説明

異物検出装置、繊維機械及び異物検出方法

【課題】色糸を確実に検出することが可能な異物検出装置を提供する。
【解決手段】ヤーンクリアラ52において、受光部541,542は、投光部531,532による照射光が紡績糸10で反射した反射光を受光する。検出信号受信部81は、受光部541,542の受光量を所定の糸長さごとにサンプリングする。第1チャンネル計算部85は、検出信号受信部81がサンプリングした受光量に基づいて受光率合計値を求める。第2記憶部84は、第1チャンネル計算部85が求めた受光率合計値を複数記憶する。第3チャンネル計算部87は、第1チャンネル計算部85が求めた最新の受光率合計値と、最新の受光率合計値の測定位置から設定長さ以上の間隔を空けた位置で測定されて第2記憶部84に記憶されている受光率合計値と、の合計値を求める。判定部88は、第3チャンネル計算部87が求めた合計値に基づいて異物の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、繊維機械等に用いられる糸の異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精紡機などの繊維機械において、走行する糸に含まれる異物を検出するための異物検出装置が知られている。このような異物検出装置としては、走行する糸に光を照射し、反射光の受光量の変化を測定することにより異物を検出する構成のものがある。このような構成の異物検出装置を備えた繊維機械においては、当該異物検出装置が異物を検出すると、当該異物を含む箇所の切断除去を行って糸継ぎを行う。
【0003】
ところで、小さくて目立たない異物や、後の工程で漂白されることで目立たなくなる異物など、糸に含まれていても問題のない異物も存在する。しかしながら、単に受光量が変化したことのみで異物と判断してしまうと、上記問題の無い異物が含まれている箇所まで切断除去されてしまうため、繊維機械全体の生産効率が低下してしまう。この点、特許文献1は、糸からの反射光の受光量を解析することで、トラッシュ(漂白により目立たなくなるので除去しなくても良い)と色糸(除去する必要がある)とを区別して検出することが可能な異物検出装置を開示している。
【0004】
「トラッシュ」とはスライバが含有する葉カスや繊維の固まり等が混入した糸部分であり、「色糸」とは輸送途中等にスライバに混入した黒色や暗色等の繊維を含む糸部分である。一般的にこのような異物は紡績糸の繊維に比べて色が濃いため、反射光を減少させる。色糸はトラッシュほどには反射光を減少させないので、トラッシュが含まれる部分を「暗い」と表現するならば、色糸が含まれる部分は「少し暗い」と表現することができる。特許文献1の異物検出装置は、走行する糸からの反射光の受光量を測定したときに、暗くて短い部分があればトラッシュと判断し、少し暗くて長い部分があれば色糸と判断するように構成されている。
【特許文献1】特開2007−291544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スライバに混入した暗色等の繊維が紡績装置で繊維束とともに撚り合わされる結果、色糸を含んだ紡績糸は、通常、図7(a)に示すように紡績糸の表面に暗色等の繊維が螺旋状に巻き付いたような状態になる。このように色糸が螺旋状になっている区間は、照射された光の反射光を減少させて「少し暗い」部分として観測されるので、特許文献1の異物検出装置によって色糸の存在を検知することができる。
【0006】
しかし、図7(b)のB区間に示すように、色糸の一部が直線状になっている場合がある。このような色糸においては、螺旋状のA区間やC区間に比べて、B区間は反射光を殆ど減少させない。また、図のB区間において点線で示されているように色糸の直線状の部分が紡績糸の陰に隠れて見えない場合は、そもそも反射光によって当該直線状の部分を検知することができない。このため、図7(b)の紡績糸のB区間からの反射光を測定しても、異物が含まれない場合の受光量とほぼ同じ値を検出してしまう。
【0007】
このように一部が直線状になった色糸は、特許文献1の構成の異物検出装置では異物として検出することができなかった。これは、特許文献1が開示する異物検出装置が、「暗くて短い」異物(トラッシュ)と「少し暗くて長い」異物(色糸)とを検出するように構成されているためである。
【0008】
即ち、図7(b)のA区間とC区間は「少し暗くて短い」区間ではあるが、トラッシュほど「暗く」はないので、「暗くて短い」異物としては検出されない。また、A区間、B区間、C区間を合せて評価すると「長い」区間であるが、B区間からの反射光が明るいため、全体として見ると「少し暗い」と言うには明るすぎて、「少し暗くて長い」異物としては検出されない。
【0009】
なお、A区間やC区間のような「少し暗くて短い」部分は、単体では除去が必要なほどには目立たないため、異物としては検出しないように設定されている。しかしながら、A区間とB区間とC区間が連続した、例えば約5cm以上の長さを有する暗色等の繊維であれば、大変目立って見えることも多い。図7(b)のような色糸は、別の角度から見ると直線部分と螺旋状の部分が連続していることを視認することができる。従って、このような色糸が残留した糸で布が織られると色糸部分が大変目立ち、商品価値が減少してしまう。
【0010】
このため、このような色糸も検出することができる異物検出装置が求められていた。
【0011】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、色糸を確実に検出することが可能な異物検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0013】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の異物検出装置が提供される。即ち、この異物検出装置は、投光部と、受光部と、測定部と、受光値検出部と、記憶部と、計算部と、判定部と、を備える。前記投光部は、走行する糸に光を照射する。前記受光部は、前記投光部による照射光が前記糸で反射した反射光を受光する。前記測定部は、前記受光部の受光量を所定の糸長さ間隔ごとに測定する。前記受光値検出部は、前記測定部が測定した測定値に基づいて受光値を求める。前記記憶部は、前記受光値検出部が求めた受光値を複数記憶する。前記計算部は、前記受光値検出部が求めた最新の受光値と、前記最新の受光値に対応する測定値の測定位置から前記糸長さ間隔よりも所定長さ下流側の位置で測定された測定値に基づいて求められて前記記憶部に記憶されている受光値と、の合計値を求める。前記判定部は、前記計算部が求めた合計値に基づいて異物の有無を判定する。
【0014】
即ち、所定の間隔を空けて受光値の合計値を求め、当該合計値に基づいて異物の有無を判定しているので、前記所定長さの部分をスキップして異物判定を行うことができる。これにより、中間部分が直線状になっている色糸であっても、当該中間部分の測定値に影響を受けることなく、異物として検出することができる。従って、より正確に色糸の検出を行うことができる。
