異物検査装置およびコンピュータプログラム
【課題】 使用状態あるいはその使用状態に近い状態のまま、密閉された機器に浸入した液体の存在発見の検査を可能とする技術を提供する。
【解決手段】 前記の密閉容器(20)に接して超音波を発振する超音波発振装置(11)と、 その超音波発振装置(11)が発振した超音波の反射波を受信する超音波受信装置(11)と、 その超音波受信装置(11)が反射波を受信している際に前記の密閉容器(20)に対して振動を与える振動発生装置(12,13)と、 前記の超音波受信手段が受信した超音波の反射波および振動の波形を出力する出力手段(例えば出力モニタ)と、を備える。
【解決手段】 前記の密閉容器(20)に接して超音波を発振する超音波発振装置(11)と、 その超音波発振装置(11)が発振した超音波の反射波を受信する超音波受信装置(11)と、 その超音波受信装置(11)が反射波を受信している際に前記の密閉容器(20)に対して振動を与える振動発生装置(12,13)と、 前記の超音波受信手段が受信した超音波の反射波および振動の波形を出力する出力手段(例えば出力モニタ)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞された容器内に、意図しない流体(異物)が存在しないかどうかを検査するための装置およびその装置に用いるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置して使用する機器、たとえば開閉器などは、雨水の浸入を防ぐために強固な構造を備える。強固な構造がゆえ、雨水が浸入してしまったか否かを点検するのは容易ではなかった。
容器内部に溜まった水を外部から非破壊にて検出する検知器あるいはその水量の目安となる水膜の厚さを計る計測器としては、パルス状の超音波を間欠的に試験対象物内に送信し、その反射波の受信時間から試験対象物の内部状態を測定する「パルス反射法」を応用した超音波探傷装置が一般的に用いられている。
【0003】
特許文献1に開示された技術は、検査対象である電気機器ケースに対して超音波信号を与え、その反射波を計測することによって浸水の有無を判断するというものである。
また、特許文献2に開示された技術は、「パルス反射法」におけるとして、複雑な反射波の中から水膜の反射波を見極めるためには、水の無い時の反射波を参照する必要がある、という問題点を解決する。すなわち、「共振法」の測定原理を応用した簡単な装置で容器内部底面に溜まった水を外部から非破壊にて検出し、水の有無あるいはその量の目安となる水膜の厚さを自動的に検知・計測し、その結果を操作者に知らせる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−348274号公報
【特許文献2】特開平9−250919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、前記した技術では、水が浸入していない時のデータの蓄積が必要である。したがって、データ蓄積をしていない容器の検査をすることができない。 また、浸入した水の量が少ない場合には、超音波の反射波に変化が小さく、浸入した水を発見できない場合がある。
また、経時劣化によって密閉状態が不完全となった結果として空気が入ってしまった、というような場合(たとえば二次電池の液漏れなど)の検査には、前記した技術は適用できなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、使用状態あるいはその使用状態に近い状態のまま、機器に対する異物の存在発見の検査を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第一の発明)
本願における第一の発明は、 密閉容器(20)に対して異物としての流体(22)が混入しているか否かを検査する装置に係る。
すなわち、前記の密閉容器(20)に接して超音波を発振する超音波発振装置(11)と、 その超音波発振装置(11)が発振した超音波の反射波を受信する超音波受信装置(11)と、 その超音波受信装置(11)が反射波を受信している際に前記の密閉容器(20)に対して振動を与える振動発生装置(12,13)と、 前記の超音波受信手段が受信した超音波の反射波および振動の波形を出力する出力手段(例えば出力モニタ)と、を備えた異物検査装置である。
【0008】
(用語説明)
「密閉容器」とは、検査対象となる機器であって、分解が不可能または困難な状態に密封されている部位を備え、その部位の内部が密閉空間となっている機器類である。 具体的には、屋外に設置されているプルボックス、電線管のダクト、開閉器、トランスなどの電気機器、または自動車や電子機器に用いられている各種の二次電池、などである。
「異物(としての流体)」とは、たとえば、容器が屋外設置の電気機器であれば空洞に浸入してしまった「雨水」、二次電池であれば液漏れの結果として入り込んだ「空気」である。
【0009】
「超音波発振装置」および「超音波受信装置」とは、それぞれを独立させた機器として提供してもよいが、超音波の発振装置と受信装置と一体化した超音波トランスデューサ(11)が最も一般的である。 超音波の周波数は、たとえば2MHz、エコー信号処理範囲は密閉容器の材質によって異なるが、炭素鋼の場合には200mmが異物発見のための処理において適切であることが判明している。
「振動発生装置」とは、たとえば、円筒形の支持体(12)と、その支持体(12)の内部を移動する球体(13)とを備えるとともに、振動を与えたい場合に球体(13)を密閉容器(20)に衝突させる機構を備えたものである。
【0010】
(作用)
異物としての流体(22)が混入しているか否かを検査したい密閉容器(20)に、超音波発振装置(11)と振動発生装置(12,13)とを接触させる。 そして、超音波発振装置(11)が密閉容器(20)に超音波を発振する。
発振した超音波による反射波を超音波受信装置(11)が受信するが、その受信の際には、振動発生装置(12,13)によって密閉容器(20)に対して振動が与えられている。 超音波の反射波は、振動発生装置(12,13)による振動には影響されない。密閉容器(20)の母材と異物としての流体との境界面は振動発生装置(12,13)による振動によって変化せず、その境界面が揺動して超音波の反射波に影響を及ぼすのである。
したがって、超音波受信装置(11)は、超音波の反射波と、振動発生装置による密閉容器(20)に対する振動とを受信することとなる。 その超音波の反射波と振動とを、出力手段が出力する。
もし、密閉容器(20)内に異物としての流体が存在していなければ、振動発生装置(12,13)によって密閉容器(20)に与えられた振動は、規則的に減衰する。 一方、密閉容器(20)に流体である異物が混入している場合には、その流体が振動発生装置による振動を変化させるため、規則的な減衰とならない。 そのため、出力手段を観察する観察者は、異物としての流体が密閉容器(20)に混入しているか否かを判断することができる。 正常な(異物が混入していない)状態に関する密閉容器(20)への測定結果との比較は不要である。
