説明

癌の診断および処置のための組成物および方法

二つまたはそれ以上のヒトFZD受容体の細胞外ドメインへ特異的に結合して腫瘍細胞の成長を阻害する単離された抗体について記載する。さらに、本開示の抗体を腫瘍細胞成長を阻害するのに有効な量で投与する工程を含む、癌を処置する方法についても記載する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は腫瘍学の分野に関し、癌を診断し処置するための新規な組成物および方法を提供する。本発明は、充実性腫瘍の診断および処置のための癌幹細胞マーカーに対する抗体を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
癌は、先進諸国の主要な死因の一つであって、米国だけでも毎年100万人以上が癌と診察され、500,000人が死亡する。通算して、3人に2人以上が一生のうちになんらかの形の癌を発病するであろうと推測される。200種を上回る様々な種類の癌が存在し、それらのうちの四つ、すなわち乳房、肺、結腸直腸、および前立腺の癌が全ての新患の半分以上を占める(Jemal et al., 2003, Cancer J. Clin. 53:5-26)。
【0003】
乳癌は、女性において最も一般的な癌であり、女性のうち推定12%が一生のうちに発病するリスクを有する。死亡率は、早期検出および処置の改善により減少したが、未だ乳癌は中年女性の主要な死因であり、また転移性乳癌は、依然として不治の病である。症状に関しては、ほとんどの転移性乳癌患者は一つまたは二つの臓器系にしか罹患していないが、疾病が進行するとともに、通常複数の部位が侵されるようになる。転移病巣の最も一般的な部位は、皮膚および胸壁の軟組織における、ならびに腋窩および鎖骨上領域における、局所領域的再発である。遠隔転移の最も一般的な部位は骨(遠隔転移の30〜40%)であり、続いて肺と肝臓である。また、新しく乳癌と診断された女性のわずか約1〜5%しか診断時には遠隔転移を有さないが、局所的疾病を有する患者の約50%が、結局5年以内に転移によって再発する。現在、遠隔転移が起こってからの生存期間中央値は、約3年である。
【0004】
乳癌を診断し病期分類をする現行の手法には、腫瘍の大きさ、リンパ節中の腫瘍の存在、および遠隔転移の存在に基づく、腫瘍−リンパ節−転移(TNM)システムが含まれる(American Joint Committee on Cancer: AJCC Cancer Staging Manual. Philadelphia, Pa.: Lippincott-Raven Publishers, 5th ed., 1997, pp 171-180; Harris, J R: "Staging of breast carcinoma" in Harris, J. R., Hellman, S., Henderson, I. C., Kinne D. W. (eds.): Breast Diseases, Philadelphia, Lippincott, 1991)。これらのパラメーターは予後診断を与え、適切な治療を選択するために用いられる。腫瘍の形態的外観を評価することもできるが、同様の組織病理学的外観を有する腫瘍が有意な臨床的多様性を示す場合があるので、この方法には深刻な限界がある。最後に、細胞表面マーカーの分析を用いて、ある種の腫瘍の種類をサブクラスに分けることができる。例えば、乳癌の予後診断および処置において考慮される一つの因子は、エストロゲン受容体(ER)の存在であり、ER陽性乳癌は通常はタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬などのホルモン療法剤に、ER陰性の腫瘍よりも容易に応答する。これらの分析は有用ではあるが乳房腫瘍の臨床的挙動を部分的に予測できるだけであり、乳癌には、現在の診断機器によって検出できず、また現在の療法によって処置できない多くの表現型多様性が存在する。
【0005】
前立腺癌は、先進諸国の男性において最も一般的な癌であって、米国における全ての癌の新患の推定33%を占め、2番目に多い死因である(Jemal et al., 2003, CA Cancer J. Clin. 53:5-26)。前立腺特異抗原(PSA)血液検査の導入以来、前立腺癌の早期発見により劇的に生存率が改善され;診断時に局所的および局部的な段階の前立腺癌を有する患者の5年生存率は、100%に近づいている。それでも50%を上回る患者が、局所的に進行した疾病あるいは転移性の疾病を最終的に発病する(Muthuramalingam et al.,2004, Clin. Oncol. 16:505-16)。
【0006】
現在、根治的前立腺摘除および放射線療法が、大多数の局所的な前立腺腫瘍に対する治癒的処置が提供されている。しかし、進行した症例の場合には、治療の選択肢は極めて限定される。転移性疾病については、単独の、または抗アンドロゲン剤と組み合わせた黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストを用いるアンドロゲン除去が標準的処置である。しかし、最大限のアンドロゲン遮断をした場合でも疾病はほとんど必ず進行して、大多数がアンドロゲン非依存性疾病を発症する。現在のところ、ホルモン無反応性前立腺癌のための一様に容認された処置は存在せず、一般に化学療法的治療法が用いられる(Muthuramalingam et al., 2004, Clin. Oncol. 16:505-16; Trojan et al., 2005, Anticancer Res. 25:551-61)。
【0007】
結腸直腸癌は、3番目に一般的な癌であり、世界中の癌による死因中で4番目に多い(Weitz et al., 2005, Lancet 365:153-65)。全結腸直腸癌の約5〜10%が遺伝性であって、その主要な形の一つが、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)であり、これは、罹患者の約80%が大腸腺腫性ポリポーシス(APC)遺伝子に生殖細胞系列突然変異を含む常染色体優性疾病である。結腸直腸癌腫は、周辺への成長により局所的に、および、リンパ性、血行性、腹膜横断性、および神経周囲への伝播により他の場所へ侵入する。リンパ外の併発の最も一般的な部位は肝臓であり、最も頻繁に冒される腹腔外の器官は肺である。他の血行性伝播部位には、骨、腎臓、副腎および脳が含まれる。
【0008】
結腸直腸癌用の現在の病期分類システムは、腫瘍の腸壁浸透の程度、およびリンパ節併発の存在または非存在に基づく。この病期分類システムは、三つの主なデュークス分類によって定義される:デュークスA疾病は、結腸または直腸の粘膜下組織層に限定され;デュークスB疾病は、固有筋層を通過して侵入して、結腸または直腸壁に入り込む可能性のある腫瘍を有し;およびデュークスC疾病は、任意の程度の腸壁侵入があり、局地的リンパ節転移を有する。初期段階の結腸直腸癌には外科的切除術が極めて有効であって、デュークスA患者では95%の治癒率を与えるが、デュークスB患者では治癒率は75%に減少し、デュークスC疾病で陽性リンパ節が存在すると、60%の5年以内再発可能性が予測される。デュークスC患者の外科手術後の化学療法コースによる治療は再発率を40%〜50%に低下させ、これはこれらの患者に対する現在の標準ケアである。
【0009】
肺癌は世界的に最も一般的な癌であり、米国では3番目に多く診断される癌であって、最も多い癌死の原因である(Spiro et al., 2002, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 166: 1166-96; Jemal et al., 2003, CA Cancer J. Clin. 53:5-26)。喫煙が、全ての肺癌のうち推定87%の原因と考えられ、このことにより、肺癌は、最も効果的に予防可能な疾病となっている。肺癌は小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)の二つの主要なタイプに分類され、これらがすべての肺癌の90%以上を占める。SCLCは、症例の15〜20%を占め、大きな中枢気道に起源を持つこと、および細胞質をほとんど有さない小細胞のシートという組織学的組成によって特徴づけられる。SCLCはNSCLCより悪性であり、急速に成長し、早期に高頻度で転移する。NSCLCはすべての症例の80〜85%を占め、組織学に基づいてさらに三つの主なサブタイプである腺癌腫、扁平上皮癌腫(類表皮癌腫)および大細胞未分化癌腫に分類される。
【0010】
肺癌は、典型的にはその進行の後期に症状を現わし、したがって生存中央値は診断後わずか6〜12ヶ月であり、全体としての5年生存率はわずか5〜10%に過ぎない。手術は治癒の最良の機会であるが、肺癌患者のごく一部しか手術適格ではなく、大多数は化学療法および放射線療法に頼っている。その治療の時期および用量の程度を操作する試みがなされてはいるが、生存率は、過去15年にわたってほとんど増加していない(Spiro et al., 2002, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 166: 1166-96)。
【0011】
これらの四つの癌は、他の多くの癌もそうであるが、異質の細胞集団から成る充実性腫瘍として存在する。例えば乳癌は、癌細胞ならびに間充織(間質)細胞、炎症細胞および内皮細胞を含む正常細胞の混合物である。いくつかの癌のモデルが、この異質性の存在について異なる説明を与える。一つのモデルである癌の古典的モデルは、表現型が異なる癌細胞集団のすべてが、増殖して新しい腫瘍を生む能力を有すると考えられている。古典的モデルでは、腫瘍細胞の異質性は、環境要因に、ならびに腫瘍形成性細胞の様々な集団をもたらす癌細胞内で進行中の突然変異に起因する。このモデルは、すべての腫瘍細胞の集団がある程度の腫瘍形成能力を有するという発想に基づく(Pandis et al., 1998, Genes, Chromosomes & Cancer 12:122-129; Kuukasjrvi et al., 1997, Cancer Res. 57:1597-1604; Bonsing et al., 1993, Cancer 71:382-391; Bonsing et al., 2000, Genes Chromosomes & Cancer 82: 173-183; Beerman H et al., 1991, Cytometry 12:147-54; Aubele M & Werner M, 1999, Analyt. Cell. Path. 19:53; Shen L et al., 2000, Cancer Res. 60:3884)。
【0012】
充実性腫瘍細胞に観察される異質性についての別のモデルは、腫瘍発生に対する幹細胞の影響から導出される。このモデルによれば、癌は、正常組織の発生および維持を制御する機構の調節異常に起因する(Beachy et al., 2004, Nature 432:324)。正常動物の発生中、大部分またはすべての組織の細胞は、幹細胞と呼ばれる正常な前駆体から導出される(Morrison et al., 1997, Cell 88:287-98; Morrison et al., 1997, Curr. Opin. Immunol. 9:216-21; Morrison et al., 1995, Annu. Rev. Cell. Dev. Biol. 11:35-71)。幹細胞は、(1) 高い増殖能を有し;(2) 非対称細胞分裂をして、増殖および/または発生能力の低下した一つまたは複数の種類の子孫を生成することができ;かつ(3) 自己再生または自己維持のための対称細胞分裂が可能な、細胞である。幹細胞の分化による成人の細胞再生の最もよく研究されている例は造血系であって、発生上未熟な前駆体(造血幹細胞および始原細胞)が、分子シグナルに応答して、様々な血液細胞型およびリンパ球細胞型を形成する。腸、乳管系および皮膚の細胞を含む他の細胞は、絶えず各組織中の少数の幹細胞から補充され、最近の研究は、脳を含む大部分の他の成人組織もまた幹細胞を包含することを示唆する。「充実性腫瘍幹細胞」(あるいは充実性腫瘍由来の「癌幹細胞」)由来の腫瘍が、その後対称および非対称の細胞分裂の両方の繰り返しを通じて、無秩序に発生する。この幹細胞モデルでは、充実性腫瘍は、別々の限定された(恐らくまれでさえある)細胞のサブセットを含み、それは広汎に増殖しかつさらなる充実性腫瘍幹細胞(自己再生)ならびに充実性腫瘍の大多数である腫瘍形成能力を欠く腫瘍細胞の両者を効率的に生じるという点で、正常「幹細胞」の特性を共有する。実際、長命の幹細胞集団内の突然変異が癌幹細胞の形成を開始させる可能性があり、それは腫瘍の増殖および維持の基礎となっており、その存在が現在の治療的アプローチの失敗の原因である。
【0013】
癌の幹細胞的性質は、最初に血液癌、即ち急性骨髄性白血病(AML)で明らかにされた(Lapidot et al., 1994, Nature 77:645-8)。より最近になって、悪性ヒト乳房腫瘍が、同様に、免疫不全マウスにおける腫瘍形成能力に富む癌幹細胞の小さな別個の集団を含むことが実証された。ESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-細胞集団は、分画されていない腫瘍細胞と比較して、腫瘍形成性細胞が50倍豊富なことが判明した(Al-Hajj et al., 2003, Proc. Nat'l Acad. Sci. 100:3983-8)。腫瘍形成性癌細胞を予測的に単離する能力により、これらの細胞の腫瘍形成能の基礎となる重要な生物学的経路の研究が可能になり、このことはしたがって癌患者のためのより良い診断分析および治療法の開発を約束するものである。本発明の方向性は、この目的を目指している。
【発明の開示】
【0014】
発明の簡単な概要
ヒトFZD8受容体の細胞外ドメインへ特異的に結合して腫瘍細胞の成長を阻害する、単離されたモノクローナル抗体を提供する。さらに、二つまたはそれ以上のヒトFZD受容体の細胞外ドメインへ特異的に結合して腫瘍細胞の成長を阻害する、単離された抗体も提供する。本開示の抗体および薬学的に許容されるビヒクルを含む薬学的組成物を提供する。さらに、腫瘍細胞の成長を阻害するのに有効な量の本開示の抗体を投与する工程を含む癌を処置する方法を提供する。
【0015】
本発明のさらなる目的および長所は、一部は以下の明細書に記載され、その他は明細書より明らかであるかまたは本発明の実施により教示されうる。本発明の目的および長所は、特に添付の特許請求の範囲に詳細に示された要素および組合せを用いて、実現され到達される。先述した一般的な記載および以下の詳細な記載は共に、例示および説明のためだけのものであって、請求される本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。本明細書に組み入れられ、その一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの態様を例示し、明細書と共に、本発明の原理を説明する役目を果たす。明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「a」「an」および「the」は、文脈中で特にそうでないと明記しない限り、複数形を含むものとする。
【0016】
発明の詳細な説明
「抗体」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、またはこれらの組合せなどの標的を、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも一つの抗原識別部位によって認識し、特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味するために用いられる。ある態様では、本発明の抗体には、癌幹細胞マーカータンパク質に特異的に結合して、例えばリガンド結合、受容体の二量体化、癌幹細胞マーカータンパク質の発現、および/または癌幹細胞マーカータンパク質の下流のシグナル伝達を妨害するアンタゴニスト抗体が含まれる。ある態様では、開示された抗体には、癌幹細胞マーカータンパク質に特異的に結合して、例えば、リガンド結合、受容体の二量体化、および/または癌幹細胞マーカータンパク質によるシグナル伝達を促進するアゴニスト抗体が含まれる。ある態様では、開示された抗体は、癌幹細胞マーカータンパク質の生物活性を妨害も促進もしないが、例えば抗体の内在化によって、および/または免疫系によって認識されて、腫瘍成長を阻害する。本明細書で用いられる「抗体」という用語は、抗体が望ましい生物活性を示す限り、無傷の(intact)ポリクローナル抗体、無傷のモノクローナル抗体、抗体断片(Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片など)、一本鎖Fv(scFv)突然変異体、二重特異性抗体などの少なくとも二つの無傷の抗体から生成された多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、および抗原識別部位を含む任意の他の修飾された免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる重鎖定常領域の同一性に基づいて、五つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ)(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のいずれかであり得る。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なる周知のサブユニット構造および三次元構造を有する。抗体は、裸であっても、または毒素、放射性同位元素などの他の分子に接合されていてもよい。
【0017】
本明細書で用いられる「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部を指し、また無傷の抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片、直鎖状抗体、一本鎖抗体、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が、非限定的に含まれる。
【0018】
「Fv抗体」とは、一本の重鎖可変ドメインと一本の軽鎖可変ドメインが非共有結合性の二量体を形成している二本鎖として、あるいは、二本の鎖が同様の二量体構造で会合するように、一本の重鎖可変ドメインと一本の軽鎖可変ドメインが柔軟なペプチドリンカーによって共有結合している一本鎖(scFv)として、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む、最小の抗体断片を指す。この構成では、各可変ドメインの相補性決定領域(CDR)が相互作用して、Fv二量体の抗原結合特異性を決定する。あるいは、一般的に親和性はより低いが、単一の可変ドメイン(あるいはFvの半分)を用いて抗原を認識し結合することができる。
【0019】
本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」とは、単一の抗原決定基、即ちエピトープの極めて特異的な認識および結合に関与する、均一な抗体集団を指す。これは、異なる抗原決定基に向けられた異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体とは対照的である。「モノクローナル抗体」という用語は、無傷でありかつ全長であるモノクローナル抗体ならびに抗体断片(Fab、Fab'、F(ab')2、Fvなど)の両方、一本鎖(scFv)突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および抗原識別部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子を包含する。さらに、「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え体発現、および遺伝子組換え動物による手法を非限定的に含む、任意の手法によって作製される抗体を指す。
【0020】
本明細書で用いられる「ヒト化抗体」という用語は、最小の非ヒト配列を含む、特異的な免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリン、またはそれらの断片である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形を指す。典型的には、ヒト化抗体は、相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(例えばマウス、ラット、ウサギ、ハムスター)のCDRからの残基により置き換えられている、ヒト免疫グロブリンである。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種からの抗体中の対応する残基で置き換えられる。ヒト化抗体を、Fvフレームワーク領域中および/または置き換えられた非ヒト残基の中のさらなる残基の置換によってさらに修飾して、抗体の特異性、親和性、および/または能力を、改良し、最適化することができる。一般にヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するすべてまたは実質的にすべてのCDR領域を含む、少なくとも一つ、典型的には二つまたは三つの可変ドメインのすべてを実質的に含みうる。しかし一方で、すべてまたは実質的にすべてのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、通常はヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)を、少なくとも一部含むことができる。米国特許第5,225,539号に、ヒト化抗体を生成するために用いられる方法の例が述べられている。
【0021】
本明細書で用いられる「ヒト抗体」という用語は、ヒトによって産生された抗体、または当技術分野で公知の任意の技術を用いて作製された、ヒトによって産生された抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義は、無傷または全長の抗体、その断片、および/または例えばマウスの軽鎖およびヒトの重鎖ポリペプチドを含む抗体などの、少なくとも一つのヒト重鎖および/または軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。
【0022】
「ハイブリッド抗体」とは、異なる抗原決定領域を有する抗体からの重鎖と軽鎖の対が組み合わされている免疫グロブリン分子であって、その結果生じる四量体により、二つの異なるエピトープまたは二つの異なる抗原を認識し、結合することができる。
【0023】
