説明

異形粒子、異形粒子組成物及びその製造方法、並びに光拡散成形品

【課題】光透過性、及び光拡散性に優れた光拡散成形品を提供可能な異形粒子を提供する。
【解決手段】第一の重合体からなる(a)粒子1と、(a)粒子の表面の少なくとも一部に配置された、第二の重合体からなる(b)粒子2と、を有し、その数平均粒子径が、0.8〜10μmである異形粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性等に優れた光拡散成形品を提供可能な異形粒子、異形粒子組成物及びその製造方法、並びに、光拡散性等に優れた光拡散成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、テレビ、パーソナルコンピュータ等の表示装置として、液晶表示装置が使用されている。この液晶表示装置は、光源と、この光源の近傍に配設及び照射される導光板と、この導光板の前方に順次配設される光拡散板、プリズムシート、及び液晶表示パネルとを備えている。導光板の前方に配設される光拡散板は、導光板を通過した光を更に均一に拡散させるために使用されている。この光拡散板の特性を改良することにより、液晶表示装置の輝度を向上させる試みがなされている。
【0003】
関連する従来技術として、平均粒子径、及び粒子径分布の変動係数(CV値)を所定の範囲内に設定した光拡散性樹脂粒子を用いた光拡散板が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された光拡散性樹脂粒子を用いた光拡散板を用いた場合であっても、液晶表示装置の輝度は必ずしも十分に向上したとはいえず、更なる改良が望まれていた。具体的には、光透過性、及び光拡散性が良好であり、より輝度の高い光拡散板の開発が要望されていた。かかる要望を満たすべく、平均粒径、及び平均粒径分布を所定の範囲内に設定した合成樹脂粒子を用いた光拡散板が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、かかる特許文献2に記載された合成樹脂粒子を用いた光拡散板であっても、その光透過性、及び光拡散性については未だ改良の余地があり、更なる高特性の光拡散成形品、及びそのような光拡散成形品を製造し得る材料の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平7−234304号公報
【特許文献2】特開2004−226604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、光透過性、及び光拡散性に優れた光拡散成形品を提供可能な異形粒子、異形粒子組成物及びその製造方法、並びに、光透過性、及び光拡散性に優れた光拡散成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、二以上の粒子によって構成される、その数平均粒子径が所定の数値範囲内の異形粒子を用いることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、以下に示す異形粒子、異形粒子組成物及びその製造方法、並びに光拡散成形品が提供される。
【0009】
[1]第一の重合体からなる(a)粒子と、前記(a)粒子の表面の少なくとも一部に配置された、第二の重合体からなる(b)粒子と、を有し、その数平均粒子径が、0.8〜10μmである異形粒子。
【0010】
[2]前記第一の重合体に含まれる単量体単位の少なくとも一種が、前記第二の重合体に含まれる単量体単位と異なる前記[1]に記載の異形粒子。
【0011】
[3]前記(a)粒子の数平均粒子径(L)と、前記(b)粒子の数平均粒子径(L)との比が、(L)/(L)=0.05〜20.0である前記[1]又は[2]に記載の異形粒子。
【0012】
[4]前記第一の重合体が、(a1)芳香族ビニル系単量体単位60〜98質量%、(a2)極性官能基含有単量体単位2〜40質量%、及び(a3)その他の単量体単位0〜38質量%(但し、(a1)+(a2)+(a3)=100質量%)、を含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載の異形粒子。
【0013】
[5]前記第二の重合体が、(b1)芳香族ビニル系単量体単位0〜25質量%、(b2)極性官能基含有単量体単位75〜100質量%、及び(b3)その他の単量体単位0〜25質量%(但し、(b1)+(b2)+(b3)=100質量%)、を含む前記[1]〜[4]のいずれかに記載の異形粒子。
【0014】
[6]前記(a)粒子をシードポリマー粒子とし、前記(b)粒子がシード重合により形成された前記[1]〜[5]のいずれかに記載の異形粒子。
【0015】
[7](A)前記[1]〜[6]のいずれかに記載の異形粒子と、(B)バインダー成分と、を含む異形粒子組成物。
【0016】
[8]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の異形粒子を含有するエマルジョンから溶媒を除去して、乾燥状態の前記異形粒子を得る工程と、得られた前記異形粒子とバインダー成分を混合する工程と、を有する異形粒子組成物の製造方法。
【0017】
[9]樹脂材料と、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の異形粒子と、を含む樹脂材料からなる光拡散成形品(以下、「第一の光拡散成形品」ともいう)。
【0018】
[10]導光板、光拡散板、又は光拡散フィルムである前記[9]に記載の光拡散成形品。
【0019】
[11]基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面上に形成された、前記[7]に記載の異形粒子組成物からなる光拡散層と、を備えた光拡散成形品(以下、「第二の光拡散成形品」ともいう)。
【0020】
[12]光拡散板、又は光拡散フィルムである前記[11]に記載の光拡散成形品。
【発明の効果】
【0021】
本発明の異形粒子は、光透過性、及び光拡散性に優れた光拡散成形品を提供可能であるという効果を奏するものである。
