説明

疎水性球状シリカ微粒子、その製造方法、及び、それを用いた静電荷像現像用トナー外添剤

【課題】トナーの流動性を改良することができる疎水性球状シリカ微粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1):
Si(OR14 (1)
[式中、R1は同一又は異なり、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示されるテトラヒドロカルビルオキシシラン化合物及びその部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加水分解及び縮合することによって得られたSiO2単位からなる親水性球状シリカ微粒子の表面にR4SiO3/2単位(式中、R4は置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、次いでR63SiO1/2単位(式中、R6は同一又は異なり、置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程とを含む疎水化処理をして得られた疎水性球状シリカ微粒子であって、ヒドロカルビルオキシ基含量が1000ppm以下であり、粒子径が0.01〜5μmである疎水性球状シリカ微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疎水性球状シリカ微粒子、特には高分散性、低凝集性を有する疎水性球状シリカ微粒子に関するものである。
【0002】
さらに、高画質化のために用いる小粒径トナー用の外添剤に関する。
【背景技術】
【0003】
電子写真法等で使用する乾式現像剤は、結着樹脂中に着色剤を分散したトナーそのものを用いる一成分現像剤と、そのトナーにキャリアを混合した二成分現像剤とに大別できる。これらの現像剤を用いてコピー操作を行う場合、プロセス適合性を有するためには、現像剤が流動性、耐ケーキング性、定着性、帯電性、クリーニング性等に優れていることが必要である。特に、流動性、耐ケーキング性、定着性、クリーニング性を高めるために、無機微粒子をトナーに添加することがしばしば行われている。しかしながら、無機微粒子の分散性がトナー特性に大きな影響を与え、分散性が不均一な場合には、流動性、耐ケーキング性、定着性に所望の特性が得られなかったり、クリーニング性が不十分になって、感光体上にトナー固着等が発生し、黒点状の画像欠陥が生じたりする原因となることがあった。これらの問題点を改善する目的で、表面を疎水化処理した無機微粒子が種々提案されている。例えば、有機ケイ素化合物により表面処理されたコロイドシリカ粒子(特許文献1)、ケイ素原子に結合した炭化水素基と加水分解性基とを有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物により表面処理されたコロイド状シリカ(特許文献2、特許文献3)が挙げられる。
【0004】
しかしながら、より高画質化を図るために有機感光体を使用したり、より小粒径のトナーを使用したりする場合には、上記の無機微粒子を使用したのでは十分な性能が得られない。また、有機感光体は無機感光体に比べてその表面が柔らかく、反応性も高いので寿命が短くなりやすい。したがって、このような有機感光体を用いた場合には、トナーに添加された無機微粒子によって感光体の変質や削れが生じ易い。さらに、トナーを小粒径にした場合には、通常用いられる粒子径のトナーと比較して粉体流動性が悪いので、無機微粒子をより多量に添加しなければならなくなり、その結果、無機微粒子が感光体へのトナー付着の原因となることがあった。
【0005】
そこで、アルコキシシランの加水分解で製造した親水性球状シリカ微粒子の表面を第1段階の疎水化処理をする工程と、得られる疎水性シリカ微粒子の表面をトリオルガノシリル化、即ち、第2段階の疎水化処理をする工程とによって、疎水化することが提案されている(特許文献4)。
【0006】
しかし、上記のアルコキシシランの加水分解で製造した親水性球状シリカ微粒子をこの方法により疎水化処理して得られた疎水性球状シリカ微粒子は、流動性が不十分で、トナー外添剤として使用しても、トナーに必要な流動性を付与することができない場合があった。
【0007】
【特許文献1】特開昭46−5782号公報
【特許文献2】特開昭48−47345号公報
【特許文献3】特開昭48−47346号公報
【特許文献4】特開2000−330328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、トナーの流動性を改良することができる疎水性球状シリカ微粒子及びその製造方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の別の課題は、該疎水性球状シリカ微粒子を用いるトナー外添剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決する手段として、第一に、
一般式(1):
Si(OR14 (1)
[式中、R1は同一又は異なり、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示されるテトラヒドロカルビルオキシシラン化合物及びその部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加水分解及び縮合することによって得られたSiO2単位からなる親水性球状シリカ微粒子の表面にR4SiO3/2単位(式中、R4は置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、次いでR63SiO1/2単位(式中、R6は同一又は異なり、置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程とを含む疎水化処理をして得られた疎水性球状シリカ微粒子であって、ヒドロカルビルオキシ基含量が1000ppm以下であり、粒子径が0.01〜5μmである疎水性球状シリカ微粒子を提供する。
【0011】
本発明は、第二に、上記の疎水性球状シリカ微粒子の製造方法として、
(A)(a−1)一般式(1):
Si(OR14 (1)
