説明

異方導電性接着フィルム

【課題】微細パターンの電気的接続において、微小面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)を起こしにくく、異なるパターンの半導体チップに対しても接続可能で、長期に渡り接続安定性を保持できる異方導電性接着フィルムを提供すること。
【解決手段】導電粒子が絶縁性接着剤の表面層に単層として配置されて導電層を形成し、該導電層の少なくとも片側に、絶縁性接着剤からなる絶縁層を有してなる、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方導電性接着フィルムにおいて、導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下、かつ、導電粒子の平均粒径に対して1.5倍以上5倍以下であり、その変動係数が、0.025以上0.5以下である異方導電性接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンの電気的接続において、微小面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)を起こしにくく、異なる電極パターンの半導体チップに対しても接続可能で、長期に渡り接続安定性を保持できる異方導電性接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
異方導電性接着フィルムは、絶縁性接着剤中に導電粒子を分散させたフィルムであり、液晶ディスプレイと半導体チップやTCPとの接続又はFPCとTCPとの接続、FPCとプリント配線板との接続を簡便に行うために使用される接続部材で、例えば、ノート型パソコンや携帯電話の液晶ディスプレイと制御ICとの接続用として広範に用いられ、最近では、半導体チップを直接プリント基板やフレキシブル配線板に搭載するフリップチップ実装にも用いられている(特許文献1、2、3)。
この分野では近年、接続される配線パターンや電極パターンの寸法が益々微細化されている。微細化された配線や電極の幅は10μmレベルまで微細化される場合も多くなってきている一方で、これまで用いられてきた導電粒子の平均粒径は、配線や電極の線幅と同レベルの数μmから10μレベルの粒子であった。そうすると、接続される電極パターンの寸法が小さくなると、導電粒子がランダムに分散配置されている異方導電性接着フィルムでは、導電粒子の分布に偏差が生じているため、接続すべき電極パターンが導電粒子の存在しない位置に配置されてしまい、電気的に接続されない場合が、確率論として避けられない。
【0003】
この問題点を解決するためには、より小さな導電粒子を高密度でフィルム内に分散させることが有効であるが、導電粒子の寸法を小さくすると、表面積が急激に大きくなって2次凝集し易くなり、隣接電極間の絶縁を保持できなくなり、逆に、絶縁を保持するために導電粒子の密度を下げると、今度は、接続されない配線パターンや電極パターンが発生してしまうため、接続信頼性を保ったまま微細化に対応することは困難とされていた(特許文献4)。
さらに、導電粒子を小粒径化すればするほど、用いる絶縁性接着剤によっては、絶縁抵抗が低くなったり、接続抵抗が高くなったり、隣接電極間でショートが発生したりといった長期接続信頼性が低下する場合が多くなることが判り、その対策が併せて求められていた。
【0004】
一方、微細パターンの接続に対応する技術として、帯電させた導電粒子を絶縁性接着剤の表面に散布して、表面に付着した導電粒子を絶縁接着剤の表層中に埋め込む方法(特許文献5)や、所定配置された吸引孔を有する導電粒子吸着治具を用いて、導電粒子を配列する方法(特許文献6)が開示されているが、導電粒子の配列具合が低い場合は、昨今求められている非常に微細な電極パターンの接続には対応できず、一方、配列具合が非常に高い場合は、導電粒子の配列ピッチにあった電極パターンの接続に対しては、高い接続性を示すものの、導電粒子の配列パターンと接続したい電極パターンが合っていない場合は、やはり接続信頼性が劣ることとなる。即ち、電極パターンの異なる複数の半導体チップを接続するためには、異なる種類の異方導電性接着フィルムを使用する必要があり、生産性において課題を有している。
【0005】
【特許文献1】特開平03−107888号公報
【特許文献2】特開平04−366630号公報
【特許文献3】特開昭61−195179号公報
【特許文献4】特開平09−312176号公報
【特許文献5】特開2000−151084号公報
【特許文献6】特開2002−332461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、微細パターンの電気的接続において、微小面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)を起こしにくく、異なる電極パターンの半導体チップに対しても接続可能で、長期に渡り接続安定性を保持できる異方導電性接着フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、粒子間距離が特定の平均値と特定の変動係数を有する様に、導電粒子を絶縁性接着剤の表面層に単層として配置する事で、上記目的に適合しうることを見出した。
更に、絶縁性接着剤の選定において、すなわち、用いる絶縁性接着剤の種類によっては、接続の長期接続安定性が劣る場合があり、そのような樹脂を詳細に調べたところ、吸水率が高かったり、全塩素含有量が高かったりする場合があることが判り、これらの要件を規定することで、長期に渡り安定した接続信頼性を維持したまま、微細化に対応できる異方導電性接続フィルムを開発することができ、本発明を完成させた。
【0008】
