説明

疲労度評価システムおよびそれを用いた企業内疲労度評価システム並びに疲労度評価方法

【課題】日常生活において簡便に実施できる客観的かつ定量的な疲労度評価システムおよび方法を提供する。
【解決手段】PCに代表される計算機上で動作するプログラムを用いて、被験者に図形の位置や言語音などを記憶させ、所定時間後にその記憶をテストする刺激を呈示し、その刺激に対する反応時間を取得する。被験者が記憶している期間に、認知的葛藤を生じさせる注意課題(不一致条件)を実施させる条件および認知的葛藤を生じさせない注意課題(一致条件)を実施させる条件の2条件を設定し、両方の記憶課題に対する反応時間を用いて疲労指標を算出し、疲労指標および/もしくは疲労指標から導出される評価結果を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疲労度評価システムおよびそれを用いた企業内疲労度評価システム並びに疲労度評価方法に係り、特に、被験者の精神的な疲労度を算出・評価するのに適した疲労度評価システムおよび評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
職場における心身の「疲労」が原因で、機器を誤操作したり、メンタルヘルスの問題へ発展したりするケースが見られる。疲労状態の早期発見は諸問題の予防につながるため、有効な疲労度評価方法の開発が必要とされている。一般的な疲労度評価方法は、大きく下記の3つに分類できる。
(1)主観的な疲労を質問紙などで評価する方法
(2)心拍数変化など生理反応で疲労度を評価する方法
(3)客観的に観測できる作業量や行動データで疲労度を評価する方法
上記(1)に関しては、「頭がおもい」「全身がだるい」「気が散る」などの複数項目に対して、自分が当てはまるか否かを回答し、その合計点数から疲労度を評価する「自覚症状調べ(産業疲労研究会・日本産業衛生学会)」に代表される。また、主観的な「疲労度」の程度を離散的あるいは連続的なスケールで回答させる方法もある。これらの方法には、被験者が感じている疲労感がダイレクトに反映される利点がある。
【0003】
上記(2)に関しては、筋電、心拍数、呼吸、酸素消費量などを測定し、疲労度を評価する方法が知られている。これらの方法は基本的に筋肉疲労など身体的な疲労の評価に適していると考えられる。
【0004】
上記(3)に関しては、例えばフリッカー法が知られている。これは点滅した光をみたとき、それが断続光から連続光に見える境界の周波数を測定するものであり、視覚疲労の評価には有効であるとされる。その他、作業量のモニタリングや行動指標の計測を利用して、疲労度を評価する方法もある。例えば、呈示図形に対する被験者の反応時関を測定し、疲労度を評価する装置が特許文献1に開示されている。具体的には、不規則な間隔でディスプレイに表示される図形に対してできるだけ早くキー押下するよう被験者に教示した条件下で、図形が表示されてから被験者がキーを押すまでの時間を測定し、その時間に応じて疲労度を評価する。同様に特許文献2では、動画像に対する反応時間を用いて、運転操作に関連する疲労程度を測定する方法が開示されている。これらの方法は、被験者が疲れている状態では単位時間あたりの作業量が減る、または反応すべき刺激に対する反応時間が長くなる、といった現象を利用したものであり、定量的に疲労度を可視化する効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−111989号公報
【特許文献2】特開2004−267339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来の疲労度評価方法については以下の課題がある上記(1)の、質問紙などを利用した疲労度評価方法は、被験者のバイアスや主観的な操作が入るという欠点がある。これは、例えば疲れている振りをしたいとき、あるいは疲労を隠したいときなど、被験者により評価結果を操作できるということを示す。すなわち、被験者のバイアスや意図的な操作が入り得るため、客観的および定量的な評価が難しい。また、被験者が自覚していない疲労に関しては検出することが難しく、潜在的な疲労によるヒューマンエラーを未然に防ぐような予防的利用には適さない。
【0007】
上記(2)の、心拍数変化などの生理反応を利用した疲労度評価方法は、事務作業などに従事している労働者の精神的な疲労度評価には適さないという課題がある。また、測定のために計測機器を装着する必要があり、日常的な疲労度モニタとしては使いづらい。精神的な疲労度の評価には適さない、計測機器を必要とするため日常的な利用が難しいという課題も挙げられる。
【0008】
更に、上記(3)の、作業量や行動データを利用した疲労度評価方法についても、断続光から連続光に見える境界は被験者の報告(ボタン押しのタイミング)により同定されるため、上記(1)の方法と同様に意図的な操作が入る可能性がある。特許文献1、2に開示された方法も、単純な作業量や反応時間だけを指標にした場合は、他の方法と同様に被験者の意図的操作が入る余地がある。自覚していない疲労まで検出できる可能性があるが、上記(1)の方法と同様に主観的な操作が入る余地があるという課題があった。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、精神的疲労度の評価技術を提供することである。すなわち、被験者による意図的な操作ができない方法で、職場等におけるヒューマンエラーの防止、メンタルヘルスの向上などに有効な、精神的な疲労度を表す客観的かつ定量的な指標を簡便に計測・表示することを可能にするシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的な構成を示すと次の通りである。本発明の疲労度評価システムは、被検者に課題を呈示する呈示手段と、当該被検者からの応答を受付ける入力手段と、課題シーケンスと、該課題シーケンスに基づく疲労指標算出式とを格納する記憶手段と、疲労度の演算処理を行う計算手段と、疲労度の評価結果を出力する出力手段と、制御手段とを有し、
前記課題シーケンスは、少なくとも、記憶を要する記憶課題と、前記記憶課題の呈示の間に挿入され注意を要する注意課題との組み合わせで構成されており、
前記制御手段は、前記課題シーケンスを前記呈示手段に呈示させ、当該課題シーケンスに対する前記応答としての回答と反応時間とを前記記憶手段に記憶させ、当該回答および反応時間から前記疲労指標算出式に基づき疲労指標を前記計算手段に算出させ、当該疲労指標に基づく疲労度の評価結果を前記出力手段に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、拮抗した複数の認知課題に対する反応時間の微妙な差を利用して精神的な疲労度の指標を算出することによって、疲労度の値を被験者が意図的に操作することを防止することができる。また、精神的な疲労度をパーソナルコンピュータ(PC)や携帯型情報通信端末などの既存の機器、設備上で簡便に計測できるため、特別な装置を必要とせず低コストで導入できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一の実施例になる疲労度評価システムの構成を示す模式図。
【図2】本発明の第一の実施例の処理の全体を示すフローチャート。
