癌様疾患修飾性抗体141205−02
本発明は、新規スクリーニングパラダイムを用いて癌様疾患修飾性抗体を生産するための方法に関する。本法は、終末点として癌細胞細胞傷害性を用いて抗癌抗体を分離することによって、治療および診断のための抗癌抗体の生産を可能とする。これらの抗体は、癌の段階判定および診断に役立てるために使用することが可能であり、かつ、一次腫瘍、および腫瘍転移物を治療するために使用することが可能である。この抗癌抗体は、トキシン、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的またはリポーター成分、および造血細胞に接合させることが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌疾患修飾抗体(CDMAB)の単離および生産、および、治療および診断プロセスにおける、これらのCDMAB単独の使用、または、一つ以上のCDMAB/化学療法剤の併用におけるCDMABの使用に関する。本発明はさらに、本発明のCDMABを利用する結合アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療薬としてのモノクロナール抗体:癌を抱える各個人は、ユニークであり、その個人のアイデンティテイと同じぐらい、他の癌と異なる癌を有する。にも拘わらず、現今の治療は、同じ段階にある、同じタイプの癌を持つ全ての患者を同じ様に治療する。これらの患者の少なくとも30パーセントは、第1線治療には奏功せず、したがって、次の治療ラウンドに進むが、治療不振、転移、および最終的な死の確率が高まる。もしこれよりも優れた治療法があるとすれば、それは、特定の個人に合わせた治療の特注であろう。この特注に応えられる、現今唯一の治療法は手術である。化学療法および放射線治療は、患者の個別要求に適合させることはできず、かつ、手術そのものも、多くの場合、治癒をもたらすには不十分である。
【0003】
モノクロナール抗体の登場とともに、特注治療のための方法を開発する可能性が現実味を帯びてきた。なぜなら、各抗体は、単一のエピトープを指向することが可能だからである。さらに、ある特定の個人の腫瘍を一意に定義する、エピトープの関連集合体に向けた抗体の組み合わせを生産することが可能である。
【0004】
癌様細胞と正常細胞の間の顕著な差は、癌様細胞が、形質転換細胞に特異的な抗原を含むことであることを認識してから、科学界は、モノクロナール抗体を、これらの癌抗原に対して特異的に結合させることによって、形質転換細胞を特異的に標的するように設計することが可能であると長い間思い続けてきた。このことから、モノクロナール抗体は、癌細胞を排除するための「魔法の弾丸」として役立ち得るとする信念が生まれた。しかしながら、単一モノクロナール抗体では、それがどんなものであれ、癌の全ての事例には役立たないこと、複数のモノクロナール抗体を、一つのクラスとして、指向性癌治療剤として展開することが可能であることが広く認識されている。本開示の発明の教示にしたがって単離されるモノクロナール抗体は、患者にとって有益なやり方で、例えば、腫瘍負荷を下げることによって、癌様疾患の進行を修飾することが示されているが、本明細書では、「癌疾患修飾抗体(CDMAB)」または「抗癌」抗体のように、様々な名前で呼ばれることになる。
【0005】
現在、癌患者は、通常、治療についてほとんど選択肢を持たない。癌治療におけるスケジュール対処法は、地球規模の生存率および罹患率の改善をもたらした。しかしながら、特定の個人にとっては、これらの統計学的改善は、必ずしもその個人的状況の改善とは相関しない。
【0006】
したがって、もしも、開業医が、同じ対象群の中の他の患者とは独立に各腫瘍を治療することを可能とする方法原理が提出されたならば、それは、まさにその個人だけに合わせた独自の治療を施すユニークな方法を可能とすることになろう。もしもこのような治療コースが実現するならば、それは、理想的に、治癒率を高め、さらによい結果を産み、したがって、長く希求されていた要求を満たすものとなろう。
【0007】
歴史的には、ポリクロナール抗体が使用されてきたが、ヒト癌の治療ではごく限られた成功しか得られなかった。リンパ腫および白血病が、ヒトの血漿で治療されたが、長期の寛解または反応はほとんど見られなかった。さらに、再現性が不足しており、化学療法に比べ一段と優る長所が見られなかった。固体腫瘍、例えば、乳癌、メラノーマ、および腎細胞癌も、ヒト血液、チンパンジー血清、ヒト血漿、およびウマ血清によって治療されているが、同様にその結果は予測不明で、無効であった。
【0008】
固体腫瘍に対するモノクロナール抗体について、これまでたくさんの臨床治験が行われている。1980年代、ヒトの乳癌について少なくとも四つの臨床治験が行われたが、特異的抗原に対する抗体、または、組織選択性に基づいて選ばれた抗体を用いたが、少なくとも47名の患者において僅かに1名の反応者しか得られなかった。1998年になって始めて、CISPLATINと組み合わせてヒト化抗Her2/neu抗体(Herceptin(登録商標))を用いた臨床治験が成功を収めた。この治験では、37名の患者が反応評価を受けたが、その内、4分の1は、部分的反応率しか示さず、別の4分の1では、軽度の、または安定的な病気の進行が見られた。反応者の内、進行までの時間の中央値は8.4ヶ月であり、反応持続時間の中央値は5.3ヶ月であった。
【0009】
Herceptin(登録商標)は、Taxol(登録商標)と組み合わせた第1線使用が1998年に承認された。臨床実験結果から、Taxol(登録商標)のみを服用した群に比べ(3.0ヶ月)、抗体治療プラスTaxol(登録商標)を服用した人々(6.9ヶ月)では、病気進行までの時間の中央値に増加が見られた。生存時間中央値にも若干の増加が見られた;Herceptin(登録商標)プラスTaxol(登録商標)治療群・対・Taxol(登録商標)単独治療群の生存時間は、22対18ヶ月であった。さらに、抗体プラスTaxol(登録商標)併用群と、Taxol(登録商標)単独群と比べた場合、完全反応者の数(8対2パーセント)においても、部分的反応者の数(34対15パーセント)においても増加が見られた。しかしながら、Taxol単独と比べた場合、Herceptin(登録商標)プラスTaxol(登録商標)による治療では、より高頻度の心臓毒性が誘発された(それぞれ、13対1パーセント)。さらに、Herceptin(登録商標)治療は、現在その機能も、生物学的に重要なリガンドも知られていない、ヒトの上皮増殖因子受容体2(Her2/neu)を過剰発現する(免疫組織化学(IHC)分析によって定量した場合)患者、転移性乳癌を有する患者の約25%に対してのみ有効であった。したがって、乳癌患者にとっては、依然として満たされない大きな要求がある。Herceptin(登録商標)治療で利益を受けることが可能な人々でも、やはり化学療法は必要であろうし、したがって、すくなくともある程度は、この種の治療の副作用に対処する必要はあろう。
【0010】
結腸直腸癌を調べる臨床治験は、糖タンパクおよび糖脂質の両方を標的とする抗体を含む。腺癌に対して若干の特異性を持つ、17−1Aなどの抗体は、60名を超える患者において第2相臨床治験を経過したばかりであるが、1名の患者しか部分的反応を示さなかった。他の治験では、17−1Aの使用は、シクロフォスファミドを加えたプロトコールにおいて、52名の患者の内、完全反応は1名のみ、僅かな反応が2名に得られたにすぎなかった。これまでのところ、17−1AのIII相臨床治験は、段階IIIの結腸癌に対する補助療法として効力の改善を実証していない。最初、画像化のために承認された、ヒト化マウスモノクロナール抗体の使用もやはり、腫瘍後退をもたらさなかった。
【0011】
やっと最近になって、モノクロナール抗体使用による、結腸直腸癌の臨床実験において、いくつかの陽性結果が得られている。2004年、ERBITUX(登録商標)が、イリノテカン系化学療法に対してほとんど反応しない、EGFR−発現転移性結腸直腸癌を持つ患者に対する、第2線治療用として承認された。2群構成II相臨床実験、および単一群構成実験の結果から、イリノテカンと組み合わせたERBITUX(登録商標)は、それぞれ、23および15パーセントの反応率、および、病気進行までの時間の中央値4.1および6.5ヶ月をもたらすことが示された。同じ2群構成II相臨床実験、および別の単一群構成実験の結果から、ERBITUX(登録商標)単独による治療は、それぞれ、11および9パーセントの反応率、および、病気進行までの時間の中央値1.5および4.2ヶ月をもたらすことが示された。
【0012】
したがって、スイスとアメリカ合衆国の両国で、イリノテカンと組み合わせたERBITUX(登録商標)治療が、アメリカ合衆国で、ERBITUX(登録商標)治療単独が、第1線のイリノテカン治療が不成功であった結腸癌患者に対する第2線治療として承認された。以上、Herceptin(登録商標)同様、スイスにおける治療は、モノクロナール抗体と化学療法の併用だけが承認された。さらに、スイスでも合衆国でも、治療は、患者に対し第2線治療としてのみ承認された。さらに、2004年、AVASTIN(登録商標)が、転移性結腸直腸癌の第1線治療として、5−フルオロフラシル系静注化学療法との併用について承認された。III相臨床実験の結果から、5−フルオロウラシル単独で治療された患者と比べ、AVASTIN(登録商標)プラス5−フルオロウラシルで治療された患者では、生存時間中央値の延長が示された(それぞれ、20ヶ月・対・16ヶ月)。しかしながら、再びHerceptin(登録商標)およびERBITUX(登録商標)と同様、治療は、モノクロナール抗体と化学療法の併用に対してのみ承認された。
【0013】
肺癌、脳癌、卵巣癌、すい臓癌、前立腺癌、および胃癌についても不振な結果が続いている。非小細胞型肺癌に関する、最近もっとも有望な結果が、化学療法剤TAXOTERE(登録商標)と組み合わせて、細胞殺傷性薬剤ドキソルビシンと接合したモノクロナール抗体(SGN−15;dox−BR96、抗Sialyl−Lex)で治療を行った、第II相臨床治験から得られた。TAXOTERE(登録商標)は、肺癌の第2線治療のための、唯一FDA承認を受けた化学療法剤である。初期のデータは、TAXOTERE(登録商標)単独に比べ、全体的生存率の改善を示した。実験のために招集された62名の患者の内、3分の2は、TAXOTERE(登録商標)と組み合わせてSGN−15を服用し、一方、残りの3分の1は、TAXOTERE(登録商標)だけを服用した。TAXOTERE(登録商標)と組み合わせてSGN−15を服用した患者では、全体生存期間の中央値が、TAXOTERE(登録商標)だけを服用した患者の5.9ヶ月に比べ、7.3ヶ月であった。1年時および18ヶ月時における全体生存率は、TAXOTERE(登録商標)単独服用患者では、それぞれ、24および8パーセントであったのに比べ、SNA−15プラスTAXOTERE(登録商標)を服用した患者では、それぞれ29および18パーセントであった。さらに新たな臨床治験が計画されている。
【0014】
臨床前の段階ではあるが、メラノーマに対するモノクロナール抗体の使用には、限られたものではあるが、ある程度の成功が見られた。これらの抗体の内で臨床治験に達したものはほとんど無く、これまで、承認されたものもなく、第III相臨床治験において有望な結果を示したものも無い。
【0015】