【0015】
前記の異物検出装置においては、以下のように構成されていることが好ましい。即ち、この異物検出装置は、前記最新の受光値に対応する測定値の測定位置から前記糸長さ間隔よりも所定の第1長さ下流側における所定の第2長さの範囲内で測定された測定値に基づいて求められて前記記憶部に記憶されている受光値の中で、最小の受光値を求める最小値検出部を更に備える。そして、前記計算部は、前記最新の受光値と、前記最小の受光値と、の合計値を求める。
【0016】
即ち、最新の受光値と最小の受光値との間に第1長さの間隔を空けることで、色糸の直線状の部分をスキップした合計値を求めることができる。また、ある程度幅を持った第2長さの範囲内の過去の受光値を考慮しているので、色糸の直線状になっている中間部分の長さが様々に異なるのに対応して、色糸を検出することができる。更に、過去の受光値の最小値と最新の受光値との合計値を求めているので、第2長さの範囲の過去の受光値すべてに対して最新の受光値との合計値を求めて異物の有無を判定する必要がない。従って計算効率が向上する。
【0017】
前記の異物検出装置においては、前記最小値検出部は、求めた前記最小の受光値を記憶しておき、前記最小の受光値に対応する測定値の測定位置が前記第2長さの範囲から外れた場合に、前記第2長さの範囲における最小の受光値を新たに求めて、前記最小の受光値の記憶内容を更新することが好ましい。
【0018】
これにより、第2長さの範囲に含まれる測定位置に対応する全ての受光値を毎回比較して最小値を求める必要がないので、計算効率を更に向上させることができる。
【0019】
前記の異物検出装置においては、前記最小値検出部は、前記第2長さの範囲に新たに入ってくる測定位置で測定された測定値に基づいて求められた受光値が、記憶しておいた前記最小の受光値よりも小さい場合に、前記最小の受光値の記憶内容を更新することが好ましい。
【0020】
これにより、記憶されている最小の受光値を簡単に更新することができるので、計算効率を更に向上させることができる。
【0021】
前記の異物検出装置においては、前記受光値検出部は、前記受光値を、当該受光値に対応する測定値の測定位置から所定の第3長さ下流側の範囲において測定された測定値を考慮して求めることが好ましい。
【0022】
これにより、ある程度の範囲における測定値を考慮して受光値を求めることで、ノイズの影響を抑えて検出精度を向上させることができる。
【0023】
前記の異物検出装置においては、前記判定部は、前記計算部が求めた前記合計値と、所定の閾値と、を比較することで異物の有無を判定することが好ましい。
【0024】
これにより、合計値と閾値との比較という簡単な処理で異物を検出することができる。
【0025】
本発明の第2の観点によれば、前記の異物検出装置を備えた繊維機械が提供される。
【0026】
この構成の繊維機械は、中間部分が直線状になっている色糸を検出することができるので、パッケージの品質を向上させることができる。
【0027】
本発明の第3の観点によれば、以下のような異物検出方法が提供される。即ち、この異物検出方法は、測定工程と、受光値検出工程と、記憶工程と、計算工程と、比較工程と、を含む。前記測定工程は、走行する糸に光を照射し、前記照射光が前記糸で反射した反射光を受光して受光量を所定の糸長さ間隔ごとに測定する。前記受光値検出工程は、測定された前記受光量の測定値に基づいて受光値を求める。前記記憶工程は、前記受光値を記憶部に記憶する。前記計算工程は、最新の受光値と、前記最新の受光値に対応する測定値の測定位置から前記糸長さ間隔より所定長さ下流側の位置で測定された測定値に基づいて求められて前記記憶部に記憶されている測定値と、の合計値を求める。前記比較工程は、前記合計値と所定の閾値とを比較することで異物を検出する。
【0028】
この方法は、所定の間隔を空けて受光値の合計値を求め、当該合計値に基づいて異物の有無を判定しているので、前記所定長さの部分をスキップして異物判定を行うことができる。これにより、中間部分が直線状になっている色糸であっても、当該中間部分の測定値に影響を受けることなく、異物として検出することができる。従って、より正確に色糸の検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の一実施形態に係る繊維機械としての精紡機(紡績機)について、図面を参照して説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。図1は本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示した正面図である。
【0030】
図1に示す繊維機械としての精紡機1は、並設された多数の紡績ユニット2と、機台制御装置60と、糸継台車3と、ブロアボックス4と、原動機ボックス5と、を備えている。また、精紡機1は図略の自動玉揚装置を備えている。
【0031】
機台制御装置60は、精紡機1が備える各構成を集中的に管理するためのものであって、モニタ61と入力キー62とを備える。機台制御装置60は、精紡機1が備える各構成との間で情報の送受信を行うことができるように構成されている。
【0032】
モニタ61には、例えば、各紡績ユニット2の生産効率をグラフで表示したり、問題の発生した紡績ユニット2を表示したりすることができるほか、精紡機1全体の統計的な情報を表示することもできる。また、オペレータが入力キー62を用いて適宜の操作を行うことにより、特定の紡績ユニット2に対して設定の変更を行ったり、或いは全ての紡績ユニット2の設定を一括して変更したりすることができる(なお、この設定変更は、機台制御装置60から後述のユニット制御部73に対して設定データを送信することで行う)。また、機台制御装置60は、紡績ユニット2以外にも、例えば糸継台車3や図略の自動玉揚装置などの制御及び管理を行うことができるように構成されている。
【0033】
各紡績ユニット2は、図1に示すようにスライバ15からパッケージ45を形成するためのものであって、上流から下流へ向かって順に、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11と、糸弛み取り装置12と、巻取装置13と、を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は精紡機1の筐体6の上端近傍に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績するように構成している。紡績装置9から排出された紡績糸10は糸送り装置11で送られ、後述のヤーンクリアラ52を通過した後、巻取装置13によって巻き取られてパッケージ45が形成される。
【0034】
前記糸継台車3は、紡績ユニット2が並べられる方向に走行可能な構成となっている。そして、糸切断時(後述)には、糸継ぎが必要な紡績ユニット2の位置まで走行し、紡績装置9側の上糸と、巻取装置13側の下糸とを糸継ぎすることができるように構成されている。
【0035】
