病原菌を検出するための組成物およびアッセイ方法
微生物を早く成長させ素早く検出するための組成物および方法。本発明は、試験サンプル中の微生物、特に病原微生物に由来するコアオリゴ糖などの特定物質の検出に使用するためのアッセイ方法に関する。本発明はさらに、そのような微生物を素早く成長させることにより、現在よりも著しく早く検出することを可能にするための組成物および方法に関する。特定の実施の形態では、本発明はサルモネラ菌、赤痢菌またはリステリア菌を素早い成長および/または検出を目的とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物、特に試験サンプルにおける病原微生物に由来する特定物質の検出に使用されるアッセイ方法に関する。本発明はさらに、そのような微生物を素早く成長させることにより、現在よりも著しく早く検出することを可能にするための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品は本質的に生物に由来するものなので、様々な汚染微生物の成長を手助けすることができる。米国では、推定年間7600万件の食中毒が発生し、医療に65億ドル〜349億ドルか費やされ、生産性を喪失している(BuzbyおよびRoberts(1997年)、Meadら(1999年))。欧州では、サルモネラ菌に対する経済コストおよび健康管理コストは、6億2000万〜30億ユーロであると推定されている(David Byrne、 European Commissioner for health and consumer protection、2000年)。
【0003】
サルモネラ菌(Salmonella)、リステリア菌(Listeria)、カンピロバクター菌(Campylobacter)、病原性大腸菌(Escherichia coli)O157:H7および赤痢菌(Shigella)は、食中毒の大部分の事例に関与している。例えば、サルモネラ菌およびリステリア菌は単独で、食品に関連した死亡のうちそれぞれ31%および28%に関与している(Meadら、1999年)。また、日本ではサルモネラ中毒が1981〜1995年に発生した全食中毒の原因の14%超を占める(Leeら、2001年)。実際、入院が必要な食中毒の症例のうち60%もの原因因子が細菌であると推定されている。結果として、衰弱の最大の原因の1つは、食品の微生物汚染に対する効果的でなくもたもたした検査により生じる遅延である。現在の試験方法では、製造会社は微生物培養の結果が出るまで3〜7日間待たなければならない。そのような遅延に起因するコストは甚大である。つまり、供給プロセスの効率を低下させ、在庫を止め、腐敗を増加させる。
【0004】
不適切または不十分な試験のコストは、少なくとも大きな代償を支払う必要性が生じうる。たとえば、1999年にそのような試験によってサラ・リー社は、Bil Mar食品課における3500万ポンドのホットドッグおよびデリ・ミートのリコールに関連して、それらの食品がリステリア菌の発生と関連づけられた後に、推定7600万ドルの代償を支払った。ザ・スコッツマン新聞社によると、2006年にサルモネラ菌がチョコレートに雑菌混入したことにより、キャドベリー・シュウェップス社はリコールの代償や広告、収益の喪失、その後の製造作業の改善に対して、推定2000万ユーロを支払った。つい最近の2009年には、2008年に推定2500万ドルを売り上げた米国のピーナッツ社は、米国でピーナッツにおける主なサルモネラ菌の発生源であると認定された後に、破産申請をした。
【0005】
したがって、食品、飼料および環境サンプル中で、サルモネラ菌、赤痢菌およびリステリア菌などの病原微生物の存在を検出することは、経済的に非常に重要である。しかし、そのような微生物を検出するための従来の培養方法は、骨が折れるし時間がかかっていた。そのような従来の方法は、50年以上も使用されてきた標準プロセスに依存することが多かった。
【0006】
加えて、病原微生物は「生存可能だが培養不可能な状態(VNC)」または「すぐに培養することはできない状態(NIC)」として知られる非常にストレスのかかった環境下で長期間生存することができる。そのように非常にストレスのかかった微生物は非常に弱い代謝活性しか示さない。代謝活性は検出限界に満たないことが多い。そのような微生物は非選択プレート培地上でコロニーを形成する能力または非選択液体培地中で増殖する能力を失っている(Reissbrodtら、2002年)。しかし、そのような培養不能なコロニーは、食品や動物の飼料中に存在した場合、体内に取り込まれれば依然として病気を引き起こしうる。これは検出に関して特殊な問題を提起する。それは、そのようなストレスを受けた微生物は検出可能なほど十分には復活しない可能性があるからである。
【0007】
その結果、さらなる培養、プレートへの塗布(plating)および検出に先立ち、そのような細胞を復活させる目的で、追加的な細胞培養ステップがあらゆる診断に含められることが多い。したがって非選択培地中であらかじめ濃縮しておくことは従来方法の必須要素である(Stephensら、2000年)。例えば、サルモネラ菌の検出には5日間も塗布しなければならいいくつかの培養段階を要する。つまり、「病気の」細菌を再生させるために濃縮ステップが解析に含められることが多い。また、検出はそのような濃縮培養液および培養物の特性によって制限されることが多い。
【0008】
したがって、細菌の外来集団に棲み家を提供する可能性のある臨床材料、食品およびその他の製品から微生物を再生させる目的で、3つの一般的なタイプの培地が入手可能である。つまり、(1)初期の単離用の非選択培地、(2)濃縮培養液、および(3)選択用寒天培地および/または識別用寒天培地、である。
【0009】
そのような培地の配合は通常複雑であり、特定の細菌種の成長を阻害する、つまり選択的な成分を含むと同時に、試料中に存在する微生物の予備的確認を行う、つまり識別する際に重要な生化学的特性を検出する成分も含む。合理的な選択をするためには、微生物学者は各配合の組成物、用途および含有される各化合物の相対濃度を知らなければならない。あいにく入手可能な培地は過度に複雑であることが多く、様々な成分の影響および量は通常ほとんど理解されていない。使用される培地は何10年も使用されてきた培地と同じものであることが多い。また、培地は本来全く異なる生物用に開発されたものであるかもしれない。たとえば、そのような非効率性ゆえ、サルモネラ菌の現在の検出率は、15日以内では50%未満であり、28日以内では90%未満である(King、2009年)。
【0010】
したがって、明確で、ほとんどまたは全く効果がないか、悪影響を及ぼしさえする余計な含有物が含まれておらず、かつストレスを受けた微生物でさえ成長および迅速な培養が可能な最適な培地が求められている。そのような培地は、二次的/追加的な培養ステップの必要性を否定する必要がある。また、個体数が非常に少なく不均一な微生物環境に存在する病原微生物の単離および/または同定を可能とする、新たなより良い検出方法も必要とされている。さらに、そのような任意の方法は、化粧品、冷凍食品、凍結乾燥製剤、および液体の製品を含む食品、尿や排泄物などの臨床サンプル、または血液サンプルおよび環境サンプルなどの多様な供給源に由来する微生物の検出に、等しく適用できる必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Buzby,J.C.およびRoberts,T.(1997年)“Economic costs and trade impacts of microbial foodborne illness.”World Health Stat.Q.第50巻(第1〜2号):第57〜66頁
【非特許文献2】David Byrne、 European Commissioner for health and consumer protection、2000年
【非特許文献3】Meade,P.S.,Slutsker,L.,Dietz,V.,McCaig,L.F.,Bresee,J.S.,Shapiro,C.,Griffin,P.M.およびTauxe,R.V.(1999年)“Food related illness and death in the United States.”Emerg.Infect.Dis.第5巻:第607〜625頁
【非特許文献4】Lee,W.C,Lee,MJ.,Kim,J.S.およびPark,S.Y.(2001年)“Foodborne illness outbreaks in Korea and Japan studied retrospectively.”J.Food.Prot.第64巻:第899〜902頁
【非特許文献5】Reissbrodt,R.,Rienaecker,I.,Romanova,J.M.,Freestone,P.P.E.,Haigh,R.D.,Lyte,M.,Tschape,H.およびWilliams,P.H.(2002年)“Resuscitation of Salmonella enterica serovar Typhimurium and enterohemorrhagic Escherichia coli from the viable but nonculturable state by heat stable enterobacterial autoinducer.”App.Env.Microbiol.第68巻(第10号):第4788〜4794頁
【非特許文献6】Stephens,P.J.,Druggan,P.およびNebe−von Caron,G.(2000年)“Stressed Salmonella are exposed to reactive oxygen species from two independent sources during recovery in conventional culture media.”Int.J.Food Microbiol.第60巻:第269〜285頁
【非特許文献7】King,L.(2009年)“Salmonella Rapid detection interagency group meeting.”FDA executive summary(2009年1月30日)
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様では、実質的に以下の成分から構成される少なくとも1つの微生物を成長させるための培地が提供される。
(i)基礎培養液と、
(ii)ブリリアントグリーン、ナリジクス酸および塩化リチウムから構成される群から選択される少なくとも1つの増殖抑制剤と、
(iii)任意成分として、テトラチオン酸ナトリウム、テトラチオン酸カリウム塩、クエン酸第二鉄アンモニウムおよびクエン酸ナトリウムから構成される群から選択される少なくとも1つの成長促進物質。
【0013】
疑義を避けるため、本明細書で使用される「実質的に構成される」という用語には、特定の物質またはステップのみの場合も含まれるが、本発明の基本的な特性および新規な特性に実質的に影響を及ぼさない限り、追加的な成分または分子も含まれる。
【0014】
培地は単純、複雑、または明確なものに分類することができる。基礎液体培地または基礎培地は基本的に単純な培地であり、最小限の追加成分で細菌を生育させる。通常、そのような基礎培養液は単にエネルギー源を供給し、正確な浸透圧を維持しさえすればよい。ペプトン、トリプトン、栄養液体培地(ペプトン、肉抽出物、任意的に酵母抽出物および塩化ナトリウム)、L−液体培地(トリプトン、酵母抽出物および塩化ナトリウム)、グラム陰性液体培地、トリプシン大豆培養液、酵母含有トリプシン大豆培養液、ならびに改良トリプシン大豆培養液は、先行技術で知られている好適な基本成分である。ペプトンは、消化中に酸または酵素によるタンパク質の部分加水分解によって得られる様々な水溶性のタンパク質誘導体である。トリプシン大豆培養液は通常、たとえばトリプトン(カゼインの膵液消化)、ソイトン(大豆ミールのパパイン消化)および塩化ナトリウムを含む。改良トリプシン大豆培養液は、さらにD形グルコース、胆汁塩およびリン酸二カリウムを含んでもよい。特に、基礎培養液は、トリプトン、栄養液体培地、L−液体培地、グラム陰性液体培地、ペプトン、トリプシン大豆培養液、酵母含有トリプシン大豆培養液、および改良トリプシン大豆培養液から構成される群から選択される。より具体的には、基礎培養液は、ペプトン、トリプシン大豆培養液、酵母含有トリプシン大豆培養液、および改良トリプシン大豆培養液から構成される群から選択される。
【0015】
特定の実施の形態では、増殖抑制剤はブリリアントグリーン、トリアリルメタン色素(CAS番号633−03−4)である。
【0016】
ブリリアントグリーンはグラム陽性細菌および大部分のグラム陰性細菌の成長を抑制することが知られている色素である。ブリリアントグリーンは、先行技術では様々な量、たとえばDifco(登録商標)mブリリアントグリーン液体培地中に25mg/L、ブリリアントグリーンテトラチオン酸塩胆汁液体培地中に70mg/L、MLCB寒天培地中に4.5〜6mg/L、およびMuller Kauffmannテトラチオン酸塩液体培地中に10mg/L使用される。何10年も使用されてきたが、本発明者らは驚くべきことに、ブリリアントグリーンのそのような濃度は、たとえばサルモネラ菌および赤痢菌を成長させるために最適ではないということを見出した。実際にそのような高濃度は、サルモネラ菌および赤痢菌を効率的かつ素早く成長させるためには有害であると信じられている。また、「病気の」または「ストレスを受けた」細菌を再生する妨げになる可能性もある。サルモネラ菌の特定の株、たとえばサルモネラ菌typhi種またはparatyphi種は特に、ブリリアントグリーン感受性株であることが知られている。また現在、株間で識別(differential)阻害作用を示さない適切な培地が存在しない(ChauおよびLeung、2008年)。
【0017】
本発明者らはここで、たとえばグラム陽性細菌に対する阻害作用を有す一方で、サルモネラ菌(typhi種およびparatyphi種を含む)の迅速な再生および成長を可能にするブリリアントグリーンの濃度の範囲を見出した。したがって、特定の実施の形態では、本培地は約0.05mg/L〜約0.25mg/Lまたは約0.1mg/L〜約0.25mg/L、より具体的には0.15mg/Lのブリリアントグリーンを含む。
【0018】
これらの「低濃度」は、既に先行技術で知られている培地中の濃度から考えると驚くべき濃度である。先行技術で知られている培養方法は長時間持続的であるため、競合する微生物の成長を阻害するために、48時間にも及ぶ培養を持続させるために、高濃度のブリリアントグリーンを利用する必要があると以前は信じられてきた。しかし、本発明の培地中では成長効率が良いため、単一の培地中で20時間以内、具体的には約4〜15時間以内、より具体的には約4〜8時間以内、さらにより具体的には約4〜6時間以内に、検出に適したレベルまで微生物を培養できる。別の実施の形態では、たとえばスワブ(swab:表面拭い)試験を使用する場合には、この時間はさらに約30分間〜約4時間、具体的には約1、1.5、2、2.5または3時間にまでさらに減少させられる可能性がある。結果として、ブリリアントグリーンを極めて低濃度で使用することが可能となる。ブリリアントグリーンはこの低濃度でも依然として、20時間まで特定の競合微生物の成長を阻害する機能を有する。しかし、ブリリアントグリーンはたとえばサルモネラ菌および/または赤痢菌などの目的とする微生物の成長に全く影響を及ぼさない程度に、十分に低濃度である。
【0019】
含有量は通常、mg/Lまたはg/Lで表されるが、水に単独でまたは連続的に添加されるために、たとえばタブレット、粉末、顆粒またはその他任意の所望の乾燥した形態にてあらかじめ混合された状態で、組成物が供給されてもよいことを理解する必要がある。また組成物は、所望の場合には多包装システムの別々の成分として提供されてもよい。この場合、含有量は成分の最終濃度に注意する必要がある。成分の最終濃度は、適量の水で希釈した時点で得られる。たとえば、0.5mgのブリリアントグリーンを含む乾燥粉末の小包が2Lの水に希釈されると、得られる濃度は0.25mg/Lである。
【0020】
別の実施の形態では、本培地はナリジクス酸および/または塩化リチウムを増殖抑制剤として含む。
【0021】
ナリジクス酸(CAS番号:389−08−2)はグラム陽性細菌とグラム陰性細菌の両方に対して有効である。低濃度では、ナリジクス酸は静菌性を有する。つまり、ナリジクス酸は細菌の成長と繁殖を阻害する。高濃度では、ナリジクス酸は殺菌性を有する。つまり、単に成長を阻害するのではなく、ナリジクス酸は細菌を死滅させる。特定の実施の形態では、本培地はナリジクス酸を約1〜3mg/L、より具体的には約2mg/L含む。
【0022】
塩化リチウム(CAS番号7447−41−8)は、グラム陽性細菌の成長に影響を与えることなくグラム陰性細菌の成長を阻害する。特定の実施の形態では、本培地は約1〜3g/L、より具体的には約2g/Lの塩化リチウムを含む。
【0023】
リステリア菌種の成長用の培地中に、ナリジクス酸および/または塩化リチウムを増殖抑制剤として使用することは有益である。
【0024】
特定の実施の形態では、培地は任意的に成長促進物質を含んでいてもよい。
【0025】
サルモネラ菌種に対しては、基礎培養液がペプトンを含む場合、テトラチオン酸ナトリウムまたはその塩を含むことが有益であることが見出されている。驚くべきことに本発明者らは、培地中のテトラチオン酸ナトリウムの濃度が約20g/Lよりも高ければサルモネラ菌種の成長を著しく阻害することを見出した。これが驚くべきことであるのは、20g/Lよりも高い濃度は、ポジティブセレクション用やサルモネラ菌種の成長用に、従来技術で日常的に使用されているからである。したがって、テトラチオン酸ナトリウムは約1〜約20g/L、より具体的には約4〜約15g/L、約6〜約15g/L、さらにより具体的には約7〜15g/L、約8〜12g/Lまたは約8g/Lの濃度で含有されることが好ましい。
【0026】
代替の実施形態では、本発明の精神から逸脱しない範囲で、テトラチオン酸ナトリウムに代えて適量のチオ硫酸ナトリウムおよびヨウ素が使用されてもよい。これは、ヨウ素が生体内でチオ硫酸ナトリウムと反応することにより、テトラチオン酸ナトリウム(およびヨウ化ナトリウム)が生成される可能性があるからである。別の実施の形態では、テトラチオン酸塩アニオン(S4O62−)を放出するテトラチオン酸カリウム塩、バリウムのジチオン酸塩の無水物、それらの塩または化合物もしくは化合物の混合物が利用されてもよい。
【0027】
別の実施の形態では、本培地は、成長促進物質を含む。この場合、成長促進物質はクエン酸第二鉄アンモニウムである。
【0028】
特定の実施の形態では、クエン酸第二鉄アンモニウム(CAS番号:1185−57−5)が約200〜1000mg/L、より具体的には約200〜約500mg/L、さらにより具体的には200mg/L〜約300mg/L、およびさらにより具体的には約250mg/Lの濃度で使用される。
【0029】
さらに別の実施の形態では、本培地は成長促進物質であるクエン酸ナトリウムをさらに含む。
【0030】
特定の実施の形態では、トリクエン酸ナトリウム(CAS番号:68−04−2)が約10〜約20g/L、約12〜18g/L、より具体的には約15g/Lの濃度で使用される。
【0031】
特定の実施の形態では、本培地はサルモネラ菌種の成長用の培地である。別の実施の形態では、本培地は赤痢菌種の成長用の培地である。さらに別の実施の形態では、本培地はリステリア菌種の成長用の培地である。
【0032】
本発明の第2の態様により提供されるのは、微生物の細胞からコアオリゴ糖モノマーを放出するための以下のステップを含む方法である。
(i)洗浄剤を前記微生物を含む少なくとも1つの培養サンプルに添加することにより、洗浄剤−培養液を供給するステップと、
(ii)洗浄剤−培養液をコアオリゴ糖を放出するのに十分な温度にまで加熱するステップ。
【0033】
細菌のリポ多糖類(LPS)は、すべてのグラム陰性細菌およびある種のグラム陽性細菌の外膜の必須成分である。LPSは、そのような細菌に感染した患者の炎症性反応に関与する主要因子であると信じられている。グラム陰性細菌の例としては、病原性大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌およびカンピロバクター菌が含まれる。リステリア菌はグラム陽性細菌である。
【0034】
特定されたLPSの大部分は、同じ主要構造を有する。つまり、LPSの構造は3つの異なる領域である脂質A領域、コアオリゴ糖、およびo−多糖鎖から構成されることが解明されている(図12a)。この構造は、特にLPSの脂質A領域および内側のコア部において保存されている。この構造が保存されているため、脂質A領域に結合する抗体のような結合分子は、特定の種に特異的ではない可能性がある。これにより、あらゆる分子検出ステップにおいて偽陽性が生じてしまう。さらに、たとえばコア領域に対して複数の結合分子を使用することは不十分である。それは、そのような結合分子は同じエピトープを求めて競合する可能性があるため、またはエピトープが近接していることによりそれぞれの結合反応が妨げられる可能性があるからである。したがって、先行技術の検出方法は、それらのエピトープが容易に接近できるため、細胞表面またはたとえばサルモネラ菌などの細菌に特異的な結合分子に依存していた。
【0035】
LPSは通常、含水フェノール抽出と続く精製によって、細菌から単離される。単離されたLPSは、続いてたとえばSDS−PAGE、質量分析およびNMRによって特定することができる(Raetz、1996年)。本発明者らは、洗浄剤と熱の適用を利用する迅速な方法の使用を通じて、コアオリゴ糖領域が開放されるか、接近可能になるか、たとえば抗体結合技術による検出に使用できるようになる可能性があることを見出した。そのような単純な手順を使用することは、たとえば細胞表面の抗原または細菌の検出には適していないであろう。それは、洗浄剤が脂質と相互作用することが知られており、結合分子が相互作用する可能性がある脂質Aエピトープを破壊または崩壊させるからである。洗浄剤を単独でも使用できるが、熱を使用するとさらに有利である。それは、熱がLPSを検出可能なモノマーに分解するとともに、病原性細菌を死滅させるという追加的な利点も有するからである。
【0036】
洗浄剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはTWEEN 20、40、60または80であることが好ましい。
