説明

疎水性変性された多糖に固定化された酵素

ミセル状疎水性変性多糖を含む、バイオアノード、バイオカソード、バイオ燃料電池、固定化酵素および固定化物質を開示する。特に、ミセル状疎水性変性多糖は、疎水性変性キトサンまたは疎水性変性アルギン酸塩であってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生物学的酵素系燃料電池(バイオ燃料電池としても知られている)、ならびにその製造方法および使用に関する。特に、本発明は、疎水性変性多糖を含む、バイオアノード、バイオカソード、バイオ燃料電池、固定化酵素、および酵素固定化物質、ならびにそれらの製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ燃料電池は、化学反応から誘導されるエネルギーを、生体細胞および/またはそれらの酵素の触媒活性によって、電気エネルギーに変換する電気化学デバイスである。バイオ燃料電池は、一般に、複合分子を使用し、アノードで、酸素を水に還元するために必要な水素イオンを発生させ、一方、電気的用途に使用するための自由電子を発生させる。バイオアノードは、燃料の酸化時に電子が放出されるバイオ燃料電池の電極であり、バイオカソードは、アノードからの電子およびプロトンが触媒によって使用され、過酸化物または酸素を水に還元する電極である。バイオ燃料電池は、従来の燃料電池とは、電気化学反応を触媒するために使用される物質が相違する。バイオ燃料電池は、触媒として貴金属を使用するのではなく、酵素のような生物学的分子に依存して反応を行う。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の種々の態様の中には、電子伝導体と、少なくとも1種のアノード酵素と、酵素固定化物質とを含むバイオアノードがある。アノード酵素は、電子メディエータの酸化形態および燃料流体と反応し、燃料流体の酸化形態および電子メディエータの還元形態を生成することができる。電子メディエータの還元形態は、電子を電子伝導体に放出することができる。酵素固定化物質は、燃料流体および電子メディエータに対して透過性であり、疎水性変性多糖を含む。
【0004】
前記アノードの別の態様では、酵素固定化物質は、電子メディエータを含む。
【0005】
さらに他の態様は、電子伝導体と、少なくとも1種のアノード酵素と、酵素固定化物質と、電極触媒とを含むバイオアノードである。アノード酵素は、電子メディエータの酸化形態および燃料流体と反応し、燃料流体の酸化形態および電子メディエータの還元形態を生成することができる。酵素固定化物質は、燃料流体および電子メディエータに対して透過性であり、疎水性変性多糖を含む。電極触媒は、電子伝導体と近接する。電極触媒の酸化形態は、電子メディエータの還元形態と反応し、電子メディエータの酸化形態および電極触媒の還元形態を生成することができ、電極触媒の還元形態は、電子を電子伝導体に放出することができる。
【0006】
前記アノードの他の態様では、酵素固定化物質は、電子メディエータ、電極触媒、または電子メディエータおよび電極触媒を含む。
【0007】
さらなる態様は、電子伝導体と、少なくとも1種のカソード酵素と、酵素固定化物質とを含むバイオカソードである。カソード酵素は、電子メディエータの還元形態および酸化剤と反応し、電子メディエータの酸化形態および水を生成することができる。酵素固定化物質は、電子メディエータを含み、酸化剤に対して透過性であり、疎水性変性多糖を含む。電子メディエータの酸化形態は、電子伝導体から電子を獲得し、電子メディエータの還元形態を生成することができる。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、電子伝導体と、少なくとも1種のカソード酵素と、酵素固定化物質とを含むバイオカソードである。カソード酵素は、電子メディエータの還元形態および酸化剤と反応し、電子メディエータの酸化形態および水を生成することができる。酵素固定化物質は、電子メディエータ、電極触媒、または電子メディエータおよび電極触媒を含み、酸化剤に対して透過性であり、疎水性変性多糖を含む。電極触媒の酸化形態は、電子伝導体から電子を獲得し、電子メディエータの酸化形態と反応し、電子メディエータの還元形態および電極触媒の酸化形態を生成することができる電極触媒の還元形態を生成することができる。
【0009】
さらなる態様は、燃料流体と、電子メディエータと、前記バイオアノードと、カソードとを含む、電気を発生するバイオ燃料電池である。さらに、電気を発生するバイオ燃料電池は、燃料流体と、電子メディエータと、アノードと、前記バイオカソードとを含む。また、電気を発生するバイオ燃料電池は、燃料流体と、電子メディエータと、前記バイオアノードと、前記バイオカソードとを含む。
【0010】
さらに他の態様は、前記バイオ燃料電池を使用して電気を発生する方法であって、アノードまたはバイオアノードで燃料流体を酸化し、カソードまたはバイオカソードで酸化剤を還元するステップと、酸化剤をカソードまたはバイオカソードで還元している間、電子メディエータの還元形態を酸化するステップと、電極触媒を酸化するステップと、電子伝導体で電極触媒を還元するステップとを含む方法である。
【0011】
別の態様は、前記バイオ燃料電池を使用して電気を発生する方法であって、アノードまたはバイオアノードで燃料流体を酸化し、カソードまたはバイオカソードで酸化剤を還元するステップと、酸化剤をカソードまたはバイオカソードで還元している間、電子メディエータの還元形態を酸化するステップと、電子伝導体で電子メディエータを還元するステップとを含む方法である。
【0012】
本発明のさらなる態様は、疎水性変性多糖中に固定化された酵素である。疎水性変性多糖は、酵素を固定化し、安定化することができ、酵素より小さな化合物に対して透過性がある。
【0013】
別の態様は、ミセル状の疎水性変性ポリカチオン性ポリマー中に固定化された酵素であり、該固定化酵素は、緩衝液中に置かれた時の酵素より活性状態にある。
【0014】
さらなる態様は、ミセル状の疎水性変性されたポリアニオン性ポリマーに固定化された酵素であり、該固定化酵素は、緩衝液中に置かれた時の酵素より活性状態にある。
【0015】
さらに他の態様は、少なくとも約10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48%の、疎水性基で変性されたキトサンのアミノ官能基を有するミセル状の疎水性変性キトサンである。
【0016】
別の態様は、式1A
【化1】

(式中、nは整数であり、R10aは、独立して、水素または疎水性レドックスメディエータであり、R11aは、独立して、水素,または疎水性レドックスメディエータである。)
に対応する構造を有するミセル状の疎水性レドックスメディエータで変性されたキトサンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、疎水性変性多糖、好ましくは疎水性変性キトサンまたは疎水性変性アルギン酸塩を含む、バイオアノード、バイオカソード、バイオ燃料電池、および酵素固定化物質に関する。疎水性変性多糖は、酵素を固定化するのに有利な、中に孔を有するミセル構造を形成する。これらの疎水性変性多糖のいくつかは、生体適合性があり、酸性から中性の環境で酵素(たとえば、pH約5において活性である酵素)を固定化するのによく適した、ポリカチオン性生体高分子である。そのポリカチオン性特性に加えて、疎水性変性多糖は、特定の酵素に合う孔の形状に変更することができあるいは酵素固定化物質の電子的特性を変更することができる、様々な疎水性基で変性することができる。
【0018】
さらなる実施形態では、本発明のバイオ電極アッセンブリは、向上した酵素安定性を有する。バイオカソードまたはバイオアノードでの用途では、固定化物質は、機械的および化学的安定性を提供するバリアを形成する。したがって、酵素は、既知のものより、長期間安定化される。本発明の目的に関して、バイオ燃料電池が少なくとも7日間から約730日間の連続運転を行い、初期触媒活性の少なくとも約75%を保つ場合、酵素は「安定化されている」ことになる。
【0019】
I.バイオ燃料電池
本発明の種々の態様のうち、バイオ燃料電池は、燃料流体を利用して、電池中の固定化酵素によって、電極で起こる酵素媒介レドックス反応を介して電気を発生させる。標準的な電気化学電池において、アノードは、電子の並行放出を伴う、燃料流体の酸化反応のための部位である。電子は、アノードから電気コネクタを通り、ある電力消費デバイスに向かう。電子は、該デバイスを経て、他の電気コネクタへ移動し、これが電子をバイオ燃料電池のバイオカソードへ移送し、そこで、電子が使用されて酸化剤を還元し、水を生成する。このように、本発明のバイオ燃料電池は、その外部にある電気的負荷用のエネルギー源(電気)として作用する。燃料流体のレドックス反応を促進するために、電極は、電子伝導体と、電子メディエータと、電子メディエータ用の電極触媒と、酵素と、酵素固定化物質とを含む。
【0020】
本発明によれば、電子メディエータは、電子を受容するまたは電子を供与することができる化合物である。好ましいバイオ燃料電池では、電子メディエータの酸化形態が、燃料流体および酵素と反応し、バイオアノードで、燃料流体の酸化形態および電子メディエータの還元形態を生成する。続いてまたは同時に、電子メディエータの還元形態が、電極触媒の酸化形態と反応し、電子メディエータの酸化形態および電極触媒の還元形態を生成する。次いで、電極触媒の還元形態が、バイオアノードで酸化され、電子を生成し、電気を発生させる。バイオアノードでのレドックス反応は、燃料流体の酸化を除いて、可逆性であるので、酵素、電子メディエータおよび電極触媒は消費されない。場合によっては、これらのレドックス反応は、電子メディエータおよび/または電極触媒が加えられて、追加の反応物質が供給された場合、不可逆性になりうる。
【0021】
あるいは、バイオアノードと接触する電子メディエータが、未変性電極で、酸化形態と還元形態との間に電子を移動させることができる、電子伝導体および酵素を使用することができる。電子メディエータが、未変性バイオアノードにおいて、その還元形態と還元形態との間で電子を移動させることができる場合、電極触媒と電子メディエータとの間の次の反応は必要でなく、電子メディエータ自体が、バイオアノードで酸化され、電子を生成し、したがって電気を発生させる。
【0022】
バイオカソードで、バイオアノードに由来する電子は、バイオカソードの電子伝導体に流れ込む。そこで電子は電極触媒の酸化形態と結びつき、これが電子伝導体と接触する。この反応は、電極触媒の還元形態を生成し、これは次いで電子メディエータの酸化形態と反応し、電子メディエータの還元形態および電極触媒の酸化形態を生成する。次に、電子メディエータの還元形態は、酸化剤の酸化形態と反応して、電子メディエータの酸化形態および水を生成する。一実施形態では、酸化剤に対して透過性である酵素固定化物質が存在し、これは、電極触媒と、場合によっては、電子メディエータとを含み、酵素を固定化し、安定化することができる。
【0023】
バイオカソードの別の実施形態では、電極触媒が存在しない。この実施形態では、電子は電子メディエータの酸化形態と結びつき、電子メディエータの還元形態を生成する。次いで、電子メディエータの還元形態が、酸化剤の酸化形態と反応して、電子メディエータの酸化形態および水を生成する。一実施形態では、酸化剤に対して透過性である酵素固定化物質が存在し、これは、場合によっては、電子メディエータを含み、酵素を固定化し、安定化することができる。
【0024】
本発明のバイオ燃料電池は、バイオカソードおよび/またはバイオアノードを含む。一般に、バイオアノードは、燃料流体の酸化を起こす構成要素を含み、これによって電子が放出され、外部の電気的負荷に向かう。得られた電流は、電気的負荷に電力を供給し、次いで、電子は、バイオカソードに向かい、バイオカソードでは酸化剤が還元され水が生成される。
【0025】
A.バイオカソード
本発明によるバイオカソードは、電子伝導体と、酵素固定化物質に固定化されている酵素と、電子メディエータと、電極触媒とを含む。一実施形態では、これらの成分は、それぞれと近接し、すなわち、これらは、適切な手段によって、物理的または化学的に接続されている。
【0026】
1.電子伝導体
電子伝導体は、電子を通す物質である。電子伝導体は、材料を介して電子を通すことができるものであれば、事実上、有機物であっても無機物であってもよい。電子伝導体として、炭素材料、ステンレス鋼、ステンレス鋼メッシュ、金属導電体、半導体、金属酸化物、変性導電体、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。好ましい実施形態では、電子伝導体は炭素系材料である。
【0027】
特に適切な電子伝導体は、炭素系材料である。代表的な炭素系材料は、炭素クロス、炭素ペーパー、カーボンスクリーン印刷電極、炭素ペーパー(東レ)、炭素ペーパー(ELAT)、カーボンブラック(バルカンXC-72、E-tek)、カーボンブラック、炭素粉末、炭素繊維、単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブアレイ、ダイアモンド被覆導電体、ガラス状炭素、およびメソ多孔性炭素である。さらに、他の代表的な炭素系材料として、グラファイト、非圧縮グラファイトワーム、剥離精製フレーク状グラファイト(Superior(登録商標)グラファイト)、高性能グラファイトおよび炭素粉末(Formula BT(商標)、Superior(登録商標)グラファイト)、高配向熱分解グラファイト、熱分解グラファイトおよび多結晶グラファイトがある。好ましい電子伝導体(サポート膜)は、炭素ペーパーのシートである。これらの炭素材料の組み合わせも使用することができる。
【0028】
さらなる実施形態では、電子伝導体を、金属導電体で作成することができる。適切な電子伝導体は、金、白金、鉄、ニッケル、銅、銀、ステンレス鋼、水銀、タングステン、および電極構造に適切な他の金属から製造することができる。さらに、金属導電体である電子伝導体を、コバルト、炭素、および他の適切な金属で作られたナノ粒子で構成することができる。他の金属電子伝導体として、銀メッキニッケルスクリーン印刷電極を挙げることができる。
【0029】
さらに、電子伝導体は、半導体であってもよい。適切な半導体材料として、ケイ素およびゲルマニウムが挙げられ、これらは、他の元素でドープすることができる。半導体は、リン、ホウ素、ガリウム、ヒ素、インジウム、またはアンチモン、あるいはこれらの組み合わせでドープすることができる。
【0030】
他の電子伝導体として、金属酸化物、金属硫化物、主属化合物(すなわち、遷移金属化合物)、および電子伝導体で変性された材料を挙げることができる。この種の代表的な電子伝導体には、ナノ多孔質酸化チタン、酸化スズ被覆ガラス、酸化セリウム粒子、硫化モリブデン、チッ化ホウ素ナノチューブ、炭素のような導電性材料で変性されたエアロゲル、炭素のような導電性材料で変性されたゾルゲル、ルテニウム炭素エアロゲル、および炭素のような導電性材料で変性されたメソ多孔質シリカがある。
【0031】
2.電子メディエータ
電子メディエータは、電子を、受容または供与することができる化合物である.換言すれば、電子メディエータは、電子を受容し、還元形態を形成することができる酸化形態を有し、還元形態は、電子を供与して、酸化形態を生成することができる。電子メディエータは、固定化物質に拡散しうる、および/または固定化物質に導入されうる化合物である。
【0032】
一実施形態では、電子メディエータの拡散係数を最大にする。換言すれば、電子メディエータの還元形態の物質移送が可能なかぎり速い。電子メディエータの速い物質移送は、それが使用されるバイオ燃料電池の電流および電力密度をより大きくすることができる。
【0033】
バイオカソードの電子メディエータとして、ステラシアニンのようなタンパク質、ビリルビンのようなタンパク質副生物、グルコースのような糖類、コレステロールのようなステロール、脂肪酸、金属タンパク質、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。電子メディエータとして、補酵素またはオキシダーゼの基質も挙げることができる。好ましい一実施形態では、バイオカソードでの電子メディエータは、ビリルビンである。
【0034】
3.電子メディエータ用の電極触媒
一般に、電極触媒は、電子メディエータの標準還元電位を低下することによって、電子伝導体での電子の放出を促進する物質である。
【0035】
通常、本発明による電極触媒は、+0.4ボルトを超える標準還元電位を有する有機金属カチオンである。代表的な電極触媒は、遷移金属複合体、たとえば、オスミウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、ロジウム、レニウム、およびコバルトの複合体である。これらの複合体を使用する好ましい有機金属カチオンは、大きい電子自己交換速度を可能にする、大きい有機芳香族リガンドを含む。大きい有機芳香族リガンドの例として、1,10−フェナントロリン(phen)、2,2’−ビピリジン(bpy)および2,2’,2’’−テルピリジン(terpy)の誘導体、たとえば、Ru(phen)3+2、Fe(phen)3+2、Ru(bpy)3+2、Os(bpy)3+2およびOs(terpy)3+2が挙げられる。好ましい実施形態では、電極触媒はルテニウム化合物である。最も好ましくは、バイオカソードでの電極触媒は、(式2で表される)Ru(bpy)3+2である。
【化2】