【図3】第一の実施例における、課題シーケンスA(一致条件の注意課題を挟んだ空間性記憶課題)を示す模式図。
【図4A】第一の実施例における、被験者への課題シーケンスA(記憶課題)呈示の画面の例。
【図4B】被験者への課題シーケンスA(注意課題)呈示の画面の例。
【図4C】被験者への課題シーケンスA(記憶課題)呈示の画面の例。
【図5】第一の実施例における、課題シーケンスB(不一致条件の注意課題を挟んだ空間性記憶課題)を示す模式図。
【図6A】第一の実施例における、課題シーケンスC(一致条件の注意課題を挟んだ言語性記憶課題)を示す模式図。
【図6B】被験者への課題シーケンスC(記憶課題)呈示の画面の例。
【図7】第一の実施例における、課題シーケンスD(不一致条件の注意課題を挟んだ言語性記憶課題)を示す模式図。
【図8】第一の実施例において、各条件の記憶課題に対する反応時間を示すグラフ。
【図9A】第一の実施例において、空間性記憶課題に対する反応時間指標(不一致条件−一致条件)と、質問紙で測定した疲労スコアの相関図。
【図9B】言語性記憶課題に対する反応時間指標(不一致条件−一致条件)と、質問紙で測定した疲労スコアの相関図。
【図9C】空間性記憶課題と言語性記憶課題の反応時間指標の差と、質問紙で測定した疲労スコアの相関図。
【図10】第一の実施例における、疲労度の判断基準の例を示す図。
【図11】本発明の第二の実施例になる疲労度評価システムにおける課題呈示処理の全体を示すフローチャート。
【図12A】第二の実施例における、刺激呈示パラメータの設定画面の例。
【図12B】反応取得パラメータの設定画面の例。
【図12C】フィードバック情報の設定画面の例。
【図13】第二の実施例における、設定ファイルの例。
【図14】第二の実施例における、課題呈示処理を示すフローチャート。
【図15】第二の実施例の変形例における、課題呈示処理を示すフローチャート。
【図16】第二の実施例における、疲労指標算出処理を示すフローチャート。
【図17A】第二の実施例における、被験者へのフィードバック画面として、疲労指標のみ表示した例。
【図17B】被験者へのフィードバック画面として、コメントのみ表示した例。
【図17C】被験者へのフィードバック画面として、疲労指標およびコメントを表示した例。
【図18】本発明の第三の実施例になる疲労度評価システムにおける、疲労度の時系列変化を表示した画面の例。
【図19】本発明の第四の実施例になる疲労度評価システムの構成を示す模式図。
【図20】本発明の第四の実施例の、処理の全体を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、認知課題に対する行動指標を計測し、被験者の疲労度を算出・表示するシステム及び方法を提供する。本願の発明者は、被験者に、課題シーケンスとして、少なくとも記憶を要する認知課題と注意を要する認知課題とを組み合わせて呈示する、換言すると、呈示した後所定時間経過後の前記被験者の記憶をテストする記憶課題と、前記記憶課題の呈示の間に挿入される注意課題との組み合わせを呈示すると共に、それらの反応時間指標の差を検知することによって、被験者の疲労度を定量的に評価できることを実験により見出した。そこで、本発明では、被験者に記憶を要する認知課題および注意を要する認知課題を呈示し、各認知課題に対する被験者の回答およびその反応時間を回答データとして取得し、該回答データを用いて被験者の疲労指標を算出する。なお、注意を要する課題は、不一致条件と一致条件の各課題の組み合わせがより好ましい。
【0014】
本発明によれば、拮抗した複数の認知課題に対する反応時間の微妙な差を利用して疲労度指標を算出するので、被験者の意図的な操作を防ぐことができる。すなわち、被験者が、疲労度の値を意図的に操作することを防止することができる。
【0015】
また、本発明によれば、すでに社会インフラとなりつつあるパーソナルコンピュータ(以下、PC)や携帯型情報通信端末などを利用して測定できるので、被験者の精神的な疲労状態を日常的かつ簡便に評価することができる。すなわち、既存の電子機器上で動作するソフトウェアにより、認知課題に対する反応を記録し、客観的・定量的に疲労度を測定、フィードバックすることができる。PC上で簡便に計測できるため、特別な装置を必要とせず低コストで導入できる。
また、シンプルな課題を用いて短時間に実施できるため、日常のオフィスワーク中に気軽に疲労度チェックをすることができる。また,「疲労」に関係した画像や語句を使用せずに実施できるため、自然な気分状態における疲労度指標が得られる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第一の実施例になる疲労度評価システムについて、図1〜図10を用いて説明する。本実施例の全体的なシステム構成を図1に示した。疲労度評価システム100は、被験者120あるいは実験者からの入力を受付ける入力手段101、およびこれらが実行する記憶処理、計算処理、呈示処理、入出力処理などの処理全般を制御する制御手段102、被験者120への課題呈示や表示を行う呈示手段(表示手段)103、疲労指標などを算出する計算手段104、疲労度評価プログラム、「認知課題」の情報を格納するとともに被験者からの回答データおよび疲労指標の算出に必要な情報などをテーブル形式等で格納する記憶手段105、評価結果やコメントなどを出力・表示する出力手段106および通信手段107を有する。入力手段101と呈示手段103及び出力手段106として、GUI機能を備えた共通の表示画面(図4A〜図4C参照)を用いてもよい。記憶手段105は各種メモリやハードディスクなどで構成され、測定パラメータやコメント等の情報も格納される。本実施例のシステムで実施する認知課題、すなわち「課題シーケンス」は、少なくとも、図形の位置や言語などを記憶させるターゲット刺激と、所定時間後にその記憶をテストするプローブ刺激から成る記憶課題と、矢印の向きを判断する注意を要する注意課題の2つの課題から成り、記憶手段105に格納されている複数の「課題シーケンス」の中の1種類の課題シーケンス、あるいは2種類の課題シーケンスの組み合わせを用いて、診断が実施される。本発明の「課題シーケンス」は、第1の認知課題として所定時間経過後の被験者の記憶をテストする記憶課題と、第2の認知課題として前記第1の認知課題の間に挿入される注意課題とで構成されている。本発明では、このように一つの認知課題に挿入する形で別の認知課題を実施するものをブランチング課題と定義する。
【0017】
図2に、本発明の第一の実施例の処理の全体を示すフローチャート。
最初に、疲労度評価システム100は、疲労度測定のために必要な情報についての初期設定を受付ける(S200)。初期設定事項としては、例えば、認知課題(記憶課題、注意課題)の種類や、呈示回数等であり、これらは、予め設定された初期値等を用いてもよく、呈示手段103の表示画面を操作して被験者自身が「認知課題」を選択して設定してもよい。あるいは、疲労度評価システムについての知識を有する実験者が初期値等を入力してもよい。ここでは、課題シーケンスAと課題シーケンスBの組み合わせが設定されたものとする。なお、課題シーケンスの具体的な例については、後で詳細に説明する。
【0018】
