説明

療法において使用するための新規チオフェン化合物

本発明は、ミスフォールドタンパク質および凝集タンパク質に関連する疾患の療法において有用な新規置換チオフェン誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、療法、特にタンパク質のミスフォールド(misfolded)型または凝集型が関与する疾患を患う哺乳動物の療法において有用な新規置換チオフェン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質などの天然バイオポリマーは、しばしば、アルファヘリックスおよびベータシートなどの秩序だったコンホメーションを有し、これが、バイオポリマーの三次元の秩序だった構造および特定の機能に寄与する。タンパク質の構造は、タンパク質の機能に必須であり、多くの科学者らによって、アンフォールドタンパク質が機能しない可能性もあることが示されてきている。より重要なことに、最近数年で、タンパク質が例えばアミロイドおよび他の病変型にミスフォールディングし、そして誤って集合すると危険であることがますます認識されてきている。ミスフォールディングは、タンパク質を有用なものから、機能しないか、有毒であるか、または毒性でさえあるものに変化させうる。ヒトの健康は、適切にフォールディングされたタンパク質に依存し、そしてアミロイド原線維のin vivo沈着は、タンパク質コンホメーションに関連する多くの疾患に関連しており、こうした疾患には、アルツハイマー病、ハンチントン病、全身性アミロイドーシス、およびプリオン疾患が含まれる。動物におけるプリオン疾患、すなわち伝染性海綿状脳症(TSE)[例えば、ウシ海綿状脳症(BSE)、スクレイピーおよび慢性消耗病(CWD)]、およびヒトにおけるもの[クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)、クールー]は、正常細胞性プリオンタンパク質(PrP)が、PrPScと称される感染性病原性疾患関連アイソフォームにコンホメーション変換することに関連する。タンパク質は、しばしば、異なる外部刺激によってそのコンホメーションを改変し、そして病原性状態を導くタンパク質のコンホメーション変化が重要であることがよく立証されてきている。特に、天然状態を不安定化する条件下で、タンパク質は、アミロイド原線維として知られる、特徴的な線維状集合体に凝集しうる。ベータシート豊富なこれらのタンパク質集合体は、天然状態のものに比較して、明らかに異なるコンホメーションを有する。ミスフォールドしたプリオンタンパク質は、自己増殖性(感染性)でさえあり、この特性は、ミスフォールドしたコンホメーション内に完全にコードされる。
【0003】
慢性ヒト疾患は、医療制度に深刻な影響を及ぼす。早期介入および療法を提供するために、迅速でそして正確な診断ツールが必要であることがよく認識されている。例えばアルツハイマー病におけるように、対症療法のみが利用可能であり、そしてこれらは限定された療法有効性しか持たない。現在、アルツハイマー病または伝染性海綿状脳症(TSE)の生前分子診断試験はなく、そして行われる臨床診断は、疾患進行が重度であることを必要とする。さらに、効果的な治療はまだ利用可能でなく、そして例えばアルツハイマー病における免疫療法は非常に有望である。しかし、ミスフォールドタンパク質を捕捉して、治療および疾患進行の両方を監視する、信頼性の高い方法がないことが、大部分のタンパク質ミスフォールディング関連疾患の治療における重大な欠点である。
【0004】
アミロイド斑、アミロイド原線維およびアミロイド様原線維中のミスフォールドタンパク質と、イオン性または極性側鎖を持つホモおよびヘテロオリゴマーおよびポリマー中の、チオフェン、エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、ベンゾチアジゾール、フルオレンおよびフェニルの繰り返しユニットを含んで構成される共役分子との間にアフィニティがあることが、いくつかのin vitro研究で立証されてきている。インスリンのアミロイド様原線維と、アニオン性、双性イオン性およびカチオン性ポリおよびオリゴチオフェンとの間の相互作用が、[WO2005/109005]に示された。言及したオリゴマーおよびポリマーのいくつかは、組織学的切片中のアミロイド、αβおよびPrP沈着物に結合することが示されてきている[WO2007/091973]。アニオン性、より具体的には、アルコキシスルホネート誘導体である、EDOTのポリマーは、アミロイド様原線維に高いアフィニティを示した[Hamedi,M.ら;Nano Lett.;(2008);8,1736−1740]。さらに、置換ポリフルオレン、および酸化ポリエチレンと交互のポリフルオレンは、in vitroでアミロイド様原線維と強く会合することが立証された[Tanaka,H.ら;Nano Lett.;(2008)8,2858−2861]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2005/109005
【特許文献2】WO2007/091973
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hamedi,M.ら;Nano Lett.;(2008);8,1736−1740
【非特許文献2】Tanaka,H.ら;Nano Lett.;(2008)8,2858−2861
【発明の概要】
【0007】
第一の側面において、本発明は、タンパク質のミスフォールド型または凝集型が関与する疾患を患う哺乳動物の治療のための、以下の式(I)の単分散化合物またはその医薬的に許容される塩に関する:
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、
nは1、2、3または4であり;
各pは独立に0、1、2であり;
各Aは、チエニレン、フェニレン、フルオレニレン、ベンゾチエニレン、エチレンジオキシチエニレン、ベンゾチアジアゾリレンおよびビニレンより独立に選択される部分であり、該部分は、1または2のR基で置換されていてもよく;
各Rは、1〜3のR基で置換されていてもよい、H、フェニルおよびチエニルより独立に選択され;
各R、RおよびRは、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシポリオキシアルキレン、アルコキシ、アルコキシアルキル、ポリオキシアルキレン、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルコキシ、カルボキシアルコキシアルキル、カルボキシポリオキシアルキレン、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシアルキル、アルコキシカルボニルポリオキシアルキレン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アミノアルコキシ、アルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アミノポリオキシアルキレン、アルキルアミノポリオキシアルキレン、ジアルキルアミノポリオキシアルキレン、アミノアルコキシアルキル、アルキルアミノアルコキシアルキル、ジアルキルアミノアルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、アシルアミノ、アシルアミノアルキル、アシルアミノアルコキシ、アシルアミノアルコキシアルキル、アシルアミノポリオキシアルキレン、アシルアルキルアミノ、アシルアルキルアミノアルキル、アシルアルキルアミノアルコキシ、アシルアルキルアミノアルコキシアルキル、アシルアルキルアミノポリオキシアルキレン、ヒドラジノカルボニル、ヒドラジノカルボニルアルキル、ヒドラジノカルボニルアルコキシ、ヒドラジノカルボニルアルコキシアルキル、ヒドラジノカルボニルポリオキシアルキレン、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルコキシ、ニトロアルコキシアルキル、ニトロポリオキシアルキレン、シアノ、シアノアルキル、シアノアルコキシ、シアノアルコキシアルキル、シアノポリオキシアルキレン、スルホ、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルおよびスルホポリオキシアルキレンより独立に選択されるか、あるいは同じチオフェン環に結合した任意の2つのRは一緒に、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルまたはスルホポリオキシアルキレンで置換されていてもよいアルキレンジオキシであり、
任意のNH基は、tert−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメートまたは9−フルオレニルメチルカルバメートとして保護されるか、あるいはビオチニル部分で置換されていてもよく;そして
任意のアルキルまたはアルキレン部分は、C1−C6アルキルまたはアルキレンである]。
【0010】
1つの側面において、本発明は、以下の式(II)の単分散新規化合物またはその医薬的に許容される塩に関する:
【0011】
【化2】