【0036】
電極触媒は、電子の効率的な移動を促進する濃度で存在する。好ましくは、電極触媒は、酵素固定化物質が電子を伝導する濃度で存在する。特に、電極触媒は、約10mM〜約3M、より好ましくは約250mM〜約2.25M、さらにより好ましくは約500mM〜約2M、最も好ましくは約1.0M〜約1.5Mの濃度で存在する。
【0037】
4.酵素
本発明によれば、酵素はバイオカソードで酸化剤を還元する。一般に、天然の酵素、人工酵素、合成酵素、および変性した天然酵素を利用することができる。さらに、自然進化または定方向進化によって遺伝子操作された遺伝子操作酵素を使用することもできる。換言すれば、酵素の特性を模倣する有機または無機分子を、本発明の実施形態で使用することができる。
【0038】
具体的には、バイオカソードで使用される代表的な酵素は、酸化還元酵素である。可能性のある酸化還元酵素として、ラッカーゼおよびオキシダーゼ、たとえば、グルコースオキシダーゼ、アルコール系オキシダーゼ、およびコレステロール系オキシダーゼが挙げられる。好ましい実施形態では、酵素は、パーオキシダーゼまたは酸素酸化還元酵素であり、それぞれ、過酸化水素および酸素の還元を触媒する。代表的な酸素酸化還元酵素として、ラッカーゼ、シトクロムcオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、およびパーオキシダーゼが挙げられる。より好ましくは、酵素は、pH約6.5〜約7.5の間に最適活性を有する酸素酸化還元酵素である。pH約6.5〜約7.5の間に最適活性を有する酸素酸化還元酵素は、植物、あるいはヒトまたは動物の体のような、生理学的環境に対する用途に有利である。最も好ましい酵素は、ビリルビンオキシダーゼである。
【0039】
5.酵素固定化物質
酵素固定化物質は、バイオ燃料電池において、バイオアノードおよび/またはバイオカソードで利用される。一実施形態では、バイオアノードの酵素固定化物質は、燃料流体に対して透過性であり、酵素を固定化し、安定化する。固定化物質は、燃料流体に対して透過性があるので、バイオアノードでの燃料の酸化反応は、固定化酵素によって触媒されうる。
【0040】
一般に、酵素は、バイオカソードおよび/またはバイオアノードで、レドックス反応を触媒するために使用される。本発明によるバイオアノードおよび/またはバイオカソードにおいて、酵素は、酵素を固定化および安定化する酵素固定化物質中に固定化される。通常、溶液中の遊離酵素は、数時間から数日の間にその触媒活性を失い、一方、適正に固定化され、安定化された酵素は、少なくとも7日間から約730日間その触媒活性を保つことができる。触媒活性の保持は、酵素が初期活性の少なくとも約75%を有するものとして定義され、これは、化学発光、電気化学的、UV-可視光、放射化学、または蛍光アッセイによって測定することができる。バイオ燃料電池が、少なくとも7日間から約730日間、連続的に電気を発生する間、酵素は、その初期活性の少なくとも約75%を保持する。
【0041】
固定化酵素は、その触媒活性を保ちつつ、酵素固定化物質のある領域内に物理的に閉じ込められている酵素である。担体結合法、架橋法、および封入法を始めとする、様々な酵素固定化方法がある。担体結合法は、酵素を水不溶性担体に結合するものである。架橋法は、2官能性または多官能性試薬により、酵素の分子間架橋を行うものである。封入法は、酵素を、半透過性材料の格子中に組み込むものである。特定の酵素固定化方法は、酵素固定化物質が、(1)酵素を固定化し、(2)酵素を安定化し、(3)燃料流体または酸化剤に対して透過性がある限り、それほど重要ではない。
【0042】
酵素固定化物質の燃料流体または酸化剤に対する透過性および酵素の固定化に関して、一実施形態では、該材料は、酵素より小さな化合物に対して透過性があるものである。換言すれば、酵素固定化物質は、燃料流体または酸化剤化合物がそこを通り抜ける動きを可能にし、そのため、該化合物は酵素に接触することができる。酵素固定化物質は、酵素固定化物質を通り抜ける化合物の動きを可能にするが、酵素固定化物質内の実質的に同じ空間に酵素を拘束する、内部孔、チャネル、開放部、またはこれらの組み合わせを含むような方法で製造することができる。そのような拘束により、酵素はその触媒活性を保つことができる。種々の好ましい実施形態において、酵素は、該酵素と実質的に同じ寸法および形状の空間に閉じ込められ、そこで酵素は、実質的に全触媒活性を保つ。孔、チャネル、または開放部は、上記要件を満足させる物理的寸法を有し、固定化される特定の酵素の寸法および形状に依存する。
【0043】
一実施形態では、酵素は、酵素固定化物質の孔内に配置されるのが好ましく、該化合物は、移送チャネルを通って、酵素固定化物質の内および外を移動する。孔および移送チャネルの相対寸法は、酵素を固定化するのに十分な大きさであればよいが、移送チャネルが酵素に対して小さすぎれば、酵素はチャネルを通って移動することができない。さらに、移送チャネルの直径は、少なくとも約10nmであることが好ましい。さらに他の実施形態では、孔径の移送チャネル径に対する比は、少なくとも2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、8.5:1、9:1、9.5:1、10:1またはそれ以上である。さらに別の実施形態では、移送チャネルの直径が少なくとも約10nmであり、かつ孔径の移送チャネル径に対する比が、少なくとも約2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、8.5:1、9:1、9.5:1、10:1またはそれ以上であることが好ましい。
【0044】
酵素の安定化に関し、酵素固定化物質は、化学的および物理的なバリアを提供し、酵素変性を阻止または妨害する。この目的のため、酵素固定化物質は、酵素を物理的に閉じ込め、酵素が開放されるのを阻止する。酵素が囲まれた三次元構造体から開放されるプロセスは、酵素変性の一メカニズムである。一実施形態では、固定化物質は、酵素がその触媒活性を、少なくとも約7日間から約730日間保持するように、酵素を安定化するのが好ましい。触媒活性の保持は、バイオ燃料電池の一部として、電気を連続的に発生させている間、酵素がその初期活性の少なくとも約75%を保持する日数によって定義される。該酵素活性は、開始時に、特性の強度を測定する化学発光、電気化学的、UV−可視光、放射化学、または蛍光アッセイによって測定することができる。通例、蛍光アッセイが、酵素活性を測定するために使用される。溶液中の遊離酵素は、数時間から数日の間にその触媒活性を失う。したがって、酵素の固定化は、安定化に関して大きな利点を提供する。他の実施形態では、好ましくは、固定化酵素は、その初期触媒活性の少なくとも約75%を、少なくとも約5、10、15、20、25、30、45、60、75、90、105、120、150、180、210、240、270、300、330、365、400、450、500、550、600、650、700、730日間またはそれ以上保持し、少なくとも約80%、85%、90%、95%またはそれ以上の初期触媒活性を、少なくとも約5、10、15、20、25、30、45、60、75、90、105、120、150、180、210、240、270、300、330、365、400、450、500、550、600、650、700、730日間またはそれ以上保持するのが好ましい。
【0045】
いくつかの実施形態では、酵素固定化物質は、ミセル構造または逆ミセル構造を有する。一般に、ミセルを作成する分子は両親媒性であり、つまりこれらは極性親水性基および非極性疎水性基を含有する。このような分子は、凝集して、ミセルを形成することができ、そこで極性基は凝集体の表面に存在し、炭化水素である非極性基は、凝集体の内部に隔離される。逆ミセルは、極性基と非極性基との配向が逆である。凝集体を作り上げる分子は、極性基同士が極めて接近し、非極性基同士が極めて接近する限り、種々の方法で配置することができる。また、分子は、互いに向かう非極性基と互いに離れる極性基を持つ二重層を形成することができる。あるいは、層中で極性基が互いに向かうことができ、一方非極性基は互いに離れる二重層を形成することもできる。
【0046】
好ましい一実施形態では、ミセル酵素固定化物質は、変性パーフルオロスルホン酸−PTFE共重合体(または変性過フッ素化イオン交換ポリマー)(変性Nafion(登録商標または変性Flemion(登録商標))膜である。過フッ素化イオン交換ポリマー膜は、アンモニウム(NH4+)イオンより大きい疎水性カチオンで変性されている。疎水性カチオンは、(1)膜の孔径を決定し、(2)孔のpHレベルの維持を助ける化学緩衝液として作用する(両方とも酵素を安定化する)二重機能を果たす。
【0047】
疎水性カチオンの第一の機能に関して、パーフルオロスルホン酸−PTFE共重合体(または過フッ素化イオン交換ポリマー)を疎水性カチオンと混合キャストし、変性パーフルオロスルホン酸−PTFE共重合体(または変性過フッ素化イオン交換ポリマー)(Nafion(登録商標)またはFlemion(登録商標))膜を生成することにより、孔径が疎水性カチオンの寸法に依存する酵素固定化物質が提供される。したがって、疎水性カチオンが大きければ大きいほど、孔径は大きくなる。疎水性カチオンのこの機能により、孔径をより大きくまたはより小さくすることが可能になり、疎水性カチオンの寸法を変更することにより、特定の酵素に適合することになる。
【0048】
疎水性カチオンの第二の機能に関して、パーフルオロスルホン酸−PTFE共重合体(または過フッ素化イオン交換ポリマー)膜の特性は、パーフルオロスルホン酸−PTFE共重合体膜上の-SO3基(または過フッ素化イオン交換ポリマー膜上のアニオン)に対する対イオンとして、疎水性カチオンをプロトンに交換することによって変化させる。疎水性カチオンは、-SO3部位に対し、プロトンが持つより、非常に大きい親和性を持つので、対イオンにおけるこの変化により、pHに対する緩衝効果がもたらされる。膜のこの緩衝効果により、溶液のpHが変化しても、孔のpHは実質的に無変化で保たれるようになり、換言すれば、孔のpHは、溶液のpHに抵抗する。さらに、膜は機械的なバリアを提供し、これにより固定化酵素はさらに保護される。変性パーフルオロスルホン酸−PTFE共重合体(または過フッ素化イオン交換ポリマー)膜を生成するためには、第一ステップで、パーフルオロスルホン酸−PTFE共重合体(または過フッ素化イオン交換ポリマー)、特にNafion(登録商標)の懸濁液を、疎水性カチオンの溶液とキャストし、膜を形成する。次いで、過剰の疎水性カチオンおよびそれらの塩を、膜から抽出し、膜を再キャストする。再キャストで、膜は、パーフルオロスルホン酸−PTFE共重合体(または過フッ素化イオン交換ポリマー)膜の-SO3部位とともに、疎水性カチオンを含有する。過剰の塩は、孔内に捕捉され始め、あるいは膜内に空隙を形成する可能性があるので、膜から疎水性カチオンの塩を除去することにより、より安定で再生可能な膜が生成される。
【0049】
一実施形態では、変性Nafion(登録商標)膜を、第四級アンモニウム臭化物のような疎水性カチオンの塩の溶液とともに、Nafion(登録商標)ポリマーの懸濁液をキャストすることにより製造する。再キャストする前に、過剰の第四級アンモニウム臭化物または臭化水素を膜から除去し、塩が抽出された膜を形成する。膜の塩抽出により、スルホン酸交換部位では第四級アンモニウムカチオンが存在し続けるが、孔に捕捉されているあるいは平衡膜中に空隙を形成するかもしれない、過剰の塩による問題は解消される。塩が抽出された膜の化学的または物理的特性は、酵素固定化の前に、ボルタンメトリー法、イオン交換能測定、および蛍光顕微鏡法により確認される。代表的な疎水性カチオンは、アンモニウム系カチオン、第四級アンモニウムカチオン、アルキルトリメチルアンモニウムカチオン、アルキルトリエチルアンモニウムカチオン、有機カチオン、ホスホニウムカチオン、トリフェニルホスホニウム、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ヘキサデシルピリジニウム、エチジウム、ビオロゲン、メチルビオロゲン、ベンジルビオロゲン、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウム、金属複合体、ビピリジル金属複合体、フェナントロリン系金属複合体、[Ru(ビピリジン)3]2+および[Fe(フェナントロリン)3]3+である。
【0050】
好ましい一実施形態では、疎水性カチオンは、アンモニウム系カチオンである。特に、疎水性カチオンは、第四級アンモニウムカチオンである。別の実施形態では、第四級アンモニウムカチオンは、式4:
【化3】

で表される。
【0051】
式中、R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロ環であり、ここで、R1、R2、R3およびR4の少なくとも1つは、水素以外である。さらなる実施形態では、好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルまたはテトラデシルであり、ここで、R1、R2、R3およびR4の少なくとも1つは、水素以外である。さらに他の実施形態では、R1、R2、R3およびR4は同じであり、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルである。さらに別の実施形態では、好ましくは、R1、R2、R3およびR4はブチルである。好ましくは、第四級アンモニウムカチオンは、テトラプロピルアンモニウム(T3A)、テトラペンチルアンモニウム(T5A)、テトラヘキシルアンモニウム(T6A)、テトラヘプチルアンモニウム(T7A)、トリメチルイコシルアンモニウム(TMICA)、トリメチルオクチルデシルアンモニウム(TMODA)、トリメチルヘキシルデシルアンモニウム(TMHDA)、トリメチルテトラデシルアンモニウム(TMTDA)、トリメチルオクチルアンモニウム(TMOA)、トリメチルドデシルアンモニウム(TMDDA)、トリメチルデシルアンモニウム(TMDA)、トリメチルヘキシルアンモニウム(TMHA)、テトラブチルアンモニウム(TBA)、トリエチルヘキシルアンモニウム(TEHA)、およびこれらの組み合わせである。
【0052】
他の種々の実施形態で、代表的なミセルまたは逆ミセル酵素固定化物質は、疎水性変性多糖であり、これらの多糖は、キトサン、セルロース、キチン、デンプン、アミロース、アルギン酸塩およびこれらの組み合わせから選択される。種々の実施形態で、ミセルまたは逆ミセル酵素固定化物質は、ポリカチオン性ポリマー、特に疎水性変性キトサンである。キトサンは、ポリ[β-(1-4)-2-アミノ-2-デオキシ-D-グルコピラノース]である。キトサンは、通常、キチン(ポリ[β-(1-4)-2-アセトアミド-2-デオキシ-D-グルコピラノース])のアセチル化によって生成される。通常の市販のキトサンは、約85%の脱アセチル化率を有する。これらの脱アセチル化または遊離アミン基は、ヒドロカルビル、特にアルキル基を使用して、さらに官能化することができる。したがって、種々の実施形態では、ミセル状疎水性変性キトサンは、式1
【化4】

(式中、nは整数であり;R10は、独立して、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または疎水性レドックスメディエータであり;R11は、独立して、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または疎水性レドックスメディエータである。)
で示される構造に対応する。本発明のある実施形態では、nは、ポリマーに、約21,000〜約500,000、好ましくは約90,000〜約500,000、より好ましくは約150,000〜約350,000、より好ましくは約225,000〜約275,000の分子量を与える整数である。多くの実施形態で、R10は、独立して、水素またはアルキルであり、R11は、独立して、水素またはアルキルである。さらに、R10は、独立して、水素またはヘキシルであり、R11は、独立して、水素またはヘキシルである。あるいは、R10は、独立して、水素またはオクチルであり、R11は、独立して、水素またはオクチルである。
【0053】
他の種々の実施形態で、ミセル状疎水性変性キトサンは、式1A:
【化5】

(式中、nは、整数であり;R10aは、独立して、水素または疎水性レドックスメディエータであり;R11aは、独立して、水素または疎水性レドックスメディエータである。)
で示されるミセル疎水性レドックスメディエータ変性キトサンである。
【0054】
さらに、種々の実施形態で、ミセル状疎水性変性キトサンは、式1B:
【化6】

(式中、R11およびR12、およびnは、式1で規定した通りである。)
で示される変性キトサンまたはレドックスメディエータ変性キトサンである。ある実施形態では、R11およびR12は、独立して、水素、あるいは直鎖または分岐鎖アルキル、好ましくは、水素、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルである。種々の実施形態で、R11およびR12は、独立して、水素、ブチルまたはヘキシルである。
【0055】
ミセル状の疎水性変性キトサンは、疎水性基により様々な程度に変性することができる。疎水性変性の程度は、未変性キトサン中の遊離アミン基の数と比較して、疎水性基で変性されたキトサン中の遊離アミンのパーセントで決定する。疎水性変性の程度は、酸塩基滴定および/または核磁気共鳴(NMR)、特に1H NMRデータによって判定することができる。疎水性変性のこの程度は広く変えることができ、少なくとも約1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、32、24、26、28、40、42、44、46、48%、またはそれ以上である。好ましくは、疎水性変性の程度は、約10%〜約45%、約10%〜約35%、約20%〜約35%、または約30%〜約35%である。
【0056】
他の種々の実施形態で、式1Aの疎水性レドックスメディエータは、オスミウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、ロジウム、レニウムまたはコバルトと、1,10−フェナントロリン(phen)、2,2’−ビピリジン(bpy)または2,2’,2’’−テルピリジン(terpy)、メチレングリーン、メチレンブルー、ポリ(メチレングリーン)、ポリ(メチレンブルー)、ルミノール、ニトロフルオレノン誘導体、アジン、オスミウムフェナントロリンジオン、カテコール−ペンダントテルピリジン、トルエンブルー、クレシルブルー、ナイルブルー、ニュートラルレッド、フェナジン誘導体、チオニン、アズールA、アズールB、トルイジンブルーO、アセトフェノン、メタロフタロシアニン、ナイルブルーA、変性遷移金属リガンド、1,10−フェナントロリン−5,6−ジオン、1,10−フェナントロリン−5,6−ジオール、[Re(phen−ジオン(CO)3Cl]、[Re(phen−ジオン)3](PF6)2、ポリ(メタロフタロシアニン)、ポリ(チオニン)、キノン、ジイミン、ジアミノベンゼン、ジアミノピリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、トルイジンブルー、ブリリアントクレシルブルー、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アズールI)、ポリ(ナイルブルーA)、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシピロール)、ポリ(イソチアナフテン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(ジフルオロアセチレン)、ポリ(4−ジシアノメチレン−4H−シクロペンタ[2,1-b;3,4-b’]ジチオフェン)、ポリ(3-(4−フルオロフェニル)チオフェン)、ポリ(ニュートラルレッド)、またはこれらの組み合わせとの遷移金属複合体である。
【0057】
好ましくは、疎水性レドックスメディエータは、Ru(phen)3+2、Fe(phen)3+2、Os(phen)3+2、Co(phen)3+2、Cr(phen)3+2、Ru(bpy)3+2、Os(bpy)3+2、Fe(bpy)3+2、Co(bpy)3+2、Cr(bpy)3+2、Os(terpy)3+2、Ru(bpy)2(4−メチル−4’−(6−ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2、Co(bpy)2(4−メチル−4’−(6−ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2、Cr(bpy)2(4−メチル−4’−(6−ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2、Fe(bpy)2(4−メチル−4’−(6−ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2、Os(bpy)2(4−メチル−4’−(6−ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2、またはこれらの組み合わせである。より好ましくは、疎水性レドックスメディエータは、Ru(bpy)2(4−メチル−4’−(6−ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2、Co(bpy)2(4−メチル−4’−(6−ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2、Cr(bpy)2(4−メチル−4’−(6−ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2、Fe(bpy)2(4−メチル−4’−(6−ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2、Os(bpy)2(4−メチル−4’−(6−ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2、またはこれらの組み合わせである。種々の好ましい実施形態で、疎水性レドックスメディエータは、Ru(bpy)2(4−メチル−4’−(6−ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2である。
【0058】
変性剤として疎水性レドックスメディエータを有する固定化物質に関し、疎水性レドックスメディエータは、通常、キトサンまたは多糖骨格に共有結合する。キトサンの場合、通常、疎水性レドックスメディエータは、-N-C-結合を介して、キトサンのアミン官能基の1つに共有結合する。金属複合体レドックスメディエータの場合、金属複合体は、キトサンアミン基から金属複合体の1以上のリガンドに結合するアルキル基へ、-N-C-結合を介して、キトサンに結合する。式1Cに対応する構造は、キトサンに結合する金属複合体の一例である。
【化7】

【化8】

(式中、nは整数であり、R10cは、独立して、水素または式1Dで示される構造であり、R11cは、独立して、水素または式1Dで示される構造であり、mは、0〜10の整数であり、Mは、Ru、Os、Fe、CrまたはCoである。)
【0059】
キトサンを変性するために使用される疎水性基は、(1)固定化物質の孔径を決定し、(2)許容される孔環境を維持するためにキトサンの電子環境を変性する(両方とも酵素を安定化する)二重機能を果たす。疎水性基の第一の機能に関して、キトサンを疎水性的に変性することで、孔径が疎水性基の寸法に依存する酵素固定化物質を生成する。したがって、疎水性基を有するキトサンの寸法、形状および変性の程度が、孔の寸法および形状に影響を与える。疎水性基のこの機能により、孔径をより大きくまたはより小さく、あるいは異なる形状にすることが可能になり、疎水性基の寸法および分岐状態を変更することにより、特定の酵素に適合することになる。
【0060】
疎水性カチオンの第二の機能に関し、疎水性変性キトサン膜の特性を、疎水性基を用いキトサンを変性することによって変化させる。キトサンのこの疎水性変性は、プロトンに対し、利用可能な交換部位の数を増やすことによって、孔環境に影響を与える。材料のpHに影響することに加えて、キトサンの疎水性変性は、機械的なバリアである膜を提供し、これにより固定化酵素はさらに保護される。
【0061】
表1に、疎水性変性キトサン膜について、プロトンに対し利用可能な交換部位の数を示す。
【表1】