[式中、R1は同一又は異なり、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される4官能性シラン化合物及びその部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、塩基性物質の存在下で親水性有機溶媒と水との混合媒体中で加水分解、縮合して、親水性球状シリカ微粒子を生成させる工程と、
(a−2)溶媒として用いられた前記混合媒体から親水性有機溶媒を除去して媒体を水に置換して、水の含有量が90質量%以上である親水性球状シリカ微粒子の水分散液を得る工程と、
(B)前記親水性球状シリカ微粒子水分散液中の親水性球状シリカ微粒子の表面にR4SiO3/2単位[式中、R4は置換又は非置換の、炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である]を導入し、第一次疎水性球状シリカ微粒子を得る工程と、
(C)得られた第一次疎水性球状シリカ微粒子の表面にR63SiO1/2単位[式中、R6は同一又は異なり、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]を導入して第二次疎水性シリカ微粒子を得る工程と、
を有する製造方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、前記疎水性球状シリカ微粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の疎水性球状シリカ微粒子はトナー外添剤として有用であり、トナーの流動性を改良することができる。更に、該トナー外添剤は、トナーに必要な帯電を与えることができ、さらに、有機感光体との反応や相互作用がないため感光体の変質や削れが生じにくい。分散性に優れており、流動性が良好であるため感光体へのトナー付着が生じず、環境状態に依存しない帯電性を有する。このトナー外添剤を用いることで、電子写真法、静電記録法等における静電荷像の現像に応用することにより、高画質化が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
合成シリカ微粒子は、その製法によって、シラン化合物を燃焼させて得られる燃焼法シリカ(即ち、ヒュームドシリカ)、金属珪素粉を爆発的に燃焼させて得られる爆燃法シリカ、珪酸ナトリウムと鉱酸との中和反応によって得られる湿式シリカ(このうちアルカリ条件で合成したものを沈降法シリカ、酸性条件で合成したものをゲル法シリカという)、ヒドロカルビルオキシシランの加水分解によって得られるゾルゲル法シリカ(いわゆるStoeber法)に大別される。本発明は、このうち、ゾルゲル法シリカに関するものである。
<疎水性球状シリカ微粒子の特徴>
まず、本発明の疎水性球状シリカ微粒子の特徴について、詳細に説明する。 本発明の微粒子は、4官能性シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合生成物を加水分解及び縮合することによって得られたSiO2単位からなる親水性球状シリカ微粒子の表面にR4SiO3/2単位(式中、R4は置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程、次いでR63SiO1/2単位(式中、R6は同一又は異なり、置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程を含む二段階の疎水化処理をして得られた疎水性球状シリカ微粒子であって、ヒドロカルビルオキシ基含量が1000ppm以下であり、好ましくは500ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。ヒドロカルビルオキシ基含量が1000ppmを超えると、この極性基の影響でトナーの流動性が不十分となる。
【0016】
本発明の疎水性球状シリカ微粒子について、「球状」とは、真球だけでなく、若干歪んだ球も含む。具体的には、「球状」であるとは粒子を二次元に投影したときの円形度が0.8〜1の範囲にあることを意味する。ここで円形度とは、(実際の粒子を二次元投影したときの図形の面積と等しい真円の周囲長)/(実際の粒子を二次元投影したときの図形の面積の周囲長)を意味する。
上記微粒子の粒子径は0.01〜5μmであり、好ましくは0.05〜0.5μm、特に好ましくは0.1〜0.2μmである。この粒子径が0.01μmより小さい場合には、上記微粒子が凝集することにより、現像剤の流動性、耐ケーキング性、定着性等が不十分なものとなり、5μmより大きい場合には、感光体の変質や削れ、上記微粒子のトナーへの付着性の低下等の不都合を生ずる。なお、ここで「粒子径」とは体積基準メジアン径を意味する。
【0017】
<疎水性球状シリカ微粒子の合成>
次に、本発明の疎水性球状シリカ微粒子の製造方法について詳細に説明する。該疎水性球状シリカ微粒子は、例えば、ゾルゲル法によりヒドロカルビルオキシ基を低減した親水性球状シリカ微粒子を製造する工程((A)工程)と、該親水性球状シリカ微粒子の表面を第1段階の疎水化処理をする工程((B)工程)と、得られた第1次疎水性球状シリカ微粒子の表面をトリオルガノシリル化、即ち、第2段階の疎水化処理をする工程((C)工程)とを有する方法により得られる。以下、各工程を説明する。
【0018】
−親水性球状シリカ微粒子の合成((A)工程)−
本工程では、(a−1)一般式(1):
Si(OR14 (1)
[式中、R1は同一又は異なり、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される4官能性シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合生成物を加水分解及び縮合させ親水性球状シリカ微粒子を生成させ、次いで(a−2)該シリカ微粒子が有するヒドロカルビルオキシ基含量を低減する工程と有する。その結果、この方法により最終的に得られる疎水性球状シリカ微粒子のヒドロカルビルオキシ基含量を1000ppm以下とすることができ、この極性基による悪影響を排除できるため、トナー流動性が良好となる。
【0019】
前記加水分解性基としては、例えば、ヒドロカルビルオキシ基、アミノ基、アシルオキシ基、好ましくは、ヒドロカルビルオキシ基、アミノ基、特に好ましくは、ヒドロカルビルオキシ基が挙げられる。前記ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基等が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