【0011】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、 前記の超音波受信装置が受信した反射波から周期変化を判断して異物の存在を判断する周期変化判断手段と、 その周期変化判断手段の判断結果を出力する結果出力手段と、を備えることとしてもよい。
【0012】
(用語説明)
「周期変化判断手段」とは、以下のような原理に基づく。 すなわち、密閉容器における振動発生装置による振動の反射波については、異物の有無によって変化しない。 一方、異物としての流体は、振動発生装置による振動によって表面(境界面)の形状が変化するため、反射波も経時的に変化する。 そこで、経時的に変化しない波形と変化した波形とを知ることができる。その経時的に変化しない波形が存在するか否かを判断する手段を、「周期変化判断手段」とする。
なお、反射波の頂点を結んで形成する線を「包絡線」といい、この包絡線を描いた後に、振動を原因とする波形を取り除くのが、異物の有無の判断が簡単になるので、合理的である。
「結果出力手段」とは、モニタ出力、プリントアウトなどである。
【0013】
(作用)
周期変化判断手段が、超音波受信装置が受信した反射波から周期変化を判断して異物の存在を判断し、変化が無いと判断すれば、異物は検出できなかったという結果となる。したがって、異物が存在しない状態において、超音波や振動を与えて計測したデータを予め保有していなくても、異物の有無を判断できる。
また、周期変化判断手段が異物の有無を判断して、その判断結果は結果出力手段にて出力されるので、観察者による判断に頼らなくて良い。
【0014】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、 前記の超音波受信装置が受信した反射波に関する反射波データを蓄積する反射波データベースを備えるとともに、 前記の判断手段は、その反射波データベースに蓄積した反射波データをも用いて異物の存在を判断することとしてもよい。
【0015】
(作用)
反射波データベースに蓄積した反射波データをも用いて異物の存在を判断するので、より正確な判断が期待できる。
【0016】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、 前記の判断手段による判断結果および判断結果を下すために用いたデータを蓄積する判断結果データベースを備えることとしてもよい。
【0017】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、 前記の超音波発振装置および前記の超音波受信装置を一体として前記の密閉容器に接する超音波トランスデューサ(11)と、 その超音波トランスデューサ(11)を前記の密閉容器(20)の外表面を移動させることを可能とする移動機構と、を備えることとしても良い。
【0018】
(用語説明)
「移動機構」とは、たとえば、レール(14)およびそのレール(14)を移動する動力機構の組み合わせである。 レールは、検査対象である密閉容器の形状に合わせたものであり、直線上の他、螺旋状、格子状などがある。
【0019】
超音波発振装置および超音波受信装置が超音波トランスデューサ(11)として一体化されたので、移動機構において移動させるのが簡単となる。
移動機構を介して、密閉容器(20)の様々な部位において超音波を送受信しつつ、振動を与える。 密閉容器(20)の一部に入り込んだ異物としての流体を発見しやすくなる(図6参照)。
【0020】
(第一の発明のバリエーション5)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、 前記の超音波発振装置および前記の超音波受信装置を一体として前記の密閉容器に接する超音波トランスデューサと、 前記の密閉容器を傾斜させることが可能な傾斜機構と、を備えることとしても良い。
【0021】
(用語説明)
「傾斜機構」とは、たとえば、密閉容器(20)を固定する固定体(17)と、その固定体(17)を密閉容器(20)とともに傾斜させる動力機構を備えた支持体(18)の組み合わせである。
なお、前記の移動機構と傾斜機構の両方を備えた異物検査装置を提供することもできる。
【0022】
(作用)
傾斜機構が密閉容器を傾斜させ、密閉容器(20)の一部に入り込んだ異物としての流体を、密閉容器(20)の隅に移動させる。それによって、超音波トランスデューサ(11)は、密閉容器(20)の隅に超音波を発振すれば、異物としての流体の有無を確認することができる。
【0023】
(第二の発明)
本願の第二の発明は、密閉容器に接して超音波を発振する超音波発振装置と、 その超音波発振装置が発振した超音波の反射波を受信する超音波受信装置と、 その超音波受信装置が反射波を受信している際に前記の密閉容器に対して振動を与える振動発生装置と、を備えて前記の密閉容器に対して異物としての流体が混入しているか否かを検査する異物検査装置を制御するためのコンピュータプログラムに係る。
そのプログラムは、 前記の超音波受信装置が受信した反射波をデジタル化して反射波データとして入力する反射波入力手順と、 その反射波データから前記の密閉容器の振動波を取り除く振動波除去手順と、 その振動波除去手順にて除去した後の反射波から異物の存在を判断する判断手順と、をコンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0024】
(第二の発明のバリエーション1)
本願の第二の発明は、前記の超音波受信装置が受信した反射波に関する反射波データを反射波データベースに蓄積する反射波データ蓄積手順を備えるとともに、 前記の判断手順は、その反射波データベースに蓄積した反射波データをも用いて異物の存在を判断することとしたコンピュータプログラムとすることもできる。
【0025】
(第二の発明のバリエーション2)
本願の第二の発明は、前記の判断手順による判断結果および判断結果を下すために用いたデータを判断結果データベースに蓄積する判断結果蓄積手順を備えたコンピュータプログラムとすることもできる。
【0026】
第二の発明は、記録媒体(たとえば、ハードディスク、CD−R、DVD−Rなど)に格納して提供することもできる。また、通信回線を介して送信することもできる。
【発明の効果】
【0027】
第一の発明によれば、使用状態あるいはその使用状態に近い状態のまま、機器に対する異物の存在発見の検査を可能とする異物検査装置を提供することができた。
また、第二の発明によれば、使用状態あるいはその使用状態に近い状態のまま、機器に対する異物の存在発見の検査を可能とするコンピュータプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第一の実施形態を示す断面図である。