上記課題を解決するために本願出願以前に行われた上記技術開示では、即ち特許文献5では、導電粒子の面内配置はランダムのままであり、導電粒子の分布に偏差が生じたままであり、接続される電極パターンの寸法が小さくなると、接続すべき電極パターンが導電粒子の存在しない位置に配置されてしまい電気的に接続されないという問題が、確率論として避けられないままであったし、特許文献6では、所定配置された吸引孔を有する導電粒子吸着治具を用意しなければならなかったし、接続パターンの粗密の度合いや接続する相手側の半導体チップの1パターン1チップごとに専用の冶具を用意して、切替えごとに異方導電性接着フィルム製造ラインを止めて冶具を交換しなければならなかった。
本願のように、単に導電粒子の配列を制御するという単純な工夫だけで、上記課題を解決できたことは、確率論的な問題を内在させたままであった特許文献5や、膨大でしかも延々と数が増えつづける冶具を用意しなければならず、接続ラインの生産性向上にも限界があった特許文献6の技術開示に鑑みて、当業者にとって予想だにできなかった、驚くべき発見であった。
【0009】
即ち、本発明は、下記の通りである。
1)導電粒子が絶縁性接着剤の表面層に単層として配置されて導電層を形成し、該導電層の少なくとも片側に、絶縁性接着剤からなる絶縁層を有してなる、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方導電性接着フィルムにおいて、導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下、かつ、導電粒子の平均粒径に対して1.5倍以上5倍以下であり、その変動係数が、0.025以上0.5以下である異方導電性接着フィルム。
2)該導電粒子の平均粒径が0.5μm以上10μm未満である上記1)記載の異方導電性接着フィルム。
3)該絶縁性接着剤の硬化後の85℃、85%RH、300時間吸水率が5質量%以下である上記1)又は2)のいずれかに記載の異方導電性接着フィルム。
4)該絶縁性接着剤に含まれる全塩素量が600ppm以下である上記1)〜3)のいずれかに記載の異方導電性接着フィルム。
5)該異方導電性接着剤の膜厚が5μm以上50μm以下である上記1)〜4)のいずれかに記載の異方導電性接着フィルム。
6)粘着剤によって導電粒子が固定されたフィルムの導電粒子側に、絶縁性接着剤を重ね、絶縁性接着剤層に導電粒子を埋め込むことを特徴とする上記1)〜5)のいずれかに記載の異方導電性接着フィルムの製造方法。
7)粘着剤によって導電粒子が固定された延伸可能なフィルムを延伸した後、導電粒子側に、絶縁性接着剤を重ね、絶縁性接着剤層に導電粒子を埋め込むことを特徴とする上記6)記載の異方導電性接着フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の異方導電性接着フィルムは、微細面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)を起こしにくく、微細ピッチの接続性に優れると共に、異なる電極パターンの半導体チップ毎に異方導電性接着フィルムを替える必要がなく生産性に優れ、長期接続信頼性に優れる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明は、導電粒子が絶縁性接着剤に分散し、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方導電性接着フィルムに関する。
本発明の異方導電性接着フィルムは、絶縁性接着剤の表面層に導電粒子が単層として配置されて導電層が形成されている。
【0012】
ここで表面層に配置するとは、導電粒子の一部または全体が絶縁性接着剤の表面に埋め込まれている状態を意味し、全体が埋め込まれている状態が、電極への接着性が高く好ましい。導電粒子の一部が埋め込まれている場合、導電粒子はその平均粒径に対して1/3以上が絶縁性接着剤に埋め込まれていることで絶縁性接着剤からの脱離が起こりにくくなり好ましい。更に好ましくは1/2以上埋め込まれていることであり、更に好ましくは2/3以上埋め込まれていることであり、更に好ましくは4/5以上埋め込まれていることであり、更に好ましくは9/10以上埋め込まれていることである。一方、導電粒子が絶縁性接着剤層に完全に埋め込まれている場合、導電粒子と絶縁性接着剤の表面との間の絶縁性接着剤の厚み(即ち、導体粒子表面と絶縁性接着剤との間の最短距離)は、導電性を得るための加圧の際に導電粒子の移動を抑えるために、導電粒子の平均粒径に対して1.0倍未満が好ましい。更に好ましくは0.8倍未満、更に好ましくは0.5倍未満、更に好ましくは0.3倍未満、更に好ましくは0.1倍未満である。本発明では、厚み方向の導電性と面方向の絶縁性(以下しばしば異方導電性と称す)を高レベルで確保するために、絶縁性接着剤層に導電粒子は単層で配置される。ここで、単層で配置されるとは、導電粒子の存在する接着剤層の厚みが導電粒子の平均粒径に対して2倍未満であることを意味する。好ましくは1倍以上1.8倍未満、更に好ましくは1倍以上1.5倍未満、更に好ましくは1倍以上1.3倍未満である。本発明では、導電粒子が絶縁性接着剤の表面層に単層として存在することにより、特に、半導体チップと液晶パネルの接続の様に、接続する電極高さが高いものとほぼ平らなものとの接続において、配列した導電粒子が接続時に大きく移動してしまう事を抑制することが可能となっている。
【0013】
