説明

異物発生試験方法および異物発生試験装置

【課題】インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、これを貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を、オフラインで簡単に試験することができる異物発生試験方法等を提供する。
【解決手段】インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッド13aに導入される機能液と、機能液を貯留するタンク21との相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験方法であって、タンク21を揺動させる揺動手段22を用い、タンク21を介して、タンク21内の機能液を揺動させ、異物の発生を促進する異物発生加速工程S1と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、これを貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験方法および異物発生試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク(機能液)を貯留したインク供給容器(タンク)からインク供給チューブを介して機能液が供給される機能液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置において、機能液に含まれる導電性微粒子等の異物を除去する方法(異物除去方法)が知られている(特許文献1参照)。この機能液滴吐出ヘッドは、機能液の導入口となるインク導入針と、インク導入針内に配設されたフィルターと、フィルターを介して機能液滴吐出ヘッド内にインクを導入するインク導入路と、機能液に振動を与える圧電振動子を有するアクチュエータユニットと、を備えている。この機能液滴吐出ヘッドでは、アクチュエータユニットを用いて、機能液に対して高周波微振動を印加することで、機能液の攪拌およびキャビテーション効果により、フィルターに機能液内に含まれる導電性微粒子が付着することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−230012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、タンク内に貯留した機能液は、タンク内の上部空間の空気(酸素や水分)に触れたり、タンクとの擦動することにより、時間の経過とともに、導電性微粒子が異物として析出する場合がある。従来の異物除去方法では、フィルターの目詰まりを一時的に防止することはできるものの、生じた異物は定期的に除去しなければならない。係る場合には、液滴吐出装置の動作を全て停止し、異物除去のための作業を行わなければならないため、生産効率が著しく低下するという問題があった。
このような問題を防止するためには、機能液を機能液滴吐出ヘッドに導入(供給)する前に、使用する機能液を検査し、異物が発生せず安全に使用可能な期間を予め求めておくことが非常に重要となる。
【0005】
本発明は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、これを貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を、オフラインで簡単に試験することができる異物発生試験方法および異物発生試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異物発生試験方法は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、機能液を貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験方法であって、タンクを揺動させる揺動手段を用い、タンクを介して、タンク内の機能液を揺動させ、異物の発生を促進する異物発生加速工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の異物発生試験装置は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、機能液を貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験装置であって、機能液を貯留するタンクと、タンクを揺動させる揺動手段と、揺動手段の駆動を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
