に調整した。RTで15時間攪拌した後、HPLC分析(酢酸ナトリウム緩衝液)から、生成物形成が約50%であることが分かった。EDC(46.1mg、240μmol)を再び加えたが、室温での攪拌の延長はさらなる生成物形成を導かなかった。真空中で溶媒を除去し、分取HPLC(勾配0.5%min-1、100%酢酸緩衝液から出発)により残留物を精製した。主画分を集め、真空中で溶媒を除去し、生成物を脱塩して、シアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−OEtを収量25.8mg(16.2μmol、33.3%)で得た。
【0096】
【表11】

【0097】
実施例12:シアノコバラミン−b−ブチル−PAMA−OEt
シアノコバラミン−b−酸(20.0mg、14.8μmol)をDMSO(0.8ml)に溶解した。続いてDMF(2ml)およびNEt3(0.1ml)を加えた。異なるフラスコ中、(N−4−アミノブチル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ)酢酸エチルエステル(ブチル−PAMA−OEt)塩酸塩(無水EtOH/2MのHCl混合物(7.5ml;4/1v/v)中で一晩攪拌し、続いて真空中で揮発分を除去することによる、Boc保護された誘導体の開裂を介して製造した)約5当量を、DMF/NEt3混合物(4.5ml;8/1v/v)に溶解した。2つの溶液を混合し、次にTBTU(32.1mg、0.1mmol)を添加した。RTで45分攪拌した後、真空中で溶媒を除去した。残留物を、分取HPLC(アセテートシステム、勾配:1.0%min-1、100%緩衝液から出発)により精製して、シアノコバラミン−b−ブチル−PAMA−OEt15mg(63%)を赤色固体としてを得た。
【0098】
実施例13:シアノコバラミン−b−ブチル−PAMA−OH
ブロモ酢酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステルを、乾燥THF中、0℃で、ブロモアセチル臭化物および9H−フルオレンイルメタノールから製造した。Boc−ブチル−PAMA−OFm([(4−t−ブトキシ−カルボニルアミノ−ブチル)−ピリジン−2−イルメチル−アミノ]−酢酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル)は、Schibli et al.がBoc−ペンチル−PAMA−OMeの合成について用いた手順(Nucl. Med. Biol. 2003, 30, 465)にしたがって、Boc−NH−(CH24NH2、ピリジン−2−アルデヒド、およびブロモ酢酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステルから製造した。
【0099】
シアノコバラミン−b−酸(20.0mg、14.8μmol)をDMSO(0.8ml)に溶解し、続いてDMF(2ml)およびNEt3(0.1ml)を加えた。異なるフラスコ中、[(4−アミノ−ブチル)−ピリジン−2−イルメチル−アミノ]−酢酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(ブチル−PAMA−OFm)(トリフルオロ酢酸/CH2Cl2混合物(4ml;1/2v/v)中で1時間攪拌し、続いて真空中で揮発分を除去することによる、Boc保護された誘導体の開裂を介して製造した)約5当量をDMF/NEt3混合物(4.5ml;8/1v/v)に溶解した。2つの溶液を混合し、次にTBTU(32.1mg、0.1mmol)を加えた。RTで45分攪拌した後、真空中で溶媒を除去した。残留物を、分取HPLC(アセテートシステム、勾配:1.5%min-1、100%緩衝液から出発)により精製して、シアノコバラミン−b−ブチル−PAMA−OFm15mgを赤色固体として得た。
【0100】
シアノコバラミン−b−ブチル−PAMA−OFm(15mg)をHNEt2/DMF混合物(2/1v/v)3mlに溶解し、RTで2時間攪拌した。真空中で溶媒を除去し、残留物を、分取HPLC(アセテートシステム、勾配:1.0%min-1、100%緩衝液から出発)により精製してシアノコバラミン−b−ブチル−PAMA−OH9mgを赤色固体として得た。
【0101】
実施例14:シアノコバラミン−b−ヘキシル−PAMA−OEt
シアノコバラミン−b−酸(20.0mg、14.8μmol)をDMSO(0.8ml)に溶解した。続いてDMF(2ml)およびNEt3(0.1ml)を加えた。異なるフラスコ中、N−6−アミノヘキシル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ)酢酸エチルエステル(ヘキシル−PAMA−OEt)塩酸塩(無水EtOH/2MのHCl混合物(7.5ml;4/1v/v)中で一晩攪拌し、続いて真空中で揮発分を除去することによる、Boc保護された誘導体の開裂を介して製造した)約5当量を、DMF/NEt3混合物(4.5ml;8/1v/v)に溶解した。2つの溶液を混合し、次にTBTU(32.1mg、0.1mmol)を加えた。RTで45分攪拌した後、真空中で溶媒を除去した。残留物を、分取HPLC(アセテートシステム、勾配:1.0%min-1、100%緩衝液から出発)により精製して、シアノコバラミン−b−ヘキシル−PAMA−OEt10mg(41%)を赤色固体として得た。
【0102】
【表12】

