説明

異物検出装置

【課題】同一捜索時間における異物の3次元形状の検出精度を向上できる異物検出装置を得る。
【解決手段】捜索対象にレーザ光を照射したときの散乱光を用いて異物を検出する異物検出装置であって、レーザ光を出力する光出力手段と、レーザ光を用いて捜索対象の捜索範囲を走査するスキャナ11と、捜索対象からの散乱光を受光する光受信機13と、レーザ光と散乱光の位相差及び散乱光の受信強度を検出する位相検波器14と、これらの検出結果に基づいて捜索範囲を絞り込んで着目領域23を抽出し、スキャンする走査線間隔を狭くしてスキャナ11に着目領域23を再走査させる制御信号を出力し、この着目領域23における位相検波器14の検出結果に基づいて3次元画像を生成するパソコン3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットに光を照射したときの散乱光を用いて異物を検出する異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異物を検出する装置として、従来、ターゲットに対してレーザ光を送信する送信機と、ターゲットからレーザ光を受信する受信機とを備え、レーザ光の受信強度およびレーザ光がターゲットとの間を往復する時間に基づいてターゲット上にある異物の3次元形状を検出するレーダシステムがある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.T.Murray他、Proc. of SPIE,Vol.5086,pp.84−95,2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなレーダシステムにおいては、分解能を維持した状態で広範囲の捜索をするにはレーザ光を送受する空間の仰角や方位角を固定する必要があり、膨大な捜索時間を要するという問題があった。一方、捜索時間を変更せずに広範囲の捜索をするには照射するレーザ光の集光スポットサイズを大きくする必要があり、分解能が低下して3次元形状の検出精度が劣化するという問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、同一捜索時間における異物の3次元形状の検出精度を向上できる異物検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る異物検出装置は、レーザ光を出力する光出力手段と、レーザ光を用いて捜索対象の捜索範囲を走査する走査手段と、捜索対象にレーザ光を照射したときの捜索対象からの散乱光を受光する受光手段と、レーザ光と散乱光の位相差及び散乱光の受信強度を検出する位相差検出手段と、検出結果に基づいて捜索範囲を絞り込んで着目領域を抽出し、走査線の間隔を狭くして走査手段に着目領域を再走査させる制御信号を出力し、この着目領域における位相差検出手段の検出結果に基づいて3次元画像を生成する信号処理手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異物検出装置は、レーザ光を出力する光出力手段と、レーザ光を用いて捜索対象の捜索範囲を走査する走査手段と、捜索対象にレーザ光を照射したときの捜索対象からの散乱光を受光する受光手段と、レーザ光と散乱光の位相差及び散乱光の受信強度を検出する位相差検出手段と、検出結果に基づいて捜索範囲を絞り込んで着目領域を抽出し、走査線の間隔を狭くして走査手段に着目領域を再走査させる制御信号を出力し、この着目領域における位相差検出手段の検出結果に基づいて3次元画像を生成する信号処理手段と、を備えたことにより、同じ捜索時間における異物の3次元形状の検出精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る異物検出装置の構成を示す図である。
【図2】図1の異物検出装置が粗検出するときの検出画像の一例を示す図である。
【図3】図1の異物検出装置が精検出するときの検出画像の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る異物検出装置の構成を示す図である。
【図5】図2の異物検出装置が粗検出するときの検出画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本発明を実施する実施の形態1における異物検出装置を図1ないし図3を用いて説明する。図1において、異物検出装置1は、ターゲットに照射するレーザ光を発生したり、ターゲットからの散乱光を受信したりする光学素子を内部に備えた筐体2と、光学素子の制御や異物検出の信号処理を行うパソコン3すなわち信号処理手段とで構成されている。
