説明

癌性疾患修飾抗体

本発明は、スクリーニングの新規パラダイムを用いて癌性修飾抗体を産生するための方法に関する。癌細胞の細胞傷害性をエンドポイントとして使用して抗癌抗体を分離することによって、この方法は、治療及び診断目的での抗癌抗体の産生を可能にする。これらの抗体は、癌の病期分類及び診断の助けとして使用することができ、原発性腫瘍及び腫瘍転移を治療するために使用できる。抗癌抗体は、毒素、酵素、放射性化合物及び造血性細胞と結合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌性疾患修飾抗体(CDMAB)の単離及び産生、並びに治療及び診断過程におけるこれらのCDMABの単独での使用あるいは1又は複数のCDMAB/化学療法剤との併用に関する。本発明は、更に、本発明のCDMABを利用する結合アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療としてのモノクローナル抗体:癌を有する個体はそれぞれ独特であり、個人の独自性と同じように他の癌と異なる癌を有する。それにも拘らず、現行の治療では、同じ種類で同じ段階の癌を有する全ての患者が同じように処置される。これらの患者の少なくとも30パーセントは、第一選択治療に失敗し、これが更なる一連の治療をもたらし、治療の失敗、転移、最終的には死亡の可能性を増大させる。優れた治療のアプローチは、それぞれの個体について治療法をカスタマイズすることである。カスタマイズに適した唯一の現行の治療は、外科手術である。化学療法及び放射線治療は、患者に合わせることができず、外科手術それ自体は、ほとんどの場合において、治癒をもたらすには不十分である。
【0003】
モノクローナル抗体の出現によって、カスタマイズ型の治療の方法を開発する可能性がより現実的になった。それは、各抗体が単一のエピトープに対するものであり得るからである。更に、特定の個体の腫瘍を一意的に規定する一団のエピトープに対する、抗体の組み合わせを産生することが可能である。
【0004】
癌性の細胞と正常な細胞との大きな違いは、癌性の細胞が形質転換細胞に特異的な抗原を含有することであることを認識していた結果、科学界は、癌抗原に特異的に結合することによって、形質転換細胞を特異的に標的とするモノクローナル抗体を設計することができると長年考えてきた。それ故、モノクローナル抗体は、癌細胞を排除する「魔法の弾丸」として役立つことができるという信念が生じた。しかしながら、全ての癌に役立つことができる唯一のモノクローナル抗体はないこと、及びモノクローナル抗体は、標的癌治療としての分類として展開できることが、現在広く認識されている。本発明の開示された教示に従って単離されたモノクローナル抗体は、例えば腫瘍量を減少させることにより、患者にとって有益となるような癌性疾患の過程の修飾が示されており、癌性疾患修飾抗体(CDMAB)又は「抗癌」抗体として本明細書で広く称される。
【0005】
現在のところ、癌患者は通常治療の選択肢がほとんどない。癌治療に対する厳格に管理されたアプローチは、世界的な生存率及び罹患率において改善をもたらした。しかし、特定の個体に対しては、これらの統計データの改善は、彼らの個人的な状態における改善と必ずしも相関関係がない。
【0006】
したがって、開業医がそれぞれの腫瘍を同じコホートにおける他の患者とは無関係に治療することができる方法論が提案されても、それは、ただ1人のために適合された特有の治療アプローチを可能にするのである。理想的にはそのような治療過程が治癒の比率を増加し、より良好な成果を生じるのであれば、それは、長年にわたる切実な要求を満足させるであろう。
【0007】
歴史的に、ポリクローナル抗体の使用は、ヒトの癌治療では限られた成果を伴って使用されてきた。リンパ腫及び白血病は、ヒト血漿を用いて治療されてきたが、長期間の寛解又は反応はほとんどなかった。更に、化学療法と比較して、再現性が欠如し、追加的な利益がなかった。乳癌、黒色腫及び腎細胞癌のような固形腫瘍も、ヒト血液、チンパンジー血清、ヒト血漿及びウマ血清を用いて治療され、同様に予測不能で効果のない結果を伴っている。
【0008】
固形腫瘍用のモノクローナル抗体の多くの診療試験が行われてきた。1980年代には、特定の抗原に対する抗体を使用するか、又は組織選択性に基づいて、ヒト乳癌において少なくとも4回の臨床試験が行われ、少なくとも47人の患者のうち1人しか奏功しなかった。1998年になって、ヒト化抗Her2/neu抗体(Herceptin(登録商標))をシスプラチンと組み合わせて使用した臨床試験が成功した。この試験では、37人の患者で奏功を評価し、約四分の一が部分奏功率を有し、更に四分の一が僅かな又は安定した疾患進行を有した。奏功した者の進行時間の中央値は、8.4か月であり、奏功期間の中央値は5.3か月であった。
【0009】
Herceptin(登録商標)は、Taxol(登録商標)と組み合わせた第一次使用として1998年に認可された。臨床研究の結果は、Taxol(登録商標)単独を摂取した群(3.0か月)と比較して、抗体治療+Taxol(登録商標)を摂取した群(6.9か月)で疾患が進行した時間の中央値が増加したことを示した。生存期間の中央値で僅かな増加もあり、Herceptin+Taxol(登録商標)の治療類群対Taxol(登録商標)単独の治療群の場合、22か月対18か月であった。加えて、Taxol(登録商標)単独と比較した、抗体+Taxol(登録商標)組み合わせ群における完全奏功(8パーセント対2パーセント)及び部分奏功(34パーセント対15パーセント)の両方の数が増加した。しかし、Herceptin(登録商標)及びTaxol(登録商標)による治療は、Taxol(登録商標)単独の治療と比較して、心毒性の高い発生率をもたらした(それぞれ、13パーセント対1パーセント)。また、Herceptin(登録商標)治療は、現在知られている機能又は生物学的に重要なリガンドを持たないレセプターである、ヒト上皮増殖因子レセプター2(Her2/neu)を過剰発現している(免疫組織化学(IHC)分析により決定された)患者にのみ、転移性乳癌を有する患者のおよそ25%にしか有効ではなかった。したがって、乳癌の患者において、依然として満たされていない大きな要求が存在する。Herceptin(登録商標)治療により利益を受けることができる患者でも、依然として化学療法を必要とし、したがって、依然として、少なくともある程度は、この種類の治療の副作用に対処しなければならない。
【0010】
結腸直腸癌を調査する臨床試験は、糖タンパク質標的と糖脂質標的の両方に対する抗体を必要とする。腺癌にいくらかの特異性を有する17−1Aのような抗体では、60人の患者で第2相臨床試験を行い、部分奏功を示した患者が1人だけであった。別の試験では、17−1Aの使用は、追加のシクロホスファミドを使用したプロトコールにおいて、52人の患者のうち、完全寛解が1人及びやや有効(minor response)が2人だけであった。現在まで、17−1Aの第III相臨床試験は、第III期結腸癌の補助療法として、改善された効能を実証していない。最初に画像化のために認可されたヒト化マウスモノクローナル抗体の使用も、腫瘍退縮を生じさせなかった。
【0011】
最近になって、モノクローナル抗体の使用による結腸直腸癌臨床研究において肯定的な結果が得られるようになった。2004年には、ERBITUX(登録商標)が、イリノテカンに基づく化学療法に難治性である、EGFR発現転移性結腸直腸癌の患者における第二選択治療のために認可された。2群第II相臨床試験と単独群研究の両方の結果は、イリノテカンと組み合わせたERBITUX(登録商標)が、それぞれ4.1か月と6.5か月の疾患進行時間の中央値で、それぞれ23パーセントと15パーセントの奏功率を有したことを示した。同じ2群第II相臨床試験及び別の単独群研究の結果は、ERBITUX(登録商標)単独での治療が、それぞれ1.5か月と4.2か月の疾患進行時間の中央値で、それぞれ11パーセントと9パーセントの奏功率をもたらしたことを示した。
【0012】
そのため、スイスと米国の両方において、イリノテカンと組み合わせたERBITUX(登録商標)の治療が、そして米国において、ERBITUX(登録商標)単独の治療が、第一次イリノテカン療法が失敗した結腸癌患者の第二選択治療として認可された。したがって、Herceptin(登録商標)と同様に、スイスにおける治療は、モノクローナル抗体と化学療法の組み合わせとしてのみ認可されている。加えて、スイスと米国の両方における治療は、患者にとって第二次療法としてのみ認可されている。また2004年には、AVASTIN(登録商標)が、転移性結腸直腸癌の第一選択治療として、静脈内5−フルオロウラシルに基づく化学療法と組み合わせての使用が認可された。第III相臨床研究の結果は、AVASTIN(登録商標)+5−フルオロウラシルで治療した患者の生存の中央値が、5−フルオロウラシル単独で治療した患者と比較して延長したことを実証した(それぞれ、20か月対16か月)。しかし、この場合もHerceptin(登録商標)及びERBITUX(登録商標)と同様に、治療は、モノクローナル抗体と化学路療法の組み合わせとしてのみ認可されている。
【0013】
また、肺、脳、卵巣、膵臓、前立腺及び胃癌において乏しい結果を生じ続けている。非小型細胞肺ガンの最近の最も有望な結果は、治療が、化学療法剤TAXOTERE(登録商標)と組み合わせた細胞死滅薬ドキソルビシンと結合するモノクローナル抗体(SGN−15;dox−BR96、抗Sialyl−LeX)を含む、第II相臨床試験からもたらされた。TAXOTERE(登録商標)は、肺癌の第二選択治療のために唯一FDAにより認可された化学療法である。初期データは、TAXOTERE(登録商標)単独と比較して全体的に改善された生存を示す。研究のために動員された62人の患者のうち、三分の二は、SGN−15をTAXOTERE(登録商標)と組み合わせて摂取し、一方、残りの三分の一は、TAXOTERE(登録商標)単独を摂取した。TAXOTERE(登録商標)と組み合わせたSGN−15を摂取した患者では、全生存期間の中央値は、TAXOTERE(登録商標)単独を摂取した患者の5.9か月と比較して、7.3か月であった。1年と18か月の全生存期間は、TAXOTERE(登録商標)単独を摂取した患者でのそれぞれ24パーセント及び8パーセントと比較して、SGN−15+TAXOTERE(登録商標)を摂取した患者では、それぞれ29パーセント及び18パーセントであった。更なる臨床試験が計画されている。
【0014】
前臨床上、黒色腫におけるモノクローナル抗体の使用では、いくらかの限定された成果が得られている。これらの抗体のうちで臨床試験に到達したものはほとんどなく、現在まで、第III相診療試験で承認されたもの又は好ましい結果を実証したものはない。
【0015】
疾患を治療する新薬の発見は、疾患の病原に明白に寄与している既知の遺伝子30,000個の産物のうちから、関連する標的を同定できないことにより妨げられている。腫瘍学研究において、潜在的な薬剤標的は、多くの場合、単に腫瘍細胞で過剰発現しているという事実によって選択される。このように同定された標的は、次に多数の化合物との相互作用のためにスクリーニングされる。潜在的な抗体療法において、これらの候補化合物は、通常、Kohler及びMilsteinにより定められた基本的な原則(1975,Nature,256,495−497,Kohler and Milstein)に従ったモノクローナル抗体生成の伝統的な方法によって誘導される。脾臓細胞を、抗原(例えば、全細胞、細胞分画、精製抗原)により免疫化したマウスから収集し、不死化ハイブリドーマパートナーと融合する。得られたハイブリドーマを、標的に最も熱心に結合する抗体の分泌のためにスクリーニングし、選択する。Herceptin(登録商標)及びRITUXIMABを含む、癌細胞を対象とする多くの治療用及び診断用抗体が、これらの方法を使用して産生され、その親和性に基づいて選択されてきた。この戦略の欠点には、2つの部分がある。第1には、治療用又は診断用抗体結合に適切な標的の選択は、組織特異的発癌性経過を取り巻く知識の不足及びその結果としての単純な方法、例えば過剰発現による選択、によって制限されており、これらにより標的が同定されることである。第2には、最大の親和性を持ってレセプターに結合する薬剤分子が、通常、シグナルを開始する又は阻害する最高の確率を有するという前提は、必ずしもそうであるとは限らない場合がある。
【0016】
乳癌及び結腸癌の治療でいくらかの進展があるにも拘らず、有効な抗体療法の確認及び開発は、単独の作用物質又は同時治療のいずれにおいても、全ての種類の癌では不十分である。
【0017】
米国特許第5,750,102号は、患者の腫瘍からの細胞を、患者の細胞又は組織からクローン化できるMHC遺伝子により形質転換する方法を開示する。次にこれらの形質転換細胞を使用して患者に予防接種する。
【0018】
米国特許第4,861,581号は、哺乳動物の新生細胞及び正常細胞の内部細胞成分に特異性があるが、外部成分にはないモノクローナル抗体を得る工程、モノクローナル抗体を標識する工程、標識抗体と、新生細胞を死滅させる治療を受けた動物の組織とを接触させる工程、及び縮退新生細胞の内部細胞成分への標識抗体の結合を測定することによって、治療の効果を決定する工程を含む方法を開示する。ヒト細胞内抗原に対する抗体の調製において、この特許権者は、悪性細胞がそのような抗原の都合のよい供給源を代表することを認識している。
【0019】
米国特許第5,171,665号は、新規抗体及びその製造方法を提供する。特に、特許は、ヒト腫瘍、例えば、結腸及び肺の腫瘍に関連するタンパク質抗原に強く結合するが、正常な細胞にかなり低い程度で結合する特性を有するモノクローナル抗体の形成を教示している。
【0020】
米国特許第5,484,596号は、ヒト癌患者から腫瘍組織を外科的に除去すること、腫瘍組織を処理して腫瘍細胞を得ること、生存しているが非腫瘍形成性である腫瘍細胞を照射すること、これらの細胞を使用して、患者のために、原発性腫瘍の再発を抑制することができ、同時に転位を抑制することができるワクチンを調製することを含む癌治療の方法を提供する。この特許は、腫瘍細胞の表面抗原に反応性があるモノクローナル抗体の開発を教示する。第4カラム45行目(以下参照)に記載されているように、この特許権者は、ヒト新生物において活性な特異的免疫療法を発現するモノクローナル抗体の開発に自発性腫瘍細胞を利用している。
【0021】
米国特許第5,693,763号は、ヒト癌腫の特性を持つが、起源の上皮細胞に依存しない糖タンパク質抗原を教示している。
【0022】
米国特許第5,783,186号は、Her2発現細胞のアポトーシスを誘発する抗Her2抗体、抗体を産生するハイブリドーマ細胞株、抗体を使用する癌治療の方法、及び前記抗体を含む医薬組成物を記載している。
【0023】
米国特許第5,849,876号は、腫瘍及び非腫瘍組織供給源から精製された、ムチン抗原に対するモノクローナル抗体を産生するための新規ハイブリドーマ細胞株を記載している。
【0024】
米国特許第5,869,268号は、所望の抗原に特異的な抗体を産生するヒトリンパ球を生成する方法、モノクローナル抗体を産生する方法、並びにこの方法により産生されるモノクローナル抗体を記述する。この特許は、特に、癌の診断及び治療に有用な抗HDヒトモノクローナル抗体の産生について記述している。
【0025】
米国特許第5,869,045号は、ヒト癌腫細胞に反応性のある、抗体、抗体フラグメント、抗体コンジュゲート及び一本鎖免疫毒素に関する。これらの抗体が機能する機構には2つの部分があり、それは、分子が、ヒト癌腫の表面に存在する細胞膜抗原と反応すること、更には、抗体が、癌腫細胞内に取り入れられ、続いて結合する能力を有することであり、抗体−薬剤及び抗体−毒素コンジュゲートを形成するのに特に有用である。非修飾形態において、抗体は、特定の濃度で細胞傷害性の特性も表す。
【0026】
米国特許第5,780,033号は、腫瘍の治療及び予防のための自己抗体の使用を開示している。しかし、この抗体は、老齢哺乳動物由来の抗核自己抗体である。この場合、自己抗体は、免疫系で見出される天然抗体の一つの種類であると言われている。自己抗体が「老齢哺乳動物」由来のものであるため、自己抗体は、実際に治療を受けている患者からのものであるという必要条件がない。加えて、この特許は、老齢哺乳動物由来の天然及びモノクローナル抗核自己抗体、並びにモノクローナル抗核自己抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を開示している。
