説明

疾患を治療するための組成物および方法

【課題】脊椎動物における線維症関連疾患の治療および/または予防のための薬学的組成物を提供する。
【解決手段】該組成物は、少なくとも一つのアクチビン拮抗物質、ならびに選択的に薬学的に許容される担体、アジュバントおよび/または希釈剤を含む。また、脊椎動物における線維症関連疾患の治療方法、ならびにそのような状態を診断するための方法、およびそのためのキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、アクチビン拮抗物質の治療的有効量の投与による、脊椎動物における線維症に関連した疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ヒトを含む、哺乳動物の多数の重篤な疾患は、線維症と関連している。そのような疾患は、肝硬変、肺線維症およびクローン病のような炎症性腸疾患を含む。
【0003】
肝硬変は、結節性再生、線維症および正常な構造の障害を伴う肝実質細胞への広汎性損傷を特徴とする肝臓の進行性疾患である。それは、肝細胞機能の不全および血流障害に関連し、全肝不全および肝細胞癌(HCC)へ導きうる。特にアルコール、肝炎ウイルス、様々な薬剤および鉄過負荷(ヘモクロマトーシス)を含む肝細胞損傷を引き起こす多数の作用因子がある。これらの作用因子への曝露は、事象のカスケードを促進し、曝露が繰り返されるとすれば、結果として、進行性線維症および硬変を含む慢性疾患の発生を生じうる。
【0004】
間質性肺疾患(ILD)は、様々な慢性肺疾患を含む用語である。ILDはまた、間質性肺線維症または肺線維症とも呼ばれる。肺は、通常、何かの具合で傷つけられ、結果として、肺胞の壁(肺胞炎)、細気管支の壁(細気管支炎)、または毛細血管(脈管炎)に炎症を生じる。その後、瘢痕(または線維症)が始まり、肺は弾力性を喪失する。線維症は、結果として、酸素を輸送する肺組織の能力の永久的喪失を生じる。
【0005】
原因不明である特発性肺線維症(IPF)と呼ばれる慢性肺疾患のグループもまたある。
【0006】
炎症性腸疾患(IBD)は、小腸および大腸に炎症または潰瘍を引き起こす慢性疾患のグループである。たいていのIBDは潰瘍性大腸炎またはクローン病として分類されるが、大腸炎、腸炎、回腸炎および直腸炎と呼ばれる場合もある。潰瘍性大腸炎は、結腸および直腸の内層の潰瘍および炎症を引き起こすが、クローン病は、腸壁のより深い層に及ぶ炎症である。腸壁は厚くなっており、最初は柔軟であるが、線維症が生じると、壁は、管腔の狭小化および時々には狭窄を伴って硬くなる。クローン病はまた、口、食道、胃および小腸を含む消化管の他の部分にも影響を及ぼしうる。
【0007】
上記で同定されたもののような線維症関連症状の発生を防ぐまたは治療するための新規な抗線維症治療は、これらの状態が死および/または生活の質の喪失の主な原因であり、かつ医療系の負担を増加させているために、必要とされている。
【0008】
アクチビン拮抗物質が線維症および関連疾患の治療ならびに/または予防のための薬剤として用いられうることが、ここで本明細書に開示されている。
【0009】
従って、本発明は、線維症関連疾患の治療および/または予防のために有用であると思われるアクチビン拮抗物質についての役割を記載する。
【0010】
それゆえ、本発明は、アクチビン拮抗物質の形をとる、線維症関連疾患の治療において有用な治療用物質を提供する。典型的には、アクチビン拮抗物質は、フォリスタチン(follistatin)、またはその断片もしくは類似体である。
【発明の概要】
【0011】
発明の開示
本発明は、アクチビン拮抗物質、特にタンパク質フォリスタチン、またはその断片もしくは類似体が線維症関連疾患の治療および/または予防のための有用な治療物質であるという発見に関する。典型的には、線維症は、ホルモンアクチビンAの異常に増大した発現を含みうる。本明細書に開示されている結果は、アクチビン拮抗物質、特にフォリスタチンまたはその断片もしくは類似体の投与がホルモンアクチビンに関連する過剰増殖を抑制するという見解を裏付ける。
【0012】
1. 疾患の治療および/または予防のための治療用物質/薬学的組成物
本発明の第一の態様により、組成物が少なくとも1つのアクチビン拮抗物質、ならびに選択的に薬学的に許容される担体、アジュバントおよび/または希釈剤を含む、脊椎動物における線維症関連疾患の治療および/または予防のための薬学的組成物が提供される。
【0013】
本発明の第二の態様により、工程が少なくとも1つのアクチビン拮抗物質を薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と均質に混合することを含む、本発明の第一の態様において定義される薬学的組成物を調製するための工程が提供される。
【0014】
典型的には、脊椎動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ、トリ、ネコおよびイヌからなる群より選択される。より典型的には、脊椎動物は、ヒト、非ヒト霊長類またはマウスである。さらにより典型的には、脊椎動物はヒトである。
【0015】
2. フォリスタチンを用いる疾患の治療
本発明の第三の態様により、方法が少なくとも1つのアクチビン拮抗物質の治療的有効量を脊椎動物に投与する段階を含む、治療を必要とする脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための方法が提供される。
【0016】
本発明の第四の態様により、治療を必要とする脊椎動物において、線維症関連疾患の治療に用いられる場合の少なくとも1つのアクチビン拮抗物質が提供される。
【0017】
本発明の第五の態様により、治療を必要とする脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための薬物を調製するための、少なくとも1つのアクチビン拮抗物質の使用が提供される。
【0018】
典型的には、本発明の第三から第五までの態様のいずれか一つの目的のために、アクチビン拮抗物質は、典型的には本明細書に記載されるように、フォリスタチン、またはその断片もしくは類似体である。
【0019】
本発明の第六の態様により、方法が本発明の第一の態様において定義される薬学的組成物の治療的有効量を脊椎動物に投与する段階を含む、治療を必要とする脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための方法が提供される。
【0020】
本発明の第七の態様により、治療を必要とする脊椎動物において線維症関連疾患の治療に用いられる場合の、本発明の第一の態様において定義される薬学的組成物が提供される。
【0021】
本発明の第八の態様により、治療を必要とする脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための薬物を調製するための、本発明の第一の態様において定義される薬学的組成物の使用が提供される。
【0022】
一つの好ましい局面により、線維症関連疾患は、過剰増殖性または炎症性線維性疾患である。
【0023】
もう一つの好ましい局面により、線維症関連疾患は、特発性肺線維症または間質性肺疾患のような肺線維症である。
【0024】
もう一つの好ましい局面により、線維症関連疾患は、炎症性腸疾患または潰瘍性大腸炎もしくはクローン病のような関連症状である。
【0025】
もう一つの好ましい局面により、線維症関連疾患は、肝線維症および肝硬変である。
【0026】
典型的には、アクチビン拮抗物質の治療的有効量の投与による線維症関連疾患の治療は、疾患の他の治療と共に行われる。例えば、これらの他の治療は、手術、放射線治療、または化学療法を含みうる。例として化学療法は、抗線維症、抗血栓症または抗炎症の薬剤の投与を含みうる。
【0027】
典型的には、本発明の第三から第八までの態様のいずれか一つの目的のために、当業者は日常的実験法により、疾患を治療する目的のためにアクチビン拮抗物質の効力があり、毒性のない量を決定することができるものと思われる。
【0028】
典型的には、第一から第八までの態様の目的のために、アクチビン拮抗物質は、フォリスタチンまたはその断片もしくは類似体であり、より典型的にはフォリスタチンは、還元剤の非存在下でのSDS-PAGEにより推定される約30,000ダルトン〜60,000ダルトンの分子量をもつ288個〜315個のアミノ酸を含む単鎖タンパク質であり、卵胞液由来であり、かつ卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を抑制することができる。より典型的には、フォリスタチンは、NCBI(米国生物工学情報センター)タンパク質XP_003891、AAH04107として分類される単鎖タンパク質である。さらにより典型的には、フォリスタチンは、オーストラリア特許第610858号に記載されるとおりである。さらにより典型的には、フォリスタチンは、オーストラリア特許第620346号または米国特許第5,470,826号または欧州特許第0 299 050号に記載されるとおりであり、これらの開示は参照として本明細書に組み入れられている。
【0029】
典型的には、薬学的組成物に存在するフォリスタチンまたは断片もしくは類似体はまた、以下からなる群より選択される形で存在しうる:フォリスタチン/キレート、フォリスタチン/薬剤、フォリスタチン/プロドラッグ、フォリスタチン/毒素、ならびにフォリスタチン/検出群(detector group)およびフォリスタチン/画像化マーカー。
【0030】
アクチビン拮抗物質はまた、フォリスタチン関連タンパク質でもありうる(例えば、GenBankアクセッション番号NP_005851を参照)。
【0031】
または、アクチビン拮抗物質は、アクチビンに対して産生される抗体でありうる。
【0032】
典型的には、抗体が産生されるアクチビンは、アクチビンA、アクチビンABまたはアクチビンBである。より典型的には、抗体が産生されるアクチビンは、インヒビンα鎖を含まない成熟インヒビンβA鎖またはβB鎖のヘテロ二量体またはホモ二量体である。その2つのサブユニットは、還元剤非存在下でのSDS-PAGEにより推定される約12,000ダルトン〜13,000ダルトンの分子量をもち、110個〜120個のアミノ酸を含む。より典型的には、アクチビンは、GenBankアクセッション番号M13436に定義される配列を有するβAサブユニットおよび/またはGenBankアクセッション番号M13437に定義される配列を有するβBサブユニットを含む。さらにより典型的には、アクチビンは、オーストラリア特許第596178号または米国特許第4,973,577号もしくは第4,798,885号または欧州特許第0 222 491号に記載されるとおりであり、これらの開示は参照として本明細書に組み入れられている。
【0033】
もう一つの代替の局面において、アクチビン拮抗物質は、それぞれの受容体へのアクチビンの結合を妨げる化合物でありうる。
【0034】
典型的には、そのような化合物は、アクチビン受容体に対して産生される抗体である。より典型的には、抗体が産生されるアクチビン受容体は、ActRIIAまたはActRIIBまたはActRIAまたはActRIBまたはALK2またはALK4である(DKM:ALK2およびALK4は、それぞれActRIAおよびActRIBについての代替の名称であることを留意されたい)。
【0035】
より典型的には、化合物は、以下の受容体のいずれか一つに対して産生される抗体である:アクチビンA受容体、アクチビンAB受容体、およびアクチビンB受容体。
【0036】
または、アクチビン拮抗物質は、抑制性Smadシグナル伝達分子、Smad6およびSmad7のようなアクチビンシグナル伝達経路の、他の下流の構成要素のいずれかを妨げる分子でありうる。
【0037】
なおもう一つの局面により、アクチビン拮抗物質は、TGFβ/アクチビンI型の受容体を特異的に阻害する分子でありうる。典型的には、そのような分子は、トリアリルイミダゾール類似体から選択されうる。より典型的には、そのようなトリアリルイミダゾール類似体は、Callahan, J.F.ら、(2002)、「Identification of novel Inhibitors of the Transforming Growth Factor β-1(TGF-β1) Type I Receptor(ALK5)」、J. Med. Chem. 45:999-1001に記載されるとおりである。さらにより典型的には、トリアリルイミダゾール類似体は、Callahan, J.F.ら、(2002)、J. Med. Chem. 45:999-1001に記載される化合物14であり、またInman, G.J.ら、(2002)、「SB-431542 Is a Potent and Specific Inhibitor of Transforming Growth Factor-β Superfamily Type I Activin Receptor-Like Kinase(ALK) Receptors ALK4, ALK5, and ALK7」、Molecular Pharmacology 62(1): 65-74にSB-431542として記載されている。
【0038】
3. 疾患の診断
本発明の第九の態様により、以下の段階を含む、脊椎動物において線維症関連疾患についてスクリーニングするための方法が提供される:
(a)脊椎動物からの試料をアクチビンポリペプチド(またはその断片もしくは類似体)に対して産生される抗体(またはその断片)に接触させる段階;
(b)アクチビンポリペプチドに結合した抗体(またはその断片)の存在を検出する段階;および
(c)結合した抗体の量を参照試料における結合した量と比較し、かつ参照試料と比較した試料における結合した抗体の量の変化が疾患を示している、その脊椎動物において線維症関連疾患を診断する段階。
【0039】
本発明の第十の態様により、以下の段階を含む、脊椎動物において線維症関連疾患についてスクリーニングするための方法が提供される:
(a)脊椎動物からの試料をフォリスタチンポリペプチド(またはその断片もしくは類似体)に対して産生される抗体(またはその断片)に接触させる段階;
(b)フォリスタチンポリペプチドに結合した抗体(またはその断片)の存在を検出する段階;および
(c)結合した抗体の量を参照試料における結合した量と比較し、かつ参照試料と比較した試料における結合した抗体の量における変化が疾患を示している、その脊椎動物において線維症関連疾患を診断する段階。
【0040】
本発明の第十一の態様により、以下の段階を含む、脊椎動物において線維症関連疾患についてスクリーニングするための方法が提供される:
(a)脊椎動物からの試料の第一のアリコートをアクチビンポリペプチド(またはその断片もしくは類似体)に対して産生される抗体(またはその断片)に接触させる段階;
(b)アクチビンポリペプチドに結合した抗体(またはその断片)の存在を検出する段階;および
(c)脊椎動物からの試料の第二のアリコートをフォリスタチンポリペプチド(またはその断片もしくは類似体)に対して産生される抗体(またはその断片)に接触させる段階;
(d)フォリスタチンポリペプチドに結合した抗体(またはその断片)の存在を検出する段階;ならびに
(e)アクチビンに結合した抗体の量をフォリスタチンに結合した抗体の量と比較し、かつその相対的差を参照試料に見出されるそれと比較し、かつ参照試料と比較した試料におけるアクチビンに結合した抗体とフォリスタチンに結合した抗体の相対的比率における変化が疾患を示している、その脊椎動物において線維症関連疾患を診断する段階。
【0041】
典型的には、第九から第十一までの態様の目的のために、参照試料は線維症関連疾患を患っていない脊椎動物から得られる。
【0042】
典型的には、第九から第十一までの態様の目的のために、スクリーニングの方法が行われる試料は血漿または組織の試料であり、標準的な組織学的および免疫組織化学的技術を必要とする。
【0043】
典型的には、第九または第十一の態様の目的のために、抗体が産生されるアクチビンは、本明細書で前に記載されているとおりである。
【0044】
典型的には、第十または第十一の態様の目的のために、抗体が産生されるフォリスタチンは、本明細書で前に記載されているとおりである。
【0045】
典型的には、本明細書に記載されているように、アクチビンまたはフォリスタチンの抗体は、抗体全体、または抗体断片、または相補性決定領域のようなその他の免疫学的活性断片でありうる。より典型的には、抗体断片は、機能性抗原結合ドメイン、すなわち重鎖および軽鎖の可変ドメインを有する。さらにより典型的には、抗体断片は以下からなる群より選択される形で存在する:Fv、Fab、F(ab)2、scFv(単鎖Fv)、dAb(単一ドメイン抗体)、二特異性抗体(bispecific antibody)、二重特異性抗体(diabody)および三重特異性抗体(triabody)。
【0046】
典型的には、抗体(またはその断片)は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。より典型的には、抗体(またはその断片)は、モノクローナル抗体である。さらにより典型的には、モノクローナル抗体は、分子遺伝学的技術、ハイブリドーマ技術またはEBV(エプスタイン-バーウイルス)形質転換技術を用いて産生される。
【0047】