【0020】
該(A)工程は、さらに具体的には、
(a−1)一般式(1):
Si(OR14 (1)
[式中、R1は同一又は異なり、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される4官能性シラン化合物及びその部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、塩基性物質の存在下で親水性有機溶媒と水との混合媒体中で加水分解、縮合して、親水性球状シリカ微粒子を生成させる工程と、
(a−2)溶媒として用いられた前記混合媒体から親水性有機溶媒を除去して媒体を水に置換して、水の含有量が90質量%以上である親水性球状シリカ微粒子の水分散液を得る工程と、を有してなる。
上記の(a−2)工程において、水分散液中の水の含有量が90質量%未満であれば、分散液中の親水性有機溶媒の量が多いためヒドロカルビルオキシ基の加水分解が十分進行せず、シリカ微粒子中の残存ヒドロカルビルオキシ基含量が多くなってしまう。
【0021】
上記一般式(1)中、R1は、好ましくは炭素原子数1〜6、より好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R1で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、特に好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0022】
上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、テトラフェノキシシラン等、好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、特に好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。また、一般式(1)で示される4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物としては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート等が挙げられる。
【0023】
前記親水性有機溶媒としては、一般式(1)で示される4官能性シラン化合物と、この部分加水分解縮合生成物と、水とを溶解するものであれば特に制限されず、例えば、アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等、好ましくは、アルコール類、セロソルブ類、特に好ましくはアルコール類が挙げられる。アルコール類としては、一般式(2):
3OH (2)
[式中、R3は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示されるアルコールが挙げられる。
【0024】
上記一般式(2)中、R3は、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R3で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基等、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、より好ましくはメチル基、エチル基が挙げられる。一般式(2)で示されるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等、好ましくは、メタノール、エタノールが挙げられる。アルコールの炭素原子数が増えると、生成する球状シリカ微粒子の粒子径が大きくなる。従って、目的とする球状シリカ微粒子の粒子径によりアルコールの種類を選択することが望ましい。
【0025】
また、上記塩基性物質としてはアンモニア、及びジメチルアミン、ジエチルアミン等のジ低級アルキルアミン、好ましくは、アンモニア及びジエチルアミン、特に好ましくはアンモニアが挙げられる。これらの塩基性物質は、所要量を水に溶解した後、得られた水溶液(塩基性)を前記親水性有機溶媒と混合すればよい。
【0026】
この加水分解反応において使用される水の合計量は、一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合生成物のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.5〜5モルであることが好ましく、0.6〜2モルであることがより好ましく、0.7〜1モルであることが特に好ましい。水に対する親水性有機溶媒の比率は、質量比で0.5〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1.5〜2であることが特に好ましい。塩基性物質の量は、一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合生成物、のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.01〜2モルであることが好ましく、0.5〜1.5モルであることがより好ましく、1.0〜1.2モルであることが特に好ましい。
【0027】
一般式(1)で示される4官能性シラン化合物等の加水分解及び縮合は、周知の方法、即ち、塩基性物質を含む親水性有機溶媒と水との混合物中に、一般式(1)で示される4官能性シラン化合物等を添加することにより行われる。
【0028】
親水性球状シリカ微粒子混合溶液分散液の分散媒を水に変換する工程は、例えば、該分散液に水を添加し親水性有機溶媒を留去する操作(必要に応じてこの操作を繰り返す)により行うことができる。このときに添加される水の合計量は、使用した親水性有機溶媒及び生成したアルコールの量の合計に対して、質量基準で、好ましくは2倍量を超える量、より好ましくは2.5〜3.5倍量、特に好ましくは3倍量であり、最終的に分散液の水含有量が90質量%以上、好ましくは98質量%以上となるようにする。こうして分散液中の水の含有量が90質量%以上である水分散液に変換すると、残存している一般式(1)で示される4官能性シラン化合物に由来するヒドロカルビルオキシ基(OR1)が加水分解され、ヒドロカルビルオキシ基量が減少した親水性球状シリカ微粒子とすることができる。