本発明の異方導電性接着フィルムは、導電粒子が特定の中心間距離で、更にその中心間距離が特定の変動係数を有して配列されることによって、高い異方導電性を有している。即ち、本発明の異方導電性接着フィルムは、その導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下であり、かつ、導電粒子の平均粒径の1.5倍以上5倍以下である。2μm以上の中心間距離でかつ導電粒子の平均粒径の1.5倍以上にすることで、面方向の絶縁性、即ち、隣接する電極間の絶縁性を高レベルで維持できる。一方、中心間距離を20μm以下でかつ導電粒子の平均粒径の5倍以下にすることで、厚さ方向の導電性、即ち接続電極間の電気的接続性を維持できる導電粒子密度を得ることができ、異方導電性接着フィルムとして高い性能を発揮する。導電粒子の中心間距離の平均は、好ましくは2.5μm以上18μm以下、更に好ましくは3μm以上16μm以下、更に好ましくは3.5μm以上15μm以下であり、更に好ましくは4μm以上13μm以下であり、導電粒子の平均粒径に対して、好ましくは1.55倍以上4.5倍以下、更に好ましくは1.6倍以上4倍以下、更に好ましくは1.65倍以上3.5倍以下である。導電粒子の中心間距離の変動係数は、導電粒子の中心間距離の標準偏差をその平均値で割った値であり、本発明においては、0.025以上0.5以下である。好ましくは0.05以上0.45以下、更に好ましくは0.07以上0.4以下、更に好ましくは0.08以上0.35以下、更に好ましくは0.1以上0.3以下である。0.025以上にすることで、異なる電極パターンの半導体チップであっても安定した接続が可能であり、一方、0.5以下とすることで、接続電極間に捕捉される導電粒子数が安定し、電極ごとの接続抵抗のバラツキが小さく、安定した接続が得られる。
【0014】
本発明の異方導電性接着剤において、導電粒子を絶縁性接着剤の表層に単層として配列させるには、例えば下記の様な方法がある。
即ち、まず延伸可能なフィルム上に粘着剤を塗布し、その上に導電粒子を密に充填する。次に、粘着剤層に届かず、他の導電粒子の上に乗った導電粒子を排除する事で、密に充填された単層の導電粒子層が得られる。ここで得られた導電粒子層の乗ったフィルムを、所望の延伸倍率で延伸することで、個々の導電粒子が、本発明に必要な変動係数をもって、所望の中心間距離となる様に配置される。次に、延伸したフィルムの導電粒子が配置された側に、絶縁性接着剤層を重ね、絶縁性接着剤層に導電粒子を埋め込むことで、本発明の異方導電性接着フィルムが得られる。一般に異方導電性接着フィルムは、所望の幅にスリットされ、リール状に巻き取られる。
【0015】
延伸可能なフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、PEN等のポリエステル、ナイロン、塩化ビニール、ポリビニルアルコール等のフィルムが例示される。粘着剤としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル、クロロプレン等が例示される。
延伸は縦方向延伸と横方向延伸の両方が行われる、所謂、2軸延伸であり、公知の方法で実施することができる。例えば、クリップ等でフィルムの2辺または4辺を挟んで引っ張る方法や、2以上のロールで挟んでロールの回転速度を変えることで延伸する方法等が挙げられる。延伸は縦方向と横方向を同時に延伸する同時二軸延伸でも良いし、一方向を延伸した後、他方を延伸する逐次ニ軸延伸でも良い。延伸時の導電粒子の配列乱れを起こし難いので同時ニ軸延伸が好ましい。延伸を精度良く行うために、延伸可能なフィルムを軟化させて行うのが好ましく、使用する延伸可能なフィルムによるが、例えば、70℃以上250℃以下で延伸を行うのが好ましい。
【0016】
延伸したフィルムの導電粒子が配置された側に、絶縁性接着剤層を重ね、絶縁性接着剤層に導電粒子を埋め込む方法としては、例えば、絶縁性接着剤と溶剤を含む塗工液を、延伸したフィルムの導電粒子が配置された側に、所望の膜厚になる様に塗工し、溶剤を飛散させて乾燥する方法や、セパレーター上に形成されたフィルム状の絶縁性接着剤を、延伸したフィルムの導電粒子が配置された側に、ラミネーター等を用いてラミネートし、ローラー等を用いたて絶縁性接着剤層に導電粒子を埋め込む方法等が挙げられる。必要に応じ延伸したフィルムを剥離した後、本発明の異方導電性接着フィルムはスリットされる。
本発明の異方導電性接着フィルムにおいて、導電粒子を絶縁性接着剤の表層に単層として配列させる他の方法としては、導電粒子の平均粒子径よりも小さく、所望の中心間距離と中心間距離の変動係数を有する吸引孔を多数設けた吸引治具に導電粒子を吸引し、絶縁性接着剤に転写する方法が挙げられる。
ここで用いられる吸引治具の吸引孔の内径は導電粒子の平均粒子径よりも小さいことが必要であり、導電粒子の平均粒粒子径の90%以下が好ましい。30%〜80%の径が更に好ましい。
ここで用いられる吸引治具は、例えば、吸引孔をなす貫通孔が所定の配置で形成された孔開きシート部品と、真空ポンプ等の吸引機構に接続する接続口と孔開きシート部品を保持する部分を有するハウジング部から構成された治具が挙げられる。
【0017】
孔開きシート部品の製造方法としては、例えば、ポリイミド等の合成樹脂等からなる厚さ1μm以上1000μm以下の板状物の所定位置に高エネルギー線を照射することにより、当該板状物に、吸引孔に対応させた配置で貫通孔を形成する方法が挙げられる。高エネルギー線を照射するときに、孔開きシート部品の貫通孔に対応した開口部を有する金属マスクを用いることで所定位置に照射することができる。高エネルギー線としては、エキシマレーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザー、電子線、分子線、各種のイオン線、収束イオン線などを用いることができる。あるいは、微小領域に収束できる高エネルギー線を用いて、ガルバノミラーや電磁石等を用いて高エネルギー線の収束ビームを走査することで、あるいは貫通孔を形成する上記板状物をXYステージ上で移動させることで、合成樹脂等からなる上記板状物に所定配置で貫通孔を形成することができる。
