説明

癌の介入治療および根絶のためのITE

ITEと称されるアリール炭化水素(Ah)受容体(AhR)に対する内因性リガンドまたはその類似体(活性成分)の1つの有効量を、癌を患う被験者に投与することで、癌を介入治療または根絶する方法を開示する。活性成分の有効量および投与回数は、投与後の被験者におけるその血中濃度を測定して決定する。担体系を用いて調合された活性成分は、被験者に局所的、経腸的、または非経口で投与される。また、調剤薬物は1以上のその他の癌治療薬と共に投与することが可能である。維持量は癌の根絶を確実とするために被験者に癌が存在しなくなった後に提供される。前立腺癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、および乳癌の被験者が好ましくは治療を受けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
癌療法、癌治療、癌介入治療、癌根絶、癌生物学、腫瘍学、治療学、薬学、生物薬剤学。
【背景技術】
【0002】
アリール炭化水素(Ah)受容体(AhR)は、リガンド誘導性の転写因子であり、いわゆるbasic helix−loop−helix/Per−Arnt−Sim(bHLH/PAS)スーパーファミリーに属している。AhRはそのリガンドに結合すると、P450ファミリー等の遺伝子発現に加えて、細胞分裂、アポトーシス(プログラムされた細胞死)、細胞分化、エストロゲンおよびアンドロゲンの作用、脂肪分化、視床下部作用、血管新生、免疫系の刺激または抑制、催奇形性、腫瘍原性、腫瘍発生、腫瘍促進、腫瘍進行、塩素座瘡、消耗症候群、およびその他のホルモン系の作用を含む、一連の生物学的過程およびいくらかの有害効果を仲介し、または相互作用する[1、2、3、4、5、6、7、8]。リガンド受容体は、細胞質から細胞核への転位、Ah受容体核内輸送体と称される他の因子とのヘテロ二量化、AhR制御のもとでAh応答エレメントと称される遺伝子の調節領域へのヘテロ二量体の接着、そしてこれらの遺伝子の転写の促進または抑制を介して、生物学的過程に関与している。
【0003】
AhRは、3−メチルコラントレン(3−MC)によって例示される多環芳香族炭化水素、および2,3,7,8−テトラクロロジベンゾパラジオキシン(TCDD)によって代表されるハロゲン化芳香族炭化水素などの外因性化学物質(したがって人工的リガンド)のいくつかのグループと、様々な親和力で結合が起こり得る。これまでに受容体系はその人工的リガンドを対象にして研究されてきた。これらのAhR人工的リガンドの研究は受容体系に対する私たちの理解を前進させることに役立ってきた一方で、系が担う生理学的役割および系が提供し得る潜在的治療効果における徹底的な解明は、AhR生理学的リガンドを特定せずには不可能である。この目標に対する最初の段階として、受容体に対する内因性リガンドが特定された。AhRに対する、内因性リガンド、または生理学的リガンド、または天然ホルモンを、2−(1’H−インドール−3’−カルボニル)−チアゾール−4−カルボン酸メチルエステル(短縮形はITE)として特定した[9,10]
【0004】
AhRに対する大部分の人工的リガンドは環境有害物質[1,2,3]であるため、治療薬としては使用不可能である。しかしながら、リガンドAhRの機能を理解するために、TCDD、6−メチル−1,3,8−トリクロロジベンゾフラン(6−MCDF)、8−メチル−1,3,6−トリクロロジベンゾフラン(8−MCDF)、およびインドールまたはトリプトファンからの誘導体などのその人工的リガンドは、リガンドAhRが、遺伝子導入マウス系統における前立腺腫瘍の転位[11]、ならびに発癌物質誘発ラット乳腺腫瘍[12,13,14]、ヒト乳房腫瘍細胞異種移植片[15,16]、および遺伝子突然変異に起因する腫瘍[17]の増殖を、抑制可能であることを明らかにするために使用された。
【0005】
AhRの天然リガンドとして、ITEは受容体を正確かつ特異的に標的とすることにおいて優れた作用因子である。しかしながら、いくつかの結果が抗癌の可能性を示し[12,13,14,15,16]、一方では他の結果が腫瘍の発生、促進、および進行を示す[8,18,1920,21]、今までにAhRのこれらの人工的リガンドの挙動から学んできたことからは、標的の結果は予測不可能である。ITEは血管新生阻害を示すことから、癌療法において有用であろう[7]。しかしながら血管新生阻害単独の性質からは、ITEを効果的な抗癌剤として直ちに見なすことは不可能である。論点を提供している多数の例が存在している[22,23、24、25]。多くの血管新生阻害薬は治療薬としての機能を果たすことができず[22]、多くの他の薬剤は、恐らく薬剤から生じるストレスで腫瘍への酸素および栄養の供給が制限されることによって、腫瘍の浸潤および転移をさらに加速させた[26,27]。転移を加速させる可能性により、癌療法の絶対基準である全生存率さえも減少させるため、血管新生阻害療法は実際のところ懸念されている[23]。そのAhRの人工的リガンドによって明らかとなったリガンドAhRの抗癌特性から[12,13,14,15,16]、ITEがいったん同じ受容体に結合すると、多数のこれらの人工的リガンドまたはそれらの代謝産物が試験されたこれらの癌細胞に高い毒性を有し得るという、言うまでもないこれらの人工的リガンドが行ったことを、ITEも部分的にでも成し得ることを保証するものではない。そういう意味では、これらの人工的リガンドまたはそれらの代謝産物は、Ah受容体を標的とした結果ではなく、癌細胞を殺すという単に無差別の細胞毒性薬としての機能を果たすであろう。
【0006】
さらに、リガンド受容体が成し得ることを決定する重要な要素は、リガンド受容体が担う最終の3次元(3D)構造にある。なぜなら、3D構造は、リガンド受容体がいくつの様々な細胞性因子と相互作用するのか、およびこれらの相互作用が生命の過程を実行するためにどのように実施されるべきかを決定付けるためである。そして、リガンド受容体が担う最終の3D構造は、所定の生物系において、受容体に対してリガンドの3D構造によってのみ形成される。これがなぜリガンドの3D構造が、その受容体媒介性の生物学的過程および薬理学的過程に関してこれほど重要であるかを説明する基本的原理である。さらに、異なる構造を有するリガンドは異なる代謝を行い、それらの異なる代謝は確実に生物学的過程を異なる態様にて妨害し得る。したがって、異なる3D構造を有するリガンドは同じ受容体に結合したとしても、完全に異なる生物学的影響を確実にもたらし得ることは明らかである。
【0007】
論点の妥当性は、上述した理論および当然ながら文献データの例示からも容易に確立し得る。例えば、TCDDおよび6−ホルミルインドーロ[3,2−b]カルバゾール(FICZ)の両方はAhRに対する高親和性のリガンドではあるが、TCDDは調節性T細胞の分化を刺激することが分かっており、そのため免疫系を抑制し、一方で、FICZはTh17細胞の分化を促進して免疫系を刺激し得る[28]。他の実施例では、TCDDおよびITEの両方はAhRに対する高親和性のリガンドではあるが、TCDDが口蓋裂、水腎症、および胸腺萎縮を誘発する一方で、ITEはこれらのいずれも誘発しなかった[29]。さらなる実例を文献において容易に発見することが可能である[30、31、32、33、34]。したがって、明確な回答を見出すための異なる実験モデルおよびシステムを用いた広範囲にわたる研究プログラムを行わずして、抗癌特性を示すAhRに対する人工的リガンドのこれらの研究[12、13,14、15、16]、またはその血管新生阻害特性を証明するITEの研究[7]からも、ITEが優れた抗癌剤であることは全く明らかではない。
【0008】
こうした状況のために、私たちはITEまたはその構造類似体の1つが癌を治療または根絶するために効果的かつ安全に使用可能であるかどうかの調査を進めた。本発明は癌の介入治療または根絶において、新たに発見された内因性のAh受容体リガンドであるITEまたその構造類似体の1つを治療薬として使用する方法を十分に開示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7419992号明細書
【特許文献2】米国特許第6916834号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Poland A,Knutson JC.2,3,7,8−tetrachlorodibenzo−p−dioxin and related halogenated aromatic hydrocarbons:examination of the mechanism of toxicity.Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.1982;22:517−554.
【非特許文献2】Poellinger L.Mechanistic aspects−−the dioxin(aryl hydrocarbon)receptor.Food Add it Contam.2000;17(4):261−6.
【非特許文献3】Bock KW,Kohle C.Ah receptor− and TCDD−mediated liver tumor promotion:clonal selection and expansion of cells evading growth arrest and apoptosis.Biochem.Pharmacol.2005;69(10):1403−1408.
【非特許文献4】Stevens EA,Mezrich JD,Bradfield CA.The aryl hydrocarbon receptor:a perspective on potential roles in the immune system.Immunology.2009;127(3):299−311.
