説明

異方性導電フィルム及びその製造方法

【課題】剥離不良をなくしつつ、剥離剤による汚染を防止し、電子部品に対する接着強度の低下を抑制することができる異方性導電フィルム及びその製造方法の提供。
【解決手段】基材と、前記基材上に形成され、ポリマー成分を含む剥離層と、前記剥離層上に形成され、絶縁性樹脂、硬化剤、及び導電性微粒子を含む導電性粒子含有層と、を有し、前記ポリマー成分の90質量%以上が1種のポリオレフィン共重合体である異方性導電フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品を接続する手段として、導電性粒子が分散された熱硬化性樹脂を剥離フィルムに塗布したテープ状の接続材料(例えば、異方性導電フィルム(ACF;Anisotropic Conductive Film))が用いられている。
【0003】
この異方性導電フィルムは、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)やICチップの端子と、LCDパネルのガラス基板上に形成されたITO(Indium Tin Oxide)電極とを接続する場合を始めとして、種々の端子同士を接着すると共に電気的に接続する場合に用いられている。
【0004】
前記異方性導電フィルムとして、基材(セパレータ)上に、導電性粒子が分散された樹脂層(ACF層)が形成された構造のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
前記基材(セパレータ)としては、フッ素系フィルム、シリコーン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素コーティングのポリエチレンテレフタレートフィルム、などが用いられてきた。
しかしながら、前記フッ素系フィルムには、耐熱性、離型性、非汚染性の点で優れているが、機械的強度が弱いため、1.0mm〜5.0mm幅と非常に細幅で使用する場合、引き出した時にフィルムが伸びて変形してしまうという問題がある。特に、大型LCDパネルにおいては、パネル側に約1m強の長さで貼り付けられるため、この問題が頻繁に発生していた。さらに、前記フッ素系フィルムには、高価であり、使用後の廃棄焼却処理において燃焼しにくく、有毒ガスを発生するという問題がある。
前記シリコーン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルムには、シリコーンに含まれる低分子量体が樹脂層(ACF層)面に移ってしまい、ACF層自体のタック力(表面粘着性)が低下して基材に貼付かなくなったり、本圧着時に基材への密着力が低下して界面剥離及び接着強度不足が生じるという問題がある。
前記フッ素コーティングのポリエチレンテレフタレートフィルムには、前記シリコーン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルムと同様に、低分子量体が樹脂層(ACF層)面に移ってしまい、ACF層自体のタック力(表面粘着性)が低下して基材に貼付かなくなったり、本圧着時に基材への密着力が低下して界面剥離及び接着強度不足が生じるという問題がある。
【0005】
さらに、シリコーン、フッ素以外の離型剤をコーティングした基材(セパレータ)として、ポリエステルフィルムの両面に、ポリオレフィン又は長鎖アルキル化合物を主成分とする剥離層を有する両面離型フィルム(例えば、特許文献2参照)、架橋ポリオレフィンを含有する離型層を有する離型シート(例えば、特許文献3参照)、エチレン系共重合体及びポリプロピレン系重合体を含有する離型剤からなる離型層と、粘着層とから成る粘着性積層体(例えば、特許文献4参照)など、が提案されている。
しかしながら、前記シリコーン、フッ素以外の離型剤をコーティングした基材(セパレータ)にも、依然として、ACF層自体のタック力(表面粘着性)が低下して基材に貼付かなくなったり、本圧着時に基材への密着力が低下して界面剥離及び接着強度不足が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−106714号公報
【特許文献2】特開2009−231031号公報
【特許文献3】特開2004−82728号公報
【特許文献4】特開2004−346213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、剥離不良をなくしつつ、剥離剤による汚染を防止し、電子部品に対する接着強度の低下を抑制することができる異方性導電フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 基材と、前記基材上に形成され、ポリマー成分を含む剥離層と、前記剥離層上に形成され、絶縁性樹脂、硬化剤、及び導電性微粒子を含む導電性粒子含有層と、を有し、前記ポリマー成分の90質量%以上が1種のポリオレフィン共重合体であることを特徴とする異方性導電フィルムである。
<2> ポリマー成分が、1種のポリオレフィン共重合体のみからなる前記<1>に記載の異方性導電フィルムである。