【0103】
実施例15:シアノコバラミン−b−エチル−PAMA−Re(CO)3
シアノコバラミン−b−エチル−PAMA−OEt(実施例10、11mg;7.0μmol)をNaHCO3溶液(2M)4mlに溶解した。MeOH1.5ml中の(NEt[ReBr3(CO)3]11mg(14.2μmol)の溶液を加えた。この混合物を85℃で1時間加熱した。混合物をRTに至らせた後、それを分取HPLC(アセテートシステム、勾配:分当り2.0%、緩衝液から出発)により精製した。収量:11mg(86%)。
【0104】
実施例16:シアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−Re(CO)3
シアノコバラミン−b−酸(26.7mg、19.8μmol)、Re([N−3−アミノプロピル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ]酢酸)(CO)3(29.2mg、60μmol)、EDC(11.5mg、60μmol)、およびHOSu(6.9mg、60μmol)を、水(5ml)およびDMSO(0.5ml)の混合物に溶解し、希HClおよびNaOHでpHを5.5に調整した。RTで5時間攪拌した後、HPLC分析(酢酸緩衝液)から、生成物形成が約33%であることが分かった。EDCおよびHOSuを再び加えた。EDCおよびHOSuを24時間間隔で添加しながら、混合物を室温で3日間攪拌した。真空中で水を除去し、ジエチルエーテルの添加により生成物を沈殿させた。油状懸濁液を遠心分離にかけ、デカンテーションした。ジエチルエーテルでの洗浄を、微細な沈殿が形成するまで、2回繰り返した。粗生成物を高真空で乾燥し、分取HPLC(勾配1%min-1、100%酢酸緩衝液から出発)により精製し、脱塩して、シアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−Re(CO)3を収量9.1mg(23%)で得た。
【0105】
【表13】

【0106】
実施例17:シアノコバラミン−b−ヘキシル−PAMA−Re(CO)3
シアノコバラミン−b−酸(20.0mg、14.8μmol)をDMSO(0.8ml)に溶解し、続いてDMF(2ml)およびNEt3(0.1ml)を加えた。異なるフラスコ中、[Re([N−3−アミノプロピル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ]酢酸)(CO)3]・CF3COOH(CH2Cl2およびTFA(2/1v/v)中で、0℃で1時間、保護された錯体をBoc開裂し、次に真空中、RTで揮発分を除去することを介して製造した)約5当量を、DMF/NEt3混合物(4.5ml;8/1v/v)に溶解した。2つの溶液を混合し、次にTBTU(32.1mg、0.1mmol)を添加した。RTで45分攪拌した後、真空中で溶媒を除去した。残留物を分取HPLC(アセテートシステム、勾配:2.0%min-1、100%緩衝液から出発)により精製して、シアノコバラミン−b−ヘキシル−PAMA−Re(CO)311mg(40%)を得た。
【0107】
【表14】

【0108】
実施例18:シアノコバラミン−d−プロピル−PAMA−OEt
シアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−OEtの合成(実施例11)について述べたように、シアノコバラミン−d−酸(9.3mg、6.9μmol)と、(N−3-アミノプロピル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ)酢酸エチルエステル(7μmol)およびEDC(6.6mg、34μmol)とを反応させた。生成物を収量3.6mg(33%)で単離した。
【0109】
【表15】