【非特許文献5】Puga A,Tomlinson CR,Xia Y.Ah receptor signals cross−talk with multiple developmental pathways.Biochem Pharmacol.2005;69(2):199−207.
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【非特許文献7】Dietrich C,Kaina b.The aryl hydrocarbon receptor(AhR)in the regulation of cell−cell contact and tumor growth.Carcinogenesis.2010;31(8):1319−1328.
【非特許文献8】Song J,Clagett−Dame M,Peterson RE,et al.A ligand for the aryl hydrocarbon receptor isolated from lung.Proc Natl Acad Sci USA.2002;99(23):14694−9.
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【非特許文献28】Brauze D,Widerak M, Cwykiel J,Szyfter K,Baer−Dubowska W.The effect of aryl hydrocarbon receptor ligands on the expression of AhR,AhRR,ARNT,Hif1alpha,CYP1A1 and NQO1 genes in rat liver.Toxicol.Lett.2006;167(3):212−220.
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【非特許文献32】Sanderson JT,Slobbe L,Lansbergen GW,Safe S,van den Berg M.2,3,7,8−Tetrachlorodibenzo−p−dioxin and diindolylmethanes differentially induce cytochrome P450 1A1,1B1,and 19 in H295R human adrenocortical carcinoma cells.Toxicol.Sci.2001;61(1):40−48.
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【非特許文献34】Puga A,Marlowe J,Barnes S,et al.Role of the aryl hydrocarbon receptor in cell cycle regulation.Toxicology.2002;181−182:171−7.
【非特許文献35】Marlowe JL,Knudsen ES,Schwemberger S,Puga A.The aryl hydrocarbon receptor displaces p300 from E2F−dependent promoters and represses S phase−specific gene expression.J Biol Chem.2004;279(28):29013−22.
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【非特許文献37】Singh NP,Nagarkatti M,Nagarkatti P.Primary peripheral T cells become susceptible to 2,3,7,8−tetrachlorodibenzo−p−dioxin−mediated apoptosis in vitro upon activation and in the presence of dendritic cells.Mol.Pharmacol.2008;73(6):1722−1735.
【非特許文献38】Park K,Mitchell KA,Huang G,Elferink CJ. The aryl hydrocarbon receptor predisposes hepatocytes to Fas−mediated apoptosis.Mol Pharmacol.2005;67(3):612−22.
【非特許文献39】Jux B,Kadow S,Esser C.Langerhans cell maturation and contact hypersensitivity are impaired in aryl hydrocarbon receptor−null mice.J.Immunol.2009;182(11):6709−6717.
【非特許文献40】Sutter CH,Yin H,Li Y,et al.EGF receptor signaling blocks aryl hydrocarbon receptor−mediated transcription and cell differentiation in human epidermal keratinocytes.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2009;106(11):4266−4271.
【非特許文献41】Hall JM,Barhoover MA,Kazmin D,et al.Activation of the Aryl−Hydrocarbon Receptor Inhibits Invasive and Metastatic Features of Human Breast Cancer Cells and Promotes Breast Cancer Cell Differentiation.Mol Endocrinol.2009.Available at:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20032195[Accessed January 27,2010].
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【非特許文献43】Jana NR,Sarkar S,Ishizuka M,et al.Cross−talk between 2,3,7,8−tetrachlorodibenzo−p−dioxin and testosterone signal transduction pathways in LNCaP prostate cancer cells.Biochem Biophys Res Commun.1999;256(3):462−8.
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現在、癌療法の市場において2つの重大な課題がある。第1には重度の副作用および毒性であり、第2には非常に限定された有効性である。その結果、癌は米国および世界の地域において未だ死亡原因の第2位である。
【0012】
細胞毒性および非細胞毒性の両方のカテゴリーにおいて、癌に対する現在の治療薬の大多数は人体にとっては異質物である化学物質である。その結果、身体は利用可能な代謝経路を何でも使用して化学物質を取り除こうと懸命に努力する。身体はこれらの異質な化学物質を代謝する自然かつ安全な方法を有していないため、いくつかの非特異的な酸化反応が代謝の主な手段として使用される。その結果、除去過程において多数の化学的に活性な中間体またはラジカルを不可避的に生成し、それは限定されるものではないが身体の免疫系に含まれる正常な細胞物質をも攻撃し、重度の副作用、毒性、および免疫系の低下をもたらし得る。多くのこれらの薬剤は、天然物ではなく人為的に設計されたものであるため、身体において人間が予測した標的よりも(限定されるものではないが、受容体、酵素、その他のタンパク質を含む)その他の細胞性因子と結合かつ相互作用する可能性が高い。これらの「非特異的」な結合および相互作用は、副作用の著しい可能性をもたらす原因である。
【0013】
癌療法のための細胞毒性薬の有効性は、限定されるものではないが免疫系に含まれる正常な細胞および組織に対する細胞毒性薬の無差別な毒性によって、大部分が制限されている。免疫系の低下は、予想される通り、癌細胞に対する秩序立った攻撃を開始することを不可能にする。癌細胞が生存するために重要な特定の機能を標的とした非細胞毒性薬の有効性は、それらの単一機構に基づく戦略によって制限されている。しかしながら、癌の重要な特徴は、癌の絶え間ない遺伝子変化または突然変異である。生存するために治療薬が標的とする特定機能にもはや依存しない状態まで癌細胞が変化すると、薬剤の有効性は直ちに失われ得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本状況において、癌に対する統合された攻撃を構築し、癌根絶の可能性に向けて個々の癌細胞を除去し、「非特異的」な相互作用の可能性を制限し、かつ低副作用に向けて代謝自体を安全に行うために、効力が持続するよう複数の対抗能力を用いて癌を攻撃すると同時に免疫系に役立つ新規の治療薬の出現が求められている。新たに発見されたAh受容体内因性リガンドであるITEまたはその構造類似体の1つは、記載された厳しい要件を満たし得るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の最も重要な利点は、癌細胞の絶え間ない遺伝子変化の結果に立ち向かうITEまたはその構造類似体の1つにおける複数の癌攻撃能力にある。ITEは血管新生を抑制することが実証されてきた[7]。文献には、(ITEではない)その人工的リガンドをリガンドとしたAh受容体(AhR)は、細胞分裂の抑制[35,36,37]、プログラムされた細胞死(アポトーシス)の促進[38,39,40]、細胞分化の誘導[41,42,43]、およびエストロゲン[6,44]およびアンドロゲン[45,46]の作用の阻害が可能であると示されていた(これらの人工的リガンドの悪影響の可能性は、文献中では差し当たり無視されている)。最近では、(ITEではない)人工的リガンドをリガンドとしたAhRが、病原体および癌に対する攻撃の構築において、免疫系にとって有用である免疫T細胞の分化を誘発し得ることが実証された[28,47]。ITEまたはその構造類似体の1つがAhRに結合するときに、その血管新生阻害特性に加えて言及した1以上の機能も有する場合、複数の癌攻撃能力によってその癌治療効力は持続可能となる。ITEまたはその類似体の1つにおける効力持続性とさらに免疫系を刺激するその潜在能力は、癌療法における有効性を劇的に増強するだけでなく、癌根絶を可能なものにし得る。図面および実施例において示されるデータは、上述した理論的分析を明確に立証する。
