説明

異常圧検知表示装置

【課題】 減圧弁、逃し弁、電磁弁、混合弁、切換弁、止水弁、逆流防止弁、排水弁等、外部環境に対するシール部を有する弁の漏水の原因を簡便に検知する手段を提供する。
【解決手段】 外部環境に対するシール部を有する弁の一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを検知する検知手段と、前記一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを外部環境に表示する表示手段と、前記一次圧又は二次圧が所定値以下に戻っても前記表示を維持する表示維持手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常圧検知表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次側通路と、二次側通路と、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する弁体と、弁体に連結されて二次側通路内の流体圧を受圧するダイヤフラムとを有する減圧弁が、特許文献1等に開示されると共に従来から使用されている。
減圧弁の従来例を図1に示す。
減圧弁αは、減圧弁カセット100と減圧弁ボディ200とを備えている。
減圧弁カセット100は、シリンダ101と、シリンダ101内で往復摺動するピストンヘッド102と、ピスンヘッド102の一方の端面から延びてシリンダ101の一端からシリンダ101外へ突出する第1ピストンロッド103と、シリンダ101の前記一端に形成され第1ピストンロッド103が挿通された筒状の弁座104と、第1ピストンロッド103のシリンダ101外へ突出した一端に固定されて弁座104と対峙する弁体105と、シリンダ101周壁の第1ピストンロッド103に対峙する部位の外面に形成された周溝101aの底部に形成された複数の弁流入口106と、ピストンヘッド102の他方の端面から延びてシリンダ101の他端からシリンダ101外へ突出する第2ピストンロッド107と、第2ピストンロッド107のシリンダ101他端から突出した一端に中心部が固定されたダイヤフラム108と、ダイヤフラム108に対峙しダイヤフラム108とシリンダ101とピストンヘッド102と協働して感圧室109を形成するダイヤフラムケース110と、シリンダ101の周壁に形成され、シリンダ101の前記一端から他端まで延在して感圧室109に減圧弁αの二次圧を導く複数の導圧穴111と、ダイヤフラム108を感圧室109側へ押圧するバネ112、113と、バネ112、113を収容すると共にダイヤフラムケース110と協働してダイヤフラム108の周縁部を挟持するバネケース114と、ピストンヘッド102の周溝に収容されてピストンヘッド102とシリンダ101内周面との摺接部をシールするOリング115と、プレス加工された金属板製のダイヤフラムケース110と切削加工された金属製のシリンダ101とのかしめ結合部をシールするOリング116と、ダイヤフラムケース110とプレス加工された金属板製のバネケース114とのかしめ結合部をシールするOリング117と、シリンダ101の外周面に形成された周溝に収容されたOリング118、119とを有している。
【0003】
減圧弁ボディ200は鋳物により形成されている。減圧弁ボディ200は、減圧弁カセット100のシリンダ101が挿入固定される筒部201と、弁流入口106に対峙して筒部201に形成された一次側開口202と、一次側開口202に連通する入口筒部203と、弁体105に対峙して筒部201に形成された二次側開口204と、二次側開口204に連通する出口筒部205とを有している。一次側開口202はシリンダ101の中心軸線χに正対している。筒部201の弁流入口106に対峙する部位の内周面に周溝201aが形成されており、一次側開口202は周溝201aの底部に形成されている。周溝201aは周溝101aと協働して、弁流入口106の外側に環状通路206を形成している。
弁座104と弁体105との間の環状隙間よりも上流側の筒部201と入口筒部203とが一次側通路を形成し、弁座104と弁体105との間の環状隙間よりも下流側の筒部201と出口筒部205とが二次側通路を形成している。
【0004】
減圧弁カセット100のシリンダ101が減圧弁ボディ200の筒部201に挿入固定され、シリンダ101と筒部201との当接部がOリング118、119によりシールされ、減圧弁カセット100と減圧弁ボディ200とが一体に組付けられて、減圧弁αが構成されている。
