説明

癌マーカー

本発明は、癌の診断および予後の方法に関し、この方法は1種または複数種の遺伝子産物レベルを判定することを含む。さらに、本発明は、癌治療に使用するための遺伝子産物の調節因子に関する。遺伝子には、E1A誘導遺伝子およびNumbが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の新規マーカーに関し、疾患状態の評価および治療におけるこれらのマーカーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの遺伝子が、例えば、実験系におけるこれらの効果により、推定癌遺伝子として提案されている。しかし、分子腫瘍学の重要な課題は、これらの推定癌遺伝子が、自然発生する悪性腫瘍において役割を果たしているかどうか、およびどのように役割を果たしているかを確証することである。
【0003】
Notch遺伝子は、分化、増殖およびアポトーシスを制御するヘテロ二量体膜貫通受容体をコードしている。哺乳類は、4種類の既知のNotch遺伝子、Notch1〜4を有する。
【0004】
Notch遺伝子は、発癌のいくつかの実験モデルにおいて癌遺伝子に関係があるとされている4〜7、9。例えば、Notchは、Ras形質転換細胞においてアップレギュレートされることが報告されている8。また、MMTV挿入変異またはトランスジェニック過剰発現による異常なNotchタンパク質は、マウスにおける正常な乳腺形態形成を大いに障害し、低分化腺癌の急速な発生を促すことができることも示されている4、11
【0005】
しかし、特定の癌において、野生型Notchタンパク質の調節解除された発現が記載されているが8、Notch遺伝子座の遺伝子病変については、T細胞悪性腫瘍における数少ない転座を除いて記載されていない10
【0006】
癌の評価および治療のための新規マーカーおよび治療標的を発見する重要性に照らして、シグナル伝達経路が自発的に発生する腫瘍において変更されているかどうか、およびどのように変更されているかを明らかにすることが引き続き必要である。
【0007】
さらに、患者管理に使用することができる、または新生物において破壊された標的を同定することができる、「癌のサイン(cancer signature)」を同定するためにかなり多くの研究が当技術分野では行われている。これらの研究は、主に癌のトランスクリプトームのバイアスを受けていないスクリーニングに集中している。例えば1つのアプローチは、正常細胞と比較した腫瘍において、または異なる悪性度の腫瘍において、発現が著しく修飾されている遺伝子を同定することであり(例えば、Beerら、Nature Medicine、Vol.8、No.8、816〜824頁、2002年)、生存に関連するサブセットをこれらから選択することである。このアプローチの問題は、結果として得られるサインが、複雑な上流相互作用の終点を表している場合が多く、特定の分子経路に容易に位置を定めることができない点である。
【0008】
別のアプローチは、Brown POらで用いられている(PloS Biol、2004年2月2(2))。ここでは、血清曝露への反応において、線維芽細胞から遺伝子発現プロファイルを得た。この線維芽細胞一般血清反応の一部を形成する遺伝子は、多くのヒト腫瘍で制御されていることが見出された。これは、癌の進行および創傷治癒の分子機構との類似性によるものであることが提案された。
【特許文献1】WO00/05409
【特許文献2】WO84/01031
【特許文献3】WO88/1058
【特許文献4】WO89/01157
【特許文献5】WO93/8472
【特許文献6】WO95/18376
【特許文献7】WO95/18377
【特許文献8】WO95/24649
【特許文献9】EP-A-0373203
【特許文献10】WO92/01047
【非特許文献1】Beerら、Nature Medicine、Vol.8、No.8、816〜824頁、2002年
【非特許文献2】Brown POら、PloS Biol、2004年2月2(2)
【非特許文献3】BaselgaおよびNorton、Cancer Cell 1、319〜322頁、2002年
【非特許文献4】Pharoah PD、Day NE、Caldas C:Somatic mutations in the p53 gene and prognosis in breast cancer.Br J Cancer 80(12):1968〜1973頁、1999年
【非特許文献5】Wang HGら、「Identification of specific adenovirus E1A N-terminal residues critical to the binding of cellular proteins and to the control of cell growth」、J Virol.1993年1月、67(1)、476〜88頁
【非特許文献6】Van't Veer LJ、Nature 415(31)、530〜535頁(2002年)
【非特許文献7】Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、第15版、1975年
【非特許文献8】Armitageら、Nature、357:80〜82頁、1992年
【非特許文献9】Speirs,V.ら、Short-term primary culture of epithelial cells derived from human breast tumours.、Br J Cancer 78、1421〜9頁、1998年
【非特許文献10】Hammond,S.L.、Ham,R.G.およびStampfer,M.R.、Serum-free growth of human mammary epithelial cells:rapid clonal growth in defined medium and extended serial passage with pituitary extract.、Proc Natl Acad Sci USA 81、5435〜9頁、1984年
【非特許文献11】Santolini,E.ら、Numb is an endocytic protein.、J Cell Biol 151、1345〜52頁、2000年
【非特許文献12】Rosen,P.P.、Oberman,H.A.、Tumours of the mammary gland.、Washington DC、Armed Forces Institute of Pathology、1993年
【非特許文献13】WHO、Histological typing of breast tumours、第2版、international histological classification of tumours no.2.、Geneva、WHO、1981年
【非特許文献14】Elston,C.W.、Ellis,I.0.、Pathological prognostic factors in breast cancer:the value of histological grade in breast cancer.、Histopathology 19、403〜410頁、1991年
【非特許文献15】Beer,D.G.ら、Gene-expression profiles predict survival of patients with lung adenocarcinoma.、Nat Med、8:816〜824頁、2002年
【非特許文献16】Bhattacharjee,A.ら、Classification of human lung carcinomas by mRNA expression profiling reveals distinct adenocarcinoma subclasses.、Proc Natl Acad Sci U S A、98:13790〜13795頁、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術で生成されたサインは、高度には信頼性が高くない場合が多く、様々な臨床環境および様々な患者から得られたデータセットから、良好な結果を提供しない場合が多い。さらに、従来技術のサインは、しばしば多数の遺伝子を含み、これが、費用および患者における診療スクリーニングの問題を増加させる。
【0010】
したがって、新規の診断、予後または治療用のマーカーを同定するため、癌のサインを同定する新たなアプローチの開発も引き続き必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、Numb-Notch拮抗作用が、正常組織の恒常性に関係しており、この破壊が、腫瘍における細胞系質転換に寄与しているという所見に、一部基づいている。
【0012】
Numbは、ショウジョウバエにおいては、特に神経系の有糸分裂においてこれが非対称分配される結果、細胞運命を決定するタンパク質である12。胚形成におけるNumbの機能は、Notchと結合し相互作用する能力に関連がある1-3。Numbは、成体哺乳類細胞型でも発現されるが、ここでのNumbの機能は知られていない13。本発明者は、今や、Numb-Notch拮抗作用が、成体の正常細胞の恒常性に重要であるだけでなく、Numb状態が、ヒト腫瘍における破壊されたNotchシグナル伝達の原因であることも明らかにした。
【0013】
したがって、第1の態様では、本発明は、患者における癌の評価指標を提供する方法であって、
前記患者から得られた組織の分析試料を提供することと、
前記試料のNumb状態を判定すること
を含む方法を提供する。
【0014】
好ましい実施形態では、方法は、癌の予後または診断指標である1種または複数種の追加のタンパク質、例えば、1種または複数種の癌遺伝子、マイトジェン、腫瘍サプレッサー、細胞周期エフェクター、もしくは転写調節因子の状態を判定することをさらに含む。例えば、ErbB2は、乳癌に適したさらなるタンパク質でありうる。
【0015】
タンパク質は、正常細胞では、癌に対する防御因子として作用するタンパク質でありうる。
【0016】
好ましい実施形態では、方法は、Numbに加えてP53の状態を、例えば、予後方法で判定することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、方法は、Numbに加えてER(エストロゲン受容体)の分析試料中の状態を、特に予後方法において、特に癌が乳癌である場合に判定することを含むことが好ましいと考えられる。好ましくは、方法は、例えば癌の、好ましくは乳癌の予後におけるP53およびERの状態を判定することを含む。
【0018】
本発明は、患者の癌の評価用キットであって、Numb遺伝子発現産物(好ましくはNumbタンパク質)に対する特異的結合パートナー、および少なくとも1つのその他の遺伝子発現産物に対する特異的結合パートナーを含むキットも提供する。ここで、前記遺伝子発現産物は、癌(例えば、上述の通り)の予後または診断に関連している。
【0019】
好ましくは、キットは、P53および/またはER転写物もしくはタンパク質に対する特異的結合パートナーを含み、特にここで、キットは、癌(例えば、乳癌)の予後ためのものである。
【0020】
本発明者は、Numb状態が、特にP53+および/またはER-バックグラウンドにおける疾患進行の有効な指標であり、ER-P53+バックグラウンドにおいてはさらに有効な指標であることを見出した。P53+バックグラウンドとは、P53が、変異したバージョンで発現しているバックグラウンドを意味する。P53-バックグラウンドにおいては、P53は、発現していない。P53は、ストレス状態により活性化され、正常細胞を成長停止および/またはアポトーシスに導くため、P53の非発現は、正常な基礎状態である。ER陰性乳癌は、ER+腫瘍よりも予後不良と一般的に相関している(BaselgaおよびNorton、Cancer Cell 1、319〜322頁、2002年)。P53変異(すなわち、本明細書で言及されているP53陽性状態)も、乳癌を含む特定の癌における予後不良と関連している(Pharoah PD、Day NE、Caldas C:Somatic mutations in the p53 gene and prognosis in breast cancer.Br J Cancer 80(12):1968〜1973頁、1999年)。
【0021】
驚くべきことに、本発明者は、P53+/ER-の背景では、予後は、Numb状態により劇的に影響されることを見出した。ほぼ正常レベルのNumbを有する患者の予後は、良好(例えば、ER+患者以上ではないにしても同じくらい良好)と思われ、Numbがほとんどない患者の予後は、不良と思われる。したがって、予後においてERおよび/またはP53状態を判定する価値は、Numb状態も判定することできわめて改善される。
【0022】
本発明者は、更に、Numb活性の回復、またはNotchシグナル伝達の別の阻害剤の使用のいずれかにより、Notchシグナル伝達を阻害することは、Numb欠損腫瘍における細胞増殖の大幅な減少を引き起こすことが可能であるが、正常レベルのNumbを伴う腫瘍では、これは認められないことを見出した。
【0023】
したがって、別の態様では、本発明は、Notchシグナル伝達阻害剤による治療に対する、患者における腫瘍感受性を測定する方法であって、
前記患者から得られた腫瘍組織試料を提供することと、
前記試料のNumb状態を判定すること
を含む方法を提供する。
【0024】
方法は、前記患者にNotchシグナル伝達阻害剤を投与する工程をさらに含んでよい。
【0025】
例えば、患者における治療有効性をモニターするため、このような阻害剤の投与前後に患者から得られた試料中のNotch活性を測定することが望ましい場合がある。試料の入手および患者の治療は、この方法の必要な部分ではないが、これらのどちらか一方または両方が、場合によりさらなる工程として存在してもよい。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、患者の癌を治療するための薬剤の製造におけるNotchシグナル伝達阻害剤の使用を提供する。ここで、前記患者は、対照試料、例えば、正常組織と比べて、腫瘍におけるNumb活性が低下している。例えば、Notchシグナル伝達阻害剤は、以下により詳しく説明されている通り、Numbタンパク質レベルを回復する薬剤であってよい。Numb活性は、以下にNumb状態の評価に関して説明されているいずれかの方法で測定することができる。
【0027】
患者は、対照試料と比べて、例えば、同じ患者由来の健康な組織試料と比べて、腫瘍におけるNumbタンパク質レベルが低下していることが好ましい。癌は、乳癌であることが好ましい。
【0028】
いくつかの実施形態では、患者は、上述の通り、Notchシグナル伝達阻害剤による治療に対する患者における腫瘍感受性の測定方法に供される。
【0029】
さらなる態様では、本発明は、患者の癌を評価(例えば、癌の診断指標または予後指標の提供、適切な治療レジメンの決定、またはNotchシグナル伝達阻害剤による治療に対する患者における腫瘍感受性の評価)するための、Numb遺伝子発現産物(好ましくはNumbタンパク質)の特異的結合パートナーを含むキットを提供する。ここで、前記結合パートナーは、固体担体に固定されている。本発明はまた、患者の癌の評価用キットの製造における、Numb遺伝子発現産物(例えば、Numbタンパク質)の特異的結合パートナーの使用も提供する。
【0030】
本発明者はまた、Numbユビキチン化の増強は、Numb-Notchシグナル伝達がヒト腫瘍において破壊されるメカニズムであることも見出した。したがって、Numbユビキチン化阻害剤は、癌を治療するための治療法として使用するために提案される。
【0031】
したがって、さらなる態様では、患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
Numbポリペプチド、および分解のためにNumbを標的化することが可能な酵素を含む試験系を提供することと、
前記試験系を試験薬に接触させることと、
Numbの分解のための標的を阻害する試験薬の能力を評価すること
を含む方法が提供される。
【0032】
前記試料のNumb状態を判定することを含む、上記本発明の態様では、この判定は、前記試料中のNumbタンパク質レベルの判定により行われることが好ましい。方法は、前記レベルと、対照試料から得られた参照レベルと比較することをさらに含んでもよい。
【0033】
それぞれの上記態様では、癌は、乳癌であることが好ましい。
【0034】
他の態様では、本発明は、癌特異的転写サインを同定する新規アプローチに基づいている。本発明者は、最終分化培養細胞を細胞周期へ再進入させることが可能な明確な分子ツールを使用するアプローチを開発した。
【0035】
この方法は、したがって、癌のサインを同定するバイアスを受けた方法に関する。この方法においては、癌トランスクリプトーム試験は、最終分化細胞を細胞周期へ再進入させる薬剤に対する反応において調節されることが示された遺伝子へとバイアスを受けている(または実際、主にもしくは完全に集中している)。この方法は、分子ツールは、自然発生腫瘍において破壊された経路を模倣し、限られた数の変化したシグナル伝達経路が、悪性状態に至るという仮説に基づいている。
【0036】
本発明者は、この方法により得られたサインは、癌および癌の予後の良好な評価指標を提供することができることを見出した。
【0037】
さらに、このようなスクリーニングで同定された遺伝子は、シグナル伝達経路へより容易にリバースエンジニアリングされることができ、故に、ヒト癌における特に関心のある経路を同定することができる。
【0038】
したがって、本発明は、癌の評価方法において検出するためのマーカーを同定する、このようなバイアスを受けた方法、およびこのような方法で同定されたマーカーに幅広く関する。
【0039】
1つの態様では、本発明は、患者における癌の評価指標の提供に使用するための、遺伝子発現産物の特異的結合パートナーを選択する方法であって、
最終分化した哺乳類の培養細胞を、細胞の細胞周期への再進入を引き起こす薬剤との接触により、その発現が調節される遺伝子を同定することと、
前記遺伝子の発現産物に対する特異的結合パートナーを選択すること
を含む方法を提供する。
【0040】
1つの実施形態では、遺伝子は、哺乳類の腫瘍において発現が調節される。
【0041】
最終分化細胞における細胞周期からの離脱を克服可能な薬剤は、細胞周期のきわめて厳密な制御を克服する。本発明者は、これは、重要な癌の経路の模倣に起因している可能性があると考えた。最終分化した(TD)細胞の細胞周期への再進入を引き起こす際の使用に適した薬剤には、アデノウイルス由来のE1A(特に、12S mRNA産物)、パピローマウイルス由来のE7およびSV40由来のラージT抗原、またはいずれかのフラグメント、スプライス変異体もしくは生物活性を保持するこれらの変異体が含まれる。
【0042】
好ましくは、方法は、このバイアスを受けたアプローチを用いた評価のための遺伝子/特異的結合パートナーのセットの選択、すなわち、2つを超える前記遺伝子を同定することと、前記2つを超える遺伝子の発現産物に対する特異的結合パートナーを選択することとを含む。
【0043】
好ましくは、上記態様では、細胞および/または腫瘍は、霊長類またはげっ歯類(例えば、マウス)であり、より好ましくはヒトである。
【0044】
培養細胞または哺乳類の腫瘍における調節された発現は、誘導または阻害された発現でありうる。
【0045】
方法は、好ましくは、少なくとも2つの前記遺伝子を同定することと、少なくとも2つの遺伝子に対する特異的結合パートナーを選択することとを含む。
【0046】
方法は、
a)最終分化した哺乳類の培養細胞を、細胞の細胞周期への再進入を引き起こす薬剤と接触させることで発現が調節され、
b)同じシグナル伝達経路に属する
少なくとも2つの遺伝子を同定することを含みうる。
【0047】
1つの実施形態では、前記遺伝子は、哺乳類の腫瘍において発現を調節する。
【0048】
遺伝子が属するシグナル伝達経路は、発現調節が、他の薬剤ではなく該薬剤に対する特定の反応に必須であることが既知の因子に依存性または非依存性であるかを判定することで評価することができる。
【0049】
例えば、同定される遺伝子は、同じE1A誘導経路に属している可能性がある。好ましくは、1つまたは複数の遺伝子は、Rb(網膜芽細胞腫腫瘍サプレッサー)のようなポケットタンパク質の不活化により、強くは調節(例えば、誘導)されず、E1Aポケット結合変異体により著しく調節(例えば、誘導)される。
【0050】
1つの実施形態では、本発明は、患者における癌の評価指標の提供に使用するための、遺伝子発現産物の特異的結合パートナーを選択する方法であって、
最終分化した哺乳類の培養細胞を、E1Aと接触させて、細胞の細胞周期への再進入を引き起こすことにより、その発現が調節される遺伝子を同定することと、
前記遺伝子の発現産物に対する特異的結合パートナーを選択すること
を含む方法を提供することができる。遺伝子は、哺乳類の腫瘍においておよび/または腫瘍進行中に発現を調節することができる。
【0051】
方法は、
a)最終分化した哺乳類の培養細胞を、E1Aと接触させて、細胞の細胞周期への再進入を引き起こすことにより、その発現が調節され、
b)発現が、ポケットタンパク質(例えば、網膜芽細胞腫腫瘍サプレッサー)の不活化により、強くは調節(例えば、誘導)されず、E1Aポケット結合変異体により著しく調節(例えば、誘導)され、
c)哺乳類の腫瘍において発現が調節される
・少なくとも1つの遺伝子(場合によっては、少なくとも2つの遺伝子)を同定することと、
・前記遺伝子発現産物に対する特異的結合パートナーを選択すること
を含むことができる。
【0052】
1つまたは複数の特異的結合パートナーを選択したことで、これらは、例えば、癌の評価の際、患者から採取した試料における遺伝子発現産物の検出に使用されることができる。したがって、1つまたは複数の特異的結合パートナーを選択したことで、本発明は、さらに、癌の評価指標の提供に使用するキットであって、1つまたは複数の特異的結合パートナーを含むキットの製造を実現する。
【0053】
本発明はまた、癌の評価指標を提供する方法であって、結合パートナーを選択することと、患者から得られた組織の分析試料を提供することと、選択された1つまたは複数の結合パートナーへの結合を判定することにより、少なくとも1つの遺伝子発現産物レベルを判定することとを含む方法も提供する。
【0054】
本発明者は、本発明の方法を使用して、癌の評価に有用なマーカーを同定した。
【0055】
1つの実施形態では、本発明者は、ヒト癌に強く関連する遺伝子クラスを同定した。故に、本発明の1つの態様は、この遺伝子クラスにおけるメンバーの状態を評価することを含む、癌の評価方法に関する。
【0056】
全般に、遺伝子クラスは、発現が、ポケットタンパク質、好ましくはRb、の不活化により強くは調節(例えば、誘導)されず、E1Aポケット結合変異体、特にE1Aポケット結合変異体YH47により著しく調節(例えば、誘導)される遺伝子である。変異体は、Wang HGら、「Identification of specific adenovirus E1A N-terminal residues critical to the binding of cellular proteins and to the control of cell growth」、J Virol.1993年1月、67(1)、476〜88頁に記載されている。
【0057】
本発明者は、このクラスの遺伝子、DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1は、ヒト癌のかなりの割合(正常組織と比べて)でアップレギュレートされており、癌の予後の予測因子としても使用できることを示した。さらに、このE1A誘導経路は、有用な治療標的を示しているように思われる。このクラスの遺伝子の一例であるSKINの発現を阻害すると、正常細胞には影響を与えずに、SKINを過剰発現している癌細胞系での増殖を劇的に減少させることができる。
【0058】
別の実施形態では、本発明者は、E1Aにより誘導され、癌の予後の予測因子として使用できる他の遺伝子クラスを同定した。
【0059】
該遺伝子クラスは、発現が、