【0029】
このようにして得られる親水性球状シリカ微粒子は、(B)工程で第1段階の疎水化処理に供される。
【0030】
−親水性球状シリカ微粒子の表面疎水化処理((B)工程)−
(B)工程は、上記親水性球状シリカ微粒子の表面にR4SiO3/2単位[式中、R4は置換又は非置換の、炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である]を導入して第一次疎水性球状シリカ微粒子を得る工程、即ち、第1段階の疎水化処理を行う工程である。例えば、上記親水性球状シリカ微粒子を含み、分散液の水含有量が90質量%以上である水性分散液に、一般式(3):
【0031】
4Si(OR53 (3)
[式中、R4は前記と同じであり、R5は同一又は異なり、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される3官能性シラン化合物もしくはその部分加水分解縮合生成物又はこれらの混合物を添加し、親水性球状シリカ微粒子表面を処理して第1次疎水性球状シリカ微粒子の水性分散液を得る。
【0032】
上記一般式(3)中、R4は、好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R4で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基等、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、特に好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよい。
【0033】
上記一般式(3)中、R5は、好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R5で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基等、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、特に好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0034】
一般式(3)で示される3官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン等、好ましくは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、より好ましくは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、又は、これらの部分加水分解縮合生成物が挙げられる。
【0035】
一般式(3)で示される3官能性シラン化合物の添加量は、使用された親水性球状シリカ微粒子のSiO2単位1モル当り0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.1モル、特に好ましくは0.01〜0.05モルである。
【0036】
−疎水性球状シリカ微粒子の表面トリオルガノシリル化処理((C)工程)−
(C)工程は、上記(B)工程で得られた第1次疎水性球状シリカ微粒子の表面にR63SiO1/2単位[式中、R6は同一又は異なり、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]を導入する工程、即ち、第2段階の疎水化処理を行う工程である。例えば、前記疎水性球状シリカ微粒子水分散液の分散媒を水からケトン系溶媒に変換し、疎水性球状シリカ微粒子ケトン系溶媒分散液を得ることと、該疎水性球状シリカ微粒子ケトン系溶媒分散液に一般式(4):
【0037】
63SiNHSiR63 (4)
[式中、R6は同一又は異なり、上記と同じである]
で示されるシラザン化合物、もしくは、一般式(5):
63SiX (5)
[式中、R6は同一又は異なり、上記と同じであり、XはOH基又は加水分解性基である]
で示される1官能性シラン化合物、又は、これらの混合物を添加し、前記疎水性球状シリカ微粒子表面に残存する反応性基をトリオルガノシリル化することを有してなる工程である。
【0038】
上記一般式(4)及び(5)中、R6は、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R6で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基等、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、特に好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0039】
Xで表される加水分解性基としては、例えば、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アミノ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基等、好ましくは、アルコキシ基、アミノ基、特に好ましくは、アルコキシ基が挙げられる。
【0040】
球状シリカ微粒子水性分散液又は混合溶媒分散液の分散媒を、水又は混合溶媒からケトン系溶媒に変換するには、該分散液にケトン系溶媒を添加し、前記混合物から水又は混合溶媒を留去する操作(必要に応じてこの操作を繰り返す)により行うことができる。
【0041】
このとき添加されるケトン系溶媒の量は、前記球状シリカ微粒子水性分散液中の親水性球状シリカ微粒子に対して質量比で0.5〜5倍量、好ましくは2〜5倍量、特に好ましくは3〜4倍量である。このケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等、好ましくはメチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0042】