【0018】
微小領域に収束できない高エネルギー線の場合には、上述のように金属マスクを用いるか、フォトマスクを用いて照射を行う。あるいは、貫通孔を形成する上記板状物に感光性樹脂層を設け、フォトリソグラフィとエッチングを行うことによって、当該板状物に所定配置で貫通孔を形成してもよい。
上記板状物の材料としては、ポリイミド以外にも、各種液晶ポリマー、アラミド、ポリエステル等の寸法安定性の良い樹脂を使用することができる。また、合成樹脂以外にも、ニッケル、クロム、タングステン等の金属、シリコン等の半導体が挙げられる。この方法によれば、数μm程度の微小な貫通孔が所定配置で形成されている孔開きシート部品が容易に得られる。
【0019】
吸引治具のハウジング内には、孔開きシート部品を支持するために、孔開きシート部品の貫通孔よりも小さい孔を有するセラミック等からなる多孔質材が固定されていて、その外側に孔開きシート部品が固定されている構造が好ましい。
吸引治具を用いて、本発明の異方導電性接着フィルムを製造する方法としては、吸引治具を真空ポンプ等の吸引機構に接続し、孔開きシート部品側を、多数の導電粒子が入った容器内に挿入し、吸引状態にして、全ての吸引孔に導電粒子が吸着されるようにし、吸引孔以外の部分に付着した導電粒子をエアーブロー等の手段で除去する。
次に、絶縁性接着剤を、孔開きシート部品の導電粒子を吸着している面に向けて押し付ける。次に、吸引状態を解除し、絶縁性接着剤を孔開きシート部品から引き離すことで導電粒子は絶縁性接着剤に所定の配置で転写される。これで導電粒子は絶縁性接着剤の表面層に単層として所定配置される。導電粒子の絶縁性接着剤中への埋め込みが不十分であれば、表面にPETフィルム等のカバーを掛けてロール等で埋め込むことができる。得られた本発明の異方導電性接着フィルムは所望の幅にスリットされる。
【0020】
本発明に用いられる導電粒子としては、金属粒子、炭素からなる粒子や高分子核材に金属薄膜を被覆した粒子等を用いる事ができる。
金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、半田、インジウム、パラジウム等の単体や、2種以上のこれらの金属が層状あるいは傾斜状に組み合わされている粒子が例示される。
高分子核材に金属薄膜を被覆した粒子としては、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン架橋体、NBR、SBR等のポリマーの中から1種あるいは2種以上組み合わせた高分子核材に、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、半田、インジウム、パラジウム等の中から1種あるいは2種以上組み合わせてメッキ等により金属被覆した粒子が例示される。金属薄膜の厚さは0.005μm以上1μm以下の範囲が、接続安定性と粒子の凝集性の観点から好ましい。金属薄膜は均一に被覆されていることが接続安定性上好ましい。これら導電粒子の表面を更に絶縁被覆した粒子も使用することができる。
導電粒子の平均粒子径は、0.5μm以上10μm未満の範囲が粒子の凝集性と異方導電性の観点から好ましい。更に好ましくは0.7μm以上7μm未満、更に好ましくは1μm以上6μm未満、更に好ましくは1.5μm以上5.5μm未満、更に好ましくは1.8μm以上5.2μm未満である。導電粒子の粒子径分布の標準偏差は平均粒子径の50%以下が好ましい。
【0021】
本発明に用いられる絶縁性接着剤は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から選ばれた1種類以上の樹脂を含有する。これらの樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、SBR、SBS、NBR、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルオキシド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、スチレンブタジエン樹脂、カルボキシル変性ニトリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等又はそれらの変性樹脂が挙げられる。特に基板との接着性を必要とする場合には、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0022】
ここで用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エーテル型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環族エポキサイド等があり、これらエポキシ樹脂はハロゲン化や水素添加されていても良く、また、ウレタン変性、ゴム変性、シリコーン変性等の変性されたエポキシ樹脂でも良い。
【0023】
本発明の異方導電性接着フィルムは、上記導電層の少なくとも片側に絶縁層を有することが特徴である。
絶縁層は、絶縁性接着剤からなり、該絶縁性接着剤は、上記に示した導電層の絶縁性接着剤の中から適宜選ばれる。
該絶縁層の製作方法としては、上記導電層の少なくとも片側にラミネート等の方法により接着させても良いし、上記導電層は、導電粒子が絶縁性接着剤の表面層に単層で配置されているため、該絶縁性接着剤の表面より内側の部分は絶縁層になっており、これを以って絶縁層としても良い。
さらに、該導電層と該絶縁層の繰り返しを何層かに渡って積層しても良いし、導電層と絶縁層の中間に、例えば、熱可塑性樹脂などからなる中間層を有していても良い。
【0024】