(a)ポケットタンパク質、好ましくはRb、の不活化により、強く調節(例えば、誘導)され、E1Aポケット結合変異体、特にE1Aポケット結合変異体YH47により調節(例えば、誘導)されず、E2F1過剰発現により強く誘導され
(b)ポケットタンパク質、好ましくはRb、の不活化により、強く調節(例えば、誘導)され、E1Aポケット結合変異体、特にE1Aポケット結合変異体YH47により調節(例えば、誘導)されず、E2F1過剰発現により誘導されず(またはほとんど誘導されず)
(c)ポケットタンパク質、好ましくはRb、の不活化により、強く調節(例えば、誘導)され、E1Aポケット結合変異体、特にE1Aポケット結合変異体YH47により調節(例えば、誘導)され、E2F1過剰発現により誘導されない(またはほとんど誘導されない)
遺伝子である。これらのクラスに含まれる遺伝子例は、図11に表されている。
【0060】
1つの実施形態では、本発明は、患者における癌の評価指標を提供する方法であって、
前記患者から得られた組織の分析試料を提供することと、
DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1、または図11に収載されたその他の遺伝子から選択された少なくとも1つの遺伝子の、試料中の発現産物レベルを判定すること
を含む方法を提供する。方法は、このように判定されたレベルと、細胞対照試料中の前記発現産物レベルと比較することをさらに含むことができる。
【0061】
好ましくは、方法は、前記遺伝子の少なくとも2つ、好ましく少なくとも3、4、または5つ、場合によっては前記遺伝子のすべての発現産物レベルを判定することを含むことができる。
【0062】
好ましい実施形態では、癌は、乳癌であり、方法は、ch-TOG、SKIN、およびTRPC4AP遺伝子の少なくとも1つ(好ましくは少なくとも2つまたは3つ)の試料における発現産物レベルを判定することを含む。
【0063】
別の好ましい実施形態では、癌は、大腸癌であり、方法は、SKIN、SMU-1およびch-TOGの少なくとも1つ(好ましくは少なくとも2つまたは3つ)の試料における発現産物レベルを判定することを含む。
【0064】
もう1つの実施形態では、本発明は、
患者から得られた組織の分析試料を提供することと、
表2の少なくとも1つの遺伝子の、前記試料中の発現産物レベルを判定すること
を含む、患者における乳癌の評価指標を提供する方法を提供する。
【0065】
さらなる実施形態では、本発明は、
患者から得られた組織の分析試料を提供することと、
表3または表4の少なくとも1つの遺伝子の、前記試料中の発現産物レベルを判定すること
を含む、前記患者におけるNSCLC(非小細胞肺癌)の評価指標を提供する方法を含む。
【0066】
上記方法は、表2または表3または表4の、それぞれ少なくとも2つ、5つ、8つ、10、11、12またはすべての遺伝子の、発現産物レベルを判定することを含むことが好ましい場合がある。
【0067】
このように判定されたレベルは、細胞対照試料中の発現産物レベルと比較されることができる。
【0068】
さらなる実施形態では、本発明は、癌の評価に使用するキットを提供する。ここで、キットは、
DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1、もしくは図11に収載されたその他の遺伝子から選択された少なくとも1つの遺伝子、または
ch-TOG、SKIN、およびTRPC4APの少なくとも1つ、または
SKIN、SMU-1およびch-TOGの少なくとも1つ、または
表2の少なくとも1つの遺伝子、または
表3もしくは表4の少なくとも1つの遺伝子
の発現産物に対する特異的結合パートナーを含み、
前記特異的結合パートナーは、固体表面に固定されている。
【0069】
本発明はまた、キットが、
DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1、もしくは図11に収載されたその他の遺伝子から選択された少なくとも2つの遺伝子、または
ch-TOG、SKIN、およびTRPC4APの少なくとも2つ、または
SKIN、SMU-1およびch-TOGの少なくとも2つ、または
表2の少なくとも2つの遺伝子、または
表3もしくは表4の少なくとも2つの遺伝子
の発現産物に対する特異的結合パートナーを含む、癌の評価に使用するキットも提供する。
【0070】
対応する方法の好ましい特徴は、特に発現産物が検出される遺伝子数に関しては、複数のキットに等しく適用する(例えば、表2もしくは表3もしくは表4の遺伝子の少なくとも2つ、5つ、8つ、10、11、12もしくはすべて、または、DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1、もしくは図11に収載されたその他の遺伝子の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つもしくはすべて)。
【0071】
さらなる態様では、本発明は、癌の評価指標の提供に使用するキットの製造における、
DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1、もしくは図11に収載されたその他の遺伝子から選択された少なくとも1つの遺伝子、または
表2から選択された1つの遺伝子、または
表3もしくは表4から選択された1つの遺伝子
の特異的結合パートナーの使用を提供する。
【0072】
上記方法もしくはキットの各々、または上記使用では、遺伝子発現産物は、タンパク質または転写物であってよい。遺伝子発現産物が転写物の場合、特異的結合パートナーは、転写物にハイブリダイズする核酸であってよい。キットに関する態様では、キットは、場合によっては遺伝子チップアレイであってよく、またはいずれか他の高濃度もしくは低濃度の転写物分析またはタンパク質分析であってよい。
【0073】
本発明はまた、患者の癌を治療する候補薬剤をスクリーニングするための、DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1、または図11に収載されたその他の遺伝子から選択されたタンパク質、表2のタンパク質、表3のタンパク質および表4のタンパク質の使用も提供する。
【0074】
さらなる実施形態では、本発明は、患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
a)DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1もしくは図11に収載されたその他の遺伝子から選択されたタンパク質、または表2、表3もしくは表4のタンパク質を提供することと、
b)タンパク質を試験薬に接触させることと、
c)前記試験薬が、タンパク質と結合および/またはタンパク質の活性を調節することが可能かどうか判定すること
を含む方法を提供する。
【0075】
別の態様では、本発明は、患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
最終分化した哺乳類の培養細胞において、細胞をE1Aと接触させて、この細胞周期への再進入を引き起こすことにより、その発現が調節される遺伝子を同定することと、
該遺伝子により発現されたタンパク質を提供することと、
該タンパク質を試験薬に接触させることと、
前記試験薬が、タンパク質と結合および/またはタンパク質の活性を調節することが可能かどうか判定すること
を含む方法を提供する。
【0076】
Rbの不活化によって強くは誘導されず、E1Aポケット結合変異体により著しく誘導されるタンパク質クラスは、自然発生腫瘍にとって特に重要な1つのタンパク質クラスとして同定されているため、本発明は、さらに、癌治療の候補治療法としてのこのタンパク質クラスのモジュレーター、および好ましくは阻害剤に関し、前記候補治療法のスクリーニング方法に関する。
【0077】
したがって、上記発明の1つの実施形態は、患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
最終分化した哺乳類の培養細胞において、細胞をE1Aと接触させて、この細胞周期への再進入を引き起こすことにより、その発現が調節され、且つ、E1Aポケット結合変異体により著しくその発現が調節される遺伝子を同定することと、
該遺伝子により発現されたタンパク質を提供することと、
該タンパク質を試験薬に接触させることと、
前記試験薬が、タンパク質と結合および/またはタンパク質の活性を調節することが可能かどうか判定すること
を含む方法である。
【0078】
しかし、E1A誘導遺伝子の他のクラスもまた重要である。したがって、他の実施形態では、遺伝子は以下の1つであってよい。
(a)その発現が、ポケットタンパク質、好ましくはRb、の不活化により強く調節、好ましくは誘導され、E1Aポケット結合変異体、特にE1Aポケット結合変異体YH47により調節され、E2F1過剰発現により強く誘導される遺伝子、
(b)その発現が、ポケットタンパク質、好ましくはRb、の不活化により、強く調節、好ましくは誘導され、E1Aポケット結合変異体、特にE1Aポケット結合変異体YH47により調節されず、E2F1過剰発現により誘導されない遺伝子、
(c)その発現が、ポケットタンパク質、好ましくはRb、の不活化により、強く調節、好ましくは誘導され、E1Aポケット結合変異体、特にE1Aポケット結合変異体YH47により調節され、好ましくはE2F1過剰発現により誘導されない遺伝子。
【0079】
場合によっては、遺伝子は、発現が哺乳類(例えば、ヒト)の腫瘍において調節される遺伝子であってよい。
【0080】
本発明はまた、患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
a)形質転換された培養細胞を提供することと、
b)前記細胞を試験薬に接触させることと、
c)前記試験薬が、DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1もしくは図11に収載されたその他の転写物から選択された1つの転写物、または表2、表3もしくは表4の1つの転写物のレベルを調節することが可能かどうかを判定すること
を含む方法を提供する。
【0081】
さらなる態様では、本発明は、患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
最終分化した哺乳類の培養細胞において、細胞をE1Aと接触させて、細胞の細胞周期への再進入を引き起こすことにより、その発現が調節される遺伝子を同定することと、
形質転換された培養細胞を提供することと、
前記細胞を試験薬に接触させることと、
前記試験薬が、前記遺伝子の転写レベルを調節可能かどうかを判定すること
を含む方法を提供する。
【0082】
好ましい実施形態では、本発明は、患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
最終分化した哺乳類の培養細胞において、細胞をE1Aと接触させて、この細胞周期への再進入を引き起こすことにより、その発現が調節され、且つ、ポケットタンパク質の不活性化により強くは調節されず、且つ、E1Aポケット結合変異体によりその発現が著しく調節される遺伝子を同定することと、
形質転換された培養細胞を提供することと、
前記細胞を試験薬に接触させることと、
前記試験薬が、前記遺伝子の転写レベルを調節可能かどうかを判定すること
を含む方法を提供する。
【0083】
場合によっては、遺伝子は、発現が哺乳類(例えば、ヒト)の腫瘍において調節される遺伝子であってよい。
【0084】
別の態様では、本発明は、癌の治療薬物を製造するための上記スクリーニング方法の1つにおいて得られる薬剤の使用を提供する。
【0085】
表2、表3または表4の遺伝子またはタンパク質(キット、スクリーニング方法および使用)に関する上記態様のすべてでは、遺伝子/タンパク質が表2の遺伝子/タンパク質である場合、癌は好ましくは乳癌である。遺伝子/タンパク質が表3または表4の遺伝子/タンパク質である場合、癌は好ましくはNSCLCである。
【0086】
さらなる態様では、本発明は、患者の癌を治療するため、SKIN活性または発現の阻害剤の使用を提供する。
【0087】
癌の予後または治療は、例えば、メラノーマ、または乳癌、大腸癌、腎癌、咽頭癌、肺癌、前立腺癌、胃癌、子宮癌または脳癌に適用されることができる。
【0088】
本発明は、これより、以下の図を参照しながら詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0089】
本明細書で言及されるNumbとは、文脈から他に明らかでない限り哺乳類のNumbを指し、好ましくはヒトNumbを指す。ヒトNumb mRNA配列は、ACC.NO NM_003744に提供されている。
【0090】
Notchが本明細書で言及される場合、哺乳類(好ましくはヒト)のNotch1、2、3または4(ACC.NO NM_017617、NM_024408、NM_000435、NM_004557)のいずれか1つ、好ましくはNotch1および4を意味する。
【0091】
DDX21とは、デッドボックスポリペプチド21(Deadbox polypeptide 21)のことである。SF3B1とは、スプライシング因子3b、サブユニット1のことである。Ch-TOGとは、大腸および肝臓腫瘍過剰発現タンパク質のことであり、KIAA097としても知られる。SKIN(similar to KIAA0493 induced in tumour)(腫瘍において誘導されたKIAA0493に類似した)とは、本来の属性機能を持たないタンパク質のことである。TRPC4APとは、一過性受容体電位カチオンチャネル、サブファミリーC、メンバー4関連タンパク質(transient receptor potential cation channel,subfamily C,member 4 associated protein)のことであり、PRIPとしても知られる。SMU-1とは、MEC-8およびUNC-52ホモログの抑制因子のことである。図10は、ヒトおよびマウス配列のアクセッション番号を収載しているが、遺伝子またはタンパク質については、他の哺乳類の配列を含んでいる場合がある。本明細書で使用される省略名は、便宜上、ヒトホモログの名前であるが、これは、他の哺乳類のホモログを除外することを意図するものではない。図11は、E1A誘導遺伝子の4つのクラスに対するアクセッション番号を収載している。
【0092】
表2、3および4は、中に遺伝子のアクセッション番号を収載している。遺伝子またはタンパク質については、他の哺乳類の配列を含んでいる場合がある。
【0093】
mRNA配列のアクセッション番号は、上に記載されているが、文脈から明らかなように、遺伝子転写物またはタンパク質が言及されている場合もある。
【0094】
本明細書で言及される患者とは、哺乳類の患者であり、より好ましくはヒトである。
【0095】
(患者の癌の評価)
本明細書で言及される患者の癌の評価は、癌の診断または予後でありうる。
【0096】
癌の評価は、癌の適切な臨床選択肢の評価を含むことができる。例えば、検討される遺伝子発現産物レベルは、治療レジメンの侵襲性の適正水準を示すことができる。評価は、治療に対する癌の反応の評価も含むことができる。
【0097】
上記いくつかの態様および実施形態では、癌の評価は、以下により詳細に説明されている通り、Notch阻害剤による治療に対する癌感受性の評価であることができる。
【0098】
癌の評価指標とは、癌を評価する際に、例えば、他の情報と一緒に使用されることができる結果(すなわち、データ)を指す。
【0099】
方法は、以下により詳細に説明されている通り、タンパク質の状態または1種または複数種の発現産物のレベルと、対照試料のそれと比較することを含むこともできる。対照試料が、正常細胞試料または良好な予後を有する腫瘍細胞(例えば、非転移性腫瘍細胞)試料である場合、予後不良は、遺伝子の状態、または対照のレベルとは異なる遺伝子発現産物レベルにより示唆されることができる。対照が、予後不良と関連している場合、例えば、転移性腫瘍由来の試料である場合、予後不良は、遺伝子の状態、または対照試料と一致するまたは類似する遺伝子発現産物レベルにより示唆されることができる。当然ながら、以下に説明されている通り、1種類を超える対照を使用することができる。
【0100】
乳癌の表2の遺伝子に関しては、該腫瘍における(例えば、良好な予後と関連した他の乳腺腫瘍および特に非転移性腫瘍と比べて) 1つまたは複数の遺伝子の発現のアップレギュレーションは、予後の悪化と関連している可能性がある。
【0101】
NSCLCの表3の遺伝子に関しては、例えば、非転移性腫瘍などの良好な予後を有する組織型と比べて、HLA-DQB1、LU、GNS、POLR2C、PBXIP1およびRAFTLINのダウンレギュレーションは、ならびに、良好な予後を有する組織型と比べて、PAICS、PFN2、SERPINB5、HSPD1、E2F4およびARL4Aのアップレギュレーションは、予後の悪化と関連している可能性がある。
【0102】
NSCLCの表3の遺伝子に関しては、例えば、非転移性腫瘍などの良好な予後を有する組織型と比べて、HLA-DQB1およびRAFTLINのダウンレギュレーションは、ならびに、良好な予後を有する組織型と比べて、PFN2、SERPINB5、E2F4、E2F1、MCM7、PRM2、MCM4、MCM6、CML66、SF3B1、ATP13A3、CXCL6、GABPB2、GAPDH、GARS、HOXB7、HSPG2、KIAA0186、SCGB3A1のアップレギュレーションは、予後の悪化と関連している可能性がある。
【0103】
本出願では、患者から得られた組織試料の提供すること、および、該試料におけるタンパク質の状態を判定することは、生体から除去後の試料で実施されたin vitro方法であると理解されたい。
【0104】
(タンパク質状態の判定)
いくつかの態様では、方法は、Numbおよび/または癌の診断または予後に関連した他のタンパク質の状態を判定することを含む。
【0105】
タンパク質の状態を判定することとは、組織中のタンパク質の活性レベルを直接的または間接的に示すいずれかの判定(いくつかの実施形態では、定量)を意味する。例えば、状態は、以下により判定されることができる:核酸またはタンパク質配列における変異の存在の判定、細胞におけるDNA配列のコピー数の判定;タンパク質もしくは転写物などの遺伝子発現産物のレベルの判定、またはタンパク質活性の直接測定。
【0106】
Numbに関しては、判定は、以下にさらに説明されている通り、タンパク質レベルを判定することを含むことが好ましい。本発明者は、正常組織が、濃い均一なNumb染色を示すのに対し、腫瘍は、著しい不均一性を示すことを見出した。したがって、試料中のNumbタンパク質レベルの好ましい測定方法は、Numbの陽性標識を示す細胞の割合を評価することでありうる。
【0107】
P53の状態は、好ましくはよく知られた方法を用いた免疫組織化学分析により評価されうる。上述の通り、p53陽性は、p53が変異され、それ故に不活性であるという指標である。他の実施形態では、P53の状態は、変異の存在を特定するため、シーケンスにより評価されることが好ましい場合がある。
【0108】
エストロゲン受容体の状態は、好ましくは例えば、免疫組織化学分析など、試料中のタンパク質レベルの検出により評価されることができる。
【0109】
(Notch活性の判定)
Notch活性の判定は、例えば、その発現が、Notchにより制御されるタンパク質または転写レベルを評価することで行われるうる。好ましい例はHES-1である。
【0110】
(Notchシグナル伝達阻害剤)
好ましくは、Notchシグナル伝達阻害剤は、Notchタンパク質のレベルまたは活性の低下をもたらす。
【0111】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、Numb活性を回復(少なくとも一部は)薬剤であることが好ましい。例えば、阻害剤は、Numbポリペプチド、またはユビキチン化に耐性であるように改変されたNumbポリペプチド(例えば、必要なリン酸化部位の欠損)であることができる。いくつかの実施形態では、阻害剤は、これらポリペプチドの1つをコードする核酸であることができる。阻害剤は、Numbをユビキチン化の標的にすることを阻害する薬剤でもありうる。Numbレベルは、LNX、Siah-1およびMdm214、26、27などのE3リガーゼにより制御されうる可能性があることが示唆されている。ショウジョウバエでは、セリン/スレオニンキナーゼNAKは、Numbと物理的に相互作用し、過剰発現30におけるNumb欠損表現型の原因となることも見出されている。したがって、阻害剤は、キナーゼ(例えば、NAKホモログ)もしくはE3型ユビキチンリガーゼ(例えば、LNX、Siah-1もしくはMdm2)のNumbへの結合を遮断する薬剤、またはその上にキナーゼまたはリガーゼの活性を阻害する薬剤であることができる。薬剤は、例えば、抗体(NumbもしくはキナーゼもしくはE3型ユビキチン理リガーゼに対する)、小分子、またはNumbのポリペプチドフラグメント、前記キナーゼもしくはE3型リガーゼであることができる。
【0112】
治療法として使用するためのNumbポリペプチド、すなわち治療法として使用するための核酸によりコードされたNumbポリペプチドは、AAD54279.1の配列と少なくとも70%、より好ましくは80%、90%、95%または99%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド、およびこのフラグメントであることができる。ここで、タンパク質およびこのフラグメントは、Notch活性阻害能を保持している。フラグメントは、哺乳類Numb配列の少なくとも10個、より好ましくは少なくとも20、30、40または50個の連続アミノ酸を含むことができる。
【0113】
他の実施形態では、阻害剤は、好ましくは、Numbレベルを回復する因子以外の阻害剤である。例えば、阻害剤は、Notch阻害剤であってよく、例えば、Notchに対する抗体などのNotchと結合する薬剤、またはアンチセンス核酸、siRNAもしくはリボザイムなどのNotch核酸阻害剤であってよい。siRNAは、遺伝子転写物に特異的な配列である短い二本鎖RNA分子、または細胞によりsiRNAへと加工されうる、および例えば、DNA配列として細胞に対し提供されうる長いRNA配列(eliRNA、または発現された高分子干渉RNA)であってよい。
【0114】
本発明者がNotchを阻害するのに使用したアンチセンス核酸の一例は:
AACAGCCACTGAACAAGCAGA
である。
【0115】
さらに、低分子阻害剤が使用されることができる。
【0116】
受容体-リガンド相互作用の際、Notchタンパク質は、プレセニリン-1(PS-1)依存性γ-セクレターゼ活性により切断される。これは、核酸へ移動していくつかの転写因子発現を制御する細胞質サブユニットを放出する。
【0117】
したがって、阻害剤は、プレセニリン-1または、より好ましくは、プレセニリン-1(PS-1)依存性γ-セクレターゼ活性を標的にすることもできる。例えば、これは、これらのタンパク質に対する抗体、これらのタンパク質のポリペプチドフラグメント、上述したこれらのタンパク質の核酸阻害剤、またはこのタンパク質の小分子阻害剤であることができる。
【0118】
Numbシグナル伝達の既知の小分子阻害剤は、ペプチド模倣性プレセニリン阻害剤のDFP-AAである。
【0119】
γ-セクレターゼの既知の阻害剤は、GSTである。
【0120】
スクリーニングで同定されたモジュレーターの模倣物は、当分野では既知の、および以下により詳細に説明されている方法のいずれかを用いて同定されることができる。
【0121】
(Numb分解阻害剤のスクリーニング方法)
1つの態様では、本発明は、患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
Numbポリペプチド、およびNumbを分解の標的にすることが可能な酵素を含む試験系を提供することと、
前記試験系を試験薬に接触させることと、
Numbを分解の標的にすることを阻害する試験薬の能力を評価すること
を含む方法に関する。
【0122】
Numbを分解の標的にすることには、細胞に存在する場合、Numbが分解される速度を増加させる、Numbに対するいずれかの酵素作用が含まれる。
【0123】