減圧弁αの入口筒部203は図示しない接続配管を介して図示しない水道配管に接続されている。
減圧弁αの出口筒部205は図示しない接続配管を介して図示しない水関連機器に接続している。
【0005】
減圧弁αの下流に配設された水回り機器の止水栓が開放されると、図示しない水道配管から供給された水道水が、入口筒部203と入口筒部203に連通する一次側開口202とを通り、周溝201aと周溝101aとにより形成された環状通路206へ流入し、環状通路206から弁流入口106を通ってシリンダ101内へ流入し、シリンダ101内を弁座104へ向けて流れ、弁座104と弁体105との間の環状隙間を通ってシリンダ101から流出し、二次側開口203と出口筒部205と通って減圧弁αから流出する。減圧弁αから流出した水道水は、図示しない接続配管を介して図示しない水関連機器に供給される。
水道水が弁座104と弁体105との間の環状隙間を通る際に、圧力損失が発生し、水道水は減圧される。
【0006】
前記環状隙間よりも下流側の水道水が導圧穴111を介して感圧室109に流入することにより、前記環状隙間よりも下流側の二次側通路内の水道水圧である減圧弁αの二次圧がダイヤフラム108に印加される。前記環状隙間よりも上流側の一次側通路内の水道水圧である減圧弁αの一次圧はピストンヘッド102の周溝に収容されたOリング115がピストンヘッド102とシリンダ101の摺接部をシールすることにより、感圧室109には伝達されず、ダイヤフラム108には印加されない。
何らかの原因で減圧弁αの二次圧が上昇するとバネ112、113の付勢力に抗してダイヤフラム108が弁座104から遠ざかる方向へ変位し、ダイヤフラム108に固定された第2ピストンロッド107が、ひいてはピストンヘッド102、第1ピストンロッド103がダイヤフラム108に追随してダイヤフラム108側へ移動し、弁体105が弁座104に接近する。この結果、弁座104と弁体105との間の環状隙間が狭まり、前記環状隙間を水道水が通過する際の圧力損失が増加して減圧弁αの二次圧が下降する。従って、減圧弁αの二次圧は所定値以下に維持される。
減圧弁αの下流に配設された水関連機器の止水栓が閉鎖されると、減圧弁αを通過する水流が無くなり、一次圧と同圧まで上昇した二次圧を受圧したダイヤフラム108が弁座104から更に遠ざかる方向へ変位し、弁体105が弁座104に当接して弁座104と弁体105との間の環状隙間を閉じる。この結果減圧弁αは閉弁する。
ピスンヘッド102の受圧面積は弁体105の受圧面積よりも大きく設定されているので、減圧弁αの閉弁中に一次圧が上昇しても、減圧弁αは開弁しない。減圧弁αの閉弁中に、減圧弁αの下流に配設された水回り機器の止水栓が開放されると、二次側通路内の水道水が水回り機器側へ流出して二次圧が低下し、ダイヤフラム108が弁座104に接近する方向へ変位して、弁体105が弁座104から離れ、減圧弁αは開弁する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−048549号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
集合住宅においては、当該集合住宅に付属した給水ポンプを介して各住宅に水道水が供給される。ポンプの作動不良や集合住宅に属する他の住宅の水回り機器の止水栓の閉弁時に発生した水撃等により、減圧弁αの一次圧が異常に上昇し、それに伴い作動中の減圧弁αの二次圧も異常に上昇して、ダイヤフラムケース110とシリンダ101とのかしめ結合部や、ダイヤフラムケース110とバネケース114とのかしめ結合部や、減圧弁カセット100と減圧弁ボディ200との係合部等の、減圧弁αの外部環境に対するシール部から漏水する場合がある。他方、一次圧の異常上昇に起因せず、経時劣化や耐圧性能不足等の減圧弁αの不具合により、ダイヤフラムケース110とシリンダ101とのかしめ結合部や、ダイヤフラムケース110とバネケース114とのかしめ結合部や、減圧弁カセット100と減圧弁ボディ200との係合部等の、減圧弁αの外部環境に対するシール部から漏水する場合もある。従来、減圧弁αの漏水の原因を簡便に検知する手段が無かったので、減圧弁αから漏水した場合、原因究明に時間が掛かり、ひいては対策に時間が掛かっていた。