【0012】
[式中、
各pは0、1、2より独立に選択され;
vは0、1、2であり;
各uは0、1、2、3より独立に選択され;
但し、すべてのp、v、uが0であることはなく;
各R、RおよびRは、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシポリオキシアルキレン、アルコキシ、アルコキシアルキル、ポリオキシアルキレン、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルコキシ、カルボキシアルコキシアルキル、カルボキシポリオキシアルキレン、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシアルキル、アルコキシカルボニルポリオキシアルキレン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アミノアルコキシ、アルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アミノポリオキシアルキレン、アルキルアミノポリオキシアルキレン、ジアルキルアミノポリオキシアルキレン、アミノアルコキシアルキル、アルキルアミノアルコキシアルキル、ジアルキルアミノアルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、アシルアミノ、アシルアミノアルキル、アシルアミノアルコキシ、アシルアミノアルコキシアルキル、アシルアミノポリオキシアルキレン、アシルアルキルアミノ、アシルアルキルアミノアルキル、アシルアルキルアミノアルコキシ、アシルアルキルアミノアルコキシアルキル、アシルアルキルアミノポリオキシアルキレン、ヒドラジノカルボニル、ヒドラジノカルボニルアルキル、ヒドラジノカルボニルアルコキシ、ヒドラジノカルボニルアルコキシアルキル、ヒドラジノカルボニルポリオキシアルキレン、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルコキシ、ニトロアルコキシアルキル、ニトロポリオキシアルキレン、シアノ、シアノアルキル、シアノアルコキシ、シアノアルコキシアルキル、シアノポリオキシアルキレン、スルホ、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルおよびスルホポリオキシアルキレンより独立に選択されるか、あるいは同じチオフェン環に結合した任意の2つのRは一緒に、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルまたはスルホポリオキシアルキレンで置換されていてもよいアルキレンジオキシであり、
任意のNH基は、tert−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメートまたは9−フルオレニルメチルカルバメートとして保護されるか、あるいはビオチニル部分で置換されていてもよく;そして
任意のアルキルまたはアルキレン部分は、C1−C6アルキルまたはアルキレンである]。
【0013】
さらに別の側面において、本発明は、療法において使用するための、式(II)記載の化合物に関する。
さらなる側面において、本発明は、タンパク質のミスフォールド型または凝集型が関与する疾患の療法のための方法、およびこうした方法における本発明の化合物の使用に関する。
【0014】
さらなる側面において、本発明は、本発明記載の少なくとも2つの単分散化合物の混合物を含む。
さらなる側面において、本発明は、第一の側面記載の少なくとも1つの化合物、および場合によって、医薬的に許容される緩衝剤、希釈剤、賦形剤および/またはキャリアーを含む、医薬組成物に関する。
【0015】
本発明記載の化合物は、画像化法における使用のために標識してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】20時間インキュベーションした参照試料、どちらのスケールバーも0.2μmを表す。シート状凝集物中の分離した原線維を白い矢印で示す。
【図2】20時間インキュベーションした参照試料、スケールバーは0.2μmを表す。シート状凝集物中の分離した原線維が白い矢印のすぐ前に見える。
【図3】66時間インキュベーションした参照試料、どちらのスケールバーも0.2μmを表す。白い矢印は、原線維シートから離れた可視原線維を指す。
【図4】100μMの本発明の化合物Fと66時間インキュベーションした試料。スケールバーは0.2μmを表し、どちらの画像も同じ倍率である。白い矢印は、原線維がまったく見えない、密な凝集物を指す。
【図5】100μMの本発明の化合物Gと20時間インキュベーションした上部試料。スケールバーは0.2μmを表す。10μMの本発明の化合物Gと20時間インキュベーションした下部試料。スケールバーは100nmを表す。短い分枝原線維が白い矢印で左側に示され、一方、オリゴマー構造が右側に示される。
【図6】100μMの本発明の化合物Gと66時間インキュベーションした試料。スケールバーは0.2μmを表し、どちらの画像も同じ倍率である。短いプロト原線維が白い矢印で左側に示され、一方、典型的な形態の非常に密な凝集物が右側に示される。
【図7】本発明の化合物(左は化合物Gおよび右は化合物F)は、注射1週間後、生存マウス脳において、Aβ沈着物に結合した。
【図8】(A)CSF中のAβ38、Aβ40およびAβ42に対する、p−FTAA治療の効果:グラフは、ビヒクルまたは3つの投薬量のp−FTAAで治療したhAPP TgマウスのCSFにおける、ヒトAβ38(左)、Aβ40(中央)、およびAβ42(右)を示す。データは、個々の値およびSDを含む群平均を伴う、スキャッタードットプロットとして表される。有意な群相違をアステリスクで示す:はp<0.05を示し、**はp<0.01を示し、***はp<0.001を示す。
【0017】
(B)脳ホモジネート中のAβ38、Aβ40およびAβ42に対する、p−FTAA治療の効果:グラフは、ビヒクルまたは3つの投薬量のp−FTAAで治療したhAPP Tgマウスの4つの異なる脳ホモジネート分画における、ヒトAβ38(左)、Aβ40(中央)、およびAβ42(右)を示す。データは、個々の値およびSDを含む群平均を伴う、スキャッタードットプロットとして表される。有意な群相違をアステリスクで示す:はp<0.05を示し、**はp<0.01を示し、***はp<0.001を示す。
【図9】MWM中の行動に対するp−FTAA治療の効果:グラフは、ビヒクル(□)、10mg/kg/日 p−FTAA(◇)を投与されたTgマウス、およびビヒクルを投与されたnTgマウス(○)が第1〜4日にMWM中のプラットホーム位置に到達するまでの水泳速度(上部)および泳路長(下部)を示す。データを1日あたり3回の試験すべての群平均+SEMとして示す。有意な群相違をアステリスクで示す:は、nTg対照対Tg対照に関するp<0.05を示し、**はp<0.01を示し、***はp<0.001を示す。
【図10】チオフラビンS染色によって視覚化される斑面積に対するp−FTAA治療の効果:グラフは、ビヒクル(N=6)、0.1mg/kg/日 p−FTAA(N=6)、1mg/kg/日 p−FTAA(N=6)、10mg/kg/日 p−FTAA(N=6)を投与されたTgマウスの皮質および海馬におけるチオフラビンS染色面積を示す。データを平均+SEMとして示す。スキャッターバーは、対応のない両側t検定における有意な相違を示す。1mg/kgならびに10mg/kg p−FTAA治療は、海馬における有意により低い斑負荷量(plaque load)を導き、一方チオフラビン陽性斑負荷量は、皮質において、群間で同等であった。
【図11】p−HTAAおよびPOWT−13はどちらも、10μM Aβ1−42のみに比較して、よりよい生存度を生じる。T.I.対10μM Aβ1−42の化学量論比をグラフ下部に示す。
【図12】p−HTAAおよびPOWT−13はどちらも、10μM Aβ1−42のみに比較して、よりよい生存度を生じる。T.I.対10μM Aβ1−42の化学量論比をグラフ下部に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本出願で用いるすべての単語および略語は、別に示さない限り、当該技術分野において通常与えられる意味を有すると見なされるものとする。しかし、明確にするために、いくつかの用語を特に以下に定義する。
【0019】
本明細書において、用語アルキルまたはアルキレン部分は、C1−C6アルキルまたはアルキレン部分、例えばC1−C4アルキルまたはアルキレン部分であり、そしてまた、任意の官能基、例えばアルコキシ、アルキルアミノまたはカルボキシポリオキシアルキレン基のアルキルまたはアルキレン部分も含むよう意図される。したがって、例えば、本発明記載のアルコキシまたはアルキルアミノ基中の任意のアルキルは、C1−C6アルキル基、例えばC1−C4アルキル基である。
【0020】
また、本発明記載の任意のアルキルまたはアルキレン基は分枝していてもまたは分枝していなくてもよい。
用語「アルキル」には、分枝または非分枝C1−C6アルカン、またはC1−C4アルカン由来の1つの基が含まれる。アルキル基の例は、メチル(CH−)、エチル(CHCH−)、プロピル(−CHCHCH−)およびイソプロピル((CHCH−)である。
【0021】
用語「アルキレン」には、分枝または非分枝C1−C6アルカン、またはC1−C4アルカン由来の2つの基が含まれる。アルキレン基の例は、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン(−CHCHCH−)およびイソプロピレン(−CH(CH)CH−)である。
【0022】
用語「チエニレン」、「フェニレン」、「フルオレニレン」、「ベンゾチエニレン」、「エチレンジオキシチエニレン」、「ベンゾチアジアゾリレン」、「ビニレン」には、それぞれ、チオフェン、ベンゼン、フルオレン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、2−ベンゾチオフェン(またはベンゾ[c]チオフェン)、2,1,3−ベンゾチアジアゾール、およびエチレンに由来する2つの基が含まれる。
【0023】
用語「ヒドロキシアルキル」、「ヒドロキシアルコキシ」、「ヒドロキシアルコキシアルキル」および「ヒドロキシポリオキシアルキレン」には、それぞれ、ヒドロキシ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0024】
用語「アルコキシ」には、R−O−基(式中、Rはアルキルである)が含まれる。
用語「アルコキシアルキル」には、アルコキシ官能基を所持するアルキル基が含まれる。
【0025】
用語「ポリオキシアルキレン」には、一般式RO−(R’O)n−(式中、nは1〜6の整数、例えば1〜4の整数、あるいは1または2であり;Rはアルキル基であり、そして各R’はアルキレン基より独立に選択される)の基が含まれる。
【0026】
用語「カルボキシアルキル」、「カルボキシアルコキシ」、「カルボキシアルコキシアルキル」および「カルボキシポリオキシアルキレン」には、それぞれ、カルボキシ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0027】
用語「アルコキシカルボニル」には、基−COOR、すなわちカルボン酸官能基のアルキルエステルが含まれる。
用語「アルコキシカルボニルアルキル」、「アルコキシカルボニルアルコキシ」、「アルコキシカルボニルアルコキシアルキル」、「アルコキシカルボニルポリオキシアルキレン」には、それぞれ、アルコキシカルボニル官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0028】
用語「アルキルアミノ」には、−NHR(式中、Rはアルキルである)が含まれる。
用語「ジアルキルアミノ」には、−NRR’(式中、RおよびR’はアルキル基より独立に選択される)が含まれる。
【0029】
用語「アミノアルキル」、「アルキルアミノアルキル」、および「ジアルキルアミノアルキル」には、それぞれ、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノ官能基を所持するアルキル基が含まれる。
【0030】
用語「アミノアルコキシ」、「アルキルアミノアルコキシ」、および「ジアルキルアミノアルコキシ」には、それぞれ、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノ官能基を所持するアルコキシ基が含まれる。
【0031】
用語「アミノアルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルコキシアルキル」、および「ジアルキルアミノアルコキシアルキル」には、それぞれ、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノ官能基を所持するアルコキシアルキル基が含まれる。
【0032】
用語「アミノポリオキシアルキレン」、「アルキルアミノポリオキシアルキレン」、および「ジアルキルアミノポリオキシアルキレン」には、それぞれ、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノ官能基を所持するポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0033】
用語「アシルアミノ」には、−NH−C(O)−アルキル部分が含まれる。
用語「アシルアミノアルキル」、「アシルアミノアルコキシ」、「アシルアミノアルコキシアルキル」および「アシルアミノポリオキシアルキレン」には、それぞれ、アシルアミノ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0034】
用語「アシルアルキルアミノ」には、−NR−C(O)−アルキル部分(式中、Rはアルキルである)が含まれる。
用語「アシルアルキルアミノアルキル」、「アシルアルキルアミノアルコキシ」、「アシルアルキルアミノアルコキシアルキル」および「アシルアルキルアミノポリオキシアルキレン」には、それぞれ、アシルアルキルアミノ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0035】
用語「ヒドラジノカルボニル」には、−C(O)NH−NH2部分が含まれる。
用語「ヒドラジノカルボニルアルキル」、「ヒドラジノカルボニルアルコキシ」、「ヒドラジノカルボニルアルコキシアルキル」および「ヒドラジノカルボニルポリオキシアルキレン」には、それぞれ、ヒドラジノカルボニル官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0036】
用語「(アミノ)(カルボキシ)アルキル」、「(アミノ)(カルボキシ)アルコキシ」、「(アミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル」および「(アミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン」には、それぞれ、好ましくは同じ炭素原子に結合したカルボキシおよびアミノ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0037】
用語「(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル」、「(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ」、「(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル」および「(アルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン」には、それぞれ、好ましくは同じ炭素原子に結合したカルボキシおよびアルキルアミノ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0038】
用語「(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル」、「(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ」、「(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル」および「(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン」には、それぞれ、好ましくは同じ炭素原子に結合したカルボキシおよびジアルキルアミノ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0039】
用語「(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルキル」、「(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシ」、「(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシアルキル」および「(アルコキシカルボニル)(アミノ)ポリオキシアルキレン」には、それぞれ、好ましくは同じ炭素原子に結合したアルコキシカルボニルおよびアミノ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0040】
用語「(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルキル」、「(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシ」、「(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシアルキル」および「(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)−ポリオキシアルキレン」には、それぞれ、好ましくは同じ炭素原子に結合したアルコキシカルボニルおよびアルキルアミノ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0041】
用語「(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルキル」、「(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシ」、「(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキル」および「(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)ポリオキシアルキレン」には、それぞれ、好ましくは同じ炭素原子に結合したアルコキシカルボニルおよびジアルキルアミノ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよび「ポリオキシアルキレン」基が含まれる。
【0042】
用語「ニトロアルキル」、「ニトロアルコキシ」、「ニトロアルコキシアルキル」、「ニトロポリオキシアルキレン」には、それぞれ、ニトロ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0043】
用語「シアノアルキル」、「シアノアルコキシ」、「シアノアルコキシアルキル」、「シアノポリオキシアルキレン」には、それぞれ、シアノ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0044】
用語「スルホアルキル」、「スルホアルコキシ」、「スルホアルコキシアルキル」、「スルホポリオキシアルキレン」には、それぞれ、スルホ官能基を所持する、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびポリオキシアルキレン基が含まれる。
【0045】
本明細書において、用語「単分散」は、当業者に一般的に知られるように、非常に狭いサイズ分布として解釈されなければならず、すなわち多分散性指数(PDI)は1に近くなければならない。
【0046】
本発明には、すべてのありうる幾何学的または立体的(stereomeric)形の本明細書記載の化合物が含まれることに注目しなければならない。本発明の範囲内には、言及する化合物のシスおよびトランス異性体、RおよびS鏡像異性体、ジアステレオマー、ならびにラセミ混合物がある。
【0047】
新規医学的使用
上述のように、第一の側面において、本発明は、哺乳動物、特に、タンパク質のミスフォールド型または凝集型が関与する疾患を患うヒトなどの哺乳動物の治療のための、式(I)の単分散化合物またはその医薬的に許容される塩に関する。
【0048】
本発明の化合物は、単量体のオリゴマーまたはポリマーと見なされてもよい。先行技術において、単量体のいくつかのオリゴマーまたはポリマーを産生して、本発明記載の化合物の基礎が形成されることが示唆されてきている。しかし、単分散化合物に比較して、多分散ポリマーを製造する方が容易であり、そしてコストが低いため、ポリマーは非常にしばしば多分散である。本発明記載の化合物は、その主な用途が薬剤であることが見出され、そしてしたがって、よく定義されている必要がある。したがって、本発明の化合物は単分散である。
【0049】
本発明のいくつかの態様において、nは1〜4;例えば1〜3、例えば1または2であり;そして各pは独立に0〜2;例えば0または1であり;各Aは、チエニレン、フェニレン、フルオレニレン、ベンゾチエニレン、エチレンジオキシチエニレン、ベンゾチアジアゾリレンおよびビニレン;例えば、チエニレン、フェニレン、およびエチレンジオキシチエニレンより独立に選択される部分であり、ここで各Aは、1または2の、本明細書において上に定義するようなR基で置換され;各Rは、H、フェニルおよびチエニル、例えばHおよびチエニルより独立に選択され;1〜3の、上に定義するようなR基;例えば1または2の基、あるいは1のR基で置換される。
【0050】
本発明のいくつかの態様において、各Aは非置換である。
Aが、チエニレン、エチレンジオキシチエニレンまたはベンゾチエニレンである場合、Aは好ましくは2位と5位に2つの基を有する:
【0051】
【化3】

【0052】
すなわち、環イオウ原子に隣接する炭素原子で、隣接するチオフェン環に結合している。
Aがフェニレンである場合、Aは好ましくは1位と4位に2つの基を有する:
【0053】
【化4】

【0054】
すなわち、パラ位で、隣接するチオフェン環に結合している。
Aがベンゾチアジアゾリレンである場合、Aは好ましくは4位と7位に2つの基を有する。
【0055】
【化5】