「キメラ抗体」という用語は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が二つまたはそれ以上の種に由来する抗体を指す。典型的には、軽鎖および重鎖両方の可変領域は、所望の特異性、親和性、および能力を有する、一つの哺乳動物種(例えばマウス、ラット、ウサギなど)由来の抗体の可変領域に対応し、一方、定常領域は、別の種(通常ヒト)に由来する抗体中の配列と相同であり、上記の種において免疫応答を誘発することを回避する。
【0024】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、本明細書において交換可能に用いられ、特定の抗体により認識されて特異的に結合することができる抗原の部分を指す。抗原がポリペプチドである場合、エピトープは、連続したアミノ酸、およびタンパク質の三次元的折り畳みによって近接して並べられた連続していないアミノ酸の両方から形成することができる。連続するアミノ酸から形成されているエピトープは、タンパク質が変性した場合にも典型的には維持されるが、三次元的折畳みによって形成されたエピトープは、タンパク質が変性すると典型的には失われる。エピトープには、独特の立体構造中に典型的には少なくとも3、より通常には少なくとも5または8〜10のアミノ酸が含まれる。
【0025】
抗体が「選択的に結合する」または「特異的に結合する」とは、抗体がエピトープと、無関係なタンパク質を含む他の物質とよりもより頻繁に、より急速に、より長期間、より大きな親和性で、または上記のいくつかの組合せで、反応または結合することを意味する。「選択的に結合する」または「特異的に結合する」とは、例えば抗体が、少なくとも約0.1mM、しかしより通常は少なくとも1μMのKDでタンパク質に結合することを意味する。場合によっては、「選択的に結合する」または「特異的に結合する」とは、抗体が時々は少なくとも約0.1μM以上のKDで、あるいは別な場合には少なくとも約0.01μM以上のKDで、タンパク質に結合することを意味する。異なる種中の相同タンパク質間の配列同一性のために、特異的結合は、二種以上の種における癌幹細胞マーカータンパク質を認識する抗体を含み得る。
【0026】
本明細書において、「非特異的結合」および「バックグラウンド結合」という用語は、抗体とタンパク質またはペプチドとの相互作用について用いられるとき、特定の構造の存在に依存しない相互作用(即ち、抗体がエピトープなどの特定の構造ではなくタンパク質全般に結合している)を指す。
【0027】
「単離された」または「精製された」という用語は、ある物質の天然の状態では通常その物質と一緒にある成分が実質的にまたは本質的に存在しない物質を指す。純度および均一性は、典型的にはポリアクリルアミドゲル電気泳動法または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を用いて決定される。調製物中に存在する主な種である本開示のタンパク質(例えば抗体)または核酸は、実質的に精製されている。詳細には、単離された核酸とは、本来その遺伝子に隣接しかつその遺伝子によってコードされるタンパク質以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離されている。単離された抗体は、他の非免疫グロブリンタンパク質および異なる抗原結合特異性を有する他の免疫グロブリンタンパク質から分離されている。それはまた、核酸またはタンパク質がいくつかの態様では少なくとも80%純粋であり、いくつかの態様では少なくとも85%純粋であり、いくつかの態様では少なくとも90%純粋であり、いくつかの態様では少なくとも95%純粋であり、そしていくつかの態様では少なくとも99%純粋であることを意味しうる。
【0028】
本明細書で用いる「癌」および「癌性」という用語は、ある細胞集団が無秩序な細胞増殖により特徴付けられる哺乳動物の生理的症状を指すかまたは記載する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が、非限定的に含まれる。そのような癌のより詳細な例には、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌腫、肺扁平上皮癌腫、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、ヘパトーマ、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、および様々な型の頭頸部癌が含まれる。
【0029】
「増殖性障害」および「増殖性疾病」という用語は、癌などの異常細胞増殖に関連した障害を指す。
【0030】
本明細書で使用する「腫瘍」および「新生物」とは、過度の細胞成長または増殖に起因する良性(非癌性)病変または、前癌病変を含む悪性(癌性)病変の任意の組織塊を指す。
【0031】
本明細書で使用する「転移」とは、癌が、新しい位置で同様の癌病変の発症を伴って、身体の発生部位から他の領域へと拡張または移行するプロセスを指す。「転移性の」または「転移する」細胞とは、近隣の細胞との粘着性接触を失い、疾病の初期部位から血流またはリンパ液によって移動して、近隣の身体構造へと侵入する細胞である。
【0032】
「癌幹細胞」、「腫瘍幹細胞」、または「充実性腫瘍幹細胞」という用語は、本明細書で交換可能に用いられ、(1) 高い増殖能を有し;(2) 非対称細胞分裂して、増殖または発生能力の低下した一つまたは複数種類の分化した後代細胞を生成することができ;かつ(3) 自己再生または自己維持のための対称細胞分裂ができる充実性腫瘍由来の細胞集団を指す。「癌幹細胞」、「腫瘍幹細胞」、または「充実性腫瘍幹細胞」のこれらの特性によって、これらの癌幹細胞は、腫瘍を形成できない大多数の腫瘍細胞と比較して、免疫不全マウスへの累代移植の際に触診可能な腫瘍を形成できる。癌幹細胞は、無秩序な分化に対して自己再生を受け、突然変異が生じるにつれて経時的に変化することができる異常細胞型を含む腫瘍を形成する。充実性腫瘍幹細胞は、米国特許第6,004,528号によって提供される「癌幹細胞系統」とは異なる。上記特許では、「癌幹細胞系統」を、それ自体は殆ど突然変異を有さないが、細胞環境に生じる腫瘍形成性変化の結果として非対称分裂ではなく対称細胞分裂を行う、ゆっくりと増殖する始原細胞型であると定義する。したがってこの「癌幹細胞系統」仮説は、高度に突然変異され急速に増殖している腫瘍細胞が主に異常な環境の結果として生じ、この異常な環境が、比較的正常な幹細胞を蓄積させ、その後突然変異を受けて、これらを腫瘍細胞にするものであることを提唱する。米国特許第6,004,528号は、そのようなモデルを用いて癌の診断を促進できると提唱する。充実性腫瘍幹細胞モデルは、「癌幹細胞系統」モデルと基本的に異なり、結果として「癌幹細胞系統」モデルでは与えられない効用を示す。第1に、充実性腫瘍幹細胞は、「突然変異を免れて」はいない。米国特許第6,004,528号によって記載された「突然変異を免れた癌幹細胞系統」は、前癌病変と考えることができ、一方では、充実性腫瘍幹細胞は、それら自身が突然変異を含み、前癌段階からスタートして後期段階癌までずっと腫瘍形成の原因となる癌細胞である。即ち、充実性腫瘍幹細胞(「癌幹細胞」)は、米国特許第6,004,528号中の「癌幹細胞系統」とは区別される、高度に突然変異された細胞に含まれる。第2に、癌をもたらす遺伝子突然変異は、環境的なものだけではなく、大部分は充実性腫瘍幹細胞内の内因性のものであり得る。単離された充実性腫瘍幹細胞は、移植された時、新たな腫瘍を生じさせることができることが充実性腫瘍幹細胞モデルによって予測され(したがって転移が説明される)、その一方で「癌幹細胞系統」モデルによって、腫瘍形成性であったそれらの異常な環境のため、移植された「癌幹細胞系統」細胞は新しい腫瘍を生じさせることができないことが予測される。確かに、解離され、表現型によって単離されたヒト充実性腫瘍幹細胞をマウスに(正常な腫瘍環境とは非常に異なる環境中へ)移植して、そこで依然として新しい腫瘍を形成する能力は、本発明を「癌幹細胞系統」モデルから弁別する。第3に、充実性腫瘍幹細胞は、対称的および非対称的の両方に分裂する可能性が高く、したがって対称細胞分裂が避けられない特性ではない。第4に、充実性腫瘍幹細胞は、多くの変数に依存して、急速にまたはゆっくりと分裂することができ、したがって遅い増殖速度は決定的な特性ではない。
【0033】
「癌細胞」、「腫瘍細胞」という用語、およびその文法上の等価物は、腫瘍細胞集団の大部分を含む非腫瘍形成性細胞および腫瘍形成性幹細胞(癌幹細胞)の両方を含む腫瘍または前癌病変に由来する細胞の全集団を指す。
【0034】
本明細書で用いる「腫瘍形成性」とは、充実性腫瘍幹細胞が腫瘍を形成することを可能にする、自己再生(新たな腫瘍形成性癌幹細胞を生ずる)および他の全ての腫瘍細胞を生成するための増殖(分化し、したがって非腫瘍形成性の腫瘍細胞を生ずる)という特性を含む、充実性腫瘍幹細胞の機能的な特徴を指す。自己再生および他の全ての腫瘍細胞を生成するための増殖というこれらの特性によって、累代移植で腫瘍を形成することができない大多数の腫瘍細胞と比較して、本発明の癌幹細胞は、免疫不全マウスへの累代移植の際に触診可能な腫瘍を形成することができる。腫瘍細胞、即ち非腫瘍形成性腫瘍細胞は、充実性腫瘍から腫瘍細胞を得た後、免疫不全マウスへの移植の際に、限定された回数(例えば1または2回)だけ腫瘍を形成する。
【0035】
本明細書に用いる「幹細胞癌マーカー」、「癌幹細胞マーカー」、「腫瘍幹細胞マーカー」、または「充実性腫瘍幹細胞マーカー」という用語は、単独でまたは他の遺伝子と組み合わせたその発現レベルが、非腫瘍形成性細胞と比較して腫瘍形成性癌細胞の存在と相関関係にある、一つもしくは複数の遺伝子、またはその一つもしくは複数の遺伝子により発現されるタンパク質、ポリペプチド、あるいはペプチドを指す。相関関係は、遺伝子の増加したまたは減少した発現(例えば、遺伝子によってコードされるmRNAまたはペプチドの増加したまたは減少したレベル)のどちらに関連してもよい。
【0036】
本明細書で用いられる「未分画の腫瘍細胞」、「分類前の腫瘍細胞」、「腫瘍細胞全体」という用語、およびそれらの文法的等価物は交換可能に用いられ、患者の試料(例えば腫瘍生検または胸水)から単離された、まだ細胞表面マーカーの発現に基づいて分離または分画されていない腫瘍細胞集団を指す。
【0037】
本明細書で用いられる「非ESA+CD44+腫瘍細胞」、「非ESA+44+」、「分類された非腫瘍形成性腫瘍細胞」、「非腫瘍形成性腫瘍細胞」、「非幹細胞」、「腫瘍細胞」という用語、およびそれらの文法的等価物は交換可能に用いられ、本発明の癌幹細胞が、細胞表面マーカー発現に基づいて分離されたまたは取り出された腫瘍集団を指す。
【0038】
本明細書に用いる「生検」および「生検組織」という用語は、試料が癌組織を含むかどうかを決定する目的で被験体から取り出す組織または流体の試料を指す。いくつかの態様では、被験体が癌を有する疑いがあるので、生検組織または流体を得て、次に生検組織または流体を、癌の有無について検査する。
【0039】
本明細書で用いられる「被験体」という用語は、特定の処置のレシピエントとなるべき、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯動物などを非限定的に含む任意の動物(例えば哺乳動物)を指す。典型的には、本明細書でヒト被験体に関しては、「被験体」と「患者」という用語を互換的に用いる。
【0040】
「薬学的に許容される」とは、ヒトを含む動物への使用が、連邦または州政府の監督官庁によって承認されたかまたは承認可能なこと、あるいは米国薬局方または他の一般に認められた薬局方に記載されていることを指す。
【0041】
「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容され、親化合物の望ましい薬理活性を有する化合物の塩を指す。
【0042】
「薬学的に許容される賦形剤、担体、またはアジュバント」とは、少なくとも一つの本開示の抗体と共に被験体に投与することができ、抗体の薬理活性を破壊せず、治療量の化合物を送達するのに十分な用量で投与したときに無毒である賦形剤、担体またはアジュバントを指す。
【0043】
「薬学的に許容されるビヒクル」とは、少なくとも一つの本開示の抗体と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤または担体を指す。
【0044】
「プロドラッグ」とは、治療上有効な化合物を産生するためには身体内での変換が必要である治療上有効な化合物の誘導体を指す。治療上有効な親化合物に変換されるまで、プロドラッグは薬理学的に不活性であり得る。
【0045】
「治療的有効量」という用語は、被験体もしくは哺乳動物の疾病または障害を「処置する」のに有効な、抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小さな有機分子、または他の薬物の量を指す。癌の場合には、治療的有効量の薬物は、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさを縮小させ;例えば、癌の柔組織および骨の中への拡散を含む、辺縁の器官への癌細胞浸潤を阻害または停止させ;腫瘍転移を阻害および停止させ;腫瘍成長を阻害および停止させ;癌に関連した一つまたは複数の症状をある程度軽減させ;罹患率と死亡率を低下させ;生活の質を改善し;あるいはそのような効果の組合せが可能である。薬物が、既存の癌細胞の増殖を防止しおよび/または死滅させる範囲で、それを細胞増殖抑制性および/または細胞障害性であると言うことができる。
【0046】
本明細書に用いる「診断の提供」または「診断情報」とは、患者が疾病または症状を有するかどうか判断する際に、および/または、疾病もしくは症状を、表現型のカテゴリーに分類する際に、あるいは疾病もしくは症状の予後診断または処置(処置一般または任意の特定の処置のいずれか)に対する予想される応答に関して重要な任意のカテゴリーに分類する際に役立つ、任意の情報を指す。同様に、診断とは、被験体が症状(腫瘍などの)を有する可能性が高いかどうかの情報、例えばリスクの高い腫瘍またはリスクの低い腫瘍などの腫瘍の性質または分類に関する情報、予後に関する情報、および/または適切な処置を選択するのに役立つ情報を非限定的に含む、任意の型の診断情報を提供することを指す。処置の選択には、特定の化学療法剤または手術もしくは放射線などの他の処置様式の選択、あるいは療法を保留するべきか提供するべきかに関する選択が含まれ得る。
【0047】
本明細書に用いる「予後診断の提供」、「予後情報」または「予測情報」という用語は、被験体の将来の健康(例えば予期される罹患率または死亡率、癌に罹る可能性、および転移のリスク)に対する、(例えば本発明の診断法によって決定される)癌の存在の影響に関する情報を提供することを指す。
【0048】
「処置する」、または「処置」、または「処置すること」、または「軽減する」、または「軽減すること」などの用語は、1) 診断された病理的症状または障害を治癒し、遅らせ、症状を減少させ、かつ/またはその進行を停止させる治療的方策、および 2) 標的とする病理的症状または障害の発生を予防するかまたは遅延させる予防もしくは防止的方策の両方を指す。したがって、処置を必要とする人々には、既に障害を有する人々;障害を有しやすい人々;および障害が防止されるべき人々が含まれる。患者が、下記の一つまたは複数を示せば、本発明の方法による被験体の「処置」は成功である:癌細胞数の減少またはその完全な非存在;腫瘍サイズの減少;例えば軟組織および骨の中への癌の展開を含む、辺縁器官への癌細胞浸潤の阻害または非存在;腫瘍転移の阻害または非存在;腫瘍成長の阻害または非存在; 特定の癌に関連する一つまたは複数の症状の軽減;低下した罹患率および死亡率;生活の質の改善、または効果のいくつかの組合せ。
【0049】
本明細書に用いられる「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、リン酸ジエステル結合によって連結された複数のヌクレオチドユニット(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド、または関連する構造変異種)から構成されるポリマーを指し、DNAまたはRNAを非限定的に含む。この用語は、DNAおよびRNAの、任意の公知の塩基類似体を含む配列を包含する。「遺伝子」という用語は、ポリペプチド、前駆体、またはRNA (例えばrRNA、tRNA)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えばDNA)配列を指す。ポリペプチドは、全長または断片の望ましい活性または機能特性(例えば酵素活性、リガンド結合、シグナル変換、免疫原性など)を保持する限り、全長のコード配列またはコード配列の任意の部分によってコードされることができる。この用語はまた、構造遺伝子のコード領域、ならびにコード領域の5'および3'端の両方に隣接して位置する配列であって、いずれかの端において遺伝子が全長のmRNAの長さに対応するように約1kbまたはそれ以上の距離に及ぶものを包含する。コード領域の5'に位置し、mRNA上に存在する配列は、5'非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3'即ち下流に位置し、mRNA上に存在する配列は、3'非翻訳配列と呼ばれる。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNAおよびゲノム形式の両方を包含する。遺伝子のゲノム形式またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」あるいは「介在配列」と名付けられた非コード配列によって中断されたコード領域を含む。イントロンは核RNA (hnRNA)へ転写される遺伝子の区画であり;イントロンは、エンハンサーなどの調節エレメントを含むことができる。イントロンは、核または一次転写産物から除去、即ち「スプライシング除去」され;したがって、イントロンはメッセンジャーRNA (mRNA)転写物中には存在しない。mRNAは翻訳中に機能して、合成途中のポリペプチド中のアミノ酸の配列即ち順序を指定する。イントロンを含むことに加えて、遺伝子のゲノム形式は、さらにRNA転写物上に存在する配列の5'および3'端の両方に位置する配列を含み得る。これらの配列は、「隣接」配列または領域と呼ばれる(これらの隣接配列は、mRNA転写物上に存在する非翻訳配列の5'または3'に位置する)。5'隣接領域は、遺伝子の転写を制御するかまたは影響を及ぼすプロモーターおよびエンハンサーなどの調節配列を含むことができる。3'隣接領域は、転写の終了、転写後の切断およびポリアデニル化を指示する配列を含むことができる。
【0050】
「組換え体」という用語は、細胞、核酸、タンパク質またはベクターに関して用いられるとき、異種性の核酸またはタンパク質の導入、天然の核酸またはタンパク質の改変によって、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが修飾されたこと、または細胞がそのような修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば組換え細胞は、天然(非組換え)型の細胞中に見出されない遺伝子を発現するか、あるいは、天然の遺伝子を過剰に発現し、そうでなければ異常に発現され、例えば、非天然の断片またはスプライシング変異体として発現される。本明細書では、「組換え核酸」という用語は、通常は核酸の操作によって、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いて、本来はインビトロで形成される、天然には通常見出されない形式の核酸を意味する。このようにして、種々の配列の機能的な連結が達成される。したがって、通常連結されないDNA分子のライゲーションによりインビトロで形成された、直鎖状の単離された核酸分子または発現ベクターは、両方とも本発明の目的のためには組換え体であるとみなされる。一旦組換え核酸分子が作製されて宿主細胞または生物体に導入されると、それは、非組換え的に、即ち、インビトロ操作ではなく宿主細胞のインビボの細胞機構を用いて複製することが理解される。しかし、一旦組換え的に産生されたそのような核酸は、その後非組換え的に複製されるとしても、本発明の目的に関しては依然として組換え体であるとみなされる。同様に、「組換えタンパク質」は、組換え技術を用いて、すなわち、上に記載したような組換え核酸分子の発現を通じて作製されたタンパク質である。
【0051】
本明細書で用いる「異種性遺伝子」という用語は、自身の自然環境にはない遺伝子を指す。例えば、異種性遺伝子は、ある種から別の種へ導入された遺伝子を含む。異種性遺伝子はまた、(例えば、突然変異、複数コピーでの添加、非天然調節配列への連結など)何らかの形で改変されている、生物体にとっては天然である遺伝子を含む。異種性遺伝子配列が、染色体中で該遺伝子配列との結合を天然には認められないDNA配列に典型的には結合しているか、あるいは自然界では認められない染色体部分(例えば通常は遺伝子が発現されない遺伝子座で発現した遺伝子)と結合しているという点で、異種性遺伝子は内因性遺伝子と区別される。
【0052】
本明細書で用いる「ベクター」という用語は、DNA画分を一つの細胞から別の細胞へ移植する核酸分子について用いられる。「媒体」という用語は、「ベクター」と交換可能に用いられることがある。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、あるいは植物または動物ウイルスに由来することが多い。
【0053】
「ライゲーション」とは、二つの二重鎖核酸断片間にリン酸ジエステル結合を形成するプロセスを指す。別段の定めのない限り、公知の緩衝液および条件を用いて、ほぼ等モル量のライゲーションされるべきDNA断片0.5ugにつき10単位のT4DNAリガーゼ(「リガーゼ」)により、ライゲーションを遂行することができる。核酸のライゲーションは、二つのタンパク質をインフレームで互いに連結して、単一タンパク質、即ち融合タンパク質を生成する役割を果たすことができる。
【0054】
本明細書で用いる「遺伝子発現」という用語は、遺伝子中にコードされた遺伝情報を、遺伝子の「転写」を通じて(例えば、RNAポリメラーゼの酵素作用により)、RNA (例えば、mRNA、rRNA、tRNAまたはsnRNA)へ変換するプロセス、およびタンパク質をコードする遺伝子については、mRNAの「翻訳」によってタンパク質へ変換するプロセスを指す。遺伝子発現を、プロセス中の多くの段階で調節することができる。「アップレギュレーション」または「活性化」とは、遺伝子発現産物(例えばRNAまたはタンパク質)の産生を増加させる調節を指し、「ダウンレギュレーション」または「抑制」とは、産生を減少させる調節を指す。アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションに関係する分子(例えば転写因子)は、それぞれ「アクチベーター」および「リプレッサー」と呼ばれることが多い。
