説明

疲労度検出ひずみゲージ

【課題】取り付けスペースを小さくでき、局部的な構造物の応力集中部近くでの測定を可能とした疲労度検出ひずみゲージを提供することである。
【解決手段】ゲージ受感部と隣接するゲージ受感部とを折り返しタブで接続して成る疲労度検出ひずみゲージにおいて、前記折り返しタブと前記ゲージ受感部とが繋がる折り返し部の内側形状を連続的に曲率が徐々に変わる曲線形状としたひずみ検出部と、前記ひずみ検出部と直列に接続した導通部と、前記導通部と並列に接続し、疲労度検出用ゲージ受感部と隣接する疲労度検出用ゲージ受感部とを疲労度検出用折り返しタブで接続して成り、前記疲労度検出用折り返しタブと前記疲労度検出用ゲージ受感部とが繋がる疲労度検出用折り返し部の内側形状を曲率が一定の円形状とした疲労度検出部と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疲労度検出ひずみゲージに関し、詳しくは、ひずみゲージを接着した検出対象物の疲労度を検出することができる疲労度検出ひずみゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屈曲可能なフィルム状部材の表面や裏面に設けた抵抗体からなるひずみゲージが知られている。
【0003】
このひずみゲージは、検出対象の変形にともなって変形し、このひずみゲージの変形に応じた抵抗値の変化に基づき検出対象のひずみを検出する。
【0004】
特許文献1では、構造物の疲労度を推定する疲労センサとして、スリットを設けた金属箔に複数のひずみゲージを貼り付けてなる疲労センサを用いており、構造物の疲労に伴うスリットのき裂の進展をひずみゲージで検出する構成を開示している。
【0005】
また、特許文献2では、折り返し部の形状に特徴を有し、疲労寿命を改善した、はくひずみゲージを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−164515号公報
【特許文献2】特許第3443111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の発明では、金属箔に複数のひずみゲージを貼り付ける構造であるため、ひずみゲージの面積よりも大きな面積である金属箔の面積が、疲労センサを取り付けるためのスペースとして必要になり、局部的な構造物の応力集中部近くでの測定ができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献1に記載の疲労センサに、特許文献2に記載のひずみゲージを用いたとしても、局部的な構造物の応力集中部近くでの測定ができないという問題は、依然として解消しないものであった。
【0009】
本発明は上記の点にかんがみてなされたもので、1つのひずみゲージで取り付けスペースを小さくでき、従来のひずみゲージと同様に動ひずみが測定可能で、なおかつ局部的な構造物の応力集中部近くでの測定を段階的に可能とした疲労度検出ひずみゲージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の目的を達成するために、ゲージ受感部と隣接するゲージ受感部とを折り返しタブで接続して成る疲労度検出ひずみゲージにおいて、前記折り返しタブと前記ゲージ受感部とが繋がる折り返し部の内側形状を連続的に曲率が徐々に変わる曲線形状としたひずみ検出部と、前記ひずみ検出部と直列に接続した導通部と、前記導通部と並列に接続し、疲労度検出用ゲージ受感部と隣接する疲労度検出用ゲージ受感部とを疲労度検出用折り返しタブで接続して成り、前記疲労度検出用折り返しタブと前記疲労度検出用ゲージ受感部とが繋がる疲労度検出用折り返し部の内側形状を曲率が一定の円形状とした疲労度検出部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1つのひずみゲージで取り付けスペースを小さくでき、従来のひずみゲージと同様に動ひずみが測定可能で、なおかつ局部的な構造物の応力集中部近くでの測定を段階的に可能とした疲労度検出ひずみゲージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る疲労度検出ひずみゲージを用いたセンサの平面図である。
【図2】図1に示した疲労度検出ひずみゲージ100の構造を示す平面図である。
【図3】図2に示した疲労度検出用折り返しタブ131aを拡大して示す平面図である。
【図4】図2に示した疲労度検出用折り返しタブ131aに切り込みを入れる第1の例を示す平面図である。
【図5】図2に示した疲労度検出用折り返しタブ131aに切り込みを入れる第2の例を示す平面図である。
【図6】図2に示した疲労度検出用折り返し部分の内側隅部を鋭角にした第3の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージについて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係る疲労度検出ひずみゲージを用いたセンサの平面図である。
【0015】
