説明

癌の処置に寄与する方法および組成物

癌、特に、卵巣腫瘍の処置に寄与する方法および組成物を開示する。該方法および組成物は、エンドセリンBアゴニスト(ET)を利用して、一つまたは複数の化学療法薬(例えば、シスプラチン(cisplatin)および/またはシクロホスファミド)の送達および得られる効力を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロス・リファレンス
本出願は、2007年4月13日出願の米国仮特許出願第60/911,773号の恩典を主張し、そして2006年8月2日出願の米国特許出願第11/461,961号の一部継続であるが、それは、2006年6月28日出願の米国特許出願第11/360,236号(これは、いずれも2005年2月22日出願の米国仮特許出願第60/655,656号;同第60/655,654号;および同第60/655,643号の恩典を主張する)の一部継続であり、それは、2002年10月24日出願の米国仮特許出願第60/420,960号の恩典を主張する2003年10月23日出願の米国特許出願第10/691,915号の一部継続である。全てのこれら出願の内容は、本明細書中にそのまま援用される。
【0002】
本発明は、シクロホスファミドまたはシスプラチン(cisplatin)などの少なくとも一つの化学療法薬とエンドセリンアゴニストでの、充実性腫瘍を含めた癌の処置のための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
大部分の抗癌薬での化学療法は、低い治療指数および宿主組織毒性などの制限によって複雑であり、それが、生命を脅かす状況をもたらし且つ多くの患者のクオリティオブライフを低下させる。標準的な化学療法方式の効力の欠如および有意の潜在的副作用が、抗癌療法への新規なアプローチの探求を推進させている。癌処置用の既存の抗癌薬の有効性を増加させる一つのアプローチは、腫瘍中への薬物の吸収を増加させ、それによって治療的腫瘍中濃度を増加させることである。
【0004】
充実性腫瘍を含めた癌について成功する処置は、腫瘍細胞の分子生物学について増加した理解および増加した多数の潜在的治療薬の利用可能性にもかかわらず、依然として果たされていない医学的目標のままである。例えば、卵巣癌は、女性の癌の五番目の主要死因であり、婦人科悪性疾患による主要死因であり、そして二番目の最も一般的に診断される婦人科悪性疾患である。
【0005】
癌の処置における一つの問題は、一定有効用量の広範囲の潜在的化学療法薬が、これら薬剤の正常組織への非選択的な高毒性作用によって制限されるということである。結果として、多くの患者は、処置の恩恵を得ることなく、化学療法の副作用に苦しむ。例えば、化学療法薬シクロホスファミドおよびシスプラチンは、細胞増殖を阻害し、そして腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こす。しかしながら、シクロホスファミドおよびシスプラチンの臨床的有用性は、用量制限的な毒性によって妨げられていた。したがって、より特異的で且つ毒性の少ない癌療法を開発する必要性が存在する。
【0006】
化学療法薬の腫瘍への標的化(targeted)送達は、化学療法薬の恩恵を増大させると同時に、それらの全身毒性作用を最小限にするという利点を有しうると考えられる。このような標的化送達は、更に、化学療法薬の必要用量を低下させるのに役立ちうるし、したがって、これら薬剤の許容し得ない有害作用を潜在的に減少させうると考えられる。化学療法薬の標的化送達を達成する一つの可能な方法は、腫瘍血管系の示差的特徴を利用することである。
【0007】
数ミリメートルより大きいサイズの腫瘍は、一定の栄養素供給を必要とし、したがって、それら自体の血管床および血流を発生させる(Folkman, Cancer Res, 46:467 (1986))。これら発生した血管からの一定栄養摂取がなければ、腫瘍は、低酸素状態になった後、死滅する。既存の血管からの新しい血管系の補充を、「血管新生」と称する。
【0008】
血管新生の際に、腫瘍血管は、普通の血管系とは実質的に異なって発生し、しかも異なった性質を有する。単層上皮細胞は、最初に急速形成される腫瘍血管である。これら新たに形成された腫瘍血管は、平滑筋層または神経支配を有さない。腫瘍は、更に、全ての自己調節機能を有する成熟血管を取り込む。Mattsson et al., Tumor Blood Circulation, CRC Press, Boca Raton, pg. 129 (1979); Reinhold, Tumor Blood Circulation, CRC Press, Boca Raton, pg. 115 (1979); Warren, Tumor Blood Circulation, CRC Press, Boca Raton, pg. 26 (1979)。
【0009】
血管緊張(vascular tone)(血管が拡張するまたは収縮する度合い)は、H、K、Ca2+、pO、pCOおよび酸化窒素(NO)を含めた多数の内因性因子、更には、エンドセリン(ET−1)などの他の調節物質によって支配される。Secombe et al., Landes, Austin, pg. 40 (1994); Luscher et al., The endothelium: modulator of cardiovascular function, CRC Press, Boca Raton, pg. 61 (1990)。ET−1は、血管緊張を調節することに有意に寄与していて(Yanagisawa et al., Nature, 332:411 (1988))、研究者は、乳癌を含めた充実性腫瘍におけるET1およびET受容体発現の増加を示した。Alanen et al., Histopathology, 36:161 (2000); Nelson et al., Cancer Res, 56:663 (1996); Kar et al., Biochem Biophys Res Commun 216:514 (1995); Pagotto et al., J Clin Invest, 96:2017 (1995); Yamashita et al., Cancer Res, 52:4046 (1992); Yamashita et al., Res Commun Chem Pathol Pharmacol, 74:363 (1991)。更に、ET受容体の刺激は、腫瘍血管の血管拡張によって腫瘍への血液供給の増加を引き起こす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Folkman, Cancer Res, 46:467 (1986)