【0055】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」および「タンパク質断片」という用語は交換可能に本明細書で用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーはもとより、一つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学的模倣体である、アミノ酸ポリマーにも用いられる。
【0056】
「アミノ酸」という用語は、天然および合成のアミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸は、遺伝子コードによってコードされたアミノ酸、ならびに後で修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、O-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同じ基礎的化学構造、例えば水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合されたα炭素を、有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム、を指す。そのような類似体は、修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有することができるが、天然アミノ酸と同じ基礎的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化学化合物を指す。
【0057】
「保存的修飾変異体」は、アミノ酸および核酸配列の両方に用いられる。「アミノ酸変異体」はアミノ酸配列を指す。特定の核酸配列について、保存的修飾変異体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指し、あるいは、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の配列または関連した(例えば、本来隣接している)配列を指す。遺伝子コードの縮退のために、多数の機能的に同一の核酸が大部分のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸のアラニンをコードする。したがって、コドンがアラニンを指定するすべての位置で、コードされるポリペプチドを改変することなく、コドンを、前述した対応する別のコドンに改変することができる。そのような核酸変異は「サイレントな変異」であり、保存的に修飾された変異の一種である。あるポリペプチドをコードする本明細書記載の全ての核酸配列は、核酸のサイレントな変異も含めて記載している。特定の文脈において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのただ一つのコドンであるAUG、および通常トリプトファンのただ一つのコドンであるTGGを除く)を修飾して機能的に同一の分子を産出することができることを、当業者は認識するであろう。従って、ポリペプチドをコードする核酸のサイレントな変異は、発現産物については、記載される配列中で潜在しているが、実際のプローブ配列ではそうではない。アミノ酸配列については、改変が化学的した類似のアミノ酸によるアミノ酸置換をもたらす場合を含め、コード配列中の単一のアミノ酸または数パーセントのアミノ酸を改変するか、追加するか、または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列への個々の置換、欠失または追加は「保存的に修飾された変異体」であることを、当業者は認識するであろう。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表が、当技術分野において周知である。そのような保存的修飾変異体は、本発明の多型変異体、異種間同族体、および対立遺伝子に含まれるものであって、それらを除外するものではない。典型的には、保存的置換には以下のものが含まれる:1) アラニン(A)、グリシン(G);2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4) アルギニン(R)、リジン(K);5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7) セリン(S)、スレオニン(T);および8) システイン(C)、メチオニン(M) (例えば Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
【0058】
本明細書に用いる「エピトープタグを付けた」という用語は、「エピトープタグ」に融合された癌幹細胞マーカータンパク質、あるいはそれのドメイン配列またはその部分を含むキメラポリペプチドを指す。エピトープタグポリペプチドは、抗体による認識用のエピトープを提供するためには十分であるが、それでも十分に短く、癌幹細胞マーカータンパク質の活性を邪魔しないアミノ酸残基を含む。適当なエピトープタグは、一般に少なくとも6アミノ酸残基、通常約8〜約50アミノ酸残基、そして時には約10〜約20アミノ酸残基を有する。一般にに使用されるエピトープタグには、Fc、HA、His、およびFLAGタグが含まれる。
【0059】
ヒトFZD8受容体の細胞外ドメインへ特異的に結合して腫瘍細胞の成長を阻害する、単離された抗体を提供する。ある態様では、抗体はモノクローナル抗体である。ある態様では、抗体はキメラ抗体である。ある態様では、抗体はヒト化抗体である。ある態様では、抗体はヒト抗体である。
【0060】
二つまたはそれ以上のヒトFZD受容体の細胞外ドメインへ特異的に結合して腫瘍細胞の成長を阻害する、単離された抗体をさらに提供する。ある態様では、抗体は、特異的にヒトFZD2およびFZD6の細胞外ドメインへ結合する。ある態様では、抗体は、特異的にヒトFZD7およびFZD10の細胞外ドメインへ結合する。ある態様では、抗体は、特異的にヒトFZD4およびFZD5の細胞外ドメインへ結合する。ある態様では、抗体は、特異的にヒトFZD4およびFZD8の細胞外ドメインへ結合する。ある態様では、抗体は、特異的にヒトFZD5およびFZD8の細胞外ドメインへ結合する。いくつかの態様では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの態様では、抗体はキメラ抗体である。いくつかの態様では、抗体はヒト化抗体である。いくつかの態様では、抗体はヒト抗体である。
【0061】
三つまたはそれ以上のヒトFZD受容体の細胞外ドメインへ特異的に結合する、単離された抗体をさらに提供する。ある態様では、抗体は、特異的にヒトFZD4、FZD5、およびFZD8の細胞外ドメインへ結合する。いくつかの態様では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの態様では、抗体はキメラ抗体である。いくつかの態様では、抗体はヒト化抗体である。いくつかの態様では、抗体はヒト抗体である。
【0062】
本開示の抗体および薬学的に許容されるビヒクルを含む薬学的組成物をさらに提供する。
【0063】
本開示の抗体を産生するハイブリドーマもまた提供する。
【0064】
腫瘍細胞成長を阻害するのに有効な量の本開示の抗体または薬学的組成物を投与する工程を含む、癌を処置する方法をさらに提供する。ある態様では、抗体は細胞障害性部分に抱合される。ある態様では、本方法は、さらに併用療法を行うために適切な、少なくとも一つの追加の治療剤を投与する工程を含む。ある態様では、腫瘍細胞は、乳房腫瘍、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍、および頭頸部腫瘍より選択される。
【0065】
充実性腫瘍は、それらが生ずる組織と同様に、異種の細胞の集団から成る。これらの細胞の大多数が腫瘍形成能を欠くことが、充実性腫瘍の発生および維持もまた、増殖しかつ、さらなる腫瘍幹細胞(自己再生)および腫瘍形成能を欠くより分化した腫瘍細胞の大多数(即ち非腫瘍形成性癌細胞)の両方を効率的に生じる能力を有する幹細胞小集団(即ち腫瘍形成性癌細胞)に依存していることを示唆した。癌幹細胞の概念はHSCの発見の直後にまず導入され、急性骨髄性白血病(AML)において実験的に確立された(Park et al., 1971, J. Natl. Cancer Inst. 46:411-22; Lapidot et al., 1994, Nature 367:645-8; Bonnet & Dick, 1997, Nat. Med. 3:730-7; Hope et al., 2004, Nat. Immunol. 5:738-43)。充実性腫瘍由来の幹細胞は、より最近になって、その細胞表面受容体発現の独特なパターンならびに培養中および異種移植片動物モデル中での自己再生および増殖特性の評価に基づいて、単離された。分画されていない腫瘍細胞と比較して50倍を上回る腫瘍形成能を有するESA+CD44+CD24-/low系列集団が発見された(Al-Hajj et al., 2003, Proc. Nat'l. Acad. Sci. 100:3983-8)。大量の非腫瘍形成性腫瘍細胞から腫瘍形成性癌幹細胞を単離できる能力が、マイクロアレイ分析を用いた、癌幹細胞マーカーである、非腫瘍形成性腫瘍細胞または正常な乳房上皮と比較して癌幹細胞中で差示的発現を有する遺伝子の同定につながった。本発明は、これらの同定された癌幹細胞マーカーの知識を利用して、癌を診断し、処置を行う。
【0066】
本発明の癌幹細胞マーカーは、例えば癌幹細胞のマーカーとしてのヒトFZD4、FZD5およびFZD8を含むヒトFZD受容体に関し、Wntシグナル伝達経路を癌幹細胞の維持に関連させ、およびこれらの腫瘍形成性細胞の除去によって癌を処置する標的となる。Wntシグナル伝達経路は、胚パターン形成、後胚期組織維持および幹細胞生物学のいくつかの重大な調節因子の一つである。より具体的には、Wntシグナル伝達は、幹細胞集団による自己再生を含む、細胞極性の生成および細胞運命指定に重要な役割を果たす。Wnt経路の未調節活性化は多数のヒト癌に関連するが、Wnt経路は、腫瘍細胞の発生運命を変更して、未分化の増殖状態にそれらを保持することができる。このように発癌は、幹細胞による正常な発生および組織修復を制御するホメオスタシス機構を奪うことによって、進行することができる(Reya & Clevers, 2005, Nature 434:843; Beachy et al., Nature 2004, 432:324に概説されている)。
【0067】
Wntシグナル伝達経路は、ショウジョウバエ (Drosophila)の発生突然変異体wingless(wg)において、およびマウス癌原遺伝子int-1 (現在はWnt1)から、最初に解明された(Nusse & Varmus, 1982, Cell 31:99-109; Van Ooyen & Nusse, 1984, Cell 39:233-40; Cabrera et al., 1987, Cell 50:659-63; Rijsewijk et al., 1987, Cell 50:649-57)。Wnt遺伝子は、脂質で修飾された分泌糖タンパク質をコードし、そのうち19種が哺乳動物中で同定されている。これらの分泌されたリガンドは、Frizzled (FZD)受容体ファミリーメンバーと低密度リポタンパク質(LDL)受容体関連タンパク質5または6 (LPR5/6)からなる受容体複合体を活性化する。FZD受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーの7回膜貫通ドメインタンパク質であって、高システインドメイン(CRD)またはFriドメインとして知られる、10個の保存されたシステインを有する大きな細胞外N末端リガンド結合ドメインを含む。10種のヒトFZD受容体(FZD1〜10)が存在する。異なるFZDCRDは、特異的なWntに対して異なる結合親和性を有しており(Wu & Nusse, 2002, J. Biol. Chem. 277:41762-9)、FZD受容体は、下記の標準β-カテニン経路を活性化するものおよび非標準経路を活性化するものへと分類される(Miller et al., 1999, Oncogene 18:7860-72)。FZDリガンドを結合する受容体複合体を形成するために、FZD受容体はLRP5/6、つまり六つのYWTDアミノ酸反復よって隔てられた四つの細胞外EGF様ドメインを有する単一回膜貫通型タンパク質と相互作用する(Johnson et al., 2004, J. Bone Mineral Res 19:1749)。
【0068】
受容体結合により活性化された標準Wntシグナル伝達経路は、Fzd受容体と直接に相互作用する細胞質タンパク質ディシェベルド(Dishevelled) (Dsh)によって仲介されて、β-カテニンの細胞質での安定化および蓄積をもたらす。Wntシグナルが存在しない場合は、β-カテニンは、腫瘍抑制タンパク質である大腸腺腫様ポリポーシス(APC)およびオーキシンを含む細胞質の分解複合体に局在する。これらのタンパク質は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK)-3βがβ-カテニンに結合してリン酸化し、これをユビキチン/プロテアソーム経路を介した分解用に指定するための重大な足場として機能する。Dshの活性化が、GSK3βのリン酸化および分解複合体の解離をもたらす。蓄積された細胞質のβ-カテニンは次に核へ輸送され、そこでTcf/LefファミリーのDNA結合性タンパク質と相互作用して、転写を活性化する。
【0069】
標準シグナル伝達経路に加えて、Wntリガンドはさらにβ-カテニン非依存経路も活性化する(Veeman et al., 2003, Dev. Cell 5:367-77)。非標準Wntシグナル伝達は多数のプロセスに関係していることが示されているが、最も確実なのは、ショウジョウバエの平面細胞極性(PCP)経路と同様の機構による原腸胚形成運動に関連することである。非標準Wntシグナル伝達の他の有力な機構には、カルシウム流、JNK、ならびに低分子量Gタンパク質およびヘテロ三量体Gタンパク質の両方が含まれる。標準および非標準経路間で拮抗現象が観察されることが多く、いくつかの証拠によって、非標準シグナル伝達が癌形成を抑制できることが示されている(Olson & Gibo, 1998, Exp. Cell Res. 241:134; Topol et al., 2003, J. Cell Biol. 162:899-908)。したがって、特定の文脈において、Fzd受容体は標準Wntシグナル伝達経路の負の調節因子として働く。例えばFZD6は、TAK1-NLK経路を介してFZD1と共発現されたとき、Wnt-3a誘起標準シグナル伝達を抑制する(Golan et al., 2004, JBC 279:14879-88)。同様に、Fzd2は、Wnt-5aの存在下で、TAKl-NLK MAPKカスケードを介して標準Wntシグナル伝達に拮抗した(Ishitani et al., 2003, Mol. Cell. Biol. 23:131-9)。
【0070】
造血幹細胞(HSC)は、最もよく理解されている体内の幹細胞であり、Wntシグナル伝達は、それらの正常な維持および白血病性形質転換の両方に関係している(Reya & Clevers, 2005, Nature 434:843)。HSCは、成人の骨髄内の間質間隙に存在する僅かな数の細胞である。これらの細胞は、独自の遺伝子発現プロファイル、ならびにより分化した始原細胞を継続的に生みだして造血システム全体を再構成する能力の両方によって、特徴づけられる。HSCおよびそれらの間質微環境の細胞の両方がWntリガンドを発現し、Wntレポーター活性化がインビボでHSC中に存在する。さらにβ-カテニンおよび精製されたWnt3Aの両方が、マウスのHSCの自己再生をインビトロにおいて促進し、造血システムを再構成するそれらの能力をインビボにおいて増強するが、一方で、Wnt5Aはインビトロにおけるヒト造血始原細胞の増殖およびNOD-SCID異種移植モデルにおける再増殖を促進する(Reya et al., 2003, Nature 423:409-14; Willert et al.,2003, Nature 423:448-52); Van Den Berg et al, 1998, Blood 92:3189-202; Murdoch et al., 2003, Proc. Nat'l Acad. Sci. 100:3422-7)。
【0071】
Wntシグナル伝達が骨髄系統およびリンパ系統の両方の腫瘍形成性成長において役割を果たしていることが、より最近見出された。例えば、慢性骨髄性白血病由来の顆粒球マクロファージ始原細胞(GMP)は、活性化されたWntシグナル伝達を示し、(始原細胞の成長および再生はWntシグナル伝達に依存している(Jamieson et al., 2004, N. Engl. J. Med. 351:657-67)。また、白血病ではWnt経路内に突然変異は存在しないようであるが、オートクリンおよび/またはパラクリンWntシグナル伝達は、癌性自己再生を保持することができる(Reya&Clevers 2005, Nature 434:843)。
【0072】
標準Wntシグナル伝達経路は、さらに小腸および結腸中の幹細胞集団の維持に中心的な役割を果たし、この経路の不適切な活性化は結腸直腸癌において顕著な役割を果たす(Reya & Clevers, 2005, Nature 434:843)。腸の吸収上皮には絨毛および凹窩が並ぶ。幹細胞は凹窩に存在し、ゆっくり分割して、全ての分化細胞集団を生ずる急速に増殖する細胞を産生する。分化細胞集団は凹窩から上に移動して腸絨毛を占める。Wntシグナル伝達カスケードは、凹窩-絨毛軸に沿った細胞運命の制御に主要な役割を果たし、また幹細胞集団の維持にとって不可欠である。相同組換えによるTcf7/2の遺伝的喪失(Korinek et al., 1998, Nat. Genet. 19:379)、または分泌される強力なWntアンタゴニストであるDickkopf-1 (Dkkl)(Pinto et al., 2003, Genes Dev. 17:1709-13; Kuhnert et al., 2004, Proc. Nat'l. Acad. Sci. 101:266-71)の過剰発現のいずれかによるWntシグナル伝達の混乱が、腸の幹細胞集団の消失をもたらす。
【0073】
結腸直腸癌は、最も一般的には、Wntシグナル伝達カスケードにおける突然変異の活性化によって開始される。全ての結腸直腸癌の約5〜10%が遺伝的であり、その主要型の一つが家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)であり、これは、罹患者の約80%が大腸腺腫性ポリポーシス(APC)遺伝子中に生殖細胞系列突然変異を含む、常染色体優性疾患である。突然変異は、オーキシンおよびβ-カテニンを含む他のWnt経路の構成成分において同定されている。個々の腺腫は、第2の不活性化された対立遺伝子を含む上皮細胞のクローン成長物であり、多数のFAP腺腫が、癌遺伝子および/または癌抑制遺伝子中のさらなる突然変異によって必然的に腺癌腫の発症をもたらす。さらに、APCおよびβ-カテニン中の機能獲得型突然変異を含むWntシグナル伝達経路の活性化は、マウスモデル中の過形成発症および腫瘍成長を引き起こすことができる(Oshima et al., 1997, Cancer Res. 57:1644-9; Harada et al., 1999, EMBO J. 18:5931-42)。
【0074】
癌におけるWntシグナル伝達の役割は、マウスウイルスの近接挿入によって形質転換された乳腺腫瘍における癌遺伝子としてWnt1 (もとはint1)が同定されたことによって、最初に解明された(Nusse & Varmus, 1982, Cell 31:99-109)。乳癌におけるWntシグナル伝達の役割を立証するさらなる証拠がそれ以来蓄積されてきた。例えば、乳腺中のβ-カテニンの遺伝子組換えによる過剰発現は、過形成および腺癌腫をもたらすが(Imbert et al., 2001, J. Cell Biol. 153:555-68; Michaelson & Leder, 2001, Oncogene 20:5093-9)、Wntシグナル伝達の喪失は正常な乳腺の発達を妨害する (Tepera et al., 2003, J. Cell Sc. 116:1137-49; Hatsell et al., 2003, J. Mammary Gland Biol. Neoplasia 8:145-58)。より最近になって、乳腺幹細胞がWntシグナル伝達によって活性化されることが示された(Liu et al., 2004, Proc. Nat'l Acad. Sci. 101:4158)。ヒト乳癌では、50%以上の癌腫においてβ-カテニンの蓄積が活性化Wntシグナル伝達に関係しており、特異的な突然変異がまだ同定されていないにもかかわらず、Frizzled受容体発現のアップレギュレーションが観察されている(Brennan & Brown, 2004, J. Mammary Gland Neoplasia 9: 119-31; Malovanovic et al., 2004, Int. J. Oncol. 25:1337-42)。
【0075】