疲労度評価システム100は、設定された課題シーケンスAを呈示手段103に呈示し、これに対する被験者120の回答と反応時間を記録する(S202〜S226)。課題シーケンスAの呈示処理には、記憶課題(ターゲット)の呈示(S202)、注意課題の呈示とこれに対する被験者の回答と反応時間の記録(S204〜S208)、記憶課題(プローブ)の呈示とこれに対する被験者の回答と反応時間の記録(S210〜S212)とが含まれる。さらに、課題シーケンスBの呈示処理として、記憶課題(ターゲット)の呈示(S214)、注意課題の呈示とこれに対する被験者の回答と反応時間の記録(S216〜S220)、記憶課題(プローブ)の呈示とこれに対する被験者の回答と反応時間の記録(S222〜S224)とが含まれる。最後に、疲労度評価システム100は、課題シーケンスに対する測定結果に基づいた被験者の疲労指数の算出処理、(S230)及び評価結果の出力手段への表示処理(S232)を行う。
【0019】
図3に、課題シーケンスAの構成例を示す。矢印の方向は時間経過を示す。記憶課題では、注視点(+)を有する背景画面300を提示したのち、はじめに4つの四角が表示されたターゲット刺激301を1500ms表示し、その位置を被験者に記憶させる空間性記憶課題を用いた。ターゲット刺激301の呈示後、矢印の向きを被験者に判断させる注意課題302〜304を呈示した。図4Aに、第一の実施例における、被験者への記憶課題の呈示を行う表示画面400の例を示す。図4Aにおいて、402は課題シーケンスの呈示画面、404は課題シーケンスに関する被験者へのメッセージ、406は、被験者の回答操作用のアイコン、408は操作ボタン、410はテンキーである。また、図4Bに、被験者への注意課題の呈示画面の例を示す。
【0020】
図3に戻って、ターゲット刺激301の呈示後7000ms経過してからプローブ刺激305を表示し、その中の四角の位置が、記憶したターゲット刺激301中の四角の位置のいずれかと一致しているか否かを被験者のボタン押しにより判断させる。図4Cに、被験者へのターゲット刺激呈示の画面の例を示す。また、プローブ刺激305が表示されてからボタンが押されるまでの時間を被験者の反応時間として記録する。
【0021】
ここでは記憶させるターゲット刺激として4つの四角を表示したが、図形は何でもよく、また覚える図形の数も1から10くらいまで適切に選んでよい。必要なポイントは、記憶できる空間的な位置情報を含むことである。呈示時間も1500msに限定するものではなく、被験者が記憶すべき情報を認識できる長さがあればよい。同様に、ターゲット刺激の呈示からプローブ刺激の呈示までの時間(記憶保持時間)も7000msに限定するものではない。
【0022】
上記のパラメータ(図形の種類および数、呈示時間、記憶保持時間)は、該被験者あるいは該被験者群の平均的な記憶能力を参考にした難易度で調整する。例えば、集中しなければ遂行できないが、集中すれば一定以上の確率で被験者が正解できる程度の難易度が望ましい。
【0023】
本認知課題では、上記の記憶課題に矢印の向きを判断させる注意課題を挿入して実施する。すなわち、ブランチング課題を実施する。ターゲット刺激301の次に注視点(+)を500ms表示した後、注意課題302を最長1900ms表示して被験者の反応が入力され次第、注視点(+)に切り替わる。この例では、注意課題を2000ms毎に3回繰り返した。注意課題の呈示時間および繰り返し回数も、この例に限定するものではなく、記憶課題の長さ、全体の難易度などを参考に調節する。この例で用いた注意課題は、横に5つ並んだ矢印の中央の矢印の向きを左か右で回答するもので、認知心理学の分野ではフランカー課題と呼ばれる。課題シーケンスAの注意課題302〜304は、5つの矢印が同じ向きを向いている一致(congruent)条件と呼ばれるものである。全ての矢印が同じ向きを向いているため、被験者は比較的迷うことなく向きを判断することができる。
【0024】
これに対し、図5に、図3の課題シーケンスAとほぼ同じであるが、注意課題の条件だけが異なる課題シーケンスBの例を示した。課題シーケンスBにおける注意課題502〜505では、中央の矢印と、それ以外の4つが逆の方向を向いている。これを不一致(incongruent)条件と呼ぶ。この場合、周囲の矢印の向きが異なるため、中央の矢印の向きを判断するのが難しく、反応時間が遅くなることが知られている。ここでは注意課題の例として矢印の向きを判断させるフランカー課題を用いたが、本発明で用いる注意課題はフランカー課題に限定するものではなく、何らかを判断をさせる認知課題において、その判断を邪魔する(認知的干渉を起こす)要素を含む不一致条件とその判断を邪魔する(認知的干渉を起こす)要素を含まない一致条件の2条件を設定できることを必須事項として満たせばよい。
【0025】
なお、注意課題は、認知的干渉を生じさせるよう設計された不一致条件と、認知的干渉を生じさせないよう設計された一致条件との2つの条件に加えて、中立的な条件を加えた3つの条件で構成しても良く、あるいは、不一致条件及び一致条件について各々多段階に難易度を変えるようにしたより多層レベルの条件で構成しても良い。
【0026】
図5に示した課題シーケンスBの記憶課題(501、505)は、課題シーケンスAと全く同じであり、課題シーケンスAとBの相違点は、並行して実施する注意課題の条件(一致条件/不一致条件)だけである。本発明は、課題シーケンスA(一致条件)における記憶課題に対する反応時間と、課題シーケンスB(不一致条件)における記憶課題に対する反応時間の差あるいは比率を用いて、疲労度を表す指標を算出することを特徴とする。また、図形の位置を記憶する空間性記憶課題ではなく、音韻などの言語情報を記憶する言語性記憶課題、あるいは図形の色や形、文字などの形状情報を記憶する図形形状記憶課題を併用あるいは単独で用いることも有用である。
【0027】
言語性記憶課題を利用した課題シーケンスの例を図6Aの課題シーケンスC、図7の課題シーケンスDに示した。ここでは、図6Bの呈示画面の例に示すように、ひらがな4文字をターゲット(ターゲット刺激(601、 701)として覚えさせ、プローブ刺激605、 705)として表示したカタカナ1文字(実施例では、“ノ”)と同じ音声の文字が、その前に覚えたひらがな4文字の中にあったかなかったかを判断させる。記憶課題における記憶する情報の種類以外は、注意課題(602〜604、 702〜704)を含めて、図3の課題シーケンスAおよび図5の課題シーケンスCと同じ構造になっている。言語性記憶課題を利用した課題シーケンスC、Dの組み合わせとして、アルファベットの大文字A、B、C、−と小文字A、B、C、−、数字と1、2、3、−と英文one、 two、 three、−など、同じ音声を有する異種の文字の組み合わせを用いても良い。
【0028】
異なる条件のブランチング課題に対する反応時間の違いを利用することによって、疲労度が評価できる根拠について下記に示す。
【0029】
我々は、上記のように、空間性記憶ブランチング課題(一致条件)(図3、課題シーケンスA)、空間性記憶ブランチング課題(不一致条件)(図5、課題シーケンスB)、言語性記憶ブランチング課題(一致条件)(図6A、課題シーケンスC)、言語性記憶ブランチング課題(不一致条件)(図7、課題シーケンスD)の4条件を設定し、29人の被験者に対し実験を行った。各課題で用いる四角の位置や文字の種類、回答の正誤などは疑似的にランダム化し、同じ画像や回答に偏らないように工夫した。図8に、各被験者において各条件5回ずつ実験し、全被験者の平均反応時間を算出した結果を示す。