本発明の第十二の態様により、少なくともアクチビン(またはその断片)に対して産生される抗体(またはその断片)を診断的に許容される担体および/または希釈剤と共に含む、脊椎動物における線維症関連疾患を検出するための診断キットを提供している。
【0048】
本発明の第十三の態様により、少なくともフォリスタチン(またはその断片)に対して産生される抗体(またはその断片)を診断的に許容される担体および/または希釈剤と共に含む、脊椎動物における線維症関連疾患を検出するための診断キットを提供している。
【0049】
典型的には、第十二または第十三の態様によるキットは、以下の容器を含みうる:
(a)少なくとも抗体(その断片)を含む第一の容器、および;
(b)抗体(またはその断片)の結合パートナーを検出可能な標識と共に含む結合体を含む第二の容器。
【0050】
本発明の第十四の態様により、少なくとも以下を含む、脊椎動物における線維症関連疾患を検出するための診断キットを提供している:診断的に許容される担体および/または希釈剤と共にフォリスタチン(またはその断片)に対して産生される抗体(またはその断片);ならびに、診断的に許容される担体および/または希釈剤と共にアクチビン(またはその断片)に対して産生される抗体(またはその断片)。
【0051】
典型的には、第十四の態様によるキットは、以下の容器を含みうる:
(a)少なくともアクチビン抗体(またはその断片)を含む第一の容器、および;
(b)少なくともフォリスタチン抗体(またはその断片)を含む第二の容器;
(c)アクチビン抗体(またはその断片)の結合パートナーを検出可能な標識と共に含む結合体を含む第三の容器、および
(d)フォリスタチン抗体(またはその断片)の結合パートナーを検出可能な標識と共に含む結合体を含む第四の容器。
【0052】
より典型的には、第十二から第十四までの態様のいずれか一つの目的のために、キットは、洗浄試薬および結合した抗体の存在を検出することができる他の試薬のような他の成分を含む、一つまたは複数の他の容器をさらに含みうる。さらにより典型的には、検出試薬は、標識(第二)抗体を含みうるか、またはアクチビンおよび/もしくはフォリスタチン(またはその断片)に対して産生される抗体(またはその断片)がそれ自身標識されている場合、その区画に本発明の標識抗体(またはその断片)と反応することができる抗体結合試薬を含みうる。
【0053】
4. 遺伝子治療
本発明の第十五の態様により、方法が以下の段階を含む、脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための遺伝子治療法が提供される:
(a)アクチビン拮抗物質もしくはその断片もしくは類似体についてコードする核酸分子、またはアクチビン拮抗物質もしくはその断片もしくは類似体についてコードする核酸分子を含むベクターを宿主細胞へ挿入する段階;
(b)核酸分子を形質転換された細胞において発現させる段階。
【0054】
典型的には、アクチビン拮抗物質は、フォリスタチンまたはその断片もしくは類似体である。
【0055】
本発明の第十六の態様により、
(a)アクチビン、アクチビン受容体、もしくは他のアクチビン関連伝達経路分子、もしくはその断片もしくは類似体についてコードする核酸分子の断片に対してアンチセンスである核酸分子、またはアクチビンもしくはその断片もしくは類似体についてコードする核酸分子に対してアンチセンスの核酸分子を含むベクターを宿主細胞へ挿入する段階;
(b)形質転換された細胞において核酸分子を発現させる段階
を含み、発現されたアンチセンスの核酸分子が、アクチビン、アクチビン受容体または他のアクチビン関連伝達経路分子をコードする相補的核酸分子に結合し、それにより、それらの転写または発現を阻害する、脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための遺伝子治療法が提供される。
【0056】
典型的には、アンチセンスの核酸分子は、以下から選択される:
アクチビンA、アクチビンAB、またはアクチビンBをコードする核酸配列の少なくとも部分に対してアンチセンスである核酸分子;
ActRIIAまたはActRIIBまたはActRIAまたはActRIBまたはALK2またはALK4から選択されるアクチビン受容体をコードする核酸配列の少なくとも部分に対してアンチセンスである核酸分子;
smad2またはsmad3をコードする核酸配列の少なくとも部分に対してアンチセンスである核酸分子。
【0057】
本発明の第十七の態様により、アクチビンもしくはその断片もしくは類似体についてコードする核酸分子の変異型である核酸分子、またはアクチビンもしくはその断片もしくは類似体についてコードする核酸分子の変異型である核酸分子を含むベクターを宿主細胞へ挿入する段階を含む方法であって;
変異型アクチビンをコードする核酸分子が、相同組換えにより宿主細胞の天然のアクチビンコード配列へ統合され、それにより、結果として、アクチビン配列の転写無しもしくは正しくない転写のいずれか、または天然のアクチビン受容体に結合しないもしくは正常なアクチビンシグナル伝達を妨げる変異型アクチビンの発現を生じる、脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための遺伝子治療法が提供される。
【0058】
本発明の第十八の態様により、アクチビン受容体もしくはその断片もしくは類似体についてコードする核酸分子の変異型である核酸分子、またはアクチビン受容体もしくはその断片もしくは類似体についてコードする核酸分子の変異型である核酸分子を含むベクターを宿主細胞へ挿入する段階を含む方法であって;
アクチビン受容体もしくはその断片もしくは類似体についてコードする核酸分子の変異型が、相同組換えにより宿主細胞の天然のアクチビン受容体コード配列へ統合され、それにより、結果として、アクチビン受容体配列の転写無しもしくは正しくない転写のいずれか、または天然のアクチビンに結合しないもしくはアクチビンシグナル伝達を妨げる変異型アクチビン受容体の発現を生じる、脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための遺伝子治療法が提供される:
【0059】
典型的には、アクチビンコード配列は、GenBank登録、アクセッション番号M13436および/またはM13437に定義されるポリヌクレオチドである。
【0060】
典型的には、アクチビン受容体コード配列は、以下の受容体の一つをコードするポリヌクレオチドである:ActRIIAまたはActRIIBまたはActRIAまたはActRIBまたはALK2またはALK4。
【0061】
典型的には、第十五から第十八までの態様のいずれか一つの目的のために、核酸分子またはベクターは、以下からなる群より選択される方法を用いて挿入される:マイクロインジェクション法、CaPO4沈殿法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法/リポソーム融合法、微粒子銃法および核酸の化学修飾されたタンパク質へのカップリング法。
【0062】
典型的には、核酸分子またはベクターは、宿主細胞の核へ挿入される。
【0063】
典型的には、核酸分子を含む発現ベクターは細胞へ挿入され、細胞はインビトロで増殖し、その後患者へ大量に注入される。より典型的には、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、数種のRNAウイルス、レトロウイルス、またはウシパピローマウイルスのようなウイルス由来の発現ベクターは、標的細胞への核酸の送達のために用いられうる。より典型的には、標的細胞は、線維芽細胞系統、例えば肝星細胞、または平滑筋細胞、肺線維芽細胞、筋線維芽細胞、腎細胞を含む。
【0064】
定義
用語「アクチビン拮抗物質」は、アクチビン活性を阻害する分子を含む。その用語は、アクチビンに結合する分子、およびアクチビン受容体(I型またはII型)に結合して下流へのシグナル伝達を遮断することによりアクチビンに拮抗する分子を含む。例えば、アクチビンに結合することによりアクチビン活性を阻害する分子は、フォリスタチン、フォリスタチン関連タンパク質(GenBankアクセッション番号NP_005851)、およびα-2マクログロブリンを含み、アクチビン受容体(I型またはII型)に結合して下流へのシグナル伝達を遮断することによりアクチビンに拮抗する分子は、インヒビンを含む。「アクチビン拮抗物質」はまた以下を含みうる:抑制性Smadシグナル伝達分子、Smad6およびSmad7のようなアクチビンシグナル伝達経路の、他の下流の構成要素のいずれかを妨げる分子;細胞で発現した場合には、細胞のアクチビンシグナル伝達経路を妨ぐアクチビン受容体のドミナントネガティブな変異体(例えば、BAMBI);Callahan, J.F.ら、(2002)、「Identification of novel Inhibitors of the Transforming Growth Factor β-1(TGF-β1) Type I Receptor(ALK5)」、J. Med. Chem. 45: 999-1001に記載されているように、トリアリルイミダゾール類似体のようなTGFβ/アクチビンI型の受容体を特異的に阻害する分子。
【0065】
用語「核酸」は、天然のヌクレオチドのすべての既知の類似体を含む、一本鎖もしくは二本鎖のデオキシリボヌクレオチド(DNA)および/またはリボヌクレオチド(RNA)核酸を含む。
【0066】
用語「ポリヌクレオチド」は、天然のヌクレオチドのすべての既知の類似体を含む、一本鎖もしくは二本鎖のデオキシリボヌクレオチド(DNA)および/またはリボヌクレオチド(RNA)核酸を含む。それはまた、明記された関連配列およびそれらに相補的な配列を共にその範囲内に含む。
【0067】
本明細書に用いられる場合、用語「ポリペプチド」とは、ペプチド結合により共に連結された多数のアミノ酸から構成されるポリマーを指す。
【0068】
用語「抗体」とは、抗原上の特定のエピトープへ結合することができる免疫グロブリン分子を指し、ポリクローナルの混合物から構成されうるか、または本質的にモノクローナルでありうる。抗体は、天然の供給源または組換えの供給源由来の全免疫グロブリンでありうる。本発明による抗体は、例えば抗体全体、抗体断片、または相補性決定領域のような別の免疫学的活性断片を含む様々な形で存在しうる。同様に、抗体は機能性抗原結合ドメイン、すなわち重鎖および軽鎖可変ドメインを有する抗体断片でありうる。抗体断片は、以下からなる群より選択される形で存在しうる:Fv、Fab、F(ab)2、scFv(単鎖Fv)、dAb(単一ドメイン抗体)、二特異的抗体、二重特異性抗体および三重特異性抗体。
【0069】
本明細書で言及される場合、核酸分子に関係する用語「アンチセンス」は、標的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に相補的である、人工のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド分子を意味する。アンチセンスの核酸分子は、細胞内で転写することができ、かつ細胞で生成されたポリペプチドをコードするmRNAにハイブリダイズすることができる。相補性アンチセンスヌクレオチド配列がポリペプチドmRNAにハイブリダイズすることを可能にする条件下で反応が起きるということに基づき、翻訳されるポリペプチドの量は、そのように変化する、すなわち低下するまたは除去される。
【0070】
本明細書で言及される場合、「治療的有効量」とは、本発明の化合物または組成物の、望ましい治療効果を提供するのに十分な、しかし毒性のない量を含む。「有効量」とは、例えば投与される特定の薬剤、治療される状態の重症度、治療される種、対象の年齢および一般的状態、ならびに投与の様式の間の多数の因子のうちの一つまたは複数に依存し、対象によって変動するものである。いずれの与えられた場合についても、適切な「有効量」は、日常的実験法だけを用いて当業者により決定されうる。典型的には、「治療的有効量」は、以下のうちの一つまたは複数を結果として生じるのに十分な量を指す:疾患の程度における後退/低減、疾患増殖または進行の抑制、疾患増殖の停止、疾患に負わされる不快の軽減、または疾患をもつ脊椎動物の寿命の延長。
【0071】
用語「単離された」とは、問題の物質が本来存在している環境から取り出されており、かつ付随した不純物が低減または除去されていることを示す。本質的に、「単離された」物質は、同じ供給源から抽出された他の物質に関して濃縮されており(すなわち、モル基準において、それは所定の供給源から抽出された個々の種の他のどれよりも豊富である)、好ましくは、実質的に精製された画分は、「単離された」物質が存在するすべての高分子種の少なくとも約30%(モル基準において)を含む組成物である。一般的に、実質的に純粋な物質の組成物は、組成物に存在する全高分子種の約80〜90%より多く含む。最も好ましくは、「単離された」物質は、組成物が本質的に対象の高分子種からなる、本質的に均一になるまで(通常の検出方法では組成物に混入物種を検出できない)精製される。
【0072】
「保存的アミノ酸置換」とは、類似した側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンを含む;脂肪族水酸基側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびスレオニンを含む;アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンを含む;芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンを含む;塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リシン、アルギニン、およびヒスチジンを含む;および硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンを含む。典型的には、保存的アミノ酸置換群は以下のとおりである:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミン。
【0073】
ポリペプチドに関して、化合物の「断片」という用語は、例えばそれを導き出せる全長ポリペプチドと、性質上共通した生物学的活性を有する化合物である。
【0074】
核酸、ヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドに関して、用語「断片」は、例えば以下を含む化合物を指す:例えば、全長核酸配列から導き出せる全長ポリペプチドと性質上共通した生物学的活性を有する生成物をコードする標的核酸配列の部分;または、標的核酸配列もしくはその機能性産物をコードする部分の検出および/もしくは増幅のための特異的プローブもしくはPCRプライマーとして適する標的核酸配列の断片。
【0075】
核酸配列に関して本明細書に用いられる場合、用語「類似体」とは、誘導体が1つまたは複数の塩基の付加、欠失、または置換(保存的アミノ酸置換を含む)を含み、かつそのコードされるポリペプチドが、標的核酸分子によりコードされるポリペプチドと実質的に同じ機能を保持している、標的核酸配列の誘導体である配列を意味する。同様に、本明細書に用いられる場合、用語「類似体」とは、1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失、または置換を含む標的ポリペプチドの誘導体を指すが、その類似体が標的ポリペプチドと実質的に同じ機能を保持している。
【0076】
用語「発現カセット」とは、宿主細胞において特定の核酸の転写を可能にする必須の核酸要素(プロモーター、エンハンサー、転写されるべき核酸など)を含む核酸構築物を指す。発現構築物は、ベクター、宿主染色体などへ組み入れられうる。
【0077】
用語「プロモーター」とは、転写の開始を左右するおよび/または促進する核酸配列を指す。
【0078】
用語「機能的に連結された」とは、例えば核酸が別の核酸配列との機能的な関係に置かれている状態を指す。例えば、タンパク質をコードする異種性DNAに機能的に連結されたプロモーターは、異種性DNAに対応する機能性mRNAの生成を促進する。
【0079】
本明細書に用いられる場合、「遺伝子移入」とは、細胞へ外来の遺伝的物質を導入する過程を意味し、一般に、その遺伝子によりコードされる特定の産物の発現を可能にするために行われる。産物は、タンパク質、ポリペプチド、アンチセンスDNAもしくはRNA、または酵素的活性RNAを含みうる。遺伝子移入は、培養された細胞において、または動物への直接的投与により行うことができ、一般的に、標的細胞を非特異的相互作用または受容体媒介性相互作用により所望の核酸と接触させる工程、膜を通してまたはエンドサイトーシスによる細胞への核酸の取り込み、および血漿膜またはエンドソームから細胞質への核酸の放出を含む。発現を成功させるために、対象の核酸が発現構築物の一部である場合、細胞の核への核酸の移動および転写のための適切な核因子への結合もまた必要とされうる。
【0080】