上記問題は減圧弁に限らず、逃し弁、電磁弁、混合弁、切換弁、止水弁、逆流防止弁、排水弁等、外部環境に対するシール部を有する一般的な弁全般に起こり得る。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、外部環境に対するシール部を有する弁の漏水の原因を簡便に検知する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明においては、外部環境に対するシール部を有する弁の一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを検知する検知手段と、前記一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを外部環境に表示する表示手段と、前記一次圧又は二次圧が所定値以下に戻っても前記表示を維持する表示維持手段とを備えることを特徴とする異常圧検知表示装置を提供する。
本発明に係る異常圧検知表示装置を使用すれば、弁の一次圧又は二次圧が異常に上昇した場合、当該異常上昇の証拠が残るので、弁の漏水を発見した時に、当該漏水の原因が一次圧又は二次圧の異常上昇なのか、或いは弁の不具合なのか、直ちに且つ簡便に検知できる。
【0010】
本発明の好ましい態様においては、異常圧検知表示装置は、流体通路囲壁を長手方向に移動可能に貫通すると共に流体通路内方向と流体通路外方向への抜け止めが施された軸部材と、流体通路囲壁の軸部材貫通部をシールするシール部材と、軸部材を流体通路内方向へ付勢するバネと、流体通路内の流体圧を受けた軸部材が付勢バネの付勢力に抗して流体通路外方向へ移動した時に流体通路囲壁と軸部材とに係合して軸部材の流体通路内方向への戻りを禁止する戻り禁止部材とを備える。
上記構成を備えていれば、弁の一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを検知でき、弁の一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを外部環境に表示でき、弁の一次圧又は二次圧が所定値以下に戻っても前記表示を維持できる。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、軸部材が流体通路内の流体圧を受けバネの付勢力に抗して流体通路外方向へ移動することによって流体通路囲壁の外側へ露出した軸部材の部位が、着色されている。
着色部を視認できるか否かによって、一次圧又は二次圧が異常上昇したか否か容易に認識できる。
【0012】
本発明の好ましい態様においては、流体通路囲壁を長手方向に移動可能に貫通すると共に流体通路内方向と流体通路外方向への抜け止めが施された軸部材と、流体通路囲壁の軸部材貫通部をシールするシール部材と、軸部材を流体通路内方向へ付勢するバネと、軸部材の流体通路外方向側端部に対峙して流体通路囲壁外面に係止された異常圧表示部材とを備え、流体通路内の流体圧を受けた軸部材が付勢バネの付勢力に抗して流体通路外方向へ移動した時に、軸部材の流体通路外方向側端部から付勢力を受けて異常圧表示部材が塑性変形し、或いは破損し、或いは脱落する。
上記構成を備えていれば、弁の一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを検知でき、弁の一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを外部環境に表示でき、弁の一次圧又は二次圧が所定値以下に戻っても前記表示を維持できる。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、異常圧表示部材は軸部材の流体通路外方向側端部を覆って流体通路囲壁外面に係止された蓋部材であり、流体通路内の流体圧を受けた軸部材が付勢バネの付勢力に抗して流体通路外方向へ移動した時に、軸部材の流体通路外方向側端部から付勢力を受けて蓋部材が破損する。
上記構成を備えていれば、弁の一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを検知でき、弁の一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを外部環境に表示でき、弁の一次圧又は二次圧が所定値以下に戻っても前記表示を維持できる。
本発明の好ましい態様においては、蓋部材の、軸部材の流体通路外方向側端部に対峙する部位に、前記端部を取り巻く環状の脆弱部が形成されている。
環状の脆弱部が蓋部材に形成されていれば、軸部材に押されて蓋部材が破損する際に、前記環状脆弱部に囲まれた部位が残余部から離脱する。従って、環状の脆弱部に囲まれた部位が残余部から離脱していれば、蓋部材の破損の原因が弁の一次圧又は二次圧が所定値を超えたことにあると確認できる。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、異常圧検知表示装置は、弁の一次側通路に取り付けられている。
