説明

疲労改善剤

【課題】
より疲労回復効果が優れ、安全性が高く、長期間にわたり服用できる疲労改善剤および疲労改善効果を有する飲食物を提供すること。
【解決手段】
特定の抽出方法によって得られるアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物を有効成分として含む疲労改善剤、ならびに特定の抽出方法によって得られるアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物を有効成分として含む疲労改善効果を有する飲食物を提供することによって、疲労回復効果が優れ、安全性が高く、長期間にわたり服用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疲労改善効果を有する薬剤ならびに飲食物に関する。さらに詳しくは、ヘマトコッカスから得られた抽出物を有効成分として含有することを特徴とする疲労改善剤ならびに疲労改善効果を有する飲食物に関する。
【背景技術】
【0002】
疲労は、運動や作業の能力低下、疲労感、倦怠感、意欲低下、睡眠障害や食欲不振などを多様な症状を伴う疾患である。特に激しい運動や長時間の作業や労働によって、疲労を生じる。現在、日本では人口の約6割が疲労を感じ、2割以上が能力低下を感じており、疲労を改善することは社会的に重要な問題となっている。これまで、疲労回復にはビタミンB1、B2、B6、B12、ビタミンC、ニコチン酸、パントテン酸、γ−オリザノール、タウリンやアミノ酸類などが用いられてきた。しかし、食品においては多くの摂取量を必要とすることや、医薬品においては処方や副作用の問題があり、安全で手軽に接収できる飲食物、機能性食品および薬剤が求められている。
【0003】
ヘマトコッカス藻は、淡水性単細胞緑藻の一種であり、直径約20μmでゼラチン質に包まれ2本の鞭毛を有している。通常は緑藻藻であるためクロロフィル含量が高く緑色であるのに対し、窒素源欠乏等の飢餓条件ではシスト化し、アスタキサンチン含量の高い休眠胞子を形成する。アスタキサンチンを含有したヘマトコッカスは、養殖魚の色揚げ剤や、鶏卵の着色、食品など、及びアスタキサンチンを生産するために利用されている。
【0004】
アスタキサンチンは、β−カロテンと同じカロテノイドの一種で、エビ、カニ等の甲殻類、サケ、タイ等の魚類、緑藻ヘマトコッカス等の藻類、赤色酵母ファフィア等の酵母類等、天然、特に海洋に広く分布しており、赤色色素として広く用いられている。アスタキサンチンはビタミンE(α−トコフェロール)の100〜1,000倍、β−カロテンの約40倍もの強力な抗酸化作用を有することが見いだされ、現在は健康食品として用いられている。
【0005】
アスタキサンチンが有するその他の機能特性として、抗ストレス効果を有すること(特許文献1)、筋肉機能の持続を改善すること(特許文献2)が知られている。
【0006】
しかしながら、アスタキサンチンが肉体などの疲労改善効果を有することは知られておらず、特に特定の抽出方法によるアスタキサンチンを含有するヘマトコッカスの抽出物が、すぐれた疲労改善効果を有していることは知られていない。
【特許文献1】日本国特開平第9−124470号公報
【特許文献2】日本国特表第2001−514215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、疲労改善物質を探索した結果、特定の抽出方法によってアスタキサンチンを含有するヘマトコッカスから得られた抽出物が疲労を改善する効果があることを見い出した。本発明は、かかる知見に基づき完成されたものであり、特定の抽出方法によってアスタキサンチンを含有するヘマトコッカスから得られた抽出物を有効成分とする疲労改善剤、並びに特定の抽出方法によってアスタキサンチンを含有するヘマトコッカスから得られた抽出物を有効成分として含む疲労改善効果を有する飲食物を提供するものである。
【0008】
本発明は、特定の抽出方法によってアスタキサンチンを含有するヘマトコッカスから得られる抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善剤、並びに特定の抽出方法によってアスタキサンチンを含有するヘマトコッカスから得られる抽出物を有効成分として含む疲労改善作用を有する飲食物を提供することを目的とする。本発明の薬剤および飲食物は、疲労を改善することによって、疲労によって生じる疾病の改善・治療・予防にも有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の抽出方法によってアスタキサンチンを含有するヘマトコッカスから得られる抽出物が特に優れた疲労改善効果を示すことを見出した。本発明は係る知見に基づくものである。
【0010】
即ち、本発明は、(1)アスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善剤であり、
(2)ヘマトコッカスを乾燥・破砕したのち、二酸化炭素下で超臨界抽出することによって得られるアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善剤であり、
(3)ヘマトコッカスを溶媒下で粉砕・抽出し、溶媒を留去することによって得られるアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善剤であり、
(4)アスタキサンチンを含有するヘマトコッカスからの抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善効果を有する飲食物であり、
(5)有効成分としてヘマトコッカスを乾燥・破砕したのち、二酸化炭素下で超臨界抽出することによって得られるアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善効果を有する飲食物であり、