次に、図2を参照して各紡績ユニット2の詳細な構成について説明する。図2は精紡機1の縦断面図である。
【0036】
図2に示すように、精紡機1は、各紡績ユニット2を制御するためのユニット制御部73を備えている。ユニット制御部73は、機台制御装置60からの制御信号、及び各紡績ユニット2が備える各種センサなどが検知した信号等に基づいて、紡績ユニット2が備える各構成を制御するように構成されている。また、ユニット制御部73は、各紡績ユニット2に関する情報を機台制御装置60に対して送信することができるように構成されている。
【0037】
ドラフト装置7は、スライバ15を延伸して繊維束8にするためのものである。このドラフト装置7は図2に示すように、バックローラ16、サードローラ17、エプロンベルト18を装架したミドルローラ19、及びフロントローラ20の4つのローラを備えている。
【0038】
紡績装置9の詳細な構成は図示しないが、本実施形態では、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与え、紡績糸10を生成する空気式のものを採用している。
【0039】
糸送り装置11は、精紡機1の筐体6に支持されたデリベリローラ39と、デリベリローラ39に接触して設けられたニップローラ40と、を備える。この構成で、紡績装置9から排出された紡績糸10をデリベリローラ39とニップローラ40との間に挟んだ状態で、前記デリベリローラ39を図示しない電動モータで回転駆動することにより、紡績糸10を巻取装置13側へ送るようになっている。
【0040】
精紡機1の筐体6の前面側であって前記糸送り装置11よりも若干下流側の位置には、ヤーンクリアラ(異物検出装置)52が設けられている。ヤーンクリアラ52は、クリアラヘッド521と、アナライザ80と、を主に備えている。そして、紡績装置9で紡出された紡績糸10は、巻取装置13で巻き取られる前に前記クリアラヘッド521を通過するように構成されている。ヤーンクリアラ52は走行する紡績糸10の太さ及び異物等を監視し、紡績糸10の糸欠点を検出した場合に、糸欠点検出信号をユニット制御部73へ送信するように構成されている。また、ヤーンクリアラ52の近傍には、糸欠点検出時に紡績糸10を切断するためのカッタ57が設けられている。なお、ヤーンクリアラ52の詳細な構成については後述する。
【0041】
糸弛み取り装置12は、紡績装置9と巻取装置13との間(紡績装置9と後述のスプライサ43との間)の紡績糸10の弛みを除去し、適切な張力を付与できるように構成されている。前記糸弛み取り装置12は、弛み取りローラ21と、糸掛け部材22と、を主に備えている。糸弛み取り装置12の詳細な構成については説明を省略するが、前記弛み取りローラ21の外周に紡績糸10を巻き付けて貯留し、貯留した糸をバッファとして機能させることで、紡績糸10の張力の変動を吸収して糸の弛みを防止するものである。
【0042】
次に、巻取装置13について説明する。巻取装置13は、支軸70まわりに揺動可能に支持されたクレードルアーム71を備え、このクレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するボビンを回転可能に支持できるようになっている。また巻取装置13は、巻取ドラム72と、トラバース装置75と、を備えている。
【0043】
前記巻取ドラム72は、前記ボビンやそれに紡績糸10を巻回して形成されるパッケージ45の外周面に接触して駆動できるように構成されている。トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。このトラバースガイド76は、複数の紡績ユニット2に跨って水平に配置されるトラバースロッド77に固定されている。この構成で、トラバースロッド77を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を図略の電動モータによって駆動することで、巻取ドラム72に接触するパッケージ45を回転させ、紡績糸10を綾振りしつつ巻き取ることができる。
【0044】
次に、糸継台車3について説明する。糸継台車3は、図1及び図2に示すように、スプライサ(糸継装置)43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、下糸検出センサ58と、を備えている。糸継台車3は、精紡機1の筐体6に設けられたレール41上を走行するように設けられている。この構成で、ある紡績ユニット2で糸切れや糸切断が発生すると、糸継台車3は当該紡績ユニット2まで走行して停止し、糸継動作を行うように構成されている。
【0045】
以下、糸継台車3による糸継動作について具体的に説明する。前述のように、ヤーンクリアラ52が紡績糸10の糸欠点を検出すると、糸欠点検出信号がユニット制御部73へ送信される。前記ユニット制御部73は、上記糸欠点検出信号を受信すると、直ちにカッタ57で糸を切断し、更にドラフト装置7、紡績装置9、巻取装置13等を停止し、糸継台車3を当該紡績ユニット2の前まで走行させる。
【0046】
続いて、ユニット制御部73は、当該紡績ユニット2のドラフト装置7及び紡績装置9等を再び駆動させるとともに、糸継台車3が備えたサクションパイプ44及びサクションマウス46による糸端の捕捉を開始させる。サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動しながら、紡績装置9から排出される上糸の糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。これと前後して、サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動しながら、前記巻取装置13に回転自在に支持されたパッケージ45からの下糸の糸端を吸引しつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。
【0047】
上糸と下糸がスプライサ43に案内されると、案内された糸端同士の糸継ぎがスプライサ43によって行われる。スプライサ43の詳しい構成については説明しないが、例えば圧縮空気流などの流体によって糸端同士を撚り合わせる方法により糸継ぎを行う構成とすることができる。糸継ぎが終了すると、巻取装置13による巻取りを再開させる。
【0048】
次に、ヤーンクリアラ52が備えるクリアラヘッド521の構成について、図3を参照して説明する。図3はクリアラヘッド521の概略的な平面断面図及びヤーンクリアラ52の機能的な構成を示すブロック図である。
【0049】
図3に示すように、クリアラヘッド521は、LED等の発光素子からなる投光部531,532と、光電変換素子からなる受光部541,542と、反射光平均回路561と、透過光平均回路562と、を備えている。また、クリアラヘッド521には糸通路55が形成されており、紡績糸10がこの糸通路55に通されて走行するように構成されている。
【0050】