【0110】
実施例19:シアノコバラミン−d−プロピル−PAMA−Re(CO)3
シアノコバラミン−d−酸(20.0mg、14.8μmol)をDMSO(1.5ml)に溶解した。続いてDMF(2ml)およびNEt3(0.1ml)を加えた。異なるフラスコ中、Re([N−3−アミノプロピル−N−ピリジン−2−イルメチル−アミノ]酢酸)(CO)3約5当量をDMF/NEt3混合物(4.5ml;8/1v/v)に溶解した。2つの溶液を混合し、次にTBTU(32.1mg、0.1mmol)を加えた。RTで45分攪拌した後、真空中で溶媒を除去した。残留物を、分取HPLC(アセテートシステム、勾配:2.0%min-1、100%緩衝液から出発)により精製して、シアノコバラミン−d−プロピル−PAMA−Re(CO)320mg(73%)を得た。
【0111】
実施例20:シアノコバラミン−b−プロピル−His−OMe
シアノコバラミン−b−酸(20.0mg、14.8μmol)をDMSO(0.8ml)に溶解した。続いてDMF(2ml)およびNEt3(1ml)を加えた。異なるフラスコ中、メチル3−アミノプロピル−N−Teoc−ヒスチジナート約4当量をDMFに溶解した。これらの混合物を一緒にし、TBTU(32.1mg;0.1mmol)を加えた。混合物を45分攪拌した、続いて乾燥するまで真空中で蒸発させた。分取HPLC(アセテートシステム;勾配:1分当り2.0%、緩衝液から出発)により精製して、赤色固体16mg(67%)を得た。
【0112】
【表16】

【0113】
このTeoc保護された化合物のサンプル19mgを、TFA/CH2Cl2混合物(4/1v/v)に0℃で溶解した。この温度で4時間攪拌した後、分析HPLCから、出発材料の転化が完全であることが分かった。真空中、RTで溶媒を除去した。残留物に乾燥Et2Oを加え、次に真空中で溶媒を除去した。TFAを微量も残さず完全に除去するために、この工程を合計で3回行った。分取HPLC(アセテートシステム;勾配:1分当り0.5%、100%緩衝液から出発)により精製して、タイトルの化合物11mgを得た。
【0114】
【表17】

【0115】
実施例21:シアノコバラミン−b−プロピル−His−Re(CO)3
シアノコバラミン−b−酸(20.0mg、14.8μmol)をDMSO(0.8ml)に溶解した。続いてDMF(2ml)およびNEt3(0.1ml)を加えた。異なるフラスコ中、[Re(メチル3−アミノプロピル−N−Teoc−ヒスチジナート)(CO)3]・CF3COOH(CH2Cl2およびTFA(2/1v/v)中で、0℃で1時間、保護された錯体をBoc開裂し、次に真空中、RTで揮発分を除去することを介して製造した)約5当量を、DMF/NEt3混合物(4.5ml;8/1v/v)に溶解した。2つの溶液を混合し、次にTBTU(32.1mg、0.1mmol)を加えた。RTで45分攪拌した後、真空中で溶媒を除去した。残留物を、分取HPLC(アセテートシステム、勾配:2.0%min-1、100%緩衝液から出発)により精製して、シアノコバラミン−b−プロピル−His−Re(CO)37mg(73%)を得た。
【0116】
【表18】

【0117】
実施例22:シアノコバラミン−b−エチル−トリアミン
トリエチレンテトラミン(55.4μl、369μmol)を、DMF(2.5ml)および水(2.5ml)の混合物に溶解した。KCN(9.6mg、147μmol)を加え、HCl水溶液の添加によりpHを6に調整した。シアノコバラミン−b−酸(10.0mg、7.4μmol)、EDC(5.7mg、29μmol)、およびHOSu(3.4mg、29μmol)を加えた。6時間、24時間、48時間、および120時間後、同じ量のEDCおよびHOSuを加えた。HPLC分析(酢酸緩衝液)から、48時間後75%の転化率に達する遅い生成物形成であることが分かり、これは攪拌を延長しても超えなかった。144時間攪拌した後、真空中で溶媒を除去し、生成物を分取HPLC(緩衝液としてTFA0.1%水溶液を、溶媒としてメタノールを用い、勾配1%min-1で、80%緩衝液から出発)により精製した。生成物をシアノコバラミン−b−エチル−トリアミン×3TFAとして収量7.5mg(55%)で単離した。
【0118】
【表19】

【0119】
実施例23:シアノコバラミン−b−エチル−トリアミン−Re(CO)3
シアノコバラミン−b−エチル−トリアミン(5mg、2.7μmol)および(Et4N)2[ReBr3(CO)3](2.2mg、2.9μmol)を、リン酸緩衝液、pH7.4(0.1M、0.33ml)中、50℃で攪拌した。1時間後、HPLC分析から、出発材料が1つの生成物へ完全に転化したことが分かった。4時間後、反応混合物を脱塩して、HPLC分析によれば、2種の立体異性体の混合物(おおよその比2/1)である生成物を得た。シアノコバラミン−b−エチル−トリアミンの99mTcでの標識化において、2種の立体異性体の同じパターンが見られた。
【0120】
【表20】