【発明の概要】
【0027】
本願は、癌性疾患修飾モノクローナル抗体をコードするハイブリドーマ細胞株を単離することについて米国特許第6,180,357号特許で教示されている、患者特異性抗癌抗体を産生する方法論を利用する。これらの抗体は、1つの腫瘍について特異的に作ることができ、そのため、癌治療をカスタマイズすることが可能である。本願との関連では、細胞死滅特性(細胞傷害性)又は細胞増殖阻害特性(細胞増殖抑制性)のいずれかを有する抗癌抗体を、以降細胞傷害性と称する。これらの抗体は、癌の病期分類及び診断の助けとして使用することができ、腫瘍転移を治療するために使用できる。これらの抗体を、予防処置の方法で癌予防のために使用することもできる。伝統的な薬剤発見パラダイムに従って生成された抗体と異なり、本方法のようにして生成された抗体は、従来悪性組織の増殖及び/又は生存に不可欠であることが示されていなかった分子及び経路を標的にすることができる。更に、これらの抗体の結合親和性は、より強力な親和性相互作用に従わない場合がある細胞傷害性事象の開始のための要件に適している。また、標準的な化学療法モダリティー、例えば放射性核種と、本発明のCDMABとをコンジュゲートし、それによって、前記化学療法剤の使用に焦点を当てることは、本発明の範囲内である。CDMABは、毒素、細胞傷害性部分、酵素、例えばビオチンとコンジュゲートした酵素、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター部分又は造血性細胞とコンジュゲートすることもでき、それによって、抗体コンジュゲートを形成することができる。CDMABは、単独で、又は1又は複数のCDMAB/化学療法剤と組み合わせて使用することができる。
【0028】
個人に合わせた抗癌治療の展望は、患者を管理する方法に変化をもたらす。考えられる臨床上のシナリオは、診断時に腫瘍サンプルを得て、保存するというものである。このサンプルから、腫瘍を、既に存在している癌性疾患修飾抗体のパネルによって分類することができる。患者は、従来のように病期分類されるが、患者を更に分類するために、利用可能な抗体を使用することができる。患者は既存の抗体で直ちに治療することができ、腫瘍に特異的な抗体のパネルは、本明細書で概説された方法を使用するか、又は本明細書で開示されたスクリーニング方法と併せてファージディスプレーライブラリーを使用することで産生することができる。生成された抗体は、他の腫瘍が、治療されているものと同じエピトープのうちの幾つかを持ちうる可能性があるので、全て抗癌抗体のライブラリーに加えられる。本発明の方法に従って産生された抗体は、これらの抗体に結合する癌を有する何人もの患者の癌性疾患を治療するのに有用であろう。
【0029】
抗癌抗体に加えて、患者は、治療の多様なレジメンの一部として現行の推奨される治療を受けることを選ぶことができる。本発明の方法論により単離された抗体が非癌細胞に対して比較的非毒性であるという事実によって、高用量の抗体の組み合わせを単独で、又は従来の治療と一緒に使用することが可能となる。高い治療指数は短期間での再治療も可能にし、これは治療耐性細胞の発生の可能性を減少するはずである。
【0030】
患者が治療の初期過程に難治性であるか、又は転移が発生する場合、腫瘍に特異的な抗体を生成する方法を再治療のために繰り返すことができる。更に、抗癌抗体を、患者から得た赤血球と結合して、転移の治療のために再注入することができる。転移性癌に対する有効な治療はほとんどなく、転移は、通常、死亡をもたらす不良転帰の前兆である。しかし、転移性癌は、通常、かなり血管新生化されており、赤血球による抗癌抗体の送達は、腫瘍部位へ抗体を集中させる効果を有することができる。転移の前であっても、ほとんどの癌細胞は、その生存を宿主の血液供給に依存し、赤血球と結合した抗癌抗体は、原位置の腫瘍に対しても有効であると考えられる。あるいは、抗体を、他の造血性細胞、例えば、リンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー細胞などとコンジュゲートさせてもよい。
【0031】
抗体には5種類あり、それぞれその重鎖により付与される機能と関連している。一般に、ネイキッド抗体による癌細胞死滅は、抗体依存性細胞傷害性又は補体依存細胞傷害性のいずれかによって媒介されると考えられる。例えば、マウスIgM及びIgG2a抗体は、補体系のC−1成分の結合によりヒト補体を活性化することができ、それによって、腫瘍溶解をもたらすことができる、補体活性化の古典的経路を活性化することができる。ヒト抗体では、最も効果的な補体活性抗体は、一般にIgM及びIgG1である。IgG2a及びIgG3アイソタイプのマウス抗体は、単球、マクロファージ、顆粒球及び特定のリンパ球による細胞死滅をもたらすFcレセプターを有する細胞傷害性細胞を動員するのに有効である。IgG1とIgG3の両方のアイソタイプのヒト抗体はADCCを媒介する。
【0032】
Fc領域を通じて媒介された細胞傷害性は、エフェクター細胞及びそれらの対応するレセプター、あるいはタンパク質、例えばNK細胞、補体、及びT細胞、それぞれの存在を必要とする。これらのエフェクター機構が無い場合、抗体のFc部分は不活性である。抗体のFc部分は、抗体のin vivoにおける薬物動態に影響を及ぼす機能を付与することがあるが、in vitroではこれは作用しない。
【0033】
本発明者が前記抗体を試験する細胞傷害アッセイは、存在するエフェクター機構のいずれをも有しておらず、そしてin vitroで実施される。これらのアッセイは存在するエフェクター細胞(NK、マクロファージ、又はT細胞)又は補体を有していない。これらのアッセイは、一緒に加えられるものによって完全に定義されるため、各成分が特徴となることがある。本明細書で使用するアッセイは標的細胞、培地及び血清のみを含む。標的細胞は、癌細胞又は線維芽細胞であるため、エフェクター機能特性を持っていない。エフェクター機能特性を有する外来細胞を除いて、この機能を有する細胞因子は存在していない。培地は補体又はいずれの細胞も有していない。標的細胞の増殖を支えるために使用される血清は、ベンダーによって開示されているとおり、補体活性を持っていない。更に、本発明者の研究所では、使用する血清中の補体活性が存在しないことを確認済みである。従って、本発明者の研究は、抗体の効果がFabを通じて媒介される抗原結合の効果に全体的に起因するという事実を証明するものである。事実上、標的細胞は、Fabのみを対象とし、これとのみ相互作用している。これは、それらがFcについての受容体を有していないためである。それにも拘わらず、ハイブリドーマは、標的細胞を用いた試験では完全な免疫グロブリンを分泌しており、当該細胞と相互作用する免疫グロブリンの唯一の部分はFabであり、これが抗原結合フラグメントとして作用する。
【0034】
本願で特許請求されている抗体及び抗原結合フラグメントに関し、本願明細書は、表1のデータによって証明されているとおり、細胞傷害性を示した。上述のとおり、そして客観的証拠を通じて本明細書で確認されているとおり、この効果は全体的に腫瘍細胞に対するFabによる結合に起因していた。
【0035】
抗体業界には、Fcがリクルートするエフェクター機構とは無関係に、標的抗原に対する抗体の直接結合に起因する細胞傷害性を媒介することについての十分な証拠が存在している。これについての最良の証拠は、追加の細胞、又は補体(形式的に前記機構を除外するためもの)を有していないin vitroでの実験である。このようなタイプの実験は、完全な免疫グロブリン、又は抗原結合フラグメント、例えばF(ab)’2フラグメントを用いて実施されている。このようなタイプの実験において、抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、Her2抗体及び抗EGFR抗体の場合、標的細胞のアポトーシスを直接誘導することがあり、これは共に米国のFDAによって癌治療のマーケティングのために承認された抗体を有している。
【0036】
抗体媒介癌死滅の別の考えられる機構は、細胞膜及びその関連する糖タンパク質又は糖脂質における多様な化学的結合の加水分解を触媒するように機能する抗体、いわゆる触媒抗体の使用を介することでありうる。
【0037】
抗体媒介型の癌細胞死について3つの追加的な機構がある。第1は、身体が、癌細胞に存在する推定の抗原に対して免疫反応を生じるように誘導する、ワクチンとしての抗体の使用である。第2は、増殖レセプターを標的にし、その機能を妨害する、又は機能が効果的に失われるようにそのレセプターを下方制御する、抗体の使用である。第3は、デスレセプター、例えばTRAIL R1若しくはTRAIL R2、あるいはインテグリン分子、例えばアルファVベータ3等のライゲーションのような、直接の細胞死をもたらしうる細胞表面部分の直接的なライゲーションに対するそのような抗体の効果である。
【0038】
抗癌剤の臨床上の有用性は、患者にとって許容されるリスクプロファイル下での薬剤の利益に基づく。癌療法において、生存は、一般に最も追求される利益であるが、延命に加えて他の十分に認識されている利益が多数存在する。治療が生存に有害な効果を与えないこれらの他の利益には、症状緩和、有害事象に対する保護、再発するまでの時間又は無病生存期間の延長、及び進行するまでの時間の延長が含まれる。これらの基準は、一般に受け入れられており、米国食品医薬品局(FDA)のような規制機関は、これらの利益を生じる薬剤を認可している(Hirschfeld et al.Critical Reviews in Oncology/Hematolgy 42:137−143 2002)。これらの基準に加えて、これらの種類の利益の前兆となりうる他のエンドポイントが存在していることも十分に認識されている。部分的には、米国FDAにより許可された迅速承認法は、患者の利益を予測すると思われる代用薬があることを肯定している。2003年の末には、この方法により16種の薬剤が認可され、それらのうち4種が完全に承認され、すなわち、追跡調査が、代用薬エンドポイントにより予測された直接的な患者の利益を実証した。固形腫瘍における薬剤効果を決定する一つの重要なエンドポイントは、処置に対する奏功を決定することにより腫瘍量を評価することである(Therasse et al.Journal of the National Cancer Institute 92(3):205−216 2000)。そのような評価の臨床基準(RECIST基準)は、国際的な癌専門家のグループであるResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors Working Groupにより公表されている。適切なコントロール群と比較して、RECIST基準に従った客観な的奏功により示された、腫瘍量に対する効果を実証した薬剤は、最終的に、直接的な患者利益を生じる傾向がある。前臨床設定において、腫瘍量は、一般に評価及び文書化に対してより直接的である。前臨床試験を臨床設定に転換することができるので、前臨床モデルにおいて生存期間の延長を生じる薬剤は、最大の予測臨床的有用性を有する。臨床治療に陽性反応を生じることと同様に、前臨床設定において腫瘍量を低減する薬剤は、疾患に対して著しく直接的な影響を有することもできる。生存期間の延長が抗癌剤治療で最も追求される臨床転帰であるが、臨床的有用性を有する他の利益が存在し、疾患進行の遅延、延長した生存期間又はその両方に相関しうる腫瘍量の低減が、直接的な利益をもたらし、臨床的な影響を与えることもできることが明白である(Eckhardt et al.Developmental Therapeutics:Successes and Failures of Clinical Trial Designs of Targeted Compounds;ASCO Educational Book,39th Annual Meeting,2003,pages 209−219)。
【0039】
本発明は、細胞傷害性アッセイにより及びヒト癌の動物モデルにおいて効果が同定された、AR91A9.2の開発及び使用を記載するものである。本発明は、標的分子に存在する1又は複数のエピトープに特異的に結合する試薬、また、ネイキッド抗体として、悪性腫瘍細胞に対してin vitro細胞傷害性の特性を有するが、正常な細胞に対してはない試薬、また、ネイキッド抗体として、腫瘍増殖の阻害を直接媒介する試薬を記載する。更なる進展として、腫瘍増殖の阻害及び癌治療の他の肯定的なエンドポイントを達成するための、同族抗原マーカーを発現する腫瘍を標的にするこのような抗癌抗体の使用がある。
【0040】
総じて、本発明は、投与されたときに哺乳動物において抗原を発現する癌の腫瘍量を低減することができる治療剤の標的としての、AR91A9.2抗原の使用を教示する。本発明は、また、CDMAB(AR91A9.2)、これらの誘導体、その抗原結合フラグメント、及びその細胞傷害性誘導リガンドを使用して、哺乳動物において抗原を発現する癌の腫瘍量を低減するためにそれらの抗原を標的にすることを教示する。更に、本発明は、癌性の細胞においてAR91A9.2抗原を検出することの使用も教示し、これは、この抗原を発現する腫瘍を持つ哺乳動物の診断、治療予測及び予後のために有用であると考えられる。
【0041】
したがって、本発明の目的は、ハイブリドーマ細胞株、並びに対応する単離モノクローナル抗体及び前記ハイブリドーマ細胞株がコードされているその抗原結合フラグメントを単離するために、特定の個体由来の癌性の細胞又は1又は複数の特定の癌細胞株に対して生じた癌性疾患修飾抗体(CDMAB)を産生する方法を利用することであり、ここでのCDMABは、癌細胞に関しては細胞傷害性があるが、同時に、非癌細胞には比較的非毒性である。
【0042】
癌性疾患修飾抗体、並びにそのリガンド及び抗原結合フラグメントを教示することが、本発明の追加的な目的である。
【0043】
その細胞傷害性が抗体依存性細胞傷害性により媒介される癌性疾患修飾抗体を産生することが、本発明の更なる目的である。
【0044】
癌性疾患修飾抗体であって、その細胞傷害性が補体依存性細胞傷害性により媒介される癌性疾患修飾抗体を産生することが、本発明の更に追加の目的である。
【0045】
癌性疾患修飾抗体であって、その細胞傷害性が細胞の化学的結合の加水分解を触媒する能力の機能である癌性疾患修飾抗体を産生することが、本発明のまた更なる目的である。
【0046】
本発明のまた更なる目的は、癌の診断、予後及びモニタリングのための結合アッセイに有用である癌性疾患修飾抗体を産生することである。
【0047】
本発明の他の目的及び利点は、以下の記載によって明らかとなり、例示及び実施例によって、本発明の特定の実施態様が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、細胞株A549、NCI−H23、NCI−H460、MDA−MB−231及びHs888.Luに対するハイブリドーマ上清の細胞傷害性及び結合レベルのパーセンテージを比較するものである。
【図2】図2は、癌細胞株及び正常細胞株に対するAR91A9.2の結合を表す。データを、アイソタイプコントロールを超える倍数の増加としての平均蛍光強度を示すために一覧にする。
【図3】図3は、複数の癌細胞株及び非癌細胞株に対するAR91A9.2及び抗EGFR抗体の代表的なFACSヒストグラムを含む。
【図4】図4は、予防的なNCI−H520肺癌モデルの腫瘍増殖に対するAR91A9.2の効果を示す。垂直破線は、抗体が投与された期間を示す。データポイントは平均+/−SEMを表す。
【図5】図5は、予防的なNCI−H520肺癌モデルの体重に対するAR91A9.2の効果を示す。データポイントは平均+/−SEMを表す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
通常、以下の語又は語句は、発明の開示、記載、実施例及び請求項で使用される場合に、指定した定義を有する。
【0050】