【非特許文献2】Mattsson et al., Tumor Blood Circulation, CRC Press, Boca Raton, pg. 129 (1979)
【非特許文献3】Reinhold, Tumor Blood Circulation, CRC Press, Boca Raton, pg. 115 (1979)
【非特許文献4】Warren, Tumor Blood Circulation, CRC Press, Boca Raton, pg. 26 (1979)
【非特許文献5】Secombe et al., Landes, Austin, pg. 40 (1994)
【非特許文献6】Luscher et al., The endothelium: modulator of cardiovascular function, CRC Press, Boca Raton, pg. 61 (1990)
【非特許文献7】Yanagisawa et al., Nature, 332:411 (1988)
【非特許文献8】Alanen et al., Histopathology, 36:161 (2000)
【非特許文献9】Nelson et al., Cancer Res, 56:663 (1996)
【非特許文献10】Kar et al., Biochem Biophys Res Commun 216:514 (1995)
【非特許文献11】Pagotto et al., J Clin Invest, 96:2017 (1995)
【非特許文献12】Yamashita et al., Cancer Res, 52:4046 (1992)
【非特許文献13】Yamashita et al., Res Commun Chem Pathol Pharmacol, 74:363 (1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、腫瘍への血流を選択的に増加させるET受容体アゴニストを用いることによってこの事実を利用して、化学療法薬の標的化送達を増大させる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、卵巣腫瘍などの腫瘍中へのシクロホスファミドおよびシスプラチンなどの抗癌薬の取込みを、少なくとも一つの抗癌薬と一緒にETアゴニストを投与することによって選択的に増加させることに関する。本発明による処置方式は、動物の卵巣腫瘍体積などの腫瘍体積を減少させる。
【0013】
本発明の方法は、癌の処置に寄与する。それら方法は、処置を必要としている動物に、少なくとも一つのエンドセリンB(ET)アゴニストおよび少なくとも一つの化学療法薬を投与することを包含する。本発明によって処置可能な癌には、卵巣腫瘍、結腸腫瘍、カポジ肉腫、乳房腫瘍、黒色腫、前立腺腫瘍、髄膜腫、肝腫瘍、乳房葉状腫瘍、脳腫瘍、頸部腫瘍、肺腫瘍およびそれらの組合せのような充実性腫瘍が含まれるが、これに制限されるわけではない。本発明の方法は、ETアゴニストが、腫瘍への血液供給を選択的に増加させ、それによって、一つまたは複数の化学療法薬の腫瘍への送達を増加させる機構を包含する。ETアゴニストおよび化学療法薬は、実質的に同時に(例えば、単一組成物として)投与することができるし、または逐次的に投与することができる(例えば、化学療法薬をETアゴニストの前にまたはその逆に投与する)。
【0014】
本発明は、更に、少なくとも一つの化学療法薬、少なくとも一つのETアゴニスト、そして場合により、少なくとも一つの薬学的に許容しうる賦形剤を有する組成物に関する。一つまたは複数のETアゴニストおよび一つまたは複数の化学療法薬は、同じ組成物の一部分であってよいし、別々の組成物として与えられる、または双方である。
【0015】
本発明の方法かまたは組成物に用いるのに適するETアゴニストには、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu,Ala11,15]ET−1(8−21))、サラホトキシン(sarafotoxin)56c、[Ala1,3,11,15]ET−1および組合せが含まれるが、これに制限されるわけではない。IRL−1620は、好適なETアゴニストである。
【0016】
本発明の方法かまたは組成物に用いるのに適する化学療法薬には、アドリアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン、シクロホスファミド、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、インターロイキン2、イリノテカン(irinotecan)、ドセタキセル(docetaxel)、パクリタキセル(paclitaxel)、トポテカン(topotecan)、5−フルオロウラシルおよび組合せが含まれるが、これに制限されるわけではない。シスプラチン、シクロホスファミドおよびそれらの組合せは、好適な化学療法薬である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、生理食塩水、IRL−1620(3nmol/kg)、生理食塩水+シスプラチン(2.5mg/kg)、またはIRL−1620(3nmol/kg)+シスプラチン(2.5mg/kg)を、別個に、全4回の投与について3日毎に1回与えられた卵巣腫瘍マウス(N=6)の腫瘍体積を示す。
【図2】図2は、生理食塩水、IRL−1620(3nmol/kg)、生理食塩水+シスプラチン(2.5mg/kg)、またはIRL−1620(3nmol/kg)+シスプラチン(2.5mg/kg)を、別個に、全4回の投与について3日毎に1回与えられた卵巣腫瘍マウス(N=6)の体重を示す。