該絶縁層には、絶縁性粒子、絶縁性繊維、無機微粒子などを適宜含有することができて、絶縁性粒子は隣接電極間の絶縁性向上や接続電極のギャップ調整の効果が期待できて好ましく、例えば無機系材料ならば、マイカ粉末、シリカまたは石英粉末、炭酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、ガラス粉末等が例示され、有機系材料であるならば、パルプ粉末、ナイロン粉末、テトロン粉末、あるいは、ベンゾグアナミン粒子などが例示される。絶縁性粒子は、平均粒径が導電粒子よりも小さく、また、硬度が導電粒子よりも固い粒子が好ましい。
絶縁性繊維は、該絶縁性接着剤の強度を増すことで、基板との熱膨張率の差に由来する応力や剥離を防止する効果が期待できて好ましく、不織布でも織布でも、絶縁性を有するならば使用することができ、例えば、ガラス、セラミック、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素などの無機物の繊維状物、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ケブラー、シリコーンカーバイドなどの有機物の繊維状物などが例示される。
無機微粒子も、絶縁性繊維と同様の効果が期待できて好ましく、例えば、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、砂、タルク、金属粉末、エロジール等の微粒子が挙げられる。
【0025】
本発明で重要な要件は、該絶縁性接着剤の硬化後の吸水率であり、85℃、相対湿度85%、300時間の加湿試験で重量増加率が5%以下であることが好ましく、更に好ましくは4%以下、更に好ましくは3%以下で、この値は0に近く低いほど良い。
吸水率が5%を超えて高いと、長期接続安定性が保持できず好ましくない。
本発明のもう一つの重要な要件は、該絶縁性接着剤の全塩素量であって、該絶縁性接着剤中に含まれる有機塩素および無機塩素の総量のことであり、該絶縁性接着剤の樹脂(好ましくは前記エポキシ樹脂)に対する質量基準の値である。具体的には、試料1gを25mlのエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解し、これに1規定水酸化カリウム/プロピレングリコール溶液25mlを加えて20分間煮沸した後、硝酸銀水溶液で滴定した値である。具体的数値としては、全塩素量は600ppm以下であり、好ましくは450ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下で0に近い程良い。
全塩素量が600ppmを超えて多いと、長期接続安定性が保持できず好ましくない。
【0026】
全塩素量の低い樹脂を得る方法としては、もともと全塩素量の少ない樹脂を用いること以外に、樹脂を使用する前に精製する方法が一般的で、通常の有機合成で用いられる種々の精製方法を用いることができ、蒸留、再結晶、液液抽出、吸着などの方法が例示される。 該絶縁性接着剤は、接続に際して加熱されたり、樹脂と基板等の熱伝導率の差により、応力がかかったり、剥離が生じたりする場合があるため、上記吸水率や全塩素量以外にも、具備しておくことが好ましい物性がいくつか例示される。代表的な物性としては、例えば、該絶縁性接着剤が明瞭な融点を持つ場合には、該絶縁性接着剤の融点は一般的に25℃以上250℃以下が好ましく、JIS−K−6887記載の方法で測定した引張り強さは一般的に0.3kgf/mm以上10kgf/mm以下が好ましく、伸びは一般的に0%以上300%以下であることが好ましい。
【0027】
前記エポキシ樹脂の硬化剤としては、潜在性硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤としては、ホウ素化合物、ヒドラジド、3級アミン、イミダゾール、ジシアンジアミド、無機酸、カルボン酸無水物、チオール、イソシアネート、ホウ素錯塩及びそれらの誘導体等の硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤の中でも、マイクロカプセル型の硬化剤が好ましい。マイクロカプセル型硬化剤は、前記硬化剤の表面を樹脂皮膜等で安定化したもので、接続作業時の温度や圧力で樹脂皮膜が破壊され、硬化剤がマイクロカプセル外に拡散し、エポキシ樹脂と反応する。マイクロカプセル型潜在性硬化剤の中でも、アミンアダクト、イミダゾールアダクト等のアダクト型硬化剤をマイクロカプセル化した潜在性硬化剤が安定性と硬化性のバランスに優れ好ましい。これらエポキシ樹脂の硬化剤は一般に、エポキシ樹脂100質量部に対して、2〜100質量部の量で用いられる。
【0028】
本発明に用いられる絶縁性接着剤は、フィルム形成性、接着性、硬化時の応力緩和製等を付与する目的で、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルゴム、SBR、NBR、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、尿素樹脂、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ビニル基、アミノ基などの官能基を含有するゴム、エラストマー類等の高分子成分を含有することが好ましい。これら高分子成分は分子量が10,000〜1,000,000のものが好ましい。高分子成分の含有量は、絶縁性接着剤に対して2〜80質量%が好ましい。
絶縁性接着剤には、さらに、絶縁粒子、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤等を含有することもできる。絶縁粒子や充填剤を含有する場合、これらの最大径は導電粒子の平均粒径未満である事が好ましい。カップリング剤としてはケチミン基、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基含有シランカップリング剤が、接着性の向上の点から好ましい。