用語「抗体」は、最も広範囲な意味で使用され、具体的には、例えば単一のモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト及び中和抗体、脱免疫化抗体、マウス、キメラ化又はヒト化抗体を含む)、ポリエピトープ的特異性を有する抗体組成物、一本鎖抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、免疫コンジュゲート及び抗体フラグメントを網羅する(下記を参照のこと)。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に同種の抗体の個体群から得られる抗体を意味し、すなわち、個体群に含まれる個別の抗体は、起こりうる天然の突然変異を除いて同一であり、この突然変異はわずかに存在するであろう。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一抗原部位に対するものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。これらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体が混入することなく合成することができる点において有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に同種の抗体個体群から得られる抗体の特性を示し、特定の任意の方法により抗体を産生する必要性があると考慮されるべきでない。例えば、本発明により使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)に最初に記載されたハイブリドーマ(マウス又はヒト)法により作製してもよく、又は組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照すること)により作製してもよい。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載された技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0052】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部を含み、好ましくはその抗原結合領域又は可変部領域を含む。抗体フラグメントの例には、完全長に満たない抗体、Fab、Fab′、F(ab′)2及びFvフラグメント;二重特異性抗体;線状抗体;一本鎖抗体分子;一本鎖抗体、単一ドメイン抗体分子、融合タンパク質、組み換えタンパク質、並びに抗体フラグメントから形成される多特異性抗体が挙げられる。
【0053】
「インタクト」な抗体は、抗原結合可変部領域を含み、また更に、軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含むものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はアミノ酸配列可変部であることができる。好ましくは、インタクト抗体は、1又は複数のエフェクター機能を有する。
【0054】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、インタクト抗体を異なる「クラス」に分類することができる。これらは、インタクト抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMであり、これらのうちの幾つかは、更に「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分けることができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと称される。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元配置は周知である。
【0055】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に寄与する生体活性を意味する。抗体エフェクター機能の例には、Clq結合;補体依存性細胞傷害性;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター;BCR)の下方制御などが挙げられる。
【0056】
「抗体依存性細胞媒介細胞傷害性」及び「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)が、標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を意味する。ADCCを媒介する一次細胞である、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現し、一方、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)の第464頁、表3で概説されている。注目の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号又は同第5,821,337号に記載されているようなin vitroADCCアッセイを実施してもよい。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは又は更に、注目の分子のADCC活性をin vivoで、例えば、Clynes et al.PNAS(USA)95:652−656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価してもよい。
【0057】
「エフェクター細胞」は、1又は複数のFcRを発現し、且つエフェクター機能を発揮する白血球である。好ましくは、当該細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を発揮する。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞及び好中球が挙げられ、PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、その天然の供給源から、例えば、本明細書に記載されているように、血液又はPBMCから単離してもよい。
【0058】
用語「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを説明するために使用される。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)に結合するものであり、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプター、例えばこれらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型が含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)が含まれ、主に細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容チロシン抑制性モチーフ(ITIM)を含有する(M.in Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)の論評を参照すること)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25−34(1994);及びde Haas et ah,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)において検討されている。他のFcRは、将来的に同定されるものを含め、本明細書における用語「FcR」に包含される。この用語には、母親IgGが胎児へ移るのに関与する新生児レセプターFcRnも含まれる(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,Eur.J.Immunol.24:2429(1994))。
【0059】
「補体依存性細胞傷害性」又は「CDC]は、分子が補体の存在下で標的を溶解する能力を意味する。補体活性化経路は、補体系(Clq)の最初の成分と、同族抗原と複合体を形成している分子(例えば、抗体)との結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されているようなCDCアッセイを行ってもよい。
【0060】
用語「可変」とは、抗体の中で可変部ドメインの特定の部分が、大きく異なる配列を持ち、特定の抗原につきそれぞれ特定の抗体の結合及び特異性のために使用される、という事実を意味する。しかし、可変性は、抗体の可変部ドメインの全体にわたって均一に分布されてはいない。軽鎖と重鎖の両方の可変部ドメインにおいて超可変部領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変部ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変部ドメインは、それぞれ、βシート構造に結合しているループを形成しており、場合によってはその一部分を形成している、3つの超可変部領域により結合しているほぼβシート形状をしている4つのFRを含む。それぞれの鎖における超可変部領域は、FRにより近接して一緒に保持され、他の鎖の超可変部領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.pp 15−17;48−53(1991)を参照すること)。定常ドメインは、抗体と抗原との結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)における抗体の参加のような、種々のエフェクター機能を示す。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「超可変部領域」は、抗原結合にとって重要な抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変部領域は、一般に「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変部ドメインにおける残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、重鎖可変部ドメインにおける残基31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda, Md. pp 15−17;48−53(1991))並びに/あるいは「超可変部ループ」由来の残基(軽鎖可変部ドメインにおける残基2632(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)、重鎖可変部ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia and Lesk J.MoI.Biol.196:901−917(1987))を含む。「フレームワーク領域」又は「FR]残基は、本明細書で定義する超可変部領域残基以外の可変部ドメイン残基である。抗体のパパイン消化は、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントを産生し、それぞれ単一の抗原結合部位と、その名称が容易に結晶化する能力を反映している残基「Fc」フラグメントを有する。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を有し、且つ依然として抗原を架橋することができるF(ab′)2フラグメントを生じる。
【0062】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含有する最小限の抗体フラグメントである。この領域は、タイトな非共有結合による1つの重鎖と1つの軽鎖の可変部ドメインの二量体から成る。この配置で、それぞれの可変部ドメインの3つの超可変部領域が相互作用して、VH−VL二量体の表面に抗原結合部位が規定される。集合的には、6つの超可変部領域が抗原結合特異性を抗体に付与する。しかし、単一の可変部ドメイン(又は抗原に特異性のある3つの超可変部領域しか含まない半分のFv)でさえも、抗原を認識し結合する能力を有するが、結合部位全体よりも親和性は低い。Fabフラグメントも、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1定常ドメイン(CHI)を含有する。Fab′フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されている点でFabフラグメントと異なる。Fab′−SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも1つの遊離チオール基を有するFab′の本明細書における名称である。F(ab′)2抗体フラグメントは、元々、その間にヒンジシステインを有する一対のFab′フラグメントとして産生された。抗体フラグメントの他のキメラ結合も知られている。
【0063】
任意の脊椎動物種由来の抗体の「軽鎖」を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる、明確に区別される2つの型のうちの1つに分けることができる。
【0064】
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、抗原結合のためにscFvを所望の構造に形成することができる、VHとVLのドメインの間にあるポリペプチドリンカーを更に含む。scFvについての検討は、Plueckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照すること。
【0065】
用語「二重特異性抗体」は、2つの抗原結合部位を有する小型抗体フラグメントであり、フラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH−VL)において可変部軽ドメイン(VL)に結合している可変部重ドメイン(VH)を含む。同じ鎖で2つのドメインの間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、当該ドメインは別の鎖の相補ドメインと対を形成して、2つの抗原結合部位を作り出すことが課せられる。二重特異性抗体は、例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHollinger et al,Proc.Natl.Acad.Sci USA,90:6444−6448(1993)においてより十分に記載されている。
【0066】
用語「三重特異性抗体」又は「三価の三量体(trivalent trimer)」は、3つの一本鎖抗体の組み合わせを指す。三重特異性抗体は、VLドメイン又はVHドメインのアミノ酸末端により、すなわち、リンカー配列無しに構築される。三重特異性抗体は、環状のヘッドトゥーテールの様式で配置されたポリペプチドを有する3つのFcヘッドを有する。三重特異性抗体の考えられる構造は、互いに120℃の角度離れた面に位置する3つの結合部位を有する平面である。三重特異性抗体は、単一特異性、二重特異性又は三重特異性であってもよい。
【0067】
「単離」抗体は、自然環境にある成分から同定、分離及び/又は回収されたものである。自然環境の混入成分は、抗体の診断的又は治療的使用を妨げる物質であり、これには酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれることがある。単離抗体には組み換え細胞内の生体内現位置にある抗体が含まれる。これは抗体の自然環境の成分が存在しないので、原位置の抗体が含まれる。しかし、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0068】