試験系は、in vitro試験系であってよく、例えば、いくつかの実施形態では、これは、Numbを分解の標的にするのに必要な成分を含むin vitro試験系である。例えば、いくつかの実施形態では、試験系は、遊離ユビキチンを含むことができる。あるいは、試験系は、細胞、好ましくは哺乳類細胞、より好ましくはヒト細胞であることができる。
【0124】
試験は、Numbが試験薬の非存在下で分解の標的にされる、例えば、ユビキチン化される条件下で行われることが好ましい。例えば、試験系が細胞である場合、細胞は、例えば、乳癌細胞などの形質転換細胞であることができる。細胞は、Numbレベルが、対照試料に比べて、例えば、同じ患者由来の正常組織に比べて、低下している細胞であることができる。
【0125】
Numbポリペプチドは、例えば、この単離を可能にするヒスチジンタグにより標識されることができる。
【0126】
該スクリーニング方法に用いるNumbポリペプチドは、哺乳類Numbタンパク質、好ましくはヒトNumbタンパク質であってよく、分解のため特異的に認識され標的にされることができる前記タンパク質のフラグメントまたは変異体であってもよい。フラグメントは、哺乳類Numb配列の少なくとも10個、好ましくは少なくとも20、30、40または50個の連続アミノ酸を含むことができる。変異体は、完全長の哺乳類Numb配列に対し、好ましくはヒト配列に対し、哺乳類Numb配列の完全長に対して評価された、少なくとも70%、80%、90%、95%または99%の同一性を有することができる。
【0127】
アミノ酸配列のパーセンテージ同一性は、市販のアルゴリズムを用いて計算されることができる。以下のプログラム(National Center for Biotechnology Informationにより提供)は、ホモロジーを判定するために使用されることができる:BLAST、ggapped BLAST、BLASTNおよびPST-BLAST。これらは、デフォルトパラメーターにより使用されることができる。
【0128】
試験薬はまたは候補化合物は、分析方法の関連で以下に説明される候補薬剤のいずれかであることができる。試験薬は、例えばNumbタンパク質配列のフラグメント(例えば、酵素による認識をめぐってNumbと競合するフラグメント)、NumbもしくはNumbを分解の標的にすることに関与する酵素に特異的に結合する抗体、または小分子(天然または合成化合物)であることができる。試験系が細胞である場合、薬剤は、アンチセンス配列、siRNAまたはリボザイムなどの、前記酵素の発現を遮断する薬剤であることもできる。
【0129】
スクリーニングで同定された薬剤は、模倣物を設計するために使用されることができ、または以下に説明されるような、患者の癌を治療する方法で使用されることができる。
【0130】
Numbを分解の標的にすることが可能な酵素は、例えば、次いでユビキチン結合酵素により認識されるようにNumbを改変する酵素、またはユビキチン結合酵素であることができる。例えば、酵素は、キナーゼまたはホスホリラーゼであってよく、特にショウジョウバエのセリン/スレオニンキナーゼNAKの哺乳類ホモログであってよい。他の実施形態では、これは、E3リガーゼ、例えば、LNX、Siah-1またはMdm2であることができる。
【0131】
試験薬の、Numbを分解の標的にすることを阻害する能力は、適切な方法のいずれかを用いて評価されることができる。例えば、方法は、Numbタンパク質の改変を判定すること、例えば、Numbポリペプチドのリン酸化状態を判定することを含んでよい。あるいは、またはさらには、方法は、例えば、試験薬の、Numbユビキチン化を阻害する能力を判定するために、Numbポリペプチドのユビキチン化状態を判定することを含むことができる。
【0132】
Numbポリペプチドのユビキチン化状態は、Numbポリペプチドの分子量を評価することで評価されることができる。Numbポリペプチドのユビキチン化状態別を評価する別の方法は、Numbポリペプチドを免疫沈降させ、次いでユビキチンに対する抗体でイムノブロッティングを行うことである。
【0133】
(細胞周期への再進入において調節された遺伝子)
1つの態様では、本発明は、癌の評価指標の提供に使用する遺伝子発現産物の特異的結合パートナーの選択方法であって、
a)最終分化した培養細胞を、細胞周期へ細胞を再進入させる薬剤(好ましくはE1Aタンパク質)と接触させることにより、その発現が調節(例えば、誘導)され、
b)その発現が、哺乳類、例えば、ヒト腫瘍において調節(例えば、増強)される
遺伝子を同定することと、
癌の評価方法において使用するために、前記遺伝子の発現産物に対する特異的結合パートナーを選択すること
を含む方法を提供する。
【0134】
1つの実施態様では、方法は、
最終分化した培養細胞を、細胞周期へ細胞を再進入させる薬剤(好ましくは、E1Aタンパク質)と接触させることにより、その発現が調節(例えば、誘導)される遺伝子を同定することと、
癌の評価方法において使用するために、前記遺伝子の発現産物に対する特異的結合パートナーを選択すること
を含む方法を提供する。
【0135】
最終分化細胞は、哺乳類細胞であることができ、より好ましくは霊長類またはげっ歯類細胞、例えば、ヒト細胞またはマウス細胞である。
【0136】
最終分化細胞には、最終分化した筋小管、ニューロンおよび脂肪細胞が含まれる。
【0137】
方法は、前記細胞を、細胞の細胞周期への再進入を引き起こす薬剤と接触させること、および、その発現がそれに応じて調節される、少なくとも1つの遺伝子を同定することを含むことができる。細胞周期への再進入を引き起こす薬剤は、ウイルスタンパク質(すなわち、ウイルスゲノムによりコードされたタンパク質)または非ウイルス(例えば、哺乳類)タンパク質であることができる。細胞は、当技術分野では既知の方法のいずれかに従い、例えば、該タンパク質をコードする核酸による細胞の形質転換により、該タンパク質と接触されうる。特に、該タンパク質が、ウイルスゲノムによりコードされている場合、方法は、細胞を、細胞周期への再進入を引き起こすことが可能な薬剤をコードする核酸配列を含むウイルス(例えば、アデノウイルス、パピローマウイルスまたはSV40)に感染させること、例えば細胞を、E1Aタンパク質をコードする核酸配列を含むアデノウイルスと接触させること含むことができる。
【0138】
細胞周期への再進入を引き起こすことが可能な薬剤と接触された細胞、および/またはヒト腫瘍における遺伝子発現の調節は、当技術分野では既知の方法のいずれかにより、例えば、cDNAサブトラクション法により、もしくは例えば、アフィメトリックスGeneChip法を用いた遺伝子プロファイリング試験により、判定されることができる。当分野の技術者には明らかなように、適切な対照が使用される。
【0139】
2個を超える遺伝子、場合によっては3、4、5、6、7、8、9、または10個を超える遺伝子が同定され、前記各遺伝子の発現産物に対する特異的結合パートナーが選択されることが好ましい場合がある。
【0140】
いくつかの実施形態では、方法は、特異的結合パートナーを選択する前にさらなる工程を含む。例えば、方法は、細胞周期への再進入を引き起こすことが可能な因子により誘導された複数の遺伝子を同定することと、これらの遺伝子から以下を選択することを含む:その発現が、ヒト腫瘍において最大倍に調節されているこれらの遺伝子、例えば、その発現が、少なくとも1.5もしくは2倍に調節されているもの、および/または、例えば、leave-one-outクロスバリデーション法などの統計的アルゴリズムを用いて、患者の予後と最も強く相関するこれらの遺伝子。
【0141】
E1Aとは、最終分化細胞の細胞周期への再進入を誘導することが可能な、アデノウイルスのE1A発現産物のいずれかを指すことが意図される。好ましくは、これは、E1A 12S mRNA産物(短いスプライシング変異体)、または生物活性を保持する、このフラグメントもしくは変異体を指している。
【0142】
好ましくは、方法は、発現が、細胞の細胞周期への再進入と同時に、経時的に調節される遺伝子の同定を含む。例えば、方法は、細胞周期への再進入を引き起こす薬剤との接触後24〜72時間以内に調節され、好ましくは36時間以内に、その発現が調節される遺伝子の同定を含むことができる。好ましい遺伝子は、後期に調節(例えば、後期に誘導)されるもの、例えば、発現が、より多くは24時間よりも24時間〜36時間で調節されるものであることができる。好ましい遺伝子は、24時間および36時間の発光量比(例えば、転写産物の)が、0.4未満の比であるものであることができる。
【0143】
本発明者は、E1A調節に基づき最初に事前選択された遺伝子セットにおけるこのような方法を用いて、癌の進行(例えば、死または転移)のリスクの良好な予測因子が生成できることを見出した。
【0144】
いくつかの実施形態では、方法は、同じシグナル伝達経路に属する2種類の遺伝子を同定することを含む。
【0145】
例えば、これは、細胞周期への再進入を引き起こす薬剤のシグナル伝達下流で関与することが知られている少なくとも1つの因子に対し、該遺伝子が依存性または非依存性を共有するか否かを判定することを含む。細胞周期への再進入を引き起こす薬剤が、E1Aである場合、好ましくは、この因子は、RB(網膜芽細胞腫腫瘍サプレッサー遺伝子産物)などのポケットタンパク質である。
【0146】
ポケットタンパク質は、「ポケットドメイン」(Ferreiraら、1998年)と呼ばれるドメインを介してE2Fファミリーメンバーを制御する、p105、p107およびp130(RB)である。
【0147】
E1Aポケット結合変異体は、ポケットタンパク質に結合することができない、E1Aの変異体バージョンである。
【0148】
方法は、いくつかの実施形態では、因子を、例えば、ポケットタンパク質を活性化または不活化することを含むことができる。不活化は、siRNAまたはアンチセンス阻害により、場合によっては、誘導性siRNAもしくはアンチセンス阻害により、抗体などタンパク質の特異的阻害剤の使用により、またはCREリコンビナーゼの使用によりなることができる。活性化は、例えば、ベクター由来のタンパク質発現によってなることができる。
【0149】
本発明の様々な態様および実施形態では、1種または複数種の遺伝子とは、発現が、ポケットタンパク質、例えば、RBの不活化により強くは調節されず、発現が、E1Aポケット結合変異体により著しく調節されることを指している。このクラスに属する遺伝子が、本発明の態様および実施形態では好ましい場合がある。
【0150】
「強く調節された」とは、好ましくは、野生型E1Aを用いて観察されたものの少なくとも60%の調節を指す。(故に、「強くは調節されない」とは、好ましくは、野生型E1Aを用いて観察されたものの60%未満の調節を指す)。「著しい調節」および「著しく調節された」とは、好ましくは、野生型E1Aを用いて観察されたものの少なくとも40%の調節を指し、故に「著しくは調節されない」とは、好ましくは、野生型E1Aを用いて観察されたものの40%未満の調節を指す。
【0151】
遺伝子が、強く調節されている、または著しく調節されているか否かは、これらの条件下の調節レベルを、E1Aによる調節レベルと比較することで判定されることができる(例えば、上記に記載の通り)。遺伝子が、後期または早期に制御されるか否かは、24時間目のこの調節レベルを、36時間目のこの調節レベルと比較することで評価されることができる。この比較は、遺伝子の調節量(fold modulation)を、調節比として表されることができる。この比の測定方法は、当業者には明らかであるが、代表的な条件は、以下の通りとなることができる。
【0152】
調節は、TDマウス筋小管で確認されることができる。調節は、転写レベルの測定、例えば、Q-RT-PCRを用いて測定されることができる。
【0153】
細胞は、野生型E1Aによって引き起こされた調節のレベルを確認するため、アデノウイルスdl520など、E1Aの12S mRNAのみを発現するアデノウイルスによりトランスフェクトされることができる。
【0154】
調節量は、対照として、Dl312、および例えば、GAPDHなどの標準遺伝子のような、(E1Aを発現していないアデノウイルスにより感染された)疑似感染筋小管を準拠して計算されることができる。本実験で使用された細胞はすべて、同じ培養条件で保持されるべきである。当業者は、他の詳細については本実施例を参照することができる。さらに、本出願の実施例で使用されている代表的プロトコルは、以下の通りである。
【0155】
全RNAは、トリアゾール法(Invitrogen)により単離される。2μgのRNAは、ランダムヘキサマー100ngを用いて、逆転写反応(SUPERSCRIPT II、Invitrogen)において使用される。10分の1ngのcDNAは、10pMolの各遺伝子特異的プライマーおよびSYBR-green PCR MasterMix(Applied Biosystems)により、反応量20μL中で3組ずつ増幅される。
【0156】
リアルタイムPCRは、95℃で10分間のプレPCR工程、次いで95℃15秒間および60℃60秒間の40サイクルにより、ABI/Prism 7700配列検出システム(Perkin-Elmer/Applied Biosystems)において実施される。増幅産物の特異性は、融解曲線分析(DISSOCIATION CURVE(商標)Perkin-Elmer/Applied Biosystems)および6% PAGEにより確認される。逆転写酵素を用いないRNAテンプレートによる調製は、陰性対照として使用される。試料は、各遺伝子に対する、およびハウスキーピング遺伝子としてのGAPDH遺伝子(rRNA 18Sおよびベータアクチンを含む、他のハウスキーピング遺伝子も使用されることができ、同等の結果が得られる)に対するプライマーにより増幅される。Ct値は、GAPDH曲線に対して標準化され、各遺伝子の相対的発現は、疑似(dl312)感染筋小管に対する比として表される。
【0157】
ポケットタンパク質の不活化により強くは調節(例えば、誘導)されない遺伝子は、野生型E1Aによる調節に比べて、ポケットタンパク質不活化による0.6未満の調節比を有することができる。遺伝子は、Rbなどのポケットタンパク質の不活化により著しくは調節されないことが好ましい可能性がある。この場合、遺伝子は、野生型E1Aによる調節に比べて、ポケットタンパク質(例えば、Rb)不活化による0.4未満の調節比を有することができる。ポケットタンパク質、例えば、Rbをコードする遺伝子は、ポケットタンパク質の不活化により引き起こされた調節レベルを確認するため、CREにより除去されることができる。ポケットタンパク質配列、例えば、Rb配列は、フロックスされる(floxed)ことができる。
【0158】
YH47/DL928などのE1Aポケット結合変異体により著しく調節(例えば、誘導)される遺伝子は、このような変異体との接触と野生型E1Aとの接触の間に、少なくとも0.4の発光量比を有することができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、ポケットタンパク質により十分には誘導されず、E1Aポケット結合タンパク質変異体により著しく調節される、1種または複数種の遺伝子も、以下の基準のどちらかまたは両方を満たすことが好ましい場合がある:
これらは、上記に規定された、後期に調節される遺伝子である;および/または
これらは、E2F1過剰発現により著しくは調節されない。
【0160】
後期誘導遺伝子は、24時間目および36時間目の発光量比(例えば、転写の)の間で、0.4未満の比(すなわち、40%誘導)を有するものであってよい。これは、E1Aの12S mRNAを含むアデノウイルスに感染された細胞において評価されることができる。比は、実施例に設定されている通りに評価されることができる。
【0161】
E2F1過剰発現により著しくは調節(例えば、誘導)されない遺伝子は、野生型E1Aと比較してE2F1過剰発現時に40%未満を示すものであってよい。E2F1過剰発現は、CMVプロモーター制御下で、細胞をE2F1でトランスフェクトすることで得られることができる。例えば、これは、Pajalunngaら(1998年)およびDeGregori(1997年)において記載されている、Ad-E2F1アデノウイルス感染(MOI 300)により細胞を感染させることで得られることができる。
【0162】
(分析方法)
特定の態様では、本発明は、タンパク質を試験薬または候補調節因子と接触させ、前記試験薬が、タンパク質と結合および/またはタンパク質の活性を調節することが可能か否かを判定する工程を含む方法を提供する。
【0163】
分析で使用されるタンパク質は、哺乳類タンパク質、好ましくはヒトタンパク質であることができる。これは、完全長の哺乳類タンパク質のフラグメントまたは変異体でもあることができる。好ましいフラグメントおよび変異体は、哺乳類タンパク質の活性を保持するものである。フラグメントは、哺乳類タンパク質配列の少なくとも10個、より好ましくは、少なくとも20、30、40または50個の連続アミノ酸配列を含むことができる。変異体は、完全長の哺乳類配列に対し、好ましくはヒト配列に対し、哺乳類配列の完全長に対して評価された、少なくとも70%、80%、90%、95%または99%の同一性を有することができる。
【0164】
アミノ酸配列のパーセンテージ同一性は、市販のアルゴリズムを用いて計算されることができる。以下のプログラム(National Center for Biotechnology Informationにより提供)は、ホモロジーを判定するために使用されることができる:BLAST、ggapped BLAST、BLASTNおよびPST-BLAST。これらは、デフォルトパラメーターにより使用されることができる。
【0165】
分析に使用するタンパク質は、異種配列、例えば、タンパク質の単離および/または固定化を可能にする配列に対して融合されることができる。
【0166】
試験薬の、タンパク質に結合する能力は、当技術分野では既知の方法のいずれかにより評価されることができる。結合分析は、競合的または非競合的であってよい。
【0167】
分析方法は、試験薬が、タンパク質を阻害することが可能か否かの判定、または試験薬が、タンパク質を活性化することが可能か否かを判定することを含むことができる。
【0168】
遺伝子発現が、ヒト腫瘍においてダウンレギュレートされている場合、分析は、好ましくはタンパク質の活性化因子を対象とし、分析は、好ましくは、試験薬が、タンパク質活性を増加させることが可能か否かを判定することを含む。この実施形態では、分析は、タンパク質が、通常は低い活性を示すまたは活性を示さない条件下で行われることができる。
【0169】
遺伝子発現が、腫瘍においてアップレギュレートされている場合、分析は、好ましくはタンパク質活性の阻害因子を対象とし、分析は、好ましくは、試験薬が、タンパク質活性を低下させることが可能か否かを判定することを含む。この実施形態では、分析は、タンパク質が、通常は活性である条件下で行われることができる。
【0170】
活性の調節の判定は、分析されるタンパク質の性質に依存するであろう。例えば、酵素機能を伴うタンパク質は、活性を調節可能な試験薬の存在が基質の速いまたは遅い代謝ターンオーバーをもたらすように、酵素基質の存在下で評価されることができる。基質は、酵素の天然基質または合成類似体であることができる。どちらの場合でも、基質は検出可能な標識により標識され、最終産物への基質の変換をモニターされることができる。
【0171】
受容体など、リガンド結合機能を伴うタンパク質に関しては、試験薬は、リガンド結合特性の拮抗作用または作動作用をもたらす方法で、リガンド結合機能について検討されることができる。
【0172】
転写調節因子など、DNA結合活性を伴うタンパク質に関しては、DNA結合または転写活性化能が判定されることができ、ここで、調節因子は、このような活性を増強または低下させることができる。例えば、DNA結合は、移動度シフトアッセイにおいて判定されることができる。あるいは、タンパク質が結合するDNA領域は、遺伝子の転写が判定され、この転写の調節が、これが生じている場合に見られるように、レポーター遺伝子(およびさらに、必要であれば、前記DNA領域およびレポーター遺伝子の間のプロモーター領域および/または転写開始領域)に操作可能に結合されることができる。適切なレポーター遺伝子には、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、またはより好ましくは、緑色蛍光タンパク質などの蛍光レポーター遺伝子が含まれる。
【0173】
試験薬は、薬剤スクリーニングで使用される天然または合成化合物であることができる。特性が明らかなもしくは明らかでない成分を含有する、植物の抽出物、微生物または他の生物もまた、使用されることができる。コンビナトリアルライブラリー技術(固相合成法およびパラレル合成法を含む)は、膨大な数になる可能性のある様々な基質の、相互作用を調節する能力を試験する効率の良い方法を提供する。このようなライブラリーおよびこの使用は、天然産物、とりわけ小分子およびペプチドのすべての様式に関しては当技術分野で知られている。多くのこうしたライブラリーは、市販されており、本発明により今後想定されるタイプの薬剤スクリーニングプログラム用に販売されている。
【0174】
試験薬または候補分子のさらなるクラスは、上述の、抗体またはタンパク質標的に結合するこの結合フラグメントである。
【0175】
試験薬の別のクラスは、調節されるタンパク質配列のフラグメントに基づくペプチドである。特に、他のタンパク質またはDNAと相互作用するタンパク質の部分に相当する、タンパク質のフラグメントは、タンパク質機能の競合的阻害剤として働く小ペプチドの標的となることができる。こうしたペプチドは、例えば5から20個のアミノ酸長であってよい。
【0176】
ペプチドは、以下により詳細に説明されている通り、模倣物の設計基盤も提供する。他の態様では、本発明は、形質転換培養細胞を提供し、試験薬が、遺伝子転写物レベルを調節(阻害または活性化)することが可能か否かを判定する工程を含む方法を提供する。
【0177】
このような方法では、形質転換細胞は、例えば、ヒト被験者から単離された腫瘍細胞であってよく、または形質転換剤もしくは最終分化細胞の細胞周期への再進入を引き起こす薬剤と接触させられた細胞であってよい。例えば、細胞は、例えば、細胞をアデノウイルスに感染させることで、上記に記載の通りE1Aタンパク質に接触させられた細胞であることができる。細胞は、最終分化細胞であることができる。
【0178】
細胞ベースの分析方法は、転写レベルまたは翻訳レベルで遺伝子発現を判定するために構成されることができる。転写物が測定される場合、これは、例えば、遺伝子チップで、多重PCRなどにより、上記に記載された方法を用いて判定されることができる。
【0179】
上記の通り、転写物は、腫瘍においてダウンレギュレートされるものであり、分析は、好ましくは遺伝子発現を(例えば、転写物量を増加させることで)増加させる薬剤が対象となる。このような薬剤は、遺伝子自体のコード配列を含むことができる(すなわち、遺伝子治療ベクターであることができる)。転写物が、ヒト腫瘍においてアップレギュレートされるものである場合、分析は、好ましくは遺伝子発現を減少させる薬剤が対象となる。
【0180】
細胞ベースの分析方法は、上記に記載された種類の薬剤を試験するために使用されることができる。これらは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、試験薬/候補分子のさらなるクラスをスクリーニングするために使用されることもできる。このようなオリゴヌクレオチドは、一般的には、12〜25ヌクレオチド長、例えば、約15〜20ヌクレオチド長であり、オリゴヌクレオチドの安定化を助けるため、例えば、メチルホスホン酸骨格およびホスホロチオアート骨格など、修飾された骨格構造を含む、またはそれからなることができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的遺伝子のコード領域、または5'もしくは3'未翻訳領域由来であることができる。試験薬は、さらに、RNAi、すなわち、遺伝子転写物に特異的な配列である短い二本鎖RNA分子を含む。これらは、転写物のmRNAを特異的に標的するリボザイム、すなわち、特定の核酸配列の他のRNA分子を切断する触媒RNA分子も含むことができる。リボザイムの一般的な構築方法は、当技術分野で知られている。
