説明

異常型プリオン蛋白質の濃縮方法、および除去方法

【課題】 異常型プリオン蛋白質を迅速、簡便かつ高効率に濃縮する方法を提供し、また迅速、簡便に生体試料から異常型プリオン蛋白質を除去する方法を提供する。
【解決手段】 体液及び/又は生体組織破壊物を含む液体状の検体をpH5.5〜10.5に調整し、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれる元素の酸化物、前記元素の二種以上よりなる複合酸化物、前記元素の一種以上と前記元素以外の一種以上の金属元素とよりなる複合酸化物、およびこれらの二種以上の組合わせ、から選ばれる酸化物を加え混合した後、前記酸化物が沈殿されて得られた沈殿物上に濃縮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常型プリオン蛋白質の濃縮方法および除去方法、特に脳脊髄液、尿、血液などを用いて行う迅速、簡便かつ高効率に濃縮する異常型プリオン蛋白質濃縮方法、およびこの濃縮物を分離して行う異常型プリオン蛋白質除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体内にある正常型プリオン蛋白質(PrPC)が、何らかの原因によりプリオン、即ち異常型プリオン蛋白質(PrPSc)となることがある。異常型プリオン蛋白質は、正常型プリオン蛋白質の立体構造変異体であり、正常細胞にある正常型プリオン蛋白質が異常型に変化することにより生理的な代謝経路から外れて、神経系への蓄積と神経細胞死を起し、牛の狂牛病(牛海綿状脳症:BSE;Bovine Spongiform Encephalopathy)、羊のスクレイピー、人のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)など所謂プリオン病の病原体となると考えられている。特に、狂牛病は我々の生活に密接した牛に発症し、さらにヒトへの感染が懸念されることから世界的な関心事となった。牛は食肉以外に、牛乳、ゼラチン、コラーゲン等などが様々な用途に用いられており、これらを原材料として作られた製品の安全性を確実に確認するために発症早期あるいは発症前診断の開発が急がれている。
【0003】
現在牛のプリオン病診断には死後の中枢神経組織を可溶化し、これをウエスタンブロット(WB:Western blot)法やELISA法、免疫組織染色法などにより測定されている。しかし、異常型プリオン蛋白質の含有量は極めて低い上に、検体が希釈されるので、微量の異常型プリオン蛋白質を検出せねばならず、操作の煩雑さに加え、測定精度の上でも限界がある。
【0004】
そこで、異常型プリオン蛋白質を検出するとき、異常型プリオン蛋白質の濃縮が必要とされることが多い。異常型プリオン蛋白質を濃縮する技術として、超遠心分離法、アルコール沈殿法、リンタングステン酸沈殿法〔非特許文献1、2参照〕や限外ろ過法が代表的であり、その他一般に蛋白質の濃縮に用いられる技術が応用されることがある。最近では、異常型プリオン蛋白質を含む試料に蛋白凝集作用物質を作用させて凝集沈殿物中に異常型プリオン蛋白質を濃縮させる方法〔特許文献1参照〕、異常型プリオン蛋白質を含む試料をβ−プリーツシート結合性分子を結合した固体担体と一緒にインキュベートして、選択的に異常型プリオン蛋白質をβ−プリーツシート結合性分子に結合させて濃縮する方法〔特許文献2参照〕などの提案がある。
【0005】
【非特許文献1】サーファー(Safar J)ら,ネイチャーメディスン(Nature Medicine)、4巻.10号、1157−1165頁、1998年10月発行
【非特許文献2】ワズワース(Wadsworth JDF)ら,ランセット(Lancet)、358巻.9277号、171−180頁、2001年7月21日発行
【特許文献1】特開2005−300431号公報
【特許文献2】特表2005−531775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の方法における超遠心分離法は、プリオン病罹患個体の脳組織などより異常型プリオン蛋白質を濃縮する際に汎用されているが、超遠心機が必要であり1回に濃縮できる容量には限度があり、異常型プリオン蛋白質を沈殿物として濃縮するまでには半時間以上の時間を要してしまう。アルコール沈殿法は現行のBSE診断キット中で使われており超遠心分離法よりは簡単、且つ迅速に行うことができるが、超遠心分離法ほど高度に濃縮はできない。リンタングステン酸法は従来法の中ではもっとも高度に異常型プリオン蛋白質を濃縮できるが、手間や時間を要する。限外ろ過フィルターなどを用いた限外ろ過法では、用いるフィルターの網目の大きさや材質や試料の容量によって所要時間や濃縮効率が左右され、通常実験室で行われている1mL以下の少量試料からの濃縮でも20分以上を要する。その他の蛋白質濃縮に使われる一般的技術の応用は、手間、迅速性、濃縮効率の点ではこれらの代表的な従来法に劣る欠点がある。
かかる問題点に鑑み本発明の目的は、異常型プリオン蛋白質を迅速、簡便かつ高効率に濃縮する方法を提供し、また迅速、簡便に生体試料から異常型プリオン蛋白質を除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明は異常型プリオン蛋白質の濃縮方法であり、体液及び/又は生体組織破壊物を含む液体状の検体をpH5.5〜10.5に調整し、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれる元素の酸化物、前記元素の二種以上よりなる複合酸化物、前記元素から選らばれる一種以上の元素と前記元素以外の一種以上の金属元素とよりなる複合酸化物、およびこれらの二種以上の組合わせ、から選ばれる酸化物を加え混合した後、前記酸化物が沈殿されて得られた沈殿物上に濃縮させることを特徴とする。このような異常型プリオン蛋白質の濃縮方法において、検体に、異常型プリオン蛋白質を含まない尿を、尿の混合割合が20〜90%(容量)となるように加えることが好ましく、また、検体は、脳脊髄液、尿、血液から選ばれることが良く、さらに、検体は、前記pH範囲に調整される前に蛋白質分解されることが好適である。
そして、酸化物は、検体1mLに対し0.5ng〜1000mg加えることが好ましく、また、沈殿物は、酸化物が加え混合された後、遠心処理により分離されることが好ましい。
【0008】
また、本発明による異常型プリオン蛋白質の除去方法は、体液及び/又は生体組織破壊物を含む液体状の検体を、以上のような異常型プリオン蛋白質の濃縮方法により得られた沈殿物が分離除去されることを特徴とする。この異常型プリオン蛋白質の除去方法においては、酸化物はカラムに充填され、カラムの上から検体を含む溶液を流すことができる。
【発明の効果】
【0009】
脳脊髄液、尿、血液などの体液、及び/又は生体組織破壊物から異常型プリオン蛋白質が濃縮でき、精度の高い分析が可能となってプリオン病診断に応用でき、同時に体液や生体組織破壊物を含む液体状の検体から異常型プリオン蛋白質を除去するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、異常型プリオン蛋白質の感染を確認するための異常型プリオン蛋白質の濃縮方法であって、体液及び/又は生体組織破壊物を含む検体にごく少量の酸化物を加えて混合し、次いで酸化物を沈殿させて酸化物上に異常型プリオン蛋白質を濃縮させる方法である。
【0011】
