説明

異方性導電材料及び接続構造体

【課題】接着性と耐熱クリープ特性とを高めることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供する。
【解決手段】本発明に係る異方性導電材料は、導電性粒子と、バインダー樹脂である架橋ポリウレタン樹脂と、溶剤とを含む。本発明に係る接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、該第1,第2の接続対象部材2,4を電気的に接続している接続部3とを備える。接続部3は、上記異方性導電材料により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電性粒子を含む異方性導電材料に関し、様々な接続対象部材の電極間の電気的な接続に用いることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板(FPC)、ガラス基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間の電気的な接続に、異方性導電材料が用いられている。例えば、タッチパネルでは、フレキシブルプリント基板の電極が他の電極と、異方性導電材料により電気的に接続されている。異方性導電材料では、インク又は樹脂中に複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、ポリアミドエラストマーと、ポリウレタンエラストマーと、スチレン−イソブチレンースチレンコポリマーと、導電性フィラーとを含む異方性導電材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−168510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、フレキシブルプリント基板を用いた電子部品では、電子部品の小型化に伴って、異方性導電材料を用いた接着部分の面積が小さくなってきている。さらに、フレキシブルプリント基板が曲げられた状態で、電子部品が用いられることも多くなってきている。
【0006】
特許文献1に記載のような従来の異方性導電材料により、フレキシブルプリント基板の電極を他の電極と接続したタッチパネル等の接続構造体において、フレキシブルプリント基板が折り曲げられた場合には、剥離が生じることがある。また、従来の異方性導電材料では、耐熱クリープ特性が低いことがある。このため、上記接続構造体が高温下で長期間使用されると、剥離が生じやすいという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、接着性と耐熱クリープ特性とを高めることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、導電性粒子と、バインダー樹脂である架橋ポリウレタン樹脂と、溶剤とを含む、異方性導電材料が提供される。
【0009】
本発明に係る異方性導電材料のある特定の局面では、上記架橋ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂を化学架橋させて得られた架橋ポリウレタン樹脂である。
【0010】
本発明に係る異方性導電材料の他の特定の局面では、上記架橋ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は50000以上である。
【0011】
本発明に係る異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板の電極の電気的な接続に用いられる異方性導電材料であることが好ましい。本発明に係る異方性導電材料は、タッチパネル用異方性導電材料であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備えており、該接続部が、本発明に従って構成された異方性導電材料により形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る異方性導電材料は、導電性粒子とバインダー樹脂である架橋ポリウレタン樹脂と溶剤とを含むので、接着性と耐熱クリープ特性とを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【図2】図2は、実施例及び比較例において、接着力の測定に用いたフレキシブルプリント基板を示す模式図である。
【図3】図3は、実施例及び比較例において接着力を測定する方法を説明するための模式図である。
【図4】図4は、実施例及び比較例において耐熱クリープを測定する方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る異方性導電材料は、導電性粒子と、架橋ポリウレタン樹脂と、溶剤とを含む。上記架橋ポリウレタン樹脂は、バインダー樹脂である。
【0017】
上記組成の採用により、異方性導電材料を用いた接続構造体において、接着性と耐熱クリープ特性とを高めることができる。本発明に係る異方性導電材料を用いて、フレキシブルプリント基板の電極を他の電極と接続し、タッチパネル等の接続構造体を得たときに、該接続構造体が折り曲げられても、剥離が生じ難くなる。また、得られた接続構造体が高温下で長期間使用されても、剥離が生じ難くなる。
【0018】
以下、先ず、本発明に係る異方性導電材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0019】
(バインダー樹脂)