さらに、このようなポリカチオン性ポリマーは、酵素を固体化し、緩衝液中の同じ酵素の活性と比較して、該ポリマーに固定化された酵素の活性を増加させることができる。種々の実施形態において、ポリカチオン性ポリマーは、疎水性変性多糖であり、特に疎水性変性キトサンが好ましい。たとえば、記載した疎水性変性に関し、グルコースオキシダーゼの酵素活性を、実施例5の手順を使用して測定した。最高酵素活性は、t-アミルアルコールに懸濁させたヘキシル変性キトサン中のグルコースオキシダーゼで観察された。これらの固定化膜は、緩衝液中の酵素の2.53倍のグルコースオキシダーゼ酵素活性増加を示した。表2に、種々の疎水性変性キトサンに関するグルコースオキシダーゼ活性を列挙する。
【表2】

【0062】
変性剤としてアルキル基を有する本発明の疎水性変性キトサンを生成するため、キトサンゲルを酢酸に懸濁し、次いでアルコール溶媒を加えた。このキトサンゲルにアルデヒド(たとえば、ブタナール、オクタナールまたはデカナール)を加え、次いでシアノボロヒドリドナトリウムを加えた。得られた生成物を真空ろ過で分離し、アルコール溶剤で洗浄した。次いで、変性キトサンを真空オーブン中、40℃で乾燥し、フレーク状白色固体を得た。
【0063】
変性剤としてレドックスメディエータを有する本発明の疎水性変性キトサンを生成するため、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジンをリチウムジイソプロピルアミンに接触させることによって、レドックスメディエータリガンドを誘導体化し、次いでジハロアルカンを加え、4−メチル−4’−(6−ハロアルキル)−2,2’−ビピリジンを生成した。次いで、このリガンドを、無機塩基の存在下、Ru(ビピリジン)2Cl2水和物に接触させ、Ru(ビピリジン)2Cl2がなくなるまで、水−アルコール混合物中で還流した。次いで、生成物を、アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、あるいは場合によってはナトリウムまたはカリウム過塩素酸塩で析出させ、次いで再結晶化した。次いで、誘導体化されたレドックスメディエータ(Ru(ビピリジン)2(4−メチル−4’−(6−ブロモヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2)を、脱アセチル化キトサンに接触させ、加熱した。次いで、レドックスメディエータ変性キトサンを析出させ、再結晶化した。
【0064】
疎水性変性キトサン膜には、エタノールに不溶解性であるという利点がある。たとえば、前記キトサン酵素固定化物質は、一般に、最高約99wt%または99容量%を超えるエタノールを含む溶液中で、酵素を固定化し安定化するよう作用する。種々の実施形態で、キトサン固定化物質は、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95wt%または容量%、あるいはこれ以上のエタノールを含む溶液中で作用する。
【0065】
他の実施形態では、ミセルまたは逆ミセル酵素固定化物質は、ポリアニオン性ポリマー、たとえば、疎水性変性多糖、特に疎水性変性アルギン酸塩である。アルギン酸塩は、β−(1-4)−結合D−マンヌロン酸およびα−(1-4)−結合L−グルロン酸残基を含む直鎖非分岐状ポリマーである。プロトン化されていない形態でのβ−(1-4)−結合D−マンヌロン酸は、式3A:
【化9】

に対応し、プロトン化されていない形態でのα−(1-4)−結合L−グルロン酸は、式3B:
【化10】

に対応する。アルギン酸塩は、マンヌロン酸残基のポリマーブロックと、グルロン酸残基のポリマーブロックとからなる不均一重合体である。
【0066】
アルギン酸塩ポリマーは、種々の方法で変性することができる。1つの種類として、アンモニウム(NH4+)イオンより大きい疎水性カチオンで変性されたアルギン酸塩がある。疎水性カチオンは、(1)固定化物質の孔径を決定し、(2)孔のpHレベルの維持を助ける化学緩衝剤として作用する(両方とも酵素を安定化する)二重機能を果たす。疎水性カチオンの第一の機能に関して、アルギン酸塩を疎水性カチオンで変性することで、孔径が疎水性カチオンの寸法に依存する酵素固定化物質を生成する。したがって、疎水性カチオンを有するアルギン酸塩の寸法、形状および変性の程度が、孔の寸法および形状に影響する。疎水性カチオンのこの機能により、孔径をより大きくまたはより小さく、あるいは異なる形状にすることが可能になり、疎水性カチオンの寸法および分岐状態を変更することにより、特定の酵素に適合することになる。
【0067】
疎水性カチオンの第二の機能に関して、アルギン酸塩ポリマーの特性を、アルギン酸塩上の-CO2基に対する対イオンとして、疎水性カチオンをプロトンに交換することによって変化させる。疎水性カチオンは、-CO2部位に対し、プロトンが持つより、非常に大きな親和性を持つので、対イオンにおけるこの変化により、pHに緩衝効果がもたらされる。アルギン酸塩膜のこの緩衝効果により、溶液のpHが変化しても、孔のpHは実質的に無変化を保つようにし、換言すれば、孔のpHは、溶液のpHの変化に抵抗する。さらに、アルギン酸塩膜は機械的なバリアを提供し、これにより固定化酵素はさらに保護される。
【0068】
変性アルギン酸塩膜を生成するために、第一ステップで、アルギン酸塩ポリマーの懸濁液を、疎水性カチオンの溶液とキャストし、膜を形成する。次いで、過剰の疎水性カチオンおよびそれらの塩を、膜から抽出し、膜を再キャストする。再キャストで、膜は、アルギン酸塩膜の-CO2-部位とともに、疎水性カチオンを含有する。過剰の塩は、孔内に捕捉され始め、あるいは膜内に空隙を形成する可能性があるので、膜から疎水性カチオンの塩を除去することにより、より安定で再現可能な膜が生成される。
【0069】
一実施形態では、変性アルギン酸塩膜を、第四級アンモニウム臭化物のような疎水性カチオンの塩の溶液とともに、アルギン酸塩ポリマーの懸濁液をキャストすることにより製造する。再キャストする前に、過剰の第四級アンモニウム臭化物または臭化水素を膜から除去し、塩が抽出された膜を形成する。膜の塩抽出により、カルボン酸交換部位での第四級アンモニウムカチオンは存在し続けるが、孔に捕捉されている、あるいは平衡膜中に空隙を形成するかもしれない、過剰の塩による問題は解消される。代表的な疎水性カチオンとして、アンモニウム系カチオン、第四級アンモニウムカチオン、アルキルトリメチルアンモニウムカチオン、アルキルトリエチルアンモニウムカチオン、有機カチオン、ホスホニウムカチオン、トリフェニルホスホニウム、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ヘキサデシルピリジニウム、エチジウム、ビオロゲン、メチルビオロゲン、ベンジルビオロゲン、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウム、金属複合体、ビピリジル金属複合体、フェナントロリン系金属複合体、[Ru(ビピリジン)3]2+および[Fe(フェナントロリン)3]3+がある。
【0070】
好ましい一実施形態では、疎水性カチオンは、アンモニウム系カチオンである。特に、疎水性カチオンは、第四級アンモニウムカチオンである。他の実施形態では、第四級アンモニウムカチオンは、式4:
【化11】