本実施の形態の疲労度検出ひずみゲージでは、電気抵抗式のひずみゲージを用いる。この電気抵抗式のひずみゲージは、電気抵抗体にひずみを与えたとき、その抵抗値が変化する物理現象を応用してひずみ測定を行なうものであって、絶縁体である屈曲可能なフィルム状部材(例えばフレキシブル基板)の表面や裏面にひずみゲージを例えばフォトエッチングで設けてセンサを形成し、このセンサを被測定体の例えば表面に取り付け、その部分のひずみを電気量に変換して検出する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態のセンサ1は、フィルム状部材2に疲労度検出ひずみゲージ100を設けて構成される。
【0017】
図2は、図1に示した疲労度検出ひずみゲージ100の構造を示す平面図である。
【0018】
本実施の形態では、疲労度検出ひずみゲージ100は、フィルム状部材2に電気抵抗体を所定の形状で形成して成るものであり、この電気抵抗体は、外部出力用の端子部104と端子部105との間に、ひずみ検出部101と、導通部102と、疲労度検出部103とを接続して構成される。
【0019】
本実施の形態では、図2に示す、疲労度検出ひずみゲージ100の横長さXは例えば3.66mmであり、縦長さYは例えば3.63mmである。
【0020】
ひずみ検出部101は、複数のゲージ受感部110をつづら折り状に形成して成る。すなわち、ひずみ検出部101は、所定のゲージ受感部110と隣接するゲージ受感部110とを折り返しタブ111で接続して成る。
【0021】
このひずみ検出部101の、折り返しタブ111とゲージ受感部110とが繋がる折り返し部分の内側(例えば図2の破線の円Aで囲んだ部分)の形状は、連続的に曲率が徐々に変わる曲線形状としている。これは、特許文献2において開示した、応力集中を軽減し、疲労寿命を延ばすことができる形状、すなわち疲労による断線をしにくい形状である。
【0022】
ひずみ検出部101は、その一端を端子部104に接続し、その他端を導通部102に接続する。導通部102は、その一端をひずみ検出部101に接続し、その他端を端子部105に接続する。
【0023】
導通部102は、電気抵抗体125を折り返しタブ121で折り返すつづら折り形状にしている。折り返しタブ121の内側(例えば図2の破線の円Bで囲んだ部分)の形状は、連続的に曲率が徐々に変わる曲線形状としている。これは、特許文献2において開示した、応力集中を軽減し、疲労寿命を延ばすことができる形状、すなわち疲労による断線をしにくい形状である。
【0024】
なお、導通部102は、つづら折り形状に限られるものではなく、たとえば電気抵抗体125を直線状に設けてもよい。
【0025】
疲労度検出部103は導通部102と並列に接続している。疲労度検出部103は、本実施の形態では、ひずみ検出部101と直列に接続しているが、本発明はこれに限られず、ひずみ検出部101と並列に接続してもよい。
【0026】
疲労度検出部103は、複数の疲労度検出用ゲージ受感部130をつづら折り状に形成して成る。すなわち、疲労度検出部103は、所定の疲労度検出用ゲージ受感部130と隣接する疲労度検出用ゲージ受感部130とを疲労度検出用折り返しタブ131a、131b、131cまたは131dで接続して成り、疲労度検出用折り返しタブ131a、131b、131cまたは131dと疲労度検出用ゲージ受感部130とが繋がる疲労度検出用折り返し部分の内側(例えば図2の破線の円Cで囲んだ部分)の形状は、隅部がR形状としている。これは、特許文献2において開示した、応力を集中し、疲労寿命を短くした形状、すなわち疲労による断線をしやすい形状である。
【0027】
疲労度検出部103は、被測定体の疲労に伴う疲労度検出部103の疲労により断線を生じ、この断線による端子部104と端子部105との間の抵抗値の変化により、センサ1は、被測定体の疲労度を検出する。
【0028】
疲労度検出部103では、疲労度検出用折り返しタブ131a、131b、131cおよび131dの複数の疲労度検出用折り返しタブを有する。
【0029】
図3は、図2に示した疲労度検出用折り返しタブ131aを拡大して示す平面図である。
【0030】
本実施の形態では、疲労度検出用折り返しタブの線幅Wに対する長さLの比をETR(END TAB RATIO)と呼び、このETRが異なる複数の疲労度検出用折り返しタブを設けており、この複数の疲労度検出用折り返しタブ131a、131b、131cおよび131dのそれぞれを導通部102と並列に接続している。
【0031】
本実施の形態では、疲労度検出用折り返しタブ131aのETRを12とし、疲労度検出用折り返しタブ131bのETRを9とし、疲労度検出用折り返しタブ131cのETRを6とし、疲労度検出用折り返しタブ131dのETRを3とした。
【0032】
本発明者は、ETRが大きいほど疲労に弱く、疲労による断線をしやすいことを、実験によって発見した。そこで、本実施の形態では、疲労度検出用折り返しタブ131a、131b、131cおよび131dのように、ETRが異なる複数の疲労度検出用折り返しタブを有する構成とした。すなわち、疲労度検出部103の疲労度検出用折り返しタブ131a、131b、131cおよび131dでは、それぞれで疲労による断線のしやすさを異ならせており、これによって、疲労が蓄積されるにつれて、断線する疲労度検出用折り返しタブが増え、段階的に疲労度を検出することができる。すなわち、本実施の形態では、疲労度検出用折り返しタブ131aないし131cのいずれも断線していない状態、疲労度検出用折り返しタブ131aのみが断線した状態、疲労度検出用折り返しタブ131aおよび131bのみが断線した状態、さらに疲労度検出用折り返しタブ131a、131bおよび131cのすべてが断線した状態の4段階で、段階的に疲労度を検出することができる。