本発明の好ましい態様においては、異常圧検知表示装置は、弁の二次側通路に取り付けられている。
異常圧検知表示装置が一体に組み付けられた弁は、漏水時の原因究明が容易で、使い勝手が良い。
弁の一次側通路に異常圧検知表示装置を取り付ければ、一次圧の異常上昇を検知表示でき、弁の二次側通路に異常圧検知表示装置を取り付ければ、二次圧の異常上昇を検知表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の減圧弁の構造図である。(a)は断面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(b)のc−c矢視図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る異常圧検知表示装置が取り付けられた減圧弁の部分断面図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る異常圧検知表示装置の拡大断面図である。
【図4】本発明の第1実施例に係る異常圧検知表示装置が取り付けられた減圧弁の部分断面図である。
【図5】本発明の第1実施例の変形例に係る異常圧検知表示装置の断面図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る異常圧検知表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施例に係る異常圧検知表示装置を説明する。
図2、3に示すように、図1の減圧弁αと同様の構造を有する減圧弁α’の入口筒部203’内に、流入水から塵埃を除去するための筒状の網であるストレーナ10が配設され、ストレーナ10が一体に取り付けられた蓋11が、入口筒部203’の側壁に形成されたストレーナ取り出し穴203a’を閉鎖して、着脱可能に前記側壁に螺着固定され、入口筒部203’の側壁の一部を形成している。蓋11の螺着部はOリング12によりシールされている。
蓋11の中心部に形成されたボス11aに摺動可能に挿通された軸部材20が、筒状のストレーナ10内へ、ひいては入口筒部203’が形成する減圧弁α’の一次側通路内へ延びている。ボス11aと軸部材20の摺接部は、Oリング21によってシールされている。軸部材20の一次側通路内に進入した一端に形成されたフランジ22と、外部環境側の他端にネジ止めされたワッシャーヘッドネジ23のワッシャー部23aとにより、軸部材20は、一次側通路内方向と一次側通路外方向とに、抜け止めされている。一端が蓋11に当接し、他端がフランジ22に当接するバネ24により、軸部材20は一次側通路内方向へ付勢されている。軸部材20の外部環境側他端の近傍に形成された周溝20aに、スナップリング25が収容されている。軸部材20の外部環境側他端からスナップリング25を収容する周溝20aへ向けて所定の長手方向範囲に亙って、軸部材20の外周面に着色樹脂製の環状部材26が埋設固定されている。ボス11aの外部環境側端部から所定長手方向範囲に亙って、ボス部11aの内径が拡径されて、拡大内径部11bが形成されている。
軸部材20、Oリング21、フランジ22、ワッシャーヘッドネジ23、バネ24、スナップリング25、拡大内径部11b、環状部材26により、異常圧検知表示装置βが構成されている。
入口筒部203’のストレーナ10よりも上流側の部位に、止水弁30が取り付けられている。
入口筒部203’の上流端は、接続配管300を介して図示しない集合住宅の各住宅に配設された水道配管に接続されている。
【0017】
異常圧検知表示装置βの作動を説明する。
減圧弁α’の一次側通路内の水道水圧、即ち減圧弁α’の一次圧が減圧弁α’の仕様圧力範囲内にある時は、軸部材20に印加される一次圧による付勢力よりも大きなバネ24の付勢力を受けて、軸部材20は、一次側通路内方向へ移動し、図2、3に示すように、ワッシャーヘッドネジ23のワッシャー部23aがボス11aの外部環境側端部に当接している。この状態では、環状部材26はボス11a内に在り、ワッシャーヘッドネジ23のワッシャー部23aにも覆われて、外部環境に露出していない。また、スナップリング25は拡大内径部11bよりも一次側通路内寄りに在る。