一般式(4)で示されるシラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等、好ましくはヘキサメチルジシラザンが挙げられる。一般式(5)で示される1官能性シラン化合物としては、例えば、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール等のモノシラノール化合物、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のモノクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン等のモノアミノシラン、トリメチルアセトキシシラン等のモノアシルオキシシラン、好ましくは、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン、トリメチルシリルジエチルアミン、特に好ましくは、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシランが挙げられる。
【0043】
これらの使用量は、使用した親水性球状シリカ微粒子のSiO2単位1モルに対して0.05〜0.5モル、好ましくは0.1〜0.3モル、特に好ましくは0.15〜0.25モルである。
【0044】
上記疎水性球状シリカ微粒子は、常法によって粉体として得てもよいし、シラザンとの反応後に有機化合物を添加して分散体として得てもよい。
【0045】
<疎水性球状シリカ微粒子からなるトナー外添剤>
本発明の疎水性球状シリカ微粒子は、トナー外添剤等として有用である。該微粒子からなるトナー外添剤(以下、単に「微粒子」とも言う)のトナーに対する配合量は、トナー100質量部に対して、通常0.01〜20質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部、特に好ましくは1〜2質量部である。この配合量が少なすぎると、トナーへの付着量が少なく十分な流動性が得られず、多すぎるとトナーの帯電性に悪影響を及ぼす。
【0046】
該微粒子のトナー粒子表面への付着状態は、単に機械的に付着していても、ゆるく固着されていてもよい。また、この付着した微粒子は、トナー粒子の表面全体を覆っていても、一部だけを覆っていてもよい。さらに、該微粒子は、その一部が凝集体を形成してトナー粒子の表面を覆っていてもよいが、単層粒子の状態で覆っていることが好ましい。
【0047】
本発明の微粒子を適用可能なトナー粒子としては、結着樹脂と着色剤とを主成分として含有する公知のトナー粒子等が挙げられ、必要に応じて、さらに帯電制御剤等が添加されていてもよい。
【0048】
本発明の微粒子からなるトナー外添剤を添加されたトナーは、例えば、電子写真法、静電記録法等により、静電荷像を現像するために使用される静電荷像現像用等に使用される。前記トナーは、一成分現像剤として使用することができるが、それをキャリアと混合し、二成分現像剤として使用することもできる。二成分現像剤として使用する場合には、上記トナー外添剤を予めトナー粒子に添加せず、トナーとキャリアとの混合時に添加してトナーの表面被覆を行ってもよい。該キャリアとしては、公知のもの、例えば、フェライト、鉄粉等、又は、それらの表面に樹脂コーティングされたもの等が使用できる。
【0049】
さらに、本発明者らは、本発明に係る疎水性球状シリカ微粒子からなるトナー外添剤は、所望の特性に加えて、トナーに対して環境に依存しない帯電性を付与するものとなることを見出した。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、下記の実施例は、本発明を何ら制限するものではない。
【0051】
<実施例1>
[疎水性球状シリカ微粒子の合成]
−(I)親水性球状シリカ微粒子の合成((A)工程)−
攪拌機と、滴下ロートと、温度計とを備えた3リットルのガラス製反応器にメタノール623.7gと、水41.4gと、28質量%アンモニア水49.8gとを入れて混合した。この溶液を35℃となるように調整し、攪拌しながらテトラメトキシシラン1163.7g(7.65モル)及び5.4質量%アンモニア水418.1gを同時に添加し始め、テトラメトキシシランは6時間かけて、アンモニア水は5時間かけて、それぞれを滴下した。それらの滴下が終了した後も、さらに0.5時間攪拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性球状シリカ微粒子の懸濁液を得た。次いで、ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管とを取り付け、前記懸濁液を60〜70℃に加熱してメタノール1200gを留去し、その後、水1200gを添加した。次いで、懸濁液が100℃になるまでメタノール水300g留去、水300g添加を3回繰り返し、さらにメタノール水300gを留去し、親水性球状シリカ微粒子の水懸濁液を得た。このとき、ガスクロマトグラフ分析によると水懸濁液中の水含有量は99.9質量%であった。
【0052】
−(II)親水性球状シリカ微粒子表面の第1段階疎水化処理((B)工程)−
前記の工程(A)で得られた水懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン11.6g(0.085モル)を0.5時間かけて滴下し、滴下後も12時間攪拌を継続した。こうして、シリカ微粒子表面を第1段階の疎水化処理することにより、第1次疎水性球状シリカ微粒子水分散液を得た。
【0053】
−(III)第1次疎水性球状シリカ微粒子表面の第2段階疎水化処理(トリオルガノシリル化処理)((C)工程)−
前記工程(B)により得られた分散液にメチルイソブチルケトン1440gを添加した後、この分散液を80〜110℃に加熱することにより、水1794gを10時間かけて留去した。得られた分散液に、室温において、ヘキサメチルジシラザン150g(0.93モル)を添加した後、この分散液を110℃に加熱し、3時間反応させることにより、分散液中のシリカ微粒子をトリメチルシリル化した。次いで、この分散液中の溶媒を80℃、減圧下(6650Pa)で留去することにより、疎水性球状シリカ微粒子475gを粉体として得た。
【0054】
上記の工程(A)〜(C)により得られた最終的な疎水性球状シリカ微粒子について、下記の測定方法1〜3に従って、アルコキシ基含量、粒子径、及び形状の測定を行った。なお、得られた結果を表1に示す。
【0055】
・測定方法1:疎水性球状シリカ微粒子のアルコキシ基含量
シリカ微粒子5gに1N水酸化カリウム−イソプロピルアルコール溶液10gを添加し、70℃で1時間加熱しシリカの分解を行い、その後、液体分を蒸留して取る。この留分をガスクロマトグラフ分析し含有されるメタノール量を定量することで、シリカ微粒子に含有されるアルコキシ基量を定量する。