本発明に係る異方性導電材料は、バインダー樹脂である架橋ポリウレタン樹脂を含む。架橋ポリウレタン樹脂は、架橋構造を有する。架橋ポリウレタン樹脂は、架橋体である。架橋ポリウレタン樹脂は、架橋されていないポリウレタン樹脂とは異なる。上記架橋ポリウレタン樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
一般に架橋樹脂とは、溶剤に不溶な樹脂を示す。これに対して、本明細書における架橋樹脂とは、いわゆる微架橋樹脂を示し、ごくわずかに架橋しているだけなので、溶剤に十分可溶である。
【0021】
上記ポリウレタン樹脂は、一般的に、ハードセグメント成分として反応性の高いイソシアネート化合物と、ソフトセグメント成分として分子内に活性水素を有する鎖延長剤と、ポリオール化合物とを用いて合成される。これらの材料の組み合わせにより、各種の特性を有するポリウレタン樹脂が得られる。このハードセグメント成分とソフトセグメント成分を自由に組み合わせることにより、柔軟なものから硬いものまで自由に合成することができる。
【0022】
上記イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。これら以外のイソシアネート化合物を用いてもよい。
【0023】
上記鎖延長剤としては、グリコール化合物及びアミン化合物等が挙げられる。これら以外の鎖延長剤を用いてもよい。上記鎖延長剤の分子量は1000以下であることが好ましい。
【0024】
上記ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記ポリエステルポリオールとしては、ポリプロピレンアジペート、ポリヘキサメチレンカーボネート及びポリ−ε−カプロラクトン等が挙げられる。上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール及びポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0025】
上記ポリウレタン樹脂(架橋前のポリウレタン)の市販品は多く存在する。上記ポリウレタン樹脂(架橋前のポリウレタン)の市販品としては、日本ポリウレタン工業社製のミラクトンシリーズ、大日精化社製のレザミンシリーズ、及びDIC社製のパンデックスシリーズ等が挙げられる。
【0026】
タッチパネル等に用いられる異方性導電材料に、架橋されていないポリウレタン樹脂を用いれば、接着性をある程度高めることができる。これはソフトセグメントのガラス転移温度Tgが低く(柔らかい)、エステル結合等による極性の効果による。一方で、ハードセグメント同士の水素結合により凝集力を発揮するが、水素結合という物理的なものなので、凝集力を大きく高めることは困難なことがある。すなわち、架橋されていないポリウレタン樹脂では、耐熱クリープ特性を十分に高くすることは困難である。高い凝集力を発現させる方法としては、ポリウレタン樹脂の軟化点を高くする(ハードセグメント成分のTgを高くする)方法があるものの、ポリウレタン樹脂の軟化点が高いと、接着性が低下する傾向がある。
【0027】
上記のような観点から、接着力と凝集力とを効果的に高めるために、比較的軟化点が低い柔軟なウレタン樹脂に化学架橋した架橋ポリウレタンが好適であり、本発明では、架橋ポリウレタン樹脂が用いられ、ポリウレタン樹脂を化学架橋させた架橋ポリウレタン樹脂が好適に用いられる。架橋ポリウレタン樹脂の使用により、異方性導電材料の接着性と凝集力との双方を効果的に高めることができる。
【0028】
架橋されていないポリウレタン樹脂に架橋構造を導入する方法は、種々の方法を用いることができ特に限定されない。架橋構造を導入する方法は種々知られている。
【0029】
架橋されていないポリウレタン樹脂に架橋構造を導入する方法としては、例えば、(1)ポリウレタン樹脂中のウレタン結合のN−H基と、ジイソシアネート化合物とを反応させ、アロファネート結合を形成する方法、(2)カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂に、不飽和結合を有する化合物を反応させ、ラジカル重合を進行させる方法、(3)末端にヒドロキシ基を有するポリウレタン樹脂を用いて、該ヒドロキシ基にジイソシアネート化合物を反応させる方法、並びに(4)末端にNCO基を有するポリウレタン樹脂を用いて、該NCO基にジオール化合物又はアミン化合物を反応させる方法等が挙げられる。上記(1)の方法では、架橋度を調整するために、ジオール化合物を用いてもよい。なお、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂を合成する際に、カルボキシル基を有するジオール化合物を用いることにより得ることが可能である。
【0030】
上記(2)の方法において、異方性導電材料の接着性及び耐熱クリープ特性をより一層高める観点からは、上記不飽和結合を有する化合物は、不飽和結合を有するエポキシ化合物であることが好ましい。すなわち、上記不飽和結合を有する化合物は、不飽和結合とエポキシ基とを有する化合物であることが好ましい。
【0031】
異方性導電材料の接着性及び耐熱クリープ特性をより一層高める観点からは、架橋ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は50000以上であることが好ましい。架橋ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、より好ましくは80000以上、好ましくは2000000以下、より好ましくは1000000以下、更に好ましくは500000以下である。
