説明

異常検知装置

【課題】強盗犯等によって複数の人物が制圧されて通報操作ができない状態であっても、そのような異常事態を自動的に検出し、通報を行うことを可能とする。
【解決手段】監視画像から人物を人物領域として抽出する人物領域抽出手段220と、順次取得される監視画像にて同一人物毎に過去の人物領域と現在の人物領域とを対応付けて追跡する人物追跡手段221と、現在の人物領域が対応付けできないとき新規人物の出現と判定する人物出現判定手段222と、対応付けられた人物毎に運動状態の所定の変化があったか否かを判定する運動変化判定手段223と、新規人物の出現から所定時間内に、運動状態に所定の変化のあった人数が基準以上であるとき異常と判定する異常判定手段225と、を備える異常検知装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像された監視画像を画像解析することにより監視空間内で発生した異常を検知する異常検知装置に関する。特に、複数の人物が関与した異常事態を検知する異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
強盗犯が店舗等に押し入り、金庫やキャッシュレジスタに保管されている金品の強奪を試みる際、店舗の従業員等による外部への通報や抵抗をおそれ、従業員に対して攻撃を与えたり、命令をして動作を強制したりすることで、従業員を制圧しようとすることがある。このような強盗犯による制圧行動は、特に複数の人物が存在する場合においてとられることが多い。
【0003】
強盗犯によって複数の人物が制圧された場合、通報が遅れることによる事件発生の発覚遅れや、怪我をした被害者の救護遅れなどが危惧される。このため、被害者が上記のような通報操作できない状態にあることを自動的に検知し、通報を行う異常検知装置の提案が望まれている。
【0004】
特許文献1には、押し込み強盗を検出する手段として、被害者の動作が異常なもの(両手を上げる等)であるかを判定する監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3502853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単独人物の動作から異常の有無を判断する手法では、異常動作(強制されて静止する)と通常動作(自分の意志で立ち止まる)とを識別することが困難である。すなわち、「複数の人物が動作を強制された」状況を検出することができず、このような状況を非常事態として検出することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、強盗犯等が複数の従業員に遭遇したタイミングで従業員を制圧しようとすることに着目し、監視領域内に新たな人物が出現したときの特有の画像変化を捉えることで強盗犯によって、動作を強制され、複数の従業員が制圧されたことを自動的に異常として検知する異常検知装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、監視空間を撮像した監視画像から前記監視空間内で発生した異常を検知する異常検知装置であって、前記監視画像を順次取得する画像取得手段と、前記監視画像から人物を人物領域として抽出する人物領域抽出手段と、前記順次取得される監視画像にて同一人物毎に過去の人物領域と現在の人物領域とを対応付けて追跡する人物追跡手段と、前記現在の人物領域が対応付けできないとき新規人物の出現と判定する人物出現判定手段と、前記対応付けられた人物毎に運動状態の所定の変化があったか否かを判定する運動変化判定手段と、前記新規人物の出現から所定時間内に、前記運動状態に所定の変化のあった人数が基準以上であるとき異常と判定する異常判定手段と、を備えることを特徴とする異常検知装置である。
【0009】
ここで、前記異常判定手段は、前記運動状態が移動状態から静止状態へ変化したことを前記所定の変化とすることが好適である。
【0010】
また、前記異常判定手段は、前記運動状態が移動状態から予め設定した所定の領域内の静止状態へ変化したことを前記所定の変化とすることが好適である。
【0011】
また、前記異常判定手段は、前記運動状態として移動速度が変化したことを前記所定の変化とすることが好適である。
【0012】
また、前記基準は、前記対応付けられた人数に占める前記運動状態に所定の変化があった人数の割合であることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、強盗犯等によって複数の人物が制圧されて通報操作ができない状態であっても、そのような異常事態を自動的に検出し、通報を行うことが可能になる。さらに、強盗犯等によって動作を強制がされたときに非常通報できるので、強盗事件の発生を早期に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における通報システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における異常検知装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態における異常検知装置での処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<基本構成>
