説明

異方導電性接着フィルムの仮圧着方法

【課題】 気泡の発生を抑制する異方導電性接着フィルムの回路部材への仮圧着方法を提供する。
【解決手段】 ラミネーター10を用いて異方導電性接着フィルム1を回路部材2に仮圧着することを特徴とする異方導電性接着フィルムの仮圧着方法。超音波又はマイクロウェーブをかけながら、異方導電性接着フィルムを回路部材に仮圧着することを特徴とする異方導電性接着フィルムの仮圧着方法。回路部材の仮圧着部位を真空にしながら、異方導電性接着フィルムを回路部材に仮圧着することを特徴とする異方導電性接着フィルムの仮圧着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性接着フィルムの回路部材への仮圧着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異方導電性接着フィルムを用いて半導体素子を基板に接続する技術は、熱及び圧力を加えるのみで狭ピッチ電極の接続が容易に得られるため、近年広く用いられるようになった。特に液晶表示装置における液晶パネルへの駆動LSIの接続は、透明電極と金属という異種材料間の接続のため、LSIがボンディングされたテープキャリアを異方導電性接着フィルムを用いて熱圧着接続する方法が一般的である。また、液晶表示用ガラスパネルへの液晶駆動用ICの実装方法として、液晶駆動用ICを直接ガラスパネル上に熱硬化型接着剤で接合するCOG(Chip On Glass)実装方法が用いられている。
次に、従来の液晶パネルと駆動LSIの接続方法を説明する。駆動LSIは、ポリイミド等のフィルムテープ上に形成した銅箔のリードに半導体チップをボンディングしたいわゆるテープキャリアパッケージ(以後TCPと略す)の形状をしたものを用いる。図3(a)に示すように、液晶パネル20の端子21上に異方導電性接着フィルム22を仮圧着する。その後、図3(b)に示すように、TCP23の端子と液晶パネル端子との位置整合を行い、異方導電性接着フィルム22の粘着性を利用して仮固定する。
次に、液晶パネル20をステージ上に配置し、高温の加圧装置にてTCP23の端子上を加圧し異方導電性接着フィルム22に圧力及び熱を与えることにより、異方導電性接着フィルム22中の導電粒子が液晶パネル20とTCP23の両電極間に挟持された状態で接着剤が硬化し機械的かつ電気的な接続を得る(図示せず)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図3(a)に示す仮圧着の際に、図4に示すように、異方導電性接着フィルムと液晶パネルの間に大きな気泡が存在することが避けられなかった。このような気泡が存在すると、温度変化によりその隙間に結露が生じ、マイグレーション(電食)が発生するという問題があった。
本発明の目的は、気泡の発生を抑制する異方導電性接着フィルムの仮圧着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、以下の異方導電性接着フィルムの仮圧着方法が提供される。
1.ラミネーターを用いて異方導電性接着フィルムを回路部材に仮圧着することを特徴とする異方導電性接着フィルムの仮圧着方法。
2.超音波又はマイクロウェーブをかけながら、異方導電性接着フィルムを回路部材に仮圧着することを特徴とする異方導電性接着フィルムの仮圧着方法。
3.回路部材の仮圧着部位を真空にしながら、異方導電性接着フィルムを回路部材に仮圧着することを特徴とする異方導電性接着フィルムの仮圧着方法。
4.異方導電性接着フィルムと回路部材の間にできる気泡の総面積が、異方導電性接着フィルムと回路部材との接触面積の5%以下であることを特徴とする1〜3のいずれか記載の異方導電性接着フィルムの仮圧着方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、気泡の発生を抑制する異方導電性接着フィルムの仮圧着方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
実施形態1
図1は本発明にかかる一実施形態である異方導電性接着フィルムの仮圧着方法を示す図である。
この実施形態では、異方導電性接着フィルム1は、ラミネーター10を用いてガラス基板2に仮圧着される。ラミネーター10は通常のものが使用できる。
まず、異方導電性接着フィルム1が巻き取りロール3から引き出され搬送される。連続した異方導電性接着フィルム1は、ラミネーター10の圧着ローラ11に送り出される。一方、圧着ローラ11には、ガラス基板2が矢印方向に搬送される。センサ(図示せず)等により異方導電性接着フィルム1とガラス基板2の位置決めがされた状態で、異方導電性接着フィルム1とガラス基板2が上下の圧着ローラ11の間に導入される。圧着ローラ11により異方導電性接着フィルム1がガラス基板2に仮圧着されて、送り出される。異方導電性接着フィルム1は、ラミネーター10のカッター12により必要な部位で切断される。
また、剥離紙(図示せず)を剥がしながら、異方導電性接着フィルム1を圧着ローラ11に搬送する場合は、適当な搬送経路の途中において、剥離紙を持ち上げつつ剥離する粘着テープ等を設けてもよい。
本実施形態では、圧着ローラ11により、異方導電性接着フィルム1が端から徐々にガラス基板2に仮圧着されるため、気泡が発生し難く、また、発生しても外へ押出される。従って、接着部位において大きな気泡の発生を防ぐことができる。
【0007】
実施形態2
図2は本発明にかかる他の実施形態である異方導電性接着フィルムの仮圧着方法を示す図である。
この実施形態では、超音波をかけながら、異方導電性接着フィルムを回路部材に仮圧着する。