(式中、R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロ環であって、R1、R2、R3およびR4の少なくとも1つは、水素以外である。)
で表される。さらなる実施形態では、好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルまたはテトラデシルであって、R1、R2、R3およびR4の少なくとも1つは、水素以外である。さらに他の実施形態では、R1、R2、R3およびR4は同じで、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルである。さらに別の実施形態では、好ましくは、R1、R2、R3およびR4はブチルである。好ましくは、第四級アンモニウムカチオンは、テトラプロピルアンモニウム(T3A)、テトラペンチルアンモニウム(T5A)、テトラヘキシルアンモニウム(T6A)、テトラヘプチルアンモニウム(T7A)、トリメチルイコシルアンモニウム(TMICA)、トリメチルオクチルデシルアンモニウム(TMODA)、トリメチルヘキシルデシルアンモニウム(TMHDA)、トリメチルテトラデシルアンモニウム(TMTDA)、トリメチルオクチルアンモニウム(TMOA)、トリメチルドデシルアンモニウム(TMDDA)、トリメチルデシルアンモニウム(TMDA)、トリメチルヘキシルアンモニウム(TMHA)、テトラブチルアンモニウム(TBA)、トリエチルヘキシルアンモニウム(TEHA)、およびこれらの組み合わせである。
【0071】
孔特性を検討し、一疎水性変性アルギン酸塩膜の結果を図12に示す。孔が、疎水性で、構造上ミセル状であり、外部のpH変化に対し緩衝され、高い孔相互接続性を持つので、この膜の孔構造は、酵素固定化に理想的である。
【0072】
他の実験では、超低分子量アルギン酸塩およびドデシルアミンを25%エタノール中に置き、還流し、カルボン酸基のアミド化によりドデシル変性アルギン酸塩を生成した。種々のアルキルアミンをドデシルアミンで置換して、アルギン酸塩構造の種々の数の反応性カルボン酸基に結合するC4-C16アルキル基を有するアルキル変性アルギン酸塩を生成することができる。種々の実施形態において、少なくとも約1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48%、またはそれ以上のカルボン酸基が、アルキルアミンと反応する。
【0073】
疎水性変性アルギン酸塩の膜は、エタノールに不溶性であるという利点がある。たとえば、前記アルギン酸塩酵素固定化物質は、一般に、少なくとも約25wt%または25容量%のエタノールを含む溶液中で、酵素を固定化し、安定化するように作用する。種々の実施形態で、アルギン酸塩固定化物質は、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90wt%または容量%のエタノールを含む溶液中で作用する。
【0074】
6.バイオカソードの実施形態
種々のバイオカソードを、本発明のバイオ燃料電池に組み込むことができる。たとえば、そのようなバイオカソードとして、米国特許出願第10/931,147号(米国特許公開公報第2005/0095466号)明細書に記載があり、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0075】
B.バイオアノード
一実施形態では、バイオアノードは、電子伝導体と、酵素固定化物質中に固定化された酵素とを含む。他の実施形態では、バイオアノードは、場合によってはさらに、電子メディエータ用の電極触媒を含む。バイオアノードが、電子伝導体で可逆的レドックス反応を行うことができる電子メディエータと接触する場合、電極触媒は、バイオアノードに存在しなくてもよい。バイオアノードの前記成分は、互いに近接する。すなわち、これらは、適正な手段によって、物理的または化学的に連結する。成分としては、一般に、バイオカソード成分と同じであり、必要に応じて、それぞれの構成要素の組成における違いおよび機能における違いに関し、以下において説明する。
【0076】
1.電子伝導体
バイオカソードと同様に、バイオアノードの電子伝導体も、材料を介して電子を通すことができるものであれば、事実上、有機物であっても無機物であってもよい。一実施形態では、バイオアノードの電子伝導体は、炭素ペーパーである。
【0077】
2.電子メディエータ
バイオアノードの電子メディエータは、電子を受容または供与するために働き、酸化状態から還元形態に容易に変化する。電子メディエータは、固定化物質に拡散しうるおよび/または固定化物質に導入されうる化合物である。バイオカソードと同様に、電子メディエータの拡散係数が最大であることが好ましい。
【0078】
代表的な電子メディエータは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP)、ピロロキノリンキノン(PQQ)、それぞれの等価物、およびこれらの組み合わせである。他の代表的な電子メディエータは、フェナジンメトサルフェート、ジクロロフェノールインドフェノール、短鎖ユビキノン、フェリシアン化カリウム、タンパク質、金属タンパク質、ステラシアニン、およびこれらの組み合わせである。好ましい一実施形態では、バイオアノードでの電子メディエータは、NAD+である。
【0079】
電子メディエータが、それ自身で、電子伝導体でレドックス反応を行わない場合、バイオアノードは、電子伝導体で電子の放出を促進する電子メディエータ用の電極触媒を含む。あるいは、0.0V±0.5Vの標準還元電位を持つ可逆性レドックス対を、電子メディエータとして使用する。換言すれば、可逆的電気化学性を電子伝導体表面に付与する電子メディエータを使用することができる。電子メディエータは、該電子メディエータに依存する天然の酵素、該電子メディエータに依存するように変性された酵素、または該電子メディエータに依存する合成酵素と、組み合わせられる。電子伝導体表面に可逆的電気化学性を付与する電子メディエータの例として、ピロロキノリンキノン(PQQ)、フェナジンメトサルフェート、ジクロロフェノールインドフェノール、短鎖ユビキノン、およびフェリシアン化カリウムが挙げられる。本実施形態において、バイオアノードに利用される好ましい電子メディエータは、PQQである。電子伝導体表面に可逆的電気化学性を付与する電子メディエータの能力によっては、該実施形態では、レドックス反応を触媒するために、電極触媒は必ずしも必要ではない。
【0080】
バイオアノードのレドックスポリマーによる電気触媒用の基質である化合物の好ましいものとして、還元アデニンジヌクレオチド類、たとえば、NADH、FADH2およびNADPHが挙げられる。
【0081】
3.電子メディエータ用の電極触媒
一般に、電極触媒は、電子伝導体で、電子の放出を促進する物質である。換言すれば、電極触媒は、電子メディエータの還元または酸化の反応速度を向上し、それ故、電子メディエータ還元または酸化が、より低い標準還元電位で起こるうる。電極触媒は、バイオアノードで可逆的に酸化され、電子を生成し、したがって電気を発生する。電極触媒が電子に近接する場合、導電体、電極触媒および電子伝導体は、互いに電気的な接触状態となるが、必ずしも互いに物理的に接触しているわけではない。一実施形態では、電子伝導体は、電子メディエータ用の電極触媒の一部であり、あるいはそれと結合しており、あるいはそれに近接している。
【0082】
一般に、電極触媒は、アジン、導電性ポリマーポリマーまたは電気活性ポリマーである。代表的な電極触媒は、メチレングリーン、メチレンブルー、ルミノール、ニトロフルオレノン誘導体、アジン類、オスミウムフェナントロリンジオン、カテコール−ペンダントテルピリジン、トルエンブルー、クレシルブルー、ナイルブルー、ニュートラルレッド、フェナジン誘導体、チオニン、アズールA、アズールB、トルイジンブルーO、アセトフェノン、メタロフタロシアニン類、ナイルブルーA、変性遷移金属リガンド、1,10−フェナントロリン−5,6−ジオン、1,10−フェナントロリン−5,6−ジオール、[Re(phen−ジオン)(CO)3Cl]、[Re(phen−ジオン)3](PF6)2、ポリ(メタロフタロシアニン)、ポリ(チオニン)、キノン類、ジイミン類、ジアミノベンゼン類、ジアミノピリジン類、フェノチアジン、フェノキサジン、トルイジンブルー、ブリリアントクレシルブルー、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アズールI)、ポリ(ナイルブルーA)、ポリ(メチレングリーン)、ポリ(メチレンブルー)、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシピロール)、ポリ(イソチアナフテン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(ジフルオロアセチレン)、ポリ(4−ジシアノメチレン−4H−シクロペンタ[2,1-b;3,4-b’]ジチオフェン)、ポリ(3−(4−フルオロフェニル)チオフェン)、ポリ(ニュートラルレッド)、タンパク質、金属タンパク質、ステラシアニン、またはこれらの組み合わせである。好ましい一実施形態では、電子メディエータ用の電極触媒は、ポリ(メチレングリーン)である。
【0083】
4.酵素
酵素はバイオアノードで燃料流体の酸化を触媒する。酵素はバイオカソードで酸化剤も還元するので、前記I.A.1.d.でより一般的に記載されている。一般に、天然酵素、人工酵素、合成酵素、および変性された天然酵素を利用することができる。さらに、自然なまたは定方向進化によって遺伝子操作された遺伝子操作酵素を使用することもできる。換言すれば、酵素の特性を模倣する有機または無機分子を、本発明の実施形態で使用することができる。
【0084】
具体的には、バイオアノードにおける用途のための代表的な酵素は、酸化還元酵素である。好ましい一実施形態では、酸化還元酵素は、燃料(アルコール類、アンモニア化合物、炭水化物、アルデヒド類、ケトン類、炭化水素、脂肪酸など)のCH-OH基またはCH-NH基に作用する。
【0085】
別の好ましい一実施形態では、酵素は、デヒドロゲナーゼである。本実施形態における代表的な酵素として、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ホルメートデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、ラクトースデヒドロゲナーゼ、ピルベートデヒドロゲナーゼ、またはリポオキシゲナーゼが挙げられる。好ましくは、酵素は、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)である。
【0086】
エタノールを燃料として使用する場合、クレブス回路の酵素を使用することができる。たとえば、アコニターゼ、フマラーゼ、マレートデヒドロゲナーゼ、スクシネートデヒドロゲナーゼ、スクシニル−CoAシンターゼ酵素、イソシトレートデヒドロゲナーゼ、ケトグルタレートデヒドロゲナーゼ、シトレートシンターゼ酵素、およびこれらの組み合わせを、バイオアノードにおいて、使用することができる。
【0087】
好ましい実施形態では、酵素は、PQQ依存性アルコールデヒドロゲナーゼである。PQQは、PQQ依存性ADHの補酵素であり、PQQ依存性ADHに静電気的に結合し、したがって、該酵素は、膜内に留まって、バイオ燃料電池の寿命および活性を増加する。PQQ依存性アルコールデヒドロゲナーゼ酵素は、グルコノバクターから抽出される。PQQ依存性ADHを抽出する場合、それは、(1)PQQがPQQ依存性ADHに静電気的に結合している形態、および(2)PQQがPQQ依存性ADHに静電的に結合していない形態の2つの形態で存在しうる。PQQがPQQ依存性ADHに静電的に結合していない第二の形態の場合、バイオアノードを組み立てる際、PQQをADHに加える。好ましい実施形態では、PQQ依存性ADHは、PQQ静電気結合を有するグルコノバクターから抽出される。
【0088】
5.酵素固定化物質
先に記載したように、酵素固定化物質は、バイオ燃料電池において、バイオアノードおよび/またはバイオカソードで利用される。酵素固定化物質の組成および固定化のメカニズムに関するより詳細な説明は、前記I.A.5.に見出すことができる。一実施形態では、バイオアノードの酵素固定化物質は、燃料流体に対して透過性であり、酵素を固定化し、安定化する。固定化物質は、燃料流体に対して透過性であり、したがって、バイオアノードでの燃料流体の酸化を、固定化酵素によって触媒することができる。好ましくは、酵素固定化物質は、疎水性変性多糖、特に疎水性変性キトサンまたは疎水性変性アルギン酸塩である。
【0089】
6.バイオアノードの実施形態
さらなる実施形態では、電子メディエータは、酵素に物理的に結合することができる。物理的な結合には、電子メディエータと酵素との間の共有またはイオン結合があり得る。さらに別の実施形態では、電子メディエータが、電子伝導体において、可逆的電気化学性である場合、電子メディエータは、酵素に物理的に結合することができ、該電子メディエータは、電子伝導体にも物理的に結合することができる。
【0090】
さらに別の実施形態では、電子メディエータは、固定化物質に固定化される。好ましい実施形態では、電子メディエータは、疎水性変性キトサンまたは疎水性変性アルギン酸塩膜に固定化された酸化NAD+である。この実施形態では、燃料流体を電池に加えた後、NAD+はNADHに還元され、NADHは、疎水性変性キトサン膜を通りまたは疎水性変性アルギン酸塩膜を通って、拡散することができる。
【0091】
本発明のバイオカソードを含むバイオ燃料電池の製造および使用において有用なバイオアノードを製造し、使用する方法は当該分野において既知である。好ましいバイオアノードは、米国特許出願第10/617,452号(米国特許公開公報第2004/0101741号)明細書に記載されており、該文献は、その全体を参照によって本明細書に組み込まれる。他の可能性のある有用なバイオアノードは、米国特許第6,531,239号および第6,294,281号明細書に記載されており、これらも、参照によって本明細書に組み入れられる。
C.燃料流体および酸化剤
【0092】
バイオアノードで酸化されて電子を生成することができる燃料流体、およびバイオカソードで還元されて水を生成することができる酸化剤は、本発明のバイオ燃料電池の成分である。
【0093】
バイオアノード用の燃料流体は、電子メディエータおよび固定化酵素の酸化反応において消費される。燃料流体の分子の寸法は十分小さく、したがって、酵素固定化物質内での拡散係数は大きい。代表的な燃料流体は、水素、アンモニア、アルコール類(たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、ブタノール、およびイソプロパノール)、アリルアルコール類、アリールアルコール類、グリセロール、プロパンジオール、マンニトール、グルクロネート、アルデヒド、炭水化物(たとえば、グルコース、グルコース−1、D−グルコース、L−グルコース、グルコース−6−ホスフェート、ラクテート、ラクテート−6−ホスフェート、D−ラクテート、L−ラクテート、フルクトース、ガラクトース−1、ガラクトース、アルドース、ソルボース、およびマンノース)、グリセレート、補酵素A、アセチルCo−A、マレート、イソシトレート、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセテート、シトレート、L−グルコネート、β−ヒドロキシステロイド、α−ヒドロキシステロイド、ラクトアルデヒド、テストステロン、グルコネート、脂肪酸、脂質、ホスホグリセレート、レチナール、エストラジオール、シクロペンタノール、ヘキサデカノール、長鎖アルコール類、コニフェリルアルコール、シンナミルアルコール、ホルメート、長鎖アルデヒド類、ピルベート、ブタナール、アシル−CoA、ステロイド類、アミノ酸類、フラビン、NADH、NADH2、NADPH、NADPH2、炭化水素、アミン類、およびこれらの組み合わせがある。好ましい実施形態では、燃料流体はアルコールであり、より好ましくはメタノールおよび/またはエタノールであり、最も好ましくはエタノールである。
【0094】
バイオカソード用の酸化剤は、バイオアノードによって供給される電子を使用する、電子メディエータおよび固定化酵素の還元反応において消費される。酸化剤の分子寸法は、十分に小さく、したがって、酵素固定化物質での拡散係数は大きい。当該分野で既知の酸化剤源を供給する種々の方法を利用することができる。
【0095】
好ましい実施形態で、酸化剤は気体状酸素で、これは、拡散によって、バイオカソードに移送される。他の好ましい実施形態では、酸化剤は過酸化物である。
【0096】
該実施形態のバイオ燃料電池は、(i)前記バイオアノードと、(ii))前記バイオカソードと、(iii)前記バイオアノードおよびバイオカソードと、(iv)前記バイオアノードおよび米国特許出願第10/931,147号(米国特許公開公報第2005/0095466号)に記載のバイオカソードと、(v)米国特許出願第10/617,452号(米国特許公開公報第2004/0101741号)に記載のバイオアノードおよび前記バイオカソードと、を含むことができる。
【0097】
本発明のバイオ燃料電池は、カソード区画からアノード区画を分離するために、ポリマー電解質膜(「PEM」または塩橋、たとえば、Nafion(登録商標)117)を含んでもよい。しかし、バイオアノードおよびバイオカソードを有する実施形態に関しては、PEMは、必ずしも必要ではなく、膜のないバイオ燃料電池が製造される。酸化剤反応または燃料流体反応の触媒反応用のバイオアノードおよびバイオカソードにおいて使用される酵素の優先的な選択性は、カソード区画からのアノード区画の物理的な分離を不必要にする。
【0098】
II.微小流体バイオ燃料電池
本発明の種々の態様のうち、微小流体バイオ燃料電池は、燃料流体を利用し、中に固定化酵素を有するマイクロ成型された微小電極で行われる酵素媒介レドックス反応を介して、電気を発生する。標準的なバイオ燃料電池のように、バイオアノードが、電子の並行放出を伴う、燃料流体の酸化反応のための部位である。電子は、バイオアノードから電気コネクタを通り、ある電力消費デバイスに向かう。電子は、該デバイスを経て、他方の電気コネクタへ移動し、これが、電子を、バイオ燃料電池のバイオカソードへ移送し、ここで、電子が使用され、酸化剤を還元し、水を生成する。このように、本発明のバイオ燃料電池は、その外部にある電気的負荷のためのエネルギー源(電源)として作用する。燃料流体のレドックス反応を促進するために、微小電極は、電子伝導体と、電子メディエータと、電子メディエータ用の電極触媒と、酵素と、酵素固定化物質とを含む。
【0099】
しかし、標準的なバイオ燃料電池とは違い、本発明のバイオ燃料電池は、少なくとも1種のマイクロ成型された電極を利用する。一実施形態では、マイクロ成型された電極は、燃料を微小電極内部に流れさせる構造体を通る流れを有する。従来のバイオ燃料電池の電極と比較すると、この構造体は、燃料と接触する微小電極の表面積がより広いので、高電流密度を得る。他の実施形態では、マイクロ成型された電極は、不規則な微細形状を持つ。再び、燃料に接触する表面積がより広いため、該微小電極の電流密度は、従来のバイオ燃料電池の電極より大きい。これらの特徴が、本明細書で開示した他の特徴と組み合わされ、寸法的にはより小さなソースから、燃料電池を超える増加された電流密度を有するバイオ燃料電池を作り出す。最後に、本発明の方法を有効に使用して、使い捨て燃料電池を経済的に製造することができる。
【0100】
A.微小流体のチャネル
バイオアノードおよび/またはバイオカソードのほかに、微小流体バイオ燃料電池は、稼働中のバイオアノードおよび/またはバイオカソード、燃料流体、および酸化剤を収める少なくとも1種の微小流体のチャネルに特徴がある。微小流体チャネルの形状は、用途に応じて変化しうる。一実施形態では、微小流体のチャネルは、その中に収められたバイオ燃料電池のバイオアノードおよび/またはバイオカソードを有する簡単な長方形のチャンバーでもよい。図5を参照のこと。他の実施形態では、微小流体のチャネルの外形状は、たとえば、バイオアノード溶液およびバイオカソード溶液が互いに物理的に接触しないことを確保するために、任意の所望の目的のためにより精巧に作られる可能性がある。図6を参照のこと。
【0101】
図5および6を参照して、燃料流体および/または酸化剤は、微小流体のチャネルの一端(入口)(33)から、微小流体のチャネル(34)を通り、微小電極の上または中を通り、反対側の端(出口)(35)へ流れる。図6では、バイオアノードは(41)で表され、バイオカソードは(40)で表される。微小流体のチャネルは、微小電極上の燃料流体および/または酸化剤が微小流体のチャネル(34)の外側に漏れないようにしながら、それらの対流を促進すべきである。
【0102】
B.電気コネクタ
電気コネクタは、微小電極から、微小流体バイオ燃料電池の外部の電気的負荷への電気的接触を提供する。最も一般的な意味では、電気コネクタは、バイオアノードから電気的負荷へ、およびバイオカソードへもどる電子の移動を促進する、任意の材料および構造であってもよい。好ましい一実施形態では、微小流体バイオ燃料電池の電気コネクタは、他のデバイスが物理的および電気的接触ができるようにするアタッチメントリードを提供する。次いで、他のデバイス、たとえば銅線が、外部の電気的負荷に、および該負荷から電子を移送する。
【0103】
好ましい一実施形態では、電気コネクタは、他の加工の前に微小流体のバイオ燃料電池の基体に形成される、薄膜コネクタである。本実施形態では、続いて形成される微小電極は、それぞれの電気コネクタと交差するように配置される。別の実施形態では、電気コネクタは、それらの加工の後微小電極に連結される伝導性材料の円筒体である。
【0104】
III.微小流体バイオ燃料電池の製造
本発明による微小流体バイオ燃料電池の製造では、基体は、その上にバイオ燃料電池の構成部品が組み立てられる基体が使用される。好ましい実施形態では、第一ステップで、電気コネクタを形成し、次いで微小電極の製造を行い、場合によっては、バイオ燃料チャンバーを設けるステップもある。別の実施形態では、電気コネクタを、他の要素の後に形成する。
【0105】
A.電気コネクタの製造
本発明の微小流体バイオ燃料電池は、その上に残りの部品を形成する基体を配置することによって形成される。基体は、導電性でなく、微小電極の導電性材料を不活性化せず、導電性材料が加工によって接着し、モールドが可逆的に密封される、任意の材料で作成することができる。一実施形態では、基体はガラスである。好ましい実施形態では、基体はポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)である。他の好ましい実施形態では、基体は、ポリカーボネートである。一実施形態では、基体は平板である。別の実施形態では、基体は、特定の用途に有効に適合する幾何学的形状を有しうる。
【0106】
好ましい実施形態では、基体上に形成される第一のバイオ燃料電池要素は、電気コネクタであり、これは、外部の電気的負荷を微小電極に連結する手段を提供する、完成されたバイオ燃料電池において、微小電極と電気的に接続した状態になる。コネクタは、導電性のあるいかなる材料でも作成することができる。代表的な材料として、白金、パラジウム、金、これら貴金属の合金、炭素、ニッケル、銅およびステンレス鋼が挙げられる。好ましい実施形態では、コネクタは、白金で作られている。
【0107】
コネクタは、シリコンウェハ業界で公知の従来のフォトリソグラフ技術を用いて、基体に形成することができる。たとえば、薄層白金電気コネクタを形成するために、先ず、チタン接着層を基体にスパッタリングする。この後、チタン層上に白金の層をスパッタリングする。両スパッタリング加工は、たとえば、アルゴン−イオンスパッタリング装置で行うことができる。次いで、コネクタをフォトリソグラフにより設け、所望のコネクタ取り付け位置を保護するために、白金層にフォトレジストを塗布する。市販のエッチング剤で2つの層を化学エッチングし、次いでフォトレジストを剥ぎ取り、完成した白金電気コネクタを得る。別の実施形態では、電気コネクタは、最後に形成される要素である。この実施形態は、下記III.B.6.で詳細に説明する。
【0108】
B.微小電極の製造
バイオ燃料電池の基体上に電気コネクタを形成した後、次のステップは、バイオアノードおよびバイオカソードの製造である。これらは、続けてまたは同時に形成することができる。
【0109】
1.バイオアノード製造
一実施形態では、バイオアノードおよびバイオカソードを、連続して基体上に形成するが、形成の順番は重要でない。説明の目的のためだけに、先ず、バイオアノードの製造について詳細に説明する。マイクロスケールのバイオアノード製造の第一ステップは、鋳型の表面にマイクロチャネルのパターンを作成することである。一般に、鋳型は、導電性でなく、導電材料を不活性化することなく、基体に可逆的に密封されうる任意の材料で製造することができ、代表的な材料として、ケイ素、ガラス、およびポリマーが挙げられる。鋳型は、ポリマーで作られていることが好ましく、より好ましくはPDMS製、最も好ましくはポリカーボネート製である。
【0110】
鋳型がポリマーである場合の好ましい実施形態では、パターンは、公知のリソグラフ技術を使用して、鋳型にマイクロチャネルを作り、バイオアノードの形状と寸法とを規定することにより形成する。ソフトリソグラフ技術は、一般に、所望のデザインの浮き出しイメージを持つ、リソグラフ的に規定されたマスターに対して、プロポリマーを成型する方法に従う。使用されるソフトリソグラフ技術は、鋳型に、約1μm〜約1mm、約1μm〜約200μ、好ましくは約10μm〜約200μm、より好ましくは約10μm〜約100μm、最も好ましくは約10μmまたはそれ以下のマイクロチャネルを得ることができなければならない。代表的なソフトリソグラフ技術として、近接場位相シフトリソグラフ、レプリカモールディング、マイクロトランスファーモールディング(μTM)、溶媒アシストマイクロコンタクト(SAMIM)、およびマイクロコンタクト印刷(μCP)が挙げられる。好ましくは、マイクロチャネルは、レプリカモールディングを使用して形成される。
【0111】
鋳型にマイクロチャネルを形成した後、鋳型のパターン化した側を基体に接着させ、微小電極のモールドを完成させる。図7(a)参照。電気コネクタ(31)があらかじめ基体に形成されている実施形態では、完成した微小電極がコネクタと電気的な接触状態となるように、マイクロチャネルを、電気コネクタ上に配置すべきである。さらに、チューブコネクタ(30)を、基体に接着し、後に入口貯蔵部となる位置を保持する。
【0112】
次に、図7(b)を参照して、電子伝導体溶液を、鋳型中のマイクロチャネルの一端に作られた入口貯蔵部(32)を通して、鋳型のマイクロチャネルに流し入れる。この入口貯蔵部(32)は、金属鋳造の従来技術における湯だまりに類似するものである。過剰の溶液は、入口貯蔵部の反対側のマイクロチャネルの一端に位置する通気孔において、マイクロチャネルから出る。
【0113】
電子伝導体溶液は、電子伝導体ソースと液体担体とを含み、硬化によって除去され固体微小電極を得ることができるいかなる溶液であってもよい。数多くの可能性のある電子伝導体材料は、前記I.A.1に列挙されている。好ましい一実施形態では、電子伝導体ソースは、炭素源である。より好ましい実施形態では、電子伝導体ソースは、炭素系インクである。そのような実施形態に1つでは、液体担体は、炭素系インクシンナー、たとえば、Ercon N160 Solvent Thinner である。本発明によれば、溶液中の液体担体の特性に依って、2種の微小電極構造体、すなわち固体微小電極またはフロースルー微小電極を形成することができる。より低い粘度の液体担体については、固体微小電極が製造される。これらの微小電極は、実質的に連続していて、固体状であり、使用中は、燃料流体がそのような微小電極上を流れる。より高い粘度の液体担体については、微小電極を通る流れは、燃料流体を、そこを通って流れさせ、燃料流体に接触する微小電極の表面積を効率的に増やす構造によって作り出される。
【0114】
特定の構造にかかわらず、本発明にしたがって形成された微小電極には、必然的に平坦な微細形状を有することになる、従来の方法を用いて形成した微小電極を超えるいくつかの利点がある。従来の微小電極上を流れる任意の流体は、それ自体、一般に、規則的なフローパターンを持ち、微小電極表面積の一般的に規定された量と接触する。この平面的な幾何表面積は、平板微小電極の上面と側面との長方形表面積を合計することによって計算される。現在の微小電極の生産は、燃料流体と接触する表面積によって、大きい部分が決定されるので、平板微小電極の現在の生産性は、その寸法を大きくすることによってしか、増やすことができない。それにひきかえ、本発明に従って形成される微小電極は、高度に不規則な三次元微細形状を有し、これにより、少なくとも2つの利点を得る。第一は、本発明の微小電極の有効表面積が、平板スクリーン印刷微小電極に比較して、実質的に増えていることである。本明細書で記載する微小電極の有効表面積とは、微小電極の微細形状を描く個々の山と谷の表面積の合計である。この有効表面積を計算する1つの正確な方法は、本発明に従って形成された微小電極の電流出力を、同じ長さ、幅、高さの寸法の平板微小電極を比較することである。たとえば、微小電極のそのような分析では、従来のガラス炭素電極が2.06×10−4A/cmの電力出力であるのに比べ、本発明の微小電極は、9.85×10-4A/cm2の電力出力を示す。さらに、微小電極の不規則な微細形状により、流体の乱流を作り出すことができる。そのような流れのパターンは、微小電極上で流体の混合を引き起こし、これは次いで、微小電極への流体の移送速度を増加するので、有利である。流体の移送速度の増加により、微小電極内で起こる反応が促進され、これによって、微小電極の負荷電流容量が増加する。
【0115】
別の一実施形態では、電子伝導体を導入する前に、プライマーが鋳型のマイクロチャネルに流し込まれ、急速に乾燥される。プライマーは、電子伝導体が鋳型に半永久的に接着し始めることの防止を助ける材料であれば、いかなるものでもよい。たとえば、炭素系インクの実施形態では、所望であれば、炭素系インクシンナーをプライマーとして使用することができる。
【0116】
鋳型のマイクロチャネルを溶液で満たした後、熱を加え、電子伝導体溶液を硬化する。一般に、加熱は、液体担体を液体から除去するのに十分な温度であって、得られた微小電極が損傷しないくらい低い温度で行うべきである。好ましい一実施形態では、加熱は、約75℃で行われる。また、熱は、実質的に全ての液体担体が溶液から除去されるのに十分な時間かけるべきである。好ましい一実施形態では、熱は、少なくとも1時間かけられる。他の好ましい実施形態では、加熱は、約75℃で約1時間行われる。図7(c)を参照して、硬化プロセスにより、担体の蒸発によって、鋳型のマイクロチャネルの最初の寸法より、約20%小さい固化された微小電極(36)が得られる。
【0117】
本発明の方法では、微小電極を、電子メディエータ、所望の電子メディエータ用の電極触媒、酵素、および酵素固定化物質を、それに付与するように処理し、少なくとも4つの実施形態の1つによって、バイオアノードを形成する。第一の実施形態では、酵素を含有する酵素固定化物質を、硬化した微小電極に適用し、次いで、電子メディエータおよび所望の電極触媒を導入する。バイオアノードを形成するため、微小電極を硬化した後、鋳型を基体から取り外す。図7(c)参照。図7(d)を参照して、鋳型の代わりに、鋳型のマイクロチャネルの約2倍の幅のマイクロチャネル(34)を持つガス透過性モールドを、微小電極の上に、可逆的に封止する。該ガス透過性モールドは、導電性でなく、電子伝導体を不活性化せず、溶剤の蒸発を促進する任意の材料で作成することができる。好ましくは、シリコンポリマー、たとえばPDMSが、ガス透過性モールド材料として使用される。より好ましくは、熱可塑性樹脂、たとえばポリカーボネートが、ガス透過性モールド材料として使用される。ガス透過性モールドを適正な位置に置いた後、バイオアノード酵素を含有する酵素固定化物質を、硬化された微小電極に適用する。これは、キャスト溶液を入口貯蔵部(33)からガス透過性モールドを経て、出口部(35)へシリンジポンプで注入することによって達成される。この時点で、所望の電極触媒を含む電子メディエータ溶液を、先に記載したように、入口貯蔵部(33)および出口(35)を使用して、ガス透過性モールドのマイクロチャネル中に、流体力学的に流す。微小電極の幅の約2倍のマイクロチャネルの幅に関しては、少量の電子メディエータ溶液が基体に必然的に塗布される。しかし、これで、全微小電極が適正に塗布されることを確実にする。次いで、電子メディエータ溶液の溶剤は、ガス透過性モールドまたはモールド内の入口貯蔵部および/または出口を通って蒸発させられ、バイオアノードから離れる。電子メディエータを重合する必要がある場合は、電解重合法をこの目的のために利用することができる。電子メディエータを電解重合する必要がある場合は、本実施形態は、ほとんど望ましくない。完成したバイオアノードについては、図7(d)を参照。
【0118】
したがって、より好ましい第二の実施形態では、電子メディエータおよび所望の電極触媒を固化した微小電極に適用し、必要であれば、電子メディエータを電解重合し、次いで、酵素を含有する酵素固定化物質を、微小電極に適用する。第二の実施形態では、微小電極を硬化させた後、鋳型を基体から取り外す。鋳型の代わりに先に詳述したガス透過性モールドで、微小電極に可逆的に密閉してもよい。ここで、所望の電極触媒を含有する電子メディエータ溶液を、先に記載したように、入口貯蔵部および出口部を使用して、ガス透過性モールドのマイクロチャネル中に流体力学的に流す。再び、少量の電子メディエータ溶液が、必然的に基体に塗布されるが、これにより、微小電極全体が適正に塗布されることを確実にする。次いで、電子メディエータ溶液の溶剤は、ガス透過性モールドを通って蒸発させられ、電子メディエータが塗布された微小電極から離れる。電子メディエータを重合する必要がある場合、電解重合法を、この目的のために利用することができる。次に、バイオアノード酵素を含有する酵素固定化物質を適用し、バイオアノードを形成する。これは、酵素固定化物質およびバイオアノード酵素をを含有する溶液を、入口貯蔵部から、ガス透過性モールド中にジリンジポンプで注入することにより達成される。
【0119】
さらに好ましい第三の実施形態では、電子メディエータおよび所望の電極触媒を、鋳型に注入する前に、電子伝導体溶液に導入し、硬化した後、酵素を含有する酵素固定化物質を、硬化微小電極に適用する。第三実施形態では、電子メディエータおよび所望の電極触媒を、鋳型のマイクロチャネルに導入する前に、電子伝導体溶液に懸濁する。次いで、前記III.Aに詳細に記載したように、変性電子伝導体溶液を、鋳型のマイクロチャネル中に流し入れ、硬化させる。この実施形態では、バイオアノードの導電性が有効に促進され、加工ステップを除くことにより扱いやすさが増し、電子メディエータ移送効率が向上される。また、この実施形態では、個々の電子メディエータの選択特性を持ち、一方、ガス拡散型アノードの移送効果も有する高導電性複合バイオアノードも得られる。必要であれば、電子メディエータの電解重合は、この時に行うことができる。その後、バイオアノード酵素を含有する酵素固定化物質を、変性微小電極に適用し、バイオアノードを形成する。これは、酵素固定化物質およびバイオアノード酵素を含有する溶液を、入口貯蔵部から、ガス透過性モールド中にシリンジポンプで注入することにより、達成される。
【0120】
最も好ましい第四の実施形態では、鋳型に注入する前に、電子メディエータ、所望の電極触媒、および酵素を含有する酵素固定化物質を全て電子伝導体溶液中で組み合わせ、硬化時、完全な本発明によるバイオアノードを製造する。第四の最も好ましい実施形態では、電子メディエータ、所望の電極触媒、および酵素を含有する酵素固定化物質は、全て、電子伝導体溶液中で組み合わされる。次いで、先に詳述したように、溶液を鋳型に導入する。変性溶液を硬化することにより、本発明による完全なバイオアノードが形成される。この実施形態は、他の実施形態で要求される過剰のステップおよびモールドを減少させる、最も簡単なバイオアノード形成技術を表す。
【0121】
全ての実施形態において、酵素固定化物質、酵素、電子メディエータ、および所望の電極触媒の具体的な組成は、前記I.B.2.〜I.B.4で詳細に述べられている。バイオアノード用の好ましい酵素固定化物質は、疎水性変性多糖、特に疎水性変性キトサンまたは疎水性変性アルギン酸塩である。アノードでの好ましい酵素は、アルコールデヒドロゲナーゼである。電子メディエータ/電極触媒の組み合わせを使用する場合、それらは、それぞれ、NAD+およびポリ(メチレングリーン)が好ましい。可逆的電気化学性を提供する電子メディエータを使用する場合、好ましい電子メディエータはPQQである。また、鋳型には、全ての実施形態において、複数のマイクロチャネルを含むことができる。
2.バイオカソードの製造
【0122】
本発明に従ってバイオカソードを形成するには、バイオアノードの製造で採用されたのと同じ一般的加工ステップを、バイオカソードを製造するために使用することができる。バイオカソードを酵素固定化物質、酵素、電子メディエータ、および電極触媒で処理する4つの一般的実施形態は、バイオアノードに関するものと同じであるが、電極触媒を省略する選択肢は適用されない。酵素固定化物質、酵素、電子メディエータ、および電極触媒の具体的な組成は、前記I.A.2.〜I.A.5で詳細に述べられている。バイオカソード用の好ましい酵素固定化物質は、疎水性変性多糖、特に疎水性変性キトサンまたは疎水性変性アルギン酸塩である。さらに、カソードに関し、変性膜において、好ましい酵素はビリルビンオキシダーゼであり、好ましい電子メディエータはビリルビンであり、好ましい電極触媒はRu(bpy)32+である。
【0123】
C.運転可能なバイオ燃料電池の形成
本発明に従ってバイオアノードおよびバイオカソードを形成した後、場合によっては、鋳型またはガス透過性モールドを取り除く。この任意の実施形態では、バイオアノードおよびバイオカソードは、基体上に留まる。鋳型またはガス透過性モールドを取り除いた後、微小流体チャネルフォームを、バイオアノードおよびバイオカソード上に配置する。このフォームは、バイオ燃料電池の燃料流体が流れうる微小流体チャネルの少なくとも1つを作成するように、マイクロパターン化されている。フォームは、導電性でなく、導電性材料を不活性化することなく、基体に接着するものであれば、いかなる材料からでも製造することができる。好ましくは、フォームはPDMSである。より好ましくは、この上塗層はポリカーボネートである。フォームにおける微小流体チャネル(複数を含む)のマイクロパターンは、任意の公知のソフトリソグラフ技術を使用して作成することができる。一実施形態では、微小流体チャネルは、微小電極より約2〜4倍大きい。他の実施形態では、微小流体チャネルは、微小電極とほぼ同じ寸法である。フォームの微小流体チャネルが、燃料流体が微小電極と連動する電気化学電池を、事実上規定する。1つだけの微小流体チャネルがバイオアノードバイオカソード、燃料流体、および酸化剤を収容するために使用される場合、同じ微小流体チャンバー内の燃料流体および酸化剤の混合物は、それらのレドックス反応は選択的であるので、本発明の微小電極の機能を含まない。換言すれば、バイオアノードは燃料流体とだけ反応し、バイオカソードは酸化剤とだけ反応し、交差反応は起こらない。
【0124】
別の実施形態では、鋳型またはガス透過性モールドは、基体と接触したまま残り、バイオ燃料電池の微小流体チャネルを規定する役割を果たし、先に記載した微小流体チャネルフォームとして作用する。この実施形態では、燃料流体は、モールドのマイクロチャネルとバイオアノードまたはバイオカソードとの間の空間を通り進む。この実施形態では、後続の処理は、個々のバイオアノードとバイオカソード微小流体チャネルとの接続点を作成するように行わなければならない。接続点を形成するために、個々の微小流体チャンバーに連結する通路を、任意の適正な手段、たとえば、垂直方向の力をモールドの頂点にかける、または十分な材料をモールドから取り除くことによって、モールドに形成する。その後、接続点をシールし、操作中、燃料流体または酸化剤の漏出を阻止する材料によって通路を覆う。該材料は、適正なシールを作成するように、モールド材料と接合されうるものでなければならない。一実施形態では、被覆材料は、単に、モールド材料の平らな片、たとえば、PDMSまたはポリカーボネートである。
【0125】
D.任意の形成実施形態
前記III.B.1.で記載した微小電極製造技術は、バイオアノードおよびバイオカソードが連続的に形成され、これに、バイオアノードおよびバイオカソードを、マイクロチャネルを介して連結し、バイオ燃料電池を形成する方法が続く実施形態をいう。別の実施形態では、バイオアノードおよびバイオカソードを同時に形成する。この実施形態では、単一の鋳型がパターン化され、バイオアノードおよびバイオカソードの両方を形成する。あるいは、鋳型の組み合わせを使用し、個々のバイオアノードおよびバイオカソードを形成することもできる。どちらも、バイオアノードおよびバイオカソードを同時に形成した後、作動バイオ燃料電池を、前記III.B.3.で詳述したように、微小流体チャネルフォームを適用するか、あるいは鋳型を変性することによって形成する。
【0126】
前記III.A.で記載した実施形態は、他の加工ステップの前に、基体上に電気コネクタを形成することを記載する。別の実施形態では、電気コネクタは、最終加工ステップとして、微小流体バイオ燃料電池に加えられる。ここで、孔が、微小流体チャネルフォームまたは変性鋳型中に作られ、各バイオアノードおよびバイオカソードの一部を露出する。次に、各バイオアノードおよびバイオカソードの露出部分に、電気コネクタを物理的に接合する。この実施形態では、電気コネクタは、外部の電気的負荷をバイオアノードおよびバイオカソードに電気的に負荷できるものであれば、いかなる構造のいかなる物質であってもよい。好ましい一実施形態では、電気コネクタは、銅の円柱体である。さらに、電気コネクタと、バイオアノードおよびバイオカソードとの間の電気的接続を維持しうる任意の接合技術を使用することができる。好ましい一実施形態では、銀エポキシペーストを、電気コネクタと、バイオアノードおよびバイオカソードとを電気的に接合するために使用することができる。本実施形態には、これらの部品の間の導電性を増加するという利点がある。
【0127】
上記実施形態は、バイオアノードおよびバイオカソードの両方が、バイオ燃料電池のマイクロチャネル内部に収容されているバイオ燃料電池を記載している。これは好ましい実施形態であるが、本発明の別の実施形態は、バイオ燃料電池のマイクロチャネルの外部に位置されたアノードまたはカソードを含む。ここで、燃料電池は、微小流体バイオアノードまたはバイオカソードを、適切な外部アノードまたはカソードと組み合わせることによって形成される。
【0128】
E.微小流体バイオ燃料電池の用途
本発明の作動微小流体バイオ燃料電池の製造が完了した後、それは、流体燃料源および酸化剤を、それぞれバイオアノードおよびバイオカソードに利用可能な無数の用途において利用することができる。使用中、燃料流体および酸化剤は、微小流体チャネルを介して進み、バイオアノードおよびバイオカソードと接触する。そこで、前記I.で記載したレドックス反応が起こり、電流源が発生する。本発明の微小流体バイオ燃料電池は、たとえば、電子装置、市販のおもちゃ、室内医療装置、および電気自動車のような、電力供給を必要とするいかなる用途にも使用してよい。さらに、本発明の微小流体バイオ燃料電池は、生体内に移植してもよく、そこで、燃料流体は器官から誘導され、電流が生体内に移植された装置を動かすために使用される。
【0129】
さらに、本発明の複数の微小流体バイオ燃料電池を、直列電気回路でつなぎ、バイオ燃料電池のスタックを形成することもできる。図8参照。直列スタックは、1つのバイオ燃料電池のバイオアノード(41)を、他のバイオ燃料電池のバイオカソード(40)に電気的につなぎ、これを次に、所望のスタックを得るまで、他のバイオアノード(41)に連結する。燃料流体および/または酸化剤は、入口貯蔵部(33)中の微小流体チャンバーに流れ込む。スタックを形成することにより、微小流体バイオ燃料電池回路の全電圧出力は、理論的には、直列微小流体バイオ燃料電池の個々から得られる電圧出力の合計となる。そのようなスタックのより大きい全電圧出力は、個々の微小流体バイオ燃料電池が供給できる電力より高い電力を要求する、電子装置、おもちゃ、医療装置、自動車に電気を供給するのに有用である。
【0130】
IV.電気を発生する方法
本発明は、電気を発生する方法であって、(a)燃料流体をアノードで酸化し、酸化剤をカソードで還元するステップと、(b)バイオカソードで酸化剤を還元している間、電子メディエータの還元形態を酸化するステップと、(c)電極触媒を酸化するステップと、(d) 電極触媒を電子伝導体で還元するステップとを含み、電気を、前記バイオアノードおよび/または バイオカソードを含むバイオ燃料電池を使用して発生させる方法を含む。電気を発生する他の方法は、(a)燃料流体をアノードで酸化し、酸化剤をカソードで還元するステップと、(b)バイオカソードで酸化剤を還元している間、電子メディエータの還元形態を酸化するステップと、(c)電子メディエータを電子伝導体で還元するステップとを含み、電気は、前記バイオアノードおよび/またはバイオカソードを含むバイオ燃料電池を使用して発生させる。
【0131】
定義
本明細書で使用される用語「炭化水素」および「ヒドロカルビル」は、もっぱら、炭素原子および水素原子で構成される有機化合物または基を示す。これらの基として、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基が挙げられる。また、これらの基として、アルカリル、アルケナリルおよびアルキナリルのような他の脂肪族基または環状炭化水素基で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基も挙げられる。他に断らない限り、これらの基は、1〜20個の炭素原子を含むのが好ましい。
【0132】
本明細書で記載する「置換ヒドロカルビル」基は、少なくとも1種の炭素以外の原子で置換されたヒドロカルビル基であり、炭素鎖の原子が、ヘテロ原子、たとえば、窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、イオウまたはハロゲン原子で置換された基が挙げられる。これらの置換基として、ハロゲン、ヘテロ環、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステル、およびエーテルが挙げられる。
【0133】
他に断らない限り、本明細書で記載されるアルキル基は、主鎖に1〜8個の炭素原子を、および20個までの炭素炭素原子を含有する低級アルキルが好ましい。これらは、直鎖または分岐鎖、あるいは環状であってもよく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシルなどが挙げられる。
【0134】
他に断らない限り、本明細書で記載されるアルケニルは、主鎖に2〜8個の炭素原子を、および20個までの炭素原子を含有する低級アルケニルが好ましい。これらは、直鎖または分岐鎖、あるいは環状であってもよく、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
【0135】
他に断らない限り、本明細書で記載されるアルキニル基は、主鎖に2〜8個の炭素原子を、および20個までの炭素原子を含有する低級アルキニルが好ましい。これらは、直鎖または分岐鎖であってよく、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、ヘキシニルなどが挙げられる。
【0136】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「アリール」または「アリー(ar)」は、場合によっては置換された、単素環式芳香族基、好ましくは環部分に6〜12個の炭素を含有する単環式または二環式基を示し、たとえば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニル、または置換ナフチルが挙げられる。より好ましいアリールは、フェニルおよび置換フェニルである。
【0137】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「ハロゲン」または「ハロ」は、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素を言う。
【0138】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「アシル」は、有機カルボン酸の基:-COOHからヒドロキシル基を除いて形成された基を示し、たとえば、RC(O)-(式中、Rは、R1、R1O-、R1R2N-またはR1S-であり、R1は、ヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビルまたはヘテロ環であり、R2は、水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである)が挙げられる。
【0139】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「アシルオキシ」は、酸素結合(-O-)を介して結合する前記アシル基を示し、たとえば、RC(O)O-(式中、Rは、用語「アシル」に関連して定義した通りである)が挙げられる。
【0140】
用語「ヘテロ原子」は、炭素および水素以外の原子を意味する。本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「ヘテロ環」または「ヘテロ環式」は、場合によっては置換された、完全に飽和または不飽和の単環式、二環式芳香族または非芳香族基であって、少なくとも1つの環内に少なくとも1つのヘテロ原子を有し、好ましくは各環内に5または6個の原子を有する基を示す。ヘテロ環基は、環内に、1または2個の酸素原子、1または2個のイオウ原子および/または1〜4個の窒素原子を含有するのが好ましく、炭素またはヘテロ原子を介して、分子の残りと結合してもよい。代表的なヘテロ環として、ヘテロ芳香族、たとえば、フリル、チエニル、ピリジル、オキサゾリル、ピロロル、インドリル、キノリルニル、またはイソキノリニルなどが挙げられる。代表的な置換基として、以下の基、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ケト、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステル、およびエーテルの1種以上が挙げられる。
以下の実施例により、本発明を説明する。
【実施例】
【0141】
実施例1:アルキル変性キトサンの調製
中程度の分子量のキトサン(Aldrichより入手可能)(0.500g)を、15mLの1%酢酸に、すばやく攪拌して溶解した。これは粘稠なゲル状溶液となり、次いで15mLのメタノールを加えた。キトサンゲルを、約15分間攪拌し、次いで20mLのアルデヒド(ブタナール、ヘキサナール、オクタナール、またはデカナール)をキトサンゲルに加え、次いで1.25gのシアノボロヒドリドナトリウムを加えた。懸濁液が室温に冷えるまでゲルを継続して攪拌した。得られた生成物を真空ろ過によって分離し、メタノールの各150mLで3回洗浄した。次いで、変性キトサンを真空オーブン中40℃で2時間乾燥し、フレーク状白色固体を得た。ポリマーそれぞれの1wt%懸濁液が、50%酢酸、クロロホルムおよびt-アミルアルコール中に形成された。
【0142】
実施例2:Ru(ビピリジン)2(4-メチル-4’-(6-ブロモヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2変性キトサンの調製
Ru(ビピリジン)2(4-メチル-4’-(6-ブロモヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2変性キトサンの調製は、置換ビピリジン、4-メチル-4’-(6-ブロモヘキシル)-2,2’-ビピリジンの合成から始めた。置換ビピリジンを生成するため、1.69gの4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジンを含有する50mLのTHFを、9.1mmolのリチウムジイソプロピルアミンを含有する4.1mLのTHFに30分かけて滴下した。この混合物を1.5時間攪拌し、次いで0℃に冷却し、次いで所望の鎖長を有するジブロモアルカン9.2mmolを攪拌しながら滴下した。この混合物を1.5時間攪拌し、氷水で急冷し、エーテルで抽出した。残渣を酢酸エチルから3回再結晶した。4-メチル-4’-(6-ブロモヘキシル)-2,2’-ビピリジンが生成すると、1.315gのRu(bpy)2Cl2(水和物形)、0.8201gの4-メチル-4’-(6-ブロモヘキシル)-2,2’-ビピリジン、および0.76gの炭酸水素ナトリウムを、60mLの2:3メタノール-水溶液中で、Ru(bpy)2Cl2がなくなるまで還流することによって、反応させて、Ru(ビピリジン)2(4-メチル-4’-(6-ブロモヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2を形成した。Ru(bpy)2Cl2の消滅は、UV-可視光により測定した吸収データにより確認した。得られた複合物を、4mLの3Mアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(あるいはナトリウムまたはカリウム過塩素酸塩)を加えて析出させ、次いでアセトン/CH2Cl2から再結晶した。この反応手順により、77%のRu(ビピリジン)2(4-メチル-4’-(6-ブロモヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2を得た。
【0143】
生成の後、137mgのRu(ビピリジン)2(4-メチル-4’-(6-ブロモヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2を1%酢酸中の5mgの脱アセチル化キトサンとDMFの混合物(1:1, 1mL)に溶解した。この混合物を90℃で12時間加熱した。反応時間の後、アセトトリルをRu(ビピリジン)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2変性キトサン析出物に加えた。析出物を集め、1%酢酸に溶解することによって精製し、次いでメタノールで再結晶させ、減圧乾燥した。
【0144】
実施例3:疎水性変性キトサンの蛍光画像
2マイクロリットルの各ポリマー懸濁液をガラスの顕微鏡スライド(Fisher)上にキャスティングし、デシケーター内で乾燥した。0.01mMのRu(bpy)32+または0.01mMのFITCの20μLを、ポリマーキャスト上にピペットで採り、2分間浸漬させた。浸漬後、スライドを18MΩの水で濯ぎ、デシケーター内で乾燥させた。ポリマーを、Olympus BX60M エピ蛍光顕微鏡(Melville, NY)を使用して画像化した。ポリマーをビデオカメラを備えた4O×超長距離作動距離レンズ(Sony SSC-DC50A)の下で観察した。蛍光励起は水銀ランプで行った。フレーム・グラバー・カード(Integral Technologies, Indianapolis, IN)を使用して、画像を得、該画像を、Dell PC上で、SPOTソフトウェア(Diagnostic Instruments)を使用して分析した。Ru(bpy)3+2中のそれぞれの疎水性変性ポリマー電解質の蛍光撮像および蛍光造影を行い、疎水性変性の形態学的効果を測定した。図1は、Ru(bpy)3+2中の疎水性変性キトサンの代表的な蛍光顕微鏡写真である。凝集体が疎水性変性キトサン内に形成し、形態がアルキル鎖の長さによって変化するのががわかる。ブチル変性キトサンは、小さな繊維状の相互接続を有するようであり、一方、ヘキシル変性キトサンは、より小さなミセルドメインを含有する大きいドメインを有する。アルキル鎖の長さが長くなるほど、ミセルドメインの数は減るが、ドメインの寸法は大きくなる。未変性キトサンの蛍光顕微鏡写真は、明瞭なドメインを示さず、したがって、未変性キトサンについては、ミセル構造は観察されなかった。図2は、FITCに浸漬された疎水性変性キトサン膜の代表的な蛍光顕微鏡写真である。カチオン性蛍光染料でもアニオン性蛍光染料でも、同じ形態変化を観察することができる。
【0145】
実施例4:疎水性変性キトサンの電気化学測定
ガラス状炭素作用電極(直径:3mm, CH Instruments)を、0.05ミクロンアルミナのついたBuehler研磨布で磨き、18MΩの水で濯いだ。2マイクロリットルの各懸濁液を、ガラス状炭素電極表面にキャスティングし、使用するまで、真空デシケーター内で乾燥させた。サイクリックボルタンメトリーを使用して、電極表面で、ポリマー膜を通るレドックス種の流れを測定した。作用電極を、支持電解質として0.1Mの硫酸ナトリウムを含有する1.0mMのレドックス種の溶液内で、白金メッシュ対電極とともに平衡化し、飽和カロメル参照電極に対して測定した。検討したレドックス種は、カフェイン、フェリシアン化カリウム、およびRu(bpy)32+であった。データを集め、CH Instrumentsポテンシオスタットモデル810と連動するDellコンピューターで分析した。サイクリックボルタンメトリーは、0.05V/s〜0.20V/sの範囲の走査速度で操作した。全実験は3回行われ、報告された不確実性は1標準偏差に対応した。
【0146】
2つの疎水性変性ポリマー電解質のサイクリックボルタンメトリー実験を、疎水性変性のアルキル鎖の長さの関数として行った。全てのサイクリックボルタンメトリー実験は、線状のip 対 v1/2プロットを示し、これは移送-限界電気化学性(transport-limited electrochemistry)を意味する。電気化学的流れは、式2で示される濃度の関数であり、KD1/2値は、本明細書では、流れを比べる濃度依存方法として報告した。
【数1】

