説明

異常検出装置およびこれを備えた窓

【課題】容易に設置することが可能であり、防犯性能を向上可能な異常検出装置およびこれを備えた窓の提供。
【解決手段】粘着層を有し該粘着層にてガラス板21に貼着可能なシート状太陽電池30と、ガラス板21の異常を検出する検出装置本体31とを有し、検出装置本体31は、シート状太陽電池30が発電した電力で作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出装置およびこれを備えた窓に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス窓のガラス板が破られた場合に、これを検出して警報動作する異常検出装置がある。この種の異常検出装置として、例えば、ガラス板の表面に導電性薄膜によって所定の形状の導電性パターンを形成するとともに、この導電性パターンの切断部位に検出器を接続しておき、導電性パターンの断線を検知すると、検出器が無線で中継器に異常検出信号を送信し、この中継器からさらに集中監視ユニットに異常検出信号を送信するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−35009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の異常検出装置では、ガラス板に導電性パターンを形成しなければならないため、煩雑な設置作業が必要になってしまう。また、異常を検出することはできるが、ガラス板の破損自体は容易なため、防犯性能が十分とは言えない。
【0005】
したがって、本発明は、容易に設置することが可能であり、防犯性能を向上可能な異常検出装置およびこれを備えた窓の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、粘着層を有し該粘着層にてガラス板に貼着可能なシート状太陽電池と、前記ガラス板の異常を検出する異常検出手段とを有し、該異常検出手段は、前記シート状太陽電池が発電した電力で作動することを特徴としている。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記異常検出手段は、前記シート状太陽電池に一体に設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記シート状太陽電池は、光の透過率が50%〜99%の範囲であることを特徴としている。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明において、前記シート状太陽電池には、該シート状太陽電池が発電した電力を蓄電する蓄電池が一体に設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に係る発明において、前記シート状太陽電池には、該シート状太陽電池が発電した電力で作動して前記異常検出手段の異常検出時に異常を外部に伝達する伝達手段が一体に設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に係る発明において、前記シート状太陽電池は、前記ガラス板への貼着状態での厚さが5mm以下であることを特徴としている。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に係る発明において、前記異常検出手段は、前記シート状太陽電池の角部に設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の異常検出装置をガラス板に備えている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、シート状太陽電池が粘着層にてガラス板に貼着されることになり、異常検出手段はこのシート状太陽電池が発電した電力で作動するものとなっているため、容易に設置することが可能となる。また、シート状太陽電池自体がガラス板の破損を防止する防犯フィルムとして機能可能であるため、防犯性能が高くなる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、シート状太陽電池が粘着層にてガラス板に貼着されると、シート状太陽電池と一体に設けられた異常検出手段も一緒にガラス板に設置されることになるため、設置がさらに容易となる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、シート状太陽電池の光の透過率が50%〜99%の範囲であるため、ガラス板の光の透過率の低下を抑制しつつ適正な発電効率を得ることができる。よって、美観を損なうことがなく、また屋外からの採光を妨げることもない。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、シート状太陽電池に、これが発電した電力を蓄電する蓄電池が設けられているため、異常検出手段をシート状太陽電池が発電した電力のみで作動する構成にできる。よって、乾電池を用いる場合に必要な電池交換を不要とすることが可能となる。また、シート状太陽電池が粘着層にてガラス板に貼着されると、シート状太陽電池と一体に設けられた蓄電池も一緒にガラス板に設置されることになるため、設置がさらに容易となる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、シート状太陽電池が粘着層にてガラス板に貼着されると、シート状太陽電池と一体に設けられた異常を外部に伝達する伝達手段も一緒にガラス板に設置されることになるため、設置がさらに容易となる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、シート状太陽電池は、ガラス板への貼着状態での厚さが5mm以下であるため、互いに重なるようにスライドして開くガラス窓のガラス板に貼着してもその開閉に干渉することがない。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、異常検出手段がシート状太陽電池の角部に設けられているため、外観的な違和感を低減できる。
【0021】