なお、ここではターゲットはレーザ光が照射される対象物全てを表し、異物はターゲット内の一部に存在する金属片等の人工物を表すものとする。例えば、空港の滑走路に空き缶が転がっている状況で異物検出をする場合、滑走路の路面および空き缶がターゲットであり、空き缶が異物となる。
【0010】
筐体2の内部には、レーザ光を変調するための連続波電気信号を発振する発振器4と、連続波電気信号を2つに分配する分配器5と、分配器5の一方の出力端に接続され、連続波電気信号に基づいて変調したレーザ光を出力する光源6と、光源6の先端に設けられ所望の位置までレーザ光を導く光ファイバ7すなわち光導波手段と、光ファイバ7を所望の位置に移動させる焦点調整機構8すなわち位置調整手段と、光ファイバ7から出力されるレーザ光の集光スポットサイズの変換及びビーム形状の調整をする送信レンズ9すなわち光学素子と、送信レンズ9で調整されたレーザ光の光路を変更する折り返しミラー10と、折り返しミラー10からのレーザ光を反射して筐体2の外部にあるターゲットに照射し、このターゲットからの散乱光をスキャンするスキャナ11すなわち走査手段と、スキャナ11で反射された散乱光を集光する受信レンズ12及び集光された散乱光を直接検波して電気信号に変換する光受信機13で構成される受光手段と、分配器5および光受信機13に接続され、送信前のレーザ光の位相と受信した散乱光の位相の差を検波する位相検波器14すなわち位相差検出手段と、が設けられている。なお、送信レンズ9及び受信レンズ12は凹面鏡等の光学素子で代替しても良い。
【0011】
光源6から光ファイバ7を介して送信レンズ9までの経路、送信レンズ9と折り返しミラー10まの経路、折り返しミラー10とスキャナ11間の経路、スキャナ11と受信レンズ12間の経路、および受信レンズ12と光受信機13間の経路は、全て光信号を伝送する光回路である。
【0012】
一方、発振器4と分配器5間の経路、分配器5と光源6間の経路、分配器5と位相検波器14間の経路、光受信機13と位相検波器14間の経路、および位相検波器14、スキャナ11、焦点調整機構8それぞれとパソコン3との間の経路は、全て電線や電気信号ケーブル等により接続された電気回路である。
【0013】
ここで、動作について説明する。異物検出装置1は最初に粗検出を行い、この粗検出の結果に基づいて精検出を行う。
まず、粗検出の動作について説明する。
パソコン3に異物の捜索範囲を設定すると、パソコン3はスキャナ11にレーザ光の照射方向がスキャン初期位置となるようなスキャナ制御信号を送信すると共に、焦点調整機構8に位置制御信号を送信し、筐体2から出力されるレーザ光がコリメート光となるように光ファイバ7を移動させてファイバ端と送信レンズ9の離間距離を調整する。レーザ光をコリメート光とすることでターゲット上に照射する光量むらを低減し、スキャンする際の不感知領域を無くすことができる。
【0014】
発振器4は予め定めた一定の周波数を有する連続波電気信号を発振する。この連続波電気信号は分配器5で2つに分配され、一方は光源6に、他方は位相検波器14に伝達される。光源6に伝達された連続波電気信号は光源6自ら発振するCW(continuous wave)光を変調するのに用いられ、光源6からは周波数変調されたレーザ光信号として出力される。
【0015】
このレーザ光信号は光ファイバ7内部を通って空間に出力された後、送信レンズ9によりターゲット上で所望の集光スポットサイズ及びビーム形状となるように調整される。送信レンズ9を透過したレーザ光信号は折り返しミラー10で光路変更され、スキャナ11にてターゲット上の任意の地点を走査される。
【0016】
なお、スキャナ11はパソコン3からの制御信号に基づいて適切な位置および速度で走査するものであって、スキャナ11の走査範囲すなわちターゲットの捜索範囲は任意に変更できる。捜索範囲にデッドゾーンを発生させたくない場合は集光スポットサイズを大きくして低分解能で検出を行い、ある程度のデッドゾーン発生は許容できるが高分解能にしたい場合は集光スポットサイズを小さくして粗検出を行う。
【0017】
ターゲットに照射されたレーザ光信号はターゲット表面で散乱され、その一部はスキャナ11へ戻る。この散乱光はスキャナ11で反射された後に受信レンズ12で集光され、光受信機13に入力される。なお、受信レンズ12の集光位置は光受信機13の受光面に一致するように受信レンズ12は適切な位置に配置されている。
また、スキャナ11は散乱光を反射する際の走査位置情報を電気信号にしてパソコン3に伝達する。なお、ここでの走査位置情報とは、捜索範囲におけるX座標、Y座標の位置情報、およびスキャン角の情報等を総称している。