【0032】
上記架橋ポリウレタン樹脂の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中(固形分換算:溶剤は除く)、上記架橋ポリウレタン樹脂の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。異方性導電材料中には、スクリーン印刷のために、各種のフィラー等が配合されることが多いので、上記ポリウレタン樹脂の含有量が多すぎると、接着性及び耐熱クリープ特性以外の他の特性が悪くなる傾向がある。上記架橋ポリウレタン樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接着性及び耐熱クリープ特性により一層優れた異方性導電材料が得られる。
【0033】
(導電性粒子)
本発明に係る異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、例えば、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。本発明に係る異方性導電材料は、複数の導電性粒子を含むことが好ましい。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記導電層は特に限定されない。上記導電層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。上記導電層は、多層構造を有していてもよい。
【0034】
電極の損傷を抑制し、かつ電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に設けられた導電層とを有することが好ましい。
【0035】
導電性粒子の粒子径は好ましくは0.5μm以上、好ましくは100μm以下である。
【0036】
導電性粒子の「粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0037】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0038】
(溶剤)
本発明に係る異方性導電材料に含まれている溶剤は特に限定されない。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ベンジルアルコール、イソホロン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。これら以外の溶剤を用いてもよい。溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記溶剤は、架橋ポリウレタン樹脂を分散又は溶解した液として添加されてもよく、導電性粒子を分散させた液として添加されてもよい。
【0040】
溶剤の含有量は、他の成分の分散又は溶解性、並びに異方性導電材料の粘度などを考慮して、適宜調整される。異方性導電材料100重量%中、溶剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは85重量%以下、より好ましくは75重量%以下である。
【0041】
(他の成分)
本発明に係る異方性導電材料は、架橋ポリウレタン樹脂以外の他のバインダー樹脂、熱硬化性化合物、硬化剤、硬化促進剤、光硬化性化合物、光重合開始剤、充填剤、貯蔵安定剤、イオン捕捉剤、シランカップリング剤、粘着付与剤又はレベリング剤等をさらに含んでいてもよい。
【0042】
(異方性導電材料の詳細及び用途)
本発明に係る異方性導電材料は、ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料であることが好ましく、ペースト状の異方性導電材料であることが好ましい。ペースト状の異方性導電材料は、異方性導電ペーストである。フィルム状の異方性導電材料は、異方性導電フィルムである。
【0043】
本発明に係る異方性導電材料を用いて、フレキシブルプリント基板の電極を他の電極と接続し、タッチパネル等の接続構造体を得たときに、該接続構造体が折り曲げられても、剥離が生じ難くなる。また、得られた接続構造体が高温下で長期間使用されても、剥離が生じ難くなる。
【0044】
本発明に係る異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板の電極の電気的な接続に用いられる異方性導電材料であることが好ましい。フレキシブルプリント基板は柔軟性が高く、力が付与されたり、振動が与えられたりすると湾曲しやすい。さらに、フレキシブルプリント基板は曲げられた状態で用いられることがある。フレキシブルプリント基板が曲げられると、異方性導電材料とフレキシブルプリント基板との接着部分で剥離が生じやすい。しかし、本発明に係る異方性導電材料の使用により、異方性導電材料とフレキシブルプリント基板との接着力が高くなるので、剥離を効果的に抑制することができる。従って、本発明に係る異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板の電極の電気的な接続に好適に用いられる。
【0045】