【0030】
図8に示すように、空間性記憶ブランチング課題においては、不一致条件(課題シーケンスB)における反応時間の方が一致条件(課題シーケンスA)における反応時間より長くなることが分かった。これは、挿入した不一致条件の注意課題が難しいため、記憶課題に対する反応が遅くなったと解釈できる自然な結果である。一方、言語性記憶ブランチング課題においては、一致条件(課題シーケンスC)における反応時間の方が不一致条件(課題シーケンスD)における反応時間より長くなることが分かった。難易度としては難しいはずの不一致条件を挿入した場合の方が、記憶課題に対する反応が速くなるという現象は今まで知られていない新しい知見である。
【0031】
これは、本実験で用いた注意課題の不一致条件が、言語記憶課題における何らかの処理を高める効果を持っていたことを示す。本実験からはその処理を特定できないが、音声ループを用いた音声言語の記憶処理、あるいは、ターゲットとして表示されるカタカナの(形状の)認知処理が、その候補として挙げられる。
【0032】
図9A、図9Bに、この「注意課題が一致条件であるか不一致条件であるか、の違いにより生じる記憶課題に対する反応時間の差」を反応時間指標として(不一致条件―一致条件)、その時の被験者の「疲労度」との相関関係を検討した結果を示す。
【0033】
ここでは、被験者の気分を評価する標準化された質問紙「POMS短縮版」(横山和仁 編著、「POMS短縮版 手引きと事例解説」、金子書房、2005)により評価した疲労スコア、POMS(疲労)を疲労度として用いた。空間性記憶ブランチングにおいては、不一致条件における反応時間が一致条件における反応時間より遅くなるほど、疲労度が小さくなることが示された。つまり、反応時間指標と疲労度は負の相関を示す(相関係数-0.54)。一方、言語性記憶ブランチングにおいては、不一致条件における反応時間が一致条件における反応時間より速くなるほど、疲労度が小さくなることが示された。つまり、反応時間指標と疲労度は正の相関を示す(相関係数0.53)。
【0034】
この現象をどう解釈するか。空間性記憶ブランチング課題においては、不一致条件(課題シーケンスB)における反応時間の方が一致条件(課題シーケンスA)における反応時間より遅くなる傾向があり、この傾向が弱まるほど疲労度が高い。これは、疲れていない状態では、不一致条件に対して強く注意を向けることが出来、その結果として、次のターゲット刺激に対する反応が遅くなったと考えられる。つまり注意課題の一致か不一致かの違いに応じたメリハリのある注意コントロールができているかどうか、を示すのではないか。一方、 言語性記憶ブランチング課題においては、不一致条件(課題シーケンスC)における反応時間の方が不一致条件(課題シーケンスD)における反応時間より早くなる傾向があり、この傾向が弱まるほど疲労度が高い。この結果から、言語性記憶ブランチング課題では、挿入した注意課題の不一致条件に対する注意の強さが、言語性記憶課題の処理を促進する方向に作用したと推測される。その原因は特定できないが、結果としては空間性記憶ブランチング課題と同様に、注意課題の条件(一致か不一致かの違い)によって生じる注意コントロールのメリハリを反映している可能性が高い。
【0035】
本実験から分かった一般傾向をまとめると、図形の向きを判断させる注意課題(不一致条件)を挿入することによって、図形の位置を記憶する空間性記憶課題に対する反応時間は遅くなる。一方、言語の音韻情報を記憶する言語性記憶課題では、反応時間が速くなる。そして、疲労度が高ければ高いほど、これらの一般傾向が弱まることが示された。ここで、本実験で用いた言語性記憶課題は、文字(カタカナ)の形状認識過程が関わっているため、図形の形状を記憶する図形記憶ブランチング課題においても言語性記憶ブランチング課題と同様の結果が得られると考えられる。
【0036】
いずれにしても、上記のように、各ブランチング課題の反応時間指標(不一致条件と一致条件)を利用することによって、被験者の疲労度を定量的に評価することができる。空間性記憶ブランチング課題の場合は、指標値が小さくなるほど疲労度が高く、言語性ブランチング課題の場合は、指標値が大きくなるほど疲労度が高い。
【0037】
図9Cは、空間性記憶課題と言語性記憶課題の反応時間指標の差と、質問紙で測定した疲労スコアの相関図である。
【0038】
いずれかの課題を単独で使用しても疲労度を評価できるが、より精度を上げるためには、2つのブランチング課題を使用して、複合的な指標を作成することが有効である。図9Cに示したように、言語性記憶ブランチング課題における反応時間指標から空間性記憶ブランチング課題における反応時間指標を引いて新たな反応時間指標を作成した場合、疲労度との相関がより高くなる(相関係数0.68)。
【0039】
本発明では、これらの現象を利用し、認知課題に対する反応をキー入力などで取得し、その反応時間から被験者の疲労度を算出・表示する。
【0040】
空間性記憶ブランチング課題(一致条件)の反応時間をA、空間性記憶ブランチング課題(不一致条件)の反応時間をB、言語性記憶ブランチング課題(一致条件)の反応時間をC、言語性記憶ブランチング課題(不一致条件)の反応時間をDとおくと、反応時間指標(R)の計算式としては下記の式(1)〜(11)の例がある。
R=B−A (1)
R=(B−A)/|B+A| (2)
R=D−C (3)
R=(D−C)/|D+C| (4)
R=(D−C)−(B−A) (5)
R={(D−C)−(B−A)}/{(D−C)+(B−A)} (6)
R=B/A (7)
R=D/C (8)
R=(D/C)/(B/A) (9)
R=(D/C)−(B/A) (10)
R=(D−C)/(B−A) (11)
上記式(1)〜(6)や式(11)に示した疲労指標算出式は、不一致条件の注意課題を挿入した場合の反応時間と、一致条件の注意課題を挿入した場合の反応時間との差分に基づいている。上記式(7)〜(10)に示した疲労指標算出式は、不一致条件の注意課題を挿入した場合の反応時間と、一致条件の注意課題を挿入した場合の反応時間との比率に基づいている。
【0041】
上記式(5)、(6)や式(11)に示した疲労指標算出式は、不一致条件の注意課題を挿入した場合および一致条件の注意課題を挿入した場合の言語性記憶課題に対する反応時間の差分と、不一致条件の注意課題を挿入した場合および一致条件の注意課題を挿入した場合の空間性記憶課題に対する反応時間の差分の、両方を含んでいる。また、上記式(2)、(4)、(6)に示した疲労指標算出式では、反応時間の差分を反応時間の和で除算した値に基づいている。
【0042】
上記式(9)、(10)に示した疲労指標算出式は、不一致条件の注意課題を挿入した場合および一致条件の注意課題を挿入した場合の言語性記憶課題に対する反応時間の比率と、不一致条件の注意課題を挿入した場合および一致条件の注意課題を挿入した場合の空間性記憶課題に対する反応時間の比率の、両方を含んでいる。
【0043】
基準データで標準化するなど、上記の各式をさらに変形することにより、他にも有効な指標を作成することができる。重要な点は、一致条件と不一致条件の差を抽出することである。
【0044】