上記で言及されているように、用語「遺伝子治療」は、遺伝子移入およびアンチセンスバイオテクノロジー技術が含まれる。詳細には、「遺伝子治療」とは、インビボもしくはインビトロで細胞から治療的産物を発現させうる遺伝子移入か、または標的ポリペプチドの産生を妨げるために、インビボもしくはインビトロで、標的ポリヌクレオチドコード配列に相補的なオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド配列が細胞へ挿入されかつ発現されるアンチセンス技術のいずれかを指す。遺伝子移入は以下のように行われうる:後で患者へ移植される細胞によるエキソビボ法;核酸もしくは核酸-タンパク質複合体の患者への直接的投与による;または、患者への改変された細胞の移入による。アンチセンス技術は、アンチセンスコード配列を含む発現ベクターを標的細胞へ送達するための適切なトランスフェクションベクターを用いてインビボで行われうる。
【0081】
本明細書に用いられる場合、用語「治療」とは、疾患状態もしくは症状を治療する、または別なふうに、疾患の進行もしくはどのような点であっても他の望ましくない症状を防ぐ、妨げる、遅らせる、もしくは後退させるあらゆる使用を指す。
【0082】
本明細書の文脈において、用語「含む(comprising)」とは、「主に含むが、必ずしも唯一含むことではない」ことを意味する。「含む(comprise)」および「含む(comprises)」のような「含む(comprising)」という語の語尾変化は、相応じて様々の意味をもつ。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】免疫組織化学による正常な肝臓切片におけるアクチビンA(図1A)およびフォリスタチン(図1B)の発現を示す。
【図2】免疫組織化学による硬変の肝臓切片におけるアクチビン発現を示す。
【図3】アクチビンAおよびα-平滑筋アクチンの発現を示すラット肝臓切片の共焦点顕微鏡検査を示す。
【図4】免疫組織化学による線維症動物の肝臓切片におけるフォリスタチン発現を示す。
【図5】CCl4ラット肝臓傷害のモデルの間の全肝臓抽出物におけるアクチビンAおよびフォリスタチンの両方のmRNAの発現を示す。
【図6】HSC増殖および細胞外マトリックス(ECM)生成の他の重要なマーカーに関連してアクチビンAおよびフォリスタチンの発現パターンを測定するために、インビトロで分化転換した時、新鮮に単離された肝星細胞(HSC)についてのリアルタイムPCR分析を示す。
【図7】活性化表現型に転換した時のHSCの一次培養によるアクチビンAタンパク質の分泌を示す。
【図8】HSC培養物からのアクチビンA含有上清の添加後、MPC-11細胞の増殖における減少(3Hチミジン取り込み、1分あたりの計数)を示す。
【図9】新鮮に単離されたHSC増殖(対照と比較した%増殖対添加された外因性介在物質の濃度)への様々な外因性介在物質の影響を示す:図9Aは、外因性介在物質としてアクチビンについての結果を示す;図9Bは、外因性介在物質としてトランスフォーミング成長因子β(TGF)についての結果を示す;図9Cは、外因性介在物質としてフォリスタチンについての結果を示す;図9Dは、外因性介在物質として血小板由来成長因子(PDGF)についての結果を示す。
【図10】活性化/分化転換化HSC増殖(対照と比較した%増殖対添加された外因性媒介物質の濃度)への様々な外因性介在物質の影響を示す:図10Aは、外因性介在物質としてアクチビンについての結果を示す;図10Bは、外因性介在物質としてトランスフォーミング成長因子β(TGF)についての結果を示す;図10Cは、外因性介在物質としてフォリスタチンについての結果を示す;図10Dは、外因性介在物質として血小板由来成長因子(PDGF)についての結果を示す。
【図11】活性化HSCの培養物に様々な量のアクチビンA、フォリスタチンおよびTGFβへの曝露の、細胞生存度(アネキシンV、細胞のアポトーシスの初期マーカー、の発現についてフローサイトメトリーにより評価される)への影響を示す。
【図12】4週間CCl4に曝され、その後最初の4週間は週に3回、1 μgのフォリスタチンを同時注射され、その後屠殺されたラットと比較した、対照ラットの体重における変化を示す。対照動物には、同じ長さの期間CCl4を与えた。
【図13】図12について記載された同じ実験条件に関して、残りの肝臓重量を示す。
【図14】図12について記載された同じ実験条件に関して、肝臓内ヒドロキシプロリン含有量を示す。
【図15】8週間CCl4に曝され、その後8週間目から12週間目まで、週に3回、1 μgのフォリスタチンを同時注射され、その後屠殺されたラットと比較した、対照ラットの体重における変化を示す。対照動物には、同じ長さの期間CCl4を与えた。
【図16】図15について記載された同じ実験条件に関して、残りの肝臓重量を示す。
【図17】図15について記載された同じ実験条件に関して、肝臓内ヒドロキシプロリン含有量を示す。
【図18】慢性ウイルス性肝炎に罹患しているヒト対象および正常な対照における血清アクチビンAを示す。
【図19】慢性ウイルス性肝炎に罹患しているヒト対象および正常な対照における血清フォリスタチンを示す。
【図20】B型肝炎(HBV)の患者における血清アクチビンAの、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT、肝細胞傷害および肝臓内傷害についてのマーカー)との相関を示す。
【図21】HBVの患者における血清アクチビンAとウイルスの複製(血清HBV、pg/mLとしてアッセイされる)の相関を示す。
【図22】HBVの患者における血清フォリスタチンとウイルスの複製(血清HBV、pg/mLとしてアッセイされる)の負の相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0084】
発明を実施する最良の形式
本発明は、共通の性質がこれらの疾患の線維症との関連である多数の異なった疾患を治療するための、フォリスタチンに例示されるような、アクチビン拮抗物質の使用を記載する。フォリスタチンは、受胎能疾患の治療における間接的役割をもつ、卵胞刺激ホルモンの抑制への関与について最もよく知られているが、線維症疾患に関連した細胞の過剰増殖を抑制することができる有効なアクチビン拮抗物質であることを今回見出した。
【0085】
アクチビン拮抗物質はフォリスタチンまたはその断片もしくは類似体のようなタンパク質であるが、それらを作製する方法は分子生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の通常の技術を使用することができ、それらのすべては、当技術分野の技術内であり、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、1989のような多数の周知の科学的刊行物のいずれか一つに完全に説明されている。例えば、フォリスタチンについての遺伝子は、以下の段階により、フォリスタチンを発現させる細胞または組織から単離されうる:組織または細胞からメッセンジャーRNAを単離する段階、逆転写酵素を用いて対応するDNA配列を作製する段階、および最後に、適切なプライマーでのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて活性フォリスタチンアミノ酸配列をコードするDNA配列を増幅する段階。また、フォリスタチン断片をコードするポリヌクレオチドは、適切な発現ベクターへクローニングされ、その後適した原核生物、ウイルスまたは真核生物の宿主において発現されうる。発現されたフォリスタチンポリペプチドは、以下の確立された方法の一つまたは複数を含む当技術分野において公知の標準的方法により精製されうる:硫酸アンモニウム、エタノールまたはポリエチレングリコール沈殿法および免疫沈降法を含むタンパク質沈殿法;イオン交換、サイズ排除、逆相、疎水的相互作用、親和性、または免疫親和性技術を用いるクロマトグラフィー技術であり、例えばカラムクロマトグラフィー、HPLC、またはFPLCにより行われる;ゲル電気泳動およびHPECのような電気泳動技術;その他同種類のもの。
【0086】
例えば、本発明における使用のための組換えフォリスタチンまたはその活性断片を作製することについて、関連したDNA配列を適した発現系へ挿入する。好ましくは、フォリスタチンをコードするポリヌクレオチド配列がフォリスタチンタンパク質の発現を可能にする異種性発現制御配列に機能的に連結されている、組換え分子またはベクターが構築される。哺乳動物(ヒトを含む)のタンパク質発現について、多数の適切な発現ベクターが当技術分野において知られており、標準的分子生物学的技術を用いて使用される。そのようなベクターは、バキュロウイルス発現のような昆虫、または酵母、真菌、細菌もしくはウイルス発現系を含む通常のベクター型の中から選択されうる。
【0087】
そのような方法におけるトランスフェクションに適した宿主細胞または細胞系は、ヒト293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、サルCOS-1細胞系またはマウス3T3細胞のような哺乳動物細胞を含む。同様に、大腸菌(E. coli)(例えば、HB101、MC1061)の様々な周知の種、および枯草菌(B. subtilis)、シュードモナス(Pseudomonas)、他の桿菌などの様々な種のような細菌細胞は、本発明のための宿主細胞として有用である。当業者に公知の酵母細胞の多くの種もまた、本発明のポリペプチドの発現のための宿主細胞として利用可能である。スポドプテラ・フルジペデラ(Spodoptera frugipedera)(Sf9)細胞のような昆虫細胞もまた用いられうる。
【0088】
対象となるDNAセグメントを含むベクターは、細胞の宿主の型に依存して、多数の周知の方法のいずれか一つにより、宿主細胞へ移入されうる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクション法およびエレクトロポレーション法は、原核細胞について一般に使用される。リン酸カルシウム処理法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、微粒子銃法またはウイルスに基づくトランスフェクション法は、他の細胞宿主について使用されうる。哺乳動物細胞を形質転換するための方法もまた、トランスフェクション法、形質転換法、結合法、ポリブレン法、リポソーム法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン技術およびマイクロインジェクション法の使用を含みうる(一般的に、Sambrookら、1989を参照)。
【0089】
組換え宿主細胞は、その後導入されたベクターを含むそれらの細胞の増殖について生得的に選択する選択培地に有利に増殖する。インキュベーション条件は、組換えポリペプチドの発現を最適化するように理想的に選択される。
【0090】
それゆえに、本発明における使用のための組換えアクチビン拮抗物質は、転写制御配列の支配下に、フォリスタチンまたはその活性断片もしくは類似体のようなアクチビン拮抗物質をコードする組換えポリヌクレオチドを含む、少なくとも1つの発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクションすることにより産生されうる。形質転換された細胞は、その後フォリスタチンの発現を可能にする条件下で培養される。発現されたタンパク質は、その後細胞または培地から回収され、単離され、選択的に当業者に公知の適当な手段により精製されうる。例えばタンパク質は、細胞溶解後、可溶性の形で単離されうる、または塩化グアニジンにおいてのような公知の技術を用いて抽出されうる。
【0091】
例えば、外因性フォリスタチン遺伝子を含む微生物細胞は、大容量のリアクターで培養され、遠心分離で収集され、その後例えば高圧均質化により破壊されうる。その結果生じた細胞溶解物は、適切な希釈液/緩衝液に再懸濁され、フォリスタチンタンパク質の水溶性懸濁液を得るために濾過されうる。組換えタンパク質は、例えば50 μg/ml〜500 μg/mlの濃度まで0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.4)に希釈し、その後滅菌した0.22マイクロンのフィルターに通すことにより、粗製の形で投与されることができる。
【0092】
フォリスタチンまたはその断片のようなアクチビン拮抗物質はまた、当業者に周知の固相化学の方法により合成されうる。例えば、フォリスタチン断片は、StewardおよびYoung(Steward, J. M.およびYoung, J. D.、Solid Phase Peptide Synthesis(第2版) Pierce Chemical Co.、イリノイ、米国(1984))の固相化学手順に従って合成されうる。一般的に、そのような合成方法は、増大するペプチド鎖に1つもしくは複数のアミノ酸または適当に保護されたアミノ酸の逐次的な付加を含む。典型的には、第一のアミノ酸のアミノ基かまたはカルボキシル基かのいずれかの一つ以外の機能性基は、適当な保護基により保護される。保護されたアミノ酸は、その後不活性の固体支持体に付着しているか、または適当に保護された相補性の(アミノもしくはカルボキシル)基を有する配列において、かつアミド結合を形成するのに適した条件下において、次のアミノ酸を付加することにより溶液中で使用される。保護基は、その後この新たに付加されたアミノ酸残基から除去され、そして次の(保護された)アミノ酸が付加される、など。結局、所望のアミノ酸は連結され、どの残っている保護基も、および必要ならばどの固体支持体も、最終ポリペプチドを作製するために、逐次的にまたは同時に除去される。
【0093】
フォリスタチンポリペプチドまたはその断片におけるような、アクチビン拮抗物質におけるアミノ酸変化は、当関連業者に周知の技術により果たされうる。例えば、アミノ酸変化は正しい読み取り枠を維持しながらヌクレオチドの付加、欠失または置換(保存的および/または非保存的)により果たされうる。標的ポリヌクレオチドにおけるそのような改変は、ランダム突然変異誘発、部位特異的突然変異、オリゴヌクレオチド媒介性またはポリヌクレオチド媒介性突然変異誘発、現存のまたは操作された制限酵素部位の使用による選択された領域の欠失、およびポリメラーゼ連鎖反応を含む技術により生じうる。
【0094】
または、本発明のアクチビン拮抗物質は、融合タンパク質として作製されうる。例えば、選択された宿主細胞においてタンパク質の発現を増強するために、精製を向上させるために、または組織、細胞もしくは細胞抽出物においてフォリスタチンの存在をモニターすることに使用するために、フォリスタチン融合タンパク質を作製することが望ましい場合がある。適した融合パートナーは、当業者によく知られており、以下を含む:β-ガラクトシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、およびポリヒスチジン。
【0095】
本発明のアクチビン拮抗物質はまた、典型的にはアクチビンまたはアクチビン受容体に対して産生された抗体でもありうる。
【0096】
抗体(またはその断片)は、下記の方法を用いて、アクチビン、アクチビン受容体、またはその免疫原性部分に対して産生されうる。十分な量の抗体の便利な製造として、これらは、血清を含まない培地でのバッチ発酵により製造され、その後クロマトグラフィー段階およびウイルスの不活化/除去段階を組み入れた多段階手順により精製されうる。例えば、抗体は、最初、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーにより分離され、その後いずれの脂質エンベロープ型ウイルスも不活化するために溶剤/界面活性剤で処理されうる。典型的には、サイズ排除、逆相、陰イオンおよび/または陽イオン交換クロマトグラフィーによるさらなる精製が、タンパク質、溶剤/界面活性剤および核酸のような残留する望ましくない混入物を除去するために用いられうる。このように得られた抗体はさらに精製され、ゲル濾過カラムを用いて0.9%食塩水へ製剤化されうる。製剤化されたバルク調製物は、その後滅菌され、ウイルスの濾過をされ、投薬されうる。
【0097】
これらの抗体は、限定されるものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fab断片、およびFab発現ライブラリーを含むことができる。
【0098】
モノクローナル抗体は、抗体産生細胞の単一クローンにより分泌される抗体を指し、特定の抗原またはエピトープに対して単一特異的である。それゆえに、モノクローナル抗体は、それが免疫反応するいずれの抗原に対しても単一の結合親和性を示す。
【0099】