(6)有効成分としてヘマトコッカスを溶媒下で粉砕・抽出し、溶媒を留去することによって得られるアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善効果を有する飲食物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明における疲労とは、身体的または精神的負荷を連続して受けたときにみられる身体的および精神的な作業能力の質的または量的な低下である。疲労としては、運動時の疲労、長時間の作業(デスクワークなど)による疲労、精神的なストレスによる疲労、慢性疲労症候群などがあげられる。 本発明で疲労改善効果とは、特に断りがない限り、疲労を抑制する効果、疲労の回復を促進する効果、疲労が正確に認知される効果を含む。
【0012】
ヘマトコッカスは、ボルボックス目クラミドモナス科に属する緑藻類である。通常は緑藻藻であるためクロロフィル含量が高く緑色であり、2本の鞭毛によって水中を遊泳している。しかし、栄養源欠乏や温度変化等の飢餓条件では休眠胞子を形成し、アスタキサンチン含量が高くなり赤い球形となる。本発明においては、いづれの状態でのヘマトコッカスを用いることができるが、アスタキサンチンを多く含有した休眠胞子となったヘマトコッカスを用いるのが好ましい。また、ヘマトコッカス属に属する緑藻類では、例えば、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluviaris)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバケンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)などを用いることができ、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluviaris)が好ましい。
【0013】
ヘマトコッカス緑藻類の培養方法としては、異種微生物の混入・繁殖がなく、その他の夾雑物の混入が少ない密閉型の培養方法が好ましく、例えば、一部解放型のドーム形状、円錐形状又は円筒形状の培養装置と装置内で移動自在のガス吐出装置を有する培養基を用いて培養する方法(国際公開第99/50384号公報)や、密閉型の培養装置に光源を入れ内部から光を照射して培養する方法、平板状の培養槽やチューブ型の培養層を用いる方法、ならびにピーク波長が約540nm以下の波長の光を照射することによって培養する方法(特開2004−147641号公報)が適している。
【0014】
本発明のアスタキサンチンを含有するヘマトコッカス藻からの抽出物を得る方法としては、(1)ヘマトコッカスを乾燥し破砕した後、二酸化炭素を抽出溶媒として超臨界抽出を行い、二酸化炭素を除去して抽出物を得る方法〔超臨界抽出法〕、(2)ヘマトコッカスを有機溶媒に懸濁した後、粉砕機に通して細胞を粉砕して抽出し、有機溶媒を除去して抽出物を得る方法〔粉砕抽出法〕があげられる。
【0015】
超臨界抽出法を、以下に具体的に説明する。アスタキサンチンを含有したヘマトコッカスを乾燥し破砕したのち、抽出層に充填し、超臨界状態の二酸化炭素を抽出剤として抽出し、二酸化炭素を除去して抽出物を得る。超臨界状態の物質は、液体と同様の抽出能力を有しながら、気体に近い拡散能力を有し、抽出効率が高く、さらには、抽出溶媒である抽剤を残さず容易に完全に分離することができる。例えば、特開2004−41147号公報に記載の方法で超臨界抽出を行うことができる。
【0016】
抽剤として二酸化炭素の場合の超臨界抽出の条件としては、通常、温度が31〜80℃、好ましくは31〜50℃、圧力が7.38〜40MPa、好ましくは10〜38MPaである。ここで、二酸化炭素の超臨界流体には、超臨界状態すなわち温度および圧力が臨界温度、臨界圧力を超過した状態の流体のみに限らず、温度、圧力の両者が臨界点の近傍にあるものなど、いわゆる亜臨界状態の流体も含む。
【0017】
抽出能力を向上させるため、二酸化炭素の超臨界流体に補助溶剤を加えて、抽出能力を向上させることができる。補助溶剤としては、グリセリン、エタノール、水を挙げることができ、グリセリンが好ましい。補助溶剤は、抽出速度の変化により、増減させることができる。例えば、抽出時間が長くなると抽出速度が下がるため、超臨界流体への補助溶剤の添加量を多くするとよい。
【0018】
抽出に用いることができるヘマトコッカスは、常法に従って、粉砕・乾燥したものを用いることができ、例えば、WO2002/077105方法で粉砕・乾燥を行い粉末を得ることができる。粉末状のまま充填しても、あらかじめ湿式でペレット状、球状等の形状に形成してから充填してもよい。粉体および/または成形体に、あらかじめ、上述の補助溶剤や抽出促進剤を混合しておくことにより、抽出性を高めることができる。
【0019】
抽出促進剤とは、ヘマトコッカスなどの藻類に含まれる油脂類であり、同様の物質をあらかじめ添加しておくことで、成形体の多孔質化を促進し超臨界流体との接触面積を多くすることにより、抽出性能を向上させるものと考えられる。油脂類とは、例えば、炭素数が8個ないし12個の中鎖脂肪酸トリグリセリド、菜種油、コーン油、オリーブ油等からなる1種以上であり、炭素数が8個ないし12個の中鎖脂肪酸トリグリセリドが好ましい。
【0020】
粉砕抽出法を以下に具体的に説明する。粉砕抽出法は、ヘマトコッカスを有機溶媒に懸濁した後、粉砕機に通して細胞を粉砕とともに抽出し、固形物除去して、有機溶媒を除去して抽出物を得る方法である。この方法は、ヘマトコッカスに余分な加熱を行わず、また抽出経路で空気に曝されないため、脂質やアスタキサンチンなど抽出物内物質の酸化が抑制され、製造途中で不純物の生成が極めて少ないという特徴がある。例えば、本願出願人が、先に出願(特願2004−253525)した方法をあげることができる。
【0021】
ここで用いるヘマトコッカスは、湿末または乾燥物を用いることができる。必要に応じて界面活性剤、抗酸化剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルがあげられる。抗酸化剤としてはビタミンE(トコフェロール)、ビタミンE誘導体、トコトリエノール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、ビタミンC誘導体、グルタチオン、フィチン酸、カテキン類、フラボノイド類、β−カロチン等が挙げられる。