【図3】図3は、生理食塩水、IRL−1620(3nmol/kg)、生理食塩水+シクロホスファミド(75mg/kg)、またはIRL−1620(3nmol/kg)+シクロホスファミド(75mg/kg)を、別個に、全4回の投与について3日毎に1回与えられた卵巣腫瘍マウス(N=6)の腫瘍体積を示す。
【図4】図4は、生理食塩水、IRL−1620(3nmol/kg)、生理食塩水+シクロホスファミド(75mg/kg)、またはIRL−1620(3nmol/kg)+シクロホスファミド(75mg/kg)を、別個に、全4回の投与について3日毎に1回与えられた卵巣腫瘍マウス(N=6)の体重を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の方法は、癌の処置に寄与する。一つの態様において、本開示は、癌の処置に寄与する方法であって、エンドセリンB(ET)アゴニストおよび少なくとも一つの化学療法薬を投与することを含む方法に関する。
【0019】
本明細書中で用いられる「処置する」、「処置」および「の処置に寄与する」という用語は、充実性腫瘍を含めた癌を予防すること、癌の進行または成長を遅らせること、癌を萎縮させることまたは除去することを意味するものである。それ自体で、これら用語は、適宜、医学治療的および/または予防的双方の投与を包含する。
【0020】
大部分の化学療法薬は、癌細胞を破壊するように指向する細胞障害性を有するが、その過程において、身体の正常な生理学的系にかなりの損傷を与える。したがって、化学療法薬を充実性腫瘍へ選択的に送達することで、癌処置についてのこれらの負の作用を免れるのを助けることは、きわめて好都合であると考えられる。
【0021】
腫瘍血管の血管構造は、普通の血管の構造とは異なる。Carmeliet & Jain, Nature, 407:249 (2000)。したがって、腫瘍の血管反応性は、正常組織のそれとは異なる。例えば、酸化窒素ドナー、ニコチンアミドおよびブラジキニンのアゴニストの投与は、腫瘍への血流をモジュレーションする。Jordan et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys, 48:565 (2000); Fukumura et al., Am J Pathol, 150:713 (1997); Hirst et al., Br J Radiol, 67: 795 (1994)。
【0022】
エンドセリンは、血流をモジュレーションする血管作用性物質であり、正常乳房組織と比較して、乳癌組織中に高濃度で存在する(具体的には、エンドセリンは、正常乳房組織中の約0.12pg/mgと比較したところ、乳癌組織中に約12pg/mgの量で存在することがありうる)。Kojima et al., Surg Oncol, 4(6):309 (1995); Kurbel et al., Med Hypotheses, 52(4):329 (1999); Patel et al., Mol Cell Endocrinol, 126(2):143 (1997); Yamashita et al., Cancer Res, 52(14):4046 (1992); Yamashita et al., Res Commun Chem Pathol Pharmacol, 74(3):363 (1991)。エンドセリンは、21アミノ酸を有する環状ペプチドのファミリーであり、哺乳動物の場合、ET−1、ET−2およびET−3という3種類のイソ型を含む。Inoue et al., Proc Natl Acad Sci USA 86:2863 (1989); Yanagisawa et al., Nature, 332:411 (1988)。エンドセリンは、二つの異なった細胞表面受容体ETおよびETに結合することによって作用する。そのET受容体は、3種類のペプチドイソタイプを等しい親和性で結合する。対照的に、ET受容体は、ET−1を、他のイソ型より高い親和性で結合する。双方の受容体は、Gタンパク質共役受容体系に属し、そして増殖因子、血管作用性ポリペプチド、神経伝達物質およびホルモンを含めたいろいろな刺激による生物学的応答を媒介する。Masaki, J Cardiovasc Pharmacol, 35:S3 (2000); Gulati, Preface. Adv Drug Deliv Rev, 40:129 (2000); Gulati et al., Am J Physiol, 273:H827 (1997); Levin, N Engl J Med, 333:356 (1995)。本発明の焦点であるET受容体は、内皮細胞(EC)および血管平滑筋細胞(VSMC)双方上に存在し、そして正常乳房組織と比較した場合、(ヒトの浸潤性並びに管および小葉乳癌組織を含めた)乳癌組織中で増加する。Wulfing et al., Oncol Rep, 11:791 (2004); Wulfing et al., Clin Cancer Res, 9:4125 (2003); Alanen et al., Histopathology, 36(2):161 (2000)。エンドセリンは、ET受容体に作用して、血管拡張を引き起こし且つ乳房腫瘍組織への血流を増加させる。EC上に優先的に存在するET受容体は、プロスタサイクリンおよび酸化窒素などの因子の放出によって血管拡張を引き起こす。de Nucci et al., Proc Natl Acad Sci USA, 85:9797 (1988)。ET−1は、ET受容体を刺激することによって腫瘍への血流の増加を引き起こすので、ET受容体アゴニストを用いて、腫瘍への血液供給を選択的に増加させることができ、したがって、化学療法薬の標的化送達および得られる効力を増加させることができる。
【0023】
ET受容体は、例えば、これに制限されるわけではないが、卵巣癌、筋線維芽細胞、カポジ肉腫腫瘍および腫瘍内血管、乳癌および黒色腫において見られてきている。Bagnato et al., Am J Pathol, 158:841 (2001); Alanen et al., Histopathology, 36(2):161 (2000); Bagnato et al., Cancer Res, 59:720 (1999); Kikuchi et al., Biochem Biophys Res Comm, 219:734 (1996)。したがって、化学療法薬との組合せでのET受容体アゴニストの投与は、卵巣癌、結腸癌、カポジ肉腫、乳癌および黒色腫が含まれるがこれに制限されるわけではない充実性腫瘍の処置に寄与するのに用いることができる。