【0016】
市場においてその他のリガンドをしのぐITEを使用することの非常に大きな利益としては、その複数の癌攻撃能力に裏付けられるその持続可能な有効性に加えて、その低い副作用の可能性にある。人体にとって異質物であり、かつ人為的に設計された、現在の癌療法において使用されているこれらのAhR人工的リガンドおよび薬剤を含むこれらの化学物質とは対照的に、ITEは自然界において設計された天然ホルモンであるため、自然の力によってその代謝は自然かつ安全な方法で設計および実行されるであろう。したがって、その代謝過程は身体において問題を引きこす可能性は少ないかまたは皆無であろう。これは、その代謝によって引き起こされる副作用が少ないであろうことを意味している。低副作用の可能性に関する他の重要な理由としては、天然ホルモンのその受容体(AhR)への結合は、人為的ではなく自然界において設計されているため、非常に特異的かつ正確であることである。人為的に設計したこれらの化学物質ではない天然ホルモンであるITEにおいては、副作用の重大な機会となる「非特異的」な問題を引き起こすその他の細胞性因子との結合および相互作用の可能性は低いであろう。図面および実施例において記載された実験データが論点を支持している。
【0017】
癌療法における他の重要な課題は、治療薬の効力を増強させ、かつ副作用を減少させるよう、正常細胞ではなく癌細胞に特異的に作用する治療薬が非常に望まれていることにある。この種の特異性は、薬剤が結合する標的分子が正常細胞内よりも癌細胞内に多い場合、達成可能である。ITEおよびその類似体に対する標的分子はAhRである。文献では、AhRは患者の膵臓癌組織において高濃度であるが、調査された全ての正常な膵臓組織においては非常に希薄であることが報告されている[48]。同様に、高濃度のAhRは前立腺癌[49,50]および胃癌[51]においても報告されている。これは、少なくともこれらの報告された種類の癌において、ITEおよびその構造類似体の治療特異性を達成可能であることを意味している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ITE投与における投与量、経路、およびスケジュールに反応したヒト癌細胞株LNCaP異種移植片の増殖抑制を示している。図1Aは、0(溶媒、DMSO)、0.1、1、10、20、および40mg/kg b.w.(28日間連続して12時間おきに腹腔内注射)のITE投与量に反応したLNCaP異種移植片の増殖抑制の程度を示しており(平均+SEM、n=8)、図1Bは、マウスの体重変化によって判断した担異種移植片マウスの治療に対する低毒性反応を示しており(平均+SEM、n=8)、図1Cは、示されるように使用した溶媒、投与レベル、およびAUC’s(曲線下面積)を有する、静脈注射、腹腔内注射、および経口投与でのITE投与(単回投与)におけるPK(薬物動態)特性を示しており、および図1Dは、規定されるとおり、異なる投与量(40または80mg/kg b.w.)、スケジュール(1日1回または2回)、および経路(腹腔内または経口)でのITE投与によるLNCaP異種移植片の増殖抑制を示している。
【図2】図2は、ヒトの前立腺癌細胞株(LNCaP)、肝癌細胞株(HepG2)、卵巣癌細胞株(OVCAR−3)、および乳癌細胞株(MCF−7)の異種移植片の増殖抑制における、ITE(菱型)またはITK(ITE構造類似体の1つ、正方形)の有効性(1日1回の腹腔内注射)を示している。図2Aは、両方とも20mg/kgのITEまたはITKによるLNCaP異種移植片の増殖抑制を示しており、図2Bは、両方とも80mg/kgのITEまたはITKによるHepG2異種移植片の増殖抑制を示しており、図2Cは、両方とも80mg/kgのITEまたはITKによるOVCAR−3異種移植片の増殖抑制を示しており、および図2Dは、20mg/kgのITEによるMCF−7異種移植片の増殖抑制を示している。
【図3】図3は、同系マウス・ルイス肺癌(LLC)モデルにおけるITE(1日1回の腹腔内注射)による癌の抑制および根絶を示している。図3Aは、LLC腫瘍の積極的増殖、および20mg/kgのITE投与量における腫瘍増殖抑制を示しており、図3Bでは、80mg/kgのITE(1日1回の腹腔内注射)によりLLC腫瘍のより良好な増殖抑制を示したため、治療プログラムの28日間にさらにもう1週間の注射後の観察を追加して終了することが可能であった。図3Cは、ITEグループ(正方形)からの1匹のマウス(No.33、菱型)を示しており、それは治療段階の開始からすぐに腫瘍の縮小が始まり、治療の13日目において腫瘍が存在しなくなり、残りの治療段階の間腫瘍が存在しない状態を維持し、観察段階の全1ヶ月間なお腫瘍が存在しないままであった。図3DはITE(正方形)および溶媒コントロール(丸)のグループと合わせて、マウスNo.33(菱型)の体重変化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、特別に定義されない限り、本発明の属する技術分野における当業者によって一般に使用される意味と同じである。本明細書において記載されるものと類似または同等のその他の材料および方法は、本発明の実施または試験においても使用可能であるが、好ましい材料および方法のみが以下に記載されていることを理解されたい。
【0020】
本発明は、内因性アリール炭化水素(Ah)受容体(AhR)のリガンドであるITEまたはその構造類似体の1つを用いて、癌を介入治療または根絶する方法に関するものである。ITEまたはその類似体(活性成分)の1つは、1以上の薬学的に許容される担体(担体系)を用いて調合可能である。担体系は、好ましくは無菌および無毒であり、活性成分を投与するのに有用な不活性物質から成る。担体系は活性成分と相溶性がなければならず、固体、液体、または気体の形態であってもよい。そして、適切に調合された活性成分は、局所的、経腸的、または非経口的に癌を患う被験者に投与され得る。それは、例えばクリーム、カプセル、タブレット、トローチ、または注入可能な形状で提供され得る。防腐剤などのその他の相溶性のある成分は、必要に応じて活性成分と共に調合可能である。
【0021】
好ましい介入治療プログラムでは、前立腺癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、および乳癌を患う被験者は、ITEまたはその構造類似体の1つを用いた治療を好ましくは受けることができる。しかしながら、これは決して治療範囲を限定するものではない。潜在的な癌根絶に向けて、癌を攻撃し、かつ個々の癌細胞を除去するための、ITEおよびその類似体の1つが有する複数の癌攻撃能力と、さらに被験者の免疫系を刺激する可能性を考慮すると、治療範囲は将来の試験において急速に拡大されることが想定される。
【0022】
好ましい介入治療プログラムでは、ITEまたはその構造類似体の1つにおける有効な用量範囲は、規定された投与計画のもとで、ITEまたはその構造類似体の1つの被験者における血中濃度を測定して濃度−時間特性を確立し、実施例において示されるように、試験の期間に形成された同様の濃度‐時間特性と癌の抑制または根絶に対する効果との間で確立された相関を調査し、かつ被験者に対する毒性の可能性と被験者における健康状態または身体的耐久性から達成される治療効果の平衡を保つことで決定される。ITEまたはその構造類似体の1つの投与回数は、上記の用量範囲の決定における記載と同様にして決定する。現在、1日1回のITEの経腸的または非経口的な投与が好ましいとして提案されている。投与は被験者に癌が存在しなくなるまで継続され得る。維持量は癌の完全な除去または根絶を確実にするために被験者に癌が存在しなくなった後に提供されることが好ましく、維持量の継続期間は試験によって方向付けられる。
【0023】
他の好ましい介入治療プログラムでは、ITEまたはその構造類似体の1つは、1以上のその他の癌治療薬と組み合わせて投与可能であり、それは好ましくはAhR以外の様々な治療標的に向けたものである。ITEまたはその構造類似体の1つは、1以上の前記その他の薬剤から独立して、または共に調合することが可能である。ITEまたはその構造類似体の1つは、1以上の前記その他の薬剤と同じかまたは異なるスケジュールで投与可能である。ITEまたはその構造類似体の1つと1以上のその他の癌治療薬との割合は、適切に設定された試験によって方向付けることが可能である。ITEまたはその構造類似体の1つと1以上のその他の癌治療薬との治療の組み合わせにより、有効性がさらに増強し得る。組み合わせ治療の利点を示した例は多数存在する。
【0024】
これらの好ましい介入治療プログラムにおいて、活性成分は以下の構造式(構造式1)を有するアリール炭化水素(Ah)受容体(AhR)の内因性リガンドであるITEである。
【0025】
【化1】