【0022】
抽出に用いることができる有機溶媒は、例えばエタノール、メタノールなどのアルコール類、アセトン、エーテル、酢酸エチル、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、塩化メチレンであり、好ましくはエタノール、メタノール、アセトン、ヘキサンであり、特に好ましくはアセトン、エタノール、ヘキサンである。
【0023】
本発明のカロテノイド類含有天然物の破砕方法としては、カロテノイド類含有天然物を有機溶媒に懸濁させ、有機溶媒を使用可能な破砕機、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波破砕機、ビーズミルなどを用いて湿式破砕することができ、好ましくはビーズミルで湿式破砕である。
【0024】
ビーズミルの破砕条件としては、抽出物の劣化を押さえるため短時間で行うのがよく、滞留時間としては1〜30分、周速は2〜30m/sec、用いられるビーズ径は0.2〜5mm、破砕時の温度としては−10〜50℃である。
【0025】
固形物除去処理方法としては、常法に従って、例えば、加圧濾過、減圧濾過、自然濾過などで行うことができる。
【0026】
溶媒の除去方法としては、常法に従って行えばよく、例えば減圧濃縮機などで濾液から有機溶媒を除去する。抽出物の劣化を押さえるため過剰な加温をしない方が良く、0〜200℃、好ましくは20〜80℃で行い、1回の処理時間は短い方が良く、0.5〜20時間、好ましくは0.5〜10時間で処理できる量で溶媒を除去する。有機溶媒を更に除去したい場合は、分子蒸留機や薄膜式遠心エバポレーターなどでさらに有機溶媒の濃度を減少させることができる。
【0027】
本発明において主に効果があるのはアスタキサンチンであり、その他の抽出成分が相乗的な効果を有していると考えられる。本発明において、ヘマトコッカス抽出物の配合量を計算する場合は、ヘマトコッカス抽出物中に含まれるアスタキサンチンをアスタキサンチン遊離体として換算することによって計算される。でアスタキサンチンは、3,3'−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4'−ジオンであり、立体異性体を有する。具体的には、(3R,3'R)−アスタキサンチン、(3R,3'S)−アスタキサンチンおよび(3S,3'S)−アスタキサンチンの3種の立体異性体が知られている。
【0028】
本発明の記載で、特に記載がない限り、アスタキサンチンはアスタキサンチン及び/又はそのエステルを含む。さらに、アスタキサンチンのエステルにはモノエステル体及び/又はジエステル体を含む。
【0029】
アスタキサンチンは突然変異原性が観察されず、安全性が高い化合物であることが知られて、食品添加物として広く用いられている(高橋二郎ほか:ヘマトコッカス藻アスタキサンチンの毒性試験―Ames試験、ラット単回投与毒性試験、ラット90日反復経口投与性毒性試験―,臨床医薬,20:867−881,2004)。
【0030】
本発明のアスタキサンチン含有抽出物には、アスタキサンチンとして、アスタキサンチンの遊離体、モノエステル体、ジエステル体の少なくとも一種以上が含まれている。ジエステル体は2つの水酸基がエステル結合により保護されているため物理的に遊離体やモノエステル体よりも安定性が高く飼料中で酸化分解されにくい。しかし、生体中に取り込まれると生体内酵素により速やかに遊離体のアスタキサンチンに加水分解され、効果を示すものと考えられている。
【0031】
アスタキサンチンのモノエステルとしては、低級または高級飽和脂肪酸、あるいは低級または高級不飽和脂肪酸によりエステル化されたエステル類をあげることができる。前記低級または高級飽和脂肪酸、あるいは低級または高級不飽和脂肪酸の具体例としては、酢酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、へブタデカン酸、エライジン酸、リシノール酸、ベトロセリン酸、バクセン酸、エレオステアリン酸、プニシン酸、リカン酸、パリナリン酸、ガドール酸、5−エイコセン酸、5−ドコセン酸、セトール酸、エルシン酸、5,13−ドコサジエン酸、セラコール酸、デセン酸、ステリング酸、ドデセン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エイコサオペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などをあげることができる。また、アスタキサンチンのジエステルとしては前記脂肪酸からなる群から選択される同一または異種の脂肪酸によりエステル化されたジエステル類である。
【0032】
さらに、アスタキサンチンのモノエステルとしては、グリシン、アラニンなどのアミノ酸;酢酸、クエン酸などの一価または多価カルボン酸;リン酸、硫酸などの無機酸;グルコシドなどの糖;グリセロ糖脂肪酸、スフィンゴ糖脂肪酸などの糖脂肪酸;グリセロ脂肪酸などの脂肪酸;グリセロリン酸などによりエステル化されたモノエステル類である。前記モノエステル類の塩も含まれている。
【0033】
アスタキサンチンのジエステルとしては、前記低級飽和脂肪酸、高級飽和脂肪酸、低級不飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸、アミノ酸、一価または多価カルボン酸、無機酸、糖、糖脂肪酸、脂肪酸およびグリセロリン酸からなる群から選択される同一または異種の酸によりエステル化されたジエステル類をあげることができる。なお、考えられ得る場合は前記ジエステル類の塩も含む。グリセロリン酸のジエステルとしては、グリセロリン酸の飽和脂肪酸エステル類、または高級不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸から選択される脂肪酸類を含有するグリセロリン酸エステル類などが含まれている。
【0034】