ここで、検体は、脳脊髄液、尿、血液、血清、血漿、水性体液、涙液、唾液、リンパ液、乳汁、あるいは生体組織の破壊物など任意に選ばれるが、採取のし易さ、測定感度の観点から脳脊髄液、尿、血液が好ましい。これらを二種以上混合した検体であってもよい。本発明においては、検体が液体である必要があり、従って、体液はそのまま、あるいは水、緩衝液などで希釈して、生体組織は適切な緩衝液(例えば、50mMリン酸緩衝液、pH7.5)中で機械的に粉砕しホモジナイズして用いる。体液や生体組織破壊物としては、如何なる生物由来のものであっても適用できるが、プリオン病に罹患する可能性のある哺乳動物、例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジ、シカ、オオジカ、ミンク、ブタ、サル、マウス、ラット、ハムスター、ネコ、ヒトなどの哺乳動物由来のものがより有効である。また、例えば、このような哺乳動物由来の体液や生体組織などで副次的に汚染され異常型プリオン蛋白質を含有する可能性のある食品や飼料などの検体についても適用可能である。このような食品や飼料を検体とする場合には、それぞれ各種夾雑物を除去することが好ましく、例えば、従来技術として上述した限外ろ過法、アルコール沈殿法、リンタングステン酸法、超遠心法などの他、塩析、透析等を含め、一般に蛋白質の濃縮に用いられる技術と組み合わせて実施することも可能である。
【0012】
また、検体が尿以外の場合、その検体に尿を加えると酸化物に対しての結合性がよくなり、本発明の異常型プリオン蛋白質の濃縮効果が向上する。このとき加えられる尿は、異常型プリオン蛋白質を含まない尿でなくてはならないのはいうまでもない。なお、尿としては、如何なる哺乳動物由来の尿であっても使用できるが、尿添加の効果は尿素やアンモニア以外の尿成分によるものであり、尿素やアンモニアの濃度が高いと異常型プリオン蛋白質の濃縮効果が充分得られない場合があり、健常人の尿がより好適に使用できる。また、このとき加えられる尿の量は、尿の混合割合(容量)として20%〜90%が好ましく、40%〜80%とすることがより好ましく、40%〜60%がさらに好適である。この範囲より少なくともそれなりの効果は出るが、加えたことの効果発現が大きくない。またこの範囲より多いと、効果は充分発現するが検体が尿で希釈された状態となり、操作が煩雑となる。
【0013】
検体は、体液及び/又は生体組織破壊物を蛋白質分解したものであることができる。蛋白質分解は、プロテアーゼ、たとえばプロテイナーゼKで処理する。プロテイナーゼK(PK)としては、ウエスタンブロット法やELISA法等による各種蛋白の検出又は測定用の試料を調製するための蛋白質分解処理に通常用いられるようなプロテイナーゼKであれば、如何なるプロテイナーゼKであっても用いることができ、例えば、トリチラキウム アルブム(Tritirachium album)のような真菌由来のプロテイナーゼK(EndopeptidaseK:EC 3.4.21.64)の他、細菌、真菌、酵母、動物細胞などを宿主細胞とし上記のような真菌由来のプロテイナーゼKと同等以上の正常型プリオン蛋白質分解活性を有する蛋白質を発現するように遺伝子組換された組換原核細胞又は組換真核細胞の産生物から得られるリコンビナントプロテイナーゼKなども使用できる。プロテアーゼ消化は、それぞれのプロテアーゼの標準条件で実施されるが、代表的には、例えば上記真菌由来のプロテイナーゼKの場合、pH4〜12.5で、プロテアーゼ10μg/mL〜500μg/mL、好ましくは10μg/mL〜100μg/mLが加えられ、37℃で30分〜1時間程度で実施される。プロテアーゼによる蛋白質分解では、正常型プリオン蛋白質は分解するが、異常型プリオン蛋白質は、アミノ基末端側の一部が分解して分子量が小さくなる程度である。
【0014】
次いで、検体に酸化物が加えられる。このときの検体のpHは5.5〜10.5であり、6〜10が好ましく、6〜9がより好ましく、6〜8に調整することが最適である。蛋白質分解が行なわれる場合には、蛋白質分解とpH調整は、どちらが先でもよいが、酸化物が加えられるときには、pHが5.5〜10.5となっていることが必要である。pHが上記範囲の外では、異常型プリオン蛋白質と酸化物との結合が弱くなり、異常型プリオン蛋白質の酸化物上に濃縮する効率が低下する場合があり、また、使用する酸化物の種類にもよるが、検体に加えた酸化物が混合工程中に一部溶解し酸化物沈殿が充分に得られない事態も発生し得る。蛋白質分解を行うことで異常型プリオン蛋白質及び異常型プリオン蛋白質の部分分解フラグメントが酸化物上に濃縮(結合固着)され易くなり、この後に行われるプリオン病感染を確認する精度が高くなる。pH調整方法は特に限定するものではないが、必要により通常の酸、アルカリで所定領域近くにした後、例えば、生理食塩液、リン酸塩系(リン酸バッファー生理食塩液:PBS)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩系(Trisバッファー)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン塩系(Tricineバッファー)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N′−エタンスルホン酸塩系(HEPESバッファー)、3−(モルホリノ)プロパンスルホン酸塩系(MOPSバッファー)、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸系(CAPSバッファー)、グリシン−塩酸系、酢酸塩系等のバッファー液で調整することができる。異常型プリオン蛋白質又は異常型プリオン蛋白質の部分分解フラグメントと酸化物との結合は、強酸や強アルカリ、高塩濃度の溶液では影響を受けることより、静電的な結合が関与しているものと考えられ、上記のようなバッファー液により塩化ナトリウム150mMに相当するイオン強度以下の一般的に用いられるイオン強度とし、上記pH範囲に調整することがより好ましい。
【0015】
酸化物は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれる元素の酸化物、これらの元素から選ばれる二種以上の元素よりなる複合酸化物、前記元素の一種以上と前記元素以外の一種以上の金属元素とよりなる複合酸化物、およびこれらの二種以上の組合わせである。ここで、酸化物としては、例えば、各種結晶系のシリカとも呼ばれる二酸化ケイ素(非晶質石英ガラス、シリカゲルなども含む)、アルミナ、酸化数4以上の酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化タングステンなどを挙げることができる。二種以上の元素よりなる複合酸化物は、シリカアルミナ、ゼオライト、クレイ(粘土鉱物)などである。また、例えば、ゼオライト(ゼオライト型化合物又はゼオライト類縁物質とも呼ばれる広義ゼオライトも含まれる)、クレイ、フロリジール、珪藻土、セライトなど上記以外の元素が含まれている酸化物(不純物含有酸化物、酸化物塩や複合酸化物)であってもよい。ここで、上記元素以外の元素を含む複合酸化物としてのゼオライトやクレイには、様々な組成を有する天然又は合成のものが知られており、例えば、pH5.5〜10.5に調整した水性溶媒やバッファー液に添加混合した場合に多量(例えば添加重量の半量以上)が溶解することがなく、好ましくは、pH6〜9に調整した水性溶媒やバッファー液に添加混合した場合に殆ど(例えば添加重量の10%以上、好ましくは5%以上)溶解することがなく、本発明の目的達成に支障を及ぼすことのない複合酸化物であればいずれのゼオライトやクレイであっても使用できる。