アクチビンまたはアクチビン受容体の抗体は、当業者に周知の方法を用いて産生されうる。例えば、モノクローナル抗体は、典型的にはFab部を含むが、「Antibodies-A Laboratory Manual」、HarlowおよびLane編、Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y. (1988)(その開示は、参照として本明細書に組み入れられている)に記載されるハイブリドーマ技術を用いて調製されうる。培養中の継続的な細胞系による抗体分子の産生を提供するいずれの技術も用いられうる。適する技術は、Kohlerら、Nature、256: 495-497 (1975)により最初に開発されたハイブリドーマ技術、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、Immunology Today、4:72 (1983))、およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV-ハイブリドーマ技術(Coleら、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、pp. 77-96、Alan R. Liss, Inc.、(1985))を含む。不死の抗体産生細胞系は、発癌性DNAでのBリンパ球の直接的形質転換、またはエプスタイン-バーウイルスでのトランスフェクションのような融合以外の技術により作製されうる。例えば、M. Schreierら、「Hybridoma Techniques」(1980); Hammerlingら、「Monoclonal Antibodies and T-cell Hybridomas」(1981); Kennettら、「Monoclonal Antibodies」(1980)を参照されたい;これらの引用文献のそれぞれの開示もまた、参照として本明細書に組み入れられている。
【0100】
アクチビン、アクチビン受容体、またはそれらの断片に対するポリクローナル抗体の産生のために使用されうる、当技術分野において公知の様々な手順もある。例えば、1つまたは複数の宿主動物が関連性ポリペプチドまたはその誘導体(例えば、断片もしくは融合タンパク質)での注入により免疫化されうる。適する宿主は、例えばウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどを含む。
【0101】
抗体(またはその断片)は、結合親和性または結合活性をもつものである。好ましくは、この結合親和性または結合活性は、約105 M-1より大きい、より好ましくは約106 M-1より大きい、より好ましくはさらに約107 M-1より大きい、最も好ましくは約108 M-1より大きい。
【0102】
1. アクチビン拮抗物質を用いる疾患の治療および/または予防
本発明に記載されているアクチビン拮抗物質の投与は、脊椎動物において線維症依存性疾患、特に、過剰増殖性または炎症性線維性疾患;特発性肺線維症、間質性肺疾患のような肺線維症;潰瘍性大腸炎およびクローン病のような炎症性腸疾患ならびに関連症状;肝線維症および肝硬変を伴う腎臓における管壊死を治療するために有用である。
【0103】
典型的には、脊椎動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ、トリ、ネコおよびイヌからなる群より選択される。より典型的には、脊椎動物は、ヒト、非ヒト霊長類またはマウスである。さらにより典型的には、脊椎動物は、ヒトである。
【0104】
いずれの特定の患者についても治療的有効投与量レベルは、医学で周知の他の関連因子と共に、以下を含む様々な因子に依存する:治療される疾患および疾患の重症度;使用されるアクチビン拮抗物質またはその断片もしくは類似体の活性;使用される組成物;患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別および食事;投与の時期;投与経路;アクチビン拮抗物質の排出の比率;治療の期間;アクチビン拮抗物質またはその断片もしくは類似体と併用してまたは同時に使用される薬剤。例えば、望ましい治療効果を達成することが予想されるレベルよりも低いレベルでの治療用化合物の投与量で始めること、および必要な場合には、望ましい効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、当技術分野において周知である。
【0105】
それゆえに、アクチビン拮抗物質が適用できる疾患/病気を治療するために必要とされるアクチビン拮抗物質の効力があり、毒性のない量の決定は、日常的実験法だけで当業者により容易に決定されうる。典型的には、フォリスタチンについて、有効投与量は24時間あたり1 kgの体重につき約0.00001 mg〜約100 mg フォリスタチン、好ましくは24時間あたり1 kgの体重につき約0.0001 mg〜約10 mg フォリスタチン、より好ましくは24時間あたり1 kgの体重につき約0.001 mg〜約1 mg フォリスタチン、さらにより好ましくは24時間あたり1 kgの体重につき約0.002 mg〜約0.5 mg フォリスタチン、さらにさらにより好ましくは24時間あたり1 kgの体重につき約0.005 mg〜約0.20 mg フォリスタチンの範囲であると予想される。さらに望ましい場合には、投与のために、一日有効量を複数の用量に分割できる。
【0106】
または、フォリスタチンの有効投与量は、24時間あたり約6,500 mg/m2まででありうる。一般的に、有効投与量は、約0.004 mg/m2〜約400 mg/m2、好ましくは約0.04 mg/m2〜約40 mg/m2、より好ましくは約0.08 mg/m2〜約20 mg/m2、さらにより好ましくは約0.2 mg/m2〜約8 mg/m2の範囲であることが予想される。
【0107】
典型的には、治療はその状態の持続期間の間であり、接触時間は典型的にはその状態の持続期間の間であるものと思われる。
【0108】
明らかに、本発明の化合物の個々の投与量の最適の量および間隔は、治療される状態の性質および程度、投与の型、経路および部位、ならびに治療される特定の脊椎動物の性質により決定されるものであり、これらの最適条件は、当業者により日常的手順で決定されうる。
【0109】
アクチビン拮抗物質のプロドラッグもまた、本発明の範囲内に含まれる。典型的には、これらのプロドラッグは、本発明における使用に必要とされる化合物へインビボで容易に変換されるフォリスタチンの機能しうる誘導体である。プロドラッグの選択および調製のための典型的手順は、確立され、例えばH. Bundgaard編、「Design of Prodrugs」、Elsevier、1985のような入手可能なテキストに記載されている。
【0110】
疾患の治療において使用される場合、アクチビン拮抗物質またはその類似体もしくは断片は、単独で投与されうる。しかしながら、アクチビン拮抗物質が、疾患を治療するために通常患者に投与される他の化学療法的治療と共に投与されることは、一般的に好ましい。
【0111】
本発明の薬学的製剤は、典型的には当業者に公知の方法により調製され、それゆえ、典型的には薬学的に許容される担体、希釈剤および/もしくはアジュバントのような賦形剤、またはそれらの組み合わせを含む。
【0112】
製剤は、標準的経路により投与されうる。例えば、製剤は、経口、直腸、非経口(例えば、静脈内、髄腔内、皮下もしくは筋肉内)、局所的、経皮的、腹腔内、頭蓋内、脳室内、大脳内、腟内、または子宮内の経路により投与されうる。
【0113】
アクチビン拮抗物質またはその類似体もしくは活性断片はまた、選択的に他の活性薬剤と共に、徐放を可能にする生分解性ポリマーへ組み入れられうり、ポリマーは、薬剤送達が望まれる所(局在性疾患の部位のような)の付近に埋め込まれるか、または活性薬剤が全身にゆっくり放出されるように埋め込まれる。浸透性ミニポンプもまた、直接的に例えば、線維性増殖へまたはその増殖への血管供給へのような、対象となる部位へカニューレを通して活性薬剤の高濃度の制御された送達を提供するために使用されうる。
【0114】
2. 疾患を治療するための治療的/薬学的組成物
本発明の治療的/薬学的組成物に用いられる担体、希釈剤およびアジュバントは、他の成分と適合性があること、および患者に対して有害ではないことに関して、「許容され」なければならない。薬学的および獣医学的に許容される担体または希釈剤の例は、脱塩水または蒸留水;食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS);ゼラチン;キサンタンガム、アルギン酸塩、寒天、カラギーナン、トラガカントゴムまたはアラビアゴムのような植物性ゴム;微結晶性セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルエチルセルロースのようなセルロース誘導体;天然または改変デンプンおよびデキストリン;乳酸基盤ポリマー;低級アルカノール、例えばエタノールまたはイソプロパノール;低級アラルカノール;クエン酸塩;アセトニトリル;ベンジルアルコール;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;モノメチルアセトアミド;N-メチルピロリドンのような2-ピロリドン;フタル酸ジメチルのようなフタル酸エステル;ポリグリコール化グリセリド;低級ポリアルキレングリコールもしくは低級アルキレングリコール、またはそれらのアルキルエーテルもしくはエステル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルおよびポリエチレングリコール脂肪酸エステル;糖または多価アルコールの脂肪エステルおよびエーテル、ならびにアルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンソルビタン-またはソルビトール-脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、およびポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体(ethoxylated propoxylated block copolymer)のようなそれらのポリオキシアルケン(alkoxylated)誘導体;グリセロールおよびその脂肪酸モノ-、ジ-もしくはトリ-エステル;ソルビタンモノラウレートのようなソルビタンエステル;ポリソルベート;脂肪酸;ピーナッツ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、落花生油またはヤシ油のような植物を素材とする油;蜜蝋もしくはラノリンまたはそれらの誘導体のような、動物由来の蝋;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソブチルまたはオレイン酸エチルのような脂肪酸エステル;セトステアリルアルコールのような脂肪アルコール;硫酸化脂肪アルコール;第四アンモニウム化合物;ドデシル硫酸ナトリウムのような脂肪硫酸エステル;アルキルベンゼンスルホン酸またはブチルナフタレンスルホン酸のような脂肪芳香族スルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;ステアリン酸カリウムまたはステアリン酸アンモニウムのようなアルカリ性ステアリン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような、アルキルおよびアルカリル硫酸塩;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリソルポキサンのようなポリシロキサンを含む、シリコーン油;揮発性シリコーン;ヒュームドシリカ;コロイド二酸化ケイ素;マグネシウムアルミニウムケイ酸;流動パラフィン、軟質パラフィンまたはスクアランのような鉱油;ポリビニルピロリドンまたはそのポリマー;ならびにワセリンである。典型的には、担体は、組成物の10%から99.9%重量までを構成する。
【0115】
好ましい形態において、本発明の薬学的組成物は、活性薬剤として、フォリスタチン、その類似体もしくは活性断片、またはフォリスタチンの有効量を、薬学的に許容される担体、希釈剤および/もしくは実施例1に示されるようなアジュバントと共に含む。
【0116】
本発明の薬学的組成物は、以下でありうる:非経口投与、すなわち皮下、筋肉内もしくは静脈内注射に適した形態;経口摂取に適したカプセル;局所的投与に適した軟膏、クリームまたはローション;目薬としての送達に適した形態;または、鼻腔内もしくは経口吸入によるような吸入による投与に適したエアゾールの形態。
【0117】
注射可能な溶液または懸濁液としての投与について、毒性のない非経口的に受け入れられる希釈剤または担体は、リンガー溶液、等張食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノールおよび1,2プロピレングリコールを含みうる。
【0118】
経口に適した担体、希釈剤、賦形剤およびアジュバントは、ピーナッツ油、流動パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガカントゴム、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ゼラチンおよびレシチンを含む。さらに、これらの経口製剤は、適するフレーバー剤および着色剤を含みうる。カプセル形で用いられる場合、カプセルは、分解を遅らせるグリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートのような化合物でコーティングされうる。または、製剤は、小腸のような吸着についての所望の位置まで、例えば胃液から製剤を保護する、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ならびにアクリル酸およびメタクリル酸の重合体もしくは共重合体ならびに/またはそれらのエステル、またはそれらの組み合わせのような腸溶性コーティングされて提供されうる。
【0119】
経口製剤のためのアジュバントは、典型的には緩和薬、乳化剤、濃化剤、保存料、殺菌剤および緩衝剤の1つまたは複数を含む。
【0120】
経口投与のための固体剤形は、ヒトもしくは獣医学の薬学的実施において許容される結合剤、甘味料、着色剤、崩壊剤、希釈剤、フレーバー剤、コーティング剤、保存料、潤滑剤および/または時間遅延剤を含みうる。適する結合剤は、アラビアゴム、ゼラチン、コーンスターチまたは他の天然もしくは改変デンプンおよびデキストリン、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、またはポリエチレングリコールを含む。適する甘味料は、ショ糖、乳糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ブドウ糖、アスパルテームまたはサッカリンを含む。多数の適する着色剤が公知であり、特定の製剤の性質に従って選択されるものであり、例えばクロロフィル、カロテン、コチニールのような天然着色剤を含むことが有利である場合がある。適する崩壊剤は、コーンスターチ、メチルセルロースのようなセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、グアールガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸または寒天を含む。適する希釈剤は、乳糖、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クエン酸塩またはリン酸二カルシウムを含む。適するフレーバー剤は、ハッカ油、冬緑油、グロスグリ、サクランボ、オレンジ、レモンまたはラズベリーのフレーバーを含む。適するコーティング剤は、アクリル酸および/もしくはメタクリル酸の重合体もしくは共重合体ならびに/またはそれらのエステル、ヒドロキシプロピルエチルセルロースのようなセルロース誘導体、蝋、脂肪アルコール、ゼイン、セラックまたはグルテンを含む。適する保存料は、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α-トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは重亜硫酸ナトリウムを含む。適する潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはタルクを含む。適する時間遅延剤は、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートを含む。
【0121】
経口投与のための液体剤形は、典型的には上記の薬剤に加えて、例えば水、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、サフラワー油、落花生油もしくはヤシ油のような植物油、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールのようなグリコール、エタノール、プロパノールもしくはイソプロパノールのような低級アルカノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリド、またはそれらの混合物から選択される液状担体を含む。
【0122】
経口投与のための懸濁液は、分散剤および/または、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体、グアールガムもしくはキサンタンガムのような植物性ガム、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムまたはアセチルアルコールから選択される沈殿防止剤をさらに含みうる。適する分散剤は、レシチン、ステアリン酸のような脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノ-もしくはジ-オレイン酸、-ステアリン酸またはラウリン酸、ポリオキシエチレンソルビタンモノ-もしくはジ-オレイン酸、-ステアリン酸またはラウリン酸などを含む。
【0123】