【0018】
光受信機13は散乱光を受光すると、直接検波により受信電気信号に変換して位相検波器14に出力する。この受信電気信号は発振器4の連続波電気信号で変調されたレーザ光の散乱光を変換したものであるから、この周波数は連続波電気信号と同じになる。一方、受信電気信号の位相は、レーザ光が筐体2とターゲット間を往復する時間分だけ連続波電気信号よりも遅れる。
【0019】
位相検波器14には、光受信機13からの受信電気信号の他に分配器5で分配されたもう一方の連続波電気信号も入力され、位相検波器14は両者の位相差および受信信号強度を検出する。なお、受信信号強度は受信電気信号と連続波電気信号の差を複素ベクトルで表示したときの絶対値、すなわち振幅の2乗に比例する値である。
【0020】
パソコン3は位相検波器14が検出した位相差および受信信号強度の情報を電気信号として取り込み、これらの情報データを用いて筐体2とターゲット上のレーザ光が照射する地点との離間距離を算出する。パソコン3が取り込んだ位相差をΔΦ、発振器4の連続波電気信号の周波数をfm、光速をcとすると、離間距離Lは数1で表すことができる。ただしnは1以上の整数であり、予めパソコン3に設定された筐体2とターゲットの距離範囲情報に基づいて決まる値である。筐体2とターゲット間の距離範囲情報が予めパソコン3に設定されていない場合、筐体2とターゲット間の距離に対して連続波電気信号の1周期が極めて大きくなるように周波数を小さくしても良い。
【0021】
【数1】

【0022】
パソコン3は、受信信号強度の情報および上記式を用いて算出される距離の情報をスキャナ11の走査位置情報にそれぞれ対応させて、図2(a)に示すようなN×N画素(Nは整数)の受信信号強度の2次元画像及び図2(b)に示すようなN×N画素の距離の2次元画像を作成し、さらに距離の2次元画像とこの2次元画像の各画素に対応するスキャン角の情報とから図2(c)に示す3次元画像を作成する。
【0023】
図2(a)、図2(b)において、捜索範囲は矩形で囲まれた捜索領域20として示されている。金属片等の異物が存在する異物検出領域21とターゲット内の異物未検出領域22とでは受信信号強度および3次元形状の少なくとも一方が異なるため、異物検出領域21が画像上でコントラストとなって浮かび上がる。
【0024】
パソコン3はこれらの2次元画像に基づいて3次元画像を作成すると共に、異物検出領域21の周辺を精検出の対象とする着目領域23(図2(c)内破線で囲まれた領域)として抽出する。着目領域23の範囲は、2次元画像の情報だけでなく、スキャナ11が精検出する際の分解能と捜索時間も加味して決定する。
【0025】
着目領域23を抽出する際に、予めパソコン3に登録された異物の3次元形状の先見情報を用いて、粗検出で作成した3次元画像における異物の形状と整合を取り、整合した場合のみ着目領域を抽出して精検出の段階に移行し、整合しない場合は異物では無いと判断して検出を中止しても良い。このように整合の確認工程を加えることにより、所望の異物のみを検出できると共に、所望でない異物に対しては検出を途中で中止するため、装置にかかる負荷を軽減できる。
【0026】
なお、ここではスキャナ11を2次元方向に走査させているが、ライン照射することにより走査方向を1次元にしても良い。この場合は光受信機13をリニアアレイとする。また、照射するレーザ光を2次元の矩形ビームとして面照射し、光受信機13等の受信系スキャン作業を省略しても良い。
【0027】
ここまでが粗検出の動作である。続けて精検出の動作について説明する。精検出の動作も基本的には粗検出と同じで捜索範囲が着目領域になる点のみ異なる。
パソコン3は粗検出で抽出した着目領域23を捜索範囲として、スキャナ11にレーザ光の照射方向がスキャン初期位置となるようなスキャナ制御信号を送信する。また、パソコン3は着目領域23における筐体2とターゲット上のレーザ光が照射する地点間の平均距離を算出し、この位置に照射されるビームの集光スポットサイズが最小となるように、焦点調整機構8に位置制御信号を送信して光ファイバ端を移動させる。
【0028】
精検出の捜索範囲と、光ファイバ7及びスキャナ11の精検出初期値が設定されると、以降の検出動作は粗検出と同じで、異物検出装置1は図3(a)に示すような受信信号強度の2次元画像と図3(b)に示すような距離の2次元画像から、図3(c)に示すような3次元画像を作成する。
精検出時の捜索範囲は粗検出の捜索範囲よりも狭くなるため、高分解能すなわち集光スポットサイズを小さくしてスキャナ11の走査線間隔を狭くすることが可能となり、精度の高い検出ができる。
【0029】