【0022】
本発明の異形粒子組成物は、光透過性、及び光拡散性に優れた光拡散成形品を提供可能であるという効果を奏するものである。
【0023】
本発明の異形粒子の製造方法によれば、光透過性、及び光拡散性に優れた光拡散成形品を提供可能な異形粒子組成物を製造することができる。
【0024】
本発明の第一及び第二の光拡散成形品は、光透過性、及び光拡散性に優れているという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。なお、本明細書において、単に「本発明(本実施形態)の光拡散成形品」というときは、第一の光拡散成形品と第二の光拡散成形品のいずれをも意味する。
【0026】
1.異形粒子
本発明の異形粒子の一実施形態は、第一の重合体からなる(a)粒子と、この(a)粒子の表面の少なくとも一部に配置された、第二の重合体からなる(b)粒子とを有し、その数平均粒子径が、0.8〜10μmのものである。以下、その詳細について説明する。
【0027】
((a)粒子)
本実施形態の異形粒子を構成する(a)粒子は、第一の重合体からなるものである。この第一の重合体は、水溶解度が10−2質量%以下の有機化合物を含有する油溶性重合開始剤を吸収可能なシードポリマー粒子であることが好ましい。具体的には、スチレン系重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等のスチレン系重合体や、アクリルエステル系重合体等を挙げることができる。
【0028】
(a)粒子を構成する第一の重合体は、例えば構成単位として、(a1)芳香族ビニル系単量体単位(以下、「構成単位(a1)」ともいう)、(a2)極性官能基含有単量体単位(以下、「構成単位(a2)」ともいう)、及び(a3)その他の単量体単位(以下、「構成単位(a3)」ともいう)を含むものであることが好ましい。
【0029】
((a1)芳香族ビニル系単量体単位)
構成単位(a1)を構成するために用いられる芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等を挙げることができ。なかでも、スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル系単量体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
第一の重合体に含まれる構成単位(a1)の割合は、構成単位(a1)、構成単位(a2)、及び構成単位(a3)の合計を100質量%とした場合に、60〜98質量%であることが好ましく、65〜95質量%であることが更に好ましく、70〜90質量%であることが特に好ましい。第一の重合体に含まれる構成単位(a1)の割合が60質量%未満であると、光拡散性が劣る傾向にある。一方、98質量%超であると、異形粒子を得難くなる傾向にある。
【0031】
((a2)極性官能基含有単量体単位)
構成単位(a2)を構成するために用いられる極性官能基含有単量体は、その分子中に極性官能基を有する単量体である。この極性官能基としては、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、グリシジル基、エステル基等を好適例として挙げることができる。極性官能基含有単量体の具体例としては、以下の(1)〜(5)に示す単量体を挙げることができる。なお、以下に例示する単量体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
(1)カルボキシル基含有単量体:(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、へキサヒドロフタル酸モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル等のカルボキシル基含有不飽和単量体、及びその無水物類。なかでも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0033】
(2)シアノ基含有単量体:(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、ケイ皮酸ニトリル等のシアン化ビニル系単量体;2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート。なかでも、(メタ)アクリロニトリルが好ましい。
【0034】
(3)水酸基含有単量体:ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(シクロ)アルキルモノ(メタ)アクリレート類;3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の置換ヒドロキシ(シクロ)アルキルモノ(メタ)アクリレート類。なかでも、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0035】
(4)グリシジル基含有単量体:アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジルメチルアクリレート、エポキシ化シクロヘキシル(メタ)アクリレート。なかでも、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0036】
(5)エステル基含有単量体:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルコキシ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類。なかでも、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0037】
第一の重合体に含まれる構成単位(a2)の割合は、構成単位(a1)、構成単位(a2)、及び下記構成単位(a3)の合計を100質量%とした場合に、2〜40質量%であることが好ましく、4〜35質量%であることが更に好ましく、8〜30質量%であることが特に好ましい。第一の重合体に含まれる構成単位(a3)の割合が2質量%未満であると、異形粒子を得難くなる傾向にある。一方、40質量%超であると、光透過性が劣る傾向にある。