【図2】第一の実施形態における超音波および振動の反射波を示すグラフである。
【図3】反射波の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】反射波を包絡線処理する具体例を示したものである。
【図5】包絡線の差分処理の手順を示したものである。
【図6】第二の実施形態を示す断面図である。
【図7】第三の実施形態を示す断面図である。
【図8】第四の実施形態を示す断面図である。
【図9】第五の実施形態を示す断面図である。
【図10】第六の実施形態を示す断面図である。
【図11】従来の技術における反射波を示すグラフである。
【図12】第六の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本願発明を実施形態に基づいて更に詳しく説明する。 ここで使用する図面は、図1から図12である。
本願発明の利用形態として代表的なのは、屋外に設置されているプルボックスや開閉器などに対して、雨や結露を原因として浸入した水滴を検出することである。
【0030】
図1に示すのは、 前記の密閉容器20aに接して超音波を発振するとともにその発振した超音波の反射波を受信する超音波トランスデューサ11と、 その超音波トランスデューサ11が反射波を受信している際に前記の密閉容器20aに対して振動を与える振動発生装置と、 前記の超音波トランスデューサ11が受信した超音波の反射波および振動の波形を出力する出力手段(図示を省略)と、を備えた異物検査装置10aである。 超音波トランスデューサ11には、データ収集装置16が接続されている。
振動発生装置とは、円筒形の球支持体12と、その球支持体12の内部を移動する球体13とを備えるとともに、密閉容器20aに対して振動を与えたい場合に球体13を密閉容器20aに衝突させる機構を備えたものである。
超音波トランスデューサ11および振動発生装置は、密閉容器20aに接触させるための固定具を備えても良い。
【0031】
図1(A)に示すのが振動を与える前であり、図1(B)に示すのが振動を与えた後である。 密閉容器20aの内部空間21における底部に雨水22が溜まっていたとすると、球体13が密閉容器20aの外壁に衝突した振動で、その雨水22aは波をうつこととなる。
【0032】
図2には、図1に示したプルボックス(密閉容器20a)に異物(雨水22)が溜まっている場合について、振動発生装置によって振動を与えた場合として図2(A)を、振動を与えていない場合として図2(B)を図示している。
図2(B)に示されているように、雨水22が存在しない場合には、規則的に減衰していることが分かる。 一方、図2(A)には、規則的に減衰している振動波と、変化している波形とが存在する。 この変化している波形は、振動にて変化している雨水22aの境界面の形状による反射波である。
【0033】
図3は、各構成要素とデータとの関係を示したフローチャートである。
密閉容器に対して超音波発振装置が超音波を発振し、振動発生装置が振動を与える。密閉容器からは、超音波と振動とが合成された反射波が発生し、超音波受信装置がその反射波を受信する。その反射波を出力手段にて出力すると、観察者が異物としての流体の存在を発見できる。
反射波については、AD変換(デジタル化処理)をした後に、コンピュータの反射波入力手段へ取り込む。 そして、反射波データベースに蓄積するとともに、周期変化判断手段にて、周期変化の有無、すなわち異物の有無を判断する。判断に際して、必要であれば反射波データベースのデータを用いる。
判断結果については、結果出力手段にて出力し、判断結果データベースにも蓄積する。
【0034】
図4(A)は、時刻t1,t2,t3,t4,・・・という等間隔に受信した反射波であり、図4(B)は、それぞれの反射波に対して包絡線としたものである。
また、図5は、図4(B)に示した各時刻の包絡線について、隣り合う時刻の包絡線の差分データを取得して表示させるという手順を概念的に示している。
その差分データがゼロであれば、密閉容器20aの内部に異物は存在しなかったということとなるし、差分データがゼロではなかったとすれば、異物が存在すると判断できる。
【0035】
図6に示す実施形態は、密閉容器21b内に浸入した異物としての流体23がわずかである場合にも、その異物を合理的に発見するためのバリエーションである。
すなわち、密閉容器21bの底面の長手方向に沿って設置固定されたレール14と、そのレール14に沿って密閉容器21の底面に接触しながら移動可能な異物検査装置10bとを備えている。 異物検査装置10bは、超音波トランスデューサ11と、振動発生装置と、レール14に沿って移動させるための移動機構と、を備えている。
【0036】
超音波トランスデューサ11には、データ収集装置16が接続され、AD変換を行って、コンピュータにデジタルデータを送る。
超音波トランスデューサ11が超音波を発振し、振動発生装置が振動を与え、反射波を超音波トランスデューサ11が受信したら、レール14に沿って異物検査装置10bを移動させる。そして、密閉容器21bの底面をくまなく移動したら、反射波の取得を終了し、判断手段による異物の有無の判断を待つ。
【0037】
図7に示す実施形態は、図6に示したレール14および移動可能な異物検査装置10bの代わりに、複数の異物検査装置10c,10c,・・・を用いている。 すなわち、複数の異物検査装置10c,10c,・・・を台座15に固定しており、複数箇所の超音波発振および受信を、同時に終えることができる。
【0038】
図8に示す実施形態は、図6に示したレール14や、図7に示した複数の異物検査装置10cの代わりに、検査対象である密閉容器20bを傾けることができる傾斜機構を備えている。
この傾斜機構とは、密閉容器20bに固定される固定体17と、その固定体17を傾けることで密閉容器20bをも傾ける駆動機構を備えた支持体18とを備えている。
【0039】
図8(A)に示すように、異物としての水が密閉容器20bの底面の一部に溜まっている場合、異物検査装置10bが発振する超音波が、異物としての水に照射されない場合がある。その場合には、振動発生装置が振動を与えても、水からの反射波を受信することができず、異物無しの判断をしてしまう可能性がある。
そこで、傾斜機構によって異物を密閉容器20bの隅に移動させ、その上で超音波を発振することで、異物を見逃す確率を低める測定が可能となるものである。
【0040】
なお、図示は省略するが、図8に示す密閉容器20bが紙面の垂直方向に長い容器である場合、図6に示したレール14を紙面の垂直方向が長手方向となるように設置すれば、異物を見逃す確率を更に低める測定が可能となる。
また、同じく図8に示す密閉容器20bが紙面の垂直方向に長い容器である場合、図8の紙面垂直方向を密閉容器20bの回転方向として傾斜させる傾斜機構をも設置すれば、異物を見逃す確率を更に低める測定が可能となる。