【0121】
実施例24:シアノコバラミン−5’−ホスホコラミン
乾燥DMF(2ml)および乾燥ピリジン(1ml)中の、シアノコバラミン(30mg、22.14μmol)、DCC(457mg、2.214mmol)、およびN−Fmoc−ホスホコラミン(78.9mg、217.2μmol)の溶液を、N2雰囲気下、室温で24時間攪拌した。水2mlを加えた後、沈殿したジシクロヘキシル尿素をろ別し、減圧下、60℃で水およびピリジンを蒸発させた。残留の溶液をDMF中の5%ピペリジン溶液で容量8mlに希釈し、室温で2.5時間攪拌した。生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、遠心分離にかけ、そして数回洗浄した。分取HPLC(勾配:30分で100%→20%、0%→80%MeOH;=0.1%AcOH、水中10%アセトニトリル;流量10ml/min;カラム:M&N VP 250/21 Nucleosil 100-7 C18)により粗生成物を精製した。収率:82%(赤色固体)。
【0122】
【表21】

【0123】
実施例25:シアノコバラミン−5’−ホスホコラミン−His−OMe
シアノコバラミン−5’−ホスホコラミン(50mg、33.8μmol)およびメチル1−(カルボキシメチル)−N−Fmoc−ヒスチジナート塩酸塩(25mg、50.7μmol)を、乾燥DMSO(4ml)に溶解し、pHをDIPEA24μlで6〜7に調整した。この溶液に、BOP(45mg、101.5μmol)を固体として加え、RTで攪拌した。1時間後、反応混合物のpHは酸性になり、再び中性に調整した。5時間後、分析HPLCにより検出できる出発材料はなかった。ジエチルエーテルを用いて沈殿させた後、粗生成物を、DMFおよびピペリジンの1:1混合物(10ml)中で、1.5時間、脱保護に供した。再沈殿後、シアノコバラミン−5’−ホスホコラミン(実施例24)について述べたように、分取HPLCを用いて精製して、生成物を46%の収率で得た。
【0124】
【表22】

【0125】
実施例26:シアノコバラミン−5’−ホスホコラミン−His−Re(CO)3
メチル1−(カルボキシメチル)−N−Fmoc−ヒスチジナート塩酸塩の代わりに1−(カルボキシメチル)ヒスチジナートのRe(CO)3錯体を用いて、シアノコバラミン−5’−ホスホコラミン−His−OMe(実施例25)について述べたのと同じ手順を用いた。純粋な生成物の収率は37%であった。
【0126】
【表23】