【0181】
本発明によって得られた薬剤は、患者の癌の治療方法で使用されることができる。一般にモジュレーターは、被験者に対する選択された投与経路に適した、1種または複数種の薬学的に許容可能なキャリアにより製剤化されるであろう。固体組成物では、従来型の非毒性固体キャリアには、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが含まれ、使用されることができる。薬学的に投与可能な液体組成物は、例えば水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどのキャリア中で、モジュレーターおよび任意の補助薬を溶解、分散させ、これにより溶液または懸濁液を形成することで、例えば調製されることができる。所望であれば、投与される薬学的組成物は、例えば酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミンオレエートといった、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など少量の非毒性補助剤も含有することができる。こうした投与形態の実際の調製方法は、当業者に公知または明白であろう。例えばRemington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、第15版、1975年参照。投与される組成物または製剤は、いずれにせよ治療中の被験者の症状を緩和するのに有効な量において活性化合物量を含有するであろう。
【0182】
投与経路は、治療中の詳細な条件に依存することができる。
【0183】
癌を治療する方法に使用されることができる、SKIN活性または発現の阻害剤は、上述の薬剤のいずれかであることができる。
【0184】
(模倣剤の設計)
候補物質が、本発明による分析およびスクリーニングで見出された場合、これらは、薬剤として開発する模倣化合物を設計するのに使用されることができる。公知の薬学的に有効な化合物に対する模倣剤の設計は、「リード」化合物に基づく医薬品開発の公知のアプローチである。これは、活性化合物が、合成するのが困難もしくは高額な場合、または特定の投与方法に不適の場合(例えば、ペプチドは、消化管でプロテアーゼにより急速に分解される傾向があるため、経口組成物に不適な活性化合物である)に、望ましい場合がある。模倣物の設計、合成および試験は、一般に、標的特性について多数の分子を無作為にスクリーニングすることを回避するために使用される。
【0185】
特定の標的特性を有する化合物由来の模倣物の設計には、一般に行われるいくつかの工程がある。まず、標的特性の判定に必須および/重要な化合物の特定部分が判定される。ペプチドの場合、これは、ペプチド中のアミノ酸残基を系統的に変化させて、例えば、各残基を順に置換して行われることができる。化合物の活性領域を構成するこれらの部分または残基は、この「ファーマコフォア」として知られる。
【0186】
ファーマコフォアが発見された場合、この構造は、例えば、分光技術、X線回折データおよびNMRなど、一連のソースからのデータを用いて、例えば、立体化学、結合性、サイズおよび/または電荷など、この物理特性に従いモデリングされる。コンピュータ分析、(原子間の結合性ではなく、ファーマコフォアの電荷および/または容積をモデルとする)相似性マッピングおよび他の技術は、このモデリング処理に使用されることができる。
【0187】
このアプローチの変種では、リガンドおよびこの結合パートナーの3次元構造が、モデリングされる。これは、リガンドおよび/または結合パートナーが、結合時に高次構造を変化させる場合特に有用であり、模倣物の設計において、これを考慮したモデルを可能にすることができる。
【0188】
次いで、ファーマコフォアを模倣する化学基をグラフトすることができる鋳型分子を選択する。鋳型分子およびこれにグラフトされた化学基は、便利には、模倣物が、リード化合物の生物活性を保持しつつ、合成しやすく、薬学的に許容可能に思われ、in vivoで分解されないように選択されることができる。このアプローチにより見出された1種または複数種の模倣物は、次いでスクリーニングされ、これらが標的特性を有しているか、またはこれらが標的特性をどの程度示すかを確認することができる。次いで、さらなる最適化または改変が行われ、in vivo試験または臨床試験用の1種または複数種の最終模倣物に到達することができる。
【0189】
(タンパク質、遺伝子または転写物レベルの判定)
本明細書に言及されている遺伝子発現産物は、タンパク質または転写物(すなわち、遺伝子により発現されたRNA分子)であることができる。
【0190】
タンパク質、遺伝子または転写物レベルの判定は、当技術分野で公知の方法のいずれかにより行われることができる。
【0191】
例えば、タンパク質レベルの評価に適した方法には、免疫組織化学法(例えば、免疫蛍光法)、ウェスタンブロット法、およびELISA(酵素免疫吸着測定法)などの固相法が含まれる。
【0192】
免疫組織化学法を用いる場合、タンパク質レベルの評価は、標識(例えば、染色または蛍光)を示す細胞の割合を判定して行われることができる。
【0193】
転写物レベルは、例えば、ハイブリダイゼーションを示す細胞の割合の評価を伴うin situハイブリダイゼーションにより判定されることができる。
【0194】
あるいは、またはさらに、定量PCR法は、例えば、当技術分野で幅広く使用されているABI TaqMan(商標)技術を基に使用されることができる。これは、先行技術の公報のいくつかに説明されており、例えば、WO00/05409などを参照することができる。PCR法は、適度に距離が離れた(一般的には50〜300塩基)標的遺伝子の逆鎖を標的にするプライマーペアを必要とする。プライマーに適した標的配列は、Genbank配列を参照して判定されることができる。
【0195】
多数の異なる遺伝子転写物が調べられる場合、便利な方法は、試料を、定量PCR法に基づき、遺伝子チップアレイおよび/またはマイクロ流体カード(Low density array)にハイブリダイズする(直接またはcDNAもしくはcRNAの生成後)ことによりなる。
【0196】
遺伝子チップ技術が使用される場合、遺伝子は、アフィメトリックスから市販されているチップに含まれており、これらのチップは、メーカーのプロトコルに従って使用されることができる。一般に、マイクロアレイを提供する方法およびこの使用は、例えば、WO84/01031、WO88/1058、WO89/01157、WO93/8472、WO95/18376、WO95/18377、WO95/24649およびEP-A-0373203において見ることもでき、当技術分野のこれおよび他の文献を参照することもできる。
【0197】
マイクロ流体カード技術が使用される場合、遺伝子は、Low Density Arrayとしても知られる、Applied Biosystemから市販されているマイクロ流体カードに含まれうる。これらのカードは、メーカーのプロトコルに従って使用されることができる。
【0198】
TaqMan(登録商標)Low Density Arrayは、リアルタイムPCRベースの定量的遺伝子発現アプリケーション(ABI TaqMan(商標)技術)用の、カスタマイズ可能な、使いやすい、384ウェルのマイクロ流体カードである。ヒト、マウス、およびラット遺伝子を網羅する、40,000を超えるインベントリーを有するTaqMan(登録商標)アッセイは、商業的に入手可能である。
【0199】
マイクロ流体技術は、8つの試料添加口を使用する。これらは、それぞれが48個の反応ウェルにつながっている。
【0200】
384ウェルTaqMan(登録商標)アレイは、Applied Biosystems 7900HT Fast Real Time PCR Systemにおいて実行される。
【0201】
遺伝子のコピー数は、例えば、蛍光標識(FISH)などで標識されることができる核酸プローブによるin situハイブリダイゼーション(ISH)、またはゲノムDNAのPCRを含む、当技術分野で公知の方法を用いて判定されることができる。
【0202】
(参照または対照試料)
本発明の方法が、患者から得られた分析試料の遺伝子状態の判定および/または遺伝子発現産物レベルを判定することを含む場合、方法は、この試料において行われた判定と、参照または対照試料において行われた判定と比較することを含むこともできる。
【0203】
上記方法の参照または対照試料は、正常(未病)細胞、好ましくは分析試料と同じ種類の細胞の試料であってよい。あるいは、試料は、癌に罹患した細胞、好ましくは患者と同じ種類の癌または患者と同じ種類の癌であることが疑われる癌の試料であってよい。
【0204】
目的が、癌の侵襲性の異なる状態または異なるレベル間の識別である場合(例えば、予後方法において)、対照試料は、好ましくは関心のある状態の1つを有する腫瘍細胞から採取されることができる。例えば、対照試料は、転移性腫瘍の腫瘍から採取された試料であってよく、あるいは非転移性腫瘍から採取された試料であってよい。大腸癌では、対照試料は、1つまたは複数の過形成性ポリープ、アデノーマおよび癌腫から採取されてよい。一般に、対照試料は、癌の有無に関連した細胞タイプ由来の、および/または良好なもしくは不良な予後を伴う腫瘍由来の細胞試料であってよい。
【0205】
対照試料は、患者、もう1人の被験者または被験者集団から得られることができる。被験者集団が用いられる場合、比較は、前記集団由来の細胞試料におけるアベレージ(例えば、平均値または中央値)により行われることができる。
【0206】
同一の患者由来の正常組織を対照に用いる1つの利点は、個体差を説明する点にある。対照が、もう1人の患者由来(正常または罹患組織)である場合、これは、患者集団に基づく結果が、好ましい場合があることの理由にもなりうる。
【0207】
いくつかの実施形態では、方法は、1つを超える対照の使用を含むことができる。例えば、試験試料は、同じ患者由来の正常試料、およびもう1人の患者または複数の患者由来の罹患試料の転写物レベルと比較されることができる。別の実施例では、試験試料は、1種または複数種の転移性腫瘍由来の試料、および1種または複数種の非転移性腫瘍由来の試料と比較されることができる。
【0208】
分析試料が、患者から得られた罹患組織の試料である場合、対照試料は、経時的記録を提供するため、初期の時点で該患者から得られることが好ましい可能性がある。1つの実施形態では、これは、状態の進行の経時的なモニタリング評価を可能にする。
【0209】
別の実施形態では、これは、特定の治療の有効性評価を可能にする。1人の患者における状態の重篤度を2つの時点で比較することで、特定の治療レジメンが、積極的な効果を有するか否かを判定することができる。任意の1つのレジメンの有効性は、患者ごとに、または疾患経過において異なる可能性がある。
【0210】
対照試料における遺伝子状態との比較、または遺伝子発現産物レベルとの比較は、当然、以前に判定されたデータとの比較であってよく、対照試料の分析工程を含む必要はない。
【0211】
(特異的結合パートナーおよびキット)
タンパク質に対する特異的結合パートナーは、以下に規定された抗体であることができ、好ましくはモノクローナル抗体である。抗体は、検出可能に標識されることができる。
【0212】
遺伝子発現産物が、転写物である場合、特異的結合パートナーは、前記転写物に特異的にハイブリダイズすることが可能な核酸配列であることができる。核酸配列は、検出可能に標識されることができる。これは、例えば、定量PCRでは、プライマーであることができる。
【0213】
「特異的」とは、複合体混合物中の転写物またはタンパク質の検出に適した結合パートナーを意味する。結合パートナーは、同じ種における他の転写物/タンパク質より優先的に遺伝子発現産物に結合することができ、他のタンパク質または転写物に対する結合親和性を持たない、または実質的に持たない可能性がある。転写物の場合では、転写物は、好ましくは、少なくとも、厳密なハイブリダイゼーション条件下で、混合物中の標的転写物を他の転写物と識別することが可能である。
【0214】
様々な態様では、本発明は、遺伝子発現産物に対する特異的結合パートナーを含むキットに関する。いくつかの実施形態では、特異的結合パートナーは、固体担体に固定されることができる。
【0215】
特異的結合パートナーが抗体である場合、キットは、さらに、タンパク質とこの特異的結合パートナーとの間の複合体に結合可能な、検出可能に標識された部分を含むことができる。さらにまたはあるいは、キットは、1種または複数種の以下の試薬を含むことができる:
a)パラホルムアルデヒドなど、組織を固定する試薬、
b)固定時に細胞抗体を「アンマスク」する試薬(EDTAベースの溶液またはクエン酸緩衝液)、および/または
c)一次抗体または二次部分(例えば、二次抗体)に結合した酵素活性を明らかにする検出システム(ここで、標識は、ペルオキシダーゼなどの酵素である)。
【0216】
例えば、キットは、免疫組織化学法用であることができ、検出されるタンパク質に結合可能な一次抗体、および前記一次抗体に結合可能な、標識された二次抗体を含むことができる。
【0217】
あるいは、キットは、検出されるタンパク質と結合可能な固定された一次抗体、および該一次抗体に結合される場合、該タンパク質と結合可能な標識された二次抗体を含むことができる。
【0218】
標識は、放射性、蛍光、化学発光または酵素標識であることができる。放射性標識は、シンチレーションカウンターまたは他の放射線計測装置を用いて検出されることができ、蛍光標識は、レーザー共焦点顕微鏡を用いて検出されることができ、酵素標識は、一般的には基質における酵素標識作用により色変化を発生させることにより検出されることができる。結合反応および任意の必要な単離工程が行われた後、分析結果は、酵素を、色変化などの観察可能な結果をもたらすために作用することができる基質と接触させて得られる。この程度は、試料中の元々の分析物量に依存する。適切な酵素標識は、比色分析的、蛍光分析的、化学発光的または電気化学的変化などの検出可能な変化をもたらし、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼのほか、リゾチーム(例えば、マイクロコッカスリゾディクティクス(microccocus lysodeikticus)などの生物の溶解により検出可能)、キモトリプシン、およびE.coli DNAポリメラーゼを含むことができる。
【0219】
他に可能性のある標識としては、高分子コロイド粒子または着色されたラテックスビーズなどの微粒子物質、磁性体または常磁性体、および目視され、電子的に検出もしくは記録される検出可能なシグナルを直接的もしくは間接的にもたらすことができる生物学的または化学的活性剤がある。これらの分子は、例えば、色を発生もしくは変化させ、または電気特性の変化を引き起こす反応を触媒する酵素であることができる。これらは、エネルギー状態間の電子遷移が、特徴あるスペクトル吸収または放射をもたらすように、分子的に励起可能であることができる。これらは、バイオセンサーと併用して用いられる化学物質を含むことができる。
【0220】
他の方法は、表面プラスモン共鳴、凝集、光散乱または他の手段などの物理的方法を含め、タンパク質と抗体間の相互作用の検出に使用されることもできる。
【0221】
別の実施形態では、キットは、RNA試料または患者由来ゲノムDNAのPCR分析用プライマー、すなわち、問題の遺伝子のRNA発現産物、または遺伝子自体にハイブリダイズ可能であり、およびエクステンションプライマーとして作用可能なプライマーを含むことができる。場合によっては、PCRは、定量PCRであることができる。
【0222】
他の実施形態では、キットは、遺伝子チップアレイであることができる。この場合、これは、少なくとも1つの前記転写物に特異的な対照、場合によっては遺伝子チップに対する少なくとも1つの対照を含むことが好ましい。
【0223】
別の実施形態では、キットは、遺伝子コピー数の変化または他の遺伝子変化に関するFISH分析のためのプローブを含むことができる。
【0224】
上記に検討された条件の評価に使用する、比較的小さな遺伝子セットの同定は、本発明における使用に適するように特別に設計された小型チップの提供を可能にする。
【0225】
望ましくは、アレイの配列数は、マーカー転写物の検出に適した核酸数が、n個である場合、個々の転写物に特異的な対照核酸数は、n'個であるようなものとなろう。ここで、n'は、0〜2nであり、前記遺伝子チップにおける対照核酸数(例えば、「ハウスキーピング」転写物、評価中の細胞タイプで通常、高レベルを有する転写物などを検出するための)は、mである。ここで、mは、0〜100であり、好ましくは1〜30であり、n+n'は、少なくとも50%、好ましくは75%、およびより好ましくは少なくとも90%の前記チップにおける核酸を表している。
【0226】
(抗体)
抗体の生成方法は、当技術分野で公知である。好ましい抗体は、他のポリペプチドに結合可能な抗体などの混入物を含まないおよび/または血清成分を含まないという意味で、単離される。モノクローナル抗体は、いくつかの目的については好ましいが、ポリクローナル抗体は、本発明の範囲内である。
【0227】
キットが、複数の抗体を含む場合、これらの抗体は、上記の単離された抗体の混合物であることが好ましい。
【0228】
抗体は、当技術分野の標準的な方法を用いて得られることができる。抗体の生成方法には、本発明のポリペプチドによる哺乳類(例えば、マウス、ラット、ウサギ)の免疫化が含まれる。抗体は、当技術分野で公知の様々な方法のいずれかを用いて、免疫された動物から得られることができ、好ましくは関心のある抗原に抗体を結合させることにより、スクリーニングされる。例えば、ウェスタンブロット法または免疫沈降法が、使用されることができる(Armitageら、Nature、357:80〜82頁、1992年)。
【0229】
ペプチドにより動物を免疫する代替または補足として、タンパク質の特異抗体は、発現免疫グロブリン可変領域の、組換えにより作製されたライブラリーから、例えば、表面に機能的免疫グロブリン結合領域を提示するラムダバクテリオファージまたは糸状バクテリオファージを用いて得られることができる。例えば、WO92/01047参照。
【0230】
本発明による抗体は、いくつかの方法で改変されることができる。事実、「抗体」という用語は、求められる特異性を伴う結合領域を有する任意の結合物質を網羅するものと解釈されるべきである。これは、例えば、合成分子、ならびに形状が、抗原またはエピトープへの結合を可能にする抗体の形状を模倣する分子を含め、抗体フラグメント、誘導体、機能的同等物および抗体ホモログなどがある。
【0231】
抗体または他の結合パートナーと結合可能な、例となる抗体フラグメントは、VL、VH、C1ならびにCH1領域からなるFabフラグメント、VHおよびCH1領域からなるFdフラグメント、抗体の単腕のVLならびにVH領域からなるFvフラグメント、1個のVH領域からなるdAbフラグメント、単離されたCDR領域、およびヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合された2つのFabフラグメントを含む、二価のフラグメントである、F(ab')2フラグメントである。単鎖Fvフラグメントも含められる。
【0232】
ヒト以外の親抗体より免疫原性の少ない抗体を提供するため、ヒト以外のソース由来のCDRが、一般的にはいくつかのフレームワークアミノ酸残基の変化を伴って、ヒトのフレームワーク領域にグラフトされる場合のヒト化抗体も、本発明の中に含められる。
【0233】
(SKIN用ベクターおよび抗体)
癌のマーカーとしても治療標的としても有用なタンパク質として、本明細書で同定されたタンパク質SKINは、これまで機能を持っていなかった。
【0234】
これは、上述された本発明の態様に有用なSKINタンパク質に特異的な抗体の基準を提供するものであり、このような抗体は、本発明のさらなる態様である。
【0235】
これはまた、上述された本発明の態様のほか、本明細書の以下に記載されているさらなる態様に有用な、新規ベクターシステムの基準も提供する。
【0236】
好ましくは、SKIN転写物の配列または前記転写物に相補的な配列(例えば、アンチセンス配列)は、宿主細胞によるコード配列(例えば、前記転写物をコードするDNA配列)の発現を実現可能な対照配列に、操作可能に結合される。すなわち、ベクターは、発現ベクターである。
【0237】
「操作可能に結合された」という用語は、説明された成分が、意図された様式で機能できる関係にある並置を指す。コード配列に「操作可能に結合された」対照配列は、コード配列の発現が、対照配列に適合する条件下で実現されるように連結される。
【0238】
適切な宿主には、細菌、哺乳類および酵母などの真核細胞、およびバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドの発現に対して当技術分野で利用可能な哺乳類細胞系には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎細胞、COS細胞ほか多数が含まれる。
【0239】
ベクターは、
挿入された核酸の発現を促すプロモーターまたはエンハンサーなどの他の配列、
融合体としてポリペプチドが生成されるような核酸配列、および/または
宿主細胞で生成されたポリペプチドが、該細胞から分泌されるような分泌シグナルをコードする核酸配列
を含むことができる。
【0240】
ベクターは、1種または複数種の選択可能なマーカー遺伝子、例えば、細菌プラスミドの場合はアンピシリン耐性遺伝子、または哺乳類ベクターに対してはネオマイシン耐性を含有することができる。
【0241】
ベクターは、さらに、エンハンサー配列、ターミネーターフラグメント、ポリアデニル化配列および必要に応じて他の配列を含むことができる。
【0242】
ベクターは、例えば、RNA生成のため、または宿主細胞をトランスフェクトまたは形質転換するため、in vitroで使用されることができる。ベクターは、例えば、遺伝子療法の方法において、in vivoで使用されるために適合されることもできる。様々に異なる宿主細胞でポリペプチドをクローニングおよび発現するためのシステムは、よく知られている。ベクターには、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス(HIVもしくはMLVなど)またはアルファウイルスベクターに基づくベクターなどの遺伝子療法ベクターが含まれる。
【0243】
プロモーターおよび他の発現制御シグナルは、発現ベクターが設計される宿主細胞に合わせて選択されることができる。例えば、酵母プロモーターには、S.セレヴィシエ GAL4およびADHプロモーター、S.ポンベnmt1およびadhプロモーターが含まれる。哺乳類プロモーターには、カドミウムなどの重金属に反応して誘導されるメタロチオネインプロモーターが含まれる。SV40ラージT抗原プロモーターまたはアデノウイルスプロモーターなどのウイルスプロモーターも、使用されることができる。これらのプロモーターはすべて、当技術分野では容易に入手可能である。
【0244】
SKINポリペプチドを生成するためのベクターには、ミニ遺伝子配列を運ぶベクターが含まれる。
【0245】
ベクターは、本発明のポリペプチドの発現を実現するのに適した、上述の宿主細胞に形質転換されることができる。故に、さらなる態様では、本発明は、ポリペプチドをコードするコード配列のベクターにより、発現を実現する条件下で、上述の発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を培養すること、および発現されたポリペプチドを回収することを含む、SKINポリペプチドの調製工程を提供する。ポリペプチドは、網状赤血球溶解物などのin vitro系を用いて発現されることもできる。
【実施例】
【0246】
以下の実施例は、実例として提供される。
【0247】
(材料および方法)
(組織試料および初代細胞)