本発明に係る異方性導電材料は、タッチパネル用異方性導電材料であることが好ましい。本発明に係る異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板の電極の電気的な接続に用いられるタッチパネル用異方性導電材料であることが好ましい。タッチパネルでは、使用時に異方性導電材料と接続対象部材との接着部分に力が加わったり、異方性導電材料が高温の環境下に晒されたりする。本発明に係る異方性導電材料の接着性及び耐熱クリープ特性は高いので、本発明に係る異方性導電材料を用いたタッチパネルにおいて、異方性導電材料と接続対象部材との接着性を高めることができ、更に異方性導電材料が高温下に晒されても、異方性導電材料と接続対象部材との剥離を生じ難くすることができる。
【0046】
また、本発明に係る異方性導電材料は、様々な接続対象部材を接着するために使用できる。上記異方性導電材料は、第1,第2の接続対象部材が電気的に接続されている接続構造体を得るために好適に用いられる。
【0047】
図1に、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体の一例を模式的に断面図で示す。
【0048】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部3とを備える。接続部3は、導電性粒子5を含む異方性導電材料により形成されている。
【0049】
第1の接続対象部材2の上面2aには、複数の電極2bが設けられている。第2の接続対象部材4の下面4aには、複数の電極4bが設けられている。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材2,4が導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0050】
電極2b,4b間の接続は、通常、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とを異方性導電材料を介して電極2b,4b同士が対向するように重ね合わせた後に、異方性導電材料を硬化させる際に、加圧することにより行われる。加圧により、一般に導電性粒子5は圧縮される。
【0051】
上記接続構造体としては、具体的には、回路基板上に、半導体チップ、コンデンサチップ又はダイオードチップ等の電子部品チップが搭載されており、該電子部品チップの電極が、回路基板上の電極と電気的に接続されている接続構造体等が挙げられる。回路基板としては、フレキシブルプリント基板等の様々なプリント基板、ガラス基板、又は金属箔が積層された基板等の様々な回路基板が挙げられる。第1,第2の接続対象部材は、電子部品又は回路基板であることが好ましい。
【0052】
第1,第2の接続対象部材の内の少なくとも一方は、フレキシブルプリント基板であることが好ましい。上記接続構造体は、タッチパネルであることが好ましい。
【0053】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0054】
(合成例1)
架橋ポリウレタン樹脂の合成:
ポリウレタン樹脂(日本ポリウレタン工業社製「P−22M」、軟化点62℃)160gと、ポリウレタン樹脂(大日精化社製「P−1098H」、軟化点120℃)40gとを、イソホロン800gに溶解させ、溶解物を得た。その後、得られた溶解物に、アロファネート触媒である亜鉛アセチルアセトナート0.5gを入れ、攪拌により混合した。次に、架橋剤(日本ポリウレタン工業社製「ミリオネートMR−200」、ポリメリックMDI)10gを更に入れ、85℃で1時間反応させた。その後、残存NCO基を取り除くために、エタノールを5g添加して、架橋ポリウレタン樹脂を合成した。
【0055】
得られた架橋ポリウレタン樹脂をクロロホルムに溶解させた後、架橋ポリウレタン樹脂の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。その結果、架橋ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は12万であった。
【0056】
(実施例1)
異方性導電ペーストの作製:
合成例1で得られた架橋ポリウレタン樹脂20重量%とイソホロン80重量%とを含む溶液25重量部と、充填剤(日本タルク社製「P−4」)1.4重量部と、粘着付与剤(荒川化学社製「ペンセルD−125」)1重量部と、酸化防止剤(チバ・スペシャルティケミカルズ社製「イルガノックス1010」)0.02重量部と、酸化チタン(石原産業、CR−60)0.2重量部と、導電性粒子(樹脂粒子がニッケル層により被覆されており、更に該ニッケル層が金層により被覆されている導電性粒子、平均粒子径30μm)0.4重量部とを配合し、配合物を得た。
【0057】
得られた配合物を、公転真空ミキサー「あわとり練太郎」にて、2000回転で3分混練することにより、異方性導電ペーストを作製した。
【0058】
(比較例1〜2)
上記配合物を得る際の組成を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0059】
バインダー樹脂に関して、比較例1では、架橋ポリウレタン樹脂20重量%とイソホロン80重量%とを含む溶液25重量部のかわりに、架橋ポリウレタン樹脂ではないポリウレタン樹脂(日本ポリウレタン工業社製「P−22M」、軟化点62℃)20重量%とイソホロン80重量%とを含む溶液20重量部と、架橋ポリウレタン樹脂ではないポリウレタン樹脂(大日精化社製「P−1098H」、軟化点120℃)20重量%とイソホロン80重量%とを含む溶液5重量部とを用いた。
【0060】