【0127】
【表24】

【0128】
実施例27:一般的な標識化手順
前駆物質[99mTc(OH(CO)3+の溶液を、[99mTcO4-からボラノカルボナートキット(boranocarbonate kit)を用いてAlberto et al.(J. Am. Chem. Soc. 123, 3135-3136)に記載されているように製造した。ゴム栓付き10mlのガラスバイアルをN2でフラッシングした。シアノコバラミン誘導体の溶液(水中0.01M)20μl、MES緩衝液(1.0M)20μl、および[99mTc(OH(CO)3+溶液200μlを加え、反応混合物を75℃で1〜2時間保持した。γ−検出を用いるHPLC分析を、99mTc種の完全な転化を確かめるために行った。このような条件下、キレーター中のエステル保護基は開裂してカルボキシラト錯体を得た。
【0129】
輸送ベクターに対するインビボ研究および結合研究のために、極めて高い特異性の活性が求められている。したがって、標識化した溶液100μlを分析HPLCシステムに注入して、非標識(cold)ビタミン誘導体から標識(hot)ビタミン誘導体を分離した。もっとも高いγ活性を有する溶出液画分(約300μl)を、静脈内注射前に、通常の生理食塩水で、動物当りの濃度10μCiに希釈した。分離条件は:酢酸緩衝液、XTerra RP8カラム、勾配:b−およびd−誘導体の場合は0%メタノール(0分)、30%メタノール(15分)、100%メタノール(25分)、他の化合物の場合はSchibli et al. (Bioconjugate Chem. 2000, 343-351)に記載されているTEAPシステムである。
【0130】
実施例28:ウサギ全血からのトランスコバラミンII(TCII)の調製
TCIIをシアノコバラミン−アガロースマトリックス(Sigma)でアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。ゲル(5ml)を、まず200mlの50mMトリス/1MNaCl(pH8.0)で、その後200mlの0.1Mグリシン/0.1Mグルコース/1MNaCl(pH10)で、そして再び200mlの50mMトリス/1MNaClで洗浄した。2回遠心分離(4℃で、1回目5000rpmで15分、2回目20,000rpmで20分)にかけた全血200mlを、アフィニティカラムにかけ、カラムを前述のように連続して洗浄した。結合されたTCIIを、20mlの4.0MグアニジンHCl/50mMトリス(pH8.0)を用いて、第2工程で7.5MグアニジンHCl/50mMトリス(pH8.0)を用いて溶離した。結合されたTCIIのほとんどは、すでに4MグアニジンHClで溶離した。プローブは、頻繁に4℃で2日間、H2Oで透析した。代表的な収量は5〜30nmol/lであり、これをウサギ当りTCII7.5〜10μg(MW:50kDa)に変換した。
【0131】
実施例29:バクテリアからのトランスコバラミンII(組み換えTCII)の調製
トランスコバラミンIIcDNAを、E. coli株FA113、trxBおよびgor遺伝子における2重欠損を有し、細胞質が酸化環境を形成し、ジスルフィド形成を可能にするK12誘導体中で発現させた。トランスコバラミンIIタンパク質は、PreScissionプロテアーゼ部位、次にN末端ヒスチジンタグを含有する。ニッケルキレートセファロースを用いて、E. coli抽出物の可溶性の画分からタンパク質を単離した。キレートカラムに結合されたトランスコバラミンIIから8M尿素を用いてシアノコバラミンを除去し、その後トランスコバラミンIIをイミダゾールにより放出した。いくつかの調製では、特定のプロテアーゼによりHis−タグを除去した。
【0132】
実施例30:トランスコバラミンI(TCI;ハプトコリン)の調製
トランスコバラミンIの源として、菜食のヒト被験者の唾液を用いた。唾液を4℃、20,000rpmで20分遠心分離にかけ、PBSと1:1混合し、無菌ろ過した。トランスコバラミンIの結合容量は、通常10ng/mlである。
【0133】
実施例31:シアノコバラミン誘導体と輸送タンパク質TCIおよびTCIIとの相互作用(図1および図2)
放射性標識化した(57Co、99mTc、188Re、111In)シアノコバラミン誘導体の相互作用を、ゲルシフト法により測定した。放射性標識化したシアノコバラミン(0.05〜1ng)と、過剰な輸送タンパク質とを、室温で15分反応させた。この混合物を、緩衝液PBSおよび0.1%Tween20が流れるゲルろ過カラム(Superdex 75, Amersham Biosciencies)にかけた。輸送タンパク質に結合する生物活性シアノコバラミンは、約1.4kDaの分子量から輸送タンパク質に依存して40〜70kDaへシフトした。輸送タンパク質の結合容量の滴定を、57Co−シアノコバラミン(ICN Biomedicals GmbH, Germany;10μCi/50ng)で行った。
【0134】
実施例32:188Re−トリカルボニルを用いるシアノコバラミン誘導体の標識化
188Re−トリカルボニルの調製およびシアノコバラミン誘導体の標識化は、1ポット反応で行った。BH3NH37.5mgを、アスコルビン酸ナトリウム20mg、シアノコバラミン誘導体(10-3M)100μl、[188ReO4-発生溶出液(0.9%生理食塩水;40〜270mCi)900μl、H3PO4(85%)20mgと混合し、一酸化炭素(CO)を20分供給した。混合物を、60℃で1/2〜2時間および90℃で1/2〜2時間加熱した。非標識化合物から標識化されたシアノコバラミンを、逆相HPLCカラム(Waters Xterra RP8)でリン酸緩衝液中、直鎖状メタノール勾配で分離した。静脈内注射前に、活性の画分を通常の生理食塩水で、イメージング目的に対して動物当り10μCiに、治療上の処置に対して2mCiまでの濃度に希釈した。
【0135】
実施例33:電離放射線に対する腫瘍細胞スフェロイドの感受性
放射線生物学において、スフェロイドと腫瘍異種移植担腫瘍マウスの間の放射線応答の類似性は、スフェロイドをインビボ照射研究のための良好な代わりのモデルとする。多細胞の腫瘍スフェロイドは、スピナーフラスコ中、37℃で連続的に攪拌されて平均直径400μmに成長した。スフェロイドを回収し、新しい培地中で洗浄し、次に24穴平底組織培養プレート中で非標識誘導体または188Re−標識化したシアノコバラミン誘導体と一緒に1時間インキュベートした。線量範囲は穴当り1〜20μCiである。細胞毒性は、蛍光生存度マーカーにより、スフェロイド全体の直径の測定により、および半固体寒天中に分散したスフェロイドのクローン的分析により、評価した。
【0136】
実施例34:マウス中の放射性標識化したシアノコバラミン誘導体の体内分布(図3、4、5、6)