注目の抗原と「結合する」抗体は、その抗体が、抗原を発現する細胞を標的にする治療又は診断剤として有用であるように、十分な親和性を持って抗原に結合することができるものである。抗体が抗原部分に結合するものである場合、通常は、他のレセプターではなくて抗原部分に優先的に結合し、非特異性Fc接触のような偶発的に結合するもの又は他の抗原では一般的である翻訳後修飾へ結合するものは含まれず、他のタンパク質と有意に交差反応しないものであってもよい。注目の抗原に結合する抗体を検出する方法は、当該技術において周知であり、FACS、細胞ELISA及びウエスタンブロットが含まれうるが、これらに限定はされない。
【0069】
本明細書で使用する場合、「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養」という用語は交換可能に使用され、そのような名称には全て子孫が含まれる。全ての子孫は、意図的な又は偶然の突然変異のために、DNA量が正確に同一ではない場合があることも理解される。最初に形質転換した細胞でスクリーニングされたものと同じ機能又は生体活性を有する突然変異体の子孫が含まれる。異なる意味が意図される場合は、文脈から明らかであろう。
【0070】
「治療」は、治療処置と、予防(prophylactic)又は予防(preventative)手段の両方を意味し、その目的は、標的とする病理的状態又は障害を予防又は遅延(軽減)することである。治療の必要なものには、既に障害を有しているもの、並びに障害を有する傾向のあるもの又は障害が予防されなければならないものが含まれる。従って、本発明での治療されるべき哺乳動物とは、障害を有していると診断されているか、又は障害に罹患する素因があるか、又は罹患しやすいものであってもよい。
【0071】
用語「癌」及び「癌性」は、典型的には、制御できない細胞増殖又は死を特徴とする、哺乳動物における病理状態を意味するか又はそれを説明するものである。癌の例には、限定しないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ性悪性腫瘍が挙げられる。より詳細には、そのような癌の例には、扁平細胞癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、肺癌、例えば小型細胞肺癌、非小型細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌、胃又は腹部の癌、例えば腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸の癌、膵癌、グリア芽細胞腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓又は腎性癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌腫、肛門癌、陰茎癌、並びに頭部及び頸部の癌が挙げられる。
【0072】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロスホスファミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN(登録商標));アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ及びウレドーパ;エチレンイミン及びメチラメラミン、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスファオルアミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine);ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロメタミン、酸化メクロエタミン塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカムルスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カルノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝剤、メトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FU;アンドロゲン、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファアミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン; 2,2′,2″−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Aventis,Rhone−Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;マイトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバントロネート;CPT−11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;及び上記のいずれかの医薬として許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。また、この定義に含まれるものは、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲンのような、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤;フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリンのような抗アンドロゲン;並びに上記のいずれかの医薬として許容される塩、酸、又は誘導体である。
【0073】
治療対象の「哺乳動物」は、哺乳類、例えばヒト、マウス、SCID又はヌードマウス又はマウスの系統、家畜、動物園の動物、競技用の動物又は愛玩動物、例えばヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む哺乳動物として分類される任意の動物を意味する。好ましくは、本明細書における哺乳動物はヒトである。
【0074】
「オリゴヌクレオチド」は、1988年5月4日に公開されたEP266,032に記載された固相技術を使用して、又はFroehler et al,Nucl.Acids Res.,14:5399−5407,1986に記載されているデオキシヌクレオシドH−ホスホネート中間体を介して、既知の方法(例えば、ホスホトリエステル、ホスファイト又はホスホラミダイト化学)によって化学的に合成された長さが短い一本鎖又は二本鎖ポリデオキシヌクレオチドである。次にこれらはポリアクリルアミドゲルで精製される。
【0075】
本発明によれば、ヒト以外(例えばマウス)の免疫グロブリンの「ヒト化」及び/又は「キメラ」型は、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合配列)であって、元の抗体と比較してヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)又はヒト抗ヒト抗体(HAHA)反応の減少をもたらすものを含む抗体及び所望の効果を再生するのに必要な、ヒト以外の免疫グロブリンに由来する必要な部分(例えば、CDR、抗原結合領域、可変ドメインなど)を含み、同時に前記のヒト以外の免疫グロブリンに匹敵する結合特性を保持する抗体を指す。多くの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、当該レシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するヒト以外の種(ドナー抗体)、例えばマウス、ラット又はウサギのCDR由来の残基によって置換されているものである。場合によって、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒトFR残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも外来CDR若しくはFR配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体性能を更に洗練させ、そして最適化するために行われる。通常、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変部ドメインを実質的に全て含み、全て又は実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンに対応し、全て又は実質的に全てのFR残基がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常部領域(Fc)の少なくとも一部分も含む。
【0076】
「脱免疫化」抗体は、所定の種に対して非免疫原性であるか又は免疫原性が低い免疫グロブリンである。脱免疫化は、抗体に対する構造的な改変によって達成することができる。当業者に既知のあらゆる脱免疫化技術を用いることができる。抗体を脱免疫化する一つの適切な技術は、例えば、2000年6月15日公開のWO00/34317に記載されている。
【0077】
「アポトーシス」を誘導する抗体は、限定しないが、アネキシンVの結合、カスパーゼ活性、DNA断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化及び/又は膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成により例示される任意の手段でプログラム細胞死を誘導するものである。
【0078】
本明細書で使用する場合、「抗体誘導型細胞傷害性」とは、受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生されたハイブリドーマ上清又は抗体に由来する細胞傷害性の効果を意味すると解され、この効果は必ずしも結合の程度に関連していない。
【0079】
本明細書の全体を通じて、ハイブリドーマ細胞株、並びにそれから産生される単離モノクローナル抗体は、内部名称であるAR91A9.2か、あるいは寄託機関にる命名IDAC051206−04と称される。
【0080】
本明細書で使用する場合、「抗体リガンド」には、標的抗原の少なくとも1つのエピトープに特異的な結合を示す部分が含まれ、インタクトな抗体分子、抗体フラグメント及び少なくとも抗原結合領域又はその部分(すなわち、抗体分子の可変部部分)を有する任意の分子、例えばFv分子、Fab分子、Fab′分子、F(ab′)2分子、二重特異性抗体、融合タンパク質、又はIDAC051206−04と命名したハイブリドーマ細胞株により産生された単離モノクローナル抗体に結合している抗原(IDAC051206−04抗原)の少なくとも1つのエピトープを特異的に認識して結合する任意の遺伝子組み換え分子であってもよい。
【0081】
本明細書で使用する場合、「癌性疾患修飾抗体」(CDMAB)は、患者に有益となるように、例えば、腫瘍量を低減する又は腫瘍を有する個人の生存期間を延長することによって癌性疾患の過程を修飾する、モノクローナル抗体及びその抗体リガンドを意味する。
【0082】
「CDMAB関連結合物質」は、広い意味で、ヒト又はヒト以外の抗体、抗体フラグメント、抗体リガンド等の任意の形態であって、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープと競合的に結合するものを含むと解されるが、これらに限定されない。
【0083】
「競合的結合物質」とは、ヒト又はヒト以外の抗体、抗体フラグメント、抗体リガンド等の任意の形態であって、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープについての結合親和性を有するものを含むと解される。
【0084】
治療されるべき腫瘍には、原発腫瘍及び転移性腫瘍、並びに難治性腫瘍が含まれる。難治性腫瘍には、化学療法剤単独、抗体単独、放射線単独又はそれらの組み合わせによる治療が奏功しない、あるいはこれらに対し耐性がある腫瘍が含まれる。難治性腫瘍はまた、前記薬剤を用いた治療によって阻害されるようであるものの、治療が終了してから最大5年、場合によっては最大10年以上再発する腫瘍を包含する。
【0085】
治療できる腫瘍には、血管新生した腫瘍同様、血管新生されていないか、あるいは実質的にまだ血管新生していない腫瘍が含まれる。それ相応に治療することができる固形腫瘍の例には、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膵癌、グリオーマ及びリンパ腫が含まれる。そのような腫瘍の幾つかの例として、例えば、類表皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば頭頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房の腫瘍、肺腫瘍、例えば小細胞肺腫瘍及び非小細胞腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、及び肝臓腫瘍がある。他の例として、カポジ肉腫、中枢神経新生物、神経芽細胞腫、血管細胞芽腫、髄膜腫及び脳転移、黒色腫、胃腸癌及び腎癌及びサルコーマ、横紋筋肉腫、神経膠芽腫、好ましくは多形神経膠芽腫及び平滑筋肉腫がある。
【0086】
本明細書で使用する場合、「抗原結合領域」は、標的抗原を認識する分子の部分を意味する。
【0087】
本明細書で使用する場合、「競合的に阻害する」は、従来の相互抗体競合アッセイを使用して、IDAC051206−04と命名したハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体(IDAC051206−04抗体)が対象とする決定基を認識し、それに結合することができることを意味する。(Belanger L.,Sylvestre C.and Dufour D.(1973),Enzyme linked immunoassay for alpha fetoprotein by competitive and sandwich procedures.Clinica Chimica Acta 48,15)。
【0088】
本明細書で使用する場合、「標的抗原」は、IDAC051206−04抗原又はその部分である。
【0089】
本明細書で使用する場合、「免疫コンジュゲート」は、細胞毒素、放射性作用物質、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター部分、酵素、毒素、抗腫瘍薬又は治療剤に化学的又は生物学的に結合している任意の分子又はCDMAB、例えば抗体を意味する。当該抗体又はCDMABは、細胞毒素、放射性作用物質、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター部分、抗腫瘍薬又は治療剤に、その標的に結合することができる限り、分子に沿って任意の位置に結合することがある。免疫コンジュゲートの例には、抗体毒素化学コンジュゲート及び抗体毒素融合タンパク質が挙げられる。
【0090】
抗腫瘍薬として使用するのに適した放射性物質は当業者に知られている。例えば、131I又は211Atが使用されている。これらの放射性同位体は、常用の技術(例えば、Pedley et al., Br. J. Cancer 68, 69-73 (1993))を用いて抗体と結合される。あるいは、抗体と結合される抗腫瘍薬は、プロドラッグを活性化する酵素である。腫瘍部位に到達するまで不活性型の状態で維持されるプロドラッグを投与してもよく、一度抗体複合体が投与されると腫瘍部位でその細胞毒型へと返還される。実際には、抗体−酵素コンジュゲートが患者に投与され、そして治療されるべき組織の領域に集中することが可能となる。プロドラッグは、続いて、治療されるべき領域で細胞毒性薬が生じるように患者に投与される。あるいは、抗体とコンジュゲートされる抗腫瘍薬として、サイトカイン、例えばインターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−14(IL−4)又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)がある。抗体は、サイトカインが他の組織に影響を及ぼすことなく、腫瘍に対して損傷を与え、又は腫瘍を破壊する役割を果たすよう、腫瘍を標的にする。サイトカインは、常用の組換えDNA技術を用いて、DNAレベルで抗体と融合される。インターフェロンを使用してもよい。