図に示すように、2つの投光部531,532は、紡績糸10に対して互いに異なる方向から光を照射するように配置されている。そして、上記投光部531,532による光の照射を、所定糸長さ又は所定時間毎に交互に切り替えて行うことによって、紡績糸10の監視を2つの異なる方向から行うことができるように構成されている(図3には両方の投光部から同時に光が照射されているように描かれているが、実際にはどちらか片方のみが発光する)。これにより、外部から侵入する光や他の光源による影響を緩和して、確実に異物検出を行うことが可能となる。
【0051】
投光部531又は532から紡績糸10に照射された光は、紡績糸10を透過するとともに(図3の実線矢印)、一部が紡績糸10によって反射される(図3の点線矢印)。図に示すように、投光部531によって光が照射されている時には、受光部542が透過光を、受光部541が反射光を、それぞれ受光する。また、投光部532によって光が照射されている時には、受光部541が透過光を、受光部542が反射光を、それぞれ受光する。受光部541,542は、受光量の大きさに比例した電圧値を出力するように構成されており、当該電圧値を測定することで前記透過光又は前記反射光の受光量を検出できるようになっている。
【0052】
前記のように、投光部531,532は交互に発光するので、受光部541,542はそれぞれ反射光と透過光を交互に受光する。受光部541,542が反射光或いは透過光を受光したことにより出力する電圧値は、図略のスイッチング素子を介して反射光平均回路561又は透過光平均回路562に振り分けて入力される。
【0053】
反射光平均回路561は、受光部541が投光部531による反射光を受光したことにより出力した電圧値と、受光部542が投光部532による反射光を受光したことにより出力した電圧値と、を入力として受信し、2つの電圧値の平均を反射光の検出電圧として出力するように構成されている。また、透過光平均回路562は、受光部541が投光部532による透過光を受光したことにより出力した電圧値と、受光部542が投光部531による透過光を受光したことにより出力した電圧値と、を入力として受信し、2つの電圧値の平均を透過光の検出電圧として出力するように構成されている。
【0054】
以上の構成で、紡績糸10に太い部分があれば透過光の受光量が減少し、細い部分があれば透過光の受光量が増加する。即ち、紡績糸10の太さによって透過光の受光量が変化するので、透過光の検出電圧を測定することによって紡績糸10の太さを検出することができる。また、紡績糸10に暗い異物があれば反射光の受光量が減少し、明るい異物があれば反射光の受光量が増大する。即ち、異物の存在によって反射光の受光量が変化するので、反射光の検出電圧を測定することによって紡績糸10に含まれる異物を検出することができる。
【0055】
次に、ヤーンクリアラ52が備えるアナライザ80の構成について説明する。アナライザ80は、クリアラヘッド521から反射光及び透過光の検出電圧を受信し、これを解析して異物を検出するように構成されている。そして、アナライザ80は、除去すべき異物を検出した場合には、前述の糸欠点検出信号をユニット制御部73へ送信するように構成されている。
【0056】
アナライザ80は例えばマイクロコントローラとして構成されており、図略のCPU、RAM、ROM、I/O等を備えている。ROMには各種のプログラムが記憶されており、当該プログラムが実行されることで、前記CPUとRAMとROMとI/Oとが協働して、アナライザ80に、後述の検出信号受信部81、受光率計算部82、第1記憶部83、第2記憶部84、第1チャンネル計算部85、第2チャンネル計算部86、第3チャンネル計算部87、判定部88、最小値検出部89等としての機能を発揮させるように構成されている。
【0057】
検出信号受信部(測定部)81は、反射光平均回路561及び透過光平均回路562からの検出電圧を受信し、走行する紡績糸10の一定長さ間隔ごとに前記検出電圧をサンプリングして、デジタルデータ(生データ)に変換するように構成されている。なお、本実施形態では走行する紡績糸10の1mm間隔ごとに前記サンプリングを行うように構成されている。
【0058】
受光率計算部82は、検出信号受信部81が検出電圧をサンプリングする度に、サンプリングされた生データに基づいて反射光の受光率[%]を計算するように構成されている。受光率とは、異物が何もない状態の紡績糸10からの反射光の検出電圧を基準の電圧として、反射光の電圧値が前記基準の電圧からどれだけ変化したかを示す変化率[%]を求め、この変化率をそのときの糸太さ(透過光の生データに基づいて求められる)で除した値である。ここで変化率を糸太さで除しているのは、糸が細いと反射光は減少し、糸が太いと反射光は増大するので、前記変化率を糸太さで補正することにより糸太さの影響を排除し、異物の影響による反射光の変化をより精度良く検出するためである。
【0059】
第1記憶部83は複数のデータを記憶可能な環状バッファとして構成されたメモリ領域を有しており、受光率計算部82が算出した反射光の受光率データを、最新の所定の糸長さ分だけ記憶しておくように構成されている。図4は、図7(b)に示す紡績糸10をヤーンクリアラ52で測定した際に、第1記憶部83に記憶される受光率のデータを概念的に示した図である。なお、図4は概念的な図であって、第1記憶部83において環状バッファとして構成されているメモリ上の実際のデータが図のように配置されていることを示すものではない。
【0060】
図4のA区間、B区間、C区間は、それぞれ図7(b)のA区間、B区間、C区間に対応している。図4の個々の棒グラフは個々の受光率データを示す。前述のように、本実施形態では走行する紡績糸の1mmごとにサンプリングが行われるので、それぞれの棒グラフは紡績糸の1mmずつの受光率を示す。グラフの縦軸は受光率を表し、低ければ低いほど受光量が少ない(即ち、暗い)ということを示す。横軸は時間であって右側にいくほど新しいデータを示し、最右のDnewが最新の受光率データを示す。なお、以下の説明において「受光率データの測定位置」とは、当該受光率データを算出する基になった検出電圧をサンプリングした紡績糸10上の位置のことをいう。
【0061】
次に、アナライザ80による異物の検出方法について簡単に説明する。本実施形態のヤーンクリアラ52のアナライザ80は、クリアラヘッド521から受信した反射光及び透過光の検出電圧に基づいて、3種類の異物を区別して検出することができるように構成されている。このように複数の異物を区別して検出できるので、それぞれの異物の検出手段のことを、以下の説明で「チャンネル」と呼ぶ場合がある。
【0062】
第1チャンネルは、暗くて短い異物を検出することを目的としたものである。第2チャンネルは、少し暗くて長い異物である色糸を検出することを目的としたものである。そして、第3チャンネルは、図7(b)に示すような中間部分が直線状になった色糸を検出することを目的としたものである。なお、本実施形態のアナライザ80は、透過光及び反射光の検出電圧を監視することによって、異物以外にも各種の糸欠点(例えば風綿、スラブ、糸の太さムラ等)を検出可能に構成されているが、説明は省略する。
【0063】