経口投与のための乳液は、1つまたは複数の乳化剤をさらに含みうる。適する乳化剤は、上記で例示されている分散剤、またはアラビアゴムもしくはトラガカントゴムのような他の天然ゴムを含む。
【0124】
非経口的に投与可能な組成物のための方法は、当業者にとって明らかであり、例えば「Remington's Pharmaceutical Science」、第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.により詳細に記載されており、これにより、参照として本明細書に組み入れられている。
【0125】
本発明の局所用製剤は、1つまたは複数の許容される担体、および選択的に任意の他の治療的成分と共に、活性成分として、アクチビン拮抗物質、またはその類似体もしくは活性断片を含む。局所的投与に適した製剤は、リニメント剤、ローション、クリーム、軟膏またはペーストのような、治療が必要とされる部位へ皮膚を通しての浸透に適した流動性または半流動性調製物、および目、耳または鼻への投与に適した滴剤を含む。
【0126】
本発明による滴剤は、滅菌した水性もしくは油性溶液または懸濁液を含みうる。これらは、典型的には殺細菌剤および/もしくは殺真菌剤、ならびに/または酸化防止剤のような任意の他の適する保存料の水溶液に、選択的に界面活性剤を含み、活性成分を溶解することにより調製される。その結果生じた溶液は、その後濾過により清澄にされ、適する容器に移動され、滅菌されうる。滅菌は、例えば90℃〜100℃で30分間、加圧滅菌もしくは維持することによりまたは濾過により達成され、続いて無菌技術により容器へ移動する。滴剤での含有に適した殺細菌剤および殺真菌剤は、例えば硝酸または酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)を含む。油性溶液の調製に適した溶媒は、例えばグリセロール、希アルコールまたはプロピレングリコールを含みうる。
【0127】
本発明によるローションは、皮膚または眼への適用に適したものを含む。眼用ローションは、選択的に殺真菌剤、殺細菌剤および/または酸化防止剤のような保存料を含む滅菌水溶液を含んでもよく、滴剤の調製に関連した上記のものと同様の方法により調製されうる。皮膚への適用のためのローション、クリームまたはリニメント剤はまた、アルコールやアセトンのような乾燥を促進するもしくは皮膚を冷やすための薬剤、および/またはグリセロールもしくはヒマシ油や落花生油のような油のような保湿剤を含みうる。皮膚への適用のためのローション、クリームまたはリニメント剤はまた、未処置の動物と処置済みの区別を容易にするために獣医学の適用について、当技術分野において周知の適切かつ適合性の着色剤/染料を、特に降り注ぎ方式の(pour-on)製剤において含みうる。
【0128】
本発明によるクリーム、軟膏またはペーストは、外用のための活性成分の半固体製剤である。それらは、微細に分割された形または粉末状の形の活性成分を、単独または溶液もしくは水性や非水性液中の懸濁液として、脂肪性または非脂肪性基剤と混合することにより作製されうる。基剤は、硬質、軟質または流動パラフィン、グリセロールまたはその脂肪酸モノエステル、ジエステル、もしくはトリエステル、蜜蝋、金属石鹸のような炭化水素;ゴム糊;アーモンド油、トウモロコシ油、落花生油、ヒマシ油またはオリーブ油のような天然源の油;羊毛脂もしくはその誘導体、またはマクロゴールもしくはグリコールのようなアルコールと共にステアリン酸もしくはオレイン酸のような脂肪酸、またはそのエーテルおよび/もしくはエステル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテル、低級アルカノール、例えばエタノールもしくはイソプロパノール、低級アラルカノール、またはN-メチルピロリドンのような2-ピロリドンを含みうる。
【0129】
皮膚適用のための製剤はまた、一面に行き渡らせるにおいてまたは皮膚を通しての吸着において助けとなりうる、任意の適する界面活性剤を組み込むことが有利である場合がある。そのような界面活性剤は、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、または両性イオン性の界面活性剤でありうる。典型的には、界面活性剤は、非イオン性であり、より典型的には、糖または多価アルコールのエステルおよびエーテル、ならびにアルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンソルビタン-またはソルビトール-脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、およびポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体のようなそれらのポリオキシアルケン誘導体から選択されるものである。当技術分野において公知の適する消泡剤もまた、必要な場合には含まれうる。
【0130】
天然のガム、セルロース誘導体もしくは珪質のシリカのような無機物質のような沈殿防止剤および/または粘性改変剤、ならびにラノリンのような他の成分もまた、含まれうる。
【0131】
本発明による局所用製剤における使用に適した保存料は、例えば安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール、ビタミンE、α-トコフェロール、アスコルビン酸、2,6-ジtert-ブチル-4-クレゾール(BHT)、2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール(BHA)、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは重亜硫酸ナトリウムを含みうる。
【0132】
本発明の薬学的組成物はまた、リポソームの形で投与されうる。リポソームは、一般的に、リン脂質または他の脂質物質から得られ、水性媒体に分散する単層状または多層状水和化液晶により形成される。リポソームを形成することができる、毒性がなく、生理学的に許容されかつ代謝可能の脂質のいずれも使用することができる。リポソームを含む製剤はまた、当技術分野において公知の安定化剤、保存料、賦形剤などを含みうる。リポソームの調製のために、好ましい脂質は、天然および合成のリン脂質ならびにホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成するための方法は、確立され、Prescott編、「Methods in Cell Biology」、XIV巻、Academic Press、New York、N.Y. (1976)、P. 33以下参照のようなテキストに発表されており、その内容は参照として本明細書に組み入れられている。
【0133】
3. 疾患の診断
アクチビンに対して産生される抗体、またはフォリスタチン、または両方を用いる、脊椎動物における線維症関連疾患についてのスクリーニングはまた、例えば以下を含む当技術分野において公知の多数の技術のいずれか1つにより達成されうる:ゲル拡散沈殿反応法;免疫拡散アッセイ法;インサイチュー免疫アッセイ法;ウエスタンブロット法;沈殿反応法;凝集アッセイ法;補体結合アッセイ法;免疫蛍光アッセイ法;プロテインAアッセイ法;免疫電気泳動アッセイ法;放射免疫検定法;ELISA(酵素結合免疫吸着測定法);サンドイッチ免疫アッセイ法;免疫放射測定アッセイ法;受容体結合アッセイ法;およびその他同種類のもの。
【0134】
アクチビンに対する抗体は、本明細書で前に記載されているように産生されうり、そのような方法は、フォリスタチンに対する抗体の産生に等しく適用される。
【0135】
アクチビンおよびフォリスタチンは、脊椎動物において、正常組織では基礎レベルで発現するため、基礎発現レベルと比較しての試料における抗体に結合したアクチビンまたはフォリスタチンのレベルの変化の検出は、線維症関連疾患を示すものと思われる。
【0136】
上記のようなスクリーニング試験を行うためのキットは、試験を行うために必要なすべての試薬を含む。例えば、キットは以下の容器を含みうる:
(a)アクチビンかまたはフォリスタチンかのいずれかに対して産生される抗体(またはその断片)を含む第一の容器;
(b)抗体(またはその断片)の結合パートナーを検出可能な標識と共に含む結合体を含む第二の容器。
【0137】
疾患の進行中における組織でのアクチビンレベルとフォリスタチンレベルの増加の差、健康な参照試料における差と比較して、試料におけるアクチビンレベルとフォリスタチンレベルの差における変化の検出は、線維症関連疾患を示す。上記のようなスクリーニング試験を行うためのキットは、試験を行うために必要なすべての試薬を含む。例えば、キットは以下の容器を含みうる:
(a)少なくともアクチビン抗体(またはその断片)を含む第一の容器、および;
(b)少なくともフォリスタチン抗体(またはその断片)を含む第二の容器;
(c)アクチビン抗体(またはその断片)の結合パートナーを検出可能な標識と共に含む結合体を含む第三の容器、および
(d)フォリスタチン抗体(またはその断片)の結合パートナーを検出可能な標識と共に含む結合体を含む第四の容器。
【0138】
典型的には、上記のキットはまた、例えば洗浄試薬、および/または結合した抗体の存在を定量的に検出することができる他の試薬を含む、1つまたは複数の他の容器を含む。好ましくは、検出試薬は、標識(第二)抗体を含む、またはアクチビンもしくはフォリスタチンに対して産生される抗体(またはその断片)がそれ自身標識されているところにおいて、その区画にアクチビンに対して産生される標識抗体(またはその断片)と反応することができる抗体結合試薬を含む。
【0139】
本発明に関連して、区画に分けられたキットは、試薬が別々の容器に含まれているいずれのキットも含み、小型のガラス容器、プラスチック容器またはプラスチックもしくは紙の条片を含みうる。そのような容器は、試料および試薬の交差混入を防止しながら、一つの区画から別の区画への試薬の効率的な移動、および定量的様式における一つの区画からもう一つへの各容器の試薬または溶液の追加を可能にする。都合のよいようには、そのようなキットは、試験試料を受け入れる容器、アッセイ法に用いられる抗体を含む容器、洗浄試薬(リン酸緩衝食塩水、トリス緩衝液などのような)を含む容器、および検出試薬を含む容器を含む。
【0140】
4. 遺伝子治療
本発明はまた、線維症関連疾患を治療するための遺伝子治療法に関する。本明細書に記載されているように、遺伝子治療は、遺伝子移入およびアンチセンスバイオテクノロジー技術を含みうる。
【0141】
遺伝子移入は、マイクロインジェクション法により細胞の核へ微量のDNAをただ単に注入することにより行われうる。導入された遺伝子は、転写および翻訳についての細胞の通常の機構により認識されることができ、遺伝子産物は、その後発現されることになる。
【0142】
以下を含む、より大量の細胞へDNAを導入するための多数の方法もまた試みられてきた:その後飲作用により細胞へ取り込まれる、CaPO4を伴う標的DNAの沈殿を含む、トランスフェクション法;標的DNAが通過しうる穴を膜に導入するために高電圧パルスに細胞を曝す段階を含む、エレクトロポレーション法;その後標的細胞と融合することができる親油性小胞への標的DNAのパッケージングを含む、リポフェクション法/リポソーム融合法;および微小発射体に結合した標的DNAが細胞へ撃ち込まれる微粒子銃法。標的DNAはまた、DNAを化学修飾されたタンパク質へカップリングすることにより細胞へ導入されうる。
【0143】
典型的には、本発明による遺伝子移入の方法において、フォリスタチンもしくはその断片もしくは類似体のようなアクチビン拮抗物質をコードする核酸分子を含む発現ベクター、またはそのアクチビン拮抗物質をコードする核酸分子を含むベクターが細胞へ挿入される。形質転換された細胞は、インビトロで増殖され、その後患者へ大量で注入される。標的細胞集団(例えば、肝実質細胞、肝星細胞のような他の肝細胞型、平滑筋細胞、肺線維芽細胞、線維芽細胞、腎細胞)へのこれらの核酸配列の送達に適した発現ベクターは、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、数種のRNAウイルス、またはウシパピローマウイルスのようなウイルス由来でありうる。標的核酸配列を含む組換えウイルスベクターは、当業者によく知られている多数の方法のいずれか一つにより調製されうる。または、フォリスタチン、もしくはその類似体もしくは活性断片のようなアクチビン拮抗物質をコードする組換え核酸分子は、裸のDNAとして、または再構築された系、例えば標的細胞への送達のためのリポソームもしくは他の脂質系において、用いられうる。
【0144】
典型的には、本発明によるアンチセンス技術を含む方法において、アクチビン、アクチビン受容体、もしくは他のアクチビン関連伝達経路分子、もしくはその断片もしくは類似体をコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部に対してアンチセンスの核酸分子についてコードする核酸分子を含む発現ベクター、またはそのような発現ベクターを含むベクターが細胞へ挿入される。適する発現ベクターは、遺伝子移入の目的のための上記のものを含みうる。典型的には、発現ベクターは、インビボで標的組織における細胞に挿入されるものであり、これは、典型的には適切なウイルスベクターのようなトランスフェクションベクターの使用、または発現ベクターの受動的取り込みの使用を含みうる。典型的には、方法は、アクチビン、アクチビン受容体、または他のアクチビン関連伝達経路分子の発現されたレベルが非形質転換型組織と比較して低下し、それにより、組織における疾患の進行が遅くなる、停止する、または疾患が後退するような、標的組織における相当量の細胞の形質転換を含む。アンチセンスをコードする核酸分子での細胞のトランスフェクションに適するウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、数種のRNAウイルス、レトロウイルス、またはウシパピローマウイルスのような弱毒化型ウイルスを含みうる。
【0145】
アデノウイルスタンパク質はエンドソームを不安定にして、細胞へのDNAの取り込みを増強させる能力があることもまた示された。DNA複合体を含む溶液へのアデノウイルスの混合、またはタンパク質架橋剤を用いてアデノウイルスへ共有結合的に付着したポリリシンへのDNAの結合は、実質的に、組換え遺伝子の取り込みおよび発現を向上させる。
【実施例】
【0146】
本発明を、ここで特定の実施例を参照することにより、より詳細に記載するが、決して本発明の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0147】
実施例
実施例1‐アクチビンAおよびフォリスタチン免疫反応性は、正常なラット肝臓における恒常的な肝細胞発現を示す
本発明者らは、正常な肝臓の肝細胞のみへのフォリスタチン免疫局在性を実証した(図1)。
【0148】
組織学的試験に必要とされる肝臓試料は、室温で24時間、10% PBS緩衝ホルマリンで固定され、その後70% アルコールで2回洗浄され、使用されるまで室温で70% アルコール中に保存された。その後、組織試料は、以下の計画を用いて処理された。試料を、1時間70% エタノール、2時間90% エタノール、および2時間100%エタノール、ならびに1時間100%エタノールの逐次浴で脱水した。その後、組織を別々の浴槽で3回、ヒストソルに1時間浸水させ、2個の別々の浴槽のそれぞれにおいて、1時間、蝋に浸漬した。その後、組織を蝋の型に包埋し、いったん固まったら、使用するまで室温で保存した。
【0149】
免疫組織化学のために、ホルマリン固定化パラフィン包埋組織塊を4 μmの薄片に切り、スーパーフロストプラス(Superfrost Plus)(商標)スライドに置き、60℃で30分間、インキュベートし、必要とするまで室温で保存した。その後、スライドを、標準的技術を用いて脱パラフィン化し、0.1 M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)に浸水させて400 Wで10分間、マイクロ波熱回復させた。色は、他のように記載されない限り、すべての染色工程において3',3-ジアミノベンザジン(DAB)を用いて発色させ、スライドはヘマトキシリンで対比染色された。
【0150】
肝臓組織においてアクチビンAの位置を確認するために、アクチビン-βAサブユニットに対して産生されるモノクローナル抗体「E4」を18 μg/mlの最終濃度で適用し、4℃で一晩、インキュベートした。「E4」は、アクチビンA ELISAにおいて使用された同じモノクローナル抗体であり、両方の工程について以前に確証されている(Jarred, RA、Cancilla B、Richards M、Groome NP、McNatty KP、Risbridger GP.「Differential localization of inhibin subunit proteins in the ovine testis during fetal gonada development.」Endocrinology 1999; 140:979-986)。反応性は、製造会社の使用説明書に従い、CSAシグナル増幅キット(DAKO)を用いて増幅され、色は発色され、切片は対比染色された。ヒト前立腺切片が陽性対照として用いられ、陰性対照は、その一次抗体を除いて関連性のない抗体(正常なマウス免疫グロブリン)を代わりに用いた。インヒビンは、本質的に肝臓で発現されないため、βAサブユニットの検出は、アクチビンAタンパク質を示し、インヒビン(αおよびβAのサブユニットのヘテロ二量体)ではない。
