説明

異常型ミトコンドリアDNA、関連融合転写物および翻訳産物、並びにそのハイブリダイゼーションプローブ

本発明は、癌を予測し、診断しおよび/またはモニタリングするのに有用な新規のミトコンドリア融合転写物および親突然変異化mtDNA分子を提供する。それと相補的なハイブリダイゼーションプローブも、本発明の方法に用いるために提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔先願の相互参照〕
この出願は、米国仮出願61/040,616号(2008年3月28日出願)の優先権を主張するPCT出願PCT/CA2009/000351号(2009年3月27日出願)の部分継続出願である。このような先願の記載内容はすべて、参照により本明細書中で援用される。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、ミトコンドリアのゲノミックス及びプロテオミクス分野に関する。一態様では、本発明は、ミトコンドリアゲノム融合転写物、及びそれにハイブリダイズするプローブといった翻訳産物の同定並びに利用に関する。
【0003】
〔発明の背景〕
<ミトコンドリアゲノム>
ミトコンドリアゲノムは、小規模であるが重要な核酸配列である。ミトコンドリアDNA、すなわち「mtDNA」は、33億bpという莫大な核ゲノム(一倍体)と対比して、16,569核酸塩基対(bp)(Anderson et al., 1981;Andrews et al., 1999)の小ゲノムを含む。その遺伝子相補体は、その核細胞メイトよりも実質的に小さい(0.0005%)。しかしながら、個々の細胞は、特定の細胞機能に依存して、およそ10〜10個のミトコンドリアを保有する(Singh and Modica-Napolitano 2002)。情報伝達または化学的シグナル伝達は、一般的に、核およびミトコンドリアゲノム間で起こる(Sherratt et al., 1997)。さらに、特定の核構成成分がミトコンドリア配列の維持および安定性に関与する(Croteau et al., 1999)。一旦受精が起きると、卵細胞内のミトコンドリアのクローン拡大のため、所定の個体におけるmtDNAゲノムは全て同一である。しかしながら、突然変異誘発性事象は、体細胞突然変異として反映される配列多様性を誘導し得る。これらの突然変異は、異形成として知られている状態で身体全体の異なる組織中に蓄積し得る。
【0004】
<ミトコンドリアプロテオーム>
約3,000個の核遺伝子がミトコンドリアを構築し、操作し、維持するために必要とされるが、ミトコンドリアゲノムによりコードされるのはこれらのうちの37個のみである。このことは、ミトコンドリアが核遺伝子座に重度に依存していることを示す。ミトコンドリアゲノムは、正しい翻訳を保証する、2つのrRNA及び22のtRNAを含む24の遺伝子の相補体、ならびに電子伝達に不可欠である残り13の遺伝子をコードする(図1参照)。ミトコンドリアゲノムは、ミトコンドリアゲノムにより供給される13のポリペプチドのほかに、この生命機能に必要な酸化および還元反応を成し遂げるために70の核コード化タンパク質に依存する。核およびミトコンドリアタンパク質の両方は、ミトコンドリア内膜に及ぶ複合体を形成し、細胞代謝に必要な化学燃料である、アデノシン三リン酸、すなわちATPの80〜90%を集合的に生成する。エネルギー産生のほかに、ミトコンドリアは、同様に他の代謝経路においても中心的役割を果たす。ミトコンドリアの重要な機能は、細胞死またはアポトーシスの媒介である(Green and Kroemer, 2005参照)。本質的に、ミトコンドリア外膜を、あるいはさらに、同様にミトコンドリア内膜を透過するシグナル経路が存在する。特定のミトコンドリアタンパク質が細胞基質に放出される場合、不可逆的細胞死が始動される。このプロセスは、いくつかのミトコンドリアタンパク質が有する多機能な役割を強調する。これらのマルチタスク型タンパク質は、同様に、代替的機能を有し得る他のミトコンドリアタンパク質が存在する、ということを示唆する。
【0005】
<ミトコンドリア融合トランスクリプトーム/プロテオーム>
ミトコンドリアゲノムは、環状であり、イントロンがないDNA分子であるという点で異常型である。上記ゲノムは、特定長の配列と隣接する反復モチーフが点在する。これらの反復間の配列は、欠失する傾向にあり、十分に理解されていない状況下である。ミトコンドリアゲノム中の反復の数を考えると、多数の考え得る欠失が存在する。最も良く知られた例は、4977の「共通欠失」である。この欠失は、いくつかの名を挙げられた症状および疾患と関連付けられてきており、老化に伴い頻度が増大すると考えられる(Dai et al., 2004;Ro et al., 2003;Barron et al., 2001;Lewis et al., 2000;Muller-Hocker, 1998;Porteous et al., 1998)(図4)。ミトコンドリアゲノムの分野における最新の見解は、ミトコンドリア欠失が、活性酸素種およびUVRのような作用物質によるミトコンドリアゲノムに対する損傷の単なる有害副産物である、というものである(Krishnan et al 2008, Nature Genetics)。さらに、高レベルのmtDNA欠失は、細胞呼吸に必要な遺伝子配列を失う結果として、ATPの形態でエネルギーを産生する細胞の能力に重篤な結果を及ぼし得ると認識されているが、これらの欠失ミトコンドリア分子は、下流経路の一構成成分であり、意図された機能的役割を有し、そして、ミトコンドリアの認識遺伝子の代替的天然形態としてより適切である、とは予測されない。
【0006】
mtDNAの配列動力学は、重要な診断ツールである。mtDNAにおける突然変異は、しばしば、疾患発症の予備的指標となる。例えば、ミトコンドリアゲノムにおける点突然変異は前立腺中の腫瘍病巣の特徴である、ということが実証されている。この傾向は、腫瘍組織に隣接した正常に見える組織、および腫瘍組織から離れた正常に見える組織の両方にも広がる(Parr et al. 2006)。これは、ミトコンドリア突然変異が悪性形質転換経路において早期に起きる、ということを示唆する。
【0007】
例えば、3.4kbのミトコンドリア欠失の頻度は、良性前立腺組織と悪性前立腺組織とを区別するのに優れた有用性を有する(Maki et al. 2008)。また、疾患に関連する欠失、および多くのオープンリーディングフレームと同一である分子の再閉鎖によってできた新規配列の究明は、ミトコンドリア融合タンパク質の可能性を示唆する。
【0008】
ミトコンドリア融合転写物は、最初に大豆で(Morgens et al 1984)、その後、稀な神経筋障害であるカーンズ・セイアー症候群を有する2名の患者(Nakase et al 1990)で、文献に以前に報告されている。重要なことは、これらの転写物が如何なるヒト癌との関連を有することも見出されなかった(またはそれに関して研究されていなかった)ことである。
【0009】
<核融合プロテオーム>
融合タンパク質およびこれらの結果として生じる癌に対する影響について、重要な核の優位が存在する。核内のMLL遺伝子パートナーの転座は、急性白血病及び治療に関連した急性骨髄性白血病に続きトポイソメラーゼIIを標的とする作用物質で処理する危険性が高いこととの密接な相関を確立する(Libura et al., 2005)。最近、ヒトMLL遺伝子の約50の転座がこれら癌に関連していることが知られている(Meyer et al., 2005)。これらの突然変異に関し破断する点は、部分的なタンデム複製であろうと転座であろうと、これら主たる事象について、核内の、AluIといった特定の反復モチーフ内で起きる。これら突然変異のほとんどは、相互転座(84%)であり、約40の相違した遺伝子を含む(Libura et al. 2005)。
【0010】
悪性疾患の進行に影響するこれら再配列のうちいくつかから生成された、公知のキメラタンパク質が存在する。例えば、MLL−ENLからタンパク質を発現するマウス細胞は、エトポシドに曝されて生存した細胞において、染色体異常の罹患率を促進させる(Eguchi et al., 2006)。特に、MLL−SMAP1および相反SMAP1−MLLが興味深い。SMAP1はカルシウムと結合し、それ自体細胞シグナル伝達および細胞内輸送に関与する。
【0011】
特に、ミトコンドリアおよびミトコンドリアタンパク質は、シグナル伝達およびアポトーシスにおいて類似した役割を果たすので、ミトコンドリア融合タンパク質は、核融合タンパク質と類似した特質を有すると仮定され得る。
【0012】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、異常型ミトコンドリアDNA、関連融合転写物および翻訳産物、並びにそのハイブリダイゼーションプローブを提供することにある。
【0013】
本発明の一態様によれば、癌に関連する単離ミトコンドリア融合転写物が提供される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、本発明の融合転写物をコードするmtDNAが提供される。
【0015】
本発明の他の態様によれば、本発明のミトコンドリア融合転写物またはmtDNAの少なくとも一部と相補する核酸配列を有するハイブリダイゼーションプローブが提供される。
【0016】
本発明の他の態様によれば、哺乳類における癌の検出方法であって、本発明の単離ミトコンドリア融合転写物の少なくとも一部と相補する核酸配列を有する少なくとも1つのハイブリダイゼーションプローブで哺乳類からの組織試料をハイブリダイズすることにより、癌に関連した少なくとも1つの単離ミトコンドリア融合転写物の存在に関して前記試料をアッセイする工程を包含する方法が提供される。
【0017】
本発明の他の態様によれば、哺乳類における癌の検出方法であって、本発明のmtDNAの少なくとも一部と相補する核酸配列を有する少なくとも1つのハイブリダイゼーションプローブで哺乳類からの組織試料をハイブリダイズすることにより、癌に関連した少なくとも1つの異常型mtDNAの存在に関して前記試料をアッセイする工程を包含する方法が提供される。
【0018】
本発明の他の態様によれば、哺乳類における癌の存在を検出するアッセイを行うためのキットであって、本発明のミトコンドリア融合転写物またはmtDNAの少なくとも一部と相補する少なくとも1つのハイブリダイゼーションプローブを包含するキットが提供される。
【0019】
本発明の他の態様によれば、本発明のミトコンドリア融合転写物の翻訳の結果生じたアミノ酸配列を有するミトコンドリア融合タンパク質が提供される。
【0020】
本発明の他の態様によれば、哺乳類における癌の検出方法であって、少なくとも1つのミトコンドリア融合タンパク質の存在に関して前記試料をアッセイする工程を包含し、上記タンパク質は、本発明のミトコンドリア融合転写物の翻訳の結果生じたアミノ酸配列を有する、方法が提供される。
【0021】
〔図面の簡単な説明〕
以下の添付の図面を参照しながら、単なる例として本発明の実施形態をここで説明する。
【0022】
図1は、ミトコンドリアコード遺伝子を示す図である。
【0023】
図2は、3.4kb欠失の損失により引き起こされる前立腺試料におけるポリアデニル化融合転写物を示す。
【0024】
図3は、4977kb共通欠失の損失により引き起こされる前立腺試料におけるポリアデニル化融合転写物を示す。
【0025】
図4は、mtゲノムからの3.4kbセグメントの損失により惹起される乳房試料におけるポリアデニル化融合転写物を示す。
【0026】
図5aおよび5bは、遺伝子のスプライシング前後のミトコンドリアDNA領域の一例を示す。
【0027】
図6a〜6gは、結腸直腸癌腫瘍の同定における本発明の転写物2、3、8、9、10、11および12に関する結果を示す。
【0028】
図7a〜7dは、肺癌腫瘍の同定における本発明の転写物6、8、10および20に関する結果を示す。
【0029】
図8a〜8gは、黒色腫の同定における本発明の転写物6、10、11、14、15、16および20に関する結果を示す。
【0030】
図9a〜9hは、卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【0031】
精巣癌の同定における本発明の転写物2、3、4、11、12、13、15、16および20に関する結果を示す。
【0032】
図10〜18は、精巣癌の同定における本発明の転写物2、3、4、11、12、13、15、16および20に関する結果を示す。
【0033】
図19は、融合タンパク質出現中に行われた、RWPE1細胞株およびWPE1−NA22細胞株における、ミトコンドリア画分および細胞質画分のSDS PAGEゲルを示す。
【0034】
図20aは、ペプチドILYMTDEVNDPSLTIKおよびSTPYECGFDPMSPに基づき融合転写物P0026について同定されたタンパク質を示す。
【0035】
図20bは、ヒト(SwissProt)データベースを検索した後、図19におけるミトコンドリアNA22細胞株のゲルスライス5で同定された野生型CO2タンパク質を示す。
【0036】
図21aは、ペプチドKGPNVVGPYGLLQPFADAMK、YDQLMHLLWKおよびLITTQQWLIKに基づき融合転写物P0062について同定されたタンパク質を示す。
【0037】
図21bは、ヒト(SwissProt)データベースを検索した後、図19におけるミトコンドリアNA22細胞株のゲルスライス5で同定されたND1のペプチドを示す。
【0038】
図22は、ペプチドKGPNVVGPYGLLQPFADAMKおよびWAIIEEFTKに基づき融合転写物P0064について同定されたタンパク質を示す。
【0039】
図23aは、ペプチドKGPNVVGPYGLLQPFADAMK、VFSWLATLHGSNMKおよびVLMVEEPSMNLEWLYGCPPPYHTFEEPVYMKに基づき融合転写物P0176について同定されたタンパク質を示す。
【0040】
図23bは、ヒト(SwissProt)データベースを検索した後、図19におけるミトコンドリアNA22細胞株のゲルスライス4で同定された野生型CO1タンパク質を示す。
【0041】
図24a〜24dは、融合転写物P0026、P0062、P0064およびP0176それぞれの定量的測定の結果を示す。
【0042】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、癌を予測し、診断および/またはモニタリングするのに有用な、新規のミトコンドリア融合転写物、親突然変異化mtDNA分子、及びその結果として生じる翻訳産物を提供する。本発明はさらに、融合転写物および関連mtDNA分子の検出のためのハイブリダイゼーションプローブ、このようなプローブの使用を提供する。
【0043】
〔定義〕
別記しない限り、本明細書中で用いられる技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0044】
本説明においては、「包含する」、「包含する」、「包含された」、または「包含している」という用語が用いられ得る。本明細書中(明細書の説明および/または請求項も含む)で用いる場合、これらの用語は、関連する技術分野の当業者にとって明らかなように、定まった特徴、完全物、ステップ、または成分の存在を特定するものとして解釈され、1以上の他の特徴、完全物、ステップ、成分、またはその群を排除するものとして解釈されない。
【0045】
本明細書中で用いる場合、「異常」または「突然変異」は、融合転写物を生じる野生型ミトコンドリアDNAにおける任意の修飾を包含し、例としては、挿入、転座、欠失、重複、組換え、再配列またはその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書中で定義される場合、「生物学的試料」は、当該分子が得られる細胞を含有する組織または体液を指す。例えば、生物学的試料は、前立腺、乳房、結腸直腸、肺および皮膚のような組織に、あるいは血液、唾液、脳脊髄液、痰、尿、粘液、滑液、腹水、羊水等に由来し得る。生物学的試料は、外科検体または生検検体であり得る。生物学的試料は、供給源から得られる場合に直接的に、または試料の特性を修飾するための前処理後に用いられ得る。したがって、生物学的試料は、例えば、血液から血漿または血清を調製すること、細胞を崩壊すること、固体材料から液体を調製すること、粘性の体液を希釈すること、液体を濾過すること、液体を蒸留すること、液体を濃縮すること、妨害成分を不活性化すること、試薬を付加することなどによって、使用前に前処理され得る。
【0047】
「連続」転写物は、両方のスプライスされた遺伝子の初めから末端まで、リーディングフレームを保持する融合転写物である。「末端」転写物は、第二スプライス化遺伝子の本来の終止コドンの前に未熟終止コドンを生じる融合転写物である。
【0048】
本明細書中で用いる場合、「ミトコンドリアDNA」または「mtDNA」は、ミトコンドリア中に存在するDNAである。
【0049】
本明細書中で用いる場合、「ミトコンドリア融合タンパク質」または「融合タンパク質」という表現は、突然変異したミトコンドリアDNAの転写および翻訳により産生されるペプチド産物を指し、この場合、このような突然変異は、欠失およびその他の「大規模な」ミトコンドリアDNA再配列を含み得る。加えて、または代替的に、インフレームのタンパク質は、その配列内の互い違いの開始コドンおよび終止コドンから翻訳され得る。
【0050】
本明細書中で用いる場合、「ミトコンドリア融合転写物」または「融合転写物」という表現は、突然変異したミトコンドリアDNA配列の転写の結果として産生されるRNA転写産物を指し、この場合、このような突然変異はミトコンドリア欠失およびその他の大規模なミトコンドリアDNA再配列を含み得る。
【0051】
本明細書中で用いる場合、「ミトコンドリア翻訳産物」または「翻訳産物」は、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質を含むミトコンドリア融合転写物に由来する任意のアミノ酸鎖を指す。上記で規定したように、「ミトコンドリア翻訳産物」が「融合タンパク質」を包含することは理解されるであろう。
【0052】
〔コンピューター解析および配列ターゲッティング〕
上記で考察したように、ミトコンドリア融合転写物は、大豆(Morgens et al 1984)、および稀な神経筋障害に罹患しているヒト(Nakase et al 1990)で、報告されている。しかしながら、ヒト癌と関連した融合転写物は記載されていない。
【0053】
癌に関連したヒトミトコンドリアゲノムの大規模欠失のマッピングから得られた知識、高頻度のこれらの欠失についての観察、ならびに転写的に活性な突然変異化mtDNA分子についての別の生物体および別の疾患型における証拠を用いて、このような欠失は、それが癌と関連する場合、DNA分子、ならびに損傷および修復プロセスよりも重要性を有し得る、と出願人は仮説を立てた。この仮説を試験するために、ミトコンドリアゲノムのコンピューター解析を、特に、多数の考え得る欠失部位を示唆する反復エレメントに関して実行した。非隣接または非タンデム位置を有するミトコンドリア配列中の独特の反復を同定するこの初期工程後、次いで、フィルターを適用して、DNA分子における欠失事象の開始時に、再閉環または再連結してオープンリーディングフレーム(ORF)を有する融合DNA配列を産生する反復を同定した。次に、1)それらがヒトの自然の生物学的状態で存在したか、ならびに2)それらが悪性疾患との関連性を有したか否かを調べるためのターゲッティングのために、18分子のサブセットを選択した。これらの究明の結果については、本明細書で後述する。
【0054】
〔ゲノム突然変異〕
ミトコンドリアDNA(mtDNA)動力学は、重要な診断ツールである。mtDNAにおける突然変異は、しばしば、疾患発症の予備的指標であり、疾患開始に関連した危険因子を示すバイオマーカーとして振舞う。本発明によれば、ミトコンドリアゲノムにおける突然変異の結果、癌に関連した融合転写物が生成される。したがって、このような転写物をコードするmtDNAならびに癌の検出、診断およびモニタリングのためにそれに向けられるプローブの使用が提供される。
【0055】
本発明の分子に用いるためのmtDNA分子は、天然突然変異体の単離により得られ得るし、あるいは本明細書中に記載される融合転写物のいずれかの相補的配列に基づき得る、と当業者は理解する。例示的なmtDNA配列および融合転写物は、出願人の米国同時係属出願第61/040,616号、およびPCT出願PCT/CA2009/000351(WO2009/117811号として公開)に開示されている。
【0056】
(突然変異体ゲノム配列の検出)
本発明による突然変異体mtDNA配列は、融合転写物の生成を引き起こす任意の修飾を含み得る。このような修飾の例としては、挿入、転座、欠失、重複、組換え、再配列またはその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。修飾または変化はわずか2〜3塩基から数キロ塩基までサイズを大きく変え得るし、好ましくは、修飾は、かなり多くの欠失またはその他の大規模ゲノム異常を生じる。
【0057】
このような突然変異の存在を検出するためのDNAの抽出は、ミトコンドリアゲノムの全てまたは1つの領域の増幅に続いて、当該技術分野で知られた方法を用いて行われ、Current Protocols in Molecular Biologyに記載されたようなミトコンドリアゲノムのシーケンシングを含み得る。
【0058】
突然変異の検出段階は、当業者に既知である、任意の技術から選択され得る。例えば、mtDNAの分析は、mtDNAのシーケンシング、PCRによるmtDNAの増幅、サザン、ノーザン、ウエスタン、サウス−ウエスタンブロットハイブリダイゼーション、HPLC変性、マイクロアレイ、バイオチップ若しくは遺伝子チップとのハイブリダイゼーション、分子マーカー分析、バイオセンサ、融解温度プロファイリング、または上記のいずれかの組合せを包含し得る。