本発明において「疲労改善効果」とは、運動や作用した部位の働きの持続時間を向上させること、および同じ運動量や作用量でも疲労物質の増加を抑制すること、運動や作用した部位が疲労していないにもかかわらず脳や神経などが疲労感知状態となっていることを改善すること、ならびに運動や作用した部位の疲労状態を通常状態に回復することを促進する効果である。ここで部位の疲労状態とは、運動や作用のエネルギー源となるATPが減少すること、ならびに疲労物質と考えられている乳酸、アンモニア、インターロイキン、インターフェロン、ACTH、カテコラミン、セロトニンなどが増加することを指す。
【0035】
本発明のアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物が、合成のアスタキサンチンや他のアスタキサンチン含有抽出物(他の抽出方法によるヘマトコッカス抽出物など)より、特に抗疲労効果があるのは、本発明の抽出物が体内への吸収性がよいことが原因の1つと考えられている。フリー体のアスタキサンチンでは腸壁を超えて血管への吸収が悪く、ヘマトコッカスなど植物由来のアスタキサンチンは脂肪酸など特定の誘導体が多いことがあげられる。また、本発明の抽出物は、抽出工程中、抽出物のアスタキサンチン誘導体や不飽和脂肪酸の酸化が抑えられ、不純物が少ないこと(特願2004−253525)も原因と考えられる。
【0036】
本発明の疲労改善剤は、経口または非経口で投与することができる。経口用の剤形としては、例えば、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投薬形態、シロップおよび懸濁液のような液体投薬形態で投与される。非経口の剤形としては、注射剤、点眼剤、点鼻剤、貼付剤、軟膏剤、坐剤の形態で投与される。リピッド分散型の製剤は血中濃度の増加に有効である。
【0037】
本発明の疲労改善剤は、一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を適当量含んでいてもよい。このような添加剤として、例えば賦形剤、結合剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、pH調整剤、界面活性剤などが挙げられる。賦形剤としては、例えばトウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファ−化デンプン、有孔デンプン等のデンプン類、乳糖、ショ糖、ブドウ糖などの糖、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸などの無機化合物などがあげられる。結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、でんぷん類、アラビアガム、ゼラチン、プルランなどが挙げられる。崩壊剤としては、例えばデンプン、寒天、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロースなどがあげられる。酸味剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸などがあげられる。発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン、アセスルファムカリウムなどが挙げられる。香料としては、例えばレモン油、オレンジ油、メントールなどが挙げられる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。着色剤としては、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、三二酸化鉄などが挙げられる。安定化剤としては、エデト酸ナトリウム、トコフェロール、シクロデキストリン等が挙げられる。pH調整剤としては、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、アミノ酸塩などが挙げられる。界面活性剤として、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、カゼインナトリウム、粉末トラガントなどがあげられる。アスタキサンチンの吸収を良くするためには微粉状態にして配合することが好ましい。
【0038】
シロップ、ドリンク剤、懸濁液、点眼剤、注射剤などの液剤は、有効成分を必要に応じてpH調製剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤等、張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。懸濁剤としては、例えば、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、カゼインナトリウム、アラビアガム、粉末トラガントなどを挙げることができる。溶解剤としては、例えば、ポリソルベート80、水添ポリオキシエチレンヒマシ油、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。防腐剤としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。
【0039】