FZD10、FZD8、FZD7、FZD4およびFZD5は、10種の同定されたヒトWnt受容体のうちの5つである。マウス胚では、FZD10はWnt7aと共に、神経管、肢芽およびミュラー管中で発現され(Nunnally & Parr, 2004, Dev. Genes Evol. 214:144-8)、肢芽発生の間にWnt-7aの受容体として働くことができる(Kawakami et al., 2000, Dev. Growth Differ. 42:561-9)。FZDl0は肺でWnt7bと共発現するが、細胞トランスフェクションの研究により、FZDl0/LRP5共受容体がWnt7bに応答して標準Wntシグナル伝達経路を活性化することが実証された(Wang et al., 2005, Mol. Cell Biol. 25:5022-30)。FZDl0 mRNAは、頚部、胃および膠芽腫の細胞系統を含む多数の癌細胞系統で、ならびに約40%の原発性胃癌、結腸癌および滑膜肉腫を含む原発性癌で、アップレギュレーションされる(Saitoh et al., 2002, Int. J. Oncol. 20:117-20; Terasaki et al., 2002, Int. J. Mol. Med. 9:107- 12; Nagayama et al., 2005, Oncogene 1-12)。FZD8は、いくつかのヒト癌細胞系統、原発性胃癌、および腎癌腫中でアップレギュレーションされる(Saitoh et al., 2001, Int. J. Oncol. 18:991-96; Kirikoshi et al., 2001, Int. J. Oncol. 19:111-5; Janssens et al., 2004, Tumor Biol. 25:161-71)。FZD7は胃腸管の全体にわたって発現され、ヒト原発性胃癌の症例6例のうち1例においてアップレギュレーションされる(Kirikoshi et al., 2001, Int. J. Oncol 19:111-5)。結腸癌細胞系統によるFZD7外部ドメインの発現は、異種移植片モデル中の形態学的変化を引き起こし、腫瘍成長を減少させた(Vincan et al., 2005, Differentiation 73:142-53)。FZD5は、卵黄嚢および胎盤の血管形成に本質的な役割を果たし(Ishikawa et al., 2001, Dev. 128:25-33)、腎癌腫で、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化と関連してアップレギュレーションされる(Janssens et al., 2004, Tumor Biology 25:161-71)。FZD4は、腸陰窩上皮細胞中で高度に発現され、正常組織と新生物組織とで異なる発現を示すいくつかの因子のうちの一つである(Gregorieff et al., 2005, Gastroenterology 129:626-38)。したがって、FZD受容体を癌幹細胞のマーカーとして同定することによって、これらのタンパク質が癌治療の理想的な標的となる。
【0076】
本発明は、その発現を分析することにより、癌幹細胞マーカーの発現に関連した疾病を診断し、またはモニターすることができるような、癌幹細胞マーカーを提供する。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーの発現は、例えば癌幹細胞マーカーをコードするmRNAなどのポリヌクレオチド発現によって、決定される。ポリヌクレオチドは、当業者に周知の多数の任意の手段により、検出および定量することができる。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーをコードするmRNAは、例えば患者の生検からの組織分画のインサイチューハイブリダイゼーションによって検出される。いくつかの態様では、RNAを組織から単離し、例えばノーザンブロット、定量的RT-PCR、またはマイクロアレイによって検出する。例えば、全RNAを組織試料から抽出し、特異的にハイブリダイズして癌幹細胞マーカーを増幅するプライマーを用いて、癌幹細胞マーカーポリヌクレオチドの発現を、RT-PCRを用いて検出することができる。
【0077】
ある態様では、癌幹細胞マーカーの発現を、対応するポリペプチドの検出により、決定することができる。当業者に周知の多くの任意の手段により、ポリペプチドを検出し定量することができる。いくつかの態様では、例えば電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または薄層クロマトグラフィー(TLC)のような分析的生化学的方法を用いて、癌幹細胞マーカーポリペプチドを検出する。単離したポリペプチドを、標準技術によって配列決定することもできる。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカータンパク質を、タンパク質に対して作製された抗体により、例えば、組織片への免疫蛍光法または免疫組織化学を用いて検出する。または、癌幹細胞マーカーに対する抗体により、例えば、ELISA、FACS、ウエスタンブロット、免疫沈降法またはタンパク質マイクロアレイを用いて、発現を検出することができる。例えば、癌幹細胞を患者の生検から単離し、FACSを用いて、癌幹細胞マーカータンパク質の発現を、蛍光標識抗体により検出することができる。別の方法では、インビボにおいて、標識抗体を用いて癌幹細胞マーカーを発現する細胞を典型的な画像システム中で検出することができる。例えば、常磁性同位体で標識された抗体を、磁気共鳴イメージング(MRI)に用いることができる。
【0078】
本発明のいくつかの態様では、診断用分析は、例えば免疫組織化学、インサイチューハイブリダイゼーションまたはRT-PCRを用いて、腫瘍細胞中の癌幹細胞マーカーの発現の有無を決定することを含む。他の態様では、診断用分析は、例えば定量的RT-PCRを用いて癌幹細胞マーカーの発現レベルを決定することを含む。いくつかの態様では、診断用分析は、例えば正常な上皮などの対照組織と比較して、癌幹細胞マーカーの発現レベルを決定することをさらに含む。
【0079】
癌幹細胞マーカー発現の検出を用いて、次に予後診断を提供し、治療法を選択することができる。予後診断は、癌幹細胞マーカーが表示できる任意の公知の危険表現に基づくことができる。さらに、癌幹細胞マーカーの検出を用いて、例えば検出された癌幹細胞マーカータンパク質に対する抗体による処置を含む、適切な治療法を選択することができる。ある態様では、抗体は、ヒトFZD受容体のような癌幹細胞マーカータンパク質の細胞外ドメインへ特異的に結合する。
【0080】
本発明の文脈においては、適切な抗体は、例えば以下の効果の一つまたは複数を有しうる作用物質である:癌幹細胞マーカーの発現の妨害;例えば癌幹細胞マーカーと、そのリガンド、受容体または共受容体との間の相互作用を立体的に阻害することによる、癌幹細胞シグナル伝達経路活性化の妨害; 例えばリガンドとして働くかまたは内在的なリガンドの結合を促進することによる、癌幹細胞シグナル伝達経路の活性化;あるいは、癌幹細胞マーカーへの結合および、腫瘍細胞増殖の阻害。
【0081】
ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、細胞外で作用して、癌幹細胞マーカータンパク質の機能を調節する。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体の細胞外の結合は、例えば、癌幹細胞マーカーの内因性の活性化(例えばキナーゼ活性)を阻害することにより、および/または、例えば、癌幹細胞マーカーの、リガンドとの、受容体との、共受容体との、または細胞間マトリックスとの相互作用を立体的に阻害することにより、癌幹細胞マーカータンパク質のシグナル伝達を阻害することができる。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体の細胞外の結合は、例えば、癌幹細胞マーカータンパク質の内在化、または癌幹細胞マーカーの細胞表面輸送の減少などによって、癌幹細胞マーカーの細胞表面発現をダウンレギュレーションすることができる。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体の細胞外の結合は例えば、おとりのリガンドとして働いて、またはリガンド結合を増加させて、癌幹細胞マーカータンパク質のシグナル伝達を促進することができる。
【0082】
ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、癌幹細胞マーカータンパク質に結合して、以下の効果の一つまたは複数を有する:腫瘍細胞の増殖を阻害する、腫瘍細胞の細胞死を引き起こす、または腫瘍細胞の転移を妨げる。ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、抱合されている毒素、化学療法剤、放射性同位元素、または他のそのような薬剤により細胞死を引き起こす。例えば、癌幹細胞マーカーに対する抗体は毒素に抱合されており、それがタンパク質内在化により、癌幹細胞マーカーを発現している腫瘍細胞中で活性化される。ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、癌幹細胞マーカータンパク質を発現している細胞の細胞死を、抗体依存性細胞性細胞障害性(ADCC)によって媒介する。ADCCは、抗体のFc部分を認識するエフェクター細胞による細胞溶解を伴う。例えば多くのリンパ球、単球、組織マクロファージ、顆粒球、および好酸球は、Fc受容体を有しており、細胞溶解を媒介することができる(Dillman, 1994, J. Clin. Oncol. 12:1497)。
【0083】
ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、補体依存性細胞障害性(CDC)を活性化することによって、癌幹細胞マーカータンパク質を発現している細胞の細胞死を引き起こす。CDCは、血清補体の抗体Fc部分への結合、およびそれに続く補体タンパク質カスケードの活性化を伴い、細胞膜損傷および最終的な細胞死に帰着する。抗体の生物活性は、抗体分子の不変領域、即ちFc領域によって大部分が決定されることが知られている(Uananue and Benacerraf, Textbook of Immunology, 2nd Edition, Williams & Wilkins, p. 218 (1984))。異なるクラスおよびサブクラスの抗体はこの点で異なる。同じサブクラスのしかし異なる種からの抗体も同様である。ヒト抗体のうち、IgMは、最も効率的に補体と結合するクラスの抗体であり、IgG1、IgG3およびIgG2がこれに続く。しかしIgG4は、補体カスケードの活性化が全くできないようである(Dillman, 1994, J. Clin. Oncol. 12:1497; Jefferis et al., 1998, Immunol. Rev. 163:59-76)。本発明により、所望の生物活性を有するクラスの抗体が調製される。
【0084】
癌幹細胞に対する任意の特定の抗体の、補体活性化および/またはADCCによる標的細胞溶解を媒介する能力を分析することができる。関心対象の細胞を、インビトロで成長させて標識する;抗体を、抗原抗体複合体によって活性化される血清補体または免疫細胞と一緒に、細胞培養液に加える。標的細胞の細胞溶解は、例えば溶解された細胞からの標識の放出によって検出される。実際、患者自身の血清を補体および/または免疫細胞の供給源として用いて、抗体をスクリーニングすることができる。インビトロの試験で補体を活性化することができるまたはADCCを媒介できる抗体を、次にその特定の患者で治療に用いることができる。
【0085】
ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、血管形成を阻害する細胞死を引き起すことができる。血管形成は、既存の血管から新しい血管が形成されるプロセスであり、例えば胚発生、創傷治癒の間の、および排卵に応答した、正常な成長に必要な基本的プロセスである。1〜2mm2を上回る充実性腫瘍の成長もまた、栄養源および酸素を供給するために血管形成を必要とし、それがなければ腫瘍細胞は死滅する。ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、例えば内皮細胞、平滑筋細胞を含む、癌幹細胞マーカーを発現する血管細胞または血管の構築に必要な細胞間マトリックス成分を標的とする。ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、血管細胞の補充、構築、維持、または生存に必要な成長因子シグナル伝達を阻害する。
【0086】
癌幹細胞マーカーに対する抗体は、本明細書に記載される診断および治療方法での用途が見出される。ある態様では、例えば患者の組織生検、胸水または血液試料などの生体試料中の癌幹細胞マーカータンパク質の発現を検出するために、本発明の抗体を用いる。組織生検を切片にし、例えば免疫蛍光法または免疫組織化学を用いて、タンパク質を検出することができる。さらに試料から個々の細胞を単離し、次に固定したまたは生きた細胞で、FACS分析によってタンパク質発現を検出することができる。ある態様では、抗体をタンパク質アレイ上で用いて、癌幹細胞マーカーの発現を、例えば腫瘍細胞上で、細胞溶解物中で、または他のタンパク質試料中で検出することができる。ある態様では、インビトロの細胞ベースの分析法、インビボの動物モデルなどにおいて抗体を腫瘍細胞と接触させることにより、本発明の抗体を用いて腫瘍細胞の成長を阻害する。ある態様では、癌幹細胞マーカーに対して治療的有効量の抗体を投与することによって、抗体を用いて患者の癌を処置する。
【0087】
ポリクローナル抗体は、任意の公知の方法により調製することができる。キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、血清アルブミンなどに任意で抱合され、滅菌食塩水で希釈され、アジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)と組み合わせて安定した乳剤に形成された、関連の抗原(精製されたペプチド断片、全長の組換えタンパク質、融合タンパク質など)の複数回の皮下または腹腔内注射によって、動物(例えばウサギ、ラット、マウス、ロバなど)を免疫することにより、ポリクローナル抗体を作製する。次に、そのように免疫された動物の血液、腹水などからポリクローナル抗体を回収する。集めた血液を凝結させ、血清をデカントし、遠心分離によって透明にして、抗体価を分析する。ポリクローナル抗体を血清または腹水から、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析などを含む当技術分野の標準的方法によって精製することができる。
【0088】
モノクローナル抗体を、Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495によって記載されたハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法を用いて、マウス、ハムスターまたは他の適当な宿主動物を、上述のように免疫し、免疫に用いた抗原に特異的に結合する抗体のリンパ球による産生を誘発させる。リンパ球はまた、インビトロで免疫することもできる。免疫化に続いてリンパ球を単離し、例えば、ポリエチレングリコールを用いて適当なミエローマ細胞系統と融合させてハイブリドーマ細胞を形成させ、それらを次に、融合していないリンパ球およびミエローマ細胞から分離して、選択することができる。免疫沈降、免疫ブロッティング、またはインビトロの結合分析(例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着分析(ELISA))によって決定される、選択された抗原に特異的に指向されたモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマを、次に標準的方法(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, 1986)を用いるインビトロの培養で、またはインビボで動物中の腹水癌として、増殖させることができる。次に、モノクローナル抗体を、ポリクローナル抗体について上述したように、培地または腹水から精製することができる。
【0089】
または、モノクローナル抗体を、米国特許第4,816,567号に記載されている組換えDNA法を用いて作製することができる。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを、成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞から、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを用いるRT-PCRなどによって単離し、それらの配列を従来の手続きを用いて決定する。単離された重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチドを、次に、適当な発現ベクター中へクローニングし、それを、さもなくば免疫グロブリンタンパク質を生成することのない大腸菌(E. coli)細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはミエローマ細胞などの宿主細胞へトランスフェクションすれば、宿主細胞はモノクローナル抗体を生成する。さらに、所望の種の組換えモノクローナル抗体またはその断片を、所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリーから、記載されたように(McCafferty et al., 1990, Nature, 348:552-554; Clackson et al, 1991, Nature, 352:624-628; およびMarks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581-597)単離することができる。
【0090】
モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを、組換えDNA技術を用いる多数の異なる手法で修飾して、別の抗体を生成することができる。いくつかの態様では、例えばマウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常領域を、1) キメラ抗体を生成するために、例えばヒト抗体の定常領域と、あるいは 2) 融合抗体を生成するために非免疫グロブリンポリペプチドと、置換することができる。いくつかの態様では、定常領域を切り詰めるかまたは除去して、モノクローナル抗体の所望の抗体断片を生成する。可変領域の部位特異的または高密度突然変異生成を用いて、モノクローナル抗体の特異性、親和性などを最適化することができる。
【0091】
本発明のいくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対するモノクローナル抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト(例えばマウス)抗体からの最小の配列を可変領域内に含む抗体である。そのような抗体を治療的に用いて、ヒト被験体に投与したときの抗原性およびHAMA (ヒト抗マウス抗体)応答を低下させる。実際には、ヒト化抗体は、典型的には非ヒト配列が最小であるか存在しないヒト抗体である。ヒト抗体は、ヒトによって産生された抗体、またはヒトによって産生された抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。
【0092】
当技術分野で公知の様々な技術を用いて、ヒト化抗体を産生することができる。ヒト抗体のCDRを、所望の特異性、親和性、および能力を有する非ヒト抗体(例えばマウス、ラット、ウサギ、ハムスターなど)のCDRと置換することにより、抗体をヒト化することができる(Jones et al., 1986, Nature, 321:522-525; Riechmann et al., 1988, Nature, 332:323-327; Verhoeyen et al., 1988, Science, 239:1534-1536)。Fvフレームワーク領域内および/または置き換えられた非ヒト残基内のさらなる残基の置換によって、ヒト化抗体をさらに修飾し、抗体特異性、親和性、および/または能力を改善し、最適化することができる。
【0093】
ヒト抗体を、当技術分野で公知の様々な技術を用いて直接調製することができる。標的抗原に向けられた抗体を産生する、インビトロで免疫された、または免疫された個人から単離された、不死化ヒトBリンパ球を生成することができる(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p.77 (1985); Boemer et al., 1991, J. Immunol., 147 (1):86-95; および米国特許第5,750,373号を参照のこと)。さらに、ヒト抗体を、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択することができる(Vaughan et al., 1996, Nat. Biotech., 14:309-314; Sheets et al., 1998, Proc. Nat'l. Acad. Sci., 95: 6157-6162; Hoogenboom and Winter, 1991, J. Mol Biol., 227:381; Marks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581)。免疫されると、内在的免疫グロブリン産生が存在しない状態でヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができる、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む遺伝子組換えマウス中で、ヒト化抗体を作製することもまた可能である。この手法は、米国特許第5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;および5,661,016号に記載されている。
【0094】
本発明はまた、特異的に癌幹細胞マーカーを認識する二重特異性抗体を包含する。二重特異性抗体は、少なくとも二つの異なるエピトープを特異的に認識し、結合することができる抗体である。異なるエピトープは、同じ分子内(例えば同じ癌幹細胞マーカーポリペプチド)に存在しても良いし、あるいは異なる分子の上に存在して、例えば抗体は、癌幹細胞マーカー、ならびに、例えば、1) T細胞受容体(例えばCD3)またはFc受容体(例えばCD64、CD32、もしくはCD16)などの、白血球上のエフェクター分子、あるいは 2) 詳細に下に記載する細胞障害性作用物質の両方を特異的に認識し結合することができる。二重特異性抗体は、無傷の抗体または抗体断片でよい。
【0095】
例示的な二重特異性抗体は二つの異なるエピトープに結合することができ、その内の少なくとも一つは本発明のポリペプチドに由来する。または、免疫グロブリン分子の抗抗原アームを、T細胞受容体分子(例えばCD2、CD3、CD28またはB7)、またはIgGへのFc受容体などの、白血球上の引き金分子に結合するアームと組み合わせて、細胞の防衛機構を特定の抗原を発現する細胞へ集中させるようにすることができる。さらに二重特異性抗体を用いて、細胞障害性作用物質を、特定の抗原を発現する細胞に指向させることもできる。これらの抗体は、抗原を結合するアーム、およびEOTUBE、DPTA、DOTAまたはTETAなどの、細胞障害性作用物質または放射性核種キレート剤を結合するアームを所持する。二重特異性抗体を作製するための技術は、当技術分野において一般的なものである(Millstein et al., 1983, Nature 305:537-539; Brennan et al., 1985, Science 229:81; Suresh et al, 1986, Methods in Enzymol. 121:120; Traunecker et al., 1991, EMBO J. 10:3655-3659; Shalaby et al., 1992, J. Exp. Med. 175:217-225; Kostelny et al., 1992, J. Immunol. 148:1547-1553; Gruber et al., 1994, J. Immunol. 152:5368; および米国特許第5,731,168号)。2以上の価数を有する抗体もまた意図する。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tutt et al., J. Immunol. 147:60 (1991))。