異物の発生の仕組みは、機能液がタンク中の空気中の水分を含み、機能液の顔料が、タンクの内壁に付着し、硬化したものが剥がれて異物化すると考えられている。
これらの構成によれば、揺動手段を用いてタンクを揺動させることにより、タンク内の機能液が攪拌される。このため、機能液とタンク内の空気との接触の機会が増加するため、異物の発生を促進することができる。すなわち、異物の発生を加速させた状態で、機能液の異物発生試験を行うことができる。また、機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する前のオフライン状態で、機能液内での異物発生の状況を評価することができる。これにより、機能液とこれを貯留するタンクとの相互作用による異物の発生の有無を、比較的短い時間で且つ簡単に確認することができる。なお、揺動は、直線的な往復動の他、曲線的な往復動であってもよい。
【0009】
この場合、異物発生加速工程では、任意の1の方向であるX軸方向、これに直交するY軸方向、X軸方向とY軸方向とに直交するZ軸方向、ロール方向、ピッチ方向およびヨー方向のうち少なくとも1の方向に揺動させることが好ましい。
【0010】
この場合、揺動手段は、タンクを、任意の1の方向であるX軸方向に揺動させるX軸揺動機構、これに直交するY軸方向に揺動させるY軸揺動機構、X軸方向とY軸方向とに直交するZ軸方向に揺動させるZ軸揺動機構、ロール方向に揺動させるローリング揺動機構、ピッチ方向に揺動させるピッチング揺動機構およびヨー方向に揺動させるヨーイング揺動機構のうち少なくとも1つを備えていることが好ましい。
【0011】
これらの構成によれば、一または複数の任意の方向から機能液に揺動(振動)を与えることができるため、様々な試験環境を作り出すことができる。これにより、短期間で異物発生率を見定めたい場合や、実際に機能液滴吐出ヘッドから吐出させる時と同様の環境(実機搭載時の環境)での異物発生率を見定めたい場合等、目的に応じた異物発生試験を行うことができる。
【0012】
また、この場合、異物発生加速工程は、タンクを介して、機能液を揺動させる揺動工程と、タンクを介して、機能液への揺動を停止させる揺動停止工程と、を交互に繰り返すことが好ましい。
【0013】
また、この場合、制御手段は、タンク内の機能液に間欠的に揺動させるように揺動手段を制御することが好ましい。
【0014】
これらの構成によれば、揺動手段の駆動と停止とを繰り返すことにより、タンク内の機能液が激しく揺動し、機能液と空気との攪拌が、より促進される。これにより、異物発生試験を、より加速(促進)させることができる。
【0015】
さらに、この場合、異物発生加速工程は、タンクに貯留した機能液を所定の温度に昇温した状態で実施されることが好ましい。
【0016】
さらに、この場合、タンクに貯留した機能液を所定の温度に昇温する機能液昇温手段を更に備え、制御手段は、タンクの機能液を所定の温度に昇温した状態で、揺動手段を駆動することが好ましい。
【0017】
これらの構成によれば、機能液の種類によっては、一定以上の温度にすることで、異物の発生を更に促進させることができる。これにより、短時間で異物発生の有無を試験することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】液滴吐出装置を模式的に示した斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る異物発生試験装置を模式的に示した斜視図である。
【図3】タンクを模式的に示した斜視図である。
【図4】異物発生試験方法の手順を示したフローチャートである。
【図5】第3実施形態に係る異物発生試験装置を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る異物発生試験方法およびこれを実施するため異物発生試験装置について説明する。この異物発生試験は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、機能液を貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速(促進)させて試験するものである。
