説明

畳下の換気

【課題】室や畳の大きさが規格外とならず、実用に供することができ、しかも、シックハウスを防止し得る畳下換気システム、畳下換気方法およびリフォーム方法を提供する。
【解決手段】畳の厚さ方向に貫通する円柱形の第1貫通孔31を有する第1の畳と、畳の厚さ方向に貫通する円柱形の第2貫通孔32を有する第2の畳と、前記円柱形の各貫通孔31、32の表面において畳を構成する部材の端がほつれるのを防止する固定手段と、前記複数の畳の下に敷設され、吸着剤を有し上面に凹凸を持つシート2とを備え、畳の上方の空間から前記第1貫通孔31を介して前記畳と前記シート2との間に入った空気が、第2貫通孔32から畳の上方の前記空間に流出することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畳下の換気に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションの畳下や新しい施工法の一戸建住居においては、畳下にコンクリートおよびモルタルからなるスラブが形成されていたり、床下に対し通気性のないベニヤ板などが敷設されている。かかる住居においては、畳下の換気が著しく低く、畳下に湿気を帯び、ダニの大量発生の原因となる。また、結露により住宅の劣化する要因となる。
【0003】
かかる問題を解決するために、室の畳の長辺に沿って通気部材を設けると共に、畳下に通気シートを敷設するシステムが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−61048号(フロントページ)
【0004】
しかし、前記先行技術においては、畳の長辺に沿った通気部材を設けるので、室や畳の大きさが規格外となる。そのため未だ実用に供されていない。
【0005】
前記マンション等は気密性が高く、その一方で、天井化粧材、壁紙、襖、絨毯およびその接着剤などからは化学物質が室内の雰囲気に発散し、シックハウス(化学物質アレルギー)になる人も少なくない。
化学物質を吸着するために、室内に炭等をおくこともなされているが、住宅設備故、炭等の総量を十分な量とするのは難しい。
【発明の開示】
【0006】
したがって、本発明は室や畳の大きさが規格外とならず、実用に供することができ、しかも、シックハウスを防止し得る畳下換気システム、畳下換気方法およびリフォーム方法を提供することである。
【0007】
前記目的を達成するための本畳下換気システムは、畳の厚さ方向に貫通する円柱形の第1貫通孔を有する第1の畳と、畳の厚さ方向に貫通する円柱形の第2貫通孔を有する第2の畳と、前記円柱形の各貫通孔の表面において畳を構成する部材の端がほつれるのを防止する固定手段と、前記複数の畳の下に敷設され、吸着剤を有し上面に凹凸を持つシートとを備え、畳の上方の空間から前記第1貫通孔を介して前記畳と前記シートとの間に入った空気が、第2貫通孔から畳の上方の前記空間に流出することを可能とする。
【0008】
本発明によれば、室の上方の空間から第1貫通孔を介して、凹凸を持つシートと畳との間に入った空気は、畳の下を流れて第2貫通孔から上方の室の空間に流出する。これにより、畳下の換気がなされる。
この際、畳下のシートは吸着剤を有しているので、畳下の湿気が除去される。そのため、ダニの発生や結露を防止し得る。
また、室内の空気は吸着剤に接触することで、化学物質が除去される。そのため、シックハウス症候群の発生を防止し得る。
一方、第1および第2貫通孔は円柱形であるから壁を穿孔するホールソーなどにより容易に貫通孔を形成し得るし、規格の畳に孔を穿孔できる。
しかも、貫通孔の表面は固定手段で保護されているので、貫通孔から畳が劣化するおそれもない。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の一実施例を図面にしたがって説明する。
図1において、6畳の室の各畳1i の下には、シート2が敷設されている。シート2は上面に凹凸を有し各凸部21には、たとえば木炭のような吸着剤が充填されている。シート2は複数に分かれている方が用い易い。
なお、図2に示すように、シート2は2枚の通気性を持つ不織布23、23の間に吸着剤24を収容したものを用いるのが好ましい。
【0010】
図1の6枚の畳のうち4枚の畳11 〜14 には、畳の厚さ方向に貫通する円柱形の貫通孔31、32が形成されている。
畳1i の上方の空間から第1貫通孔31を介して前記畳1i と前記シート2との間に入った空気が、シート2の凹部22を通って第2貫通孔32から畳1i の上方の前記空間に流出することが可能である。
【0011】
図3に示すように、各貫通孔31、32には、複数の円筒部材40〜42が嵌合している。各円筒部材40〜42は、各貫通孔の表面において畳を構成するワラやイ草などの部材の端がほつれるのを防止する固定手段の一部を構成する。
【0012】
図4に示すように、前記円筒部材の1つである接着用カラー40は、各貫通孔31、32の内周面に接着剤43を介して接着されている。これにより、畳中心の「ワラ」がほつれるのを防止する。なお、前記接着用カラー40は紙管や布、畳表の部材(「イ」草)で形成するのが好ましい。
【0013】
図4Aに示すように、前記円筒部材は畳の裏面から前記貫通孔31、32に挿入される第1のカラー41と、畳の表面から前記貫通孔31、32に挿入される第2のカラー42とを包含する。
前記第1のカラー41は前記畳の裏面に係合する第1鍔41aを有し、前記第2のカラー42は前記畳の表面に係合する第2鍔42aを有し、前記第1のカラー41と前記第2のカラー42とが中間の係合部44で互いに係合して前記第1鍔41aと前記第2鍔42aとの間で畳を挟み付ける。これにより、畳の表面や裏面の近くにおいて前記部材がほつれるのを防止する。
【0014】
なお、前記第1および第2のカラー41、42は合成樹脂で形成するのが好ましい。
また、前記円筒部材として、1枚の鍔付筒状の布を用意し、畳の縁のように縫ってもよい。
【0015】
つぎに、リフォームで前記システムを形成する方法について説明する。
まず、室の畳を上げる。ついで、図1の複数枚の畳11 〜14 にホールソーで図3の前記円柱形の貫通孔31、32を形成する。その後、前記貫通孔31、32に前記接着用カラー40を接着剤43で前記貫通孔31、32に接着し、この接着後、第1および第2のカラー41、42を接着用カラー40内に装着する。
一方、畳下となるスラブまたは板の上に図1の前記シート2を敷設する。その後、前記円筒部材40〜42を装着した畳1i を前記シート2上に敷設する。