なお、このような複合酸化物としては、前記元素の一種以上の元素はケイ素、アルミニウムから選ばれることが好ましく、前記元素以外の金属元素としては、第1族元素、第2族元素から選ばれる金属元素(アルカリ金属、アルカリ土類金属)が好ましい。また、このような複合酸化物では、水溶性が高く上述のような問題を生じる場合もあることから、その組成式において前記元素以外の金属元素の占める比率(結晶水を除く元素数比%)は25%以下が好ましく、15%以下であることがより好ましい。以上のような酸化物の形態は微細な粉体であれば良く、酸化物の比重に応じて操作に適した粒径を選定することができ、特に限定されないが、通常粒径は0.1μm〜1500μmであり、0.5μm〜1000μmが好ましく、1μm〜500μmがより好ましい。粒子形状についても、略球状、方形状、破砕された不定形状など如何なる形状であっても良く、また、粉体粒子の一部又は全部を多孔性のものとすることもできる。また、酸化物が不純物を含有する場合、不純物として如何なる無機物又は有機物、或いはこの両方を含んでもよいが、不純物含有重量については、30%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。30%を超えると異常型プリオン蛋白質の濃縮効率が低下する場合がある。
【0016】
酸化物の使用量は、当該酸化物の比重や粒径に応じて適宜決定することができ、特に限定されないが、検体1mLに対し通常0.5ng〜1000mg、好ましくは0.5ng〜10mg、より好ましくは0.5ng〜100μg、さらに好ましくは0.5ng〜10μg、最も好ましくは50ng〜5μgである。0.5ngより少ないと本発明の目的は達せられるが沈殿物量が少なくなり誤差を招き易くなることがある。また、1000mgより多いことは取り扱いする上での困難を伴うことがある。
検体に酸化物が加え混合されたとき、検体中の異常型プリオン蛋白質は通常速やかに結合されるが、結合を充分完結させるために、室温で2分間以上、好ましくは5分間程度攪拌を続ける。攪拌時間はこれ以上長くなっても特別障害とはならない。次いで酸化物を分離するが、この分離は、遠心処理すると酸化物を円滑に沈殿するので好ましい。
【0017】
本発明の方法により異常型プリオン蛋白質は酸化物に結合されて酸化物とともに沈殿物となる。体液や生体組織中には正常型プリオン蛋白質と異常型プリオン蛋白質が含まれているが、本発明者の検討によると両者の酸化物上への結合に大きな差があり、異常型プリオン蛋白質が選択的に結合することを見出した。従って、検体中の異常型プリオン蛋白質のほとんどが酸化物沈殿物上に固着されるので、この酸化物沈殿物から異常型プリオン蛋白質を溶出させることで、検体中の異常型プリオン蛋白質を確認、定量することが可能となる。ここで溶出液は、異常型プリオン蛋白質を溶解することが可能であれば如何なる溶液であっても良く、特に限定されないが、高い回収率で溶出可能な溶出液としては、例えば、150mM塩化ナトリウムに相当するイオン強度以上のイオン強度を有する塩溶液やバッファー液、pH5.5未満又はpH10.5を超えるpHを有する水性の溶液(鉱酸や有機酸溶液、アルカリ溶液、バッファー液等:イオン強度不問)、尿素液(濃度8M以上が好適)などを挙げることができる。
【0018】
本発明の方法は、濃縮効率では従来の超遠心分離法、アルコール沈殿法、限外ろ過法よりはるかに優れており、リンタングステン酸法と同等またはそれ以上である。一方、迅速簡便性においては、本発明の方法はこれらのいずれの従来法よりも格段に優れている。したがって、従来法に比べて、簡単であり、高度濃縮効率を保ちつつ、より迅速に多量のサンプルを同時に処理できるという利点がある。
【0019】
また、この酸化物沈殿物を分離した後の検体は、異常型プリオン蛋白質濃度が低くなるので、体液、あるいは生体組織破壊物を含む溶液に、充分多い量の酸化物と接触させることで、異常型プリオン蛋白質を実質含まない体液、あるいは溶液を得ることができる。従って、異常型プリオン蛋白質が除去された体液、あるいは生体組織破壊物を含む溶液を得るには、以上のバッチ法以外に、カラムに酸化物を充填し、上から目的の体液及び/又は生体組織破壊物を含む溶液を流すことでも目的を達することができる。
【実施例1】
【0020】
本発明方法(以降、特に断りのない限り「酸化物法」と記す)とリンタングステン酸法(従来方法)との比較を行った。
〔評価に用いた検体〕
(細胞)
・スクレイピープリオンであるRML株がマウス神経芽細胞腫細胞(Neuro 2a)に持続感染したScN2a細胞(Sc)。
・スクレイピープリオンであるRML株がマウス神経芽細胞腫細胞(Neuro 2a #58)に持続感染したCh2細胞(Ch2)。
・ヒトプリオン病プリオンであるFukuoka−1株がマウス神経芽細胞腫細胞(Neuro 2a #58)に持続感染したF3細胞(F3)。
・スクレイピープリオンである22L株がマウス神経芽細胞腫細胞(Neuro 2a)に持続感染したN167細胞(N167)。
【0021】
(細胞の処理方法)
上記細胞のそれぞれを、細胞培養フラスコ(底面積25cm)にて培養し、細胞密度がコンフルエントとなった時点で培養上清を除き、リン酸バッファー生理食塩水〔PBS、pH=6.5〕で細胞を洗浄した。洗浄液を十分に除き、リシス液〔lysis液:0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.5%NP−40(商品名、和光純薬工業(株)、オクチルフェニルエーテル)、残部PBS〕1mLを用いて細胞を溶解した。軽く遠心分離して高分子核酸を除いた後、細胞溶解液にトリチラキウム アルブム(Tritirachium album)由来のプロテイナーゼK(PK:proteinase K)を終濃度10μg/mLとなるように加え37℃で30分反応(蛋白質分解)させた後、フェニルメタンスルホニルフロライド(phenylmethan sulfonylfluoride:PMSF)を終濃度1mMとなるように加えて反応をとめた。
【0022】
〔評価方法〕
蛋白分解処理した細胞溶解液を0.5mLずつ2つに分け、一方は酸化物法で、他方はリンタングステン酸法でそれぞれ異常型プリオン蛋白質を濃縮した。
(酸化物法)
蛋白質分解処理した細胞溶解液0.5mLに、核酸分離用シリカとして市販されているFOG(Qbiogene社製)を滅菌水(オートクレーブ滅菌蒸留水)で1000倍希釈したシリカ懸濁液5μL〔固形分(シリカ)約1.5μg含有〕を加え、2〜3分間室温で混合した後、軽く遠心〔5,000×g、1分間〕してシリカを沈殿させ、上清を除いた。
この沈殿全量に対しSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)用バッファー〔1% SDS(ソディウムドデシルサルフェート)、0.05% ブロモフェノールブルー、4% グリセロール、1% 2−メルカプトエタノール、25mM トリス塩酸 pH6.8〕20μLを加えて懸濁し、95℃、5分間の熱変性後にイシカワ、ドウ−ウラ(Ishikawa, Doh−ura)らの方法〔イシカワ K.,ドウ−ウラ K.ら, ジャーナル オブ ジェネラル ヴァイロロジー(Journal of General Virology)2004年、 85巻、 1785−1790頁〕に準じ、15% トリス・グリシンSDS−PAGEゲルで電気泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。ウエスタンブロット法においては、電気泳動した蛋白質をナイロンメンブラン(ミリポア社製、PVDFメンブレイン)にブロッティングし、プリオン蛋白質に対するマウスモノクローナル抗体(SPI−BIO 社製、SAF83 (5,000倍希釈))、及びアルカリフォスファターゼ・コンジュゲートヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体(プロメガ社製(20,000倍希釈)、化学発光検出試薬(アマーシャム社製、CDP−Star detection reagent)を使用してプリオン蛋白質の検出を行った。