【0096】
ある態様では、例えば腫瘍浸透性を増大させるための抗体断片が提供される。抗体断片の産生のための様々な技術が公知である。従来から、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク質消化によって導出されている(例えば、Morimoto et al., 1993, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117; Brennan et al., 1985, Science, 229:81)。ある態様では、抗体断片は組換えによって産生される。Fab、Fv、およびscFv抗体断片を、すべて大腸菌または他の宿主細胞で発現させ、分泌させることができ、したがって、これらの断片の大量産生が可能である。そのような抗体断片を、上に議論した抗体ファージライブラリーから単離することもできる。抗体断片はまた、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているように直鎖状抗体であってもよく、またそれは単一特異性、もしくは二重特異性であってよい。抗体断片産生のための他の技術は、当業者には明白であろう。
【0097】
本発明によれば、本技術を、本発明のポリペプチドに特異的な一本鎖抗体の産生に適合させることができる(米国特許第4,946,778号参照)。さらに、本方法を、Fab発現ライブラリー(Huse, et al., Science 246:1275-1281 (1989))の構築に適合させることができ、それにより、FZD受容体またはその誘導体、断片、類似体もしくは同族体に対して所望の特異性を有するモロクローナルFab断片を迅速かつ有効に同定することが可能になる。本発明のポリペプチドに対するイディオタイプを含む抗体断片を、(a) 抗体分子のペプシン消化によって産生されるF(ab')2断片;(b) F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成されるFab断片;(c) 抗体分子のパパインおよび還元剤による処理によって生成されるFab断片、および(d) Fv断片を非限定的に含む、当技術分野の技術によって産生することができる。
【0098】
特に抗体断片の場合には、その血清半減期を増大させるために抗体を修飾することがさらに望ましい可能性がある。これは例えば、抗体断片中の適当な領域の突然変異による、抗体断片中へのサルベージ受容体結合エピトープの組み込みにより、あるいは、ペプチドタグにエピトープを組み入れて、それを次に抗体断片のいずれかの端にまたは中間に(例えばDNAまたはペプチド合成によって)融合することにより、行うことができる。
【0099】
ヘテロ抱合抗体もまた、本発明の範囲内である。ヘテロ抱合抗体は、共有結合した二つの抗体から成る。そのような抗体は、例えば免疫細胞が望ましくない細胞を標的とするように提唱された(米国特許第4,676,980号)。架橋剤を必要とする方法を含む、合成タンパク質化学で公知の方法を用いて、抗体を、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエテール結合を形成させて、免疫毒素を構築することができる。この目的に適している試薬の例には、イミノチオラートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミダートが含まれる。
【0100】
本発明の目的のためには、修飾抗体が、抗体とヒトFZD受容体のポリペプチドとの会合を提供する任意の型の可変領域を含むことができることが認識されよう。この点で、可変領域は、液性応答の開始および所望の腫瘍に関連する抗原に対する免疫グロブリンの生成を誘起することができる、任意の型の哺乳動物からなるかまたは由来するものであってよい。このように、修飾抗体の可変領域は、例えばヒト、マウス、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル、マカクなど)またはオオカミ起源であり得る。いくつかの態様では、修飾された免疫グロブリンの可変および定常領域の両方がヒト由来である。他の態様では、適合性を有する抗体(通常非ヒト供給源に由来する)の可変領域を操作するかまたは特異的に調整して、結合特性を改善するかまたは分子の免疫原性を減少させることができる。この点に関して、移入されたアミノ酸配列を含めることにより、本発明に役立つ可変領域をヒト化するかまたはそうでなければ改変することができる。
【0101】
重鎖および軽鎖の両方の可変ドメインを、一つまたは複数のCDRの少なくとも一部の置き換えによって、また必要な場合には、部分的なフレームワーク領域の置き換えおよび配列変更によって改変する。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同じクラスまたはさらに同じサブクラスの抗体に由来してもよいが、CDRが異なるクラスの抗体、好ましくは異なる種からの抗体に由来することが想定される。一つの可変ドメインの抗原結合能を別の可変ドメインに移すためには、CDRの全てを、供与側の可変領域からの完全なCDRで置き換えることは必要でない可能性がある。むしろ、抗原結合部位の活性を維持するのに必要な残基を移すことのみが必要な可能性がある。米国特許第5,585,089号、第5,693,761号および第5,693,762号で述べられた説明を考慮すれば、型通りの実験作業を行なって、または試行錯誤によって、減少した免疫原性を有する機能的な抗体を得ることは、十分に当業者の能力内のことであろう。
【0102】
可変領域の改変にかかわらず、本発明の修飾抗体が、天然または未改変の定常領域を含むほぼ同じ免疫原性の抗体と比較した場合に、腫瘍局在化の増大または血清半減期の減少などの望ましい生化学的特性を提供するように、抗体または、一つもしくは複数の定常領域ドメインの少なくとも何分の一かが除去されたかさもなくば改変されたその免疫反応性断片を含むことを、当業者は認識するであろう。いくつかの態様では、修飾抗体の定常領域は、ヒト定常領域を含む。本発明に適合する定常領域の修飾は、一つまたは複数のドメインにおける一つまたは複数のアミノ酸の追加、欠失、または置換を含む。即ち、本明細書に開示される修飾抗体は、三つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2またはCH3)の一つまたは複数の、および/または軽鎖定常部(CL)の、改変または修飾を含んでよい。本発明のいくつかの態様では、一つまたは複数のドメインが部分的にまたは完全に欠失された、修飾定常領域を意図する。いくつかの態様では、修飾抗体は、CH2ドメイン全体が除かれたドメイン欠失構築物または変異体(ΔCH2構築物)を含む。いくつかの態様では、除去される定常領域ドメインは、短いアミノ酸スペーサー(例えば10残基の)と置換され、それは通常は定常領域(この場合は存在しない)によって与えられる分子的柔軟性のいくらかを提供する。
【0103】
それらの形状の他に、定常領域がいくつかのエフェクター機能を媒介することが当技術分野において公知である。例えば、抗体への補体C1成分の結合は、補体系を活性化する。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン化および溶解に重要である。補体の活性化はまた炎症反応を刺激し、自己免疫過敏症に関係し得る。さらに、抗体は、Fc領域を介して細胞に結合し、この時抗体Fc領域上のFc受容体結合部位が、細胞上のFc受容体(FcR)へ結合している。IgG (γ受容体)、IgE (η受容体)、IgA (α受容体)およびIgM (μ受容体)を含む、種々のクラスの抗体に特異的な多数のFc受容体が存在する。細胞表面上のFc受容体への抗体の結合は、抗体に覆われた粒子の飲込みおよび破壊、免疫複合体の除去、抗体に覆われた標的細胞の溶解(抗体依存性細胞媒介細胞障害性、またはADCCと呼ばれる)、炎症伝達因子の放出、胎盤通過および免疫グロブリン産生の制御を含む、キラー細胞による多くの重要で多様な生体応答を引き起こす。様々なFc受容体および受容体部位がある程度研究されてきたが、それらの位置、構造、および機能に関して、依然として多くで未知である。
【0104】
本発明の範囲を限定するわけではないが、本明細書に記載するように修飾された定常領域を含む抗体は改変されたエフェクター機能を提供し、それが次に、投与された抗体の生物学的プロファイルに影響を与えると考えられる。例えば、定常領域ドメインの欠失または不活性化(点突然変異または他の手段による)は、循環している修飾抗体のFc受容体への結合を減少させ、そのために腫瘍への局在化を増大させる可能性がある。他の場合では、本発明に適合した定常領域の修飾は、補体結合を調節し、したがって血清半減期および抱合された細胞毒素の非特異的結合を減少させると考えられる。定常領域のさらに他の修飾を用いて、ジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を除去することができ、これによって、増大した抗原特異性または抗体柔軟性により、局在化を促進することができる。同様に、本発明による定常領域の修飾を、完全に当業者の範囲内の周知の生化学的技術または遺伝子操作技術を用いて容易に行うことができる。
【0105】
修飾抗体を操作して、CH3ドメインをそれぞれの修飾抗体のヒンジ領域へ直接融合させることができることが指摘される。他の構築物では、ヒンジ領域と修飾されたCH2および/またはCH3ドメインの間にペプチドスペーサーを与えることが望ましい。例えば、CH2ドメインが欠失され、残りのCH3ドメイン(修飾されたまたは未修飾の)がヒンジ領域に5〜20個のアミノ酸スペーサーで連結された、適合性を有する構築物を発現することができる。そのようなスペーサーを付加することにより、例えば定常ドメインの調節エレメントを、遊離状態でアクセス可能に保つこと、またはヒンジ領域が柔軟なままであることを保証してもよい。しかし、アミノ酸スペーサーは、ある場合には免疫原性を有することが判明しており、構築物に対する望ましくない免疫応答を誘発する場合があることが認識されるべきである。従って、構築物に加える任意のスペーサーは、比較的非免疫原性でなければならず、あるいは修飾抗体の望ましい生化学特質が維持される場合は全体を除くことさえしなければならない。
【0106】
定常領域ドメイン全体の欠失の他に、部分的欠失または少数のもしくは単一のアミノ酸の置換によっても、本発明の抗体を提供することができることが認識されよう。例えば、CH2ドメインの選択された区域の単一のアミノ酸の突然変異が、実質的にFc結合を減少させ、それによって腫瘍の局在化を増大させるのに十分である可能性がある。同様に、一つまたは複数の定常領域ドメインの、調節されるべきエフェクター機能(例えば補体CLQ結合)を制御する部分を単に欠失させることが望ましい可能性がある。定常領域のそのような部分的欠失は、当該定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能をそのままにしておく一方で、抗体の選択された特性(血清半減期)を改善する可能性がある。さらに、上に示唆されるように、開示された抗体の定常領域は、一つまたは複数のアミノ酸の突然変異または置換によって修飾され、その結果生ずる構築物のプロファイルを向上させる可能性がある。この点で、修飾抗体の構成および免疫原プロファイルを実質的に維持する一方で、保存された結合部位(例えばFc結合活性)によって提供される活性を妨害することが可能でありうる。ある態様は、定常領域へ一つまたは複数のアミノ酸を追加して、エフェクター機能のような望ましい特性を増強することまたはより多くの細胞毒素もしくは炭水化物接着を提供することを含む。そのような態様では、選択された定常領域ドメインに由来する特異的配列を、挿入するかまたは複製することが望ましい可能性がある。
【0107】
本発明はさらに、本明細書に述べるキメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体、またはそれらの抗体断片に実質的に相同の変異体および等価物を包含する。これらは、例えば、保存的置換突然変異、即ち一つまたは複数のアミノ酸の類似のアミノ酸による置換を含むことができる。例えば、保存的置換とは、例えば一つの酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸と、一つの塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸と、または一つの中性アミノ酸を別の中性アミノ酸と置換するなどの、あるアミノ酸を同じ一般クラスの別のアミノ酸と置換することを指す。保存的アミノ酸置換によって何が意図されるかは、当技術分野において周知である。
【0108】
本発明はまた、細胞障害剤に抱合された抗体を含む免疫抱合体に関する。細胞障害剤には、化学療法剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、または動物由来の酵素活性を有する毒素、あるいはそれらの断片)、放射性同位体(即ち、放射性抱合体)などが含まれる。そのような免疫抱合体の生成に有用な化学療法剤には、例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他のインターカレート剤が含まれる。酵素活性を有する毒素およびそれらの用いることができる断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシンタンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ニガウリ(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、リストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)およびトリコテシン(tricothecenes)が含まれる。212Bi、131I、131In、90Y、および186Reを含む様々な放射性核種が、放射抱合抗体の生成に利用できる。抗体と細胞障害剤の抱合体を、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能基誘導体(ジメチルアジプイミダートHCLなどの)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベラートなどの)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなどの)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなどの)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなどの)、ジイソシアネート(トリレン2,6-ジイソシアネートなどの)、およびビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなどの)などの、様々な二官能基性タンパク質カップリング剤を用いて、作製する。抗体と一つまたは複数の小分子毒素(例えばカリケアマイシン、マイタンシノイド(maytansinoids)、トリコテン(trichothene)、およびCC1065など、およびこれらの毒素の毒素活性を有する誘導体)との接合体もまた、用いることができる。
【0109】
抱合抗体は、共有結合した二つの抗体からなる。そのような抗体は、例えば免疫細胞が望ましくない細胞を標的とすると提唱された(米国特許第4,676,980号)。架橋剤を必要とする方法を含む合成タンパク質化学で公知の方法を用いて、インビトロで抗体を調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエテール結合を形成させて、免疫毒素を構築することができる。この目的に適した試薬の例には、イミノチオラートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミダートが含まれる。
【0110】
有用な量を得る方法にかかわらず、本発明の抗体を、多数の抱合形(すなわち免疫抱合体)または非抱合形の中の任意の一つの形で用いることができる。または、本発明の抗体を非抱合形即ち「裸の」形で用いて、補体依存性細胞障害性(CDC)および抗体依存性細胞性細胞障害性(ADCC)を含む被験体の自然の防御機構を利用して、悪性細胞を除去することができる。いくつかの態様では、抗体を、多くの周知のキレート化剤のいずれかを用いて、あるいは直接標識して、90Y、125I、131I、123I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Reおよび188Reなどの放射性同位元素に抱合させることができる。他の態様では、開示された組成物は、薬剤、プロドラッグ、またはメトトレキセート、アドリアマイシンおよびインターフェロンなどのリンホカインのような生体反応修飾剤に結合された抗体を含むことができる。本発明のさらに他の態様は、リシンまたはジフテリア毒素などの特異的生体毒素に抱合された抗体の使用を含む。また他の態様では、修飾抗体は、他の免疫的に活性を有するリガンド(例えば抗体またはその断片)と複合体を形成することができ、その結果生じる分子は、新生細胞およびT細胞などのエフェクター細胞の両方へ結合する。どの抱合または非抱合修飾抗体を用いるかという選択は、癌の種類および病期、補助療法(例えば化学療法または外部放射線)、および患者の症状に依存する。当業者が本明細書の教示を考慮して、容易にそのような選択をすることができることが認識されよう。
【0111】
当技術分野で公知の任意の方法により、本発明の抗体の免疫特異的結合を分析することができる。用いることができる免疫分析には、BIAcore分析、FACS分析、免疫蛍光法、免疫細胞化学、ウエスタンブロット、放射免疫定量法、ELISA、「サンドイッチ」免疫分析、免疫沈降分析、沈降反応、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散分析、凝集反応分析、補体結合分析、免疫放射定量分析、蛍光免疫分析、およびプロテインA免疫分析などの技術を用いる、競合的および非競合的分析システムが非限定的に含まれる。そのような分析は、当技術分野において決まったものであり、周知である(例えば、Ausubel et al, eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol.1, John Wiley & Sons, Inc., New York を参照のこと;その全体は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0112】
いくつかの態様では、ELISAを用いて、癌幹細胞マーカーに対する抗体の免疫特異性を決定する。ELISA分析は、抗原を調製する工程、96ウェルのマイクロタイタープレートのウェルを抗原でコーティングする工程、酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリフォスファターゼ)の基質などの検知可能な化合物に抱合された癌幹細胞マーカーに対する抗体をウェルに加える工程、ある期間インキュベートして抗原の存在を検出する工程を含む。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体を検知可能な化合物に抱合させずに、癌幹細胞マーカーに対する抗体を認識する二次抱合抗体をウェルに加える。いくつかの態様では、抗原でウェルをコーティングする代わりに、癌幹細胞マーカーに対する抗体をウェルにコーティングし、コーティングされたウェルへ抗原を加えた後で、検知可能な化合物に抱合された二次抗体を加えることができる。当業者は、検出されたシグナルを増加させるために調節することができるパラメーター、並びに当技術分野で公知のELISAの他の変形について、認識可能であろう(例えば、Ausubel et al, eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol.1, John Wiley & Sons, Inc., New York at 11.2.1を参照のこと)。
【0113】
癌幹細胞マーカー抗原への抗体の結合親和性および抗体抗原相互作用の解離速度を、競合的結合分析により決定することができる。競合的結合分析の一つの例は、漸増量の未標識の抗原の存在下での、標識(例えば3Hまたは125I標識)された抗原またはその断片もしくは変異体と、関心対象の抗体とのインキュベーション、それに続く標識抗原に結合した抗体の検出を含む放射免疫定量法である。抗体の癌幹細胞マーカーに対する親和性および結合の解離速度を、データからスキャチャードプロット分析により決定することができる。いくつかの態様では、BIAcore動力学分析を用いて、抗体の癌幹細胞マーカーに対する結合速度と解離速度を決定する。BIAcore動力学分析は、表面上に癌幹細胞マーカー抗原を固定されたチップに対する、抗体の結合と解離を分析する工程を含む。
【0114】
ある態様では、本発明は、ヒトFZD受容体に対する抗体またはその断片を含むポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドを包含する。したがって、「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、ポリペプチドに対するコード配列のみを含むポリヌクレオチド、ならびに追加のコード配列および/または非コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。本発明のポリヌクレオチドは、RNAの形またはDNAの形であり得る。DNAはcDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含み、二重鎖または一本鎖でよく、また一本鎖である場合は、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であってもよい。
【0115】