本発明の実施の形態における通報システム1は、図1の模式図に示すように、異常検知装置2、コントローラ3及びセンタ装置5を含んで構成される。
【0016】
異常検知装置2は、店舗などの部屋を監視空間とし、当該部屋の天井に設置される。異常検知装置2は、監視空間にて発生した異常シーンを検知すると異常信号を出力する。異常検知装置2は、通信線を介してコントローラ3に接続される。コントローラ3は、電話回線又はインターネット回線等の通信網4を介して、警備センタ等の遠隔地に設置されたセンタ装置5と接続される。異常検知装置2が出力した異常信号は、コントローラ3を介してセンタ装置5に送信される。
【0017】
図2は、異常検知装置2の構成を示した機能ブロック図である。異常検知装置2は、図
2に示すように、撮像部20、記憶部21、制御部22及び出力部23を含んで構成される。制御部22は、撮像部20、記憶部21及び出力部23に接続され、これらの構成要素を統合的に制御する。異常検知装置2は、異常検知処理プログラムによって制御される撮像手段を備えたコンピュータにより実現することができる。
【0018】
撮像部20は、監視カメラを含んで構成される。撮像部20は、監視空間を臨むように設置され、監視空間を所定の時間間隔で撮影する。撮影された監視空間の監視画像は順次、制御部22へ出力される。監視画像が撮像される時間間隔は例えば1/5秒である。以下、この撮像の時間間隔で刻まれる時間の単位を時刻と称する。
【0019】
本実施形態においては、監視空間である部屋の全体を撮像するために、撮像部20は、魚眼レンズを備え、その光軸を鉛直下方に向けて設置される。ただし、これに限定されるものではなく、人物が撮像された監視画像から人物領域を抽出し、その運動状態が判断できるものであればよい。
【0020】
記憶部21は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の電子情報の記憶装置である。記憶部21は、各種プログラムや各種データを記憶し、制御部22からアクセス可能である。各種データには、背景差分処理に必要な背景画像210が含まれる。
【0021】
制御部22は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MCU(Micro Control Unit)等の演算装置を含んで構成される。制御部22は、記憶部21から異常検知処理プログラムを読み出して実行することで人物領域抽出手段220、人物追跡手段221、人物出現判定手段222、運動変化判定手段223、変化人数判定手段224及び異常判定手段225として機能する。これらの各手段については、後述する。
【0022】
出力部23は、異常信号を異常検知装置2の外部へ出力する通信手段である。出力部23は、制御部22の異常判定手段225から異常信号が入力されると、通信網4を介して当該異常信号をコントローラ3へ送信する。
【0023】
<異常検知処理>
以下、図3のフローチャートを参照しつつ、異常検知装置2における異常検知処理について説明する。
【0024】
ステップS1では、異常検知装置2の初期化が行われる。異常検知装置2の電源が投入されると初期化が行われる。初期化には、起動直後の監視画像を記憶部21に背景画像210として記憶させる処理を含む。また、運動変化のあった人数を計数するための運動変化人数カウンタ、新規人物出現以降の時間を計測する新規人物出現経過時間カウンタをリセットする。
【0025】
ステップS2では、監視画像が取得される。撮像部20は、所定周期で監視空間を撮像し、撮像された監視画像のデータを制御部22へ出力する。制御部22は、撮像部20から監視画像を取得し、撮像時刻に関連付けて記憶部21に記憶させる。
【0026】
ステップS3では、人物が撮像された監視画像から人物領域を抽出する処理が行われる。ここでの処理は、人物領域抽出手段220に相当する。
【0027】
制御部22は、撮像部20から取得した監視画像と、記憶部21に記憶されている背景画像210と、において互いに対応する画素の特徴量の差分値を演算した差分画像を算出する。そして、背景画像210との差分値が閾値以上である画素を変化画素として抽出する。特徴量として、輝度、色、エッジ強度・方向等を用いることができる。閾値は、事前に決められた規定値を用いてもよいし、動的に変更してもよい。
【0028】