病気治療のための新規薬剤の発見は、30,000個の既知の遺伝子の内、どれが病気の原因発生に寄与する可能性のある関連標的であるか、その特定ができないために妨げられている。腫瘍学研究では、単に、それらが腫瘍細胞において過剰に発現されるという事実に基づいて、薬剤の仮想標的がしばしば選択される。このようにして特定された標的は次に、多数の化合物との相互作用についてスクリーニングされる。仮想抗体治療の場合、これらの候補化合物は、通常、Kohler and Milstein(非特許文献1)によって敷かれた基本原理に基づく、従来の、モノクロナール抗体生産法によって得られる。抗原(例えば、全体細胞、細胞分画、精製抗原)によって免疫化されたマウスから脾臓細胞を収集し、これを、恒久化されたハイブリドーマパートナーと融合させる。得られたハイブリドーマをスクリーニングし、標的に対しもっとも活発に結合する抗体の分泌に関して選別する。癌細胞に対して向けられる、多くの治療および診断抗体、例えば、Herceptin(登録商標)およびRITUXIMABを含む抗体が、この方法を用いて生産され、それらの親和性に基づいて選別されてきた。この戦略における欠点は二つである。先ず、治療的または診断的抗体結合のための適切な標的の選択が、組織特異的発癌プロセスを取り巻く知識の欠乏、および、その結果生じる単純化法、例えば、過剰発現によって行う選択によって制限される。第二に、受容体にもっとも大きい親和度をもって結合する薬剤分子が、常に、もっとも高率に、シグナルを起動または抑制するとする仮設は必ずしも常には該当しない。
【0016】
乳癌および結腸癌の治療においては若干の進歩が見られたとはいうものの、単独剤であれ、併用治療であれ、効果的な抗体治療の特定および開発は、全ての種類の癌について不十分なままである。
【0017】
先行特許:
特許文献1は、患者の腫瘍が、該患者の細胞または組織からクローンされてもよいMHC遺伝子によってトランスフェクトされるプロセスを開示する。次に、このトランスフェクト細胞を用いて、該患者にワクチン接種する。
【0018】
特許文献2は、哺乳動物の腫瘍および正常細胞の細胞内成分に対して特異的であるが、外部成分に対してはそうではないモノクロナール抗体を獲得する工程、該モノクロナール抗体を標識する工程、該標識抗体を、腫瘍細胞を殺傷するための治療を受けたことのある哺乳動物の組織と接触させる工程、および、変性腫瘍細胞の細胞内成分に対する、該標識抗体の結合を測定することによって治療の有効性を定量する工程を含むプロセスを開示する。ヒトの細胞内抗原に向けられる抗体を調製する際、この特許権者は、悪性細胞は、このような抗原の好適な供給源を代表することを認識する。
【0019】
特許文献3は、新規抗体、およびその生産法を提供する。具体的には、この特許は、ヒトの腫瘍、例えば、結腸および肺の腫瘍と関連するタンパク抗原に対し強力に結合する性質を持つが、一方、正常細胞に対する結合の程度ははるかに低い、モノクロナール抗体の形成を教示する。
【0020】
特許文献4は、癌の治療法であって、ヒトの癌患者から腫瘍組織を外科的に取り出すこと、該腫瘍組織を処理して腫瘍細胞を獲得すること、該腫瘍細胞を放射線暴露して、生存はするが発癌性を持たなくすること、および、これらの細胞を用いて、該患者にワクチン接種し、一次腫瘍の回帰を抑制しながら、同時に転移を抑制すること、を含む方法を提供する。この特許は、腫瘍細胞の表面抗原と反応するモノクロナール抗体の開発を教示する。コラム4、45行以下に記載されるように、本特許権者は、ヒトの新形成において活発な特異的免疫療法を発揮するモノクロナール抗体の開発に、自己発生の腫瘍細胞を利用する。
【0021】
特許文献5は、ヒトの上皮癌に特徴的ではあるが、上皮起源組織には依存しない糖タンパク抗原を教示する。
【0022】
特許文献6は、Her2発現細胞においてアポトーシスを誘発する抗Her2抗体、該抗体を生産するハイブリドーマ細胞系統、該抗体を使用する癌治療法、および前記抗体を含む製剤組成物を主題とする。
【0023】
特許文献7は、腫瘍および非腫瘍組織供給源から精製した、ムチン抗原に対するモノクロナール抗体を生産するための、新規ハイブリドーマ細胞系統を記載する。
【0024】
特許文献8は、所望の抗原に対して特異的な抗体を生産するヒトリンパ球を生成する方法、モノクロナール抗体の生産法、および、該方法によって生産されるモノクロナール抗体を主題とする。本特許は、特に、癌の診断と治療に有用な、抗HDヒトモノクロナール抗体の生産を主題とする。
【0025】
特許文献9は、ヒト癌細胞と反応する、抗体、抗体断片、抗体接合体、おおび、単一鎖免疫トキシンに関する。これらの抗体が機能する機序は、該分子は、ヒト癌の表面に存在する細胞膜抗原と反応する点、さらに、該抗体は、癌細胞内部へ進入する能力を持ち、そのため、抗体−薬剤、および抗体−トキシン接合体の形成に特に有用であるという点で二重である。その非修飾形態では、該抗体はさらに、特異的濃度において細胞傷害性を示す。
【0026】
特許文献10は、腫瘍の治療および予防のための自己抗体の使用を開示する。しかしながら、この抗体は、高齢哺乳動物から得られる抗核自己抗体である。その場合、この自己抗体は、免疫系に認められる、一種の天然抗体と言われるべきものである。この自己抗体は「高齢哺乳動物」から得られたものであるので、この自己抗体が、治療される患者から実際に得られたものとする必然的理由はない。さらに、本特許は、高齢哺乳動物から得られた、天然およびモノクロナールの、抗核自己抗体、および、モノクロナールの、抗核自己抗体を生産するハイブリドーマ細胞系統を開示する。
【0027】
【特許文献1】米国特許第5,750,102号
【特許文献2】米国特許第4,861,581号
【特許文献3】米国特許第5,171,665号
【特許文献4】米国特許第5,484,596号
【特許文献5】米国特許第5,693,763号
【特許文献6】米国特許第5,783,186号
【特許文献7】米国特許第5,849,876号
【特許文献8】米国特許第5,869,268号
【特許文献9】米国特許第5,869,045号
【特許文献10】米国特許第5,780,033号
【非特許文献1】1975, Nature, 256, 495−497, Kohler and Milstein
【発明の開示】
【0028】
本出願は、癌様疾患修飾性モノクロナール抗体をコードするハイブリドーマ細胞系統を単離するための、米国特許第6,180,357号に教示される、患者特異的抗癌抗体の生産法原理を利用する。これらの抗体は、一腫瘍に対して特異的に製造することが可能であり、したがって、癌治療の特注化を可能とする。本出願の通用範囲において、細胞殺傷性(細胞傷害性)、または細胞増殖抑制性(細胞静止性)を有する抗癌抗体を、以後、細胞傷害性を持つと呼ぶ。これらの抗体は、癌の段階判定および診断の補助に使用すること、腫瘍の転移の治療に使用することが可能である。従来の薬剤発見のパラダイムにしたがって生成される抗体と違って、このようにして生成される抗体は、従来から悪性組織の増殖/または生存と一体的であることが示されたことがない分子および経路をも標的とする可能性がある。さらに、これらの抗体の結合親和性は、比較的強い親和度の相互作用には反応しない細胞傷害性事象の起動に求められる要求に合致する。さらに、標準的化学療法型薬剤、例えば、核種を、本発明のCDMABに接合し、前記化学療法剤の使用域を収束することは、本発明の範囲内にある。このCDMABは、トキシン、細胞傷害性成分、酵素、例えば、ビオチン接合酵素、または血液系細胞に接合させて、抗体接合体を形成することも可能である。CDMABは単独で使用することも可能であるし、あるいは、一つ以上のCDMAB/化学療法剤と組み合わせて使用することも可能である。
【0029】
個別化された抗癌治療の展望は、患者の管理法にも変化をもたらす。考えられる臨床シナリオは、発見の時点で腫瘍サンプルが得られ、預託される。このサンプルについて、既存の、癌様疾患修飾抗体系列に基づいて、腫瘍のタイプ分けを行うことが可能である。患者の段階判定を行うと好都合であるが、患者をさらに段階判定するのに、手持ちの抗体を使用することが可能である。直ちに既存の抗体で患者を治療することが可能であり、その腫瘍に対して特異的な、一系列の抗体を、本明細書に略述するされる方法を用いて、または、本明細書に開示されるスクリーニング法と組み合わせてファージディスプレイライブラリーを用いて、生産することが可能である。生成される全ての抗体が、抗癌抗体のライブラリーに加えられる。なぜなら、他の腫瘍が、治療されるものと同じエピトープのいくつかを担持する可能性があるからである。本法にしたがって生産される抗体は、これらの抗体に結合する癌を有する、任意の数の患者において癌様疾患を治療するのに有用である可能性がある。
【0030】
抗癌抗体の外に、患者は、多数方式統合治療の一部として、現今推奨の治療を受容するように選択することも可能である。本法によって単離される抗体は、非癌様細胞に対して比較的毒性を持たないという事実から、複数抗体の高用量の併用を、単独で、または通例治療と組み合わせて使用することが可能である。高い治療指数はさらに、治療耐性細胞出現の可能性を下げることになる、短い時間スケールでの再治療を可能とする。
【0031】
患者が初回の治療コースに反応しにくかったり、または転移が起こった場合には、腫瘍に対する特異的抗体の生成過程を、再治療のために繰り返すことが可能である。さらに、抗癌抗体を、その患者から得た赤血球に接合させて、転移治療のために再輸液することが可能である。転移癌に対しては効果的な治療がほとんどなく、転移は通常、死に至る暗い結果の予兆である。しかしながら、転移癌には、通常、よく血管が発達しており、赤血球による抗癌剤の送達は、腫瘍部位に抗体を濃縮する作用を及ぼすことが可能である。転移以前においても、大抵の癌細胞は、その生存を、宿主の血液補給に依存するので、赤血球に接合させた抗癌抗体は、体内の腫瘍に対しても有効である可能性がある。それとは別に、抗体は、他の血液系細胞、例えば、リンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞などに接合させてもよい。
【0032】
5クラスの抗体があり、それぞれが、その重鎖によって与えられる機能と関連する。一般に、裸の抗体による癌細胞の殺作用は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、または補体依存性細胞傷害性(CDC)のどちらかによって仲介されると考えられている。例えば、マウスのIgMおよびIgG2a抗体は、補体系のC−1成分に結合することによってヒトの補体を活性化し、それによって補体活性化の古典経路を活性化し、これが、腫瘍の分解を可能とする。ヒトの抗体では、もっとも効果的な補体活性化抗体は、一般に、IgMおよびIgG1である。IgG2aおよびIgG3異性形から成るマウス抗体は、単球、マクロファージ、顆粒球、およびある種のリンパ球を介して細胞死をもたらすFc受容体を有する、細胞傷害性細胞を招集するのに有効である。IgG1およびIgG3異性形から成るヒト抗体はADCCを仲介する。
【0033】
Fc領域を仲介する細胞傷害性は、エフェクター細胞、対応する受容体、またはタンパク、例えば、NK細胞、T細胞、および補体の存在を必要とする。このようなエフェクター機構が無いと、抗体のFc機能は不活性となる。抗体のFc部分は、インビボでは、抗体の薬理動態に影響を及ぼす特性を付与することがあるが、インビトロではこれが作用しない。
【0034】