異物発生試験方法(装置)の説明に先立ち、検査対象である機能液が使用される液滴吐出装置について簡単に説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれ、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0020】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、ワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル11と、X軸テーブル11を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース12a上に配設され、Y軸方向に延在するY軸テーブル12と、Y軸テーブル12に移動自在に吊設され、複数の機能液滴吐出ヘッド13aが搭載された複数のキャリッジユニット13と、機能液滴吐出ヘッド13aに機能液を供給する機能液供給ユニット14と、を備えている。この液滴吐出装置1は、制御装置15の指示により、X軸テーブル11およびY軸テーブル12の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド13aから機能液を吐出させて、ワークWに所定のパターンを描画する。
【0021】
機能液供給ユニット14は、機能液の供給源となる複数のメインタンク14aと、各キャリッジユニット13に対応して設けた複数のサブタンク14bと、各サブタンク14bを介してメインタンク14aと各機能液滴吐出ヘッド13aとを接続する機能液流路14cと、を備えている。各サブタンク14bは、一対のY軸支持ベース12aに掛け渡されたブリッジプレート12b上に配設されており、対応するキャリッジユニット13と共に移動する。そして、各キャリッジユニット13に搭載された各機能液滴吐出ヘッド13aには、各サブタンク14bから自然水頭を利用し、機能液流路14cを通じて機能液が供給されるようになっている。
【0022】
このような、液滴吐出装置1では、機能液滴吐出ヘッド13aへの機能液の供給は、サブタンク14bから自然水頭を利用しているため、サブタンク14b内における機能液は、空気(或いは窒素)に触れると共に、その量は増減を繰り返すこととなる。また、サブタンク14bはY軸テーブル12に搭載され、キャリッジユニット13と共に移動を繰り返す。このため、サブタンク14b内に貯留している機能液は、攪拌され、機能液とこれを貯留するサブタンク14bとの相互作用により異物が発生しやすい環境といえる。この異物が、機能液滴吐出ヘッド13aに流入すると、機能液滴吐出ヘッド13a内の流路やノズルに詰り、吐出不良が生じ、ワークWへの描画品質に影響を及ぼす。この場合、異物除去すべく液滴吐出装置1の動作が全て停止されるため、生産効率が著しく低下する。
そこで、異物発生試験装置2を用いて、液滴吐出装置1に機能液を導入する前の状態(オフライン状態)で、サブタンク14b内に貯留した機能液の異物発生の状況を加速させて試験を行う。
【0023】
(第1実施形態)
図2および図3を参照して、異物発生試験装置2について説明する。図2に示すように、異物発生試験装置2は、機能液を貯留するタンク21と、タンク21をX軸方向およびZ軸方向に揺動させる揺動手段22と、タンク21内の機能液を所定の温度に昇温させる機能液昇温手段23と、揺動手段22の動作を制御するためのPC等から構成された制御手段24と、を備えている。
【0024】
図3に示すように、タンク21は、サブタンク14bと同一(または同等)のものであり、ステンレス等の金属材料で、薄型直方体形状に形成されている。また、タンク21の上面は開放されており(蓋体を取り外した状態)、そこからタンク21内に機能液を注入できるようになっている。このようにタンク21の上面は開放されているため、タンク21内の機能液と空気(大気)とが直接接触し、機能液内に異物が発生しやすくなっている。なお、開放式のタンク21に限らず、蓋付の密閉式タンクを用いてもよい。詳細は後述するが、このタンク21は、X軸スライダー34bに支持され、X軸方向およびZ軸方向に往復移動するようになっている。
【0025】
図2に示すように、揺動手段22は、タンク21を支持するキャリッジ31と、キャリッジ31をX軸方向に揺動させるX軸揺動機構32と、キャリッジ31をZ軸方向に揺動させるZ軸揺動機構33と、を備えている。
【0026】
キャリッジ31は、タンク21を吊るすように支持するものであり、キャリッジ31の下面には、タンク21の開放された面を上にして取り付けられている。タンク21の取り付けは、キャリッジ31の下面から下方に突き出した複数のフック(図示省略)が、タンク21の上部に形成された複数の引掛り部(図示省略)に係合することで行われる。なお、キャリッジ31へのタンク21の取り付けは、上記した方法に限られたものではなく、例えば、タンク21をベルトでキャリッジ31に固定してよいし、粘着テープ等で固定してもよい。
【0027】
X軸揺動機構32は、X軸方向への駆動源となるX軸リニアモーター34と、X軸リニアモーター34の往復移動をガイドするX軸ガイド軸35と、を備えている。