57Co−シアノコバラミンを用いる体内分布を検討するために、担腫瘍balb/cマウス(同系のマウスメラノーマB16-F10)において、放射性標識化したシアノコバラミン0.2μCi/1ngを通常の生理食塩水180μlと混合し、および静脈内注射した。特定の時間(5分〜24時間)の後、動物をと殺し、器官を秤量し、γカウンターでカウントした。99mTc−標識化したシアノコバラミンを用いる体内分布を検討するために、放射性標識化したシアノコバラミン10μCi/0.5ngを通常の生理食塩水と混合し、前述のように使用した。111In−標識化したシアノコバラミンを用いる体内分布のために、放射性標識化したシアノコバラミン2μCi/5ngを通常の生理食塩水と混合し、前述のように使用した。ビタミンB12の欠けた餌の効果を検討するために、2週間の期間、通常の餌を与えたマウスにおける標識化したシアノコバラミンの体内分布と、ビタミンB12の欠けた餌を与えたマウスにおける体内分布とを比較した。
【0137】
実施例35:担腫瘍マウスにおける188Re−標識化したシアノコバラミン誘導体を用いる治療研究
治療研究のために、同系のメラノーマ腫瘍は、balb/cマウスにおいて、約200mgの寸法(直径により測定)に成長した。線量を増加して(0.1〜2mCi)放射性標識化したシアノコバラミン構成物および非標識体構成物を静脈内注射した。腫瘍体積を直径について測定することにより評価した。腫瘍が寸法800mgに達した時、動物をと殺した。実験のシリーズでは、動物を分割投薬で治療した:放射性標識化したシアノコバラミンを、1週間に3回間隔を開けて与えた。動物を腫瘍の再生について60日観察した。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1A】ゲルシフト法での、実施例11の放射性標識化したシアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−OEt(TCII−非バインダー)と、輸送タンパク質との相互作用を示すグラフ(t=時間、cpm=1分当りのカウント)である。 A)放射性標識化した誘導体のSuperdexTM 75カラムでのゲルろ過分析(ピークは1.5kDaで溶離)
【図1B】ゲルシフト法での、実施例11の放射性標識化したシアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−OEt(TCII−非バインダー)と、輸送タンパク質との相互作用を示すグラフ(t=時間、cpm=1分当りのカウント)である。 B)TCIと混合した誘導体のゲルろ過分析(1.5kDaから44kDaにピークのシフト)
【図1C】ゲルシフト法での、実施例11の放射性標識化したシアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−OEt(TCII−非バインダー)と、輸送タンパク質との相互作用を示すグラフ(t=時間、cpm=1分当りのカウント)である。 C)TCIIと混合した誘導体のゲルろ過分析(ピークは、1.5kDaで溶離し、シアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−OEtが本質的にTCII−非バインダーであることが分かる)
【図2A】ゲルシフト法での、実施例5の放射性標識化したシアノコバラミン−b−ブチル−PAPAcet(TCII−バインダー)と、輸送タンパク質との相互作用を示すグラフ(t=時間、cpm=1分当りのカウント)である。 A)放射性標識化した誘導体のSuperdexTM 75カラムでのゲルろ過分析(ピークは、1.5kDaで溶離)
【図2B】ゲルシフト法での、実施例5の放射性標識化したシアノコバラミン−b−ブチル−PAPAcet(TCII−バインダー)と、輸送タンパク質との相互作用を示すグラフ(t=時間、cpm=1分当りのカウント)である。 B)TCIと混合した誘導体のゲルろ過分析(1.5kDaから44kDaにピークのシフト)
【図2C】ゲルシフト法での、実施例5の放射性標識化したシアノコバラミン−b−ブチル−PAPAcet(TCII−バインダー)と、輸送タンパク質との相互作用を示すグラフ(t=時間、cpm=1分当りのカウント)である。 C)TCIIと混合した誘導体のゲルろ過分析(1.5kDaから60kDaへのピークのシフトからシアノコバラミン−b−ブチル−PAPAcetは、TCIIに結合しないことが分かる)
【図3】組織分布を示す棒グラフである。 y−軸:組織1g当りの注射した放射能の百分率 x−軸:器官1)血液、2)心臓、3)脾臓、4)腎臓、5)胃、6)腸、7)肝臓、8)筋肉、9)骨、10)腫瘍 通常の餌を与えたマウスにおける、放射性シアノコバラミン(57Co−CN−CbI)の静脈内注射後の組織分布である。
【図4】組織分布を示す棒グラフである。 y−軸:組織1g当りの注射した放射能の百分率 x−軸:器官1)血液、2)心臓、3)脾臓、4)腎臓、5)胃、6)腸、7)肝臓、8)筋肉、9)骨、10)腫瘍 ビタミンB12の欠けた餌を与えたマウスにおける、放射性シアノコバラミン(57Co−CN−CbI)の静脈内注射後の組織分布である。
【図5】組織分布を示す棒グラフである。 y−軸:組織1g当りの注射した放射能の百分率 x−軸:器官1)血液、2)心臓、3)脾臓、4)腎臓、5)胃、6)腸、7)肝臓、8)筋肉、9)骨、10)腫瘍 通常の餌を与えたマウスにおける、放射性シアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−OEt(実施例11)の静脈内注射後の組織分布である。
【図6】組織分布を示す棒グラフである。 y−軸:組織1g当りの注射した放射能の百分率 x−軸:器官1)血液、2)心臓、3)脾臓、4)腎臓、5)胃、6)腸、7)肝臓、8)筋肉、9)骨、10)腫瘍 ビタミンB12の欠けた餌を与えたマウスにおける、放射性シアノコバラミン−b−プロピル−PAMA−OEt(実施例11)の静脈内注射後の組織分布である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)トランスコバラミンIIへの結合親和性が無いかまたは低く、かつ
(b)ビタミンB12代用品としての活性を保持する、コバラミン誘導体。
【請求項2】
(a)結合テストにおいて、非変性コバラミンの結合親和性に比べた場合、トランスコバラミンIIへの結合親和性が20%未満であり、かつ
(b)増殖試験において、ビタミンB12代用品として、2%より高い活性を保持する、請求項1記載のコバラミン誘導体。
【請求項3】
(a)結合テストにおいて、非変性コバラミンの結合親和性に比べた場合、トランスコバラミンIIへの結合親和性が10%未満であり、かつ
(b)増殖試験において、ビタミンB12代用品として、10%より高い活性を保持する、請求項1記載のコバラミン誘導体。
【請求項4】
(a)結合テストにおいて、非変性コバラミンの結合親和性に比べた場合、トランスコバラミンIIへの結合親和性が5%未満であり、かつ
(b)増殖試験において、ビタミンB12代用品として、10%より高い活性を保持する、請求項1記載のコバラミン誘導体。
【請求項5】
治療剤および/または診断剤を担持する、請求項1〜4のいずれか1項記載のコバラミン誘導体。
【請求項6】
放射性金属を担持する、請求項1〜5のいずれか1項記載のコバラミン誘導体。
【請求項7】
式(I):
【化1】