第1チャンネル及び第2チャンネルにおける異物検出方法の基本的な考え方は、紡績糸10の所定長さの範囲における受光率の平均値を求め、その平均値と閾値とを比較して、前記平均値が閾値を下回った場合に異物ありと判定するものである。即ち、異物はある程度決まった長さと色とを有するので、所定長さの範囲における平均的な受光量をみることで、特定の色と長さを有する異物が存在するか否かを判定することができる。また、ある程度の範囲の平均値を見ているので、当該範囲内にノイズの影響による異常な受光率データがあったとしても、当該異常な受光率データの影響を低減することができる。従って、上記の異物判定方法はノイズ低減の観点からも有利である。
【0064】
具体的に図4を参照して説明する。第1チャンネルで異物の検出を行う場合、最新の受光率データDnewの測定位置から紡績糸10の下流側に第1チャンネル長さL1の区間内で測定された受光率データの平均値を求める。この平均値が第1チャンネル検出閾値を下回れば、異物ありと判断する。また、第2チャンネルで異物の検出を行う場合、最新の受光率データDnewの測定位置から紡績糸10の下流側に第2チャンネル長さL2の区間内で測定された受光率データの平均値を求める。この平均値が第2チャンネル検出閾値を下回れば、異物ありと判断する。図4に示すように、第1チャンネル長さL1に比べて第2チャンネル長さL2の方が長く、第2チャンネル検出閾値よりも第1チャンネル検出閾値の方が低いように構成されている。以上のようにして、第1チャンネルは短くて暗い異物を、第2チャンネルは長くて少し暗い異物(色糸)を検出することができる。
【0065】
以上が第1及び第2チャンネルにおける異物の検出方法の基本的な考え方であるが、本実施形態では平均値を求めずに、合計値と閾値とを比較するように構成している。即ち、平均値を求める場合は、第1及び第2チャンネル長さの区間に含まれる受光率データの合計値(受光率合計値)を求め、更に当該受光率合計値をデータ数で除算しなければならない。平均値を求める代わりに前記受光率合計値を用いることで、演算量を減らしてCPUの処理負荷を軽減することができる。以下の説明では実施形態に沿って合計値を用いるものとして説明する。
【0066】
第1チャンネル計算部(受光値検出部)85は、第1記憶部83が記憶している受光率データの中から、最新の受光率データDnewの測定位置から紡績糸10の下流側に第1チャンネル長さL1に相当する区間内で測定された受光率データを取り出し、この区間の受光率合計値(受光値)を演算するように構成されている。本実施形態では、第1チャンネル長さL1は、紡績糸10の長さ10mmとしてある。従って、第1チャンネル計算部85は、第1記憶部83から最新の受光率データ10個分を取り出し、合計値を算出する。なお、この受光率合計値は、第1記憶部83に新しい受光率データが追加されるたびに算出される。
【0067】
第2チャンネル計算部86は、第1記憶部83が記憶している受光率データの中から、最新の受光率データDnewの測定位置から紡績糸10の下流側に第2チャンネル長さL2に相当する区間内で測定された受光率データを取り出し、この区間の受光率合計値を演算するように構成されている。本実施形態では、第2チャンネル長さL2は、紡績糸10の長さ25mmとしてある。従って、第2チャンネル計算部86は、第1記憶部83から最新の受光率データ25個分を取り出し、合計値を算出する。なお、この受光率合計値も、第1記憶部83に新しい受光率データが追加されるたびに算出される。
【0068】
判定部88は、第1チャンネル計算部85及び第2チャンネル計算部86が算出した受光率合計値と所定の閾値とを比較することで異物の有無を判定する。具体的には、第1チャンネル計算部85が算出した受光率データ10個分の受光率合計値と、所定の閾値(前述の第1チャンネル判定閾値を10倍した値)と、を比較し、合計値が下回れば暗くて短い異物ありと判定する。また、これと同様に、第2チャンネル計算部86が算出した受光率データ25個分の受光率合計値と、所定の閾値(前述の第2チャンネル判定閾値を25倍した値)と、を比較し、合計値が下回れば少し暗くて長い異物(色糸)ありと判定する。
【0069】
ところで、図4のように色糸に直線状の部分(B区間)があると、上記の第1チャンネル及び第2チャンネルでは異物として検出することができない。即ち、色糸が螺旋状になっているA区間は、第1チャンネル検出閾値で検出できるほどには暗くないため、第1チャンネルでは検出されない。また、第2チャンネル長さL2の範囲にB区間(受光率が大きい区間)の一部が入っているため、第2チャンネル計算部が算出する合計値が大きくなって第2チャンネル検出閾値を上回ってしまい、第2チャンネルでも検出されない。
【0070】
そこで、本実施形態のヤーンクリアラ52において、中間部分が直線状になった色糸を検出するための第3チャンネルは、所定の範囲の受光率データを除いた合計値を求め、当該合計値を所定の閾値と比較するように構成されている。即ち、糸が直線状になっている中間部分(B区間)はスキップして受光率データの合計値を求めることで、当該直線状の部分を無視して異物判定を行うように構成されている。
【0071】
図5を参照して説明する。図5の上側のグラフは、図4と同じく第1記憶部83が記憶している受光量データを概念的に示したグラフである。例えば、最新の受光率データDnewの測定位置から所定の範囲A1内に含まれる受光率データと、最新の受光率データDnewの測定位置から下流側に所定の間隔を空けた位置における所定の範囲C1内に含まれる受光率データと、の合計値を算出して、この合計値と閾値と比較する。範囲A1内で測定された受光率データは、色糸が螺旋状になっているA区間を検出したものであるといえる。また、範囲C1内で測定された受光率データは、色糸が螺旋状になっているC区間を検出したものであるといえる。範囲A1と範囲C1に含まれる受光率データの合計値を求めることで、B区間の受光率データを飛ばした合計値を算出することができる。従って、前記合計値と、適切な閾値と、を比較することで、中間部分が直線状になった色糸であっても正確に検出することができる。
【0072】
ただし、実際の紡績糸において、色糸が直線状になった区間(B区間)の長さは様々であり、前記C1の範囲を予め設定しておく構成では、正確な色糸検出を行うことができない。そこで、本実施形態では、第2記憶部84、第3チャンネル計算部87、最小値検出部89が以下のように構成されている。
【0073】
第2記憶部(記憶部)84は、複数のデータを記憶可能な環状バッファとして構成されたメモリ領域を有しており、第1チャンネル計算部85が算出した受光率データ10個分(第3長さ)の受光率合計値を、最新の所定の糸長さ分記憶しておくように構成されている。第2記憶部84は、第1チャンネル計算部85が受光率データ10個分の受光率合計値を算出する毎に、当該受光率合計値を前記環状バッファに追加するように構成されている。このように第1チャンネル計算部85が算出した値を流用して記憶しているので、受光率合計値を新たに計算する必要が無く、処理負荷を軽減することができる。