【0037】
驚くべきことに、本発明者らはSDSを使用すると抗体などの結合分子とエピトープとの結合を、後述する直接アッセイにおいて10倍も強くすることができることを見い出した。同様に、他の洗浄剤は直接アッセイ(後述)において抗体結合を干渉したり阻害したりするが、驚くべきことに本発明者らは、TWEEN 20、40、60または80は、たとえば競合アッセイにおいて、そのような影響をほとんど及ぼさないか全く及ぼさないことを見い出した。これはたとえばQualtiereら(1977年)のような技術による確立された教示とは正反対である。
【0038】
洗浄剤は、たとえば水などの溶媒に溶かして培養サンプルに液体として加えられてもよいし、SDSの場合は固体として加えられてもよい。本方法で使用される洗浄剤の具体的な濃度は、約0.1%〜約2%、特に約0.5%〜約1%である(w/vまたはv/v)。
【0039】
洗浄剤を水に溶解または希釈させ、上述の濃度になるように液体として添加されることが好ましい。洗浄剤溶液は、バッファなどのさらなる成分を含まないことが好ましい。したがって、好ましい実施の形態では、本洗浄剤溶液は、水に溶解した洗浄剤であるドデシル硫酸ナトリウム、またはTWEEN 20、40、60もしくは80から実質的に構成される。
【0040】
本方法の次のステップでは、洗浄剤−培養液はコアオリゴ糖を放出するのに十分な温度にまで加熱される。サンプル中に存在する可能性のある細菌、特にサルモネラ菌、赤痢菌またはリステリア菌を死滅させるのに十分な温度にまで溶液を加熱することが好ましい。具体的な温度には、約60℃〜約100℃、特には約65、70、75、80、85、90、95〜約100℃が含まれる。ステップ(i)および(ii)が連続的または同時に行われれてもよいことは、当業者には明らかであろう。培養サンプルおよび/または洗浄剤が混合前に加熱されてもよいことも当業者には明らかであろう。洗浄剤−培養液は、約30秒間〜約20分間、具体的には約2分間〜約15分間、より具体的には約2、3、4、5、6、7、8、9または約10分間加熱されてもよい。
【0041】
本発明の第3の実施の形態では、試験サンプル中で目的とする微生物の存在または不存在を検出するための以下のステップを含むアッセイ方法が提供される。
(i)試験サンプルを培地中で培養することにより、目的とする微生物の増殖を可能とするステップと、
(ii)試験サンプル中に存在する任意の微生物から1つ以上のコアオリゴ糖を放出するのに十分な程度に、試験サンプルを処理するステップと、
(iii)目的とする微生物のコアオリゴ糖に対する結合特異性を有する少なくとも1つの結合分子に、試験サンプルを接触させるステップと、
(iv)少なくとも1つの結合分子と目的とする微生物のコアオリゴ糖との任意の結合を検出するステップ。
【0042】
本アッセイ方法は、直接的であってもよいし、間接的であってもよい。「サンドイッチアッセイ」とも呼ばれる直接結合アッセイ、つまり非競合アッセイ(直接的または間接的)では、抗体が目的とする微生物の任意のコアオリゴ糖と反応するように、コアオリゴ糖は表面および結合分子に結合することが好ましい。結合分子は標識結合分子であることが好ましい。次に、表面の標識結合分子の量が測定される。
【0043】
直接アッセイ方法の結果は通常、サンプル中のコアオリゴ糖の濃度に正比例する。コアオリゴ糖がサンプル中に存在しない場合、標識結合分子が結合しないのは明らかである。
【0044】
競合アッセイでは、試験サンプル中のコアオリゴ糖は、結合分子に結合しようとして標識コアオリゴ糖と競合する。次に、コアオリゴ糖に結合した標識結合分子の量が測定される。この方法では、反応はサンプル中のコアオリゴ糖の濃度に反比例する。これは、反応の程度が大きいほど、「未知の」サンプル、つまり試験サンプル中で標識コアオリゴ糖と競合するために使用可能なコアオリゴ糖が少なくなるからである。
【0045】
アッセイが直接的であるか間接的であるかにかかわらず、検出のためにコアオリゴ糖または標識コアオリゴ糖がそれぞれ表面に結合することが好ましい。
【0046】
コアオリゴ糖が結合する表面は、先行技術で知られている材料、たとえば樹脂、ガラス、セラミックスなどの有機ポリマーで形成されていてもよい。特定の有機ポリマーには、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロースおよびニトロセルロースが含まれる。好ましいポリマーはポリスチレンであり、より具体的にはガンマ線を照射したポリスチレンである。その表面自体は、シート、マイクロプレートまたはマイクロタイタープレート、トレイ、メンブレン、ウェル、ペレット、竿、棒、チューブ、ビーズなどの形態またはその一部であってもよい。
【0047】
特定の実施の形態では、LPSまたはコアオリゴ糖を含むモノマーは、修飾されることなく表面に固定化される。たとえば、分子の疎水性の脂質A部分は、非共有の疎水性相互作用を介して、ガンマ線を照射したポリスチレン表面のような表面に結合してもよい。そのような結合は、コアオリゴ糖領域を抗体などの結合分子と相互作用をするために接近可能なままに留める。
【0048】
代替の実施形態では、LPSおよび/またはコアオリゴ糖は、抗体、複合体、または他の結合などの結合仲介分子を用いることによって、表面に固定化される。好適な代替物は、国際特許出願第WO03/36419号に開示されている。
【0049】
本方法の第1のステップは、試験サンプルを培地中で培養することにより、目的とする微生物の増殖を可能とするステップを含む。
【0050】
ある実施の形態では、本方法は食物または食品中に存在する微生物タンパク質またはフラグメントを検出するために使用される。別の実施の形態では、サンプルは環境サンプル、農産物サンプル、医療品、または製造サンプルである。試験サンプルは、加工食品、乾燥食品、冷凍食品、または冷蔵食品を含む、肉、ミンチを含む肉製品、卵、チーズ、ミルク、野菜、チョコレート、ピーナッツバターなどの食品であってもよい。または、試験サンプルは、生検サンプル、糞便、唾液、水和液、栄養液、血液、血液製剤、組織抽出物、ワクチン、麻酔、薬理活性のある薬剤、造影剤または尿サンプルなどの臨床サンプルであってもよい。試験サンプルはまた、肌のスワブ、盲腸のスワブ、糞便のスワブ、排せつ物のスワブ、もしくは直腸のスワブ、または床、ドアおよび壁などの表面のスワブ、または動物の死体スワブを含む、食品から得られたスワブなどのスワブ(swabs:ぬぐい液)を含んでいてもよい。試験サンプルはまた、ファンデーション化粧品、口紅、ローション、クリーム、シャンプーなどの化粧品サンプルを含んでいてもよい。
【0051】
試験サンプルは、本発明の第1の態様に従った培地中で培養されることが好ましい。
【0052】
特定の実施の形態では、試験サンプルは培地中で約30℃〜約44℃、具体的には約37℃〜42℃、より具体的には約37℃にて培養される。試験サンプルは培地中で、約4〜15時間、より具体的には約4〜8時間、さらにより具体的には約4〜6時間培養されてもよい。別の実施の形態では、試験サンプルは培地中で、約30分間〜約4時間、具体的には約1、1.5、2、2.5または3時間培養されてもよい。
【0053】
本方法の第2のステップには、試験サンプル中に存在する任意の微生物から1つ以上のコアオリゴ糖を放出するのに十分な程度に、試験サンプルを処理するステップを含む。
【0054】
試験サンプルは、細菌のLPSおよび/またはコアオリゴ糖を微生物の細胞膜から放出させるのに適した任意の方法で処理されてもよい。試験サンプルは、本発明の第2の態様に従って処理されるのが好ましい。
【0055】
他の好適ではあるがおそらく効率が低い抽出方法が従来技術には存在する。超音波処理、加圧型細胞破壊装置の使用、酵素の使用、「ビーズビート法(bead beating)」などを含むそれらの方法もまた使用することができる。しかし、サルモネラ菌などの病原性細菌を扱う場合、高温の洗浄剤(煮沸したものまたは上述のもの)を使用することが特に有用である。なぜなら、高温により確実にすべての細菌が死滅するからである。より具体的には、アッセイが直接結合アッセイの場合、SDSが好適に利用される。一方、アッセイが競合型の場合、プレートに塗布する抗原を調整するためにSDSが使用される。ただし、残りの手順の間は、TWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 60またはTWEEN 80のいずれか、特にTWEEN 20が使用される。上述の第1の態様との関係で、適切な加熱/処理時間の長さが規定される。目的とする微生物が試験サンプル中に存在しなくてもよいことは明らかであろう。その場合、目的とする微生物のLPSおよびコアオリゴ糖も存在しないであろう。
【0056】
本方法の第3のステップでは、目的とする微生物のコアオリゴ糖に対する結合特異性を有する少なくとも1つの結合分子に、試験サンプルが接触させられる。
【0057】
特定の実施の形態では、処理した試験サンプル中のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーは、ステップ(iii)の前に、表面に固定化される。コアオリゴ糖、LPSまたはモノマーは、目的とする微生物のコアオリゴ糖に結合特異性を有する、少なくとも1つの結合分子に曝されている。そのような実施の形態では、サンプル中のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーは、処理された試験サンプルを表面に接触させ、接触させた状態で約10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、もしくは約60分間インキュベートおよび/または維持することによって、固定化されてもよい。
【0058】
別の実施の形態、たとえば競合アッセイでは、試験サンプルは表面に塗布されるか接触させられる。表面には、既に固定化された既知量または標準量のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーが存在する。既知量または標準量両方のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーが、少なくとも1つの結合分子と結合しようとして、試験サンプルから得られたコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーと競合する。
【0059】
コアオリゴ糖、LPSまたはモノマーは、たとえば非共有の疎水性相互作用によって前記表面に直接固定化されてもよいし、上述のように間接的に固定化されてもよい。
【0060】
試験サンプルを少なくとも1つの結合分子に十分な時間接触させることにより、コアオリゴ糖、LPSまたはモノマーが少なくとも1つの結合分子に結合できるようにして、たとえばコアオリゴ糖/結合分子複合体のような複合体を形成するべきである。適切な時間には、約1分間〜約4時間、特に約30分間〜約2時間、特に約45分間、1時間および1.5時間が含まれる。
【0061】
ある実施の形態では、本方法の任意のステップにおいて、複合体は、少なくとも1つの結合分子に対し結合特異性を有する第2の結合分子に十分な時間接触させられる。これにより、第2の結合分子は二次的な複合体、たとえばコアオリゴ糖/結合分子/第2の結合分子複合体を形成することができる。
【0062】
結合分子は、抗体、より具体的には親和性により精製された抗体、さらにより具体的にはモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0063】
本発明のアッセイに使用される抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体であってもよい。そのような抗体は一本鎖で構成されてもよいが、少なくともL鎖またはH鎖で構成されることが好ましい。しかし、抗体が結合特異性を有するコアオリゴ糖または汚染微生物などの標的に結合するために、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)が必要であることは理解されるであろう。
【0064】
抗体を作製する方法は、先行技術で知られている。たとえば、ポリクローナル抗体が望ましい場合、マウス、ウサギ、ヤギまたはウマなどの選択された哺乳類が、細菌のエンドトキシンなどの選択された抗原によって免疫されてもよい。次に、免疫された動物から得られた血清が集められ、たとえば免疫親和性クロマトグラフィーによって、抗体を得るように処理される。
【0065】
モノクローナル抗体は、先行技術で知られており通常行われている方法によって製造されてもよい。ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を製造するための通常の方法は、よく知られている(たとえば、Kohler,G.およびMilstein,C,Nature、第256巻:第495〜497頁(1975年);Kozborら、Immunology Today、第4巻:第72頁(1983年);Coleら、Monoclonal Antibody and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.第77〜96頁(1985年)を参照)。
【0066】
後述のとおり抗体は、CDRなどのエピトープ−結合領域で構成されている必要がある。抗体は、IgE、IgM、IgD、IgAおよび特にIgGを含む、任意の適切なクラスであればよい。また、それらの抗体の様々なサブクラスも想定される。ここで用いられるように、「抗体結合フラグメント」という用語は、抗体のフラグメント、つまり抗体から得られたポリペプチドをいう。このポリペプチドは、抗体の結合特異性を有する。そのようなフラグメントには、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvなどの抗体フラグメントが含まれるが、これらには限られない。これらのフラグメントはすべて、エピトープに結合することができる。
【0067】
また、「抗体」という用語は、入手可能な様々な任意の自然抗体、人工抗体、および抗体由来のタンパク質、ならびにそれらの派生物に及ぶ。派生物としては、たとえばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体,単一ドメイン抗体、抗体全体、F(ab’)2およびF(ab)フラグメントなどの抗体フラグメント、Fvフラグメント(非共有のヘテロ二量体),一本鎖Fv分子(scFv)などの一本鎖抗体、小体(minibodies)、オリゴ体(oligobodies)、二量体または三量体の抗体フラグメント、あるいはコンストラクトなどが含まれるが、これらには限られない。「抗体」という用語は、何ら特定の由来を意味するものではなく、ファージ提示法など、従来の方法ではない方法によって得られた抗体も含む。本発明の抗体は、任意のアイソタイプ(たとえばIgA、IgG、IgM、つまりα、γまたはμのH鎖)とすることができ、K(カッパ)またはλ(ラムダ)のL鎖を有してもよい。
【0068】
したがって、本発明は、本発明で使用されるコアオリゴ糖に対する結合特異性を有する抗体および抗体から得られた結合フラグメントの使用にまで及ぶ。
【0069】
「特異的に結合する」または「結合特異性」という用語は、抗体またはそのフラグメントが、標的ではないエピトープに対するよりも高い親和性で、標的となる微生物病原体に結合する能力をいう。たとえば標的エピトープに対する抗体の結合は、標的ではないエピトープに対する結合親和性よりも、少なくとも10倍、50倍、100倍、250倍、500倍、または1000倍を超える結合親和性をもたらしてもよい。ある実施の形態では、結合親和性は親和性ELISAアッセイによって決定される。代替の実施形態では、親和性はBIAcoreアッセイによって決定される。代わりに、結合親和性は速度論的方法によって決定されてもよい。
【0070】
ある実施の形態では、抗体などの結合分子が表面上に固定されてもよい。そして任意的な洗浄ステップの後、目的とするコアオリゴ糖または汚染微生物を含みうる試験サンプルを、表面に結合した抗体に、結合が起きて表面に結合した第1の結合分子ーコア複合体が形成されるように、十分な時間接触させることができる。本アッセイは次に、第1の結合分子ーコア複合体が結合した表面を、抗体などの第2の結合分子に接触させるステップを含んでもよい。第2の結合分子は、たとえばアクリジニウムエステルなどの発光手段と共有結合していてもよい。そのような場合、第2の結合分子は、第1の結合分子、コアオリゴ糖または汚染微生物に存在するエピトープに対する結合特異性を有する。それにより、生成されたシグナルの量は、第1の結合分子または第2の結合分子が結合したコアオリゴ糖または汚染微生物の量に対応する。
【0071】
典型的には、抗体は精製されることにより凝集が抑制される。
【0072】
ある実施の形態では、表面は、例えば従来型設計のマイクロタイタープレートである。しかし、たとえば暗い側壁と(底面などに)白色または透明な部分とを有する改良表面を使用すれば、利点を得ることができる。これにより、測定時において、生成された任意のシグナルを増幅し、背景光を低減することができる。白色の部分が光を反射させることにより、生成されたシグナルを増幅することができる。したがって、特定の実施の形態では、表面は複数のウェルを含むマルチウェルプレートである。この場合、各ウェルの底面は透明または実質的に透明である。一方、ウェルの側壁は、光の透過を防止するために不透明もしくは暗くされるか、またはウェルの底面部に対してコントラストを与えることにより光が底面部で通過できるようにするために着色されている。
【0073】
さらにより具体的には、本抗体は種特異的なモノクローナル抗体である。
【0074】
「種特異的な」という用語を使うことによって、交差反応がほんんどないか全くない程度に、例えばサルモネラ菌、赤痢菌およびリステリア菌の間でそのような抗体が異なることを意味することを目的としている。
【0075】
特定の実施の形態では、結合分子は以下のLPSコアオリゴ糖のエピトープと反応して結合する。
【0076】
【化1】
このエピトープは種特異的であり、サルモネラ菌を他の細菌から識別する。他の細菌としては、赤痢菌、リステリア菌、病原性大腸菌などがあるが、これらには限定されない。特定の実施の形態では、本アッセイ方法は、サルモネラ菌を定量的に検出するための方法である。本アッセイ方法は、サルモネラ菌の存在または不存在を検出するために利用されてもよい。特定の実施の形態では、結合分子は、たとえば化学発光性または蛍光性の化合物に対する結合により標識された標識結合分子である。
【0077】
しかし、本発明の方法は、様々な標的汚染微生物の同定および定量に使用できることは明らかであろう。本発明のアッセイ方法は、存在性に関するサンプルの分析または汚染微生物量の分析を含む。本発明の方法を用いて試験されるサンプルのすべてが汚染微生物を含むわけではないということは理解されるであろう。ある実施の形態では、汚染微生物は病原性微生物から得られたタンパク質またはそのフラグメントである。あるさらなる実施の形態では、汚染微生物は、細胞壁のフラグメント、ペプチドグリカン、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質タンパク質、小ペプチド、糖配列および脂質配列から構成される群のうちの少なくとも1つであってもよいが、これらに限られるわけではない。本発明の方法は、細菌、ウイルスおよび菌類から得られた構造タンパク質および/または毒素を含む微生物タンパク質を検出するのに特に適している。
【0078】
本方法の第4のステップは、目的とする微生物のコアオリゴ糖または汚染微生物に対する、少なくとも1つの結合分子の任意の結合を検出するステップを含む。
【0079】
本検出方法は、蛍光測定、比色定量、フローサイトメトリー、化学発光などの先行技術で知られている任意の適切な方法によるものであってもよい。好適な実施の形態では、結合の検出は、たとえば化学発光性の化合物が発する化学発光性の光の発光シグナルの測定/検出による。適切な化学発光性の化合物には、アクリジニウムエステル、アクリジニウムスルホンアミド、フェナントリジニウム(phenanthridiniums)、1,2−ジオキシエタン、ルミノール、または化学発光性の基質を触媒する酵素などが含まれる。
【0080】
ある実施の形態では、結合分子は発光部と直接結合してもよい。ある実施の形態では、結合分子はアクリジニウム化合物またはその派生物と結合する。派生物には、アクリジニウムエステル分子または発光ラベルとして機能するアクリジニウムスルホンアミドがある。抗体または結合フラグメントがアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドと結合する実施の形態では、本アッセイ方法はAMPPDを試験サンプルに添加するステップをさらに含んでもよい。
【0081】
AMPPDは、以下の同義語によって知られているかもしれない:3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3”−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキシエタン;3−(4−メトキシスピロ(1,2−ジオキシエタン−3,2’−トリシクロ(3.3.1.1(3,7))デカン)−4−yl)フェニルリン酸塩;4−メトキシ−4−(3−リン酸塩フェニル)スピロ(1,2−ジオキシエタン)−3,2’−アダマンタン。
【0082】
ある別の実施の形態では、抗体は間接的に発光部と関連してもよい。たとえば、アクリジニウムエステル分子は、第1の抗体と結合可能な第2の抗体と結合してもよい。ある実施の形態では、1つ以上の発光性または蛍光性の部分がアビジン/ストレプトアビジンに結合してもよい。同様にアビジン/ストレプトアビジンは、抗体に化学的に結合したビオチンに結合してもよい。ある別の実施の形態では、レクチン(プロテインA/G/L)は発光性または蛍光性の分子と結合しうる。また、発光性または蛍光性の分子は、抗体または他のタンパク質複合体に取り付けられていてもよい。
【0083】
検出可能なシグナルを生成する刺激は、光、たとえば紫外線光などの特定の波長の光であってもよいし、電気的刺激または放射性刺激、化学反応または酵素−基質反応など、他の何らかの刺激であってもよい。
【0084】