【0024】
本発明によって有用なETアゴニストには、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu,Ala11,15]ET−1(8−21))、サラホトキシン56c、[Ala1,3,11,15]ET−1およびそれらの組合せが含まれるが、これに制限されるわけではない。[Ala1,3,11,15]ET−1は、Cys残基に代わるAla残基の置換によってジスルフィド橋が除去されたET−1の線状類似体である。Saeki et al., Biochem Biophys Res Commun, 179:286 (1991)。BQ3020およびIRL1620は、ET−1の切断された線状合成類似体であり、最も広く用いられている選択的合成アゴニストである。IRL−1620は、その構造が、ET−1のカルボキシ末端に基づいている線状ET類似体であり、ET受容体について120,000倍の選択性を有する。Okada & Nishikibe, Cardiovasc Drug Rev, 20:53 (2002); Douglas et al., Br J Pharmacol, 114:1529 (1995)。IRL−1620は、きわめて選択的で且つ効力のあるETアゴニストであり、ETB2サブタイプに優先したETB1受容体サブタイプへのその選択性の根拠が報告されている。Brooks et al., J Cardiovasc Pharmacol, 26 Suppl 3:S322 (1995)。
【0025】
本発明によって有用な化学療法薬には、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗物質、ホルモンおよびそれらのアンタゴニスト、放射性同位体、抗体、並びにそれらの天然産物および組合せが含まれるが、これに制限されるわけではない。例えば、ETアゴニストは、ドキソルビシンおよび他のアントラサイクリン類似体などの抗生物質;制限されるわけではないが、シクロホスファミドなどのナイトロジェンマスタード;制限されるわけではないが、5−フルオロウラシルなどのピリミジン類似体;シスプラチン、ヒドロキシ尿素、およびその天然および合成の誘導体等と一緒に投与することができる。別の例として、乳房の線癌などの混合腫瘍の場合であって、それら腫瘍が、ゴナドトロピン依存性およびゴナドトロピン非依存性の細胞を包含する場合、ETアゴニストは、これに制限されるわけではないが、ロイプロリドまたはゴセレリン(LH−RHの合成ペプチド類似体)と一緒に投与することができる。本発明と共に用いることができる化学療法薬の追加の非制限例には、シクロホスファミド、シスプラチン、アドリアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、インターフェロン(α、βおよび/またはγ)、インターロイキン2、イリノテカン、ドセタキセル、パクリタキセル、トポテカン、およびそれらの治療的に有効な類似体および誘導体が含まれる。
【0026】
エンドセリンアゴニストが、ET受容体を刺激して、腫瘍血管を拡張させ、それによって、血流を増加させ且つ結果としての腫瘍への化学療法薬の送達を増加させるということは、理論づけられるが、本明細書中ではそれに頼らない。エンドセリンアゴニストによって引き起こされる腫瘍の増加した血液灌流は、更に、組織の酸素化を増加させる。改善された酸素化は、化学療法薬の治療的作用を増大させることがありうる。エンドセリンは、更に、マイトジェン性質を有することがありうる。エンドセリンのマイトジェン作用は、一緒に投与された場合の化学療法薬の作用を増加させるのに役立ちうる。エンドセリンアゴニストのマイトジェン作用は、化学療法薬の作用を、分裂している細胞中へのそれらの取り込みを改善することによって増加させ、それによって、それらの効力を増加させることがありうる。
【0027】
化学療法は、しばしば、癌の処置における外科手術への補助として必要とされる。補助設定での化学療法の目的は、原発性腫瘍が抑制された時に、再発のリスクを減少させ且つ無症候生存を増大させることである。化学療法は、癌について、その疾患が転移性である場合、しばしば、補助処置として利用される。したがって、ETアゴニストは、特に、充実性腫瘍の処置において外科手術の前または後に、化学療法との組合せで有用である。
【0028】
本方法の別の態様において、癌は、充実性腫瘍である。別の態様において、充実性腫瘍は、卵巣腫瘍、結腸腫瘍、カポジ肉腫、乳房腫瘍、黒色腫、前立腺腫瘍、髄膜腫、肝腫瘍、乳房葉状腫瘍、脳腫瘍、頸部腫瘍、肺腫瘍およびそれらの組合せから成る群より選択される。別の態様において、充実性腫瘍は、卵巣腫瘍である。
【0029】
別の態様において、ETアゴニストは、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu,Ala11,15]ET−1(8−21))、サラホトキシン56c、[Ala1,3,11,15]ET−1およびそれらの組合せから成る群より選択される。別の態様において、ETアゴニストは、IRL−1620である。
【0030】
別の態様において、化学療法薬は、アドリアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ダウノルビシン、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、インターロイキン2、イリノテカン、ドセタキセル、パクリタキセル、トポテカン、5−フルオロウラシルおよびそれらの組合せから成る群より選択される。別の態様において、化学療法薬は、シスプラチン、シクロホスファミドまたはそれらの組合せである。
【0031】
別の態様において、腫瘍への血液供給の増加は、充実性腫瘍への化学療法薬の送達を増加させる。別の態様において、ETアゴニストおよび化学療法薬は、実質的に同時に投与する。別の態様において、ETアゴニストおよび化学療法薬は、単一組成物として投与する。別の態様において、ETアゴニストおよび化学療法薬は、逐次的に投与する。化学療法薬は、ETアゴニストの前に投与してよいし、またはETアゴニストは、化学療法薬の前に投与してよい。