超音波をかけながら仮圧着をするためには、まず図2(a)に示すように回路部材2をワークプレート4に載置し、その上に異方導電性接着フィルム1を配置する。超音波振動と加熱加圧を一緒に行える装置30を用いるのが好ましく、市販のもので、SH50MP(アルテクス株式会社製)がある。図2(b)に示すように、この装置30を用いて、異方導電性接着フィルム1の上から圧力をかけ、圧力方向と直行する方向に超音波をかける。超音波をかけながら接着すると大きな気泡が生じにくい。
接続時の条件は、加熱加圧時間は1〜5秒が好ましく、より好ましくは2〜3秒である。加熱加圧時間が1秒未満であると気泡の発生を十分に抑制できない場合があり、5秒を超えると生産性に劣る場合がある。
加熱温度は40〜80℃であることが好ましい。加熱温度が40℃未満であると、良好な仮圧着が困難な場合があり、80℃を超えると接着フィルムが硬化してしまい、その後の本圧着時に良好な回路接続を得ることが困難な場合がある。
圧力は0.3〜2.0MPaが好ましく、より好ましくは、0.5〜1.5MPaである。圧力が0.3MPa未満であると、気泡の発生を十分に抑制できない場合があり、圧力が2.0MPaを超えると、回路部材の電極等が破壊される場合がある。
超音波の周波数は10〜50kHzが好ましい。超音波の印加時間は1〜5秒が好ましく、より好ましくは2〜3秒である。超音波の印加時間が1秒未満であると気泡の発生を十分に抑制できない場合があり、5秒を超えると生産性に劣る場合がある。
超音波と加熱加圧のタイミングは、加圧時間内に超音波の印加を開始し、加圧時間内に印加が終了すればよい。
尚、本実施形態では、超音波をかけながら仮圧着したが、マイクロウェーブをかけて気泡の発生を防ぐこともできる。
【0008】
実施形態3
この実施形態では、回路部材の仮圧着部位を真空にしながら、異方導電性接着フィルムを回路部材に仮圧着する。
本実施形態では仮圧着部位を真空にするので、気泡が発生を防ぐことができる。
【実施例】
【0009】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
製造例[異方導電性接着フィルムの製造]
(1)フェノキシ樹脂(Ph−1)の合成
4,4−(9−フルオレニリデン)−ジフェノール45g、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル50gをN−メチルピロリジオン1000mlに溶解し、これに炭酸カリウム21gを加え、110℃で攪拌した。3時間攪拌後、多量のメタノールに滴下し、生成した沈殿物をろ過してフェノキシ樹脂(Ph−1)を75g得た。Ph−1の分子量を東ソー製GPC8020(カラムは東ソー製TSKgelG3000HXLとTSKgelG4000HXL、流速1.0ml/min)で測定した結果、ポリスチレン換算でMn=12,500、Mw=30,300、Mw/Mn=2.42であった。
【0010】
(2)フェノキシ樹脂(Ph−2)の合成
窒素導入管、温度計、冷却管及びメカニカルスターラーを取り付けた2リットルの四つ口フラスコに、テトラブロモビスフェノールA(帝人化成株式会社製、FG−2000)333.83g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、YD−8125、分子蒸留品、エポキシ当量172g/当量)205.56g及びN,N−ジメチルアセトアミド1257gを入れ、窒素雰囲気下、均一になるまで撹拌混合した。次に、水酸化リチウム0.94gを添加し、温度を徐々に上げながら120℃で9時間反応させた。反応の追跡は、一定時間ごとに反応溶液の粘度を測定し、粘度が増加しなくなるまで反応を行った。反応終了後、反応溶液を放冷し、これに活性アルミナ(200メッシュ)約420gを加えて一晩放置した。活性アルミナを濾過して、フェノキシ樹脂のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。次いで、窒素導入管、温度計、冷却管及びメカニカルスターラーを取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、得られたフェノキシ樹脂のN,N−ジメチルアセトアミド溶液807.62g、末端カルボキシル基含有ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(宇部興産株式会社製、Hycar CTBNX1009−SP)50.88gを入れ、撹拌混合しながら十分に窒素置換した。次に、窒素雰囲気下で撹拌混合し、温度を徐々に上げながら溶剤が還流する状態で8.5時間加熱した。冷却後、多量のメタノールに滴下し、生成した沈殿物をろ過してフェノキシ樹脂(Ph−2)を470g得た。
【0011】
(3)回路接続材料組成物の作製
上記(1)(2)で合成したフェノキシ樹脂(Ph−1)(Ph−1/トルエン/酢酸エチル=40/30/30重量部)溶液100重量部と、フェノキシ樹脂(Ph−2)(Ph−2/トルエン/酢酸エチル=50/25/25重量部)溶液20重量部と、ラジカル重合性化合物として、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成株式会社製、M−313)10重量部、ウレタンアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKオリゴU−108)40重量部、ラジカル発生剤として1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂株式会社製、パーヘキサTMH)5重量部、導電性粒子としてNi/Auめっきポリスチレン粒子(平均粒径4μm)10重量部、さらにシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、SZ6030)10重量部を混合し回路接続材料組成物を作製した。