本検出方法は、10000cfuもの病原性大腸菌など他の微生物の存在下で、またはたとえばスワブもしくは開始サンプルあたり、サルモネラ菌、赤痢菌またはリステリア菌の1コロニー形成単位(cfu)を好ましくは検出/識別できるべきである。特定の検出限界は、サンプルサイズ(mg,gなど)または体積(ml,Lなど)の単位あたり約1000cfu、具体的には約500cfu、より具体的には約250cfu、200cfu、150cfu、100cfu、50cfu、10cfu、および約1cfuである。液体培養では、特定の検出限界は約500cfu/mlである。
【0085】
別の実施の形態では、抗体はそのような発光部と間接的に関係があってもよい。例えば、アクリジニウムエステル分子は、第1の結合分子と結合することができる第2の結合分子と共役してもよい。
【0086】
本アッセイ方法は、定性的であってもよいし、定量的であってもよい。また、標準コントロールを流すことにより、生成された平均シグナルを既知量の例えばコアオリゴ糖と関連づけてもよい。
【0087】
ある実施の形態では、本方法は複数のコアオリゴ糖または汚染微生物のサンプルにおける決定用に使用されてもよい。これは、異なるエピトープまたは汚染微生物に対してそれぞれ結合特異性を有する抗体のような、複数の結合分子を提供することにより実現される。ある実施の形態では、二重特異性の抗体が使用されてもよい。
【0088】
本方法の各段階の間または各段階において、任意の洗浄ステップ、乾燥ステップ、および/または培養ステップが含められてもよいことは明らかであろう。また、本方法は「ブロッキングステップ」を本方法の1つ以上のステップ間に任意的に含んでもよい。この場合、ウシ血清アルブミン(BSA)またはカゼインなどの非反応性タンパク質の濃縮液が、たとえばマイクロタイタープレートのすべてのウェルに対して添加される。特定のブロッキング薬剤もまた、ミルク粉末などの溶液を含む。そのようなタンパク質が、他のタンパク質がプレートに非特異的に吸着することを阻止する。また、そのようなタンパク質は、アッセイの感度を妨げうる「バックグラントの」ノイズを低減させるために有益であってもよい。
【0089】
本発明の第6の実施の形態によると、サルモネラ菌、赤痢菌およびリステリア菌から構成される群から選択される微生物を特異的に検出するための、コアオリゴ糖に対して結合特異性を有する結合分子の使用が提供される。
【0090】
本発明の第5の実施の形態によると、本発明の第1、2、3、4および/または5の実施に従って本発明を実行するためのキットが提供される。そのようなキットは、(即使用可能なまたは希釈用に濃縮された)液体状態もしくは(たとえば粉末、顆粒、タブレットなどの)乾燥状態の培地、洗浄剤もしくは洗浄剤溶液、洗浄バッファ、希釈剤、調整済プレート、調整済チューブまたはビーズ、1つ以上の(1次、2次)抗体、検出試薬、手袋、ピペット用チップ、取扱説明書などを含んでいてもよい。調整済プレートまたはチューブのウェルは、既知または標準量のコアオリゴ糖、LPSもしくはモノマー、または抗体などの結合分子によって被覆済であってもよい。そのような調整済の表面は、凍結乾燥されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1(a)および図1(b)は、直接結合アッセイの概略図である。黒塗りの菱形は、サルモネラ菌などの細菌のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーを表す。図1(a)は直接免疫アッセイを示し、図1(b)は間接免疫アッセイを示す。
【図2】図2(a)および図2(b)は、結合タンパク競合アッセイの概略図である。黒塗りの菱形は、サルモネラ菌などの細菌のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーを表す。図2(a)は直接競合免疫アッセイを示し、図2(b)は間接競合免疫アッセイを示す。
【図3】図3は、テトラチオン酸塩はサルモネラ菌に対して正の成長効果を及ぼすが、他の細菌の成長は抑制されることを示すグラフである。
【図4】図4は、ブリリアントグリーンがサルモネラ菌、赤痢菌、病原性大腸菌およびブドウ球菌の成長に及ぼす影響を示すグラフである。本グラフは、特に0.15mg/Lのブリリアントグリーン濃度で競合する細菌を阻害することによりサルモネラ菌を成長させるためのブリリアントグリーンの最適な濃度範囲を実証する。
【図5】図5は、クエン酸第二鉄アンモニウムがサルモネラ菌、赤痢菌、病原性大腸菌およびブドウ球菌の成長に及ぼす影響を示すグラフである。本グラフは、特に0.25g/Lの濃度で赤痢菌を成長させるためのクエン酸第二鉄アンモニウムの最適な濃度範囲を実証する。0.25g/Lを上回る濃度では、サルモネラ菌の成長は影響を受けない。
【図6】図6は、クエン酸ナトリウムがサルモネラ菌、赤痢菌、病原性大腸菌およびブドウ球菌の成長に及ぼす影響を示すグラフである。サルモネラ菌および赤痢菌の成長は助長されるが、競合する細菌の成長は阻害される。
【図7】図7は、グラム陰性液体培地中での細菌の成長を示すグラフである。
【図8】図8は、デオキシコール酸塩ークエン酸塩ーラクトースースクロース液体培地中での細菌の成長を示すグラフである。
【図9】図9は、ペプトン液体培地中での細菌の成長を示すグラフである。
【図10】図10は、改良トリプシン大豆培養液中での細菌の成長を示すグラフである。サルモネラ菌および赤痢菌の両方の成長が助長され、約30分間という倍増時間を示す。
【図11】図11は、本発明の液体培地中で競合する細菌を阻害した場合の、リステリア菌種の成長の速さを説明するためのグラフである。
【図12(a)】図12(a)は、目的とするある細菌のLPSの一般的な構造を示す(O−抗原、コア多糖(オリゴ糖)、脂質A)。
【図12(b)】図12(b)は、種特異的な抗体結合エピトープを含むサルモネラ菌のLPSモノマーの詳細な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
本発明のアッセイは、あるサンプル中で、細菌のLPSのコアオリゴ糖の存在または不存在を特定するために利用されることが好ましい。本発明のアッセイは、サルモネラ菌、赤痢菌、もしくはリステリア菌などの細菌を含むか、または細菌に汚染されたサンプルを特定することができる。これらの細菌は、種特異的なエピトープをLPSのコアオリゴ糖領域中に有する。本発明の方法を説明することを目的とする以下の説明と例を参照すれば、本発明をより理解できるかもしれない。
【0093】
図1(a)は、標識一次抗体を利用する直接結合アッセイのステップを示す。図1(b)は、標識一次抗体と標識された二次抗体とを利用する直接結合アッセイを示す。動物の死体や食料品中においてサルモネラ菌種を検出するための直接結合(直接的または間接的な抗体結合)による化学発光に基づく免疫吸着アッセイは、後述のように実行されてもよい。
【0094】
本発明の第1の態様に従い、25gの食品サンプルが225mlの培地に添加された。これに代えて、死骸において表面スワブが10×10cmの領域から採取され、本発明の第1の態様に従って、2〜5mlの培地中で培養されてもよい。具体的には、本培地は1%のペプトン、8g/Lのテトラチオン酸ナトリウム、および0.15mg/Lのブリリアントグリーンを含有していた。サンプルは37℃で5時間培養された。
【0095】
5時間の培養後、サンプルのうち2mlの一定分量が取り出され、最終濃度が0.5%(w/v)となるようにSDSが添加された。そのサンプルは100℃で5分間加熱された後、冷却された。100μlの各試験サンプルが、硬質で白色の96ウェル高結合性マイクロタイタープレート(グライナーバイオワン社)のウェルに直接添加され、37℃で30分間インキュベートされた。インキュベート中、LPSの脂質A部分が非共有の疎水性相互作用によってプレートの表面に結合する(図1a(1)、図1b(1))。インキュベートに続き、プレートの溶液を捨て、0.01Mのリン酸ナトリウムバッファ(pH7.4)、0.147MのNaClおよび0.05(v/v)のTween 20を含む洗浄バッファを用いてウェルが3回洗浄された。
【0096】
0.147MのNaClを含む0.01Mのリン酸バッファ(pH7.4)中での濃度が500ng/mlの抗サルモネラ菌抗体複合体100μlが各ウェルに添加された。ウェルあたりの抗体の最終濃度は50ngであった。プレートに結合したサンプル(サルモネラ菌LPS/コアオリゴ糖)および抗体が被覆されたウェル中で30分間、37℃にてインキュベートされた。インキュベートに続き、プレートが洗浄バッファ中で3回洗浄され、検出の前に完全に乾燥させられた(図1a(2)、図1b(2))。
【0097】
抗サルモネラ菌抗体がアクリジニウムエステルで直接標識された場合、プレートが照度計の中に配置される。30μlの誘因溶液Aと60μlの誘因溶液Bがマイクロタイタープレートの各ウェルに添加されることにより、結合したアクリジニウムエステルから光出力が開始される(図1a(3))。照度計の設定は以下のとおりである。
【0098】
遅延注入P(溶液A用) − 1.6秒
測定時間間隔1 − 0.0秒
遅延注入M(溶液B用) − 0.0秒
測定時間間隔2 − 1.0秒
【0099】
誘因溶液Aは、63μlの70%(w/w)硝酸と165μlの30%(v/v)H2O2とを全容積が10mlの蒸留水中に含んでいた。誘因溶液Bは、0.1gのNaOHと75mgのCTACとを10mlの蒸留水中に含んでいた。
【0100】
ヤギの抗マウスIgG2bアクリジニウム複合体の添加(抗サルモネラ菌モノクローナル抗体が結合しない場合)
抗サルモネラ菌抗体が標識されていない場合、第2の結合分子であるヤギの抗マウスIgG2b複合体が使用される。カラム処理後のIgG2bが、3%(w/v)の無脂肪ミルク粉末および0.05%(v/v)のTween 20を含む希釈剤中で1:100に希釈された。希釈後の溶液100μlがプレートの各ウェルに添加された。(図1b(3))。37℃における60分間のインキュベートに続き、プレートが洗浄バッファで4回洗浄され、乾燥され、上述のように測定された(図1b(4))。
【0101】
食料品中のサルモネラ菌種を検出するための競合(直接的または間接的)化学発光結合性免疫吸着アッセイを後述のように行ってもよい。サルモネラ菌エンテリティディス種のLPSを被覆したマイクロタイタープレートは、以下のように調整された。サルモネラ菌エンテリティディス種が標準液体培地(2%(w/v)の緩衝化ペプトン水(オキソイド社))中で本発明の第1の態様に従わずに18時間かけて培養された。コロニー形成単位数が定量され、蓋がされているが密封はされておらず、最終濃度がそれぞれ10mMおよび0.5%(w/v)となるNaEDTAおよびSDSを含むポリプロピレン試験管中に、約108cfu/ml分が入れられた。この培養液が100℃で2分間煮沸されることにより、細菌を死滅させ(そしてあらゆる関連有害物質を中和させ)、さらにまた細菌のLPSコアオリゴ糖つまりモノマーエピトープを露出させた(たとえば図12bを参照)。煮沸されたストックは、2%の緩衝化ペプトン水(BPW社)を含む希釈剤を添加することによって、106cfu/mlの濃度にまでさらに希釈された。
【0102】
希釈され煮沸されたストックのうち100μlが硬質で白色の96ウェル高結合性マイクロタイタープレート(グライナーバイオワン社)の各ウェルに添加され、37℃で60分間インキュベートされた。インキュベート中、LPSの脂質A部分は、非共有の疎水性相互作用によりプレートの表面に結合する。インキュベートに続き、プレートの溶液が捨てられ、ウェルが0.01Mのリン酸ナトリウムバッファ(pH7.4)、0.147MのNaClおよび0.05(v/v)のTween 20を含む洗浄バッファによって3回洗浄された。洗浄された被覆プレートは、すぐに使用されるか保存用に凍結乾燥された(図2a(1)、図2b(1))。
【0103】
10cfuのサルモネラ菌に曝されたひき肉の試験サンプル25gが、本発明の第1の態様に従って200mlの培地中に添加された。具体的には、本培地は1%のペプトン、8g/Lのテトラチオン酸ナトリウムおよび15mg/Lのブリリアントグリーンを含有していた。本サンプルは37℃で5時間インキュベートされた。5時間のインキュベート後、本サンプルの一定分量である5mlが取り出され、最終濃度が2%(v/v)となるようにTWEEN 20が添加された。このサンプルは100℃で2分間加熱された後、冷却された。煮沸後のサンプルの一定分量である80μlが被覆マイクロタイタープレートの各ウェルに添加された。
【0104】
0.147MのNaClを含む0.01Mのリン酸バッファ(pH7.4)中での濃度が125ng/mlである20μlの抗サルモネラ菌抗体複合体が各ウェルに添加された(図2a(2),図2b(2))。ウェルあたりの抗体の最終濃度は25ng/mlであった。競合サンプルLPS/コアオリゴ糖および抗体は、被覆ウェル中で37℃で60分間インキュベートされた。インキュベートに続き、プレートが洗浄バッファで3回洗浄され、検出の前に完全に乾燥させられた(図2a(3)、図2b(3))。
【0105】
抗サルモネラ菌抗体がアクリジニウムエステルを用いて直接標識された場合、プレートは照度計中に配置された.30μlの誘因溶液Aおよび60μlの誘因溶液Bがマイクロタイタープレートの各ウェルに添加されることにより、結合したアクリジニウムエステルから光出力が開始された(図2a(4))。照度計の設定は以下のとおりであった。
【0106】
遅延注入P(溶液A用) − 1.6秒
測定時間間隔1 − 0.0秒
遅延注入M(溶液B用) − 0.0秒
測定時間間隔2 − 1.0秒
【0107】
誘因溶液Aは、63μlの70%(w/w)硝酸(HNO3)と165μlの30%(v/v)H2O2とを全容積が10mlの蒸留水中に含んでいた。誘因溶液Bは、0.1gのNaOHと75mgのCTACとを全容積が10mlの蒸留水中に含んでいた。
【0108】
ヤギの抗マウスIgG2bアクリジニウム複合体の添加(抗サルモネラ菌モノクローナル抗体が結合しない場合)
抗サルモネラ菌抗体が標識されない場合、第2の結合分子であるヤギの抗マウスIgG2b複合体が使用される。カラム処理後のIgG2bが3%(w/v)の無脂肪ミルク粉末および0.05%(v/v)のTween 20を含む希釈剤中に1:100で希釈され、100μlのこの溶液がプレートの各ウェルに添加された(図2b(4))。37℃で60分間のインキュベート後、プレートは洗浄バッファ中で4回洗浄され、乾燥され、上述のように読み取られた(図2b(5))。
【実施例】
【0109】
(実施例1)サルモネラ菌を成長させるための培地の調製
図3は、0〜16g/Lの濃度のテトラチオン酸ナトリウムがサルモネラ菌アバディーン種、フレキシナ赤痢菌、ブドウ球菌アウレウス種および病原性大腸菌の成長に及ぼす影響を示す。0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が、0〜16g/Lのテトラチオン酸ナトリウムを含むトリプシン大豆培養液の入った100ml三角フラスコに添加された。フラスコは37℃で18時間培養された。この後、A620の値が測定された。各値は、3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*はp<0.05を示す。濃度が2〜16g/Lの場合、赤痢菌、ブドウ球菌および病原性大腸菌の成長が抑制された。一方、サルモネラ菌の成長は影響を受けないかまたは促進された。
【0110】
【表1】
【0111】
テトラチオン酸塩は、4g/Lより高い濃度で病原性大腸菌の成長を阻害するだけでなく、8g/Lの濃度ではサルモネラ菌の成長を明らかに増長する効果を有する。A620は濁りを測定するため、この値が高くなるほど、細菌の成長が速いということに留意する。約16g/Lより高い濃度では、サルモネラ菌の成長は阻害される。
【0112】
図4は、ブリリアントグリーンに対する細菌の生育反応を示す。0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が、0.05g〜5g/Lのブリリアントグリーンを含むトリプシン大豆培養液の入った100ml三角フラスコに添加された。フラスコは37℃で18時間培養された。この後、A620の値が測定された。各値は、3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*はp<0.05を示す。”はp<0.01を示す。
【0113】
【表2】
【0114】
比濁法による細菌数の尺度としてA620を採用した。*ブリリアントグリーンの吸光度による高い吸光度値を示す。これらの濃度において、ブリリアントグリーン溶液に対して分光計をブランクにすることはできなかった。ブリリアントグリーンの濃度が0.3mg/L以上の場合、サルモネラ菌および病原性大腸菌の両方の成長が抑制された。しかし、0.15mg/Lの濃度では、ブリリアントグリーンは病原性大腸菌に対しては阻害作用を示したが、サルモネラ菌に対しては示さなかった。
【0115】
(実施例2)赤痢菌を成長させるための培地の調製
図5は、クエン酸第二鉄アンモニウムに対する細菌の生育反応を示す。0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が、0.25〜1.5g/Lのクエン酸第二鉄アンモニウムを含むトリプシン大豆培養液の入った100ml三角フラスコに添加された。フラスコは37℃で18時間インキュベートされた。この後、A620が測定された。各値は、3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*はp<0.05を示す。クエン酸第二鉄アンモニウムの濃度が0.25g/L以上の場合、ブドウ球菌および病原性大腸菌の両方の成長が抑制される。
【0116】
図6は、クエン酸ナトリウムに対する細菌の生育反応を示す。0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が、5〜25g/Lのクエン酸ナトリウムを含むトリプシン大豆培養液の入った100ml三角フラスコに添加された。フラスコは37℃で18時間培養された。この後、A620が測定された。各値は、3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*はp<0.05を示す。クエン酸ナトリウムの濃度が5g/L以上の場合、ブドウ球菌および病原性大腸菌の両方の成長が抑制された。クエン酸ナトリウムの濃度が15g/Lの場合、赤痢菌の生育反応はブドウ球菌および病原性大腸菌の生育反応に比べ、著しく増長された。
【0117】
(実施例3)ペプトン、トリプシン大豆培養液および改良トリプシン大豆液体培地中における異なる細菌の世代試験
赤痢菌の3つの株とサルモネラ菌アバディーン種、病原性大腸菌およびブドウ球菌アウレウス種を含む他の細菌とを、従来の液体培地培養液中で培養することにより、世代時間が調べられた。ペプトン(図7)、トリプシン大豆液体培地(TSB)(図8)、改良トリプシン大豆培養液(mTSB)(図9)またはグラム陰性液体培地(図10)のいずれかを含む100ml三角フラスコに、0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が添加された。
【0118】
各フラスコは370Cで18時間培養された。この後、生存細胞の数が栄養寒天培地上でドロッププレート法により決定された。かっこ内の値は世代時間である。各値は3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*はp<0.05を表す。倍増時間がペプトン、トリプシン大豆および改良トリプシン大豆培養液中で調べられた。グラム陰性液体培地中で培養された場合、フレキシナ赤痢菌、サルモネラ菌アバディーン種、病原性大腸菌およびブドウ球菌アウレウス種の世代時間は、それぞれ36、57、41および44分であった。
【0119】
すべての細菌の増殖速度がTSB中では増大した。その結果、赤痢菌が選択的に成長できるようにするために、従来の他の選択剤とともに、TSBが基礎成長培地として単独でまたは組み合わせて使用された。フレキシナ赤痢菌、サルモネラ菌アバディーン種、病原性大腸菌およびブドウ球菌アウレウス種の倍増時間は、TSB中では48、46、28および33分であった。フレキシナ赤痢菌およびサルモネラ菌アバディーン種はmTSB中では有意に速く成長した(p<0.01)。一方、この基礎培養液中では、病原性大腸菌およびブドウ球菌アウレウス種は増殖するのにより長い時間がかかった。改良TSB中で培養した場合、病原性大腸菌の増殖速度は68分まで遅らせることができた。改良TSB中では、フレキシナ赤痢菌の世代時間は46分間にまで短縮することができた。
【0120】
(実施例4)リステリア菌を成長させるための培地の調製
塩化リチウムとナリジクス酸との組み合わせを含むリステリア菌の成長培地が調整された。0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が、以下のレシピの培地を含む100ml三角フラスコに添加された:3.3%のTSBYE、0.5%酵母抽出物を含むトリプシン大豆培養液、2g/LのLiCl、2mg/Lのナリジクス酸、および250mg/Lのクエン酸第二鉄アンモニウム。フラスコは37℃で20時間培養された。この後、A620の値が測定された(図11)。各値は、3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。リステリア菌モノサイトゲネス種およびリステリア菌イノキュア種は、本培地中で効率的に成長できた。病原性大腸菌、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)およびブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)の成長はすべて著しく阻害された。
【0121】
(実施例5)サルモネラ菌、赤痢菌またはリステリア菌を選択的に成長させるための培地の調製
上述のデータを利用して、以下のレシピに従って選択培地が調整された。
【0122】
サルモネラ菌1
・2%のペプトン
・0.15mg/Lのブリリアントグリーン
・4〜8g/Lのテトラチオン酸塩(すべての型)
【0123】
サルモネラ菌2
・3.3%(w/v)のmTSB
・0.15mg/LのBG
・1g/Lのクエン酸第二鉄アンモニウム
【0124】
赤痢菌13.3%のmTSB
・0.1mg/Lのブリリアントグリーン
・250mg/Lのクエン酸第二鉄アンモニウム
・15g/Lのトリクエン酸ナトリウム
【0125】
リステリア菌1TSBYE−0.5%酵母抽出物を含有する3.3%トリプシン大豆培養液