【0016】
こうして形成された畳下換気システムにおいては、1または複数の前記第1貫通孔31から畳下の空間に空気を圧送しつつ、1または複数の前記第2貫通孔32から畳下の空気を室内に向って吸引する。これにより、換気とハウスシックの双方が防止される。
【0017】
図4Aの前記第2のカラー42に掃除機のパイプを挿入して連通させ、畳下の空気を吸引してもよい。
【0018】
また、温風を畳下に圧送するフトン乾燥機のパイプを前記第2のカラー42に挿入して連通させ、畳下に温風を圧送してもよい。
【0019】
図5に示すように、前記貫通孔31、32を介して畳下の空気と室の空気とを換気する換気ファン50を更に設けてもよい。この場合、常時換気が可能となる。
この場合、前記換気ファン50を収容する筒状の収容部51と、該収容部51に連なり畳の表面に係合する鍔部52と、該鍔部の表面に設けられた前記換気ファンのモータ(図示せず)に給電する太陽電池53とを備えたファンユニット5を設けるのが好ましい。
【0020】
一方、図4Bに示すように、前記貫通孔31、32を閉塞するキャップ6を更に備えていれば、換気が不要な場合に便利である。
【0021】
なお、前記各貫通孔31、32は、一般に、畳の隅部であって室の隅に形成されるが、家具の配置や室の用い方により、畳の中央等に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は畳下の換気に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の畳下換気システムを示す概略分解斜視図である。
【図2】同縦断面図である。
【図3】円筒部材を示す分解斜視図である。
【図4】円筒部材を装着した要部の断面図である。
【図5】ファンを第1のカラーに装着した断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 〜16 :畳
2:シート
31:第1貫通孔
32:第2貫通孔
40:接着用カラー
41:第1のカラー
42:第2のカラー
50:ファン
6:キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳の厚さ方向に貫通する円柱形の第1貫通孔を有する第1の畳と、
畳の厚さ方向に貫通する円柱形の第2貫通孔を有する第2の畳と、
前記円柱形の各貫通孔の表面において畳を構成する部材の端がほつれるのを防止する固定手段と、
前記複数の畳の下に敷設され、吸着剤を有し上面に凹凸を持つシートとを備え、
畳の上方の空間から前記第1貫通孔を介して前記畳と前記シートとの間に入った空気が、第2貫通孔から畳の上方の前記空間に流出することを可能とした畳下換気システム。
【請求項2】
請求項1において、前記貫通孔に嵌合する円筒部材を更に備えた畳下換気システム。
【請求項3】
請求項2において、前記円筒部材は前記貫通孔の内周面に接着された接着用カラーを包含し前記接着用カラーが前記固定手段の一部を構成している畳下換気システム。
【請求項4】
請求項2において、前記円筒部材は畳の裏面から前記貫通孔に挿入される第1のカラーと、畳の表面から前記貫通孔に挿入される第2のカラーとを包含し、
前記第1のカラーは前記畳の裏面に係合する第1鍔を有し、前記第2のカラーは前記畳の表面に係合する第2鍔を有し、前記第1のカラーと前記第2のカラーとが互いに係合して前記第1鍔と前記第2鍔との間で畳を挟み付けることができるようにした畳下換気システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記各貫通孔が畳の隅部であって室の隅に形成されている畳下換気システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吸着剤として木炭を包含する畳下換気システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、前記貫通孔を介して畳下の空気と室の空気とを換気する換気ファンを更に備えた畳下換気システム。
【請求項8】
請求項7において、前記換気ファンを収容する筒状の収容部と、該収容部に連なり畳の表面に係合する鍔部と、該鍔部の表面に設けられた前記換気ファンのモータに給電する太陽電池とを更に備えた畳下換気システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、前記貫通孔を閉塞するキャップを更に備えた畳下換気システム。
【請求項10】
請求項2〜9の畳下換気システムを備えた住宅にリフォームするリフォーム方法であって、
室の畳を上げる工程と、
畳にホールソーで前記円柱形の貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔に前記円筒部材を装着する工程と、
畳下となるスラブまたは板の上に前記シートを敷設する工程と、
前記円筒部材を装着した畳を前記シート上に敷設する工程とを備えたリフォーム方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の畳下換気システムを用いた畳下換気方法であって、
前記第1貫通孔から畳下の空間に空気を圧送しつつ、前記第2貫通孔から畳下の空気を室内に向って吸引する畳下換気方法。
【請求項12】
請求項2〜4のいずれかに記載の畳下換気システムを用いた畳下換気方法であって、
前記円筒部材に掃除機のパイプを連通させ、畳下の空気を吸引する畳下換気方法。
【請求項13】
請求項2〜4のいずれかに記載の畳下換気システムを用いた畳下換気方法であって、
温風を畳下に圧送するパイプを前記円筒部材に連通させ、畳下に温風を圧送する畳下換気方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−191442(P2009−191442A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30109(P2008−30109)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【特許番号】特許第4149509号(P4149509)
【特許公報発行日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(300046452)
【Fターム(参考)】