バインダー樹脂に関して、比較例2では、架橋ポリウレタン樹脂20重量%とイソホロン80重量%とを含む溶液25重量部のかわりに、ポリアミドエラストマー(富士化成工業社製「TPAE−32」)2.8重量部と、架橋ポリウレタン樹脂ではないポリウレタン樹脂(日本ポリウレタン工業社製「ミラクトンP390RSUP」)1.2重量部と、スチレンエラストマー(カネカ社製「シブスター062M」)1重量部とを用いた。
【0061】
(評価)
得られた異方性導電ペーストを用いて、接着力(90度ピール強度)及び耐熱クリープを測定した。測定用サンプルの作成方法及び評価方法は以下の通りである。
【0062】
「接着力の測定サンプルの作成方法」
図2に示す仕様のフレキシブルプリント基板の一部(大洋工業社製、構成:厚み25μmのポリイミドフィルム/厚み18μmの銅箔、電極めっき:Ni5μm/Au0.5μm)を用意した。図2に示すように、フレキシブルプリント基板では、電気めっきされた銅箔51(銅配線)上に、カバーレイ52が設けられている。
【0063】
このフレキシブルプリント基板上に、100メッシュ(材質ステンレス)の版を使用して、乾燥後の厚みが20〜25μmになるように、得られた異方性導電材料をスクリーン印刷した。次に、熱風乾燥オーブン内で110℃で10分乾燥を行った。その後、コンスタントヒーター方式圧着機(大橋製作所:BD−03SDSS)を用いて、フレキシブルプリント基板とITOガラスとを異方性導電材料を介して、圧着温度140℃及び圧力294.2N/cmの条件で、15秒間貼り合わせ、接着力の測定用サンプルを得た。
【0064】
「接着力の測定方法」
図3に示すように、静的材料試験機(島津製作所社製「EZ−Graph」)を用いて、得られた接着力の測定用サンプルについて、引っ張り速度50mm/分で90度剥離試験を行った。得られた90度ピール強度の最大値を接着力の測定値とした。図3に示すように、ITOガラス61からフレキシブルプリント基板62を矢印X1で示す方向に剥離して、接着力を測定した(異方性導電材料の図示は省略)。
【0065】
「耐熱クリープの測定用サンプルの作成方法」
厚み38μmの未処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(3mm×20mmの大きさ)を用意した。このPETフィルムに100メッシュ(材質ステンレス)の版を使用して、乾燥後の厚みが20〜25μmになるように、得られた異方性導電材料をスクリーン印刷した。次に、熱風乾燥オーブン内で110℃で10分乾燥を行った。その後、コンスタントヒーター方式圧着機(大橋製作所:BD−03SDSS)を用いて、PETフィルムとITOガラスとを異方性導電材料を介して、圧着温度140℃及び圧力294.2N/cmの条件で、15秒間貼り合わせ、耐熱クリープの測定用サンプルを得た。
【0066】
「耐熱クリープの測定方法」
85℃のオーブン内に、耐熱クリ―プの測定用サンプルを入れ、図4に示すように、0.29N/cmの荷重をかけた後、どれだけの時間、剥離せずに保持できるかを測定した。すなわち、ITOガラス71を主面が鉛直方向と垂直な平面内に位置するように、かつITOガラス71の下面71aにPETフィルム72が接着されている状態となるように配置した。PETフィルム72の端部72aに重り73を付けPETフィルム72に、矢印X2で示す方向に0.29N/cmの荷重をかけた(異方性導電材料の図示は省略)。
【0067】
また、48時間放置しても落下が生じなかった場合には、「落下せず」と判定して、PETフィルムの剥離した距離を測定した。
【0068】
結果を下記の表1に示す。
【0069】
【表1】

【符号の説明】
【0070】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…電極
3…接続部
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…電極
5…導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子と、バインダー樹脂である架橋ポリウレタン樹脂と、溶剤とを含む、異方性導電材料。
【請求項2】
前記架橋ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂を化学架橋させて得られた架橋ポリウレタン樹脂である、請求項1に記載の異方性導電材料。
【請求項3】
前記架橋ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が50000以上である、請求項1又は2に記載の異方性導電材料。
【請求項4】
フレキシブルプリント基板の電極の電気的な接続に用いられる異方性導電材料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項5】
タッチパネル用異方性導電材料である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項6】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の異方性導電材料により形成されている、接続構造体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−129106(P2012−129106A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280759(P2010−280759)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】