【0091】
本明細書で使用する場合、「融合タンパク質」は、抗原結合領域が、生体活性分子、例えば、毒素、酵素、蛍光タンパク質、発光マーカー、ポリペプチドタグ、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター部分又はタンパク質薬に結合している任意のキメラタンパク質を意味する。
【0092】
本発明は更に、本発明のCDMABが標的又はレポーター部分が連結されているものも意図している。標的部分は結合対の第一のメンバーである。抗腫瘍薬は、例えば、結合対の第二のメンバーとコンジュゲートされ、それにより抗原結合タンパク質が結合する部位へと方向付けられる。かかる結合対の一般的な例はアビジン及びビオチンである。好ましい態様において、ビオチンは、本発明のCDMABの標的抗原とコンジュゲートされ、それにより、アビジン又はストレプトアビジンがコンジュゲートされる抗腫瘍薬又は他の部分の標的が提供される。あるいは、ビオチン又は別のそのような部分は、本発明のCDMABの標的抗原と連結され、そしてレポーターとして、例えば検出可能なシグナルを発生する物質がアビジン又はストレプトアビジンとコンジュゲートされているような診断システムで使用される。
【0093】
検出可能なシグナルを発生する物質は、診断目的でin vivo及びin vitroで有用である。シグナル発生物質は、外部手段、例えば電磁放射線を測定することによって検出可能で測定可能なシグナルを発生する。多くの場合、シグナル発生物質は酵素又は発色団であり、あるいは蛍光、リン光又は化学発光による光を放射する。発色団には、紫外領域又は可視領域の光を吸収する色素が含まれ、これは、酵素で触媒される反応の基質又は分解産物であってもよい。
【0094】
更に、本発明の範囲に含まれるものには、治験又は診断方法のための、当業界で周知の存在しているCDMABのin vivo又はin vitroでの使用がある。本明細書で意図しているように当該診断方法を実施するべく、本発明は更に、本発明のCDMABを含むキットを更に含むことがある。そのようなキットは、特定の癌の型についてのリスクがある個体を、個体の細胞上でのCDMABの標的抗原の過剰発現を検出することで同定するのに有用であろう。
【0095】
診断アッセイキット
本発明のCDMABを、腫瘍の存在を検出するための診断アッセイキットの形態で使用することも意図されている。腫瘍は通常1又は複数の腫瘍特異的抗原、例えば生体サンプル、例えば血液、血清、尿及び/又は腫瘍生検であって、患者から得られているサンプル中のタンパク質及び/又はそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドの存在に基づいて、当該患者で検出される。
【0096】
当該タンパク質は、特定の腫瘍、例えば結腸、乳房、肺又は前立腺の腫瘍の有無を示すマーカーとして機能する。更に、その抗原が他の癌性腫瘍の検出に有用であろうことも意図している。本発明のCDMABから構成される結合物質、又はCDMAB関連結合物質を前記診断アッセイキットに含めることで、生体サンプル中の当該物質と結合する抗原のレベルの検出が可能になる。ポリヌクレオチドプライマー及びプローブを使用して、腫瘍タンパク質をコードするmRNAのレベルを検出してもよく、これは癌の指標ともなる。結合アッセイを診断に利用可能にするためには、抗原の統計学的に有意なレベルを、正常組織に存在しているものとの関連で相関させるデータを生成させて、その結合の認識が、癌性腫瘍の存在について確実に診断に用いることができるようにしていることが必要である。当業者に知られているような、サンプル中のポリペプチドマーカーを検出するための結合物質を使用するための本発明の診断アッセイに複数のフォーマットが有用であることは意図されている。例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988に例示されているとおりである。上記診断アッセイフォーマットの任意及び全ての組み合わせ、並べ替え、又は改良が更に意図されている。
【0097】
患者中の癌の有無は、典型的には、(a)患者から得た生体サンプルを結合物質と接触させること、(b)サンプル中の結合物質に結合するポリペプチドレベルを検出すること、及び(c)ポリペプチドレベルと所定のカットオフ値を比較することによって決定される。
【0098】
例示的な態様において、アッセイは、CDMABベースの結合物質を使用して、サンプルの残部由来のポリペプチドに結合してこれを除去することを伴うことが意図される。次いで、結合したポリペプチドは、レポーター基を含み、結合物質/ポリペプチド複合体に特異的に結合する検出試薬を使用して検出してもよい。例示的な検出試薬には、ポリペプチドもしくは抗体に特異的に結合するCDMABベースの結合物質又は結合物質に特異的に結合する他の薬剤、例えば抗免疫グロブリン、プロテインG、プロテインA、又はレクチンが含まれ得る。別の態様では、ポリペプチドをレポーター基で標識し、結合物質のサンプルとのインキュベーション後に固定した結合物質と結合させる競合アッセイが使用されうることが意図されている。サンプルと固定した結合物質との反応性の指標は、サンプル成分が結合物質への標識ポリペプチドの結合を阻害する範囲である。かかるアッセイでの使用に適切なポリペプチドには、結合物質が結合親和性を有する全長腫瘍特異的タンパク質及び/又はその部分が含まれる。
【0099】
診断キットは通常固体支持体と一緒に提供され、これはタンパク質を結合することができる当業者に公知の任意の材料の形態であり得る。適切な例として、マイクロタイタープレート中の試験ウェル又はニトロセルロースもしくは他の適切な膜が含まれ得る。あるいは、支持体は、ビーズ又はディスク、例えばガラス、グラスファイバー、ラテックス、又はプラスチック材料、例えばポリスチレン又はポリ塩化ビニルが考えられる。支持体は、磁性粒子又は光ファイバーセンサ、例えば、米国特許第5,359,681号に開示のもの、であってもよい。
【0100】
特許及び科学文献に十分に記載されている当業者に公知の種々の技術を使用して、結合剤を固体支持体上に固定することが意図されている。用語「固定」は、吸着などの非共有結合及び共有結合の両方をいい、本発明との関連では、結合物質と支持体上の官能基との直接結合であり得るか、架橋剤による連結であり得る。好ましいが非限定的な態様では、吸着によるマイクロタイタープレート中のウェル又は膜への固定が好ましい。適切なバッファー中での結合物質の固体支持体との適切な時間の接触によって吸着することができる。接触時間は温度に伴って変化することがあり、一般に、約1時間〜約1日の範囲内であろう。
【0101】
結合物質と固体支持体との共有結合は、最初に、当該支持体と、当該結合物質上の官能基、例えばヒドロキシル基又はアミノ基との両方に反応する二官能性試薬に当該支持体を反応させることによって達成される。例えば、当該結合物質は、ベンゾキノンを用いて、又は支持体上のアルデヒド基と、結合パートナー上のアミン及び活性水素との縮合によって、適切なポリマーコーティングがされている支持体と共有結合させてもよい。
【0102】
前記診断アッセイキットは、二抗体サンドイッチアッセイの形態が採用されることも意図されている。このアッセイは、固体支持体上、通常マイクロタイタープレートのウェル上に固定されている抗体、例えば本願明細書で開示されているCDMABと前記サンプルとを最初に接触させ、当該サンプル内のポリペプチドが固定された抗体に結合するようにすることで実施され得る。次いで、結合しなかったサンプルを固定したポリペプチド−抗体複合体から除去し、レポーター基を含む検出試薬(好ましくは、ポリペプチド上の異なる部位に結合することができる第2の抗体)を添加する。その後、尚も固体支持体に結合している検出試薬の量を、特異的レポーター基にとって適切な方法を使用して決定する。
【0103】
具体的な態様では、上記のように一旦抗体が支持体上に固定されると、支持体上の残りのタンパク質結合部分が当業者に公知の任意の適切なブロッキング剤、例えばウシ血清アルブミン又はTween20(登録商標)(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)の使用によってブロッキングされることが意図される。次いで、固定化抗体をサンプルと共にインキュベーションし、ポリペプチドを抗体と結合させる。インキュベーション前に、サンプルを、適切な希釈剤、例えばリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)などで希釈することができる。通常、適切な接触時間(すなわち、インキュベーション時間)を、具体的に選択した腫瘍を有する個体から得たサンプル内のポリペプチドの存在の検出に十分な時間に相当するよう選択する。好ましくは、接触時間は、結合したポリペプチドと結合しなかったポリペプチドとの間の平衡を達成するレベル少なくとも約95%である結合レベルを達成するのに十分である。当業者は、平衡を達成するのに必要な時間が、一定期間生じる結合のレベルをアッセイすることによって容易に決定することができることを認識するであろう。
【0104】
結合しなかったサンプルは、適切なバッファーで固体支持体を洗浄することにより除去することが更に意図される。次いで、レポーター基を含む二次抗体を、固体支持体に添加する。結合ポリペプチドを検出するのに十分な時間、固定化した抗体−ポリペプチド複合体との検出試薬のインキュベーションを行う。その後、結合しなかった検出試薬を除去し、結合した検出試薬は、レポーター基を使用して検出される。レポーター基の検出に使用した方法は、選択したレポーター基の型、例えば、放射性基に特異的である必要があり、シンチレーションカウンティング又はオートラジオグラフィ法が一般に適切である。分光法を使用して、色素、発光基、及び蛍光基を検出してもよい。ビオチンは、異なるレポーター基(一般に、放射性基、蛍光基、又は酵素)にカップリングしたアビジンを使用して検出されうる。酵素レポーター基は通常、基質の添加(一般に、特定の期間)及びその後の反応産物の分光学的分析又は他の分析によって検出されうる。
【0105】
本発明の診断アッセイキットを利用して癌、例えば前立腺癌の有無を決定するために、なおも固体支持体に結合しているレポーター基から検出されたシグナルは、通常、所定のカットオフ値に相当するシグナルと比較される。例えば、癌検出のための例示的なカットオフ値は、癌に罹患していない患者由来のサンプルと一緒に固定化抗体をインキュベーションした場合に得られるシグナルの平均値であってもよい。一般に、所定のカットオフ値より約3標準偏差高いシグナルを生成するサンプルはその癌について陽性とみなされるであろう。別の態様では、カットオフ値は、Sackett et al.,Clinical Epidemiology.A Basic Science for Clinical Medicine,Little Brown and Co.,1985,p.106−7.による受診者動作特性曲線(Receiver Operator Curve)を使用して決定されることもある。かかる実施態様では、カットオフ値は、診断試験の結果についてのそれぞれ起こり得るカットオフ値に相当する真の陽性率(すなわち、感度)と偽陽性率(100%特異性)との対のプロットから決定することができる。左上の隅に最も近いプロットのカットオフ値(すなわち、最も広い領域を囲む値)は、最も正確なカットオフ値であり、この方法によって決定したカットオフよりも高いシグナルを生成するサンプルは陽性と見なしてもよい。あるいは、カットオフ値は、プロットに沿って左にシフトして、偽陽性率を最小にするか、右にシフトして偽陰性率を最小にしてもよい。一般に、この方法によって決定されたカットオフ値より高いシグナルを生成するサンプルは、癌について陽性と見なしてもよい。
【0106】
前記キットによって可能な診断アッセイは、フロースルー又はストリップテストの形式であって、結合物質を膜、例えばニトロセルロース膜に固定したもので実施されることも意図されている。フロースルーテストにおいて、サンプル内のポリペプチドは、サンプルが膜を通過するにつれて固定された結合物質と結合する。第2の標識した結合物質は、第2の結合物質を含む溶液が膜を通過するにつれて結合物質−ポリペプチド複合体と結合する。結合した第2の結合物質は、上記のように検出されうる。ストリップテストの形式では、結合物質が結合した膜の一方の末端が、サンプルを含む溶液に浸漬される。当該サンプルは、膜に沿って、第2の結合物質を含む領域から、固定された結合物質領域へと移動する。固定化された抗体領域での第2の結合物質の濃度は、癌の存在を示す。視覚的に読み取ることができる結合部位でのパターン、例えば線の発生は、陽性試験の指標となるであろう。かかるパターンが存在していないことは、陰性の結果を示している。通常、膜上に固定された結合物質の量は、生体サンプルが上記考察の形式で二抗体サンドイッチアッセイにおいて陽性シグナルを生成するのに十分なレベルのポリペプチドを含む場合、視覚的に認識可能なパターンが生成されるように選択される。本発明の診断アッセイで使用するのに好ましい結合物質は、本発明に開示の抗体、その抗原結合フラグメント、及び本明細書中に記載の任意のCDMAB関連結合物質である。抗体の膜固定量は、診断アッセイを行うのに有効な任意の量であり、約25ng〜約1μgの範囲に及ぶことがある。典型的に、かかる試験は、非常に少量の生体サンプルを使用して実施されうる。
【0107】
更に、本発明のCDMABは、標的抗原を同定するその能力に起因して、研究目的で研究機関で使用されうる。
【0108】
本明細書中に記載の発明をより完全に理解するために、以下に説明を記載する。
【0109】
本発明は、IDAC051206−04抗原を特異的に認識して結合するCDMAB(すなわち、IDAC051206−04 CDMAB)を提供する。
【0110】
受入番号141205−03としてIDACに寄託されたハイブリドーマが産生した単離モノクローナル抗体のCDMABは、これが、ハイブリドーマIDAC051206−04によって産生されたその標的抗原に対する単離モノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合的に阻害する抗原結合領域を有する限り、任意の形態でよい。したがって、IDAC051206−04抗体と同一の結合特異性を有する任意の組換えタンパク質(例えば、抗体を第2のタンパク質、例えばリンホカイン又は腫瘍阻害成長因子と組み合わせた融合タンパク質)は、本発明の範囲内に含まれる。
【0111】
本発明の一態様では、CDMABは、IDAC051206−04抗体である。
【0112】
他の態様では、CDMABは抗原結合フラグメントであり、これは、Fv分子(例えば、一本鎖Fv分子)、Fab分子、Fab′分子、F(ab′)2分子、融合タンパク質、二重特異性抗体、異種抗体、又はIDAC051206−04抗体の抗原結合領域を有する任意の組み換え分子であってもよい。本発明のCDMABは、IDAC051206−04モノクローナル抗体が対象とするエピトープに対するものである。
【0113】
本発明のCDMABは、誘導体分子を産生するように修飾されることがあり、すなわち、分子内のアミノ酸修飾によって修飾されることがある。化学修飾も可能である。直接変異、親和成熟法、ファージディスプレイ、又はチェインシャッフリングによる修飾も可能である。
【0114】
親和性及び特異性は、CDR及び/又はフェニルアラニントリプトファン(FW)残基を突然変異させ、そして所望の特徴を有する抗原結合部位をスクリーニングすることによって修飾又は改変することができる(例えば、Yang et al,J.Mol.Biol.,(1995)254:392−403)。1つの方法は、それ以外では同一の抗原結合部位の一群において、2〜20個のアミノ酸のサブセットが特定の位置で見出されるように、個々の残基又は残基の組合せを無作為化することである。あるいは、突然変異は、エラープローンPCR法によって一定の残基にわたって行うことができる(例えば、Hawkins et al,J.Mol.Biol.,(1992)226:889−96)。別の例では、重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子を含むファージディスプレイベクターを、大腸菌変異株中で増殖させることができる(例えば、Low et al,J.Mol.Biol.,(1996)250:359−68)。これらの変異誘発方法は、当業者に公知の多数の方法のうちの例示的なものである。