本発明の疲労改善効果を高めるため、活性剤を添加することができる。活性剤は、本発明の疲労改善剤中や生体中でのアスタキサンチンの酸化を抑制すること、体内へのアスタキサンチンの吸収性を向上させること、生体内の活性部位でアスタキサンチンの活性を補酵素的に高めることでなどによって、アスタキサンチンの効果を高めるものと考えられる。活性剤は特に限定されるものでなく、例えば、ビタミンA類、カロテノイド類、ビタミンB類、ビタミンC類、ビタミンD類、ビタミンE類、トコトリエノール類、グルタチオン及びこれらの誘導体並びにこれらの塩;デオキシリボ核酸、リボ核酸;アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸;グリチルリチン酸、グリチルレチン酸;グアニン、キサンチン;α−またはγ−リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、コハク酸、エストラジオール及びその誘導体並びにそれらの塩;アスパラグン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸などのα−ヒドロキシ酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩;血清除蛋白抽出物、脾臓抽出物、胎盤抽出物、鶏冠抽出物、ローヤルゼリー;酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、霊芝抽出物;ニンジン抽出物、センブリ抽出物、ローズマリー抽出物、オウバク抽出物、ニンニク抽出物、ヒノキチオール、セファランチン、アロエ抽出物、サルビア抽出物、アルニカ抽出物、カミツレ抽出物、シラカバ抽出物、オトギリソウ抽出物、ユーカリ抽出物、ムクロジ抽出物、センプクカ抽出物、ケイケットウ抽出物、サンペンズ抽出物、ソウハクヒ抽出物、トウキ抽出物、イブキトラノオ抽出物、クララ抽出物、サンザシ抽出物、シラユリ抽出物、ホップ抽出物、ノイバラ抽出物、ヨクイニン抽出物;D−フラクション、グリコーゲン、オクタコサノール、アリシン、コエンザイムQ10、カテキン、α−リポ酸;システイン及びその誘導体並びにその塩、ペプチド;リジン、硫化アリル、ビオチン、パントテン酸、コラーゲン、エラスチン、ケラチン及びこれらの誘導体並びにその塩類;ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸;乳酸菌;鉄、モリブデン、カルシウム、亜鉛、セレン、マンガン、銅、ヨウ素などのミネラル類、並びにそれらの混合物からなる群から1種または2種以上選択することができる。また、これらを含んだ植物や果実、藻類、菌類およびそれらの抽出物などを配合することによっても、同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、皮膚外用剤の形態には、上記成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0041】
本発明の疲労改善剤に用いられるアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物の量は、成人では1日あたり、アスタキサンチンの遊離体換算で0.5mg〜100mg、好ましくは1mg〜20mgの服用量で経口投与または非経口投与で行う。抽出物の投与量は、投与される患者の年齢、体重、症状の程度、投与形態によって異なる。本発明の医薬品における抽出物の量は、アスタキサンチンの遊離体換算で0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で含有させることができる。
【0042】
本発明の疲労改善剤に本発明のヘマトコッカス抽出物と活性剤を両方配合する場合は、抽出物中のアスタキサンチンの遊離体換算1重量部に対して活性剤が0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部の割合で配合することができる。本発明の医薬品におけるヘマトコッカス抽出物と活性剤の合計の配合量は0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で含有させることができる。
【0043】
疲労改善剤により、疲労の治療・改善・予防、疲労の回復促進に効果がある。疲労によって、免疫力などの体力が低下し、これらが原因と言われている疾患、例えば、慢性疲労症候群、動脈硬化、高血圧、糖尿病、ガン、高脂血症、リュウマチ、痛風、脳卒中、虚血性心疾患、肺気腫、胃潰瘍、胃炎、肝炎、膵炎、腎炎、その他の炎症性疾患、白内障、アルツハイマー病、アレルギー性疾患、老化、糖尿病の合併症である神経障害、網膜障害、腎症、大血管障害および血液疾患に関する疾病の治療・改善・予防効果も有している。神経障害においては、突発性の難聴、眼や顔面の異常(麻痺や痛み)、起立性低血圧、発汗の異常、下痢や便秘(消化器症状)、排尿障害、四肢の痛み、知覚の異常、ED、眼精疲労、筋肉疲労、筋肉の委縮、壊疽の治療・改善・予防に効果がある。網膜障害においては、黄斑変性症、緑内障、白内障、単純網膜症、前増殖網膜症および増殖網膜症の治療・改善・予防に効果がある。
【0044】
本発明は、本発明のヘマトコッカス抽出物を含有することを特徴とする疲労改善作用を有する飲食物も含まれる。必要に応じて、活性剤を1種または2種以上配合することができる。
【0045】
飲食物の形態例としては、マーガリン、バター、バターソース、チーズ、生クリーム、ショートニング、ラード、アイスクリーム、ヨーグルト、乳製品、ソース肉製品、魚製品、漬け物、フライドポテト、ポテトチップス、スナック菓子、かきもち、ポップコーン、ふりかけ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、パン、カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカー、マカロニ、パスタ、ラーメン、蕎麦、うどん、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズ、みそなど、または果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料または非炭酸系飲料など、茶、コーヒー、ココアなどの非アルコールまたはリキュール、薬用酒などのアルコール飲料などの一般食品への添加例を挙げることができる。
【0046】
本発明の飲食物は、本発明のヘマトコッカス抽出物を一般食品の原料と共に配合し、常法に従って加工製造することにより製造される。ヘマトコッカス抽出物の配合量は食品の形態などにより異なり特に限定されるものではないが、一般にはアスタキサンチン遊離体換算で0.00001〜10重量%、好ましくは0.0001〜5重量%であり、疲労改善効果を発揮するのに必要な量だけ含まれるように調製する。ヘマトコッカス抽出物の使用量は当業者が飲食物の種類に応じて適宜選択でき、成人1日摂取量あたりアスタキサンチン遊離体換算で0.5〜100mg、好ましくは1〜20mgである。