・2g/Lの塩化リチウム
・2mg/Lのナリジクス酸
・250mg/Lのクエン酸第二鉄アンモニウム
【0126】
(実施例6)免疫アッセイに使用するためにアクリジニウムエステルと結合させるための抗体および抗体フラグメントの調整
腹水からプロテインAのクロマトグラフィーを用いて純粋なIgGを調整し、次にIgGを消化することによってFabフラグメントを生じさせ、そのフラグメントまたは抗体全体をエステルに結合させ、続いて精製を行う任意のステップによって、抗体の改善された調製を行うことができる。代わりに、抗体の他のアイソタイプまたはアイソフォームを精製されていない状態で使用することもできる。
【0127】
プロテインA/Gの分離
(i)バッファおよび溶液
・PBS:0.15MのNaClを含む0.1Mのリン酸バッファ(pH8)
・0.1Mのクエン酸酸性バッファ(pH6およびpH4.5):29gの乾燥したクエン酸ナトリウムを800mlの蒸留水に溶解させる。それぞれpHが6および4.5となるまで1Mのクエン酸溶液(210g/L)を添加する。1Lにメスアップする。
・0.15MのNaClを含有する0.1Mの酢酸バッファ(pH3):800mlの蒸留水に1Mの酢酸100mlと1.5MのNaCl100mlとを添加する。
3MのNaClを含有する1.5Mのグリシンバッファ(pH8.9):112gのグリシンおよび174gのNaClを700mlの蒸留水に溶解させる。5Mの水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを8.9に調整し、蒸留水を用いて1Lにメスアップする。
【0128】
(ii)手順
0.1Mのリン酸バッファ(pH8)中で30分間、1.5gのプロテインA−セファロース(CL−4B、ファルマシア社)(プロテインGも使用されてもよい)が膨張できるようにする(1.5gのビーズから5mlのゲル得られる)。20×2cmのカラムをこのゲルで充填し、開始バッファでリンスする。開始バッファに対して透析した後、40%(v/v)にて飽和状態の硫酸アンモニウムにより前もって脱脂しておいた腹水を1ml、カラムにアプライする。腹水が使用される場合、腹水の脱脂は100000gで45分間遠心分離することにより行われる。形成されたあらゆるペレット、つまり浮かんだ「脂質」が捨てられる。A280が0.050未満となるまで0.1Mのリン酸バッファ(pH8)を用いてカラムを洗浄する。クエン酸塩バッファ(pH6)を添加し、A280が0.050未満となるまで洗浄する。引き続いてpH4.5とpH3のバッファを用いることにより、他の免疫グロブリンを同様にして溶出させる。0.02%のアジ化ナトリウムを含むリン酸バッファ(pH8)を用いて中和させ、プロテインA−セファロースをこのバッファ中で保存する。溶出後、1Mのリン酸バッファ(pH8)を数滴用いて抗体を中和させ、PBSに対して透析させる。
【0129】
(iii)Fabフラグメントの調整
酵素消化が完全に進行することはない。そのため、パパインがIgGに作用した場合、FabフラグメントおよびFcフラグメントに加え、10%の未消化IgGが生じる。FabフラグメントとFcフラグメントは同一の分子量を有するため、分離するのが困難である。それらの精製を容易にするために、プロテインAが使用される。最初のステップで抗体がパパインを用いて処理される。次に、その混合物がIgGおよびFabを分離するためにプロテインAに通される。次に、SephadexまたはプロテインA−セファロースを用いたろ過によって、Fabフラグメントが未消化のIgGから分離される。
【0130】
(材料)
・クロマトグラフィーカラム(2.5cm×80cm)
・パパイン:ベーリンガー社製
・L−塩酸システイン:メルク社製
・EDTA(エチレンジアミン四酢酸):メルク社製
・ヨードアセトアミド:メルク社製
【0131】
(バッファおよび溶液)
・リン酸塩−緩衝化生理食塩水(PBS)
・0.1Mのリン酸バッファ(pH7.4)
・市販の原液から調整された1mg/mlのパパイン溶液
・0.2MのL−システイン:35mg/mlの0.1Mリン酸バッファ(pH7.4)
・0.1MのEDTA:3.6gのEDTAを100mlの0.2MのNaOH溶液に溶解させる。EDTAはpHが約8の場合にのみ著しく溶解する。そのため、溶液のpHを調整してEDTAを完全に溶解させるために、1MのNaOHを数滴添加する必要があるかもしれない。
・0.4Mのヨードアセトアミド:0.1Mのリン酸バッファ(pH7.4)中に74mg/mlの濃度
【0132】
(手順)
40%(v/v)の飽和硫酸アンモニウム溶液とともに沈殿させることにより、免疫グロブリン画分が抗血清から調整された。免疫グロブリンはpH7.4の0.1Mリン酸バッファに対して透析された。おおよそのタンパク濃度が決定された(IgGの1mg/ml溶液のA280の値は1.4である)。
【0133】
IgGの濃度を30mg/mlに調整し、20mg/mlのタンパク濃度を得るために必要な最終的な体積(V)が計算された。親和性の観点から、最終濃度が2.5mg/mlの精製された抗体が使用された。最終的な体積(V)の1/20量の0.04MのEDTAが添加された(最終濃度:0.002M)。次に、最終的な体積(V)の1/20量の0.2MのL−システイン溶液が添加された(最終濃度:0.01M)。100mgのグロブリンあたり1mgのパパインとなるように、1mg/mlのパパイン溶液が添加された。0.1Mのリン酸バッファ(pH7.4)を用いて体積がVmlに調整された。反応は37℃で2時間行われた。最終的な体積(V)の1/10量の0.4Mのヨードアセトアミド溶液が添加された(最終濃度:0.04M)。この状態で30分間放置された。次に調整液がPBSに対して4℃で一晩透析された。
【0134】
プロテインAクロマトグラフィーにより、GlcNAc−Glc−Galエピトープ(図12)に結合するIgG抗体およびFabフラグメントが単離された。Sephadex G−100カラム(2.5×80cm)上で混合物が分画され、PBSで平衡化された。第1のピークがIgGに対応し、第2のピークがFabフラグメントに対応した。Fabピークは5mg/mlに濃縮された。
【0135】
(実施例7)抗体または抗体フラグメントとアクリジニウムエステルとの結合
a)調整
i)(4−(2−スクシンイミドイルオキシカルボニルエチル)フェニル−10−ジメチルアクリジニウム−9−カルボキシレートフルオロ硫酸などのアクリジニウムエステルが、綺麗な乾燥したホウケイ酸の瓶の中で秤量された。乾燥したジメチルホルムアミドが添加された(体積は使用可能なアクリジニウムエステルの量による)。また、その溶液が通常1瓶あたり5mgの量で瓶の中に等分に分注された。
ii)0.5mgのIgG/mlの濃度で、抗体が0.2Mのリン酸ナトリウムバッファ(pH8.0)に溶解される。
iii)5mgのアクリジニウムエステル溶液を200mlの抗体溶液に加え、十分に攪拌する。
iv)室温で15分間インキュベートする。次に、10%(w/v)のリシン一塩酸塩を100ml添加することにより、反応を停止させる。続いて室温にて暗所で5分間さらにインキュベートする。
v)後述の(b)に従って精製する。
【0136】
b)複合体の精製
(i)複合体を精製するためにゲルろ過カラムが使用されてもよい。
0.147MのNaClおよび0.5%(w/v)のウシ血清アルブミン(シグマ社)を含む0.1Mのリン酸バッファ(pH7.4)を用いて、1.6×100cmのSephadex G200カラム(ファルマシア社)が平衡化される。1.5ml以下の複合体がカラム上にアプライされ、18時間かけて流速9ml/hで分離される。流出物がA280にてモニタされ、45〜55キロダルトンに対応するピークがFabフラグメントとして集められ、140〜170キロダルトンに対応するピークが完全な抗体として集められる。この完全な抗体が複合体であり、複合体は使用前に使用される濃度に希釈される必要がある。
【0137】
(ii)好ましい代替的な手順では、FPLCが使用される。複合体はSuperdex 200HR 10/30カラム(ファルマシア社)を用いて精製される。0.007g/mlのウシ血清アルブミン(BSA)溶液50mlが複合体に添加される(複合体のBSA濃度が溶出バッファのBSA濃度にまで高められる)。
【0138】
サンプルをアプライする前に、カラムの容積の2倍量(50ml)の溶出バッファでカラムが平衡化される。次に、複合体溶液を10000gにて10分間遠心することにより、あらゆる粒子状物質が除去される。そしてFPLCカラムにアプライされる。0.5ml/分の流速で溶出バッファおよび保存バッファ中で、抗体がカラムから溶出される。最初の5mlがカラムを通過した後、0.5mlの画分が収集される。
【0139】
紫外線(UV)モニタを使用することによって、抗体の存在が検出される。抗体ピークをカバーする画分が収集され、発光活性が解析される(通常は画分16〜21である)。
【0140】
(発光活性のチェック)
抗体画分が生理食塩水と各画分のアッセイ用プレートのウェルにスポットされたサンプル5μlにより1:500で希釈される。次にその画分の発光活性が、活性化試薬1および2との反応によってテストされる。最初に15μlの活性化試薬1がサンプルウェルに添加され、続いて30μlの活性化試薬2が添加される。これは、照度計中における自動注入により通常行われる。次に、問題としているウェルから発せられる光の放出を計測するために、照度計が動かされる。その結果が、各サンプルとも複数回繰り返して記録される。次に、高強度の発光活性を有するサンプルを、微生物アッセイ、この例ではサルモネラ菌アッセイにおいて確認することができる。
【0141】
(実施例8)AMPPDとアルカリホスファターゼが結合した抗サルモネラ菌抗体の使用
十分な発光シグナルを生成するために、免疫アッセイで使用される酵素アルカリホスファターゼおよび基質AMPPDに抗体を結合させてもよい。AMPPDは、3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3”−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキシエタン;3−(4−メトキシスピロ(1,2−ジオキシエタン−3,2’−トリシクロ(3.3.1.1(3,7))デカン)−4−yl)フェニルリン酸塩である。この基質用の希釈剤は、0.9gのCTAB(セチルトリメチルアンモニウム臭化物)、1.9mlのAMP(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)、14.5mgの塩化マグネシウム6水和物を、1mM、pH9.6となるように100mlの蒸留水で調整した水溶液である。
【0142】
(試薬)
洗浄バッファ
・0.2MのTris(24.228g/L)、0.2MのNaCl(11.688g/L)および0.05%(v/v)のTween(0.5ml/L)
・24.228gのTrisと11.688gのNaClを900mlの蒸留水に溶解させる。0.5mlのTween 20を添加する。HClを用いてpHを7.4に調整し、1Lにメスアップし、室温で保存する。
・10×洗浄バッファ濃縮液(防腐剤アジ化ナトリウムを含む)
・2MのTris(24.228g/100ml)、2MのNaCl(11.688g/100ml)および0.5%のTween (0.5ml/100ml):24.228gのTrisおよび11.688gのNaClを80mlの蒸留水に溶解させる。0.5mlのTween 20を添加し、濃縮HClを用いてpHを7.4に調整する。蒸留水で100mlにメスアップし、室温で保存する。洗浄バッファに戻すためには、100mlの濃縮液を900mlの蒸留水に添加し、室温で保存する。
【0143】
溶出用バッファおよび保存用バッファ
・0.15MのNaCl、0.1%(w/v)のウシ血清アルブミン(BSA)および0.05%のNaN3を含む0.1Mのリン酸ナトリウムバッファ(pH6.3)
・0.1MのNaH2PO4と0.1%(w/v)のBSAを含む0.15MのNaClとの溶液(A)と、0.1MのNa2HPO4と0.1%(w/v)のBSAを含む0.15MのNaClとの溶液(B)を作る。100mlのAを50mlのBに添加する。0.05%のNaN3を添加し、0.22mMのフィルタに通し、4℃で保存する。
【0144】
アッセイ用バッファ
・0.1%(w/v)のNaN3と0.25%(w/v)のBSAとを含む0.01MのNaH2PO4(1.2g/L)および0.15MのNaCl(8.75g/L)の溶液
・1.2gのNaH2PO4と8.75gのNaClとを900mlの蒸留水に溶解させる。1.0gのNaN3と2.5gのBSAとを添加する。完全に溶解させ、1.0MのNaOHを用いてpHを7.4に調整する。蒸留水を用いて1000mlにメスアップする。0.22μMのフィルタに通し、4℃で保存する。
【0145】
洗浄剤溶液
20%(w/v)のSDS溶液:5gのSDSを25mlの蒸留水中に溶解させる。室温で保存する。
【0146】
成長促進剤
8gのテトラチオン酸ナトリウムと0.15mgのブリリアントグリーンとを1Lの滅菌ペプトン液体培地に添加する。均一に混合されるまで穏やかに攪拌する。
【0147】
活性化試薬1(1L)
6.3mlの70%硝酸、16.5mlの30%過酸化水素、および977mlの蒸留水。
【0148】
活性化試薬2(1L)
10.0gのNaOH、7.5mlのセチルトリメチルアンモニウムクロライド、および983mlの蒸留水。
【0149】
(サルモネラ菌結合用の試験画分)
アッセイ用プレートのウェルは、標準濃度の細菌によって37℃で1時間被覆される。これらの標準濃度は、106、105、5×104、2.5×104、104および5×103ならびに106の病原性大腸菌を含むブランクのウェルである。試験される画分は、アッセイバッファ中で1:100に希釈され、50mlが各ウェルに添加され、37℃で20分間インキュベートされる。次に各ウェルが照度計上で上述のように計測される。アッセイにおいて高い結合を示した画分がプールされる。プールされた複合体に対する最適な希釈は、通常1:100〜1:1000である。
【0150】
(直接結合サルモネラ菌アッセイにおける洗浄剤の影響)
洗浄剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いて、新しい黒白プレート(Wallac社)がチューブ照度計(Berthold LB9509)によって読み取られる。
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】
【0153】
【表5】
【0154】
白色プレート(Wallac社)、ルーシー1プレート照度計を用いた読み取り(複合体を1:100で希釈)
【0155】
【表6】
【0156】
【表7】
【0157】
黒白プレートを用いた直接結合サルモネラ菌アッセイにおける様々な濃度のSDSの影響(複合体を1:100で希釈)
【0158】
【表8】
【0159】
【表9】
【0160】
黒白プレートを用いた競合結合サルモネラ菌アッセイにおける様々な濃度のTWEEN 20の影響(複合体を1:100で希釈)
【0161】
【表10】
【0162】
1:100に希釈した抗2b複合体を用いた抗サルモネラ菌モノクローナル抗体のインキュベート時間の影響
最適なインキュベート時間を決定するために、サルモネラ菌またはリステリア菌のいずれかとともにモノクローナル抗体(1:100に希釈)がインキュベートされた。
【0163】
【表11】
【0164】
1:200に希釈した抗2b複合体を用いた抗サルモネラ菌モノクローナル抗体のインキュベート時間の影響
最適なインキュベート時間を決定するために、サルモネラ菌またはリステリア菌のいずれかとともにモノクローナル抗体(1:200に希釈)がインキュベートされた。
【0165】
【表12】
【0166】
食品培養物に対するSDS濃度の影響
【0167】
【表13】
【0168】
コアオリゴ糖の放出および検出における異なる洗浄剤の影響
【0169】
【表14】
【0170】
SDSは、食品サンプルを用いたサルモネラ菌LPSのモノマーへの分解において最も信頼性および再現性のある結果をもたらす。しかし、競合アッセイではこの目的にはTWEENのみが使用可能である。それは、タンパク質−洗浄剤が他の洗浄剤と相互作用するからである。
【0171】
競合アッセイのサルモネラ菌の検出における様々な抗サルモネラ菌抗体の濃度の影響
【0172】
【表15】
【0173】
(参考文献)
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【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物、特に試験サンプルにおける病原微生物に由来する特定物質の検出に使用されるアッセイ方法に関する。本発明はさらに、そのような微生物を素早く成長させることにより、現在よりも著しく早く検出することを可能にするための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品は本質的に生物に由来するものなので、様々な汚染微生物の成長を手助けすることができる。米国では、推定年間7600万件の食中毒が発生し、医療に65億ドル〜349億ドルか費やされ、生産性を喪失している(BuzbyおよびRoberts(1997年)、Meadら(1999年))。欧州では、サルモネラ菌に対する経済コストおよび健康管理コストは、6億2000万〜30億ユーロであると推定されている(David Byrne、 European Commissioner for health and consumer protection、2000年)。
【0003】
サルモネラ菌(Salmonella)、リステリア菌(Listeria)、カンピロバクター菌(Campylobacter)、病原性大腸菌(Escherichia coli)O157:H7および赤痢菌(Shigella)は、食中毒の大部分の事例に関与している。例えば、サルモネラ菌およびリステリア菌は単独で、食品に関連した死亡のうちそれぞれ31%および28%に関与している(Meadら、1999年)。また、日本ではサルモネラ中毒が1981〜1995年に発生した全食中毒の原因の14%超を占める(Leeら、2001年)。実際、入院が必要な食中毒の症例のうち60%もの原因因子が細菌であると推定されている。結果として、衰弱の最大の原因の1つは、食品の微生物汚染に対する効果的でなくもたもたした検査により生じる遅延である。現在の試験方法では、製造会社は微生物培養の結果が出るまで3〜7日間待たなければならない。そのような遅延に起因するコストは甚大である。つまり、供給プロセスの効率を低下させ、在庫を止め、腐敗を増加させる。
【0004】
不適切または不十分な試験のコストは、少なくとも大きな代償を支払う必要性が生じうる。たとえば、1999年にそのような試験によってサラ・リー社は、Bil Mar食品課における3500万ポンドのホットドッグおよびデリ・ミートのリコールに関連して、それらの食品がリステリア菌の発生と関連づけられた後に、推定7600万ドルの代償を支払った。ザ・スコッツマン新聞社によると、2006年にサルモネラ菌がチョコレートに雑菌混入したことにより、キャドベリー・シュウェップス社はリコールの代償や広告、収益の喪失、その後の製造作業の改善に対して、推定2000万ユーロを支払った。つい最近の2009年には、2008年に推定2500万ドルを売り上げた米国のピーナッツ社は、米国でピーナッツにおける主なサルモネラ菌の発生源であると認定された後に、破産申請をした。
【0005】
したがって、食品、飼料および環境サンプル中で、サルモネラ菌、赤痢菌およびリステリア菌などの病原微生物の存在を検出することは、経済的に非常に重要である。しかし、そのような微生物を検出するための従来の培養方法は、骨が折れるし時間がかかっていた。そのような従来の方法は、50年以上も使用されてきた標準プロセスに依存することが多かった。
【0006】
加えて、病原微生物は「生存可能だが培養不可能な状態(VNC)」または「すぐに培養することはできない状態(NIC)」として知られる非常にストレスのかかった環境下で長期間生存することができる。そのように非常にストレスのかかった微生物は非常に弱い代謝活性しか示さない。代謝活性は検出限界に満たないことが多い。そのような微生物は非選択プレート培地上でコロニーを形成する能力または非選択液体培地中で増殖する能力を失っている(Reissbrodtら、2002年)。しかし、そのような培養不能なコロニーは、食品や動物の飼料中に存在した場合、体内に取り込まれれば依然として病気を引き起こしうる。これは検出に関して特殊な問題を提起する。それは、そのようなストレスを受けた微生物は検出可能なほど十分には復活しない可能性があるからである。
【0007】
その結果、さらなる培養、プレートへの塗布(plating)および検出に先立ち、そのような細胞を復活させる目的で、追加的な細胞培養ステップがあらゆる診断に含められることが多い。したがって非選択培地中であらかじめ濃縮しておくことは従来方法の必須要素である(Stephensら、2000年)。例えば、サルモネラ菌の検出には5日間も塗布しなければならいいくつかの培養段階を要する。つまり、「病気の」細菌を再生させるために濃縮ステップが解析に含められることが多い。また、検出はそのような濃縮培養液および培養物の特性によって制限されることが多い。
【0008】
したがって、細菌の外来集団に棲み家を提供する可能性のある臨床材料、食品およびその他の製品から微生物を再生させる目的で、3つの一般的なタイプの培地が入手可能である。つまり、(1)初期の単離用の非選択培地、(2)濃縮培養液、および(3)選択用寒天培地および/または識別用寒天培地、である。
【0009】
そのような培地の配合は通常複雑であり、特定の細菌種の成長を阻害する、つまり選択的な成分を含むと同時に、試料中に存在する微生物の予備的確認を行う、つまり識別する際に重要な生化学的特性を検出する成分も含む。合理的な選択をするためには、微生物学者は各配合の組成物、用途および含有される各化合物の相対濃度を知らなければならない。あいにく入手可能な培地は過度に複雑であることが多く、様々な成分の影響および量は通常ほとんど理解されていない。使用される培地は何10年も使用されてきた培地と同じものであることが多い。また、培地は本来全く異なる生物用に開発されたものであるかもしれない。たとえば、そのような非効率性ゆえ、サルモネラ菌の現在の検出率は、15日以内では50%未満であり、28日以内では90%未満である(King、2009年)。