我々が抗体を試験する細胞傷害性アッセイでは、いずれのエフェクター機構も存在せず、しかも、アッセイはインビトロで行われる。これらのアッセイは、エフェクター細胞(NK、マクロファージ、またはT細胞)も、または補体も持たない。これらのアッセイは、一緒に添加されるものによって完全に定義されるので、各成分の特徴を解明することは可能である。本発明で使用されるアッセイは、標的細胞、培養体、および血清しか使用しない。標的細胞は、癌細胞または線維芽細胞なので、エフェクター機能を持たない。エフェクター機能特性を持つ外来細胞が無いので、この機能を持つ細胞要素は無い。媒体は、補体を含まず、細胞も全く含まない。標的細胞の増殖を支えるために使用される血清も、販売業者によって開示されるように、補体活性を持たない。さらに、我々の実験室において、我々自身が、使用した血清の中に補体活性の欠如を確認した。したがって、我々の実験は、抗体の作用は、完全に、Fabを仲介する抗原結合の作用によるという事実を実証する。好都合なことに、標的細胞は、Fcに対する受容体を持たないので、Fabだけを見て、これと相互作用を持つ。ハイブリドーマは、標的細胞によって試験される完全な免疫グロブリンを分泌するが、細胞と相互作用を持つ、免疫グロブリンの唯一の部分は、抗原結合断片として活動するFabである。
【0035】
ここに特許請求される抗体、および抗原結合断片に関して、本出願は、出願時、図1のデータによって実証される細胞性細胞傷害性を明らかにした。上に指摘したように、かつ、本明細書において客観的証拠によって確認されるように、この作用は、全く、Fabの腫瘍細胞に対する結合によるものであった。
【0036】
Fcによって招集されるエフェクター機構とは独立に、標的に対する抗体の直接的結合による細胞傷害性を仲介する抗体に関しては、従来技術において、十分な証拠がある。その、もっとも良い証拠は、補充細胞、または補体を持たない(そのような機構を公式的に排除するために)インビトロ実験である。この種の実験が、完全な免疫グロブリン、または、F(ab)′2断片のような抗原結合断片について実行されている。この種の実験において、抗体、または抗原結合断片は、いずれも癌治療市販薬として米国FDAによって承認された、抗Her2および抗EGFR抗体の場合と同様、標的細胞のアポトーシスを直接誘発する。
【0037】
抗体介在性癌殺作用の、もう一つの可能な機序は、細胞膜、およびその関連糖タンパクまたは糖脂質における各種化学的結合の加水分解を触媒するように機能する抗体、いわゆる触媒抗体の使用を通じて行われるものである。
【0038】
抗体介在性細胞殺作用に関してはさらに三つの機序がある。第1は、癌細胞の上に存在する候補抗原に対して免疫反応を生成するように生体を喚起するワクチンとしての抗体の使用である。第2は、増殖受容体を標的とし、それらの機能に干渉するか、または、受容体を下方調整して、該受容体の機能を効果的に欠落させる抗体の使用である。第3は、直接的細胞死を招く可能性のある、細胞表面同士の直接連結、例えば、TRAIL R1またはTRAIL R2などの死亡受容体、またはアルファVベータ3などのインテグリン分子同士の連結に対する抗体の作用である。
【0039】
癌薬剤の臨床的有用性は、患者にとって受容可能なリスクプロフィール下における該薬剤の利益によって量られる。癌治療では、一般に、生存率が、もっとも強く求められる利益であるが、生命の延長の外に、いくつかの広く認識される利益がある。治療が生存率に悪影響を及ぼすことがない限り(望ましい)他の利益として、症状の緩和、不快事象に対する保護、再発までの時間、すなわち無病の生存時間の延長、および進行までの時間の延長が挙げられる。これらの基準は一般的に受け容れられており、米国食品薬品局(F.D.A.)などの規制当局も、これらの利益を生み出す薬品を承認する(Hirschfeld et al. Crinical Reviews in Oncology/Hematology 42:137−143 2002)。これらの基準の外に、この種の利益を予告する他の終末点があることも十分認識されている。米国食品薬品局によって与えられる承認過程が加速されることは、患者利益を予測することがほぼ確かな代用物の存在を一部認めることになる。2003年末現在、この過程の下に16種の薬剤が承認され、この内四つは完全承認を受けた。すなわち、追跡実験でも、代用終末点によって予測された通りの直接的患者利益が実証された。固体腫瘍における薬剤作用を判定するための、一つの重要な終末点は、治療に対する反応を測定することによって腫瘍負荷を評価することである(Therasse et al. Journal of the National Cancer Institute 92(3):205−216 2000)。このような評価のための基準(RECIST基準)が、癌における国際的エキスパートグループである、固体腫瘍における反応評価作業グループによって制定されている。RECIST基準による客観的反応によって示され、適切なコントロールグループと比べて腫瘍負荷に対する作用が実証された薬剤は、最終的に、直接的患者利益をもたらす傾向を持つ。前臨床背景では、一般に、腫瘍負荷の評価および記録は、比較的直接的である。前臨床実験が、臨床背景に翻訳可能である限りにおいて、前臨床モデルにおいて生存の延長を実現した薬剤は、臨床的有用性がもっとも期待される。臨床治療に対し陽性反応をもたらす場合と似て、前臨床背景において腫瘍負荷を緩和する薬剤は、その病気に対し著明な直接的影響をもたらす可能性がある。生存時間の延長は、癌薬剤の治療においてもっとも求められる臨床結果ではあるが、臨床的有用性を持つ他の利益もあり、かつ、病気進行の遅延と相関する可能性がある腫瘍負荷の緩和、生存時間の延長、またはその両方が、直接的利益をもたらし、かつ、臨床作用を持つことは明瞭である(Eckhardt et al. 「開発治療法:標的化合物の臨床治験設計の成功と失敗(“Developmental Therapeutics: Successes and Failures of Clinical Trial Designs of Targeted Compounds”)」、ASCO Education Book, 39th Annual Meeting, 2003, pages 209−219)。
【0040】
本発明は、細胞傷害性アッセイおよび非確立動物モデルにおけるその作用によって特定される、AR58A314.1の開発および使用を記載する。本発明は、標的分子の上に存在する一エピトープまたは複数エピトープに対して特異的に結合し、さらに、悪性腫瘍細胞に対しては、ただし正常細胞に対してはそのようなことはなく、天然の抗体同様、インビトロの細胞傷害性を有し、さらに、天然の抗体同様、腫瘍増殖の抑制を直接仲介する試薬を記載する。さらに別な進歩として、これらの抗体を、抗癌抗体ライブラリーに含めることは、異なる抗癌抗体同士の適切な組み合わせを決定することによって、腫瘍を標的し、腫瘍の増殖および発達を抑制するのにもっとも効果的な抗体を発見することによって、異なる抗原マーカーを発現する腫瘍を標的する可能性を強化することがある。本発明はさらに、ヒト患者においても同様の抗癌性を示す可能性を有するという点でも癌治療における進歩を表す。さらに別な進歩として、これらの抗体を、抗癌抗体ライブラリーに含めることは、異なる抗癌抗体同士の適切な組み合わせを決定することによって、腫瘍を標的し、腫瘍の増殖および発達を抑制するのにもっとも効果的な抗体を発見することによって、異なる抗原マーカーを発現する腫瘍を標的する可能性を強化することがある。
【0041】
まとめると、本発明は、投与されると、哺乳動物においてAR58A314.1抗原を発現する癌の腫瘍負荷を下げることが可能な、治療剤標的としてのAR48A314.1抗原の使用を教示する。本発明はさらに、哺乳動物において該抗原を発現する癌の腫瘍負荷を下げるよう該抗原を標的するための、CDMAB(AR58A314.1)、およびその誘導体、および、その抗原結合性断片の使用を教示する。さらに、本発明は、診断、治療予測、および、本抗原を発現する腫瘍を抱える哺乳動物の予後判定にとって有用となり得る、癌様細胞におけるAR58A314.1抗原検出のための使用を教示する。
【0042】
したがって、ハイブリドーマ細胞、および、それに対して前記ハイブリドーマ細胞系統がコードされる、対応単離モノクロナール抗体、およびその抗原結合断片を分離するために、ある特定の個人、または一つ以上の特定の癌細胞系統から得られた癌様細胞に対して惹起される癌様疾患修飾性抗体(CDMAB)の生産法であって、CDMABが、癌細胞に対しては細胞毒性を持つが、同時に、非癌様細胞に対しては比較的毒性を持たない方法を利用することが本発明の目的である。
【0043】
癌様疾患修飾抗体、リガンド、および、その抗原結合性断片を教示することが、本発明のもう一つの目的である。
【0044】
その細胞傷害性が、抗体依存性細胞毒性によって仲介される、癌様疾患修飾抗体を生産することが、本発明のさらに別の目的である。
【0045】
その細胞傷害性が、補体依存性細胞毒性によって仲介される、癌様疾患修飾抗体を生産することが、本発明のさらに別の目的である。
【0046】
その細胞傷害性が、細胞の化学的結合の加水分解を触媒する、その能力の関数である癌様疾患修飾抗体を生産することが、本発明のさらに別の目的である。
【0047】
癌の診断、予後判定、および監視のための結合アッセイにおいて有用な、癌様疾患修飾抗体およびリガンドを生産することが、本発明のさらに別の目的である。
【0048】
本発明の、他の目的および利点は、本発明のいくつかの実施態様が、具体的説明と例示のために記載される、下記の説明から明らかとなろう。
【0049】
(図面の簡単な説明)
図1は、細胞系統MDA−MB−231(MB−231)、OVCAR−3、SW1116、Lovo、およびCCD−27skに対するハイブリドーマ上清のパーセント細胞傷害性および結合レベルを比較する。
図2は、癌および正常細胞系統に対する、AR58A314.1および抗EGFRコントロールの結合を表す。データを表にして、平均蛍光強度を、異性系コントロールを上回る増加倍数として示す。
図3は、いくつかの癌および非癌細胞系統を指向する、AR58A314.1および抗EGFR抗体の代表的FACSヒストグラムを含む。
図4は、予防的A549肺癌モデルにおける腫瘍増殖に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。垂直破線は、抗体投与期間を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
図5は、予防的A549肺癌モデルにおける体重に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
図6は、予防的BxPC−3すい臓癌モデルにおける腫瘍増殖に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。垂直破線は、抗体投与期間を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
図7は、予防的BxPC−3すい臓癌モデルにおける体重に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
図8は、ヒトの腫瘍および正常組織マイクロアレイに対する、AR58A314.1・対・陽性および陰性コントロールの比較である。
図9は、ヒトの組織マイクロアレイにおいて、AR58314.1(A)、または異性形コントロール抗体(B)によって得られた、肺腫瘍組織における結合パターン、および、AR58314.1(C)、または抗アクチン(D)によって得られた、肺正常組織における結合パターンを示す代表的顕微鏡写真。AR58A314.1は、腫瘍細胞に対しては陽性染色を、正常組織に対しては陰性染色を示した。倍率は200X。
図10は、ヒトの正常組織マイクロアレイに対する、AR58A314.1・対・陽性および陰性コントロールの比較である。