【0056】
・測定方法2:疎水性球状シリカ微粒子の粒子径測定
メタノールにシリカ微粒子を、0.5質量%となるように添加し、10分間超音波にかけることにより、該微粒子を分散させた。このように処理した微粒子の粒度分布を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名:LA910)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とした。なお、メジアン径とは粒径分布を累積分布として表したときの累積50%に相当する粒子径である。
【0057】
・測定方法3:疎水性球状シリカ微粒子の形状測定
電子顕微鏡(日立製作所製、商品名:S-4700型、倍率:10万倍)によって観察を行い、形状を確認した。「球状」であるとは、前述したように、粒子を二次元に投影したときの円形度が0.8〜1の範囲にあることを意味する。
【0058】
[外添剤混合トナーの作製]
ガラス転移温度Tg60℃、軟化点110℃であるポリエステル樹脂96質量部と、着色剤(住友カラー(株)製、商品名:カーミン6BC)4質量部とを、溶融混練、粉砕及び分級することにより、平均粒径7μmのトナーを得た。このトナー40gに上記表面処理球状疎水性シリカ微粒子1gをサンプルミルにより混合し、外添剤混合トナーとした。これを用いて、下記の測定方法4に従って、トナー流動性を測定した。なお、得られた結果を表1に示す。
【0059】
・測定方法4:トナー流動性の測定
トナーの流動性は、粉体流動性分析装置FT−4(シスメックス(株)製)を用いて測定した。この装置の測定原理を説明する。垂直に置かれた筒状容器に粉体を充填し、該粉体中を垂直な軸棒の先端に設けられた二枚の回転翼(ブレード)を回転させながら一定の距離(高さH1からH2まで)下降させる。このときに粉体から受ける力をトルク成分と荷重成分とに分けてを測定することにより、ブレードがH1からH2まで下降するのに伴うそれぞれの仕事量(エネルギー)を求め、次いで両者のトータルエネルギー量を求める。こうして測定されたトータルエネルギー量が小さいほど粉体の流動性が良好であることを意味するので、粉体流動性の指標として使用する。
【0060】
安定性試験、流速試験、通気試験、及び圧縮試験を行なった。
・・条件:
容器:安定性、流速及び通気の試験では、容積120ml、内径80mm、長さ60mmのガラス製円筒型容器を使用した。圧縮試験では容積25ml、内径25mm、長さ52.5mmのガラス製円筒型容器を使用した。容器の下部から空気を導入することができるように構成されている。
ブレード:円筒型容器内の中央に鉛直に装入されるステンレス製の軸棒の先端に水平に対向する形で二枚取り付けられている。ブレードは、容積120mlの容器の場合は直径48mmのものを使用し、容積25mlの容器の場合には直径23.5mlのものを使用する。
H1からH2までの長さ:容積120mlの容器の場合は50mmであり、容積25mlの容器の場合には47.5mmである。
【0061】
・・安定性試験:上記のようにして、測定容器に充填した粉体を静置した状態から流動させた場合の粉体流動特性をみる。ブレード先端の回転速度を100mm/secの条件とし、トータルエネルギー量を7回連続して測定する。7回目のトータルエネルギー量(最も安定した状態であるので基本流動性エネルギーと称される)を表1に示した。小さいほど安定性が高い。
【0062】
・・流速試験:流速の変化に対する粉体流動特性をみる。ブレード先端の回転速度を10mm/secで測定した際のトータルエネルギー量を表1に示した。小さいほど流動性が高い。
【0063】
・・通気試験:通気量に応じた粉体流動特性をみる。ブレード先端の回転速度を100mm/secとし、容器下部から導入する空気の通気量を0mm/secから0.1mm/secづつ増加させ0.5mm/secまでの6段階で別々に順序に測定し、最小の通気量(0mm/sec)及び最大の通気量(0.5mm/sec)でのトータルエネルギー量を表1に示した。小さいほど空気が関与する状態での粉体流動性が高い。
【0064】
・・圧縮試験は、圧縮に対する粉体流動特性をみるものである。粉体にピストンを介して加重を加えて10Nにて加圧して圧縮した後、ブレード先端の回転速度を100mm/secとして測定しトータルエネルギー量を求めた。結果を表1に示した。小さいほど粉体が圧縮を受けた場合の粉体流動性が高い。
【0065】
[現像剤の調製]
上で調製した外添剤混合トナー5質量部と、平均粒径85μmのフェライトコアにパーフルオロアルキルアクリレート樹脂及びアクリル樹脂をポリブレンドしたポリマーでコーティングしたキャリア95質量部とを混合して、現像剤を調製した。この現像剤を用いて、下記の測定方法5及び6に従って、トナー帯電量及び感光体へのトナー付着について測定した。なお、得られた結果を表1に示す。
【0066】
・測定方法5:トナー帯電量の測定
上記現像剤を高温高湿(30℃、90%RH)又は低温低湿(10℃、15%RH)の条件下に1日放置した後、振とう機により30秒間混合して、摩擦帯電を行った。それぞれの試料の帯電量を、同一条件下で、ブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル(株)製、商品名:TB-200型)を用いて測定した。上記2つの条件におけるトナー帯電量の差を求めることにより、該トナーの環境依存性について評価した。
【0067】
・測定方法5:感光体へのトナー付着測定
上記現像剤を有機感光体が備えられた二成分改造現像機に入れ、30000枚のプリントテストを行った。該感光体へのトナーの付着は、全ベタ画像での白抜けとして感知できる。 白抜けの程度を次の基準で評価した。
白抜け10個以上/cm2:多い
白抜け1〜9個/cm2:少ない
白抜け0個/cm2:なし
【0068】
<実施例2>
実施例1において、工程(A)で親水性球状シリカ微粒子の懸濁液を60〜90℃に加熱してメタノール水420g留去、水250g添加を4回繰り返し、さらに90〜98℃に加熱しメタノール351gを留去し、親水性球状シリカ微粒子の水懸濁液(水含有量は98.8質量%)を得たこと以外は同様にして、疎水性球状シリカ微粒子479gを乾燥粉体として得た。この疎水性球状シリカ微粒子を用いて実施例1と同様に測定した。この結果を表1に示す。
【0069】