【0026】
これらの好ましい介入治療プログラムにおいて、活性成分はITEの2つの特に有用な構造類似体から選択可能である。ケトンまたはチオールエステルの官能基が、ITE構造中で生物系において多数のエステラーゼにより容易に標的とされる通常の(酸素)エステルに取って代わるため、前記2つの類似体は被験者の系において、類似体の安定性を増加し、そして類似体の半減期を引き伸ばすことが想定される。引き伸ばされた半減期は、癌の介入治療においてより高い有効性および/またはより長い効力の持続に転換され得る。ITEのケトン類似体(したがってITKと称する)を以下の構造式(構造式2)に示す。
【0027】
【化2】

【0028】
ITEのチオール(S、硫黄)エステル類似体(したがってITSEと称する)の構造式は以下の通りである(構造式3)。
【0029】
【化3】

【0030】
これらの好ましい介入治療プログラムでは、活性成分はITEのその他の構造類似体からさらに選択可能であり、以下の構造式(構造式4)によって定められる。
【0031】
【化4】

【0032】
式中、
XおよびYは、独立して、O(酸素)またはS(硫黄)であり、
は水素、ハロ、シアノ、ホルミル、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルカノイル、ハロアルカノイル、または窒素保護基から選択され、
、R、R、R、およびRは、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ(−OH)、チオール(−SH)、シアノ(−CN)、ホルミル(−CHO)、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ(−NO)、アルコキシ、ハロアルコキシ、チオアルコキシ、アルカノイル、ハロアルカノイル、またはカルボニルオキシから選択され、
、およびRは、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、チオール、シアノ、ホルミル、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、もしくはチオアルコキシから選択され、または、
、およびRは、独立して、
【0033】
【化5】

【0034】
であり、
式中、Rは、水素、ハロ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、もしくはアルキニルから選択され、または、
、およびRは、独立して、
【0035】
【化6】

【0036】
であり、
は、水素、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、もしくはアルキニルから選択され、または、
、およびRは、独立して、
【0037】
【化7】

【0038】
であり、
10は、水素、ハロ、ヒドロキシ、チオール、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロから選択され、または、
、およびRはまた、独立して、
【0039】
【化8】