図11は、ヒトの正常組織マイクロアレイにおいて、AR58314.1(A)、または陽性コントロール抗体(B)によって得られた、正常心臓組織における結合パターン、および、AR58314.1(C)、または陽性コントロール抗体(D)によって得られた、正常すい臓組織における結合パターンを示す代表的顕微鏡写真。AR58A314.1は、正常組織に対して陰性染色を示した。倍率は200X。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
一般に、下記の単語または語句は、開示、説明、および特許請求項において使用される場合、表示の定義を有する。
【0051】
「抗体」という用語は、もっとも広い意味で使用され、特異的に、例えば、単一モノクロナール抗体(作用性、拮抗性、および中和性抗体、脱免疫化、マウス、キメラ、またはヒト化抗体を含む)、複数エピトープ特異性を有する抗体組成物、単一鎖抗体、免疫接合体、および抗体断片(下記参照)を含む。
【0052】
本明細書で用いる「モノクロナール抗体」という用語は、事実上均一な抗体の集団、すなわち、該集団を含む個々の抗体が、少量は存在してもよい、可能な天然の突然変異を除いては同一である集団から得られた抗体を指す。モノクロナール抗体は、特異性が高く、単一抗原部位を指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を含む、ポリクロナール抗体調製品とは違って、各モノクロナール抗体は、抗原上の単一決定基を指向する。その特異性の外に、モノクロナール抗体は、他の抗体によって汚染されることなく合成が可能である点で有利である。「モノクロナール」という形容詞は、事実上均一な抗体集団から得られたものであるという抗体の特徴を示すものであって、何らかの特定の方法による抗体の生産を要求するものと考えてはならない。例えば、本発明にしたがって使用されるモノクロナール抗体は、最初にKohler et al., Nature, 256:495(1975)によって記載されたハイブリドーマ(マウス、またはヒト)法によって製造されてもよいし、または、組み換え法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって製造されてもよい。「モノクロナール抗体」はまた、例えば、Clackson et al., Nature, 352:624−628(1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581−597(1991)に記載される技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0053】
「抗体断片」は、好ましくは抗原結合部位、またはその可変域を含む、生の、未加工抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、完全長未満の抗体、Fab、Fab′、F(ab′)2、およびFv断片;ダイアボディ;直線状抗体;抗体断片(単複)から形成される、単一鎖抗体分子;単一鎖抗体;単一ドメイン抗体分子、融合タンパク、組み換えタンパク、および多重特異性抗体が挙げられる。
【0054】
「未加工」抗体とは、抗原結合可変域の外、軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメインCH1、CH2、およびCH3を含む抗体である。定常ドメインは、生得配列定常ドメイン(例えば、ヒトの生得配列定常ドメイン)、または、そのアミノ酸配列変異体であってもよい。未加工抗体は、一つ以上のエフェクター機能を有することが好ましい。
【0055】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、未加工抗体を、様々の「クラス」に割り当てることが可能である。未加工抗体には、五つの大きなクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、それらの内のいくつかはさらに、「サブクラス」(異性形)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2に分割される。異なる抗体クラスに対応する重鎖ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。これらサブユニットの構造、および、様々のクラスの免疫グロブリンの三次元形態は周知である。
【0056】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(未加工配列Fc領域、またはアミノ酸配列変動Fc領域)の関与する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合;補体依存性細胞傷害性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞仲介細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体のもの、BCR)の下方調整などが挙げられる。
【0057】
「抗体依存性細胞仲介細胞傷害性」および”ADCC”とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が、標的細胞における結合抗体を認識し、次いで、該標的細胞の分解を誘発する、細胞仲介反応を指す。ADCCを仲介する主要細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現が、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457−92 (1991)の464ページの表3にまとめられている。対象分子のADCC活性を評価するために、例えば、米国特許第5,500,362号または5,821,337号に記載されるもののような、インビトロADCCアッセイを行ってもよい。このようなアッセイのために有用なエフェクター細胞としては、抹消造血細胞(PBMC)、およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。それとは別に、またはそれに加えてさらに、対象分子のADCC活性は、インビボで、例えば、動物モデルにおいて、例えば、Clynes et al. PNAS (USA) 95:652−656(1998)に開示されるように評価してもよい。
【0058】
「エフェクター細胞」とは、一つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球である。この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが好ましい。ADCCを仲介する、ヒトの白血球の例としては、抹消血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、および好中球が挙げられるが、PBMCおよびNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、その天然供給源から、例えば、本明細書に記載するように血液またはPBMCから単離されてもよい。
【0059】
抗体のFc領域に結合する受容体を記述するのに、「Fc受容体」または”FcR”という用語を用いる。好ましいFcRは、ヒトの、生得配列FcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体、および、対立遺伝子変異種、およびこれらの受容体の別様のスプライス形を含む受容体が挙げられる。FcγRII受容体は、FcγRIIA受容体(「活性受容体」)およびFcγRIIB受容体(「抑制受容体」)を含む。これらは、同様のアミノ酸配列を有するが、主に、その細胞原形質ドメインにおいて異なる。活性受容体FcγRIIAは、その細胞原形質膜jドメインに免疫受容体チロシン系活性モチーフ(ITAM)を含む。抑制性受容体FcγRIIBは、その細胞原形質膜ドメインに免疫受容体チロシン系制御モチーフ(ITIM)を含む。(M. in Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203−234(1997)の総覧を参照されたい)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457−92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25−34 (1994);および de Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330−41(1995)において総覧される。将来特定されるべきものも含めた、他の、FcRも、本明細書の”FcR”という用語の中に包含される。この用語はさらに、母親のIgGの胎児への転送に与る(Guyer et al., J. Immunol. 117:587(1976)、および Kim et al., Eur. J. Immunol. 24:2429(1994))新生児受容体FcRnを含む。
【0060】
「補体依存性細胞傷害性」または”CDC”とは、ある分子が、補体の存在下に標的を分解する能力を指す。補体活性経路は、補体系の第1成分(C1q)の、認識抗原と複合体を形成する分子(例えば、抗体)に対する結合によって起動される。補体活性化を評価するには、例えば、Gazzano−Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163(1996)に記載されるものと同様のCDCアッセイを行ってもよい。
【0061】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分が、配列において抗体間で大きく異なるという事実を指し、各特定の抗体について、その特定の抗原に対する結合および特異性に関して使用される。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメインの全体に亘って均一には分布していない。可変性は、軽鎖および重鎖可変ドメインの超可変域と呼ばれる三つのセグメントに集中する。可変ドメインの、比較的高度に保存される部分は、枠組み構造領域(FR)と呼ばれる。生得の、重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、主にβシート形態を取る四つのFRを含み、これらは、該シート構造を接続し、ある場合には、その一部を形成するループを形成する三つの超可変域によって接続される。各鎖における超可変域は、FRによってごく接近して保持され、他方鎖の超可変域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に与る(Kabat et al., 「免疫学的に興味深いタンパクの配列(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”)」、5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bestheda, Md. (1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原に対する結合には直接には関与しないが、様々のエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞仲介細胞傷害性(ADCC)における抗体の参加などを示す。
【0062】