哺乳類組織標本は、乳癌の除去手術を受けている患者から得られる。試料は、細かく刻まれ、5%FBS、5mg/mlインスリン、200U/mlコラゲナーゼおよび100U/mlヒアルロニダーゼにより、DMEM中で8〜12時間懸濁された。上皮および線維芽細胞起源の細胞は、先に説明されている通り(Speirs,V.ら、Short-term primary culture of epithelial cells derived from human breast tumours.、Br J Cancer 78、1421〜9頁、1998年)、次いで差次的トリプシン処理により(Hammond,S.L.、Ham,R.G.およびStampfer,M.R.、Serum-free growth of human mammary epithelial cells:rapid clonal growth in defined medium and extended serial passage with pituitary extract.、Proc Natl Acad Sci USA 81、5435〜9頁、1984年)単離された。
【0248】
培養物の上皮起源は、抗パンサイトケラチン抗体(Sigma)による免疫蛍光法で確認された。実用的上皮純粋細胞である継代二次細胞は、記載されたすべての実験で使用された。初代培養物は、公開されている手順(Hammondら、上記)により培養された。MG132は、指示された時間長で10μMの濃度で使用された。g-セクレターゼ阻害剤DFP-AA(化合物E、Calbiochem)は、1μMの濃度で使用され、24時間ごとに10日間、新鮮培地に添加された。疑似治療された対照物は、同等の濃度のキャリア(0.05%ジメチルスルフォキシド)に曝露された。
【0249】
(発現ベクターおよび生物学的検定)
Numb-GFP発現ベクターは、組換えPCRおよびレトロウイルス(Pinco)ベクターにおけるサブクローニングにより得られ、次いで配列照合が行われた。
【0250】
初代細胞(50,000/ウェル)は、Pinco-Numb-GFP、または対照としてPinco-GFPでトランスフェクトされたFNX(Phoenix細胞)由来上清に、6ウェルプレートで3日ごとに3週間感染された。
【0251】
CBF1結合コンセンサス配列6コピーを含有するルシフェラーゼレポータープラスミド(6×-RBP-Jk-luc、U.Lendahl、カロリンスカ研究所、ストックホルムの好意により提供)は、Notch依存性シグナル伝達を評価するのに使用された。初代哺乳類細胞は、6ウェルプレートで、800ngの6×-RBP-Jk-lucおよび200ngのCMV-b-ガラクトシダーゼ発現プラスミドでトランスフェクトされた。ルシフェラーゼ活性は、トランスフェクション48時間後に評価され、b-ガラクトシダーゼ発現によりトランスフェクション効率が標準化された。
【0252】
(ウェスタンブロット、siRNA、免疫蛍光および免疫細胞化学)
アフィニティ精製抗Numbペプチド抗体は、イムノブロット、免疫蛍光および免疫細胞化学に使用された(Santolini,E.ら、Numb is an endocytic protein.、J Cell Biol 151、1345〜52頁、2000年)。
【0253】
免疫組織化学分析では、組織切片がルーチンに処理され、抗原回収処理され、抗Numb抗体で一晩培養された。結合された抗体は、EnVision検出システムおよび発色基質としてジアミノベンジジンを用いて検出された。対比染色は、マイヤーのヘマトキシリンにより行われた。
【0254】
in vivoの腫瘍におけるNumbのユビキチン化状態を評価するため、細胞溶解物はすべて、ヒトNumbのエクソン10を用いて得られ、Numb関連遺伝子Numblに交差反応性を示さないマウスモノクローナル抗体で免疫沈降された(データ示さず)。ユビキチン化を検出するため、マウスモノクローナル抗体、FK1(Affiniti Research Product)が使用された。他の抗体は、以下の通り:抗Notch1(c-20、Santacruz Biotechnology)、HRP-接合二次抗体(Amersham)、蛍光色素接合二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc)。
【0255】
siRNA実験では、Numbに対するsiRNAオリゴ、または対照としてのスクランブルオリゴの送達は、オリゴフェクトアミンを用いて実現された。
【0256】
標的配列は以下の通り:
Numb siRNA、AACAGCCACTGAACAAGCAGA;
スクランブルsiRNA、AGACGAACAAGTCACCGACTT。
【0257】
選択された配列は、所望のmRNAのみが確実に標的にされるように、ヒトゲノム配列に対するBLAST検索に供された。
【0258】
(in situハイブリダイゼーション)
Numb発現は、35S-UTP-標識センスおよびアンチセンスリボプローブを用いてin situハイブリダイゼーションにより評価された。50℃で一晩ハイブリダイゼーションした後、組織切片は、50%ホルムアミド、2×SSC、20mM 2-メルカプトエタノール中で60℃にて洗浄され、コダックNTB-2乳濁液でコートされ、放射性同位元素標識を明らかにした。センスプローブの配列は以下の通り:
5-CCATCCTCTCCCACCTCTCCTACTTCTGATGCCACGACCTCTCTGGAGATGAACAATCCTCATGCCATCCCACGCCGGCATGCTCCAATTGAACAGCTTGCTCGCCAAGGCTCTTTCCGAGGTTTTCCTGCTCTTAGCCAGAAGATGTCACCCTTTAAACGCCAACTATCCCTACGCATCAATGAGTTGCCTTCCACTATGCAGAGGAAGACTGATTTCCCCATTAAAAATGCAGTGCCAGAAGTAGAAGGGGAGGCAGAGAGCATCAGCT-3'。
【0259】
(定量RT-PCR)
定量RT-PCR分析は、Perkin-Elmer/Applied Biosystems Prism 7700 Sequence Detection System(Foster City、CA、USA)において行われた。使用されたプライマー配列は、以下の通り:Hes1_Fw:5' CAG CTT GGC TGT GGT AGA AGC 3'、Hesl_Rev:5' CCA CTG ACC CCT ACC TTC TAT CC 3'、GAPDH_Fw:5' GCC TCA AGA TCA TCA GCA ATG C 3'、GAPDH_Rev:5' CCA CGA TAC CAA AGT TGT CAT GG 3。各cDNA試料は、3組ずつ試験された。遺伝子発現変化の定量では、DDCt方法が使用され、メーカー(Applied Biosystems)のプロトコルに記載されている通り、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子に対して標準化された相対的な発現量変化(fold change)が計算された。
【0260】
(実施例1)
本発明者は、免疫組織化学により、連続的な321例の乳癌の特性を明らかにした。乳癌患者の臨床的および病理学的特徴は、以下に示されている。
【0261】
【表1】

【0262】
該患者由来のアーカイバルホルマリン固定、パラフィン包埋手術標本は、免疫組織化学によりNumb発現を分析した。腫瘍は、RosenおよびObermanにより修正された(Rosen,P.P.、Oberman,H.A.、Tumours of the mammary gland.、Washington DC、Armed Forces Institute of Pathology、1993年)、WHO乳腺腫瘍の組織学的分類(WHO、Histological typing of breast tumours、第2版、international histological classification of tumours no.2.、Geneva、WHO、1981年)に従い、組織学的に分類された。腫瘍異型度は、ElstonおよびEllisに従い定義された(Elston,C.W.、Ellis,I.0.、Pathological prognostic factors in breast cancer:the value of histological grade in breast cancer.、Histopathology 19、403〜410頁、1991年)。エストロゲンおよびプロゲステロン受容体状態ならびに腫瘍増殖フラクション(Ki-67)は、ルーチンの手順に従い、パラフィン切片で免疫組織化学により評価された。エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体に対する初代モノクローナル抗体(Dako.Glostrup、デンマーク)は、1/100希釈で使用された。Ki-67抗原に対するMIB-1モノクローナル抗体(Immunotech、マルセイユ、フランス)は、1/200希釈で使用された。エストロゲンおよびプロゲステロン受容体ならびにKi-67染色では、値は、免疫反応性細胞のパーセンテージで表されている。
【0263】
正常な乳腺実質は常に、濃く均一なNumb染色を示した(図1a)。反対に、腫瘍は、著しい不均一性を示し、多くの症例で、Numb免疫活性の完全な欠失が見られ、腫瘍を3つのクラスに分類することができた(図1a)。クラス-1(症例の38.3%)の腫瘍は、新生細胞の10%未満でNumb染色を示した。このカテゴリーでは、2分の1を超える腫瘍が、検出可能なNumbを示さなかった(タイプ-0腫瘍)。クラス-2、およびクラス-3腫瘍(それぞれ16.8%、および44.9%)は、それぞれ、腫瘍細胞の10〜50%、および>50%でNumb免疫活性を示した。故に、全乳腺腫瘍(クラス1〜2の合計)の2分の1を超える腫瘍が、Numbレベルが低下していた。
【0264】
Numb発現レベルは、腫瘍の自然歴に関連するいくつかの指標とも相関していた。Numb発現細胞の<10%をカットオフとする場合(クラス-1対2〜3)、Numb発現と、腫瘍異型度(P=0.001)およびKi67標識指数(P=0.001)との間に強い逆相関が見出されたのに対し、年齢、腫瘍サイズ、組織型、リンパ節または受容体状態とは有意な相関は見られなかった。多変量解析では、Ki67との相関が維持されたのに対し(P=0.023)、腫瘍異型度との相関は、有意性の閾値をわずかに上回った(P=0.057)。故に、著しくは、強い逆相関が、Numb発現レベルと、腫瘍異型度(P=0.001)および侵襲性疾患指標として知られるKi67標識指数(P=0.001)との間に見出された(表1)。
【0265】
(実施例2)
本発明者は、次に、ヒト乳腺腫瘍におけるNumb転写物の存在を、in situハイブリダイゼーションにより分析した。5例のクラス-3腫瘍、および14例のクラス-1(タイプ-0)腫瘍が分析された。クラス-3腫瘍のすべて(および腫瘍周辺の正常乳腺)が、容易に検出可能なNumb転写物レベルを示した(図1b)。興味深いことに、クラス-1(タイプ-0)腫瘍の14例中12例は、正常組織およびクラス-3腫瘍で検出されるものと同程度のNumb mRNA発現レベルを示した(図1b)。
【0266】
さらに、本発明者は、ヘテロ接合性の消失分析、およびいくつかのNumb陰性腫瘍から調製されたNumb cDNAダイレクトシーケンスのいずれによっても、Numb遺伝子座に影響を与える遺伝子変化を検出することはできなかった。故に、Numb遺伝子座での遺伝子変化は、調べられたヒト乳腺腫瘍におけるNumb発現の消失を説明しそうにない。
【0267】
ヘテロ接合性の消失は、以下の方法により評価された。
【0268】
chr.14q23に局在した7個の多型STSマーカー(D14S 71、D14S77、D14S268、D14S277、D14S43、D14S70およびD14S785)は、これらの、対照集団におけるヘテロ接合性の頻度の高さ、およびNumb遺伝子座への近接度の両方に従い、ゲノムデータベース(それぞれ、NCBI、アクセッションNo.Z16844、Z24162、Z23878、Z16997、X56973、Z16819およびX569055)から選択された。(CA)nリピートをフランキングする特異的プライマーペアが、STSマーカーごとに選択された。
【0269】
PCR反応は、Taq-goldポリメラーゼのメーカーの指示に従い(Perkin-Elmer)、以下の変更を行って、最終量50μlで構築された:10pmolの各プライマーペアが使用された;PCR反応のdNTP最終濃度は、dATP/dGTP/dTTPに対しては200μM、dCTPに対しては10μMであった;0.025μl/α-32PdCTP(3000 Ci/mol)反応;ゲノムDNA 20〜25ng。ゲノムDNAは、マッチングされたパラフィン包埋正常および腫瘍組織から抽出され、別々に試験された。PCR条件は、以下の通りである:94℃ 30"、58℃→53℃ 30"(0.5/サイクルの低下)、72℃ 30"を10サイクル;94℃ 30"、53℃ 30"、72℃ 30"を20サイクル。PCR反応は、ローディングバッファー5μl(10X:98%ホルムアミド;1mM EDTA;0.1%ブロモフェノールブルー;0.1%キシレンシアノール)で、5'間変性され、7%アクリルアミドゲル、TBE 1Xおよび32%ホルムアミドに流された。以下のプライマーが使用された:
D14S277(5'-ctccccattgctttcact-3';5'-ttgaagattcagataaggt-3');
D14S43(5'-ctggaacactcaggcgag-3';5'-gccactttctactttggg-3');
D14S71(5'-tgtgcaccaatgcctcct-3';5'-gcccggccagaaatgctt-3');
D14S77(5'-gcctgagtcactgtgcc-3';5'-cagacagaaattaaccagag-3');
D14S268(5'-agcttcctactgtgtaaaacga-3';5'-ggctggggctgcaccttgta-3');
D14S70(5'-agctaatgacttagacacgttgta-3';5'-atcaatttgctagtttggca-3');
D14S785(5'-gctctgtctcac-3';5'-gatcattgacataggaaacac-3')。
【0270】
20例のクラス-1および10例のクラス-3乳腺腫瘍が、LOHについて分析された。分析された腫瘍40例のうち、LOHは、クラス-1(タイプ-0)乳腺腫瘍1例のみで検出された。しかし、この腫瘍では、非欠失Numbアレル起源の転写物配列は、野生型配列に関しては何ら変化を示さなかった(図示せず)。
【0271】
さらに、本発明者は、ISHでNumb転写物の存在を示した、2例のクラス-1(タイプ-0)腫瘍を選択し、高い腫瘍細胞性(>90%)領域を単離した。これらの腫瘍からRT-PCRによりクローニングされたNumb転写物は、野生型配列に関しては何ら変化を示さなかった(データ図示せず)。本発明者は、Numb遺伝子座における遺伝子変化は、ヒト乳腺腫瘍の大半に見られるNumb発現の消失を説明しそうにないと結論した。
【0272】
(実施例3)
Numb発現の消失を担う分子機構への洞察を得るため、本発明者は、クラス-1(タイプ-0)およびクラス-3乳腺腫瘍、ならびに同じ患者からの正常乳腺組織由来の初代培養物を確立し、以下の通り、in vitroで2つの第1次継代においてこれらを分析した。
【0273】
正常および腫瘍乳腺上皮細胞は、「方法」で説明された通り、適切な選択培地で増殖された。正常細胞培養物は、一般に2つの主な細胞形態型を示す(上段左):活発な増殖を維持し、「幹細胞集団」のいくつかの形態を表しているように見える、小さい、縁の滑らかな、屈折性の、多角形細胞、および、多くの細胞分裂が起きているようには見えない、大きな、平べったい、不整形の細胞である。後者は、さらに数回集団倍加した後、増殖を停止するように既にプログラムされている細胞を表している可能性がある。腫瘍細胞は、通常、典型的な上皮細胞の外見を示すものから、より「脱分化した」状態に似た、不ぞろいの紡錘体様の表現型を示すものまで、より高い形態的不均一性を示す(上段右)。第2継代では、正常および腫瘍初代培養物は、ケラチン発現の免疫蛍光染色により、純粋な上皮起源であることが証明された。筋上皮細胞成分は、α-平滑筋アクチン染色による評価では、<1〜2%であった(図示せず)。主要なサイトケラチン(CK1、4、5、6、8、10、13、18および19、Sigma C2562)を認識するモノクローナル抗体およびα-平滑筋アクチン(Sigma、クローン1A4)に対するモノクローナル抗体の混合物は、ガラスカバースリップ上で増殖されたエタノール固定細胞に使用された。結果は、この試験で使用されたマッチされたすべてのペアを代表するものである。
【0274】
正常乳腺由来の初代培養物、およびクラス-3患者由来の腫瘍培養物はすべて、高いNumb発現レベルを示し、プロテアソーム阻害剤MG132を用いた処理による影響は、ごくわずかであった(図2a、b)。きわめて対照的に、クラス-1(タイプ-0)患者由来の初代培養物は、基礎的なNumb発現があったとしてもごくわずかであったが、MG132による処理により高レベルまで回復された(図2a、b)。
【0275】
ベータ-カテニンなどのプロテアソーム分解機構により制御されている他の細胞タンパク質の基礎的なレベルも、同じ実験条件下で影響を受けなかったため、クラス-1腫瘍のNumbレベルの低下は、プロテアソーム活性が全般的に増加した結果ではないように思われた(図2C)。
【0276】
ユビキチンが促進するプロテアソーム分解が、Numb細胞制御の主なメカニズムを説明するために提案されている14。故に、本発明者は、腫瘍細胞におけるNumbユビキチン化パターンを検討した。図2dに示されている通り、クラス1(タイプ-0)およびクラス3腫瘍細胞を比較して、クラス1では、MG-132で6時間処理することにより、いかにNumbレベルの回復が、Numbポリユビキチン化の劇的な増加を伴うかを証明した。反対に、クラス3腫瘍では、効果は明らかでなかった。以上のことから、これらの結果は、ユビキチン化の増強およびプロテアソームによる分解の増加が、乳腺腫瘍のかなり大きな部分におけるNumb発現の消失を説明する強力な証拠を提供する。
【0277】
(実施例4)
上記の結果は、Numb分解の増強が、乳腺細胞の悪性へ進行する原因として関与している可能性を裏づけるものである。故に、本発明者は、初代腫瘍細胞のNumbレベルの回復結果を試験した。クラス-1腫瘍由来初代細胞における融合Numb-GFPタンパク質のレトロウイルスによる過剰発現は、著しい増殖抑制効果をもたらした(図3a)。反対に、クラス-3腫瘍細胞は、一過性感染において類似のNumb-GFP発現レベルを示したにもかかわらず、影響を受けなかった(図3a、b)。
【0278】
注意すべきは、Numb-GFPのレトロウイルスによる一時的送達の際、緑色蛍光のより急速な消失が、クラス-3腫瘍細胞に比べクラス-1(タイプ-0)腫瘍細胞で観察されうることである。一方、本発明者は、GFPのみでトランスフェクトされたクラスターでは、落射蛍光の消失にいかなる違いも検出できなかった(図示せず)。本発明者は、アッセイの間中、全クラスターを生成されたばかりのウイルスに3日ごとに再感染させて、増殖抑制アッセイに潜在的に影響する可能性のあるこの問題を回避した(「方法」参照)。しかし、結果は、Numb陰性腫瘍における過度のNumb分解割合をさらに支持するものである。
【0279】
(実施例5)
したがって、全体として、これらの結果は、Numb分解の増加と未制御細胞増殖との直接的連関を示している。
【0280】
NumbおよびNotch間の生物学的拮抗作用は、腫瘍におけるNumb活性の欠失に誘発されたメカニズムを検討するための試験可能な仮説を提供した。Notch受容体は、in vivoでもin vitroでも実験的発癌モデルにおいて癌遺伝子として作用し4〜6、15、ヒト癌にも関連している8、10。腫瘍におけるNumb欠失が、未制御のNotch活性の原因であるとするなら、これは、Notch活性の読み出しにより検出可能なはずである。
【0281】
Notchは、一連のタンパク質分解切断を介して活性化され、最終的には、この可溶性細胞内領域(ICD)の細胞膜からの放出に至る16〜17。ICDは、核へ転位され、ここで、CSLファミリーのDNA結合タンパク質(Drosophila Suppressor of hairless、Su(H)、またはこの哺乳類ホモログRBP-Jk/CBF-1)と相互作用し、これを転写物のレプレッサーからアクチベーターへ変換させる18、19
【0282】
NumbがNotchと拮抗する生物学的メカニズムは、まだ解明されていない。しかし、1つの有力な仮説は、NumbがNotchに直接結合することが、ICDの核転位を妨げ、それ故に転写活性を妨げるというものである1、2、20
【0283】
本発明者は、初代腫瘍細胞を用いて、Notchの細胞内分布および活性状態をモニターした。クラス-1(タイプ-0)では、Notch免疫染色は、クラス-3腫瘍または正常細胞より低いように思われた(図4a)。本発明者は、この所見は、細胞膜でのNotchプロセシングの増加に続き、ICDの核への核転位が増加し、これにより、核が、核プロテアソーム機構により急速に分解されることと一致している可能性があると考えた。事実、きわめて短いMG132処理(1時間)でも、すべてのクラス-1(タイプ-0)細胞でNotchの核蓄積(ICD)をアンマスクすることができたが、クラス-3腫瘍および正常な対応物ではアンマスクできなかった(図4a)。本発明者は、Notch依存性CBF1-反応性レポーター(6×-RBP-Jk-luc)から誘導され、初代培養物へトランスフェクトされた以下のルシフェラーゼ活性により、Notch機能を測定した。ルシフェラーゼ活性は、クラス-3および正常な培養物ときわめて同程度であり、すべてのクラス-1培養物において著しく増加された(図4b)。
【0284】
最後に、定量RT-PCRを用いて、本発明者は、Notch転写活性の標的遺伝子として知られる19、21HES-1 mRNAの内因性発現は、クラス-3細胞またはこれらの正常対応物と比べて、クラス-1腫瘍細胞で有意に高いことを見出した(図4c)。
【0285】
これらの結果に促され、本発明者は、腫瘍細胞におけるNumbレベルおよびNotch活性の機能的連関の可能性を直接評価した。初代正常乳腺細胞におけるRNAiによるNumbサイレンシングは、対照siRNAでトランスフェクトされた細胞に比べ、HES-1 mRNA転写物の有意な増加をもたらした(図5a)。Notch依存性転写活性における類似の増加は、クラス-3腫瘍細胞で観察されたが、予測された通り、クラス-1腫瘍細胞では観察されなかった(図5a)。したがって、レトロウイルスによるNumb過剰発現は、クラス-1における基礎的なNotch活性の有意な低下を引き起こしたが、クラス-3腫瘍細胞(図5b)または同じ患者由来の正常細胞(データ図示せず)では引き起こさなかった。クラス-1腫瘍細胞のNumb過剰発現も、有意な増殖抑制効果をもたらしたため(図3)、本発明者は、脱Notch活性が、Numbが消失した下流で、クラス-1腫瘍の未制御な細胞増殖に関与している可能性を直接試験した。本発明者は、Notchシグナル伝達を遮断し22、in vitroでNotch1形質転換リンパ球細胞系の増殖を効果的に抑制する23、低分子ペプチド模倣型プレセニリン阻害剤DFP-AAを利用した。クラス-1腫瘍細胞のDFP-AA処置は、これらの増殖能の劇的な抑制を引き起こすのに十分であった(図5c)。これは、HES-1 mRNAレベルで評価した、Notch活性の著しい低下と平行していた(図5d)。反対に、クラス-3腫瘍細胞では、有意な効果は観察されなかった(図5c、d)。
【0286】
(実施例6)
生存とNumb発現との関連は、上述の一連の乳癌患者において評価された。P53およびER状態は、パラフィン切片で免疫組織化学分析により評価された。
【0287】
カプランマイヤープロットを用いた図6および7は、10年間にわたるNumbレベルの低下に伴い生存が低下する傾向を示している。
【0288】
結果は、次いで、Numb発現およびERまたはp53状態により分析された。結果は、図8に示されている。Numb発現の低下に伴う生存低下傾向が、ER-およびP53+患者の双方に見られる。
【0289】
図9は、ERおよびp53状態の両方を検討した場合に得られた結果を示している。Numb発現による生存の著しい違いが、ER-/p53+患者で見られる。
【0290】
Numbの予後値は、腫瘍病期を補正し、コックス比例ハザード回帰モデルを用いて評価された(pT=1対pT>1)。