【0040】
であり、
式中、R11は、水素、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、またはアルキニルから選択され得る。
【実施例】
【0041】
前臨床動物試験からの実例が本発明の実施形態にさらに役立つであろう。ヒト前立腺癌の増殖抑制におけるITEの使用(実施例1)、より多くのヒト癌型の増殖抑制におけるITEまたはITK(ITE類似体の1つ)の使用(実施例2)、癌根絶の可能性におけるITEの使用(実施例3)、およびITE毒性モニタリング(実施例4)を説明する。
【実施例1】
【0042】
材料
生後6〜8週間の雄のBALB/cヌードマウス(ハツカネズミ)を、イヤーコーディングによって個々に標識した。1匹の動物が各々のポリカーボネートのケージ(300mm×180m×150mm)内に入るように、動物を20〜26℃の一定温度、および40〜70%の湿度において層流室で維持した。敷料はトウモロコシの穂軸であり、それを週に2回変えた。動物は全研究期間において、無菌の乾燥顆粒飼料および無菌の飲料水を自由に利用できた。
【0043】
ITEは神戸天然物化学株式会社(KNC Laboratories Co.,Ltd.)(日本、東京所在)によって合成された。化合物のロット番号は086−009−2−1(AhR製剤に対するロット番号:AHR−001)である。DMSO(カタログ番号:0231−500ML)はAMRESCO社(アメリカ合衆国、オハイオ州、ソロン所在)において製造された。ラブラゾールをGattefosse社(フランス、サン−プリースト所在)から購入し、PEG 400はSigma社(アメリカ合衆国、ミズーリ州、セントルイス所在)から供給された。
【0044】
方法
有効性研究
本研究における動物の取り扱い、世話、および処理に関連する全ての手順は、国際実験動物管理公認協会(AAALAC)の指針に基づいて、Crown Bioscience社(アメリカ合衆国、カリフォルニア州、サンタクララ所在、私たちが雇用した開発業務受託機関)の動物実験委員会(IACUC)によって承認された指針に従って実施した。動物は、運動性、飼料および水の消費、体重の増減(総体重を週に2回測定した)、目/毛の艶消具合、およびその他のあらゆる異常効果などの、腫瘍増殖および薬剤治療が正常な行動に与えるあらゆる影響を調査した。死亡および観察される臨床兆候を、各グループ内における動物の数を基にして記録した。腫瘍体積が3,000mmを超える個々の動物、または平均腫瘍体積が2,000mmを超えるグループの動物を安楽死させた。さらに、重度の苦痛および/または痛みの兆候を示し、治療開始時の体重から体重が20%を超えて減少し、または十分な飼料もしくは水の摂取能力を喪失した動物は、人道的犠牲とした。
【0045】
ヒト前立腺癌細胞株LNCaP(ATCC、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関、アメリカ合衆国、バージニア州、マナッサス所在)を、10%のウシ胎仔血清(FBS)、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および2mMのL−グルタミンを添加したRPMI−1640培地において、空気中5%COの雰囲気下で37℃にて単層培養として生体外で維持した。腫瘍細胞を週に2回、定期的に継代培養した。対数増殖期の細胞を腫瘍接種のために採取して数えた。
【0046】
腫瘍成長のために、LNCaP細胞(1×10)/0.1mlPBSを、各マウスの右側腹部の皮下に接種した。平均腫瘍体積が約150mmに到達すると、担腫瘍マウスをそれらの腫瘍体積に基づいて均質ブロックに分け、続いて各ブロックのマウスを無作為に治療グループに振り分けた(すなわち、初期の平均腫瘍体積の差異による治療に対する腫瘍反応の変動を最小限にすることが可能である)。各治療グループは8つの担腫瘍マウスから構成された。溶媒(DMSO)または溶媒中のITEの特定の投与量を、示されるように28日間連続して1日に1回または2回、i.p.(腹腔内)注射またはp.o.(経口)投与によって、マウスに投与した。
【0047】
腫瘍体積はキャリパーを使用して2つの寸法を週に2回測定し、体積を式:V=0.5a×bを用いて算出した。式中、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径(mm)である。そして、腫瘍体積を使用して、TGI(腫瘍増殖抑制率)およびTGD(腫瘍増殖遅延)の両方を計算した。TGIを、TGI=ΔT/ΔC×100%を用いて決定した。式中、ΔTは、薬剤処理グループに対する特定の観察日と治療を開始した日(1日目)における平均腫瘍体積間の差である。一方で、ΔCは対象グループに対して測定された同様の差である。TGDを、TGD=T−Cによって算出した。式中、Tは薬剤処理グループにおいて、腫瘍が所定の平均腫瘍体積に到達するのに必要な期間(日数)であり、Cは対象グループにおいて、同様の体積に到達するのに必要な期間(日数)である。腫瘍重量は、体積1,000mmを重量1,000mgと同等と見なして得た。その後、純体重は、対応する腫瘍を有する総体重から腫瘍重量を差し引いて得た。
【0048】
各時点における各グループの腫瘍体積に関する平均および標準誤差(SEM)を含む要約統計量を提供する。グループ間の腫瘍体積の差異における統計的分析を、示されるように、最善の治療時点または最終の投与日におけるデータセットに基づいて実施した。腫瘍体積データを対数に変換し、一元配置分散分析法を用いて評価し、有意性が認められると続いてチューキー法を用いて評価した。全てのデータをSPSS16.0を用いて分析し、p<0.05を統計的に有意であるとした。
【0049】
PK研究
雄のヌードマウスをPK(薬物動態)研究においても使用した。静脈注射に関しては、1mg/kg b.w.のITEを、尾静脈からDMSOを溶媒として用いて投与した。腹腔内注射に関しては、10、40、および80mg/kg b.w.のITEを、左下腹部からDMSOを用いて送達した。経口投与では、40、および80mg/kg b.w.のITEを、ラブラゾール:PEG400(2:8、v/v)の溶媒を用いて強制経口投与した。全15匹のマウスは各投与レベルにおいて単回投与を受け、投与マウスの3匹に1匹を使用して、各時点における血液試料を採取した(0、0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、24時)。動物をそれぞれ2回サンプリングするように交代させたが、2回のサンプリング時間の間の間隔は少なくとも110分であった。動物を手作業にてイソフルランで麻酔して拘束した。各時点における約150μlの全血を、K−EDTAチューブ内に(後眼窩穿刺によって)採取する。血液試料をサンプリング後15分以内に、冷却して血漿に処理した(4,000g、5分、4℃)。血漿試料を分析するまで−80℃で貯蔵した。20μlの一定分量の血漿サンプルを20μlの内部標準(グリピジド、500ng/ml/ACN、抽出効率用)と共に、120μlのACN(アセトニトリル)に添加した。混合物を1,500rpmにて2分間ボルテックスし、その後、12,000rpmにて5分間遠心分離した。5μlの上清をLC−MS/MSシステム(API4000、アメリカ合衆国、カリフォルニア州、フォスターシティ所在)に注入した。Gemini−C18カラム(2.0×50mm、5μm)を使用し、LC(液体{えきたい}クロマトグラフィー)を0.45ml/分の流速にて、以下のプログラムで動作させた。
時間(分) 0 0.2 1.8 2.8 2.9 4
ポンプA(%)95 95 2 2 95 停止
ポンプB(%) 5 5 98 98 5 停止
【0050】
ポンプAは、1mMNHOAc(酢酸アンモニウム)/水+0.025%FA(ギ酸)用であり、一方で、ポンプBは、1mMNHOAC/アセトニトリル+0.025%FA用であった。質量分析における負イオン化過程はAPCI(大気圧化学イオン化)モードで操作し、一方で、MRM(多重反応モニタリング)モードで検出した。ITEは、2.5分のLC保持時間、かつ285.0m/z(衝突前)および142.0m/z(衝突後)の2つの質量ピークを認識して特定し、一方で内部標準は2.35分のLC保持時間、かつ444.3m/z(衝突前)および319.3m/z(衝突後)の2つの質量ピークを認識して特定した。マウスの血漿とLC−MS/MSシステムとを混合した後、抽出/沈殿過程の両方を介して実行され、ITEの一連の既知量から毎回作成される検量線を用いてITEを定量した。WinNonlin V5.2 統計ソフトウェア(Pharsight社、アメリカ合衆国、カリフォルニア州所在)を使用し、非コンパートメントモデルを用いてCmax、Tmax、Tl/2、およびAUC(曲線下面積)などのPKパラメータを作成した。
【0051】
結果および考察
1、10、20、および40mg/kg b.w.のITE投与による治療(28日間連続して12時間おきに腹腔内注射、溶媒:DMSO、注射体積:0.5ml/kg b.w.)によって、明確な投与量−効果関係を有する著しい抗癌活性がもたらされた(図1A)。TGI’s(腫瘍増殖抑制率)は一連の投与量に対し、28日目においてそれぞれ52%、31%、26%、および22%(n=8;p<0.048、0.007、0.004、および0.004)と算出された。腫瘍サイズ600mmにおけるTGD(腫瘍増殖遅延)は、それぞれの一連の投与量において3、10、12、および16日に到達した。0.1mg/kg b.w.のITEは、統計的に有意な抗癌活性をもたらさなかった(n=8、28日目においてTGI=74%、p<0.623)。担腫瘍マウスにおける体重変化から判断すると、ITE処理は著しい毒性反応を引き起こさないようであった(図1B)。
【0052】
ITEの薬物動態(PK)挙動および直接的なさらなる有効性に関する研究を理解するために、ITEを異なる経路および異なるレベルにてヌードマウスに投与した。ITE PK特性を図1Cに示す。ボーラス静脈注射によって送達される1mg/kg b.w.のITE/DMSOは、推定半減期が6分であり非常に早く分解した。該経路に対する推定AUCは256hr.ng/mlであった。腹腔内注射によって投与されたITE/DMSOでは、その半減期は改善され、その一方で、吸収効率は静脈注射と比較して10%を下回る。例えば、腹腔内注射における、10、40、および80mg/kg b.w.のITEの半減期は、それぞれ1.13、1.61、および5.17時間であるのに対し、AUCは一連の投与量においてそれぞれ197、332、499hr.ng/mlであった。経口経路によって送達されるITE/ラブラゾール:PEG400(2:8、v/v)は、さらにより低い吸収効率(約1%)を有し、一方では腹腔内注射によって達成されたレベルの半減期を維持した。投与レベルが40および80mg/kg b.w.の経口投与によるAUCは、それぞれ107および97hr.ng/mlであった(図1C)。
【0053】
PK研究からの結果に基づいて、ITE投与スケジュール、投与レベル、および経路をさらに調査した。1日当たりの全投与量を同じ量に維持すると、腹腔内経路における1日1回または2回の投与スケジュールは、癌増殖の抑制において同等の有効性をもたらした(例えば、80mg/kg b.w.を1日1回、対40mg/kg b.w.を1日2回、図1D)。さらにITE投与量を80mg/kg(1日2回の腹腔内注射)に引き上げると、TGIは40mg/kg(1日2回の腹腔内注射)からさらに改善されたように思われる。80mg/kg(1日2回の腹腔内注射)のTGIが今までに得られた結果の中で最良であり、例えば28日目において12%、および最終日において16%であった。80mg/kgの経口経路を介したITEの吸収効率は、AUCの観点から10mg/kgの腹腔内注射よりもかなり低いが(図1C)、最初の3週間くらいの間は、癌増殖抑制の観点において、80mg/kgの毎日の経口投与は40mg/kgの毎日の腹腔内注射と同様であった(例えば、24日目において、TGI=46%)。PK研究から、80mg/kgの経口投与におけるITEの血漿レベルは、最初の数時間は10mg/kgの腹腔内注射よりも低いが、注射後3〜8時間で10mg/kgの腹腔内注射、さらには40mg/kgの腹腔内注射よりも高くなった(図1C)。これが最初の3週間の経口投与における結果の裏にある理由であろう。経口投与の場合、その治療効果はなぜか腹腔内注射よりも長続きせず、治療の最後に向かい、終了を宣言する(図1D)。