【0151】
ヒトフォリスタチンの2つの主なアイソフォームに対するモノクローナル抗体が組織免疫反応性を測定するために用いられた。モノクローナル抗体17/2(1:150)は、ヒトフォリスタチン288に特異的であり、H10(1:100)クローンは、ヒトフォリスタチン315に特異的である(McPherson SJ、Mellow SL、Wang H、Evans L.W、Groome NP、およびRisbridger GP.「Expression of activin A and follistatin core proteins by human prostate tumor cell lines.」Endocrinology 1999; 140:5303-5309)。各モノクローナル抗体についての染色工程は、陽性対照として、アクチビン-βAサブユニットに関してはHepG2細胞系のサイトスピン調製物を用いて行われ、一次抗体の代わりに用いられた関連性のない抗体が陰性対照としての役割を果たした。
【0152】
実施例2‐アクチビンAについての免疫反応性は、小葉の肝細胞においてより線維性中隔に隣接した所で強いが、硬変においてフォリスタチン発現における変化はない
線維性および硬変性の肝臓におけるアクチビンAの発現は、正常な肝臓のそれよりも論議の的となることは少ない。
【0153】
80 gm〜100 gmの体重のオスのウィスターラットを一定の温度および湿度で、標準的な12時間の昼夜サイクルにおいて収容し、水およびラット用飼料へ自由に接近できるようにした。線維症および硬変のモデルを確立するために、ラットに1:1 四塩化炭素/オリーブ油の混合物を1週間に3回、12週間、0.8 ml/kgの投与量で腹膜内に注射した。注射は、3日続けて与えられた。対照動物は、等容量のオリーブ油のみを注射された。線維症および硬変のこのモデルにおいて、本発明者らは、小葉の肝細胞から線維性帯状組織周囲の領域まで、免疫反応性アクチビンAの分布における変化(図2)、およびHSCのマーカーとの偶然の共局在性(図3)を観察した。
【0154】
実験は、実施例1どおりに行われ、線維性中隔内のアクチビン発現HSCを評価するために、共焦点顕微鏡が用いられた。活性化肝星細胞についてのマーカーであるα平滑筋アクチンが、活性化肝星細胞に存在するアクチンフィラメントに対して作製されたモノクローナル抗体を用いて検出された。α-平滑筋アクチンを発現させる細胞は、室温で1時間、x mg/ml(1:100、DAKO corporation)の最終濃度で適用されるモノクローナルマウス抗ヒト一次抗体を用いて可視化された。この抗体は、ラットα-平滑筋と交差反応性を示すことが以前に確証されている。反応性を可視化するために、切片を、正常なラット血清に対してあらかじめ吸収されたヒツジ抗マウスFITC結合体(1:50、Silenus、Victoria)と室温で1時間、インキュベートした。線維性内HSCによるアクチビン発現を評価するために、ビオチン化アクチビンA結合体(1:20)を1時間適用し、ストレプトアビジン-テキサスレッド結合体(1:50)で30分間、可視化した。反応性は、蛍光条件下、バイオラッド(Biorad)共焦点顕微鏡で測定され、バイオラッドソフトウェアを用いて解析された。
【0155】
特に、正常なものと比較した場合、線維症および硬変の動物において、フォリスタチンの反応性における認識できる変化はなかった(図4)。この発見は、線維症および硬変の肝臓におけるフォリスタチン発現の初めての記載であり、線維性中隔に隣接したアクチビン発現の増加が、フォリスタチン中和活性の増加により抵抗されないことを示唆しているものと思われる。
【0156】
実施例3‐肝臓のアクチビンmRNAの発現が、肝臓の線維形成の発生の間、フォリスタチンmRNAにおける変化に先行する
アクチビンおよびフォリスタチンの発現は、多くの組織の間に広く分布しているため、タンパク質レベルでの観察は、肝外の供給源からのタンパク質蓄積により混同されうる。
【0157】
全肝臓抽出物のリアルタイムPCR分析を用いて、本発明者らは、実施例2に記載されているように線維症のモデルの期間中、アクチビンAおよびフォリスタチンの両方のmRNAの発現を分析した(図5)。
【0158】
全RNAを、改変されたトリゾール(Trizol)(商標)を用いて精製した。簡単には、最初の抽出後、より効率的な沈殿が生じることが可能になるように、上清を0.8 M クエン酸ナトリウムおよび1.2 M 塩化ナトリウムの高塩溶液と混合した。ゲノムDNAの混入を除去するために、その後試料を37℃で45分間、10 UのDNA分解酵素(Roche Biochemicals)で処理し、95℃で3分間、インキュベートすることにより反応を停止した。その後、試料をA260/A280分光光度計により定量した。各試料についての2マイクログラムのRNAをスーパースクリプトII(Superscript II)(登録商標)およびオリゴdT13-15(Gibco-BRL)を用いて転写した。
【0159】
アクチビンβAサブユニットmRNA分析は、リアルタイムでPCR産物の形成を蛍光測定的にモニターする、ロシュライトサイクラー(Roche LightCycler)(Roche)を用いて行われた。これは、その結合していない形では低蛍光性であるが、dsDNAに結合した場合、蛍光強度がdsDNAの量に比例して増加するように強く蛍光を発するマーカーSYBRグリーンI(SYBR Green I)を用いることにより達成される。PCR増幅曲線の対数直線部分は、対数直線領域を通す最適合線とノイズバンドの交差として定義される限界点または交差点(サイクル数に示される)で同定される。これらの研究において、正常なラットcDNA調製物は、品質管理として用いられ、実験の実施間で一定のまま保持されるサイクリング条件を確実にするためにすべての反応において使用される。各mRNAの発現レベルおよび各試料におけるそれらの推定される交差点は、ライトサイクラーソフトウェアを用いて決定された。その後、特定のmRNA/GAPDH増幅の比率を計算した。PCR試薬は、ロシュバイオケミカルズ(Roche Biochemicals)から購入された。
【0160】
PCRについて、各cDNA調製物の2 μlを1:400の最終濃度まで希釈し、dNTP、Mg2+、SYBRグリーンおよび関連プライマーを含有する個々のキャピラリーへ添加した。マグネシウム濃度、アニーリング温度、伸長時間ならびにプライマー特異的ヌクレオチドの位置および配列は、表1に示されている。対数直線相に到達することを確実にするために、40サイクルのPCRをプログラムした。反応の完了時点において、生じたDNA産物の特異性を確立するために、融解曲線分析を行った。PCR産物をキャピラリーから取り出し、産物のサイズおよびPCR反応の完全性を確認するためにゲル電気泳動法により可視化した。あらゆる例において、個々の動物についての各プライマーセットは、単一のPCR実験において実施された。アッセイ内変動は、各プライマーセットについて4%であった。
【0161】
CCl4での中毒後すぐに、1週間目でアクチビンA発現において有意な低下があり、2週間目まで通して続いた。次いで発現レベルは、4週間目で基準線レベルまで戻り、モデルの残りの間ずっと一定のままであった。
【0162】
対照的に、フォリスタチン発現は、正常なレベルと比較して最初は上昇した。興味深いことに、フォリスタチン発現におけるこの上昇は、PCNA発現により測定されたピークの肝細胞増殖と相関した。最初の上昇後、フォリスタチンmRNA発現レベルは、2週間目で有意に降下し、その後は、アクチビン発現を模倣した。
【0163】
フォリスタチンおよびアクチビンのこの最初の応答は、修復性応答を誘発するCCl4の急性傷害による可能性が高い。
【0164】
これらの結果は、アクチビンAおよびフォリスタチンのレベルは肝線維症の病因間で異なって制御されるが、この発現は込み入った形で結び付けられているという考えを強調するものである。
【0165】
実施例4‐アクチビンA mRNA発現は、フォリスタチンmRNA発現と比較して、HSC活性化の初期の間、急速に増加する
本発明者らは、HSC増殖およびECM生成の他の重要なマーカーに関連してアクチビンAおよびフォリスタチンの発現パターンを測定するために、インビトロで分化転換した時、新鮮に単離されたHSCについてリアルタイムPCR分析を行った。
【0166】
HSC培養物は、以前に記載されているように(Ramm GA.「Isolation and culture of rat hepatic stellate cells.」J Gastroenterol Hepatol (1998) 13:846-851)、連続的なプロナーゼおよびコラゲナーゼの灌流により確立された。簡単には、細胞をナイコデンツ(Nycodenz)(Sigma、シドニー、オーストラリア)の2段階不連続勾配に分離し、純度は特有のビタミンA UV自己蛍光およびフローサイトメトリーにより評価した。生存力を測定するためのトリパンブルー排除後、1×106細胞/mlを標準的5%CO2条件下、10% ウシ胎児血清および10% 標準ウマ血清(Trace Scientific、ビクトリア)で補充されたM199培地で培養した。培地は、24時間後交換され、その後は48時間毎に交換された。
【0167】
RNA単離およびリアルタイムPCRは、実施例3どおりに行われた。
【0168】
HSCが分化転換した時、1型コラーゲンmRNA発現は、予想通り上昇した。しかしながら、本発明者らの分析により、HSC活性化の間のごく初期にアクチビンA mRNA発現の誘導があり、5日目まで通して続くことが明らかになった(図6)。なおさらに、この発現はTGFβの発現の前に上昇したが、1日目の後は、TGFβは、アクチビンAより多かった。
【0169】
しかしながら、重要な発見は、フォリスタチンmRNA発現が単離後1日でピークになり5日目まで一定のままであり、アクチビンAおよびFSの発現レベルが著しく異なっていたという観察であった。それは、内分泌的または自己分泌的のどちらに由来しても、アクチビンAの存在がHSCフィブロネクチンおよびコラーゲン合成を刺激することができることが示唆されていた。上記実施例で報告されている発見とひとまとめにして考えたこれらの観察、およびフォリスタチンがアクチビンAの生物活性を中和するという知識により、フォリスタチンの添加がHSC ECM生成を改善し、それゆえに肝線維形成を改善することができることが示唆されているものと思われる。
【0170】
実施例5‐単離された肝星細胞は、それらが典型的な「筋線維芽細胞様」表現型に転換する時、増加した濃度の生物活性アクチビンAを産生する
HSCの一次培養は、実施例4どおり正常な肝臓から確立され、分析により、それらが活性化表現型に転換した時の増加した量のアクチビンの産生が明らかになった(図7)。
【0171】
アクチビン免疫反応性は、Knight PG、Muttukrishna S、Groome NPのように、ELISAにより測定された。血清および卵胞液における「総」アクチビンA濃度の測定のための2部位酵素免疫アッセイ法の開発および適用は、J Endocrinol (1996)、148:267-279に記載される方法に基づいた。
【0172】
HSC培養からの馴化培地は、以前に確証されたインビトロでの生物検定法(Phillips, D.J.、Brauman, J.N.、Mason, A.J.、de Kretser, D.M、およびHedger, M.P.「A sensitive and specific in vitro bioassay for activin using a mouse plasmacytoma cell line, MPC-11. J Endocrinol」(1999)、162:111-115)を用いてアクチビン生物活性について評価された。アクチビンの添加は、マウスMPC-11細胞において、用量依存的増殖抑制を引き起こす。これらの細胞は、TGFβおよびインヒビンに無反応性であるが、アクチビンの効果は、過剰フォリスタチンの添加により遮断されうる。
【0173】
MPC-11細胞へのHSC培養物からの上清の添加は、結果として、増殖において用量依存的減少を生じた(図8)。この増殖における減少は、rh-アクチビンAのそれを模倣した。
【0174】
培養上清の添加がrh-アクチビンAについて観察されるものより強力であることが観察された。
【0175】
実施例6‐HSCの培養物への外因性アクチビンAおよびフォリスタチンの添加により、結果としてHSC増殖が減少した
実施例4どおりに単離されるが、新鮮に単離されかつ活性化されたHSCの培養物は、増殖への影響を測定するために外因性アクチビンAおよびフォリスタチンに曝された。アクチビンAおよびフォリスタチンの両方の添加は、結果として、TGFβについて観察されたものと類似したプロフィールで、両方の実験条件(図9および図10)において、HSC増殖に用量依存的減少を生じた。
【0176】
様々な外因性介在物質に対するHSCおよび転換されたHSC(筋線維芽細胞)の増殖性応答は、インビトロで3H-チミジンの取り込みにより評価された。最適な細胞密度が決定された後、細胞を0.5×105細胞/ウェルで24ウェルプレート上に播種し、37℃で一晩、接着させておいた。細胞培地を除去し、0.1% BSAを含むM199培地に交換し、18時間、細胞が細胞サイクルのG0期へ移行するようにした。その後、細胞をアクチビン(0.15 ng/ml、0.3 ng/ml、0.6 ng/ml、1.25 ng/ml、2.5 ng/ml、5 ng/ml、10 ng/ml、および20 ng/ml)、TGFβ(0.15 ng/ml、0.3 ng/ml、0.6 ng/ml、1.25 ng/ml、2.5 ng/ml、5 ng/ml、10 ng/ml)、フォリスタチン(1.6 ng/ml、3.2 ng/ml、6.25 ng/ml、12.5 ng/ml、25 ng/ml、50 ng/ml、および100 ng/ml)およびPDGF-BB(1.6 ng/ml、3.2 ng/ml、6.25 ng/ml、12.5 ng/ml、25 ng/ml、50 ng/ml)の様々な濃度に18時間、曝した。その後、培養物は、3H-チミジンの0.5 μCiでパルスされ、37℃でさらに16時間、インキュベートされた。次いで、接着および非接着細胞をトリプシン処理し、その後バイオラッド(Biorad)細胞ハーベスターで濾紙上に収集し、ワラック(Wallac)シンチレーションチューブへ加えた。750マイクロリットルのシンチレーション液を各チューブへ添加し、ワラックβカウンター(Wallac)で1分間、カウントした。
【0177】
このデータは、フォリスタチンが肝線維形成を治療するための有益な治療剤である可能性があることを示唆している。
【0178】
実施例7‐アクチビンAは、TGFβと比較して、HSCアポトーシスに多岐にわたる影響を及ぼす
アクチビンAおよびフォリスタチンの両方ともHSC増殖を低下させるため、一方または両方ともHSCアポトーシスを引き起こしているという仮説を立てた。
【0179】
実施例4どおりに単離した活性化HSCの培養物を、様々な量のアクチビンA、フォリスタチン、およびTGFβに曝し、アネキシンV;細胞アポトーシスの初期マーカーの発現についてフローサイトメトリーにより評価した。
【0180】
少なくとも6回の継代培養を受けた筋線維芽細胞の細胞系のアポトーシスは、マーカーとしてアネキシンVの細胞表面発現を用いるフローサイトメトリーにより測定された。アネキシンVは、アポトーシスを起こしている細胞の細胞表面上に発現している細胞内タンパク質である。簡単には、2×105 筋線維芽細胞HSCを6ウェル培養プレート上で一晩、継代培養した。次いで、細胞をHBSSで洗浄し、アクチビン(0.1 ng/ml、1 ng/ml、10 ng/ml、および100 ng/ml)、TGFβ(1 ng/mlおよび5 ng/ml)、フォリスタチン(10 ng/mlおよび100 ng/ml)、PDGF-BB(50 ng/ml)、同時にアクチビンおよびTGFβ(それぞれ、1 ng/mlおよび5 ng/ml)、ならびに同時にアクチビンおよびFS(それぞれ、10 ng/mlおよび100 ng/ml)で、16時間、処理した。陽性対照として、ニトロプルシドナトリウム(SNP)を0.5 μMの最終濃度で使用した。SNPは様々な固形癌および白血病の治療に用いられる化学療法剤である。接着および非接着細胞をトリプシン-EDTAでの処理後、収集し、1 ml PBSで洗浄し、2000rpmで10分間、遠心分離した。アポトーシスの細胞とネクローシスの細胞を識別するために、ヨウ化プロピジウム(PI)と共に、アネキシンV-FITC特異的抗体を製造会社の使用説明書(Roche diagnostics)に従って、30分間適用した。その後、細胞をPBSで洗浄し、2000 rpmで10分間、遠心分離し、300 μlのPBSに再懸濁した。その後、単一の懸濁液をMoFlo-サイトメーションアナライザー(MoFlo-cytomation analyzer)で分析した。
【0181】
TGFβと対照的に、アクチビンAおよびフォリスタチンの添加は、HSCアポトーシスを誘導しなかった(図11)。