(式中、Rb、Rc、Rd、およびReは、互いに独立に、スペーサー−キレーター基、抗生物質もしくは抗増殖性の治療剤、炭素原子数4〜20の立体的に必要な有機基、または水素であり;
Rは、それぞれリンカーZを介して結合する、スペーサー−キレーター基または抗生物質もしくは抗増殖性の治療剤、あるいは水素であり;
ただし、Rb、Rc、Rd、Re、およびRRの少なくとも3個の残基は水素であり、そしてRb、Rc、Rd、およびReの少なくとも1個の残基は、水素とは異なり;
Xは、単座配位子であり;そして
中心コバルト(Co)原子は、場合により放射性同位体の形態である)の請求項1〜6のいずれか1項記載のコバラミン誘導体。
【請求項8】
eが水素である、請求項7記載のコバラミン誘導体。
【請求項9】
スペーサー−キレーター基が、
1個または2個の炭素原子が窒素および/または酸素原子に置換されていてもよく、そして脂肪族鎖がヒドロキシ、オキソまたはアミノで置換されていてもよい炭素原子数2〜10の脂肪族鎖であるスペーサー、
金属原子と結合するような距離で、窒素、酸素、および硫黄から選択されるドナー原子2個、3個又はそれ以上を有する化合物であるキレーター、および
場合により金属原子
を含む、請求項7または8記載のコバラミン誘導体。
【請求項10】
キレーターが、式(II)〜(IX):
【化2】