【実施例2】
【0054】
材料および方法
ヒト前立腺癌細胞株LNCaPの培養および接種を実施例1に示すように行った。ヒト肝癌細胞株HepG2(ATCC)の操作は、(RPMI−1640の代わりに)DMEM溶媒を使用し、L−グルタミンを使用せず、そして2×10の細胞を用いて雌のヌードマウスに接種したことを除いて、LNCaPと同様であった。ヒト卵巣癌細胞株OVCAR−3(ATCC)の取り扱いは、DMEM溶媒を使用し、5×10の細胞を使用して雌のヌードマウスの接種に使用したことを除いて、LNCaPと同様であった。ヒト乳癌細胞株MCF−7(CL−161)はMCF−7(ATCC)からのクローン化株であり、その異種移植片の増殖にはエストロゲンの外生的供給をもはや必要としない。MCF−7細胞の培養は、RPMI−1640溶媒と置き換えるために、1mMの非必須{ひ ひっす}アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、および0.01mg/mlのウシインスリンが添加されたMEM溶媒を使用することを除いて、LNCaPと同様であった。MCF−7細胞の接種は、腫瘍成長のための0.1mlのPBSとマトリゲル(1:1)、および雌のマウスの使用を除いてLNCaPと同様であった。
【0055】
ITE源は実施例1に記載したものと同じである。ITE構造類似体の1つである化合物ITK(構造式2)はShanghai ChemPartner社(中華人民共和国、上海所在)によって合成された。ロット番号はAhR−ITK−001であった。
【0056】
結果および考察
ヒト前立腺癌(LNCaP)異種移植{いしゅ いしょく}モデルにおいて、ITK(ITE構造類似体の1つ)は20mg/kg b.w.(1日1回の腹腔内注射)において効果があることが示され、同じ処方計画のITEよりもさらに良好に機能した(図2A)。TGI’s(腫瘍増殖抑制率)は、28日目において、ITKおよびITEに対してそれぞれ51%(p<0.003、n=8)および64%(p<0.021、n=8)であった。ITKおよびITEに対するTGD’s(腫瘍増殖遅延)は、1,000mmの腫瘍体積において、それぞれ16日および8日であった。
【0057】
ヒト肝癌(HepG2)異種移植片の増殖抑制において、80mg/kg(1日1回の腹腔内注射)のITEおよびITKの両方は良好な有効性を示した。ITEおよびITKの能力は、本モデルにおいて非常に類似するものであった(図2B)。ITEおよびITKに対するTGI’sは、22日目においてそれぞれ25%(p<0.001、n=8)および22%(p<0.001、n=8)であった。ITEおよびITKに対するTGD’sは、腫瘍体積800mmにおいて、それぞれ29日および26日であった。ITKグループにおいて8匹のマウスのうち1匹が32日目に死亡したが、明らかな純体重の減少はなかった(データ表示なし)。
【0058】
ヒト卵巣癌(OVCAR−3)の増殖抑制においても、80mg/kg(1日1回の腹腔内注射)のITEおよびITKの両方は同様の有効性を示した(図2C)。TGI’sは、ITEおよびITKに対して、33日目においてそれぞれ47%(p<0.002、n=8)および46%(p<0.001、n=8)であった。ITEおよびITKに対するTGD’sは、腫瘍体積800mmにおいて、それぞれ10日および13日であった。明らかな準体重の減少はなかった(データ表示なし)。また、ITKグループにおいて8匹のマウスのうち1匹が32日目に死亡した。
【0059】
ヒト乳癌(MCF−7)の増殖抑制において、ITEは少量(20mg/kg b.w.、1日1回の腹腔内注射)ではあったが適度な有効性を示した(図2D)。TGIはITE処理に対して、19日目に71%(p<0.031、n=8)と算出された。500mmの腫瘍体積において、ITEグループからTGDは3日であることを得た。より良好な増殖抑制および遅延を生じさせるために、投与レベルのさらなる増加が確実に必要であるが、ITE処理に対するMCF−7異種移植片の反応はあった。
【0060】
本実施例におけるITE構造類似体の1つ(ITK)の能力は、構造式4によって特定される骨格に基づくITE類似体の開発において非常に大きな可能性を立証するものである。さらに、ITE構造において、通常の(酸素)エステルに取って変わるチオールエステル官能基を有する類似体は、ITK(構造式2)研究の結果を考慮すると特に重要であることが想定される。したがって、構造式3によってまさに特定されるチオール(S、硫黄)エステルは、ITSEと略される。ITKおよびITSEの両方の構造特性は、生物系における、特にITE構造の酸素エステル官能基に対する多数のエステラーゼによる攻撃を回避することに役立つであろう。
【実施例3】
【0061】
材料および方法
マウス・ルイス肺癌細胞株LLC(ATCC)は、RPMI−1640の代わりにDMEMの溶媒を使用することを除いて、実施例1においてLNCaPに対する記載の通りに培養した。生後6〜8週間のそれぞれの雌C57BL/6マウスに、3×10LLC細胞/0.1mlPBSを接種して腫瘍を成長させた。平均腫瘍体積が80〜120mmに到達したときにITE処理を開始した。全てのその他の材料および方法は実施例1に記載のものと同じであった。
【0062】
結果および考察
異種移植モデルを使用する利点は、ヒト癌を直接動物において試験できることである。しかしながら、欠点としては、マウスがヒト癌細胞を拒絶しないよう、マウスは免疫システムにおいて欠陥を有さなければならない。したがって、ITEが免疫系を刺激することでその治療を劇的に強化することが可能であるかを試験するために、このタイプのモデルを使用することは不可能である。そこで、マウス腫瘍細胞を健康な免疫系を有するマウスに接種した同系モデルを使用した。20mg/kg b.w.(1日1回の腹腔内注射)の投与量にてITEはマウス肺癌の増殖抑制を示す(n=8、15日目においてTGI=65%、図3A)一方で、癌の除去または根絶の兆候はなかった。実際、このモデルにおいて腫瘍の増殖が非常に攻撃的であったため、対象グループおよびITEグループの両方において、苦しむ動物を腫瘍の大きな負担から解放するために早めに実験を終了しなければならなかった。
【0063】
80mg/kg b.w.(1日1回の腹腔内注射)の投与量において、ITEは腫瘍の増殖抑制を著しく改善したため、ITE処理グループは前回のように早めに終了することなく実験終了時まで維持可能であった(図3B)。ITE処理に対する20日目でのTGIは42%(n=8、p<0.037)であり、1000mmの腫瘍体積におけるTGDは7日間であった。ITEグループのうちの1匹のマウス(マウスNo.33)は、ITE処理の開始からすぐその腫瘍を縮小させ始め、それはその腫瘍が13日目においてもはや触知できなくなくなるまで続いた(図3C)。そのマウスは残りのITE処理段階の間(全28日間)、腫瘍が存在しない状態を保った。28日間の処理が終了した後、そのマウスにもう1か月与えてその腫瘍の再増殖の可能性を観察した。しかしながら再増殖は起こらず、そのマウスは観察中の全1か月間腫瘍が存在しない状態を保ち、処理による全癌細胞の除去を示唆した(図3C)。体重変化の観察によって、ITEグループのマウスNo.33およびその他のマウスは処理に対して良好な耐性を有することを示唆した(図3D)。
【0064】
異種移植モデルでは、完全な腫瘍の除去は、80mg/kg b.w.(1日1回の腹腔内注射)の投与、または1日2回の80mg/kg(腹腔内)投与においても決して起こらなかった。それにより、この同系モデルのマウスにおける免疫系の刺激を議論することが可能であろう。実際には、下記の実施例4の結果によって、低(20mg/kg、1日1回の腹腔内注射)投与量では示さなかったが、高(500mg/kg、1日1回の腹腔内注射)、および中(100mg/kg、1日1回の腹腔内注射)投与量において、白血球、好中球、リンパ球、および血小板の数の上昇を示したことで、この概念は支持され得る。したがって、癌と戦い個々の癌細胞を除去することに役立つよう免疫系が動員され、その一方で同時に癌増殖が効果的に抑制かつ攻撃されれば、癌の根絶を達成することが可能であろう。
【実施例4】
【0065】
材料および方法
ITEナノ懸濁液は、湿式媒体製粉機(Dispermat SL−nano、WAB Willy A.Bachofen AG社、スイス、ムッテンツ所在)を用いて、1%のCMC−Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、0.5%のSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)、0.085%のPVP K90(ポリビニルピロリドン K90)、および0.2%の安息香酸塩を含む水中で、ITE粉末を所望のサイズ範囲に到達するまで製粉して調製した。粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(MS2000、Malvern Instruments社、イギリス、ウスターシャー所在)を用いて決定した。粒径のパラメータを、D10(10%の粒子の直径)=67nm、D50=114nm、およびD90=207nmとして決定した。そして調製したナノ懸濁液を使用するまで4℃で保管した。
【0066】
生後6〜8週間の雌のC57BL/6マウスを、各4つの投与グループ(0、20、100、および500mg/kg b.w.)に6匹ずつ無作為に割り当てた。ITEナノ懸濁液を7日間連続して1日1回腹腔内注射により投与した。死亡率、臨床兆候、体重、および飼料消費を記録した。血液学(6匹中3匹)および血液生化学検査(6匹中他の3匹)のデータを収集した。TK(毒物動態学)パラメータを実施例1に記載の通り決定し、1、3、および7日目において投与から1時間および3時間後の両方のITEの血漿レベルを測定した。剖検にて主要な臓器の総括的観察を行った。
【0067】
結果および考察
TKデータは適切なITE系の暴露を確認した(データ表示なし)。20mg/kg b.w.(低投与量)グループの1匹のマウスが投与の2日目を前にして原因不明で死亡したことを除き、死亡は観察されなかった。全3つのITE処理グループにおいて飼料消費の劇的な減少が調査の1日目において発見されたが、ITE処理による著しい体重の減少はなかった。剖検による全ITE処理グループにおける主要臓器検査からは異常は観察されなかった。500mg/kg b.w.(高投与量)グループにおけるALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、およびTP(総タンパク量)のレベルは、溶媒コントロールに対して、それぞれ3.2(p<0.05)、1.8(非有意)、および1.2(p<0.05)倍上昇した(表1)。20mg/kg(低投与量)グループのBUN(血中尿素窒素)は、溶媒に対して1.4倍(p<0.05)上昇した。これらのデータ、特にALTのデータは、ITE投与量が上限付近に到達していることを示唆している可能性がある。WBC(白血球数)は、100mg/kg(中)および500mg/kg(高)グループにおいて、それぞれ2.6倍(p<0.05)および2.0倍(非有意)上昇した。その他のPLT(血小板)の割合、NEUT(好中球)の割合、好中球の数(#NEUT)、およびリンパ球の数(#LYMPH)等は、統計的に有意ではないが、100mg/kgおよび500mg/kgのグループの両方において上昇した(表1)。追加の確認試験を行う必要はあるが、血液学におけるデータはITEによる免疫系の動員を実際に示唆しているため、実施例3に示される癌根絶のデータに高い確率で反響し得る。
血液学および血液生化学検査に関する部分的測定値
【0068】
【表1】