【0041】
図9に示す実施形態は、密閉容器20cが所定の液体21で充満されており、その液体21の液漏れなどを原因として空気24が入り込んだ状態を示している。すなわち、空気24が異物としての流体ということになる。
この場合も、図9(B)に示すように、振動発生装置によって密閉容器20cに振動を与えれば、異物としての空気の境界面が変化するので、図2(A)に示したような変化を捉えることができる。すなわち、異物としての気体を発見することができる。
なお、図9に示す密閉容器20cは、代表的には二次電池である。すなわち、二次電池の内部構造において密閉度の低下や傷などを原因として液漏れが発生し、その液漏れの結果として空気が入り込んだ場合などを解析することも可能である。
【0042】
図10に示す実施形態は、図8に示した傾斜機構を備えているものの、発見すべき異物が図9に示したような空気24aである場合を示す。
傾斜機構によって密閉容器20cを傾けることにより、異物としての空気24aは傾斜された密閉容器20cの上隅に移動する。 その上隅に対して超音波を照射し且つ反射波を受信できるように超音波トランスデューサを備えた異物発見装置10bが、前述してきた手順によって超音波の送受信を行い、且つ振動発生装置による振動を与えることでの反射波を捉える。
その結果、異物として入り込んだ空気や、二次電池の劣化の結果として内部から発生した気体の存在を、二次電池を分解することなく確認することができる。
【0043】
図11には、図2との比較例を示す。すなわち、振動発生装置を備えずに、超音波トランスデューサによる超音波の発振、およびその反射波を捉えた場合について、図11(A)に異物としての水がない場合、図11(B)に異物としての水がある場合を示す。
図中にも説明しているように、空気(密閉容器に充満しているはずの空気)と水(浸入した異物としての流体)との間の多重反射系列は、鋼材(密閉容器の素材)と空気との間の多重反射系列に埋もれてしまい、水の表面からの反射波の存在確認が困難であることが示されている。
【0044】
図12には、水底(例えば海底)に敷設されたパイプライン40に欠陥(たとえば亀裂41)が発生し、そこからパイプライン40にて輸送している流体(たとえば原油25)が漏れている場合に、その漏れた原油の存在を知るための異物検査装置10である。
海底から浮かび上がる原油25を捕捉するため、底面を開放した半密閉容器30を用いている。
【0045】
半密閉容器30は、底面が開放されているものの、波が静かであれば底面部分からの海水の出入りは小さいので密閉容器とほぼ同じとなり、前述してきたような異物検査装置と同様に使用することができる。
すなわち、異物検査装置10が半密閉容器30に対して振動を与え、細かな原油を異物として捉えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明は、屋外で使用する機器、異物としての流体が入り込んでは具合が悪い機器などに対する非破壊検査としての検査装置の製造業において、利用可能性を有する。
また、上記の検査装置を用いた検査代行などのサービス業、検査装置が検査対象から得たデータを処理するソフトウェア作成業などにおいても、利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0047】
10,10a、10b、10c;異物検査装置
11;超音波トランスデューサ
12;球支持体 13;球体
14;レール 15;台座
16;データ収集装置 17;固定体
18;支持体
20,20a,20b,20c;密閉容器
21;密閉容器内
22,22a,22b;異物としての流体
24a;異物としての気体
25; 異物としての原油
30;半密閉容器
40;パイプライン 41;亀裂
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞された容器内に、意図しない流体(異物)が存在しないかどうかを検査するための装置およびその装置に用いるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置して使用する機器、たとえば開閉器などは、雨水の浸入を防ぐために強固な構造を備える。強固な構造がゆえ、雨水が浸入してしまったか否かを点検するのは容易ではなかった。
容器内部に溜まった水を外部から非破壊にて検出する検知器あるいはその水量の目安となる水膜の厚さを計る計測器としては、パルス状の超音波を間欠的に試験対象物内に送信し、その反射波の受信時間から試験対象物の内部状態を測定する「パルス反射法」を応用した超音波探傷装置が一般的に用いられている。
【0003】
特許文献1に開示された技術は、検査対象である電気機器ケースに対して超音波信号を与え、その反射波を計測することによって浸水の有無を判断するというものである。
また、特許文献2に開示された技術は、「パルス反射法」におけるとして、複雑な反射波の中から水膜の反射波を見極めるためには、水の無い時の反射波を参照する必要がある、という問題点を解決する。すなわち、「共振法」の測定原理を応用した簡単な装置で容器内部底面に溜まった水を外部から非破壊にて検出し、水の有無あるいはその量の目安となる水膜の厚さを自動的に検知・計測し、その結果を操作者に知らせる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−348274号公報
【特許文献2】特開平9−250919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、前記した技術では、水が浸入していない時のデータの蓄積が必要である。したがって、データ蓄積をしていない容器の検査をすることができない。 また、浸入した水の量が少ない場合には、超音波の反射波に変化が小さく、浸入した水を発見できない場合がある。
また、経時劣化によって密閉状態が不完全となった結果として空気が入ってしまった、というような場合(たとえば二次電池の液漏れなど)の検査には、前記した技術は適用できなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、使用状態あるいはその使用状態に近い状態のまま、機器に対する異物の存在発見の検査を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第一の発明)
本願における第一の発明は、 密閉容器(20)に対して異物としての流体(22)が混入しているか否かを検査する装置に係る。
すなわち、前記の密閉容器(20)に接して超音波を発振する超音波発振装置(11)と、 その超音波発振装置(11)が発振した超音波の反射波を受信する超音波受信装置(11)と、 その超音波受信装置(11)が反射波を受信している際に前記の密閉容器(20)に対して振動を与える振動発生装置(12,13)と、 前記の超音波受信手段が受信した超音波の反射波および振動の波形を出力する出力手段(例えば出力モニタ)と、を備えた異物検査装置である。