【0115】
本発明の抗体の親和性を増大させる別の方法は、チェインシャッフリングを行うことである。このチェインシャッフリングは、重鎖又は軽鎖を他の重鎖又は軽鎖と無作為に対合して、より高い親和性を有する抗体を調製する。抗体の種々のCDRが、他の抗体中の対応するCDRとシャッフリングされうる。
【0116】
誘導体分子は、ポリペプチドの機能的性質を保持しているであろう。すなわち、かかる置換を行った分子は、依然としてIDAC051206−04抗原又はその一部にポリペプチドを結合させるであろう。
【0117】
これらのアミノ酸置換には、当業界で「保存的」置換として知られているアミノ酸置換が含まれるが、必ずしもこれに限定されない。
【0118】
例えば、「保存的アミノ酸置換」と認められる一定のアミノ酸置換が、タンパク質の構造又は機能のいずれかを変化させることなく、そのタンパク質でしばしば行われ得ることは、タンパク質化学で十分に確立された原理である。
【0119】
そのような変化には、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びロイシン(L)のいずれかに、これら以外の任意の疎水性アミノ酸を置換し;アスパラギン酸(D)にグルタミン酸(E)を置換し、あるいはその逆の置換を行い;グルタミン(Q)にアスパラギン(N)を置換し、あるいはその逆の置換を行い;ならびにセリン(S)にスレオニン(T)を置換し、あるいはその逆の置換を行うことが含まれる。タンパク質の三次元構造における特定のアミノ酸の環境及びその役割に応じて、他の置換も保存的置換と見なすことができる。例えば、アラニンとバリン(V)とが交換可能なように、グリシン(G)とアラニン(A)は、しばしば交換可能であり得る。比較的疎水性のメチオニン(M)は、しばしばロイシン及びイソロイシンと交換することができ、場合によってはバリンと交換することができる。リジン(K)及びアルギニン(R)は、アミノ酸残基の有意な特徴がその電荷にある位置であって、これら2つのアミノ酸残基のpKの相違が重要ではない位置でしばしば交換可能である。これ以外の変化が特定の条件下で「保存的」と見なされることがある。
【実施例】
【0120】
実施例1
ハイブリドーマ産生−ハイブリドーマ細胞株AR91A9.2
ハイブリドーマ細胞株AR91A9.2は、ブダペスト条約に従って、International Depository Authority of Canada(IDAC),Bureau of Microbiology,Health Canada,1015 Arlington Street,Winnipeg,Manitoba,Canada,R3E 3R2に、受入番号051206−04で2006年12月5日に寄託された。37 CFR 1.808に従って、寄託者は、寄託材料の公共利用性に対して課せられている全ての制限が、特許の付与にあたって取消不可能の状態で解除されることを確認する。寄託物は、寄託機関が生存サンプルを分配することができない場合は、取り替えられる。
【0121】
抗癌抗体AR91A9.2を産生するハイブリドーマを産生するために、冷凍した肺腺癌の腫瘍組織の単一細胞懸濁液(Genomics Collaborative,Cambridge,MA)をPBS中で調製した。IMMUNEASY(登録商標)(Qiagen,Venlo,Netherlands)アジュバントを、穏やかに混合することによって使用のために調製した。5〜7週齢BALB/cマウスを、2百万個の細胞/50マイクロリットルの抗原アジュバントを皮下注射することにより免疫化した。かねて調製した抗原アジュバントを使用して、最初の免疫化の2及び5週間後に、2百万個の細胞/50マイクロリットルにより腹腔内で免疫化マウスを追加免疫した。最後の免疫化から3日後に、脾臓を融合に使用した。ハイブリドーマは、単離した脾細胞をNSO−1骨髄腫パートナーと融合することによって調製した。融合体由来の上清を、ハイブリドーマのサブクローンから試験した。
【0122】
ハイブリドーマ細胞により分泌された抗体がIgG又はIgMアイソタイプであるかを決定するために、ELISAアッセイを用いた。100マイクロリットル/ウエルの、4℃のコーティングバッファー(0.1M炭酸塩/重炭酸塩バッファー、pH9.2〜9.6)中の濃度2.4マイクログラム/mLのヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)を、ELISAプレートに一晩加えた。プレートを洗浄バッファー(PBS+0.05パーセントTween)で3回洗浄した。100マイクロリットル/ウエルのブロッキングバッファー(洗浄バッファー中5パーセントミルク)をプレートに室温で1時間加え、次に洗浄バッファーで3回洗浄した。100マイクロリットル/ウエルのハイブリドーマ上清を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを、洗浄バッファーで3回洗浄し、100マイクロリットル/ウエルの、1/100,000希釈したヤギ抗マウスIgG又はIgMのホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートのいずれか(5パーセントミルクを含有するPBSで希釈したもの)を加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。100マイクロリットル/ウエルのTMB溶液を、室温で1〜3分間インキュベートした。呈色反応を、50マイクロリットル/ウエルの2M H2SO4の添加により終了させ、プレートをPerkin−Elmer HTS7000プレートリーダーにより450nmで読み取った。図1に示されているように、AR91A9.2ハイブリドーマは、主にIgGアイソタイプの抗体を分泌した。
【0123】
ハイブリドーマ細胞により分泌された抗体のサブクラスを決定するために、アイソタイピング実験を、マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(HyCult Biotechnology,Frontstraat,Netherlands)を使用してアイソタイピング実験を行った。500μlのバッファーを、ラット抗マウスサブクラス特異的抗体を含む試験紙に添加した。500μlのハイブリドーマ上清を試験管に添加し、穏やかな撹拌によって浸漬させた。捕捉したマウス免疫グロブリンを、コロイド粒子とカップリングされる第2のラットモノクローナル抗体によって直接検出した。これらの2つのタンパク質の組み合わせにより、アイソタイプを分析するための視覚シグナルを得る。抗癌抗体AR91A9.2は、IgG2aのκアイソタイプである。
【0124】
一回限界希釈した後、ハイブリドーマ上清を、細胞ELISAアッセイにより標的細胞に結合する抗体について試験した。3つのヒト肺癌細胞株、1つのヒト乳癌細胞株、1つのヒト非癌性肺細胞株を試験した:それぞれ、A549、NCI−H23、NCI−H460、MDA−MB−231及びHs888.Lu。全ての細胞がAmerican Type Tissue Collection(ATCC;Manassas,VA)から得られた。プレーティングした細胞は使用する前に固定した。プレートを、MgCl2及びCaCl2を含有するPBSにより室温で3回洗浄した。PBSで希釈した2パーセントパラホルムアルデヒドを100マイクロリットル、それぞれのウエルに室温で10分間加え、廃棄した。プレートを、再び、MgCl2及びCaCl2を含有するPBSにより室温で3回洗浄した。ブロッキングは、洗浄バッファー(PBS+0.05パーセントTween)中の5パーセントミルクの100マイクロリットル/ウエルにより室温で1時間実施した。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、ハイブリドーマ上清は、100マイクロリットル/ウエルにより室温で1時間加えた。プレートを、洗浄バッファーで3回洗浄し、100マイクリットル/ウエルの、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合した1/25,000希釈ヤギ抗マウスIgG抗体又はIgM抗体コンジュゲート(5パーセントミルクを含有するPBSで希釈したもの)を加えた。室温での1時間のインキュベーションの後、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、100マイクロリットル/ウエルのTMB基質を、室温で1〜3分間インキュベートした。反応を、50マイクロリットル/ウエルの2M H2SO4により終了させ、プレートをPerkin−Elmer HTS7000プレートリーダーにより450nmで読み取った。図1で表にまとめた結果を、試験した細胞株に結合しないことを以前に示している社内IgGアイソタイプコントロールと比較して、バックグラウンドの倍数として表した。ハイブリドーマAR91A9.2の抗体は、A549、NCI−H23、NCI−H460肺癌細胞株及びMDA−MB−231結腸癌細胞株に対し最も強い結合を示し、非癌性肺細胞株Hs888.Luに対しては検出可能な結合は見られなかった。
【0125】
抗体結合についての試験と一緒に、細胞株A549、NCI−H23、NCI−H460、MDA−MB−231及びHs888.Luを用いてハイブリドーマ上清の細胞傷害性効果を試験した。Calcein AMをMolecular Probes(Eugene,OR)から購入し、アッセイを下文で概説するように実施した。細胞は、アッセイの前に所定の適切な密度でプレーティングした。2日後、ハイブリドーママイクロタイタープレートの上清を100マイクロリットル細胞プレートに移し、5パーセントCO2インキュベーターで5日間インキュベートした。ポジティブコントロールとしての役割を果たすウエルを空になるまで吸引し、100マイクロリットルのアジ化ナトリウム(NaN3、.01パーセント、Sigma,Oakville,ON)又はシクロヘキシミド(CHX、0.5マイクロモル、Sigma,Oakville,ON)を加えた。処理から5日後、プレートを逆さにして空にし、吸い取って乾燥した。MgCl2及びCaCl2を含有する室温DPBS(ダルベッコリン酸緩衝食塩水)を、マルチチャンネルスクイーズボトルからそれぞれのウエルに分配し、3回軽く叩き、反転して空にし、次に吸い取って乾燥させた。MgCl2及びCaCl2を含有するDPBSで稀釈した蛍光カルセイン染料を50マイクロリットルそれぞれのウエルに加え、5パーセントCO2インキュベーターにおいて37℃で30分間インキュベートした。プレートを、Perkin−Elmer HTS7000蛍光プレートリーダーで読み取り、データを、Microsoft Excelで分析した。 結果を図1で表にまとめる。AR91A9.2ハイブリドーマの上清は、NCI−H460肺癌細胞に対し31%の特異的な細胞傷害をもたらした。これは、ポジティブコントロールであるアジ化ナトリウム及びシクロヘキシミドで得られた細胞傷害性を基準として、それぞれ43%及び69%であった。
【0126】
図1の結果は、AR91A9.2の細胞傷害効果が、癌の細胞型の結合レベルとは直接相関していなかったことを示すものである。肺癌細胞株及び乳癌細胞株に対し類似の結合が見られたが、細胞傷害性はNCI−H460細胞でのみ検出可能であった。図1の表にまとめられているよう9に、AR91A9.2はHs888Lu.非癌性ヒト肺細胞株では細胞傷害性を生じさせなかった。既知の非特異的な細胞傷害性薬物であるシクロヘキシミド及びNaN3は、予想したとおりの細胞傷害性をほぼ生じさせた。
【0127】
実施例2
in vitro結合
AR91A9.2モノクローナル抗体は、CL−1000フラスコ(BD Biosciences,Oakville,ON)中でハイブリドーマを培養し、収集及び再播種を週に2回することによって産生した。Protein G Sepharose 4 Fast Flow(Amersham Biosciences,Baie d’Urfe,QC)による標準的な抗体精製手順に従った。脱免疫化されているか、ヒト化されているか、キメラ化されているか、又はマウスのモノクローナル抗体を利用することは、本発明の範囲内である。
【0128】
AR91A9.2と、肺癌(A549、NCI−H23、NCI−H322M、NCI−H460及びNCI−H520)、結腸癌(Lovo)、乳癌(MDA−MB−231)、膵癌(BxPC−3)、前立腺癌(PC−3)及び卵巣癌(OVCAR−3)、並びに癌でない皮膚由来の細胞株(CCD−27sk)及び肺由来の細胞株(Hs888.Lu)との結合をフローサイトメトリー(FACS)で評価した。肺癌細胞株NCI−H322M以外の全ての細胞株をAmerican Type Tissue Collection(ATCC;Manassas,VA)から入手した。NCI−H322Mは、NCI−Frederick Cancer DCTD Tumor/Cell Line Repository(Frederick,MD)から入手した。
【0129】
細胞は、最初に細胞単層をDPBS(Ca++及びMg++を含まない)で洗浄することによって、FACS用に調製した。次に細胞解離バッファー(INVITROGEN,Burlington,ON)を使用して、37℃で細胞培養プレートから細胞を除去した。遠心分離及び回収の後、細胞は、MgCl2、CaCl2及び2パーセントウシ胎児血清を含有するDPBS(染色媒体)に4℃で再懸濁し、カウントし、適切な細胞密度に分注し、遠心沈殿して細胞をペレットにし、試験抗体(AR91A9.2)又はコントロール抗体(アイソタイプコントロール、抗EGFR)の存在下、4℃の染色媒体中で30分間再懸濁した。アイソタイプコントロール及び試験抗体は、20マイクログラム/mLで評価し、一方、抗EGFRは氷上で30分間5マイクログラム/mLで評価した。Alexa Fluor 546結合二次抗体の添加の前に、細胞を染色媒体で1回洗浄した。次に染色媒体中のAlexa Fluor 546結合抗体を、4℃で30分間加えた。次に細胞を最終洗浄し、固定媒体(1.5パーセントパラホルムアルデヒドを含有する染色媒体)に再懸濁した。フローサイトメトリーによる細胞の取得は、FACSarray(登録商標)System Software(BD Biosciences,Oakville,ON)を用い、FACSarray(登録商標)にサンプルをかけて評価した。細胞の前方散乱(FSC)及び側面散乱(SSC)は、FSC及びSSC検出器の電圧及び振幅利得を調整して設定した。蛍光(Alexa−546)チャンネル用の検出器を、細胞がおよそ1〜5単位の蛍光強度中央値の均一ピークを有するように、未染色細胞を試験することで調節した。それぞれのサンプルについては、およそ10,000個のゲート内イベント(染色した固定細胞)が解析ごとに集められ、その結果を図2に表す。
【0130】
図2は、アイソタイプコントロールの倍数としての平均蛍光強度を表す。AR91A9.2抗体の代表的なヒストグラムを図3にまとめた。AR91A9.2は、試験した細胞株全てに対し検出可能な結合を示し、最も強い結合は、肺癌細胞株A549(31.1倍)、NCI−H322M(23.7倍)及びNCI−H520(23.3倍)に対して検出された。中程度の結合は、肺癌細胞株NCI−H23(11.4倍)及びNCI−H460(18.3倍)ならびに卵巣癌細胞株OVCAR−3(10.2倍)に対して検出された。軽度の結合は、残りの癌及び非癌性の細胞株で検出された。これらのデータは、AR91A9.2が、異なる抗原発現レベルで複数の異なる細胞株と結合したことを示している。
【0131】
実施例3
NCI−H520細胞によるin vivo腫瘍実験