集光スポットサイズは、所望の分解能が得られ、スキャナ11が所望の時間内に捜索範囲を走査できる大きさであれば、最小サイズでなくても良い。ただし、デッドゾーンを生じないよう、スキャナ11が走査する走査線の間隔以上であることが望ましい。
粗検出の段階で集光スポットサイズが十分に小さい場合、精検出で集光スポットサイズを変更せずにスキャナ11が走査する走査線の間隔のみを狭くして検出精度をあげても良い。
【0030】
また、精検出の1画素あたりの走査時間を粗検出のそれよりも長くして1画素の検出に用いるサンプリング数を増やし、受信SN比の高い3次元形状を検出することもできる。検出当初から計測時間を長くすると捜索に過剰な時間を要するが、粗検出をして捜索範囲を絞り込んだ後に計測時間を長くすれば、効率的に精度の高い3次元形状を検出できる。
【0031】
ところで、精検出における発振器4の発振周波数は粗検出と同じでも良いが、周波数をあげると位相検波器14における所定時間のサンプリング数が増加し、信号のSN比が同じであっても位相差の検出精度が高くなって筐体2とターゲット間の距離の検出精度も向上する。
【0032】
この実施の形態によれば、異物検出装置1は粗検出で捜索範囲を絞った後、スキャンする走査線の間隔を狭くして高分解能で精検出することにより、同一捜索時間において検出精度を向上できる。
また、異物検出装置1は精検出の段階で集光スポットサイズを絞ってスキャンする走査線の間隔をさらに狭くすることにより、より高分解での検出が可能となり検出精度があがる。
【0033】
また、異物検出装置1は検出したい異物の3次元形状の先見情報を予めパソコン3に登録しておき、粗検出で作成する3次元画像との整合をとって整合する場合のみ精検出を行うことにより、所望の異物のみを捜索時間を増やすこと無く検出精度を向上できる。さらに、所望でない異物は粗検出の段階で検出を中止するため、装置にかかる負荷を軽減できる。
【0034】
また、異物検出装置1は、精検出での1画素あたりの計測時間を粗検出の1画素あたりの計測時間よりも長くすることにより、高い受信SN比で異物の3次元形状を検出できる。
また、異物検出装置1は、精検出での発振器4の発振周波数を粗検出の発振周波数よりも高くすることにより、位相検波の精度をあげて、より精密な異物の3次元形状を検出できる。
【0035】
また、このような異物検出装置1を空港の滑走路や高速道路等で用いることにより、危険物などの異物を短時間で精度良く検出することができる。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態1では散乱光を1つの光受信機13で受信する構成としているが、実施の形態2では受信レンズ12と光受信機13の間にビームスプリッタを設け、偏波解消度も計測する。また、レーザ光を連続波で変調する代わりに、一定周期のパルスとして出力するレーザパルス光を用いる。本実施の形態に係る異物検出装置1aを図4および図5を用いて説明する。なお、同一の構成要素については同一符号をつけて説明を省略する。
【0037】
図4において、異物検出装置1aは筐体2aとパソコン3すなわち信号処理手段とで構成され、筐体2aの内部には、予め定めた周期でレーザパルス光を出力する光源6aと、光源6aの先端に設けられ所望の位置までレーザパルス光を導く光ファイバ7と、光ファイバ7を所望の位置に移動させる焦点調整機構8と、光ファイバ7から出力されるレーザパルス光の集光スポットサイズの変換及びビーム形状の調整をする送信レンズ9と、送信レンズ9で調整されたレーザパルス光の光路を変更する折り返しミラー10と、折り返しミラー10からのレーザ光を反射して筐体2aの外部にあるターゲットに照射し、このターゲットからの散乱光をスキャンするスキャナ11と、スキャナ11で反射された散乱光を偏波成分に応じて分波するビームスプリッタ15すなわち偏波分離手段と、偏波成分ごとに分離された散乱光をそれぞれ集光する受信レンズ12a、12bと、集光された散乱光を直接検波して電気信号に変換する光受信機13a、13bと、光源6aおよび光受信機13に接続され、送信前のレーザ光の位相と受信した散乱光の位相の差を検波する位相検波器14a、14bとが設けられている。なお、送信レンズ9及び受信レンズ12a、12bは、実施の形態1と同様に凹面鏡等の光学素子で代替しても良い。
【0038】
次に、動作について説明する。異物検出装置1aも最初に粗検出を行い、この粗検出の結果に基づいて精検出を行う。
パソコン3に異物の捜索範囲を設定すると、パソコン3はスキャナ11にレーザ光の照射方向がスキャン初期位置となるようなスキャナ制御信号を送信すると共に、焦点調整機構8に位置制御信号を送信し、筐体2aから出力されるレーザ光がコリメート光となるように光ファイバ7を移動させてファイバ端と送信レンズ9の離間距離を調整する。