<3> 剥離層付き基材の導電性粒子含有層からの剥離力が0.002N/cm以上0.01N/cm未満である前記<1>から<2>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<4> ポリオレフィン共重合体が、エチレンとプロピレンとの共重合体である前記<1>から<3>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<5> エチレンとプロピレンとの共重合体において、前記エチレンと前記プロピレンとのモル比が、60/40〜75/25である前記<1>から<4>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<6> 基材上に、ポリマー成分を含み、該ポリマー成分の90質量%以上が1種のポリオレフィン共重合体である剥離層組成物による剥離層を形成する剥離層形成工程と、前記剥離層上に、導電性微粒子を含む導電性粒子含有層組成物による導電性粒子含有層を形成する導電性粒子含有層形成工程と、を含むことを特徴とする異方性導電フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、剥離不良をなくしつつ、剥離剤による汚染を防止し、電子部品に対する接着強度の低下を抑制することができる異方性導電フィルム及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の異方性導電フィルムの構造の一例を示す概略図である(第1の態様)。
【図2】図2は、本発明の異方性導電フィルムの構造の一例を示す概略図である(第2の態様)。
【0011】
(異方性導電フィルム)
本発明の異方性導電フィルムは、少なくとも、基材と、剥離層と、導電性粒子含有層とを有してなり、さらに必要に応じて、その他の層を有してなる。
前記剥離層付き基材の前記導電性粒子含有層からの剥離力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.002N/cm以上0.01N/cm未満が好ましく、0.004N/cm以上0.01N/cm未満がより好ましい。
前記剥離力が、0.002N/cm未満であると、異方性導電フィルムをリール形状にした場合、異方性導電フィルムの引き出し時にかかる力により、導電性粒子含有層が剥離層から剥がれてしまい、正常に引き出されなくなることがあり、0.01N/cm以上であると、導電性粒子含有層と回路基板等の接着対象との密着力より、導電性粒子含有層と剥離層付き基材との密着力(剥離力)の方が大きくなり、しっかりと導電性粒子含有層が回路基板等の接着対象に貼り付かなくなる(導電性粒子含有層と回路基板等の接着対象とが剥離しやすくなる)ことがある。
【0012】
<基材>
前記基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、強度を向上させる目的で、酸化チタン等の無機フィラーを含んでいてもよい。
前記基材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜80μmが好ましく、12μm〜75μmがより好ましい。
前記基材の平均厚みが、10μm未満であると、引張強度が低下する等のために実装時に異方性導電フィルムの取り扱いがし難くなることがあり、80μmを超えると、リール形状にし難くなり、また、最終的に基材は廃棄することから廃材料の量が多くなることがある。
【0013】
<剥離層>
前記剥離層としては、前記基材上に形成され、1種のポリオレフィン共重合体のみからなるポリマー成分を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ポリマー成分以外の成分として、ラジカル開始剤、帯電防止剤、などが含まれていてもよい。
なお、前記基材と前記導電性粒子含有層とは、前記導電性粒子含有層と前記剥離層との界面で、前記導電性粒子含有層と前記剥離層付き基材とに分離される。
【0014】
−ポリマー成分−
前記ポリマー成分とは、重量平均分子量が5×10以上のポリマーを表し、ダイマー、トリマー、オリゴマーなどは含まない。
【0015】
前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、5×10以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1×10〜1×10が好ましく、5×10〜1×10が特に好ましい。
前記ポリマー成分の重量平均分子量が、5×10未満であるとブリードによりポリマー成分が導電性粒子含有層に移行することがあり、1×10を超えると、基材の変形を引き起こすことがある。
【0016】
前記ポリマー成分としては、前記ポリマー成分の90質量%以上が1種のポリオレフィン共重合体である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ポリマー成分に対する1種のポリオレフィン共重合体の質量%としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、90質量%〜100質量%が好ましく、
95質量%〜100質量%がより好ましい。
【0017】
−−ポリオレフィン共重合体−−