請求項8に係る発明によれば、異常検出装置は、シート状太陽電池が粘着層にてガラス板に貼着されることになり、異常検出手段がこのシート状太陽電池が発電した電力で作動するものとなっているため、容易に設置することが可能となる。また、異常検出装置のシート状太陽電池自体がガラス板の破損を防止する防犯フィルムとして機能可能であるため、防犯性能が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る異常検出装置およびこれを備えた窓を示す室内側から見た正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る異常検出装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る異常検出装置およびこれを備えた窓を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る異常検出装置およびこれを備えた窓を図面を参照して以下に説明する。図1に示すように、異常検出装置11は、一体的にモジュール化されており、建造物の窓12に設置されるようになっている。
【0024】
建造物には、側壁13に横長矩形の開口14が形成されており、この開口14に窓12が設けられている。窓12は、側壁13の開口14の内側に固定されるサッシからなる固定枠16と、固定枠16の内側の開口17との間に開閉可能な一対のガラス窓18,19とを有することで構成されている。
【0025】
一対のガラス窓18,19は、室内側と室外側とにずれて固定枠16に取り付けられており、互いに重なるようにスライドして開く。一対のガラス窓18,19は、それぞれ、固定枠16内に左右方向にスライド可能に嵌め込まれた矩形状の可動枠20と、可動枠20内に固定されたガラス板21とを有している。
【0026】
一対のガラス窓18,19には、これらが固定枠16内の開口17を閉塞した窓閉状態にあるときに係合可能となるロック機構25が設けられている。なお、この窓閉状態にあるとき、室内側のガラス窓18は、室内側から見て右側に配置されることになり、室外側のガラス窓19は、室内側から見て左側に配置されることになる。ガラス窓18,19のそれぞれのガラス板21には、図示は略すが、補強および侵入防止のための針金が格子状に埋設されている。
【0027】
ロック機構25は、室内側のガラス窓18の可動枠20の左右方向における左側に回転可能に設けられたレバー26と、室外側のガラス窓19の可動枠20の左右方向における右側に固定されたフック部27とを有している。レバー26は、ガラス窓18の可動枠20の上下方向中間位置に設けられており、フック部27もガラス窓19の可動枠20の上下方向中間位置に設けられている。
【0028】
ロック機構25は、上記した窓閉状態でレバー26が一方向に回転させられることでフック部27に係合させられると、一対のガラス窓18,19の固定枠16に対する摺動を規制することになり、窓閉状態を維持する。他方、ロック機構25は、レバー26が逆方向に回転させられることでフック部27に対する係合が解除されると、一対のガラス窓18,19の固定枠16に対する個別の摺動を許容することになる。
【0029】
異常検出装置11は、矩形のシート状太陽電池30と、シート状太陽電池30に一体に設けられた検出装置本体31とを有している。検出装置本体31は、図2に示すように、振動を検出する振動センサ(異常検出手段)32と、振動センサ32が検出した振動でガラス板21の異常の有無を検出する制御部(異常検出手段)33と、異常検出時に警報を発生することで異常を外部に伝達する警報ブザー(伝達手段)34と、異常検出時に異常検出信号を無線で出力することで異常を外部に伝達する無線発信部(伝達手段)35と、シート状太陽電池30が発電した電力を蓄電する蓄電池36とを有している。
【0030】
制御部33は、シート状太陽電池30および蓄電池36から、振動センサ32、警報ブザー34および無線発信部35への給電と、シート状太陽電池30から蓄電池36への充電とを制御するものである。ここで、制御部33は、振動センサ32を常時監視しており、振動センサ32が検出した振動が所定レベル以下であると異常が発生していないと判定し、振動センサ32が検出した振動が所定レベルを超えると異常が発生したと判定する。
【0031】
蓄電池36は、シート状太陽電池30が発電した電力のみを蓄電することになり、検出装置本体31は、全体として、この蓄電池36に充電された電力を含んで、シート状太陽電池30が発電した電力のみで作動する。つまり、検出装置本体31を構成する、振動センサ32、制御部33、警報ブザー34および無線発信部35は、シート状太陽電池30が発電した電力のみで作動する。その結果、この異常検出装置11は、その全体が、商用電源等の外部電源の供給を受けない自己完結型となっている。
【0032】
なお、異常検出装置11の無線発信部35から無線で出力された信号は、別途設けられる図示略の無線受信機および電話回線等を介して警備会社に送信されることになる。
【0033】
薄型のシート状太陽電池30は、全体的に透明または半透明であり、図3に示すように、シート状太陽電池本体38と、シート状太陽電池本体38の一面に形成された粘着層39とを有していて、粘着層39にてガラス板21に貼着されるようになっている。粘着層39としては、基材の両面に粘着層が形成されていて一方の粘着層でシート状太陽電池本体38に貼着され他方の粘着層でガラス板21に貼着される両面テープタイプのものや、シート状太陽電池本体38に直接塗布されることで形成されるもの等が用いられる。なお、粘着層39に基材を備える場合、基材にはPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム等を用いるのが好ましい。
【0034】
室内側のガラス窓18においては、シート状太陽電池30が、ガラス板21のレバー26の近傍位置に貼着されることになる。具体的には、ガラス窓18のガラス板21においてレバー26の近傍である左側の上下方向の中間範囲に貼着されることになる。しかも、その際に、検出装置本体31が、シート状太陽電池30の右側上部の角部に配置される。
【0035】
他方、室外側のガラス窓19においては、シート状太陽電池30が、ガラス板21のフック部27の近傍位置に貼着されることになる。具体的には、ガラス窓19のガラス板21においてフック部27の近傍である右側の上下方向の中間範囲に貼着されることになる。しかも、その際に、検出装置本体31が、シート状太陽電池30の左側上部の角部に配置される。よって、一対のガラス窓18,19のそれぞれの検出装置本体31は、窓閉状態で両側のシート状太陽電池30の相反側の上部の角部に配置されることになる。
【0036】