【0047】
本発明の飲食物を栄養補助食品あるいは機能性食品などの健康食品として用いる場合、その形態は、上記医薬用製剤と同様の形態であってもよい。乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、または、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。また、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などを配合した自然流動食、半消化態栄養食および栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工物を挙げることができる。ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料および色素などを配合してもよい。本発明の飲食物の形態は、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明は、ヘマトコッカス抽出物を含有することを特徴とする疲労改善善効果を有する動物用飼料も含まれる。
【0049】
本発明の飼料は、固形製剤、固形、ペレット状、粒状、ビスケット状、練り状などの形態およびドライフード、セミドライフード(例えば、水分含有量10〜50重量%程度の飼料)、または缶詰などのウェットフード(例えば、水分含有量が50〜80重量%程度の飼料)等に特に制限されない。従来の飼料製造の過程において適当な工程でヘマトコッカス抽出物を飼料の材料に添加混合、またはヘマトコッカス抽出物を飼料にふりかけて製造することができる。本発明の飼料は、市販の飼料にヘマトコッカス抽出物を添加混合したり、振りかけても作ることができる。また、人用の栄養補助食品と同様に、摂取が容易である錠剤、舌下錠、丸剤、散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤および軟カプセルなどの固形製剤で製造することができる。
【0050】
配合可能な原料としては、飼料として使用し得るものなら特に制限はないが、飼料の原料としては、飼料の種類に応じて、慣用の成分、例えば、魚粉、魚肉、魚介類、フィッシュミール、畜肉、肉粉、肉骨粉、血粉、フェザーミール、蚕蛹油粕、脱脂粉乳、動物性油脂(牛油、豚油、骨油など)、鶏卵類、乳類などの動物性原料;ビール酵母、トルラ酵母などの微生物;トウモロコシ、マイロ、小麦、大麦、ライ麦、エン麦、小麦粉、玄米、アワ、大豆、キナコ、キャッサバなどの穀類;アルファー化デンプン、デンプンなどのデンプン類;大豆油粕、脱皮大豆油粕、ナタネ油粕、ラッカセイ油粕、ヤシ油粕、ヒマワリ油粕、アマニ油粕、ゴマ油粕、サフラワー油粕、パーム核油粕、カポック油粕などの油粕類;米ヌカ、大麦ヌカ、ふすまなどのヌカ類;グルンフィード、グルテンミール、澱粉粕、精蜜、醤油粕、ビール粕、ビートパルプ、バガス、豆腐粕、麦芽根、ミカン皮、蜜柑ジュース粕などの製造粕類;アルファルファミール、チモシー乾草、藁などの繊維素;賦形剤、結合剤、崩壊剤、食塩、砂糖などの糖類、ビタミン類、アミノ酸類、ミネラル類などの成分を一種または二種以上配合して使用することができる。
【0051】
固形製剤に配合可能な原料としては、前述の原料の他に、例えば、人の食品分野で一般的に用いられる担体と均一に混合して製造できる。具体的には、シュークロース、ソルビトール、フラクトース等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ゴマ油、菜種油、オリーブ油、大豆油などの油類、ストロベリー・フレーバー、ペッパーミントなどのフレーバー類などを使用して製造できる。また、散剤、丸剤、カプセル、軟カプセル、錠剤の形態で、ラクトース、グリコース、シュークロース、乳糖、マニトール、コーンスターチ、二酸化ケイ素などの賦形剤、デンプン、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、カゼインなどの結合剤、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、サポニン、レシチンなどの乳化剤、グアーガム、アルギン酸、カラギーナン、寒天、ペクチン、アラビアガム、結晶セルロースなどの増粘剤、グリセリンなどの可塑剤を用いて製造できる。錠剤型としては錠剤および軟カプセルは摂取が容易であるので好ましい。
【0052】
本発明の飼料は、必要に応じて、強化剤、品質改良剤、抗生物質、抗菌剤、酵素、防黴剤、抗酸化剤、着色料、甘味料、香料などの添加剤を含んでいてもよい。
【0053】
本発明の飼料におけるヘマトコッカス抽出物の含有量は、飼料の形態により異なり特に制限されるものではないが、嗜好性を損わない範囲で選択でき、一般にはヘマトコッカス抽出物中のアスタキサンチンの遊離体換算で0.00001〜10重量%、好ましくは0.0001〜5重量%である。
【0054】
動物に対する飼料の給与量は、年齢、体重などに応じて選択でき、例えば、ヘマトコッカス抽出物中の使用量は、アスタキサンチンの遊離体換算で体重1kg当り、1〜500μg/日、好ましくは2〜300μg/日、さらに好ましくは5〜200μg/日程度である。なお、食餌の時間はいつでも与えることができ、1日当り一度に与えてもよいが、複数回に別けて与えてもよい。
【0055】
本発明は、種々の動物に適用され、具体例としては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、サル、犬、猫、豚、牛、羊、馬などのほ乳類;ワニ、ヘビ、トカゲなどのは虫類;鶏、インコ、オウム、九官鳥、鳩などの鳥類、カエルなどの両生類、サケ、マス、マグロ、タイ、グッピーなどの魚類、などがあげられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明をさらに詳細に説明にするために以下に実施例をあげるが、本発明がこの実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