本明細書で用いる場合、「超可変域」という用語は、抗原結合に与る、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変域は、一般に、「相補性決定域」または”CDR”のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインにおける残基24−34(L1)、50−55(L2)、および89−97(L3)、および、重鎖可変ドミンにおける残基31−35(H1)、50−65(H2)、および95−102(H3);Kabat et al., 「免疫学的に興味深いタンパクの配列(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”)」、5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bestheda, Md. (1991)、および/または、「超可変ループ」の残基(軽鎖可変域ドメインにおける残基2632(L1)、50−52(L2)、および91−96(L3)、および重鎖可変域ドメインにおける残基26−32(H1)、53−55(H2)、および96−101(H3);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901−917(1987))を含む。「枠組み構造領域」または”FR”の残基は、本明細書に定義する超可変域残基以外の、可変ドメイン残基である。抗体をパパイン消化することによって、それぞれが、単一の抗原結合部位を有する”Fab”断片と呼ばれる、二つの、同一抗原結合断片、および、残余の”Fc”断片が生産される。後者の命名は、それが容易に結晶化(crystallize)する能力を持つことを反映する。ペプシン処理によって、二つの抗原結合部位を有し、依然として抗原に交差連結することが可能なF(ab′)2断片が生成される。
【0063】
“Fv”は、一つの、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む、最小の抗体断片である。この領域は、緊密に、非共有的に連結された、1本の重鎖可変ドメインおよび1本の軽鎖可変ドメインのダイマーから成る。この形態においてこそ、各可変ドメインの三つの超可変域は相互作用を持ち、該VH−VLダイマーの表面上に抗原結合部位を定める。全体として、この六つの超可変域が、抗体に対し抗原結合の特異性を付与する。しかしながら、単一可変ドメイン(すなわち、抗原に対して特異的な超可変域を三つしか含まない、Fvの半分)ですらも、全体結合部位よりも親和性は低いが、抗原を認識し、結合する能力を持つ。Fab断片はさらに、軽鎖の定常ドメインと、重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含む。Fab′は、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端において、抗体ヒンジ領域の一つ以上のシステインを含む数個の残基を付加する点で、Fabとは異なる。Fab′−SHは、定常ドメインのシステイン残基(単複)が、少なくとも一つの遊離チオール基を担持する、Fab′に対する本明細書の表示である。F(ab′)2抗体断片は、もともと、その間にヒンジシステインを有するFab′ペアとして生産された。抗体断片同士の、他の化学的結合も既知である。
【0064】
任意の脊椎動物から得られる抗体の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、二つのはっきりと異なるタイプの内の一つに割り当てることが可能である。
【0065】
「単一鎖Fv」または”scFv”抗体断片は、単一のポリペプチド鎖として現れる、抗体のVHおよびVLドメインを含む。このFvポリペプチドはさらに、VHおよびVLドメインの間に、このscFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能とするように、ポリペプチドリンカーを含むことが好ましい。scFvに関する総覧については、Plueckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer−Verlag, New York, pp. 269−315(1994)を参照されたい。
【0066】
「ダイアボディ」という用語は、二つの抗原結合部位を有する、小型の抗体断片であって、同じポリペプチド鎖(VHおよびVL)中に、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続する重鎖可変ドメイン(VH)を含む断片を指す。同じ鎖の二つのドメイン間にペア形成を許さないほど短いリンカーを用いることで、これらのドメインは、もう一つの鎖の相補ドメインと形成し、二つの抗原結合部位を形成することを強制される。ダイアボディは、さらに徹底的に、例えば、欧州特許第404,097号;国際特許第93/11161号、およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444−6448 (1993)に記載される。
【0067】
「トリアボディ」または「三価トリマー」という用語は、三つの単一鎖抗体の組み合わせを指す。トリアボディは、VLまたはVHドメインのアミノ酸末端によって、すなわち、リンカー配列を全く含まずに構築される。トリアボディは、ポリペプチドが頭から尾へ環状に配されて成る、三つのFv頭部を有する。トリアボディの可能な立体配座は、互いに120度の角度で隔てられて平面内に配される三つの結合部位を含む平面である。トリアボディは、単一特異性、二重特異性、または三重特異性であることが可能である。
【0068】
「単離」抗体とは、その天然環境において特定され、その天然環境の成分から分離および/または回収される抗体である。その天然環境の汚染成分とは、該抗体の診断的または治療的使用に干渉することが予想される物質であって、酵素、ホルモン、およびその他の、タンパク様、または非タンパク様溶質を含んでもよい。単離抗体は、組み換え細胞中に滞在する抗体を含む。なぜなら、抗体の天然環境の少なくとも一成分は存在しないのであるから。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも一つの精製工程によって調製される。
【0069】
対象抗原に「結合する」抗体とは、十分な親和性をもって該抗原に結合することが可能であり、そのため、該抗原を発現する細胞に対する標的行動において治療剤または診断剤として有用である抗体である。抗体が、対象抗原に結合するものである場合、該抗体は、通常、他の受容体とは対照的に、対象抗原に対し優先的に結合し、かつ、非特異的Fc接触などの偶発的結合、または、他の抗原に共通の、翻訳後修飾による結合を含まないが、他のタンパクと著明な交差反応をしないものであってもよい。対象抗原に結合する抗体を検出するための方法は、従来技術で周知であり、例えば、FACS、細胞ELISA、およびウェスタンブロットなどのアッセイ、ただしこれらに限定されないが、を含むことが可能である。
【0070】
本明細書で用いる「細胞」、「細胞系統」、および「細胞培養体」という表現は、相互交換的に使用されるが、これらの表示は全て子孫を含む。全ての子孫は、DNA内容において、故意の、または不慮の突然変異によって正確に同じであるとは必ずしも限らないことが理解される。元の形質転換細胞においてスクリーニング選択されるたものと同じ機能または生物学的活性を有する、突然変異子孫は含まれる。区別的表示が意図される場合は、文脈から明白である。
【0071】
「治療または治療する」とは、その目的が、病的状態または障害を阻止すること、または遅延(低減)することである、治療処置および予防的または防止的策の両方を指す。治療を要する人々としては、すでにその障害を抱える人々の外、その障害を持ちやすい人々、またはその障害を予防しなければならない人々が挙げられる。したがって、本発明において治療しなければならない哺乳動物は、障害を持つと診断されてもよいし、または、その障害にかかり易いか、または感受性を持っていてもよい。
【0072】
「癌」または「癌様」という用語は、通常、無秩序な細胞増殖または死によって特徴づけられる、哺乳類における生理状態を指すか、または記述する。癌の例としては、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病およびリンパ系悪性腫瘍が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。このような癌のさらに具体的な例としては、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮の扁平細胞癌)、小細胞肺癌を含む肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃小腸癌を含む胃癌、すい臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーム、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓または腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、および頭部および頸部癌が挙げられる。
【0073】
「化学療法剤」とは、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロフォスファミド(CYTOXAN(登録商標))など;スルフォン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなど;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなど;エチレンイミンおよびメチラミン、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンフォスフォルアミド、トリエチレンフォスフォルアミド、およびトリメチロロメラミンを含む;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロールナファジン、クロロフォスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸、メルファラン、ノベンビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなど;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなど;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、プロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシンなど;抗体謝剤、例えば、メトトレキセート、および5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類縁体、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセートなど;ブリン類縁体、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど;ピリミジン類縁体、例えば、アンシタビン、アザンチジン、6−アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FUなど;アンドロゲン、例えば、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオン酸塩、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど;抗副腎ホルモン、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど;葉酸補充剤、例えば、フロリン酸など;アセグラトン;アルドフォスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;エリプチニウム酢酸塩;エトグリシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポフォフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(“Ara−C”);シクロフォスファミド;チオプテア;タキサン、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Meyers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Aventis, Rhone−Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類縁体、例えば、シスプラチン、およびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポキシド(VP−16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;および、上記の内の、任意の化学療法剤の製薬学的に受容可能な塩、酸、または誘導体が挙げられる。