認知課題の種類や難易度、被験者の状況と、望ましい計算式の関係をあらかじめ記憶手段に記憶しておき、初期設定の段階で測定パラメータが与えられたとき、複数の候補を表示画面に呈示し、被験者や実験者が計算式を選択できるようにしてもよい。例えば、与えられた測定パラメータから、測定範囲内の反応時間の差分が比較的小さいと想定される場合は反応時間の差分に基づく式を用い、応時間の差分が比較的大きいと想定される場合は、比率に基づく式、あるいは差分と比率の組み合わせに基づく式を用いことが考えられる。
【0045】
図10は、計算式として上記式(5)のR=(D−C)−(B−A)、すなわち、図9Cに示した相関図の結果を利用して、空間性記憶課題と言語性記憶課題の反応時間指標の差に基づき、被験者の疲労度の状態を、「元気」、「軽度疲労」、「重度疲労」に区分して判定する例を示している。
【0046】
なお、記憶課題および注意課題は、視覚により呈示する場合に限られるものではなく、聴覚刺激により呈示するようにしてもよい。例えば、上記各例の記憶課題および注意課題に相当するものを、聴覚刺激に変換して呈示するようにしてもよい。
【0047】
本発明によると、PCや携帯電話など既存の電子機器上で動作するソフトウェアにより、認知課題に対する反応を記録し、客観的・定量的に疲労度を測定、フィードバックすることができる。すなわち、微妙な反応時間の差を利用することにより、疲労度の値を被験者が意図的に操作することを防止することができる。また、PC上で簡便に計測できるため、特別な装置を必要とせず低コストで導入できる。また、シンプルな課題を用いて短時間に実施できるため、被験者は日常のオフィスワーク中に、あるいは家庭で、気軽に疲労度チェックをすることができる。さらに、「疲労」に関係した画像や語句を使用せずに実施できるため、被験者の自然な気分状態における疲労度指標が得られる。
【実施例2】
【0048】
本発明の第二の実施例になる疲労度評価システムについて、図11〜図17を用いて説明する。本実施例のシステム構成の基本形態は実施例1と同様であり、図1に示したように、認知課題および被験者からの回答データおよび疲労指標の算出に必要な情報などを格納する記憶手段、各処理を制御する制御手段、疲労指標などを算出する計算手段、被験者への課題呈示などを行う呈示手段、被験者あるいは実験者からの入力を受け付ける入力手段を有する。
【0049】
以下、システムの処理について、図11〜16を参照して説明する。
本システムの全体フローチャートを図11に示す。最初に、疲労度測定のために必要な情報についての初期設定を受付ける(S1100)。実施にあたり、予め設定したパラメータを自動的に使用する場合もあるが、実験者が入力手段を通してパラメータを設定することもできる。
設定画面400の例を図12A〜図12Cに示す。はじめに、設定画面400における刺激呈示パラメータの設定項目の例を図12Aに記した。
起動タイミング:疲労度評価を実施するタイミング(プログラムを起動するタイミング)を設定する。901「手動」ボタンを選択した場合、実験者もしくは被験者が開始ボタンを押すなどの行動を行うことによって、本システムが起動する。また、902「自動」ボタンを選択した場合、903に設定した時間間隔(この例では120分間隔)で自動的に起動する。
【0050】
記憶課題:記憶課題の種類、難易度、繰り返し回数を設定する。記憶課題の種類は、904のプルダウンメニューを用いて、あらかじめ記憶手段に格納されている記憶課題から選択する。次に、選択した記憶課題の難易度を、905〜907の「低」、「中」、「高」ボタンのいずれかを選択して設定する。908は記憶課題の繰り返し回数の入力部である。ここでは難易度を、「低」、「中」、「高」から選択する例を示しているが、5段階や10段階、あるいは課題条件毎になどより細かく設定させることも可能である。課題が難しくて出来ない場合、あるいは簡単すぎてあまり考えなくてよい場合、目的とする疲労度指標が得られないことが予想されるため、被験者のレベルに合わせて適切な難易度に調整することは重要である。
【0051】
また、予備テストを実施することにより、最適な難易度に自動調整する方法も有効である。その場合、正答率が所定の値以上になる、あるいは反応時間の平均値が所定の範囲に入る、などの基準により難易度を設定する。難易度の調整は、例えば、記憶課題のターゲット刺激となる図形の種類や数、記憶時間の長さなどを変えて実施する。
【0052】
最後に、記憶課題の繰り返し回数を913に入力して設定する。これは、各条件の記憶課題を何回実行するかを決定するものである。理論的には、繰り返し回数が多いほど安定した信頼性の高いデータが取得できるが、繰り返しが多くなると所要時間も長くなり被験者への負荷が増すという問題も生じる。反応時間のばらつきが一定範囲内に収まるまで繰返しを続けるなど、最適な繰り返し回数を自動設定することも可能である。
【0053】
注意(挿入)課題: 記憶課題に挿入する注意課題の種類、難易度、繰り返し回数を設定する。注意課題の種類は、909のプルダウンメニューを用いて、あらかじめ記憶手段に格納されている注意課題から選択する。次に、選択した注意課題の難易度を、記憶課題と同様に、910〜912の「低」「中」「高」ボタンのいずれかを選択して設定する。最後に、注意課題の繰り返し回数を913に入力して設定する。注意課題の繰り返し回数は、記憶課題の記憶時間によって限界があるため、実行できない数値は入力できないように工夫する場合がある。
【0054】
次に、図12Bに、反応取得パラメータの設定項目を記した。データとして採用する反応時間の有効範囲である「有効反応時間」は、入力部914に最小値、915に最大値を入力して設定する。また、課題間の反応時間差の有効範囲である「有効時間差」は、入力部916に最大値を入力することにより設定する。これは、当てずっぽうで押した可能性がある速い反応時間データや、うまく課題の解答に到達できずに失敗した可能性がある遅い反応時間のデータを採用しないことにより、より信頼性の高い結果を得るための工夫である。また、意図的な反応時間の操作を検出する役割も持つ。
【0055】
最後に、被験者にフィードバックする項目の選択画面を図12Cに記した。ここでは、疲労指標(点数)のみを表示するボタン917と、疲労指標から判定するコメントを表示するボタン918のいずれかを選択する例を示した。
疲労指標の算出式および疲労指標値からコメントへの変換表は、919に入力した設定ファイルから読み込む(図13)。図13の設定ファイル例では、図9Cで効果を示した反応時間指標を指標算出式として用いて、算出した疲労度指標に応じて3段階の疲労度コメントを表示する設定ファイルの例を示した。すなわち、疲労度指標が−500未満を「元気」、250以上を「重疲労」、それらの間を「軽疲労」と判定し、対応したコメントを表示する。なお、これらの区分の数や、区分のための指標値は一例であり、用途に応じて適宜設定すればよい。
【0056】
図11に戻り、疲労度評価システムは、起動タイミングが「手動」に設定されている場合、開始ボタンの押下あるいは所定の操作が行われた直後に課題呈示を開始する(S1102、S1106、S1108)。
【0057】
起動タイミングが「自動」に設定されている場合、設定した時間(図12の例では120分)が経過すると課題呈示を開始する(S1102、S1104、S1108)。