実施例1及び2は、AR91A9.2が、複数の異なる癌の兆候を通じて検出可能な結合が見られたことで、ヒト癌細胞系に対して抗癌特性を有することを実証した。図4及び5を参照して説明するが、8〜10週齢の雌SCIDマウスに、500万のヒト結腸癌細胞(NCI−H520)/100マイクロリットルの食塩水中を頸の首筋から皮下注射して移植した。マウスを無作為に6匹の処置群に2分割した。移植したその日に、20mg/kgのAR91A9.2試験抗体又はバッファーコントロールを、2.7mM KCl、1mM KH2PO4、137mM NaCl及び20mM Na2HPO4を含有する稀釈剤で保存濃縮物から稀釈した後、300マイクロリットルの容量でそれぞれのコホートに腹腔内投与した。次に抗体及びバッファーコントロールサンプルを、1週間に1回試験期間の間同じ方法で投与した。腫瘍成長は、約7日おきにカリパスで測定した。本研究は、8回抗体を服用した後に終了した。動物の体重を、この研究の間、1週間に1回記録した。研究の終了時に、全ての動物をCCAC指針に従って安楽死させた。
【0132】
AR91A9.2は、ヒト肺癌の予防in vivoモデルNCI−H520において腫瘍増殖を減少させた。ARIUS抗体であるAR91A9.2による治療は、バッファーで処理したグループと比較して、NCI−H520腫瘍の成長を51.3%減少させた。この結果は、各グループのマウスの数が少ないために有意に達しなかった(P=0.23、t検定)。しかし、抗体で処理したグループの腫瘍サイズは、ビヒクルコントロールのものよりいずれの時点でも低かった。41日目に、全てのマウスが尚も生存していたとき、主要の成長は54%阻害された(p=0.18、t検定)(図4)。
【0133】
本研究を通じて、毒性兆候は臨床上見られなかった。毎週測定した体重は、健康であること、そして健やかに成長しなかったことの指標とした。平均体重は、本研究期間の間に全ての群で増大した(図5)。1日目から62日目の間の平均体重増加はコントロールの群で3.73g(17.2%)であり、そしてAR91A9.2治療群で1.4g(6.4%)であった。治療期間の終了時にグループ間で有意差は見られなかった。
【0134】
要約すると、AR91A9.2は、このヒト肺癌異種移植モデルにおいて、良好な耐容性を示し、そして腫瘍量を減少させた。
【0135】
実施例4
競合結合物質の単離
抗体を考慮して、当業者は、競合的に阻害するCDMAB、例えば競合抗体であって、同一の、エピトープを認識する抗体、を生成することができる(Belanger L et al.Clinica Chimica Acta 48:15−18(1973))。ある方法は、抗体によって認識される抗原を発現する免疫原での免疫化を伴う。サンプルには、限定しないが、組織、単離タンパク質、又は細胞株が含まれ得る。得られたハイブリドーマは、競合アッセイを使用してスクリーニングすることができ、このアッセイは、ELISA、FACS、又はウェスタンブロッティングなどの試験抗体の結合を阻害する抗体を同定するアッセイである。別の方法は、ファージディスプレイ抗体ライブラリー及び抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体のパニングを使用することができる(Rubinstein JL et al.Anal Biochem 314:294−300(2003))。いずれにしても、標的抗原の少なくとも1つのエピトープへの元の標識抗体の結合を示す能力に基づいて抗体を選択する。したがって、かかる抗体は、元の抗体として抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するという特徴を有する。
【0136】
実施例5
AR91A9.2モノクローナル抗体の可変領域のクローニング
AR91A9.2ハイブリドーマ細胞株によって産生されたモノクローナル抗体の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)由来の可変領域の配列を決定することができる。免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖をコードするRNAは、対象のハイブリドーマから、グアニジンイソチオシアネートを用いた細胞可溶化を伴う標準的な方法を用いて抽出することができる(Chirgwin et al. Biochem. 18:5294−5299(1979))。mRNAは、当業界で知られているPCR法によりVH及びVL遺伝子をその後単離するためのcDNAを調製するのに使用することができる(Sambrook et al., eds., Molecular Cloning, Chapter 14, Cold Spring Harbor Laboratories Press, N.Y.(1989))。重鎖及び軽鎖のN末端アミノ酸は、自動エドマン配列決定装置によって独立して決定することができる。CDR及び隣接FRの更なるストレッチもVH及びVLのフラグメントのアミノ酸配列決定によって決定することができる。続いて、AR91A9.2モノクローナル抗体からVH及びVL遺伝子を単離するために合成プライマーを設計することができ、そして単離した遺伝子は、配列決定のために適切なベクターとライゲーションすることができる。キメラヒト化IgGを作るために、可変軽鎖及び可変重鎖ドメインを、発現に適したベクター内にサブクローニングすることができる。
【0137】
別の態様において、AR91A9.2又はその脱免疫化、キメラ、又はヒト化バージョンは、抗体を発現し、回収することができるようなトランスジェニック動物中での抗体をコードする核酸の発現によって産生される。例えば、当該抗体は、回収及び精製を容易にするような組織特異的な方法で発現することができる。1つのそのような態様において、本発明の抗体は、授乳時に分泌させるために乳腺中で発現する。トランスジェニック動物には、限定しないが、マウス、ヤギ、及びウサギが含まれる。
【0138】
(i)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体をコードするDNA(実施例1で概説したもの)は、常用の手順(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブの使用による)を使用して容易に単離及び配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦単離されると、DNAは発現ベクター内に配置してもよく、これはその後大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクションされるが、これらは組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体を合成するため以外に免疫グロブリンタンパク質を産生しない。当該DNAは、例えば、相同なマウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによって修飾してもよい。キメラ抗体又はハイブリッド抗体を、合成タンパク質化学における公知の方法(架橋剤に関連する方法が含まれる)を使用して、in vitroで調製してもよい。例えば、ジスルフィド交換反応の使用又はチオエーテル結合の形成によって免疫毒素を構築してもよい。この目的に適切な試薬の例として、イミノチオラート及びメチル−4−メルカプトブチリミダートがある。
【0139】
(ii)ヒト化抗体
ヒト化抗体は、非ヒト供給源由来の抗体に導入された1つ又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」残基と称され、これらは典型的には、「移入」可変ドメインから得られるものである。ヒト化は、Winter and co−workersの方法により、げっ歯類CDR又はCDR配列を対応するヒト抗体配列に置換することによって実施することができる(Jones et al,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al,Nature 332:323−327(1988);Verhoeyen et al,Science 239:1534−1536(1988);Clark,Immunol.Today 21:397−402(2000)での概説)。
【0140】
ヒト化抗体は、ヒト化配列の三次元モデルを使用した親配列及び種々の概念上のヒト化産物の分析過程によって調製することができる。三次元免疫グロブリンモデルが一般に利用可能であり、これは、当業者に良く知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の探索可能な三次元高次構造を表し、そしてディスプレイするコンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレイの調査により、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の解析が可能になる。このような方法で、FR残基は、所望の抗体特性、例えば標的抗原に対する親和性の増加が達成されるように選択することができ、コンセンサス配列及び移入配列と組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接且つ最も実質的に関与している。
【0141】
(iii)抗体フラグメント
抗体フラグメントの産生のための種々の技術が開発されている。これらのフラグメントは組換え宿主細胞によって産生することができる(Hudson,Curr.Opin.Immunol.11:548−557(1999);Little et al.,Immunol.Today 21:364−370(2000)で概説済み)。例えば、Fab’−SHフラグメントは、大腸菌から直接回収し、化学的にカップリングしてF(ab’)2フラグメントを形成することができる(Carter et al.,Biotechnology 10:163−167(1992))。別の態様において、ロイシンジッパーGCN4を使用してF(ab’)2が形成され、F(ab’)2分子のアセンブリが促進される。別のアプローチによれば、Fv、Fab、又はF(ab’)2フラグメントを、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。
【0142】
実施例6
本発明の抗体を含んで成る組成物
本発明の抗体は、癌を予防/治療するための組成物として使用することができる。本発明の抗体を含む癌の予防/治療のための組成物は毒性が低く、液体調製物の形態又は適切な調製物の医薬組成物としてヒト又は哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に、経口又は非経口(例えば、静脈内、腹腔内、皮下など)で投与することができる。本発明の抗体はそれ自体を投与してもよく、又は、適切な組成物として投与してもよい。投与に使用される組成物は、本発明の抗体又はその塩と共に医薬として許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含んでもよい。かかる組成物は、経口又は非経口投与に適切な医薬調製物の形態で提供される。
【0143】
非経口投与のための組成物の例は、注射用調製物、座剤などである。注射用調製物には、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、及び筋肉内注射、点滴、関節内注射などの剤形が含まれ得る。当該注射用調製物は、公知の方法によって調製してもよい。例えば、注射用調製物は、注射に常用されている滅菌水性溶剤又は油性溶剤に本発明の抗体又はその塩を溶解し、懸濁し、又は乳化することによって調製してもよい。注射用水性溶剤として、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の助剤などを含む等張液が存在する。注射用水性溶剤は、適切な可溶化剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、HCO−50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)と併用してもよい。油性溶剤として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用される。油性溶剤は、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの溶解補助剤と併用してもよい。このようにして調製した注射剤は適切なアンプルに充填される。直腸投与のために使用される座剤は、本発明の抗体又はその塩と従来の座剤の基剤とのブレンドによって調製してもよい。経口投与用組成物には、固体又は液体の調製物、具体的には、錠剤(ドラジェ及びフィルムコーティング錠が含まれる)、丸薬、顆粒、散剤調製物、カプセル(軟カプセルが含まれる)、シロップ、乳濁液、懸濁液などが含まれる。かかる組成物は公知の方法によって製造され、かかる組成物は、医薬の調製物分野で常用されているビヒクル、希釈剤、又は賦形剤を含んでもよい。錠剤のためのビヒクル又は賦形剤の例は、ラクトース、デンプン、スクロース、ステアリン酸マグネシウムなどである。
【0144】
有利には、上述の経口又は非経口用の組成物は、有効成分の用量に適合させた単位用量を有する医薬調製物に調製される。かかる単位用量調製物には、例えば、錠剤、丸薬、カプセル、注射剤(アンプル)、座剤などが含まれる。上記化合物の含有量は、通常、単位剤形あたり5〜500mgである。上記抗体は、特に注射形態では約5〜約100mg含まれ、他の形態では10〜250mg含まれることが好ましい。
【0145】
本発明の抗体を含む上記予防/治療薬又は調整剤の用量は、投与される被験体、対象疾患、容態、投与経路などに応じて変化し得る。例えば、治療/防止のために使用する場合(例えば、成人の乳癌)、本発明の抗体は、約0.01〜約20mg/kg体重、好ましくは約0.1〜約10mg/kg体重、より好ましくは約0.1〜約5mg/kg体重の用量で約1〜5回/日、好ましくは約1〜3回/日の頻度で静脈内に投与することが有利である。他の非経口投与及び経口投与では、薬剤は、上記用量に相当する用量で投与することができる。容態が特に重篤である場合、容態にしたがって用量を増大させてもよい。
【0146】
本発明の抗体は、そのまま又は適切な組成物の形態で投与してもよい。投与に使用される組成物は、上記抗体又はその塩と共に医薬として許容されるキャリア、希釈剤、又は賦形剤を含んでもよい。かかる組成物は、経口投与又は非経口投与(例えば、静脈内注射、皮下注射など)に適切な医薬調製物の形態で提供される。上記の各組成物は、他の有効成分を更に含むことができる。更に、本発明の抗体は、他の薬物(例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イフォスファミドなど)、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、5−フルオロウラシルなど)、抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシンなど)、植物由来抗腫瘍薬(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソールなど)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、イリノテカンなど)と併用してもよい。本発明の抗体と上記薬物は、同時又は時間をずらして患者に投与してもよい。
【0147】
特に癌について本明細書で記載した治療方法は、他の抗体又は化学療法薬の投与によって実施してもよい。例えば、特に結腸癌治療の場合、EGFRに対する抗体、例えばアービタックス(登録商標)(セツキシマブ)も投与することができる。アービタックス(登録商標)は、乾癬治療にも有効であることが証明されている。併用のための他の抗体には、特に乳癌治療の場合のハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、特に結腸癌治療の場合のアバスチン(登録商標)、及び特に非小細胞肺癌治療の場合のSGN−15が含まれる。本発明の抗体を、同一又は他の経路を介して、他の抗体/化学療法薬と同時又は個別に投与することができる。
【0148】