【0023】
(リンタングステン酸法)
ワズワースらが報告している方法〔非特許文献2〕に基づき異常型プリオン蛋白質を沈殿させた。すなわち、プロテイナーゼKで蛋白質分解を行った後にPMSFを加え反応を止めたプリオン感染細胞溶解液500μLにA溶液(PBS中に4%サルコシルを含有)500μLを加えて撹拌し、37℃で30分間反応させた。その後、B溶液(4%リンタングステン酸水溶液pH7.4、170mM MgClを含有)81.3μLを加えて撹拌し、37℃で30分間反応させた。次に、室温で18,000×g、30分間遠心を行い、異常型プリオン蛋白質を沈殿させた。この沈殿について、上記と同様にしてバッファーを加えて懸濁し、SDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0024】
〔結果〕
結果を図1に示す。図中、Sc、F3、N167、Ch2はそれぞれの細胞であり、FOGは本発明の酸化物法によるもの、PTAはリンタングステン酸法によるものである。
なお、ウエスタンブロット法により得られたプリオン蛋白質に由来する全てのシグナルをスキャナー(エプソン(株)製、GT−8400U)でコンピューターに取り込んだ後に、Image J解析ソフト(http://rsb.info.nih.gov/ij/)を用いてレーン毎に検出されたプリオン蛋白質に由来する全てのバンドのシグナル強度を定量し、リンタングステン酸法に対する酸化物法によるプリオン蛋白質の濃縮効果(濃縮効率)を回収率(%)として算出しレーン毎に示した。この結果から、本発明の酸化物法は、従来法で最も異常型プリオン蛋白質濃縮効率が優れているとされるリンタングステン酸法と比較して、充分満足できる程度(83〜107%)に異常型プリオン蛋白質を濃縮できることがわかる。
【実施例2】
【0025】
他の酸化物、シリカ塩や複合酸化物についての比較を行った。
〔評価に用いた検体、および評価方法〕
プリオン持続感染細胞F3を、2個の細胞培養フラスコ(底面積25cm)にそれぞれで培養し、細胞密度がコンフルエントとなった時点で培養上清を除き、PBS(pH 6.5)で細胞を洗浄した。洗浄液を十分に除き、それぞれのフラスコの細胞を溶解液1mLに溶解し、遠心分離して高分子核酸を除いた後、2個のフラスコからの細胞溶解液を一つにまとめ混合し、実施例1の場合と同じようにプロテイナーゼKで蛋白質分解処理を行いPMSFで酵素処理を止め検体(A)とした。スクレイピープリオン持続感染細胞ScN2aを用い、上記プリオン持続感染細胞F3の場合と同様に培養、洗浄、細胞溶解、蛋白質分解処理等を行い検体(B)とした。これら蛋白質分解処理済の細胞溶解液をそれぞれ0.1mLずつキャップ付マイクロチューブに分けた。酸化チタン(IV)(和光純薬工業(株)製)、酸化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業(株)製)、酸化タングステン(IV)(和光純薬工業(株)製)、酸化モリブデン(IV)(和光純薬工業(株)製)、二酸化ケイ素 (和光純薬工業(株)製)、酸化アルミニウム(アルミナ粉末、1〜5μm、和光純薬工業(株)製)、フロリジール(ケイ酸マグネシウム:75〜150μm、和光純薬工業(株)製)、合成ゼオライト(F−9:NaO・Al・2.5SiO、粉末、75μm、和光純薬工業(株)製)、FOGのそれぞれを0.3mg/mLとなるように加えた懸濁液(粉末に滅菌蒸留水を加えてスラリー状にしたもの)を、各マイクロチューブ中の細胞溶解液にそれぞれ5μLを加えて2〜3分間室温で混合した後、軽く遠心〔5,000×g、1分間〕して沈殿物を得た。それぞれの沈殿物について、実施例1と同様にしてSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0026】
〔結果〕
結果を図2A、Bに示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。酸化物である酸化チタン(A1)、酸化ジルコニウム(A2)、酸化タングステン(A3、B3)、酸化モリブデン(A4、B2)、二酸化ケイ素(A5)、酸化アルミニウム(B1)、シリカ塩であるフロリジール(B4)、複合酸化物である合成ゼオライト(B5)を用いた異常型プリオン蛋白質の濃縮効果(濃縮効率)は、FOG(A6、B6)を用いた場合とほぼ同程度であった。
【実施例3】
【0027】
酸化物法が異常型プリオン蛋白質を選択的に濃縮できることを確認する試験を行った。
〔評価に用いた検体、および評価方法〕
(1)プリオンが感染していないNeuro 2a細胞(N2a細胞)を用いた点と細胞溶解液を蛋白質分解処理せずにPMSFを加えた点以外は実施例1と同様にして調製したN2a細胞溶解液を検体とした。この検体中のプリオン蛋白質をシリカ(FOG)上に濃縮し、SDS−PAGEで泳動、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した(図3のレーン1)。熱変性条件、SDS−PAGE泳動条件、WB検出条件等については実施例1の場合と同様とした(以下(2)〜(4)についても同様の条件にて行った)。
(2)上記N2a細胞溶解液17μL(0.5mLの30分の1)を検体として用い、酸化物による濃縮操作を施すことなく直接5倍濃度のSDS−PAGE用バッファー4.2μLを加えたものを対照検体試料とした(図3のレーン2)。
(3)上記N2a細胞溶解液100μL(0.5mLの5分の1)を検体として用い、この検体に100%冷メタノール400μLを加え5分ほど混合した後、4℃で高速遠心(条件:18,000×g、10分間)で沈殿させた蛋白質沈殿物にSDS−PAGE用バッファー20μLを加えたものをアルコール沈殿法による比較例検体試料とした(図3のレーン3)。
(4)実施例1に述べたプリオン感染Neuro 2a細胞を蛋白質分解処理したScN2a細胞溶解液0.5mLから実施例1の場合と同様にして得た沈殿シリカにSDS−PAGE用バッファー20μLを加えたものを酸化物法による検体試料とした(図3のレーン4)。
【0028】
〔結果〕
結果を図3に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。図中レーン1は異常型プリオン蛋白質が感染していない細胞を用いた場合における酸化物法による正常型プリオン蛋白質の濃縮(1)結果であり、レーン2における対照試料(30分の1相当量)以下の濃縮効率を示し、レーン3の(5分の1相当量を用いた)アルコール沈殿法による比較例検体試料と比較しても、酸化物法では正常型プリオン蛋白質をほとんど濃縮していないことがわかる。一方、酸化物法は異常型プリオン蛋白質を高効率で濃縮することから(レーン4)、異常型プリオン蛋白質を極めて選択的に濃縮可能であることが確認された。
【実施例4】
【0029】
蛋白質分解処理の効果を検討した。
〔評価に用いた検体、および評価方法〕