【0291】
以下の表は、T1に分類され、良好な予後を特徴とする、かさの小さなの腫瘍(T=腫瘍サイズ)の割合が、Numbレベルの低い(NUMB<10%)癌を有するER-患者で減少されるのに対し、T1腫瘍のパーセンテージは、NUMB≧10%のER-患者で上昇していることを示している。事実、以下の表2の通り、Numbレベルは、p53状態とは独立に、ER-患者ではpT(腫瘍サイズ)と相関しているが、ER+患者では相関を示さない。
【0292】
腫瘍サイズは、予後不良のよく知られた予後パラメーターであるため、コックス比例ハザード回帰統計を用いて、NUMB発現の消失(<10%)は、ER-P53+腫瘍では、腫瘍病期を補正(pT=1対pT>1)後も実際に不良な生存と関連していることを確認することが必要である。言い換えれば、Numbレベルの低い患者(NUMB<10%)のER-p53+の予後悪化に伴い、かさの大きな腫瘍を形成する傾向が高まるという結果にはならないが、具体的には、Numbタンパク質の欠失と相関している。
【0293】
【表2】

【0294】
ER-P53+腫瘍では、NUMB発現の消失(<10%)は、pT補正後も不良な生存と関連している(HR=4.6;95% CI=(1.4〜15.6)、p=0.013)。
【0295】
NumbはER-腫瘍ではptに相関するがER+腫瘍では相関しない。
【0296】
【表3】

【0297】
(要約)
本発明者の結果を要約すると、Notchシグナル伝達におけるNumbによる制御の脱制御は、ヒト乳癌で多発していることが明確に示される。
【0298】
Numb発現の消失は、Notchの活性化につながり、これが次に腫瘍細胞の増殖の増加の原因となる。したがって、生理学的Numbレベルの回復、またはNotch活性の阻害は、Numb陰性腫瘍の過剰増殖状態を元に戻した。
【0299】
重要なことに、Numb陽性腫瘍は、これらの操作に影響を受けなかった。故に、NumbおよびNotchは、それぞれ、ヒト乳癌における癌抑制因子および癌遺伝子の操作上の定義を満たしている。検討された乳癌におけるNumb発現の消失は、次いで起こるプロテアソーム分解を伴うこのユビキチン化の増加が原因である。癌抑制因子タンパク質のこの種の変化には前例がある。例えば、p53のユビキチン化/分解の増加は、野生型p53遺伝子を有する多くの腫瘍に見られる正常なp53機能の消失の根底にあるのであろう24、25
【0300】
これは、ヒト乳癌で、Numb上流の遺伝子病変が推定されるという問題を提起する。明白な可能性としては、E3型ユビキチンリガーゼのレベル/活性が上昇するという点が挙げられ、Numbレベルは、LNX、Siah-1およびMdm2などのE3リガーゼに制御されているという所見と一致するものである14、26、27
【0301】
あるいは、Numbリン酸化の増加が、このユビキチン化および分解の原因となっている可能性があるが、これは、他のタンパク質では、これら2つの転写後変化の間に強力な相関が示されているためである28、29
【0302】
注意すべきは、ショウジョウバエでは、セリン/スレオニンキナーゼのNAKが、Numbと物理的に作用し、過剰発現の際のNumb機能表現型消失を引き起こす点である30。このシナリオでは、原発病変は、E3-リガーゼよりもセリン/スレオニンキナーゼに影響していることになる(Numbは、リン酸化されたセリン/スレオニンである13)。
【0303】
いずれにせよ、Numb機能の回復は、この分解に関与する酵素の薬理学的阻害により得られると考えられ、明らかに魅力的な治療可能性を有する。
【0304】
まとめると、本発明者の研究は、実際のin vivo状況を高度に代表するex vivoモデルにおいて、Numb消失が、未制御なNotch活性を介して腫瘍発生に関与することを立証するものである。
【0305】
(実施例7)
本発明者は、発現がE1Aにより誘導され、同時にTD筋小管の細胞周期への再進入が誘導される遺伝子をクローニングするため、cDNAサブトラクション法を用いた。
【0306】
TD C2C12筋小管は、アデノウイルスdl520(E1Aの12S mRNAのみを発現)または対照アデノウイルスdl312(E1A mRNAを発現しない)のいずれかに感染された。dl520感染筋小管のみが、48時間p.i.S期再進入表現型を示した(約70%)。dl520およびdl312感染筋小管由来の、経時的にプールされた2μgのpolyA+RNAが、cDNA逆転写の開始物質(Invitrogen)およびサブトラクション手順(Clonetech)に使用され、クローンの約800ライブラリーを得た。
【0307】
E1A誘導ライブラリーは、逆ノーザンブロット(Reverse Northern)によりスクリーニングされた。14フィルター(7プレート、1プレートにつき2フィルター)は、単一の精製PCRバンドであるすべてのクローン配列およびいくつかの対照物(陰性対照としてDNAラダーIX、陽性対照としてアデノウイルスcDNAおよびNP95配列、内標準としてGAPDH)を含有した。各プレート(2フィルター)は、2組ずつ、2つの異なる標識されたcDNAプール(dl520およびdl312感染筋小管cDNA)にハイブリダイズされ、放射性活性シグナルを比較してE1A(dl520)誘導クローンのみを検出した。単一の陽性クローンが取り出され、次いで増殖され、シーケンスされて、blast解析により対応遺伝子を回収した。
【0308】
各遺伝子は、次いでQ-RT-PCRにより、E1A由来RNAおよび疑似感染筋小管で検証された。
【0309】
具体的には、逆ノーザンブロット陽性E1A誘導遺伝子は、SYBR GREENベースの定量RT PCRにより、E1A(dl520)に感染したTD C2C12筋小管由来RNA、増殖中の(MYB)C2C12筋小管、E1A(dl520)に感染したTD MSC(マウス衛星細胞)および増殖中の(MYB)MSC筋芽細胞で検証された。
【0310】
図10は、検証結果を示している。55個の非重複クローンを示し、このうち29個(以下、E1A誘導遺伝子と呼ぶ)が、再現性、ならびにTD C2C12マウス筋小管および初代TD筋衛星細胞(MSC)の双方におけるE1A発現時の、2倍を超える誘導を示した。
【0311】
全変化量値(fold value)は、参照として疑似感染(dl312)筋小管を(値1.00)、基準としてマウスGAPDH遺伝子を用いて計算される。値は、2つの独立した実験の平均および標準偏差(SD)で表される。
【0312】
誘導された29個のE1Aは、TD C2C12筋小管でE1A発現後、異なる誘導タイミングを示している。2つのタイムポイントが検討された:24h/EARLY(E1Aタンパク質が蓄積を開始した直後)および36h/LATE(S-期再進入の直前)である。各遺伝子の転写活性化は、SYBR GREENベースQ-RT-PCRによる2つの独立した実験の疑似感染筋小管(dl312)を参照した、E1A(d1520)発光量比として測定された。24h/EARLYおよび36h/LATE E1A誘導間で算出された数学的比は、活性化のタイミングを明らかにした。EARLY=>0、4;LATE=<0、4。
【0313】
29個の遺伝子のうち、14個の遺伝子は、E1Aによる早期誘導であり、15個の遺伝子は、後期誘導であった(図11)。
【0314】
興味深いことに、ほとんどすべてのE1A誘導遺伝子は、増殖中の筋小管で活発に転写されており、これは、E1A誘導プログラムが、最終分化および細胞周期からの離脱によりスイッチを切られたプログラムの再活性化を介して進行していることを示している(図10)。
【0315】
(実施例8)
E1Aは、TD筋小管で多面発現効果を発揮する。これは、E1Aの転写コアクチベーターp300/CBPおよびMyoDへの結合を介して、組織特異的遺伝子を抑制し、ならびにポケットタンパク質(主に、pRbおよびp130)への結合およびE2F活性の回復がきわめて重要であるメカニズムを介して、細胞周期を再活性化する。しかし、TD筋小管におけるE2Fの異所性発現は、S期を誘導せず、これは、他のE1A活性化経路が同時に必要であることを示している。事実、CycE/CDK2-、CtBP-、TRAPP- またはp400-制御経路、ならびに他のクロマチンリモデリング活性を伴う、E1Aに制御されたポケット/Rb独立性メカニズムが知られている。これらの活性がS期環境の創造にどのように寄与しているのか不明であるが、これらのポケット/E2F独立性経路のいくつかは、E1Aによる発癌に寄与している証拠がある。したがって、本発明者の当初の戦略を踏まえ、本発明者は、E1A誘導遺伝子を、この上流の制御機構により分類しようと試みた。
【0316】
本発明者は、TD筋小管において3つの戦略を使用した:i)誘導が、E2F1依存性であるこれらの遺伝子を同定するため、Pajalunngaら(1998年)において説明されたAd-E2F1アデノウイルス感染(MIO 300)を用いた、E2F1過剰発現;ii)誘導が、ポケットタンパク質活性によるE1A干渉に依存性である遺伝子を同定するため、ポケットタンパク質に結合することができないE1A変異体(YH47/dl928)の発現;iii)Rb-floxedマウスからの、MSC由来TD筋小管におけるRb遺伝子の除去(Vooijsら、1998年)。この後者のケースでは、CreリコンビナーゼによるRbの除去は、Rb干渉に独占的に依存するE1A効果を模倣するため、最終分化誘導後に行われた。
【0317】
本発明者は、これらの条件下でQ-RT-PCRにより、E1A発現時に得られたレベルと比較して、E1A誘導遺伝子発現を分析した(図11)。
【0318】
全RNAは、Triazol方法(Invitrogen)により単離された。RNA 2μgは、ランダムヘキサマー100ngにより、逆転写反応(SUPERSCRIPT II、Invitrogen)において使用された。10分の1ngのcDNAは、10pMolの各遺伝子特異的プライマーおよびSYBR-green PCR MasterMix(Applied Biosystems)により、反応量20μL中で3組ずつ増幅された。リアルタイムPCRは、95℃で10分間のプレPCR工程を用いて、次いで95℃15秒間および60℃60秒間の40サイクルにより、ABI/Prism 7700配列検出システム(Perkin-Elmer/Applied Biosystems)において実施された。増幅産物の特異度は、融解曲線分析(DISSOCIATION CURVE(商標)Perkin-Elmer/Applied Biosystems)および6% PAGEにより確認された。逆転写酵素を用いないRNAテンプレートによる調製は、陰性対照として使用された。試料は、各遺伝子(詳細は、以下のQ-PCRプライマーリスト参照)およびハウスキーピング遺伝子としてのGAPDH(rRNA 18Sおよびベータアクチンを含む、他のハウスキーピング遺伝子も試験され、同等の結果が得られた)に対するプライマーにより増幅された。Ct値は、GAPDH曲線に対して標準化され、各遺伝子の相対的発現は、疑似(dl312)感染筋小管に対する比として表された。
【0319】
以下の主な遺伝子クラスが、同定されることができた:
【0320】
クラスA.
ポケット依存性(YH47により誘導されず、Rb除去により強く誘導される)、E2F1依存性(E2F1過剰発現により強く誘導される)遺伝子(7遺伝子)。
【0321】
クラスB.
ポケット依存性、E2F1非依存性(または、ほとんど依存性でない)遺伝子(8遺伝子)。
【0322】
クラスC.
ポケット非影響性(YH47により十分に誘導され、Rb除去によっても活性化される)。このグループの9遺伝子は、明らかに、ポケット依存性および非依存性の2重の重複制御を受けている。これらの遺伝子のほとんどすべてが、KIAA0648を除いてE2F1非依存性である。
【0323】
クラスD.
ポケット非依存性(または、実質的に非依存性)遺伝子。このグループの6遺伝子は、YH47により十分に活性化され、Rb除去ではほとんど活性化されない。さらに、これらのほとんどすべてが、辛うじてKIAA0097を除き、E2F1非依存性である。
【0324】
クラスAおよびB遺伝子を含む、第1の遺伝子クラスターは、誘導が、強いポケットタンパク質依存性である(E2F1依存性にかかわらず)、「典型的な」E1A反応性遺伝子により構成される。早期誘導遺伝子はすべて、このグループに属する。興味深いことに、非分裂終了細胞においてE2F1の転写制御下にあることが広く知られる、この遺伝子クラスター(MCM7、MCM4およびM1S5)の遺伝子サブセットは、ポケットタンパク質依存性を保持しているにもかかわらず、TD環境においてはこのタンパク質の過剰発現に反応を示すようには思えない。この結果は、可逆的および不可逆的に停止された細胞では、ポケット/E2F遺伝子の転写制御に違いがあることを示唆するものであり、なぜE2FはTD細胞を細胞周期へ再進入させることができないのか、試験的仮説を提供する。
【0325】
第2の遺伝子クラスター(クラスCおよびD)は、ポケット非影響性またはポケット非依存性遺伝子からなる。なぜこれらの遺伝子はすべて、「後期の」遺伝子なのか不明であるが、偶然のせいにするにはこの相関は強すぎる。より重要には、このクラスターでは、クラスD遺伝子は、未知のメカニズムを介して、明確な遺伝子変化により誘導された、転写サインを構成する。ポケットタンパク質/E2F非依存性メカニズムは、E1A誘導腫瘍形成に寄与することが知られているため(Alevizopoulosら、1998年;Alevizopoulosら、2000年;Deleuら、2001年;Dorsmanら、1995年;Fuchsら、2001年;Sandmollerら、1996年;Subramanianら、1988年)、本発明者の仮説は、ヒト癌におけるクラスD遺伝子サインの重大な関与を予測するものとなろう。
【0326】
(実施例9)
本発明者は、10種類の異なる腫瘍由来の、数百の腫瘍試料を含有する組織マイクロアレイ(TMA)において、これらのマッチングされた正常対応物と共に、in situハイブリダイゼーションにより、この可能性を試験した。全クラスからの代表を含む、15個のE1A誘導遺伝子が試験された。6個のクラスD遺伝子のすべてが、マッチングされた正常組織と比べ、かなりの割合の癌で過剰発現された(図12a)。さらに、腫瘍増殖指数(抗Ki-67による免疫染色で評価)と、クラスD遺伝子6個中4個(SKIN、RRIP/TRPC4AP、SMU-lおよびch-TOG/KIAAO97)のレベルとの間に有意な相関はなく、過剰発現イベントは、腫瘍過剰増殖状態の結果ではないことを示している(図示せず)。
【0327】
この主張は、クラスD遺伝子6個中4個(SKIN、DDX21、RRIP/TRPC4APおよびSMU-1)は、細胞周期が制御された遺伝子として挙動しなかったのに対し、クラスAおよびクラスB遺伝子のすべては、細胞周期が制御されており、クラスCは辛うじて細胞周期が制御されていたという所見によってさらに支持された。
【0328】
全体として、全クラスからの15個のE1A誘導遺伝子は、TMA分析により試験された。特に、LBR、XTP1、MGC22679、K1594、C3Orf4、CML66、FLJ37652は、正常および腫瘍組織のいずれにおいても低発現または発現の欠失を示した。これは、これらの発現レベルが、in situハイブリダイゼーション法の検出限界を下回ったことを示している。試験された2個のクラスB遺伝子(Np95およびNasp)は、腫瘍における過剰発現を示した。しかし、同程度に高い発現レベルが、正常組織の増殖中の細胞でも検出された。故に、Np95およびNaspは、真に過剰発現されているとは考えられず、これらの発現は、恐らく、腫瘍過剰増殖状態を単に反映するものであろう。しかし、これらのデータは、特に、きわめて侵襲的な腫瘍の増殖指数の高さを考慮すると、これらの遺伝子はすべて、様々な方法を用いて、良好および不良な予後の腫瘍試料を区別することができるという可能性を除外しない。さらに、これらの遺伝子のタンパク質レベルは、腫瘍試料で変化される可能性がある。
【0329】
同定された癌サイン(クラスD遺伝子)の、腫瘍の自然歴への関与は、さらに、3セットの実験で検証された。第1に、本発明者は、正常上皮、過形成性ポリープ、アデノーマおよび腺癌を含有する、大腸癌の進行TMAを分析した。6個のクラスD遺伝子はすべて、腺癌の45〜75%で過剰発現された。3個の遺伝子(SKIN、SMU-l、CH-TOG/KIAAO97)の発現は、明らかな腺癌との絶対的な相関を示したのに対し(図13)、RRIP/TRPC4APも、腫瘍においてより著しく発現されているものの、他の条件でも発現された(図13)。注意すべきは、SF3B1は、全般的に腺癌より染色強度は低いものの(図示せず)、アデノーマでも発現される点であり(図13)、この過剰発現は、腫瘍進行の早期イベントを表している可能性と一致する。DDX21もアデノーマで過剰発現される。
【0330】
第2に、本発明者は、クラスD E1A誘導遺伝子に関するデータを、多数の乳腺試料で行われた発現プロファイルスクリーニングのデータセットから抽出した。2つの非依存性データセットが使用された。Van't Veerらにより発表されたもの(van't Veerら、Nature 415(31)、530〜535頁、2002年)、および自ら生成したものである。特に、本発明者は、手術時にリンパ節転移を伴わなかった腫瘍のサブグループに注目した。このサブグループは、5年追跡期間で、転移性疾患の発症(N0+患者)、または、無疾患の維持(N0-患者)のいずれかであった。3個のクラスD遺伝子(SKIN、ch-TOGおよびRRIP)は、約70%の正確度で疾患再発リスクを予測することができた(図14A〜B)。クラスD遺伝子は、自ら生成したデータセットではp値<0.05、van't Veerからのデータセットではp値<0.04で、疾患再発リスクを予測することができた。3つの遺伝子モデルの予測強度は、15例の無作為選択乳腺腫瘍患者(全例が診断時リンパ節転移陰性)において、Q-RT-PCRでさらに確認された(p値0.003)。患者は全例で、エストロゲン受容体状態が均一であった(Er pos)(図14C)。
【0331】
ch-TOGおよびSKIN発現が増大し、TRPC4AP発現が低下している患者は、予後不良に指定されたのに対し、ch-TOGおよびSKIN発現が低下し、TRPC4AP発現が増大した患者は、予後「良好」に指定された。
【0332】
クラスA/B/Cを予後予測因子として使用する可能性は、実行可能な選択肢であるため、これらの予測能が、手術時にリンパ節転移が見られなかった腫瘍のサブグループで試験された。このサブグループは、アフィメトリックスで分析された5年追跡期間で、転移性疾患の発症(N0+患者)、または、無疾患の維持(N0-患者)のいずれかであった。クラスA+クラスB+クラスC遺伝子は、疾患再発リスクを予測することができた(p値<0.004、図14D)。
【0333】
最後に、本発明者は、クラスD遺伝子が、増殖優位性を腫瘍細胞に与えることができるかどうか試験した。原理の証明として、本発明者は、上述されたすべての特性付けにおいて、最も一貫して安定した挙動を示した、SKIN遺伝子に注目した。SKIN遺伝子座における頻繁な遺伝子変化は、この遺伝子の悪性形質転換への機構的関与を予測する。もしそうであるとすれば、SKIN過剰発現は、増殖優位性を細胞へ与えているはずであり、この機能を除去すれば、この表現型を元に戻すはずである。この可能性を試験するため、本発明者は、6種類の細胞系を選択し、siRNAによりSKINノックダウン(KD)を実施した。3種類の細胞系(HT-29、SKMEL5、およびSKBR3)が、SKIN過剰発現を示した(図15B〜C)。他の3種類の細胞系(DLD1、SKMEL28、およびMDAMD415)は、標準レベルのSKIN発現を示した(図15B〜C)。注意すべきは、腫瘍細胞系は、同じタイプの腫瘍由来の、マッチングされた試料(過剰発現中の/過剰発現中でない)となるように選択された:大腸癌(HT29およびDLD1)、メラノーマ(SKMEL28およびSKMEL5)および乳癌(SKBR3、およびMDA-MB-415)。図15Aに示されている通り、siRNAによるSKIN発現のKDは、過剰発現中の全細胞系の増殖を著しく低下させたのに対し、対照スクランブルオリゴは、影響があったとしてもごくわずかであった。重要なことには、SKIN KDは、SKINの過剰発現を示さない腫瘍系の増殖を阻害しなかった(図15A)。
【0334】
パブリックドメイン(www.oncomine.org)で入手可能な癌マイクロアレイデータの調査は、特定の腫瘍におけるいくつかのクラス-D遺伝子の過剰発現も明らかにした。公開されている発現プロファイル実験でクラス-D遺伝子の重要な制御について確認するため、ONCOMINEウェブツールを用いて行われた、クラスD遺伝子に関するメタ解析の結果が、図16に示されている。SKIN(flj23790)分析は、SKIN特異的プローブセットが、いくつかのより最近のアレイバージョン(Affymetrix HG-U133チップBおよびHG-U95チップB)にしか存在せず、したがって、データベースサイズを大幅に減少させたため、うまく行うことができなかった。TRPC4APは、統計的有意性に達しなかった。
【0335】
SKINのFISH分析も行われた。SKIN遺伝子座(第8染色体上)の遺伝子変化が探求された。過剰発現は、遺伝子量の増加が原因である場合が多いため、本発明者は、SKIN遺伝子の増幅に注目した。初めに、いくつかの細胞系が、分裂中期停止細胞においてFISHによりスクリーニングされた。複数のSKIN特異的シグナルが、これらの異数性状態とは独立に、いくつかの腫瘍細胞系で検出された(図17A)。さらに、SKIN増幅は、mRNAおよびタンパク質レベルのいずれにおいても、同じ細胞系におけるこの過剰発現とよく相関していた(図17A)。次に、SKIN増幅は、大腸標本におけるin situ間期FISHにより、腫瘍組織について直接分析された。正常大腸粘膜6試料およびアデノーマ8試料では、SKINの増幅(およびISHで判定された過剰発現)は、検出されなかった(図17B)。大腸癌では、SKIN増幅(>4シグナル/細胞)は、21例中7例(33%)で検出された(図17B)。増幅は、試料の上皮成分に限定されていた(図17B)。全例でSKIN増幅は、ISHにより判定された過剰発現が付随して見られた(図17B)。興味深いことに、非増幅例のかなり大きな割合(6/14、全分析例の29%に相当)で、SKIN過剰発現がISHにより検出された(図17B)。故に、SKIN過剰発現は、遺伝子増幅の有無にかかわらず、発生することができる。
【0336】
(実施例10)
本発明者は、前述同様の実験条件でさらなるスクリーニングを行った(E1Aの12S mRNAのみを発現する、アデノウイルスdl520に感染されたTD C2C12筋小管、またはE1A mRNAを発現しない、対照アデノウイルスdl312のいずれか)。サブトラクションライブラリー法を用いる代わりに、対照/E1A発現細胞由来のRNAが調製され、標準的方法を用いたアフィメトリックスジーンチップ技術によりプロファイルされた。
【0337】
この方法を用いて、1134個の遺伝子が同定された(サブトラクションスクリーニング法で得られた25/30個の遺伝子も含む)。
【0338】
これらの遺伝子から、乳癌およびNSCLCの予後に特定の値を示すマーカーが、以下の通り同定された:
【0339】
乳癌
本発明者は、アフィメトリックスジーンチップ技術(HG-U133チップA+B)を用いて、患者46例からなる最初のグループの生検から調製されたRNAについて、遺伝子発現プロファイル試験を行った。患者は、エストロゲン受容体陽性、診断時リンパ節転移陰性の原発癌(N0)、>10年追跡調査であった。
【0340】
この分析には、5年以内に遠隔転移を発症した患者(20例)、および原発腫瘍の切除から7.5〜12年経過後の現在、無病である患者(26例)のみが含まれた。
【0341】
患者1人あたり30,000個を超える遺伝子発現値が、以下の「乳癌」データセットとして保管され、整理された。
【0342】
2つのGeneChip(登録商標)アレイからなる、ヒトゲノムU133(HG-U133)セットは、約33,000個の十分に裏づけされたヒト遺伝子由来の39,000個を超える転写物に相当する、45,000プローブセットのほとんどを含有する。このセットデザインは、GenBank(登録商標)、dbEST、およびRefSeqから選択された配列を使用している。