【0182】
これはTGFβと比較してアクチビンAについての異なる細胞制御機構を強く示唆しており、重要な発見である。
【0183】
実施例8‐短期間および長期間の肝臓傷害モデルにおける、組換えヒトフォリスタチンの非経口投与
フォリスタチンの非経口投与が肝線維症の進行を衰えさせることができるかどうかを決定するために、ラットを4週間(短期間)または8週間(長期間)のいずれかの間、CCl4に曝した。その後、動物を最初の4週間(短期間)、または8週間目から12週間目まで(長期間)、週に3回1 μgのフォリスタチンを同時注射し、その後屠殺した。対照動物には、同じ長さの時間CCl4を与えた。
【0184】
硬変は、0.4 mg/kgの最終濃度で、四塩化炭素(CCl4)およびオリーブ油の1:5 vol/vol混合物を週に3回、4週間(短期間モデル)または12週間(長期間モデル)のいずれかの間、注射することにより、オスのウィスターラットに引き起こされた。対照動物は、等容量のオリーブ油のみの注射を受けた。上の実施例1〜実施例3において記載されているような組織構造およびmRNAおよび分析のために、全肝臓がモデルの死の時点で取り出された。さらに、全肝線維症部分の見積もりを測定するために、ヒドロキシプロリン含有量を以前に記載されているように(Bergman, I.およびR. Loxley、「Two improved and simplfied methods for the spectrophotometric determination of hydroxyproline」、Anal Chem (1963) 35:1961-1965)、測定した。簡単には、凍結した肝臓試料は重さを計り、テフロンコーティングされた試験管において110℃で16時間〜18時間、6 N HCl中で加水分解した。試料を冷却し、40 mg ダウエックス(Dowex)(Sigma)/活性炭をを各試料へ添加し、ボルテックスした。加水分解物を2枚の濾紙を通して新しい試験管へ濾過し、その後試料をpH7.4にした。その後、試料を60℃で25分間、イソプロパノールおよびクロラミンTとインキュベートした。室温まで冷却した後、ヒドロキシプロリン含有量は、570 nmの波長で試料の吸光度を読むことにより推定される。
【0185】
線維症の短期間モデルについて、組換えヒトFS-288の1 μgをモデルの存続期間の間(4週間)、週に3回、後脚の筋肉内に注射した。線維症および硬変の長期間モデルについて、動物は、モデルの8週間目と12週間目の間、同じ経路により同じ投与量で注射された。
【0186】
短期間モデルにおいて、フォリスタチンで処理された動物は、より体重が多く(図12)、残りの肝臓重量はより多かった(図13)。さらになお、それらは2週目で、対照より肝臓内ヒドロキシプロリン含有量が有意に少なかった(図14)。
【0187】
長期間モデルにおいて、フォリスタチンで処理された動物は、体重(図15)、残りの肝臓重量(図16)、または肝臓内ヒドロキシプロリン含有量(図17)において変化を示さなかった。
【0188】
これらのデータから、本発明者らは、フォリスタチンの注入が残存している肝細胞の肝機能の向上に寄与している可能性があると結論する。
【0189】
さらになお、本発明者らは、フォリスタチンの使用が、単独または現行の通常の治療と共に、新たに診断された患者において肝臓の線維形成を減衰させるための治療剤として有益である可能性があると結論する。
【0190】
さらなる治療的適用は以下を含みうる:1) 通常の治療を成功裡に完了した患者において、肝臓の再生およびコラーゲン吸収を促進すること;2) 肝臓の切除を受けた患者において肝機能を回復させ、かつ再生している肝臓の線維症を減衰させること。
【0191】
実施例9‐ヒトにおける研究
Patella, S.ら、(2001)、「Characterization of serum activin-A and follistatin and their relation to virological and histological determinants in chronic viral hepatitis」、J Hepatol、34(4):576-583にも報告されているが、血清アクチビンAは、正常な対照と比較して、慢性ウイルス性肝炎の患者において増加していることが実証され(図18)、他方、血清フォリスタチンは、正常なレベルのままであった(図19)。この研究は、ヒト疾患においてアクチビンAを調査した数少ない研究のうちの一つであり、いくらか詳細にヒトウイルス性肝炎を調べた唯一の研究である。
【0192】
簡単には、-80℃で保存されたアーカイブの血清は、15の正常対象、22のB型肝炎対象、および47のC型肝炎対象から分析され、肝機能試験、ウイルス学および肝臓生検は、日常的な臨床管理間で行われた。総血清アクチビンAは、以前に記載されているように(Knight, P.G.、Muttukrishna, S.、およびGroome, N.P.「 Development and application of a two-site enzyme immunoassay for the determination of "total" activin-A concentrations in serum and follicular fluid.」J Endocrinol 1996; 148:267-279)、ヒト組換えアクチビンAが標準として使用される2段階サンドイッチELISAにより測定された。総血清フォリスタチンは以前に確証されている(Evans. L.W.、Muttukrishna, S.、およびGroome, N.P.「Development, validation and application of an ultra-sensitive two-site enzyme immunoassay for human follistatin.」J Endocrinol 1998; 156:275-282)、組換えモノクローナル抗体を使用する超高感度ELISAを用いて定量された。使用される標準は、国立ホルモン下垂体プログラム(National Hormone and Pituitary Program)(ロックビル、MD、米国)から得られるヒト組換えフォリスタチン288であった。アクチビンAサブユニットおよびフォリスタチンについての免疫組織化学は、実施例2に詳述されているように行われた。
【0193】
HBVに感染した患者のさらなる分析により、血清アクチビンAが、ALT、肝細胞傷害、および肝臓内炎症についてのマーカーと有意に相関していることが明らかになった(図20)。HBVをもつ患者における血清アクチビンAはまた、ウイルス複製と正に相関していることが観察されたが(図21)、他方、血清フォリスタチンは負に相関していた(図22)。これは、この系における敵対する者のないアクチビンAの存在がウイルス複製に影響を及ぼすことにより慢性肝炎感染症の病因に寄与している可能性があることを示唆しているものと思われる。
【0194】
実施例10‐CHO細胞における組換えヒトフォリスタチンの発現
ヒトフォリスタチン288(FS288)遺伝子は、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、ヒト卵巣cDNA(Clontech)から増幅された。954塩基対断片は、ヒトFS288遺伝子の5'末端および3'末端に相補的なプライマーを用いて作製された。この断片は、標準的技術を用いて、プラスミドpGem7Zf(-)(Promega)へクローニングされた。FS288挿入断片の配列が正しいことを決定した後、FS288遺伝子は、哺乳動物発現ベクター、pDSVCのSV40初期プロモーターの後ろにサブクローニングされた。その後、組換えベクターは、リン酸カルシウム沈殿法により、哺乳動物細胞系(チャイニーズハムスター卵巣、CHO)へトランスフェクションされた。トランスフェクションされた細胞は、コロニーが現れるまで選択培地で増殖された。これらのコロニーはプールされ、マウスDHFRおよび連結されたFS288遺伝子を増幅するためのメトトレキセートを含有する選択培地(透析された5%FBSを加えた、ヌクレオシドを含まないα-MEM)で増殖された。最高レベルのFS288を分泌するプールを選択し、希釈液を播いた。数日後、単細胞から生じたコロニーは肉眼で見えた。これらのコロニーをマルチウェルプレートの別々のウェルへ移した。各クローンから分泌されたフォリスタチンの量を測定した。一つのクローニングされた細胞系である、約8 μg FS288/ml/24時間を分泌するcD15を選択し、〜1×109細胞まで増殖させた。これらの細胞は、培地(α-MEM、グルコース、および5% FBS)およびマイクロキャリア粒子(Cytodex 2)を含む30リットルのブラウン(Braun)バイオリアクターに接種するのに使用された。発酵槽作業容量は、20リットル〜25リットルであった。細胞は、「フィル-ドロー(fill-draw)」法を用いて発酵槽中で増殖させた。培養物を定期的に取り出し、新しい培地およびマイクロキャリア粒子に交換した。収集された培地は、5 μm、1.2 μm、および0.2 μmの濾紙を通して全量濾過(dead end filtration)により細胞から分離された。最終濾液は、10 kDaカットオフ限外濾過カートリッジ(AG technologies)での接線流動濾過により〜5倍に濃縮された。細胞から分泌されたフォリスタチンを含む濃縮液は、-20℃で凍結保存された。
【0195】
実施例11‐組換えヒトフォリスタチン288の精製
組換えヒトFS288を含む濃縮された馴化培地を解凍し、ヘパリンセファロースクロマトグラフィーにかけた。50 mM リン酸Na緩衝液(緩衝液A)でのヘパリンセファロースカラムに材料を添加し、緩衝液Aおよび緩衝液B(緩衝液A + 2 M NaCl)の勾配で溶出した。フォリスタチンを含む画分はプールされ、YM10膜を用いて濃縮された。そのプールをPBS pH 7.0でのセファクリルS-200 HR(Sephacryl S-200 HR)カラムへ添加した。フォリスタチンを含む画分は、プールかつ再び濃縮し、0.2 μmフィルターを通して無菌濾過し、-20℃で保存された。最終プールにおけるフォリスタチンの濃度は、ブラッドフォード(Bradford)アッセイ法およびフォリスタチン特異的ELISA(Nigel Groome)により〜900 μg/mlであると推定された。純度は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により> 90%であると推定された。
【0196】
実施例12‐製剤および投与の方法
フォリスタチン、またはその類似体もしくは活性断片は、担体、アジュバント、または賦形剤を含むかまたは含まずに投与されるが、好ましくは薬学的製剤として投与される。非経口投与について、製剤は典型的には水溶液であり、フォリスタチン、その類似体、または活性断片を製剤の0.001% w/vから5% w/vまで、例えば0.01% w/vから2% w/vまでの量で含みうるが、製剤の5% w/v程度、しかし好ましくは2% w/vを超過しない、より好ましくは0.01% w/vから1% w/vを含みうる。
【0197】
経口投与について、製剤は、フォリスタチン、その類似体、または活性断片を製剤の0.001%から10%重量まで、例えば0.01%から5%重量までの量で含みうるが、製剤の10%重量程度、しかし好ましくは5%重量を超過しない、より好ましくは0.1%から2%重量まで含みうる。
【0198】
局所的投与について、製剤は、フォリスタチン、その類似体または活性断片を製剤の0.005%から5%重量まで、例えば0.05%から2%重量までの量で含みうるが、製剤の5%重量くらい、しかし好ましくは2%重量を超過しない、より好ましくは0.1%から1%重量まで含みうる。
【0199】
上記に提供される本発明の記載に従って、特定の好ましい本発明の薬学的組成物を調製することができ、その例は下記に提供される。以下の特定の製剤は、単に製剤の実例となる例としてのみ解釈されるべきであり、いずれの点においても本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。
【0200】
実施例12(a)‐局所的クリーム組成物
局所的クリームとしての送達のための典型的組成物については、以下に概説する:
フォリスタチン 0.1 g〜1.0 g
ヒドロキシ安息香酸メチル(Methyl hydroxybenzoate)0.2 g
ラノリン(無水) 6.0 g
白蝋 7.5 g
ポラワックスGP 200(Polawax GP200) 25.0 g
滅菌等張食塩水で100.0 gにする。
【0201】
ポラワックス、蜜蝋およびラノリンを共に60℃で加熱し、ヒドロキシ安息香酸メチルの溶液を添加し、高速撹拌を用いて均質化させる。その後、温度を50℃未満に下がるようにする。その後、フォリスタチンを添加し、充分に分散させ、組成物を緩やかな速度で撹拌しながら冷ます。
【0202】
実施例12(b)‐局所的ローション組成物
局所的ローションとしての送達のための典型的組成物については、以下に概説する:
フォリスタチン 0.1 g〜1.0 g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.2 g
ソルビタンモノラウレート 1.0 g
ポリソルベート 1.0 g
セトステアリルアルコール 1.5 g
グリセリン 10.0 g
等張食塩水で100.00 mlにする。
【0203】
ヒドロキシ安息香酸メチルおよびグリセリンを75℃で、70 mlの等張食塩水に溶解する。ソルビタンモノラウレート、ポリソルベート20、およびセトステアリルアルコールを共に75℃で融解し、水溶液に添加する。その結果生じた乳濁液をホモジナイズし、連続的に撹拌しながら50℃未満に冷まし、フォリスタチンを残りの水での懸濁液として添加する。懸濁液全体を均質化されるまで撹拌する。
【0204】
実施例12(c)‐点眼組成物
点眼としての送達のための典型的組成物については、以下に概説する:
フォリスタチン 0.01 g〜0.1 g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.003 g
ヒドロキシ安息香酸プロピル 0.08 g
精製された等張食塩水で約100.00 mlにする。
【0205】
ヒドロキシ安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピルを75℃で70 ml 等張食塩水に溶解し、その結果生じた溶液を50℃未満に冷ます。その後、フォリスタチンを添加し、溶液を膜フィルター(0.22 μm孔サイズ)を通して濾過滅菌し、無菌的に滅菌した容器へ詰める。
【0206】
実施例12(d)‐吸入投与用組成物
20 ml〜30 mlの容量をもつエアゾール容器について:0.5%〜1.0%重量のポリソルベート85またはオレイン酸のような潤滑剤と、10 mg〜50 mgのフォリスタチンとの混合物をフレオンのような適する噴射剤中に分散させ、鼻腔内または経口のいずれかの吸入投与のための適切なエアゾール容器へ入れる。
【0207】
実施例12(e)‐非経口投与用組成物
筋肉内注射のための本発明の薬学的組成物は、1 mLの滅菌等張食塩水および0.5 mg〜2 mgのフォリスタチンを含むように調製されうる。
【0208】
同様に、静脈内注入のための薬学的組成物は、250 mlの滅菌リンガー溶液および1 mg〜5 mgのフォリスタチンを含みうる。
【0209】
実施例12(f)‐カプセル組成物
カプセルの形状をとるフォリスタチンの薬学的組成物は、粉末状の0.5 mg〜5.0 mgのフォリスタチン、180 mgの乳糖、65 mgのタルク、および12 mgのステアリン酸マグネシウムを、標準的な2部分からなる硬質ゼラチンカプセルに詰めることにより調製されうる。
【0210】
実施例12(g)‐注射可能な非経口組成物
注射による投与に適した形状の本発明の薬学的組成物は、0.1%重量のフォリスタチンを12%容量のプロピレングリコールおよび等張食塩水に混合することにより調製されうる。溶液は濾過滅菌される。
【0211】
実施例12(h)‐軟膏組成物
軟膏としての送達のための典型的な組成物は、なめらかで均質の製品を作製するように分散させた、0.1 g〜0.5 gのフォリスタチンを100.0 gとなるように含み、白色ワセリンを共に含む。
【0212】
実施例12(i)‐降り注ぎ方式の製剤
降り注ぎ方式の製剤としての送達のための典型的な組成物については、例えばウシ用として、以下に概説するように、0.05%〜0.1%重量のフォリスタチンを含む:
フォリスタチン 0.05 g〜0.10 g
ブチルヒドロキシトルエン 0.02 g
ブリリアントブルーFCF 0.16 g
キサンタンガム 0.4 g
ベンジルアルコール 3.0 g
ジエチレングルコールモノブチルエーテルで100 gにする。
【0213】