【0057】
[比較例1] 破砕・乾燥後溶媒で抽出
未乾燥破砕ヘマトコッカス藻粉末〔バイオリール社製 アスタキサンチン含量4.6%〕80kgとミックスビタミンE(理研ビタミン、E700)2kgを水320kgに分散させ、マイクロスMIC−5NZ〔奈良機械製〕を用いて、回転数1000rpmで32時間破砕処理し、これを噴霧乾燥(乾燥条件:入り口温度210℃、出口温度100〜102℃、アトマイザー回転数9000rpm)した。得られた破砕乾燥藻全量を120kgのアセトン中に分散し、アスタキサンチンを含む脂質画分を抽出した。濾過により抽出濾液を回収、さらに濾過残渣を40kgのアセトンでリンス3回行い、アスタキサンチンを含む脂質成分を完全に抽出した。得られた抽出濾液は減圧下で基準値以下までアセトンを留去して、アスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物(アスタキサンチンの遊離体換算で5.4%含有)を得た。
【0058】
[実施例1] 粉砕抽出法
乾燥未破砕ヘマトコッカス藻粉末1kg〔バイオリール社製 アスタキサンチン含量4.6%〕をアセトン1.5kgに分散させ、1mm径のガラスビーズを85%充填した防爆型のビーズミル試験機〔ダイノミルKDL-PILOT、WAB社製〕を用いて、適時冷却しながら室温で、ディスク周速10m/s、流速140g/min.で破砕処理を2回行い、同時にカロテノイドを含む脂質画分を抽出した。破砕懸濁液全量を吸引濾過により抽出濾液を回収、さらに濾過残渣を1kgのアセトンでリンス3回行い、アスタキサンチンを含む脂質成分を完全に抽出した。得られた抽出濾液から減圧エバポレーター(温度35℃)でアセトンを留去して、アスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物(アスタキサンチンの遊離体換算で5.6%含有)を得た。
【0059】
[実施例2] 超臨界抽出法
未乾燥破砕ヘマトコッカス藻粉末〔バイオリール社製 アスタキサンチン含量4.6%〕80kgを水320kgに分散させ、マイクロスMIC−5NZ〔奈良機械製〕を用いて、回転数1000rpmで32時間破砕処理し、これを噴霧乾燥(乾燥条件:入り口温度210℃、出口温度100〜102℃、アトマイザー回転数9000rpm)した。得られた乾燥破砕ヘマトコッカス藻粉末7.6kgにグリセリン0.5kgを混合した成型物を、抽出槽圧力35MPa、抽出槽温度40℃の条件下で、超臨界状態の二酸化炭素を用いて超臨界抽出を行い、低極性画分の除去操作を行いアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物(アスタキサンチンの遊離体換算で5.4%含有)を得た。
【0060】
[試験例1] 強制水泳負荷試験
8週齢のddY系の雄マウス〔三協ラボ(株)製〕を購入し、環境に慣れさせるため、温度21−25℃、照明12時間−暗闇12時間の条件で、水と餌〔CE−2、クレアジャパン(株)製〕を自由摂取させ1週間飼育した。各群を10匹ずつにわけ、餌には餌100gあたりアスタキサンチン遊離体換算で2mgとなるようにアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物を配合したものを自由摂取させた。
S1:遊離体のアスタキサンチン〔ロシュ製〕5%を菜種油95%に溶解させたもの
S2:比較例1の抽出法によるアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物
S3:実施例1の破砕抽出法によるアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物
S4:実施例2の超臨界抽出法によるアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物
一定の経過期間後、マウスの寛骨部に体重の10%に相当する錘をつけ、水温24±1℃の水中で強制水泳させ、遊泳開始から水面下に頭部を7秒以上沈めるまでの時間を測定した。
【0061】

[表1]強制水泳負荷試験結果

a:p<0.05(対応のあるt-test、vs.開始時)
【0062】
本発明のアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物を投与することにより、運動持続時間が向上し、単位運動あたりの疲労度や疲労に対する耐性が向上していることがわかる。
【0063】
試験例2 疲労回復試験
8週齢のddY系の雄マウス〔三協ラボ(株)製〕を購入し、環境に慣れさせるため、温度21−25℃、照明12時間−暗闇12時間の条件で、水と餌〔CE−2、クレアジャパン(株)製〕を自由摂取させ1週間飼育した。各群を10匹ずつにわけ、各飼育槽に入れ、水槽には深さ15mmの水を加えて安眠できない状態とし、餌には餌100gあたりアスタキサンチンフリー体換算で2mgとなるようにアスタキサンチン含有抽出物を配合したものを自由摂取させた。
S1:フリー体のアスタキサンチン〔ロシュ製〕5%を菜種油95%に溶解させたもの
S2:比較例1の抽出法によるアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物
S3:実施例1の破砕抽出法によるアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物
S4:実施例2の超臨界抽出法によるアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物
10日後、マウスの寛骨部に2gの錘をつけ、水温24±1℃の水中で3分間強制水泳させ、水から取り出し休憩させた。強制水泳直前、強制水泳直後、強制水泳60分後に採血を行い、血中の疲労物質である乳酸を測定した。
【0064】
[表2]疲労物質の血中濃度

A:p<0.05(t-test、vs.対照群)
【0065】
本発明のアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物を投与することにより、疲労物質である乳酸が減少ており、疲労が減少し、疲労の回復性が向上していることがわかる。