【0028】
X軸リニアモーター34は、一般的なリニアモーターであり、X軸方向に延在するX軸ステーター34aと、X軸ステーター34aに沿って移動するX軸スライダー34bと、から構成されている。X軸ガイド軸35は、X軸ステーター34aと平行して配設されている。X軸スライダー34bは、ブロック状の部材であり、Y軸方向の一方の端部でX軸ガイド軸35にスライド自在に係合している。そして、このX軸リニアモーター34は、X軸ステーター34aおよびX軸スライダー34bが、それぞれ備えたマグネットの磁極同士の吸引・反発により、X軸スライダー34bがX軸ガイド軸35にガイドされつつX軸ステーター34a上を往復移動する。なお、図示は省略するが、X軸リニアモーター34は、リニアエンコーダーを有しており、X軸ステーター34a上におけるX軸スライダー34bの移動量(変位量)を検出することができるようになっている。
【0029】
また、X軸スライダー34bは、Y軸方向の他方の端部においてキャリッジ31を片持ち式で支持している。詳細は後述するが、X軸スライダー34bのキャリッジ31が片持ち支持される面には、Z軸方向に延在する一対のZ軸ガイドレール37が配設されている。そして、キャリッジ31は、一対のZ軸ガイドレール37に沿って往復移動可能に片持ち支持されている。
【0030】
Z軸揺動機構33は、Z軸方向への駆動源となるZ軸モーター36と、キャリッジ31のZ軸方向への往復移動をガイドする一対のZ軸ガイドレール37と、を備えている。
【0031】
Z軸モーター36は、一般的なステッピングモーターであり、回転軸を下方に向けてX軸スライダー34bの上面に配設されている。Z軸モーター36の回転軸は、下方(Z軸方向)に延在し、キャリッジ31の上面部分に螺合している。すなわち、Z軸モーター36の回転軸と、キャリッジ31の上面部分とで、ボールネジ機構38が構成されている。これにより、キャリッジ31(タンク21)を、円滑に上下(Z軸)方向に往復移動させることができる。
【0032】
各Z軸ガイドレール37は、凹状の溝であり、X軸スライダー34bのキャリッジ31が片持ち支持される面においてZ軸方向に延在している。また、キャリッジ31には、この一対のZ軸ガイドレール37(溝)に対応するように、一対の凸部(図示省略)が突設されている。この一対の凸部が、一対のZ軸ガイドレール37に組み合うことで、キャリッジ31は、一対のZ軸ガイドレール37に沿って上下(Z軸)方向に往復移動する。
【0033】
機能液昇温手段23は、タンク21内に貯留した機能液を所定の温度に昇温させるためのヒーター41を備えたチャンバー42で構成されている。チャンバー42は、異物発生試験を行うために必要なタンク21や揺動手段22等の機材を配置する試験室であり、異物発生試験を行う環境を、ヒーター41により所定の温度に昇温することで、タンク21内の機能液の温度を昇温する。これにより、機能液内の異物発生を更に促進させることができる。これは、一定以上の温度にすることで異物が発生しやすくなる種類の機能液に対して特に有効である。なお、本実施形態では、異物発生試験を行うための環境温度(機能液の試験温度)を、機能液の物性に影響を与えない40℃以下となるように調整している。
【0034】
また、制御手段24は、ユーザーが操作することを考慮するとチャンバー42の外部に配設されることが好ましい。他にも、チャンバー42を省略して、ヒーター41(フィルムヒーター等)を、タンク21の外側から囲むように配設してもよい。もちろん、防水処理したプレートヒーターを、機能液に浸漬する構成であってもよい。いずれにあって、機能液の温度は、センサーによりヒーター41をON−OFFしながら一定に管理させることとなる。
【0035】
続いて、図2ないし図4を参照して、異物発生試験装置2の制御手段24による制御方法(異物発生試験方法)について説明する。
この異物発生試験方法は、タンク21を揺動手段22(X軸揺動機構32およびZ軸揺動機構33)により揺動させて、タンク21内の機能液に振動を与えて異物の発生を促進する異物発生加速工程S1を備えている。
【0036】
図3に示すように、ユーザーは、異物発生加速工程S1に先立ち、試験に供する機能液をタンク21に注入する。この際、揺動させて振動を付与したときに機能液がタンク21の外に溢れ出すことを防止するため、タンク21の最大貯留量(容量)の10〜80%程度に留める。また、タンク21の内面と機能液とが接触する面積が、タンク21の内面の総面積の10%以上になるようにする。これにより、機能液とタンク21との擦動面積を一定以上維持することができるため、機能液の異物化促進を有効に行える。なお、密閉式タンクを用いた場合でも、最大貯留量を80%以下にしているため、タンク21内の上部には、空間(空気層)が形成される。このため、揺動により、機能液と空気とが攪拌され、機能液の異物化を有効に加速することができる。