【0032】
本開示は、更に、組成物であって、化学療法薬およびETアゴニストおよび任意の賦形剤を含む組成物に関する。ETアゴニストおよび化学療法薬は、同じ組成物の一部分であるか、別々の組成物として与えられるか、または双方である。ETアゴニストは、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu,Ala11,15]ET−1(8−21))、サラホトキシン56c、[Ala1,3,11,15]ET−1およびそれらの組合せから成る群より選択されてよい。ETアゴニストは、IRL−1620であってよい。化学療法薬は、アドリアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、インターロイキン2、イリノテカン、ドセタキセル、パクリタキセル、トポテカン、5−フルオロウラシルおよびそれらの組合せから成る群より選択されてよい。
【0033】
別の態様において、化学療法薬は、シスプラチン、シクロホスファミドまたはそれらの組合せであり、そしてETアゴニストは、IRL−1620である。
【実施例】
【0034】
驚くべきことに、IRL−1620および少なくとも一つの抗癌薬の投与は、抗癌薬、例えば、シクロホスファミドおよびシスプラチンの卵巣腫瘍中への取込みを選択的に増加させるということを発見した。本発明による処置方式は、動物の卵巣腫瘍体積を減少させる。
【0035】
前臨床効力研究を、マウスにおけるヒト卵巣腫瘍モデルで行った。用いられた腫瘍細胞は、ATCCより購入したSK−OV3細胞であった。マウスは、4〜6週令の無胸腺(nu+/nu+)雌マウスであった。IRL−1620は、(30秒間にわたって)徐々に静脈内注入した。IRL−1620は、American Peptides, CA より入手した。シクロホスファミドは、Cadila Pharmaceuticals, Ahmedabad(Batch No. GW−4005)より入手した。シスプラチンも、Cadila Pharmaceuticals, Ahmedabad(Batch No. KL−5005)より入手した。
【0036】
充実性腫瘍は、各々の動物に、1匹につき200μlのPBS中に懸濁させた3百万個の生存可能なSK−OV3細胞を用いて誘導した。10日後、直径100mmの樹立腫瘍が検出可能になった時に、マウスを、6匹/群の6群に無作為に分けて、各々の群に異なった処置を与えた。処置方式は、尾静脈によって、全4回の投与について3日ごとに投与した。それら群を、次のように処置した。(1)腫瘍支持マウスに、生理食塩水を与えた(N=6);(2)腫瘍支持マウスに、IRL−1620(3nmol/kg)を与えた(N=6);(3)腫瘍支持マウスに、ビヒクル(生理食塩水)+シクロホスファミド(75mg/kg)を与えた(N=6);(4)腫瘍支持マウスに、IRL−1620(3nmol/kg)+シクロホスファミド(75mg/kg)を与えた(N=6);(5)腫瘍支持マウスに、生理食塩水+シスプラチン(2.5mg/kg)を与えた(N=6);そして(6)腫瘍支持マウスに、IRL−1620(3nmol/kg)+シスプラチン(2.5mg/kg)を与えた(N=6)。
【0037】
これら処置の腫瘍サイズへの作用は、ディジタルカリパスを用いて、薬物投与後全12日間測定した。マウスを監視し且つ3日ごとに秤量した。投与した用量は、公表された参考文献(British Journal of Cancer (2000) 83, 921-927)に報告されたヌードマウスでのヒト卵巣異種移植片モデルについてのシクロホスファミドおよびシスプラチンの最大許容用量の半分であった。それら被験動物は、各マウスに150〜200mg/kgのペントバルビタールで安楽死させた。腫瘍成長の進行、静止、部分後退または完全後退は、カリパスでの腫瘍負荷測定によって測定し、そして次の式:(3.14/6)xより大きい直径xより小さい直径を用いて計算した。
【0038】
研究の結果を、図に示す。図1は、IRL−1620(3nmol/kg)およびシスプラチン(2.5mg/kg)を与えられた卵巣腫瘍支持マウスの腫瘍体積を示す。6匹の卵巣腫瘍支持マウス(N=6)に、生理食塩水、IRL−1620(3nmol/kg)、生理食塩水+シスプラチン(2.5mg/kg)、またはIRL−1620(3nmol/kg)+シスプラチン(2.5mg/kg)を与えた。投与スケジュールは、全4回の投与について3日毎に1回であった。体重および腫瘍体積は、第22日まで3日ごとに測定した。IRL−1620/シスプラチンで処置されたマウスは、生理食塩水/シスプラチンで処置されたマウスと比較して、より大きい腫瘍体積減少を示した。
【0039】
図2は、IRL−1620(3nmol/kg)およびシスプラチン(2.5mg/kg)を与えられた卵巣腫瘍支持マウスの体重を示す。6匹の卵巣腫瘍支持マウス(N=6)に、生理食塩水、IRL−1620(3nmol/kg)、生理食塩水+シスプラチン(2.5mg/kg)、またはIRL−1620(3nmol/kg)+シスプラチン(2.5mg/kg)を与えた。投与スケジュールは、全4回の投与について3日毎に1回であった。体重および腫瘍体積は、第22日まで3日ごとに測定した。全ての群の体重は同様であった。
【0040】
図3は、IRL−1620(3nmol/kg)およびシクロホスファミド(75mg/kg)を与えられた卵巣腫瘍支持マウスの腫瘍体積を示す。6匹の卵巣腫瘍支持マウス(N=6)に、生理食塩水、IRL−1620(3nmol/kg)、生理食塩水+シクロホスファミド(75mg/kg)、またはIRL−1620(3nmol/kg)+シクロホスファミド(75mg/kg)を与えた。投与スケジュールは、全4回の投与について3日毎に1回であった。体重および腫瘍体積は、第22日まで3日ごとに測定した。IRL−1620/シクロホスファミドで処置されたマウスは、生理食塩水/シクロホスファミドで処置されたマウスと比較して、より大きい腫瘍体積減少を示した。
【0041】