【0038】
(その他の単量体単位)
第一の重合体には、必要に応じて、前述の各種単量体と共重合可能なその他の単量体からなる単量体単位(構成単位(a3)ともいう)が含まれていてもよい。この構成単位(a3)を構成するその他の単量体としては、以下に示すものを挙げることができる。
【0039】
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド等のN−メチロール化不飽和カルボン酸アミド類;2−ジメチルアミノエチルアクリルアミド等のアミノアルキル基含有アクリルアミド類;(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の不飽和カルボン酸のアミド類又はイミド類;N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のN−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド類;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル基含有(メタ)アクリレート類;2−(ジメチルアミノエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、等のアミノアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレート類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、脂肪酸ビニルエステル等のハロゲン化ビニル化合物類;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物類。
【0040】
((b)粒子)
本実施形態の異形粒子を構成する(b)粒子は、第二の重合体からなるものである。この第二の重合体は、例えば構成単位として、(b1)芳香族ビニル系単量体単位(以下、「構成単位(b1)」ともいう)、(b2)極性官能基含有単量体単位(以下、「構成単位(b2)」ともいう)、及び(b3)その他の単量体単位(以下、「構成単位(b3)」ともいう)を含むものであることが好ましい。
【0041】
((b1)芳香族ビニル系単量体単位)
構成単位(b1)を構成するために用いられる芳香族ビニル系単量体としては、前述の構成単位(a1)を構成するために用いられる芳香族ビニル系単量体と同様のものを挙げることができる。なかでも、スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル系単量体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
第二の重合体に含まれる構成単位(b1)の割合は、構成単位(a1)、構成単位(a2)、及び構成単位(a3)の合計を100質量%とした場合に、0〜250質量%であることが好ましく、10〜200質量%であることが更に好ましく、20〜150質量%であることが特に好ましい。第一の重合体に含まれる構成単位(a1)の割合が250質量%超であると、光透過性が劣る傾向にある。
【0043】
((b2)極性官能基含有単量体単位)
構成単位(b2)を構成するために用いられる極性官能基含有単量体は、その分子中に極性官能基を有する単量体である。この極性官能基としては、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、グリシジル基、エステル基等を好適例として挙げることができる。極性官能基含有単量体の具体例としては、前述の構成単位(a2)を構成するために用いられる極性官能基含有単量体と同様のものを挙げることができる。なかでも、エステル基含有単量体が好ましく、メチル(メタ)アクリレート等の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート類、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類が更に好ましい。これらの極性基含有単量体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
第二の重合体に含まれる構成単位(b2)の割合は、構成単位(b1)、構成単位(b2)、及び下記構成単位(b3)の合計を100質量%とした場合に、75〜100質量%であることが好ましく、75〜95質量%であることが更に好ましく、80〜90質量%であることが特に好ましい。第二の重合体に含まれる構成単位(b3)の割合が75質量%未満であると、光透過性が劣る傾向にある。
【0045】
(その他の単量体単位)
第二の重合体には、必要に応じて、前述の各種単量体と共重合可能なその他の単量体からなる単量体単位(構成単位(b3)ともいう)が含まれていてもよい。この構成単位(b3)を構成するその他の単量体としては、前述の構成単位(a3)を構成するために用いられることのある、その他の単量体と同様のものを挙げることができる。
【0046】
(異形粒子)
本実施形態の異形粒子は、(a)粒子と(b)粒子を有するものである。また、(b)粒子は、(a)粒子の表面の少なくとも一部に配置されている。ここで、本明細書にいう「異形」とは、2つ粒子が、粒子全体の中心点に対して非対称に配置されていることをいう。この非対称性を有する粒子であれば、粒子全体としての形状が、図1(b)〜図1(d)のような球状である場合にも、図1(e)のようなラグビーボール状、図1(f)のような双子球状、又は図1(a)のような球状突起をもつ球状等の場合であっても、本明細書にいう「異形粒子」の概念に含まれる。
【0047】
本実施形態の異形粒子においては、第一の重合体の組成と第二の重合体の組成が、同一であっても異なっていてもよいが、第一の重合体に含まれる単量体単位の少なくとも一種が、第二の重合体に含まれる単量体単位と異なっていることも好ましい。即ち、この場合には、異形粒子を構成する単量体単位のうち少なくとも一種は、第一の重合体と第二の重合体のいずれか一方の重合体にのみ含まれていることになる。これにより、例えば(a)一次粒子と(b)一次粒子とを非対称に分離させることができる。