【0039】
スキャナ11及び光ファイバ7を初期位置に設定すると、光源6aは予め定めた一定周期でレーザパルス光信号を出力する。このレーザパルス光信号は光ファイバ7内部を通って空間に出力された後、送信レンズ9によりターゲット上で所望の集光スポットサイズ及びビーム形状となるように調整される。送信レンズ9を透過したレーザパルス光信号は折り返しミラー10で光路変更され、スキャナ11にてターゲット上の任意の地点を走査される。
【0040】
なお、スキャナ11はパソコン3からの制御信号に基づいて適切な位置および速度で走査するものであって、スキャナ11の走査範囲すなわちターゲットの捜索範囲は任意に変更できる。捜索範囲にデッドゾーンを発生させたくない場合は集光スポットサイズを大きくして低分解能で検出を行い、ある程度のデッドゾーン発生は許容できるが高分解能にしたい場合は集光スポットサイズを小さくして粗検出を行う。
【0041】
ターゲットに照射されたレーザパルス光信号はターゲット表面で散乱され、その一部はスキャナ11へ戻る。この散乱光はスキャナ11で反射された後に偏波ビームスプリッタ15にて偏波成分ごとに分離され、それぞれ受信レンズ12a、12bで集光されて光受信機13a、13bに入力される。なお、受信レンズ12a、12bの集光位置は光受信機13a、13bの受光面に一致するように受信レンズ12a、12bは適切な位置に配置されている。
【0042】
スキャナ11はまた、散乱光を反射する際の走査位置情報を電気信号にしてパソコン3に伝達する。なお、ここでの走査位置情報とは、捜索範囲におけるX座標、Y座標の位置情報、およびスキャン角の情報等を総称している。
【0043】
光受信機13a、13bは散乱光を受光すると、直接検波により受信電気パルス信号に変換して位相検波器14a、14bに出力する。この受信電気パルス信号はレーザパルス光の散乱光を変換したものであるから、受信電気パルス信号の発生周期はパルス発生周期と同じになる。一方、受信電気パルス信号はレーザパルス光が筐体2とターゲット間を往復する時間分だけ光源6aから出力されるレーザパルス光信号よりも遅れる。
【0044】
位相検波器14a、14bは、光源6aからのレーザパルス信号と受信電気パルス信号の最大振幅となる時刻から位相差および受信信号強度を検出する。なお、受信信号強度は受信電気パルス信号の最大振幅値に比例する。
【0045】
パソコン3は位相検波器14a、14bが検出した位相差および受信信号強度の情報、およびスキャナ11の走査位置情報を電気信号として取り込み、図5(a)、図5(b)に示す異なる偏波成分の受信信号強度情報から図5(c)に示すような2次元の偏波解消度画像を作成する。また、パソコン3は取り込んだ位相差および受信信号強度の情報を用いて筐体2aとターゲット上のレーザ光が照射する地点との離間距離を算出し、図5(d)に示すような2次元画像を作成する。
【0046】
図5(a)では、異物と自然物が異物として画像上でコントラストとなって白く浮かび上がっているのに対し、図5(b)では異物のみが白く浮かび上がり、自然物は黒い影となっている。これは、人工的に作られた異物の表面は滑らかであるのに対し、自然物は表面に細かい凹凸があることで散乱光の偏波成分が変わることに起因する。これら異なる偏波成分に対する受信信号強度の画像を組合せると、図5(c)に示すように、偏波解消度画像では異物のみがコントラストとなって浮かび上がる。
【0047】
パソコン3は作成した偏波解消度の2次元画像及び距離の2次元画像に基づいて図5(e)に示すような3次元画像を作成し、偏波解消度および距離の2次元画像の双方で異物検出領域21と判断した領域周辺を精検出の対象とする着目領域23(図5(e)内破線で囲まれた領域)として抽出する。このように偏波解消度の情報を着目領域23の抽出過程に加えることにより、検出優先度の高い異物を効果的に検出できる。
また、着目領域23を抽出する際に、予めパソコン3に登録された異物の3次元形状の先見情報を用いて、粗検出で作成した3次元画像における異物の形状と整合を取り、整合した場合のみ着目領域を抽出して精検出の段階に移行し、整合しない場合は異物では無いと判断して検出を中止しても良い。このように整合の確認工程を加えることにより、所望の異物のみを検出できると共に、所望でない異物に対しては検出を途中で中止するため、装置にかかる負荷を軽減できる。
【0048】
ここまでが粗検出の動作である。精検出の動作も基本的には粗検出と同じで捜索範囲が着目領域になる点のみ異なる。また、精検出の初期設定動作も実施の形態1と同じであるため、精検出の説明は省略する。