【0059】
ミトコンドリアDNAをシーケンシングするための任意の適切な手段が用いられ得る。好ましくは、mtDNAは、シーケンシング前にPCRにより増幅される。PCRの方法は当該技術分野でよく知られており、Mullis and Faloona, 1987, Methods Enzymol., 155: 335に記載されたように実施され得る。PCR産物は、直接シーケンシングされる、あるいはベクター中でクローン化され細菌宿主中に入れられる。DNAシーケンシング方法の例は、Brumley, R.L. Jr. and Smith, L.M., 1991, Rapid DNA sequencing by horizontal ultrathin gel electrophoresis, Nucleic Acids Res. 19: 4121-4126およびLuckey, J.A., et al, 1993, High speed DNA sequencing by capillary gel electrophoresis, Methods Enzymol. 218: 154-172に見出される。PCRとmtDNAのシーケンシングとの併用は、Hopgood, R, et al, 1992, Strategies for automated sequencing of human mtDNA directly from PCR products, Biotechniques 13: 82-92、およびTanaka, M. et al, 1996, Automated sequencing of mtDNA, Methods Enzymol. 264: 407-421に記載されている。
【0060】
種々のプライマーを調製するための適切な配列の選択方法も、当該技術分野で知られている。例えば、プライマーは、市販の装備、例えばApplied Biosystems USA Inc. (Foster City, California)、DuPont,(Wilmington, Del.)、またはMilligen(Bedford, Mass.)から入手可能なものを用いた慣用的固相合成を用いて調製され得る。
【0061】
本発明の一態様によれば、候補ゲノム配列を確定するために、配列欠失の接合点が先ず同定される。配列欠失は、主に、5’および3’末端で欠失されるべき配列と隣接する直接および間接的な反復性エレメントにより同定される。ゲノムからのヌクレオチドの一片の除去、及びその後のゲノムの連結は、新規の接合点の作製を引き起こす。
【0062】
接合点の同定時に、スプライスされた遺伝子を同定するために、接合点と隣接する遺伝子のヌクレオチドが確定される。典型的には、スプライス化遺伝子は、第一の遺伝子からの開始コドンと第二の遺伝子の終止コドンとを包含し、連続転写物、すなわち両方のスプライスされた遺伝子の初めから末端までリーディングフレームを保持するものとして発現され得る。再配列化配列がスプライス部位で再連結される場合に、オープンリーディングフレーム(ORF)を有することが発見された、いくつかの既知のミトコンドリア欠失を、表1に示す。
【0063】
本発明の方法に用いるためのmtDNA分子の例を、以下に示す。これらのmtDNAは、既知のミトコンドリアゲノム(配列番号1)の修飾を基礎としており、融合すなわち「FUS」という名称が割り当てられている。この場合、A:Bは第一のスプライスされた遺伝子の最終ミトコンドリアヌクレオチドと第二のスプライスされた化遺伝子の第一ミトコンドリアヌクレオチドとの間の接合点を表わす。スプライスされた遺伝子の同定は、括弧内に示され、その後に対応する配列識別名が示される。以下で提示される場合、(AltMet)および(OrigMet)はそれぞれ、代替的および本来の翻訳開始部位を指す。
【0064】
FUS8469:13447(AltMet)(ATPシンターゼF0サブユニット8〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット)(配列番号2)
FUS10744:14124(NADHデヒドロゲナーゼサブユニット4L(ND4L)〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号3)
FUS7974:15496(シトクロムcオキシダーゼサブユニットII(COII)〜シトクロムb(Cytb))(配列番号4)
FUS7992:15730(シトクロムcオキシダーゼサブユニットII(COII)〜シトクロムb(Cytb))(配列番号5)
FUS8210:15339(シトクロムcオキシダーゼサブユニットII(COII)〜シトクロムb(Cytb))(配列番号6)
FUS8828:14896(ATPシンターゼF0サブユニット6(ATPアーゼ6)〜シトクロムb(Cytb))(配列番号7)
FUS10665:14856(NADHデヒドロゲナーゼサブユニット4L(ND4L)〜シトクロムb(Cytb))(配列番号8)
FUS6075:13799(シトクロムcオキシダーゼサブユニットI(COI)〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号9)
FUS6325:13989(シトクロムcオキシダーゼサブユニットI(COI)〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号10)
FUS7438:13476(シトクロムcオキシダーゼサブユニットI(COI)〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号11)
FUS7775:13532(シトクロムcオキシダーゼサブユニットII(COII)〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号12)
FUS8213:13991(シトクロムcオキシダーゼサブユニットII(COII)〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号13)
FUS9191:12909(ATPシンターゼF0サブユニット6(ATPアーゼ6)〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号14)
FUS9574:12972(シトクロムcオキシダーゼサブユニットIII(COIII)〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号15)
FUS10367:12829(NADHデヒドロゲナーゼサブユニット3(ND3)〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号16)
FUS11232:13980 (NADHデヒドロゲナーゼサブユニット4(ND4)〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5)(配列番号17)
FUS8469:13447(OrigMet)(ATPシンターゼF0サブユニット8〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット)(配列番号18)
FUS9144:13816(ATPシンターゼF0サブユニット6(ATPアーゼ6)〜NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号54)。
【0065】
本発明は、癌を予測し、診断し、および/またはモニタリングするためのこれらの配列のバリアントまたは断片の使用も提供する。
【0066】
「バリアント」は、本明細書中で用いる場合、本発明のmtDNA配列とは異なるが、その不可欠な特性を保持する核酸を指す。一般的に、バリアントは全体的に非常によく似ており、多くの領域では、選択mtDNA配列と同一である。具体的には、本発明のバリアントは、スプライスされた遺伝子の接合点のヌクレオチドのうちの少なくとも1つを包含し、さらに、それに隣接する1つ以上のヌクレオチドを包含し得る。本発明の一実施形態では、バリアントの配列は、本発明のmtDNAまたはそれに対する相補鎖のいずれか1つと、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。
【0067】
本発明において、「断片」は、開示されたゲノム配列、またはその相補鎖に含まれる部分である短い核酸配列を指す。この部分は、スプライス化遺伝子の接合点を含むヌクレオチドのうちの少なくとも1つを包含し、さらに、それに隣接する1つ以上のヌクレオチドを包含し得る。本発明の断片は、好ましくは、長さが、少なくとも約15nt、さらに好ましくは少なくとも約20nt、さらに好ましくは少なくとも約30nt、さらに好ましくは少なくとも約40nt、少なくとも約50nt、少なくとも約75nt、または少なくとも約150ntである。例えば、「少なくとも20nt長」の断片は、上記のmtDNA配列のうちのいずれか1つの20以上の連続塩基を含むよう意図される。この状況において、「約」は、特に列挙された値、いずれかの末端または両端で数(5、4、3、2または1)ヌクレオチド大きいか小さい値を含む。これらの断片は、例えば、本明細書中で考察されるような診断プローブおよびプライマー(これらに限定されない)としての用途を有する。もちろん、より大きな断片(例えば、50、150、500、600、2000ヌクレオチド)も意図される。
【0068】
したがって、本発明の具体的な実施形態では、mtDNA配列は、以下のものからなる群から選択される:
配列番号2(FUS8469:13447;AltMet)
配列番号3(FUS10744:14124)
配列番号4(FUS7974:15496)
配列番号5(FUS7992:15730)
配列番号6(FUS8210:15339)
配列番号7(FUS8828:14896)
配列番号8(FUS10665:14856)
配列番号9(FUS6075:13799)
配列番号10(FUS6325:13989)
配列番号11(FUS7438:13476)
配列番号12(FUS7775:13532)
配列番号13(FUS8213:13991)
配列番号14(FUS9191:12909)
配列番号15(FUS9574:12972)
配列番号16(FUS10367:12829)
配列番号17(FUS11232:13980)
配列番号18(FUS8469:13447;OrigMet)
配列番号54(FUS9144:13816)
および、その断片またはバリアント。
【0069】
(プローブ)
本発明の別の態様は、本発明の異常型mtDNA配列を認識し得るハイブリダイゼーションプローブを提供することである。本明細書中で用いる場合、「プローブ」という用語は、標的領域中の配列とプローブ中の少なくとも1つの配列との相補によって、標的核酸中の配列と二重鎖構造を形成するオリゴヌクレオチドを指す。プローブは、当該技術分野で既知の方法に従って標識され得る。
【0070】
特定の疾患に関連する異常型mtDNAが一旦同定されれば、mtDNAと、例えば一アレイのオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは、特定突然変異を同定するために用いられ得るが、ハイブリダイゼーションの任意の既知の方法が用いられ得る。
【0071】
本発明のプライマーと同様に、プローブは、本発明の例示的なmtDNA融合分子に対して直接的に、あるいはその断片またはバリアントに対し生成され得る。例えば、配列番号2〜18および54に示される配列、並びに表1に開示される配列は、所望の融合配列を包含する核酸配列を検出するプライマーまたはプローブを設計するために、用いられ得る。当業者により理解されるように、これらの核酸分子とハイブリダイズするプライマーまたはプローブは、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下または低ストリンジェントな条件下でなされ得るが、このような条件は当業者に既知であり、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New York (1989)), 6.3.1-6.3.6に見出され得る。
【0072】
本発明の具体的な実施形態では、本発明のプローブは、スプライスされた遺伝子の接合点を含む異常型mtDNAの少なくとも一部と相補する配列を含有する。この部分は、接合点A:Bに関与するヌクレオチドのうちの少なくとも1つを包含し、さらに、それに隣接する1つ以上のヌクレオチドを含み得る。これに関しては、本発明は、接合点A:Bに関与する、および/または隣接するヌクレオチドを用いてmtDNA分子を選択する任意の適切な標的機序を含む。
【0073】
当該技術分野で知られた種々の型のプローブが、本発明により意図される。例えば、プローブは、標的ヌクレオチド配列とのその結合が、例えば臭化エチジウム、SYBR(登録商標)グリーン、SYBR(登録商標)ゴールド等の一般的DNA結合染料を用いて検出可能なハイブリダイゼーションプローブであり得る。代替的には、プローブは、1つ以上の検出可能な標識を組み入れ得る。検出可能な標識は、その特性または特質が直接または間接的に検出可能であり、その標的配列とハイブリダイズするプローブの能力が影響を及ぼされないよう選択された分子または部分である。核酸配列の標識方法は、当該技術分野でよく知られている(例えば、Ausubel et al., (1997 & updates) Current Protocols in Molecular Biology, Wiley & Sons, New York参照)。
【0074】
本発明のプローブとともに用いるのに適した標識としては、直接的に検出され得るもの、例えば放射性同位元素、蛍光団、化学発光団、酵素、コロイド粒子、蛍光微小粒子等が挙げられる。直接的に検出可能な標識は、標識の検出を可能にするために、基質、トリガー試薬、光等のような付加的構成成分を要し得る、と当業者は理解する。本発明は、間接的に検出される標識の使用も包含する。
【0075】
本発明のプローブは、好ましくは長さが少なくとも約15nt、さらに好ましくは少なくとも約20nt、さらに好ましくは少なくとも約30nt、さらに好ましくは少なくとも約40nt、少なくとも約50nt、少なくとも約75nt、または少なくとも約150ntである。例えば、「少なくとも20nt長」のプローブは、本発明のmtDNA配列と相補する20以上の連続塩基を含むよう意図される。もちろん、より大きなプローブ(例えば、50、150、500、600、2000ヌクレオチド)が好ましい。
【0076】
本発明のプローブは、生物学的試料中の核酸分子ともハイブリダイズし、それにより、本発明の方法を可能にする。したがって、本発明の一態様では、癌の検出に用いるためのハイブリダイゼーションプローブを提供し、この場合、プローブは異常型mtDNA分子の少なくとも一部と相補する。別の態様では、本発明は、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、精巣癌、前立腺癌および/または黒色腫皮膚癌の検出のためのプローブ、ならびにこのようなプローブの使用(または使用方法)を提供する。
【0077】
(アッセイ)
生物学的試料中の異常型mtDNAのレベルの測定は、被験者における1つ以上の癌の存在を確定し得る。したがって、本発明は、癌を予測する、診断する、あるいはモニタリングするための方法であって、1つ以上の生物学的試料を得ること、上記試料からmtDNAを抽出すること、ならびに以下の:試料中の1つ以上の異常型mtDNAの量を定量し、そして検出された量を参照値と比較することにより異常型mtDNAに関して試料をアッセイすることを含む方法を包含する。当業者に理解されるように、参照値は、上記方法が、癌を予測する、診断する、あるいはモニタリングしようとするかに基づいている。したがって、参照値は、1つ以上の既知の非癌性生物学的試料から、1つ以上の既知の癌性生物学的試料から、および/または長期間に亘って採取された1つ以上の生物学的試料から収集されたmtDNAデータと関連し得る。
【0078】
一態様では、本発明は、哺乳類における癌の検出方法であって、上記の異常型ミトコンドリアDNAの存在に関して、哺乳類からの組織試料をアッセイすることを包含する方法を提供する。本発明は、少なくとも1つのハイブリダイゼーションプローブで試料をハイブリダイズすることにより、哺乳類からの組織試料をアッセイすることを包含する方法も提供する。プローブは、本明細書中に記載されるように、本発明の突然変異ミトコンドリアDNA配列に対して生成され得る。
【0079】
別の態様では、本発明は、上記のような方法であって、アッセイが、以下の:
a)プローブのうちの少なくとも1つを用いてハイブリダイゼーション反応を実行し、少なくとも1つのプローブを相補的な異常型ミトコンドリアDNA配列とハイブリダイズさせるステップ;
b)少なくとも1つのプローブとハイブリダイズされるミトコンドリアDNAの量を定量することにより、上記試料中の少なくとも1つの異常型ミトコンドリアDNA配列の量を定量するステップ;および
c)上記試料中のミトコンドリアDNAの量を少なくとも1つの既知の参照値と比較するステップ
を包含する方法を提供する。
【0080】
癌を予測する、診断する、あるいはモニタリングするための方法であって、下記のような診断的画像アッセイを含む方法も本発明に包含される。本発明の診断的アッセイは、高処理アッセイに容易に適合され得る。高処理アッセイは、多数の試料を同時に処理するという利点を提供し、多数の試料をスクリーニングするために必要とされる時間を有意に低減する。したがって、本発明は、複数の試験試料中の標的ヌクレオチド配列を検出し、および/または定量するための高処理スクリーニングまたはアッセイにおける本発明のヌクレオチドの使用を意図する。
【0081】
〔融合転写物〕
本発明はさらに、癌を予測し、診断し、および/またはモニタリングするための方法において有用な、融合転写物および関連ハイブリダイゼーションプローブの同定を提供する。当業者に明らかなように、このような分子は、天然転写物の単離により、あるいは、本発明の方法に従って単離されるmtDNAの組換え発現により得られる。上記のように、このようなmtDNAは、典型的には、第一遺伝子からの開始コドンおよび第二遺伝子の終止コドンを有する、スプライスされた遺伝子を含む。したがって、それらから得られる融合転写物は、スプライスされた遺伝子に関連した接合点を含む。
【0082】
(融合転写物の検出)
天然融合転写物は、生物学的試料から抽出され、当該技術分野で既知の任意の適切な方法に従って同定され得る、あるいは実施例に記載される方法に従って実行され得る。本発明の一実施形態では、ポリ−Aテールを有する転写物を標的とするオリゴ(dT)プライマーを用い、その後、上記標的転写物に対して設計されたプライマー対を用いたRT−PCRにより、安定なポリアデニル化融合転写物が同定される。
【0083】
以下の例示的な融合転写物は、このような方法を用いて検出され、実施例に示されるように、癌を予測し、診断し、および/またはモニタリングするのに有用であることが見出された。同様に、表1で同定されたORF配列由来の融合転写物は、癌を予測し、診断し、および/またはモニタリングするのに有用であり得る。
【0084】
配列番号19(転写物1;8469:13447;AltMet)
配列番号20(転写物2;10744:14124)
配列番号21(転写物3;7974:15496)
配列番号22(転写物4;7992:15730)
配列番号23(転写物5;8210:15339)
配列番号24(転写物6;8828:14896)
配列番号25(転写物7;10665:14856)
配列番号26(転写物8;6075:13799)
配列番号27(転写物9;6325:13989)
配列番号28(転写物10;7438:13476)
配列番号29(転写物11;7775:13532)
配列番号30(転写物12;8213:13991)
配列番号31(転写物14;9191:12909)
配列番号32(転写物15;9574:12972)
配列番号33(転写物16;10367:12829)
配列番号34(転写物17;11232:13980)
配列番号35(転写物20;8469:13447;OrigMet)
配列番号53(転写物13;9144:13816)。
【0085】
融合転写物は、当該技術分野で知られた組換え技術によっても産生され得る。典型的には、これは、所望のmtDNA配列を含む発現ベクターに適切な宿主細胞の形質転換(トランスフェクション、形質導入または感染を含む)を含む。
【0086】
本明細書中で同定される融合転写物のバリアントまたは断片も提供される。このような配列は、ゲノム変異体および断片に関して、または熟練技術者により適切に確定されるような、上記のサイズ制限および同一性%に追随し得る。
【0087】
(プローブ)
融合転写物が一旦特性化されれば、生物学的試料中の転写物を標的にするように、プライマーまたはプローブが開発され得る。このようなプライマーおよびプローブは、(上述した)任意の既知の方法を用いて、あるいは以下で提供される実施例に記述されるように、調製され得る。プローブは、例えば、融合転写物のために生成され得、例えばPanomics(商標)によるQuantiGene 2.0(商標)といった検出技術が、試料中の転写物の存在を検出するために用いられる。プライマーおよびプローブは、本発明の例示的な融合転写物に対して直接的に、あるいはその断片またはバリアントに対して生成され得る。例えば、表1に開示される配列と同様に、配列番号18〜35および53に示された配列は、所望の融合配列を含む核酸配列を検出するプローブを設計するために用いられ得る。
【0088】
当業者に理解されるように、本発明の融合転写物とハイブリダイズするように設計されたプローブは、スプライスされた遺伝子の接合点を発現する転写物の少なくとも一部と相補する配列を含有する。この部分は、発現接合点と相補する、少なくとも1つのヌクレオチドを包含し、さらに、それに隣接する1つ以上の相補的なヌクレオチドを含み得る。これに関しては、本発明は、スプライスされた遺伝子の接合点に関与し、隣接するヌクレオチドを用いる融合転写物を選択する任意の適切なターゲッティング機序を含む。