【0048】
本実施形態の異形粒子は、その長径の数平均値(L)と、短径の数平均値(D)との比が、(L)/(D)=1.0〜2.0であることが好ましく、1.1〜1.9であることが更に好ましく、1.2〜1.8であることが特に好ましい。(L)/(D)の値が2.0超であると、バインダー成分への分散性が低下し、均一な光拡散機能を得難くなる傾向にある。
【0049】
ここで、異形粒子が、図1(a)に示すような球状突起をもつ球状である場合における「長径」及び「短径」について説明する。図2に示すように、長径(L)は、(a)粒子1の端部から、(b)粒子2の端部までの距離で表される。また、短径(D)は、粒子のうち、より大きい方の粒子(図2においては、(a)粒子1)の径で表される。
【0050】
本実施形態の異形粒子は、(a)粒子の数平均粒子径(L)と、(b)粒子の数平均粒子径(L)との比が、(L)/(L)=0.05〜20.0であることが好ましく、0.2〜18であることが更に好ましく、0.4〜15であることが特に好ましい。(L)/(L)の値が0.05未満であると、光透過性及び光拡散性のバランスが著しく劣る傾向にある。一方、(L)/(L)の値が20.0超であっても、光透過性及び光拡散性のバランスが著しく劣る傾向にある。なお、粒子の形状が、真球形状ではなく、いわゆる扁平形状等である場合には、長径と短径の平均値を「平均粒子径」とする。
【0051】
本実施形態の異形粒子は、(a)粒子の屈折率(R)と、(b)粒子の屈折率(R)との比が、(R)/(R)=0.7〜1.4であることが好ましく、0.8〜1.3であることが更に好ましく、0.85〜1.25であることが特に好ましい。(R)/(R)の値が0.7未満であると、異形粒子を得難くなる傾向にある。一方、(R)/(R)の値が1.4超であっても、異形粒子を得難くなる傾向にある。なお、屈折率は、下記の方法により測定した値である。
【0052】
屈折率測定:(1)測定対象となる粒子を80℃×24時間乾燥した後に破砕し、60メッシュ金網でろ過して試験サンプル(乾燥一次粒子)を調製する。(2)調製した乾燥一次粒子と、適当な屈折率の屈折率標準液(Cargille社製)を混合して、一次粒子分散液を調製する。(3)調製した一次粒子分散液を顕微鏡で観察し、一次粒子の輪郭部分が視認可能か否かを確認し、視認不可能な場合における屈折率標準液の屈折率を、その粒子の「屈折率」とした。
【0053】
本実施形態の異形粒子は、第一の重合体及び/又は第二の重合体が、一種以上の反応性官能基を有するものであると、重合安定性を良好に保ちやすい傾向にあるために好ましい。この「反応性官能基」としては、エステル基、アミド基、アミン基、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、グリシジル基、水酸基を挙げることができる。反応性官能基を有する重合体は、エステル基、アミド基、アミン基、カルボキシル基、グリシジル基、及び水酸基については、例えば、これらの反応性官能基を有する単量体を共重合させるか、又はこれらの反応性官能基を有する化合物をグラフトさせることにより得ることができる。また、スルホン酸基を有する重合体については、例えば、スルホン酸基を有する反応性界面活性剤の存在下で単量体を重合させることにより得ることができる。また、硫酸基を有する重合体については、例えば、過硫酸カリウム等の開始剤を用いて単量体を重合させることにより得ることができる。第一の重合体及び/又は第二の重合体に含まれる反応性官能基の量は、この反応性官能基の導入に用いられた化合物に換算して、それぞれの重合体につき、0.5〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることが更に好ましい。
【0054】
(異形粒子の製造方法)
本実施形態の異形粒子は、例えば、以下に示す方法に従って製造することができる。先ず、第一の重合体からなる(a)粒子は、水性媒体を用いた通常の乳化重合方法により得ることができる。この「水性媒体」とは、水を主成分とする媒体を意味する。具体的には、この水性媒体中における水の含有率は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。水と併用することのできる他の媒体としては、エステル類、ケトン類、フェノール類、アルコール類等の化合物を挙げることができる。
【0055】
乳化重合の条件は、公知の方法に準ずればよい。例えば、使用する単量体の全量を100部とした場合に、通常、100〜500部の水を使用し、重合温度−10〜100℃(好ましくは−5〜100℃、より好ましくは0〜90℃)、重合時間0.1〜30時間(好ましくは2〜25時間)の条件で行うことができる。乳化重合の方式としては、単量体を一括して仕込むバッチ方式、単量体を分割若しくは連続して供給する方式、単量体のプレエマルジョンを分割若しくは連続して添加する方式、又はこれらの方式を段階的に組み合わせた方式等を採用することができる。また、通常の乳化重合に用いられる分子量調節剤、キレート化剤、無機電解質等を、必要に応じて一種又は二種以上使用することができる。
【0056】
乳化重合に際して開始剤を使用する場合には、この開始剤として、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2−カルバモイルアザイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過酸化基を有するラジカル乳化性化合物を含有するラジカル乳化剤、亜硫酸水素ナトリウム、及び硫酸第一鉄等の還元剤を組み合わせたレドックス系;等を用いることができる。また、乳化剤を用いる場合には、この乳化剤として、公知のアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、及び両性乳化剤からなる群より選択される一種以上を使用することができる。なお、分子内に不飽和二重結合を有する反応性乳化剤等を用いてもよい。