本発明はさらに、上述のポリヌクレオチドの、例えば、断片、類似体および誘導体をコードする変異体に関する。ポリヌクレオチドの変異体は、そのポリヌクレオチドの天然に存在する対立遺伝子変異体またはポリヌクレオチドの天然には存在しない変異体であり得る。ある態様では、ポリヌクレオチドは、開示したポリペプチドをコードする配列の天然対立遺伝子変異体であるコード配列を有することができる。当技術分野で公知であるように、対立遺伝子変異体は、ポリヌクレオチド配列の別の形であって、一つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失、または追加を有し、それはコードされるポリペプチドの機能を実質的に改変しない。
【0116】
ある態様では、ポリヌクレオチドは、例えば宿主細胞からのポリペプチドの発現および分泌を助けるポリヌクレオチド(例えば、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)に同一のリーディングフレーム中で融合された成熟ポリペプチドのコード配列を含む。リーダー配列を有するポリペプチドは前駆体タンパク質であり、宿主細胞によってリーダー配列が切断されて、成熟型のポリペプチドが形成される。ポリヌクレオチドはまた、成熟タンパク質に追加の5'アミノ酸残基が加わったものであるプロタンパク質もコードすることができる。プロ配列を有する成熟タンパク質がプロタンパク質であり、タンパク質の不活性型である。プロ配列が切断されると、活性成熟タンパク質が残る。
【0117】
ある態様では、ポリヌクレオチドは、例えばコードされたポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列に同一のリーディングフレーム中で融合された、成熟ポリペプチドのコード配列を含む。細菌宿主の場合、例えばマーカー配列は、pQE-9ベクターによって提供されるヘキサヒスチジンタグでよく、マーカーに融合された成熟ポリペプチドの精製を提供する。または、哺乳動物宿主(例えばCOS-7細胞)を用いる場合は、マーカー配列はインフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するヘマグルチニン(HA)タグでよい。
【0118】
ある態様では、本発明は、ヒトFZD受容体に対する抗体またはその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、およびいくつかの態様では、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列を有する、単離された核酸分子を提供する。
【0119】
参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも例えば95%「同一の」ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチド当たり最大5%の点突然変異を含むことができることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意味する。言いかえれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列のヌクレオチドの5%以下を欠失させるか、または別のヌクレオチドで置き換えるか、あるいは参照配列中の総ヌクレオチドの5%以下の数のヌクレオチドを参照配列に挿入することができる。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列のアミノ末端またはカルボキシ末端の位置で、またはそれらの末端位置の間の任意の位置で、参照配列中のヌクレオチドの間に個々に点在するか、あるいは参照配列内の一つまたは複数の連続する基に生じることができる。
【0120】
実際問題として、任意の特定の核酸分子が、参照配列と少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、およびいくつかの態様では、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるかどうかを、従来通りに、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)などの公知のコンピュータープログラムを用いて決定することができる。Bestfitは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2: 482 489 (1981)の局部相同アルゴリズムを用いて、二つの配列間の相同性の最良の区分を見つける。Bestfitまたは他の配列アラインメントプログラムを用いて、特定の配列が本発明による参照配列と例えば95%同一であるかどうかを判断する場合には、参照ヌクレオチド配列の全長に亘って同一性パーセントを計算し、参照配列中のヌクレオチド総数の5%以内のホモロジーの間隙を許容するようにパラメーターが設定される。
【0121】
ポリヌクレオチド変異体は、コード領域、非コード領域、または両方に改変を含むことができる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド変異体は、サイレントな置換、付加、または欠失を産生するが、コードされたポリペプチドの特性または活性を変更しない改変を含む。いくつかの態様では、遺伝コードの縮退によるサイレントな置換により、ヌクレオチド変異体が産生される。ポリヌクレオチド変異体は、様々な理由のために、例えば、特定の宿主のコドン発現を最適化する(ヒトmRNA中のコドンを大腸菌のような細菌宿主に好まれるものへ変更する)ために産生することができる。
【0122】
本発明のポリペプチドは、ヒトFZD受容体に対する抗体またはその断片を含む組換えポリペプチド、天然ポリペプチド、または合成ポリペプチドであり得る。本発明のいくつかのアミノ酸配列を、タンパク質の構造または機能に対する有意な影響なしに変化させることができることは、当技術分野において認識されるべきである。したがって、本発明にはさらに、実質的な活性を示すポリペプチドの変異体、またはヒトFZD受容体タンパク質に対する抗体またはその断片の領域を含むポリペプチドの変異体が含まれる。そのような突然変異体には、欠失、挿入、逆位、反復、および型の置換が含まれる。
【0123】
ポリペプチドおよび類似体をさらに修飾して、通常はタンパク質の一部ではない追加の化学的部分を含ませることができる。それらの誘導体化された部分は、タンパク質の溶解度、生物学的半減期または吸収を改善することができる。その部分はまた、タンパク質の任意の所望の副作用を低減させるかまたは除去することなどができる。それらの部分についての概要は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 20th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (2000) 中に認められる。
【0124】
本明細書に記載される単離されたポリペプチドを、当技術分野で公知の任意の適当な方法により生成することができる。そのような方法は、直接タンパク質合成法から、単離されたポリペプチド配列をコードするDNA配列の構築および適切な形質変換宿主中でのその配列の発現まで、様々である。いくつかの態様では、組換え技術を用いて、関心対象の野生型タンパク質をコードするDNA配列を単離するかまたは合成することによりDNA配列を構築する。任意で部位特異的突然変異誘発により配列に突然変異を起こさせて、その機能的類似物を作ることができる。Zoeller et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 81:5662-5066 (1984) および米国特許第4,588,585号を参照のこと。
【0125】
いくつかの態様では、関心対象のポリペプチドをコードするDNA配列を、オリゴヌクレオチド合成機を用いる化学合成によって構築する。所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づき、関心対象の組換えポリペプチドを産生する宿主細胞中で好まれるコドンを選択して、そのようなオリゴヌクレオチドを設計することができる。標準的方法を適用して、関心対象の単離されたポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド配列を合成することができる。例えば、完全なアミノ酸配列を用いて、逆翻訳された遺伝子を構築することができる。さらに、特定の単離されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むDNAオリゴマーを合成することができる。例えば、所望のポリペプチドの一部ずつをコードするいくつかの小さなオリゴヌクレオチドを合成し、次にライゲーションすることができる。個々のオリゴヌクレオチドは通常、相補的組み立てのために、5'または3'突出部を含む。
【0126】
(合成、部位特異的変異誘発、または別の方法により)組み立てられたら、特定の単離された関心対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、所望の宿主中でのタンパク質発現に適した発現制御配列に機能的に連結される。ヌクレオチド配列決定、制限酵素マッピング、および適当な宿主中における生物学的活性を持つポリペプチドの発現により、適切な組み立てを確認することができる。当技術分野において周知のように、トランスフェクションされた遺伝子を宿主中で高レベルで発現させるためには、その遺伝子を、選択された発現宿主中で機能する転写および翻訳の発現制御配列に機能的に連結しなければならない。
【0127】
組換え体発現ベクターを用いて、癌幹細胞マーカーポリペプチド融合体をコードするDNAを増幅および発現させることができる。組換え体発現ベクターとは、哺乳動物、微生物、ウイルスまたは昆虫の遺伝子に由来する適当な転写または翻訳の調節エレメントに機能的に連結された、癌幹細胞マーカーポリペプチド融合体または生物学的に同等な類似体をコードする、合成のまたはcDNA由来のDNA断片を有する、複製可能なDNA構築物である。転写ユニットは、一般に (1) 遺伝子発現において調節的役割を有する遺伝子エレメント、例えば転写プロモーターまたはエンハンサー、(2) mRNAへ転写されてタンパク質に翻訳される構造配列またはコード配列、および (3) 以下に詳述される適切な転写および翻訳の開始および終止配列の集合を含む。そのような調節エレメントは、転写を制御するオペレーター配列を含むことができる。通常は複製開始点によって与えられる宿主中での複製能、および形質変換体の認識を促進するための選択遺伝子を、さらに組込むことができる。DNA領域は、それらが互いに機能的に関連している場合には、機能的に連結されている。例えば、ポリペプチドの分泌に関与する前駆体として発現される場合には、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、ポリペプチド用のDNAに機能的に連結されており;プロモーターは、それが配列の転写を制御する場合は、コード配列に機能的に連結されており;またはリボソーム結合部位は、翻訳を可能にするように配列されている場合には、コード配列に機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されているとは連続的であることを意味し、分泌リーダーの場合には、連続的であることおよびリーディングフレーム中にあることを意味する。酵母発現系で用いることを意図した構造エレメントは、宿主細胞による翻訳されたタンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含む。または、組換えタンパク質がリーダー配列または輸送配列なしで発現される場合、それはN末端メチオニン残基を含み得る。この残基を任意で次に、発現された組換え型タンパク質から切断し、最終生産物を提供することができる。
【0128】
発現制御配列および発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存する。種々様々の発現宿主/ベクターの組合せを使用することができる。真核生物宿主のための有用な発現ベクターには、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス、およびサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含むベクターが含まれる。細菌の宿主のための有用な発現ベクターには、pCR1、pBR322、pMB9およびそれらの誘導体を含む、大腸菌(Esherichia coli)由来のプラスミドなどの公知の細菌のプラスミド、M13およびフィラメント状一本鎖DNAファージなどのより広い宿主範囲のプラスミドが含まれる。
【0129】
癌幹細胞マーカータンパク質の発現に適した宿主細胞には、適切なプロモーターの制御下の、原核生物、酵母、昆虫または高等真核細胞が含まれる。原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば大腸菌または桿菌が含まれる。高等真核細胞には、下記に述べる哺乳動物由来の確立された細胞系統が含まれる。無細胞翻訳系を使用することもできよう。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞の宿主での使用のための適切なクローニングおよび発現ベクターについてはPouwels et al. (Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, N. Y., (1985))に記載されており、関連する開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0130】
様々な哺乳動物または昆虫の細胞培養系も、組換えタンパク質を発現するために有利に使用される。組み換えタンパク質は一般に正確に折り畳まれ、適切に修飾され、かつ完全に機能的であるので、哺乳動物細胞におけるそのようなタンパク質の発現を行うことが可能である。適当な哺乳動物宿主細胞系統の例には、Gluzman (Cell 23:175 1981)に記載されているサル腎細胞のCOS-7系統、ならびに、例えばL細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、およびBHK細胞系統を含む、適切なベクターを発現することができる他の細胞系統が含まれる。哺乳動物発現ベクターは、例えば複製開始点、発現されるべき遺伝子に連結された適当なプロモーターおよびエンハンサーなど、および他の5'または3'隣接非転写配列、ならびに例えば必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライシングドナーおよびアクセプター部位などの5'または3'非翻訳配列、および転写終結配列などの非転写エレメントを含むことができる。昆虫細胞における異種性タンパク質産生用のバキュロウイルスシステムが、Luckow and Summers, Bio/Technology 6:47 (1988)によって概説されている。
【0131】
形質変換宿主によって産生されたタンパク質は、任意の適当な方法により精製することができる。そのような標準的方法には、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、親和性、およびサイズ分別カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の差異、またはタンパク質精製のための任意の他の標準技術によるものが含まれる。ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザ被覆配列、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどのアフィニティータグをタンパク質に付着させて適切なアフィニティカラムを通すことにより、容易な精製が可能になる。単離されたタンパク質を、タンパク質分解、核磁気共鳴、およびX線結晶学などの技術を用いて、物理的に特性決定することができる。
【0132】
例えば、培地へ組換えタンパク質を分泌する系由来の上清を、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて、最初に濃縮することができる。濃縮工程の次に、濃縮物を適当な精製マトリックスに供することができる。または、陰イオン交換樹脂、例えば側鎖ジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは基質を使用することができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質精製に一般に使用される他の種類であってよい。または、陽イオン交換工程を採用することもできる。適当な陽イオン交換体には、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む様々な不溶性マトリックスが含まれる。最後に、疎水性RP-HPLC材、例えば側鎖メチルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲルを使用する、一つまたは複数の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)の工程を利用して、癌幹細胞タンパク質-Fc組成物をさらに精製することができる。前記の精製工程のうちのいくつかまたはすべてを色々な組み合わせで使用して、均質な組換え型タンパク質を提供することができる。
【0133】
細菌培養物中に産生された組換えタンパク質を、例えば最初の細胞沈殿物からの抽出、それに続く一つまたは複数の濃縮、塩析、水性イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィーの工程により単離することができる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終の精製工程に採用することができる。組換えタンパク質の発現に使用した微生物細胞を、凍結融解の繰り返し、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む任意の便利な方法によって破壊することができる。
【0134】
本発明はまた、癌幹細胞マーカーを発現している腫瘍形成性細胞の成長を、本明細書に記載した癌幹細胞マーカーに対する抗体を用いて阻害するための方法を提供する。ある態様では、癌幹細胞マーカーを発現している腫瘍形成性細胞の成長を阻害する方法は、細胞を、癌幹細胞マーカーに対する抗体とインビトロで接触させる工程を含む。例えば、癌幹細胞マーカーを発現する不死化された細胞系統または癌細胞系統を、発現された癌幹細胞マーカーに対する抗体を加えた培地中で培養して、細胞成長を阻害する。ある態様では、例えば組織生検、胸水、または血液サンプルなどの患者の試料から、腫瘍幹細胞を含む腫瘍細胞を単離し、癌幹細胞マーカーに対する抗体を加えた培地中で培養して、細胞成長を阻害する。
【0135】
いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーを発現している腫瘍形成性細胞の成長を阻害する方法は、細胞と、癌幹細胞マーカーに対する抗体とをインビボで接触させる工程を含む。ある態様では、腫瘍形成性細胞と癌幹細胞マーカーに対する抗体とを接触させる工程を動物モデル中で行う。例えば、癌幹細胞マーカーを発現している異種移植片を、癌幹細胞マーカーに対する抗体を投与された免疫不全マウス(例えばNOD/SCIDマウス)中で成長させて、腫瘍成長を阻害する。いくつかの態様では、例えば組織生検、胸水、または血液サンプルなどの患者の試料から、癌幹細胞マーカーを発現する癌幹細胞を単離して、免疫不全マウスに注入し、次にそのマウスに癌幹細胞マーカーに対する抗体を投与して、腫瘍細胞成長を阻害する。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体を、動物中への腫瘍形成性細胞の導入と同時に、または直後に投与して、腫瘍成長を防止する。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体を、腫瘍形成性細胞が所定の大きさに成長した後に治療剤として投与する。
【0136】
本発明は、さらに癌幹細胞マーカーを標的とする抗体を含む薬学的組成物を提供する。これらの薬学的組成物は、腫瘍細胞増殖の阻害およびヒト患者の癌の治療に用いることができる。
【0137】
製剤は、貯蔵および使用のために、精製された本発明の抗体を薬学的に許容されるビヒクル(例えば、担体、賦形剤)と組み合わせることにより調製される(Remington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Edition Mack Publishing, 2000)。適当な薬学的に許容されるビヒクルには、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの無毒な緩衝剤;塩化ナトリウムなどの塩;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール;ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量ポリペプチド(例えば、約10より少ないアミノ酸残基);血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、グルコース、マンノースまたはデキストリンなどの炭水化物;EDTAのようなキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体);およびTWEENまたはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が非限定的に含まれる。
【0138】
本発明の薬学的組成物を、任意の数の方法で局所処置または全身処置のために投与することができる。投与は、(膣および直腸への送達を含む粘膜などへの)局所的投与、例えば経皮貼付剤、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴、坐剤、スプレー、液体および散剤など;肺内投与(例えば噴霧器によるものを含む、散剤またはエアロゾルの吸入または通気による;気管内、鼻腔内、表皮、および経皮的投与);経口的投与;または静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内の注射または注入を含む非経口的投与;あるいは頭蓋内(例えば、髄膜下または脳室内)投与でよい。
【0139】