【0089】
当該技術分野で知られた種々の型のプローブおよび方法が、転写物プローブの調製のために意図される。このような型および方法は、ゲノム配列の検出に関して上述されている。本発明の転写物プローブは、好ましくは長さが少なくとも約15nt、さらに好ましくは少なくとも約20nt、さらに好ましくは少なくとも約30nt、さらに好ましくは少なくとも約40nt、少なくとも約50nt、少なくとも約75nt、または少なくとも約150ntである。例えば、「少なくとも20nt長」のプローブは、本発明のmtDNA配列と相補する20以上の連続塩基を含むよう意図される。もちろん、より大きなプローブ(例えば、50、150、500、600、2000ヌクレオチド)が好ましい。
【0090】
一態様では、本発明は、癌の検出に用いるためのハイブリダイゼーションプローブであって、上記のミトコンドリア融合転写物の少なくとも一部と相補するプローブを提供する。
【0091】
別の態様では、本発明は、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、精巣癌、前立腺癌または黒色腫皮膚癌の検出のためのプローブ、ならびにこのようなプローブの使用(または使用方法)を提供する。
【0092】
(アッセイ)
生物学的試料中のミトコンドリア融合転写物のレベルの測定は、被験者における1つ以上の癌の存在を確定し得る。したがって、本発明は、癌を予測する、診断する、あるいはモニタリングするための方法であって、1つ以上の生物学的試料を得ること、上記試料からミトコンドリアRNAを抽出すること、ならびに以下の:試料中の1つ以上の融合転写物の量を定量し、検出された量を参照値と比較することにより融合転写物に関して試料をアッセイすることを包含する方法を提供する。当業者に理解されるように、参照値は、癌を予測する、診断する、あるいはモニタリングしようとするかに基づいている。したがって、参照値は、1つ以上の既知の非癌性生物学的試料から、1つ以上の既知の癌性生物学的試料から、および/または長期間に亘って採取された1つ以上の生物学的試料から収集された転写物データと関連し得る。
【0093】
一態様では、本発明は、哺乳類における癌の検出方法であって、ミトコンドリア融合転写物の少なくとも一部と相補する核酸配列を有する少なくとも1つのハイブリダイゼーションプローブを用いて上記試料をハイブリダイゼーションすることにより、本発明の少なくとも1つの融合転写物の存在に関して、上記哺乳類からの組織試料をアッセイすることを包含する方法を提供する。
【0094】
別の態様では、本発明は、上記のような方法であって、アッセイが、以下の:
a)上記プローブのうちの少なくとも1つを用いてハイブリダイゼーション反応を実行し、少なくとも1つのプローブを相補的異常型ミトコンドリア融合転写物とハイブリダイズさせるステップ;
b)少なくとも1つのプローブとハイブリダイズされた転写物の量を定量することにより、試料中の少なくとも1つのミトコンドリア融合転写物の量を定量するステップ;および、
c)試料中のミトコンドリア融合転写物の量を少なくとも1つの既知の参照値と比較するステップ
を包含する方法を提供する。
【0095】
上記のように、本発明の診断的アッセイは、本明細書中に記載されるような診断的画像方法も包含し、高処理アッセイに容易に適合され得る。したがって本発明は、複数の試験試料中の標的ヌクレオチド配列を検出しおよび/または定量するための高処理スクリーニングまたはアッセイにおける本発明の融合転写物および関連プローブの使用を意図する。
【0096】
〔翻訳産物〕
現在まで、ミトコンドリア融合タンパク質は、検出または単離されていなかった。しかしながら、下記に提示する実施例からミトコンドリア融合転写物のレベルが観察されたこと、およびこれらはポリアデニル化されたという明示は、そのようなミトコンドリア融合タンパク質の存在を支持する証拠を提示する。よって、本発明は、癌を予測し、診断し、および/またはモニタリングするための融合タンパク質の同定を提供する。
【0097】
開示された方法での使用が意図された融合タンパク質は、天然ポリペプチドの単離、または遺伝子発現に由来され得る。このようなポリペプチドは、細胞抽出物からの精製、または組換え技術の利用といった、当該技術分野で知られた方法により調製され得る。
【0098】
転写物1〜17および20に対応する推定タンパク質の配列を、各配列の識別名とともに以下に提示する。同様に、表1に開示された欠失配列に対応する推定タンパク質の配列も、本発明の方法での使用が意図される。
【0099】
配列番号36(転写物1)
配列番号37(転写物2)
配列番号38(転写物3)
配列番号39(転写物4)
配列番号40(転写物5)
配列番号41(転写物6)
配列番号42(転写物7)
配列番号43(転写物8)
配列番号44(転写物9)
配列番号45(転写物10)
配列番号46(転写物11)
配列番号47(転写物12)
配列番号48(転写物14)
配列番号49(転写物15)
配列番号50(転写物16)
配列番号51(転写物17)
配列番号52(転写物20)
配列番号55(転写物13)。
【0100】
(融合タンパク質の検出)
本発明の融合タンパク質は、硫酸アンモニウム沈殿、エタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性荷電相互作用クロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含む、公知の方法によって生物学的試料から回収および精製され得る。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が、精製のために用いられる。
【0101】
生物学的試料中の融合タンパク質レベルをアッセイすることは、様々な技術を用いて行われ得る。例えば、組織中のタンパク質発現が、古典的な免疫組織学的方法で試験され得る(Jalkanen et al., J. Cell. Biol. 101:976-985 (1985); Jalkanen, M., et al., J. Cell. Biol. 105:3087-3096 (1987) )。タンパク質発現を検出するのに有用な他の方法は、酵素結合免疫測定法(ELISA)およびラジオイムノアッセイといった、イムノアッセイを包含する。適した抗体アッセイ標識は、当該技術分野で知られており、グルコースオキシダーゼといった酵素標識、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(3S)、トリチウム(H)、インジウム(112In)、およびテクネチウム(99mTc)といった放射性同位元素、並びに、フルオレセイン、およびローダミンといった蛍光標識、並びにビオチンを包含する。
【0102】
本発明のポリペプチドは、当該技術分野で知られた組換え技術によっても産生され得る。典型的には、これは、所望のタンパク質またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターに適切な宿主細胞の形質転換(トランスフェクション、形質導入または感染を含む)を含む。
【0103】
(抗体)
本発明のアッセイでの使用のためのタンパク質特異的な抗体は、本発明の野生型または発現融合タンパク質、またはその抗原性ポリペプチド断片に対して産生し得る。これらは、動物系(例えばラビットまたはマウス)においてアルブミンといったキャリアタンパク質と一緒に存在し得る、あるいは十分に長い(少なくとも約25アミノ酸)場合、キャリアなしに存在し得る。
【0104】
本明細書中で用いる場合、「抗体」(Ab)または「ミトコンドリア抗体」(Mab)という用語は、ミトコンドリア融合タンパク質に対し特異的に結合する能力がある、すなわち「特異性」を有する、抗体断片、またはその抗原結合断片(例えばFabおよびF(ab’)2断片)に加え、インタクトな分子も包含するという意味である。FabおよびF(ab’)2断片は、インタクトな抗体におけるFc断片を欠失させ、循環からより速やかに消失し、インタクトな抗体の非特異的な組織の結合が少なくなる(Wahl et al., J. Nucl. Med. 24:316-325 (1983) )。よって、これらの断片が好ましい。
【0105】
本発明の抗体は、任意の様々な方法によって調製され得る。例えば、ポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導するために、ミトコンドリア融合タンパク質またはその抗原性断片を発現する細胞が動物に投与され得る。1つの方法では、ミトコンドリア融合タンパク質のプレパラートは、調製および精製され、天然の混入物が実質的にないようにする。そして、特異性の活性が大きいポリクローナル抗血清を産生するために、そのようなプレパラートは、動物内に導入される。
【0106】
関連した方法では、本発明の抗体は、モノクローナル抗体である。そのようなモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を用いて調製され得る(Kohler et al., Nature 256:495 (1975); Kohler et al., Eur. J. Immunol. 6:511 (1976); Kohler et al., Eur. J. Immunol. 6:292 (1976); Hammerling et al., in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, Elsevier, N.Y., (1981) pp. 563-681)。一般的に、そのような手順は、動物(好ましくはマウス)にミトコンドリア融合タンパク質またはミトコンドリア融合タンパク質発現細胞に対する免疫性を与えることを包含する。
【0107】
本発明は、本明細書中に記載された融合タンパク質に対し特異性を有する抗体または抗原結合断片を用いた、免疫学的アッセイを包含する。このような免疫学的アッセイは、他に必要な試薬、試験ストリップ、材料、取扱説明書等と一緒に抗体または抗原結合断片を含むキットにより、容易になり得る。
【0108】
(アッセイ)
生物学的試料中の、融合タンパク質といった翻訳産物の測定は、被験者における1つ以上の癌の存在を確定し得る。したがって、本発明は、癌を予測する、診断する、あるいはモニタリングするための方法であって、1つ以上の生物学的試料を得ること、上記試料からミトコンドリア融合タンパク質を抽出すること、ならびに以下の:試料中の1つ以上の分子を定量し、そして検出された量を参照値と比較することによりそのような分子に関して試料をアッセイすることを含む方法を包含する。当業者に理解されるように、参照値は、上記方法が、癌を予測する、診断する、あるいはモニタリングしようとするかに基づいている。したがって、参照値は、1つ以上の既知の非癌性生物学的試料から、1つ以上の既知の癌性生物学的試料から、および/または長期間に亘って採取された1つ以上の生物学的試料から収集されたタンパク質データと関連し得る。
【0109】
試料中のタンパク質を定量する技術は、当該技術分野でよく知られており、例えば、古典的な免疫組織学的方法(Jalkanen et al., J. Cell. Biol. 101:976-985 (1985 ); Jalkanen, M., et al., J. Cell. Biol. 105:3087-3096 (1987 ))を包含する。タンパク質発現を検出するのに有用な付加的な方法は、酵素結合免疫測定法(ELISA)およびラジオイムノアッセイといった、イムノアッセイを包含する。
【0110】
一態様では、本発明は、哺乳類における癌の検出方法であって、本発明の少なくとも1つのミトコンドリア融合タンパク質の存在に関して、上記哺乳類からの組織試料をアッセイすることを包含する方法を提供する。別の態様では、本発明は、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、精巣癌、前立腺癌または黒色腫皮膚癌の診断におけるミトコンドリア融合タンパク質の検出を提供する。
【0111】
〔画像診断〕
(診断装置)
本発明は、特定の疾患を診断する、あるいは特定の突然変異を同定するのに用いられる、バイオチップ、遺伝子チップ、またはマイクロアレイといった診断装置を包含する。シークエンシングされた全ミトコンドリアゲノムは、塩基対の配置のコンセンサス(consenus)構造を形成するよう評価され、特定疾患または病気に関連した塩基対欠失および突然変異の比率に関する禁止インデックス(a prohibiting index)が割り当てられた。そして、上記診断構成は、バイオチップ、遺伝子チップ、またはマイクロアレイを形成するのに用いられる。
【0112】
特定疾患、疾患状態、または病気に関連する配列が同定されれば、特定の突然変異を同定するために、オリゴヌクレオチドアレイに対するミトコンドリアヌクレオチド試料のハイブリダイゼーションが用いられ得る。好ましくは、野生型または突然変異した領域とマッチするオリゴヌクレオチドプローブ、およびコントロールプローブを有するアレイが用いられる。マイクロアレイまたは遺伝子チップといった市販のアレイが適している。これらのアレイは、スライドまたはマイクロチップに、マッチしたプローブおよびコントロールプローブの対を数千含み、非常に迅速に全ゲノムのシークエンシングが可能になる。ゲノムおよびDNAの配列分析におけるマイクロアレイの利用が記述された総説文献は、オンラインで入手可能である。
【0113】
(マイクロアレイ)
ポリヌクレオチドアレイは、1つ以上の標的核酸配列を包含する試料について多数のポリヌクレオチドをアッセイし得る高い生産性を有する技術である。本発明のアッセイは、遺伝子発現分析、疾患の診断、および病気の予後診断(例えば治療に対する患者の応答をモニタリングする等)に有用である。
【0114】
疾患、または疾患の進行を指し示す、mtDNAのポリヌクレオチド配列の任意の組み合わせが、マイクロアレイの構築に用いられ得る。
【0115】
マイクロアレイを用いて分析される標的核酸試料は、前述したように、任意のヒト組織またはmtDNAを適量含む体液から由来する。標的核酸試料は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でポリヌクレオチド構成要素に接触し、相補的な核酸構成要素/標的複合体からなるハイブリダイゼーションパターンを形成する。
【0116】
(マイクロアレイの構築)
マイクロアレイは、固体支持体の一表面に付着した複数の固有ポリヌクレオチドを包含し、ポリヌクレオチドはそれぞれ、非同定の予め選択された領域における固体支持体の表面に付着している。上記アレイに関連する試料はそれぞれ、下記により詳述するように、公知の同定物(通常は公知の配列)のポリヌクレオチド成分を含む。本発明では、任意の考え得る基板が利用され得る。
【0117】
上記アレイは、任意の公知の手段を用いて構築される。核酸構成要素は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)および逆転写法(RT)といった、確立した技術を用いて製造され得る。これらの方法は、近年当該技術分野で知られた方法と類似している(例えば、PCR Strategies, Michael A. Innis (Editor), et al. (1995) および PCR: Introduction to Biotechniques Series, C. R. Newton, A. Graham (1997) 参照)。増幅したポリヌクレオチドは、当該技術分野でよく知られた方法(例えばカラム精製)によって精製される。ポリヌクレオチドは、実質的にプライマーがなく、かつ所望のポリヌクレオチド合成中に生成された不完全な生成物になるように単離された場合、純粋であると考えられる。好ましくは、精製されたポリヌクレオチドは、分子の結合活性を妨げる、あるいは別にマスクする混入物が実質的にない。
【0118】
本発明のアレイにおいて、ポリヌクレオチド成分は、固体支持体の表面で安定的に関与しており、上記支持体は可撓性または剛性の固体支持体であり得る。
【0119】
核酸構成要素が付着され得る任意の固体支持体が、本発明において用いられ得る。適した固体支持体材料の例は、限定されないが、ガラスおよびシリカゲルといったケイ酸塩、セルロースおよびニトロセルロース紙、ナイロン、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ラテックス、ゴム、ならびテフロン(登録商標)といったフッ化炭素樹脂を包含する。
【0120】
固体支持体は、限定されないがスライドおよびビーズを包含する多種多様の形状で使用され得る。スライドは、機能的な利点があり、固体支持体の好ましい形態である。これらの平坦な面によって、ガラススライドを用いて、プローブおよびハイブリダイゼーション試薬を最小限にする。スライドは、試薬の標的塗布を可能にし、一定温度に保つことが容易であり、洗浄が容易であり、固体支持体に固定されたRNAおよび/またはDNAの可視化を容易にする。スライドを用いると、固体支持体に固定されたRNAおよび/またはDNAの除去も容易になる。
【0121】
固体支持体として選択される特定の材料は、上述した機能を供する限り、本発明で必須でない。通常、本発明を構成する、あるいは用いる支持体は、経済上のコスト及び入手性、最終産物の期待される適用要件、並びに製造プロセス全体の要求に基づき、市販の材料が最良の選択であろう。
【0122】
本発明の核酸構成要素の基板への付着(スポッティングと称されるプロセス)には、多数の方法が用いられる。例えば、ポリヌクレオチドは、例えば米国特許5,807,522号の技術を用いて付着される。米国特許5,807,522号は、ポリマーの付着方法を教示するために参照により本明細書中で援用される。代替的に、スポッティングは、密着焼付技術を用いて行われる。
【0123】
各組成物に存在するポリヌクレオチドの量は、上記アレイが用いられるアッセイ中の適当なハイブリダイゼーションおよび標的ポリヌクレオチド配列の検出に関して供するのに十分であろう。一般的に、上記アレイにおける固体支持体に安定的に関与する各核酸構成要素の量は、少なくとも約0.1ng、好ましくは少なくとも約0.5ng、より好ましくは少なくとも約1ngであって、上記量は、1000ng以上であり得るが、通常20ngを超えないであろう。
【0124】
コントロールポリヌクレオチドは、上記アレイにスポットされ得、プローブが対象とする標的以外の試料中のポリヌクレオチドに対する非特異的な結合またはクロスハイブリダイゼーションをモニターするために、標的発現コントロールポリヌクレオチドおよびミスマッチコントロールポリヌクレオチドとして用いられ得る。よって、ミスマッチプローブは、ハイブリダイゼーションが特異的であるか否かを示す。例えば、標的が存在する場合、完全にマッチしたプローブは、常にミスマッチしたプローブよりも鮮明になるべきである。全ての主要なミスマッチが存在する場合、ミスマッチプローブは、突然変異の検出に用いられる。
【0125】
(標的の調製)
マイクロアレイの標的は、1つ以上の生物学的試料に由来し得る。ハイブリダイゼーション前に標的核酸試料を増幅することが望ましい。当該技術分野の当業者であれば、定量結果が必要な場合にどのような増幅方法が用いられるか、増幅したポリヌクレオチドの相対頻度を維持する、あるいは制御する方法を用いるためにそのような対処をとるべきか、理解できるであろう。「定量」増幅の方法は、当該技術分野の当業者によく知られている。例えば、定量PCRは、同じプライマーを用いて既知量のコントロール配列を同時に共増幅することを包含する。これにより内部基準が供され、PCR反応を校正するのに用いられる。よって、高密度アレイは、増幅されたポリヌクレオチドの定量のための内部基準に特異的なプローブを含み得る。定量PCRの詳細なプロトコールは、PCRプロトコール、A Guide to Methods and Applications, Innis et al., Academic Press, Inc. N.Y., (1990)に提供されている。他の適した増幅方法は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)(Innis, et al., PCR Protocols. A guide to Methods and Application. Academic Press, Inc. San Diego, (1990))に限定されず、リガーゼ連鎖反応法(LCR)(Wu and Wallace, Genomics, 4: 560 (1989), Landegren, et al., Science, 241: 1077 (1988) およびBarringer, et al., Gene, 89: 117 (1990)参照)、転写増幅法(Kwoh, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 1173 (1989))、並びに自家持続配列複製法(Guatelli, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 87: 1874 (1990))を包含する。
【0126】