前記ポリオレフィン共重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、から選択される少なくとも2種のオレフィンを構成成分とする共重合体、などが挙げられ、例えば、特開2004−82728号公報に記載されているように、前記ポリオレフィン共重合体の一部に官能基を導入して、架橋させて架橋構造を有するようにしてもよい。
中でも、好ましい離型性が得られる点で、エチレンとプロピレンとの共重合体が好ましい。
【0018】
前記ポリオレフィン共重合体における2種類の構成成分のモル比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60/40〜75/25が好ましい。
前記モル比が、60未満/40超であると、剥離力が大きく(重く)なり過ぎることがあり、75超/25未満であると、剥離力が小さく(軽く)なることがある。
【0019】
前記ポリオレフィン共重合体は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよいが、剥離力のバラツキを低減させる点で、ブロック共重合体であることが好ましい。
【0020】
前記ポリオレフィン共重合体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直鎖状、分岐状のいずれであってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
【0021】
−ラジカル開始剤−
前記ラジカル開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ化合物、などが挙げられる。
【0022】
−帯電防止剤−
前記帯電防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリチオフェン誘導体等の導電性ポリマー、などが挙げられる。
【0023】
前記剥離層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜3μmが好ましく、0.1μm〜2μmがより好ましい。
前記剥離層の平均厚みが、0.01μm未満であると、剥離特性が低下することがあり、3μmを超えると、基材の外にはみ出すことがある。
【0024】
<導電性粒子含有層>
前記導電性粒子含有層としては、前記剥離層上に形成され、絶縁性樹脂、硬化剤及び導電性微粒子を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂、レベリング剤、顔料、シランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラーが含まれていてもよい。
【0025】
−絶縁性樹脂及び硬化剤−
前記絶縁性樹脂及び硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化型、光硬化型、熱硬化及び光硬化の併用型、などが挙げられる。
【0026】
−−熱硬化型−−
前記熱硬化型としては、アミン系硬化剤とエポキシ樹脂との組合せ、スルホニウム塩硬化剤とエポキシ樹脂との組合せ、有機過酸化物とラジカル重合性樹脂との組合せ、などが挙げられる。
【0027】
前記アミン系硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イミダゾール硬化剤(例えば、旭化成社製、商品名:ノバキュア3941HP)、トリエチルアミン等のアルキルアミン、ピリジン、などが挙げられる。また、外殻に絶縁性樹脂層を設けた潜在性(マイクロカプセル型)のアミン系硬化剤であってもよい。
【0028】
前記スルホニウム塩硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0029】
前記有機過酸化物系硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウロイルパーオキサイド、ブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、などが挙げられる。
【0030】
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記ラジカル重合性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂、などが挙げられる。前記アクリル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらに、前記アクリル樹脂としては、前記アクリレートをメタクリレートにしたものが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
−−光硬化型−−
前記光硬化型としては、波長領域150nm〜700nmで活性なカチオン種又はラジカル種を発生させる硬化剤と、前記エポキシ樹脂又は前記エポキシ樹脂との組み合わせ、などが挙げられる。
【0033】
−導電性粒子−
前記導電性粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半田、ニッケル、金等の金属粒子;金属(ニッケル、金、アルミニウム、銅等)で被覆(メッキ)された、樹脂粒子、ガラス粒子あるいはセラミック粒子;などが挙げられる。