【0343】
配列クラスターは、UniGeneデータベース(Build 133、2001年4月20日)から作製された。これらは、次いで、ワシントン大学ESTトレースレポジトリおよびカリフォルニア大学サンタクルーズ校Golden Path human genome database(2001年4月公開)を含む、いくつかの他の一般に検索可能なデータベースを用いた分析および比較により絞り込みされた。HG-U133Aアレイには、RefSeqデータベース配列、およびヒューマンゲノムU95Av2アレイにおいて以前に表現された配列と関連したプローブセットの代表が含まれた。HG-U133Bアレイは、ESTクラスターを代表する当初のプローブセットを含有する。
【0344】
Affymetrix(登録商標)マイクロアレイスィートバージョン5.0は、以下の手順により、データを標準化しプレフィルターをかけるのに使用された:
- ソフトウェアの検出アルゴリズムは、Detection p値を計算(より詳しくはマニュアル参照)し、アレイのスポットごとのシグナルを、Present、Marginal、Aasentコールに割り当てるのに使用された。どのアレイでも常にAbsentコールとなった特徴(遺伝子)は、除外された。
- アレイでプローブされた各転写物のシグナル強度は、MAS5コンピューティングおよび標準化後は200を超えるべきである(シグナル範囲は、通常、10〜20.000である)。
- アレイでプローブされた全転写物(プローブペア)のシグナル強度(中央値)が計算され(全体の中央値)、この値は、各プローブペアのシグナルを再び分けるのに使用された。この手順は、チップ標準化と呼ばれる。
- 異なるアレイでプローブされた1個の遺伝子の中央値が計算され、同じ遺伝子のチップ標準化シグナルを分けるのに使用される。この手順は他の遺伝子ごとに繰り返される。これは、遺伝子標準化と呼ばれる。
【0345】
上述の「乳癌データセット」を得たことで、本発明者は、5年以内に転移を発症した患者と長期追跡期間中に依然として無病である患者との間で、<1.5倍の発現量変化(fold change)を示す遺伝子はすべて除外して、1134個のE1A誘導遺伝子に関する当初のリストを縮小した。
【0346】
次いで、本発明者は、以下のleave-one-outクロスバリデーション(KNN-9)統計アルゴリズムを用いて、患者転帰(予後不良対予後良好)を正しく分類する力を基に、遺伝子リストをランク付けした。
【0347】
1134個の遺伝子リストは、Genespring6.2(登録商標)環境で以下の手順により、遺伝子数200個まで削減した。
1.クラス予測により、遺伝子を単離する。
2.試料ごとに、フィッシャーの直接確率検定を用いて、偶然によりカットオフ水準上下の各クラス由来の試料の観察数が得られる確率を計算する(超幾何分布)。
3.工程2で計算された最も小さいp値を選択し、これを、p値の負の自然対数をとることで予測強度に変換する。
4.選択された遺伝子リストにあるすべての遺伝子の予測強度が計算されるまで、1〜3の工程を繰り返す。
5.クラスごと(200遺伝子)に遺伝子の予測強度に従い遺伝子をランク付けする。
6.最適な予測遺伝子の最終リストを作成するため、クラスごとに最も高い予測強度を伴う遺伝子が等しく選択される。最終的な最適予測因子数が、ユーザ指定される(13遺伝子)。
【0348】
Genespring6.2(登録商標)(www.silicongenetics.com)が、分析を行うため使用された。
【0349】
上位にランク付けされた13遺伝子が、次いで選択され、以下の表に示されている。
【0350】
【表4】

【0351】
予測因子は、5年以内に転移を発症するリスクを判定することができる。図18Aは、上述の「乳癌データベース」を用いた、この13遺伝子のセットに基づく、良好または不良の発現サインを伴う患者の無転移でいる確率を示す。
【0352】
本明細書に記載された各13遺伝子では、アップレギュレーションは、予後不良と関連している。患者は、試料の他の個体と比べて(「不良」群)、13遺伝子中少なくとも7遺伝子の値が低い場合、「良好な」サインを有するとみなされた。
【0353】
有意差は、P値を計算するためログランク検定を用いた、2群における転移リスクにおいて見出された。
【0354】
図18Bは、Van't Veer LJの予測因子(上述)に基づく、良好または不良の発現サインを伴う患者の無転移でいる確率を示す。
【0355】
エストロゲン受容体陽性および陰性の両方のものを含む、患者67例のデータセットを用いて(上述の患者46例を含め)、本発明の13遺伝子予測因子は、Van't Veer予測因子に比べ、転移を発症することになった患者を4例多く同定することができる。46例のER陽性患者を用いた場合、Van't Veerデータセットに比べ、患者を6例多く正しく同定することができる。
【0356】
Van't Veerデータセットを検定データセットに用いた場合、試料分類に失敗する割合は、2つの予測因子間で同程度であることが明らかになった。
【0357】
Van't Veer予測因子は、70遺伝子を含んでいるに対し、本予測因子は、13遺伝子を利用するのみであることに注目することが重要である。正確度を損ねることなく小規模の遺伝子セットを用いる能力は、予測因子の臨床応用においては重要であり、コストを削減し、より広範な方法の使用を可能にする。あるいは、より多くの遺伝子がセットに加えられれば、正確度をさらに改善できるはずである。
【0358】
アフィメトリックスで分析された、N0乳癌患者36例の13乳腺遺伝子予測因子の発現プロファイルは、さらに、Q-RT-PCRで確認された(図18C)。クラシファイア成績も、Q-RT-PCRで確認された。Q-RT-PCR反応は、Applied Biosystemにより示唆された初期設定を用いて行われた。
【0359】
肺癌
一般に検索可能な完全な追跡情報(Beer,D.G.ら、Gene-expression profiles predict survival of patients with lung adenocarcinoma.、Nat Med、8:816〜824頁、2002年;Bhattacharjee,A.ら、Classification of human lung carcinomas by mRNA expression profiling reveals distinct adenocarcinoma subclasses.、Proc Natl Acad Sci U S A、98:13790〜13795頁、2001年)による、2つの最も包括的なNSCLCスクリーニングは、ウェブ(www.oncomine.com)からダウンロードされた。これら2つのデータセットは、2つの独立したコホートからの肺腺癌患者のRNA発現値を含有している。より正確には、Beerデータセットは(Affymetrix GeneChip HU6800)は、無病生存(DFS)が52カ月を超える患者23例および再発時間(疾患死)が29カ月未満の患者18例で構成されている。Bhattacharjeeデータセット(Affymetrix GeneChip HG-U95Av2.1)は、DFSが30カ月を超える患者33例および再発時間(疾患死)が25カ月未満の患者27例で構成されている。
【0360】
データセットは、以下のように処理された:
- Affymetrix(登録商標)マイクロアレイスィートバージョン4.0標準化データセットは、ウェブからダウンロードされた。
- 標準化後に陰性値を示す遺伝子およびETSはすべて、さらなる分析から除外された。
- 本発明者は、各データセットの少なくとも25%の患者で、チップにおいてシグナルを有する遺伝子のみを検討した。
- アレイに存在している各遺伝子の中央値が、次いで計算された。本発明者は、計算された対応する中央値と比べ、少なくとも1.5倍の相違を示すこれらの遺伝子を保持する。
- アレイでプローブされた全転写物(プローブペア)のシグナル強度中央値が計算され(全体の中央値)、この値は、各プローブペアのシグナルを再び分けるのに使用された。この手順は、チップ標準化と呼ばれる。
- 異なるアレイでプローブされた1個の遺伝子の中央値が計算され、同じ遺伝子のチップ標準化シグナルを分けるのに使用される。この手順は他の遺伝子ごとに繰り返される。これは、遺伝子標準化と呼ばれる。
【0361】
当初の1134個の遺伝子リストは、上述された通りにフィルターされた(→1.5発現量変化):この場合、検討された患者の2つのクラスは(転移性腫瘍の形成傾向を評価した、乳癌患者とは反対に)、疾患死群、および無病生存群である。
【0362】
次いで、フィルターされたリストにおいて、本発明者は、単変量t検定により(p値0.05未満)、患者2セット間を識別する能力に従い、遺伝子をランク付けした。
【0363】
本発明者は、両方の公開データセットで同じ分析を行い、次いで本発明者は、両データセットに見られる、上位にランクされた共通遺伝子のみを選択した。
【0364】
本発明者は、同じランキング分析を繰り返したが、より厳密なp値のカットオフ(<0.001)を用いた。次いで、本発明者は、統合されたデータセットから上位にランクされた遺伝子のリストを得た。最後に、本発明者は、様々なクラス予測統計アルゴリズムにより、これらの遺伝子リストを、12遺伝子(肺予測因子)の最終リストに削減した(分析は、BRB ArrayToolを用いて行われた)。
【0365】
遺伝子は、以下の表3に示されている。
【0366】
【表5】

【0367】
これらの予測因子は、29カ月以内に死に至るリスクを判定することができる。図19は、Beerらのデータセット(図19A)またはBhattacharjeeらのデータセット(図19B)を用いた、NSCLC予測因子に基づく、良好または不良の発現サインによる生存確率を示す。
【0368】
有意差は、P値を計算するためログランク検定を用いた、2群の生存確率間で見出された。
【0369】
良好のサインは、12遺伝子中少なくとも7遺伝子(すなわち、遺伝子の大半)を有するものとみなされた。12遺伝子は:
1.HLA-DQB1、LU、GNS、POLR2C、PBXIP1およびRAFTLINに関しては、分析における他の個体と比べアップレギュレートされている(予後不良群)。
2.E2F4、PAICS、PFN2、SERPINB5、HSPD1およびARL4Aに関しては、分析における他の個体と比べダウンレギュレートされている(予後不良群)。
【0370】
分析の個体は、上記の両データセットから入手された。
【0371】
30例の組織標本(全例が病期IのNSCLC腺癌)からなる独立した患者セットにおいて、12肺遺伝子予測因子の発現プロファイルも、Q-RT-PCRにより評価された。患者の「検定」セットは、疾患の証拠がない患者15例(転帰良好群)および疾患死患者15例(転帰不良群)で構成された。「検定」スクリーニングの結果は、本発明者の12遺伝子クラシファイアの良好な成績を確認するものであった(図19C参照)。
【0372】
さらに、他の候補遺伝子の予測可能性を検定するため、マイクロ流体カード(Applied Biosystem)技術が使用された。したがって、この低密度アレイカードには、表3の12遺伝子に加えて、統合されたデータセットから上位にランクされた遺伝子のリストから選択された、他の38遺伝子も含められた。「検定」スクリーニングの結果は、21遺伝子の組合せ(先に同定された12遺伝子の5遺伝子も含め)(表4および図19D参照)は、NSCLC患者の転帰予測における成績の改善を示すことを示した。さらに、21遺伝子予測因子は、早期NSCLC患者(病期I)に対しても新規の予後予測因子となるように思われた。
【0373】
【表6A】

【表6B】

【0374】
良好のサインは、21遺伝子中少なくとも11遺伝子(すなわち、遺伝子の大半)を有するものとみなされた。21遺伝子は:
1.HLA-DQB1、およびRAFTLINに関しては、分析における他の個体と比べアップレギュレートされている(予後不良群)。
2.PFN2、SERPINB5、E2F4、E2F1、MCM7、RRM2、MCM4、MCM6、CML66、SF3B1、ATP13A3、CXCL6、GABPB2、GAPDH、GARS、HOXB7、HSPG2、KIAA0186、SCGB3A1に関しては、分析における他の個体と比べダウンレギュレートされている(予後不良群)。
【0375】
(要約)
本発明者は、本発明者の、癌トランスクリプトームのバイアスを受けたスクリーニングは、正真正銘の癌のサインの同定につながる可能性があるという当初の仮説を検証した。
【0376】
本発明者は、癌トランスクリプトームをスクリーニングするバイアスを受けた方法は、発現が、E1Aに対する反応に調節される遺伝子を考察した場合、良好および不良のサインを伴う患者間で癌の進行リスクに有意差をもたらすため、癌進行の良好な予測因子を提供することができることを明らかにした。
【0377】
クラスD遺伝子に関しては、同定された経路(それぞれ、E1AおよびクラスD遺伝子)の開始点および終点の両方に関する正確な分子知識は、今や、ヒト癌のかなり大きな割合で自然発生する遺伝子変化の同定を可能にするはずである。遺伝子変化は、E1Aにより活性化された経路に位置すると予測されるが、ポケットタンパク質およびE2Fとは無関係である。本発明者は、末端変化への干渉が、癌死滅経路では、治療目的にはむしろ有利であることが判明する可能性があることに注目する。原理上、上流のゲノム病変への干渉は、正常細胞においても望ましくない結果を生む可能性があるが、シグナル伝達経路の末端分岐での選択的干渉は、SKINのKDが、SKIN過剰発現細胞の増殖を特異的に阻害するという事実により裏づけされていることもあり、この可能性を減少させる可能性がある。
【0378】
クラスD遺伝子は、RNAスプライシング(SAP1およびSmu-1)に関与するタンパク質、核小体RNAヘリカーゼ(DDX21)、微小管結合タンパク質(CH-TOG)、NF-KB活性化をもたらすTNF-R1経路成分(RRIP)、および際立った領域特徴を示さない、これまで知られていなかったタンパク質(SKIN)を含む、かなり不均一なタンパク質をコードする。この不均一性は、癌の転写サインでは驚くべきことではないが、シナリオの1本化に向けてすぐさま調整されることはできない一方、本発明者は、最近の成果は予期せず、スプライシング因子および細胞接着をもたらす細胞骨格制御におけるRNA結合タンパク質(de Hoogら、2004年)を含有する、リボヌクレアーゼ複合体が関与していたことにも注目する。故に、本発明者は、遺伝子の制御が、基質や運動性への細胞接着などの、癌において頻繁に変化する表現型の判定に重要である遺伝子のクラスターを同定した可能性がある。
【0379】
さらに、E1Aに制御された遺伝子の他のクラスは、癌患者の転移リスクの予測因子として使用されることができることも明らかにした。
【0380】
本明細書で言及された参考文献はすべて、参照により、これの全体が明示的に組み込まれている。
(参考文献)






【図面の簡単な説明】
【0381】
【図1a】ヒト乳癌におけるNumb発現を示す図である。正常な乳腺(normal)におけるNumbの一般的な免疫反応は、顕著な膜染色パターンを伴い、乳管(内腔)および小葉の上皮細胞の大部分で強い染色を示した。例は、典型的なクラス-1(タイプ-0)、クラス-2およびクラス-3の腫瘍を示している。矢印は、腫瘍と関連して強く染色される正常な乳腺を示している。原倍率、×100。
【図1b】ヒト乳癌におけるNumb発現を示す図である。NumbのmRNAのアンチセンスプローブによるin-situハイブリダイゼーションを、パラフィン切片で行った。対応するセンスプローブによる対照ハイブリダイゼーションでは、シグナルは得られなかった(図示せず)。典型的なクラス-1(左)およびクラス-3(右)の腫瘍のマッチングした明視野(上)および暗視野(下)の例が示されている。Numb転写物は、暗視野(下)の明るい点として現れている。原倍率、×200。
【図2a】クラス-1(右)およびクラス-3(左)の患者由来の、一次のマッチングした正常(上)および腫瘍(下)乳腺細胞を、MG132(+)で12時間治療、または疑似治療(-)し、抗Numbで染色した結果を示す図である。原倍率、×63。結果は、3つの独立した実験を代表するものである。さらに、類似の結果が、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3の患者由来の一次培養物により得られた(図示せず)。
【図2b】(a)と同じ細胞由来のすべての細胞溶解物を、抗Numbでイムノブロットした結果を示す図である(上)。分子量マーカーは、右側にKDaで示されている。一般的には、2つのNumb特異的バンド(それぞれは恐らく間隔の狭い二重線に対応)は、ヒト乳腺細胞で検出される。同等のローディングが、抗Numbによるリプローブで確認された。結果は、3つの独立した実験を代表するものである。さらに、類似の結果が、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3の患者由来の一次培養物により得られた(図示せず)。
【図2c】一次腫瘍乳腺細胞を、図の通り、疑似治療し(-)、またはMG132(+)に12時間曝露した結果を示す図である。溶解物は、指示抗体によりイムノブロット(WB)された。結果は、3つの独立した実験を代表するものである。さらに、類似の結果が、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3の患者由来の一次培養物により得られた(図示せず)。
【図2d】クラス-1およびクラス-3の患者由来の腫瘍乳腺細胞を、図の通り、疑似治療し(-)、またはMG132(+)へ6時間曝露した結果を示す図である。溶解物は、モノクローナル抗Numb抗体により免疫沈降され、指示抗体によりイムノブロット(WB)された。分子量マーカーは、右側にKDaで示されている。結果は、3つの独立した実験を代表するものである。さらに、類似の結果が、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3の患者由来の一次培養物により得られた(図示せず)。
【図3a】クラス-1(タイプ-0)(左)およびクラス-3(右)の患者由来の、一次乳腺腫瘍細胞を、「方法」に記載されている通り、GFPまたはNumb-GFP融合タンパク質をコードするレトロウイルスで形質導入した結果を示す図である。3週間後、コロニーを数えるためプレートを固定し、染色した(下)。上段の棒グラフは、3組のプレートの平均コロニー(コロニー形成単位±SD)を示す。結果は、3つの独立した実験を代表するものである。さらに、類似の結果が、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3患者由来の一次培養物により得られた(図示せず)。
【図3b】感染/発現の同等の有効性を実証するために、導入遺伝子の一過性のレトロウイルス送達時に、落射蛍光顕微鏡(上)またはイムノブロット(下)で検出した、GFPおよびNumb-GFP融合タンパク質の発現を示す図である。
【図4a】クラス-1(タイプ-0)(上)およびクラス-3(下)の患者由来の一次腫瘍乳腺細胞を、1時間、MG132(+)で治療、または疑似治療(-)し、抗Numbで染色した結果を示す図である。原倍率、×40。クラス-1、MG132未治療細胞におけるNotch発現の基礎的なレベルの低さ、およびMG132治療群の同じクラスにおける核内Notchの存在に注目されたい。結果は、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3の患者由来の一次培養物により得られたものを代表するものである(図示せず)。
【図4b】CBF-1反応レポーター遺伝子活性を、「材料および方法」に記載の通り、クラス-1(タイプ-0)およびクラス-3の患者由来の正常および腫瘍乳腺細胞で評価した結果を示す図である。3組で行われた2つの独立した実験の平均発光量比(fold induction)(±SD)が示されている。結果は、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3の患者由来の一次培養物により得られたものを代表するものである(図示せず)。
【図4c】クラス-1(タイプ-0)およびクラス-3の患者由来の正常および腫瘍乳腺細胞由来の全RNAにおけるHES-1 mRNA発現を示す図である。3組で行われた2つの独立した実験の平均発光量比(±SD)が示されている。結果は、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3の患者由来の一次培養物により得られたものを代表するものである(図示せず)。
【図5a】一次の正常(左)または腫瘍(右)乳腺細胞に、NumbのsiRNAオリゴまたは対照(ctr)オリゴを72時間トランスフェクトし、HES-1 mRNA発現レベルについて分析し(棒グラフ)または指示Abでイムノブロット(WB)した結果を示す図である。3組で行われた2つの独立した実験の平均発光量比(±SD)が示されている。結果は、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3の患者由来の一次培養物により得られたものを代表するものである(図示せず)。
【図5b】クラス-1(タイプ-0)およびクラス-3の患者由来の一次腫瘍乳腺細胞を、GFPまたはNumb-GFPで形質導入し、感染後72時間のHES-1 mRNA発現レベルについて分析した結果を示す図である(タンパク質発現対照物は、図3bの通りであるが、ここでは図示しない)。同じ患者由来の正常乳腺細胞は、予想通り、クラス-3腫瘍のような反応を示した(図示せず)。3組で行われた2つの独立した実験の平均発光量比(±SD)が示されている。結果は、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3の患者由来の一次培養物により得られたものを代表するものである(図示せず)。
【図5c】クラス-1(タイプ-0)(左)およびクラス-3(右)の患者由来の一次腫瘍乳腺細胞を、γ-セクレターゼ阻害剤DFP-AAで10日間治療、または疑似治療(ctr)し、次いでコロニーを数えるため染色した結果を示す図である(下)。上段の棒グラフは、3組のプレートの平均コロニー数(コロニー形成単位±SD)を示す。結果は、3つの独立した実験を代表するものである。結果は、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3の患者由来の一次培養物により得られたものを代表するものである(図示せず)。
【図5d】(a)と同様に治療された細胞由来のHES-1 mRNA発現、3組で行われた2つの独立した実験の平均発光量比(±SD)を示す図である。結果は、3例のクラス-1(タイプ-0)および3例のクラス-3の患者由来の一次培養物により得られたものを代表するものである(図示せず)。
【図6】カプランマイヤープロットにおける、Numbレベルによる乳癌患者の生存を示す図である。
【図7】カプランマイヤープロットにおける、Numbレベルによる乳癌患者の生存を示す図である。
【図8】NumbレベルおよびERまたはp53状態による乳癌患者の生存を示す図である。
【図9】Numbレベル、ERおよびp53状態による乳癌患者の生存を示す図である。
【図10】E1Aにより誘導された遺伝子、ならびにE1A(dl520)感染TD C2C12筋小管、増殖(MYB)C2C12筋芽細胞および増殖(MYB)MSC筋芽細胞におけるRTQ-PCRの結果を示す図である。第1列は、マウスアクセッション番号である。第2列は、マウスの名前および説明である。第4列は、ヒト配列のアクセッション番号である。
【図11】制御機構に応じてクラスA、B、CまたはDに割り当てられたE1A誘導遺伝子を示す図である。列は、野生型E1Aによる誘導に伴う命名条件下の誘導比を示す。「Ratio 24h/36h」の見出しがついた列は、24時間および36時間における誘導比を示す。
【図12a】様々な組織における命名遺伝子の陽性腫瘍試料のパーセンテージを示す図である。
【図12b】マッチングした正常対応物(N)と比較した、腫瘍試料(T)の癌細胞由来の特異的シグナルを示す、明視野および暗視野顕微鏡分析を示す図である。