背景画像210は、ステップS1における初期化時に得られた画像をそのまま用いてもよいし、ステップS2において入力される監視画像によって適宜更新を行ってもよい。また、差分演算後に正規化相関等による光・影領域の除去、膨張収縮処理によるゴマ塩状ノイズの除去を施すことも好適である。
【0029】
さらに、制御部22は、変化画素の抽出後、ラベリング処理を行う。ラベリング処理は、差分画像内において空間的に連続する変化画素の群(グループ)に同一の番号を振る処理である。この処理により、変化画素の群(グループ)ごとに個別の番号が割り当てられる。ラベリング後、例えば面積が閾値以下の変化画素の群(グループ)は処理対象から除外する等のノイズ除去処理を行う。閾値は、カメラ設置条件から計算される標準人物サイズなどから決定される。処理対象として残された変化画素の群(グループ)は、人物領域とされる。
【0030】
ステップS4では、順次取得される監視画像にて同一人物と推定される人物領域を対応付ける人物追跡処理が行われる。ここでの処理は、人物追跡手段221に相当する。
【0031】
制御部22は、前時刻までに人物領域抽出手段220により抽出され、記憶部21に記憶されている各人物領域に関する追跡特徴と、現時刻にて人物領域抽出手段220により抽出された各人物領域と関連付ける。具体的には、制御部22は、監視領域への人物領域の出現が確認される度に、その人物領域の画像特徴を追跡特徴として抽出し、記憶部21に記憶する。そして、記憶部21に記憶されている前時刻で抽出された人物領域の追跡特徴と、現時刻で抽出された人物領域の追跡特徴を比較し、追跡特徴同士の類似性が所定の条件より高く、最も類似していると判断される人物領域同士を関連付ける。関連付けがなされた人物領域は除外し、関連付けの処理を繰り返すことによって、現時刻にて抽出された人物領域の総てについて前時刻までに抽出された人物領域と関連付けが行われる。
【0032】
追跡特徴は、色やエッジのヒストグラム、人物領域の重心位置、外接矩形(大きさ、アスペクト比等)等とすることができる。例えば、追跡特徴を色ヒストグラムとした場合、現時刻にて抽出された人物領域を構成する画素の色が調べられ、色ビン毎の画素数である色ヒストグラムが求められる。そして、前時刻までに抽出された人物領域の色ヒストグラムとの類似性が調査され、所定の類似性の条件を満たす人物領域のうち最も類似性が高い人物領域が現時刻の人物領域に関連付けられる。所定の類似性の条件は、例えば、各色ビンの画素数の数が±10%の差以内である等と設定することができる。他の追跡特徴についても同様に処理を行うことができる。
【0033】
また、前時刻までに抽出された人物領域のうちで、現時刻で抽出された人物領域に関連付けられなかったものがある場合には、その人物領域は監視空間外に移動した人物のものであると判断し、記憶部21から消去する。または、関連付けられなかった時刻から一定期間は記憶部21に人物領域として保持しておき、その間は上記の関連づけ処理を試みるものとしてもよい。
【0034】
ステップS5では、新たに監視空間に現われた人物に相当する人物領域を新規人物として抽出する処理が行われる。ここでの処理は、人物出現判定手段222に相当する。
【0035】
制御部22は、ステップS4にて、既存のいずれの人物領域とも対応付かない新たな人物領域が存在した場合、それを新規人物として判定する。
【0036】
ステップS6では、制御部22は、ステップS5において新規人物であると判定された場合には、当該新規人物について新規人物出現経過カウンタをセットする。そして、新規人物出現経過カウンタがセットされている人物領域があればステップS7に処理を移行させ、そうでない場合にはステップS18に処理を移行させる。なお、ステップS7〜S21の処理は、新規人物出現経過カウンタがセットされている人物領域のすべてに対してそれぞれ実行されるが、ここでは説明を簡単にするため、1つの人物領域についてのみ記載している。
【0037】
ステップS7〜S9では、監視空間に新規人物が出現する前、ステップS4において現時刻より前から監視空間に存在していた人物領域について人の運動状態が動状態であったことが確認される。ここでの処理は、運動変化判定手段223の一部に相当する。また、人の運動状態とは、監視空間内における人の動きの状態全般を意味し、例えば、人が動状態であること、静止状態であること、人の移動の速度等を意味する。
【0038】
ステップS7では、監視画像内において抽出された人物領域を順次選択する。ステップS8では、選択された人物領域が新規人物が出現する以前から存在するか否かが判定される。制御部22は、ステップS4での人物追跡処理において、選択された人物領域が新規人物が出現する以前から存在していればステップS9へ処理を移行させ、そうでなければステップS16へ処理を移行させる。
【0039】