【0057】
乳化重合に使用する分子量調節剤には、特に制限はない。分子量調節剤の具体例としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー等の炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、α−テルネピン、γ−テルネピン、ジペンテン、1,1−ジフェニルエチレン等を挙げることができる。これらの分子量調節剤を、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、メルカプタン類、キサントゲンジスルフィド類、チウラムジスルフィド類、1,1−ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマー等がより好適に使用される。
【0058】
乳化重合終了時における単量体の重合転化率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。第一の重合体の重合添加率が80質量%未満の状態で、第二の重合体用の単量体を投入すると、形成される(a)粒子と(b)粒子が明確に分離し難くなる。得られる第一の重合体からなる(a)粒子は、通常は球状の粒子である。(a)粒子の数平均粒子径は、0.8〜10μmであることが好ましく、1.0〜10μmであることが更に好ましい。(a)粒子の数平均粒子径がこの範囲外であると、乳化重合により製造することが困難となる場合がある。
【0059】
得られた(a)粒子の存在下において、第二の重合体用の単量体を重合させる。より具体的には、得られた(a)粒子をシードポリマー粒子として使用した状態で第二の重合体用の単量体をシード重合させることによって、(b)粒子を形成することができる。例えば、(a)粒子が分散した水性媒体中に、第二の重合体用単量体若しくはそのプレエマルジョンを一括、分割、又は連続して滴下すればよい。このとき使用する(a)粒子の量は、第二の重合体用の単量体100質量部に対して、1〜100質量%とすることが好ましく、2〜80質量%とすることが更に好ましい。重合に際して開始剤や乳化剤を用いる場合には、(a)粒子の製造時と同様のものを使用することができる。また、重合時間等の条件についても、(a)粒子の製造時と同様とすればよい。
【0060】
(a)粒子が分散した水性媒体中に、第二の重合体用単量体を投入すると、図3(a)に示すように、投入された第二の重合体用単量体の大部分は、通常、いったん(a)粒子に吸蔵され、この(a)粒子中又はその表面で重合が開始される。この第二の重合体用単量体は、重合の進行に伴って第一の重合体に対する相溶性が低下し、第一の重合体と相分離するようになる。このため、重合の初期には(a)粒子の複数箇所で重合が進行し得るが、それぞれの重合体を構成する単量体単位がこれまで述べてきた関係を満たす場合、第二の重合体は、(a)粒子の各所で重合されたものが互いに集まって単一の(b)粒子を形成する傾向にある(図3(b))。そして、(b)粒子がある程度の大きさに成長すると、それ以降の重合は主としてこの(b)粒子で進行するようになる(図3(c))。このようにして、(a)粒子と(b)粒子が非対称に分離した、本実施形態の異形粒子が形成される。
【0061】
上述のようにして得られる、本実施形態の異形粒子の数平均粒子径は、0.8〜10μm、好ましくは1.0〜10μm、更に好ましくは1.2〜10μmである。数平均粒子径が10μmよりも大きいと、乳化重合法によって製造することが困難な場合がある。また0.8μmよりも小さい場合、光透過性及び光拡散性のバランスが劣る。なお、本実施形態の異形粒子における「数平均粒子径」とは、異形粒子の最も長い方向に対する差し渡しの長さをいい、例えば、光散乱法により測定することができる。
【0062】
本実施形態の異形粒子においては、(a)粒子と(b)粒子の質量比((a)/(b))は、2/98〜98/2であることが好ましく、5/95〜95/5であることが更に好ましい。また、異形粒子の全表面積のうち、(a)粒子により形成される露出面と、(b)粒子により形成される露出面との割合(面積比=(a)/(b))は、5/95〜95/5であることが好ましく、10/90〜90/10であることが更に好ましい。(a)粒子と(b)粒子のいずれか一方の割合が上記範囲よりも少ない場合には、この異形粒子が「異形」であることによる効果が十分に得られない場合がある。なお、異形粒子の全表面積に占める各一次粒子の露出面の割合は、例えば、電子顕微鏡写真から測定することができる。
【0063】
なお、異形粒子の形状は、(a)粒子と(b)粒子の質量比、(a)粒子と(b)粒子の分離性、(b)粒子を形成する際の重合条件等によって種々変化する。例えば、(a)粒子と(b)粒子の質量比及び重合条件を一定とした場合、(a)粒子と(b)粒子の分離性が高くなるにつれて、異形粒子の形状は、図1(b)、図1(d)、図1(a)の順に変化する傾向にある。
【0064】
2.異形粒子組成物及びその製造方法
本発明の異形粒子組成物の一実施形態は、前述の(A)異形粒子と、(B)バインダー成分とを含むものである。以下、その詳細について説明する。
【0065】
(B)バインダー成分
本実施形態の異形粒子組成物に含有されるバインダー成分は、透明であるとともに、例えば樹脂製のシート等の表面上に(A)異形粒子を分散一体化させることができるものであれば、その種類は特に限定されない。バインダー成分の具体例としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ニトロセルロース等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらのバインダー成分は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
バインダー成分の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。バインダー成分の全光線透過率が80%以上であると、より光透過性に優れた光拡散成形品を製造可能となる。なお、本明細書にいう「全光線透過率」は、JIS K7105に基づき測定される値である。