【0008】
(用語説明)
「密閉容器」とは、検査対象となる機器であって、分解が不可能または困難な状態に密封されている部位を備え、その部位の内部が密閉空間となっている機器類である。 具体的には、屋外に設置されているプルボックス、電線管のダクト、開閉器、トランスなどの電気機器、または自動車や電子機器に用いられている各種の二次電池、などである。
「異物(としての流体)」とは、たとえば、容器が屋外設置の電気機器であれば空洞に浸入してしまった「雨水」、二次電池であれば液漏れの結果として入り込んだ「空気」である。
【0009】
「超音波発振装置」および「超音波受信装置」とは、それぞれを独立させた機器として提供してもよいが、超音波の発振装置と受信装置と一体化した超音波トランスデューサ(11)が最も一般的である。 超音波の周波数は、たとえば2MHz、エコー信号処理範囲は密閉容器の材質によって異なるが、炭素鋼の場合には200mmが異物発見のための処理において適切であることが判明している。
「振動発生装置」とは、たとえば、円筒形の支持体(12)と、その支持体(12)の内部を移動する球体(13)とを備えるとともに、振動を与えたい場合に球体(13)を密閉容器(20)に衝突させる機構を備えたものである。
【0010】
(作用)
異物としての流体(22)が混入しているか否かを検査したい密閉容器(20)に、超音波発振装置(11)と振動発生装置(12,13)とを接触させる。 そして、超音波発振装置(11)が密閉容器(20)に超音波を発振する。
発振した超音波による反射波を超音波受信装置(11)が受信するが、その受信の際には、振動発生装置(12,13)によって密閉容器(20)に対して振動が与えられている。 超音波の反射波は、振動発生装置(12,13)による振動には影響されない。密閉容器(20)の母材と異物としての流体との境界面は振動発生装置(12,13)による振動によって変化せず、その境界面が揺動して超音波の反射波に影響を及ぼすのである。
したがって、超音波受信装置(11)は、超音波の反射波と、振動発生装置による密閉容器(20)に対する振動とを受信することとなる。 その超音波の反射波と振動とを、出力手段が出力する。
もし、密閉容器(20)内に異物としての流体が存在していなければ、振動発生装置(12,13)によって密閉容器(20)に与えられた振動は、規則的に減衰する。 一方、密閉容器(20)に流体である異物が混入している場合には、その流体が振動発生装置による振動を変化させるため、規則的な減衰とならない。 そのため、出力手段を観察する観察者は、異物としての流体が密閉容器(20)に混入しているか否かを判断することができる。 正常な(異物が混入していない)状態に関する密閉容器(20)への測定結果との比較は不要である。
【0011】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、 前記の超音波受信装置が受信した反射波から周期変化を判断して異物の存在を判断する周期変化判断手段と、 その周期変化判断手段の判断結果を出力する結果出力手段と、を備えることとしてもよい。
【0012】
(用語説明)
「周期変化判断手段」とは、以下のような原理に基づく。 すなわち、密閉容器における振動発生装置による振動の反射波については、異物の有無によって変化しない。 一方、異物としての流体は、振動発生装置による振動によって表面(境界面)の形状が変化するため、反射波も経時的に変化する。 そこで、経時的に変化しない波形と変化した波形とを知ることができる。その経時的に変化しない波形が存在するか否かを判断する手段を、「周期変化判断手段」とする。
なお、反射波の頂点を結んで形成する線を「包絡線」といい、この包絡線を描いた後に、振動を原因とする波形を取り除くのが、異物の有無の判断が簡単になるので、合理的である。
「結果出力手段」とは、モニタ出力、プリントアウトなどである。
【0013】
(作用)
周期変化判断手段が、超音波受信装置が受信した反射波から周期変化を判断して異物の存在を判断し、変化が無いと判断すれば、異物は検出できなかったという結果となる。したがって、異物が存在しない状態において、超音波や振動を与えて計測したデータを予め保有していなくても、異物の有無を判断できる。
また、周期変化判断手段が異物の有無を判断して、その判断結果は結果出力手段にて出力されるので、観察者による判断に頼らなくて良い。
【0014】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、 前記の超音波受信装置が受信した反射波に関する反射波データを蓄積する反射波データベースを備えるとともに、 前記の判断手段は、その反射波データベースに蓄積した反射波データをも用いて異物の存在を判断することとしてもよい。
【0015】
(作用)
反射波データベースに蓄積した反射波データをも用いて異物の存在を判断するので、より正確な判断が期待できる。
【0016】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、 前記の判断手段による判断結果および判断結果を下すために用いたデータを蓄積する判断結果データベースを備えることとしてもよい。
【0017】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、 前記の超音波発振装置および前記の超音波受信装置を一体として前記の密閉容器に接する超音波トランスデューサ(11)と、 その超音波トランスデューサ(11)を前記の密閉容器(20)の外表面を移動させることを可能とする移動機構と、を備えることとしても良い。
【0018】
(用語説明)
「移動機構」とは、たとえば、レール(14)およびそのレール(14)を移動する動力機構の組み合わせである。 レールは、検査対象である密閉容器の形状に合わせたものであり、直線上の他、螺旋状、格子状などがある。
【0019】
超音波発振装置および超音波受信装置が超音波トランスデューサ(11)として一体化されたので、移動機構において移動させるのが簡単となる。
移動機構を介して、密閉容器(20)の様々な部位において超音波を送受信しつつ、振動を与える。 密閉容器(20)の一部に入り込んだ異物としての流体を発見しやすくなる(図6参照)。
【0020】
(第一の発明のバリエーション5)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、 前記の超音波発振装置および前記の超音波受信装置を一体として前記の密閉容器に接する超音波トランスデューサと、 前記の密閉容器を傾斜させることが可能な傾斜機構と、を備えることとしても良い。
【0021】
(用語説明)