集合住宅に設置された給水ポンプの作動不良や集合住宅に属する他の住宅の水回り機器の止水栓の閉弁時に発生した水撃等により、減圧弁α’の一次圧が減圧弁α’の仕様圧力範囲を超えて上昇すると、軸部材20に印加される一次圧による付勢力がバネ24の付勢力を上回り、軸部材20は、一次側通路外方向へ移動し、図4に示すように、ワッシャーヘッドネジ23のワッシャー部23aがボス11aの外部環境側端部から離れ、環状部材26がボス11aから突出して外部環境に露出する。環状部材26がボス11aから突出して外部環境に露出することにより、一次圧が異常上昇したことが表示される。尚、Oリング21はボス11a内に維持されており、ボス11aから漏水するおそれはない。軸部材20の移動に伴ってスナップリング25が拡大内径部11bに対峙する位置まで移動し、自身の弾性力により拡径する。この結果、スナップリング25の内周縁部は周溝20a内に在り、外周縁部は拡大内径部11b内に在ることになる。従って、減圧弁α’の一次圧が減圧弁α’の仕様圧力範囲内に戻っても、スナップリング25の外周縁部が拡大内径部11bの一次側通路内寄りの端部が形成する段部に係合し、スナップリング25の内周縁部が周溝20aに係合することにより、軸部材20の一次側通路方向への戻りが規制され、環状部材26が外部環境に露出した状態が維持される。
上記説明から分かるように、異常圧検知表示装置βにおいては、軸部材20とバネ24とが形成する検知手段が一次圧の異常上昇を検知し、環状部材26が形成する表示手段が前記異常上昇を外部環境に表示し、スナップリング25と周溝20aと拡大内径部11bとが形成する表示維持手段が、一次圧が正常値に戻った後も前記表示を維持する。
【0018】
異常圧検知表示装置βを使用すれば、減圧弁α’の一次圧が異常上昇した場合、当該異常上昇の証拠が残るので、減圧弁α’の漏水を発見した時に、当該漏水の原因が一次圧の異常上昇なのか、或いは減圧弁α’の不具合なのか、直ちに且つ簡便に検知できる。この結果、減圧弁α’から漏水した場合、迅速に対策を講ずることができる。
着色された環状部材26を視認できるか否かによって、一次圧が異常上昇したか否か容易に認識できる。
異常圧検知表示装置βが一体に組み付けられた減圧弁α’は、漏水時の原因究明が容易で、使い勝手が良い。
一次側通路にストレーナ10が取り付けられている減圧弁α’においては、ストレーナ取り出し穴203a’を閉鎖する蓋11を異常圧検知表示装置βの軸部材20が貫通していれば、蓋11を外してストレーナ10を保守する際に、異常圧検知表示装置βも保守できるので、異常圧検知表示装置βの使い勝手が向上する。
【0019】
異常圧検知表示装置βを蓋11以外の減圧弁α’の一次側通路側壁に取り付けても良い。
異常圧検知表示装置βを、減圧弁α’の一次側通路に代えて、減圧弁α’よりも上流側に配設される流体通路に取り付けても良い。異常圧検知表示装置βを減圧弁α’とは体別とすることにより、従来の減圧弁をそのまま使用して、且つ減圧弁から漏水した時に原因を簡便に究明することが可能になる。
異常圧検知表示装置βを減圧弁α’の二次側通路側壁に取り付けても良い。バネ24の付勢力を調整すれば、減圧弁α’の減圧不良、即ち減圧不足による二次圧の異常上昇を検知表示することもできる。
着色樹脂製の環状部材26を省略しても良い。軸部材20の端部がボス11aから外部環境側へ突出しているか否かによって、減圧弁の漏水の原因が一次圧の異常上昇であったか否か判断できる。
上記実施例では、軸部材20とバネ24とが検知手段を形成し、環状部材26が表示手段を形成し、スナップリング25と周溝20aと拡大内径部11bとが表示維持手段を形成したが、各手段の構成要素は上記のものに限定されない。例えば、図5に示すように、ボス11aの内周面に長手方向に隣接する二つの球面状凹部11c、11dを形成し、一次側通路内寄りの球面状凹部11cに弾性体から成るボール部材27を弾性嵌合させても良い。減圧弁α’の一次圧が減圧弁α’の仕様圧力範囲内にある時は、ボール部材27が球面状凹部11cに弾性嵌合した状態が維持されるが、減圧弁α’の一次圧が減圧弁α’の仕様圧力範囲を超えて上昇すると、ボール部材27は球面状凹部11cと球面状凹部11dとの間の盛り上がり部を乗り越えて球面状凹部11dへ移動して弾性嵌合し、ボール部材27の一部がボス11aの端部から突出して外部環境に露出し、一次圧の異常上昇を外部環境に表示する。一次圧が減圧弁α’の仕様圧力範囲内に戻っても、球面状凹部11dと球面状凹部11cの間の盛り上がり部に邪魔されてボール部材27は球面状凹部11cに戻れず、球面状凹部11dに弾性嵌合した状態に保持される。
【0020】
本発明の第2実施例に係る異常圧検知表示装置を説明する。