【0033】
なお、図1に示した実施の形態では、疲労度検出用折り返しタブ131a、131b、131cおよび131dを、線幅および長さ方向に直線的に延びる形状にしたが、本発明はこれに限られず、疲労度検出用折り返しタブ131a、131b、131cおよび131dに切り込みを入れることによって、疲労による断線のしやすさを異ならせるようにしてもよい。
【0034】
図4は、図2に示した疲労度検出用折り返しタブ131aに切り込みを入れる第1の例を示す平面図である。
【0035】
図4に示す例では、疲労度検出用折り返しタブ131aに切り込み132aを2つ設けている。この切り込み132aは、疲労度検出用折り返しタブ131aの両側を疲労度検出用折り返し部分の内側底辺に対向するように三角形状に切り落としている。この切り込み132aにより、疲労度検出用折り返しタブ131aは、疲労による断線のしやすさが増すことになる。また、この断線のしやすさは、切り込みが大きいほど増すことになる。したがって、複数の疲労度検出用折り返しタブが、互いに大きさの異なる切り込みを有する構成とすれば、これによって、疲労が蓄積されるにつれて、断線する疲労度検出用折り返しタブが増え、段階的に疲労度を検出することができる。
【0036】
図5は、図2に示した疲労度検出用折り返しタブ131aに切り込みを入れる第2の例を示す平面図である。
【0037】
図5に示す例では、疲労度検出用折り返しタブ131aに切り込み132bを2つ設けている。この切り込み132bは、疲労度検出用折り返しタブ131aの両側を疲労度検出用折り返し部分の内側底辺に対向するように半円状に切り落としており、2つの切り込み132bにより疲労度検出用折り返しタブ131aの側方を両側から切り落としている。この2つの切り込み132bにより、疲労度検出用折り返しタブ131aは、疲労による断線のしやすさが増すことになる。また、この断線のしやすさは、切り込みが大きいほど増すことになる。したがって、複数の疲労度検出用折り返しタブが、互いに大きさの異なる切り込みを有する構成とすれば、これによって、疲労が蓄積されるにつれて、断線する疲労度検出用折り返しタブが増え、段階的に疲労度を検出することができる。
図6は、図2に示した疲労度検出用折り返し部分の内側隅部を鋭角にした第3の例を示す平面図である。
【0038】
図6の例では、疲労度検出用ゲージ受感部130と疲労度検出用折り返しタブ131aとの接続箇所である、疲労度検出用折り返し部分の内側隅部132cを鋭角にしている。この内側隅部132cにより、疲労度検出用折り返しタブ131aは、疲労による断線のしやすさが増すことになる。また、この断線のしやすさは、より鋭角であるほど増すことになる。したがって、複数の疲労度検出用折り返しタブが、互いに鋭角度合いの異なる内側隅部を有する構成とすれば、これによって、疲労が蓄積されるにつれて、断線する疲労度検出用折り返しタブが増え、段階的に疲労度を検出することができる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、実施の形態については上記に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更および組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 センサ
100 疲労度検出ひずみゲージ
101 ひずみ検出部
102 導通部
103 疲労度検出部
104、105 端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲージ受感部と隣接するゲージ受感部とを折り返しタブで接続して成る疲労度検出ひずみゲージにおいて、
前記折り返しタブと前記ゲージ受感部とが繋がる折り返し部の内側形状を連続的に曲率が徐々に変わる曲線形状としたひずみ検出部と、
前記ひずみ検出部と直列に接続した導通部と、
前記導通部と並列に接続し、疲労度検出用ゲージ受感部と隣接する疲労度検出用ゲージ受感部とを疲労度検出用折り返しタブで接続して成り、前記疲労度検出用折り返しタブと前記疲労度検出用ゲージ受感部とが繋がる疲労度検出用折り返し部の内側形状を曲率が一定の円形状とした疲労度検出部と、
を備えたことを特徴とする疲労度検出ひずみゲージ。
【請求項2】
前記疲労度検出部が、前記疲労度検出用折り返しタブの線幅に対する長さの比をETRとしたとき、互いにETRが異なる複数の前記疲労度検出用折り返しタブを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージ。
【請求項3】
複数の前記疲労度検出用折り返しタブが、互いに大きさの異なる切り込みを有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の疲労度検出ひずみゲージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−247670(P2011−247670A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119116(P2010−119116)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】