動物の皮膚および/もしくは毛髪への製剤の散布において助けとなるように、ならびに/または皮膚を通しての製剤の吸収において助けとなるように、界面活性剤が製剤に含まれることが望ましい場合には、適する界面活性剤、好ましくはエコ-テリック T80(Eco-teric T80)(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)のような陰イオン性界面活性剤が、例えば20%重量の濃度で製剤に含まれうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物が少なくとも1つのアクチビン拮抗物質、ならびに選択的に薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤を含む、脊椎動物における線維症関連疾患の治療および/または予防のための薬学的組成物。
【請求項2】
アクチビン拮抗物質がフォリスタチン、またはその断片もしくは類似体である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
フォリスタチンが還元剤の非存在下でSDS-PAGEにより推定される分子量が約30,000ダルトンから60,000ダルトンである、288個から315個のアミノ酸を含む単鎖タンパク質であり、卵胞液由来であり、かつ卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を阻害することができる、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
フォリスタチンが、NCBI(米国生物工学情報センター)タンパク質XP_003891, AAH04107として分類される単鎖タンパク質である、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項5】
薬学的組成物に存在するフォリスタチンまたは断片もしくは類似体が、以下からなる群より選択される形で存在する、請求項2記載の薬学的組成物:フォリスタチン/キレート、フォリスタチン/薬剤、フォリスタチン/プロドラッグ、フォリスタチン/毒素、ならびにフォリスタチン/検出器群およびフォリスタチン/画像化マーカー。
【請求項6】
アクチビン拮抗物質がフォリスタチン関連タンパク質またはその断片もしくは類似体である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項7】
フォリスタチン関連タンパク質がGenBankアクセッション番号NP_005851に定義される配列を有する、請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項8】
アクチビン拮抗物質がアクチビンに対して産生される抗体である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項9】
抗体が産生されるアクチビンが、アクチビンA、アクチビンAB、またはアクチビンBである、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
抗体が産生されるアクチビンが、インヒビンα鎖を含まない成熟インヒビンβAまたはβBサブユニット鎖のヘテロ二量体またはホモ二量体である、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項11】
2つのサブユニットが、還元剤の非存在下でSDS-PAGEにより推定される分子量が約12,000ダルトン〜13,000ダルトンである、110個から120個のアミノ酸を含む、請求項10記載の薬学的組成物。
【請求項12】
アクチビンが、GenBankアクセッション番号M13436に定義される配列を有するβAサブユニット、および/またはGenBankアクセッション番号M13437に定義される配列を有するβBサブユニットを含む、請求項10記載の薬学的組成物。
【請求項13】
アクチビン拮抗物質が、それぞれの受容体へのアクチビンの結合を妨げる化合物である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項14】
化合物がアクチビン受容体に対して産生される抗体である、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項15】
抗体が産生されるアクチビン受容体が、ActRIIAまたはActRIIBまたはActRIAまたはActRIBまたはALK2またはALK4である、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項16】
化合物が、アクチビンA、アクチビンAB、およびアクチビンBからなる群より選択されるタンパク質に関する受容体に対して産生される抗体である、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項17】
化合物が、Smad6およびSmad7またはその断片もしくは類似体から選択されるSmadシグナル伝達分子である、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項18】
化合物が、TGFβ/アクチビンI型受容体を特異的に阻害する分子である、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項19】
化合物がトリアリルイミダゾール類似体から選択される、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項20】
化合物がSB-431542である、請求項19記載の薬学的組成物。
【請求項21】
線維症関連疾患が以下の一つである、請求項1から20のいずれか一項記載の薬学的組成物:過剰増殖性または炎症性線維性疾患;肺線維症;炎症性腸疾患または潰瘍性大腸炎もしくはクローン病のような関連症状;または肝線維症もしくは肝硬変。
【請求項22】
線維症関連疾患が肝線維症または肝硬変である、請求項1から20のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項23】
少なくとも1つのアクチビン拮抗物質を、薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と均質に混合する段階を含む、請求項1から22のいずれか一項記載の薬学的組成物を調製するための工程。
【請求項24】
少なくとも1つのアクチビン拮抗物質の治療的有効量を脊椎動物に投与する段階を含む、治療を必要とする脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための方法。
【請求項25】
請求項1から22のいずれか一項記載の薬学的組成物の治療的有効量を脊椎動物に投与する段階を含む、治療を必要とする脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための方法。
【請求項26】
脊椎動物がヒト、非ヒト霊長類、マウス、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ、トリ、ネコ、およびイヌからなる群より選択される、請求項24または請求項25記載の方法。
【請求項27】
脊椎動物がヒトである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
線維症関連疾患が以下の一つである、請求項24から27のいずれか一項記載の方法:過剰増殖性または炎症性線維性疾患;肺線維症;炎症性腸疾患または潰瘍性大腸炎もしくはクローン病のような関連症状;または肝線維症もしくは肝硬変。
【請求項29】
線維症関連疾患が肝線維症または肝硬変である、請求項24から27のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
以下の段階を含む、脊椎動物において線維症関連疾患についてスクリーニングするための方法:
(a)脊椎動物からの試料を、アクチビンポリペプチド(またはその断片もしくは類似体)に対して産生される抗体(またはその断片)と接触させる段階;
(b)アクチビンポリペプチドに結合した抗体(またはその断片)の存在を検出する段階;および
(c)結合した抗体の量を参照試料における結合量と比較し、かつ参照試料と比較した試料における結合した抗体の量の変化が疾患を示している、該脊椎動物において線維症関連疾患を診断する段階。
【請求項31】
以下の段階を含む、脊椎動物において線維症関連疾患についてスクリーニングするための方法:
(a)脊椎動物からの試料を、フォリスタチンポリペプチド(またはその断片もしくは類似体)に対して産生される抗体(またはその断片)と接触させる段階;
(b)フォリスタチンポリペプチドに結合した抗体(またはその断片)の存在を検出する段階;および
(c)結合した抗体の量を参照試料における結合量と比較し、かつ参照試料と比較した試料における結合した抗体の量の変化が疾患を示している、該脊椎動物において線維症関連疾患を診断する段階。
【請求項32】
以下の段階を含む、脊椎動物において線維症関連疾患についてスクリーニングするための方法:
(a)脊椎動物からの試料の第一のアリコートを、アクチビンポリペプチド(またはその断片もしくは類似体)に対して産生される抗体(またはその断片)に接触させる段階;
(b)アクチビンポリペプチドに結合した抗体(またはその断片)の存在を検出する段階;
(c)脊椎動物からの試料の第二のアリコートを、フォリスタチンポリペプチド(またはその断片もしくは類似体)に対して産生される抗体(またはその断片)に接触させる段階;
(d)フォリスタチンポリペプチドに結合した抗体(またはその断片)の存在を検出する段階;ならびに
(e)アクチビンに結合した抗体の量をフォリスタチンに結合した抗体の量と比較し、その相対的な差を参照試料に見出される差と比較し、かつ参照試料と比較した試料における、アクチビンおよびフォリスタチンに結合した抗体の相対的比率における変化が疾患を示している、該脊椎動物において線維症関連疾患を診断する段階。
【請求項33】
参照試料が線維症関連疾患を患っていない脊椎動物から得られる、請求項30から32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
スクリーニング法を実施する試料が、血漿または組織の試料であり、かつ標準的な組織学的および免疫組織化学的技術を伴う、請求項30から32のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
線維症関連疾患が以下の一つである、請求項30から34のいずれか一項記載の方法:過剰増殖性または炎症性線維性疾患;肺線維症;炎症性腸疾患または潰瘍性大腸炎もしくはクローン病のような関連症状;または肝線維症もしくは肝硬変。
【請求項36】
線維症関連疾患が肝線維症または肝硬変である、請求項30から34のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
少なくともアクチビン(またはその断片)に対して産生される抗体(またはその断片)を診断的に許容される担体および/または希釈剤と共に含む、脊椎動物における線維症関連疾患を検出するための診断キット。
【請求項38】
少なくともフォリスタチン(またはその断片)に対して産生される抗体(またはその断片)を、診断的に許容される担体および/または希釈剤と共に含む、脊椎動物における線維症関連疾患を検出するための診断キット。
【請求項39】
以下の容器を含む、請求項37または請求項38記載のキット:
(a)少なくとも抗体(またはその断片)を含む第一の容器、および
(b)抗体(またはその断片)の結合パートナーを検出可能な標識と共に含む結合体を含む第二の容器。
【請求項40】
少なくとも以下を含む、脊椎動物における線維症関連疾患を検出するための診断キット:診断的に許容される担体および/または希釈剤と合わせた、フォリスタチン(またはその断片)に対して産生される抗体(またはその断片);ならびに診断的に許容される担体および/または希釈剤と合わせた、アクチビン(またはその断片)に対して産生される抗体(またはその断片)。
【請求項41】
以下の容器を含む、請求項40記載のキット:
(a)少なくともアクチビン抗体(またはその断片)を含む第一の容器;
(b)少なくともフォリスタチン抗体(またはその断片)を含む、第二の容器;
(c)アクチビン抗体(またはその断片)の結合パートナーを検出可能な標識と共に含む結合体を含む、第三の容器;および
(d)フォリスタチン抗体(またはその断片)の結合パートナーを検出可能な標識と共に含む結合体を含む、第四の容器。
【請求項42】
以下の段階を含む、脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための遺伝子治療法:
(a)アクチビン拮抗物質をコードする核酸分子、またはその断片もしくは類似体、あるいはアクチビン拮抗物質をコードする核酸分子またはその断片もしくは類似体を含むベクターを、宿主細胞へ挿入する段階;
(b)形質転換された細胞において核酸分子を発現させる段階。
【請求項43】
アクチビン拮抗物質がフォリスタチンまたはその断片もしくは類似体である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
(a)アクチビン、アクチビン受容体、もしくは他のアクチビン関連伝達経路分子をコードする核酸分子の断片に対してアンチセンスである核酸分子、またはその断片もしくは類似体、あるいはアクチビンをコードする核酸分子に対してアンチセンスである核酸分子またはその断片もしくは類似体を含むベクターを、宿主細胞へ挿入する段階;
(b)形質転換された細胞において、核酸分子を発現させる段階
を含む方法であって、発現されたアンチセンス核酸分子がアクチビン、アクチビン受容体、または他のアクチビン関連伝達経路分子をコードする相補的核酸分子に結合することにより、その転写または発現を阻害する、脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための遺伝子治療法。
【請求項45】
アンチセンス核酸分子が以下から選択される、請求項44記載の方法:
アクチビンA、アクチビンAB、またはアクチビンBをコードする核酸配列の少なくとも一部に対してアンチセンスである核酸分子;
ActRIIAまたはActRIIBまたはActRIAまたはActRIBまたはALK2またはALK4から選択されるアクチビン受容体をコードする核酸配列の、少なくとも一部に対してアンチセンスである核酸分子;
smad2またはsmad3をコードする核酸配列の少なくとも一部に対してアンチセンスである核酸分子。
【請求項46】
アクチビンをコードする核酸分子またはその断片もしくは類似体の変異型である核酸分子、あるいはアクチビンをコードする核酸分子またはその断片もしくは類似体の変異型である核酸分子を含むベクターを、宿主細胞へ挿入する段階を含み;
変異型アクチビンをコードする核酸分子が、相同組換えにより宿主細胞の天然のアクチビンコード配列へ組み込まれることより、結果として、アクチビン配列が転写されないか、もしくは不正確に転写されるか、または天然のアクチビン受容体に結合しないか、もしくは正常なアクチビンシグナル伝達を妨げる変異型アクチビンが発現される、脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための遺伝子治療法。
【請求項47】
アクチビンコード配列がGenBank登録、アクセッション番号M13436および/またはM13437に定義されるポリヌクレオチドである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
アクチビン受容体をコードする核酸分子またはその断片もしくは類似体の変異型である核酸分子、あるいはアクチビン受容体をコードする核酸分子の変異型である核酸分子またはその断片もしくは類似体を含むベクターを、宿主細胞へ挿入する段階を含み;
アクチビン受容体をコードする核酸分子またはその断片もしくは類似体の変異型が、相同組換えにより宿主細胞の天然のアクチビン受容体コード配列へ組み込まれることにより、結果として、アクチビン受容体配列が転写されないか、もしくは不正確に転写されるか、または天然のアクチビンに結合しないか、もしくはアクチビンシグナル伝達を妨げる変異型アクチビン受容体が発現される、脊椎動物における線維症関連疾患を治療するための遺伝子治療法。
【請求項49】
アクチビン受容体コード配列が、以下の受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドである、請求項48記載の方法:ActRIIAまたはActRIIBまたはActRIAまたはActRIBまたはALK2またはALK4。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−59168(P2010−59168A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245261(P2009−245261)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【分割の表示】特願2003−511863(P2003−511863)の分割
【原出願日】平成14年7月12日(2002.7.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504014897)バイオア ピーティーワイ リミテッド (1)
【出願人】(503383594)モナシュ ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】