本発明は、上述したような、標識された標的、または標識されたプローブを提供する。本発明において、マイクロアレイのために、分子に付着される、あるいは一体となる任意の分析的に検出可能なマーカーが用いられ得る。分析的に検出可能なマーカーは、分析的に検出され定量される、任意の分子、分子成分、または原子について言及する。本発明の使用に適した検出可能な標識は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫学的手段、電気的手段、光学的手段、または化学的手段により検出可能な任意の組成物を包含する。本発明に有用な標識は、標識されたストレプトアビジン会合体を染色するためのビオチン、磁性ビーズ(例えばダイナビーズ(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質等)、放射性標識(例えば、H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及びELISAで用いられる共通の酵素)、並びに、コロイド金若しくは色ガラス、またはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロキシレン、ラテックス等)のビーズといった比色分析標識を包含する。そのような標識の利用を教示した特許は、米国特許3,817,837号、米国特許3,850,752号、米国特許3,939,350号、米国特許3,996,345号、米国特許4,277,437号、米国特許4,275,149号、および米国特許4,366,241号を包含する。
【0127】
そのような標識を検出する手段は、当該技術分野の当業者によく知られている。それゆえ、例えば、放射性標識は、写真用フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出され得、蛍光マーカーは、放射光を検出する光検出器を用いて検出され得る。酵素標識は、典型的には、基質都ともに酵素を供し、基質における酵素作用により生成される反応産物を検出することにより検出され、比色分析標識は、単に着色標識を可視化することにより、検出される。
【0128】
上記標識は、当該技術分野の当業者によく知られた任意の多数の手段により組み込まれ得る。しかしながら、好ましい実施形態では、上記標識は、試料ポリヌクレオチドの調製における増幅ステップ中に、同時に組み込まれる。よって、例えば、標識プライマーまたは標識ヌクレオチドとともにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことにより、標識された増幅産物が得られるだろう。好ましい実施形態では、上述した転写増幅法で標識ヌクレオチド(例えばフルオレセイン標識UTPおよび/またはCTP)を用いれば、転写されたポリヌクレオチドに標識が組み込まれる。代替的に、標識は、本来のポリヌクレオチド試料(例えばmRNA、ポリA mRNA、cDNA)、または増幅完了後の増幅産物に直接添加され得る。ポリヌクレオチドに標識を付着する手段は、当該技術分野の当業者によく知られており、例えば、ニックトランスレーション、または(例えば標識RNAによる)末端標識を包含する。これらの方法は、ポリヌクレオチドのリン酸化後に試料ポリヌクレオチドに標識(例えば蛍光団)を接合するポリヌクレオチドリンカーを付着(ライゲーション)することによりなされる。
【0129】
好ましい実施形態では、上記標的は、マイクロアレイから発生するシグナルを標準化するために、マイクロアレイにおいてコントロールプローブをハイブリダイズする1つ以上のコントロール分子を含む。標識された標準化標的は、上述したマイクロアレイにスポットされたコントロールプローブと完全に相補するポリヌクレオチド配列である。ハイブリダイゼーション後の標準化コントロールから得られたシグナルは、ハイブリダイゼーション条件、標識強度、「読み取り」効率、および完全なハイブリダイゼーションのシグナルがアッセイ間でばらつきを引き起こすその他の因子のばらつきに対するコントロールとなる。
【0130】
(画像取得およびデータ分析)
ハイブリダイゼーションおよび任意の洗浄ステップ、および/またはそれに続く慣習的な自然処理後に、結果としてハイブリダイゼーションパターンが検出される。ハイブリダイゼーションパターンを検出する、あるいは可視化するに際し、標識の強度またはシグナル値は、検出されるだけでなく定量される。これにより意味することは、ハイブリダイゼーションスポットそれぞれからのシグナルは、測定され、既知数の末端標識された標的ポリヌクレオチドにより放射されたシグナルに対応する単位値と比較されて、ハイブリダイゼーションパターンにおけるアレイ上の特定スポットに対しハイブリダイズされた末端標識標的のコピー数(copy number)の数値すなわち絶対値を得るということである。
【0131】
アレイに対しハイブリダイゼーションから収集されたデータを分析する方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、ハイブリダイゼーションの検出が蛍光標識を包含する場合、データ分析は、収集データからの基板位置の関数として蛍光強度を確定し、異常値、すなわち所定の統計的分布からそれたデータを除去し、残ったデータから試験ポリヌクレオチドの相対的な結合親和性を計算するステップを包含し得る。結果として得られたデータは、関連するオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドと試験ポリヌクレオチドとの間の結合親和性に応じて変化する各領域における強度を有する画像として表示される。
【0132】
(診断試験)
検出または可視化に続いて、ハイブリダイゼーションパターンは、試料が形成された、組織、体液、器官、細胞等の状態すなわち健康状態とともに、アレイに接触されハイブリダイゼーションパターンを生成した、標識された標的ポリヌクレオチド試料の遺伝子プロファイルに関する定量的情報を確定するのに用いられる。この点で、本発明は、さらに、癌を検出するための診断試験を提供する。本発明は、患者の健康状態のモニタリングを提供する。本発明の方法によれば、癌の存在は、患者から生物学的試料を得ることにより検出される。核酸を含む試験試料は、生物学的試料から調製される。上記試料から抽出された核酸は、アレイにハイブリダイズされる。このアレイは、固体支持体および複数の核酸構成要素を包含し、各構成要素は、疾患の存在または癌の素因を明示している。この診断試験によれば、アレイ上の1つ以上の核酸構成要素に対する、核酸を含む試料のハイブリダイゼーションは、癌または癌の素因を明示する。
【0133】
〔診断的モニタリング〕
本発明の方法はさらに、1つ以上のアッセイ結果に基づいたモニタリングレジメまたは療法コースを推奨するステップを包含し得る。これにより、個別化医療、例えば、患者の癌の進行をモニタリングすることによる(例えば初期またはその後の突然変異がいつ起きたかを認識することによる)癌療法、あるいは治療(例えば、突然変異が安定化された時を認識することによる)を臨床医が実施できるようになる。
【0134】
進行中の配列変異の境界についての知識に関して、前癌性状態または現存癌状態を診断するために情報が用いられ得る。さらに、長期に亘って継続的試料中の異常型mtDNAの量を定量することにより、癌状態の進行がモニタリングされ得る。例えば、野生型からの第一組の突然変異を検出するために一時点で患者の組織をアッセイすることにより提供されるデータが、その後のアッセイから提供されるデータに対して比較されて、異常性の変化がおきているか否かを確定し得る。
【0135】
癌の症候をまた発症していない個人に突然変異が見出された場合、突然変異は、癌状態を発症する遺伝的感受性を示し得る。疾患に対する感受性またはその存在の診断の確定は、さらに、もしあれば、患者の家族歴における癌状態の罹患率、ならびに他の危険因子の存在、例えば環境因子への曝露、ならびに患者の細胞が別の種類の突然変異も保有するか否かに関する情報に基づいて、定性的に評価され得る。
【0136】
〔生物学的試料〕
本発明は、1つ以上の生物学的試料を取得する、あるいは収集することを含む診断的試験を提供する。本発明の内容において、「生物学的試料」は、mtDNA、mtRNA、並びに翻訳産物若しくは融合タンパク質が取得され得る細胞を含有する組織または体液を指す。例えば、生物学的試料は、皮膚、肺、乳房、前立腺、神経、筋肉、心臓、胃、結腸、直腸組織等(これらに限定されない)を含めた組織から、あるいは血液、唾液、脳脊髄液、痰、尿、粘液、滑液、腹水、羊水等から得られる。生物学的試料は、癌性または非癌性組織から得られ、外科検体または生検検体(これらに限定されない)であり得る。
【0137】
生物学的試料は、供給源から得られる場合に直接的に、または試料の特性を修飾するための前処理後に用いられ得る。したがって、生物学的試料は、例えば、血液から血漿または血清を調製すること、細胞を崩壊させること、固体材料から液体を調製すること、粘性の体液を希釈すること、液体を濾過すること、液体を蒸留すること、液体を濃縮すること、妨害成分を不活性化すること、試薬を付加することなどによって、使用前に前処理され得る。
【0138】
1つよりも多くの試料型が、一回で(すなわち、1つより多くの癌の検出のために)アッセイされ得ることは、当業者に理解されるであろう。さらに、例えば、長時間に亘る癌のモニタリングのために、一連の収集が必要とされる場合、所定の試料が、単独で、または試験期間全体を通して採取された他の試料とともに、診断され得る。この点で、生物学的試料は、1回だけ、あるいは週2回、月1回、半年に1回または年1回といったように規則的な間隔で、採取され得る。
【0139】
〔キット〕
本発明は、臨床環境において癌を検出するための診断/スクリーニングキットを提供する。このようなキットは、1つ以上の試料採取手段を、本発明による1つ以上のプローブと組合せて包含し得る。代替的に、あるいはそれに加えて、上記キットは、本発明の翻訳産物を検出する手段を包含し得る。
【0140】
上記キットは、診断的アッセイを実行するために必要とされる試薬、例えば緩衝剤、塩、検出試薬等を適宜包含し得る。他の構成成分、例えば生物学的試料の単離および/または処理のための緩衝液および溶液も、キットに包含され得る。キットの構成成分のうちの1つ以上が凍結乾燥され得るし、キットは、さらに、凍結乾燥構成成分の再構成に適した試薬を含み得る。
【0141】
適切な場合、キットは、反応容器、混合容器、ならびに試験試薬の調製を促す他の構成要素も含有し得る。キットは、適宜、紙形態またはコンピューター読取形態で提供され得る使用のための使用説明書、例えばディスク、CD、DVD等も包含し得る。
【0142】
本発明の一実施形態では、癌を診断するためのキットであって、試料採取手段および本発明のハイブリダイゼーションプローブを含むキットが提供される。
【0143】
他の実施形態では、本発明のキットは、免疫学的アッセイを包含し得る。このような場合、上記キットは、本明細書中に記載した融合タンパク質に対し特異性を有する、抗体または抗原結合断片を包含し得る。使用者に対し必要な使用説明書に加え、このような免疫学的アッセイに必要な種々の他の試薬、例えば試験片が上記キットに含まれることは、理解されるであろう。
【0144】
〔実施例〕
本発明の種々の態様を、以下の実施例を用いた例証により記載する。本明細書中で提供される実施例は、本発明のある具体的実施形態を例証するだけのものであって、如何なる点でも本発明の範囲を限定するよう意図されない。
【0145】
<実施例1:ミトコンドリア融合転写物の検出>
ミトコンドリア4977「共通欠失」、およびPCT出願番号PCT/CA2007/001711(WO2009/039601として公開、この記載内容は参照により本明細書中で援用される)で本出願人により以前に同定された3.4kb欠失は、結果として、前立腺組織においてオリゴ−dT選抜により同定されるような活性転写物を有する独特のオープンリーディングフレームとなる(図2および3)。乳房組織試料の検査も、3.4kb欠失に起因する安定なポリアデニル化融合転写物の存在を明示する(図4)。
【0146】
〔欠失転写物検出のための逆転写酵素−PCRプロトコール〕
(RNA単離cDNA合成)
メーカーの使用説明書に従って、Aurum(商標)total RNA Fatty and Fibrous Tissue kit(Bio-Rad, Hercules, CA)を用いて、急速凍結前立腺および乳房組織試料(腫瘍に隣接する悪性試料および正常試料の両方)からトータルRNAを単離した。この実験では、ゲノムDNAのコンタミネーションは回避されるべきものであったため、当該技術分野で一般に知られているような方法を用いて、DNアーゼI処理ステップが包含された。ND−1000分光光度計(NanoDrop(登録商標) technologies)により、RNAの量および質を確定した。約100gの出発物質から、トータルRNA濃度は、260/280比で1.89〜2.10であり、100から1000ng/μLまで変化した。RNA濃度を100ng/μLに調整し、メーカーの使用説明書に従って、SuperScriptTM First-Strand Synthesis System for RT-PCR(Invitrogen)における一次鎖DNA合成のために、各鋳型2μLを用いた。安定ポリアデニル化融合転写物を同定するために、ポリ−Aテールを有する転写物を標的とするオリゴ(dT)プライマーを用いた。
【0147】
(PCR)
リアルタイムPCRは、DNAエンジンOpticon(登録商標)2連続蛍光検出システム(Bio-Rad, Hercules, CA)で、iQ(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix(Bio-Rad, Hercules, CA)とともに5μLの各cDNA鋳型を用いて実施された。4977bp欠失を標的とするプライマー対は:8416F 5’−CCTTACACTATTCCTCATCAC−3’、13637R 5’−TGACCTGTTAGGGTGAGAAG−3’であり、3.4kb欠失に対するプライマー対は:ND4LF 5’−TCGCTCACACCTCATATCCTC−3’、ND5R 5’−TGTGATTAGGAGTAGGGTTAGG−3’である。反応カクテルは、以下のものを含む:2×SYBR(登録商標)Green Supermix(100mMのKCl、40mMのトリス−HCl(pH8.4)、0.4mMの各dNTP[dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP])、iTaq(商標)DNAポリメラーゼ(50ユニット/ml)、6mMのMgCl、SYBR(登録商標)Green1、20nMのフルオロセイン、並びに安定剤)、250nMの各プライマー、並びにddHO。PCRサイクルパラメーターを以下に示す:(1)95℃、2分間、(2)95℃、30秒間、(3)55℃(4977bp欠失に関して)および63℃(3.4kb欠失に関して)、30秒間(4)72℃、45秒間、(5)プレート読取、その後、ステップ3〜5を39サイクル、そして4℃で最終インキュベーション。サイクル閾値および融解曲線の分析とは別に、増幅産物を具体的に可視化するためにアガロースゲルにおいて試料を泳動させた(図2〜4参照)。
【0148】
図2は、ミトコンドリアゲノムからの3.4kbの損失により引き起こされる前立腺試料中のポリアデニル化融合転写物を示すアガロースゲルである。図2に関する説明:B−ブランク、レーン1〜6:cDNA中に検出される転写物;レーン7〜12:レーン1〜6の試料に対する、RTがないコントロール。
【0149】
図3は、4977kb共通欠失の損失により引き起こされる前立腺試料中のポリアデニル化融合転写物を示す。図3に関する説明:B−ブランク、レーン1〜6:cDNA中に検出される転写物;レーン7〜12:レーン1〜6の試料に対する、RTがないコントロール。
【0150】
図4は、mtゲノムからの3.4kbの損失により引き起こされる乳房試料中のポリアデニル化融合転写物を示す。図4に関する説明:レーン2〜8:乳房cDNAからの転写物;レーン9:ネガティブ(水)コントロール;レーン2および3の試料に対する、RTがないネガティブコントロール。
【0151】
これらの結果は、安定ミトコンドリア融合転写物の存在を実証する。
【0152】
<実施例2:融合産物の同定およびターゲッティング>
3.4kb欠失のような突然変異ミトコンドリアゲノムに起因する新規の転写物の存在を検出し、さらに実証するために、種々のハイブリダイゼーションプローブを設計した。この目的のために、定量的遺伝子発現解析用のシングルプレックス分枝DNAプラットホーム(QuantiGene 2.0(商標)、Panomics(商標))を利用した。この実施例で列挙した特定の欠失および配列は、配列番号1で示される全mtDNAゲノムに関するそれらの相対的位置に基づいている。本実施例においてプローブが設計された4つの転写物の核酸配列は、本明細書中で以下のように同定される:転写物1(配列番号18)、転写物2(配列番号19)、転写物3(配列番号20)および転写物4(配列番号21)。
【0153】
3.4kbミトコンドリアゲノム欠失からの連続転写物の一例は、遺伝子ND4L(NADHデヒドロゲナーゼサブユニット4L)およびND5(NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5)とともに生じる。配列番号19と相補する配列を有するプローブを用いて、転写物2を検出した。それぞれのエレメントは、ND4L中の位置10745〜10754、およびND5中の14124〜14133で生じた。
【0154】
3.4kb欠失により、ND4Lの3’末端、全ND4遺伝子、tRNAヒスチジン、tRNAセリン2、tRNAロイシン2およびND5の5’末端の大部分が除去し(図5a参照)、10744(ND4L):14124(ND5)の接合点でND4LおよびND5の遺伝子スプライシングを生じた(図5b)。
【0155】
第1遺伝子、ND4Lの本来の開始コドンで開始することにより、アミノ酸配列は、終止コドンが出現するまで翻訳される。この例では、上記終始コドンは、ND5の本来の終止コドンである。それゆえ、2つの遺伝子がともにスプライシングしたにも関わらず、リーディングフレームは、原型を保って、結果として、長さが100アミノ酸(すなわち300bp)である推定すなわち予測転写物であった。本明細書において、この融合タンパク質転写産物は、配列番号37として同定されている。このようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号3)は、ミトコンドリアゲノムの位置10470〜10744:14124〜14148に対応する。配列番号3は、上述の形式で検出されたRNA転写物(配列番号20)と相補するDNA配列である。
【0156】
同様に、転写物1は、位置8469:13447に関連したATPアーゼ8およびND5間の融合転写物(配列番号19)である。転写物3および4(それぞれ配列番号21および22)は、それぞれヌクレオチド位置7974:15496および7992:15730に関連したCOIIおよびCytb間の融合転写物である。表3は、本実施例に用いられる種々の配列間の関係の要約を示す。表3は、検出融合転写物、ならびに検出された融合転写物と相補的なDNA配列を含む。
【0157】
<実施例3:前立腺癌への適用>
上記の4つの融合転写物、すなわち転写物1〜4を用いて、一患者からの2つの前立腺組織試料を分析して、新規の予測融合転写物の定量的差を評価した。実験結果を、以下の表2に示すが、この場合、「Homog 1」は、一患者からの凍結前立腺腫瘍組織のホモジネートを指し、「Homog 2」は、その患者の当該腫瘍に隣接する凍結正常前立腺組織のホモジネートを指す。これらの試料を、25.8mgのHomog 1および28.9mgのHomog 2で出発して、メーカーのプロトコール(QuantiGene(登録商標)Sample Processing Kit for Fresh or Frozen Animal Tissue;およびQuantiGene(登録商標)2.0 Reagent System User Manual)に従って処理した(表5aおよび5bに検定設定を示す)。
【0158】
正常な隣接前立腺組織に比して、前立腺癌組織中のミトコンドリア融合転写物が増大して存在していることが明らかに実証される。融合転写物は、正常組織中に存在するが、非常に低いレベルである。標的転写物に対するプローブのハイブリダイゼーションにより生成された相対発光強度単位(RLU)は、各転写物の存在量に正比例する。表2は、試料に関して得られた読取りの変動係数(CV)(パーセンテージで表される)も示す。CVは、標準偏差を値の平均で割ったものである。癌組織中のこのような安定転写ミトコンドリア遺伝子産物の有意性は、疾患の進化および進行において密接な関係を有する。
【0159】
<実施例4:乳癌への適用>
3.4kb mtゲノム欠失に関連した新規の融合転写物である転写物2のみに絞ることを除き、実施例3と同一プロトコールを用いて、乳房腫瘍の2つの試料およびその腫瘍に隣接する無腫瘍組織の2つの試料、ならびに前立腺腫瘍組織の3つの試料(1試料は隣接無腫瘍組織を含む)に関して、分析を実行した。本実施例に関する結果を、表4に示す。対応する正常組織切片を有する前立腺腫瘍組織は、腫瘍組織が、正常隣接組織の約2倍の量の融合転写物を有するという点で、実施例3で分析した前立腺試料と同様のパターンを実証した。乳房腫瘍試料は、隣接する非腫瘍組織と比較した場合、融合転写物レベルが顕著に増大したことが実証された。ホモジネートの1:100希釈液は、実施例3で言及した実験において最も再現可能的に実施されるので、この分析のために用いられた。
【0160】
したがって、上記の結果は、前立腺および乳房組織の両方の腫瘍の検出における本発明の転写物の適用を示す。
【0161】
<実施例5:結腸直腸癌への適用>
この試験は、結腸直腸癌を検出するに際して本発明のいくつかの転写物の有効性を確定することを目的としている。9例のコントロール(良性)組織試料(試料1〜9)および10例の腫瘍(悪性)組織試料(試料10〜19)を含む合計19の試料を調製した。試料を、メーカーの推奨に従ってホモジナイズした(QuantiGene(登録商標)Sample Processing Kit for Fresh or Frozen Animal Tissue;およびQuantiGene(登録商標)2.0 Reagent System User Manual)。7つの標的転写物および1つのハウスキーピング転写物を、前記実施例にて述べた方法で調製した。転写物の特性を、以下のように要約する:
【0162】
【表1】