「傾斜機構」とは、たとえば、密閉容器(20)を固定する固定体(17)と、その固定体(17)を密閉容器(20)とともに傾斜させる動力機構を備えた支持体(18)の組み合わせである。
なお、前記の移動機構と傾斜機構の両方を備えた異物検査装置を提供することもできる。
【0022】
(作用)
傾斜機構が密閉容器を傾斜させ、密閉容器(20)の一部に入り込んだ異物としての流体を、密閉容器(20)の隅に移動させる。それによって、超音波トランスデューサ(11)は、密閉容器(20)の隅に超音波を発振すれば、異物としての流体の有無を確認することができる。
【0023】
(第二の発明)
本願の第二の発明は、密閉容器に接して超音波を発振する超音波発振装置と、 その超音波発振装置が発振した超音波の反射波を受信する超音波受信装置と、 その超音波受信装置が反射波を受信している際に前記の密閉容器に対して振動を与える振動発生装置と、を備えて前記の密閉容器に対して異物としての流体が混入しているか否かを検査する異物検査装置を制御するためのコンピュータプログラムに係る。
そのプログラムは、 前記の超音波受信装置が受信した反射波をデジタル化して反射波データとして入力する反射波入力手順と、 その反射波データから前記の密閉容器の振動波を取り除く振動波除去手順と、 その振動波除去手順にて除去した後の反射波から異物の存在を判断する判断手順と、をコンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0024】
(第二の発明のバリエーション1)
本願の第二の発明は、前記の超音波受信装置が受信した反射波に関する反射波データを反射波データベースに蓄積する反射波データ蓄積手順を備えるとともに、 前記の判断手順は、その反射波データベースに蓄積した反射波データをも用いて異物の存在を判断することとしたコンピュータプログラムとすることもできる。
【0025】
(第二の発明のバリエーション2)
本願の第二の発明は、前記の判断手順による判断結果および判断結果を下すために用いたデータを判断結果データベースに蓄積する判断結果蓄積手順を備えたコンピュータプログラムとすることもできる。
【0026】
第二の発明は、記録媒体(たとえば、ハードディスク、CD−R、DVD−Rなど)に格納して提供することもできる。また、通信回線を介して送信することもできる。
【発明の効果】
【0027】
第一の発明によれば、使用状態あるいはその使用状態に近い状態のまま、機器に対する異物の存在発見の検査を可能とする異物検査装置を提供することができた。
また、第二の発明によれば、使用状態あるいはその使用状態に近い状態のまま、機器に対する異物の存在発見の検査を可能とするコンピュータプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第一の実施形態を示す断面図である。
【図2】第一の実施形態における超音波および振動の反射波を示すグラフである。
【図3】反射波の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】反射波を包絡線処理する具体例を示したものである。
【図5】包絡線の差分処理の手順を示したものである。
【図6】第二の実施形態を示す断面図である。
【図7】第三の実施形態を示す断面図である。
【図8】第四の実施形態を示す断面図である。
【図9】第五の実施形態を示す断面図である。
【図10】第六の実施形態を示す断面図である。
【図11】従来の技術における反射波を示すグラフである。
【図12】第六の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本願発明を実施形態に基づいて更に詳しく説明する。 ここで使用する図面は、図1から図12である。
本願発明の利用形態として代表的なのは、屋外に設置されているプルボックスや開閉器などに対して、雨や結露を原因として浸入した水滴を検出することである。
【0030】
図1に示すのは、 前記の密閉容器20aに接して超音波を発振するとともにその発振した超音波の反射波を受信する超音波トランスデューサ11と、 その超音波トランスデューサ11が反射波を受信している際に前記の密閉容器20aに対して振動を与える振動発生装置と、 前記の超音波トランスデューサ11が受信した超音波の反射波および振動の波形を出力する出力手段(図示を省略)と、を備えた異物検査装置10aである。 超音波トランスデューサ11には、データ収集装置16が接続されている。
振動発生装置とは、円筒形の球支持体12と、その球支持体12の内部を移動する球体13とを備えるとともに、密閉容器20aに対して振動を与えたい場合に球体13を密閉容器20aに衝突させる機構を備えたものである。
超音波トランスデューサ11および振動発生装置は、密閉容器20aに接触させるための固定具を備えても良い。
【0031】
図1(A)に示すのが振動を与える前であり、図1(B)に示すのが振動を与えた後である。 密閉容器20aの内部空間21における底部に雨水22が溜まっていたとすると、球体13が密閉容器20aの外壁に衝突した振動で、その雨水22aは波をうつこととなる。
【0032】
図2には、図1に示したプルボックス(密閉容器20a)に異物(雨水22)が溜まっている場合について、振動発生装置によって振動を与えた場合として図2(A)を、振動を与えていない場合として図2(B)を図示している。
図2(B)に示されているように、雨水22が存在しない場合には、規則的に減衰していることが分かる。 一方、図2(A)には、規則的に減衰している振動波と、変化している波形とが存在する。 この変化している波形は、振動にて変化している雨水22aの境界面の形状による反射波である。
【0033】
図3は、各構成要素とデータとの関係を示したフローチャートである。
密閉容器に対して超音波発振装置が超音波を発振し、振動発生装置が振動を与える。密閉容器からは、超音波と振動とが合成された反射波が発生し、超音波受信装置がその反射波を受信する。その反射波を出力手段にて出力すると、観察者が異物としての流体の存在を発見できる。
反射波については、AD変換(デジタル化処理)をした後に、コンピュータの反射波入力手段へ取り込む。 そして、反射波データベースに蓄積するとともに、周期変化判断手段にて、周期変化の有無、すなわち異物の有無を判断する。判断に際して、必要であれば反射波データベースのデータを用いる。
判断結果については、結果出力手段にて出力し、判断結果データベースにも蓄積する。
【0034】
図4(A)は、時刻t1,t2,t3,t4,・・・という等間隔に受信した反射波であり、図4(B)は、それぞれの反射波に対して包絡線としたものである。
また、図5は、図4(B)に示した各時刻の包絡線について、隣り合う時刻の包絡線の差分データを取得して表示させるという手順を概念的に示している。
その差分データがゼロであれば、密閉容器20aの内部に異物は存在しなかったということとなるし、差分データがゼロではなかったとすれば、異物が存在すると判断できる。