図4は、IRL−1620(3nmol/kg)およびシクロホスファミド(75mg/kg)を与えられた卵巣腫瘍支持マウスの体重を示す。6匹の卵巣腫瘍支持マウス(N=6)に、生理食塩水、IRL−1620(3nmol/kg)、生理食塩水+シクロホスファミド(75mg/kg)、IRL−1620(3nmol/kg)+シクロホスファミド(75mg/kg)を与えた。投与スケジュールは、全4回の投与について3日毎に1回であった。体重および腫瘍体積は、第22日まで3日ごとに測定した。全ての群の体重は同様であった。
【0042】
これら結果に基づいて、IRL−1620単独の、特に、シクロホスファミドまたはシスプラチンと一緒の投与は、腫瘍サイズを減少させることによって卵巣癌腫瘍の処置に寄与するということは明らかである。生理食塩水のみで処置された卵巣腫瘍支持マウスの場合、腫瘍体積の有意の増加が存在した。この研究において、IRL−1620単独は、対照と比較した場合、腫瘍体積に有意に影響を与えることはなかった。生理食塩水/シスプラチンで処置された被験動物は、腫瘍体積の有意の減少を示した。しかしながら、IRL−1620/シスプラチンで処置されたマウスは、生理食塩水/シスプラチンで処置されたマウスよりも大きい腫瘍体積減少を示した。生理食塩水/シクロホスファミドで処置された被験動物は、腫瘍体積の有意の減少を示した。しかしながら、IRL−1620/シクロホスファミドで処置されたマウスは、生理食塩水/シクロホスファミドで処置されたマウスよりも大きい腫瘍体積減少を示した。
【0043】
記載の活性成分を含有する医薬組成物は、ヒトまたは他の動物への投与に適している。典型的に、それら医薬組成物は、無菌であるし、しかも投与時に有害反応を引き起こすと考えられる毒性の、発癌性のまたは突然変異誘発性の化合物を含有しない。医薬組成物の投与は、充実性腫瘍成長の開始前、開始中または開始後に行うことができる。
【0044】
本発明の方法は、上記の活性成分を用いて、またはそれらの生理学的に許容しうる塩、誘導体、プロドラッグまたは溶媒和化合物として用いて達成することができる。それら活性成分は、生(き)の化合物として、またはどちらかまたは双方の物質を含有する医薬組成物として投与することができる。
【0045】
本明細書中で用いられる「プロドラッグ」という用語は、in vivo で、例えば、加水分解によって、本発明に有用な化合物へと急速変換する化合物を意味するものである。プロドラッグについての十分な考察は、Higuchi et al., Prodrugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14, of the A.C.S.D. Symposium Series および Roche (ed.), Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987 に与えられている。
【0046】
それら医薬組成物は、活性成分が、それらの予定の目的を達成する有効量で投与されるものを包含する。より具体的には、「治療的有効量」は、充実性腫瘍の発生を妨げる、充実性腫瘍を除去する、充実性腫瘍の進行を遅らせる、または充実性腫瘍のサイズを減少させるのに有効な量を意味する。治療的有効量の決定は、特に、本明細書中に与えられている詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0047】
「治療的有効用量」は、所望の作用を達成させる活性成分の量を意味する。このような活性成分の毒性および治療的効力は、細胞培養物または実験動物での標準的な薬学的手順によって、例えば、LD50(集団の50%への致死用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することによって決定することができる。毒性作用と治療的作用との間の用量比は、治療指数であり、それは、LD50とED50との間の比率として表される。高い治療指数が好適である。得られたデータは、ヒトに用いるための一定範囲の投薬量を製剤化する場合に用いることができる。活性成分の投薬量は、好ましくは、毒性をほとんどまたは全く伴わない、ED50を包含する一定の循環濃度の範囲内である。その投薬量は、用いられる剤形および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変動することがありうる。
【0048】
正確な処方および投薬量は、個々の医師が、患者の状態を考えて決定する。投薬の量および間隔は、治療的または予防的作用を維持するのに十分である活性成分のレベルを与えるように個々に調整することができる。
【0049】
投与される医薬組成物の量は、処置されている対象、対象の体重、苦痛の重症度、投与方式、および処方する医師の判断に依存することがありうる。
活性成分は、単独で、または予定の投与経路および標準的な医薬慣例に関して選択される医薬担体との混合物で投与することができる。したがって、本発明によって用いるための医薬組成物は、活性成分の製剤への加工を容易にする賦形剤および助剤を含む一つまたはそれを超える生理学的に許容しうる担体であって薬学的に用いることができるものを用いて、慣用法で製剤化することができる。
【0050】
本明細書中で用いられる賦形剤は、非経口、経腸または鼻腔内適用に適する薬学的に許容しうる有機または無機の担体物質であって、活性化合物と有害に反応しないし且つそれらのレシピエントに有害でないものであってよい。適する薬学的に許容しうる担体には、水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペトレスラル(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が含まれるが、これに制限されるわけではない。それら医薬製剤は、滅菌することができるし、そして所望ならば、助剤、例えば、滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩類、緩衝剤、着色剤、着香剤および/または芳香物質等であって、活性化合物と有害に反応しないものと混合することができる。
【0051】
治療的有効量の活性成分を投与する場合、その組成物は、発熱物質不含の非経口的に許容しうる水溶液の形でありうる。pH、等張性、安定性等を十分考慮したこのような非経口的に許容しうる液剤の製造は、当該技術の範囲内である。静脈内注射に好ましい組成物は、典型的に、等張性ビヒクルを含有するであろうが、この特性は必要とされない。