【0010】
したがって、明確で、ほとんどまたは全く効果がないか、悪影響を及ぼしさえする余計な含有物が含まれておらず、かつストレスを受けた微生物でさえ成長および迅速な培養が可能な最適な培地が求められている。そのような培地は、二次的/追加的な培養ステップの必要性を否定する必要がある。また、個体数が非常に少なく不均一な微生物環境に存在する病原微生物の単離および/または同定を可能とする、新たなより良い検出方法も必要とされている。さらに、そのような任意の方法は、化粧品、冷凍食品、凍結乾燥製剤、および液体の製品を含む食品、尿や排泄物などの臨床サンプル、または血液サンプルおよび環境サンプルなどの多様な供給源に由来する微生物の検出に、等しく適用できる必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Buzby,J.C.およびRoberts,T.(1997年)“Economic costs and trade impacts of microbial foodborne illness.”World Health Stat.Q.第50巻(第1〜2号):第57〜66頁
【非特許文献2】David Byrne、 European Commissioner for health and consumer protection、2000年
【非特許文献3】Meade,P.S.,Slutsker,L.,Dietz,V.,McCaig,L.F.,Bresee,J.S.,Shapiro,C.,Griffin,P.M.およびTauxe,R.V.(1999年)“Food related illness and death in the United States.”Emerg.Infect.Dis.第5巻:第607〜625頁
【非特許文献4】Lee,W.C,Lee,MJ.,Kim,J.S.およびPark,S.Y.(2001年)“Foodborne illness outbreaks in Korea and Japan studied retrospectively.”J.Food.Prot.第64巻:第899〜902頁
【非特許文献5】Reissbrodt,R.,Rienaecker,I.,Romanova,J.M.,Freestone,P.P.E.,Haigh,R.D.,Lyte,M.,Tschape,H.およびWilliams,P.H.(2002年)“Resuscitation of Salmonella enterica serovar Typhimurium and enterohemorrhagic Escherichia coli from the viable but nonculturable state by heat stable enterobacterial autoinducer.”App.Env.Microbiol.第68巻(第10号):第4788〜4794頁
【非特許文献6】Stephens,P.J.,Druggan,P.およびNebe−von Caron,G.(2000年)“Stressed Salmonella are exposed to reactive oxygen species from two independent sources during recovery in conventional culture media.”Int.J.Food Microbiol.第60巻:第269〜285頁
【非特許文献7】King,L.(2009年)“Salmonella Rapid detection interagency group meeting.”FDA executive summary(2009年1月30日)
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様では、実質的に以下の成分から構成される少なくとも1つの微生物を成長させるための培地が提供される。
(i)基礎培養液と、
(ii)ブリリアントグリーン、ナリジクス酸および塩化リチウムから構成される群から選択される少なくとも1つの増殖抑制剤と、
(iii)任意成分として、テトラチオン酸ナトリウム、テトラチオン酸カリウム塩、クエン酸第二鉄アンモニウムおよびクエン酸ナトリウムから構成される群から選択される少なくとも1つの成長促進物質。
【0013】
疑義を避けるため、本明細書で使用される「実質的に構成される」という用語には、特定の物質またはステップのみの場合も含まれるが、本発明の基本的な特性および新規な特性に実質的に影響を及ぼさない限り、追加的な成分または分子も含まれる。
【0014】
培地は単純、複雑、または明確なものに分類することができる。基礎液体培地または基礎培地は基本的に単純な培地であり、最小限の追加成分で細菌を生育させる。通常、そのような基礎培養液は単にエネルギー源を供給し、正確な浸透圧を維持しさえすればよい。ペプトン、トリプトン、栄養液体培地(ペプトン、肉抽出物、任意的に酵母抽出物および塩化ナトリウム)、L−液体培地(トリプトン、酵母抽出物および塩化ナトリウム)、グラム陰性液体培地、トリプシン大豆培養液、酵母含有トリプシン大豆培養液、ならびに改良トリプシン大豆培養液は、先行技術で知られている好適な基本成分である。ペプトンは、消化中に酸または酵素によるタンパク質の部分加水分解によって得られる様々な水溶性のタンパク質誘導体である。トリプシン大豆培養液は通常、たとえばトリプトン(カゼインの膵液消化)、ソイトン(大豆ミールのパパイン消化)および塩化ナトリウムを含む。改良トリプシン大豆培養液は、さらにD形グルコース、胆汁塩およびリン酸二カリウムを含んでもよい。特に、基礎培養液は、トリプトン、栄養液体培地、L−液体培地、グラム陰性液体培地、ペプトン、トリプシン大豆培養液、酵母含有トリプシン大豆培養液、および改良トリプシン大豆培養液から構成される群から選択される。より具体的には、基礎培養液は、ペプトン、トリプシン大豆培養液、酵母含有トリプシン大豆培養液、および改良トリプシン大豆培養液から構成される群から選択される。
【0015】
特定の実施の形態では、増殖抑制剤はブリリアントグリーン、トリアリルメタン色素(CAS番号633−03−4)である。
【0016】
ブリリアントグリーンはグラム陽性細菌および大部分のグラム陰性細菌の成長を抑制することが知られている色素である。ブリリアントグリーンは、先行技術では様々な量、たとえばDifco(登録商標)mブリリアントグリーン液体培地中に25mg/L、ブリリアントグリーンテトラチオン酸塩胆汁液体培地中に70mg/L、MLCB寒天培地中に4.5〜6mg/L、およびMuller Kauffmannテトラチオン酸塩液体培地中に10mg/L使用される。何10年も使用されてきたが、本発明者らは驚くべきことに、ブリリアントグリーンのそのような濃度は、たとえばサルモネラ菌および赤痢菌を成長させるために最適ではないということを見出した。実際にそのような高濃度は、サルモネラ菌および赤痢菌を効率的かつ素早く成長させるためには有害であると信じられている。また、「病気の」または「ストレスを受けた」細菌を再生する妨げになる可能性もある。サルモネラ菌の特定の株、たとえばサルモネラ菌typhi種またはparatyphi種は特に、ブリリアントグリーン感受性株であることが知られている。また現在、株間で識別(differential)阻害作用を示さない適切な培地が存在しない(ChauおよびLeung、2008年)。
【0017】
本発明者らはここで、たとえばグラム陽性細菌に対する阻害作用を有す一方で、サルモネラ菌(typhi種およびparatyphi種を含む)の迅速な再生および成長を可能にするブリリアントグリーンの濃度の範囲を見出した。したがって、特定の実施の形態では、本培地は約0.05mg/L〜約0.25mg/Lまたは約0.1mg/L〜約0.25mg/L、より具体的には0.15mg/Lのブリリアントグリーンを含む。
【0018】
これらの「低濃度」は、既に先行技術で知られている培地中の濃度から考えると驚くべき濃度である。先行技術で知られている培養方法は長時間持続的であるため、競合する微生物の成長を阻害するために、48時間にも及ぶ培養を持続させるために、高濃度のブリリアントグリーンを利用する必要があると以前は信じられてきた。しかし、本発明の培地中では成長効率が良いため、単一の培地中で20時間以内、具体的には約4〜15時間以内、より具体的には約4〜8時間以内、さらにより具体的には約4〜6時間以内に、検出に適したレベルまで微生物を培養できる。別の実施の形態では、たとえばスワブ(swab:表面拭い)試験を使用する場合には、この時間はさらに約30分間〜約4時間、具体的には約1、1.5、2、2.5または3時間にまでさらに減少させられる可能性がある。結果として、ブリリアントグリーンを極めて低濃度で使用することが可能となる。ブリリアントグリーンはこの低濃度でも依然として、20時間まで特定の競合微生物の成長を阻害する機能を有する。しかし、ブリリアントグリーンはたとえばサルモネラ菌および/または赤痢菌などの目的とする微生物の成長に全く影響を及ぼさない程度に、十分に低濃度である。
【0019】
含有量は通常、mg/Lまたはg/Lで表されるが、水に単独でまたは連続的に添加されるために、たとえばタブレット、粉末、顆粒またはその他任意の所望の乾燥した形態にてあらかじめ混合された状態で、組成物が供給されてもよいことを理解する必要がある。また組成物は、所望の場合には多包装システムの別々の成分として提供されてもよい。この場合、含有量は成分の最終濃度に注意する必要がある。成分の最終濃度は、適量の水で希釈した時点で得られる。たとえば、0.5mgのブリリアントグリーンを含む乾燥粉末の小包が2Lの水に希釈されると、得られる濃度は0.25mg/Lである。
【0020】
別の実施の形態では、本培地はナリジクス酸および/または塩化リチウムを増殖抑制剤として含む。
【0021】
ナリジクス酸(CAS番号:389−08−2)はグラム陽性細菌とグラム陰性細菌の両方に対して有効である。低濃度では、ナリジクス酸は静菌性を有する。つまり、ナリジクス酸は細菌の成長と繁殖を阻害する。高濃度では、ナリジクス酸は殺菌性を有する。つまり、単に成長を阻害するのではなく、ナリジクス酸は細菌を死滅させる。特定の実施の形態では、本培地はナリジクス酸を約1〜3mg/L、より具体的には約2mg/L含む。
【0022】
塩化リチウム(CAS番号7447−41−8)は、グラム陽性細菌の成長に影響を与えることなくグラム陰性細菌の成長を阻害する。特定の実施の形態では、本培地は約1〜3g/L、より具体的には約2g/Lの塩化リチウムを含む。
【0023】
リステリア菌種の成長用の培地中に、ナリジクス酸および/または塩化リチウムを増殖抑制剤として使用することは有益である。
【0024】
特定の実施の形態では、培地は任意的に成長促進物質を含んでいてもよい。
【0025】
サルモネラ菌種に対しては、基礎培養液がペプトンを含む場合、テトラチオン酸ナトリウムまたはその塩を含むことが有益であることが見出されている。驚くべきことに本発明者らは、培地中のテトラチオン酸ナトリウムの濃度が約20g/Lよりも高ければサルモネラ菌種の成長を著しく阻害することを見出した。これが驚くべきことであるのは、20g/Lよりも高い濃度は、ポジティブセレクション用やサルモネラ菌種の成長用に、従来技術で日常的に使用されているからである。したがって、テトラチオン酸ナトリウムは約1〜約20g/L、より具体的には約4〜約15g/L、約6〜約15g/L、さらにより具体的には約7〜15g/L、約8〜12g/Lまたは約8g/Lの濃度で含有されることが好ましい。
【0026】
代替の実施形態では、本発明の精神から逸脱しない範囲で、テトラチオン酸ナトリウムに代えて適量のチオ硫酸ナトリウムおよびヨウ素が使用されてもよい。これは、ヨウ素が生体内でチオ硫酸ナトリウムと反応することにより、テトラチオン酸ナトリウム(およびヨウ化ナトリウム)が生成される可能性があるからである。別の実施の形態では、テトラチオン酸塩アニオン(S4O62−)を放出するテトラチオン酸カリウム塩、バリウムのジチオン酸塩の無水物、それらの塩または化合物もしくは化合物の混合物が利用されてもよい。
【0027】
別の実施の形態では、本培地は、成長促進物質を含む。この場合、成長促進物質はクエン酸第二鉄アンモニウムである。
【0028】
特定の実施の形態では、クエン酸第二鉄アンモニウム(CAS番号:1185−57−5)が約200〜1000mg/L、より具体的には約200〜約500mg/L、さらにより具体的には200mg/L〜約300mg/L、およびさらにより具体的には約250mg/Lの濃度で使用される。
【0029】
さらに別の実施の形態では、本培地は成長促進物質であるクエン酸ナトリウムをさらに含む。
【0030】
特定の実施の形態では、トリクエン酸ナトリウム(CAS番号:68−04−2)が約10〜約20g/L、約12〜18g/L、より具体的には約15g/Lの濃度で使用される。
【0031】
特定の実施の形態では、本培地はサルモネラ菌種の成長用の培地である。別の実施の形態では、本培地は赤痢菌種の成長用の培地である。さらに別の実施の形態では、本培地はリステリア菌種の成長用の培地である。
【0032】
本発明の第2の態様により提供されるのは、微生物の細胞からコアオリゴ糖モノマーを放出するための以下のステップを含む方法である。
(i)洗浄剤を前記微生物を含む少なくとも1つの培養サンプルに添加することにより、洗浄剤−培養液を供給するステップと、
(ii)洗浄剤−培養液をコアオリゴ糖を放出するのに十分な温度にまで加熱するステップ。
【0033】
細菌のリポ多糖類(LPS)は、すべてのグラム陰性細菌およびある種のグラム陽性細菌の外膜の必須成分である。LPSは、そのような細菌に感染した患者の炎症性反応に関与する主要因子であると信じられている。グラム陰性細菌の例としては、病原性大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌およびカンピロバクター菌が含まれる。リステリア菌はグラム陽性細菌である。
【0034】
特定されたLPSの大部分は、同じ主要構造を有する。つまり、LPSの構造は3つの異なる領域である脂質A領域、コアオリゴ糖、およびo−多糖鎖から構成されることが解明されている(図12a)。この構造は、特にLPSの脂質A領域および内側のコア部において保存されている。この構造が保存されているため、脂質A領域に結合する抗体のような結合分子は、特定の種に特異的ではない可能性がある。これにより、あらゆる分子検出ステップにおいて偽陽性が生じてしまう。さらに、たとえばコア領域に対して複数の結合分子を使用することは不十分である。それは、そのような結合分子は同じエピトープを求めて競合する可能性があるため、またはエピトープが近接していることによりそれぞれの結合反応が妨げられる可能性があるからである。したがって、先行技術の検出方法は、それらのエピトープが容易に接近できるため、細胞表面またはたとえばサルモネラ菌などの細菌に特異的な結合分子に依存していた。
【0035】
LPSは通常、含水フェノール抽出と続く精製によって、細菌から単離される。単離されたLPSは、続いてたとえばSDS−PAGE、質量分析およびNMRによって特定することができる(Raetz、1996年)。本発明者らは、洗浄剤と熱の適用を利用する迅速な方法の使用を通じて、コアオリゴ糖領域が開放されるか、接近可能になるか、たとえば抗体結合技術による検出に使用できるようになる可能性があることを見出した。そのような単純な手順を使用することは、たとえば細胞表面の抗原または細菌の検出には適していないであろう。それは、洗浄剤が脂質と相互作用することが知られており、結合分子が相互作用する可能性がある脂質Aエピトープを破壊または崩壊させるからである。洗浄剤を単独でも使用できるが、熱を使用するとさらに有利である。それは、熱がLPSを検出可能なモノマーに分解するとともに、病原性細菌を死滅させるという追加的な利点も有するからである。
【0036】
洗浄剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはTWEEN 20、40、60または80であることが好ましい。
【0037】
驚くべきことに、本発明者らはSDSを使用すると抗体などの結合分子とエピトープとの結合を、後述する直接アッセイにおいて10倍も強くすることができることを見い出した。同様に、他の洗浄剤は直接アッセイ(後述)において抗体結合を干渉したり阻害したりするが、驚くべきことに本発明者らは、TWEEN 20、40、60または80は、たとえば競合アッセイにおいて、そのような影響をほとんど及ぼさないか全く及ぼさないことを見い出した。これはたとえばQualtiereら(1977年)のような技術による確立された教示とは正反対である。
【0038】
洗浄剤は、たとえば水などの溶媒に溶かして培養サンプルに液体として加えられてもよいし、SDSの場合は固体として加えられてもよい。本方法で使用される洗浄剤の具体的な濃度は、約0.1%〜約2%、特に約0.5%〜約1%である(w/vまたはv/v)。
【0039】
洗浄剤を水に溶解または希釈させ、上述の濃度になるように液体として添加されることが好ましい。洗浄剤溶液は、バッファなどのさらなる成分を含まないことが好ましい。したがって、好ましい実施の形態では、本洗浄剤溶液は、水に溶解した洗浄剤であるドデシル硫酸ナトリウム、またはTWEEN 20、40、60もしくは80から実質的に構成される。
【0040】
本方法の次のステップでは、洗浄剤−培養液はコアオリゴ糖を放出するのに十分な温度にまで加熱される。サンプル中に存在する可能性のある細菌、特にサルモネラ菌、赤痢菌またはリステリア菌を死滅させるのに十分な温度にまで溶液を加熱することが好ましい。具体的な温度には、約60℃〜約100℃、特には約65、70、75、80、85、90、95〜約100℃が含まれる。ステップ(i)および(ii)が連続的または同時に行われれてもよいことは、当業者には明らかであろう。培養サンプルおよび/または洗浄剤が混合前に加熱されてもよいことも当業者には明らかであろう。洗浄剤−培養液は、約30秒間〜約20分間、具体的には約2分間〜約15分間、より具体的には約2、3、4、5、6、7、8、9または約10分間加熱されてもよい。
【0041】
本発明の第3の実施の形態では、試験サンプル中で目的とする微生物の存在または不存在を検出するための以下のステップを含むアッセイ方法が提供される。
(i)試験サンプルを培地中で培養することにより、目的とする微生物の増殖を可能とするステップと、
(ii)試験サンプル中に存在する任意の微生物から1つ以上のコアオリゴ糖を放出するのに十分な程度に、試験サンプルを処理するステップと、
(iii)目的とする微生物のコアオリゴ糖に対する結合特異性を有する少なくとも1つの結合分子に、試験サンプルを接触させるステップと、
(iv)少なくとも1つの結合分子と目的とする微生物のコアオリゴ糖との任意の結合を検出するステップ。
【0042】
本アッセイ方法は、直接的であってもよいし、間接的であってもよい。「サンドイッチアッセイ」とも呼ばれる直接結合アッセイ、つまり非競合アッセイ(直接的または間接的)では、抗体が目的とする微生物の任意のコアオリゴ糖と反応するように、コアオリゴ糖は表面および結合分子に結合することが好ましい。結合分子は標識結合分子であることが好ましい。次に、表面の標識結合分子の量が測定される。
【0043】
直接アッセイ方法の結果は通常、サンプル中のコアオリゴ糖の濃度に正比例する。コアオリゴ糖がサンプル中に存在しない場合、標識結合分子が結合しないのは明らかである。
【0044】
競合アッセイでは、試験サンプル中のコアオリゴ糖は、結合分子に結合しようとして標識コアオリゴ糖と競合する。次に、コアオリゴ糖に結合した標識結合分子の量が測定される。この方法では、反応はサンプル中のコアオリゴ糖の濃度に反比例する。これは、反応の程度が大きいほど、「未知の」サンプル、つまり試験サンプル中で標識コアオリゴ糖と競合するために使用可能なコアオリゴ糖が少なくなるからである。
【0045】
アッセイが直接的であるか間接的であるかにかかわらず、検出のためにコアオリゴ糖または標識コアオリゴ糖がそれぞれ表面に結合することが好ましい。
【0046】
コアオリゴ糖が結合する表面は、先行技術で知られている材料、たとえば樹脂、ガラス、セラミックスなどの有機ポリマーで形成されていてもよい。特定の有機ポリマーには、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロースおよびニトロセルロースが含まれる。好ましいポリマーはポリスチレンであり、より具体的にはガンマ線を照射したポリスチレンである。その表面自体は、シート、マイクロプレートまたはマイクロタイタープレート、トレイ、メンブレン、ウェル、ペレット、竿、棒、チューブ、ビーズなどの形態またはその一部であってもよい。
【0047】
特定の実施の形態では、LPSまたはコアオリゴ糖を含むモノマーは、修飾されることなく表面に固定化される。たとえば、分子の疎水性の脂質A部分は、非共有の疎水性相互作用を介して、ガンマ線を照射したポリスチレン表面のような表面に結合してもよい。そのような結合は、コアオリゴ糖領域を抗体などの結合分子と相互作用をするために接近可能なままに留める。
【0048】
代替の実施形態では、LPSおよび/またはコアオリゴ糖は、抗体、複合体、または他の結合などの結合仲介分子を用いることによって、表面に固定化される。好適な代替物は、国際特許出願第WO03/36419号に開示されている。
【0049】
本方法の第1のステップは、試験サンプルを培地中で培養することにより、目的とする微生物の増殖を可能とするステップを含む。
【0050】
ある実施の形態では、本方法は食物または食品中に存在する微生物タンパク質またはフラグメントを検出するために使用される。別の実施の形態では、サンプルは環境サンプル、農産物サンプル、医療品、または製造サンプルである。試験サンプルは、加工食品、乾燥食品、冷凍食品、または冷蔵食品を含む、肉、ミンチを含む肉製品、卵、チーズ、ミルク、野菜、チョコレート、ピーナッツバターなどの食品であってもよい。または、試験サンプルは、生検サンプル、糞便、唾液、水和液、栄養液、血液、血液製剤、組織抽出物、ワクチン、麻酔、薬理活性のある薬剤、造影剤または尿サンプルなどの臨床サンプルであってもよい。試験サンプルはまた、肌のスワブ、盲腸のスワブ、糞便のスワブ、排せつ物のスワブ、もしくは直腸のスワブ、または床、ドアおよび壁などの表面のスワブ、または動物の死体スワブを含む、食品から得られたスワブなどのスワブ(swabs:ぬぐい液)を含んでいてもよい。試験サンプルはまた、ファンデーション化粧品、口紅、ローション、クリーム、シャンプーなどの化粧品サンプルを含んでいてもよい。