(式中、iはピーク電流であり、nは移動電子の数であり、Fはファラデー定数であり、Aは電極の面積であり、C*はレドックス種の濃度であり、vは走査速度であり、Kは除去率であり、Dは拡散係数である。)
図3は、変性剤のアルキル鎖の長さとポリマーが再懸濁された溶剤との関数として、疎水性変性キトサンを通るカフェインの流れに関するKD1/2値を示す。溶剤は、再キャスティング中のポリマーの膨潤度を決定する。キトサンおよびキトサン誘導体に関するほとんどの文献の研究では、再懸濁液用の溶剤として酢酸が使用されるが、クロロホルムに関するKD1/2値から、より高い平均流れが提供されることは重要である。未変性キトサンは、酢酸溶液にのみ溶解する。カフェインにおける未変性キトサンに関するKD1/2値は、5.52(±0.14)x10-3である。キトサンの疎水性変性により、カフェインの流れは減少されうるが、流れにおける顕著な増加を起こすことができないことは明らかである。
【0147】
一方、Ru(bpy)3+2のような大きい疎水性イオンの移送は、孔構造/寸法における小さな変化によって、大きく影響される可能性がある。図4に、疎水性変性キトサン膜を通るRu(bpy)3+2の移送に関するKD1/2値を示す。未変性キトサンを通るRu(bpy)3+2の移送に関するKD1/2値は、2.17(±0.33)x10-4である。全てのケースで、キトサンの疎水性変性により、Ru(bpy)3+2の移送を、t-アミルアルコールに再懸濁されたオクチル変性キトサン膜の11.1倍まで増やすことは明らかである。
【0148】
実施例5:電極の製造
2wt%の疎水性変性キトサンポリマーの溶液をt-アミルアルコールに懸濁し、グルコースオキシダーゼの溶液を加えた。この溶液をピペットで電極材料上に採った。この電極材料は、通常、炭素クロスまたは他の炭素材料であった。
【0149】
実施例6:疎水性変性キトサンのグルコースオキシダーゼ活性試験
グルコースオキシダーゼ(GOx)は、過酸化水素を並行放出しながらβ-D-グルコースのD-グルコノ-δ-ラクトンへの酸化を触媒する。これは、β-D-グルコースに対し高い特異性があり、α-D-グルコースには作用しない。パーオキシダーゼの存在下、過酸化水素が、510nmで測定される、キノンイミン染料複合物の定量的な形成を伴ったp-ヒドロキシ安息香酸および4-アミノアンチピリンを含むアッセイにおける第二反応に入る。GOx酵素の活性を、疎水性変性Nafion膜およびキトサン膜のそれぞれにおいて測定した。GOx酵素を疎水性変性キトサン膜内部に固定化し、それをプラスチックバイアルにキャスティングした後、水に対して吸収を510nmで測定した。全ての実験は3回行い、報告された不確実性は1標準偏差に相当する。
【0150】
先に記載し、表2に示したように、最も高い酵素活性は、t-アミルアルコールに懸濁されたヘキシル変性キトサンにおけるグルコースオキシダーゼに関して観察された。これらの固定化膜は、緩衝液中の酵素に対するGOx酵素活性に比べ、2.53倍の増加を示した。
【0151】
実施例7:キトサン-ブチルバイオアノード
グルコースデヒドロゲナーゼ。アノードを、1cm2のAvCarb(商標)炭素ペーパーから作った。該アノードを、0.4mMのメチレングリーン、0.1Mの硝酸ナトリウムおよび10mMのホウ酸ナトリウム中、0.05V/sの走査速度で、12スイープセグメント、-0.3V〜1.3Vのサイクリックボルタンメトリーを行うことにより、電解重合した。次いで、アノードを濯ぎ、真空デシケーター内で完全に乾燥させた。0.01gの疎水性変性キトサン(ブチル、ヘキシル、オクチルまたはデシル)を1mLのNafion(登録商標)DE520と混合し、1時間、ビーズで渦攪拌することにより、キトサン混合物を生成した。次いで40μLのキトサン/Nafion(登録商標)混合物を、20μLのグルコースデヒドロゲナーゼ(10mLのpH7.15ホスフェート緩衝液中、1mgの酵素)と1分間混合した。キトサン/酵素混合物をピペットでアノード上に採り、真空デシケーター内で完全に乾燥させた。
【0152】
燃料電池がアノード依存性となり、白金カソードが緩衝液中に沈められることにより汚染されないように、I-電池セットアップ(図13)を使用した。I-電池は、白金電極が空気吸入モードで作動するのを可能にする。図13は、この実験で使用したI-電池の概略図である。図13中、ガラスチューブ50は、燃料溶液52と、該燃料溶液に浸漬したバイオアノード51とを含む。ガラスチューブ50は、Oリング53によって、Nafion(登録商標)ポリマー電解質膜54に連結され、燃料溶液52も、Nafion(登録商標)ポリマー電解質膜54と接触する。Nafion(登録商標)ポリマー電解質膜54は、Oリング56を使用して他方のガラスチューブ58と連結じた20%白金ガス拡散電極カソード55と接触している。空気59は、20%白金ガス拡散電極カソード55と接触することができ、カソード55からポテンシオスタット57を介してバイオアノード51へ電気的に連結されている。最初に使用された燃料は1mMNAD+を含む1mMグルコースであったが、第1週後には、燃料濃度を1mMNAD+を含む100mMグルコースに増加した。ブチル-キトサンバイオアノードについての出力曲線(図9)は、先ず燃料電池を平衡化し、開路電位に達するようにすることによって得た。
【0153】
アルコールデヒドロゲナーゼ。グルコースデヒドロゲナーゼをアルコールデヒドロゲナーゼに置き換えたこと以外は、前記グルコースデヒドロゲナーゼに関する手順と同じ手順で、アルコールデヒドロゲナーゼを含むバイオアノードを製造した。ブチル-キトサンバイオアノード、白金カソードおよびpH8の1mMエタノール燃料溶液を有する単一区画電池内のバイオ燃料電池に関し、室温および室内湿度で、寿命実験を行った。白金カソードはポリマー電解質膜が塗布されていた。該実験から得られたデータを以下の表に示す。
【表3】