表1は血液学および血液生化学検査に関する部分的測定値を示しており、グループ平均および括弧内にSD(標準偏差)が記載されている。は統計的有意性(p<0.05)を示し、「no」は標準偏差が試料サイズのために得られないことを意味している。ALTはアラニンアミノトランスフェラーゼ、ASTはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、TPは総タンパク量、BUNは血中尿素窒素、WBCは白血球数、PLTは血小板、NETUは好中球、#NETUは好中球数、および#LYMPHはリンパ球数を意味している。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、人類およびその他の動物、特に哺乳動物のための、癌の介入治療または根絶における領域に適用することが可能である。
【0070】
符号の説明
本明細書において使用される用語である、ITEの「構造類似体」または単に「類似体」は、AhR内因性リガンドであるITEと類似する化学構造を有する化合物として定義する。
【0071】
本明細書において使用される用語「アルキル」は、水素で飽和された1〜6個の炭素が直鎖または分岐鎖の形状で結合した基を表す。
【0072】
本明細書において使用される用語「ハロアルキル」は、1以上のハロゲン原子によって置換されたアルキルを表す。
【0073】
本明細書において使用される用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖の形状で結合した2〜6個の炭素を含む炭化水素基を表す。
【0074】
本明細書において使用される用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分岐鎖の形状で結合した2〜6個の炭素を含む炭化水素基を表す。
【0075】
本明細書において使用される用語「ハロ」は、あらゆるハロゲン原子(F、Cl、Br、またはI)を表す。
【0076】
本明細書において使用される用語「カルボニル」は、
【0077】
【化9】