【0058】
図14に、課題呈示処理(S1110)の例を示した。実施する認知課題は、図形の位置や言語などを記憶させるターゲット刺激(S1112)と所定時間後にその記憶をテストするプローブ刺激(S1124、S1126)から成る記憶課題と、矢印の向きなど呈示刺激の特徴を判断する注意課題(S1114〜1122)の2種類の課題から成るブランチング課題である。注意課題に対する反応(回答および反応時間)は注意記憶データ(S1118)へ、記憶課題に対する反応(回答および反応時間)は記憶課題データ(S1128)へ記録する。ブランチング課題(記憶課題)の実施回数をn、各ブランチング課題内で実施される注意課題の実施回数をmとしてカウントし、それぞれ規定回数に達するまで繰返し実施する(S1130、S1132)。
【0059】
疲労指標の算出に用いるブランチング課題の実施回数nは、各条件で安定した平均値を得るために複数回とする。1回でも実行できるが、偶発的に反応時間が遅くなったり速くなったりする場合があるので、少なくとも3回以上繰り返すことが望ましい。ただし、繰り返し回数が多くなると計測時間の長くなり被験者の負担が増えるため、本発明の利点である簡便さを失わない程度に回数を抑える必要がある。
【0060】
一方、注意課題の実施回数mは、基本的に記憶課題において記憶を保持している期間の長さに依存する。一般に、記憶した情報を再認させる遅延マッチング課題では記憶の保持時間を1〜12秒程度に設定することが多い。記憶する情報あるいは被験者によって、難易度を最適にする保持期間は異なるため、最適な設定時間を一概に決めることは難しいが、ここでは7秒間として実施する。7秒間あれば、矢印の向きを判断する注意課題を3回程度実施することが可能である。このように注意課題の回数は、記憶課題の保持時間、記憶課題および注意課題の難易度、設定条件などを考慮して総合的に設定する。注意課題は、呈示された刺激の特徴に関して何らかの判断をさせる認知課題において、その判断を邪魔する(認知的干渉を起こす)要素を含む不一致条件とその判断を邪魔する(認知的干渉を起こす)要素を含まない一致条件の2条件を有する。それぞれの条件を同頻度で、かつ不規則な順序で実施することが望ましい。
【0061】
実施例2の変形例として、図15に、図14と同様の課題呈示処理のフローチャートを記した。図14との違いは、ブランチング課題の実施回数nを成功した試行数を基準に決められる点にある(S1134〜S1138)。ここでの成功した試行とは、被験者の反応が予め設定されていた回答と一致しており、かつ反応時間が設定した範囲内であった場合である。回答を間違ったり、通常より遅く反応したりした場合のデータは、疲労指標の算出に不適であると考えられるため、成功した試行だけで規定回数分のデータを取得し、疲労度を算出することは有効である。もちろん、誤答など失敗試行のデータを疲労指標の算出に活用することも可能である。
【0062】
図11に戻り、疲労度評価システムは、課題呈示処理(S1110)が終わると、次に疲労指標算出処理(S1140)を実行する。
【0063】
疲労指標算出処理の例を図16に示した。はじめに設定ファイル(図13)から疲労度算出式を読み込む(S1142〜S1144)。次に、課題呈示処理で取得した記憶課題データを1行ずつ(1試行ごとに)読み込む(S1146〜S1148)。その回答が正解かつ反応時間が設定範囲内である場合(S1150〜S1162)、A〜Dの条件毎に分類して各条件データに追加する(図3〜6)。
A:空間性記憶課題と一致条件の注意課題のブランチング課題
B:空間性記憶課題と不一致条件の注意課題のブランチング課題
C:言語性記憶課題と一致条件の注意課題のブランチング課題
D:言語性記憶課題と不一致条件の注意課題のブランチング課題
最後のデータ行まで読み込んだ後、各条件における反応時間の平均値を算出し、その値を用いて疲労度算出式に従った疲労指標を算出する(S1164〜S1166)。
【0064】
図11に戻り、疲労度評価システムは、フィードバックの設定に従い、結果を表示する(S1170)。フィードバックが疲労指標のみの場合は、そのまま疲労指標を数値、色、グラフなどで表示する(S1172)。疲労指標とコメントの両方、あるいはコメントのみをフィードバックする場合は、設定ファイルに従い疲労指標をコメントに変換して表示する(S1174〜S1180)。
【0065】
図17A〜17Cに、フィードバックの表示画面例を示す。図17Aの(A)、(B)は疲労指標のみを表示する場合で、数字および/もしくはグラフや色などで疲労指標をフィードバックする。図17Bの(A)、(B)は、疲労指標から変換したコメントを表示する場合で、変換表から得たコメントや図形、絵などをフィードバックする。図17Cの(A)、(B)は、疲労指標およびコメントの両方を表示する場合を示した。
【0066】
本実施例によれば、実施例1と同様な効果がある。
【実施例3】
【0067】
本発明の第三の実施例になる疲労度評価システムについて、図18を用いて説明する。本実施例の基本形態は実施例1、2と同様であり、このシステムを、PCや携帯電話など既存の電子機器上で実現し、被験者の疲労度を評価、フィードバックする。この実施例では、実施例1、2で述べた疲労度評価システム100が、同一被験者の疲労指標を経時的に記録し(ログを取り)、時系列変化として表示する機能を備えている。特に、本発明で示した疲労指標と合わせて、その他の生体情報(前日の睡眠時間、食事時間、血圧、心拍、生体ゆらぎ情報)を計測、表示するとともに、残業時間その他特別なイベントなども合わせ記録する機能を備えている。これらは、個人の疲労度をモニタする上で有効である。
【0068】
本実施例によれば、個人の疲労度をモニタすることにより、日々の疲れやミスを犯す確率などを見積もり、今後の作業内容の調整などに活用できる効果がある。
【実施例4】
【0069】
企業における労務管理の一環として、産業医(もしくはそれに相当する企業内の健康管理の責任者、以下単に産業医)が従業員の勤務状態の管理に関与する場合がある。例えば、産業医が個々の従業員の健康状態や勤務状況を把握し、長時間労働者に対して健康指導を行うことが考えられる。本発明の第四の実施例として、産業医が企業内の従業員の精神的な疲労度を算出・評価するための疲労度評価システムを、図19、図20で説明する。
【0070】
図19は、本発明の第四の実施例になる企業内疲労度評価システムの構成を示す模式図である。
企業内疲労度評価システム1500は、健康管理サーバ1501、勤務管理サーバ1502、社内組織データベース1503と、産業医の端末1504、従業員端末1505(A〜N)、職場の管理者端末1506とが、社内通信ネットワーク1507で相互に接続可能に構成されている。端末1504〜1506は、夫々、カメラ1508や音声入出力手段(図示略)を備え、産業医と従業員やその管理者との間で、Eメールによる相互連絡や、写真や映像の送受信が可能に構成されているものとする。また、健康管理サーバ1501の記憶手段には、実施例1〜3で説明した疲労度評価プログラムやこのプログラムを実行するのに必要な各種データが格納されており、このプログラムに産業医、個々の従業員、及び管理者がアクセスし実行可能となっている。健康管理サーバ1501には、実施例3で述べた個人の血圧、残業時間等の情報を含めてもよい。また、産業医や個々の従業員、管理者は、各々、所定のレベルのアクセス権限に基づき、健康管理サーバ1501、勤務管理サーバ1502、社内組織データベース1503の各種データベースにアクセス可能である。