【0056】
Aがフルオレニルである場合、Aは好ましくは2位と7位に2つの基を有する。
【0057】
【化6】

【0058】
Aがビニレンである場合、チオフェン環は好ましくはトランス立体配置である。
【0059】
【化7】

【0060】
いくつかの態様において、例えばnが1である場合、Rの少なくとも1つはHでなく;いくつかの態様において、どちらのRもHではない。
本明細書に定義するようないずれかの式(I)記載の化合物において、各R、RおよびRは、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシポリオキシアルキレン、アルコキシ、アルコキシアルキル、ポリオキシアルキレン、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルコキシ、カルボキシアルコキシアルキル、カルボキシポリオキシアルキレン、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシアルキル、アルコキシカルボニルポリオキシアルキレン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アミノアルコキシ、アルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アミノポリオキシアルキレン、アルキルアミノポリオキシアルキレン、ジアルキルアミノポリオキシアルキレン、アミノアルコキシアルキル、アルキルアミノアルコキシアルキル、ジアルキルアミノアルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、アシルアミノ、アシルアミノアルキル、アシルアミノアルコキシ、アシルアミノアルコキシアルキル、アシルアミノポリオキシアルキレン、アシルアルキルアミノ、アシルアルキルアミノアルキル、アシルアルキルアミノアルコキシ、アシルアルキルアミノアルコキシアルキル、アシルアルキルアミノポリオキシアルキレン、ヒドラジノカルボニル、ヒドラジノカルボニルアルキル、ヒドラジノカルボニルアルコキシ、ヒドラジノカルボニルアルコキシアルキル、ヒドラジノカルボニルポリオキシアルキレン、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルコキシ、ニトロアルコキシアルキル、ニトロポリオキシアルキレン、シアノ、シアノアルキル、シアノアルコキシ、シアノアルコキシアルキル、シアノポリオキシアルキレン、スルホ、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルおよびスルホポリオキシアルキレンより独立に選択されるか、あるいは同じチオフェン環に結合した任意の2つのRは一緒に、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルまたはスルホポリオキシアルキレンで置換されていてもよいアルキレンジオキシであり、そして
任意のNH基は、tert−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメートまたは9−フルオレニルメチルカルバメートとして保護されるか、あるいはビオチニル部分で置換されていてもよい。
【0061】
いくつかの態様において、各R、RおよびRは、ハロゲン、アルコキシ、アルコキシアルキル、ポリオキシアルキレン、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルコキシ、カルボキシポリオキシアルキレン、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルポリオキシアルキレン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アミノアルコキシ、アルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アミノポリオキシアルキレン、アルキルアミノポリオキシアルキレン、ジアルキルアミノポリオキシアルキレン、(アミノ)(カルボキシ)アルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシ、ならびにスルホアルキル、スルホアルコキシアルキルおよびスルホポリオキシアルキレンより独立に選択されるか、あるいは同じチオフェン環に結合した任意の2つのRは一緒に、スルホアルキル、スルホアルコキシアルキルまたはスルホポリオキシアルキレンで置換されていてもよいアルキレンジオキシであり、
任意のNH基は、tert−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメートまたは9−フルオレニルメチルカルバメートとして保護されるか、あるいはビオチニル部分で置換されていてもよい。
【0062】
本発明のいくつかの態様において、各R、RおよびRは、ハロゲン、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノアルキル、ジアミノアルコキシ、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキル、およびスルホアルコキシアルキルより独立に選択されるか、あるいは同じチオフェン環に結合した任意の2つのRは一緒に、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルまたはスルホポリオキシアルキレンで置換されていてもよいアルキレンジオキシであり、
任意の一級アミノ基は、tert−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメートまたは9−フルオレニルメチルカルバメートとして保護されていてもよく;そして
任意のアルキルまたはアルキレン部分は、C1−C6アルキルまたはアルキレン、例えばC1−C4アルキルまたはアルキレン部分である。
【0063】
いくつかの態様において、本発明の化合物は、以下の式(I’)によって示されうる:
【0064】
【化8】

【0065】
[式中、
nは1〜4;例えば1〜3、あるいは1または2;例えば1であり;
各Rは、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノアルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アミノ)(アルコキシカルボニル)アルコキシアルキルおよび(アミノ)(フェノキシカルボニル)アルコキシアルキルより独立に選択され;そして
各Rは、水素、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノアルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アミノ)(アルコキシカルボニル)アルコキシアルキル、(アミノ)(フェノキシカルボニル)アルコキシアルキル、アシルアミノ、アシルアミノアルキル、アシルアルキルアミノおよびアシルアルキルアミノアルキルより独立に選択される]。
【0066】
例えば、各Rは、カルボキシ、カルボキシメチル、メトキシカルボニルメチル、アミノメチル、(アミノ)(カルボキシ)エトキシエチル、(ジメチルアミノ)(カルボキシ)エトキシエチル、(アミノ)(メトキシカルボニル)エトキシエチルおよび(アミノ)(フェノキシカルボニル)エトキシエチルより独立に選択されてもよく;そして
各Rは、水素、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシメチル、メトキシカルボニルメチル、アミノメチル、(アミノ)(カルボキシ)エトキシエチル、(ジメチルアミノ)(カルボキシ)エトキシエチル、(アミノ)(メトキシカルボニル)エトキシエチル、(アミノ)(フェノキシカルボニル)エトキシエチルより独立に選択されてもよい。
【0067】
いくつかの態様において、すべてのR基は同じである。他の態様において、すべてのR基は同じである。さらに他の態様において、すべてのR基およびR基は同じである。
【0068】
いくつかの態様において、化合物は、式(I’’):
【0069】
【化9】

【0070】
または式(I’’’):
【0071】
【化10】

【0072】
または式(I’’’’):
【0073】
【化11】

【0074】
[式中、n、RおよびRは上に定義する通りである]によって示されうる。
化合物のさらなる例を、以下に、化合物T1〜T18として提供し、式中、n=2〜3、m=5〜14およびk=2〜5である。すべての化合物は、1つまたはいくつかのR基を有してもよく、式中、それぞれの位のR基は、上に定義する通りである。
【0075】
【化12】

【0076】
新規化合物
1つの側面において、本発明は、以下の式(II)の新規化合物に関する:
【0077】
【化13】

【0078】
[式中、
各pは0〜2より独立に選択され;例えば0または1、そして特に1であり
各vは0〜2より独立に選択され;例えば0または1、そして特に0であり
各uは0〜3より独立に選択され;例えば0〜2、そして特に0または1であり
但し、すべてのp、v、uが0であることはなく;
各R、RおよびRは、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシポリオキシアルキレン、アルコキシ、アルコキシアルキル、ポリオキシアルキレン、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルコキシ、カルボキシアルコキシアルキル、カルボキシポリオキシアルキレン、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシアルキル、アルコキシカルボニルポリオキシアルキレン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アミノアルコキシ、アルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アミノポリオキシアルキレン、アルキルアミノポリオキシアルキレン、ジアルキルアミノポリオキシアルキレン、アミノアルコキシアルキル、アルキルアミノアルコキシアルキル、ジアルキルアミノアルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、アシルアミノ、アシルアミノアルキル、アシルアミノアルコキシ、アシルアミノアルコキシアルキル、アシルアミノポリオキシアルキレン、アシルアルキルアミノ、アシルアルキルアミノアルキル、アシルアルキルアミノアルコキシ、アシルアルキルアミノアルコキシアルキル、アシルアルキルアミノポリオキシアルキレン、ヒドラジノカルボニル、ヒドラジノカルボニルアルキル、ヒドラジノカルボニルアルコキシ、ヒドラジノカルボニルアルコキシアルキル、ヒドラジノカルボニルポリオキシアルキレン、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルコキシ、ニトロアルコキシアルキル、ニトロポリオキシアルキレン、シアノ、シアノアルキル、シアノアルコキシ、シアノアルコキシアルキル、シアノポリオキシアルキレン、スルホ、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルおよびスルホポリオキシアルキレンより独立に選択されるか、あるいは同じチオフェン環に結合した任意の2つのRは一緒に、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルまたはスルホポリオキシアルキレンで置換されていてもよいアルキレンジオキシであり;
任意のNH基は、tert−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメートまたは9−フルオレニルメチルカルバメートとして保護されるか、あるいはビオチニル部分で置換されていてもよく;ここで
任意のアルキルまたはアルキレン部分は、C1−C6アルキルまたはアルキレンである]。
【0079】
いくつかの態様において、各R、RおよびRは、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルコキシ、カルボキシポリオキシアルキレン、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルポリオキシアルキレン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アミノアルコキシ、アルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アミノポリオキシアルキレン、アルキルアミノポリオキシアルキレン、ジアルキルアミノポリオキシアルキレン、(アミノ)(カルボキシ)アルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシより独立に選択され、任意のアルキルまたはアルキレン部分は、C1−C6アルキルまたはアルキレン、例えばC1−C4アルキルまたはアルキレン、より具体的にはC1−C3アルキルまたはアルキレン、例えばメチルまたはエチルである。
【0080】
いくつかの態様において、各R、RおよびRは、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルコキシ、カルボキシポリオキシアルキレン、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルポリオキシアルキレン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アミノアルコキシ、アルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アミノポリオキシアルキレン、アルキルアミノポリオキシアルキレン、ジアルキルアミノポリオキシアルキレンより独立に選択される。
【0081】
いくつかの態様において、各Rは、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキルおよびジアルキルアミノアルキルより、例えばカルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、アミノアルキルより、またはカルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキルおよびアミノアルキルより独立に選択される。
【0082】
いくつかの態様において、各Rは、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキルおよびジアルキルアミノアルキルより、例えばハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルおよびアルコキシカルボニルアルキルより、またはハロゲン、カルボキシおよびカルボキシアルキルより、またはハロゲンおよびカルボキシより独立に選択される。
【0083】
例えば、各R、RおよびR、特に各RおよびRは、フルオロ、ヨード、COOH、−CHCOOH、−CCOOH、−CHCOOCH、−CHNH、−CNH、−OCHCH(NH)(COOH)、および−CHCH(NH)(COOH)より独立に選択されてもよい。
【0084】
いくつかの態様において、すべてのR基は同じである。他の態様において、すべてのR基は同じである。さらに他の態様において、すべてのR基およびR基は同じである。
【0085】
中央のチエニレン環は好ましくは非置換であり、すなわちvは好ましくは0である。非中央チエニレンまたはチエニル環は置換されてもまたは置換されなくてもよい。しかし、少なくとも1つの環は、好ましくは置換されるべきである。言い換えると、少なくとも1つのp、uおよびvは、好ましくは0とは異なるべきであり;そして好ましくは、pおよびuの少なくとも1つは0とは異なるべきである。
【0086】
いくつかの態様において、化合物は、式(II’):
【0087】
【化14】

【0088】
[式中、RおよびRは、本明細書において上に定義する通りである]
または式(II’’):
【0089】
【化15】

【0090】
[式中、Rは、本明細書において上に定義する通りである]
によって示されうる。
本発明記載の化合物のいくつかの例は以下の通りである。
【0091】
【化16−1】

【0092】
【化16−2】

【0093】
本発明記載の化合物の他の例は以下の通りである。
【0094】
【化17−1】

【0095】
【化17−2】

【0096】
【化17−3】

【0097】
調製法
本発明の化合物は、本明細書の一般的な説明および特定の例示的実施例を考慮して、一般の当業者によって調製可能である。
【0098】
本発明にしたがって化合物を調製する方法の一例は以下の通りである:
第一の工程において、式(IV)記載の化合物(商業的に入手可能であるし、または例えば鈴木カップリングを用いることによって合成される;式中、A、Rおよびpは本明細書において上に定義する通りである)をヨード化して、式(V)の化合物を得る:
【0099】
【化18】

【0100】
次いで、式(V)の化合物を、鈴木カップリング条件下で、2−チオフェンボロン酸と反応させて、化合物(II)を得る。
【0101】
【化19】

【0102】
また、実施例4中の化合物Jに関して記載する反応順序に一般的にしたがうことによって、本発明の化合物を調製してもよい。
一般的に、環構造、すなわちチオフェン、ベンゼン、フルオレン、ベンゾチオフェン、エチレンジオキシチオフェン、ベンゾチアジアゾール;およびビニルは、本発明の化合物において、単量体の基本ユニットとして働く。有機合成の当業者に周知であり、そして有機合成の教科書に記載され、そして以下の合成例に例示される、慣用的な化学反応を通じて、言及する環構造の置換を得てもよい。
【0103】
本発明の化合物において開示される多分散ホモおよびコポリマーを調製するため、例えば塩化鉄(III)を用いて、言及する環構造のランダム酸化重合を行ってもよい。こうしたポリマーは、限定されるわけではないが、透析およびサイズ排除クロマトグラフィーを含む、周知の分離法を通じてサイズ分離されうる。
【0104】
言及する環構造の二量体、三量体、四量体、五量体等の構造を生成するため、当業者にはいくつかの方法が知られ、本発明者らはここで、鈴木およびスティルカップリングの限定されない例に言及する。共役系のポリマーおよびオリゴマー、ならびに本明細書に記載する本発明の化合物のいくつかを生成する、別の周知の方法は、McCulloughによってよく記載される、いわゆるグリニャール・メタセシス反応である[Loewe,R.S.;Khersonsky,S.M.;McCullough,R.D.Adv.Mater.1999,11,250−253]。
【0105】
スティルカップリングは、パラジウムによって触媒される、有機スズ化合物とsp混成有機ハロゲン化物とのカップリングを利用し、3つの環ユニットから三量体ブロックへの以下の反応スキームによって例示される:
【0106】
【化20】