ステップS9では、選択された人物領域が新規人物が出現する以前は動状態であったか否かが判定される。制御部22は、選択された人物領域が存在する監視画像についてフレーム間の差分領域を抽出し、選択された人物領域の面積に占めるフレーム間差分領域の面積が所定の割合より多い場合に動状態であったと判定する。例えば、選択された人物領域の面積の5%以上のフレーム間差分領域を人物領域内に含む場合に、その選択された人物領域は動状態であると判定する。また、制御部22は、新規人物が出現する以前の監視画像から選択された人物領域と対応付けられる人物領域の重心位置を算出し、重心位置の移動距離が所定の基準値より大きい場合に動状態であったと判定する。例えば、過去の監視画像のフレーム間において、選択された人物領域の重心位置の移動距離が3画素以上であった場合に、その選択された人物領域は動状態であったと判定される。また、制御部22は、新規人物に対応する人物領域が出現する以前の過去の監視画像において選択された人物領域と対応付けられる人物領域の外接矩形を求め、外接矩形の大きさの変化が所定の基準値より大きい場合に動状態であったと判定する。例えば、過去の監視画像のフレーム間において、選択された人物領域の外接矩形の大きさの変化率が5%以上であった場合に、その選択された人物領域は動状態であったと判定される。
【0040】
制御部22は、これらの動状態の判定処理のいずれかの条件を満たす場合にステップS10へ処理を移行させ、そうでない場合にはステップS16へ処理を移行させる。
【0041】
ステップS10では、動状態であった人物の運動状態が新規人物の出現以降に静止状態となったかを調査する。ここでの処理は、運動変化判定手段223の一部に相当する。
【0042】
制御部22は、ステップS9と同様に選択された人物領域が存在する監視画像についてフレーム間の差分領域を抽出し、選択された人物領域の面積に占めるフレーム間差分領域の面積が所定の割合より小さい場合に静止状態となったと判定する。例えば、選択された人物領域の面積の5%未満しか人物領域内にフレーム間差分領域を含まない場合に、その選択された人物領域は静止状態となったと判定される。また、制御部22は、新規人物に対応する人物領域が出現した以降から現時刻までの監視画像において選択された人物領域の重心位置を算出し、重心位置の移動距離が所定の基準値より小さい場合に静止状態となったと判定する。例えば、監視画像のフレーム間において、選択された人物領域の重心位置の移動距離が3画素未満であった場合に、その選択された人物領域は静止状態となったと判定される。また、制御部22は、新規人物に対応する人物領域が出現した以降から現時刻までの監視画像において選択された人物領域の外接矩形を算出し、外接矩形の大きさの変化が所定の基準値より小さい場合に静止状態となったと判定する。例えば、監視画像のフレーム間において、選択された人物領域の外接矩形の大きさの変化率が5%未満であった場合に、その選択された人物領域は静止状態となったと判定される。
【0043】
なお、強盗等が新規人物として監視空間に侵入した時に他の人が瞬間的に動く可能性があるので、新規人物が監視空間に出現した直後の数フレームの監視画像を静止判定に用いないようにしてもよい。
【0044】
ステップS11〜S15では、静止人物の人数をカウントする処理が行われる。ここでの処理は、変化人数判定手段224の一部に相当する。ステップS10において、選択された人物領域が動状態から静止状態へと変化したか否かが判定され、ステップS11では、制御部22は、ステップS7において選択した人物領域が過去において動状態であり、新規人物が監視空間に出現した以降に静止状態へ変化したと判定されている場合にはステップS14へ処理を移行させ、そうでない場合にはステップS12へ処理を移行させる。ステップS12では、静止した人物領域として既に運動変化人数カウンタにカウントされているか否かが確認される。制御部22は、カウントされていない人物領域であればステップS16へ処理を移行させ、既にカウントされている人物領域であれば静止状態から外れたとして、ステップS13において運動変化人数カウンタを1減ずる処理を行う。一方、ステップS14では、静止した人物領域として既に運動変化人数カウンタにカウントされているか否かが確認される。制御部22は、既にカウントされている人物領域であればステップS16へ処理を移行させ、カウントされていない人物領域であれば新たに静止状態となったとして、ステップS15において運動変化人数カウンタを1増やす処理を行う。
【0045】
ステップS16では、追跡している人物領域の総てについて静止状態への移行の調査が行われたか否かが判定される。制御部22は、総ての人物領域について調査が終了していればステップS17へ処理を移行させ、そうでなければステップS7へ処理を戻し、新たな人物領域を選択してステップS8からの処理を繰り返す。
【0046】
ステップS17〜S21では、人物の運動状態の変化(ここでは動状態から静止状態への変化)が新規人物に起因するか否かの判定及び異常判定の処理が行われる。ここでの処理は、変化人数判定手段224の一部及び異常判定手段225に相当する。