治療製剤は、単回投与剤形であってよい。そのような製剤には、経口、非経口、または直腸内投与のためのまたは吸入器による投与のための、錠剤、ピル、カプセル剤、散剤、果粒剤、水または非水性溶媒中の溶液または懸濁液、あるいは坐剤が含まれる。錠剤などの固形組成物では、主要な有効成分が薬学的担体と混合されている。従来の錠剤化成分には、本発明の化合物またはその無毒な薬学的に許容される塩の均一混合物を含む固体の予備処方組成物を形成するための、コーンスターチ、ラクトース、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、またはゴム、および他の希釈剤(例えば水)が含まれる。固体予備処方組成物を、次に上述の型の単回投与剤形へ細分する。新規組成物の錠剤やピルなどをコーティングするか、そうでなければ調合して持続作用の長所を与える剤形を提供することができる。例えば、錠剤またはピルは、外部成分によって覆われた内部組成物を含むことができる。さらに、分解に抵抗するよう働いて、内部成分にそのまま胃を通過させるかまたはその放出を遅らせることができる腸溶層によって、二つの成分を分離することができる。そのような腸溶層またはコーティングには様々な材料を用いることができるが、そのような材料は、多くのポリマー酸、および、ポリマー酸とセラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような物質との混合物を含む。
【0140】
薬学的製剤には、リポソームと複合体化された本発明の抗体が含まれる(Epstein, et al, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688; Hwang, et al., 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030; ならびに米国特許第4,485,045号および第4,544,545号)。循環時間が増大されたリポソームが米国特許第5,013,556号に開示されている。いくつかのリポソームを、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発によって生成することができる。規定の孔径のフィルターを通してリポソームを押し出すことにより、所望の直径を有するリポソームを得る。
【0141】
抗体をマイクロカプセル中に封入することもできる。そのようなマイクロカプセルは、例えばコアセルベーション技術または界面重合法によって、例えばヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルが、コロイド状薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはRemington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing (2000)に記載されているマクロエマルジョン中にそれぞれ調製される。
【0142】
さらに、徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の適当な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは、成形された物品(例えばフィルムまたはマイクロカプセル)の形をしている。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)などのヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸と7エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT (商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、およびポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0143】
ある態様では、処置には本発明の抗体と化学療法剤または複数の異なる化学療法剤のカクテルとの組み合わせ投与が伴う。抗体による処置を、化学療法剤の投与の前に、それと同時に、またはその後に行ってもよい。本発明が意図する化学療法には、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソール、メトトレキセート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチンおよびカルボプラチンなどの、当技術分野において公知である、市販の化学物質または薬物が含まれる。組合せ投与には、単一の薬学的製剤によるまたは別々の製剤を用いた同時投与、あるいは、いずれかの順序であるが通常は全ての活性薬剤がそれらの生物活性を同時に発揮できるような期間内での、連続投与が含まれ得る。そのような化学療法剤の調製および服薬スケジュールを、メーカーの指示に従って、あるいは、熟練した開業医が経験的に決定して用いることができる。そのような化学療法の調製および服薬スケジュールは、Chemotherapy Service Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992) にも記載されている。
【0144】
他の態様では、処置には本発明の抗体と放射線療法とを組み合わせた投与を伴う。抗体による処置を、放射線療法の適用の前に、それと同時に、またはその後に行うことができる。そのような放射線療法の任意の処方スケジュールを、熟練した開業医が決定して用いることができる。
【0145】
他の態様では、処置には本発明の抗体と、EGFR、HER2、およびVEGFに結合する抗体を非限定的に含む、追加の腫瘍関連抗原に対する他の抗体との組み合わせ投与を伴い得る。さらに処置は、一つまたは複数のサイトカインの投与を含むことができ、また癌細胞の外科的除去、または治療する医師によって必要と認められる任意の他の療法を一緒に行うことができる。
【0146】
疾病の処置については、本発明の抗体の適切な用量は、処置するべき疾病の種類、疾病の重症度および経過、疾病の反応性、治療または予防のどちらの目的で抗体を投与するのか、以前の療法、患者の病歴、および治療医の判断による全てによって決まる。一度に、または、数日間〜数か月間継続する一連の処置に亘って、または、治癒が達成されるか病態の低減が達成される(例えば腫瘍の大きさの減少)まで、抗体を投与することができる。患者の体内の薬物蓄積の測定値から最適な投薬スケジュールを計算することができるが、これは個々の抗体の相対的効能に応じて変動する。投与する医師は、最適な用量、投薬方法、および反復回数を容易に決定することができる。一般に用量は、体重kg当たり0.01μg〜100mgであり、1日、1週間、1ヶ月、または1年間に1回または複数回与えることができる。処置する医師は、体液または組織中の薬物の測定された滞留時間および濃度に基づいて、投薬の反復回数を決定することができる。
【0147】
本発明は、本明細書に記載された抗体を含み、本明細書に記載された方法を実施するために用いることができるキットを提供する。ある態様では、キットは、一つまたは複数の容器中に少なくとも一つの癌幹細胞マーカーに対する精製された抗体を含む。いくつかの態様では、キットは、すべての対照、分析を行なうための説明書、および結果の分析および呈示のための任意の必要なソフトウェアを含めて、検出分析を行なうために必要および/または十分な構成要素のすべてを含む。本発明の開示された抗体が、当技術分野において周知の確立されたキット形式の一つに容易に組み入れられうることを、当業者は容易に認識するであろう。
【0148】
本開示の態様を、次の実施例を参照してさらに明確にすることができる。実施例は、本開示の抗体の調製および本開示の抗体を用いるための方法を詳述する。本開示の範囲から逸脱することなく、材料と方法の両方に多くの改変を行なうことができることは、当業者には明白であろう。図面の全体にわたって可能ならどこでも、同一のまたは同様の部分を参照するために同じ符番を用いる。
【0149】
実施例
実施例1
FZD抗体の産生
抗原産生
ヒトFZD受容体の細胞外ドメインの組換えポリペプチド断片を、抗体産生のための抗原として生成した。標準組換えDNA技術を用いて、FZD10のアミノ酸1〜227 (配列番号:1)、FZD7のアミノ酸1〜255 (配列番号:2)、FZD5のアミノ酸1〜233 (配列番号:3)、FZD6のアミノ酸1〜207 (配列番号:4)、FZD4のアミノ酸1〜224 (配列番号:5)、およびFZD8のアミノ酸1〜158 (配列番号:6)をコードするポリヌクレオチドを単離した。これらのポリヌクレオチドを、ヒトFcタグまたはヒスチジンタグのいずれかへN末端でインフレームでライゲーションし、バキュロウイルスに媒介される昆虫細胞での発現用にトランスファープラスミドベクターへクローニングした。標準トランスフェクション、感染および細胞培養プロトコルを用いて、対応するFZDポリペプチドを発現する組換え昆虫細胞を産生した(O'Reilley et al., Baculovirus expression vectors: A Laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994))。
【0150】
切断予測ソフトウェアSignalP 3.0を用いて、ヒトFZD受容体の内在的なシグナル配列の切断を予測したが、実際のインビボでの切断点は、いずれかの方向に一対のアミノ酸だけ異なり得る。FZD10の予測された切断は、アミノ酸20と21の間であり、したがってFZD10抗原タンパク質は、大体アミノ酸21からアミノ酸227までを含む。FZD7の予測された切断はアミノ酸31と32の間であり、したがってFZD7抗原タンパク質は、大体アミノ酸32〜255を含む。FZD5の予測された切断はアミノ酸26と27の間であり、したがってFZD5抗原タンパク質は、大体アミノ酸27〜233を含む。FZD6の予測された切断は、アミノ酸17と18の間であり、したがってFZD6抗原タンパク質は、大体アミノ酸18〜207を含む。FZD4の予測された切断は、アミノ酸39と40の間であり、したがってFZD4抗原タンパク質は、大体アミノ酸40〜224を含む。FZD8の予測された切断は、アミノ酸27と28の間であり、したがってFZD8抗原タンパク質は、大体アミノ酸28〜158を含む。
【0151】
プロテインAおよびNi++キレートのアフィニティークロマトグラフィーを用いて、抗原タンパク質を昆虫細胞調整培地から精製した。精製された抗原タンパク質を、PBS (pH=7)に対して透析し、約1mg/mlに濃縮し、無菌濾過して免疫用に調製した。
【0152】
免疫化
標準技術を用いて、マウス(n=3)を、精製されたFZD10、FZD7、FZD5、FZD6、FZD4およびFZD8抗原タンパク質(抗体溶液;Mountain View, CA)で免疫した。抗原認識のための最初の免疫化の約70日後に、個々のマウスからの血液をELISAおよびFACS分析(下に詳述する)を用いてスクリーニングした。最も高い抗体価を有する2匹を選んで最終抗原追加免疫を行い、その後ハイブリドーマ産生のために脾臓細胞を単離した。ハイブリドーマ細胞を、ウェル当たり1細胞で96ウェルプレートに播種し、各々からの上清をELISAおよびFACS分析により抗原タンパク質についてスクリーニングした。高い抗体価を有するいくつかのハイブリドーマを選択し、静置フラスコ培養でスケールアップした。抗体を、プロテインAまたはプロテインGアガロースクロマトグラフィーを用いてハイブリドーマ上清から精製した。精製されたモノクローナル抗体を再びFACSによって試験し、IgGとIgMの抗体を選択するためにアイソトープ試験を行った。
【0153】
エピトープマッピング
システインに富むドメインを含むFZD細胞外ドメインの特異的領域を認識する抗体を同定するために、エピトープマッピングを行なう。細胞外FZDドメインの断片をコードするポリヌクレオチドの上流のCMVプロモーターを含む、哺乳動物発現プラスミドベクターを、標準組換えDNA技術を用いて生成する。次に、組換えタンパク質を一過性トランスフェクションにより培養哺乳動物細胞中で発現させる。トランスフェクションの24〜48時間後に、細胞を集め、細胞溶解物のタンパク質をSDS-PAGEアクリルアミドゲル上で分離し、FZD抗原で免疫されたマウス由来の抗体を用いてウェスタンブロッティングした。FZDのリガンド結合ドメインを認識する抗体を、さらにWntタンパク質との競合的結合についてELISAによって分析することができる。
【0154】
FZDに対する抗体によって認識される細胞外ドメイン内の特異的エピトープを同定するために、SPOTシステムを用いる(Sigma Genosys, The Woodlands, TX)。1アミノ酸がオーバーラップしFZD細胞外ドメイン全体をカバーしている一連の10残基直鎖ペプチドを合成し、SPOT合成技術によってセルロースメンブレンに共有結合で結合させた。メンブレンを、ブロッキング緩衝液と8時間室温で前インキュベートし、4℃で終夜抗体とハイブリダイズさせた。次にメンブレンを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP) (Amersham Bioscience, Piscataway, NJ)に抱合させた二次抗体とインキュベートして、再度洗浄し、3-アミノ-9-エチルカルバゾールを含むシグナル発色溶液で視覚化した。抗体によって認識される特異的エピトープをこのようにして決定する。
【0155】
FACS分析
ハイブリドーマクローンによって産生された、天然の細胞表面FZDタンパク質を認識するモノクローナル抗体を選択するために、FACS分析を用いた。HEK293細胞を、対応するFZDの全長のcDNAクローンをコードする発現ベクター単独で(FZD10)トランスフェクションするか、あるいはGFPを発現するベクター(FZD7、FZD5、FZD6、FZD4およびFZD8)と同時トランスフェクションした。FZD10、FZD7、FZD6およびFZD4発現ベクターの場合には、Flagエピトープタグをアミノ末端に導入し、それにより細胞表面上のタグ付きFZD受容体の発現の証明が可能となった。トランスフェクションの24〜48時間後、細胞を集めて懸濁液とし、抗FZD抗体、FLAG抗体、免疫血清(FZD5発現細胞用)またはバックグラウンドの抗体結合を検出するための対照IgGと、氷上でインキュベートした。細胞を洗浄し、一次抗体を蛍光発色団に抱合された抗マウス二次抗体によって検出した。次に、標識細胞をFACSで分別して、対応するFZD受容体の細胞表面発現を特異的に認識する抗FZD抗体を同定した。FZD10 (図1A);FZD7 (図1B);FZD5 (図1C);FZD6 (図1D);FZD4 (図1E);およびFZD8 (図1F)を認識する抗体を同定した。抗原として細胞外リガンド結合をマウスの免疫化に用いて、FZD1、FZD2、FZD3およびFZD9を認識する抗体を同様に生成する。
【0156】
キメラ抗体
FZD受容体を特異的に認識するモノクローナル抗体を同定した後に、これらの抗体を修飾して、げっ歯動物抗体を治療剤として用いる場合の、ヒト抗マウス抗体(HAMA)免疫応答を克服する。選択されたモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を、ハイブリドーマ細胞からRT-PCRによって単離して、哺乳動物発現ベクター中で、ヒトIgG1の重鎖とκ軽鎖の定常領域にそれぞれインフレームでライゲーションする。または、同じプラスミド上にヒトIgG1重鎖およびκ軽鎖定常領域遺伝子を含む、TCAE 5.3などのヒトIg発現ベクターを用いる(Preston et al., 1998, Infection & Immunity 66:4137-42)。キメラ抗体産生のために、次にキメラ重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞へ同時トランスフェクションする。キメラ抗体の免疫反応性および親和性を、ELISAおよびFACSによって親のマウス抗体と比較する。
【0157】
ヒト化抗体
キメラ抗体療法は、未だ抗原性であることが多く、ヒト抗キメラ抗体(HACA)の免疫応答を引き起こすので、FZD受容体に対するキメラ抗体をさらにヒト化することもできる。ヒト化抗体を生成するために、上に記載された抗体重鎖および軽鎖可変ドメインの、三つの短い超可変配列即ち相補性決定領域(CDR)および/または、CDR領域の位置を正確に決めるのに必要なフレームワーク領域の両方からの要素を潜在的に含む抗体の特異性決定モチーフの重要部分を、組換DNA技術を用いて、ヒト重鎖および軽鎖の抗体遺伝子の生殖細胞系列DNA配列それぞれの中へ遺伝子操作によって入れ、次に、それらをCHO細胞中の発現用の哺乳動物発現ベクター中へクローンニングする。ヒト化抗体の免疫反応性および親和性を、ELISAおよびFACSによって親のキメラ抗体と比較する。さらに、可変領域の部位特異的または高密度突然変異生成を用いて、ヒト化抗体の特異性、親和性などを最適化することができる。
【0158】
ヒト抗体
いくつかの態様では、ファージディスプレイ技術を用いて、FZD受容体の細胞外ドメインを特異的に認識するヒト抗体を単離する。一本鎖Fvとしてまたはfabドメインとしてディスプレイされたヒト抗体可変ドメインを含むファージディスプレイ抗体ライブラリーを、上記FZD受容体抗原の特異的および高親和性認識について、スクリーニングする。次にCHO細胞中でのヒト抗体発現用に、同定された可変ドメイン抗体配列をヒトIgG1重鎖およびκ軽鎖を含むIg発現ベクター中へ再導入する。
【0159】
実施例2
複数のFZDファミリーメンバーを認識する抗体の産生
二種以上のヒトFZD受容体を標的とするために、FZD受容体ファミリーの複数のメンバーを特異的に認識する抗体を生成する。ヒトFcに融合されたFZD4、FZD5およびFZD8いずれのN末端Frizzled(即ちFri)リガンド結合ドメインを含む可溶性タンパク質も、βカテニンの安定化を含む機構によってシグナル伝達するWnt1、Wnt2、Wnt3、Wnt3a、およびWnt7bを含むすべてのクラスのWntリガンドに結合し、それらによるシグナル伝達を妨害する(図2)。具体的には、8×TCF-ルシフェラーゼレポーターによって安定にトランスフェクションされたHEK293細胞を、漸増量のFZDFc可溶性受容体と、Wnt1、Wnt2、Wnt3、Wnt3aおよびWnt7bを含む種々のWntリガンドの存在下でインキュベートした。FZD4 Fc、FZD5 FcおよびFZD8 Fc融合タンパク質が、五つのWntリガンドすべてによって媒介されるWntシグナル伝達を阻害した(図2)。したがってある態様では、FZD4、FZD5、およびFZD8受容体の二つまたはそれ以上を特異的に認識する抗体が産生される。
【0160】
ある態様では、実施例1に詳細に述べたように、マウスを一種または複数のFZD受容体抗原で免疫することにより抗体を生成する。各FZD受容体に対して生成された抗体を、次に他のFZD受容体との交差反応性について試験する。FZD2およびFZD6;FZD7およびFZD10;FZD4およびFZD5;FZD4およびFZD8;FZD5およびFZD8;ならびにFZD4、FZD5およびFZD8を特異的に認識する抗体を、次に詳細に以下に記載するようにして同定し、腫瘍細胞成長を妨害する能力について試験する。
【0161】
ある態様では、ファージディスプレイライブラリーを用いて、複数のFZDファミリーメンバーを認識する抗体を同定する。ヒトFZD受容体のN末端細胞外ドメイン中の高相同領域を用いて、二つまたはそれ以上のFZD受容体を特異的に認識する抗原結合ドメインを提示するファージのライブラリーをスクリーニングする。例えば、ヒトFZD受容体の相同領域をFZD-Fcタンパク質として発現させ、その組換えタンパク質を適当な表面に10μg/mlでコーティングする。次に、2回の濃縮によってヒトファージライブラリーを選り分ける(例えば Griffiths et al., EMBO J. 12:715-34を参照のこと)。次に、抗原結合ドメインをコードする遺伝子をファージから回収し、抗原結合ドメインを定常領域に連結することによって、完全なヒト抗体分子を構築し、適当な宿主細胞系統で発現させる。ある態様では、FZD2およびFZD6;FZD7およびFZD10;FZD4およびFZD5;FZD4およびFZD8;FZD5およびFZD8;ならびにFZD4、FZD5およびFZD8を認識する抗体を以下に詳述するように同定し、腫瘍細胞成長を妨害する能力について試験する。
【0162】
ある態様では、標準Wntシグナル伝達経路を介したシグナル伝達を妨害することによりWntシグナル伝達経路に拮抗する抗体を開発する。例えば、FZD4、FZD5およびFZD8のうちの二つまたはそれ以上を特異的に認識する抗体をファージディスプレイを介して同定する。ある態様では、拮抗的非標準Wntシグナル伝達経路の活性化によりWntシグナル伝達経路に拮抗する抗体を開発する。例えば、FZD6およびFZD2を特異的に認識する抗体をファージディスプレイを介して同定する。
【0163】
実施例3
FZD受容体に対する抗体を評価するためのインビトロ分析
本実施例は、FZD受容体に対して生成された抗体の、細胞増殖、経路活性化および細胞障害性に関する活性を試験するための、代表的インビトロ分析について記載する。
【0164】
増殖分析
種々の癌細胞系統によるFZD受容体の発現をTaqman分析を用いて定量する。FZD受容体を発現することが確認された細胞系統を、96ウェル組織培養マイクロプレートに、ウェル当たり細胞104個の密度で播種し、24時間展開させる。続いて、細胞をさらに12時間、2%FCSを含む新鮮なDMEM中で培養し、その時点で抗FZD抗体または対照抗体を10μmol/LのBrdUの存在下で培養液に加える。BrdUで標識した後に、培地を除去し、細胞をエタノール中において30分間室温で固定し、ペルオキシダーゼを抱合したモロクローナル抗BrdU抗体(クローンBMG 6H8、Fab断片)と90分間反応させる。テトラメチルベンジジンを含む溶液中で基質を発色させ、15分間後に1mol/LのH2SO4 25μlによって停止させる。発色反応を、自動ELISAプレートリーダー(UV Microplate Reader; Bio-Rad Laboratories, Richmond, CA)で450nmフィルターを用いて測定する。全ての実験を3重に行なう。対照抗体と比較した抗FZD抗体が細胞増殖を阻害する能力を決定する。
【0165】
経路活性化分析