<比較例1>
実施例1において、工程(A)で親水性球状シリカ微粒子の懸濁液を60〜70℃に加熱してメタノール1132gを留去し、その後、水1200gを添加して、次いでさらに70〜90℃に加熱しメタノール273gを留去し、親水性球状シリカ微粒子の水性懸濁液(水含有量は87.2質量%)を得たこと以外は同様にして、疎水性球状シリカ微粒子479gを乾燥粉体として得た。この疎水性球状シリカ微粒子を用いて、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。
【0070】
<比較例2>
実施例1において、工程(A)で得られた親水性球状シリカ微粒子の水懸濁液に、室温でヘキサメチルジシラザン240gを添加し、120℃に加熱し、3時間反応させることにより、シリカ微粒子をトリメチルシリル化した。次いで、水を120℃、減圧下(6650Pa)で留去して、疎水性球状シリカ微粒子465gを乾燥粉体として得た。この疎水性球状シリカ微粒子を用いて、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。
【0071】
<比較例3>
比較例1における工程(A)で得られた親水性球状シリカ微粒子の水性懸濁液に、室温でヘキサメチルジシラザン240gを添加し、120℃に加熱し、3時間反応させることにより、シリカ微粒子をトリメチルシリル化した。次いで、メタノールと水との混合物を80℃、減圧下(6650Pa)で留去して、疎水性球状シリカ微粒子463gを乾燥粉体として得た。この疎水性球状シリカ微粒子を用いて、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。
【0072】
<比較例4>
実施例1において、工程(B)であるメチルトリメトキシシランを用いたシリカ微粒子の表面疎水処理工程を省略し、工程(A)で得られた親水性球状シリカ微粒子の水懸濁液を直接工程(C)に供し、メチルイソブチルケトン1440gを添加した後に、80〜110℃に加熱し、メタノールと水との混合物820gとを6時間かけて留去したところ、親水性球状シリカ微粒子の分散体が凝固した。
【0073】
<比較例5>
実施例1において、工程(B)であるメチルトリメトキシシランを用いたシリカ微粒子の表面疎水処理工程を省略し、比較例1における工程(A)で得られた親水性球状シリカ微粒子の水性懸濁液を直接工程(C)に供し、メチルイソブチルケトン1440gを添加した後に、80〜110℃に加熱し、メタノールと水との混合物820gとを6時間かけて留去したところ、親水性球状シリカ微粒子の分散体が凝固した。
【0074】
<比較例6>
攪拌機と温度計とを備えた0.3リットルのガラス製反応器に爆燃法シリカ(商品名:SO-C1、アドマテクス社製)100gを仕込み、純水1gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに60℃で10時間攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、ヘキサメチルジシラザン2gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに24時間攪拌した。120℃に昇温し、窒素ガスを通気しながら残存原料及び生成したアンモニアを除去し、疎水性球状シリカ微粒子100gを得た。この疎水性球状シリカ微粒子を用いて、実施例1と同様に評価した。この結果を表2に示す。
【0075】
<比較例7>
実施例1で調製した疎水性球状シリカ微粒子の代わりに、ヒュームドシリカを疎水化処理した疎水性シリカ(商品名:アエロジルR972、日本アエロジル(株)製、1次粒子の凝集体、ジメチルジクロロシラン処理品)を用いて、実施例1と同様に評価した。この結果を表2に示す。
【0076】
<比較例8>
実施例1で調製した疎水性球状シリカ微粒子の代わりに、沈降法シリカ表面を疎水化処理した疎水性シリカ(商品名:ニプシルSS50F、日本シリカ(株)製、1次粒子の凝集体)を用いて、実施例1と同様に評価した。この結果を表2に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
(注)
(1)親水性球状シリカ微粒子の水懸濁液中((A)工程)
(2)7回目
(3)ブレードスピード 10mm/s
(4)通気量 0mm/s
(5)通気量 0.5mm/s
(6)加圧 10N
【0079】
【表2】

【0080】
(注)
(1)親水性球状シリカ微粒子の水懸濁液中((A)工程)
(2)7回目
(3)ブレードスピード 10mm/s
(4)通気量 0mm/s
(5)通気量 0.5mm/s
(6)加圧 10N
<評価>
実施例1及び実施例2では、本発明の条件を満たす疎水性球状シリカ微粒子が得られたため、目的とする諸特性を有するトナー外添剤が得られた。
【0081】
比較例1では、工程(A)において、親水性球状シリカ微粒子の水性懸濁液中の水含有量が90質量%未満であるために、得られる疎水性球状シリカ微粒子は、アルコキシ基含量の点で本発明の条件を満たさず、その結果、該微粒子からなるトナー外添剤は、良好な流動性をトナーに付与することができなかった。
【0082】
比較例2では、工程(A)で得られた親水性球状シリカ微粒子を本発明の方法で必須である第一段階の疎水化処理を行わず、高い水含有量の水懸濁液中でトリメチルシリル化したものである。得られ処理シリカ微粒子は、疎水化処理が不完全で凝集したため不定形となった。該微粒子からなるトナー外添剤は、良好な流動性及び環境状態に依存しない帯電性をトナーに付与することができず、さらに、感光体へのトナー付着等が生じるものであった。
【0083】
比較例3では、工程(A)で得られた親水性球状シリカ微粒子を水含有量90質量%未満の水懸濁液中で、本発明の方法で必須である第一段階の疎水化処理に該当しないトリメチルシリル化処理をしたものである。得られた疎水性球状シリカ微粒子は、アルコキシ基含量の点で本発明の条件を満たさなかった。その結果、該微粒子からなるトナー外添剤は、良好な流動性をトナーに付与することができず、さらに、感光体へのトナー付着等が生じるものであった。
【0084】
比較例4では、本発明の方法で必須である第一段階の疎水化処理を行わず、第二段階の疎水化処理を直接行った例である。親水性球状シリカ微粒子の分散体が該疎水化処理中に凝固した。
【0085】