【0067】
本実施形態の異形粒子組成物に含有される、(B)バインダー成分の割合は、(A)異形粒子100質量部に対して、1〜10000質量部であることが好ましく、2〜5000質量部であることが更に好ましく、3〜1000質量部であることが特に好ましい。(B)バインダー成分の含有割合が1質量部未満であると、例えば樹脂製のシート等の表面上に(A)異形粒子を分散一体化させることが困難となる傾向にある。一方、(B)バインダー成分の含有割合が10000質量部超であると、この異形粒子組成物を用いて製造した光拡散成形品の光透過性、及び光拡散性が向上し難くなる傾向にある。
【0068】
(その他の成分)
本実施形態の異形粒子組成物には、(A)異形粒子、及び(B)バインダー成分以外にも、必要に応じて、硬化剤、分散剤、染料等のその他の成分を含有させることができる。
【0069】
その他の成分の含有割合は、(A)異形粒子+(B)バインダー成分=100質量部に対して、0〜10質量部であることが好ましく、0〜5質量部であることが更に好ましく、0〜3質量部であることが特に好ましい。
【0070】
(異形粒子組成物の製造方法)
本実施形態の異形粒子組成物を製造するには、先ず、前述の異形粒子の製造方法に従って得られた異形粒子を含有するエマルジョンから溶媒を除去し、乾燥状態の異形粒子を得る(工程(1))。この工程(1)において、エマルジョンから溶媒を除去する方法については特に限定されないが、フリーズドライ方法、スプレードライ方法が、簡便に乾燥状態とすることができるために好ましい。
【0071】
なお、溶媒の含有割合が5.0質量%以下となるまで乾燥することが好ましく、3.0質量%以下となるまで乾燥することが更に好ましい。溶媒の含有割合が5.0質量%超であると、バインダー成分への分散性が低下し、均一な光拡散機能を示す成形品を製造することが困難となる傾向にある。
【0072】
次いで、得られた乾燥状態の異形粒子とバインダー成分を混合する(工程(2))。この工程(2)において、異形粒子、及びバインダー成分、並びに必要に応じて添加される前述のその他の成分を均一に混合することにより、本実施形態の異形粒子組成物を得ることができる。なお、その他の成分は、後に混合してもよい。混合方法については特に限定されないが、例えば、各種混練機、ビーズミル、高圧ホモジナイザー等を用いて混合することができる。
【0073】
3.光拡散成形品
本発明の第一の光拡散成形品は、樹脂成分と、前述の異形粒子とを含む樹脂材料からなるものである。また、本発明の第二の光拡散成形品の一実施形態は、基材層と、この基材層の少なくとも一方の面上に形成された、前述の異形粒子組成物からなる光拡散層とを備えたものである。以下、それぞれの詳細について説明する。
【0074】
(第一の光拡散成形品)
第一の光拡散成形品を構成する樹脂材料には、樹脂成分と、前述の異形粒子が含有されている。この樹脂成分については特に限定されないが、可視光線に対して高い透過性を有する透明であるものが好ましい。なお、透明には、無色透明の他に、有色透明、半透明が概念的に含まれる。
【0075】
樹脂成分は、厚さ200μmのシートにした場合に、波長550nmの光線透過率が80%以上のものであることが、光拡散成形品の光透過性をより優れたものとすることができるために好ましく、85%以上のものであることが更に好ましく、90%以上のものであることが特に好ましい。また、使用環境や保存環境等を考慮すると、樹脂成分のガラス転移温度は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることが更に好ましく、150℃以上であることが特に好ましい。
【0076】
樹脂成分の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、2つ以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレート、オキセタン樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱又は活性エネルギー線で硬化可能な硬化性樹脂を挙げることができる。なかでも、熱又は活性エネルギー線で硬化可能な硬化性樹脂が、ガラス繊維やガラス繊維布との複合化が容易であるとともに、熱的に安定であることから好ましく、エポキシ樹脂、2つ以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0077】
樹脂材料に含有される、異形粒子の割合は、樹脂成分100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、1〜500質量部であることが更に好ましく、1〜100質量部であることが特に好ましい。異形粒子の含有割合が1質量部未満であると、光拡散性が十分に向上し難くなる傾向にある。一方、1000質量部超であると、著しく光透過性が低下する傾向にある。
【0078】
本実施形態の第一の光拡散成形品は、例えば、樹脂成分と異形粒子を押出機に供給して押し出したものをマスターバッチ化した後、このマスターバッチを押出機に供給し、キャビティ内に射出して成形加工する等の方法を挙げることができる。
【0079】
本実施形態の第一の光拡散成形品は、優れた光透過性、及び光拡散性を有するものである。従って、本実施形態の第一の光拡散成形品はこのような特性を生かし、導光板、光拡散板、光拡散フィルム等として好適である。
【0080】
(第二の光拡散成形品)
第二の光拡散成形品を構成する基材層は、透明(無色透明、有色透明、又は半透明)な樹脂からなる層であることが好ましい。この基材層を構成する樹脂の具体例としては、前述の第一の光拡散成形品を構成する樹脂材料に含有される樹脂成分と同一のものを挙げることができる。
【0081】