【0074】
この第2記憶部84が記憶している受光率合計値を概念的に示したグラフが、図5の下側に示されている。図5の下側のグラフにおける個々の棒グラフは個々の受光率合計値を示す。前述のように、本実施形態では走行する紡績糸10の1mmごとに受光率合計値の算出が行われるので、それぞれの棒グラフは紡績糸10の1mmごとに算出した受光率合計値を示す。グラフの縦軸は受光率合計値を表し、基準となる受光率0%より低ければ低いほど受光量が少ない(即ち、暗い)ということを示す。横軸は時間であって右側にいくほど新しいデータを示し、最右のVnewが最新の受光率合計値を示す。なお、以下の説明で、「受光率合計値の測定位置」というとき、当該受光率合計値は、当該受光率合計値に含まれる受光率データの中での最新の受光率データの測定位置で測定されたものとする。
【0075】
第3チャンネル計算部(計算部)87は、最新の受光率合計値Vnewと、判定長さ(第2長さ)L4の範囲内における最小の受光率合計値Vmin(後述の最小値検出部89にて求める)と、の合計値を求めるように構成されている。
【0076】
前記判定長さL4の範囲は、最新の受光率合計値Vnewの測定位置から紡績糸10の下流側に設定長さ(第1長さ)L3の間隔を空けて設定されている。第3チャンネルにおいては、最新の受光率合計値Vnewの測定位置から前記設定長さL3の範囲の受光率合計値は、異物検出の際に考慮されない。即ち、設定長さL3の範囲の受光率合計値は、色糸の直線状の部分(B区間)をスキップするために無視される。この設定長さL3は、最新の受光率合計値Vnewと、判定長さL4の範囲内における最小の受光率合計値Vminと、の間隔が少なくとも受光率データ1個分(本実施形態では1mm)以上になるように適宜の値が設定される。本実施形態において設定長さL3は、紡績糸10の最新の受光率合計値Vnewの測定位置から紡績糸10の下流側に20mm(受光率合計値20個分)の範囲としている。
【0077】
また、前述のとおり、色糸の直線部分(B区間)がどの程度の長さであるかを予め知ることはできないので、本実施形態では、判定長さL4の範囲である程度幅を持たせて色糸のC区間を検出するように構成されている。本実施形態において判定長さL4は、紡績糸10の長さ40mm(受光率合計値40個分)の範囲としている。例えば、判定長さL4の範囲で測定された受光率合計値それぞれと、最新の受光率合計値Vnewと、の合計値を求め、それぞれの前記合計値の中に1つでも所定の閾値を下回る合計値があれば異物ありと判定することができる。しかし、判定長さL4の範囲の受光率合計値それぞれ全てに対して上記比較判定を毎回行うこととすると、計算負荷が過大となってしまう。そこで、本実施形態では、判定長さL4の範囲内における最小の受光率合計値Vminと、最新の受光率合計値Vnewと、の合計値のみを求める構成としている。
【0078】
最小値検出部89は、判定長さL4の範囲内における最小の受光率合計値Vminを求める。異物判定の度に判定長さL4の範囲内の最小値を求める構成とすると余分な計算負荷がかかってしまうため、最小値検出部89は以下のように構成されている。
【0079】
即ち、最小値検出部89は、直前に求めた最小の受光率合計値Vminを記憶している。そして、第3チャンネル計算部87は、この最小値検出部89が記憶している受光率合計値Vminを読み出して合計値の計算に用いる。最小値検出部89は、記憶している最小の受光率合計値Vminの測定位置が判定長さL4の範囲を外れると、判定長さL4の範囲内における最小の受光率合計値を計算し直し、記憶している最小の受光率合計値Vminを更新する。また、判定長さL4範囲に新たに入ってきた測定位置で測定された受光率合計値が、記憶している最小の受光率合計値Vminよりも小さい場合は、最小の受光率合計値Vminを更新する。
【0080】
そして、判定部88は、第3チャンネル計算部87が計算した最新の受光率合計値Vnewと最小の受光率合計値Vminとの合計値と、所定の閾値と、を比較し、前記合計値が下回っていた場合に異物(色糸)ありと判定するように構成されている。
【0081】
次に、上記のように構成されたヤーンクリアラ52による異物検出方法について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0082】
まず、検出信号受信部81が、走行する紡績糸からの反射光及び透過光の検出電圧をサンプリングする(測定工程、S101)。前記サンプリングが行われると、受光率計算部82が、サンプリングされた生データに基づいて反射光の受光率を計算する(S102)。このとき、第1記憶部83に最新の受光率データDnewが追加される。
【0083】
続いて、第1チャンネル計算部85によって、最新の受光率データDnewの測定位置から第1チャンネル長さL1の範囲で測定された受光率データの合計値(受光値)が求められる(受光値検出工程、S103)。
【0084】
第1チャンネル計算部85によって最新の受光率合計値が算出されると、この値が第2記憶部84に追加される(記憶工程、S104)。
【0085】
判定部88は、第1チャンネル計算部85が算出した受光率合計値と、所定の閾値と、を比較して(S105)、合計値の方が下回った場合に異物ありと判断する。異物を検出した場合には、ヤーンクリアラ52からユニット制御部73に糸欠点検出信号が送られ、当該異物箇所のカット及び糸継ぎが行われる(S110)。
【0086】
次に、第2チャンネル計算部86によって、最新の受光率データDnewの測定位置から第2チャンネル長さL2の範囲で測定された受光率データの合計値が求められる(S106)。判定部88は、第2チャンネル計算部86が算出した受光率合計値と、所定の閾値と、を比較して(S107)、合計値の方が下回った場合に異物ありと判断する。異物を検出した場合には、ヤーンクリアラ52からユニット制御部73に糸欠点検出信号が送られ、当該異物箇所のカット及び糸継ぎが行われる(S110)。
【0087】
第1チャンネル及び第2チャンネルで異物を検出できなかった場合には、第3チャンネル計算部87による合計値の算出が行われる。第3チャンネル計算部87は、第2記憶部84から最新の受光率合計値を読み出すとともに、最小値検出部89が記憶している最小の受光率合計値を取得し、最新の受光率合計値と最小の受光率合計値との合計値を算出する(計算工程、S108)。
【0088】
判定部88は、第3チャンネル計算部87が算出した受光率の合計値と、所定の閾値と、を比較して(比較工程、S109)、合計値の方が下回った場合に異物ありと判断する。異物を検出した場合には、ヤーンクリアラ52からユニット制御部73に糸欠点検出信号が送られ、当該異物箇所のカット及び糸継ぎが行われる(S110)。
【0089】
次に、最小値検出部89は、記憶している最小の受光率合計値を更新する必要があるかどうかを判断する(S111)。前述したように、記憶している最小の受光率合計値が判定長さL4の範囲を外れた場合、又は、記憶している最小の受光率合計値よりも小さい受光率合計値が判定長さL4の範囲に入ってきた場合には、記憶している最小の受光率合計値を更新する(S112)。