【0154】
実施例8:キトサン-ブチルバイオカソード
ビリルビンオキシダーゼ。0.01gの疎水性変性キトサン(ブチル、ヘキシル、オクチルまたはデシル)を、1mLのNafion(登録商標)DE520と混合し、混合用ビーズで1時間渦攪拌することにより、キトサン混合物を生成した。次いで、40μLのキトサン/Nafion(登録商標)混合物を、20μLのビリルビンオキシダーゼ(10mLのpH7.15ホスフェート緩衝液中、1mgの酵素)と1分間混合した。キトサン/酵素混合物を炭素ペーパーの1cm2片上にピペットで採り、カソードを製造し、これを真空デシケーター内で完全に乾燥させた。(1)TBA変性Nafion(登録商標)NAD+依存性アルコール デヒドロゲナーゼアノード(図10)、あるいは(2)ブチル-キトサンNAD+依存性アルコール デヒドロゲナーゼアノード(図11)のいずれかと組み合わせたブチル-キトサンビリルビンオキシダーゼカソードに関する出力曲線のデータを集めた。
【0155】
また、種々のバイオ燃料電池の作動最適温度を測定する実験を行った。最大開路電位(V)、最大電流密度(mA/cm2)および最大電力密度(mW/cm2)を、(1)TBA変性Nafion(登録商標)NAD+依存性アルコールデヒドロゲナーゼアノードおよびブチル-キトサンビリルビンオキシダーゼカソード、(2)ブチル-キトサンNAD+依存性アルコールデヒドロゲナーゼアノードおよびTBA変性Nafion(登録商標)ビリルビンオキシダーゼカソード、ならびに(3)ブチル-キトサンNAD+依存性アルコールデヒドロゲナーゼアノードおよびブチル-キトサンビリルビンオキシダーゼカソードについて、種々の温度で測定した。この温度データを以下の表に示す。
【表4】