【0012】
(4)異方導電性接着フィルムの作製
上記(3)で作製した回路接続材料組成物を支持体として厚み40μmのシリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、回路接続材料組成物をその上にロールコータで塗布し、70℃、5分間乾燥させて、膜厚30μmの回路接続材料層を支持体上に形成した異方導電性接着フィルムを作製した。
【0013】
実施例1、2
ITO(IndiumTinOxide)くし型電極パタンを有するガラス基板に、製造例で作製した異方導電性接着フィルム(実施例1)及び市販の異方導電フィルムAC−8604(日立化成工業株式会社製)(実施例2)を、ラミネーター(DuPont社製)を用いて40℃、0.5m/min、加圧なしでラミネートし、その後、さらに、65℃、1MPaの加熱加圧により仮固定をし、フィルムの支持体を除去した。
さらに、フィルム上にシリコーン防湿剤をポッティング(GE東芝シリコーン製、TSE3996ホワイト)した。作製したサンプルを顕微鏡にて観察した。電極とフィルムの間に直径10μm以下の気泡しか存在しないものを○で、直径10を超え25μm未満までの気泡が存在するものを△で、25μm以上の気泡が存在するものを×として評価し、その結果を表1に示した。その後、0V〜5Vの周波数1KHzのパルス電圧をかけながら、温度60℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽に300時間放置した。その後、ガラス基板を取り出し、顕微鏡にて観察した。電極が腐食したものを×で、腐食の見られなかったものを○として評価し、その結果を表1に示した。
【0014】
実施例3、4
ITO(IndiumTinOxide)くし型電極パタンを有するガラス基板に、製造例で作製した異方導電性接着フィルム(実施例3)及び市販の異方導電フィルムAC−8604(日立化成工業株式会社製)(実施例4)を、超音波印加及び加熱加圧装置SH50MP(アルテクス株式会社製)を用いて3秒間、超音波(20KHz)をかけながら、65℃、1MPaの加熱加圧により仮圧着をし、フィルムの支持体を除去した。実施例1と同様に評価し結果を表1に示す。
【0015】
比較例1、2
ITO(IndiumTinOxide)くし型電極パタンを有するガラス基板に、製造例で作製した異方導電性接着フィルム(比較例1)及び市販の異方導電フィルムAC−8604(日立化成工業株式会社製)(比較例2)を65℃、1MPaの加熱加圧により仮固定をし、フィルムの支持体を除去した。実施例1と同様に評価し結果を表1に示す。
【0016】
[表1]
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 比較例1 比較例2
気泡 ○ ○ △ △ × ×
腐食 ○ ○ ○ ○ × ×
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の異方導電性接着フィルムの仮圧着方法によれば、接着部において気泡の発生が抑制された回路部材が得られ、マイグレーションの恐れが少ない液晶パネル等の回路部材の製造を可能にする。
また、本発明は液晶パネルだけでなく異方導電性接着シートを用いた接続工法において広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる一実施形態である異方導電性接着フィルムの仮圧着方法を示す図である。
【図2】本発明にかかる他の実施形態である異方導電性接着フィルムの仮圧着方法を示す図であり、(a)は各部材の位置合わせを示す断面図であり、(b)は超音波をかけながらの加圧を示す断面図である。
【図3】(a)は液晶パネルへの異方導電性接着フィルムの仮圧着を示す斜視図であり、(b)は異方導電性接着フィルムを介した液晶パネルと半導体素子の仮固定を示す斜視図である。
【図4】従来の液晶パネルへの異方導電性接着フィルムの仮圧着を示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 異方導電性接着フィルム
2 ガラス基板(回路部材)
3 巻き取りロール
4 ワークプレート
10 ラミネーター
11 圧着ローラ
12 カッター
30 超音波振動及び加熱加圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネーターを用いて異方導電性接着フィルムを回路部材に仮圧着することを特徴とする異方導電性接着フィルムの仮圧着方法。
【請求項2】
超音波又はマイクロウェーブをかけながら、異方導電性接着フィルムを回路部材に仮圧着することを特徴とする異方導電性接着フィルムの仮圧着方法。
【請求項3】
回路部材の仮圧着部位を真空にしながら、異方導電性接着フィルムを回路部材に仮圧着することを特徴とする異方導電性接着フィルムの仮圧着方法。
【請求項4】
異方導電性接着フィルムと回路部材の間にできる気泡の総面積が、異方導電性接着フィルムと回路部材との接触面積の5%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の異方導電性接着フィルムの仮圧着方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−131822(P2006−131822A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324902(P2004−324902)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】