プリオン持続感染細胞ScN2aを、5個の細胞培養フラスコ(底面積25cm)にそれぞれで培養し、細胞密度がコンフルエントとなった時点で培養上清を除き、PBS(pH 6.5)で細胞を洗浄した。洗浄液を十分に除き、それぞれのフラスコの細胞を溶解液1mLに溶解し、遠心分離して高分子核酸を除いた後、5個のフラスコからの細胞溶解液を一つにまとめ混合し、これから0.5mLずつ10本のキャップ付マイクロチューブに分け検体とした。このうち5本については実施例1の場合と同じようにプロテイナーゼKで蛋白質分解処理を行いPMSFで酵素処理を止め、他の5本は蛋白質分解処理を施さずにPMSFのみを添加して評価した。評価は、各マイクロチューブ中の細胞溶解液にFOG原液、FOG原液の10倍希釈品、10倍希釈品、10倍希釈品、10倍希釈品の5μLを加えて酸化物法の沈殿物を得た。それぞれの沈殿物について、実施例1と同様にしてSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0030】
〔結果〕
結果を図4に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。図中「PK+」はプロテイナーゼK(PK)で蛋白質分解処理を行ったもの、「PK−」は蛋白質分解処理を行っていないものである。それぞれのレーン1はFOG原液の10倍希釈品を用いた場合、レーン2はFOG原液の10倍希釈品を用いた場合、レーン3はFOG原液の10倍希釈品を用いた場合、レーン4はFOG原液の10倍希釈品を用いた場合、レーン5はFOG原液を用いた場合である。
この結果から、酸化物法では、蛋白質分解処理を行うと極めて少量のシリカ添加で濃縮が出来たが、蛋白質分解処理を行わない場合には蛋白質分解処理を加えた場合より多く添加する必要があることがわかる。
【実施例5】
【0031】
実際の体液検体として入手が容易であるヒトの尿を用いて、蛋白質分解処理した異常型プリオン蛋白質を添加して、酸化物法による添加回収試験を行った。
〔評価に用いた検体試料〕
・実施例1における蛋白質分解処理したF3細胞溶解液50μLに、健常成人の尿450μLを加え検体試料とした。
・実施例1における蛋白質分解処理したF3細胞溶解液50μLに、PBS450μLを加え検体試料とした。
【0032】
〔評価方法〕
各検体試料に、FOG原液を滅菌水で1000倍希釈したもの5μLを加え、3分間室温で混合した後、軽く遠心分離してシリカを沈殿させ、上清を除いた。このシリカ沈殿にSDS−PAGE用バッファーを加えて懸濁し、熱変性後にSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0033】
〔結果〕
結果を図5に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。図5において、レーン1はヒトの尿を用いた場合、レーン2はPBS溶液を用いた場合である。
この結果から、異常型プリオン蛋白質は尿を加えた場合、尿を加えない(PBS使用)場合に比べて1.4倍濃縮されていることがわかる。
【実施例6】
【0034】
〔実施例6−1〕:実施例5において、尿に添加した異常型プリオン蛋白質が酸化物法にて極めて効率的に濃縮できることが明らかとなり、尿中に酸化物法の効果を高める成分が含まれることが考えられる。そこで、酸化物法による蛋白質分解処理を行わない異常型プリオン蛋白質の濃縮への尿の効果を検討した。
【0035】
〔評価に用いた検体試料〕
・実施例1における蛋白質分解処理をしたF3細胞溶解液100μLに尿400μLを加え検体試料とした。
・実施例1における蛋白質分解処理をしたF3細胞溶解液100μLにリシス液400μLを加え検体試料とした。
・蛋白質分解しなかった以外は実施例1と同様に調製したF3細胞溶解液100μLに尿400μLを加え検体試料とした。
・蛋白質分解しなかった以外は実施例1と同様に調製したF3細胞溶解液100μLにリシス液400μLを加え検体試料(比較例)とした。
・未感染のNeuro 2a細胞を用い蛋白質分解しなかった以外は実施例1と同様にして調製した溶解液100μLに尿400μLを加え検体試料(比較例)とした。
・未感染のNeuro 2a細胞を用い蛋白質分解しなかった以外は実施例1と同様にして調製した溶解液100μLにリシス液400μLを加え検体試料(比較例)とした。
【0036】
〔評価方法〕
各検体試料にFOG原液を滅菌水で1000倍希釈したもの5μLを加え、実施例1と同様にしてSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0037】
〔結果〕
結果を図6に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。図中、レーン1は蛋白質分解処理をしたF3細胞溶解液に尿を加えた検体試料、レーン2は比較例であり、蛋白質分解処理をしたF3細胞溶解液にリシス液を加えた検体試料、レーン3は未処理のF3細胞溶解液に尿を加えた検体試料、レーン4は比較例であり、未処理のF3細胞溶解液にリシス液を加えた検体試料、レーン5は未感染のNeuro 2a細胞溶解液に尿を加えた検体試料、レーン6は比較例であり、未感染のNeuro 2a細胞溶解液100μLにリシス液を加えた検体試料である。
この結果から、検体中に尿を添加することにより、プリオン蛋白質の効率的な濃縮が蛋白分解処理をしていない異常型プリオン蛋白質だけではなく、正常型プリオン蛋白質でもみられることが明らかとなった。
【0038】
〔実施例6−2〕:尿添加の特異性についての検討;尿の添加による効果が細胞溶解液であるリシス液の組成化合物(界面活性剤やNaCl)の濃度を変えたことによる影響であるかどうかを、リンタングステン酸法の場合も含め検討した。
〔評価に用いた検体試料〕
・実施例1における蛋白質分解処理をしたF3細胞溶解液100μLに、PBS400μLを加え検体試料とした。
・実施例1における蛋白質分解処理をしたF3細胞溶解液100μLに、蒸留水400μLを加え検体試料とした。
・実施例1における蛋白質分解処理をしたF3細胞溶解液100μLに、リシス液400μLを加え検体試料とした。
・実施例1における蛋白質分解処理をしたF3細胞溶解液100μLに、尿400μLを加え検体試料とした。
【0039】
〔評価方法〕
各検体試料にFOG原液を滅菌水で1000倍希釈したもの5μLを加え、実施例1と同様にしてSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
なお、同一プール検体より分注し同様な処理をしたものを、リンタングステン酸法で並行して解析した。
【0040】
〔結果〕
結果を図7に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。図中レーン1は、蛋白質分解処理をしたF3細胞溶解液に、PBSを加えた検体試料、レーン2は蒸留水を加えた検体試料、レーン3はリシス液を加えた検体試料、レーン4は尿を加えた検体試料である。この結果から、尿添加の効果は溶解液組成化合物の濃度変化によるものではないことが判明した。さらに、尿添加を行った場合には、酸化物法による異常型プリオン蛋白質濃縮効率はリンタングステン酸法を上回っていた。
【0041】
〔実施例6−3〕:尿の添加量の効果を検討した。
〔評価に用いた検体試料〕
・実施例1における蛋白質分解処理したF3細胞溶解液100μLに、尿単独、尿とリシス液の1:3、1:1、3:1(容量比)混合液、リシス液単独のそれぞれ400μLを加え検体試料とした。
・蛋白質分解処理しない以外は実施例1と同様に調製したF3細胞溶解液100μLに、尿単独、尿とリシス液の混合液〔1:3、1:1、3:1(容量比)〕、リシス液単独のそれぞれ400μLを加え検体試料とした。