【0052】
獣医学使用には、活性成分を、通常の獣医学慣例にしたがって、好適に許容しうる製剤として投与する。獣医師は、特定の動物に最も適当である投与方式を容易に決定することができる。
【0053】
それら態様のいろいろな適応および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく行い且つ用いることができ、それらは、本明細書中に具体的に記載されている以外に実施することができる。上の記述は、例示するためのものであり、制限するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によってのみ決定されるべきである。
【0054】
本明細書中に用いられてきた用語および表現は、制限するのではなく説明する用語として用いられており、このような用語および表現の使用において、示され且つ記載された特徴の均等物またはそれらの一部分を除外する意図はなく、請求の範囲に記載の本発明の範囲内でいろいろな変更が可能であるということは理解される。更に、本発明のいずれかの態様のいずれか一つまたはそれを超える特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明のいずれか他の態様のいずれか一つまたはそれを超える他の特徴と組み合わせることができる。
【0055】
特に断らない限り、本明細書および請求の範囲に用いられている成分の量、分子量などの性状、反応条件等を表している数字は全て、いずれの場合にも、「約」という用語によって修飾されると理解されるはずである。したがって、その逆が示されない限り、本明細書および請求の範囲に示される数字パラメーターは、本発明によって得ることが要求される所望の性状に依存して異なっていてよい近似である。少なくとも、そして請求の範囲の範囲への均等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数字パラメーターは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らしておよび通常の丸め法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示している数字範囲およびパラメーターが近似であるということにもかかわらず、具体的な実施例に示されている数値は、できるだけ正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、本質的には、それらのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差によって必然的に生じる一定の誤差を含有する。
【0056】
本発明を記載している文脈中(特に、請求の範囲の文脈中)に用いられている「ある」、「その」という用語および類似の意味は、本明細書中に特に断らない限りまたは文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数双方を包含すると解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の詳述は、単に、その範囲内にある各々個別の値に個々に言及する便法として役立つものである。本明細書中に特に断らない限り、個々の値は各々、それが本明細書中に個々に引用されたかのように本明細書中に包含される。本明細書中に記載の方法は全て、本明細書中に特に断らない限り、またはそれ以外に文脈によって明らかに矛盾しない限り、いずれか適する順序で行うことができる。本明細書中に与えられるいずれかおよび全ての例または例示的言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明を一層明らかにするためのものであり、それ以外に請求の範囲に記載される本発明の範囲への制限とするものではない。本明細書中の言語で、本発明の実施に不可欠な、請求の範囲に記載されていないいずれかの要素を示すと解釈されるべきものはない。
【0057】
本明細書中に開示されている発明の選択的な要素または態様のグループ分けは、制限として解釈されるべきではない。各々のグループメンバーは、本明細書中で見出されるグループの他のメンバーまたは他の要素を意味してよいし、そして個々にまたはそれらとのいずれかの組合せで請求の範囲に記載されてよい。あるグループの一つまたはそれを超えるメンバーは、便宜および/または特許可能性の理由で、あるグループに包含されてよいしまたはそこから削除されてよいと考えられる。いずれかこのような包含または削除が行われる場合、本明細書は変更されたグループを含有し、したがって、請求の範囲に用いられる全ての Markush グループの記載に適合すると考えられる。
【0058】
本発明を実施するための本発明者に知られている最善の様式を含めた、本発明の一定の態様を、本明細書中に記載している。当然ながら、これら記載の態様への変化は、前述の説明を読むことで、当業者に明らかになるであろう。本発明者は、当業者がこのような変更を適宜用いることを期待し、しかも本発明者は、本発明が、本明細書中に具体的に記載される以外に実施されることを考えている。したがって、本発明は、適用可能な法によって許される、請求の範囲に挙げられる内容の全ての変更および均等物を包含する。更に、それらの全ての可能な変化における上記の要素のいずれの組合せも、本明細書中に特に断らない限り、またはそれ以外に文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0059】
更に、本明細書中で、特許および印刷公報を多数参照してきた。上に引用された参考文献および印刷公報は各々、本明細書中に個々にそのまま援用される。