この定義の中にさらに含まれるものは、腫瘍に対するホルモンの作用を調整または抑制するように活動する抗ホルモン剤、例えば、抗エストロゲン、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ抑制性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston);および、抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、レウプロリド、およびゴセレリン;および、上記の内の、任意の抗ホルモン剤の製薬学的に受容可能な塩、酸、または誘導体が挙げられる。
【0074】
治療のための「哺乳動物」とは、哺乳動物として分類される任意の動物、例えば、ヒト、マウス、SCIDまたはヌードマウス、またはマウスの純系、家庭内飼養および農場動物、および動物園、スポーツ、またはペット動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む動物を指す。本発明では、哺乳動物はヒトであることが好ましい。
【0075】
「オリゴヌクレオチド」とは、既知の方法(例えば、1988年5月4日公刊の欧州特許第266,032号に記載されるような固相技術を用いた、フォスフォトリエステル、亜リン酸塩、またはフォスフォールアミダイト化学、または、Froehler et al., Nucl. Acids Res., 14:5399−5407, 1986によって記載されるデオキシヌクレオシドH−フォスフォネート中間体を介して)によって化学的に合成される、短鎖長の、1本鎖または2本鎖ポリデオキシヌクレオチドである。これらは次にポリアクリルアミドゲルにて精製される。
【0076】
本発明によれば、非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリンの、「ヒト化」および/または「キメラ」形態とは、特異的キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖または断片(例えば、抗体のFv、Fab、Fab′、F(ab′)2、またはその他の抗原結合性配列)であって、元の抗体と比べ、ヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、またはヒト抗ヒト抗体(HAHA)反応の低下をもたらすものであり、所望の作用を再現するのに必要な、前記非ヒト免疫グロブリン由来の必要部分(例えば、CDR(単複)、抗原結合領域(単複)、可変ドメイン(単複)など)を含むが、同時に他方では、前記非ヒト免疫グロブリンに匹敵する結合特性を保持する、前記キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖またはその断片である。その大部分において、ヒト化抗体は、ヒトの免疫グロブリン(レシピエント抗体)であるが、該レシピエント抗体の相補性決定域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、および容量を有する、非ヒト動物種、例えば、マウス、ラット、またはウサギ(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換される、ヒト免疫グロブリンである。ある例では、ヒトの免疫グロブリンのFv枠組み構造領域(FR)残基は、対応する、非ヒトFR残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、輸入CDRまたはFR配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の機能をさらに洗練し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つの、通常は二つの可変ドメインの事実上全てを含むが、該可変ドメインにおいて、CDR領域の全て、または事実上全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつ、FR残基の全て、または事実上全てが、ヒト免疫グロブリンの共通配列のものに対応する。ヒト化抗体はさらに、免疫グロブリンの定常域(Fc)、通常、ヒトの免疫グロブリンの定常域の少なくとも一部を含む。
【0077】
「脱免疫化」抗体とは、ある任意の動物種に対して非免疫原性、または比較的低い免疫性を有する、免疫グロブリンである。脱免疫化は、抗体に対して構造的変化を加えることによって実現される。当業者に既知の、いずれの脱免疫化技術であっても採用が可能である。抗体を脱免疫化するための、一つの好適な技術が、例えば、2000年6月15日公刊の国際特許第00/34317号に記載される。
【0078】
「アポトーシス」を誘発する抗体とは、どのようなものでもよい、何らかの手段によって、例えば、ただしこれらに限定されないが、アネキシンVの結合、カスパーゼ活性、DNAの断片化、細胞縮小、小胞体の拡張、細胞の断片化、および/または膜小胞(アポトーシスボディと呼ばれる)の形成によってプログラム細胞死を誘発する抗体である。
【0079】
本明細書で用いる「抗体誘発による細胞傷害性」とは、IDACにおいてアクセス番号141205−02として寄託されるハイブリドーマによって生産される、ハイブリドーマ上清、または抗体から得られる細胞傷害性作用を意味すると理解され、その作用は、必ずしも結合の程度とは関連しない。
【0080】
本明細書を通じて、ハイブリドーマ細胞系統、および、該ハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体は、それぞれ交換的に、私的名称AR58A314.2、または、寄託名IDAC 141205−02と呼ばれる。
【0081】
本明細書で用いる「抗体−リガンド」とは、標的抗原の少なくとも一エピトープに対し結合特異性を示し、未加工抗体分子、抗体断片、および、少なくとも一つの抗原結合域、またはその一部(すなわち、抗体分子の可変部分)を有する任意の分子であってもよい成分であって、例えば、Fv分子、Fab分子、Fab′分子、F(ab′)2分子、二重特異性抗体、融合タンパク、または、任意の遺伝学的に加工された分子であって、IDAC 141205−02(IDAC 141205−02抗原)のように表示されるハイブリドーマ細胞系統によって生産される単離モノクロナール抗体によって結合される抗原の少なくとも一つのエピトープを特異的に認識し、結合する分子であってもよい。
【0082】
本明細書で用いる「癌様疾患修飾性抗体」(CDMAB)とは、患者にとって有益なやり方で、例えば、腫瘍負荷を下げるか、または、腫瘍を抱える個人の生存時間を延長することによって癌様疾患プロセスを修飾するモノクロナール抗体、および、その抗体−リガンドを指す。
【0083】
「CDMAB関連結合剤」とは、そのもっとも広い意味では、少なくとも一つのCDMAB標的エピトープに競合的に結合する、任意の形態の、ヒトまたは非ヒト抗体、抗体断片、抗体リガンドなどを含むと、ただしこれらに限定されないが、理解される。
【0084】
「競合的結合分子」とは、少なくとも一つのCDMAB標的エピトープに対し結合親和性を有する、任意の形態の、ヒトまたは非ヒト抗体、抗体断片、抗体リガンドなどを含むと理解される。
【0085】
治療される腫瘍としては、一次腫瘍および転移腫瘍の外、難治性腫瘍が挙げられる。難治性腫瘍としては、化学療法剤だけ、抗体だけ、放射線だけ、またはそれらの組み合わせによる治療に対し、全く反応しないか、または耐性を持つ腫瘍が挙げられる。難治性腫瘍はさらに、上記の製剤による治療によって抑制されるように見えるが、治療を停止した後、最大5年、場合によって最大10年以上で再発する腫瘍を含む。
【0086】
治療することが可能な腫瘍は、血管形成しないか、まだ血管形成しない腫瘍の外、血管形成する腫瘍も含む。したがって、治療が可能な固体腫瘍の例としては、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、すい臓癌、グリオーマおよびリンパ腫が挙げられる。そのような腫瘍のいくつかの例として、類表皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば、頭部および頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、小細胞および非小細胞肺腫瘍を含む肺腫瘍、すい臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、および肝臓腫瘍が挙げられる。その他の例としては、カポジ肉腫、CNS新生物、神経芽細胞腫、毛細管血管芽細胞腫、髄膜腫および脳転移、メラノーマ、消化管および腎臓癌および肉腫、横紋筋肉腫、グリア芽細胞腫、好ましくは多型グリア芽細胞腫、および平滑筋肉腫が挙げられる。
【0087】
本明細書で用いる「抗原結合領域」は、標的抗原を認識する分子の一部を意味する。
【0088】
本明細書で用いる「競合的に抑制する」とは、IDAC 141205−02として表示される、ハイブリドーマ細胞系統によって生産されるモノクロナール抗体(IDAC 121205−02抗体)が指向する決定部位に対し、通例の相反性抗体競合アッセイ(Belanger L., Sylvestre C. and Dufour D. (1973), 「競合およびサンドイッチ法によるアルファ胎児タンパクの酵素連結免疫アッセイ(“Enzyme linked immunoassay for alpha fetoprotein by competitive and sandwich procedures”)」 Clinica Chimica Acta 48, 15)を用いて認識および結合することが可能であることを意味する。
【0089】
本明細書の用いる「標的抗原」とは、IDAC 141205−02抗原か、またはその部分である。
【0090】
本明細書で用いる「免疫接合体」とは、細胞トキシン、放射能剤、酵素、トキシン、抗腫瘍剤、または治療剤に化学的または生物学的に連結される、任意の分子またはCDMAB、例えば、抗体である。抗体またはCDMABは、細胞トキシン、放射能剤、抗腫瘍剤、または治療剤に対し、その標的に結合可能である限り、任意の位置に連結されてよい。免疫接合体の例としては、抗体トキシン化学的接合体、および抗体トキシン融合タンパクが挙げられる。