【0107】
[式中、BuSnは、トリブチルスズであり、MおよびMは、任意の環構造を表す]。
鈴木カップリングは、パラジウム錯体によって触媒される、アリール−またはビニル−ボロン酸またはホウ酸エステルとビニル−またはアリール−ハロゲン化物間の反応を利用し、以下の反応スキームによって例示される:
【0108】
【化21】

【0109】
[式中、PiBはホウ酸エステルである]。
また、トリフレートなどの擬ハロゲン化物で反応を行ってもよい。
上記の例は、対称化合物の調製を記載する。非対称化合物を調製するため、例えば化学量論アプローチを用いてもよく、この場合、誘導体化しようとする化合物がいくつかの反応部位を有するならば、添加する試薬の量をこの化合物と等モルにする。当業者に周知であるように、対称および/または非対称化合物の任意の混合物から、化学的分離法によって、個々の化合物を分離可能である。分離の限定されない例には、フラッシュカラムクロマトグラフィーおよび蒸留が含まれる。
【0110】
特定の側面において、本発明の化合物を、開示する化合物の誘導体を指す「医薬的に許容される塩」の形で用いてもよく、この場合、記載する化合物は、その酸および塩基塩を作製することによって修飾される。医薬的に許容される塩の限定されない例には、言及するR基の塩基性誘導体の無機塩または有機塩が含まれ、例えばカルボン酸などの言及するR基の酸性誘導体のアミンおよび有機または無機の塩、例えばアルカリ塩が含まれる。慣用的な非毒性塩および四級アンモニウム塩が医薬的に許容される塩に含まれる。
【0111】
慣用的な化学法によって、本発明に開示する医薬的に許容される塩を、塩基性または酸性要素を含有する、本明細書記載の本発明の化合物から調製してもよい。
疾患
本発明記載の化合物で治療すべき疾患は、ミスフォールドタンパク質および凝集タンパク質に関連する疾患である。こうした疾患はまた、タンパク質病(proteopathy)とも称されてきている(WalkerおよびLevine,Curr Opin Investig Drugs.2002 May;3(5):782−7)。アミロイドタンパク質を特徴とする疾患は、ミスフォールティングタンパク質および凝集タンパク質に関連する疾患の説明に適切な例であり、ここで、アミロイドーシスは疾患として知られ、そして遺伝または獲得されうる。アミロイドーシスは、当初、通常、AAアミロイドーシスと称されたが、アミロイド沈着を示す、アミロイドタンパク質に関連する疾患はいずれもアミロイドーシスであることに注目されたい。例えば、CJD、vCJD、アルツハイマー病および糖尿病は、アミロイドーシスと呼ばれたことはほとんどない。
【0112】
本段落では、本発明と関連するアミロイドーシスのいくつかの例を列挙する。原発性アミロイドーシスには、リゾチーム、トランスサイレチン、アポリポタンパク質B、フィブリノーゲンにおける突然変異、およびALアミロイドーシス(多発性硬化症に見られるような免疫グロブリン軽鎖)が含まれる。続発性アミロイドーシスには、AAアミロイドーシス(慢性炎症による急性期タンパク質である、血清アミロイドAタンパク質)およびゲルゾリン・アミロイドーシス(血漿ゲルゾリン断片)が含まれる。家族性または遺伝性アミロイドーシスは、最も一般的にはトランスサイレチンタンパク質における突然変異によって引き起こされるが、稀な場合、アポリポタンパク質A1、ゲルゾリン、フィブリノーゲン、およびリゾチーム突然変異によって引き起こされることも可能であり、これらは主に遺伝によって引き起こされ、常染色体優性であると考えられ、子孫に伝わる確率が高く、アパラチア型アミロイドーシスおよびシャーペイにおけるアミロイドーシスによるシャーペイ熱がある。臓器特異的アミロイドーシスの例は、2型糖尿病(アミリン、IAPPとしてもまた知られる)、アルツハイマー病(Aβ39−42)、パーキンソン病(アルファ−シヌクレイン)、ハンチントン病(ハンチンチン)、伝染性海綿状脳症(プリオンタンパク質、PrP)であり、このいくつかの例は、クロイツフェルト・ヤコブ病(大脳におけるPrP)、クールー(脳におけるびまん性PrP沈着)、致死性家族性不眠症(視床におけるPrP)、封入体筋炎およびウシ海綿状脳症(ウシの大脳におけるPrP)、コンゴーレッド親和性血管傷害(アミロイドベータ)である。心臓アミロイドーシスには、いくつかの場合、鬱血性心不全(心臓におけるPrPまたはトランスサイレチン)が含まれる。別の重要な例は、注射投与されたインスリンによって引き起こされると考えられる、インスリン・アミロイドーシスのような医原性状態である。
【0113】
いくつかの非疾患アミロイドは、生物における天然アミロイド、Curli大腸菌(E. coli)タンパク質(カーリン)、酵母プリオン[Sup35]、ポドスポラ・アンセリナ(Podospora Anserina)プリオンHet−s、マラリア・コートタンパク質、クモの糸、哺乳動物メラノソーム(pMel)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)(血行動態因子)、カルシトニン、ならびにアミロイドを作製するように操作されたタンパク質およびペプチドである。
【0114】
プリオン病[例えばウシ海綿状脳症(BSE)、およびクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)]は、PrPScと称される感染性疾患関連アイソフォームへの、正常細胞性プリオンタンパク質(PcP)のコンホメーション変換と関連する。タンパク質のミスフォールド感染型、PrPScは、ヒトおよび哺乳動物に影響を及ぼす、プリオン疾患と呼ばれる稀な致死性脳疾患群の原因である。プリオン疾患はまた、伝染性海綿状脳症(TSE)としても知られ、そしてこれらには、ウシにおけるウシ海綿状脳症(BSE、または「狂牛」病);ヒツジにおけるスクレイピー;シカおよびエルクにおける慢性消耗病;ならびにヒトにおけるもの[クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)、クールー]が含まれる。
【0115】
本発明の化合物は、上記疾患の療法のために用いられるよう意図される。
療法における化合物の使用
本発明はまた、新規療法剤としてのチオフェン誘導体の使用にも関する。チオフェン誘導体は、生物への投与に際してアミロイド病変を改変し、すなわち療法剤として作用する。必要がある被験体(subject)に投与することによって、本発明記載の化合物で治療すべき状態および疾患は、本発明記載の化合物の療法的有効量を、上に論じるようなミスフォールドタンパク質の凝集に関連する状態および疾患である。
【0116】
血液脳関門を横断し、そしてそれによって脳に影響を及ぼす疾患に効果を持つように、本発明のチオフェン誘導体を設計してもよく、こうした疾患には、限定されるわけではないが、生存生物におけるAベータアミロイド病変が含まれ、すなわち療法剤として作用することによって、アルツハイマー病の病因に影響を及ぼしてもよい。
【0117】
チオフェン誘導体は、他の体液、例えば脳脊髄液(CSF)またはリンパに分布させるため、血流内への注射、経口摂取、吸入、皮膚または粘膜を通じた取り込みに適応した、薬学的調製物中に含まれてもよい。
【0118】
したがって、1つの側面において、本発明は、ミスフォールドタンパク質種に関連する疾患の療法に適した、少なくとも1つのチオフェン誘導体を含む、療法組成物、および該療法組成物を調製しそして使用する方法であって、少なくとも1つのチオフェン誘導体変異体、および場合による医薬的に許容される賦形剤、緩衝剤および/またはキャリアーを含有する医薬組成物を、必要がある被験体に投与する工程を含む、上記方法に関する。
【0119】
本発明の化合物を、一般の当業者に知られる任意の手段によって投与してもよい。本発明には、患者の有効な治療に必要な量の本発明の化合物とともに、1以上の薬学的キャリアー、例えば添加剤および/または希釈剤に基づく「医薬的に許容される」組成物が含まれる。本発明の化合物を、他の療法剤とともに配合し、そして投与してもよい。投与手段によって、本発明の化合物の配合を決定してもよい。本発明の化合物の投与のための配合物は、固体、液体またはエアロゾル型であってもよい。動物またはヒトへの本発明の化合物の投与は、非経口、経口、吸入によって、直腸、鼻、頬側、膣でまたは移植された容器を通じて、局所または全身で達成されてもよい。用語「非経口」は、消化管外の投与を指し、注射または注入による、皮下、静脈内、筋内、動脈内、脊髄内、頭蓋内、真皮下、皮内が含まれる。
【0120】
生存生物における所望の分布および許容を達成するため、薬学的チオフェン誘導体組成物にキャリアー剤を投与してもよい。こうした剤には、限定されるわけではないが、脂質、リン脂質、セルロース膜、糖コーティング、ヒアルロン酸、界面活性剤、ペプチド、タンパク質、イオン、塩、キレート剤および溶媒が含まれる。
【0121】
化合物の投与される用量は、特定の患者の治療に有効な用量でなければならない。本発明の化合物(単数または複数)の特定の用量レベルは、いくつかの要因に依存し、これには、用いる特定の化合物の活性およびありうる毒性;被験体または患者の全身健康状態、年齢、性別、体重および食餌、薬剤組み合わせ、投与時間および投与型、ならびに排出速度が含まれる。投与される用量は、典型的には、0.001mg/kg/日〜50mg/kg/日の間、好ましくは0.005mg/kg/日〜10mg/kg/日の間であってもよい。
【実施例】
【0122】
本発明の化合物の療法効果
本発明は、本明細書記載の本発明の化合物に基づく新規抗アミロイド疾患修飾治療を示す。現在の対症療法は、アルツハイマー病および凝集タンパク質に関連する他の疾患の、可能性のある療法的転帰が連続したものの反対の端に相当する。本発明の化合物を抗アミロイド疾患修飾剤として用いてもよく、そして理論によって束縛されることなく、これらは、凝集タンパク質またはAβの産生を減少させることによって;現存する凝集タンパク質またはAβに結合することによって;新規凝集タンパク質またはAβの形成を阻害することによって;あるいはアミロイド、凝集タンパク質またはAβクリアランスを増加させ、それによってすべての下流病理学的プロセスを防止することによって、初期病理学的事象を中断すると示唆される。神経学的疾患に関連する1つのもっともらしい機構は、本発明の化合物を用いて、生存ニューロンを救出して、ある度合いの症状緩和を達成するか、または疾患の完全な逆転を達成することである。他の治療は、疾患のいくつかの側面に影響を及ぼす凝集タンパク質またはAβの産生の下流で起こる事象を遮断しうる。
【0123】
本明細書で言及する例は、アルツハイマー病などのミスフォールディング疾患に対する本発明の化合物の療法効果を示す最初の工程を記載する(スキーム2)。in vitroおよびin vivo例の両方が、これらの効果をさらに検証するであろう。
【0124】
in vitro原線維形成(fibrillation)阻害例
1つの限定されない例がAβペプチドである、ペプチドおよびタンパク質に関連する疾患のin vitro原線維形成を、本発明の化合物の存在下で行ってもよく、そして凝集種の分子量分布の効果を評価して、阻害効果を示してもよい。凝集種の分子量は、ゲル電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィーおよび当該技術分野に周知の他の方法で決定可能である。
【0125】
in vivo Aβアッセイ例
本発明の化合物シリーズは細胞浸透性であってもよいが、そうである必要はない。アルツハイマー病のモデルとして、Aβペプチドの凝集種に神経細胞を曝露するのが特に適切であり、この場合、その後、細胞反応および細胞生存を調べる。神経細胞をAβペプチドの凝集種に曝露し、そして本発明の化合物を同時に、その前にまたはその後、添加し、その際、化合物の防御効果を評価することによって、この系において本発明の化合物の療法効果を調べてもよい。本発明の化合物の唯一ではないが1つの機能は、ニューロン内のAbオリゴマー(AbO)のレベルを減少させることによって、またはその毒性を単に減少させることによって、細胞内AbO毒性からニューロンを防御することであることが立証可能である。
【0126】
AbOは、細胞外から適用された際、毒性を誘導しうる。毒性の1つの様式は、シナプスに対する強いAbO結合を介して、重度のシナプス損傷を生じる。こうした結合活性はまた、標識AbOまたは本発明の化合物の変異体を用いて視覚化可能である。本発明の化合物の活性を示すため、ニューロン培養または他の細胞培養にAbOを適用する前または適用した後に、本発明の化合物を添加する。また、細胞培養にAbOを適用するのと同時に、一緒に、本発明の化合物を添加して、その活性をさらに示す。
【0127】
in vivoプリオンアッセイ例
療法効果を示すのに特に適したin vitro例は、ミスフォールディング疾患の細胞培養または器官型培養スライドモデルである。プリオン疾患の場合、少なくとも5年間、スクレイピー細胞アッセイ(SCA)がモデル系として知られており、該アッセイでは、細胞生存およびプリオンタンパク質の定量化を通じて、プリオン感染が調査可能である。培地中にこれらを一定に添加することによるか、あるいは適切な培地中で短期間曝露することによって、本発明の化合物の療法効果を立証してもよく、この際、細胞生存およびプリオンタンパク質レベルを測定する。別のよりin vivo様のモデル系は、Aguzzi(FalsigおよびAguzzi,Nat Prot,2008,3(4),555−562)によって最近記載されたプリオン器官型スライス培養アッセイ(POSCA)である。脳培養スライドを最長8週間培養し、そしてプリオン感染の進行を監視してもよい。SCAと同様の方式で、培養スライドを本発明の化合物に一定に曝露するかまたはより短期間の用量で曝露し、その後すぐ、プリオン感染の進行を調べる。
【0128】
in vivoでの有効性の立証
本発明者らは、ADマウスにおいて、本発明の化合物の静脈内注射が、血液脳関門を迅速に通過し、そして脳に浸透して、蛍光的に強調されたアミロイド斑を産生することを立証した。ミスフォールディング疾患のいくつかの動物モデルがあり、本発明の化合物の療法効果を評価するため、トランスジェニックマウスが特に適切である。マウスモデルの限定されない例は、PS−APPおよび5xFADモデルである。本発明は、本発明の化合物が、トランスジェニックマウスにおいて、AbOおよびアミロイド原線維中のアミロイドコンホメーションを認識することを立証している。この結合をさらに、ヒト化マウスおよびヒトにおいて立証することも可能である。ヒト生物に適合するならば、前記化合物はヒト用の療法剤であってもよい。最初の研究には、限定されるわけではないが、脳におけるまたは体の他の部分における、アミロイド病変量の有意な減少を立証するための、AD−病理モデルマウス、ヒト化マウス、そしてその後、ヒトにおいて、本発明の化合物を毎日、腹腔内注射する2週間のコースが含まれてもよい。見かけの毒性はまったく観察されないはずである。本発明の化合物によるタンパク質またはAb凝集物の脳レベルの減少はまた、必ずではないが、ウェスタンブロットによって確認される可能性もある。さらに、本発明の化合物への曝露の応答として、行動変化、例えば認知改善が調査されうる。既知のアミロイドリガンド、例えばPIBならびにコンゴーレッドおよびチオフラビンの他の誘導体の療法的使用は、本発明の発明者らが知る限り、これらを合成的に修飾する能力が限定されていることから制限されている。本発明の化合物シリーズのユニークな利点は、これらが、チエニルライブラリー由来のアミロイドリガンドの最初の例であり、そしてこれらをオリゴマー化し、そしてポリマー化して、さらなる別個の特性を達成可能であることである。オリゴマーまたはポリマー構造は、さらなる修飾をコア化学構造上に置く場合、非常に好適でありうる。本発明の化合物シリーズは、3つプラス2つのチエニル、または本発明に記載するような他の基を持つコア構造を含有する。これらは、新規ライブラリーを生成し、そして凝集タンパク質によって引き起こされる疾患に関連する療法効果を達成するのに完全に適した化学実体である。
【0129】
実施例1:化合物G(p−HTAA)
先に報告されるプロトコル(Aslund Aら,Bioconjugate Chem.,2007,18(6),1860−1868)で合成された三量体ビルディングブロック(スキーム1中の1)をヨード化した後、鈴木カップリング様条件下で、2−チオフェンボロン酸とカップリングして、p−HTAA(スキーム1中の3)を得た。3(0.200g、0.359mmol)をさらに、ジオキサン/NaOHの溶液(1M、水性)(1:1、2mL)に添加した。1時間後、溶液をHCl(1M、水性)で中和し、そして遠心分離によって沈殿物を収集した。H2Oで沈殿物を洗浄して、定量的な収量(190mg)でp−HTAAの非塩型(unsalted form)を得て、これをH2O(3mL)およびNaOH(29mg、0.725mmol)中に溶解することによって、対応するナトリウム塩に変換して、そして凍結乾燥して、生成物p−HTAA(4、0.205g)を得た。
【0130】
【化22】