前記導電性粒子の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、体積平均粒径で、2μm〜10μmが好ましく、2μm〜4μmがより好ましい。
前記体積平均粒径が、2μm未満であると、分級処理及び入手が困難であり、10μmを超えると、接合端子のファインピッチ化に伴う、該接合端子の狭小化への対応が困難となることがある。
前記導電性粒子の比重としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.5〜3.0が好ましい。
前記比重が、1.5未満であると、前記被処理面上での前記導電性粒子の位置安定性を確保することが困難になることがあり、3.0を超えると、前記導電性粒子を単層配列させるためには、より高い静電電位の付与が必要となることがある。
【0034】
−熱可塑性樹脂(膜形成樹脂)−
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、などが挙げられる。
【0035】
−レベリング剤−
前記レベリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリルオリゴマー等のアクリル重合系樹脂;ジメチルシリコーン、メチルシリコーン等のシリコーン類;などが挙げられる。
【0036】
−顔料−
前記顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料;などが挙げられる。
【0037】
−シランカップリング剤−
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、などが挙げられる。
【0038】
−無機フィラー−
前記無機フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、ガラス粉、石英粉、などが挙げられる。
【0039】
−有機フィラー−
前記有機フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンパウダー、アクリルパウダー、シリコーンパウダー、などが挙げられる。
【0040】
<その他の層>
前記その他の層としては、例えば、前記基材の前記導電性粒子含有層側表面とは反対側の表面に形成された他の剥離層、前記基材と前記剥離層との間に形成された帯電防止層、などが挙げられる。前記帯電防止層を設けることにより、異方性導電フィルムをリール等の巻き付け手段から取り出す際に静電気が発生するのを防止することができる。
【0041】
本発明の異方性導電フィルムの第1及び第2の態様を図1及び図2に示す。
本発明の異方性導電フィルムの第1の態様は、片面に剥離層2(重面)が形成された基材(セパレータ)1と、基材(セパレータ)1における剥離層2上に形成された導電性粒子含有層3と、導電性粒子含有層3側に剥離層4(軽面)が形成されたカバーフィルム5とを有する。
本発明の異方性導電フィルムの第2の態様は、一方の面に剥離層2a(重面)が形成され、他方の面に剥離層2b(軽面)が形成された基材(セパレータ)1と、基材(セパレータ)1における剥離層2a上に形成された導電性粒子含有層3とを有する。
【0042】
(異方性導電フィルムの製造方法)
本発明の異方性導電フィルムの製造方法は、少なくとも、剥離層形成工程と、導電性粒子含有層形成工程とを含み、さらに、必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0043】
<剥離層形成工程>
前記剥離層形成工程は、基材上に、ポリマー成分を含み、該ポリマー成分の90質量%以上が1種のポリオレフィン共重合体である剥離層組成物による剥離層を形成する工程である。
前記剥離層組成物の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブレードコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法等に代表される種々のコーティング法、ホットメルト法、スプレーコート法、共押出法、などが挙げられる。
【0044】
前記剥離層組成物の乾燥における温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃〜250℃が好ましく、120℃〜200℃がより好ましい。
前記温度が、100℃未満であると、有機溶媒の乾燥不良が生じることがあり、250℃を超えると、剥離層組成物が熱劣化することがある。
【0045】
<導電性粒子含有層形成工程>
前記導電性粒子含有層形成工程は、剥離層上に、導電性微粒子を含む導電性粒子含有層組成物による導電性粒子含有層を形成する工程である。
【0046】
前記導電性粒子含有層組成物の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブレードコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法等に代表される種々のコーティング法などが挙げられる。
【0047】