ある態様では、FZD受容体に対する抗体のWntシグナル伝達経路の活性化を阻害する能力をインビトロで決定する。例えば、抗生物質および10% FCSを追加したDMEM中で培養したHEK293細胞を、1) Wntシグナル伝達経路を活性化するためのWnt7BおよびFZD10発現ベクターで;2) 標準Wntシグナル伝達レベルを測定するためのホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流に3または8コピーのTCF-結合ドメインを含むTCF/Luc野生型レポーターベクターまたは突然変異体レポーターベクターで(Gazit et al.,1999, Oncogene 18:5959-66);および 3) トランスフェクション効率の内部対照としてウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼレポーター(Promega; Madison, WI)で、同時トランスフェクションする。次に、細胞培養培地に抗FZD10抗体および対照抗体を加える。トランスフェクションの48時間後に、デュアルルシフェラーゼ分析キット(Promega; Madison, WI)を用いて、ホタルルシフェラーゼ活性をウミシイタケルシフェラーゼ活性に規格化して、ルシフェラーゼレベルを測定する。三つの独立した実験を3重に行う。FZD10抗体のWnt経路活性化を阻害する能力をこのように決定する。
【0166】
いくつかの態様では、ヒトFZD10受容体に対する抗体のWntリガンド結合を妨害する能力をインビトロで決定する。例えば、HEK293細胞をWnt応答性ルシフェラーゼレポーターTOPFLASH (Upstate Group LLC; catalog # 21-170)およびWnt3A発現ベクターでトランスフェクションして、トランスフェクションされた細胞の内在的Wntシグナル伝達を活性化する。ヒトIgG1 Fcへインフレームで連結されたFZD5の細胞外ドメイン(アミノ酸1〜233)を含む可溶性FZD5 Fcを、トランスフェクションされた細胞の培地に加え、単独で(図3;HT培地Wnt3A、右バー)またはFZD5に対して生成された様々な抗体の存在下(図1C;44M1〜32)で、Wnt3Aと結合させた。FZD5抗体の非存在下では、FZD5 Fcは、トランスフェクションされた細胞中の、ルシフェラーゼ活性によって測定されるWntシグナル伝達を完全に消失させたが、FZD5 FcによるWnt3Aへのリガンド結合を妨害するFZD5抗体の添加は、Wntシグナル伝達を回復させた(図3)。
【0167】
いくつかの態様では、二つまたはそれ以上のヒトFZD受容体(例えばFZD2とFZD6)に特異的に結合する抗体が、例えば非標準Wntシグナル伝達のアゴニストとして作用することによりFZD媒介性標準Wntシグナル伝達に拮抗する能力が、インビトロで測定される。例えば、HEK293細胞をWnt応答性ルシフェラーゼレポーターTOPFLASHでトランスフェクションする。トランスフェクションの48時間後に、ヒトFZD2およびFZD6を特異的に認識する抗体またはアイソタイプ対照を、例えばWnt-3aなどのWntリガンドと共に培地に加える。次に、抗体が存在する状態および存在しない状態での標準Wntシグナル伝達の活性化を、ルシフェラーゼ活性の測定により決定する。
【0168】
補体依存性細胞障害性の分析
ある態様では、FZD受容体を発現する癌細胞系統または免疫不全マウス中で異種移植片として継代された患者試料から単離された癌幹細胞(詳細に下に記載する)を用いて、FZD受容体に対する抗体によって媒介される補体依存性細胞障害性(CDC)を測定する。細胞を、抗生物質および5% FBSを追加した200ulのRPMI 1640培地に106細胞/mlで懸濁する。懸濁した細胞を次に、FZD受容体に対する抗体または対照抗体を含む200μlの血清または加熱不活性化血清と、三つ組で混合する。細胞混合物を37℃で1〜4時間5% CO2中でインキュベートする。次に、処理した細胞を回収し、培地で希釈した100μlのFITC標識アネキシンVに再懸濁し、10分間室温でインキュベートする。HBSSで薄めた100μlのヨウ化プロピジウム溶液(25μg/ml)を加えて室温で5分間インキュベートする。細胞を回収して培養液に再懸濁し、フローサイトメトリーによって解析する。FITC染色した細胞のフローサイトメトリーによって全細胞数が得られ、全細胞数中のパーセントとしての、死細胞によるヨウ化プロピジウムの取込みは、加熱不活性化した血清および対照抗体と比較して、血清およびFZDに対する抗体の存在下での細胞死を測定するために用いられる。抗FZD抗体の補体依存性細胞障害性を媒介する能力をこのように決定する。
【0169】
抗体依存性細胞性細胞障害性の分析
ある態様では、FZD受容体を発現している癌細胞系統、または免疫不全マウス中で異種移植片として継代された患者試料から単離された癌幹細胞(詳細に下に記載する)を用いて、FZD受容体に対する抗体によって媒介される抗体依存性細胞性細胞障害性(ADCC)を測定する。細胞を、抗生物質および5% FBSを追加した、フェノールレッドを含まないRPMI 1640培地200μlに、106細胞/mlで懸濁する。エフェクター細胞として使用するために、末梢血単核細胞(PBMC)をヘパリン化末梢血からFicoll-Paque密度勾配遠心分離により単離する。次に96ウェルプレート中、少なくとも一種のFZD受容体抗体または対照抗体の存在下で、標的細胞(T)とPBMCエフェクター細胞(E)とを、25:1、10:1および5:1のE/T比率で混合する。対照には、抗体の存在下における、標的細胞単独およびエフェクター細胞単独のインキュベーションが含まれる。細胞混合物を、5% CO2中37℃で1〜6時間インキュベートする。次に、細胞溶解の際に放出される安定な細胞質の酵素である乳酸脱水素酵素(LDH)を、比色測定法(CytoTox96 Non-radioactive Cytotoxicity Assay; Promega; Madison, WI)により測定する。490nmでの吸光度データを標準96ウェルプレートリーダーで集め、バックグラウンドを補正する。特異的細胞障害性のパーセントを次の式によって計算する:%細胞障害性=100×(実験でのLDH放出−エフェクターの自発的LDH放出−標的の自発的LDH放出)/(標的の最大LDH放出−標的の自発的LDH放出)。FZD受容体に対する抗体の抗体依存性細胞性細胞障害性を媒介する能力をこのように決定する。
【0170】
実施例4
抗FZD受容体抗体を用いる、インビボにおける腫瘍成長の防止
この実施例は、異種移植片モデル中の腫瘍成長を防止するための、抗FZD受容体抗体の使用について記載する。ある態様では、マウス中で異種移植片として継代された患者試料(充実性腫瘍生検または胸水)からの腫瘍細胞を、実験動物へ再継代するために調製する。腫瘍組織を無菌条件下で取り出し、殺菌した刃を用いて小片へ切断して、完全に刻み、酵素消化および機械的破壊によって単細胞懸濁液を得る。具体的には、胸水細胞または得られた腫瘍片を、培地中で超純粋コラゲナーゼIII (1mL当たり200〜250単位のコラゲナーゼ)と混合し、10mLピペットにより15〜20分毎に上下にピペッティングしながら37℃で3〜4時間インキュベートする。消化された細胞を45μMのナイロンメッシュによって濾過し、RPMI/20% FBSで洗浄し、HBSSで2回洗浄する。次に、解離された腫瘍細胞をNOD/SCIDマウスの乳腺脂肪組織へ皮下注射して、腫瘍成長を誘発する。
【0171】
ある態様では、実験動物への注入の前に、解離された腫瘍細胞を最初に細胞表面マーカーに基づいて腫瘍形成性細胞と非腫瘍形成性細胞へ分別する。具体的には、上述の解離された腫瘍細胞を、2%加熱不活性化子ウシ血清(HICS)を含むHepes緩衝食塩水(HBSS)で2回洗浄し、100μl当たり106細胞で再懸濁する。抗体を加え、細胞を20分間氷上でインキュベートし、続いてHBSS/2% HICSで2回洗浄する。抗体には、抗ESA (Biomeda, Foster City, CA)、抗CD44、抗CD24、および細胞系列マーカーの抗CD2、抗CD3、抗CD10、抗CD16、抗CD18、抗CD31、抗CD64、および抗CD140b(Linと総称する;PharMingen, San Jose, CA)が含まれる。抗体を蛍光色素に直接抱合させて、これらのマーカーを発現する細胞を、陽性選択または陰性選択に供する。H2Kd+細胞を除くことによりマウス細胞を除去し、生存能力色素7AADを用いて死細胞を除去する。フローサイトメトリーをFACSVantage (Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)で行なう。側方散乱と前方散乱プロファイルを用いて、細胞塊を除去する。単離されたESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-腫瘍形成性細胞を、次にNOD/SCIDマウスへ皮下注射して、腫瘍成長を誘発させる。
【0172】
ある態様では、抗FZD6および抗FZD5抗体を、UM-C4結腸腫瘍細胞の成長を減少させる能力について解析した。解離されたUM-C4細胞(1匹当たり10,000細胞)を6〜8週齢のNOD/SCIDマウスの横腹領域へ皮下注射した。腫瘍細胞注入2日後に、10mg/kgの抗FZD6または抗FZD5受容体抗体のいずれかを動物に毎週2回腹腔内に(i.p.)注入した。成長が検出されるまで腫瘍成長を毎週モニターし、その後は毎週2回、合計8週間腫瘍成長を測定した。抗FZD6抗体23M2および抗FZD5抗体44M13による動物の処理は、PBSを注入した対照と比較して、腫瘍成長を有意に減少させた(図4)。
【0173】
実施例5
抗FZD受容体抗体を用いる、腫瘍のインビボでの処置
この実施例は、異種移植片モデル中の癌を処置するための、抗FZD受容体抗体の使用について記載する。ある態様では、マウス中の異種移植片として継代された患者の試料(充実性腫瘍生検または胸水)からの腫瘍細胞を、実験動物へ再継代するために調製する。無菌条件下で腫瘍組織を取り出し、殺菌した刃を用いて小片へ切断して、完全に刻み、酵素消化および機械的破壊によって単細胞懸濁液を得る。次に、解離された腫瘍細胞を、NOD/SCIDマウスの、乳房腫瘍については乳腺脂肪組織へ、非乳房腫瘍については横腹へ皮下注射して、腫瘍成長を誘発させる。または、ESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-の腫瘍形成性腫瘍細胞を、詳細に上述したように単離して注入する。
【0174】
腫瘍細胞注入後、動物の腫瘍成長をモニターする。腫瘍が平均約150〜200mmの大きさに達すると、抗体処理が開始される。各動物は、100μgのFZD受容体抗体または対照抗体を、腹腔内に毎週2回〜5回、合計6週間投与される。この6週間の間、毎週2回、腫瘍サイズを評価する。対照抗体と比較してさらなる腫瘍成長を防止するまたは腫瘍の大きさを減少させるFZD受容体抗体の能力を、このように決定する。
【0175】
抗体処理の終了時点で、さらなる分析のために腫瘍を回収する。いくつかの態様では、腫瘍の一部を免疫蛍光法によって解析し、腫瘍への抗体の浸透および腫瘍応答を評価する。抗FZD受容体で処理されたおよび対照抗体で処理されたマウスから回収された各腫瘍の一部を液体窒素中で新鮮なまま凍結し、O.C.T.に包埋し、クライオスタット上で10μm切片として切断して、スライドガラスに載せる。いくつかの態様では、各腫瘍の一部をホルマリン固定し、パラフィン包埋し、ミクロトームで10μm切片として切断してスライドガラスに載せる。切片を後固定し、注入された抗体を特異的に認識する発色団標識抗体とインキュベートして、腫瘍生検中に存在する抗FZD受容体抗体または対照抗体を検出する。さらに、種々の腫瘍および腫瘍に補充された(tumor-recruited)細胞の型を検出する抗体、例えば、血管内皮細胞を検出する抗VEカドヘリン(CD144)または抗PECAM-1 (CD31)抗体、血管平滑筋細胞を検出する抗平滑筋αアクチン抗体、増殖中の細胞を検出する抗Ki67抗体、死滅中の細胞を検出するTUNEL分析、Wntシグナル伝達を検出する抗βカテニン抗体、およびNotchシグナル伝達を検出する抗細胞内ドメイン(ICD) Notch断片抗体などを使用して、例えば血管形成、腫瘍成長および腫瘍形態に対する抗体処理の効果を評価することができる。
【0176】
ある態様では、腫瘍細胞の遺伝子発現に対する抗FZD受容体抗体処理の効果もまた評価する。FZD抗体処理されたおよび対照抗体処理されたマウスから回収された各腫瘍の一部から全RNAを抽出し、定量的RT-PCRのために用いる。FZD受容体、例えばWnt1およびβ-カテニンを含むWntシグナル伝達経路の構成要素、ならびに以前に同定された追加の癌幹細胞マーカー(例えばCD44)の発現レベルを、内部対照としてのハウスキーピング遺伝子GAPDHと比較して分析する。FZD受容体抗体処理による腫瘍細胞遺伝子発現の変化をこのように決定する。
【0177】
さらに、腫瘍中の癌幹細胞の存在に対する、抗FZD受容体抗体処理の効果を評価する。FZD抗体処理または対照抗体処理マウスからの腫瘍試料を、殺菌した刃を用いて小片へ切断して、完全に刻み、酵素消化および機械的破壊によって単細胞懸濁液を得る。解離された腫瘍細胞を次に、FACS分析により、腫瘍形成性癌幹細胞の存在について、ESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-表面細胞マーカーの発現に基づいて、上記に詳述したように分析する。
【0178】
抗FZD抗体処理後、ESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-発現に基づいて単離された細胞の腫瘍形成能を、次に評価することができる。FZD抗体処理マウスまたは対照抗体処理マウスから単離されたESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-癌幹細胞を、NOD/SCIDマウスの乳腺脂肪組織へ再度皮下注入する。安定した腫瘍形成に必要な注入細胞数に基づく癌幹細胞の腫瘍形成能を次に決定する。
【0179】
実施例6
抗FZD受容体抗体を用いたヒト癌の処置
この実施例は、FZD受容体発現が検出された癌幹細胞および/または腫瘍細胞を含む腫瘍を標的とする、FZD受容体に対する抗体を用いた癌を処置するための方法について記載する。癌幹細胞マーカー発現の存在を、最初に腫瘍生検から決定することができる。癌と診察された患者からの生検から、無菌条件下で腫瘍細胞を取り出す。いくつかの態様では、組織生検を液体窒素中で新鮮なまま凍結し、O.C.T.に包埋し、クライオスタットで10μm切片に切断して、スライドガラスに載せる。いくつかの態様では、組織生検をホルマリン固定し、パラフィン包埋して、ミクロトームで10μm切片に切断してスライドガラスに載せる。切片をFZD受容体に対する抗体とインキュベートして、タンパク質発現を検出する。
【0180】
癌幹細胞の存在も決定することができる。組織生検試料を、殺菌した刃を用いて小片へ切断して、完全に刻み、細胞を酵素消化し、機械的に破壊して、単細胞懸濁液を得る。次に、解離された腫瘍細胞を抗ESA、抗CD44、抗CD24、抗Lin、および抗FZD抗体とインキュベートして癌幹細胞を検出し、ESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-、FZD+腫瘍幹細胞の存在を、上記に詳述したフローサイトメトリーによって決定する。
【0181】
腫瘍がFZD受容体を発現していると診断された癌患者を、抗FZD受容体抗体で処置する。ある態様では、上述のように産生されたヒト化またはヒトモロクローナル抗FZD受容体抗体を精製し、注入に適した薬学的ビヒクルと共に製剤する。いくつかの態様では、少なくとも毎月一回で少なくとも10週間、FZD抗体によって患者を処置する。いくつかの態様では、少なくとも毎週一回で少なくとも約14週間、FZD抗体で患者を処置する。抗体の各投与は、薬学的に有効な用量であるべきである。いくつかの態様では、約2〜約100mg/mlの抗FZD抗体を投与する。いくつかの態様では、約5〜約40mg/mlの抗FZD抗体を投与する。抗体を、標準放射線療法措置、あるいはオキサリプラチン、フルオロウラシル、ロイコボリンまたはストレプトゾシンなどの化学療法剤の一つまたは複数を用いる化学療法措置の前に、それと同時に、またはその後に投与することができる。患者をモニターして、そのような処置が、例えば、腫瘍の退縮、新しい腫瘍発生率の減少、腫瘍抗原発現の低下、癌幹細胞数の減少、または疾病予後を評価する他の手段に基づいて、抗腫瘍応答をもたらしたかどうかを決定する。
【0182】
本発明の他の態様は、本明細書の考察および本明細書に開示された本発明の実施から、当業者に明白であろう。明細書および実施例は単に例示的なものとして考えられるべきであって、本発明の真の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって明らかにされるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】抗FZD10、抗FZD7、抗FZD5、抗FZD6、抗FZD4および抗FZD8抗体の、対応する膜結合受容体への特異的結合の分析。全長のFZD10、FZD7、FZD5、FZD6、FZD4、およびFZD8を発現するGFPと同時トランスフェクションされていない(A)またはされた(B、C、D、E、およびF)HEK293細胞を、抗FZD抗体または対照IgGとインキュベートし、FACSによって分別した。(A) FZD10に対する抗体のFACs分析を、各抗体について、IgGアイソタイプの陰性対照と比較して示す。抗FLAG抗体と結合したFLAGタグ付き構築物を、陽性対照(下)として示す。(B) FZD7に対する抗体の、FZD7およびGFPを発現している細胞での対照IgGと比較したFACs分析。抗FLAG抗体と結合したFLAGタグ付き構築物を、陽性対照として示す(下、右端)。(C) FZD5に対する抗体の、FZD5およびGFPを発現している細胞での対照IgGと比較したFACs分析。FZD5抗原で免疫した動物からの血清を下右に示す。(D) FZD6に対する抗体の、FZD6およびGFPを発現している細胞での対照IgGと比較したFACs分析。抗FLAG抗体と結合したFLAGタグ付き構築物を陽性対照として示す(下、右)。(E) FZD4に対する抗体の、FZD4およびGFPを発現している細胞での対照IgGと比較したFACs分析。抗FLAG抗体と結合したFLAGタグ付き構築物を陽性対照として示す(下、右)。(F) FZD8に対する抗体の、FZD8およびGFPを発現している細胞でのFACs分析。
【図2】FZD Fc可溶性受容体は、Wntシグナル伝達を阻害する。8×TCF-ルシフェラーゼレポーターによって安定にトランスフェクションされたHEK293細胞を、漸増濃度のFZDFc可溶性受容体と、Wnt1、Wnt2、Wnt3、Wnt3a、およびWnt7bを含む種々のWntリガンドの存在下でインキュベートした。ルシフェラーゼ活性の喪失によって示されるように、FZD4 Fc、FZD5 FcおよびFZD8 Fc融合タンパク質が、五つのWntリガンドのすべてによって媒介されるWntシグナル伝達を阻害した。
【図3】Wnt3aリガンド結合を妨害する抗FZD5抗体の同定。Wnt 8×TCF-ルシフェラーゼレポーターベクターでトランスフェクションされたHEK293細胞のWntシグナル伝達を、Wnt3aおよび32種の異なるFZD5に対する抗体の存在下で、単独で(左バー)または可溶性FZD5 Fcの存在下で(右バー)、ルシフェラーゼ活性により測定した。FZD5 FcとWnt3aの間の結合を妨害する抗体は、Wntシグナル伝達の有意な活性化をもたらす(右バー)。
【図4】抗FZD6および抗FZD5抗体による腫瘍成長の減少。UM-C4結腸腫瘍細胞を注入され、抗FZD6または抗FZD5抗体のいずれかで処理されたNOD/SCIDマウス中の腫瘍成長が、X軸(mm3)に8週間に亘ってプロットされている。抗FZD6抗体23M2 (白バー)および抗FZD5抗体44M13 (斜線バー)による処理が、PBSを注入した対照(黒バー)と比較して、腫瘍成長を有意に減少させた。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つまたはそれ以上のヒトFZD受容体の細胞外ドメインへ特異的に結合し、腫瘍細胞の成長を阻害する、単離された抗体。
【請求項2】
ヒトFZD2およびFZD6の細胞外ドメインへ特異的に結合する、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
ヒトFZD7およびFZD10の細胞外ドメインへ特異的に結合する、請求項1記載の抗体。
【請求項4】
ヒトFZD4およびFZD5の細胞外ドメインへ特異的に結合する、請求項1記載の抗体。
【請求項5】
ヒトFZD4およびFZD8の細胞外ドメインへ特異的に結合する、請求項1記載の抗体。
【請求項6】
ヒトFZD5およびFZD8の細胞外ドメインへ特異的に結合する、請求項1記載の抗体。
【請求項7】
三つまたはそれ以上のヒトFZD受容体の細胞外ドメインへ特異的に結合する、単離された抗体。
【請求項8】
ヒトFZD4、FZD5、およびFZD8の細胞外ドメインへ特異的に結合する、請求項7記載の抗体。
【請求項9】
モノクローナル抗体である、請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体。
【請求項10】
キメラ抗体である、請求項9記載の抗体。
【請求項11】
ヒト化抗体である、請求項9記載の抗体。
【請求項12】
ヒト抗体である、請求項9記載の抗体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体および薬学的に許容されるビヒクルを含む、薬学的組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体または請求項13記載の薬学的組成物を腫瘍細胞成長を阻害するのに有効な量で投与する工程を含む、癌を処置する方法。
【請求項16】
抗体が細胞障害性部分に抱合されている、請求項15記載の方法。
【請求項17】
併用療法を行うために適切な、少なくとも一つの追加の治療剤を投与する工程をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
腫瘍細胞が、乳房腫瘍、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍、および頭頸部腫瘍より選択される、請求項15記載の方法。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−513708(P2009−513708A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538957(P2008−538957)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/042375
【国際公開番号】WO2007/053577
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(308031072)オンコメッド ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】