【0037】
次に、図2に示すように、ユーザーは、機能液を貯留したタンク21を、チャンバー42内に配設された揺動手段22のキャリッジ31に取り付ける。なお、キャリッジ31は、X軸方向略中央を初期位置としている。その後、ユーザーの指示により制御手段24は、異物発生加速工程S1を実施する。図4に示すように、異物発生加速工程S1は、タンク21内の機能液の温度を昇温させる昇温工程S2と、タンク21を介して、機能液を揺動させる揺動工程S3と、タンク21を介して、機能液への揺動を停止させる揺動停止工程S4と、を有している。
【0038】
昇温工程S2では、チャンバー42内の温度を所定の温度(40℃程度)にするため、制御手段24がヒーター41を駆動する。ヒーター41を駆動して、しばらく経過するとタンク21内の機能液の温度もチャンバー42内の温度と略同一となる(タンク21内のセンサーで検出する。)。
【0039】
次に、制御手段24は、揺動手段22の駆動を制御し、揺動工程S3と揺動停止工程S4とを交互に繰り返すことで、タンク21内の機能液に対し、間欠的(断続的)に振動を与える。以下、揺動工程S3および揺動停止工程S4を詳細に説明する。
先ず、制御手段24は、X軸揺動機構32を駆動して、タンク21(キャリッジ31)を初期位置からX軸・正方向(図2では左方向)に所定の距離(本実施形態では0.5m)だけ移動させる(揺動工程S3)。その後、X軸揺動機構32の駆動を停止させ、所定の時間だけタンク21の移動を停止させる(揺動停止工程S4)。
【0040】
続いて、制御手段24は、所定の時間経過後、Z軸揺動機構33を駆動して、タンク21をZ軸・負方向(図2では下方向)に所定の距離(本実施形態では0.03m)だけ移動させる(揺動工程S3)。その後、Z軸揺動機構33の駆動を停止させ、所定の時間だけタンク21の移動を停止させる(揺動停止工程S4)。そして、所定の時間経過後、再びZ軸揺動機構33を駆動して、タンク21をZ軸・正方向に所定の距離だけ移動させた後、同様に停止する。今度は、X軸・負方向(図2では右方向)に移動して初期位置に戻ってくる。このように初期位置から移動を開始し、初期位置に戻ってくるまでを1サイクルとする。
初期位置に戻った後、今度はX軸・負方向において、同様に1サイクルの動作が行われる。本実施形態では、揺動工程S3および揺動停止工程S4を、7日間に渡り実施する。
【0041】
このように、揺動手段22の駆動と停止とを繰り返すことにより、タンク21内において、機能液が激しく揺動する。これにより、タンク21内において、機能液と空気との攪拌が促進されるため、異物発生試験を、より加速(促進)させることができる。なお、移動する距離および停止する時間の長さは任意であり、また、揺動工程S3および揺動停止工程S4を実施する期間も任意に設定してよい。
【0042】
なお、揺動停止工程S4を省略して、揺動工程S3のみを連続的に行ってもよい。また、上記した制御手段24は、キャリッジ31(タンク21)の移動距離を制御していたが、移動時間を制御するようにしてもよい。つまり、所定の時間だけ移動するようにしてもよい。また、タンク21は、X軸方向またはZ軸方向のうち、いずれか一方にのみ往復移動(揺動)させてもよい。さらに、タンク21をY軸方向に移動可能な機構を設けて、タンク21内の機能液をY軸方向に揺動させてもよい。
【0043】
以上の構成によれば、タンク21を揺動させることにより、タンク21内の機能液と空気との接触、および機能液とタンク21内面との接触の機会を増加させ、機能液内における異物の発生を加速させた状態で異物発生試験を行うことができる。また、機能液滴吐出ヘッド13aに機能液を供給する前のオフライン状態で、機能液内での異物発生の状況を評価することができる。これにより、機能液とこれを貯留するタンク21との相互作用による異物の発生の有無を、短い時間で且つ簡単に確認可能となる。
【0044】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る異物発生試験装置2では、揺動手段22の可動範囲内(X軸方向に1.0m,Y軸方向に0.03m)で大きく揺り動かしていたが、第2実施形態に係る異物発生試験装置2では、揺動手段22を数mm〜数cm刻み(または数百ms〜数s刻み)で移動と停止を繰り返すように制御する。この場合、キャリッジ31(タンク21)は、激しく移動と停止を繰り返すため、タンク21内の機能液は、さらに激しく揺動し、攪拌され、空気と混じりあう。これにより、異物発生試験を、さらに加速(促進)させることができる。