(式中、カルボキシル基はエステルとして含有してもよい)のキレーターから選択される、請求項9記載のコバラミン誘導体。
【請求項11】
放射性金属が、94mTc、99mTc、188Re、186Re、111In、90Y、64Cu、67Cu、または177Luである、請求項6〜10のいずれか1項記載のコバラミン誘導体。
【請求項12】
Xがシアノ、メチル、ヒドロキシ、アコ、または5’−デオキシアデノシル基である、請求項7〜11のいずれか1項記載のコバラミン誘導体。
【請求項13】
Xがシアノである、請求項12記載のコバラミン誘導体。
【請求項14】
中心コバルト原子が放射性同位体57Coまたは60Coである、請求項7〜12のいずれか1項記載のコバラミン誘導体。
【請求項15】
bが、場合により金属原子を担持し、スペーサーが炭素原子数2〜4の脂肪族鎖であり、そしてキレーターが式(II)(式中、基COOHが場合によりエステルの形態である)であるスペーサー−キレーター基であり;
c、Rd、Re、およびRRが水素であり;そして
Xがシアノである、請求項10記載のコバラミン誘導体。
【請求項16】
bが、場合により金属原子を担持し、スペーサーが炭素原子数4の脂肪族鎖であり、そしてキレーターが式(II)(式中、基COOHはエチルエステルの形態である)であるスペーサー−キレーター基であり;
c、Rd、Re、およびRRが水素であり;そして
Xがシアノである、請求項15記載のコバラミン誘導体。
【請求項17】
dが、場合により金属原子を担持し、スペーサーが炭素原子数3の脂肪族鎖であり、そしてキレーターが式(II)(式中、基COOHは、場合によりエステルの形態である)であるスペーサー−キレーター基であり;
b、Rc、Re、およびRRが水素であり;そして
Xがシアノである、請求項10記載のコバラミン誘導体。
【請求項18】
bが、場合により金属原子を担持し、スペーサーが炭素原子数2の脂肪族鎖であり、そしてキレーターが式(III)であるスペーサー−キレーター基であり;
c、Rd、Re、およびRRが水素であり;そして
Xがシアノである、請求項10記載のコバラミン誘導体。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項記載のコバラミン誘導体を含む、薬学的組成物。
【請求項20】
(a)腫瘍性疾患または感染の疑いのある哺乳類を、一定期間ビタミンB12欠乏食にさらし、
(b)続いて、診断剤を担持する請求項1〜18のいずれか1項記載のコバラミン誘導体を適用すること
を含む、哺乳類における腫瘍性疾患または微生物による感染の診断方法。
【請求項21】
(a)治療が必要な哺乳類を一定期間ビタミンB12欠乏食にさらし、
(b)続いて、治療剤を担持する請求項1〜18のいずれか1項記載のコバラミン誘導体を適用すること
を含む、腫瘍性疾患または微生物による感染を患う哺乳類の治療方法。
【請求項22】
腫瘍性疾患もしくは微生物による感染の診断方法における、または腫瘍性疾患もしくは微生物による感染を患う哺乳類の治療方法における、請求項1〜18のいずれか1項記載のコバラミン誘導体の使用。
【請求項23】
癌の画像化における請求項22記載の使用。
【請求項24】
腫瘍性疾患もしくは微生物による感染の診断方法において、または腫瘍性疾患もしくは微生物による感染を患う哺乳類の治療方法において使用するための薬学的組成物の製造のための、請求項1〜18のいずれか1項記載のコバラミン誘導体の使用。
【請求項25】
癌画像化用薬学的組成物の製造のための、請求項24記載のコバラミン誘導体の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−515457(P2007−515457A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546174(P2006−546174)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053628
【国際公開番号】WO2005/061527
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506215283)ソリダゴ・アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】SOLIDAGO AG
【出願人】(506214862)ウニベルジテート・チューリッヒ (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET ZUERICH
【出願人】(506215308)
【氏名又は名称原語表記】PAUL SCHERRER INSTITUT
【Fターム(参考)】