【0090】
以上のフローを、走行する紡績糸10の1mmごとに実行することで、連続的に紡績糸10を監視して異物を検出することができる。
【0091】
以上に説明したように、本実施形態のヤーンクリアラ52は、投光部531,532と、受光部541,542と、検出信号受信部81と、第1チャンネル計算部85と、第2記憶部84と、第3チャンネル計算部87と、判定部88と、を備えている。投光部531,532は、走行する紡績糸10に光を照射する。受光部541,542は、投光部531,532による照射光が紡績糸10で反射した反射光を受光する。検出信号受信部81は、受光部541,542の受光量を紡績糸10の1mmごとにサンプリングする。第1チャンネル計算部85は、検出信号受信部81がサンプリングした受光量に基づいて受光率合計値を求める。第2記憶部84は、第1チャンネル計算部85が求めた受光率合計値を複数記憶する。第3チャンネル計算部87は、第1チャンネル計算部85が求めた最新の受光率合計値と、最新の受光率合計値の測定位置からサンプリング間隔(1mm)よりも長い20mm(設定長さL3)以上の間隔を空けた位置で測定されて第2記憶部84に記憶されている受光率合計値と、の合計値を求める。そして、判定部88は、第3チャンネル計算部87が求めた合計値に基づいて異物の有無を判定している。
【0092】
即ち、設定長さL3の間隔を空けて受光率の合計値を求め、当該合計値に基づいて異物の有無を判定しているので、設定長さL3の部分をスキップして異物判定を行うことができる。これにより、中間部分が直線状になっている色糸であっても、当該中間部分で測定された受光率データに影響を受けることなく、異物として検出することができる。従って、より正確に色糸の検出を行うことができる。
【0093】
また、本実施形態のヤーンクリアラ52は、最新の受光率合計値の測定位置からサンプリング間隔(1mm)よりも長い20mm(設定長さL3)下流側における判定長さL4の範囲内で測定されて第2記憶部84に記憶されている受光率合計値の中で、最小の受光率合計値を求める最小値検出部89を更に備えている。そして、第3チャンネル計算部87は、最新の受光率合計値と、最小の受光率合計値と、の合計値を求めている。
【0094】
即ち、最新の受光率合計値と最小の受光率合計値との間に設定長さL3の間隔を空けることで、色糸の直線状の部分をスキップした合計値を求めることができる。また、ある程度幅を持った判定長さL4の範囲内の過去の受光率合計値を考慮しているので、色糸の直線状になっている中間部分の長さが様々に異なるのに対応して、色糸を検出することができる。更に、過去の受光率合計値の最小値と最新の受光率合計値との合計値を求めているので、判定長さL4の範囲の過去の受光率合計値すべてに対して最新の受光率合計値との合計値を求めて異物の有無を判定する必要がない。従って計算効率が向上する。
【0095】
また、本実施形態のヤーンクリアラ52において、最小値検出部89は、求めた最小の受光率合計値を記憶しておき、前記最小の受光率合計値の測定位置が判定長さL4の範囲から外れた場合に、判定長さL4の範囲における最小の受光率合計値を新たに求めて、最小の受光率合計値の記憶内容を更新している。
【0096】
これにより、判定長さL4の範囲に含まれる測定位置で測定された全ての受光率合計値を毎回比較して最小値を求める必要がないので、計算効率を更に向上させることができる。
【0097】
また、本実施形態のヤーンクリアラ52において、最小値検出部89は、判定長さL4の範囲に新たに入ってくる測定位置で測定された受光率合計値が、記憶しておいた最小の受光率合計値よりも小さい場合に、最小の受光率合計値の記憶内容を更新している。
【0098】
これにより、記憶されている最小の受光率合計値を簡単に更新することができるので、計算効率を更に向上させることができる。
【0099】
また、本実施形態のヤーンクリアラ52において、第1チャンネル計算部85は、受光率合計値を、当該受光率合計値の測定位置から第1チャンネル長さL1下流側の範囲において測定された受光率データを合計して求めている。
【0100】
これにより、ある程度の範囲における受光率データを考慮して受光率合計値を求めることで、ノイズの影響を抑えて検出精度を向上させることができる。
【0101】
また、本実施形態のヤーンクリアラ52において、判定部88は、第3チャンネル計算部87が求めた合計値と、所定の閾値と、を比較することで異物の有無を判定している。
【0102】
これにより、合計値と閾値との比較という簡単な処理で異物を検出することができる。
【0103】
また、本実施形態の精紡機1は、前記のヤーンクリアラ52を備えている。
【0104】
従って、本実施形態の精紡機1は、中間部分が直線状になっている色糸を検出することができるので、パッケージの品質を向上させることができる。
【0105】
また、本発明の異物検出方法は、測定工程と、受光値検出工程と、記憶工程と、計算工程と、比較工程と、を含んでいる。測定工程では、走行する紡績糸10に光を照射し、前記照射光が紡績糸10で反射した反射光を受光して受光量を紡績糸10の1mmごとにサンプリングする。受光値検出工程では、測定された受光量の測定値に基づいて受光率合計値を求める。記憶工程では、受光率合計値を第2記憶部84に記憶する。計算工程では、最新の受光率合計値と、最新の受光率合計値の測定位置からサンプリング間隔(1mm)よりも長い20mm(設定長さL3)以上の間隔を空けた位置で測定されて第2記憶部84に記憶されている受光率合計値と、の合計値を求める。比較工程では、前記合計値と所定の閾値とを比較することで異物を検出する。
【0106】
この方法は、所定の間隔を空けて受光率合計値の合計値を求め、当該合計値に基づいて異物の有無を判定しているので、前記設定長さL3の部分をスキップして異物判定を行うことができる。これにより、中間部分が直線状になっている色糸であっても、当該中間部分の受光率データに影響を受けることなく、異物として検出することができる。従って、より正確に色糸の検出を行うことができる。
【0107】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0108】
サンプリング間隔、第1チャンネル長さL1、第2チャンネル長さL2、設定長さL3、判定長さL4等は上記明細書中の値に限定されず、適宜変更可能である。また、オペレータが機台制御装置60に所望の値を適宜入力することで、上記の値を随時変更可能な構成としても良い。
【0109】
第3チャンネルでは第1チャンネル計算部85が計算した受光率合計値を流用したが、これに限らず、第1チャンネルとは別に所定の範囲の受光率データの合計値を計算しても良い(即ち、範囲A1及び範囲C1の長さが、第1チャンネル長さL1と一致していなくても良い)。ただし、計算済みの受光率合計値を流用することで計算量を減らすという観点からは、第1チャンネル計算部85が求めた受光率合計値を用いることが好ましい。
【0110】