【0071】
図20は、本発明の第四の実施例の、処理の全体を示すフローチャートである。産業医は、従業員からの診断要求(S2010)、管理者からの診断要求(S2011)、あるいは、産業医自身の抽出処理(S2012)などにより、疲労度の診断の対象者を選定する(S2020)。そして、Eメールやカメラを使用して従業員に診断を打診し(S2021)、従業員から肯定的な応答があった場合(S2022)、疲労度の診断を行う。まず、対象となる従業員に関する情報に基づき、診断のために最適なパラメータを設定し(S2023)、その設定に基づいて、従業員に対して疲労度評価プログラムによる診断を行う(S2024)。なお、診断処理を円滑に行うためには、診断専用の部屋で端末を使用するのが望ましい。産業医は、診断結果に基づき、「重度疲労」と診断される場合は、アドバイスを生成し、従業員や管理者に連絡し、必要な処置を講ずる(S2024)とともに、その結果を健康管理サーバ1501に記録する(S2025)。
【0072】
このように、本発明の疲労度評価プログラムを企業内システムとして構成し、従業員のデータを一括管理し、産業医による健康管理に利用することは効果的である。本実施例によれば、簡便・安価なシステムにより、日常的に従業員の疲労度を客観的・定量的に評価することができ、疲労指標および/もしくは評価結果を従業員にフィードバックすることにより、適切に休憩を促すなど、効率よく業務を進める支援に役立てることができる。また、職場におけるヒューマンエラーの防止、メンタルヘルスの向上などに有効な、精神的な疲労度を表す客観的かつ定量的な指標を簡便に計測・表示することを可能にするシステムを提供できる。すなわち、本実施例によれば、簡単な装置構成で客観的かつ定量的な指標を提供できるので、産業医が従業員の精神的な疲労の状況を的確に把握し、必要な処置を講ずることができる。疲労度評価プログラムの利用を個々の従業員の自己判断に任せると、仕事に追われ精神的な疲労を認識しないまま重症化する事態も考えられるが、企業内システムとし、個々の従業員を組織的に管理、支援できる体制とすることで、そのような事態の発生を予防することができる。
【符号の説明】
【0073】
100…疲労度評価システム、101…入力手段、102…制御手段、103…呈示手段(表示手段)、104…計算手段、105…記憶手段、106…出力手段、107…通信手段、120…被験者、301…空間性記憶課題のターゲット刺激例、302〜304…一致条件の注意課題例、305…空間性記憶課題のプローブ刺激例、400…表示画面、402…課題シーケンスの呈示画面、404…課題シーケンスに関する被験者へのメッセージ、406…被験者の回答操作用のアイコン、408…操作ボタン、410…テンキー、501…空間性記憶課題のターゲット刺激例、502〜504…不一致条件の注意課題例、505…空間性記憶課題のプローブ刺激例、601…言語性記憶課題のターゲット刺激例、602〜604…一致条件の注意課題例、605…言語性記憶課題のプローブ刺激例、701…言語性記憶課題のターゲット刺激例、702〜704…不一致条件の注意課題例、705…言語性記憶課題のプローブ刺激例、901…起動タイミングを手動に設定するラジオボタン、902…起動タイミングを自動に設定するラジオボタン、903…起動タイミングの間隔時間(分)の入力部、904…記憶課題の種類を選択するプルダウンメニュー、905…記憶課題の難易度を「低」に設定するラジオボタン、906…記憶課題の難易度を「中」に設定するラジオボタン、907…記憶課題の難易度を「高」に設定するラジオボタン、908…記憶課題の繰り返し回数の入力部、 909…注意課題の種類を選択するプルダウンメニュー、910…注意課題の難易度を「低」に設定するラジオボタン、911…注意課題の難易度を「中」に設定するラジオボタン、912…注意課題の難易度を「高」に設定するラジオボタン、913…注意課題の繰り返し回数の入力部、914…有効反応時間の最小値の入力部、915…有効反応時間の最大値の入力部、916…有効時間差の最大値の入力部、917…フィードバック情報に疲労指標を選択するラジオボタン、918…フィードバック情報にコメントを選択するラジオボタン、919…設定ファイルの選択部、1500…企業内疲労度評価システム、1501…健康管理サーバ、1502…勤務管理サーバ、1503…社内組織データベース、1504…産業医の端末、1505(A〜N)…従業員端末、1506…職場の管理者端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に課題を呈示する呈示手段と、
当該被検者からの応答を受付ける入力手段と、
課題シーケンスと、該課題シーケンスに基づく疲労指標算出式とを格納する記憶手段と、
疲労度の演算処理を行う計算手段と、
疲労度の評価結果を出力する出力手段と、
制御手段とを有し、
前記課題シーケンスは、少なくとも、記憶を要する記憶課題と、前記記憶課題の呈示の間に挿入され注意を要する注意課題との組み合わせで構成されており、
前記制御手段は、前記課題シーケンスを前記呈示手段に呈示させ、当該課題シーケンスに対する前記応答としての回答と反応時間とを前記記憶手段に記憶させ、当該回答および反応時間から前記疲労指標算出式に基づき疲労指標を前記計算手段に算出させ、当該疲労指標に基づく疲労度の評価結果を前記出力手段に出力することを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記注意課題が、認知的干渉を生じさせるよう設計された不一致条件と、前記認知的干渉を生じさせないよう設計された一致条件の、少なくとも2つの条件から成ることを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記疲労指標算出式は、前記記憶課題に対する前記反応時間を用いており、
前記不一致条件の注意課題を挿入した場合の前記反応時間と、前記一致条件の注意課題を挿入した場合の前記反応時間との差分を利用して前記疲労度を評価することを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記疲労指標算出式は、前記記憶課題に対する前記反応時間を用いており、
前記不一致条件の注意課題を挿入した場合の前記反応時間と、前記一致条件の注意課題を挿入した場合の前記反応時間との比率を利用して前記疲労度を評価することを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記記憶課題は、図形の位置や形、言語などを記憶させるターゲット刺激と、
所定時間後にその記憶をテストするプローブ刺激とを有し、
前記入力手段からの応答に基づき前記プローブ刺激に対する前記反応時間を取得することを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記記憶課題は、記憶するために音韻ループを用いる言語性記憶課題と、記憶するために音韻ループを用いない空間性記憶課題の、いずれか一方あるいは両方を備えることを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項7】