前記導電性粒子含有層組成物の乾燥における温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜100℃が好ましく、50℃〜90℃がより好ましい。
前記温度が、40℃未満であると、有機溶媒の乾燥不良が生じることがあり、100℃を超えると、硬化剤が反応し、フィルムが硬化することがある。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
(製造例1)
−エチレンプロピレン共重合体αの作製−
1Lのオートクレーブをエチレンとプロピレンとの混合ガス(分圧比7/3)で置換し、脱気、乾燥したトルエン450mLを投入した。70℃で10分間攪拌した後、メタロセン触媒(ジメチルシリレンビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、メチルアルモキサン助触媒(Witco社製))を0.1ミリモル加えて、エチレンとプロピレンとの混合ガスで、0.7MPaに加圧し、1時間重合してエチレンプロピレン共重合体αを得た。H−NMRで求めた生成物の組成モル比は、エチレン/プロピレン=60/40であった。
【0050】
−剥離フィルム(剥離層付基材)Aの作製−
得られたエチレンプロピレン共重合体α100質量部を、トルエンに添加して加熱することにより、均一な2%溶液を得た。
得られた溶液を離型剤とした。平均厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、得られた離型剤を乾燥後の平均厚みが0.2μmになるように塗布し、140℃で2分間乾燥することにより、片面に剥離層を有する剥離フィルムAを得た。
【0051】
−剥離層の含有成分の検出−
剥離層に、ポリマー成分として、1種のエチレンプロピレン共重合体αのみが含まれていることは、液体クロマトグラフィー、GPC(ゲルパーミエーション クロマトグラフィー)、LC−MS(液体クロマトグラフィー/質量分析計)、などにより、検出することができる。
【0052】
(製造例2)
−エチレンプロピレン共重合体βの作製−
製造例1において、エチレン/プロピレンガスの混合ガスの分圧比を8/2とした以外は、製造例1と同様に、エチレンプロピレン共重合体の作製を行って、エチレン/プロピレンの組成モル比が75/25のエチレンプロピレン共重合体βを得た。
【0053】
−剥離フィルム(剥離層付基材) Bの作製−
製造例1において、エチレンプロピレン共重合体αを用いる代わりにエチレンプロピレン共重合体βを用いたこと、及び、平均厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる代わりに、平均厚みが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと以外は、製造例1と同様に、剥離フィルム(剥離層付基材)の作製を行って、片面に剥離層を有する剥離フィルムBを得た。
【0054】
−剥離層の含有成分の検出−
剥離層に、ポリマー成分として、1種のエチレンプロピレン共重合体(エチレンプロピレン共重合体β)のみが含まれていることは、液体クロマトグラフィー、GPC(ゲル パーミエーション クロマトグラフィー)、LC−MS(液体クロマトグラフィー/質量分析計)、などにより、検出することができる。
【0055】
(製造例3)
−エポキシ基を有するエチレンプロピレン共重合体γの作製−
製造例1において得られたエチレンプロピレン共重合体α100質量部に、グリシジルメタクリレート(共栄社化学社製、商品名:ライトエステルG)3.1質量部と反応開始剤(日油社製、商品名:パーヘキサB)0.1質量部との混合物を、ラボニーダーミル(トーシン社製、型式:TDR100−1)を用いて、185℃/回転数90rpm/3分間で混練してエポキシ基を有するエチレンプロピレン共重合体γを得た。
【0056】
−剥離フィルム(剥離層付基材) Cの作製−
エチレンプロピレン共重合体α及びエポキシ基を有するエチレンプロピレン共重合体γを各々50質量部ずつ混合し、この混合物に含まれるエポキシ基と1.0当量となるヘキサメチレンジアミンを添加した共重合体をトルエンに溶解することで均一な2%溶液を得た。
得られた溶液に、過酸化ベンゾイル(川口薬品社製、商品名:BPO)を固形分で1質量部添加して、離型剤とした。平均厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、得られた離型剤を乾燥後の平均厚みが0.2μmになるように塗布し、140℃で2分間乾燥することにより、片面に剥離層を有する剥離フィルムCを得た。
【0057】
−剥離層の含有成分の検出−
剥離層に、ポリマー成分として、2種のエチレンプロピレン共重合体(エチレンプロピレン共重合体α及びエポキシ基を有するエチレンプロピレン共重合体γ)が含まれていることは、液体クロマトグラフィー、GPC(ゲル パーミエーション クロマトグラフィー)、LC−MS(液体クロマトグラフィー/質量分析計)等により、検出することができる。
また、剥離層に、過酸化ベンゾイル(ラジカル開始剤)が含まれていることは、液体クロマトグラフィー、GPC(ゲル パーミエーション クロマトグラフィー)、LC−MS(液体クロマトグラフィー/質量分析計)等により、検出することができる。
【0058】