【0051】
試験サンプルは、本発明の第1の態様に従った培地中で培養されることが好ましい。
【0052】
特定の実施の形態では、試験サンプルは培地中で約30℃〜約44℃、具体的には約37℃〜42℃、より具体的には約37℃にて培養される。試験サンプルは培地中で、約4〜15時間、より具体的には約4〜8時間、さらにより具体的には約4〜6時間培養されてもよい。別の実施の形態では、試験サンプルは培地中で、約30分間〜約4時間、具体的には約1、1.5、2、2.5または3時間培養されてもよい。
【0053】
本方法の第2のステップには、試験サンプル中に存在する任意の微生物から1つ以上のコアオリゴ糖を放出するのに十分な程度に、試験サンプルを処理するステップを含む。
【0054】
試験サンプルは、細菌のLPSおよび/またはコアオリゴ糖を微生物の細胞膜から放出させるのに適した任意の方法で処理されてもよい。試験サンプルは、本発明の第2の態様に従って処理されるのが好ましい。
【0055】
他の好適ではあるがおそらく効率が低い抽出方法が従来技術には存在する。超音波処理、加圧型細胞破壊装置の使用、酵素の使用、「ビーズビート法(bead beating)」などを含むそれらの方法もまた使用することができる。しかし、サルモネラ菌などの病原性細菌を扱う場合、高温の洗浄剤(煮沸したものまたは上述のもの)を使用することが特に有用である。なぜなら、高温により確実にすべての細菌が死滅するからである。より具体的には、アッセイが直接結合アッセイの場合、SDSが好適に利用される。一方、アッセイが競合型の場合、プレートに塗布する抗原を調整するためにSDSが使用される。ただし、残りの手順の間は、TWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 60またはTWEEN 80のいずれか、特にTWEEN 20が使用される。上述の第1の態様との関係で、適切な加熱/処理時間の長さが規定される。目的とする微生物が試験サンプル中に存在しなくてもよいことは明らかであろう。その場合、目的とする微生物のLPSおよびコアオリゴ糖も存在しないであろう。
【0056】
本方法の第3のステップでは、目的とする微生物のコアオリゴ糖に対する結合特異性を有する少なくとも1つの結合分子に、試験サンプルが接触させられる。
【0057】
特定の実施の形態では、処理した試験サンプル中のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーは、ステップ(iii)の前に、表面に固定化される。コアオリゴ糖、LPSまたはモノマーは、目的とする微生物のコアオリゴ糖に結合特異性を有する、少なくとも1つの結合分子に曝されている。そのような実施の形態では、サンプル中のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーは、処理された試験サンプルを表面に接触させ、接触させた状態で約10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、もしくは約60分間インキュベートおよび/または維持することによって、固定化されてもよい。
【0058】
別の実施の形態、たとえば競合アッセイでは、試験サンプルは表面に塗布されるか接触させられる。表面には、既に固定化された既知量または標準量のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーが存在する。既知量または標準量両方のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーが、少なくとも1つの結合分子と結合しようとして、試験サンプルから得られたコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーと競合する。
【0059】
コアオリゴ糖、LPSまたはモノマーは、たとえば非共有の疎水性相互作用によって前記表面に直接固定化されてもよいし、上述のように間接的に固定化されてもよい。
【0060】
試験サンプルを少なくとも1つの結合分子に十分な時間接触させることにより、コアオリゴ糖、LPSまたはモノマーが少なくとも1つの結合分子に結合できるようにして、たとえばコアオリゴ糖/結合分子複合体のような複合体を形成するべきである。適切な時間には、約1分間〜約4時間、特に約30分間〜約2時間、特に約45分間、1時間および1.5時間が含まれる。
【0061】
ある実施の形態では、本方法の任意のステップにおいて、複合体は、少なくとも1つの結合分子に対し結合特異性を有する第2の結合分子に十分な時間接触させられる。これにより、第2の結合分子は二次的な複合体、たとえばコアオリゴ糖/結合分子/第2の結合分子複合体を形成することができる。
【0062】
結合分子は、抗体、より具体的には親和性により精製された抗体、さらにより具体的にはモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0063】
本発明のアッセイに使用される抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体であってもよい。そのような抗体は一本鎖で構成されてもよいが、少なくともL鎖またはH鎖で構成されることが好ましい。しかし、抗体が結合特異性を有するコアオリゴ糖または汚染微生物などの標的に結合するために、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)が必要であることは理解されるであろう。
【0064】
抗体を作製する方法は、先行技術で知られている。たとえば、ポリクローナル抗体が望ましい場合、マウス、ウサギ、ヤギまたはウマなどの選択された哺乳類が、細菌のエンドトキシンなどの選択された抗原によって免疫されてもよい。次に、免疫された動物から得られた血清が集められ、たとえば免疫親和性クロマトグラフィーによって、抗体を得るように処理される。
【0065】
モノクローナル抗体は、先行技術で知られており通常行われている方法によって製造されてもよい。ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を製造するための通常の方法は、よく知られている(たとえば、Kohler,G.およびMilstein,C,Nature、第256巻:第495〜497頁(1975年);Kozborら、Immunology Today、第4巻:第72頁(1983年);Coleら、Monoclonal Antibody and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.第77〜96頁(1985年)を参照)。
【0066】
後述のとおり抗体は、CDRなどのエピトープ−結合領域で構成されている必要がある。抗体は、IgE、IgM、IgD、IgAおよび特にIgGを含む、任意の適切なクラスであればよい。また、それらの抗体の様々なサブクラスも想定される。ここで用いられるように、「抗体結合フラグメント」という用語は、抗体のフラグメント、つまり抗体から得られたポリペプチドをいう。このポリペプチドは、抗体の結合特異性を有する。そのようなフラグメントには、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvなどの抗体フラグメントが含まれるが、これらには限られない。これらのフラグメントはすべて、エピトープに結合することができる。
【0067】
また、「抗体」という用語は、入手可能な様々な任意の自然抗体、人工抗体、および抗体由来のタンパク質、ならびにそれらの派生物に及ぶ。派生物としては、たとえばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体,単一ドメイン抗体、抗体全体、F(ab’)2およびF(ab)フラグメントなどの抗体フラグメント、Fvフラグメント(非共有のヘテロ二量体),一本鎖Fv分子(scFv)などの一本鎖抗体、小体(minibodies)、オリゴ体(oligobodies)、二量体または三量体の抗体フラグメント、あるいはコンストラクトなどが含まれるが、これらには限られない。「抗体」という用語は、何ら特定の由来を意味するものではなく、ファージ提示法など、従来の方法ではない方法によって得られた抗体も含む。本発明の抗体は、任意のアイソタイプ(たとえばIgA、IgG、IgM、つまりα、γまたはμのH鎖)とすることができ、K(カッパ)またはλ(ラムダ)のL鎖を有してもよい。
【0068】
したがって、本発明は、本発明で使用されるコアオリゴ糖に対する結合特異性を有する抗体および抗体から得られた結合フラグメントの使用にまで及ぶ。
【0069】
「特異的に結合する」または「結合特異性」という用語は、抗体またはそのフラグメントが、標的ではないエピトープに対するよりも高い親和性で、標的となる微生物病原体に結合する能力をいう。たとえば標的エピトープに対する抗体の結合は、標的ではないエピトープに対する結合親和性よりも、少なくとも10倍、50倍、100倍、250倍、500倍、または1000倍を超える結合親和性をもたらしてもよい。ある実施の形態では、結合親和性は親和性ELISAアッセイによって決定される。代替の実施形態では、親和性はBIAcoreアッセイによって決定される。代わりに、結合親和性は速度論的方法によって決定されてもよい。
【0070】
ある実施の形態では、抗体などの結合分子が表面上に固定されてもよい。そして任意的な洗浄ステップの後、目的とするコアオリゴ糖または汚染微生物を含みうる試験サンプルを、表面に結合した抗体に、結合が起きて表面に結合した第1の結合分子ーコア複合体が形成されるように、十分な時間接触させることができる。本アッセイは次に、第1の結合分子ーコア複合体が結合した表面を、抗体などの第2の結合分子に接触させるステップを含んでもよい。第2の結合分子は、たとえばアクリジニウムエステルなどの発光手段と共有結合していてもよい。そのような場合、第2の結合分子は、第1の結合分子、コアオリゴ糖または汚染微生物に存在するエピトープに対する結合特異性を有する。それにより、生成されたシグナルの量は、第1の結合分子または第2の結合分子が結合したコアオリゴ糖または汚染微生物の量に対応する。
【0071】
典型的には、抗体は精製されることにより凝集が抑制される。
【0072】
ある実施の形態では、表面は、例えば従来型設計のマイクロタイタープレートである。しかし、たとえば暗い側壁と(底面などに)白色または透明な部分とを有する改良表面を使用すれば、利点を得ることができる。これにより、測定時において、生成された任意のシグナルを増幅し、背景光を低減することができる。白色の部分が光を反射させることにより、生成されたシグナルを増幅することができる。したがって、特定の実施の形態では、表面は複数のウェルを含むマルチウェルプレートである。この場合、各ウェルの底面は透明または実質的に透明である。一方、ウェルの側壁は、光の透過を防止するために不透明もしくは暗くされるか、またはウェルの底面部に対してコントラストを与えることにより光が底面部で通過できるようにするために着色されている。
【0073】
さらにより具体的には、本抗体は種特異的なモノクローナル抗体である。
【0074】
「種特異的な」という用語を使うことによって、交差反応がほんんどないか全くない程度に、例えばサルモネラ菌、赤痢菌およびリステリア菌の間でそのような抗体が異なることを意味することを目的としている。
【0075】
特定の実施の形態では、結合分子は以下のLPSコアオリゴ糖のエピトープと反応して結合する。
【0076】
【化1】
このエピトープは種特異的であり、サルモネラ菌を他の細菌から識別する。他の細菌としては、赤痢菌、リステリア菌、病原性大腸菌などがあるが、これらには限定されない。特定の実施の形態では、本アッセイ方法は、サルモネラ菌を定量的に検出するための方法である。本アッセイ方法は、サルモネラ菌の存在または不存在を検出するために利用されてもよい。特定の実施の形態では、結合分子は、たとえば化学発光性または蛍光性の化合物に対する結合により標識された標識結合分子である。
【0077】
しかし、本発明の方法は、様々な標的汚染微生物の同定および定量に使用できることは明らかであろう。本発明のアッセイ方法は、存在性に関するサンプルの分析または汚染微生物量の分析を含む。本発明の方法を用いて試験されるサンプルのすべてが汚染微生物を含むわけではないということは理解されるであろう。ある実施の形態では、汚染微生物は病原性微生物から得られたタンパク質またはそのフラグメントである。あるさらなる実施の形態では、汚染微生物は、細胞壁のフラグメント、ペプチドグリカン、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質タンパク質、小ペプチド、糖配列および脂質配列から構成される群のうちの少なくとも1つであってもよいが、これらに限られるわけではない。本発明の方法は、細菌、ウイルスおよび菌類から得られた構造タンパク質および/または毒素を含む微生物タンパク質を検出するのに特に適している。
【0078】
本方法の第4のステップは、目的とする微生物のコアオリゴ糖または汚染微生物に対する、少なくとも1つの結合分子の任意の結合を検出するステップを含む。
【0079】
本検出方法は、蛍光測定、比色定量、フローサイトメトリー、化学発光などの先行技術で知られている任意の適切な方法によるものであってもよい。好適な実施の形態では、結合の検出は、たとえば化学発光性の化合物が発する化学発光性の光の発光シグナルの測定/検出による。適切な化学発光性の化合物には、アクリジニウムエステル、アクリジニウムスルホンアミド、フェナントリジニウム(phenanthridiniums)、1,2−ジオキシエタン、ルミノール、または化学発光性の基質を触媒する酵素などが含まれる。
【0080】
ある実施の形態では、結合分子は発光部と直接結合してもよい。ある実施の形態では、結合分子はアクリジニウム化合物またはその派生物と結合する。派生物には、アクリジニウムエステル分子または発光ラベルとして機能するアクリジニウムスルホンアミドがある。抗体または結合フラグメントがアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドと結合する実施の形態では、本アッセイ方法はAMPPDを試験サンプルに添加するステップをさらに含んでもよい。
【0081】
AMPPDは、以下の同義語によって知られているかもしれない:3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3”−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキシエタン;3−(4−メトキシスピロ(1,2−ジオキシエタン−3,2’−トリシクロ(3.3.1.1(3,7))デカン)−4−yl)フェニルリン酸塩;4−メトキシ−4−(3−リン酸塩フェニル)スピロ(1,2−ジオキシエタン)−3,2’−アダマンタン。
【0082】
ある別の実施の形態では、抗体は間接的に発光部と関連してもよい。たとえば、アクリジニウムエステル分子は、第1の抗体と結合可能な第2の抗体と結合してもよい。ある実施の形態では、1つ以上の発光性または蛍光性の部分がアビジン/ストレプトアビジンに結合してもよい。同様にアビジン/ストレプトアビジンは、抗体に化学的に結合したビオチンに結合してもよい。ある別の実施の形態では、レクチン(プロテインA/G/L)は発光性または蛍光性の分子と結合しうる。また、発光性または蛍光性の分子は、抗体または他のタンパク質複合体に取り付けられていてもよい。
【0083】
検出可能なシグナルを生成する刺激は、光、たとえば紫外線光などの特定の波長の光であってもよいし、電気的刺激または放射性刺激、化学反応または酵素−基質反応など、他の何らかの刺激であってもよい。
【0084】
本検出方法は、10000cfuもの病原性大腸菌など他の微生物の存在下で、またはたとえばスワブもしくは開始サンプルあたり、サルモネラ菌、赤痢菌またはリステリア菌の1コロニー形成単位(cfu)を好ましくは検出/識別できるべきである。特定の検出限界は、サンプルサイズ(mg,gなど)または体積(ml,Lなど)の単位あたり約1000cfu、具体的には約500cfu、より具体的には約250cfu、200cfu、150cfu、100cfu、50cfu、10cfu、および約1cfuである。液体培養では、特定の検出限界は約500cfu/mlである。
【0085】
別の実施の形態では、抗体はそのような発光部と間接的に関係があってもよい。例えば、アクリジニウムエステル分子は、第1の結合分子と結合することができる第2の結合分子と共役してもよい。
【0086】
本アッセイ方法は、定性的であってもよいし、定量的であってもよい。また、標準コントロールを流すことにより、生成された平均シグナルを既知量の例えばコアオリゴ糖と関連づけてもよい。
【0087】
ある実施の形態では、本方法は複数のコアオリゴ糖または汚染微生物のサンプルにおける決定用に使用されてもよい。これは、異なるエピトープまたは汚染微生物に対してそれぞれ結合特異性を有する抗体のような、複数の結合分子を提供することにより実現される。ある実施の形態では、二重特異性の抗体が使用されてもよい。
【0088】
本方法の各段階の間または各段階において、任意の洗浄ステップ、乾燥ステップ、および/または培養ステップが含められてもよいことは明らかであろう。また、本方法は「ブロッキングステップ」を本方法の1つ以上のステップ間に任意的に含んでもよい。この場合、ウシ血清アルブミン(BSA)またはカゼインなどの非反応性タンパク質の濃縮液が、たとえばマイクロタイタープレートのすべてのウェルに対して添加される。特定のブロッキング薬剤もまた、ミルク粉末などの溶液を含む。そのようなタンパク質が、他のタンパク質がプレートに非特異的に吸着することを阻止する。また、そのようなタンパク質は、アッセイの感度を妨げうる「バックグラントの」ノイズを低減させるために有益であってもよい。
【0089】
本発明の第6の実施の形態によると、サルモネラ菌、赤痢菌およびリステリア菌から構成される群から選択される微生物を特異的に検出するための、コアオリゴ糖に対して結合特異性を有する結合分子の使用が提供される。
【0090】
本発明の第5の実施の形態によると、本発明の第1、2、3、4および/または5の実施に従って本発明を実行するためのキットが提供される。そのようなキットは、(即使用可能なまたは希釈用に濃縮された)液体状態もしくは(たとえば粉末、顆粒、タブレットなどの)乾燥状態の培地、洗浄剤もしくは洗浄剤溶液、洗浄バッファ、希釈剤、調整済プレート、調整済チューブまたはビーズ、1つ以上の(1次、2次)抗体、検出試薬、手袋、ピペット用チップ、取扱説明書などを含んでいてもよい。調整済プレートまたはチューブのウェルは、既知または標準量のコアオリゴ糖、LPSもしくはモノマー、または抗体などの結合分子によって被覆済であってもよい。そのような調整済の表面は、凍結乾燥されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1(a)および図1(b)は、直接結合アッセイの概略図である。黒塗りの菱形は、サルモネラ菌などの細菌のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーを表す。図1(a)は直接免疫アッセイを示し、図1(b)は間接免疫アッセイを示す。
【図2】図2(a)および図2(b)は、結合タンパク競合アッセイの概略図である。黒塗りの菱形は、サルモネラ菌などの細菌のコアオリゴ糖、LPSまたはモノマーを表す。図2(a)は直接競合免疫アッセイを示し、図2(b)は間接競合免疫アッセイを示す。
【図3】図3は、テトラチオン酸塩はサルモネラ菌に対して正の成長効果を及ぼすが、他の細菌の成長は抑制されることを示すグラフである。
【図4】図4は、ブリリアントグリーンがサルモネラ菌、赤痢菌、病原性大腸菌およびブドウ球菌の成長に及ぼす影響を示すグラフである。本グラフは、特に0.15mg/Lのブリリアントグリーン濃度で競合する細菌を阻害することによりサルモネラ菌を成長させるためのブリリアントグリーンの最適な濃度範囲を実証する。
【図5】図5は、クエン酸第二鉄アンモニウムがサルモネラ菌、赤痢菌、病原性大腸菌およびブドウ球菌の成長に及ぼす影響を示すグラフである。本グラフは、特に0.25g/Lの濃度で赤痢菌を成長させるためのクエン酸第二鉄アンモニウムの最適な濃度範囲を実証する。0.25g/Lを上回る濃度では、サルモネラ菌の成長は影響を受けない。
【図6】図6は、クエン酸ナトリウムがサルモネラ菌、赤痢菌、病原性大腸菌およびブドウ球菌の成長に及ぼす影響を示すグラフである。サルモネラ菌および赤痢菌の成長は助長されるが、競合する細菌の成長は阻害される。
【図7】図7は、グラム陰性液体培地中での細菌の成長を示すグラフである。
【図8】図8は、デオキシコール酸塩ークエン酸塩ーラクトースースクロース液体培地中での細菌の成長を示すグラフである。
【図9】図9は、ペプトン液体培地中での細菌の成長を示すグラフである。
【図10】図10は、改良トリプシン大豆培養液中での細菌の成長を示すグラフである。サルモネラ菌および赤痢菌の両方の成長が助長され、約30分間という倍増時間を示す。
【図11】図11は、本発明の液体培地中で競合する細菌を阻害した場合の、リステリア菌種の成長の速さを説明するためのグラフである。
【図12(a)】図12(a)は、目的とするある細菌のLPSの一般的な構造を示す(O−抗原、コア多糖(オリゴ糖)、脂質A)。
【図12(b)】図12(b)は、種特異的な抗体結合エピトープを含むサルモネラ菌のLPSモノマーの詳細な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
本発明のアッセイは、あるサンプル中で、細菌のLPSのコアオリゴ糖の存在または不存在を特定するために利用されることが好ましい。本発明のアッセイは、サルモネラ菌、赤痢菌、もしくはリステリア菌などの細菌を含むか、または細菌に汚染されたサンプルを特定することができる。これらの細菌は、種特異的なエピトープをLPSのコアオリゴ糖領域中に有する。本発明の方法を説明することを目的とする以下の説明と例を参照すれば、本発明をより理解できるかもしれない。
【0093】
図1(a)は、標識一次抗体を利用する直接結合アッセイのステップを示す。図1(b)は、標識一次抗体と標識された二次抗体とを利用する直接結合アッセイを示す。動物の死体や食料品中においてサルモネラ菌種を検出するための直接結合(直接的または間接的な抗体結合)による化学発光に基づく免疫吸着アッセイは、後述のように実行されてもよい。