【0163】
転写物2および3は、実施例3および4について上述したものと同一である、ということに留意すべきである。
【0164】
OCTブロックからの組織約25mgを用いて、ホモジネートを調製し、転写物2および4に関しては1:1に、転写物10および11に関しては1:8に希釈した。Glomax(商標)マルチ検出システム(Promega)によって、相対的発光強度単位(RLU)で転写物の量を測定した。各転写物について、全試料を3回反復してアッセイした。バックグラウンドの測定(鋳型なし)についても、同様に3回反復して実行した。分析は、試料に関するRLU値から下限を差し引くことにより、バックグラウンドを計上した。公式logaRLU−loghRLU(式中、aは標的融合転写物であり、hはハウスキーピング転写物である)を用いて、投入RNAを計上した。
【0165】
データ分析は、以下のステップを包含した:
a)3回反復アッセイでのCV(変動係数)を確定する;≦15%である場合は、許容可能である。
【0166】
b)標的融合転写物(a)およびハウスキーピング転写物(h)の3回反復アッセイに関する平均RLUを確定する。
【0167】
c)バックグラウンドRLUにおける3回反復の値から下限(l)を確定する。
【0168】
d)(a)から下限(l)を差し引く。
【0169】
e)logaRLU−loghRLUを算定する。
【0170】
(結果の要約)
上記分析の結果を図6a〜6g(試料番号に対する、logaRLU−loghRLUのプロットを含む)に示す。各転写物に関する結果から確定された、それぞれのROC(受信者動作特性)曲線も示す。
【0171】
転写物2:正常および悪性群(p>0.09)の平均(p<0.10)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値3.6129の使用は、結果として、感受性が60%になり、特異性が89%になった。曲線下面積は0.73であり、これは適正な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0172】
転写物3:正常および悪性群(p=0.03)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値4.0813の使用は、結果として、感受性が60%になり、特異性が78%になった。曲線下面積は0.79であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0173】
転写物8:正常および悪性群(p=0.06)の平均(p<0.1)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−6.0975の使用は、結果として、感受性が60%になり、特異性が89%になった。曲線下面積は0.76であり、これは適正な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0174】
転写物9:正常および悪性群(p=0.06)の平均(p<0.1)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−7.5555の使用は、結果として、感受性が60%になり、特異性が89%になった。曲線下面積は0.76であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0175】
転写物10:正常および悪性群(p=0.01)の平均(p≦0.01)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−3.8272の使用は、結果として、感受性が90%になり、特異性が67%になった。曲線下面積は0.84であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0176】
転写物11:正常および悪性群(p=0.06)の平均(p<0.1)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値3.1753の使用は、結果として、感受性が70%になり、特異性が78%になった。曲線下面積は0.76であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0177】
転写物12:正常および悪性群(p=0.06)の平均(p<0.1)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値3.2626の使用は、結果として、感受性が70%になり、特異性が78%になった。曲線下面積は0.76であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0178】
(結論)
上記の結果は、結腸直腸癌の検出、および正常結腸直腸組織から悪性組織の区別に際して、転写物2、3、8、9、10、11および12の有用性を例証する。上記のように、転写物2および3は、前立腺癌の検出において有用性があることも見出された。転写物2は、乳癌の検出において有用性があることも見出された。転写物11は、黒色腫皮膚癌の検出において有用性があることも見出された。転写物8は、肺癌の検出において有用性があることも見出された。列挙したいくつかの転写物の何れも、個別に、または組合せて、臨床設定における結腸直腸癌の特性化の検出のためのツールとして用いられ得る。
【0179】
<実施例6:肺癌への適用>
この試験は、肺癌の検出における本発明のいくつかの転写物の有効性を確定することを目的としている。実施例5の場合と同様に、9例のコントロール(良性)組織試料(試料1〜9)および10例の腫瘍(悪性)組織試料(試料10〜19)を、メーカーの推奨に従ってホモジナイズした(QuantiGene(登録商標)Sample Processing Kit for Fresh or Frozen Animal Tissue;およびQuantiGene(登録商標)2.0 Reagent System User Manual)。ホモジネートを1:8に希釈し、4つの標的転写物および1つのハウスキーピング転写物の量を、Glomax(商標)マルチ検出システム(Promega)によって、相対的発光強度単位(RLU)で転写物の量を測定した。各転写物について、全試料を3回反復してアッセイした。バックグラウンドの測定(鋳型なし)についても、同様に3回反復して実行した。
【0180】
以下の転写物を、この実施例のために調製した:
【0181】
【表2】