図6(a)に示すように、図1の減圧弁αと同様の構造を有する減圧弁の入口筒部203”内に、流入水から塵埃を除去するための筒状の網であるストレーナ30が配設され、ストレーナ30が一体に取り付けられた蓋31が、入口筒部203”の側壁に形成されたストレーナ取り出し穴203a”を閉鎖して、着脱可能に前記側壁に螺着固定され、入口筒部203”の側壁の一部を形成している。蓋31の螺着部はOリング32によりシールされている。
蓋31の中心部に形成されたボス31aに摺動可能に挿通された軸部材40が、筒状のストレーナ30内へ、ひいては入口筒部203”が形成する減圧弁の一次側通路内へ延びている。ボス31aと軸部材40の摺接部は、Oリング41によってシールされている。軸部材40の一次側通路内に進入した一端に形成されたフランジ42と、外部環境側の他端に螺着した座金付きナット43の座金部43aとにより、軸部材40は、一次側通路内方向と一次側通路外方向とに、抜け止めされている。一端が蓋31に当接し、他端がフランジ42に当接するバネ44により、軸部材40は一次側通路内方向へ付勢されている。軸部材40の外部環境側他端を覆う浅い有底筒状の蓋部材45が、蓋31の外面に係止している。蓋部材45の、軸部材40の外部環境側他端に対峙する部位に、軸部材40を取り巻く環状の脆弱部45aが形成されている。
軸部材40、Oリング41、フランジ42、座金付きナット43、バネ44、蓋部材45により、異常圧検知表示装置γが構成されている。
【0021】
異常圧検知表示装置γの作動を説明する。
減圧弁の一次側通路内の水道水圧、即ち減圧弁の一次圧が減圧弁の仕様圧力範囲内にある時は、軸部材40に印加される一次圧による付勢力よりも大きなバネ44の付勢力を受けて、軸部材40は、一次側通路内方向へ移動し、図6(a)に示すように、座金付きナット43の座金部43aがボス31aの外部環境側端部に当接している。この状態では、軸部材40の外部環境側他端は蓋部材45に軽く当接し或いは両者の間に僅かな隙間がある。従って、蓋部材45は、軸部材40の外部環境側他端を覆っており、破損していない。
集合住宅に設置された給水ポンプの作動不良や集合住宅に属する他の住宅の水回り機器の止水栓の閉弁時に発生した水撃等により、減圧弁の一次圧が減圧弁の仕様圧力範囲を超えて上昇すると、軸部材40に印加される一次圧による付勢力がバネ44の付勢力を上回り、軸部材40は、一次側通路外方向へ移動する。軸部材40の外部環境側他端が蓋部材45に当接して蓋部材45を強く付勢する。図6(b)示すように、脆弱部45aで囲まれた部位45a’が蓋部材45の残余部から離脱して、蓋部材45が破損する。蓋部材45が破損することにより、一次圧が異常上昇したことが表示される。減圧弁の一次圧が減圧弁の仕様圧力範囲内に戻ると、バネ44の付勢力を受けた軸部材40は一次側通路内方へ移動して、図6(a)の状態に戻る。しかし、蓋部材45の破損状態は維持される。
上記説明から分かるように、異常圧検知表示装置γにおいては、軸部材40とバネ44とが形成する検知手段が一次圧の異常上昇を検知し、蓋部材45の部位45a’が形成する表示手段が前記異常上昇を外部環境に表示し、蓋部材45の破損部が形成する表示維持手段が、一次圧が正常値に戻った後も前記表示を維持する。
環状の脆弱部45aが蓋部材45に形成されているので、軸部材40に押されて蓋部材45が破損する際に、前記環状脆弱部45aに囲まれた部位45a’が残余部から離脱する。従って、環状の脆弱部45aに囲まれた部位45a’が残余部から離脱していれば、蓋部材45の破損の原因が弁の一次圧又は二次圧が所定値を超えたことにあると確認できる。
【0022】
蓋部材45に代えて、軸部材40の外部環境側他端に対峙させてラベル、フィルム、シール等を蓋31の外面に貼り付けても良い。
一時側通路内の流体圧を受けた軸部材40がバネ44の付勢力に抗して一時側通路外方向へ移動した時に、軸部材40の外部環境側他端から付勢力を受けてラベル、フィルム、シール等が塑性変形し、或いは破損し、或いは脱落して、一次圧が異常上昇したことが表示される。減圧弁の一次圧が減圧弁の仕様圧力範囲内に戻ると、バネ44の付勢力を受けた軸部材40は一次側通路内方へ移動する。しかし、ラベル、フィルム、シール等の塑性変形状態、或いは破損状態、或いは脱落状態は維持される。
【0023】