【0047】
ステップS17では、新規人物出現経過カウンタが所定の閾値(所定時間)未満か否かが判定される。制御部22は、新規人物出現経過カウンタが所定の閾値(所定時間)未満であればステップS20に処理を移行させ、そうでなければステップS18に処理を移行させる。所定の閾値(所定時間)は、運動状態の変化が新規人物に起因したものであると判定できる時間に相当する値に設定される。所定の閾値(所定時間)は、固定値としてもよいし、適応的に変動させてもよい。所定の閾値は、例えば、30秒に相当すればよい。
【0048】
ステップS18では、運動変化人数カウンタをリセットする。すなわち、制御部22は、監視空間に新規人物が出現してから所定の閾値(所定時間)をカウントするまでに動状態から静止状態へ運動状態を変化させた人物に相当する人物領域の数が所定の閾値(基準人物数)以上にならなかったとして運動変化人数カウンタをリセットする。すなわち、新規人物が現われてから所定時間内に動きを止めた人物が基準値より少なく、異常な状態ではないと判定する。ステップS19では、新規人物出現経過カウンタを0にする。制御部22は、その後、ステップS2に処理を戻す。
【0049】
ステップS20では、運動変化人数カウンタが所定の閾値(基準人物数)以上であるか否かを判定する。運動変化人数カウンタが所定の閾値(基準人物数)以上であればステップS22へ処理を移行させ、そうでなければステップS21へ処理を移行させる。ここで、所定の閾値(基準人物数)は固定値としてもよいし、適応的に変動する値としてもよい。所定の閾値(基準人物数)は、例えば、監視空間に新規人物が出現する前から存在する人数(追跡している人物領域の数)に対する割合で設定することが好適である。具体的には、監視空間に新規人物が出現する前から存在する人数(追跡している人物領域の数)の80%以上等に設定することが好適である。
【0050】
ステップS21では、新規人物出現経過カウンタをカウントアップする。制御部22は、新規人物出現経過カウンタを1増加させ、その後ステップS2へ処理を戻して、次の時刻に対する運動状態の変化の調査を行う。
【0051】
ステップS22では、異常出力処理が行われる。制御部22は、新規人物出現経過カウンタが所定の閾値(所定時間)となる前に運動変化人数カウンタが所定の閾値(基準人物数)以上となった場合、新規人物に起因して複数の人物の運動状態が移動状態から静止状態へと変化し、監視空間に異常が発生したものと判定する。制御部22は、異常信号を出力部23へ出力する。
【0052】
以上により、監視空間に新規の人物が出現してから所定時間内に複数の人物の運動状態が所定の変化をした場合に複数の人物が行動を強制されて通報操作ができない状態であると判定し、そのような異常事態を自動的に検出し、非常通報を行うことが可能になる。
【0053】
また、異常判定の条件を複数設定してもよい。運動状態変化の時間の閾値(所定時間)と運動状態変化の人数の閾値(基準人物数)を、例えば、10秒以内に監視空間に新規人物が出現する前から存在する人数(人物領域の数)の50%以上が運動状態を変えた、30秒以内に監視空間に新規人物が出現する前から存在する人数(人物領域の数)の80%以上が運動状態を変えた、又は、1分以内に監視空間に新規人物が出現する前から存在する人数(人物領域の数)の100%以上が運動状態を変えた、3つの条件のいずれか1つが満たされる場合に異常状態であると判定するようにしてもよい。
【0054】
なお、本実施の形態では、ステップS10において動状態であった人物領域が新規の人物領域の出現以降に静止状態となったかを調査することによって異常の検知を行った。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、移動速度の変化や一箇所への集中移動等を運動状態の変化とし、複数の人物の運動状態の変化を捉えて異常検出することができる。
【0055】
具体的には、新規人物の出現以前から監視空間内に存在していた人物(人物領域)の移動速度の変化を求める。すなわち、監視画像から抽出された人物(人物領域)の重心位置の移動速度を計算し、移動速度の変化が所定の閾値(基準速度変化量)以上となった人物が新規人物の出現時刻から所定の閾値(所定時間)となる前に所定の人数(基準人物数)以上であれば異常であると判定する。所定時間は、速度変化が新規人物に起因するものと判定できる時間に相当する値に設定される。所定の閾値(所定時間)は、固定的に設定してもよいし、監視空間の広さ等に応じて適応的に設定してもよい。所定時間は、例えば、1分間とすることができる。また、所定の人数(基準人物数)は、固定的に設定してもよいし、新規人物の出現以前から監視空間に存在していた人数等に応じて適応的に設定してもよい。基準人物数は、新規人物の出現以前から監視空間に存在していた人数(追跡している人物領域の数)の80%に設定すればよい。また、所定の閾値(基準速度変化量)は、人物の移動速度が急に上がる、又は急に下がることを判定できる値とし、固定的に設定してもよいし、監視空間の広さ等に応じて適応的に設定してもよい。