【0182】
この実施例に用いた組織試料は、以下の特性を有した:
【0183】
【表3】

【0184】
実施例5に記載した方法に従って、データ分析を実施した。結果を、図7a、7b、7cおよび7dに示す。
【0185】
(結果の要約)
転写物6:正常(良性)および悪性群(p=0.06)の平均(p<0.1)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−6.5691の使用は、結果として、感受性が80%になり、特異性が71%になった。曲線下面積は0.77であり、これは適正な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0186】
転写物8:正常および悪性群の平均間の差は、統計的に有意である、p<0.05(p=0.02)。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−9.6166の使用は、結果として、感受性が90%になり、特異性が86%になった。曲線下面積は0.86であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0187】
転写物10:正常および悪性群の平均間の差は、統計的に有意である、p≦0.01(p=0.01)。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−10.6717の使用は、結果として、感受性が90%になり、特異性が86%になった。曲線下面積は0.89であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0188】
転写物20:正常および悪性群の平均間の差は、統計的に有意である、p≦0.1(p=0.1)。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値2.5071の使用は、結果として、感受性が70%になり、特異性が71%になった。曲線下面積は0.74であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0189】
(結論)
実施例6からの結果は、肺癌腫瘍の検出における本発明の転写物6、8、10および20の有用性、および悪性および正常肺組織間の区別を例証する。これら3つの転写物のいずれかを、臨床設定における肺癌の検出または特性化のために用い得る。
【0190】
<実施例7:黒色腫への適用>
この試験は、黒色腫の検出における本発明のいくつかの転写物の有効性を確定することを目的としている。この試験では、5例のコントロール(良性)組織試料および9例の悪性組織試料を含む合計14の試料を用いた。全試料をホルマリン固定し、パラフィン包埋した(FFPE)。FFPE組織試料を切片にして試験管に入れ、メーカーの推奨に従ってホモジナイズした(Quantigene(登録商標)2.0 Sample Processing Kit for FFPE Samples;およびQuantigene 2.0 Reagent System User Manual)。ホモジネートを1:4に希釈し、7つの標的転写物および1つのハウスキーピング転写物の量を、Glomax(商標)マルチ検出システム(Promega)によって、相対的発光強度単位(RLU)で測定した。各転写物について、全試料を3回反復してアッセイした。バックグラウンドの測定(鋳型なし)についても、同様に3回反復して実行した。
【0191】
この実施例に用いた14の組織試料は、以下の特性を有した:
【0192】
【表4】

【0193】
以下の転写物を、この実施例のために調製した:
【0194】
【表5】

【0195】
上記のように、転写物10および11は、実施例5でも用いられた。実施例5に記載した方法に従って、データ分析を実施した。結果を、図8a〜8gに示す。
【0196】
(結果の要約)
転写物6:正常および悪性群(p=0.01)の平均(p≦0.01)間に統計学的有意差が存在する。さらに、ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−5.9531の使用は、結果として、感受性が89%になり、特異性が80%になった。曲線下面積は0.96であり、これは、非常に良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0197】
転写物10:正常および悪性群(p=0.05)の平均(p≦0.05)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−4.7572の使用は、結果として、感受性が89%になり、特異性が40%になった。曲線下面積は0.82であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0198】
転写物11:正常および悪性群(p=0.02)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。さらに、ROC曲線により実証されるようなカットオフ値1.6762の使用は、結果として、感受性が78%になり、特異性が100%になった。曲線下面積は0.89であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0199】
転写物14:正常および悪性群(p=0.05)の平均(p≦0.05)間に統計学的有意差が存在する。さらに、ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−4.9118の使用は、結果として、感受性が89%になり、特異性が60%になった。曲線下面積は0.82であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0200】
転写物15:正常および悪性群(p=0.07)の平均(p<0.1)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−7.3107の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が67%になった。曲線下面積は0.80であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0201】
転写物16:正常および悪性群(p=0.03)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。さらに、ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−10.5963の使用は、結果として、感受性が89%になり、特異性が80%になった。曲線下面積は0.878であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0202】
転写物20:正常および悪性群(p=0.04)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。さらに、ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−8.3543の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が80%になった。曲線下面積は0.89であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0203】
(結論)
実施例7からの結果は、悪性黒色腫の検出における本発明の転写物6、10、11、14、15、16および20の有用性を例証する。上記のように、転写物10および11は、結腸直腸癌を検出するのに有用性を有する一方、転写物6は肺癌の検出において有用性があることも見出された。疾患による転写物の概要を、表6に示す。
【0204】
<実施例8:卵巣癌への適用>
この試験は、卵巣癌の検出における本発明のいくつかの転写物の有効性を確定することを目的としている。10例のコントロール(良性)組織試料(試料1〜10)および10例の腫瘍(悪性)組織試料(試料11〜20)を含む合計20の試料を調製した。試料を、メーカーの推奨に従ってホモジナイズした(Quantigene(登録商標)Sample Processing Kit for Fresh or Frozen Animal Tissue;およびQuantigene 2.0 Reagent System User Manual)。8つの標的転写物および1つのハウスキーピング転写物を、前記の実施例で示したように調製した。
【0205】
この実施例に用いた20の組織試料は、以下の特性を有した:
【0206】
【表6】

【0207】
転写物の特性を、以下のように要約する:
【0208】
【表7】

【0209】
転写物1、2、3、6、11、12、15および20は、実施例3〜7に関して上述したものと同一である、ということに留意すべきである。
【0210】
凍結組織約25mgを用いて、ホモジネートを調製し、1:4に希釈した。Glomax(商標)マルチ検出システム(Promega)によって、相対的発光強度単位(RLU)で転写物の量を測定した。各転写物について、全試料を3回反復してアッセイした。バックグラウンドの測定(鋳型なし)についても、同様に3回反復して実行した。分析は、試料に関するRLU値から下限を差し引くことにより、バックグラウンドを計上した。公式logaRLU−loghRLU(式中、aは標的融合転写物であり、hはハウスキーピング転写物である)を用いて、投入RNAを計上した。
【0211】
データの分析は、以下のステップを包含した:
a)3回反復アッセイでのCV(変動係数)を確定する;≦15%である場合は、許容可能である。
【0212】
b)標的融合転写物(a)およびハウスキーピング転写物(h)の3回反復アッセイに関する平均RLUを確定する。
【0213】
c)バックグラウンドRLUにおける3回反復の値からの下限(l)を確定する。
【0214】
d)(a)から下限(l)を差し引く。
【0215】
e)logaRLU−loghRLUを算定する。
【0216】
(結果の要約)
上記分析の結果を図9a〜9h(試料番号に対するlogaRLU−loghRLUのプロットを含む)に示す。各転写物に関する結果から確定された、それぞれのROC(受信者動作特性)曲線も示す。
【0217】
転写物1:正常および悪性群(p=0.002)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−11.1503の使用は、結果として、感受性が90%になり、特異性が80%になった。曲線下面積は0.91であり、これは非常に良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0218】
転写物2:正常および悪性群(p=0.001)の平均(p<0.01)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値0.6962の使用は、結果として、感受性が90%になり、特異性が100%になった。曲線下面積は0.96であり、これは、非常に良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0219】
転写物3:正常および悪性群(p=0.000)の平均(p<0.01)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値0.6754の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が100%になった。曲線下面積は1.00であり、これは優れた試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0220】
転写物6:正常および悪性群(p=0.007)の平均(p<0.01)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−9.6479の使用は、結果として、感受性が90%になり、特異性が70%になった。曲線下面積は0.86であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0221】
転写物11:正常および悪性群(p=0.000)の平均(p<0.01)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−1.3794の使用は、結果として感受性が100%であり、特異性が90%であった。曲線下面積は0.99であるが、これは、優れた試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0222】
転写物12:正常および悪性群(p=0.001)の平均(p<0.01)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−1.2379の使用は、結果として、感受性が90%になり、特異性が100%になった。曲線下面積は0.96であり、これは優れた試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0223】
転写物15:正常および悪性群(p=0.023)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−8.6926の使用は、結果として、感受性が70%になり、特異性が80%になった。曲線下面積は0.80であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0224】
転写物20:正常および悪性群(p=0.000)の平均(p<0.01)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値0.6521の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が100%になった。曲線下面積は0.76であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0225】
(結論)
上記の結果は、卵巣癌の検出、および正常卵巣組織から悪性組織の区別に際して、転写物1、2、3、6、11、12、15および20の有用性を例証する。転写物1、2および3は、前立腺癌の検出において有用性があることも見出された。転写物6は、黒色腫および肺癌の検出において有用性があることも見出された。転写物11は、黒色腫皮膚癌、結腸直腸癌および精巣癌の検出において有用性があることも見出された。転写物12は、結腸直腸癌および精巣癌の検出において有用性があることも見出された。転写物15は、黒色腫および精巣癌の検出において有用性があることも見出された。転写物20は、結腸直腸癌、黒色腫および精巣癌の検出において有用性があることも見出された。列挙した8つの転写物の何れも、個別に、または組合せて、臨床設定における卵巣癌の検出または特性化のためのツールとして用いられ得る。
【0226】
<実施例9:精巣癌への適用>
この試験は、精巣癌の検出における本発明のいくつかの転写物の有効性を確定することを目的としている。8例のコントロール(良性)組織試料(試料1〜8)および9例の腫瘍(悪性)組織試料(試料9〜17)を含む合計17の試料を調製した。悪性試料のうちの5例は非精上皮腫(試料9〜13)であり、4例は精上皮腫(試料14〜17)であった。試料を、メーカーの推奨に従ってホモジナイズした(Quantigene(登録商標)Sample Processing Kit for Fresh or Frozen Animal Tissue;およびQuantigene 2.0 Reagent System User Manual)。10の標的転写物および1つのハウスキーピング転写物を、前記の実施例で示したように調製した。
【0227】
この実施例に用いた17の組織試料は、以下の特性を有した:
【0228】
【表8】