請求項2において、
前記記憶課題は、図形の色や形状を記憶する図形形状記憶課題と、図形の位置を記憶する空間性記憶課題の、いずれか一方あるいは両方を備えることを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項8】
請求項2において、
前記疲労指標算出式は、前記不一致条件の注意課題を挿入した場合および前記一致条件の注意課題を挿入した場合の言語性記憶課題に対する反応時間の差分と、前記不一致条件の注意課題を挿入した場合および前記一致条件の注意課題を挿入した場合の空間性記憶課題に対する反応時間の差分の、両方を含むことを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項9】
請求項2において、
前記疲労指標算出式は、前記不一致条件の注意課題を挿入した場合および前記一致条件の注意課題を挿入した場合の言語性記憶課題に対する反応時間の比率と、前記不一致条件の注意課題を挿入した場合および前記一致条件の注意課題を挿入した場合の空間性記憶課題に対する反応時間の比率の、両方を含むことを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項10】
請求項1において、
前記疲労指標は、前記記憶課題および前記注意課題に対する正答率または反応時間が所定範囲の値だったときの反応時間のみを用いて算出することを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項11】
請求項1において、
前記疲労指標は、前記記憶課題および前記注意課題に対する正答率および反応時間が所定範囲の値だったときの反応時間のみを用いて算出することを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項12】
請求項1において、
前記記憶課題および前記注意課題は、視覚刺激により呈示することを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項13】
請求項1において、
前記記憶課題および前記注意課題は、聴覚刺激により呈示することを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項14】
請求項1において、
前記入力手段、前記呈示手段及び前記出力手段は、GUI機能を備えた共通の表示画面を有することを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項15】
請求項14において、
前記制御手段は、同一被験者の前記疲労指標を経時的に記録し、時系列変化として前記表示画面に表示する機能を備えていることを特徴とする疲労度評価システム。
【請求項16】
社内通信ネットワークで相互に接続可能に構成された健康管理サーバと、産業医端末と、従業員端末と、管理者端末とを備え、
前記各端末は、課題を呈示する呈示手段と、該課題の呈示に対する応答を受付ける入力手段と、課題シーケンスと該課題シーケンスに基づく疲労指標算出式とを格納する記憶手段と、疲労度の演算処理を行う計算手段と、疲労度の評価結果を出力する出力手段と、制御手段とを有し、
前記課題シーケンスは、少なくとも、記憶を要する記憶課題と、前記記憶課題の呈示の間に挿入され注意を要する注意課題との組み合わせで構成されており、
前記産業医端末は、前記健康管理サーバのデータベースにアクセスして従業員の健康管理に関する情報を抽出すると共に、疲労度の診断の対象者を選定する機能を備えており、
前記産業医端末の前記制御手段は、前記従業員の診断のために最適なパラメータを設定し、前記課題シーケンスを前記従業員端末の前記呈示手段に呈示させ、当該課題シーケンスに対する前記従業員の応答としての回答と反応時間とを前記記憶手段に記憶させ、当該回答および反応時間から前記疲労指標算出式に基づき疲労指標を前記計算手段に算出させ、当該疲労指標に基づく前記従業員の疲労度の評価結果を健康管理サーバに記録するとともに、前記評価結果を前記従業員端末及び前記管理者端末に出力可能に構成されていることを特徴とする企業内疲労度評価システム。
【請求項17】
請求項16おいて、
前記注意課題が、認知的干渉を生じさせるよう設計された不一致条件と、前記認知的干渉を生じさせないよう設計された一致条件の、少なくとも2つの条件から成ることを特徴とする企業内疲労度評価システム。
【請求項18】
疲労度評価システムを用いた疲労度評価方法であって、
前記疲労度評価システムは、被検者に課題を呈示する呈示手段と、当該被検者からの応答を受付ける入力手段と、課題シーケンスと、該課題シーケンスに基づく疲労指標算出式とを格納する記憶手段と、疲労度の演算処理を行う計算手段と、疲労度の評価結果を出力する出力手段と、制御手段とを有しており、
前記課題シーケンスは、少なくとも、記憶を要する記憶課題と、前記記憶課題の呈示の間に挿入され注意を要する注意課題との組み合わせで構成されており、
前記課題シーケンスを前記呈示手段に呈示し、
当該課題シーケンスに対する前記被検者の応答としての回答と反応時間とを前記記憶手段に記憶し、
当該回答および反応時間から前記疲労指標算出式に基づき疲労指標を前記計算手段により算出し、
当該疲労指標に基づく疲労度の評価結果を前記出力手段に出力することを特徴とする疲労度評価方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記記憶課題は、記憶を要するターゲット刺激と、所定時間後に該ターゲット刺激に関する記憶をテストするプローブ刺激とを有しており、
前記注意課題が、認知的干渉を生じさせるよう設計された不一致条件と、前記認知的干渉を生じさせないよう設計された一致条件の、少なくとも2つの条件から成り、
前記ターゲット刺激を呈示した後、前記注意課題を呈示し、当該注意課題に対する前記被検者の応答としての回答と反応時間とを前記記憶手段に記憶し、
前記所定時間後に前記プローブ刺激を呈示し、当該注プローブ刺激に対する前記被検者の応答としての回答と反応時間とを前記記憶手段に記憶し、
前記記憶課題に対する前記反応時間を用いて前記疲労指標算出式により、前記疲労指標を算出することを特徴とする疲労度評価方法。
【請求項20】
請求項19において、
前記疲労指標は、前記不一致条件の注意課題を挿入した場合および前記一致条件の注意課題を挿入した場合の前記言語性記憶課題に対する反応時間の差分あるいは比率と、前記不一致条件の注意課題を挿入した場合および前記一致条件の注意課題を挿入した場合の前記空間性記憶課題に対する反応時間の差分あるいは比率の、両方を用いて算出されることを特徴とする疲労度評価方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図17C】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−161137(P2011−161137A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30016(P2010−30016)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】