【表5】

【表6】

【0156】
実施例9:アルキル変性アルギン酸塩の調製
第四級アンモニウムブロミドが導入されたアルギン酸塩膜を、第四級アンモニウムブロミドと、3wt%のアルギン酸塩懸濁液とを共キャスティングすることにより形成した。使用したポリマーは、超低分子量、低分子量、あるいは中分子量アルギン酸塩であった。混合物-キャスティング溶液を、第四級アンモニウムブロミドを3wt%の該懸濁液に加えることによって生成した。第四級アンモニウムブロミドの濃度がアルギン酸塩懸濁液中のカルボン酸部位の濃度を超えるように、全ての混合物-キャスティング溶液を調製した。最適化後、最も安定で再生可能な膜は、交換部位の濃度の3倍である第四級アンモニウムブロミド濃度を有することを確認した。
【0157】
1ミリリットルのキャスティング溶液を、秤量ボートに置き、乾燥させた。7.0mLの18MΩ水を秤量ボートに加え、一晩浸漬させた。水を除去し、フィルムを18MΩの水で十分に濯ぎ、乾燥した。次いで、フィルムを1.0mLのメタノールに再懸濁した。テトラプロピルアンモニウム(T3A)、テトラペンチルアンモニウム(T5A)、テトラヘキシルアンモニウム(T6A)、テトラヘプチルアンモニウム(T7A)、トリメチルイコシルアンモニウム(TMICA)、トリメチルオクチルデシルアンモニウム(TMODA)、トリメチルヘキシルデシルアンモニウム(TMHDA)、トリメチルテトラデシルアンモニウム(TMTDA)、トリメチルオクチルアンモニウム(TMOA)、トリメチルドデシルアンモニウム(TMDDA)、トリメチルデシルアンモニウム(TMDA)、トリメチルヘキシルアンモニウム(TMHA)、テトラブチルアンモニウム(TBA)、トリエチルヘキシルアンモニウム(TEHA)のアンモニウムブロミド塩を、アルギン酸塩変性剤として使用し、どれが最良のミセル構造を生成したかを調べた。ミセル構造は、酵素の効果的な固定化に重要である。
【0158】
次いで、孔特性を測定するため、各ポリマーの3滴をスライド上に置き、乾燥させた。完全に乾燥した後、それらをエタノール中の1mMのRu(bpy)+2に少なくとも3時間浸漬した。エタノールで濯いだ後、ポリマーを乾燥し、次いでミセル構造を調べるために、蛍光顕微鏡を用いて画像化した。構造の例を図12に示す。
【0159】
別の実験では、超低分子量のアルギン酸塩とドデシルアミンとを25%エタノール中に置き、還流して、カルボン酸基のアミド化により、ドデシル変性アルギン酸塩を生成した。
【0160】
実施例10:アルギン酸塩電極の製造
実施例9に記載した、疎水性アンモニウムカチオンで変性されたアルギン酸塩ポリマーの3wt%溶液を、t-アミルアルコールに懸濁し、酵素(たとえば、アルコールデヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ)の溶液を加える。この溶液をピペットで電極材料上に採る。この電極材料は、通常、炭素クロスまたは他の炭素材料である。
【0161】
実施例11:アルギン酸塩バイオ燃料電池
酵素溶液中の疎水性変性アルギン酸塩と緩衝液とを混合キャスティングし、該混合物をピペットで炭素クロス上に採ることにより、疎水性変性アルギン酸塩中にアノード固定化された酵素を有するバイオ燃料電池を製造し、このようにして、前記実施例10に記載したものと類似のバイオアノードを形成する。前記および米国特許出願第10/931,147号(米国特許公開公報第2005/0095466号)に記載されたような、疎水性変性Nafion(登録商標)膜を含むバイオカソードを使用し、バイオアノードおよびバイオカソードを有するバイオ燃料電池を形成することができる。あるいは、酵素溶液中の疎水性変性アルギン酸塩と緩衝液とを混合キャスティングし、該混合物をピペットで炭素クロス上に採ることにより、疎水性変性アルギン酸塩中にカソード固定化された酵素を有するバイオ燃料電池を製造し、このようにして、バイオカソードを形成する。前記および米国特許出願第10/617,452号(米国特許公開公報第2004/0101741号)にに記載されたような、疎水性変性Nafion(登録商標)膜を含むバイオアノードを使用し、バイオアノードおよびバイオカソードを有するバイオ燃料電池を形成することができる。他の実施形態では、先に記載したように調製された疎水性変性アルギン酸塩にカソード固定化された酵素と、先に記載したように生成された疎水性変性アルギン酸塩にアノード固定化された酵素を有するバイオアノードとを有するバイオ燃料電池を製造することができる。
【0162】
実施例12:微小流体バイオ燃料電池
1000rpm、30秒のマイクロ成型チャネル用スピンプログラムで動作するスピンコーター(Brewer Science, Rolla, MO)を使用し、4-インチシリコンウェハに、SU-8 10ネガ型フォトレジストで塗布することによって、PDMSマイクロ成型チャネル製造用マスターを作製する。流路については、1750rpm、30秒のスピンプログラムをSU-8 50ネガ型フォトレジストに関して使用する。フォトレジストを90℃で5分間前焼付けし、その後マイクロ成型チャネルまたは流路 設計構造を含むネガフィルム(Jostens, Topeka, KS)を通して、近UVフラッドソース(Autoflood 1000, Optical Associates, Milpitas, CA)を使用し、4分間UV露光を行う。透明画像を、Freehand(PCバージョン:8.0, Macromedia Inc., San Francisco, CA)で描いたコンピューターデザインから作成する。解像度2400dpiのイメージセッターを用い、プリントサービス(Jostens, Topeka, KS)によってデザインを透明画像に移す。この露光の後、ウェハを90℃で5分間後焼付けし、Nano SU-8現像液で現像した。シリコンウェハ上に残っている、過剰の未現像フォトレジストを全て除去するため、所望のデザインを含むウェハを、アセトンおよびイソプロパノールで濯いだ。フォトレジストの厚さを、表面形状測定装置(Alpha Step-200, Tencor Instruments, Mountain View, CA)を使用して測定する。これは、PDMS構造のチャネル深さに対応する。
【0163】
次いで、脱ガスした、Sylgard 184エラストマーと硬化剤との10:1混合物を、シリコンウェハ上に注ぎ、75℃で約2時間硬化する。周縁を切断し、ウェハからPDMSを折り返すことによって、PDMSをマスターウェハから剥離する。PDMSチャネルの多数のコピーを作成するために、マスターは再使用することができた。得られたPDMS流路は、幅200mm、深さ100mm、および長さ3.0cmであった。
【0164】
ソーダ石灰ガラスプレートを、地元のガラス店で購入する。このプレートは、7cm幅、10cm長さ、および1.54mm厚さであった。ガラスプレートをピラニア溶液(70%濃H2SO4/30%H2O2)中に15分間浸漬して洗浄し、有機不純物を除去する。次いで、Nanopure(18MΩ-cm)水で十分に濯ぎ、窒素で乾燥する。従来のリソグラフおよびスパッタリング方法を用い、パラジウム電極を、所定のパターンで、該ガラス上に形成した。各プレートは、電極を持つ複数の流路を保持しえた。より具体的には、これは、(接着用)チタン層およびパラジウム層をアルゴンイオンスパッタリングによって行う。これを行うため、ガラスを、金属堆積用蒸着装置(Thin Film Deposition System, Kurt J. Lesker Co.)中に置く。金属の厚さを、水晶堆積モニタ(Inficon XTM/2, Leybold Inficon)を使用してモニターする。チタンは、Tiターゲットから約2.3オングストローム/秒の速さで、200オングストロームの深さまで蒸着される。パラジウムは、Pdターゲットから約1.9オングストローム/秒の速さで、2000オングストロームの深さまで蒸着する。AZ 1518ポジ型フォトレジストを、パラジウムが被覆されたガラス上に動的に送出する。95℃、1分間の前露光焼付け、次いでポジ型フィルムを通し、9秒の紫外線露光を行う。フィルムを取り除き、ガラスを市販現像機(AZ 300MIF現像機)内に45秒間置く。水で濯ぎ、窒素で乾燥させた後、ガラスを95℃で1分間、後焼付けした。王水(8:7:1=H2O:HCl:HNO3)を用いる湿式エッチングを使用し、不要なパラジウムおよびチタンエッチング液を除き、ガラスから不要なチタンを除く。完了した時点で、ガラスをアセトンとイソプロパノールで洗浄し、残っているフォトレジストを除去し、窒素で乾燥する。
【0165】
水に浸漬した状態で、各ガラスプレートに、1-mm直径のドリルビットおよびDremel回転ツール(Dremel)で、流れ進入用孔をあける。Dremel回転ツールと付属の切断ディスクとで、ルー(leur)アダプターのシリンジコネクタ部分を取り除く。研磨ディスクで研磨した後、J.B.Weldで、ルーアダプターをガラスプレートに取り付ける。使用する前に、エポキシを、オーブン(75℃)で2時間硬化する。銅線およびコロイド状銀によってパラジウム電極に接続する。
【0166】
カーボンインク微小電極を製造するために、先ず、PDMSマイクロ成型チャネルを、十分に清浄したパラジウムリードに、(取り付けられたルー取り付け具で)接触させてガラスにシールする。最初に、PDMSチャネルを、溶剤シンナー(N-160)で下塗りする。貯蔵部の1つを真空にしてシンナーを除去する。シンナーが除去されると直ちに、市販カーボンインクと溶剤シンナーとの混合物をチャネルに加え、(水流吸引器を使用して)対向端を真空にすることにより、混合物をチャネル中に流す。インク/シンナー混合物は、加えられるシンナーの体積が、最初のインク重量の0.2%(v/w)となるようにする。チャネルをカーボンインクで満たした後、真空にした貯蔵部をインク/シンナー溶液で満たし、チップ全体を75℃のオーブンに1時間置く。この後、ガラス表面に付着した炭素微小電極を残して、PDMSをガラスから取り外すことができた。最終硬化/コンディショニングステップは、チップを分離オーブン中に12℃で1時間置くことによって行う。炭素微小電極の高さを表面形状測定装置で測定し、幅を顕微鏡で測定する。
【0167】
カーボンインク電極をさらに特性評価するために、サイクリックボルタンメトリーを採用し、CH Instruments 810 バイポテンシオスタット(Austin, TX)を使用した3-電極フォーマットにより行う。炭素微小電極は、銀/銀塩化物参照電極を持つ作用電極および補助電極としての白金線である。サイクリックボルタンメトリー実験用の静電池を、PDMS(2cm×3cm)の大きい片から小さな切片(1cmx2cm)を切断することにより、一片のPDMSを作り、次いで電極の全長が溶液に暴露されるように、このPDMS片を炭素電極上にシールする。流れ実験に関して、PDMSマイクロチャネル(約200mm幅、100mm深さ、および約2cm長さ)を炭素電極上にシールし、したがって電極全体をマイクロチャネルの内部にシールする。補助および参照電極を、電気化学電池ホルダー(CH Instruments)を使用して、出口貯蔵部内に収める。
【0168】
炭素作用電極をメチレングリーンで電解重合する。メチレングリーンは、よく知られたNADH用電極触媒である。10mMのホウ酸ナトリウム中に0.4mMのメチレングリーンと0.1Mの硝酸ナトリウムを含む溶液中、0.05V/秒の走査速度で、-0.3V〜1.3Vにおいて、7回の走査サイクルで、CH Instruments モデル 810 ポテンシオスタット(Austin, TX)を用いてサイクリックボルタンメトリーを行うことによって、ポリ(メチレングリーン)の薄膜を形成する。1片のPDMSを使用し、全炭素電極上に電気化学電池を規定する。白金線補助電極を有するカロメル参照電極により、電気化学電池を完成させた。更なる変性の前に、電極を濯ぎ、一晩乾燥させる。
【0169】
ガラスプレートに形成された流れ進入用孔により、シリンジポンプ(Pump11, Harvard Apparatus, Holliston, MA)からの流れに接触することが可能になる。シリンジを選択した溶液で満たし、シリンジポンプ中に置く。高圧取り付け具、ルーアダプター、およびTeflon PEEK チューブを使用して、シリンジをガラスマイクロチップに連結する。流れ進入用孔の一端と位置あわせされている200μm-幅のPDMS流路を通る流速は、0μL/分〜15μL/分で変化する。チャネルは電極上に直接シールされる。チャネルの他端では、ホールパンチにより、貯蔵部が形成され、そこに、カソードまたは参照および対向電極が配置される。
【0170】
カーボンインク電極は、一般に、2.5cmの長さの電極であり、55μmの幅および87μmの高さである。1mMトリス(2,2’-ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)6水和物および電解質としての0.1M硫酸ナトリウムの溶液を使用し、サイクリックボルタンメトリーを使用して、電極の応答の特性評価を行う。流速が増すにつれ電流密度が増し、これは、流速が増すにつれ、被分析物がより早く電極表面に届くことから、予測される。最初に、0.05Mホスフェート緩衝液(pH7.4)中に1.5Vの電圧を3分間印加することにより、電気化学的前処理を利用して電極を清浄化する。
【0171】
-0.3V〜1.3Vにおける14回の走査セグメントを使用して、メチレングリーンを炭素微小電極上に固定化し、同じ手順をマクロスケールの炭素電極にも使用する。市販のマイクロ取り付け具を使用して、炭素マイクロ電極上に可逆的にシールされた3cm×240mm×100mmのPDMSチャネル内を通るポンプ流速を20mL/分までにすることができる。NADHを、0.5mL/分〜15.0mL/分の種々の流速でPDMS流路中をポンプで流す。
【0172】
電子伝導体と酵素固定化物質とを含む電極を形成する方法を単純化するために、少し変更を加えて先の手順を実施する。そのために、酵素固定化物質を加えて、電子伝導体溶液を変更する。追加の物質は、疎水性変性キトサンの2wt%t-アミルアルコール溶液、または疎水性変性アルギン酸塩の3wt%アルコール溶液を加えることによって調製され、溶液はエルコンN160溶剤シンナー中に懸濁され、十分に渦撹拌する。最後に、1mLのこの変性シンナーを、0.5gのエルコンE-978(I)炭素系インクに加える。次いで、この変性電子伝導体溶液を、鋳型と基体とによって成型されたモールドキャビティに流し込み、本実施例の先に記載した方法に従って硬化させる。
【0173】
本発明に従ってバイオアノードを形成するために、本実施例中の前に記載した一般的ステップを使用し、アノードは、硬化および活性化段階の後に、追加の材料を電子伝導体上に流すことによって完成する。始めに、メチレングリーンの溶液を、電子伝導体を横切ってシリンジポンプ輸送することにによって作成する。次いで、50mV/秒の走査速度で、-0.3V〜1.3Vにおける14回の走査セグメントで、該溶液を電解重合する。次に、残りのアノード成分のキャスティング溶液を、疎水性変性キトサンの2wt%t-アミルアルコール溶液または疎水性変性アルギン酸塩の3wt%アルコール溶液、酵素溶液、および電子メディエータを、低級脂肪族アルコール中で組み合わせることによって調製する。次いで、この溶液を十分に渦撹拌し、約100mmのマイクロチャネルへ、流速約1mL/分で流し込む。次いで電子伝導体およびキャスティング溶液を一晩乾燥させる。
【0174】
バイオカソードに関して、マイクロチップおよびチャネルマスターは、フォトリソグラフを使用する本実施例中で先に記載したように製造する。マイクロ成型手順により形成されたカーボンインク微小電極は、先に記載した疎水性変性キトサン膜または疎水性変性アルギン酸塩混合物で、さらなる変性することができた。
【0175】
バイオアノードとして機能させるために、炭素微小電極を変性する。孔をPDMSにあけ、微小電極の回りに配置されたAg/AgCl参照電極と補助電極としての白金線とを含むバルク貯蔵部を形成する。具体的には、これは静電池である。0.4mMのメチレングリーンおよび0.1Mの硝酸ナトリウムの10mMホウ酸ナトリウム溶液を、PDMS貯蔵部に、ピペットで採る。サイクリックボルタンメトリーによるメチレングリーンの重合を、CH Instruments 650ポテンシオスタット(Austin, TX)を使用し、-0.3V〜1.3V、14回の走査セグメント、50mV/秒の走査速度で行う。メチレングリーン溶液を、貯蔵部からピペットで取り出し、PDMSを取り除く。次いで、ポリ(メチレングリーン)変性カーボンインク微小電極を18MΩ(Nanopure)水で濯ぎ、一晩乾燥させる。
【0176】
微小電極上に可逆的にシールされたマイクロチャネルおよび流体力学的流れを使用して、酵素/疎水性変性キトサン混合物または酵素/疎水性変性アルギン酸塩混合物を、炭素微小電極上に固定化する。この流路の寸法は、微小電極上の配列が可能であるが、電極よりかなり広くはないものである。これを完成させるために、全電極がマイクロチャネル内にシールされるように、PDMSマイクロチャネル(130mm幅、100mm深さおよび約2cm長さ)を、炭素電極(約40mm幅、約2cm長さおよび約100mm高さ)上にシールする。各20mLの疎水性変性キトサン(疎水性変性アルギン酸塩混合物)に対し1mgの電子メディエータを含む酵素と疎水性変性キトサン(または疎水性変性アルギン酸塩混合物)との2:1比の混合物を調製し、十分混合するまで一緒に渦撹拌する。シリンジポンプ(Harvard Apparatus, Brookfield, OH)を使用し、1.0mL/分で、シリンジを介して、混合物をチャネルに導入する。混合物がチャネルの全長を進むと(目視でモニターする)、溶剤を室温で蒸発させる。PDMSは気体に対して透過性であるので、これは可能である。蒸発が完了した後、PDMSを取り外し、被覆バイオアノードを残す。
【0177】
本発明に従ってバイオカソードを形成するため、本実施例に記載した一般的ステップを使用し、バイオカソードは、硬化および活性化段階の後に、追加の材料を電子伝導体に流して完成する。
【0178】
電子伝導体を変性するために、ビリルビン、ビリルビンオキシダーゼおよび疎水性変性キトサン(または疎水性変性アルギン酸塩混合物)のキャスティング溶液を、約20分間一緒に渦撹拌する。次に、溶液を、約100mmのマイクロチャネルに流速約1mL/分でポンプを用いて送り込む。次いで、電子伝導体およびキャスティング溶液を一晩乾燥させる。乾燥後、電極をRu(bpy)3+2および硫酸ナトリウムの溶液に約24時間浸漬する。
【0179】
バイオカソードを、前記バイオアノードと類似した方法で製造する。PDMSマイクロチャネルを、カーボンインク微小電極上にシールする。疎水性変性キトサン(または疎水性変性アルギン酸塩)を、電子メディエータおよびカソード酵素と混合する。次いで、混合物を、チャネルの端に届くまで、1.0mL/分でチャネルに流し込み、届いた時点で、溶剤を蒸発させる。トリス(2,2’-ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)水和物を、0.5mL/分の流速で5時間その1.0mM溶液を流すことによって、膜内で交換する。その後、PDMS流路を取り外し、バイオカソードとして使用される被覆電極を残す。
【0180】
上記のことを考慮すると、本発明の複数の目的が達成され、他の有利である結果が実現されることがわかるであろう。
【0181】
本発明の範囲を逸脱しない限り、種々の変更がなされるので、先の記載に含まれおよび添付の図面に示されるすてべの事柄は、説明のためと解釈され、限定を意味するものではない。
【0182】
ここでの請求項の範囲の他の実施形態は、明細書を考慮し、またはここで記載された発明の実施から、当業者には明らかになるであろう。実施例とともに明細書は、例示的なものとしてのみ考えられ、本発明の範囲および精神は、実施例に続く、請求項によって示されているものである。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】Ru(bpy)3+2中の代表的な疎水性変性キトサンの蛍光顕微鏡写真を示す。
【図2】FITC中に浸漬された代表的な疎水性変性キトサン膜の蛍光顕微鏡写真を示す。
【図3】変性剤のアルキル鎖長とポリマーを再懸濁した溶剤との関数として、疎水性変性キトサンを通るカフェインの流れに関するKD1/2値を示す。
【図4】疎水性変性キトサン膜を通るRu(bpy)3+2の移送に関するKD1/2値を示す。
【図5】単一官能性バイオアノードまたはバイオカソードを示す。
【図6】微小流体バイオ燃料電池を示す。
【図7(a)】〜
【図7(d)】単一微小電極を形成する手順を示す。
【図8】微小流体バイオ燃料電池のスタックを示す。
【図9】製造から種々の日数が経過した後収集されたブチル−キトサングルコースデヒドロゲナーゼバイオアノードの一連の出力曲線を示す。
【図10】媒介バイオアノード(テトラブチルアンモニウム−変性Nafion(登録商標)とNAD+依存性アルコールデヒドロゲナーゼとを含む)と、直接電子移動バイオカソード(ブチル−キトサンとビリルビンオキシダーゼとを含む)とを有するバイオ燃料電池の出力曲線を示す。
【図11】媒介バイオアノード(ブチル−キトサンとNAD+依存性アルコールデヒドロゲナーゼとを含む)と、直接電子移動バイオカソード(ブチル−キトサンとビリルビンオキシダーゼとを含む)とを有するバイオ燃料電池の出力曲線を示す。
【図12】テトラペンチルアンモニウムイオンで変性した低分子量アルギン酸塩の蛍光顕微鏡写真を示す。
【図13】空気吸入カソードを含むI電池の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)電子伝導体と、
(b)電子メディエータの酸化形態および燃料流体と反応し、燃料流体の酸化形態および電子メディエータの還元形態を生成することができるアノード酵素であって、該電子メディエータの還元形態は、電子を電子伝導体に放出することができるアノード酵素を少なくとも1種と、
(c)燃料流体および電子メディエータに対して透過性である酵素固定化物質と
を含むバイオアノードであって、
該酵素固定化物質は、疎水性変性多糖を含むバイオアノード。
【請求項2】
酵素固定化物質が、電子メディエータを含む請求項1記載のバイオアノード。
【請求項3】
(a)電子伝導体と、
(b)電子メディエータの酸化形態および燃料流体と反応し、燃料流体の酸化形態および電子メディエータの還元形態を生成することができるアノード酵素を少なくとも1種と、
(c)燃料流体および電子メディエータに対して透過性である酵素固定化物質と、
(d)電子伝導体に近接する電極触媒であって、該電極触媒の酸化形態は、電子メディエータの還元形態と反応し、電子メディエータの酸化形態および電極触媒の還元形態を生成することができ、該電極触媒の還元形態は、電子を電子伝導体に放出することができる電極触媒と
を含むバイオアノードであって、
該酵素固定化物質は、疎水性変性多糖を含むバイオアノード。
【請求項4】
酵素固定化物質が、電子メディエータ、電極触媒、または電子メディエータおよび電極触媒を含む請求項3記載のバイオアノード。
【請求項5】
(a)電子伝導体と、
(b)電子メディエータの還元形態および酸化剤と反応し、電子メディエータの酸化形態および水を生成することができるカソード酵素を少なくとも1種と、
(c)電極触媒、電子メディエータ、または電極触媒および電子メディエータを含む酵素固定化物質であって、酵素固定化物質は、酸化剤に対して透過性であり、電極触媒の酸化形態は、電子伝導体から電子を獲得して、電子メディエータの酸化形態と反応し、電子メディエータの還元形態および電極触媒の酸化形態を形成することができる電極触媒の還元形態を生成することができる酵素固定化物質と
を含むバイオカソードであって、
該酵素固定化物質は、疎水性変性多糖を含むバイオカソード。
【請求項6】
(a)電子伝導体と、
(b)電子メディエータの還元形態および酸化剤と反応し、電子メディエータの酸化形態および水を生成することができるカソード酵素を少なくとも1種と、
(c)電子メディエータを含む酵素固定化物質であって、酵素固定化物質は、酸化剤に対して透過性であり、電子メディエータの酸化形態は、電子伝導体から電子を獲得して、電子メディエータの還元形態を形成することができる酵素固定化物質と
を含むバイオカソードであって、
該酵素固定化物質は、疎水性変性多糖を含むバイオカソード。
【請求項7】
電気を発生するバイオ燃料電池であって、
燃料流体と、
電子メディエータと、
請求項1〜4のいずれかに記載のバイオアノードと、
請求項5または6に記載のバイオカソードと
を含むバイオ燃料電池。
【請求項8】
電気を発生するバイオ燃料電池であって、
燃料流体と、
電子メディエータと、
請求項1〜4のいずれかに記載のバイオアノードと、
カソードと
を含むバイオ燃料電池。
【請求項9】
電気を発生するバイオ燃料電池であって、
燃料流体と、
電子メディエータと、
アノードと、
請求項5または6に記載のバイオカソードと
を含むバイオ燃料電池。
【請求項10】
多糖が、キトサン、セルロース、キチン、デンプン、アミロース、アルギン酸塩、およびこれらの組み合わせを含む請求項1〜9のいずれかに記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項11】
疎水性変性多糖が、酵素を固定化および安定化することができる請求項1〜10のいずれかに記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項12】
疎水性変性多糖が、ミセル構造を有する請求項1〜11のいずれかに記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項13】
酵素固定化物質が、疎水性変性アルギン酸塩を含む請求項1〜12のいずれかに記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項14】
疎水性変性アルギン酸塩が、NH4+より大きい疎水性カチオンで変性されている請求項13に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項15】
疎水性カチオンが、アンモニウム系カチオン、第四級アンモニウムカチオン、アルキルトリメチルアンモニウムカチオン、有機カチオン、ホスホニウムカチオン、トリフェニルホスホニウム、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ヘキサデシルピリジニウム、エチジウム、ビオロゲン、メチルビオロゲン、ベンジルビオロゲン、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウム、金属複合体、ビピリジル金属複合体、フェナントロリン系金属複合体、[Ru(ビピリジン)3]2+または[Fe(フェナントロリン)3]3+を含む請求項14に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項16】
疎水性カチオンが、式4:
【化1】