【0078】
を表す。
本明細書において使用される用語「アルカノイル」は、カルボニル基に結合したアルキルを表す。
【0079】
【化10】

【0080】
本明細書において使用される用語「ハロアルカノイル」は、カルボニル基に結合したハロアルキルを表す。
【0081】
【化11】

【0082】
本明細書において使用される用語「窒素保護基」は、合成手順の間の好ましくない化学反応から窒素を保護するために通常使用される基を表す。
【0083】
本明細書において使用される用語「アミノ」は、NRを表し、RおよびRは、独立して、水素、ハロ、ホルミル(−CHO)、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルカノイル、ハロアルカノイル、または窒素保護基から選択され得る。
【0084】
本明細書において使用される用語「アルコキシ」は、酸素原子に結合したアルキル(−O−アルキル)を表す。
【0085】
本明細書において使用される用語「ハロアルコキシ」は、酸素原子に結合したハロアルキル(−O−ハロアルキル)を表す。
【0086】
本明細書において使用される用語「チオアルコキシ」は、硫黄原子に結合したアルキル(−S−アルキル)を表す。
【0087】
本明細書において使用される用語「カルボニルオキシ」は、酸素原子に結合したアルカノイルを表す。
【0088】
【化12】

引用文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
ITEまたはその構造類似体の1つにおける有効量を癌を患う被験者に投与することで、癌を介入治療または根絶する方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、前記ITEまたはその構造類似体の1つを1以上の薬学的に許容される担体と組み合わせることで、前記被験者への前記ITEまたはその構造類似体の1つの投与を補助する方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、前記ITEまたはその構造類似体の1つを投与する段階は、局所、腸内、および非経口の投与から成る群より選択される方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、前記ITEまたはその構造類似体の1つにおける有効量、および前記ITEまたはその構造類似体の1つにおける投与回数は、前記被験者の血液中における前記ITEまたはその構造類似体の1つの濃度‐時間特性を観察し、試験の期間に形成された同様の濃度‐時間特性と癌の抑制または根絶に対する効果との間で確立された相関を調査し、かつ前記被験者に対する毒性の可能性と前記被験者における健康状態または身体的耐久性の両方から達成される治療効果の平衡を保つことで決定される方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、前記ITEまたはその構造類似体の1つを、必要に応じて、1以上のその他の癌治療薬と共に、同じまたは異なるスケジュールにて前記被験者に投与する方法。
【請求項6】
請求項1の方法であって、前記ITEまたはその構造類似体の1つにおける維持量は、癌の根絶を確実にするために前記被験者に癌が存在しなくなった後に提供され、前記維持量の継続期間は試験によって方向付けられる方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、前記ITEは以下の構造式(構造式1)で示される方法。
【化1】

【請求項8】
請求項1の方法であって、前記ITEの具体的に選択される構造類似体はITKと称され、以下の構造式(構造式2)を有する方法。
【化2】

【請求項9】
請求項1の方法であって、前記ITEの他の具体的に選択される構造類似体はITSEと称され、以下の構造式(構造式3)を有する方法。
【化3】

【請求項10】
請求項1の方法であって、前記ITEのその他の構造類似体は以下の構造式(構造式4)で表され、
【化4】

式中、
XおよびYは、独立して、O(酸素)またはS(硫黄)であり、
は水素、ハロ、シアノ、ホルミル、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルカノイル、ハロアルカノイル、または窒素保護基から選択され、
、R、R、R、およびRは、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ(−OH)、チオール(−SH)、シアノ(−CN)、ホルミル(−CHO)、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ(−NO)、アルコキシ、ハロアルコキシ、チオアルコキシ、アルカノイル、ハロアルカノイル、またはカルボニルオキシから選択され、
、およびRは、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、チオール、シアノ、ホルミル、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、もしくはチオアルコキシから選択され、または、
、およびRは、独立して、
【化5】

であり、
式中、Rは、水素、ハロ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、もしくはアルキニルから選択され、または、
、およびRは、独立して、
【化6】

であり、
は、水素、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、もしくはアルキニルから選択され、または、
、およびRは、独立して、
【化7】

であり、
10は、水素、ハロ、ヒドロキシ、チオール、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロから選択され、または、
、およびRはまた、独立して、
【化8】

であり、
式中、R11は、水素、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、またはアルキニルから選択される方法。
【請求項11】
請求項1の方法であって、前記被験者は、人類およびその他の動物、特に哺乳動物から成る群より選択される方法。
【請求項12】
請求項1の方法であって、前記癌は、前立腺癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、および乳癌から成る群より選択される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−509411(P2013−509411A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536862(P2012−536862)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/052729
【国際公開番号】WO2011/053466
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512082761)
【Fターム(参考)】