【0091】
抗腫瘍剤として使用するのに好適な放射能剤は、当業者には既知である。例えば、1311または221Atが使用される。これらの放射性同位元素は、従来技術を用いて抗体に取りつけられる(例えば、Pedley et al., Br. J. Cancer 68, 69−73 (1993))。それとは別に、抗体に取りつけられる抗腫瘍剤は、薬剤前駆体を活性化する酵素である。薬剤前駆体は投与され、腫瘍部位に達するまで不活性形として留まり、一旦抗体複合体が投与されると、該部位において、細胞トキシン形に変換されるようになっていてもよい。実際には、抗体−酵素接合体が患者に投与され、治療される組織領域に局在させられる。次に、薬剤前駆体が同患者に投与され、それによって、治療される該組織領域において細胞毒性剤への変換が起こる。それとは別に、抗体に接合される抗腫瘍剤は、サイトカイン、例えば、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、または腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)である。この抗体は、サイトカインを腫瘍に向けて照準し、そのため、サイトカインは、他の組織に影響を及ぼすことなく、腫瘍に対する損傷、または腫瘍の破壊を仲介する。サイトカインは、組み換えDNA技術を用い、DNAレベルにおいて抗体に融合される。インターフェロンも使用してよい。
【0092】
本明細書で用いられる「融合タンパク」とは、抗原結合領域が、生物学的活性分子、例えば、トキシン、酵素、蛍光タンパク、発光マーカー、ポリペプチドタグ、サイトカイン、インターフェロン、標的または受容体成分、またはタンパク剤に接合される、任意のキメラタンパクを意味する。
【0093】
本発明はさらに、標的またはリポーター成分が連結される、本発明のCDMABを考慮の対象とする。標的成分は、結合ペアの第1メンバーである。例えば、抗腫瘍剤が、このペアの第2メンバーに接合され、そのため、抗原結合タンパクが結合される部位を指向する。このような結合ペアの一般的例は、アビジンおよびビオチンである。好ましい実施態様では、ビオチンが、本発明のCDMABの標的抗原に接合され、そうすることによって、アビジンまたはストレプタビジンに接合される抗腫瘍剤、または他の成分のための標的を提供する。それとは別に、ビオチンまたは別のそのような成分が、本発明のCDMABの標的抗原に連結され、例えば、診断システムのリポーターとして使用される。該システムでは、検出可能なシグナルの生成因子がアビジンまたはストレプトアビジンに接合される。
【0094】
検出可能なシグナル生成因子は、診断のため、インビボおよびインビトロにおいて有用である。シグナル生成因子は、外的手段、通常は、電磁放射を測定することによって検出可能な測定可能信号を生成する。大抵の場合、シグナル生成因子は、酵素または発色団であるか、または、蛍光、燐光、または化学的発光によって光を発射する。発色団は、紫外域または可視域において光を吸収する染料を含み、酵素触媒反応の基質か、または分解産物であることが可能である。
【0095】
さらに、本発明の範囲内に含められるものは、従来技術で周知の調査法または診断法のための、インビボおよびインビトロにおける本CDMABの使用である。本発明において考慮の対象となる診断法を実行するために、本発明はさらに、本発明のCDMABを含むキットを含んでもよい。このキットは、個人の細胞における、CDMAB標的抗原の過剰発現を検出することによって、ある種の癌に対するリスクを有する個人を特定するのに有用である。
【0096】
診断用アッセイキット
腫瘍の存在を決定するための診断アッセイキットの形において本発明のCDMABを利用することは考慮の対象となる。腫瘍は、一般に、患者において、該患者から得た生物学的サンプル、例えば、血液、血清、尿、および/または、腫瘍バイオプシーにおける、一つ以上の腫瘍特異的抗原、例えば、タンパク、および/または、そのようなタンパクをコードするポリヌクレオチドの存在に基づいて検出される。
【0097】
タンパクは、ある特定の腫瘍、例えば、結腸、乳房、肺、または前立腺腫瘍の有無を示すマーカーとして機能する。さらに、抗原は、他の癌性腫瘍の検出のために有用であることが考えられる。本発明のCDMABから構成される結合剤、またはCDMAB関連結合剤から成る診断アッセイキットを含めることによって、生物サンプルにおいて該結合剤に結合する抗原のレベルを検出することが可能になる。さらに、癌の有無を示す、腫瘍タンパクをコードするmRNAレベルの検出にはポリヌクレオチドプライマーおよびプローブを使用してもよい。結合アッセイが診断的であるために、正常組織に存在するレベルを参照して、抗原の統計的有意レベルと相関させ、結合の認識を癌様腫瘍の存在に関して明確に診断的とするようにデータが生成される。当業者には知られるように、1サンプルにおいてポリペプチドマーカーを検出するのに1結合剤を使用するに当たって、本発明の診断アッセイでは複数の形式が有用であると考えられる。例えば、Harlow and Lane, 「抗体:実験室マニュアル(“Antibodies: A Laboratory Manual”)」、Cold Spring Harbor Laboratory, 1988に具体的に説明されている。さらに考慮の対象とされるのは、前述の診断アッセイ形式の任意の、かつ全ての併用、組み合わせ、または修飾である。
【0098】
ある患者における癌の有無は、通常、(a)患者から得られた生物サンプルを、結合剤に接触させること;(b)該サンプルにおいて、該結合剤に結合するポリペプチドのレベルを検出すること;(c)ポリペプチドのレベルを、指定のカットオフ値と比較すること、によって決められる。
【0099】
例示の実施態様では、アッセイが、固相支持体の上に固定されるCDMAB系結合剤を使用し、それによって、ポリペプチドに結合させ、サンプルの残余物から該ポリペプチドを除去する使用を含むことが考慮の対象とされる。次に、リポーター基を含み、結合剤/ポリペプチド複合体に特異的に結合する検出試薬を用いて、この結合ポリペプチドを検出してもよい。例示の検出試薬としては、該ポリペプチドに特異的に結合するCDMAB系結合剤、または、該結合剤に特異的に結合する抗体または他の因子、例えば、抗免疫グロブリン、タンパクG、タンパクA、またはレクチンが挙げられる。別の実施態様では、競合アッセイの利用が考慮される。すなわち、ポリペプチドはリポーター基によって標識され、結合剤とサンプルのインキュベーション後に、固定結合剤に結合させられる。サンプルの、固定結合剤に対する反応性に応じて、サンプルの成分は、標識ポリペプチドの、結合剤に対する結合を抑制する。このアッセイにおいて使用するのに好適なポリペプチドとしては、該結合剤が、それに対して結合親和性を有する、完全長腫瘍特異的タンパクおよび/またはその部分が挙げられる。
【0100】
この診断キットには、タンパクが付着されてもよいと、当業者に周知の任意の材料の形式を取ってもよい固相支持体が支給される。好適な例として、マイクロタイタープレートの試験ウェル、または、ニトロセルロースまたは適切な膜が挙げられる。それとは別に、支持体は、ビーズまたはディスク、例えば、ガラス、ファイバーガラス、ラテックス、またはプラスチック材料、例えば、ポリスチレンまたはポリ塩化ビニールであってもよい。支持体はまた、磁気粒子、または光ファイバーセンサー、例えば、米国特許第5,359,681号に開示されるようなものであってもよい。
【0101】
結合剤は、特許および科学文献に豊富に記載される、当業者に既知の様々の技術を用いて、固相支持体の上に固定される。「固定」という用語は、吸着のような非共有的連結、および、本発明の背景では、結合剤と、支持体の官能基との間の直接的結合のような共有的付着の両方を指すが、あるいは、架橋剤による連結であってもよい。ある好ましい実施態様では、ただしこれに限定されないが、マイクロタイタープレートにおけるウェル、または膜に対する吸着による固定が好ましい。吸着は、適切なバッファーに溶解させた結合剤を、固相支持体に適切な量の時間接触させることによって実現してもよい。接触時間は、温度に応じて変動してよいが、一般に、約1時間と約1日の間の範囲にある。
【0102】
固相支持体に対する、結合剤の共有的付着は、通常、先ず、支持体を、結合剤における、官能基の両方と反応する二重官能性試薬、例えば、ヒドロキシル基またはアミノ基と反応させることによって実現されると考えられる。例えば、結合剤は、適切なポリマーコーティングを有する支持体に対し、ベンゾキノンを用いて、または、支持体のアルデヒド基を、結合パートナーのアミンおよび活性水素によって縮合することによって共有的に付着されてもよい(例えば、Pierce Immunotechnology Catalog and Handbook, 1991, at A12 A13を参照されたい)。
【0103】
さらに、診断アッセイキットが、二抗体サンドイッチアッセイの形を取ることも考慮の対象とされる。このアッセイは、先ず、抗体を、例えば、固相支持体、通常マイクロタイタープレートのウェル上に固定された、本開示のCDMABを、サンプルと接触させ、サンプル中のポリペプチドを、固定抗体に結合させることによって実行されてもよい。次に、未結合サンプルを、固定されたポリペプチド−抗体複合体から除去し、リポーター基を含む検出試薬(好ましくは、該ポリペプチドの異なる部位に結合することが可能な第2抗体)が添加される。次に、固相支持体に対し結合したまま留まる検出試薬の量が、特異的リポーター基に対して適切な方法によって定量される。
【0104】
ある特異的実施態様では、一旦抗体が前述のように支持体の上に固定されたならば、支持体上の、残余のタンパク結合部位は、当業者に既知の任意のブロッキング剤、例えば、ウシ血清アルブミン、またはTween 20(登録商標)(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)の使用によってブロックされる。次に、固定抗体は、サンプルとインキュベートされ、ポリペプチドが、この抗体に結合させられる。サンプルは、インキュベーション前に、適切な希釈剤、例えば、リン酸バッファー生理的食塩水(PBS)によって希釈することが可能である。一般に、適切な接触時間(すなわち、インキュベーション時間)は、特異的に選択された腫瘍を有する個人から得られたサンプルにおいて、ポリペプチドの存在を検出するのに十分な期間に相当するように選ばれることが考えられる。好ましくは、接触時間は、結合および未結合ポリペプチド間の平衡時に実現される結合レベルの少なくとも約95パーセントを実現するのに十分な長さである。当業者であれば、一定期間において起こる結合レベルを定量することによって、平衡を実現するのに必要な時間は簡単に決めることが可能であることを認識されるであろう。
【0105】
次に、固相支持体を適切なバッファーで洗浄することによって、未結合サンプルを除去することが考慮の対象となる。次に、この固相支持体に対し、リポーター基を含む第2抗体を加えることが考えられる。次に、検出試薬と、固定抗体−ポリペプチド複合体とのインキュベーションが、結合ポリペプチドを検出するのに十分な程長い時間行われることが考えられる。次いで、未結合検出試薬が除去され、結合検出試薬を、リポーター基を用いて検出することが考えられる。リポーター基を検出するために用いられる方法は、選択されたリポーター基の種類に対し必ず特異的である、例えば、放射性基に対しては、シンチレーションカウンティング法またはオートラジオグラフ法が一般的に適切である。染料、発光基、および蛍光基を検出するには、分光光度法を使用してもよい。ビオチンは、異なるリポーター基(一般に、放射性基または蛍光基、または酵素)に結合させたアビジンを用いて検出してもよい。酵素リポーター基は、一般に、基質を添加し、次いで、その反応産物を分光光度分析、またはその他の分析を使用することによって検出してもよい。