(調製例1)
−導電性粒子含有層組成物の調製−
メチルエチルケトンで溶解させた固形分30%のフェノキシ樹脂(熱可塑性樹脂)(東都化成社製、商品名:YP50)100質量部に、絶縁性樹脂としてのラジカル重合性樹脂(エポキシアクリレートオリゴマー、ダイセル・サイテック社製、商品名:EB−600)35質量部、リン酸アクリレート(共栄社化学社製、商品名:P−1M)1質量部、及び硬化剤としての反応開始剤(日油社製、商品名:パーヘキサC)2質量部を添加し、さらに、樹脂微粒子にニッケルと金メッキを施した導電性微粒子(積水化学社製、商品名:AUL704)を体積比率10%になるように均一分散させた導電性粒子含有層組成物を調製した。
【0059】
(実施例1)
調製例1で調製した導電性粒子含有層組成物を、製造例1で作製した剥離フィルムAにおける剥離層上に平均厚みが20μmになるように、バーコーターにより塗布を行い、有機溶媒を乾燥後、剥離層が導電性粒子含有層側となるように、製造例2で作製した剥離フィルムBでカバーした異方性導電フィルムAを作製した。
【0060】
(比較例1)
調製例1で調製した導電性粒子含有層組成物を、剥離フィルムD(帝人デュポンフィルム社製、50μm厚のポリエチレンテレフタレート基材、商品名:Purex #70)のシリコーン処理面上に、バーコーターにより塗布を行い、60℃/10分間乾燥させることで20μmの平均厚みの導電性粒子含有層を形成した。さらに、異物混入を防止するカバーフィルムとして、剥離フィルムE(帝人デュポンフィルム社製、25μm厚のポリエチレンテレフタレート基材、商品名:Purex #31)を、シリコーン処理面が導電性粒子含有層側となるように積層した異方性導電フィルムBを作製した。
【0061】
(比較例2)
調製例1で調製した導電性粒子含有層組成物を、製造例3で作製した剥離フィルムCにおける剥離層上に、バーコーターにより塗布を行い、60℃/10分間乾燥させることで、20μmの平均厚みの導電性粒子含有層を形成した。さらに、異物混入を防止するカバーフィルムとして、製造例2で作製した剥離フィルムBを、剥離層が導電性粒子含有層側となるように積層して、異方性導電フィルムCを作製した。
【0062】
【表1】

【0063】
<剥離フィルムA〜Eの面に接した導電性粒子含有層へのSi移行量の測定>
実施例1、比較例1、比較例2で作製した異方性導電フィルムA〜Cについて剥離フィルムA〜Eのそれぞれを剥離した後の異方性導電フィルムA〜Cの表面に存在するSi、C、Oの3元素をX線光電子分光分析装置(日本電子社製、型番:JPS−90SX)にて測定を行った。
【0064】
【表2】

剥離フィルムD、Eに接触した導電性粒子含有層の表面には、Siが移っていたが、剥離フィルムA、B、Cに接触した導電性粒子含有層の表面には、Siが移っていなかった。
【0065】
<カバーフィルムとしての剥離フィルムB、Eの剥離力の測定>
実施例1、比較例1、比較例2で作製した異方性導電フィルムA〜Cを1cm幅にスリットして、カバーフィルムとして用いた剥離フィルムB、Eについて、JIS Z 0237に準じて、引張試験機(ORIENTEC社製、商品名:RTC−1210)を用いて、角度90度、引張速度300mm/秒間にて剥離力の測定をおこなった。結果を表3に示す。
【0066】
<基材としての剥離フィルムA、C、Dの剥離力の測定>
カバーフィルム(剥離フィルムB、E)を剥がした異方性導電フィルムA〜Cを仮貼装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社評価装置、ツール幅10mm、緩衝材200μm厚シリコーンラバー)を用いて仮貼条件80℃−1MPa−2秒間にて、ITOパターンガラス(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社評価用ガラス、配線ピッチ50μm、絶縁層SiNx、ガラス厚0.5mm)上へ貼付けた後、JIS Z 0237に準じて、引張試験機を用いて角度90度、引張速度300mm/秒間にて剥離フィルムA、C、Dの剥離力の測定をおこなった。結果を表3に示す。
【0067】
【表3】

表3より、剥離フィルムA、Bの剥離力が0.002N/cm〜0.009N/cmと小さいことが分かった。
エポキシアクリレートで架橋した剥離フィルムは剥離力が上昇し、実装後のCOF(Chip On Film)に対する接着強度が極端に低下した。剥離剤が導電性粒子含有層組成物の接着力を向上させる成分であるリン酸アクリレートと反応したことによるものと考えられる。
【0068】
剥離力が0.002N/cm〜0.009N/cmと小さい剥離フィルムA、Bは、剥離力が大きい剥離フィルムC〜Eと比較して、仮接続工程での加熱温度、加圧力を低減し、作業性を向上させることができる。
【0069】
<剥離フィルムB、Eが貼り付いていた導電性粒子含有層のガラス密着力の測定>
パターンガラスに貼り付けた導電性粒子含有層が伸びたり破断したりしないように、ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、商品名:ニットー31B)を異方性導電フィルムA〜Cに貼付けて補強した後に、JIS Z 0237に準じて角度90度、引張速度300mm/秒間にて異方性導電フィルムA〜Cそれぞれのガラス密着力を測定した。なお剥離フィルムB、Eが貼り付けてあった導電性粒子含有層をそれぞれBF、EFとした。結果を表4に示す。