【0094】
本発明の第1の態様に従い、25gの食品サンプルが225mlの培地に添加された。これに代えて、死骸において表面スワブが10×10cmの領域から採取され、本発明の第1の態様に従って、2〜5mlの培地中で培養されてもよい。具体的には、本培地は1%のペプトン、8g/Lのテトラチオン酸ナトリウム、および0.15mg/Lのブリリアントグリーンを含有していた。サンプルは37℃で5時間培養された。
【0095】
5時間の培養後、サンプルのうち2mlの一定分量が取り出され、最終濃度が0.5%(w/v)となるようにSDSが添加された。そのサンプルは100℃で5分間加熱された後、冷却された。100μlの各試験サンプルが、硬質で白色の96ウェル高結合性マイクロタイタープレート(グライナーバイオワン社)のウェルに直接添加され、37℃で30分間インキュベートされた。インキュベート中、LPSの脂質A部分が非共有の疎水性相互作用によってプレートの表面に結合する(図1a(1)、図1b(1))。インキュベートに続き、プレートの溶液を捨て、0.01Mのリン酸ナトリウムバッファ(pH7.4)、0.147MのNaClおよび0.05(v/v)のTween 20を含む洗浄バッファを用いてウェルが3回洗浄された。
【0096】
0.147MのNaClを含む0.01Mのリン酸バッファ(pH7.4)中での濃度が500ng/mlの抗サルモネラ菌抗体複合体100μlが各ウェルに添加された。ウェルあたりの抗体の最終濃度は50ngであった。プレートに結合したサンプル(サルモネラ菌LPS/コアオリゴ糖)および抗体が被覆されたウェル中で30分間、37℃にてインキュベートされた。インキュベートに続き、プレートが洗浄バッファ中で3回洗浄され、検出の前に完全に乾燥させられた(図1a(2)、図1b(2))。
【0097】
抗サルモネラ菌抗体がアクリジニウムエステルで直接標識された場合、プレートが照度計の中に配置される。30μlの誘因溶液Aと60μlの誘因溶液Bがマイクロタイタープレートの各ウェルに添加されることにより、結合したアクリジニウムエステルから光出力が開始される(図1a(3))。照度計の設定は以下のとおりである。
【0098】
遅延注入P(溶液A用) − 1.6秒
測定時間間隔1 − 0.0秒
遅延注入M(溶液B用) − 0.0秒
測定時間間隔2 − 1.0秒
【0099】
誘因溶液Aは、63μlの70%(w/w)硝酸と165μlの30%(v/v)H2O2とを全容積が10mlの蒸留水中に含んでいた。誘因溶液Bは、0.1gのNaOHと75mgのCTACとを10mlの蒸留水中に含んでいた。
【0100】
ヤギの抗マウスIgG2bアクリジニウム複合体の添加(抗サルモネラ菌モノクローナル抗体が結合しない場合)
抗サルモネラ菌抗体が標識されていない場合、第2の結合分子であるヤギの抗マウスIgG2b複合体が使用される。カラム処理後のIgG2bが、3%(w/v)の無脂肪ミルク粉末および0.05%(v/v)のTween 20を含む希釈剤中で1:100に希釈された。希釈後の溶液100μlがプレートの各ウェルに添加された。(図1b(3))。37℃における60分間のインキュベートに続き、プレートが洗浄バッファで4回洗浄され、乾燥され、上述のように測定された(図1b(4))。
【0101】
食料品中のサルモネラ菌種を検出するための競合(直接的または間接的)化学発光結合性免疫吸着アッセイを後述のように行ってもよい。サルモネラ菌エンテリティディス種のLPSを被覆したマイクロタイタープレートは、以下のように調整された。サルモネラ菌エンテリティディス種が標準液体培地(2%(w/v)の緩衝化ペプトン水(オキソイド社))中で本発明の第1の態様に従わずに18時間かけて培養された。コロニー形成単位数が定量され、蓋がされているが密封はされておらず、最終濃度がそれぞれ10mMおよび0.5%(w/v)となるNaEDTAおよびSDSを含むポリプロピレン試験管中に、約108cfu/ml分が入れられた。この培養液が100℃で2分間煮沸されることにより、細菌を死滅させ(そしてあらゆる関連有害物質を中和させ)、さらにまた細菌のLPSコアオリゴ糖つまりモノマーエピトープを露出させた(たとえば図12bを参照)。煮沸されたストックは、2%の緩衝化ペプトン水(BPW社)を含む希釈剤を添加することによって、106cfu/mlの濃度にまでさらに希釈された。
【0102】
希釈され煮沸されたストックのうち100μlが硬質で白色の96ウェル高結合性マイクロタイタープレート(グライナーバイオワン社)の各ウェルに添加され、37℃で60分間インキュベートされた。インキュベート中、LPSの脂質A部分は、非共有の疎水性相互作用によりプレートの表面に結合する。インキュベートに続き、プレートの溶液が捨てられ、ウェルが0.01Mのリン酸ナトリウムバッファ(pH7.4)、0.147MのNaClおよび0.05(v/v)のTween 20を含む洗浄バッファによって3回洗浄された。洗浄された被覆プレートは、すぐに使用されるか保存用に凍結乾燥された(図2a(1)、図2b(1))。
【0103】
10cfuのサルモネラ菌に曝されたひき肉の試験サンプル25gが、本発明の第1の態様に従って200mlの培地中に添加された。具体的には、本培地は1%のペプトン、8g/Lのテトラチオン酸ナトリウムおよび15mg/Lのブリリアントグリーンを含有していた。本サンプルは37℃で5時間インキュベートされた。5時間のインキュベート後、本サンプルの一定分量である5mlが取り出され、最終濃度が2%(v/v)となるようにTWEEN 20が添加された。このサンプルは100℃で2分間加熱された後、冷却された。煮沸後のサンプルの一定分量である80μlが被覆マイクロタイタープレートの各ウェルに添加された。
【0104】
0.147MのNaClを含む0.01Mのリン酸バッファ(pH7.4)中での濃度が125ng/mlである20μlの抗サルモネラ菌抗体複合体が各ウェルに添加された(図2a(2),図2b(2))。ウェルあたりの抗体の最終濃度は25ng/mlであった。競合サンプルLPS/コアオリゴ糖および抗体は、被覆ウェル中で37℃で60分間インキュベートされた。インキュベートに続き、プレートが洗浄バッファで3回洗浄され、検出の前に完全に乾燥させられた(図2a(3)、図2b(3))。
【0105】
抗サルモネラ菌抗体がアクリジニウムエステルを用いて直接標識された場合、プレートは照度計中に配置された.30μlの誘因溶液Aおよび60μlの誘因溶液Bがマイクロタイタープレートの各ウェルに添加されることにより、結合したアクリジニウムエステルから光出力が開始された(図2a(4))。照度計の設定は以下のとおりであった。
【0106】
遅延注入P(溶液A用) − 1.6秒
測定時間間隔1 − 0.0秒
遅延注入M(溶液B用) − 0.0秒
測定時間間隔2 − 1.0秒
【0107】
誘因溶液Aは、63μlの70%(w/w)硝酸(HNO3)と165μlの30%(v/v)H2O2とを全容積が10mlの蒸留水中に含んでいた。誘因溶液Bは、0.1gのNaOHと75mgのCTACとを全容積が10mlの蒸留水中に含んでいた。
【0108】
ヤギの抗マウスIgG2bアクリジニウム複合体の添加(抗サルモネラ菌モノクローナル抗体が結合しない場合)
抗サルモネラ菌抗体が標識されない場合、第2の結合分子であるヤギの抗マウスIgG2b複合体が使用される。カラム処理後のIgG2bが3%(w/v)の無脂肪ミルク粉末および0.05%(v/v)のTween 20を含む希釈剤中に1:100で希釈され、100μlのこの溶液がプレートの各ウェルに添加された(図2b(4))。37℃で60分間のインキュベート後、プレートは洗浄バッファ中で4回洗浄され、乾燥され、上述のように読み取られた(図2b(5))。
【実施例】
【0109】
(実施例1)サルモネラ菌を成長させるための培地の調製
図3は、0〜16g/Lの濃度のテトラチオン酸ナトリウムがサルモネラ菌アバディーン種、フレキシナ赤痢菌、ブドウ球菌アウレウス種および病原性大腸菌の成長に及ぼす影響を示す。0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が、0〜16g/Lのテトラチオン酸ナトリウムを含むトリプシン大豆培養液の入った100ml三角フラスコに添加された。フラスコは37℃で18時間培養された。この後、A620の値が測定された。各値は、3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*はp<0.05を示す。濃度が2〜16g/Lの場合、赤痢菌、ブドウ球菌および病原性大腸菌の成長が抑制された。一方、サルモネラ菌の成長は影響を受けないかまたは促進された。
【0110】
【表1】
【0111】
テトラチオン酸塩は、4g/Lより高い濃度で病原性大腸菌の成長を阻害するだけでなく、8g/Lの濃度ではサルモネラ菌の成長を明らかに増長する効果を有する。A620は濁りを測定するため、この値が高くなるほど、細菌の成長が速いということに留意する。約16g/Lより高い濃度では、サルモネラ菌の成長は阻害される。
【0112】
図4は、ブリリアントグリーンに対する細菌の生育反応を示す。0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が、0.05g〜5g/Lのブリリアントグリーンを含むトリプシン大豆培養液の入った100ml三角フラスコに添加された。フラスコは37℃で18時間培養された。この後、A620の値が測定された。各値は、3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*はp<0.05を示す。”はp<0.01を示す。
【0113】
【表2】
【0114】
比濁法による細菌数の尺度としてA620を採用した。*ブリリアントグリーンの吸光度による高い吸光度値を示す。これらの濃度において、ブリリアントグリーン溶液に対して分光計をブランクにすることはできなかった。ブリリアントグリーンの濃度が0.3mg/L以上の場合、サルモネラ菌および病原性大腸菌の両方の成長が抑制された。しかし、0.15mg/Lの濃度では、ブリリアントグリーンは病原性大腸菌に対しては阻害作用を示したが、サルモネラ菌に対しては示さなかった。
【0115】
(実施例2)赤痢菌を成長させるための培地の調製
図5は、クエン酸第二鉄アンモニウムに対する細菌の生育反応を示す。0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が、0.25〜1.5g/Lのクエン酸第二鉄アンモニウムを含むトリプシン大豆培養液の入った100ml三角フラスコに添加された。フラスコは37℃で18時間インキュベートされた。この後、A620が測定された。各値は、3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*はp<0.05を示す。クエン酸第二鉄アンモニウムの濃度が0.25g/L以上の場合、ブドウ球菌および病原性大腸菌の両方の成長が抑制される。
【0116】
図6は、クエン酸ナトリウムに対する細菌の生育反応を示す。0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が、5〜25g/Lのクエン酸ナトリウムを含むトリプシン大豆培養液の入った100ml三角フラスコに添加された。フラスコは37℃で18時間培養された。この後、A620が測定された。各値は、3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*はp<0.05を示す。クエン酸ナトリウムの濃度が5g/L以上の場合、ブドウ球菌および病原性大腸菌の両方の成長が抑制された。クエン酸ナトリウムの濃度が15g/Lの場合、赤痢菌の生育反応はブドウ球菌および病原性大腸菌の生育反応に比べ、著しく増長された。
【0117】
(実施例3)ペプトン、トリプシン大豆培養液および改良トリプシン大豆液体培地中における異なる細菌の世代試験
赤痢菌の3つの株とサルモネラ菌アバディーン種、病原性大腸菌およびブドウ球菌アウレウス種を含む他の細菌とを、従来の液体培地培養液中で培養することにより、世代時間が調べられた。ペプトン(図7)、トリプシン大豆液体培地(TSB)(図8)、改良トリプシン大豆培養液(mTSB)(図9)またはグラム陰性液体培地(図10)のいずれかを含む100ml三角フラスコに、0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が添加された。
【0118】
各フラスコは370Cで18時間培養された。この後、生存細胞の数が栄養寒天培地上でドロッププレート法により決定された。かっこ内の値は世代時間である。各値は3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*はp<0.05を表す。倍増時間がペプトン、トリプシン大豆および改良トリプシン大豆培養液中で調べられた。グラム陰性液体培地中で培養された場合、フレキシナ赤痢菌、サルモネラ菌アバディーン種、病原性大腸菌およびブドウ球菌アウレウス種の世代時間は、それぞれ36、57、41および44分であった。
【0119】
すべての細菌の増殖速度がTSB中では増大した。その結果、赤痢菌が選択的に成長できるようにするために、従来の他の選択剤とともに、TSBが基礎成長培地として単独でまたは組み合わせて使用された。フレキシナ赤痢菌、サルモネラ菌アバディーン種、病原性大腸菌およびブドウ球菌アウレウス種の倍増時間は、TSB中では48、46、28および33分であった。フレキシナ赤痢菌およびサルモネラ菌アバディーン種はmTSB中では有意に速く成長した(p<0.01)。一方、この基礎培養液中では、病原性大腸菌およびブドウ球菌アウレウス種は増殖するのにより長い時間がかかった。改良TSB中で培養した場合、病原性大腸菌の増殖速度は68分まで遅らせることができた。改良TSB中では、フレキシナ赤痢菌の世代時間は46分間にまで短縮することができた。
【0120】
(実施例4)リステリア菌を成長させるための培地の調製
塩化リチウムとナリジクス酸との組み合わせを含むリステリア菌の成長培地が調整された。0.1mlの接種材料(103細胞/ml)が、以下のレシピの培地を含む100ml三角フラスコに添加された:3.3%のTSBYE、0.5%酵母抽出物を含むトリプシン大豆培養液、2g/LのLiCl、2mg/Lのナリジクス酸、および250mg/Lのクエン酸第二鉄アンモニウム。フラスコは37℃で20時間培養された。この後、A620の値が測定された(図11)。各値は、3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。リステリア菌モノサイトゲネス種およびリステリア菌イノキュア種は、本培地中で効率的に成長できた。病原性大腸菌、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)およびブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)の成長はすべて著しく阻害された。
【0121】
(実施例5)サルモネラ菌、赤痢菌またはリステリア菌を選択的に成長させるための培地の調製
上述のデータを利用して、以下のレシピに従って選択培地が調整された。
【0122】
サルモネラ菌1
・2%のペプトン
・0.15mg/Lのブリリアントグリーン
・4〜8g/Lのテトラチオン酸塩(すべての型)
【0123】
サルモネラ菌2
・3.3%(w/v)のmTSB
・0.15mg/LのBG
・1g/Lのクエン酸第二鉄アンモニウム
【0124】
赤痢菌13.3%のmTSB
・0.1mg/Lのブリリアントグリーン
・250mg/Lのクエン酸第二鉄アンモニウム
・15g/Lのトリクエン酸ナトリウム
【0125】
リステリア菌1TSBYE−0.5%酵母抽出物を含有する3.3%トリプシン大豆培養液
・2g/Lの塩化リチウム
・2mg/Lのナリジクス酸
・250mg/Lのクエン酸第二鉄アンモニウム
【0126】
(実施例6)免疫アッセイに使用するためにアクリジニウムエステルと結合させるための抗体および抗体フラグメントの調整
腹水からプロテインAのクロマトグラフィーを用いて純粋なIgGを調整し、次にIgGを消化することによってFabフラグメントを生じさせ、そのフラグメントまたは抗体全体をエステルに結合させ、続いて精製を行う任意のステップによって、抗体の改善された調製を行うことができる。代わりに、抗体の他のアイソタイプまたはアイソフォームを精製されていない状態で使用することもできる。
【0127】
プロテインA/Gの分離
(i)バッファおよび溶液
・PBS:0.15MのNaClを含む0.1Mのリン酸バッファ(pH8)
・0.1Mのクエン酸酸性バッファ(pH6およびpH4.5):29gの乾燥したクエン酸ナトリウムを800mlの蒸留水に溶解させる。それぞれpHが6および4.5となるまで1Mのクエン酸溶液(210g/L)を添加する。1Lにメスアップする。
・0.15MのNaClを含有する0.1Mの酢酸バッファ(pH3):800mlの蒸留水に1Mの酢酸100mlと1.5MのNaCl100mlとを添加する。
3MのNaClを含有する1.5Mのグリシンバッファ(pH8.9):112gのグリシンおよび174gのNaClを700mlの蒸留水に溶解させる。5Mの水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを8.9に調整し、蒸留水を用いて1Lにメスアップする。
【0128】
(ii)手順
0.1Mのリン酸バッファ(pH8)中で30分間、1.5gのプロテインA−セファロース(CL−4B、ファルマシア社)(プロテインGも使用されてもよい)が膨張できるようにする(1.5gのビーズから5mlのゲル得られる)。20×2cmのカラムをこのゲルで充填し、開始バッファでリンスする。開始バッファに対して透析した後、40%(v/v)にて飽和状態の硫酸アンモニウムにより前もって脱脂しておいた腹水を1ml、カラムにアプライする。腹水が使用される場合、腹水の脱脂は100000gで45分間遠心分離することにより行われる。形成されたあらゆるペレット、つまり浮かんだ「脂質」が捨てられる。A280が0.050未満となるまで0.1Mのリン酸バッファ(pH8)を用いてカラムを洗浄する。クエン酸塩バッファ(pH6)を添加し、A280が0.050未満となるまで洗浄する。引き続いてpH4.5とpH3のバッファを用いることにより、他の免疫グロブリンを同様にして溶出させる。0.02%のアジ化ナトリウムを含むリン酸バッファ(pH8)を用いて中和させ、プロテインA−セファロースをこのバッファ中で保存する。溶出後、1Mのリン酸バッファ(pH8)を数滴用いて抗体を中和させ、PBSに対して透析させる。
【0129】
(iii)Fabフラグメントの調整
酵素消化が完全に進行することはない。そのため、パパインがIgGに作用した場合、FabフラグメントおよびFcフラグメントに加え、10%の未消化IgGが生じる。FabフラグメントとFcフラグメントは同一の分子量を有するため、分離するのが困難である。それらの精製を容易にするために、プロテインAが使用される。最初のステップで抗体がパパインを用いて処理される。次に、その混合物がIgGおよびFabを分離するためにプロテインAに通される。次に、SephadexまたはプロテインA−セファロースを用いたろ過によって、Fabフラグメントが未消化のIgGから分離される。
【0130】
(材料)
・クロマトグラフィーカラム(2.5cm×80cm)
・パパイン:ベーリンガー社製
・L−塩酸システイン:メルク社製
・EDTA(エチレンジアミン四酢酸):メルク社製
・ヨードアセトアミド:メルク社製
【0131】
(バッファおよび溶液)
・リン酸塩−緩衝化生理食塩水(PBS)
・0.1Mのリン酸バッファ(pH7.4)
・市販の原液から調整された1mg/mlのパパイン溶液
・0.2MのL−システイン:35mg/mlの0.1Mリン酸バッファ(pH7.4)
・0.1MのEDTA:3.6gのEDTAを100mlの0.2MのNaOH溶液に溶解させる。EDTAはpHが約8の場合にのみ著しく溶解する。そのため、溶液のpHを調整してEDTAを完全に溶解させるために、1MのNaOHを数滴添加する必要があるかもしれない。
・0.4Mのヨードアセトアミド:0.1Mのリン酸バッファ(pH7.4)中に74mg/mlの濃度
【0132】
(手順)
40%(v/v)の飽和硫酸アンモニウム溶液とともに沈殿させることにより、免疫グロブリン画分が抗血清から調整された。免疫グロブリンはpH7.4の0.1Mリン酸バッファに対して透析された。おおよそのタンパク濃度が決定された(IgGの1mg/ml溶液のA280の値は1.4である)。
【0133】
IgGの濃度を30mg/mlに調整し、20mg/mlのタンパク濃度を得るために必要な最終的な体積(V)が計算された。親和性の観点から、最終濃度が2.5mg/mlの精製された抗体が使用された。最終的な体積(V)の1/20量の0.04MのEDTAが添加された(最終濃度:0.002M)。次に、最終的な体積(V)の1/20量の0.2MのL−システイン溶液が添加された(最終濃度:0.01M)。100mgのグロブリンあたり1mgのパパインとなるように、1mg/mlのパパイン溶液が添加された。0.1Mのリン酸バッファ(pH7.4)を用いて体積がVmlに調整された。反応は37℃で2時間行われた。最終的な体積(V)の1/10量の0.4Mのヨードアセトアミド溶液が添加された(最終濃度:0.04M)。この状態で30分間放置された。次に調整液がPBSに対して4℃で一晩透析された。
【0134】
プロテインAクロマトグラフィーにより、GlcNAc−Glc−Galエピトープ(図12)に結合するIgG抗体およびFabフラグメントが単離された。Sephadex G−100カラム(2.5×80cm)上で混合物が分画され、PBSで平衡化された。第1のピークがIgGに対応し、第2のピークがFabフラグメントに対応した。Fabピークは5mg/mlに濃縮された。
【0135】
(実施例7)抗体または抗体フラグメントとアクリジニウムエステルとの結合
a)調整
i)(4−(2−スクシンイミドイルオキシカルボニルエチル)フェニル−10−ジメチルアクリジニウム−9−カルボキシレートフルオロ硫酸などのアクリジニウムエステルが、綺麗な乾燥したホウケイ酸の瓶の中で秤量された。乾燥したジメチルホルムアミドが添加された(体積は使用可能なアクリジニウムエステルの量による)。また、その溶液が通常1瓶あたり5mgの量で瓶の中に等分に分注された。