【0066】
[試験例3] ヒトへの抗疲労試験
(試験方法) 下記選択基準を満たす人を被験者とした。
年齢35〜59歳の常時、医薬品や健康食品を服用しておらず、遵守事項を守り試験方法に定められた診察を受けることができる人を被験者とし、被験者32名を無作為に一群16名の二群に分け試験群と対照群とした。試験群と対照群への割付は二重盲検法で行い被験者及び試験実施者に試験終了まで各被験者がどちらの群に属するかわからないようにした。試験群はアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物カプセル剤、対照群はプラセボカプセル剤をそれぞれ1日2カプセル剤を夕食後、6週間服用させた。カプセル剤は、実施例1のアスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物(フリー体アスタキサンチン換算で3mg含有)60mgと菜種油140mgからなる。なお、被験者には試験期間中に運動負荷として、最大心拍数の50〜60%で連続40分間のウォーキングを行い、ウォーキングは1週間に3回実施させた。全ての被験者について試験開始時(0週)および服用終了時(6週)に心拍数換算による70%負荷運動として、トレッドミル運動を行った直後に測定した。測定項目は、体重、心拍数、血中乳酸値、体脂肪とした。
【0067】
[表3] 疲労試験結果

a:P<0.05(t-test、vs.摂取前値)
【0068】
アスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物を飲むことによって、運動後の血中乳酸値やCPK値の増加が抑制され、疲労の現象および疲労の回復が向上していることがわかる。
また、試験終了時に最近の日常における疲労感のアンケートをとった。
【0069】
[表4] 疲労試験結果

アスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物を投与することによって、日常での疲労ならびに疲労感が減少していることがわかる。
【0070】
[製造例1] 錠剤
下記成分を下記組成比(重量%)で均一に混合し、1粒300mgの錠剤とした。
ヘマトコッカス抽出物 30mg
乳糖 70mg
でんぷん 70mg
カゼンナトリウム 6mg
ゼラチン 6mg
セルロース 109mg
二酸化ケイ素 3mg
ショ糖脂肪酸エステル 6mg
ヘマトコッカス抽出物はアスタキサンチンをフリー体換算で5重量%を含む。
【0071】
[製剤例2] 軟カプセル剤
下記成分からなるソフトカプセル剤皮の中にヘマトコッカス抽出物(アスタキサンチンを5重量%含有)を常法により充填し、1粒300mgのソフトカプセルを得た。
内容物
ヘマトコッカス抽出物 20mg
食用油脂 150mg
剤皮
ゼラチン 100mg
グリセリン 30mg
【0072】

[製剤例3] ドリンク剤
下記成分を配合し、常法に従って、水10kgを加えてドリンク剤を調製した。
ヘマトコッカス抽出物水溶液* 25g
液糖 4kg
DL−酒石酸ナトリウム 1g
クエン酸 50g
ビタミンC 50g
ビタミンE 150g
シクロデキストリン 25g
塩化カリウム 5g
硫酸マグネシウム 2g
*特開2001−316601の実施例の方法で調整したヘマトコッカス抽出物水溶液(アスタキサンチン1%含有)
【0073】
下記成分を配合し、常法に従って造粒し、5g入りスティック顆粒を製造した。
アスタリールパウダー* 5%
ビタミンBミックス 1%
ニコチン酸 0.1%
パントテン酸 0.1%
タウリン 10%
グルタミン酸 1%
GABA 0.01%
アスパラギン酸 0.05%
BCAA 0.5%
クエン酸 10%
ビタミンC 10%
γ−オリザノール粉末 0.15%
CMCNa 適宜
デキストリン 適宜
*アスタキサンチン1重量%含有ヘマトコッカス抽出物の粉末
【0074】
[製剤例4] アスタチョコ
下記成分を配合し、常法に従ってチョコレートを製造した。
アスタリールオイル50F 1%
プロポリス 0.1%
ローヤルゼリー 0.01%
カフェイン 0.5%
人参エキス 0.5%
レシチン 適量
カカオマス 適量




【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善剤。
【請求項2】
ヘマトコッカスを乾燥・破砕したのち、二酸化炭素下で超臨界抽出することによって得られるアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善剤。
【請求項3】
ヘマトコッカスを溶媒下で粉砕・抽出し、溶媒を留去することによって得られるアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善剤。
【請求項4】
アスタキサンチン含有ヘマトコッカス抽出物を有効成分として含むこと特徴とする疲労改善効果を有する飲食物。
【請求項5】
有効成分としてヘマトコッカスを乾燥・破砕したのち、二酸化炭素下で超臨界抽出することによって得られるアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善効果を有する飲食物。
【請求項6】
有効成分としてヘマトコッカスを溶媒下で粉砕・抽出し、溶媒を留去することによって得られるアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含むことを特徴とする疲労改善効果を有する飲食物。


【公開番号】特開2006−347927(P2006−347927A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174376(P2005−174376)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(390011877)富士化学工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】