【0029】
絶縁性接着剤の各成分を混合する場合、必要に応じ、溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等が挙げられる。
絶縁性接着剤は単一組成であっても構わないし、異なる組成の接着剤が2層以上積層されていても構わない。単一組成のほうが、内部応力の蓄積がなく好ましい。
絶縁性接着剤の製造は、例えば、各成分を溶剤中で混合、塗工液を作成し、基材上にアプリケーター塗装等により塗工、オーブン中で溶剤を揮散させる事で製造できる。
本発明の異方導電性接着フィルムの厚みは、5μm以上50μm以下が好ましく、更に好ましくは6μm以上35μm以下、更に好ましくは7μm以上25μm以下、更に好ましくは8μm以上20μm以下である。
【0030】
異方導電性接着フィルムは保護フィルムを有していてもよい。該保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、PEN等のポリエステル、ナイロン、塩化ビニール、ポリビニルアルコール等のフィルムが例示される。好ましい保護フィルム用の樹脂としては、ポリプロピレン、PETが挙げられる。該保護フィルムはフッ素処理、Si処理、アルキド処理等の表面処理を行っていることが好ましい。
このようにして製造された本発明の異方導電性接着フィルムは、線幅10μクラスのファインピッチ接続用に好適に用いることができ、液晶ディスプレイとTCP、TCPとFPC、FPCとプリント配線基板との接続、あるいは、半導体シリコンチップを直接基板に実装するフリップチップ実装に好適に用いることができる。
【実施例】
【0031】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
a.吸水率
85℃、相対湿度85%RHの恒温槽中に300時間放置し、質量の増加分を吸水率とした。
b.全塩素量
試料1gを25mlのエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解し、これに1規定KOH/プロピレングリコール溶液25mlを加えて20分間煮沸した後、硝酸銀水溶液で滴定して求めた。
【0032】
[実施例1]
フェノキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名:フェノトートYP50)100質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:AER2603)50質量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:ノバキュアHX−3941HP)50質量部、酢酸エチル200質量部を混合し、接着剤ワニスを得た。この接着剤ワニスを離型処理した50μmのPETフィルム製セパレーター上にブレードコーターを用いて塗布、溶剤を乾燥除去して、平均膜厚20μmのフィルム状の絶縁性接着剤Aを得た。
250μm無延伸ポリプロピレンフィルム上に、アクリル系の粘着剤を塗布、乾燥し、2μmの粘着剤層を有するフィルムを得た。このフィルム上に、プラスチック粒子を平均厚さ0.11μmのNi/Auメッキで被覆して得られる平均粒径5μm、標準偏差0.1μmの導電粒子を密に充填した後、エアーブローにより粘着剤層に到達していない導電粒子を排除した。
【0033】
次にこの導電粒子が付着したフィルムを、同時ニ軸延伸装置を用いて、150℃で、縦横共に3%/秒の比率で2.5倍延伸し、導電粒子が配列したフィルムを得た。この導電粒子が配列したフィルムの導電粒子側にセパレーターに付着した絶縁性接着剤Aをラミネートした後、ローラーを用いて、導電粒子を絶縁性接着剤の表面層に埋め込み固定させて異方導電性接着フィルムaを得た。
得られた異方導電性接着フィルムaをマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名:VHX−100、以下同じ)で観察した結果、絶縁性接着剤Aの表面に導電粒子が単層で配置され、導電粒子は絶縁性接着剤Aに完全に埋め込まれ、絶縁性接着剤Aの表面と導電粒子の間に0.2μm以下の絶縁性接着剤Aの層が存在した。またマイクロスコープで得られた画像から、画像処理ソフト(旭化成株式会社製、商品名:A像くん、以下同じ)を用いて、導電粒子の中心間距離の平均値およびその変動係数を求めた結果、平均値が12.4μm、変動係数が0.18であった。尚、導電粒子の中心間距離は、各粒子の中心点を用いたデローニ三角分割でできる三角形の辺の長さを使用し、0.06mm内の粒子について測定した。
【0034】
次に、20μm×100μmの金バンプがピッチ30μmで並んだベアチップ1、15μm×130μmの金バンプがピッチ30μmで並んだベアチップ2、16μm×125μmの金バンプがピッチ25μmで並んだベアチップ3、および、13μm×150μmの金バンプがピッチ25μmで並んだベアチップ4とそれぞれのベアチップに対応した接続ピッチを有するITOガラス基板を準備し、異方導電性接着フィルムaを延伸したポリプロピレンフィルムから剥がし、4種類のITOガラス基板に80℃、5kg/cm、3秒間の条件で熱圧着し、セパレーターを剥がした後、それぞれのITOガラス基板に対応するベアチップをフリップチップボンダー(東レエンジニアリング株式会社製FC2000、以下同じ)を用いて位置合わせし、200℃、30kg/cm、20秒間加熱加圧し、ベアチップをITOガラス基板に接続した。それぞれのベアチップとITOガラス基板からは、64箇所の接合部を有するデイジーチェーン回路と、20対の櫛を有する櫛形電極が形成され、接続抵抗測定と絶縁抵抗測定を行った。4種類のベアチップとITOガラス電極よりなる回路のすべてにおいて、デイジーチェーン回路は導通がとれすべての接続が行われていることを示した。一方、櫛形電極の絶縁抵抗は10Ω以上であり、隣接電極間でショートの発生はなかった。結果を表1に示す。