【0035】
図6に示す実施形態は、密閉容器21b内に浸入した異物としての流体23がわずかである場合にも、その異物を合理的に発見するためのバリエーションである。
すなわち、密閉容器21bの底面の長手方向に沿って設置固定されたレール14と、そのレール14に沿って密閉容器21の底面に接触しながら移動可能な異物検査装置10bとを備えている。 異物検査装置10bは、超音波トランスデューサ11と、振動発生装置と、レール14に沿って移動させるための移動機構と、を備えている。
【0036】
超音波トランスデューサ11には、データ収集装置16が接続され、AD変換を行って、コンピュータにデジタルデータを送る。
超音波トランスデューサ11が超音波を発振し、振動発生装置が振動を与え、反射波を超音波トランスデューサ11が受信したら、レール14に沿って異物検査装置10bを移動させる。そして、密閉容器21bの底面をくまなく移動したら、反射波の取得を終了し、判断手段による異物の有無の判断を待つ。
【0037】
図7に示す実施形態は、図6に示したレール14および移動可能な異物検査装置10bの代わりに、複数の異物検査装置10c,10c,・・・を用いている。 すなわち、複数の異物検査装置10c,10c,・・・を台座15に固定しており、複数箇所の超音波発振および受信を、同時に終えることができる。
【0038】
図8に示す実施形態は、図6に示したレール14や、図7に示した複数の異物検査装置10cの代わりに、検査対象である密閉容器20bを傾けることができる傾斜機構を備えている。
この傾斜機構とは、密閉容器20bに固定される固定体17と、その固定体17を傾けることで密閉容器20bをも傾ける駆動機構を備えた支持体18とを備えている。
【0039】
図8(A)に示すように、異物としての水が密閉容器20bの底面の一部に溜まっている場合、異物検査装置10bが発振する超音波が、異物としての水に照射されない場合がある。その場合には、振動発生装置が振動を与えても、水からの反射波を受信することができず、異物無しの判断をしてしまう可能性がある。
そこで、傾斜機構によって異物を密閉容器20bの隅に移動させ、その上で超音波を発振することで、異物を見逃す確率を低める測定が可能となるものである。
【0040】
なお、図示は省略するが、図8に示す密閉容器20bが紙面の垂直方向に長い容器である場合、図6に示したレール14を紙面の垂直方向が長手方向となるように設置すれば、異物を見逃す確率を更に低める測定が可能となる。
また、同じく図8に示す密閉容器20bが紙面の垂直方向に長い容器である場合、図8の紙面垂直方向を密閉容器20bの回転方向として傾斜させる傾斜機構をも設置すれば、異物を見逃す確率を更に低める測定が可能となる。
【0041】
図9に示す実施形態は、密閉容器20cが所定の液体21で充満されており、その液体21の液漏れなどを原因として空気24が入り込んだ状態を示している。すなわち、空気24が異物としての流体ということになる。
この場合も、図9(B)に示すように、振動発生装置によって密閉容器20cに振動を与えれば、異物としての空気の境界面が変化するので、図2(A)に示したような変化を捉えることができる。すなわち、異物としての気体を発見することができる。
なお、図9に示す密閉容器20cは、代表的には二次電池である。すなわち、二次電池の内部構造において密閉度の低下や傷などを原因として液漏れが発生し、その液漏れの結果として空気が入り込んだ場合などを解析することも可能である。
【0042】
図10に示す実施形態は、図8に示した傾斜機構を備えているものの、発見すべき異物が図9に示したような空気24aである場合を示す。
傾斜機構によって密閉容器20cを傾けることにより、異物としての空気24aは傾斜された密閉容器20cの上隅に移動する。 その上隅に対して超音波を照射し且つ反射波を受信できるように超音波トランスデューサを備えた異物発見装置10bが、前述してきた手順によって超音波の送受信を行い、且つ振動発生装置による振動を与えることでの反射波を捉える。
その結果、異物として入り込んだ空気や、二次電池の劣化の結果として内部から発生した気体の存在を、二次電池を分解することなく確認することができる。
【0043】
図11には、図2との比較例を示す。すなわち、振動発生装置を備えずに、超音波トランスデューサによる超音波の発振、およびその反射波を捉えた場合について、図11(A)に異物としての水がない場合、図11(B)に異物としての水がある場合を示す。
図中にも説明しているように、空気(密閉容器に充満しているはずの空気)と水(浸入した異物としての流体)との間の多重反射系列は、鋼材(密閉容器の素材)と空気との間の多重反射系列に埋もれてしまい、水の表面からの反射波の存在確認が困難であることが示されている。
【0044】
図12には、水底(例えば海底)に敷設されたパイプライン40に欠陥(たとえば亀裂41)が発生し、そこからパイプライン40にて輸送している流体(たとえば原油25)が漏れている場合に、その漏れた原油の存在を知るための異物検査装置10である。
海底から浮かび上がる原油25を捕捉するため、底面を開放した半密閉容器30を用いている。
【0045】
半密閉容器30は、底面が開放されているものの、波が静かであれば底面部分からの海水の出入りは小さいので密閉容器とほぼ同じとなり、前述してきたような異物検査装置と同様に使用することができる。
すなわち、異物検査装置10が半密閉容器30に対して振動を与え、細かな原油を異物として捉えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明は、屋外で使用する機器、異物としての流体が入り込んでは具合が悪い機器などに対する非破壊検査としての検査装置の製造業において、利用可能性を有する。
また、上記の検査装置を用いた検査代行などのサービス業、検査装置が検査対象から得たデータを処理するソフトウェア作成業などにおいても、利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0047】
10,10a、10b、10c;異物検査装置
11;超音波トランスデューサ
12;球支持体 13;球体
14;レール 15;台座
16;データ収集装置 17;固定体
18;支持体
20,20a,20b,20c;密閉容器
21;密閉容器内
22,22a,22b;異物としての流体
24a;異物としての気体
25; 異物としての原油
30;半密閉容器
40;パイプライン 41;亀裂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器に対して異物としての流体が混入しているか否かを検査する装置であって、
前記の密閉容器に接して超音波を発振する超音波発振装置と、
その超音波発振装置が発振した超音波の反射波を受信する超音波受信装置と、