【0131】
実施例2:化合物H(p−FTAM)
先に報告されるプロトコル(Aslund Aら,Bioconjugate Chem.,2007,18(6),1860−1868(2007))で合成された三量体ビルディングブロック(スキーム1中の1)をヨード化した(スキーム1中の2)。ヨウ化物(2、0.068g、0.106mmol)、5−(ジヒドロキシボリル)−2−チオフェンカルボン酸(0.072g、0.419mmol)およびK2CO3(0.090g、0.651mmol)をトルエン/メタノール(1:1、5mL)中に溶解し、そして10分間、アルゴンをバブリングした。PEPPSITM−IPr([1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン](3−クロロピリジル)−パラジウム(II)二塩化物)(0.003g,0.004mmol)を添加した後、反応容器をマイクロ波条件(10分間、80℃)に供した。混合物をHCl(1M、水性)で希釈し、そして赤色の沈殿物を収集し、そして沸騰ジオキサン中に溶解し、セライト上でろ過し、そしてH2Oを添加することによって沈殿させて、85%収量(0.090g)で、赤色粉末として、p−FTAM(5)を得た。
【0132】
【化23】

【0133】
実施例3:化合物F(p−FTAA)
化合物H(p−FTAM、0.200g、0.310mmol、スキーム1中の5)をジオキサン/NaOHの溶液(1M、水性)(1:1、2mL)に添加した。1時間後、溶液をHCl(1M、水性)で中和し、そして遠心分離によって沈殿物を収集した。沈殿物をH2Oで洗浄して、定量的な収量(191mg)でp−FTAAの非塩型を得て、これをH2O(3mL)およびNaOH(29mg、0.720mmol)中に溶解することによって、対応するナトリウム塩に変換して、そして凍結乾燥して、生成物p−FTAA(6、0.207g)を得た。
【0134】
【化24】

【0135】
【化25】

【0136】
実施例4:化合物J(p−PAMT)
3−チオフェン−エタノールを0℃でCHCl/HOAc(1:1)中に溶解し、そして攪拌し、そしてN−ヨード−スクシンイミドを少しずつ20分間添加した。19時間後、20mLの水で反応を停止し、そして有機層を250mLの飽和Na溶液、250mLの水で洗浄し、乾燥させ、ろ過し、濃縮し、そしてフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/EgOAc 18:1)によって精製して、1(スキーム2)を得た。1を0℃でCHCl/ピリジン(7:1)中に溶解し、そしてp−トルエンスルホニルクロリドを5分間添加した。19時間後、反応を15mLの水で停止し、そして40mLジエチルエーテルで希釈した。有機層を240mLの2M HCl、250mLの飽和NaHCO溶液、250mLの水で洗浄し、乾燥させ、ろ過し、濃縮し、そしてフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン)によって精製して2を得た。ジ−tert−イミノジカルボキシレートである2およびKCOをDMF(乾燥)中に溶解し、そして油槽中、75℃で加熱した。4時間後、EtOAc(50mL)および水(30mL)を添加した。有機層を220mLの2M HCl、215mLの水、215mLの塩水で洗浄し、乾燥させ、ろ過し、濃縮し、そしてフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン)によって精製して3を得た。チオフェン−ジボロン酸エステルである3およびKCOを室温でトルエン/MeOH(1:1)の脱気溶液中に溶解し、そしてアルゴン下で処理した。10分後、PEPPSITM−IPrを添加し、そしてマイクロ波オーブン中、80℃で10分間、反応を行った。溶液をトルエン(20mL)で希釈し、2M HCl(10mL)、水(15mL)で洗浄し、乾燥させ、ろ過し、濃縮し、そしてフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/EtOAc 18:1)によって精製して4を得た。4を0℃でCHCl(15mL)中に溶解し、そしてまずHOAc(15mL)を、そして最後にN−ヨードスクシンイミドを添加した。17時間後、反応を水(10mL)で停止し、そして有機層を250mLの飽和Na溶液、250mLの水で洗浄し、乾燥させ、ろ過し、濃縮し、そしてフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/EtOAc 18:1)によって精製して5を得た。2−カルボキシチオフェン−5−ボロン酸である5およびKCOを室温でT/MeOH(1:1)の脱気溶液中に溶解し、そしてアルゴン下で処理した。10分後、PEPPSIを添加し、そしてマイクロ波オーブン中、80℃で10分間、反応を行った。溶液を1M HCl(10mL)で処理し、そして赤色沈殿を得た。赤片、すなわち未精製生成物を収集し、そしてフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc/MeOH 10:1>>EtOAc/MeOH 10:1+1%HOAc)によって精製して6を得た。6を室温でCHCl中に溶解し、そして次いでTFAを添加した。溶液を室温で3時間攪拌した。3時間後、反応をMeOHで停止し、そして蒸発させて、赤片として最終生成物を得た(スキーム2中の7)。
MALDI−TOF MS計算値:586,65。観測値:586,79
【0137】
【化26】

【0138】
実施例5:化合物IaおよびIb
1(スキーム3)を室温でCHCl中に溶解した。HOAcを1:1比で添加し、そして混合物を0℃に冷却した後、直ちにN−ヨード−スクシンイミドを添加した。19時間暗所に置いた後、反応を3mLの水で停止し、そして有機層を230mLの飽和Na溶液、230mLの水で洗浄し、乾燥させ、ろ過し、濃縮し、そしてフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/EtOAc 18:1)によって精製して、2および3の混合物を得た(スキーム5)。混合物2および3を室温でジオキサンに溶解し、1M NaOHを添加し、そして7時間後、反応を1M HClで中和した。生成化合物IaおよびIb(4および5)を遠心分離によって沈殿物として収集した。
【0139】
【化27】

【0140】
5に関するMALDI−TOF MS計算値[M−H]計算値:655.60、観測値:656.00、[M+K]計算値:693.60、観測値:692.90。6に関するMALDI−TOF MS計算値[M+K]計算値:819.50、観測値:819.79。
【0141】
2および3の混合物に対するさらなるフラッシュカラムクロマトグラフィーを行い、その後、上述と同じ脱保護法を行って、4および5の間の分離を得てもよい。
【0142】
【化28】