【0035】
[実施例2〜4]
プラスチック粒子を平均厚さ0.11μmのNi/Auメッキで被覆して得られる平均粒径3μmの導電粒子を用い、導電粒子の充填度合いと延伸倍率をコントロールした以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着フィルムを得、実施例1と同様にして、導電粒子の中心間距離の測定と接続抵抗測定および絶縁抵抗測定を実施した。結果を表1に示す。
【0036】
[実施例5]
金属マスクを通してエキシマレーザーを照射することにより、直径3μmの貫通孔を中心間距離の平均値が12.5μm、中心間距離の変動係数が0.18となる様に形成した25μm厚のポリイミドフィルムを作成し、それを孔開きシート部品とする吸引治具の全ての吸引孔に、実施例1で用いた導電粒子を吸引し、吸引孔以外の部分に付着した導電粒子をエアーブローにより除去した。次に、実施例1で得られたセパレーター付の絶縁性接着剤Aの接着剤面を吸引治具の導電粒子を吸着している面に押し付け、吸引状態を解除し、絶縁性接着剤Aを吸引治具から引き離すことで、導電粒子が絶縁性接着剤Aに転写した。更に転写された導電粒子の上に38μmのシリコーン処理されたPETフィルムをカバーとして掛けて、ローラーを用いて導電粒子を絶縁性接着剤の表面層に埋め込み、異方導電性接着フィルムを得た。実施例1と同様にして、導電粒子の中心間距離の測定と接続抵抗測定および絶縁抵抗測定を実施した。結果を表1に示す。
【0037】
[比較例1]
粘着剤を塗布した無延伸ポリプロピレンフィルム上への導電粒子の充填密度を下げて、2.1倍に延伸した以外は実施例1と同様にして異方導電性接着フィルムを得、実施例1と同様にして、導電粒子の中心間距離の測定と接続抵抗測定および絶縁抵抗測定を実施した。結果を表1に示す。表1に示した様に、比較例1で用いた異方導電性接着フィルムは、導電粒子の中心間距離の変動係数が大き過ぎるために、デイジーチェーン回路の接続不良による接続抵抗の増大と、櫛型電極間のショートが発生し、ファインピッチ用途には適さなかった。
【0038】
[比較例2]
未延伸フィルムへの導電粒子の充填方法を下記の様に変更した以外は実施例1と同様にして異方導電性接着フィルムを得た。即ち、四方枠の付いた20cm角の平坦なステンレス板の上に、プラスチック粒子を平均厚さ0.11μmのNi/Auメッキで被覆して得られる平均粒径5μm、標準偏差0.1μmの導電粒子0.396gを充填し、30分間振動を与えて導電粒子を単層に充填した。充填された導電粒子を、実施例1で使用した粘着剤が塗布された無延伸ポリプロピレンフィルムに転写し、導電粒子が付着した未延伸フィルムを得た。以下、実施例1と同様の方法で異方導電性接着フィルムを得た。得られた異方導電性接着フィルムを用いて、実施例1と同様にして、導電粒子の中心間距離の測定と接続抵抗測定および絶縁抵抗測定を実施した。結果を表1に示す。表1に示した様に、比較例2で使用した異方導電性接着フィルムは、導電粒子の中心間距離の変動係数が小さ過ぎるために、導電粒子の中心間距離の平均値に近い電極幅を用いた回路において、導電粒子の介在しない接続部ができ、接続不良による不具合が発生した。
【0039】
[比較例3]
実施例1で得た異方導電性接着フィルムaの導電粒子側に、更に、絶縁性接着剤Aをラミネートして、厚さ方向のほぼ中間部に単層として導電粒子が存在する異方導電性接着フィルムを得、実施例1と同様にして、導電粒子の中心間距離の測定と接続抵抗測定および絶縁抵抗測定を実施した。結果を表1に示す。表1に示した様に、比較例3で用いた異方導電性接着フィルムは導電粒子が表面層に存在せず中間部に存在するため、接続時に導電粒子が接続部以外に流れ出してしまい、接続部に導電粒子が存在しないために、デイジーチェーン回路の接続不良と言う不具合が発生した。
【0040】
[比較例4]
孔開きシート部品に開けた貫通孔の中心間距離の変動係数を0.01にした以外は実施例5と同様にして、異方導電性接着フィルムを得た。得られた異方導電性接着フィルムを用いて、実施例1と同様にして、導電粒子の中心間距離の測定と接続抵抗測定および絶縁抵抗測定を実施した。結果を表1に示す。表1に示した様に、比較例4で使用した異方導電性接着フィルムは、導電粒子の中心間距離の変動係数が小さ過ぎるために、導電粒子の中心間距離の平均値に近い電極幅を用いた回路において、導電粒子の介在しない接続部ができ、接続不良による不具合が発生した。
【0041】
[比較例5]
孔開きシート部品に開けた貫通孔の中心間距離の変動係数を0.65にした以外は実施例5と同様にして、異方導電性接着フィルムを得た。得られた異方導電性接着フィルムを用いて、実施例1と同様にして、導電粒子の中心間距離の測定と接続抵抗測定および絶縁抵抗測定を実施した。結果を表1に示す。表1に示した様に、比較例5で用いた異方導電性接着フィルムは、導電粒子の中心間距離の変動係数が大き過ぎるために、デイジーチェーン回路の接続不良による接続抵抗の増大と、櫛型電極間のショートが発生し、ファインピッチ用途には適さなかった。
【0042】
【表1】

【0043】
[実施例6]