【0229】
転写物の特性を、以下のように要約する:
【0230】
【表9】

【0231】
転写物2、3、4、7、11、12、15、16および20は、実施例3〜8に関して上述したものと同一である、ということに留意すべきである。
【0232】
凍結組織約25mgを用いて、ホモジネートを調製し、1:4に希釈した。Glomax(商標)マルチ検出システム(Promega)によって、相対的発光強度単位(RLU)で転写物の量を測定した。各転写物について、全試料を3回反復してアッセイした。バックグラウンドの測定(鋳型なし)についても、同様に3回反復して実行した。分析は、試料に関するRLU値から下限を差し引くことにより、バックグラウンドを計上した。公式logaRLU−loghRLU(式中、aは標的融合転写物であり、hはハウスキーピング転写物である)を用いて、投入RNAを計上した。
【0233】
データの分析は、以下のステップを包含した:
a)3回反復アッセイでのCV(変動係数)を確定する;≦15%である場合は、許容可能である。
【0234】
b)標的融合転写物(a)およびハウスキーピング転写物(h)の3回反復アッセイに関する平均RLUを確定する。
【0235】
c)バックグラウンドRLUにおける3回反復の値からの下限(l)を確定する。
【0236】
d)(a)から下限(l)を差し引く。
【0237】
e)logaRLU−loghRLUを算定する。
【0238】
(結果の要約)
上記分析の結果を図10〜18(試料番号に対するlogaRLU−loghRLUのプロットを含む)に示す。各転写物に関する結果から確定されるそれぞれのROC(受信者動作特性)曲線も示す。
【0239】
いくつかの転写物は良性および悪性精巣組織間を区別するが、他のものは、腫瘍亜型の精上皮腫と非精上皮腫および/または良性精巣組織との間の区別を示す。したがって、各クラスからの転写物を組合せると、精巣癌の検出だけでなく、精上皮腫または非精上皮腫の亜型への分類も容易にする、と理解される。
【0240】
転写物2:正常群および悪性精上皮腫群(p=0.02)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値1.5621の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が100%になった。曲線下面積は1.00であり、これは優れた試験精度を示す。悪性精上皮腫および悪性非精上皮腫(p=0.024)の平均(p<0.05)間にも統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値2.1006の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が80%になった。曲線下面積は0.90であり、これは優れた試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0241】
転写物3:正常群および悪性精上皮腫群(p=0.018)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値0.969の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が87.5%になった。曲線下面積は0.969であり、これは優れた試験精度を示す。悪性精上皮腫および悪性非精上皮腫(p=0.017)の平均(p<0.05)間にも統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値1.8181の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が80%になった。曲線下面積は0.9であり、これは優れた試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0242】
転写物4:正常および悪性群(p=0.034)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−9.7628の使用は、結果として、感受性が67%になり、特異性が100%になった。曲線下面積は0.833であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0243】
転写物11:正常群および悪性精上皮腫群(p=0.016)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値0.732の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が100%になった。曲線下面積は1.00であり、これは優れた試験精度を示す。悪性精上皮腫および悪性非精上皮腫(p=0.016)の平均(p<0.05)間にも統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値0.9884の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が80%になった。曲線下面積は0.90であり、これは優れた試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0244】
転写物12:正常群および悪性精上皮腫群(p=0.056)の平均(p<0.1)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値1.5361の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が87.5%になった。曲線下面積は0.969であり、これは優れた試験精度を示す。悪性精上皮腫および悪性非精上皮腫(p=0.044)の平均(p<0.05)間にも統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値1.6039の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が80%になった。曲線下面積は0.9であり、これは優れた試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0245】
転写物13:正常群および悪性群(p=0.019)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−9.8751の使用は、結果として、感受性が87.5%になり、特異性が78%になった。曲線下面積は0.875であり、これは非常に良好な試験精度を示す。悪性非精上皮腫および良性群(p=0.000)の平均(p<0.01)間にも統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−13.9519の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が87.5%になった。曲線下面積は0.975であり、これは優れた試験精度を示す。悪性精上皮腫および悪性非精上皮腫群(p=0.001)の平均(p<0.01)間にも統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−15.8501の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が100%になった。曲線下面積は1.00であり、これは優れた試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0246】
転写物15:正常および悪性群(p=0.065)の平均(p<0.1)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−5.4916の使用は、結果として、感受性が75%になり、特異性が89%になった。曲線下面積は0.833であり、これは良好な試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0247】
転写物16:正常群および悪性群(精上皮腫および非精上皮腫の両方を含む)(p=0.037)の平均(p<0.05)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−6.448の使用は、結果として、感受性が89%になり、特異性が75%になった。曲線下面積は0.806であり、これは良好な試験精度を示す。正常および悪性精上皮腫(p=0.037)の平均(p<0.05)間にも統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値−7.4575の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が87.5%になった。曲線下面積は0.938であり、これは優れた試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0248】
転写物20:正常群および悪性精上皮腫群(p=0.006)の平均(p<0.01)間に統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値1.8364の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が100%になった。曲線下面積は1.00であり、これは優れた試験精度を示す。悪性精上皮腫および悪性非精上皮腫(p=0.004)の平均(p<0.01)間にも統計学的有意差が存在する。ROC曲線により実証されるようなカットオフ値1.6065の使用は、結果として、感受性が100%になり、特異性が100%になった。曲線下面積は1.00であり、これは優れた試験精度を示す。選択される閾値を、特定用途に関する試験の特異性または感受性を増大するよう調整し得る。
【0249】
(結論)
上記の結果は、精巣癌および亜型精巣癌の検出、および正常精巣組織から悪性組織の区別に際して、転写物2、3、4、11、12、13、15、16および20の有用性を例証する。転写物2は、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌および卵巣癌の検出において有用性があることも見出された。転写物3は、前立腺癌、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌および卵巣癌の検出において有用性があることも見出された。転写物4は、前立腺癌および結腸直腸癌における有用性を有することも見出された。転写物11は、結腸直腸癌、黒色腫および卵巣癌の検出において有用性があることも見出された。転写物12は、結腸直腸癌および卵巣癌の検出において有用性があることも見出された。転写物15は、黒色腫および卵巣癌の検出において有用性があることも見出された。転写物16は、黒色腫皮膚癌の検出において有用性があることも見出された。転写物20は、結腸直腸癌、黒色腫および卵巣癌の検出において有用性があることも見出された。列挙した9つの転写物の何れも、個別に、または組合せて、臨床設定における精巣癌の検出または特性化のためのツールとして用いられ得る。
【0250】
一態様において、本発明は、組織試料中の癌の存在を確定するためのアッセイを実行するためのキットを提供する。キットは、上記アッセイを実行するために必要とされる試薬を含む。特に、キットは、上記の転写物1〜17および20に対応する1つ以上のハイブリダイゼーションプローブを含有する1つ以上の容器を含む。理解されるように、アッセイを実行するための試薬は、任意の必要な緩衝剤、塩、検出試薬等を含む。さらに、キットは、例えばホモジネーションまたは核酸抽出により組織試料を調製するために必要とされる組織試料、試薬または材料を得るための、ならびに被験者のアッセイ(単数または複数)を実行するための任意の必要な試料収集装置、容器等を包含し得る。キットは、罹患若しくは非罹患組織に関する許容可能な値を確定する、あるいは実証するためのコントロール組織または試料も包含し得る。
【0251】
<実施例10:融合タンパク質の検出>
(細胞株)
融合タンパク質の存在は、2つのヒト前立腺細胞株において研究されていた。第1に、正常な前立腺細胞株(ATCC Cat# CRL-11609)、これら細胞は、ヌードマウスにおいて腫瘍化せず、組織学的に正常な成人前立腺細胞をパピローマウィルス18型で感染することにより確立された。第2に、腫瘍化細胞株WPE1−NA22が検査された(ATCC Cat# CRL-2849)。これらの細胞は、N−メチル−N−ニトロソウレアへの露出に続いて、RWPE−1細胞に由来する。これらの細胞は、その親細胞RWPE−1と異なり、ヌードマウスにおいて腫瘍化する。
【0252】
両細胞株は、ケラチノサイト無血清培地(Invitrogen Cat#17005-042)中で増殖され、培地には、ウシ下垂体エキスおよびヒト組換え上皮成長因子が添加された。細胞は、90%の集密まで増殖され、TrypLE Select (Invitrogen Cat#12563029)を用いてトリプシン処理される。そして、細胞は、自動計測システム(Invitrogen Countess Cat#C10227)を用いて計測され、そして、アリコートは急速凍結され、−80℃で保管された。
【0253】
(タンパク質抽出)
Qプロテオームミトコンドリア単離キット(Qiagen Cat#37612)を用いて、RWPE1細胞株およびWPE1−NA22細胞株の両方から、細胞画分が抽出された。1×10の細胞からミトコンドリア画分および細胞質画分の両方が抽出された。そして、タンパク質濃度は、キュビットフルオロメーター(Qubit fluorometer)(Invitrogen Cat#Q32857)で計測される蛍光タンパク質アッセイ(Quant-IT Protein, Invitrogen Cat#Q33211)を用いて算出された。
【0254】
(SDS−PAGEゲル電気泳動)
Qプロテオームミトコンドリア単離キットを用いて調製された、ミトコンドリア画分および細胞質画分について、SDS−PAGEゲル電気泳動が行われた。4−12%プレキャスト(invitrogen Nupage Cat#NP0321)ビス−トリスゲル還元ゲルの各レーンに、MES泳動バッファー(Invitrogen Cat# NP00020)を用いて、20μgのタンパク質が泳動された。上記ゲルは、コロイダルブルーゲル染色液(Invitrogen Cat# LC6025)で一晩染色された。結果を図19に示す。図19に示した8つのゲルスライスそれぞれに含まれると推定される、タンパク質の概算サイズ(kD)範囲は、以下の通りである。
【0255】
【表10】