なお、本実施の形態2では光源6aで偏波解消度の情報を用いる場合を示しているが、実施の形態1と同様に発振器4、分配器5、光源6を用いる構成で偏波解消度の情報を加味しても良い。
【0049】
この実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加えて、受光した散乱光の偏波解消度も計測して着目領域23を抽出するため、検出優先度の高い異物を効果的に検出できる。
また、異物検出装置1aは、精検出で光源6aが出力するレーザパルス光信号の出力周期を粗検出の出力周期よりも短くすることにより、位相検波の精度をあげて、より精密な異物の3次元形状を検出できる。
【符号の説明】
【0050】
1、1a 異物検出装置
2、2a 筐体
3 パソコン
4 発振器
5 分配器
6、6a 光源
7 光ファイバ
8 焦点調整機構
9 送信レンズ
10 折り返しミラー
11 スキャナ
12、12a、12b 受信レンズ
13、13a、13b 光受信機
14、14a、14b 位相検波器
15 偏波ビームスプリッタ
20 捜索領域
23 着目領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力する光出力手段と、前記レーザ光を用いて捜索対象の捜索範囲を走査する走査手段と、前記捜索対象にレーザ光を照射したときの前記捜索対象からの散乱光を受光する受光手段と、前記レーザ光と前記散乱光の位相差及び前記散乱光の受信強度を検出する位相差検出手段と、前記検出結果に基づいて前記捜索範囲を絞り込んで着目領域を抽出し、走査線間隔を狭くして前記走査手段に該着目領域を再走査させる制御信号を出力し、該着目領域における前記位相差検出手段の検出結果に基づいて3次元画像を生成する信号処理手段と、を備えたことを特徴とする異物検出装置。
【請求項2】
前記信号処理手段は、異物の3次元形状の情報を有し、前記捜索対象の検出結果と前記異物の3次元形状の情報とを整合し、整合する場合に着目領域を抽出することを特徴とする請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
前記光出力手段は、連続波信号を生成する発振器と、前記連続波信号に基づいて前記連続波信号と同一周波数のレーザ光を出力する光源と、前記光源の出力端に一端が接続された光導波手段と、前記光導波手段から出力されるレーザ光のスポットサイズを変換する光学素子と、前記光導波手段の他端側に設けられ該光導波手段の位置を調整する位置調整手段と、を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項4】
前記発振器は、前記着目領域の捜索時に前記捜索範囲の捜索時よりも高周波で発振することを特徴とする請求項3に記載の異物検出装置。
【請求項5】
前記光出力手段は、所定周期でレーザパルス光を出力する光源と、前記光源の出力端に一端が接続された光導波手段と、前記光導波手段から出力されるレーザ光のスポットサイズを変換する光学素子と、前記光導波手段の他端側に設けられ該光導波手段の位置を調整する位置調整手段と、を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項6】
前記光源は、前記着目領域の捜索時に前記捜索範囲の捜索時よりも短い周期でレーザパルス光を出力することを特徴とする請求項5に記載の異物検出装置。
【請求項7】
前記光出力手段は、前記着目領域の捜索時に前記捜索対象に照射するスポットサイズが前記捜索範囲の捜索時よりも小さなレーザ光を出力することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項8】
前記走査手段は、前記着目領域の捜索時における単位領域あたりの走査時間が前記捜索範囲の捜索時よりも長いことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項9】
前記受光手段は、前記散乱光を偏波成分ごとに分離する偏波分離手段を備え、前記位相差検出手段は前記散乱光の偏波成分に基づいて前記散乱光の偏波解消度を検出することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−185836(P2011−185836A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53169(P2010−53169)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】