比較例1の異方性導電フィルムBにおいて、カバーフィルムとしての剥離フィルムEを積層する前の状態でガラス密着力を測定し、その得られたガラス密着力の値を基準値Fとしたときに、測定したそれぞれのガラス密着力BF、EFの低下率を残留接着率として求めた。結果を表4に示す。
残留接着率(%)=(ガラス密着力 / 基準値F )× 100 ・・・(式)
【0070】
【表4】

表4より、導電性粒子含有層表面のEF面のガラス密着力が低下していることから、シリコーンに汚染されると、ガラス密着力の低下を引き起こすことが分かった。
【0071】
<COF接着力の測定>
ガラス密着力を測定する前の状態(カバーフィルムを剥がした状態)からさらに基材を剥がした状態にして、COF(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社評価用COF:配線ピッチ50μm、配線パターン(Cu(平均厚み8μm)−Snメッキ)、平均厚み38μmの基材(S’perflex))が異方性導電フィルムに2mm幅ラップするようにアライメントして、基材と接触していた導電性粒子含有層の面がCOF側となるように貼付け、圧着機(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社評価装置、ツール幅2mm、緩衝材100μm厚テフロン)を用いて本圧着条件190℃−3MPa−15秒間で圧着を行い、実装体を完成させた。なお、剥離フィルムとの組合せに従い、実装体A(実施例1)、D(比較例1)、C(比較例2)とした。
作製した実装体について、実装直後と高温高湿85℃/85%/500時間後の状態で引張試験機を用いて角度90度、引張速度50mm/秒間にてCOFを引き上げることでCOF接着力を測定した。その際の剥離界面は全てCOF側であった。結果を表5に示す。
【表5】

表5より、剥離層のポリマー成分が架橋している剥離層を有する比較例2の剥離フィルムは、COF接着力が低下することが分かった(導電性粒子含有層組成物におけるリン酸アクリレートとの反応が原因と考えられる)。
【0072】
以上より、本発明の異方性導電フィルムを用いることで、導電性粒子含有層の表面の剥離剤汚染を回避することができ、もって、ガラス密着力及びCOF接着力を発揮できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の異方性導電フィルムは、各種電子部品等と基板、基板同士などの接合に好適に使用することができ、例えば、ICタグ、ICカード、メモリーカード、フラットパネルディスプレイなどの製造に好適に使用することができる。
本発明の接合体は、導電性粒子の粒子捕捉率が高く、優れた導通信頼性を有する。
【符号の説明】
【0074】
1 基材(セパレータ)
2 剥離層
2a 剥離層
2b 剥離層
3 導電性粒子含有層
4 剥離層
5 カバーフィルム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成され、ポリマー成分を含む剥離層と、
前記剥離層上に形成され、絶縁性樹脂、硬化剤、及び導電性微粒子を含む導電性粒子含有層と、を有し、
前記ポリマー成分の90質量%以上が1種のポリオレフィン共重合体であることを特徴とする異方性導電フィルム。
【請求項2】
ポリマー成分が、1種のポリオレフィン共重合体のみからなる請求項1に記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
剥離層付き基材の導電性粒子含有層からの剥離力が0.002N/cm以上0.01N/cm未満である請求項1から2のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
ポリオレフィン共重合体が、エチレンとプロピレンとの共重合体である請求項1から3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
エチレンとプロピレンとの共重合体において、前記エチレンと前記プロピレンとのモル比が、60/40〜75/25である請求項1から4のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
基材上に、ポリマー成分を含み、該ポリマー成分の90質量%以上が1種のポリオレフィン共重合体である剥離層組成物による剥離層を形成する剥離層形成工程と、
前記剥離層上に、導電性微粒子を含む導電性粒子含有層組成物による導電性粒子含有層を形成する導電性粒子含有層形成工程と、
を含むことを特徴とする異方性導電フィルムの製造方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−209353(P2010−209353A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−127426(P2010−127426)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】