【0045】
(第3実施形態)
図5に示すように、第3実施形態に係る異物発生試験装置2では、タンク21をヨー方向に揺動させるヨーイング揺動機構50を、更に設けている。ヨーイング揺動機構50は、キャリッジ31の下側において、キャリッジ31に対してZ軸周りに揺動可能に設けられている。そして、ヨーイング揺動機構50は、キャリッジ31に代わってタンク21を支持する。制御手段24がヨーイング揺動機構50を駆動制御することにより、タンク21は、ヨー方向に揺動する。ヨーイング揺動機構50の駆動は、第1実施形態および第2実施形態で述べたように間欠的に行ってもよいし、揺動工程S3のみを連続的に行ってもよい。このような構成によっても、タンク21内の機能液を揺動・攪拌することができ、異物発生試験を加速させることができる。なお、図示および詳細な説明は省略するが、タンク21を、ロール方向やピッチ方向に揺動させる機構(ローリング揺動機構、ピッチング揺動機構)を設けてもよい。
【符号の説明】
【0046】
2:異物発生試験装置、13a:機能液滴吐出ヘッド、21:タンク、22:揺動手段、23:機能液昇温手段、24:制御手段、32:X軸揺動機構、33:Z軸揺動機構、50:ヨーイング揺動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、前記機能液を貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験方法であって、
前記タンクを揺動させる揺動手段を用い、
前記タンクを介して、前記タンク内の機能液を揺動させ、異物の発生を促進する異物発生加速工程と、を備えたことを特徴とする異物発生試験方法。
【請求項2】
前記異物発生加速工程では、任意の1の方向であるX軸方向、これに直交するY軸方向、X軸方向とY軸方向とに直交するZ軸方向、ロール方向、ピッチ方向およびヨー方向のうち少なくとも1の方向に揺動させることを特徴とする請求項1に記載の異物発生試験方法。
【請求項3】
前記異物発生加速工程は、
前記タンクを介して、前記機能液を揺動させる揺動工程と、
前記タンクを介して、前記機能液への揺動を停止させる揺動停止工程と、を交互に繰り返すことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の異物発生試験方法。
【請求項4】
前記異物発生加速工程は、前記タンクに貯留した前記機能液を所定の温度に昇温した状態で実施されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の異物発生試験方法。
【請求項5】
インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、前記機能液を貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験装置であって、
前記機能液を貯留するタンクと、
前記タンクを揺動させる揺動手段と、
前記揺動手段の駆動を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする異物発生試験装置。
【請求項6】
前記揺動手段は、前記タンクを、任意の1の方向であるX軸方向に揺動させるX軸揺動機構、これに直交するY軸方向に揺動させるY軸揺動機構、X軸方向とY軸方向とに直交するZ軸方向に揺動させるZ軸揺動機構、ロール方向に揺動させるローリング揺動機構、ピッチ方向に揺動させるピッチング揺動機構およびヨー方向に揺動させるヨーイング揺動機構のうち少なくとも1つを備えていることを特徴とする請求項5に記載の異物発生試験装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記タンク内の前記機能液に間欠的に揺動させるように前記揺動手段を制御することを特徴とする請求項5または6に記載の異物発生試験装置。
【請求項8】
前記タンクに貯留した前記機能液を所定の温度に昇温する機能液昇温手段を更に備え、
前記制御手段は、前記タンクの前記機能液を所定の温度に昇温した状態で、前記揺動手段を駆動することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の異物発生試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−98295(P2011−98295A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254884(P2009−254884)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】