【図12c】血清添加およびノコダゾール誘導G2/M停止後に放出されるHeLa細胞で刺激された、G0同調血清飢餓NIH 3T3細胞における4つのE1A誘導遺伝子の相対mRNAの細胞周期プロットを示す図である。ほとんどすべてのクラスD遺伝子は、血清反応依存性および非依存性様式のいずれでも制御された細胞周期ではないのに対し、すべてのクラスAおよびB遺伝子は、制御された細胞周期であり、クラスC遺伝子は、わずかに制御された細胞周期である。クラスA-XTP1(黒い四角)、クラスB-MGC22679(白い四角)、クラスD-TRpC4AP(白丸)、クラスD-SKIN(黒丸)。
【図13a】大腸特異的組織マイクロアレイ(TMA)におけるin situ ハイブリダイゼーションによる、大腸癌進行腫瘍(47%〜76%)で強く過剰発現された6つのクラスD遺伝子すべての結果を示す図である(N=正常上皮、I=過形成性ポリープ、A=アデノーマ、T=腺癌)。各列の頭の数は、陽性試料のパーセンテージを示す。括弧内の数は、進行病期ごとに試験された全試料を表す。
【図13b】プローブシグナルを対応する組織切片にマッチングさせた明視野および暗視野分析を示す図である。
【図14A】選択されたクラスD遺伝子が、乳癌の疾患転帰を予測することを示す図である。3種類のクラス-D遺伝子(SKIN、TRPC4APおよびCh-TOG)は、2つの独立したデータセット(本発明者により生成されたもの(A)およびvan't Veer(42)からのもの(B))で、予後転帰の予測因子として共に使用された。データは、「良好」(点線)、または「不良」(実線)サインの関数として、カプラン-マイヤープロットにおいて、転移性無再発生存率が示されている。(C)3種類の予測的クラス-D遺伝子のQRT-PCR分析は、15例の無作為選択された乳癌患者において実施された(全例とも診断時リンパ節転移陰性)。患者はすべて、エストロゲン受容体の有無が均一(ER陽性)であった。5例は、N0患者(5年無病患者)であり、15例は、N0+患者(5年以内に転移性疾患を再発した患者)であった。QTR-PCR値は、患者1(1.0とする)に対して標準化された。次いで、遺伝子ごとに中央値が確定され、閾値を上回る以下の値に対し、それぞれ0または1のスコアを割り振ることで中央値に基づくマトリクスが作成された。次いで、2つのマトリクススコアの合計を用いて「良好」(スコア0〜1)または不良(スコア2〜3)ラベルが割り振られた。無転移生存率は、「良好」(点線)、または「不良」(実線)サインの関数として、カプラン-マイヤープロットにおいて示されている。A〜Cでは、P値は、ログランク検定により算出された。
【図14B】図14Aを参照。
【図14C】図14Aを参照。
【図14D】クラスA、BおよびC遺伝子予測因子に基づく、予後良好または不良な患者の無遠隔転移生存率を示す図である。クラスA、BおよびCは、手術時にリンパ節転移が見られなかった乳癌患者のサブグループであって、アフィメトリックスで分析した5年追跡期間で、転移性疾患の発症(N0+)または無病のまま(N0-)であった乳癌患者のサブグループにおける予後転帰の予測因子として共に使用された。
【図15A】siRNAによるノックダウンSKINが、様々な腫瘍細胞系の増殖を減少させることを示す図である。6種類の異なる腫瘍細胞系(記載の通り)は、SKIN特異的siRNA(Aの白丸、BおよびCのRNAi)、または対照のスクランブル化オリゴ(Aの黒い三角、BおよびCのスクランブル)または疑似治療(Aの黒い四角、BおよびCの疑似)で治療した。治療の24時間後に、細胞を再播種して細胞増殖を測定(A)、またはQRT-PCRによりSKIN転写レベルを分析(B)した。A.標準増殖培地に再播種した細胞を、指示された時間にカウントした。データは、再播種後24時間目にプレートに存在している細胞数(1とする)に対して表されている。B. Q-RT-PCRデータは、細胞系間の比較を可能にするため、増殖MCF10A細胞で検出されたものに対して表されている。C. DLD1およびHT-29細胞の場合、SKINレベルは、抗SKIN抗体を用いたウェスタンブロットでも測定された。
【図15B】図15Aを参照。
【図15C】図15Bを参照。
【図16】クラス-D遺伝子のONCOMINE分析の結果を示す図である。統計フィルター(Bonferroniコレクションによるp値<0.05)を通過する遺伝子は、検討されたクラスごとにこのlog2中央値が共に示している。ここで、「N」は正常試料、「T」は原発腫瘍、「M」は遠隔転移を表す。
【図17A】SKINは、大腸癌で増幅されることを示す図である。MCF10A(正常ヒト上皮細胞)を対照として用いた、分裂中期遮断腫瘍細胞(用語集:p26,l21:metaphase-blocked tumour cell)のFISH分析で得られた増幅データのまとめを示す図である:「RNAレベル」、Q-RT-PCRで測定され、MCF10A細胞における値に対し標準化されたSKIN転写物;「コピー」、SKIN RP11-1139F3プローブによるシグナル数;「chr.8(第8染色体)」、8q RP11-1031I1プローブによるシグナル数;「倍数性」、SKINシグナルと第8染色体シグナルの比。列「コピー」では、追加の特徴は、以下の印が付けられている:*、「タンデムリピート」;$、余分な染色体コピー;#、hsr(均一染色領域)。
【図17B】SKINおよび第8染色体のヒト大腸癌標本のFISH分析で得られた結果のグラフである。SKINシグナル/細胞平均数をカウントし、第8染色体プローブを用いたシグナル数に対して標準化した。試料は、上皮細胞の>50%が、>4シグナル/細胞を示す場合、増幅されたとみなした。例が示されている:N、正常上皮(コピー/細胞=2);非増幅腫瘍(コピー/細胞<4)、増幅腫瘍(コピー/細胞>4)。棒グラフは、様々な大腸標本におけるSKIN過剰発現標本(ISHで評価)の%を示す(n、分析試料数)。
【図18A】本発明者の乳癌予測因子(13遺伝子)に基づく、良好(点線)または不良(実線)発現サインを用いた患者の無転移生存率を示す図である。P値は、ログランク検定により算出された。
【図18B】Van't Veer LJ(Nature 415(31)、530〜535頁(2002年))の予測因子に基づく、良好(点線)または不良(実線)発現サインを用いた患者の無転移生存率を示す図である。P値は、ログランク検定により算出された。
【図18C】Q-RT-PCRバリデーションを用いた本発明者の乳癌予測因子(13遺伝子)に基づく、良好(点線)または不良(実線)発現サインによる患者の無転移生存率を示す図である。P値は、ログランク検定により算出された。
【図19A】本発明者のNSCLC予測因子(12および21遺伝子)に基づく、良好(点線)または不良(実線)発現サインによる患者の無転移生存率を示す図である。P値は、ログランク検定により算出された。Beerらのデータセットに対する12遺伝子予測因子の結果を示す。
【図19B】Bhattachargeeらのデータセットに対する12遺伝子予測因子の結果を示す。
【図19C】全例が病期IのNSCLC腺癌患者30例を独立した1セットとして行われた、12遺伝子予測因子のQ-RT-PCR分析結果を示す。幅の広い点線=未定。
【図19D】全例が病期IのNSCLC腺癌患者30例を独立した1セットとして行われた、21遺伝子予測因子のQ-RT-PCR分析結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における癌の評価指標を提供する方法であって、
前記患者から得られた組織の分析試料を提供することと、
前記試料のNumb状態を判定すること
を含む方法。
【請求項2】
前記試料のNumb状態の判定が、前記試料のNumbタンパク質レベルを判定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レベルを、対照試料の細胞における前記タンパク質レベルと比較することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
癌が乳癌である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
癌の予後または診断に関連する1種または複数種のさらなるタンパク質の分析試料中の状態を判定することをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
分析試料におけるER(エストロゲン受容体)および/またはP53状態を判定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記試料におけるNotch活性レベルを判定することをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
Notchにより転写制御された1種または複数種の遺伝子の発現レベルを判定することをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
癌の評価に使用するためのキットであって、Numb遺伝子発現産物に対する特異的結合パートナー、および癌の予後または診断に関連した少なくとも1つの他の遺伝子発現産物に対する特異的結合パートナーを含むキット。
【請求項10】
P53および/またはER遺伝子発現産物に対する特異的結合パートナーを含む、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
Numb遺伝子発現産物の特異的結合パートナーを含む、癌の評価用キットであって、前記結合パートナーが、固体担体に固定されているキット。
【請求項12】
患者の癌の評価用キットを製造するための、Numb発現産物の特異的結合パートナーの使用。
【請求項13】
キットが、請求項9から11のいずれか一項に記載のキットである、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
評価が、癌の診断または予後である、請求項11に記載のキットまたは請求項12もしくは13に記載の使用。
【請求項15】
評価が、Notchシグナル伝達阻害剤による治療に対する患者における腫瘍の感受性の測定である、請求項11に記載のキットまたは請求項12もしくは13に記載の使用。
【請求項16】
癌が乳癌である、請求項11から15のいずれか一項に記載のキットまたは使用。
【請求項17】
Numb発現産物が、Numbタンパク質である、請求項11から16のいずれかに記載のキットまたは使用。
【請求項18】
Numbタンパク質の特異的結合パートナーが抗体である、請求項17のいずれかに記載のキットまたは使用。
【請求項19】
抗体が、モノクローナルである、請求項18に記載のキットまたは使用。
【請求項20】
Notchシグナル伝達阻害剤による治療に対する患者における腫瘍の感受性を測定する方法であって、
前記患者から得られた腫瘍組織の分析試料を提供することと、
前記試料のNumb状態を判定すること
を含む方法。
【請求項21】
前記分析試料のNumb状態の判定が、前記試料におけるNumbタンパク質レベルを判定することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記レベルを、対照試料から得られた参照レベルと比較することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
癌が乳癌である、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
Notchシグナル伝達阻害剤を前記患者に投与することをさらに含む、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
患者から得られた試料におけるNotch活性を、前記阻害剤の投与の前後に測定することをさらに含む、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
Notch活性の測定が、Notchにより発現が制御されている少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
患者の癌を、治療するための薬剤の製造における、Notchシグナル伝達阻害剤の使用であって、前記患者が、対照試料と比べて腫瘍のNumb活性が低下している使用。
【請求項28】
前記患者が、対照試料と比べてNumbタンパク質レベルが低下している、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
癌が乳癌である、請求項27または請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記患者が、請求項20に記載の方法の対象である、請求項27から29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
Numbポリペプチド、およびNumbを分解の標的にすることが可能な酵素を含む試験系を提供することと、
前記試験系を試験薬に接触させることと、
Numbを分解の標的にすることを阻害する試験薬の能力を評価すること
を含む方法。
【請求項32】
癌の評価指標の提供に使用するための、遺伝子発現産物の特異的結合パートナーを選択する方法であって、
最終分化した哺乳類の培養細胞を、細胞の細胞周期への再進入を引き起こす薬剤と接触させることにより、その発現が調節される遺伝子を同定することと、
前記遺伝子の発現産物に対する特異的結合パートナーを選択すること
を含む方法。
【請求項33】
前記遺伝子が、哺乳類の腫瘍において調節された発現を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
薬剤がE1Aである、請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも2つの遺伝子を同定することと、少なくとも2つの遺伝子の発現産物に対する特異的結合パートナーを選択することとを含む、請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
a)培養細胞をE1Aタンパク質と接触させて、細胞の細胞周期への再進入を引き起こすことにより、その発現が調節され、
b)同じE1A活性化シグナル伝達経路に属する
少なくとも2つの遺伝子を同定することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも2つの遺伝子が、哺乳類の腫瘍において調節された発現を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ポケットタンパク質の不活化により、その発現が強くは調節されず、且つ、E1Aポケット結合変異体により、その発現が著しく調節される、少なくとも2つの遺伝子の同定を含む、請求項32から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ポケットタンパク質がRBである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項32から39のいずれか一項に記載の特異的結合パートナーを選択していることと、キット中に前記結合パートナーを組み込むこととを含む、癌の評価用キットの作製方法。
【請求項41】
少なくとも2、3、4または5つの前記遺伝子が、キットに組み込まれている、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
特異的結合パートナーによりその発現産物が結合する遺伝子の転写物の検出に適した核酸配列を組み込むことをさらに含む、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
キットが遺伝子チップアレイである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
癌の評価指標を提供する方法であって、請求項32から39のいずれか一項に記載の特異的結合パートナーを選択していることと、前記患者から得られた組織の分析試料を提供することと、少なくとも1つの遺伝子発現産物のレベルを、前記選択された結合パートナーとの結合の判定により判定することとを含む方法。
【請求項45】
このように判定されたレベルを、対照試料の細胞中の前記発現産物レベルと比較することをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
患者における癌の評価指標を提供する方法であって、
前記患者から得られた組織の分析試料を提供することと、
DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1、または図11に収載されたその他の遺伝子から選択された少なくとも1つの遺伝子の、試料中の発現産物レベルを判定すること
を含む方法。
【請求項47】
このように判定されたレベルを、対照試料の細胞中の前記発現産物レベルと比較することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
癌が乳癌であり、方法が、1つまたは複数のch-TOG、SKIN、およびTRPC4APの、試料における発現産物レベルを判定することを含む、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
癌が大腸癌であり、方法が、1つまたは複数のSKIN、SMU-1およびch-TOGの、試料における発現産物レベルを判定することを含む、請求項46または47に記載の方法。
【請求項50】
患者における乳癌の評価指標を提供する方法であって、
前記患者から得られた組織の分析試料を提供することと、
表2の少なくとも1つの遺伝子の、前記試料中の発現産物レベルを判定すること
を含む方法。
【請求項51】
患者におけるNSCLCの評価指標を提供する方法であって、
前記患者から得られた組織の分析試料を提供することと、
表3または表4の少なくとも1つの遺伝子の、前記試料中の発現産物レベルを判定すること
を含む方法。
【請求項52】
前記表の少なくとも2、3、4または5つの前記遺伝子の、前記試料中の発現産物レベルを判定することを含む、請求項50または請求項51に記載の方法。
【請求項53】
このように判定されたレベルを、対照試料の細胞中の前記発現産物レベルと比較することをさらに含む、請求項50から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
癌の評価に使用するためのキットであって、
DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1、もしくは図11に収載されたその他の遺伝子から選択された少なくとも1つの遺伝子、または
ch-TOG、SKINおよびTRPC4APの少なくとも1つ、
SKIN、SMU-1およびch-TOGの少なくとも1つ、または
表2の少なくとも1つの遺伝子、または
表3もしくは表4の少なくとも1つの遺伝子
の発現産物に対する特異的結合パートナーを含み、
前記特異的結合パートナーが、固体表面に固定されているキット。
【請求項55】
表2、表3または表4の少なくとも2、3、4または5つの遺伝子の発現産物に対する特異的結合パートナーを含む、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
前記遺伝子の転写物の検出に適した核酸配列を含む、請求項54または請求項55に記載のキット。
【請求項57】
遺伝子チップアレイである、請求項56に記載のキット。
【請求項58】
癌の評価指標の提供に使用するためのキットの製造における、
DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1、もしくは図11に収載されたその他の遺伝子から選択された遺伝子、または
表2から選択された遺伝子、または
表3もしくは表4から選択された遺伝子
の特異的結合パートナーの使用。
【請求項59】
患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
a)DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1、もしくは図11に収載されたその他の遺伝子から選択されたタンパク質、または表2、表3もしくは表4のタンパク質を提供することと、
b)タンパク質を試験薬に接触させることと、
c)前記試験薬が、タンパク質と結合および/またはタンパク質の活性を調節することが可能かどうか判定すること
を含む方法。
【請求項60】
患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
最終分化した哺乳類の培養細胞において、前記細胞の細胞周期への再進入を引き起こす薬剤と前記細胞を接触させることにより、その発現が調節される遺伝子を同定することと、
前記遺伝子により発現されたタンパク質を提供することと、
前記タンパク質を試験薬に接触させることと、
前記試験薬が、タンパク質と結合および/またはタンパク質の活性を調節することが可能かどうか判定すること
を含む方法。
【請求項61】
前記遺伝子の発現が、ポケットタンパク質の不活化により強くは調節されず、E1Aポケット結合変異体により著しく調節される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
細胞周期への再進入を引き起こす薬剤が、E1Aである、請求項60または請求項61に記載のスクリーニング方法。
【請求項63】
前記試験薬が、前記タンパク質に結合する抗体またはその結合フラグメントである、請求項59から62のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項64】
前記試験薬が、前記タンパク質のフラグメントまたはその模倣物である、請求項59から62のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項65】
患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
a)形質転換された培養細胞を提供することと、
b)前記細胞を試験薬に接触させることと、
c)前記試験薬が、DDX21、SF3B1、ch-TOG、SKIN、TRPC4APおよびSMU-1、もしくは図11に収載されたその他の転写物から選択された転写物、または表2、表3もしくは表4の転写物のレベルを調節することが可能かどうかを判定すること
を含む方法。
【請求項66】
患者の癌を治療するための候補薬剤のスクリーニング方法であって、
最終分化した哺乳類の培養細胞において、前記細胞の細胞周期への再進入を引き起こす薬剤と前記細胞を接触させることにより、その発現が調節される遺伝子を同定することと、
形質転換培養細胞を提供することと、
前記細胞を試験薬に接触させることと、
前記試験薬が、前記遺伝子の転写レベルを調節することが可能かどうかを判定すること
を含む方法。
【請求項67】
前記遺伝子の発現が、ポケットタンパク質の不活化により強くは調節されず、E1Aポケット結合変異体により著しく調節される、請求項60に記載の方法。
【請求項68】
細胞周期への再進入を引き起こす薬剤が、E1Aである、請求項66または請求項67に記載のスクリーニング方法。
【請求項69】
前記試験薬が、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAiである、請求項66から68のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項70】
癌の治療薬を作製するための、請求項59から69のいずれか一項に記載のスクリーニング方法において得ることが可能な薬剤の使用。

【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【公表番号】特表2008−514209(P2008−514209A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533908(P2007−533908)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010153
【国際公開番号】WO2006/037462
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(507101761)
【Fターム(参考)】