比較例5では、工程(B)であるメチルトリメトキシシランを用いたシリカ微粒子の表面疎水化処理工程を省略し、比較例1における工程(A)で得られた親水性球状シリカ微粒子の水性懸濁液(低い含水量)を直接工程(C)に供しものであるが、親水性球状シリカ微粒子の分散体が工程(C)中に凝固した。
【0086】
比較例6では、爆燃法のシリカをトリメチルシリル化したものであるが、得られる疎水性球状シリカ微粒子は、ゾルゲル法シリカでない点及びR4SiO3/2単位で疎水化処理されていない点で本発明の条件を満たさず、その結果、該微粒子からなるトナー外添剤は、良好な流動性及び環境状態に依存しない帯電性をトナーに付与することができず、さらに、感光体へのトナー付着等が生じるものであった。
【0087】
比較例7及び8では、それぞれ、ヒュームドシリカ、沈降法シリカを疎水化処理したものであるが、これらの疎水性シリカ微粒子は、凝集したため不定形となった点、ゾルゲル法シリカでない点及びR4SiO3/2単位で疎水化処理されていない点で本発明の条件を満たさず、その結果、該微粒子からなるトナー外添剤は、良好な流動性及び環境状態に依存しない帯電性をトナーに付与することができず、さらに、感光体へのトナー付着等が生じるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
Si(OR14 (1)
[式中、R1は同一又は異なり、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示されるテトラヒドロカルビルオキシシラン化合物及びその部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加水分解及び縮合することによって得られたSiO2単位からなる親水性球状シリカ微粒子の表面にR4SiO3/2単位(式中、R4は置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、次いでR63SiO1/2単位(式中、R6は同一又は異なり、置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程とを含む疎水化処理をして得られた疎水性球状シリカ微粒子であって、ヒドロカルビルオキシ基含量が1000ppm以下であり、粒子径が0.01〜5μmである疎水性球状シリカ微粒子。
【請求項2】
(A)(a−1)一般式(1):
Si(OR14 (1)
[式中、R1は同一又は異なり、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される4官能性シラン化合物及びその部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、塩基性物質の存在下で親水性有機溶媒と水との混合媒体中で加水分解、縮合して、親水性球状シリカ微粒子を生成させる工程と、
(a−2)溶媒として用いられた前記混合媒体から親水性有機溶媒を除去して媒体を水に置換して、水の含有量が90質量%以上である親水性球状シリカ微粒子の水分散液を得る工程と、
(B)前記親水性球状シリカ微粒子水分散液中の親水性球状シリカ微粒子の表面にR4SiO3/2単位[式中、R4は置換又は非置換の、炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である]を導入し、第一次疎水性球状シリカ微粒子を得る工程と、
(C)得られた第一次疎水性球状シリカ微粒子の表面にR63SiO1/2単位[式中、R6は同一又は異なり、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]を導入して第二次疎水性シリカ微粒子を得る工程と、
を有する請求項1に記載の疎水性球状シリカ微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記親水性有機溶媒が、一般式(2):
3OH (2)
[式中、R3は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示されるアルコール溶媒である請求項2に係る製造方法。
【請求項4】
前記塩基性物質がアンモニアである請求項2又は3に係る製造方法。
【請求項5】
前記(B)工程が、前記親水性球状シリカ微粒子の水分散液に、一般式(3):
4Si(OR53 (3)
[式中、R4は上記と同じであり、R5は同一又は異なり、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される3官能性シラン化合物もしくはその部分加水分解縮合生成物又はこれらの混合物を添加して、前記親水性球状シリカ微粒子の表面を処理し、第1次疎水性球状シリカ微粒子の水分散液を得ることを含む請求項2〜4のいずれか1項に係る製造方法。
【請求項6】
前記(C)工程が、前記第一次疎水性球状シリカ微粒子の水分散液の分散媒をケトン系溶媒に変換し、第一次疎水性球状シリカ微粒子のケトン系溶媒分散液を得ることと、該第一次疎水性球状シリカ微粒子のケトン系溶媒分散液に一般式(4):
63SiNHSiR63 (4)
[式中、R6は同一又は異なり、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示されるシラザン化合物、もしくは、一般式(5):
63SiX (5)
[式中、R6は上記と同じであり、XはOH基又は加水分解性基である]
で示される1官能性シラン化合物、又は、これらの混合物を添加し、前記第一次疎水性球状シリカ微粒子の表面に残存する反応性基をトリオルガノシリル化することと、を含む請求項2〜5のいずれか1項に係る製造方法。
【請求項7】
前記ケトン系溶媒が、メチルイソブチルケトンである請求項6に係る製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の疎水性球状シリカ微粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤。

【公開番号】特開2008−174430(P2008−174430A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11227(P2007−11227)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】