【0143】
実施例6:Aβ沈着を持つトランスジェニックマウスにおける本発明の化合物FおよびGの長期in vivo効果
AD様病変を持つトランスジェニックマウスを用いて、アミロイド斑に対する長期in vivo効果に関して、化合物G(p−HTAA)およびF(p−FTAA)を評価した。頭蓋窓を持つマウスを用意して、多光子分光法で脳表面の直接監視を可能にした。化合物GおよびFを水性PBS溶液中に5mg/mlに溶解した。両方の化合物を10mg/kgの用量でマウス尾静脈内に注射した。上述のように、化合物は、容易に血液脳関門を横断して、そしてAβ沈着に結合する。注射1週間後、Aβ沈着物への本発明の化合物の結合は、なお観察可能であった(図7)。斑へのこの長期に持続する結合は、本発明の化合物の長期療法効果に好適である。
【0144】
実施例7. 本発明の化合物FおよびGによるβ−アミロイド凝集/原線維形成に対する主な効果の例
本発明は、ミスフォールディングタンパク質が関与する疾患をターゲットとする、本発明の化合物FおよびGの療法効果を記載する。
【0145】
Aβペプチド1−42をヘキサフルオロイソプロパノール中に1mg/mLの濃度まで溶解し、そしてさらにTris−HCl 5mM、75mM NaCl中、20μMにさらに希釈した。本発明の化合物FおよびGを10〜100μMの濃度に添加し、そして本発明の化合物を含まない参照を含めた試料を37℃でインキュベーションして原線維形成を開始した。0時間、20時間、および66時間後、アリコットを抜き取り、formvar−カーボンをコーティングしたTEMグリッド上に沈着させ、そして酢酸ウラニルを用いて陰性染色した。200kVで作動させたPhillips CM200を用いて、異なる試料における原線維形成の進行を調べた。
【0146】
参照試料および本発明の化合物を含む試料は、37℃でのインキュベーション前(0時間)には、原線維または凝集種をまったく示さなかった。20時間インキュベーションした後、参照試料は、集合してシートになった高含量の原線維を示し、この場合、別個の原線維が視覚化可能であった(図1および2を参照されたい)。これらの凝集物は、TEMグリッドの大部分を覆い、そしてより小さい原線維またはオリゴマー様構造は見えなかった。66時間インキュベーションした後、20時間の試料と比較して形態の大きな変化は見えず、典型的な形態を図3に例示する、別個の可視原線維を含むシートが、高密度でグリッド上に見られた。
【0147】
100μMの本発明の化合物Fとインキュベーションした試料は、特徴的に異なる原線維形成プロセスを示した。20時間後、参照試料中のものと似た密な凝集物(図1および2)は、試料中にまったく見られなかった。66時間後、参照試料に見られうるような別個の原線維(図3)は、試料中にはまったく見られなかった。しかし、典型的な形態を図4に例示する、区別可能な原線維を持たない非常に密な凝集物は存在した。より長いインキュベーション時間後に、試料中に原線維が存在しないことは、Aβペプチド1−42の原線維形成に対する化合物Fの効果が大きいことに関して重要である。
【0148】
100μMおよび10μMの本発明の化合物Gとインキュベーションした試料は、特徴的に異なる原線維プロセスを示した。20時間後、参照試料中のものと似た密な凝集物(図1および2)は、100μMおよび10μMの本発明の化合物Gを含む試料中にまったく見られなかった。図5に例示する、非常に低いコントラストで、低密度の短い分枝原線維が、100μM Gを含む試料中に存在した。10μMの本発明の化合物Gを含む試料では、図5に例示する、低密度のオリゴマー様構造が見られた。66時間後、図6に例示する、非常にわずかな別個の短いプロト原線維が100μM Gを含む試料中に見られた。より頻繁に、図6に例示する典型的な形態を持つ非常に密な凝集物が存在した。20時間および66時間のインキュベーション時間の両方の後に、密な原線維凝集物が存在しないことは、Aβペプチド1−42の原線維形成に対する化合物Gの効果が大きいことに関して重要である。
【0149】
実施例8
8.1 4ヶ月齢の雌hAPPSLトランスジェニックマウスにおける、p−FTAA化合物で14日間治療した効果:全身観察、化合物に対する寛容(毒性)
ビヒクル: リン酸緩衝生理食塩水(PBS;6.7mM PO4、155mM NaCl、pH=7.3〜7.5)(LonzaのBioWhittaker PBS)。
【0150】
T:I: p−FTAA、Mw=617g/mol、脱イオン水中のストック溶液(10mg/ml)から、ビヒクル中に希釈。
Tg hAPPSL: C57BL/6xDBAバックグラウンドで、ネズミThy−1プロモーターの調節下、hAPP(751)を過剰発現するトランスジェニックhAPPSLマウス。
【0151】
4ヶ月齢から始めて、雌hAPPSLマウスをビヒクルのみでまたは3つの投薬量のp−FTAAで14日間治療した。4つの異なる治療群に割り当てた40匹のhAPP Tgマウスに加えて4匹の予備を、ビヒクルのみ(対照)、あるいは0.1mg/kg/日、1mg/kg/日、または10mg/kg/日の投薬量のp−FTAAのいずれかで治療した。ビヒクルおよびT.I.を腹腔内(ip)で1日2回、14日間投与した。
【0152】
4つの治療群に割り当てた総数44の動物が研究に用いられた。4匹の動物が未知の理由のため、早期に死亡した:1mg/kgおよび10mg/kg T.I.群の各1匹の動物、ならびに対照群の2匹の動物。ビヒクル群で最多の死亡が見られたため、死亡した動物は、p−FTAAに起因した可能性はない。
【0153】
8.2 4ヶ月齢の雌hAPPSLトランスジェニックマウスにおける、p−FTAA化合物で14日間治療した効果:生体分布
ビヒクル: リン酸緩衝生理食塩水(PBS;6.7mM PO4、155mM NaCl、pH=7.3〜7.5)(LonzaのBioWhittaker PBS)。
【0154】
T:I: p−FTAA、Mw=617g/mol、脱イオン水中のストック溶液(10mg/ml)から、ビヒクル中に希釈。
Tg hAPPSL: C57BL/6xDBAバックグラウンドで、ネズミThy−1プロモーターの調節下、hAPP(751)を過剰発現するトランスジェニックhAPPSLマウス。
【0155】
4ヶ月齢から始めて、雌hAPPSLマウスをビヒクルのみでまたは3つの投薬量のp−FTAAで14日間治療した。4つの異なる治療群に割り当てた40匹のhAPP Tgマウスに加えて4匹の予備を、ビヒクルのみ(対照群)、あるいは0.1mg/kg/日、1mg/kg/日、または10mg/kg/日の投薬量のp−FTAAのいずれかで治療した。ビヒクルおよびT.I.を腹腔内(ip)で1日2回、14日間投与した。
【0156】
治療動物の右脳半球(小脳を含まない)、肝臓、腎臓、および血漿中の親化合物を測定することによって、マウスにおけるp−FTAAの生体分布を評価した。HPLC−MS/MSを伴う異なる生体分析法によって、すべてのマトリックスにおいて、p−FTAAを測定した。信頼性がある結果を生じるため、特異性、直線性、確度および精度に関して、各方法を特徴付けた。
【0157】
組織試料採取: 最後の治療の後、動物を屠殺した。各治療群を3つの試料採取点で分けて、群あたり試料採取点あたり3〜4匹の動物を生じた(以下の時点はCSF試料採取時点を指す);
1)第14日の最後の投薬直前(投薬前)
2)第14日の最後の投薬の0.5時間後
3)第14日の最後の投薬の3時間後
各動物から、CSF、血液、脳、肝臓、および腎臓を収集した。したがって、標準的吸入麻酔薬(イソフルラン、Baxter)によってマウスを鎮静させた。
【0158】
結果によって、すべての用量レベルで、動物がp−FTAAに全身曝露されたことが示された。脳のp−FTAAレベルによって、p−FTAAがip投与後に血液脳関門を横断することが示された。p−FTAAへの有意な曝露はまた、肝臓および腎臓でも観察され、後者の臓器で最高レベルが定量化された。腎臓および肝臓に薬剤が存在することから、肝臓酸化プロセスおよび腎臓クリアランスの両方が、該薬剤の全身クリアランスに関与することが示唆された。また、腎臓に高濃度の該薬剤があることから、尿排出が全身p−FTAAの主な除去経路であることも示唆された。p−FTAAのレベルは肝臓に比較して腎臓においてより高く、このことから、腎臓クリアランスがこの薬剤の主な除去経路であることが示唆された。肝臓に薬剤が存在することから、肝臓代謝プロセス(I期およびII期)もまた、該化合物の総全身クリアランスに有意に寄与することが示唆される。
【0159】
8.3 8ヶ月齢の雌hAPPSLトランスジェニックマウスにおける、p−FTAA化合物で30日間治療した効果:脳試料におけるヒトAβ測定の結果
ビヒクル: リン酸緩衝生理食塩水(PBS; 6.7mM PO4、155mM NaCl、pH=7.3〜7.5)(LonzaのBioWhittaker PBS)。
【0160】
T:I: p−FTAA、Mw=617g/mol、脱イオン水中のストック溶液(10mg/ml)から、ビヒクル中に希釈。
Tg hAPPSL: C57BL/6xDBAバックグラウンドで、ネズミThy−1プロモーターの調節下、hAPP(751)を過剰発現するトランスジェニックhAPPSLマウス。
【0161】
8ヶ月齢から始めて、雌hAPPSLマウスをビヒクルのみでまたは3つの投薬量のp−FTAAで30日間治療した。試験物品(T.I.)p−FTAAをビヒクル中、3つの投薬量で投与した。4つの異なる治療群に割り当てた48匹のhAPP Tgマウスに加えて4匹の予備を、ビヒクルのみ(対照)、あるいは0.1mg/kg/日、1mg/kg/日、または10mg/kg/日の投薬量のp−FTAAのいずれかで治療した。さらなる対照として、hAPPSLマウスの12nのTg同腹仔(加えて、1匹の予備)をビヒクルのみで治療した。ビヒクルおよびT.I.を腹腔内(i.p.)で1日2回、30日間投与した。
【0162】
Mesoscale Discoveryの免疫吸着アッセイによって、ヒトAβ38、Aβ40およびAβ42を、すべてのTg動物の左脳半球のホモジネート中およびCSF試料中で測定した。
【0163】
最高用量(10mg/kg/日)でのp−FTAA治療によって、CSFならびにSDS脳ホモジネート分画において、Aβ38、Aβ40およびAβ42レベルの有意な減少が導かれた。
【0164】
治療
4つの異なる治療群に割り当てた48匹のhAPP Tgマウスに加えて4匹の予備を、ビヒクルのみ(対照)またはp−FTAAのいずれかで治療した。さらなる対照として、hAPPSLマウスの12nのTg同腹仔(加えて、1匹の予備)をビヒクルのみで治療した。化合物およびビヒクルを、以下の表に示すように、i.p.で1日2回、30日間投与した。8ヶ月齢(±2週齢)のC57BL/6xDBAバックグラウンドを持つTg hAPPSLマウスおよび対応するnTg同腹仔を治療群にランダムに割り当てた。
【0165】
【表1】