【0056】
また、新規人物の出現から所定の閾値(所定時間)となる前に所定の人数(基準人物数)以上の人物が移動状態から静止状態となり、当該人物(人物領域)の3次元的な位置が所定の範囲(基準範囲)内であった場合に人物(人物領域)が一箇所へ集中移動させられたとして、異常であると判定するようにしてもよい。ここで、所定時間は、新規人物の出現に起因して同じ範囲内に人物が移動したと判定できる時間に相当する値に設定される。所定時間は、固定的に設定してもよいし、監視空間の広さ等に応じて適応的に設定してもよい。所定時間は、例えば、3分間とすることができる。また、基準人物数は、固定的に設定してもよいし、新規人物の出現以前から監視空間に存在していた人数等に応じて適応的に設定してもよい。基準人物数は、新規人物の出現以前から監視空間に存在していた人物(追跡している人物領域の数)の80%に設定すればよい。また、基準範囲は、固定的に設定してもよいし、監視空間の広さ等に応じて適応的に設定してもよい。基準範囲は、例えば、半径1mの円に相当する範囲とすればよい。
【0057】
なお、静止状態の判定は、上記実施の形態と同様に、人物領域内にフレーム間差分がない、人物領域の重心位置が移動していない、人物領域の外接矩形が変化していない等とすることができる。また、人物の3次元的な位置は、撮像部20の監視カメラの設置条件を考慮して逆透視変換によって算出することができる。
【0058】
また、上記実施の形態では、異常検知装置1の各部の機能を1つのコンピュータで実現する態様を説明したがこれに限定されるものではない。異常検知装置1の各部の機能は一般的なコンピュータをプログラムにより制御することによって実現できるものであり、これらの装置の各機能を適宜組み合わせて1つのコンピュータで処理させてもよいし、各機能をネットワーク等で接続された複数のコンピュータで分散処理させてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 通報システム、2 異常検知装置、3 コントローラ、4 通信網、5 センタ装置、20 撮像部、21 記憶部、22 制御部、23 出力部、210 背景画像、220 人物領域抽出手段、221 人物追跡手段、222 人物出現判定手段、223 運動変化判定手段、224 変化人数判定手段、225 異常判定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空間を撮像した監視画像から前記監視空間内で発生した異常を検知する異常検知装置であって、
前記監視画像を順次取得する画像取得手段と、
前記監視画像から人物を人物領域として抽出する人物領域抽出手段と、
前記順次取得される監視画像にて同一人物毎に過去の人物領域と現在の人物領域とを対応付けて追跡する人物追跡手段と、
前記現在の人物領域が対応付けできないとき新規人物の出現と判定する人物出現判定手段と、
前記対応付けられた人物毎に運動状態の所定の変化があったか否かを判定する運動変化判定手段と、
前記新規人物の出現から所定時間内に、前記運動状態に所定の変化のあった人数が基準以上であるとき異常と判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知装置であって、
前記異常判定手段は、前記運動状態が移動状態から静止状態へ変化したことを前記所定の変化とすることを特徴とする異常検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の異常検知装置であって、
前記異常判定手段は、前記運動状態が移動状態から予め設定した所定の領域内の静止状態へ変化したことを前記所定の変化とすることを特徴とする異常検知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の異常検知装置であって、
前記異常判定手段は、前記運動状態として移動速度が変化したことを前記所定の変化とすることを特徴とする異常検知装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の異常検知装置であって、
前記基準は、前記対応付けられた人数に占める前記運動状態に所定の変化があった人数の割合であることを特徴とする異常検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−208851(P2012−208851A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75400(P2011−75400)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】