基材層の少なくとも一方の面上に形成される光拡散層は、前述の異形粒子組成物からなる層である。異形粒子組成物に含有される異形粒子は、同じく異形粒子組成物に含有されるバインダー成分によって、基材層上に一体化されている。なお、一部の異形粒子は、バインダー成分の表面からその一部を突出させた状態となっていてもよい。また、異形粒子の突出した部分は、バインダー成分によって全面的に被覆されていても、一部のみが被覆されていてもよい。なお、異形粒子の全てが、バインダー成分中に完全に埋没した状態であってもよい。
【0082】
本実施形態の第二の光拡散成形品は、例えば、(A)異形粒子、及び(B)バインダー成分を、(C)これらを分散又は溶解可能な有機溶媒に分散又は溶解してスラリー状とし、各種コーターによる塗工、及び乾燥を行うことによって製造することができる。(C)有機溶媒の具体例としては、水、トルエン、シクロヘキサン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を挙げることができる。
【0083】
(C)有機溶媒の含有割合は、(A)異形粒子+(B)バインダー成分=100質量部に対して、10〜2000質量部であることが好ましく、20〜1000質量部であることが更に好ましい。
【0084】
基材層の厚さは特に限定されないが、通常、0.03〜0.3mm、好ましくは0.05〜0.2mm程度である。また、光拡散層の厚さについても特に限定されないが、通常、0.01〜0.1mm、好ましくは0.02〜0.08mm程度である。
【0085】
本実施形態の第二の光拡散成形品は、優れた光透過性、及び光拡散性を有するものである。従って、本実施形態の第二の光拡散成形品はこのような特性を生かし、光拡散板、光拡散フィルム等として好適である。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0087】
[数平均粒子径]:ベックマンコールター社製のレーザー粒径解析システム(商品名「LS13320」を使用して測定した。
【0088】
[長径の数平均値(L)及び短径の数平均値(D)]:SEMを使用して観察することにより測定した。
【0089】
[全光線透過率]:スガ試験機社製のヘーズメーターを用いてJIS K7105に準じ、試料のない状態(空気)を100%として測定した。
【0090】
[ヘイズ]:スガ試験機社製のヘーズメーターを用いてJIS K7105に準じて測定した。
【0091】
1.ポリマー粒子の合成
(実施例1)
3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシサイド(商品名「パーロイル355」、日本油脂社製、水溶解度:0.01%)2部、ラウリル硫酸ナトリウム0.1部、及び水20部を撹拌して乳化後、超音波ホモジナイザーで更に微粒子化し、水性分散体を得た。得られた水性分散体に、数平均粒子径1.0μmの単分散ポリスチレン粒子15部を添加し、16時間撹拌した。次いで、スチレン(ST)70部、ジビニルベンゼン(DVB)20部、及びグリシジルメタクリレート(GMA)10部を加え、40℃で3時間ゆっくり撹拌して、モノマー成分(ST、DVB、及びGMA)を単分散ポリスチレン粒子に吸収させた。その後、75℃に昇温して、3時間重合反応を行うことにより、第一の重合体からなる(a)粒子を含有するエマルジョンを得た。なお、(a)粒子の数平均粒子径は1.8μmであり、凝固物はほとんど発生しなかった。
【0092】
前述の水性分散体と同一の水性分散体22.1部、及び上述の(a)粒子を含有するエマルジョン20部(但し、固形分として)を混合し、16時間撹拌した。次いで、MMA90部、及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPMA)10部を加え、40℃で3時間ゆっくり撹拌して、モノマー成分(MMA、及びTMPMA)を(a)粒子に吸収させた。その後、75℃に昇温して、3時間重合反応を行うことにより第二の重合体からなる(b)粒子を形成し、(a)粒子と(b)粒子からなるポリマー粒子(ポリマー(A))を含有するエマルジョンを得た。ポリマー粒子の形状は異形(ダルマ粒子)、(b)粒子の数平均粒子径は1μm、ポリマー粒子の数平均粒子径は3.5μm、(L)/(D)比は1.6、及びL(μm)/L(μm)=1.9/2.6であり、凝固物はほとんど発生しなかった。
【0093】
(実施例2、3、比較例1〜4)
第一の重合体と第二の重合体の配合処方を表1に示す通りにすること以外(但し、比較例1及び2では、第二の重合体を形成していない)は、前述の実施例1の場合と同様にして、ポリマー粒子(ポリマー(C)〜(G))をそれぞれ含有するエマルジョンを得た。各種物性値を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
2.ポリマー組成物の調製、及び光拡散成形品の作製
(実施例4)
ポリマー(A)を含有するエマルジョンを、スプレードライヤー(型番「L−8型」、大川原化工機社製)を使用して乾燥し、粉末状のポリマー(A)を得た。ポリメチルメタクリレート(ポリMMA)(商品名「パラペットHR−L」、クラレ社製、メルトインデックス:2g/10分)50部、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)200部を混合して得られた混合液に対して、前記粉末状のポリマー(A)50部を添加して分散させることにより、ポリマー組成物を得た。
【0096】
次いで、得られたポリマー組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材(全光線透過率:87.3%、ヘイズ:2.8%、厚さ:200μm)上に均一に層状に塗布した後、60℃で3時間乾燥することにより、厚さ25μmの光拡散層を有する光拡散フィルム(実施例4)を得た。得られた光拡散フィルムの全光線透過率は100%、ヘイズは92.4%であり、非常に良好なバランスを有するものであった。
【0097】
(実施例5〜7、比較例5〜9)
表2に示す配合処方とすること以外は、前述の実施例4の場合と同様にして、ポリマー組成物を得た。また、得られた各ポリマー組成物を使用し、前述の実施例4の場合と同様にして、光拡散フィルム(実施例5〜7、比較例5〜9)を得た。得られた光拡散フィルムの光拡散層の厚さ、全光線透過率、及びヘイズを表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