使用される化学療法薬/他の抗体投与計画には、患者の容態の治療に最適であると考えられる任意の投与計画が含まれる。異なる悪性疾患には、特異的抗腫瘍抗体及び特異的化学療法薬を使用する必要があり得、これらを一人一人の患者に合わせて決定する。本発明の好ましい態様では、化学療法薬は、抗体療法と同時、より好ましくは抗体療法後に投与される。しかし、本発明は任意の特定の方法又は投与経路に制限されないことに留意すべきである。
【0149】
AR91A9.2が癌細胞株上に存在するエピトープのライゲーションによって抗癌効果を媒介することを多数の証拠が示している。更に、AR91A9.2抗体は、限定しないが、FACS、細胞ELISA又はIHCによって例示される技術を利用することで、それと特異的に結合するエピトープを発現する細胞の検出に使用できることが示されていると言える。
【0150】
本明細書で言及した全ての特許及び刊行物は、本発明が属する技術分野の当業者の技術水準を示すものである。全ての特許及び刊行物は、各刊行物が具体的且つ個別に援用されることを示すのと同一の範囲で、本明細書で援用される。
【0151】
本発明の一定の形態が例示されているが、本明細書中に記載され、示されている特定の形態又はその一部の配置に制限されないことを理解すべきである。本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更を行うことができ、本発明が明細書中に示し、そして記載した事項に制限されると見なすべきではないということが、当業者にとって自明であろう。当業者は、目的を実施して記載の目的及び利点ならびに特有の目的及び利点が得られるように本発明を十分に適合させることを容易に認識するであろう。本明細書中に記載の任意のオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物学的に関連する化合物、方法、手順、及び技術は、現在のところ好ましい実施形態の代表であり、これらは本発明の例示を意図し、本発明の範囲を制限することを意図しない。当業者は、本発明を変更し、他で使用するが、これらは本発明の精神の範囲内に含まれ、添付の特許請求の範囲によって定義される。本発明は、特定の好ましい実施形態と併せて記載しているにもかかわらず、特許請求の範囲に記載の発明がかかる特定の実施形態に過度に制限されるべきではないと理解すべきである。事実、当業者に自明の本発明の実施のための記載の様式の種々の修正形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の単離モノクローナル抗体の抗体リガンド。
【請求項3】
受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体又は前記ヒト化抗体から産生した抗原結合フラグメント。
【請求項4】
請求項3に記載のヒト化抗体の抗体リガンド。
【請求項5】
受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体又は前記キメラ抗体から産生した抗原結合フラグメント。
【請求項6】
請求項5に記載のキメラ抗体の抗体リガンド。
【請求項7】
細胞傷害性部分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター部分及び造血細胞から成る群から選択されるメンバーとコンジュゲートされた、請求項1〜6のいずれか1項に記載の単離抗体又はその抗体リガンド。
【請求項8】
受入番号051206−04としてIDACに寄託された単離ハイブリドーマ細胞株。
【請求項9】
ヒト腫瘍から選択される組織サンプル中の癌細胞の抗体誘導型細胞傷害性を惹起するための方法であって:
前記ヒト腫瘍から組織サンプルを準備すること;
受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体、受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又はそれらの抗体リガンドであって、前記単離モノクローナル抗体とその標的抗原との結合を競合阻害する能力を特徴とする抗体リガンド、を準備すること;そして
前記単離モノクローナル抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体又はそれらの前記抗体リガンドと前記組織サンプルとを接触させること;
を含んで成り、前記単離モノクローナル抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体又はそれらの前記抗体リガンドと前記組織サンプルとの結合が細胞傷害性を誘導する、方法。
【請求項10】
哺乳類の抗体誘導細胞傷害性に対し感受性があるヒト腫瘍を治療する方法であって、前記ヒト腫瘍が、受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドと特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現し、前記抗体リガンドが前記単離モノクローナル抗体とその標的抗原との結合を競合阻害する能力を特徴とし、前記方法が、前記哺乳類に対し、前記哺乳類の腫瘍量の減少をもたらすのに有効な量の前記モノクローナル抗体又は前記抗体リガンドを投与することを含んで成る、方法。
【請求項11】
前記モノクローナル抗体が細胞傷害性部分とコンジュゲートされている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞傷害性部分が放射性同位体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドが捕体を活性化する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドが抗体依存性細胞傷害性を媒介する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記単離モノクローナル抗体が、単離モノクローナル抗体をヒト化したものである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記単離モノクローナル抗体が、単離モノクローナル抗体をキメラ化したものである、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体と同一の1又は複数のエピトープと特異的に結合することができるモノクローナル抗体。
【請求項18】
哺乳類のヒト腫瘍を治療する方法であって、前記ヒト腫瘍が、受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドと特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現し、前記抗体リガンドが前記単離モノクローナル抗体とその標的抗原との結合を競合阻害する能力を特徴とし、前記方法が、前記哺乳類に対し、前記哺乳類の腫瘍量の減少をもたらすのに有効な量の前記モノクローナル抗体又は前記抗体リガンドを投与することを含んで成る、方法。
【請求項19】
前記モノクローナル抗体が細胞傷害性部分とコンジュゲートされている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞傷害性部分が放射性同位体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドが捕体を活性化する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドが抗体依存性細胞傷害性を媒介する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記単離モノクローナル抗体が、単離モノクローナル抗体をヒト化したものである、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記単離モノクローナル抗体が、単離モノクローナル抗体をキメラ化したものである、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
哺乳類のヒト腫瘍を治療する方法であって、前記ヒト腫瘍が、受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドと特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現し、前記抗体リガンドが前記単離モノクローナル抗体とその標的抗原との結合を競合阻害する能力を特徴とし、前記方法が、前記哺乳類に対し、前記哺乳類の腫瘍量の減少をもたらすのに有効な量の前記モノクローナル抗体又は前記抗体リガンドと少なくとも1つの化学療法剤とを投与することを含んで成る、方法。
【請求項26】
前記モノクローナル抗体が細胞傷害性部分とコンジュゲートされている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞傷害性部分が放射性同位体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドが捕体を活性化する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドが抗体依存性細胞傷害性を媒介する、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記単離モノクローナル抗体が、単離モノクローナル抗体をヒト化したものである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記単離モノクローナル抗体が、単離モノクローナル抗体をキメラ化したものである、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体、受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体又は受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体と特異的に結合する、ヒト腫瘍から選択される組織サンプル中の癌性の細胞の存在を決定するための結合アッセイであって:
前記ヒト腫瘍由来の組織サンプルを準備すること;
受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体によって認識されるエピトープと同一の1又は複数のエピトープを認識する、前記単離モノクローナル、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体又はその抗体リガンドのうちの少なくとも1つを準備すること;
前記の準備された抗体又はその抗体リガンドと前記組織サンプルとを接触させること;そして
前記の少なくとも1つの準備された抗体又はその抗体リガンドと前記組織サンプルとの結合を決定すること;
を含んで成り、これにより、前記組織サンプル中の前記癌性の細胞の存在が示唆される、方法。
【請求項33】
ヒト腫瘍量の減少のためのモノクローナル抗体の使用であって、前記ヒト腫瘍が、受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドと特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現し、前記抗体リガンドが前記単離モノクローナル抗体とその標的抗原との結合を競合阻害する能力を特徴とし、前記方法が、前記哺乳類に対し、前記哺乳類の腫瘍量の減少をもたらすのに有効な量の前記モノクローナル抗体又は前記抗体リガンドを投与することを含んで成る、使用。
【請求項34】
前記モノクローナル抗体が細胞傷害性部分とコンジュゲートされている、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記細胞傷害性部分が放射性同位体である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドが捕体を活性化する、請求項33に記載の使用。
【請求項37】
前記単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドが抗体依存性細胞傷害性を媒介する、請求項33に記載の使用。
【請求項38】
前記単離モノクローナル抗体が、単離モノクローナル抗体をヒト化したものである、請求項33に記載の使用。
【請求項39】
前記単離モノクローナル抗体が、単離モノクローナル抗体をキメラ化したものである、請求項33に記載の使用。
【請求項40】
ヒト腫瘍量の減少のためのモノクローナル抗体の使用であって、前記ヒト腫瘍が、受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドと特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現し、前記抗体リガンドが前記単離モノクローナル抗体とその標的抗原との結合を競合阻害する能力を特徴とし、前記方法が、前記哺乳類に対し、前記哺乳類の腫瘍量の減少をもたらすのに有効な量の前記モノクローナル抗体又は前記抗体リガンドと少なくとも1つの化学療法剤とを投与することを含んで成る、使用。
【請求項41】
前記モノクローナル抗体が細胞傷害性部分とコンジュゲートされている、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
前記細胞傷害性部分が放射性同位体である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドが捕体を活性化する、請求項40に記載の使用。
【請求項44】
前記単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドが抗体依存性細胞傷害性を媒介する、請求項40に記載の使用。
【請求項45】
前記単離モノクローナル抗体が、単離モノクローナル抗体をヒト化したものである、請求項40に記載の使用。
【請求項46】
前記単離モノクローナル抗体が、単離モノクローナル抗体をキメラ化したものである、請求項40に記載の使用。
【請求項47】
ヒト癌性腫瘍を治療するのに有効な組成物であって、以下の組み合わせ:
請求項1、2、3、6、7、8、又は17のいずれか1項に記載の抗体又は抗体リガンド;
前記抗体又はその抗原結合フラグメントと、細胞傷害性部分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター部分及び造血細胞から成る群から選択されるメンバーとのコンジュゲート;及び
必要量の薬理学的に許容される担体;
を含んで成り、前記ヒト癌性腫瘍を治療するのに有効な組成物。
【請求項48】
ヒト癌性腫瘍の存在を検出するためのキットであって、前記ヒト腫瘍が、受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンドと特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現し、前記抗体リガンドが前記単離モノクローナル抗体とその標的抗原との結合を競合阻害する能力を特徴とし、前記キットが、受入番号051206−04としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体又はその抗体リガンド、及び、前記単離抗体、又はその抗体リガンドと、特定のカットオフレベルでの存在が前記ヒト癌性腫瘍の前記存在を診断するのに用いられるポリペプチドとが結合しているか否かを検出するための手段、を含んで成る、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−516629(P2010−516629A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545781(P2009−545781)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000149
【国際公開番号】WO2008/089565
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】