【0042】
〔評価方法〕
各検体試料500μLにFOG原液を滅菌水で1000倍希釈したもの5μLを加え、実施例1と同様にしてSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。なお、蛋白質分解処理を加えた検体試料群(A)では免疫反応シグナルを検出する時間(化学発光シグナルをX線フィルムに露出する時間)を1分間とし、蛋白質分解処理を行わない検体試料群(B)については10分間の検出時間とした。
【0043】
〔結果〕
結果を図8に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。図中、Aは蛋白質分解処理した異常型プリオン蛋白質含有検体試料、Bは蛋白質分解処理していない異常型プリオン蛋白質及び正常型プリオン蛋白質含有検体試料であり、レーン1はF3細胞溶解液にリシス液単独を加えた検体試料、レーン2は尿とリシス液1:3(容量比)の混合液、レーン3は尿とリシス液1:1(容量比)の混合液、レーン4は尿とリシス液3:1(容量比)の混合液、レーン5は尿単独を加えた検体試料である。
蛋白質分解処理をした異常型プリオン蛋白質では、検体試料中の尿が40容量%(レーン3)以上では尿の添加効果が顕著となり、それ以上の尿添加では効果がほぼ飽和しているようにみえる。一方、図8Bに示すように蛋白質分解処理をしていないプリオン蛋白質(異常型以外にも正常型を含む)では無添加に比べ、尿を20容量%含むと効率が上がっていたが、20〜60容量%で効率は変わらず、80容量%添加で大きく効率は上がった。
【0044】
〔実施例6−4〕:尿の添加効果が酸化物法に特異的であるのか、あるいは他の方法、特にリンタングステン酸法にも認められるかどうかを検討した。
【0045】
〔評価に用いた検体試料、および評価方法〕
前記(実施例6−3)と同一プールから分注した検体を用いて、前記(実施例6−2)の方法による酸化物法、およびリンタングステン酸法で解析した。
【0046】
〔結果〕
結果を図9に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。図中、FOGは酸化物法、PTAはリンタングステン酸法によるものであり、レーン1はF3細胞溶解液にリシス液単独を加えた検体試料、レーン2は尿とリシス液1:3(容量比)の混合液、レーン3は尿とリシス液1:1(容量比)の混合液、レーン4は尿とリシス液3:1(容量比)の混合液、レーン5は尿単独を加えた検体試料である。
【0047】
リンタングステン酸法では、酸化物法における尿容量に依存する濃縮効率の向上は観察されなかった。また、図7でも観察されたように、検体試料容量中の40%以上の尿添加では酸化物法の方がリンタングステン酸法よりも異常型プリオン蛋白質の濃縮効率は優れていた。
【0048】
〔実施例6−5〕:尿添加の影響が尿中に含まれる尿素やアンモニアの影響であるかどうかを検討した。
〔評価に用いた検体試料、および評価方法〕
実施例1における蛋白質分解処理したF3細胞溶解液100μLに尿素を含まないリシス液、あるいは尿素1、2、3、4、5%(重量)含むリシス液400μLを加えた検体試料を用いて、前記(実施例6−3)の方法による酸化物法で解析した。また、実施例1における蛋白質分解処理したF3細胞溶解液100μLにアンモニアを含まないリシス液、あるいはアンモニア0.25、0.5、1、1.5、2%(重量)含むリシス液400μLを加えた検体試料を用いて、前記(実施例6−3)の方法による酸化物法で解析した。
〔結果〕
酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮において、尿素添加やアンモニア添加では濃縮効率の改善は見られなかった。
【実施例7】
【0049】
検体試料溶液中の塩濃度が酸化物法による異常型プリオン蛋白質濃縮に及ぼす影響を調べた。
〔評価に用いた検体試料、および評価方法〕
実施例1における蛋白質分解処理したScN2a細胞溶解液0.5mLにPBSを加えて容量を1mLとした検体試料、および蛋白質分解処理したScN2a細胞溶解液0.5mLに、核酸抽出用キット(Qbiogene社製)に添付されている高塩濃度溶液であるHigh Salt Binding Solutionの125、250、375、500μLをそれぞれ加え、さらにPBSを加えて容量を1mLとした検体試料のそれぞれについて、FOG原液を1000倍希釈したもの5μLを加えて異常型プリオン蛋白質を沈殿させ、実施例1と同様にしてSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0050】
〔結果〕
結果を図10に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮は検体試料中の塩濃度がPBS中の塩化ナトリウムに由来する150mMより高くなるにしたがって濃縮効率が低下した。
【実施例8】
【0051】
酸化物法において検体に添加する酸化物量について調べた。
〔評価に用いた検体試料、および評価方法〕
実施例1における蛋白質分解処理したF3細胞溶解液0.5mLあるいは0.25mLに、FOG原液を滅菌水で5(n−1)×1000倍希釈(n=1〜6)したものをそれぞれ5μLあるいは2.5μLを加え、3分間室温で混合した後、軽遠心してシリカを沈殿させ、上清を除いた。このシリカ沈殿にSDS−PAGE用バッファーを加えて懸濁し、熱変性後にSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0052】
〔結果〕
結果を図11に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。図中のレーンの数字は、5(n−1)×1000倍希釈(n=1〜6)のnと一致している。この結果から、検体100μLあたりFOG原液を5×1000倍希釈したシリカ溶液1μL量までほぼ同程度に異常型プリオン蛋白質を濃縮できた。5×1000倍希釈したシリカ溶液1μLに含まれるシリカ量はおよそ0.5ngである。
【実施例9】
【0053】
酸化物による異常型プリオン蛋白質の濃縮において、酸化物との反応時の温度条件について検討を行った。
〔評価に用いた酸化物〕
FOGとプラスミドDNA回収用シリカであるQIAEX(Qiagen社製)をそれぞれ用い、細胞溶解液とシリカとの混合反応を4℃、20℃、37℃で5分間行い、比較した。
【0054】
FOG原液とほぼ等量になるようにQIAEXシリカを滅菌水で調整した(図12の10のレーン)。これを10倍、10倍,10倍に希釈したものも調整した(図12のそれぞれ10−1、10−2,10−3のレーン)。FOGは原液を滅菌水で10倍希釈したものを調製した。実施例1の蛋白質分解処理したScN2a細胞溶解液0.5mLに、調製した各シリカ液5μLを加え、4℃、20℃、37℃で5分間混合した後、軽遠心〔5,000×g、1分間〕してシリカを沈殿させ、上清を除いた。このシリカ沈殿にSDS−PAGE用バッファーを加えて懸濁し、95℃、5分間の熱変性後にSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。また、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。結果を図12で示すように、FOGもQIAEXも細胞溶解液との混合反応時の温度については、4℃より(データ非表示)20℃の方が、20℃より37℃の方が異常型プリオン蛋白質の濃縮効率は良かった。
【実施例10】
【0055】