【0166】
脳タンパク質抽出
Tg動物の左半球脳試料(小脳を含まない)をホモジナイズし、そして分離した。SDS分画を調製し、融解した後、ホモジナイザー「Ultra Turrax T8」を用いて半球を最高速度でTBS(20mM Tris、137mM NaCl、pH=7.6;プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する;1ml TBSあたり100mgの脳湿重量)中でホモジナイズした。1つのアリコット(1ml)を遠心分離した(74,200xg、4℃で1時間)。1ml SDS(Aqua bidest中、2% SDS)中にペレットを懸濁し、上述のように遠心分離し、そして上清を−20℃に維持した(SDS分画)。
【0167】
Aβ種の測定
各Tgマウスの脳ホモジネートSDS分画において、そしてCSFにおいて、ヒトAβ38、Aβ40およびAβ42レベルをMesoscale DiscoveryのAβキットで測定した。Aβレベルをペプチド標準に比較して、pg/mg脳(湿重量)またはpg/ml CSFとして評価した。
【0168】
生化学パラメーターに関する統計
すべての評価したパラメーターに対して、記述統計分析を行った。平均±標準偏差(SD)として、データを示した。グラブス検定を用いて、異常値を検出した。コルモゴルフ・スミルノフ正常値分布検定を用いて、値の正常値分布を試験した。パラメトリックANOVA後のボンフェローニ事後検定によって、すべてのTg群間の群相違を計算した。
【0169】
CSF試料におけるAβレベル
免疫吸着アッセイで、各TgマウスのCSF試料におけるヒトAβ38、Aβ40およびAβ42レベルを測定した。hAPPSLマウスにおいて、Aβ40のCSFレベルは、典型的には、Aβ42およびAβ38のレベルを超える。3つの分析物はすべて、p−FTAA治療によって影響を受けた。平均Aβ38、Aβ40およびAβ42レベルは、ビヒクル治療群で最高であり、そして10mg/kg/日で治療した動物で最低であった。ビヒクル群に比較して、10mg/kg/日のp−FTAA治療のCSF Aβ低下効果は、ワンウェイANOVAで非常に有意であった(Aβ38に関してp<0.001、そしてAβ40およびAβ42に関してp<0.01)。0.1mg/kg/日で治療した動物もまた、より低い平均Aβレベルを示したが、統計的有意性は、Aβ38に関してのみ観察された。1mg/kg/日のp−FTAAを投与された群は、ビヒクル対照と有意には異ならなかった(図8(A))。
【0170】
脳試料におけるAβレベル
増加する強度の溶媒:SDSで、脳からAβを連続的に抽出した。免疫吸着アッセイで、各TgマウスのSDS分画において、ヒトAβ38、Aβ40、およびAβ42レベルを測定した(図8(B))。
【0171】
SDS分画中のAβレベルに関して、有意な群相違が観察された:平均Aβレベルは、ビヒクル治療群で最高であり、そして10mg/kg/日で治療した動物で最低であった。ビヒクル対照群および10mg/kg/日の群間の平均Aβ38、Aβ40およびAβ42レベルの相違は非常に有意であった(p<0.001)。平均がより低いことに加えて、10mg/kg/日の群の群内変動は非常に低く、これはT.I.有効性(affectivity)の別の証拠と解釈されうる。
【0172】
p−FTAAの最高投薬量(10mg/kg/日)での治療は、CSFにおいて、およびSDS脳ホモジネート分画において、Aβ38、Aβ40およびAβ42レベルを有意に減少させた。
【0173】
データは示さないが、本発明者らはまた、4ヶ月齢雌hAPPSLトランスジェニックマウスにおいて、14日間のp−FTAA治療を行うと、脳ホモジネート由来の[可溶性]アミロイドベータのDEA抽出におけるAβ38、Aβ40またはAβ42レベルの減少につながることにも注目した。この効果は10mg/kg/日の群で最強であった。
【0174】
8.4 8ヶ月齢の雌hAPPSLトランスジェニックマウスにおける、p−FTAA化合物で30日間治療した効果:モリスの水迷路(MWM)試験
ビヒクル: リン酸緩衝生理食塩水(PBS;6.7mM PO4、155mM NaCl、pH=7.3〜7.5)(LonzaのBioWhittaker PBS)。
【0175】
T:I: p−FTAA、Mw=617g/mol、脱イオン水中のストック溶液(10mg/ml)から、ビヒクル中に希釈。
Tg hAPPSL: C57BL/6xDBAバックグラウンドで、ネズミThy−1プロモーターの調節下、hAPP(751)を過剰発現するトランスジェニックhAPPSLマウス。
【0176】
8ヶ月齢から始めて、雌hAPPSLマウスをビヒクルのみでまたは3つの投薬量のp−FTAAで30日間治療した。試験物品(T.I.)p−FTAAをビヒクル中、3つの投薬量で投与した。4つの異なる治療群に割り当てた48匹のhAPP Tgマウスに加えて4匹の予備を、ビヒクルのみ(対照)、あるいは0.1mg/kg/日、1mg/kg/日、または10mg/kg/日の投薬量のp−FTAAのいずれかで治療した。さらなる対照として、hAPPSLマウスの12nのTg同腹仔(加えて、1匹の予備)をビヒクルのみで治療した。ビヒクルおよびT.I.を腹腔内(i.p.)で1日2回、30日間投与した。
【0177】
治療期間の終了時の4日間(治療第24〜27日)、MWMを行った。21±2℃の温度の水道水を満たした循環プール(100cm直径)を実質的に四分円に分けた。透明なプラットホーム(直径8cm)を水面の約0.5cm下に置いた。全試験セッション中、プローブ試験を除いて、プラットホームはプールの南東四分円に位置した。
【0178】
各マウスは、連続4日間、毎日3回の水泳試験を行わなければならなかった。単一の試験は最長1分間続いた。この期間中、マウスには、隠れた透明なターゲットを見つけ出す機会があった。動物が水から抜け出す「道」を見出さなかった場合、試験者がマウスをプラットホームに誘導するかまたはプラットホーム上に置いた。各試験の後、マウスをプラットホーム上で10〜15秒間休ませて、環境に適応させた。プールの周囲の壁には、黒く太い幾何学的模様(例えば円および正方形)を含むポスターを固定して、これを、マウスが空間適応のための目印として使用可能であった。
【0179】
逃避潜時(隠れたプラットホームを発見するのに必要な時間、すなわち水から逃れるのに必要な時間)、泳路(ターゲットに到達するまでの長さ)、水泳速度および調査試験においては以前のプラットホーム位置の横断、およびターゲット四分円における滞在を評価した。測定には、プール中央上のカメラを用いたコンピュータによるトラッキングシステムを用いた。
【0180】
試験の1つにおいて、0.08m/s未満の水泳速度である動物は、浮遊個体(floarter)と同定し、すべての試験の統計分析からは排除し、そしてグラフ中には示さなかった。
【0181】
MWMパラメーターに関する統計
すべての評価したパラメーターに対して、記述統計分析を行った。平均±標準誤差(SEM)として、データを示した。グラブス検定を用いて、異常値を検出した。コルモゴルフ・スミルノフ正常値分布検定を用いて、値の正常値分布を試験した。パラメトリックANOVA後のボンフェローニ事後検定によって、またはガウス分布が失われている場合、ノンパラメトリック・クラスカル・ワリスANOVA後のダン事後検定によって、群相違を計算した。ツーウェイANOVA後のボンフェローニ事後検定によって、学習曲線を評価した。ビヒクル治療Tg動物(A群)を対照群として用いた。
【0182】
10mg/kg p−FTAAで治療したマウスは、泳路に関しては、いかなる他のTg群よりも優れた成績を示した(図9)。
8.5 8ヶ月齢の雌hAPPSLトランスジェニックマウスにおける、p−FTAA化合物で30日間治療した効果:斑負荷量
ビヒクル: リン酸緩衝生理食塩水(PBS;6.7mM PO4、155mM NaCl、pH=7.3〜7.5)(LonzaのBioWhittaker PBS)。
【0183】
T:I: p−FTAA、Mw=617g/mol、脱イオン水中のストック溶液(10mg/ml)から、ビヒクル中に希釈。
Tg hAPPSL: C57BL/6xDBAバックグラウンドで、ネズミThy−1プロモーターの調節下、hAPP(751)を過剰発現するトランスジェニックhAPPSLマウス。
【0184】
8ヶ月齢から始めて、雌hAPPSLマウスをビヒクルのみでまたは3つの投薬量のp−FTAAで30日間治療した。試験物品(T.I.)p−FTAAをビヒクル中、3つの投薬量で投与した。4つの異なる治療群に割り当てた48匹のhAPP Tgマウスに加えて4匹の予備を、ビヒクルのみ(対照)、あるいは0.1mg/kg/日、1mg/kg/日、または10mg/kg/日の投薬量のp−FTAAのいずれかで治療した。さらなる対照として、hAPPSLマウスの12nのTg同腹仔(加えて、1匹の予備)をビヒクルのみで治療した。ビヒクルおよびT.I.を腹腔内(i.p.)で1日2回、30日間投与した。
【0185】
血液試料採取後、マウスを生理学的(0.9%)生理食塩水で経心的に灌流した。頭蓋から脳を除去し、そして小脳を切り落とし、ドライアイス上で直ちに凍結し、そして−80℃で保存した。残りの脳を半切除し、そして左半球の重量を測定し、ドライアイス上で直ちに凍結し、そしてAβ分析まで−80℃で保存した。セクション4.3.1に記載するように、右半球をパラホルムアルデヒドで固定した。
【0186】
新鮮に調製した4%パラホルムアルデヒド/PBS(pH7.4)中に室温で1時間浸すことによって、すべてのTgマウスの右半球を固定した。その後、脳を15%スクロースPBS溶液に24時間移して、凍結保護を確実にした。翌日、イソペンタン中で脳を凍結し、そして組織学的分析に用いるまで、−80℃で保存した。
【0187】
Tg群あたり6匹の動物から、層あたり15の(全部で5層)、各々10μm厚の凍結切片(Leica CM 3050S)を矢状方向に切った。PaxinosおよびFranklinの形態学アトラス“The Mouse Brain”(第2版)にしたがって、脳レベルを選択した。図105(歯状回の全体概観)に対応するランダムスライスで出発して、5つのレベルで切り、次いで、試料採取を連続して、均一に、そして体系的に行い、常に、シリーズ中のレベルあたり15片のスライスを維持し、そしてレベル間の100μmは廃棄した。
【0188】
二重インキュベーションにおいて、ヒト・アミロイドペプチドのAA1−17に対して向けられる6E10 IHCでの染色およびベータシート構造に対するチオフラビンS染色によって、斑負荷量を定量化した。すべての調べた動物の組織を均一に扱った。
【0189】
組織学的パラメーターに関する統計
すべての評価したパラメーターに対して、記述統計分析を行った。平均±標準誤差(SEM)として、データを示した。グラブス検定によって異常値を検出し、そして統計分析から排除した。動物あたり5回の単一測定(各カットレベルから1つ)の値を、動物あたり1つの値に統合した(個体平均)。これらの統合値を用いて、群平均を計算した。コルモゴルフ・スミルノフ正常値分布検定後、パラメトリックANOVA後のニューマン・クールズ多重比較事後検定によって、またはガウス分布が失われている場合、ノンパラメトリック・クラスカル・ワリスANOVA後のダン多重比較検定によって、相違を計算した。
【0190】
図10は、海馬においてp−FTAA治療の効果が大きく、皮質においては有意な変化がないことを示す。このマウスモデルの皮質および海馬における斑負荷量発展が異なることに関しては、完全に、凝集阻害化合物の概念に適合する。p−FTAA治療マウスにおける海馬斑面積パーセントは、ビヒクル対照に比較して減少する(図10)。平均斑サイズの減少によるこの効果に関する統計的有意性は、t検定によって、1mg/kgおよび10mg/kg p−FTAA治療マウスに関して立証された。治療期間はわずか30日であったが、1mg/kg治療動物に関して、斑面積の40%の減少が達成された。
【0191】
SDS脳ホモジネート分画におけるAβレベル減少と一致して、p−FTAAでの治療は、斑負荷量の減少を導いた。これは、主に、海馬で可視であり、海馬では、皮質より斑がより成熟しない。この効果は、ヒト・アミロイドに対する6E10 IHCで、ならびに斑中央に位置するベータシートコアのチオフラビン染色で観察された。斑コア周囲のより拡散した6E10 IRの減少は、10mg/kg p−FTAA治療で最強であり、一方、ベータシートコアに対する最強の効果は、1mg/kg p−FTAA治療で観察された。
【0192】
8.6 初代ニワトリニューロンにおいてAβ1−42が誘導する病変に対する2つの物質の効果:神経保護性
T:I_1: p−HTAA、Mw=529g/mol、PBS+1.33%DMSO中のストック溶液(10mg/ml)から、ビヒクル中に希釈。
【0193】
T:I_2: POWT−13、Mw=2782g/mol、脱イオン水中のストック溶液(40mg/ml)から、ビヒクル中に希釈。
細胞供給源: 8週齢のニワトリ胚(Lohman Brownハイブリッド)由来の終脳ニューロン
栄養培地: 4.5gグルコース/l、5% Nu血清、0.01%ゲンタマイシン、2mM L−グルタミンを含むDMEM
群サイズ: 実験あたりの各T.I.およびR.I.濃度に関して、n=6
病変: 10μM Aβ1−42(48時間プレ凝集)をDIV8で48時間
効果の評価: DIV10に対するMTT
1回の単一実験の期間: 9日間
アッセイあたりの独立実験の数: n=2
ニワトリ終脳ニューロンの調製
1日齢の受精卵を飼育開始まで、適切な条件下で保存する。胚第0日、卵を飼育インキュベーターに移し、そして胚第8日まで、回転させながら、37.8℃および55%湿度に維持した。すべての細胞培養実験を無菌条件下で行い、すなわちすべての処置は、特別な細胞培養装置を用い、細胞培養設備中で行う。ガラス製品、ピンセットまたははさみなどの必要な物品は、実験前に滅菌する。購入するストック溶液はすでに無菌であり、そして培地などの最終懸濁物は、ラミナエアフローキャビネット中で新鮮に調製される。ニューロン調製は、簡潔には、胚をプラスチックディッシュに移し、そして断頭する。両半球を取り除き、収集し、そしてほぐれた組織はいずれもきれいに取る。半球を機械的に分離し、そして160μlの体積中、各ウェル中に、4.8x10細胞をプレーティングする。ニワトリ終脳ニューロンに関する細胞培地は、4.5gグルコース/l、5% Nu血清、0.01%ゲンタマイシンおよび2mM L−グルタミンを含むDMEMからなる。培養を37℃、95%湿度および5%COで維持する。
【0194】
Aβ1−42の凝集
Aβ1−42ペプチドを0.25%NH中に溶解して最終濃度を1mMとする。次いで、溶解したAβ1−42ペプチドをPBSで希釈して、最終濃度255μMとし、そして37℃で48時間インキュベーションする。48時間凝集させた後、Aβ1−42ペプチドを超音波水槽中で1分間、超音波処理する(どちらの場合も、Aβ1−42ペプチドが、試験物品とともにまたは別個に凝集する)。
【0195】
MTT生存度アッセイ
記載されるようにプレート読み取り装置(570nm)を用いて、例えばSOP MET004において、培養の生存度をMTTアッセイで決定する。MTTアッセイは、ミトコンドリア・デヒドロゲナーゼ(コハク酸デヒドロゲナーゼ)による、黄色MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5,ジフェニルテトラゾリウムブロミド)の、濃青色ホルマザン結晶への還元に基づく。この反応は、生存細胞のみで触媒されるため、細胞生存度の定量化のために、このアッセイを用いてもよい。細胞生存度の決定のため、最終濃度0.5mg/mlまで、MTT溶液を各ウェルに添加する。2時間後、MTT含有培地を吸引する。細胞を3%SDSで溶解し、そしてホルマザン結晶をイソプロパノール/HClに溶解する。光学密度を概算するため、プレート読み取り装置(Anthos HTIIまたはμquant)を波長570nmで用いる。細胞生存度を光学密度(OD)で表す。
【0196】
Aβ1−42病変における試験物品および参照物品の適用
DIV8で、プレ凝集させたAβ1−42を最終濃度10μMで48時間適用する。T.I.を以下のように適用する:
1)PBS中、凝集開始時(DIV6)に、Aβ1−42に直接適用;凝集48時間後、DIV8に、試験物品の存在下でプレ凝集させたAβ1−42を細胞に48時間適用するか、または
2)ニワトリニューロンに対して、プレ凝集させたAβ1−42とともに(DIV8)48時間適用。
【0197】
参照物品は、プレ凝集させたAβ1−42とともに(ポイント2)のみ培養に適用し、凝集開始時(ポイント1)にAβ1−42に直接は添加しない。
細胞上でT.I.およびAβ1−42を48時間インキュベーションした後(DIV10)、ニューロン生存度をMTTアッセイによって分析する。
【0198】
対照
以下の対照を用いた:
1)ビヒクル対照(各試験物品および参照物品に関して)
2)試験物品および参照物品を伴わないAβ1−42
3)10μM T.I.のみ(未提示)
結果
試験物品(T.I.)およびすでにプレ凝集させたAβ1−42をニューロンに同時に適用すると、図11に示すような結果が生じる。どちらの化合物も、10μM Aβ1−42のみに比較して、より優れた生存度を生じる。T.I.の10μM Aβ1−42に対する化学量論比をグラフの下に示す。
【0199】
凝集にAβ1−42に試験物品(T.I.)を添加すると、図12に示す結果が生じる。どちらの化合物も、10μM Aβ1−42のみに比較して、より優れた生存度を生じる。T.I.の10μM Aβ1−42に対する化学量論比をグラフの下に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物被験体の療法的治療のための、以下の式(I)の単分散化合物またはその医薬的に許容される塩:
【化1】