また、上記実施形態では第3チャンネル計算部87では受光率合計値同士の合計値を求めているが、これに限らず、例えば、最新の受光率データDnewと、最新の受光率データDnewから下流側に所定の間隔を空けた位置で測定された受光率データと、の合計値を求めても良い。ただし、この場合はノイズ等の影響によって異常な受光率データが含まれていた場合に正確な色糸検出ができないので、本実施形態のように或る程度の範囲(本実施形態では第1チャンネル長さL1)の受光率データを合計した受光率合計値同士の合計値を求めて異物判定に用いることが好ましい。
【0111】
上記実施形態では計算負荷を低減するための各種の工夫を用いたが、これらは必須ではなく、CPU等の処理能力に余裕があれば省略することができる。例えば、最小値検出部89による最小値の検出を省略して、判定長さL4の範囲内で測定された受光率合計値のそれぞれと、最新の受光率合計値と、の合計値をそれぞれ求め、それぞれの合計値と閾値との比較を行っても良い。また、例えば、第1チャンネル計算部85において、第1チャンネル長さL1の範囲で測定された受光率データの平均値を求めても良い。この場合は、第2記憶部84に、受光率データの移動平均値が順次記憶される。第3チャンネルにおいては、この変形例における上記移動平均値を用いることでも、上記実施形態と同様の精度で、中間部分が直線状になった色糸を検出することができる。
【0112】
クリアラヘッド521が備える投光部は2つに限らず、1つでも良いし3つ以上でも良い。ただし、投光部を1つとした場合は、光の照射箇所が少なく照射箇所の反対側の異物を検出できないため、異物の検出精度が落ちてしまう。従って、投光部は2つ以上設けることが好ましい。
【0113】
上記実施形態では、クリアラヘッド521とアナライザ80とが別体としたが、これに代えて、例えばクリアラヘッド521にアナライザ80を内蔵する構成に変更することができる。
【0114】
本発明は精紡機に限らず、自動ワインダなど他の繊維機械にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示した正面図。
【図2】紡績機における制御信号等の流れを示すブロック図。
【図3】本発明の一実施形態に係るヤーンクリアラの機能的な構成を示すブロック図及びクリアラヘッドの概略的な平面断面図。
【図4】第1記憶部に記憶されている受光率のデータを概念的に示した図。
【図5】第2記憶部に記憶されている受光率合計値を概念的に示した図。
【図6】本発明の一実施形態に係る異物検出方法のフローチャート。
【図7】(a)色糸の様子を示す説明図。(b)中間部分が直線状になった色糸の様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0116】
1 精紡機(繊維機械)
10 紡績糸
52 ヤーンクリアラ(異物検出装置)
521 クリアラヘッド
531,532 投光部
541,542 受光部
80 アナライザ
81 検出信号受信部(測定部)
84 第2記憶部(記憶部)
85 第1チャンネル計算部(受光値検出部)
87 第3チャンネル計算部(計算部)
88 判定部
89 最小値検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する糸に光を照射する投光部と、
前記投光部による照射光が前記糸で反射した反射光を受光する受光部と、
前記受光部の受光量を所定の糸長さ間隔ごとに測定する測定部と、
前記測定部が測定した測定値に基づいて受光値を求める受光値検出部と、
前記受光値検出部が求めた受光値を複数記憶する記憶部と、
前記受光値検出部が求めた最新の受光値と、前記最新の受光値に対応する測定値の測定位置から前記糸長さ間隔よりも所定長さ下流側の位置で測定された測定値に基づいて求められて前記記憶部に記憶されている受光値と、の合計値を求める計算部と、
前記計算部が求めた合計値に基づいて異物の有無を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする異物検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異物検出装置であって、
前記最新の受光値に対応する測定値の測定位置から前記糸長さ間隔よりも所定の第1長さ下流側における所定の第2長さの範囲内で測定された測定値に基づいて求められて前記記憶部に記憶されている受光値の中で、最小の受光値を求める最小値検出部を更に備え、
前記計算部は、前記最新の受光値と、前記最小の受光値と、の合計値を求めることを特徴とする異物検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の異物検出装置であって、
前記最小値検出部は、
求めた前記最小の受光値を記憶しておき、
前記最小の受光値に対応する測定値の測定位置が前記第2長さの範囲から外れた場合に、前記第2長さの範囲における最小の受光値を新たに求めて、前記最小の受光値の記憶内容を更新することを特徴とする異物検出装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の異物検出装置であって、
前記最小値検出部は、前記第2長さの範囲に新たに入ってくる測定位置で測定された測定値に基づいて求められた受光値が、記憶しておいた前記最小の受光値よりも小さい場合に、前記最小の受光値の記憶内容を更新することを特徴とする異物検出装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の異物検出装置であって、
前記受光値検出部は、前記受光値を、当該受光値に対応する測定値の測定位置から所定の第3長さ下流側の範囲において測定された測定値を考慮して求めることを特徴とする異物検出装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の異物検出装置であって、
前記判定部は、前記計算部が求めた前記合計値と、所定の閾値と、を比較することで異物の有無を判定することを特徴とする異物検出装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の異物検出装置を備えたことを特徴とする繊維機械。
【請求項8】
走行する糸に光を照射し、前記照射光が前記糸で反射した反射光を受光して受光量を所定の糸長さ間隔ごとに測定する測定工程と、
測定された前記受光量の測定値に基づいて受光値を求める受光値検出工程と、
前記受光値を記憶部に記憶する記憶工程と、
最新の受光値と、前記最新の受光値に対応する測定値の測定位置から前記糸長さ間隔より所定長さ下流側の位置で測定された測定値に基づいて求められて前記記憶部に記憶されている測定値と、の合計値を求める計算工程と、
前記合計値と所定の閾値とを比較する比較工程と、
を含むことを特徴とする異物検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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