ここで、シート状太陽電池30は、光の透過率が50%〜99%の範囲となっており、ガラス板21への貼着状態での厚さが5mm以下となっている。なお、シート状太陽電池30の光の透過率は、55%〜95%の範囲が好ましく、上限については、80%とするのがより好ましく、70%とするのがさらに好ましい。また、シート状太陽電池本体38には、室内光等の低照度域でも発電する機能がある色素増感太陽電池(DSC)が用いられている。勿論、設置条件等が整えば、有機薄膜太陽電池やシリコン系太陽電池等、すべての太陽電池を使用可能である。シート状太陽電池本体38は、その基材に、防犯フィルムとして機能するのに十分な強度の材料が用いられており、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等が用いられている。
【0037】
このような異常検出装置11は、言い換えれば、センシング機能および防犯フィルム機能をシート状太陽電池30に付けたものとなっている。
【0038】
このような異常検出装置11が、一対のガラス窓18,19のそれぞれのガラス板21に上記のように貼着されることになる。すると、侵入者によってガラス窓18,19のいずれかに外力が加えられると、ガラス板21に所定レベルを超える振動が生じることになり、その結果、この振動をいずれかの異常検出装置11の振動センサ32が検出することになる。すると、この異常検出装置11において、制御部33が、異常が発生したと判定して、警報ブザー34で警報を鳴らすとともに、無線発信部35で異常検出信号を出力させる。すると、図示略の無線受信部がこの異常検出信号を受信して警備会社に送信することになる。このようにして、その場で発生する警報音と警備会社への通報とで防犯を図ることになる。
【0039】
本実施形態に係る異常検出装置11およびこれが用いられた窓12によれば、シート状太陽電池30が粘着層39にてガラス板21に貼着されることになり、振動センサ32、制御部33、警報ブザー34および無線発信部35からなる検出装置本体31は、このシート状太陽電池30が発電した電力で作動するものとなっているため、異常検出装置11を容易に設置することが可能となる。また、シート状太陽電池30自体がガラス板21の破損を防止する防犯フィルムとして機能するため、防犯性能が高くなる。
【0040】
また、シート状太陽電池30が粘着層39にてガラス板21に貼着されると、シート状太陽電池30と一体に設けられた振動センサ32および制御部33も一緒にガラス板21に設置されることになるため、設置がさらに容易となる。
【0041】
また、シート状太陽電池30の光の透過率が50%〜99%の範囲であるため、ガラス板21の光の透過率の低下を抑制しつつ適正な発電効率を得ることができる。よって、美観を損なうことがなく、また屋外からの採光を妨げることもない。なお、上述したように、シート状太陽電池30の光の透過率は、55%〜95%の範囲が好ましく、上限については、80%とするのがより好ましく、70%とするのがさらに好ましい。
【0042】
また、シート状太陽電池30に発電した電力を蓄電する蓄電池36が設けられているため、振動センサ32、制御部33、警報ブザー34および無線発信部35をシート状太陽電池30が発電した電力のみで作動する構成にできる。よって、乾電池を用いる場合に必要な電池交換を不要とすることが可能となる。また、シート状太陽電池30が粘着層39にてガラス板21に貼着されると、シート状太陽電池30と一体に設けられた蓄電池36も一緒にガラス板21に設置されることになるため、設置がさらに容易となる。
【0043】
また、シート状太陽電池30が粘着層39にてガラス板21に貼着されると、シート状太陽電池30と一体に設けられた異常を外部に伝達する警報ブザー34および無線発信部35も一緒にガラス板21に設置されることになるため、設置がさらに容易となる。
【0044】
また、シート状太陽電池30は、ガラス板21への貼着状態での厚さが5mm以下であるため、相互に重なるようにスライドして開閉するガラス窓18,19のガラス板21に貼着してもその開閉に干渉することがない。
【0045】
また、振動センサ32、制御部33、警報ブザー34および無線発信部35からなる検出装置本体31がシート状太陽電池30の角部に設けられているため、外観的な違和感を低減できる。
【符号の説明】
【0046】
11 異常検出装置
12 窓
21 ガラス板
30 シート状太陽電池
32 振動センサ(異常検出手段)
33 制御部(異常検出手段)
34 警報ブザー(伝達手段)
35 無線発信部(伝達手段)
36 蓄電池
39 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層を有し該粘着層にてガラス板に貼着可能なシート状太陽電池と、
前記ガラス板の異常を検出する異常検出手段とを有し、
該異常検出手段は、前記シート状太陽電池が発電した電力で作動することを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記異常検出手段は、前記シート状太陽電池に一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記シート状太陽電池は、光の透過率が50%〜99%の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記シート状太陽電池には、該シート状太陽電池が発電した電力を蓄電する蓄電池が一体に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記シート状太陽電池には、該シート状太陽電池が発電した電力で作動して前記異常検出手段の異常検出時に異常を外部に伝達する伝達手段が一体に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記シート状太陽電池は、前記ガラス板への貼着状態での厚さが5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記異常検出手段は、前記シート状太陽電池の角部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の異常検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の異常検出装置をガラス板に備えた窓。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−159876(P2012−159876A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17099(P2011−17099)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】