【0256】
(LCMS)
8つのゲルスライスは、コロイダルブルーで染色された1D SDS−PAGE(図19)の各レーンから切断され、標準的な手順に続いてゲルについてトリプシン消化された。
【0257】
消化産物は、ゲルから溶出され脱水濃縮された(evaporated)。アリコートは、LCMSシステム(Thermo LTQ XL orbitrapにオンラインで接続されたDionex / LC Packings Ultimate3000)に注入される。そして、25cm(75μmID)PepMap(Dionex)カラムで、イオン対試薬としての蟻酸とともに流速300ml/分で、かつ5%MeCNで始まり40%MeCNへ向かう直線的な濃度勾配で110分以上かけて、分離された。MSスペクトルはオービトラップ(orbitrap)において、60000(400Da)の分離度で収集され、MSMSスペクトルは、リニアーイオントラップにおいて、低分離度で収集された。
【0258】
データは、.mgf(マスコットジェネリックフォーマット(mascot generic format))のピークリストファイルを生成するため、サーモプロテオームディスカバラー(Thermo Proteome Discoverer)を用いて処理された。ピークリストファイルは、住宅内で、X!タンデム(X!Tandem)へ提示され、ヒトプロテオーム(ensembl)および上述の融合転写物に基づいて推定される融合タンパク質からなるカスタムデータベースを検索する。偽陽性比率(FDR)を算出するため、検索データベースは、全タンパク質の逆配列も含む。
【0259】
(タンパク質複合体の分析)
X!タンデム(X!Tandem)カスタムデータベース検索の完了時に、全ての同定されたタンパク質および融合転写物が戻された。タンパク質は、そのlog(e)値によりスコアが付けられ、log(e)が−3よりも小さいタンパク質に付与されるのに優先して、log(e)が−1よりも小さい場合、有意であるとして分類される。融合タンパク質は、同じゲルスライスにおいて融合転写物に寄与する遺伝子それぞれから少なくとも1つのペプチドが存在することにより同定される。LC/MS−MSにより同定されたペプチドからのタンパク質配列の範囲は、赤色で表示される。実験条件に起因してペプチドを観察することが困難であり得るタンパク質の配列は、緑色で明示される。最後に、黒色で表示されたタンパク質配列は、ペプチドを同定する中立的可能性を示す。
【0260】
(同定された融合タンパク質の例)
この方法論を用いて、多くのミトコンドリア融合タンパク質が同定された。そのような融合タンパク質のうち4つを代表例として、以下に示す。
【0261】
(融合タンパク質例1)
図20aは、P0026として同定された融合転写物に対応する融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。このタンパク質は、ミトコンドリアNA22細胞株(図19)のスライス7において、チトクロムcオキシダーゼサブユニット2(CO2)N−末端ペプチドILYMTDEVNDPSLTIKおよびNADH−ユビキノンオキシドレダクターゼ鎖3(ND3)C−末端ペプチドSTPYECGFDPMSP(図20a)の存在から同定された(log(e)=−13.2)。
【0262】
全てのミトコンドリアNA22細胞株ゲルスライスの.xmlデータに対して、野生型CO2における最もC−末端のトリプシンペプチドIFEMGPVFTLが検索された。このペプチドは、ゲルスライス5(図19)でのみ観察された。さらに、このことは、全てのゲルスライスについてヒト(SwissProt)データベース(融合転写物なし)を検索した後、ミトコンドリアNA22細胞株のゲルスライス5でのみCO2野生型(log(e)=−42.9)(図20b)を同定したことにより確認された。
【0263】
チトクロムcオキシダーゼサブユニット2のペプチドILYMTDEVNDPSLTIKは、ゲルスライス5および7で観察された。このことは、分子量が〜25kDaである、野生型CO2が20〜30kDaのゲルスライス5に存在し、CO2におけるN−末端の断片がゲルスライス7に存在することを明示する。ND3からのトリプシンペプチドSTPYECGFDPMSPは、野生型遺伝子(13kDa)およびP0026のC−末端に合致するゲルスライス7(10〜15kDa)で同定されただけである。
【0264】
融合転写物P0026の配列、それを由来とする突然変異型DNA、および結果として生じるタンパク質はそれぞれ、本明細書では、配列番号56、配列番号57、および配列番号58として提示されている。
【0265】
(融合タンパク質例2)
図21aは、P0062として同定された融合転写物に対応する融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。このタンパク質は、ミトコンドリアNA22細胞株(図19)のスライス5(20−30kDa)において、NADHデヒドロゲナーゼサブユニット1(ND1)N末端ペプチドKGPNVVGPYGLLQPFADAMKおよびYDQLMHLLWK、並びにATPシンセターゼサブユニット6C末端ペプチドLITTQQWLIKの存在から同定された(log(e)=−41.2)。
【0266】
3つのペプチド全ては、ミトコンドリアNA22細胞株ゲルスライス5(図19)中で同定された。しかしながら、ND1の最C末端ペプチド(YDQLMHLLWK)がゲルスライス5でのみ存在することから、野生型(図21b)および融合転写物P0062に対応する融合タンパク質の両方の存在が考えられる。
【0267】
融合転写物P0062の配列、それを由来とする突然変異型DNA、および結果として生じるタンパク質はそれぞれ、本明細書では、配列番号59、配列番号60、および配列番号61として提示されている。
【0268】
(融合タンパク質例3)
図22は、P0064として同定された融合転写物に対応する融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。このタンパク質は、図19に示される、ミトコンドリアNA22細胞株のスライス4(log(e)=−22)において、ND1のN末端からのペプチドKGPNVVGPYGLLQPFADAMKおよびNADHデヒドロゲナーゼサブユニット2(ND2)C末端ペプチドWAIIEEFTKとともに同定された。ND1C末端ペプチドYDQLMHLLWKは、ゲルスライス4で観察されず、P0064およびND2の推定サイズに基づくと、ゲルスライス4はP0064およびND2を含有することが示唆される。
【0269】
融合転写物P0064の配列、それを由来とする突然変異型DNA、および結果として生じるタンパク質はそれぞれ、本明細書では、配列番号62、配列番号63、および配列番号64として提示されている。
【0270】
(融合タンパク質例4)
図23aは、P0176として同定された融合転写物に対応する融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。このタンパク質は、図19に示される、ミトコンドリアNA22細胞株のスライス4(log(e)=−33)において、ND1N末端からのペプチドKGPNVVGPYGLLQPFADAMK、ならびにチトクロムcオキシダーゼサブユニット1(CO1)C末端ペプチドVFSWLATLHGSNMKおよびVLMVEEPSMNLEWLYGCPPPYHTFEEPVYMKとともに同定された。CO1の両ペプチドはともに、推定サイズが55kDaであるのに関わらず、ミトコンドリアNA22細胞株のスライス4(30〜40kDa)でのみ観察された。さらに、このことは、全てのゲルスライスについてヒト(SwissProt)データベース(融合転写物なし)を検索した後、ミトコンドリアNA22細胞株のゲルスライス4でのみCO1野生型(log(e)=−14.6)(図23b)を同定したことにより確認された。
【0271】
ゲルスライス4でのみ観察されたND1ペプチドは、KGPNVVGPYGLLQPFADAMKである。ND1C末端ペプチドYDQLMHLLWKは存在しないので、野生型ND1は上記スライス中に存在しない。このことは、P0176の存在を支持する。
【0272】
融合転写物P0176の配列、それを由来とする突然変異型DNA、および結果として生じるタンパク質はそれぞれ、本明細書では、配列番号65、配列番号66、および配列番号67として提示されている。
【0273】
(対応する融合転写物)
LC−MS/MS実験で用いられた一連の2つの細胞株、具体的には、浸潤能が低い悪性細胞株である、RWPE−1およびWPE1−NA22について、これら4つの融合タンパク質それぞれに関連する融合転写物の定量的測定を実行した。これら測定結果を、上述した4つのタンパク質に対応させて、図24a〜24dに示す。図24a〜dでは、細胞株RWPE−1はNOとして明示され、細胞株WPE1−NA22はLIとして明示されている。この実験にて包含される付加的な細胞株は、中程度の浸潤能(MI)、高い浸潤能(HI)、および非常に高い浸潤能(VH)という連続的な悪性度の進行を表す。
【0274】
細胞を溶解し、本明細書にまたはPCT出願PCT/CA2009/000351号(公開番号WO2009/117811にて発行)にて先に記述したように、分枝DNAプラットホーム上で各融合転写物に特異的なカスタムプローブを用いてアッセイした。なお、このPCT出願の記載内容はすべて、参照により本明細書中で援用される。結果は、(RLU値が10〜10の範囲となり)高い発現レベルを明示している。悪性度の進行がLIからVHへ向かうに従い、上記転写物の量が連続的に増加した、あるいは連続的に減少した後に、正常な細胞から悪性細胞(NO−LI)への第1形質転換は、上記転写物の量が著しく変化することにより中断されるという点で、各融合転写物の定量ついて一般的な傾向が観察された。
【0275】
ある具体的実施形態を参照しながら本発明を記載してきたが、添付の特許請求の範囲に略記されたような本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、本発明の種々の修正が成され得ることは当業者に明らかである。本明細書中で言及される文書(論文、マニュアル、特許出願等)は全て、それらの記載内容が参照により本明細書中で援用される。
【0276】
〔参考文献一覧〕
特に以下の参考文献を、前記の説明中で引用した。これらの記載内容はすべて、参照により本明細書中で援用される。
【0277】
【表11】

【0278】
【表12】

【0279】
【表13】

【0280】
【表14】

【0281】
【表15】

【0282】
【表16】

【0283】
【表17】

【0284】
【表18】

【0285】
【表19】

【0286】
【表20】

【図面の簡単な説明】
【0287】
【図1】ミトコンドリアコード遺伝子を示す。
【図2】3.4kb欠失の損失により引き起こされる前立腺試料におけるポリアデニル化融合転写物を示す。
【図3】4977kb共通欠失の損失により引き起こされる前立腺試料におけるポリアデニル化融合転写物を示す。
【図4】mtゲノムからの3.4kbセグメントの損失により惹起される乳房試料におけるポリアデニル化融合転写物を示す。
【図5a】遺伝子のスプライシングの前後のミトコンドリアDNA領域の一例を示す。
【図5b】遺伝子のスプライシングの前後のミトコンドリアDNA領域の一例を示す。
【図6a】結腸直腸癌腫瘍の同定における本発明の転写物2、3、8、9、10、11および12に関する結果を示す。
【図6b】結腸直腸癌腫瘍の同定における本発明の転写物2、3、8、9、10、11および12に関する結果を示す。
【図6c】結腸直腸癌腫瘍の同定における本発明の転写物2、3、8、9、10、11および12に関する結果を示す。
【図6d】結腸直腸癌腫瘍の同定における本発明の転写物2、3、8、9、10、11および12に関する結果を示す。
【図6e】結腸直腸癌腫瘍の同定における本発明の転写物2、3、8、9、10、11および12に関する結果を示す。
【図6f】結腸直腸癌腫瘍の同定における本発明の転写物2、3、8、9、10、11および12に関する結果を示す。
【図6g】結腸直腸癌腫瘍の同定における本発明の転写物2、3、8、9、10、11および12に関する結果を示す。
【図7a】肺癌腫瘍の同定における本発明の転写物6、8、10および20に関する結果を示す。
【図7b】肺癌腫瘍の同定における本発明の転写物6、8、10および20に関する結果を示す。
【図7c】肺癌腫瘍の同定における本発明の転写物6、8、10および20に関する結果を示す。
【図7d】肺癌腫瘍の同定における本発明の転写物6、8、10および20に関する結果を示す。
【図8a】黒色腫の同定における本発明の転写物6、10、11、14、15、16および20に関する結果を示す。
【図8b】黒色腫の同定における本発明の転写物6、10、11、14、15、16および20に関する結果を示す。
【図8c】黒色腫の同定における本発明の転写物6、10、11、14、15、16および20に関する結果を示す。
【図8d】黒色腫の同定における本発明の転写物6、10、11、14、15、16および20に関する結果を示す。
【図8e】黒色腫の同定における本発明の転写物6、10、11、14、15、16および20に関する結果を示す。
【図8f】黒色腫の同定における本発明の転写物6、10、11、14、15、16および20に関する結果を示す。
【図8g】黒色腫の同定における本発明の転写物6、10、11、14、15、16および20に関する結果を示す。
【図9a】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9a1】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9b】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9b1】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9c】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9c1】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9d】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9d1】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9e】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9e1】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9f】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9f1】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9g】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9g1】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9h】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図9h1】卵巣癌の同定における本発明の転写物1、2、3、6、11、12、15および20に関する結果を示す。
【図10a】精巣癌の同定における本発明の転写物2に関する結果を示す。
【図10a1】精巣癌の同定における本発明の転写物2に関する結果を示す。
【図10b】精巣癌の同定における本発明の転写物2に関する結果を示す。
【図10b1】精巣癌の同定における本発明の転写物2に関する結果を示す。
【図11a】精巣癌の同定における本発明の転写物3に関する結果を示す。
【図11b】精巣癌の同定における本発明の転写物3に関する結果を示す。
【図12】精巣癌の同定における本発明の転写物4に関する結果を示す。
【図13a】精巣癌の同定における本発明の転写物11に関する結果を示す。
【図13b】精巣癌の同定における本発明の転写物11に関する結果を示す。
【図14a】精巣癌の同定における本発明の転写物12に関する結果を示す。
【図14b】精巣癌の同定における本発明の転写物12に関する結果を示す。
【図15a】精巣癌の同定における本発明の転写物13に関する結果を示す。
【図15a1】精巣癌の同定における本発明の転写物13に関する結果を示す。
【図15b】精巣癌の同定における本発明の転写物13に関する結果を示す。
【図15b1】精巣癌の同定における本発明の転写物13に関する結果を示す。
【図16】精巣癌の同定における本発明の転写物15に関する結果を示す。
【図17a】精巣癌の同定における本発明の転写物16に関する結果を示す。
【図17a1】精巣癌の同定における本発明の転写物16に関する結果を示す。
【図17b】精巣癌の同定における本発明の転写物16に関する結果を示す。
【図18a】精巣癌の同定における本発明の転写物20に関する結果を示す。
【図18b】精巣癌の同定における本発明の転写物20に関する結果を示す。
【図19】融合タンパク質出現中に行われた、RWPE1細胞株およびWPE1−NA22細胞株における、ミトコンドリア画分および細胞質画分のSDS PAGEゲルを示す。
【図20a】ペプチドILYMTDEVNDPSLTIKおよびSTPYECGFDPMSPに基づく、融合転写物P0026における同定されたタンパク質を示す。
【図20b】ヒト(SwissProt)データベースを検索した後、図19におけるミトコンドリアNA22細胞株のゲルスライス5で同定された野生型CO2タンパク質を示す。
【図21a】ペプチドKGPNVVGPYGLLQPFADAMK、YDQLMHLLWKおよびLITTQQWLIKに基づき融合転写物P0062について同定されたタンパク質を示す。
【図21b】ヒト(SwissProt)データベースを検索した後、図19におけるミトコンドリアNA22細胞株のゲルスライス5で同定されたND1のペプチドを示す。
【図22】ペプチドKGPNVVGPYGLLQPFADAMKおよびWAIIEEFTKに基づき融合転写物P0064について同定されたタンパク質を示す。
【図23a】ペプチドKGPNVVGPYGLLQPFADAMK、VFSWLATLHGSNMKおよびVLMVEEPSMNLEWLYGCPPPYHTFEEPVYMKに基づき融合転写物P0176について同定されたタンパク質を示す。
【図23b】ヒト(SwissProt)データベースを検索した後、図19におけるミトコンドリアNA22細胞株のゲルスライス4で同定された野生型CO1タンパク質を示す。
【図24a】融合転写物P0026の定量的測定の結果を示す。
【図24b】融合転写物P0062の定量的測定の結果を示す。
【図24c】融合転写物P0064の定量的測定の結果を示す。
【図24d】融合転写物P0176の定量的測定の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミトコンドリアDNAの突然変異に対応するミトコンドリア融合転写物の翻訳の結果生じたアミノ酸配列を有する、単離ミトコンドリア融合タンパク質。
【請求項2】
上記融合タンパク質は、配列番号36〜52、55、58、61、64または67のうちいずれか1つに示されたアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のミトコンドリア融合タンパク質。
【請求項3】
哺乳類における癌の検出方法であって、
少なくとも1つのミトコンドリア融合タンパク質の存在に関して哺乳類からの組織試料をアッセイする工程を包含し、上記タンパク質は、ミトコンドリアDNAの突然変異に対応するミトコンドリア融合転写物の翻訳の結果生じたアミノ酸配列を有する、方法。
【請求項4】
上記癌は、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌および黒色腫皮膚癌からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記融合タンパク質は、配列番号36〜52、55、58、61、64または67のうちいずれか1つに示されたアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載のタンパク質に対して特異性を有する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
ポリクローナルまたはモノクローナルである、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
上記アッセイは、免疫学的アッセイを包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
上記アッセイは、請求項7に記載の抗体または抗原結合断片とともに行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
哺乳類における癌の存在を検出するアッセイを行うためのキットであって、請求項6に記載の抗体または抗原結合断片を包含する、キット。
【請求項11】
配列番号56、59、62または65に示された核酸配列を有する、単離ミトコンドリア融合転写物。
【請求項12】
請求項11に記載の融合転写物をコードする単離mtDNA。
【請求項13】
配列番号57、60、63または66のいずれか1つに示された配列を有する、請求項12に記載の単離mtDNA。
【請求項14】
請求項9に記載のミトコンドリア融合転写物または請求項12もしくは13に記載のmtDNAの少なくとも一部と相補する核酸配列を有する、ハイブリダイゼーションプローブ。
【請求項15】
哺乳類における癌の検出方法であって、請求項11に記載の単離ミトコンドリア融合転写物の少なくとも一部と相補する核酸配列を有する少なくとも1つのハイブリダイゼーションプローブで哺乳類からの組織試料をハイブリダイズすることにより、癌に関連した少なくとも1つの単離ミトコンドリア融合転写物の存在に関して前記試料をアッセイする工程を包含する方法。
【請求項16】
上記癌は、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌および黒色腫皮膚癌からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
哺乳類における癌の存在を検出するアッセイを行うためのキットであって、請求項11に記載の単離ミトコンドリア融合転写物の少なくとも一部と相補する核酸配列を有する少なくとも1つのハイブリダイゼーションプローブを包含する、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図6g】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図8f】
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【図8g】
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【図9a】
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【図9a1】
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【図9b】
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【図9b1】
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【図9c】
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【図9c1】
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【図9d】
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【図9d1】
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【図9e】
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【図9e1】
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【図9f】
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【図9f1】
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【図9g】
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【図9g1】
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【図9h】
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【図9h1】
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【図10a】
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【図10a1】
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【図10b】
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【図10b1】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15a】
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【図15a1】
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【図15b】
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【図15b1】
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【図16】
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【図17a】
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【図17a1】
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【図17b】
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【図18a】
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【図18b】
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【図20a】
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【図20b】
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【図21a】
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【図21b】
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【図22】
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【図23a】
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【図23b】
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【図24a】
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【図24b】
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【図24c】
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【図24d】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−521745(P2012−521745A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501093(P2012−501093)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000423
【国際公開番号】WO2010/115261
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(510100508)ミトミクス インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】GENESIS GENOMICS INC.
【住所又は居所原語表記】Suite 1000,290 Munro Street,Thunder Bay,Ontario P7A 7T1
【Fターム(参考)】