その超音波受信装置が反射波を受信している際に前記の密閉容器に対して振動を与える振動発生装置と、
前記の超音波受信手段が受信した超音波の反射波および振動の波形を出力する出力手段と、
を備えた異物検査装置。
【請求項2】
前記の超音波受信装置が受信した反射波から周期変化を判断して異物の存在を判断する周期変化判断手段と、
その周期変化判断手段の判断結果を出力する結果出力手段と、
を備えた請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項3】
前記の超音波受信装置が受信した反射波に関する反射波データを蓄積する反射波データベースを備えるとともに、
前記の判断手段は、その反射波データベースに蓄積した反射波データをも用いて異物の存在を判断することとした請求項2に記載の異物検査装置。
【請求項4】
前記の判断手段による判断結果および判断結果を下すために用いたデータを蓄積する判断結果データベースを備えることとした請求項2または請求項3に記載の異物検査装置。
【請求項5】
前記の超音波発振装置および前記の超音波受信装置を一体として前記の密閉容器に接する超音波トランスデューサと、
その超音波トランスデューサを前記の密閉容器の外表面を移動させることを可能とする移動機構と、
を備えた請求項1から請求項4のいずれかに記載の異物検査装置。
【請求項6】
前記の超音波発振装置および前記の超音波受信装置を一体として前記の密閉容器に接する超音波トランスデューサと、
前記の密閉容器を傾斜させることが可能な傾斜機構と、
を備えた請求項1から請求項5のいずれかに記載の異物検査装置。
【請求項7】
密閉容器に接して超音波を発振する超音波発振装置と、 その超音波発振装置が発振した超音波の反射波を受信する超音波受信装置と、 その超音波受信装置が反射波を受信している際に前記の密閉容器に対して振動を与える振動発生装置と、を備えて前記の密閉容器に対して異物としての流体が混入しているか否かを検査する異物検査装置を制御するためのコンピュータプログラムであって、
そのプログラムは、 前記の超音波受信装置が受信した反射波をデジタル化して反射波データとして入力する反射波入力手順と、
その反射波データから前記の密閉容器の振動波を取り除く振動波除去手順と、
その振動波除去手順にて除去した後の反射波から異物の存在を判断する判断手順と、
をコンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記の超音波受信装置が受信した反射波に関する反射波データを反射波データベースに蓄積する反射波データ蓄積手順を備えるとともに、
前記の判断手順は、その反射波データベースに蓄積した反射波データをも用いて異物の存在を判断することとした請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記の判断手順による判断結果および判断結果を下すために用いたデータを判断結果データベースに蓄積する判断結果蓄積手順を備えた請求項7または請求項8に記載のコンピュータプログラム。
【請求項1】
密閉容器に対して異物としての流体が混入しているか否かを検査する装置であって、
前記の密閉容器に接して超音波を発振する超音波発振装置と、
その超音波発振装置が発振した超音波の反射波を受信する超音波受信装置と、
その超音波受信装置が反射波を受信している際に前記の密閉容器に対して振動を与える振動発生装置と、
前記の超音波受信手段が受信した超音波の反射波および振動の波形を出力する出力手段と、
を備えた異物検査装置。
【請求項2】
前記の超音波受信装置が受信した反射波から周期変化を判断して異物の存在を判断する周期変化判断手段と、
その周期変化判断手段の判断結果を出力する結果出力手段と、
を備えた請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項3】
前記の超音波受信装置が受信した反射波に関する反射波データを蓄積する反射波データベースを備えるとともに、
前記の判断手段は、その反射波データベースに蓄積した反射波データをも用いて異物の存在を判断することとした請求項2に記載の異物検査装置。
【請求項4】
前記の判断手段による判断結果および判断結果を下すために用いたデータを蓄積する判断結果データベースを備えることとした請求項2または請求項3に記載の異物検査装置。
【請求項5】
前記の超音波発振装置および前記の超音波受信装置を一体として前記の密閉容器に接する超音波トランスデューサと、
その超音波トランスデューサを前記の密閉容器の外表面を移動させることを可能とする移動機構と、
を備えた請求項1から請求項4のいずれかに記載の異物検査装置。
【請求項6】
前記の超音波発振装置および前記の超音波受信装置を一体として前記の密閉容器に接する超音波トランスデューサと、
前記の密閉容器を傾斜させることが可能な傾斜機構と、
を備えた請求項1から請求項5のいずれかに記載の異物検査装置。
【請求項7】
密閉容器に接して超音波を発振する超音波発振装置と、 その超音波発振装置が発振した超音波の反射波を受信する超音波受信装置と、 その超音波受信装置が反射波を受信している際に前記の密閉容器に対して振動を与える振動発生装置と、を備えて前記の密閉容器に対して異物としての流体が混入しているか否かを検査する異物検査装置を制御するためのコンピュータプログラムであって、
そのプログラムは、 前記の超音波受信装置が受信した反射波をデジタル化して反射波データとして入力する反射波入力手順と、
その反射波データから前記の密閉容器の振動波を取り除く振動波除去手順と、
その振動波除去手順にて除去した後の反射波から異物の存在を判断する判断手順と、
をコンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記の超音波受信装置が受信した反射波に関する反射波データを反射波データベースに蓄積する反射波データ蓄積手順を備えるとともに、
前記の判断手順は、その反射波データベースに蓄積した反射波データをも用いて異物の存在を判断することとした請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記の判断手順による判断結果および判断結果を下すために用いたデータを判断結果データベースに蓄積する判断結果蓄積手順を備えた請求項7または請求項8に記載のコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−145426(P2012−145426A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3599(P2011−3599)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
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