(式中、R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロ環であり、R1、R2、R3およびR4の少なくとも1つは水素以外である。)
で表される第四級アンモニウムを含む請求項14に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項17】
R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシルであって、R1、R2、R3およびR4の少なくとも1つは水素以外である請求項16に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項18】
R1、R2、R3およびR4が同じであり、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルである請求項16に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項19】
R1、R2、R3およびR4が、ブチルである請求項16に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項20】
R1、R2、R3およびR4の1つが、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルまたはテトラデシルであり、他は、独立して、メチル、エチルまたはプロピルである請求項16に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項21】
ミセル状の疎水性変性多糖が、式1:
【化2】

(式中、nは整数であり、
R10は、独立して、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または疎水性レドックスメディエータであり、
R11は、独立して、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または疎水性レドックスメディエータである。)
に対応する請求項12に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項22】
疎水性変性多糖の分子量が、約90,000〜約500,000である請求項21に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項23】
疎水性変性多糖の分子量が、約225,000〜約275,000である請求項21に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項24】
R10は、独立して、水素またはアルキルであり、R11は、独立して、水素またはアルキルである請求項21に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項25】
R10は、独立して、水素またはヘキシルであり、R11は、独立して、水素またはヘキシルである請求項21に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項26】
R10は、独立して、水素またはオクチルであり、R11は、独立して、水素またはオクチルである請求項21に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項27】
R10は、独立して、水素または疎水性レドックスメディエータであり、R11は、独立して、水素または疎水性レドックスメディエータである請求項21に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項28】
疎水性レドックスメディエータが、オスミウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、ロジウム、レニウムまたはコバルトと、1,10-フェナントロリン(phen)、2,2’-ビピリジン(bpy)または2,2’,2’’-テルピリジン(terpy)、メチレングリーン、メチレンブルー、ポリ(メチレングリーン)、ポリ(メチレンブルー)、ルミノール、ニトロフルオレノン誘導体、アジン、オスミウムフェナントロリンジオン、カテコール−ペンダントテルピリジン、トルエンブルー、クレシルブルー、ナイルブルー、ニュートラルレッド、フェナジン誘導体、チオニン、アズールA、アズールB、トルイジンブルーO、アセトフェノン、メタロフタロシアニン、ナイルブルーA、変性遷移金属リガンド、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン、1,10-フェナントロリン−5,6−ジオール、[Re(phen-ジオン)(CO)3Cl]、[Re(phen-ジオン)3](PF6)2、ポリ(メタロフタロシアニン)、ポリ(チオニン)、キノン、ジイミン、ジアミノベンゼン、ジアミノピリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、トルイジンブルー、ブリリアントクレシルブルー、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アズールI)、ポリ(ナイルブルーA)、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシピロール)、ポリ(イソチアナフテン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(ジフルオロアセチレン)、ポリ(4−ジシアノメチレン−4H−シクロペンタ[2,1-b;3,4-b’]ジチオフェン)、ポリ(3−(4−フルオロフェニル)チオフェン)、ポリ(ニュートラルレッド)、またはこれらの組み合わせとの遷移金属複合体である請求項21または27に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項29】
疎水性レドックスメディエータが、Ru(phen)3+2、Fe(phen)3+2、Os(phen)3+2、Co(phen)3+2、Cr(phen)3+2、Ru(bpy)3+2、Os(bpy)3+2、Fe(bpy)3+2、Co(bpy)3+2、Cr(bpy)3+2、Os(terpy)3+2、Ru(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Co(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Cr(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Fe(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Os(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、またはこれらの組み合わせである請求項21または27に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項30】
疎水性レドックスメディエータが、Ru(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Co(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Cr(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Fe(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Os(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、またはこれらの組み合わせである請求項21または27に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項31】
疎水性レドックスメディエータが、Ru(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2である請求項21または27に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項32】
電子伝導体が、炭素系材料、金属導電体、半導体、金属酸化物または変性導電体を含む請求項1〜31のいずれかに記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項33】
電子伝導体が、炭素系材料を含む請求項1〜32のいずれかに記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項34】
電子伝導体が、炭素クロス、炭素ペーパー、カーボンスクリーン印刷電極、カーボンブラック、炭素粉末、炭素繊維、単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブアレイ、ダイアモンド被覆導電体、ガラスカーボン、メソ多孔性炭素、グラファイト、非圧縮グラファイトワーム、剥離精製フレーク状グラファイト、高性能グラファイト、高配向熱分解グラファイト、熱分解グラファイト、または多結晶グラファイトを含む請求項33に記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項35】
酵素が、酸化還元酵素を含む請求項1〜34のいずれかに記載のバイオアノード、バイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項36】
アノード酵素が、グルコースオキシダーゼ、アルコール系オキシダーゼまたはコレステロール系オキシダーゼを含む請求項1〜4、7、8および10〜35のいずれかに記載のバイオアノードまたはバイオ燃料電池。
【請求項37】
カソード酵素が、ラッカーゼ、シトクロームCオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼまたはパーオキシダーゼを含む請求項5、6、7および9〜36のいずれかに記載のバイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項38】
カソード酵素が、pH約6.5〜約7.5の間に最適活性がある酸素酸化還元酵素を含む請求項5、6、7および9〜36のいずれかに記載のバイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項39】
カソード酵素が、ビリルビンオキシダーゼを含む請求項5、6、7および9〜36のいずれかに記載のバイオカソードまたはバイオ燃料電池。
【請求項40】
アノード酵素が、PQQ依存性デヒドロゲナーゼを含む請求項1〜4、7、8および10〜39のいずれかに記載のバイオアノードまたはバイオ燃料電池。
【請求項41】
酸化剤が、酸素または過酸化物を含む請求項7〜40のいずれかに記載のバイオ燃料電池。
【請求項42】
酸化剤が酸素を含む請求項41に記載のバイオ燃料電池。
【請求項43】
燃料流体が、アンモニア、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、ブタノールおよびイソプロパノール、アリルアルコール類、アリールアルコール類、グリセロール、プロパンジオール、マンニトール、グルクロネート、アルデヒド、炭水化物、グルコース、グルコース−1、D−グルコース、L−グルコース、グルコース−6−ホスフェート、ラクテート、ラクテート−6−ホスフェート、D−ラクテート、L−ラクテート、フルクトース、ガラクトース−1、ガラクトース、アルドース、ソルボース、マンノース、グリセレート、補酵素A、アセチルCo-A、マレート、イソシトレート、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセテート、シトレート、L−グルコネート、β−ヒドロキシステロイド、α−ヒドロキシステロイド、ラクトアルデヒド、テストステロン、グルコネート、脂肪酸、脂質、ホスホグリセレート、レチナール、エストラジオール、シクロペンタノール、ヘキサデカノール、長鎖アルコール、コニフェリルアルコール、シンナミルアルコール、ホルメート、長鎖アルデヒド、ピルベート、ブタナール、アシル−CoA、ステロイド、アミノ酸、フラビン、NADH、NADH2、NADPH、NADPH2または水素を含む請求項7〜42のいずれかに記載のバイオ燃料電池。
【請求項44】
燃料流体が、メタノール、エタノールまたはプロパノールを含む請求項43に記載のバイオ燃料電池。
【請求項45】
燃料流体がエタノールを含む請求項44記載のバイオ燃料電池。
【請求項46】
バイオアノードが、静電的に関連するPQQ分子を有する、PQQ依存性アルコールデヒドロゲナーゼを含む請求項7、8および10〜45のいずれかに記載のバイオ燃料電池。
【請求項47】
バイオアノードおよびバイオカソードが、塩橋またはポリマー電解質膜によって分離されていない請求項7および10〜46のいずれかに記載のバイオ燃料電池。
【請求項48】
請求項7〜47のいずれかに記載のバイオ燃料電池を使用して、電気を発生する方法であって、
(a)燃料流体をアノードまたはバイオアノードで酸化し、酸化剤をカソードまたはバイオカソードで還元し、
(b)酸化剤をカソードまたはバイオカソードで還元している間、電子メディエータの還元形態を酸化し、
(c)電極触媒を酸化し、
(d)電極触媒を電子伝導体で酸化する
ことを含む方法。
【請求項49】
請求項7〜47のいずれかに記載のバイオ燃料電池を使用して、電気を発生する方法であって、
(a)燃料流体をアノードまたはバイオアノードで酸化し、酸化剤をカソードまたはバイオカソードで還元し、
(b)酸化剤をカソードまたはバイオカソードで還元している間、電子メディエータの還元形態を酸化し、
(c)電子メディエータを電子伝導体で還元する
ことを含む方法。
【請求項50】
ミセル状の疎水性変性多糖中に固定化された酵素であって、ミセル状の疎水性変性多糖が、酵素を固定化し安定化することができ、ミセル状の疎水性変性多糖が、酵素より小さい化合物に対して透過性である酵素。
【請求項51】
溶液中に、約95wt%または95容量%を超えるエタノールを含む請求項50に記載の固定化酵素。
【請求項52】
ミセル状の疎水性変性ポリカチオン性ポリマー中に固定化された酵素であって、該固定化酵素が、緩衝液中に置かれた時の酵素より活性状態にある酵素。
【請求項53】
ミセル状の疎水性変性ポリアニオン性ポリマー中に固定化された酵素であって、該固定化酵素が、緩衝液中に置かれた時の酵素より活性状態にある酵素。
【請求項54】
酵素が、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ホルメートデヒドロゲナーゼ、ホルメートデヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、ラクトースデヒドロゲナーゼ、ピルベートデヒドロゲナーゼ、またはビリルビンオキシダーゼを含む請求項50〜53のいずれかに記載の固定化酵素。
【請求項55】
多糖またはポリカチオン性ポリマーが、キトサンを含む請求項50〜52のいずれかに記載の固定化酵素。
【請求項56】
多糖またはポリアニオン性ポリマーが、アルギン酸塩を含む請求項50、51および53のいずれかに記載の固定化酵素。
【請求項57】
ミセル状の疎水性変性された多糖またはミセル状の疎水性変性されたポリカチオン性ポリマーが、式1:
【化3】

(式中、nは整数であり、
R10は、独立して、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または疎水性レドックスメディエータであり、
R11は、独立して、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または疎水性レドックスメディエータである。)
に対応する請求項50、51、52、54および55のいずれかに記載の固定化酵素。
【請求項58】
R10が、独立して、水素またはアルキルであり、R11が、独立して、水素またはアルキルである請求項57に記載の固定化酵素。
【請求項59】
R10が、独立して、水素またはヘキシルであり、R11が、独立して、水素またはヘキシルである請求項57に記載の固定化酵素。
【請求項60】
R10が、独立して、水素またはオクチルであり、R11が、独立して、水素またはオクチルである請求項57に記載の固定化酵素。
【請求項61】
R10が、独立して、水素または疎水性レドックスメディエータであり、R11が、独立して、水素または疎水性レドックスメディエータである請求項57に記載の固定化酵素。
【請求項62】
疎水性レドックスメディエータが、オスミウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、ロジウム、レニウムまたはコバルトの、1,10-フェナントロリン(phen)、2,2’-ビピリジン(bpy)または2,2’,2’’-テルピリジン(terpy)、メチレングリーン、メチレンブルー、ポリ(メチレングリーン)、ポリ(メチレンブルー)、ルミノール、ニトロフルオレノン誘導体、アジン、オスミウムフェナントロリンジオン、カテコール−ペンダントテルピリジン、トルエンブルー、クレシルブルー、ナイルブルー、ニュートラルレッド、フェナジン誘導体、チオニン、アズールA、アズールB、トルイジンブルーO、アセトフェノン、メタロフタロシアニン、ナイルブルーA、変性遷移金属リガンド、1,10-フェナントロリン−5,6−ジオン、1,10−フェナントロリン−5,6−ジオール、[Re(phen-ジオン)(CO)3Cl]、[Re(phen-ジオン)3](PF6)2、ポリ(メタロフタロシアニン)、ポリ(チオニン)、キノン、ジイミン、ジアミノベンゼン、ジアミノピリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、トルイジンブルー、ブリリアントクレシルブルー、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アズールI)、ポリ(ナイルブルーA)、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシピロール)、ポリ(イソチアナフテン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(ジフルオロアセチレン)、ポリ(4−ジシアノメチレン−4H−シクロペンタ[2,1-b;3,4-b’]ジチオフェン)、ポリ(3−(4−フルオロフェニル)チオフェン)、ポリ(ニュートラルレッド)、またはこれらの組み合わせとの遷移金属複合体である請求項61に記載の固定化酵素。
【請求項63】
疎水性レドックスメディエータが、Ru(phen)3+2、Fe(phen)3+2、Os(phen)3+2、Co(phen)3+2、Cr(phen)3+2、Ru(bpy)3+2、Os(bpy)3+2、Fe(bpy)3+2、Co(bpy)3+2、Cr(bpy)3+2、Os(terpy)3+2、Ru(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Co(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Cr(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Fe(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Os(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、またはこれらの組み合わせである請求項61記載の固定化酵素。
【請求項64】
疎水性レドックスメディエータが、Ru(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Co(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Cr(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Fe(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Os(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、またはこれらの組み合わせである請求項61に記載の固定化酵素。
【請求項65】
疎水性レドックスメディエータが、Ru(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)−2,2’−ビピリジン)+2である請求項61に記載の固定化酵素。
【請求項66】
疎水性基で変性されたキトサンのアミン官能基を少なくとも約10%有するミセル状の疎水性変性されたキトサン。
【請求項67】
式1A:
【化4】

(式中、
nは整数であり、
R10aは、独立して、水素または疎水性レドックスメディエータであり、
R11aは、独立して、水素または疎水性レドックスメディエータである。)
に対応する構造を有する、ミセル状の、疎水性レドックスメディエータで変性されたキトサン。
【請求項68】
疎水性レドックスメディエータが、オスミウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、ロジウム、レニウムまたはコバルトの、1,10−フェナントロリン(phen)、2,2’-ビピリジン(bpy)または2,2’,2’’-テルピリジン(terpy)、メチレングリーン、メチレンブルー、ポリ(メチレングリーン)、ポリ(メチレンブルー)、ルミノール、ニトロフルオレノン誘導体、アジン、オスミウムフェナントロリンジオン、カテコール−ペンダントテルピリジン、トルエンブルー、クレシルブルー、ナイルブルー、ニュートラルレッド、フェナジン誘導体、チオニン、アズールA、アズールB、トルイジンブルーO、アセトフェノン、メタロフタロシアニン、ナイルブルーA、変性遷移金属リガンド、1,10−フェナントロリン−5,6−ジオン、1,10−フェナントロリン−5,6−ジオール、[Re(phen-ジオン)(CO)3Cl]、[Re(phen-ジオン)3](PF6)2、ポリ(メタロフタロシアニン)、ポリ(チオニン)、キノン、ジイミン、ジアミノベンゼン、ジアミノピリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、トルイジンブルー、ブリリアントクレシルブルー、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アズールI)、ポリ(ナイルブルーA)、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシピロール)、ポリ(イソチアナフテン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(ジフルオロアセチレン)、ポリ(4−ジシアノメチレン−4H−シクロペンタ[2,1-b;3,4-b’]ジチオフェン)、ポリ(3−(4−フルオロフェニル)チオフェン)、ポリ(ニュートラルレッド)、またはこれらの組み合わせとの遷移金属複合体である請求項67に記載の変性キトサン。
【請求項69】
疎水性レドックスメディエータが、Ru(phen)3+2、Fe(phen)3+2、Os(phen)3+2、Co(phen)3+2、Cr(phen)3+2、Ru(bpy)3+2、Os(bpy)3+2、Fe(bpy)3+2、Co(bpy)3+2、Cr(bpy)3+2、Os(terpy)3+2、Ru(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Co(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Cr(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Fe(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Os(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、またはこれらの組み合わせである請求項67記載の変性キトサン。
【請求項70】
疎水性レドックスメディエータが、Ru(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Co(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Cr(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Fe(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、Os(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2、またはこれらの組み合わせである請求項67に記載の変性キトサン。
【請求項71】
疎水性レドックスメディエータが、Ru(bpy)2(4-メチル-4’-(6-ヘキシル)-2,2’-ビピリジン)+2である請求項67に記載の変性キトサン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−515302(P2009−515302A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539156(P2008−539156)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/060487
【国際公開番号】WO2007/056666
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(399007729)セント・ルイス・ユニバーシティ (5)
【氏名又は名称原語表記】ST.LOUIS UNIVERSITY
【Fターム(参考)】