異常圧検知表示装置β、γを、減圧弁以外の、逃し弁、電磁弁、混合弁、切換弁、止水弁、逆流防止弁、排水弁等、外部環境に対するシール部を有する種々の弁に取り付けるとにより、これらの弁が漏水した場合に、その原因を簡便に検知することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る異常圧検知表示装置は、減圧弁、逃し弁、電磁弁、混合弁、切換弁、止水弁、逆流防止弁、排水弁等、外部環境に対するシール部を有する種々の弁に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
α、α’ 減圧弁
β、γ異常圧検知表示装置
10 ストレーナ
11 蓋
11a ボス
11b 拡大内径部
20、40 軸部材
20a 周溝
24、44 バネ
25 スナップリング
26 環状部材
45 蓋部材
45a 脆弱部
100 減圧弁カセット
101 シリンダ
102 ピストンヘッド
103 第1ピストンロッド
104 弁座
105 弁体
106 弁流入口
107 第2ピストンロッド
108 ダイヤフラム
109 感圧室
110 ダイヤフラムケース
200 減圧弁ボディ
201 筒体
202 一次側開口
203 二次側開口
206 環状通路
203 入口筒部
205 出口筒部
203’、 203” 入口筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部環境に対するシール部を有する弁の一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを検知する検知手段と、前記一次圧又は二次圧が所定値を超えたことを外部環境に表示する表示手段と、前記一次圧又は二次圧が所定値以下に戻っても前記表示を維持する表示維持手段とを備えることを特徴とする異常圧検知表示装置。
【請求項2】
流体通路囲壁を長手方向に移動可能に貫通すると共に流体通路内方向と流体通路外方向への抜け止めが施された軸部材と、流体通路囲壁の軸部材貫通部をシールするシール部材と、軸部材を流体通路内方向へ付勢するバネと、流体通路内の流体圧を受けた軸部材が付勢バネの付勢力に抗して流体通路外方向へ移動した時に流体通路囲壁と軸部材とに係合して軸部材の流体通路内方向への戻りを禁止する戻り禁止部材とを備えることを特徴とする請求項1に記載の異常圧検知表示装置。
【請求項3】
軸部材が流体通路内の流体圧を受けバネの付勢力に抗して流体通路外方向へ移動することによって流体通路囲壁の外側へ露出した軸部材の部位が、着色されていることを特徴とする請求項2に記載の異常圧検知表示装置。
【請求項4】
流体通路囲壁を長手方向に移動可能に貫通すると共に流体通路内方向と流体通路外方向への抜け止めが施された軸部材と、流体通路囲壁の軸部材貫通部をシールするシール部材と、軸部材を流体通路内方向へ付勢するバネと、軸部材の流体通路外方向側端部に対峙して流体通路囲壁外面に係止された異常圧表示部材とを備え、流体通路内の流体圧を受けた軸部材が付勢バネの付勢力に抗して流体通路外方向へ移動した時に、軸部材の流体通路外方向側端部から付勢力を受けて異常圧表示部材が塑性変形し、或いは破損し、或いは脱落することを特徴とする請求項1に記載の異常圧検知表示装置。
【請求項5】
異常圧表示部材は軸部材の流体通路外方向側端部を覆って流体通路囲壁外面に係止された蓋部材であり、流体通路内の流体圧を受けた軸部材が付勢バネの付勢力に抗して流体通路外方向へ移動した時に、軸部材の流体通路外方向側端部から付勢力を受けて蓋部材が破損することを特徴とする請求項4に記載の異常圧検知表示装置。
【請求項6】
蓋部材の、軸部材の流体通路外方向側端部に対峙する部位に、前記端部を取り巻く環状の脆弱部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の異常圧検知表示装置。
【請求項7】
弁の一次側通路に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の異常圧検知表示装置。
【請求項8】
弁の二次側通路に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の異常圧検知表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−81759(P2011−81759A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260418(P2009−260418)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(391060029)株式会社ダンレイ (32)
【Fターム(参考)】