ii)0.5mgのIgG/mlの濃度で、抗体が0.2Mのリン酸ナトリウムバッファ(pH8.0)に溶解される。
iii)5mgのアクリジニウムエステル溶液を200mlの抗体溶液に加え、十分に攪拌する。
iv)室温で15分間インキュベートする。次に、10%(w/v)のリシン一塩酸塩を100ml添加することにより、反応を停止させる。続いて室温にて暗所で5分間さらにインキュベートする。
v)後述の(b)に従って精製する。
【0136】
b)複合体の精製
(i)複合体を精製するためにゲルろ過カラムが使用されてもよい。
0.147MのNaClおよび0.5%(w/v)のウシ血清アルブミン(シグマ社)を含む0.1Mのリン酸バッファ(pH7.4)を用いて、1.6×100cmのSephadex G200カラム(ファルマシア社)が平衡化される。1.5ml以下の複合体がカラム上にアプライされ、18時間かけて流速9ml/hで分離される。流出物がA280にてモニタされ、45〜55キロダルトンに対応するピークがFabフラグメントとして集められ、140〜170キロダルトンに対応するピークが完全な抗体として集められる。この完全な抗体が複合体であり、複合体は使用前に使用される濃度に希釈される必要がある。
【0137】
(ii)好ましい代替的な手順では、FPLCが使用される。複合体はSuperdex 200HR 10/30カラム(ファルマシア社)を用いて精製される。0.007g/mlのウシ血清アルブミン(BSA)溶液50mlが複合体に添加される(複合体のBSA濃度が溶出バッファのBSA濃度にまで高められる)。
【0138】
サンプルをアプライする前に、カラムの容積の2倍量(50ml)の溶出バッファでカラムが平衡化される。次に、複合体溶液を10000gにて10分間遠心することにより、あらゆる粒子状物質が除去される。そしてFPLCカラムにアプライされる。0.5ml/分の流速で溶出バッファおよび保存バッファ中で、抗体がカラムから溶出される。最初の5mlがカラムを通過した後、0.5mlの画分が収集される。
【0139】
紫外線(UV)モニタを使用することによって、抗体の存在が検出される。抗体ピークをカバーする画分が収集され、発光活性が解析される(通常は画分16〜21である)。
【0140】
(発光活性のチェック)
抗体画分が生理食塩水と各画分のアッセイ用プレートのウェルにスポットされたサンプル5μlにより1:500で希釈される。次にその画分の発光活性が、活性化試薬1および2との反応によってテストされる。最初に15μlの活性化試薬1がサンプルウェルに添加され、続いて30μlの活性化試薬2が添加される。これは、照度計中における自動注入により通常行われる。次に、問題としているウェルから発せられる光の放出を計測するために、照度計が動かされる。その結果が、各サンプルとも複数回繰り返して記録される。次に、高強度の発光活性を有するサンプルを、微生物アッセイ、この例ではサルモネラ菌アッセイにおいて確認することができる。
【0141】
(実施例8)AMPPDとアルカリホスファターゼが結合した抗サルモネラ菌抗体の使用
十分な発光シグナルを生成するために、免疫アッセイで使用される酵素アルカリホスファターゼおよび基質AMPPDに抗体を結合させてもよい。AMPPDは、3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3”−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキシエタン;3−(4−メトキシスピロ(1,2−ジオキシエタン−3,2’−トリシクロ(3.3.1.1(3,7))デカン)−4−yl)フェニルリン酸塩である。この基質用の希釈剤は、0.9gのCTAB(セチルトリメチルアンモニウム臭化物)、1.9mlのAMP(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)、14.5mgの塩化マグネシウム6水和物を、1mM、pH9.6となるように100mlの蒸留水で調整した水溶液である。
【0142】
(試薬)
洗浄バッファ
・0.2MのTris(24.228g/L)、0.2MのNaCl(11.688g/L)および0.05%(v/v)のTween(0.5ml/L)
・24.228gのTrisと11.688gのNaClを900mlの蒸留水に溶解させる。0.5mlのTween 20を添加する。HClを用いてpHを7.4に調整し、1Lにメスアップし、室温で保存する。
・10×洗浄バッファ濃縮液(防腐剤アジ化ナトリウムを含む)
・2MのTris(24.228g/100ml)、2MのNaCl(11.688g/100ml)および0.5%のTween (0.5ml/100ml):24.228gのTrisおよび11.688gのNaClを80mlの蒸留水に溶解させる。0.5mlのTween 20を添加し、濃縮HClを用いてpHを7.4に調整する。蒸留水で100mlにメスアップし、室温で保存する。洗浄バッファに戻すためには、100mlの濃縮液を900mlの蒸留水に添加し、室温で保存する。
【0143】
溶出用バッファおよび保存用バッファ
・0.15MのNaCl、0.1%(w/v)のウシ血清アルブミン(BSA)および0.05%のNaN3を含む0.1Mのリン酸ナトリウムバッファ(pH6.3)
・0.1MのNaH2PO4と0.1%(w/v)のBSAを含む0.15MのNaClとの溶液(A)と、0.1MのNa2HPO4と0.1%(w/v)のBSAを含む0.15MのNaClとの溶液(B)を作る。100mlのAを50mlのBに添加する。0.05%のNaN3を添加し、0.22mMのフィルタに通し、4℃で保存する。
【0144】
アッセイ用バッファ
・0.1%(w/v)のNaN3と0.25%(w/v)のBSAとを含む0.01MのNaH2PO4(1.2g/L)および0.15MのNaCl(8.75g/L)の溶液
・1.2gのNaH2PO4と8.75gのNaClとを900mlの蒸留水に溶解させる。1.0gのNaN3と2.5gのBSAとを添加する。完全に溶解させ、1.0MのNaOHを用いてpHを7.4に調整する。蒸留水を用いて1000mlにメスアップする。0.22μMのフィルタに通し、4℃で保存する。
【0145】
洗浄剤溶液
20%(w/v)のSDS溶液:5gのSDSを25mlの蒸留水中に溶解させる。室温で保存する。
【0146】
成長促進剤
8gのテトラチオン酸ナトリウムと0.15mgのブリリアントグリーンとを1Lの滅菌ペプトン液体培地に添加する。均一に混合されるまで穏やかに攪拌する。
【0147】
活性化試薬1(1L)
6.3mlの70%硝酸、16.5mlの30%過酸化水素、および977mlの蒸留水。
【0148】
活性化試薬2(1L)
10.0gのNaOH、7.5mlのセチルトリメチルアンモニウムクロライド、および983mlの蒸留水。
【0149】
(サルモネラ菌結合用の試験画分)
アッセイ用プレートのウェルは、標準濃度の細菌によって37℃で1時間被覆される。これらの標準濃度は、106、105、5×104、2.5×104、104および5×103ならびに106の病原性大腸菌を含むブランクのウェルである。試験される画分は、アッセイバッファ中で1:100に希釈され、50mlが各ウェルに添加され、37℃で20分間インキュベートされる。次に各ウェルが照度計上で上述のように計測される。アッセイにおいて高い結合を示した画分がプールされる。プールされた複合体に対する最適な希釈は、通常1:100〜1:1000である。
【0150】
(直接結合サルモネラ菌アッセイにおける洗浄剤の影響)
洗浄剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いて、新しい黒白プレート(Wallac社)がチューブ照度計(Berthold LB9509)によって読み取られる。
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】
【0153】
【表5】
【0154】
白色プレート(Wallac社)、ルーシー1プレート照度計を用いた読み取り(複合体を1:100で希釈)
【0155】
【表6】
【0156】
【表7】
【0157】
黒白プレートを用いた直接結合サルモネラ菌アッセイにおける様々な濃度のSDSの影響(複合体を1:100で希釈)
【0158】
【表8】
【0159】
【表9】
【0160】
黒白プレートを用いた競合結合サルモネラ菌アッセイにおける様々な濃度のTWEEN 20の影響(複合体を1:100で希釈)
【0161】
【表10】
【0162】
1:100に希釈した抗2b複合体を用いた抗サルモネラ菌モノクローナル抗体のインキュベート時間の影響
最適なインキュベート時間を決定するために、サルモネラ菌またはリステリア菌のいずれかとともにモノクローナル抗体(1:100に希釈)がインキュベートされた。
【0163】
【表11】
【0164】
1:200に希釈した抗2b複合体を用いた抗サルモネラ菌モノクローナル抗体のインキュベート時間の影響
最適なインキュベート時間を決定するために、サルモネラ菌またはリステリア菌のいずれかとともにモノクローナル抗体(1:200に希釈)がインキュベートされた。
【0165】
【表12】
【0166】
食品培養物に対するSDS濃度の影響
【0167】
【表13】
【0168】
コアオリゴ糖の放出および検出における異なる洗浄剤の影響
【0169】
【表14】
【0170】
SDSは、食品サンプルを用いたサルモネラ菌LPSのモノマーへの分解において最も信頼性および再現性のある結果をもたらす。しかし、競合アッセイではこの目的にはTWEENのみが使用可能である。それは、タンパク質−洗浄剤が他の洗浄剤と相互作用するからである。
【0171】
競合アッセイのサルモネラ菌の検出における様々な抗サルモネラ菌抗体の濃度の影響
【0172】
【表15】
【0173】
(参考文献)
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【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ペプトン、トリプシン大豆培養液、酵母を含むトリプシン大豆培養液、および改良トリプシン大豆培養液から構成される群から選択される基礎培養液と、
(ii)ブリリアントグリーン、ナリジクス酸および塩化リチウムから構成される群から選択される少なくとも1つの増殖抑制剤と、
(iii)任意成分として、テトラチオン酸ナトリウム、クエン酸第二鉄アンモニウムおよびクエン酸ナトリウムから構成される群から選択される少なくとも1つの成長促進物質と、から実質的に構成されることを特徴とする少なくとも1つの微生物を成長させるための培地。
【請求項2】
増殖抑制剤は、約0.05〜約0.25mg/Lのブリリアントグリーンであることを特徴とする請求項1に記載の培地。
【請求項3】
増殖抑制剤は、約1〜3mg/Lのナリジクス酸および約1〜約3g/Lの塩化リチウムであることを特徴とする請求項1に記載の培地。
【請求項4】
成長促進物質を含む培地であって、
成長促進物質は約4〜約12g/Lのテトラチオン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の培地。
【請求項5】
成長促進物質を含む培地であって、
成長促進物質は約200〜300mg/Lのクエン酸第二鉄アンモニウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の培地。
【請求項6】
成長促進物質であるクエン酸ナトリウムを、約10〜20g/L、より具体的には約15g/Lの量、さらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の培地。
【請求項7】
少なくとも1つの微生物がサルモネラ菌種であることを特徴とする請求項1、2または4のいずれか1項に記載の培地。
【請求項8】
少なくとも1つの微生物が赤痢菌種であることを特徴とする請求項1、2、5または6のいずれか1項に記載の培地。
【請求項9】
少なくとも1つの微生物がリステリア菌種であることを特徴とする請求項1、3または5のいずれか1項に記載の培地。
【請求項10】
(i)試験サンプルを培地中で培養することにより、目的とする微生物の増殖を可能とするステップと、
(ii)試験サンプル中に存在する任意の微生物から1つ以上のコアオリゴ糖を放出するのに十分な程度に、試験サンプルを処理するステップと、
(iii)目的とする微生物のコアオリゴ糖に対する結合特異性を有する少なくとも1つの結合分子に、試験サンプルを接触させるステップと、
(iv)少なくとも1つの結合分子と目的とする微生物のコアオリゴ糖との任意の結合を検出するステップと、を含むことを特徴とする試験サンプル中における目的とする微生物の存在または不存在を検出するためのアッセイ方法。
【請求項11】
ステップ(ii)は、
(a)洗浄剤を前記目的とする微生物を含む試験サンプルに添加することにより、洗浄剤−培養液を供給するステップと、
(b)コアオリゴ糖を放出するのに十分な温度にまで洗浄剤−培養液を加熱するステップと、を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
洗浄剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、TWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 60またはTWEEN 80であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(i)が請求項1〜9のいずれか1項に記載の培地を用いて実行されることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(iv)が発光シグナルの検出によることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
発光シグナルがアクリジニウムエステルによって生成されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(i)微生物を含む少なくとも1つの培養サンプルに洗浄剤を添加することにより、洗浄剤−培養液を供給するステップと、
(ii)コアオリゴ糖を放出するのに十分な温度にまで洗浄剤−培養液を加熱するステップと、を含むことを特徴とする微生物の細胞からコアオリゴ糖を放出する方法。
【請求項17】
洗浄剤がドデシル硫酸ナトリウム、TWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 60またはTWEEN 80であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項16の方法において、実質的にドデシル硫酸ナトリウム、TWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 60またはTWEEN 80から構成される溶液の使用。
【請求項19】
サルモネラ菌、赤痢菌およびリステリア菌から構成される群から選択される微生物を特異的に検出するための、コアオリゴ糖に対する結合特異性を有する結合分子の使用。
【請求項20】
少なくとも1つの細菌、特にサルモネラ菌、赤痢菌またはリステリア菌を成長させるための請求項1〜9のいずれか1項に記載の培地の使用。
【請求項21】
コアオリゴ糖が以下のエピトープを有することを特徴とする請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【化1】
【請求項1】
(i)ペプトン、トリプシン大豆培養液、酵母を含むトリプシン大豆培養液、および改良トリプシン大豆培養液から構成される群から選択される基礎培養液と、
(ii)ブリリアントグリーン、ナリジクス酸および塩化リチウムから構成される群から選択される少なくとも1つの増殖抑制剤と、
(iii)任意成分として、テトラチオン酸ナトリウム、クエン酸第二鉄アンモニウムおよびクエン酸ナトリウムから構成される群から選択される少なくとも1つの成長促進物質と、から実質的に構成されることを特徴とする少なくとも1つの微生物を成長させるための培地。
【請求項2】
増殖抑制剤は、約0.05〜約0.25mg/Lのブリリアントグリーンであることを特徴とする請求項1に記載の培地。
【請求項3】
増殖抑制剤は、約1〜3mg/Lのナリジクス酸および約1〜約3g/Lの塩化リチウムであることを特徴とする請求項1に記載の培地。
【請求項4】
成長促進物質を含む培地であって、
成長促進物質は約4〜約12g/Lのテトラチオン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の培地。
【請求項5】
成長促進物質を含む培地であって、
成長促進物質は約200〜300mg/Lのクエン酸第二鉄アンモニウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の培地。
【請求項6】
成長促進物質であるクエン酸ナトリウムを、約10〜20g/L、より具体的には約15g/Lの量、さらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の培地。
【請求項7】
少なくとも1つの微生物がサルモネラ菌種であることを特徴とする請求項1、2または4のいずれか1項に記載の培地。
【請求項8】
少なくとも1つの微生物が赤痢菌種であることを特徴とする請求項1、2、5または6のいずれか1項に記載の培地。
【請求項9】
少なくとも1つの微生物がリステリア菌種であることを特徴とする請求項1、3または5のいずれか1項に記載の培地。
【請求項10】
(i)試験サンプルを培地中で培養することにより、目的とする微生物の増殖を可能とするステップと、
(ii)試験サンプル中に存在する任意の微生物から1つ以上のコアオリゴ糖を放出するのに十分な程度に、試験サンプルを処理するステップと、
(iii)目的とする微生物のコアオリゴ糖に対する結合特異性を有する少なくとも1つの結合分子に、試験サンプルを接触させるステップと、
(iv)少なくとも1つの結合分子と目的とする微生物のコアオリゴ糖との任意の結合を検出するステップと、を含むことを特徴とする試験サンプル中における目的とする微生物の存在または不存在を検出するためのアッセイ方法。
【請求項11】
ステップ(ii)は、
(a)洗浄剤を前記目的とする微生物を含む試験サンプルに添加することにより、洗浄剤−培養液を供給するステップと、
(b)コアオリゴ糖を放出するのに十分な温度にまで洗浄剤−培養液を加熱するステップと、を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
洗浄剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、TWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 60またはTWEEN 80であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(i)が請求項1〜9のいずれか1項に記載の培地を用いて実行されることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(iv)が発光シグナルの検出によることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
発光シグナルがアクリジニウムエステルによって生成されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(i)微生物を含む少なくとも1つの培養サンプルに洗浄剤を添加することにより、洗浄剤−培養液を供給するステップと、
(ii)コアオリゴ糖を放出するのに十分な温度にまで洗浄剤−培養液を加熱するステップと、を含むことを特徴とする微生物の細胞からコアオリゴ糖を放出する方法。
【請求項17】
洗浄剤がドデシル硫酸ナトリウム、TWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 60またはTWEEN 80であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項16の方法において、実質的にドデシル硫酸ナトリウム、TWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 60またはTWEEN 80から構成される溶液の使用。
【請求項19】
サルモネラ菌、赤痢菌およびリステリア菌から構成される群から選択される微生物を特異的に検出するための、コアオリゴ糖に対する結合特異性を有する結合分子の使用。
【請求項20】
少なくとも1つの細菌、特にサルモネラ菌、赤痢菌またはリステリア菌を成長させるための請求項1〜9のいずれか1項に記載の培地の使用。
【請求項21】
コアオリゴ糖が以下のエピトープを有することを特徴とする請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【化1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12(a)】
【図12(b)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12(a)】
【図12(b)】
【公表番号】特表2012−501668(P2012−501668A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526570(P2011−526570)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051161
【国際公開番号】WO2010/029360
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(511063572)ソルス サイエンティフィック ソリューションズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051161
【国際公開番号】WO2010/029360
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(511063572)ソルス サイエンティフィック ソリューションズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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