(1)実施例7で検体試料溶液中の塩濃度が酸化物による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果を低下させることを明らかにした。そこで異常型プリオン蛋白質が濃縮された酸化物沈殿物の洗浄液の塩濃度について調べた。
〔評価に用いた検体、およびその処理〕
・実施例1における蛋白質分解処理したScN2a細胞溶解液を検体とした。
・プリオンが感染していないNeuro 2a細胞を用い、蛋白質分解処理しないこと以外は実施例1と同様にして調製したN2a細胞溶解液を検体とした。
【0056】
〔評価方法〕
検体としての各細胞溶解液0.5mLにFOG原液を滅菌水で1000倍希釈したもの5μLを加えて混合し、軽遠心〔5,000×g、1分間〕して分離した沈殿に、0〜1.5MのNaCl溶液0.5mLを加え懸濁させ軽遠心〔5,000×g、1分間〕して上清を除く処理を3回繰り返した。このような洗浄処理を施さない無処置沈殿、及び各洗浄処理を施し最終的に得られた沈殿について、SDS−PAGEバッファーを加えて、95℃、5分間の熱変性後にSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0057】
〔結果〕
結果を図13に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。図中、正常型プリオン蛋白質は、蛋白質分解処理していないN2a細胞溶解液より回収されたものであり、異常型プリオン蛋白質は蛋白分解処理したScN2a細胞溶解液より回収されたものである。0.15Mを超える塩濃度での洗浄では、異常型プリオン蛋白質は酸化物から遊離することがわかった。また抗プリオン蛋白質抗体SAF83で認識された正常型プリオン蛋白質を含むシグナルからは0.075M以外の塩濃度での洗浄では酸化物から遊離したことを示す。
【0058】
(2)次に洗浄液のpHについて検討した。
〔評価に用いた検体試料、およびその処理〕
実施例1における蛋白質分解処理したScN2a細胞溶解液0.5mLにFOGを混合して得た沈殿物に、pH2(0.05M グリシンバッファー)、pH3(0.05M グリシンバッファー)、pH4(0.05M クエン酸バッファー)、pH5(0.05M クエン酸バッファー)、pH6(0.05M 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)バッファー)、pH7(0.05M 燐酸バッファー)、pH8(0.05M トリスバッファー)、pH9(0.05M トリスバッファー)、pH10(0.05M N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)バッファー)、pH11(0.05M CAPSバッファー)、pH12(0.05M CAPSバッファー)の各種バッファー溶液0.5mLを加え懸濁したのち軽遠心〔5,000×g、1分間〕して上清を除く処理を3回繰り返した。このような洗浄処理を施さない無処置沈殿、及び各洗浄処理を施し最終的に得られた沈殿にSDS−PAGEバッファーを加えて、95℃、5分間の熱変性後にSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0059】
〔結果〕
結果を図14のAおよびBに示す。なお図14Bには、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。この結果から、調べたpHバッファー溶液の中ではpH6〜10以外の溶液での洗浄では異常型プリオン蛋白質は酸化物から遊離することがわかった。
【実施例11】
【0060】
酸化物法における検体試料容量の影響について検討した。
実施例1と同様にしてSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
実施例1における蛋白質分解処理したF3細胞溶解液0.1mLに、PBSと尿を混合して全体の容量を0.3〜1.2mLまで0.1mLずつ増加させた検体試料を調整した。なお、加える尿量は全体の容量あたり40%になるようにした。また、蛋白質分解処理したF3細胞溶解液0.1mLに尿を加えずPBSのみを0.4mL加えたものを参考として調整した。これらの検体試料にFOG原液を滅菌水で1000倍希釈したものを5μL混合して沈殿させたシリカ沈殿物に、実施例1と同様にしてSDS−PAGE用バッファーを加えて、95℃、5分間の熱変性後にSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0061】
〔結果〕
結果を図15に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。図中、レーン1〜10はそれぞれ容量が0.3〜1.2mLの検体試料から異常型プリオン蛋白質を濃縮したものである。レーン11は参考のため尿を加えていない検体試料より異常型プリオン蛋白質を濃縮したものである。例えば、レーン1とレーン10を比較すると明らかなように、検体試料容量が4倍に増加し異常型プリオン蛋白質濃度が4分の1に低下しても、酸化物法により濃縮される異常型プリオン蛋白質量に変化は見られなかった。
この結果は、酸化物法では検体試料の容量に関係なく、検体中の異常型プリオン蛋白質を高効率に濃縮できることを示している。
【実施例12】
【0062】
酸化物法によった沈殿物からの異常型プリオン蛋白質の溶出について検討した。
実施例1と同様にしてSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0063】
実施例1における蛋白質分解処理したScN2a細胞溶解液0.5mLにFOGを混合して沈殿したシリカ沈殿物に、8M尿素液(25mM Tris−HCl pH7.5)20μLを加え95℃で5分、あるいは6Mグアニジンチオシアン酸溶液(25mM Tris−HCl pH7.5)20μLを加え37℃で15分反応させた。それぞれを軽遠心〔5,000×g、1分間〕して上清20μLを回収した。これを蒸留水で2倍に希釈した後に5倍濃度のSDS−PAGE用バッファー10μLを加えて撹拌したもの(50μL)の20μLを、95℃、5分間の熱変性の代わりに室温で一晩おいて解析用試料とした。一方、沈殿物にSDS−PAGE用バッファー50μLを加えて懸濁し、95℃、5分間の熱変性させたものの20μLを対照用試料とした。これらの試料をSDS−PAGEで泳動し、ウエスタンブロット法でプリオン蛋白質を検出した。
【0064】
〔結果〕
結果を図16に示す。なお、実施例1の場合と同様にプリオン蛋白質に由来するバンドのシグナル強度の測定結果から算出した回収率(%)をレーン毎に示した。図中、「urea」は沈殿物から8M尿素液処理で溶出した異常型プリオン蛋白質、「Gdn」は沈殿物から6Mグアニジンチオシアン酸溶液処理で溶出した異常型プリオン蛋白質、「Cont」は尿素液やグアニジンチオシアン酸溶液で未処理の沈殿物に含まれている異常型プリオン蛋白質である。
この結果から、8M尿素液での処理では、酸化物の沈殿物より異常型プリオン蛋白質を「Cont」の場合に対して100%以上遊離回収することが出来た。したがって、酸化物法で濃縮した異常型プリオン蛋白質は尿素処理により簡単に溶液状態で遊離回収でき、様々な検査法に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、従来のリンタングステン酸法と比較して試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図2】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、酸化物の種類による比較試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真であり、Aは蛋白分解処理を加えたプリオン持続感染細胞F3の細胞溶解液を検体として用いた場合、Bは蛋白分解処理を加えたプリオン持続感染細胞ScN2aの細胞溶解液を検体として用いた場合の結果を示す。