フェノキシ樹脂(全塩素量750ppm、分子量53000)100質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(全塩素量20ppm、エポキシ当量185)50部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:ノバキュア 全塩素量500ppm)50部、酢酸エチル200部を混合し、接着剤ワニスを得た。この接着剤ワニスを離型処理した厚さ50μmのPETフィルム製セパレーター上にブレードコーターを用いて塗布、溶剤を乾燥除去して、平均膜厚20μmのフィルム状の絶縁性接着剤Bを得た。
該絶縁性接着剤Bの塩素量は500ppmであった。
該絶縁性接着剤Bを190℃、1分で硬化させた後の85℃、85%RH、300時間の加湿試験後の吸水率は1.6質量%であった。
【0044】
以下、絶縁性接着剤Aの代わりに絶縁性接着剤Bを用いた以外は実施例5と同様にして異方導電性接着フィルムを得、実施例1と同様にして、導電性粒子の中心間距離の測定を実施した結果、平均値が12.5μm、変動係数が0.18であった。
次に、実施例1で用いたベアチップ1とそれに対応するITOガラス基板準備し、実施例1と同様にして、接続抵抗測定と絶縁抵抗測定を行った。デイジーチェーン回路は導通がとれすべての接続が行われていることを示した。一方、櫛形電極の絶縁抵抗は10以上であり、隣接電極間でショートの発生はなかった。
長期接続信頼性は、85℃、85%RHで300時間の加湿後の接続試験と、85℃、85%RH、15Vで300時間後の絶縁試験により評価した。接続試験では、デイジーチェーン回路は導通がとれ、接続は維持されていた。一方、絶縁試験では、櫛形電極の絶縁抵抗は10以上を維持し、隣接電極間でショートの発生はなく、長期接続信頼性を有していた。
【0045】
[比較例6]
フェノキシ樹脂の代わりにジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂(大日本化学工業株式会社製、商品名:エピクロンN−665)を用いた以外は、実施例6と同様にして絶縁性接着剤を得、更に異方導電性接着フィルムを製作し、実施例6と同様に評価した。
該絶縁性接着剤の全塩素量は250ppmであり、190℃、1分で硬化させた後の85℃、85%RH、300時間での吸水率は5.3質量%であった。
長期接続信頼性の結果は、接続試験ではデイジーチェーン回路がオープンとなり、一方、絶縁試験では櫛形電極の絶縁抵抗は10に低下しており、長期接続信頼性は得られなかった。
【0046】
[比較例7]
フェノキシ樹脂の代わりにビフェニル系エポキシ樹脂(JER株式会社製、商品名:エピコートYL6121H)を用いた以外は、実施例6と同様にして異方導電性接着フィルムを製作し、実施例6と同様に評価した。
該絶縁性接着剤の全塩素量は850ppmであり、190℃、1分で硬化させた後の85℃、85%RH、300時間での吸水率は1.0質量%であった。
長期接続信頼性の結果は、絶縁試験では櫛形電極の絶縁抵抗は10以上を維持し、隣接電極間でショートの発生はなかったが、接続試験ではデイジーチェーン回路がオープンとなり、長期接続信頼性は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の異方導電性接着フィルムは、微小面積の電極間の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)を起こしにくく、異なる電極パターンの半導体チップに対しても接続可能で、長期に渡り接続安定性を保持でき、微細パターンの電気的接続用途において好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電粒子が絶縁性接着剤の表面層に単層として配置されて導電層を形成し、該導電層の少なくとも片側に、絶縁性接着剤からなる絶縁層を有してなる、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方導電性接着フィルムにおいて、導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下、かつ、導電粒子の平均粒径に対して1.5倍以上5倍以下であり、その変動係数が、0.025以上0.5以下である異方導電性接着フィルム。
【請求項2】
該導電粒子の平均粒径が0.5μm以上10μm未満である請求項1記載の異方導電性接着フィルム。
【請求項3】
該絶縁性接着剤の硬化後の85℃、85%RH、300時間吸水率が5質量%以下である請求項1又は2のいずれかに記載の異方導電性接着フィルム。
【請求項4】
該絶縁性接着剤に含まれる全塩素量が600ppm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の異方導電性接着フィルム。
【請求項5】
該異方導電性接着剤の膜厚が5μm以上50μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の異方導電性接着フィルム。
【請求項6】
粘着剤によって導電粒子が固定されたフィルムの導電粒子側に、絶縁性接着剤を重ね、絶縁性接着剤層に導電粒子を埋め込むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の異方導電性接着フィルムの製造方法。
【請求項7】
粘着剤によって導電粒子が固定された延伸可能なフィルムを延伸した後、導電粒子側に、絶縁性接着剤を重ね、絶縁性接着剤層に導電粒子を埋め込むことを特徴とする請求項6記載の異方導電性接着フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−9176(P2007−9176A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20496(P2006−20496)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】