[式中、
nは1、2、3または4であり;
各pは独立に0、1、2であり;
各Aは、チエニレン、フェニレン、フルオレニレン、ベンゾチエニレン、エチレンジオキシチエニレン、ベンゾチアジアゾリレンおよびビニレンより独立に選択される部分であり、該部分は、1または2のR基で置換されていてもよく;
各Rは、1〜3のR基で置換されていてもよい、Hおよびチエニルより独立に選択され;
各R、RおよびRは、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシポリオキシアルキレン、アルコキシ、アルコキシアルキル、ポリオキシアルキレン、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルコキシ、カルボキシアルコキシアルキル、カルボキシポリオキシアルキレン、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシアルキル、アルコキシカルボニルポリオキシアルキレン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アミノアルコキシ、アルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アミノポリオキシアルキレン、アルキルアミノポリオキシアルキレン、ジアルキルアミノポリオキシアルキレン、アミノアルコキシアルキル、アルキルアミノアルコキシアルキル、ジアルキルアミノアルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、アシルアミノ、アシルアミノアルキル、アシルアミノアルコキシ、アシルアミノアルコキシアルキル、アシルアミノポリオキシアルキレン、アシルアルキルアミノ、アシルアルキルアミノアルキル、アシルアルキルアミノアルコキシ、アシルアルキルアミノアルコキシアルキル、アシルアルキルアミノポリオキシアルキレン、ヒドラジノカルボニル、ヒドラジノカルボニルアルキル、ヒドラジノカルボニルアルコキシ、ヒドラジノカルボニルアルコキシアルキル、ヒドラジノカルボニルポリオキシアルキレン、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルコキシ、ニトロアルコキシアルキル、ニトロポリオキシアルキレン、シアノ、シアノアルキル、シアノアルコキシ、シアノアルコキシアルキル、シアノポリオキシアルキレン、スルホ、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルおよびスルホポリオキシアルキレンより独立に選択されるか、あるいは同じチオフェン環に結合した任意の2つのRは一緒に、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルまたはスルホポリオキシアルキレンで置換されていてもよいアルキレンジオキシであり、
任意のNH基は、tert−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメートまたは9−フルオレニルメチルカルバメートとして保護されるか、あるいはビオチニル部分で置換されていてもよく;そして
任意のアルキルまたはアルキレン部分は、C1−C6アルキルまたはアルキレンである]。
【請求項2】
各Aが、チエニレン、フェニレン、およびエチレンジオキシチエニレンより独立に選択される部分であり、該部分が、1または2のR基で置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
pが0または1である、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
以下の式(II)の単分散化合物またはその医薬的に許容される塩:
【化2】

[式中、
各pは0、1、2より独立に選択され;
vは0、1、2であり;
各uは0、1、2、3より独立に選択され;
但し、すべてのp、v、uが0であることはなく;
各R、RおよびRは、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシポリオキシアルキレン、アルコキシ、アルコキシアルキル、ポリオキシアルキレン、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルコキシ、カルボキシアルコキシアルキル、カルボキシポリオキシアルキレン、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシアルキル、アルコキシカルボニルポリオキシアルキレン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アミノアルコキシ、アルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アミノポリオキシアルキレン、アルキルアミノポリオキシアルキレン、ジアルキルアミノポリオキシアルキレン、アミノアルコキシアルキル、アルキルアミノアルコキシアルキル、ジアルキルアミノアルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(ジアルキルアミノ)(カルボキシ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシ、(アルコキシカルボニル)(アミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキル、(アルコキシカルボニル)(アミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(アルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、(アルコキシカルボニル)(ジアルキルアミノ)ポリオキシアルキレン、アシルアミノ、アシルアミノアルキル、アシルアミノアルコキシ、アシルアミノアルコキシアルキル、アシルアミノポリオキシアルキレン、アシルアルキルアミノ、アシルアルキルアミノアルキル、アシルアルキルアミノアルコキシ、アシルアルキルアミノアルコキシアルキル、アシルアルキルアミノポリオキシアルキレン、ヒドラジノカルボニル、ヒドラジノカルボニルアルキル、ヒドラジノカルボニルアルコキシ、ヒドラジノカルボニルアルコキシアルキル、ヒドラジノカルボニルポリオキシアルキレン、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルコキシ、ニトロアルコキシアルキル、ニトロポリオキシアルキレン、シアノ、シアノアルキル、シアノアルコキシ、シアノアルコキシアルキル、シアノポリオキシアルキレン、スルホ、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルおよびスルホポリオキシアルキレンより独立に選択されるか、あるいは同じチオフェン環に結合した任意の2つのRは一緒に、スルホアルキル、スルホアルコキシ、スルホアルコキシアルキルまたはスルホポリオキシアルキレンで置換されていてもよいアルキレンジオキシであり、
任意のNH基は、tert−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメートまたは9−フルオレニルメチルカルバメートとして保護されるか、あるいはビオチニル部分で置換されていてもよく;そして
任意のアルキルまたはアルキレン部分は、C1−C6アルキルまたはアルキレンである]。
【請求項5】
各R、RおよびRが、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルコキシ、カルボキシアルコキシアルキル、カルボキシポリオキシアルキレン、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシアルキル、アルコキシカルボニルポリオキシアルキレン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アミノアルコキシ、アルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アミノアルコキシアルキル、アルキルアミノアルコキシアルキル、ジアルキルアミノアルコキシアルキル、アミノポリオキシアルキレン、アルキルアミノポリオキシアルキレン、ジアルキルアミノポリオキシアルキレン、(アミノ)(カルボキシ)アルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシ、(アミノ)(カルボキシ)アルコキシアルキル、(アミノ)(カルボキシ)ポリアルコキシアルキレンより独立に選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
各R、RおよびRが、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルキルおよび(アミノ)(カルボキシ)アルコキシより独立に選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
各R、RおよびRが、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノアルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルキルおよび(アミノ)(カルボキシ)アルコキシより独立に選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
各Rが、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノアルキル、(アミノ)(カルボキシ)アルキルおよび(アミノ)(カルボキシ)アルコキシより独立に選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
各Rがカルボキシである、請求項4〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
vが0である、請求項4〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
各pが独立に0または1である、請求項4〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
各uが独立に0または1である、請求項4〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
u=v=0およびp=2である場合、Rがカルボキシエチルでなく、好ましくはカルボキシアルキルでない、請求項4〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
【化3】

より選択される、請求項4に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項15】
ヒトまたは動物被験体の療法的治療において使用するための、請求項4〜14のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項16】
哺乳動物におけるタンパク質のミスフォールド型または凝集型が関与する疾患を患う哺乳動物の治療のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項17】
前記疾患がアミロイドーシスである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記疾患が、原発性アミロイドーシス、続発性アミロイドーシス、臓器特異的アミロイドーシスおよび医原性インスリンアミロイドーシスからなる群より選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
前記臓器特異的アミロイドーシスが、脳特異的アミロイドーシスより選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項20】
前記疾患が、原発性アミロイドーシス、続発性アミロイドーシス、家族性または遺伝性アミロイドーシス、2型糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、伝染性海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病、クールー、致死性家族性不眠症、封入体筋炎、ウシ海綿状脳症およびコンゴーレッド親和性血管障害など)、心臓アミロイドーシス、ならびに医原性状態(インスリンアミロイドーシスなど)からなる群より選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項21】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物、および場合によって、医薬的に許容される緩衝剤、希釈剤、賦形剤および/またはキャリアーを含む、医薬組成物。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の2以上の単分散化合物の混合物を含む、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
タンパク質のミスフォールド型または凝集型が関与する疾患を患う哺乳動物の治療法であって、請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物を該哺乳動物に投与する工程を含む、上記方法。
【請求項24】
タンパク質のミスフォールド型または凝集型が関与する疾患を患う哺乳動物の治療法であって、請求項1〜16のいずれか1項に記載の少なくとも2つの化合物の混合物を該哺乳動物に投与する工程を含む、上記方法。
【請求項25】
前記疾患がアミロイドーシスである、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患が、原発性アミロイドーシス、続発性アミロイドーシス、臓器特異的アミロイドーシスおよび医原性インスリンアミロイドーシスからなる群より選択される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項27】
前記臓器特異的アミロイドーシスが、脳特異的アミロイドーシスより選択される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患が、原発性アミロイドーシス、続発性アミロイドーシス、家族性または遺伝性アミロイドーシス、2型糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、伝染性海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病、クールー、致死性家族性不眠症、封入体筋炎、ウシ海綿状脳症およびコンゴーレッド親和性血管障害など)、心臓アミロイドーシス、ならびに医原性状態(インスリンアミロイドーシスなど)からなる群より選択される、請求項23または24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−505879(P2012−505879A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532044(P2011−532044)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051187
【国際公開番号】WO2010/044743
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511097485)バイオクロミクス・ファーマ・アクチボラグ (1)
【Fターム(参考)】