(考察)
表2に示すように、実施例1〜3のポリマー粒子を用いて作製した実施例4〜7の光拡散フィルムは、比較例1〜4のポリマー粒子を用いて作製した比較例5〜9の光拡散フィルムと比べて、全光線透過率とヘイズのバランスに非常に優れたものであることが明らかである。
【0100】
なお、比較例7の光拡散フィルムは、粒子形状が球であるポリマー(A)とポリマー(B)を単純にブレンドして得たブレンド品を用いて作製したものである。このように、異形粒子を用いずに、単に異なる粒子をブレンドしただけでは、ヘイズの値を向上させることが困難であることが明らかである。また、粒子形状が異形であっても、ポリマー(F)及びポリマー(G)のように、その数平均粒子径が0.8μmに満たないものを用いて作製した比較例8、9の光拡散フィルムは、全光線透過率とヘイズの何れの値についても低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の光拡散成形品は、導光板、光拡散板、光拡散フィルムとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1(a)】本発明の異形粒子の一実施形態を示す模式図である。
【図1(b)】本発明の異形粒子の他の実施形態を示す模式図である。
【図1(c)】本発明の異形粒子の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図1(d)】本発明の異形粒子の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図1(e)】本発明の異形粒子の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図1(f)】本発明の異形粒子の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図2】異形粒子の長径と短径を説明する模式図である。
【図3(a)】(b)粒子が生長する様子の初期段階を示す模式図である。
【図3(b)】(b)粒子が生長する様子の中間段階を示す模式図である。
【図3(c)】(b)粒子が生長する様子の最終段階を示す模式図である。
【符号の説明】
【0103】
1 (a)粒子
2 (b)粒子
5 異形粒子
D 短径
L 長径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の重合体からなる(a)粒子と、
前記(a)粒子の表面の少なくとも一部に配置された、第二の重合体からなる(b)粒子と、を有し、
その数平均粒子径が、0.8〜10μmである異形粒子。
【請求項2】
前記第一の重合体に含まれる単量体単位の少なくとも一種が、前記第二の重合体に含まれる単量体単位と異なる請求項1に記載の異形粒子。
【請求項3】
前記(a)粒子の数平均粒子径(L)と、前記(b)粒子の数平均粒子径(L)との比が、(L)/(L)=0.05〜20.0である請求項1又は2に記載の異形粒子。
【請求項4】
前記第一の重合体が、
(a1)芳香族ビニル系単量体単位60〜98質量%、
(a2)極性官能基含有単量体単位2〜40質量%、及び
(a3)その他の単量体単位0〜38質量%(但し、(a1)+(a2)+(a3)=100質量%)、
を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の異形粒子。
【請求項5】
前記第二の重合体が、
(b1)芳香族ビニル系単量体単位0〜25質量%、
(b2)極性官能基含有単量体単位75〜100質量%、及び
(b3)その他の単量体単位0〜25質量%(但し、(b1)+(b2)+(b3)=100質量%)、
を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の異形粒子。
【請求項6】
前記(a)粒子をシードポリマー粒子とし、前記(b)粒子がシード重合により形成された請求項1〜5のいずれか一項に記載の異形粒子。
【請求項7】
(A)請求項1〜6のいずれか一項に記載の異形粒子と、
(B)バインダー成分と、
を含む異形粒子組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の異形粒子を含有するエマルジョンから溶媒を除去して、乾燥状態の前記異形粒子を得る工程と、
得られた前記異形粒子とバインダー成分を混合する工程と、
を有する異形粒子組成物の製造方法。
【請求項9】
樹脂成分と、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の異形粒子と、
を含む樹脂材料からなる光拡散成形品。
【請求項10】
導光板、光拡散板、又は光拡散フィルムである請求項9に記載の光拡散成形品。
【請求項11】
基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面上に形成された、請求項7に記載の異形粒子組成物からなる光拡散層と、
を備えた光拡散成形品。
【請求項12】
光拡散板、又は光拡散フィルムである請求項11に記載の光拡散成形品。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図1(d)】
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【図1(e)】
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【図1(f)】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【公開番号】特開2007−197588(P2007−197588A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18629(P2006−18629)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】