最後に、本明細書中に開示の発明の態様は、本発明の原理を詳しく説明するものであるということは理解されるはずである。用いることができる他の変更は、本発明の範囲内である。したがって、例として、制限されることなく、本発明の別の配置(configurations)は、本明細書中の教示にしたがって利用することができる。したがって、本発明は、正確に示され且つ記載されたものに制限されるわけではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の処置に寄与する方法であって、エンドセリンB(ET)アゴニストおよび少なくとも一つの化学療法薬を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記癌が、充実性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記充実性腫瘍が、卵巣腫瘍、結腸腫瘍、カポジ肉腫、乳房腫瘍、黒色腫、前立腺腫瘍、髄膜腫、肝腫瘍、乳房葉状腫瘍、脳腫瘍、頸部腫瘍、肺腫瘍およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記充実性腫瘍が、卵巣腫瘍である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ETアゴニストが、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu,Ala11,15]ET−1(8−21))、サラホトキシン(sarafotoxin)56c、[Ala1,3,11,15]ET−1およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化学療法薬が、アドリアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、シクロホスファミド、ダウノルビシン(daunorubicin)、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、インターロイキン2、イリノテカン(irinotecan)、ドセタキセル(docetaxel)、パクリタキセル(paclitaxel)、トポテカン(topotecan)、5−フルオロウラシルおよびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ETアゴニストが、前記充実性腫瘍への血液供給を選択的に増加させる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍への前記血液供給の前記増加が、前記充実性腫瘍への前記化学療法薬の送達を増加させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ETアゴニストおよび前記化学療法薬を、実質的に同時に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ETアゴニストおよび前記化学療法薬を、単一組成物として投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ETアゴニストおよび前記化学療法薬を、逐次的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化学療法薬を、前記ETアゴニストの前に投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ETアゴニストを、前記化学療法薬の前に投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記化学療法薬が、シスプラチン、シクロホスファミドまたはそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ETアゴニストが、IRL−1620である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
組成物であって、少なくとも一つの化学療法薬、ETアゴニストおよび場合により賦形剤を含む組成物。
【請求項17】
前記ETアゴニストおよび前記化学療法薬が、同じ組成物の一部分であるか、別々の組成物として与えられるか、またはその双方である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ETアゴニストが、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL−1620(N−suc−[Glu,Ala11,15]ET−1(8−21))、サラホトキシン56c、[Ala1,3,11,15]ET−1およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記ETアゴニストが、IRL−1620である、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記化学療法薬が、アドリアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ダウノルビシン、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、インターロイキン2、イリノテカン、ドセタキセル、パクリタキセル、トポテカン、5−フルオロウラシルおよびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
前記化学療法薬が、シスプラチン、シクロホスファミドまたはそれらの組合せである、請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
前記化学療法薬が、シスプラチン、シクロホスファミドまたはそれらの組合せであり、そして前記ETアゴニストが、IRL−1620である、請求項16に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−523697(P2010−523697A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503210(P2010−503210)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/059949
【国際公開番号】WO2008/127996
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(504039144)スペクトラム・ファーマシューティカルス・インコーポレーテッド (5)
【出願人】(503063593)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (12)
【Fターム(参考)】