【図3】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の選択的濃縮効果について、正常型プリオン蛋白質の場合との比較試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図4】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、検体の蛋白質分解処理の有無による比較試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図5】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、尿検体に対して異常型プリオン蛋白質の添加回収試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図6】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、検体に対して尿の添加の有無と蛋白質分解処理の有無の影響を確認する試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図7】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、検体に対する尿の添加の特異的影響をリンタングステン酸法と比較して試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図8】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、検体に対する尿の添加量と蛋白質分解処理の有無の影響を確認する試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図9】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、検体に対する尿の添加量の影響をリンタングステン酸法と比較して試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図10】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、検体試料中の塩濃度の影響を確認する試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図11】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、検体に対する酸化物添加量の影響を確認する試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図12】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、酸化物添加反応時の温度の影響を確認する試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図13】同酸化物法により酸化物上に濃縮されたプリオン蛋白質と酸化物との結合について、洗浄液の塩濃度の影響を確認する試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図14】同酸化物法により酸化物上に濃縮されたプリオン蛋白質と酸化物との結合について、洗浄液のpHの影響を確認する試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真であり、AはpH2〜5、8、11、12とした場合、BはpH6〜10とした場合を示す。
【図15】同酸化物法による異常型プリオン蛋白質の濃縮効果について、検体試料容量の影響を確認する試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。
【図16】同酸化物法により酸化物上に濃縮された異常型プリオン蛋白質の酸化物からの遊離溶出試験を行った結果の一例として、ウエスタンブロットの泳動像を示す図面代用写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液及び/又は生体組織破壊物を含む液体状の検体をpH5.5〜10.5に調整し、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれる元素の酸化物、前記元素の二種以上よりなる複合酸化物、前記元素の一種以上と前記元素以外の一種以上の金属元素とよりなる複合酸化物、およびこれらの二種以上の組合わせ、から選ばれる酸化物を加え混合した後、前記酸化物が沈殿されて得られた沈殿物上に濃縮させることを特徴とする異常型プリオン蛋白質の濃縮方法。
【請求項2】
前記検体に、異常型プリオン蛋白質を含まない尿を、尿の混合割合が20〜90%(容量)となるように加えることを特徴とする請求項1記載の異常型プリオン蛋白質の濃縮方法。
【請求項3】
前記検体は、脳脊髄液、尿、血液から選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載の異常型プリオン蛋白質の濃縮方法。
【請求項4】
前記検体は、前記pH範囲に調整される前に蛋白質分解されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の異常型プリオン蛋白質の濃縮方法。
【請求項5】
前記酸化物は、前記検体1mLに対し0.5ng〜1000mgであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の異常型プリオン蛋白質の濃縮方法。
【請求項6】
前記沈殿物は、前記酸化物が加え混合された後、遠心処理により分離されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の異常型プリオン蛋白質の濃縮方法。
【請求項7】
体液及び/又は生体組織破壊物を含む液体状の検体を、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の異常型プリオン蛋白質の濃縮方法により得られた前記沈殿物が分離除去されることを特徴とする異常型プリオン蛋白質の除去方法。
【請求項8】
前記酸化物はカラムに充填され、前記カラムの上から前記検体を含む溶液を流すことを特徴とする請求項7に記載の異常型プリオン蛋白質の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−248256(P2007−248256A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71881(P2006−71881)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度地域新生コンソーシアム研究開発事業、九州経済産業局、「BSE簡易診断チップの開発」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】