【0106】
癌、例えば、前立腺癌の有無を決定するために本発明の診断アッセイキットを利用するには、一般に、固相支持体に結合した状態で留まるリポーター基から検出されるシグナルを、指定のカットオフ値に対応するシグナルと比較することが考えられる。例えば、癌検出のための例示のカットオフ値は、固定抗体を、癌を持たない患者から得られたサンプルとインキュベートした場合に得られる、シグナルの平均値であってもよい。一般に、指定のカットオフ値よりも約3標準偏差分高いシグナルを発生するサンプルは、その癌に関して陽性と見なしてもよい。別の実施態様では、カットオフ値は、Sackett et al., 「臨床病因学、臨床医学の基礎科学(“Clinical Epidemiology. A. Basic Science for Clinical Medicine”)」、Little Brown and Co., 1985, p. 106−7の方法にしたがって、Receiver Operator Curveを用いて決めてもよいと考えられる。このような実施態様では、カットオフ値は、診断試験結果の各可能なカットオフ値に対応する、真の陽性率(すなわち、感度)および擬似陽性率(100パーセント特異性)ペアのプロットから決めることが可能であると考えられる。左上隅にもっとも近いカットオフ値(すなわち、もっとも大きな面積を囲む値)が、もっとも正確なカットオフ値であり、この方法によって決定されるカットオフ値よりも高いシグナルを発生するサンプルは、陽性と見なしてよい。それとは別に、カットオフ値は、擬似陽性値を最小とするために、プロットにそって左に、あるいは、擬似陰性率を最大にするために右に移動させてもよい。一般に、この方法によって決められたカットオフ値よりも高いシグナルを発生するサンプルは、癌に対して陽性と考えられる。
【0107】
本キットによって可能とされる診断アッセイは、結合剤が、ニトロセルロースなどの膜の上に固定される、流通形式またはストリップ試験形式で実行される。流通試験では、サンプル内のポリペプチドは、サンプルが膜を通過する際、固定結合剤に結合する。次に、第2の、標識結合剤は、該第2結合剤を含む溶液が膜を流れる際、結合剤−ポリペプチド複合体に結合する。次に、結合した第2結合剤の検出を、前述のように行ってもよい。ストリップ試験方式では、結合剤が結合される膜の一端が、サンプルを含む溶液に浸される。サンプルは、膜にそって移動し、第2結合剤を含む領域を通過し、固定結合剤の区域に達する。固定抗体の区域における第2結合剤の濃度は、癌の存在を示す。視覚的に読み取ることが可能な、結合部位における線などのパターンの発生は、陽性試験であることを示す。このようなパターンの欠如は、陰性結果を示す。一般に、膜に固定される結合剤の量は、前述の方式にしたがって、2抗体サンドイッチアッセイにおいて陽性シグナルを発生するのに十分なレベルのポリペプチドを、生物サンプルが含む場合に、視認可能なパターンを発生するように選ばれる。本診断アッセイにおいて使用するのに好ましい結合剤は、本明細書に開示される抗体、その、抗原結合性断片、および、本明細書に記載される任意の、CDMAB関連結合剤である。膜の上に固定される抗体の量は、診断アッセイを実現するのに有効である限り、任意の量であってよいが、約25ナノグラムから約1マイクログラムの範囲にあってもよい。通常、このような試験は、ごく微量の生物サンプルについて実行されてよい。
【0108】
さらに、本発明のCDMABは、その標的抗原を特定する能力に基づいて、研究のために実験室で使用されてもよい。
【0109】
本明細書に記載される本発明がさらに十分に理解されるように、下記の説明が記述される。
【0110】
本発明は、IDAC 141205−02抗原を特異的に認識し、結合するCDMAB(すなわち、IDAC 141205−02 CDMAB)提供する。
【0111】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のCDMABは、それが、ハイブリドーマIDAC 141205−02によって生産される単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する免疫特異的結合を競合的に抑制する抗原結合領域を有する限り、任意の形を取ってよい。したがって、IDAC 141205−02抗体と同じ結合特異性を有するものであれば、いずれの組み換えタンパクであっても(例えば、抗体が、リンフォカインまたは腫瘍増殖抑制因子などの第2タンパクと結合される融合タンパク)、本発明の範囲に入る。
【0112】
本発明の一実施態様では、CDMABは、IDAC 141205−02抗体である。
【0113】
別の実施態様では、CDMABは、Fv分子(例えば、1本鎖Fv分子)、Fab分子、Fab′分子、F(ab′)2分子、融合タンパク、二重特異性抗体、ヘテロ抗体、または、IDAC 141205−02抗体の抗原結合領域を持つ、任意の組み換え分子であってもよい抗原結合性断片である。本発明のCDMABは、IDAC 141205−02モノクロナール抗体が指向するエピトープを指向する。
【0114】
本発明のCDMABは、誘導分子を生産するために、分子内のアミノ酸修飾によって修飾してもよい。化学的修飾も可能である。直接的突然変異、アフィニティ成熟法、ファジージディスプレイ、またはチェインシャッフリングによる修飾も可能である。
【0115】
親和性および特異性は、CDRおよび/またはフェニルアラニントリプトファン(FW)残基を突然変異させ、所望の特徴を持つ抗原結合部位をスクリーニングすることによって修飾、または改善することが可能である(例えば、Yang et al., J. Mol. Biol., (1995)254:392−403)。一つの方法は、個々の残基、または残基の組み合わせをランダム化し、そうすることによって、その他の点では同じ抗原結合部位を持つ集団において、特定の位置に2から20個のアミノ酸から成るサブセットが見られるようにする。それとは別に、誤差し易いPCR法によって、一定範囲の残基の上に突然変異を誘発することも可能である(例えば、Hawkins et al., J. Mol. Biol., (1992) 226:889−96)。別の例では、重鎖および軽鎖可変域遺伝子を含むファージディスプレイベクターを、大腸菌の突然変異株において継代させることも可能である(例えば、Low et al., J. Mol. Biol., (1996) 250:359−68)。これらの突然変異発生法は、当業者には既知の多くの方法の例示である。
【0116】
本発明の抗体の親和性を増すもう一つの方法は、チェインシャッフリングを実行することである。これによって、重鎖または軽鎖は、ランダムに、他の重鎖または軽鎖と組み合わされ、より高い親和性を持つ抗体を調製する。さらに、抗体の各種CDRをシャッフルして、他の抗体の、対応するCDRと組み合わせてもよい。
【0117】
誘導体分子は、ポリペプチドの機能的特性を保持することが考えられる。すなわち、このような置換を有する分子であっても依然として、ポリペプチドが、IDAC 141205−02抗原またはその部分に対して結合することを可能とする。
【0118】
これらのアミノ酸置換としては、ただしこれらに限定されないが、従来技術において「保存的」として知られるアミノ酸置換が挙げられる。
【0119】
例えば、「保存的アミノ酸置換」と称されるある種のアミノ酸置換は、しばしばタンパクにおいて、該タンパクの立体配座または機能を変えることなく実行することが可能であるということは、タンパク化学の十分に確立された原理である。
【0120】
このような変化として、他の任意の疎水性アミノ酸に対する、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)の内の任意のものによる置換;グルタミン酸(E)のアスパラギン酸(D)、およびその逆;アスパラギン(N)のグルタミン(Q)による置換、およびその逆;および、トレオニン(T)のセリン(S)による置換、およびその逆が挙げられる。その他の置換も、特定のアミノ酸の環境、およびタンパクの三次元構造におけるその役割に応じて保存的と見なすことも可能である。例えば、グリシン(G)およびアラニン(A)は、アラニンおよびバリン(V)と同様、しばしば相互交換が可能である。比較的疎水性の高いメチオニン(M)は、しばしばロイシンおよびイソロイシンと、ときにバリンと相互交換することが可能である。リシン(K)およびアルギニン(R)は、そこでのアミノ酸残基の重要特性は、その電荷であり、その二つのアミノ酸残基の異なるpKは重要ではない、位置においてしばしば相互交換可能である。特定の環境において「保存的」と考えることが可能な変化はさらに外にもある。
【0121】
実施例1
ハイブリドーマ生産−ハイブリドーマ細胞系統AR58A314.1
ハイブリドーマ細胞系統AR58A314.1は、2005年12月14日、アクセス番号141205−02の下に、International Depository Authority of Canada (IDAC), Bureau of Microbiology, Health Canada, 1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada, R3E 3R2に寄託された。37 CFR 1.808にしたがって、寄託者は、寄託飼料の一般公衆に対する利用可能性に対して課せられた制限は全て、特許承認の同時に問題なく解除されるであろうことを確信する。
【0122】
抗癌抗体AR58A314.1を生産するハイブリドーマを生産するために、凍結結腸腫瘍組織 (Genomics Collaborative, Cambridge, MA)の単一細胞縣濁液を、PBS溶液として調製した。IMMUNEASY(登録商標)(Qiagen, Venlo, Netherlands)アジュバントを、穏やかに混和して使用のために調製した。5から7週齢のBALB/cマウスを、50マイクロリットルの抗原アジュバントに2百万個の細胞を縣濁させた液を皮下に注入することによって免疫化した。初回の免疫化の2および5週後、調製したばかりの抗原アジュバントを用い、50マイクロリットルに2百万個の細胞を縣濁させた液を腹腔内に注入することによってこの免疫化マウスをブーストした。最後の免疫化の3日後、脾臓を融合のために使用した。ハイブリドーマは、単離脾臓細胞を、NSO−1骨髄腫瘍パートナーと融合することによって調製した。融合物からの上清を、ハイブリドーマのサブクローンについて試験した。
【0123】
ハイブリドーマ細胞によって分泌される抗体が、IgGまたはIgM異性形であるかどうかを決めるために、ELISAアッセイを用いた。コーティングバッファー(0.1M炭酸塩/重炭酸塩バッファー、pH9.2−9.6)に2.4マイクログラム/mLの濃度で溶解したヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)を、ウェル当たり100マイクロリットルとしてELISAプレートに加え一晩置いた。洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween 20)にてプレートを3回洗浄した。ウェル当たり、100マイクロリットルのブロッキングバッファー(洗浄バッファーに溶解した5%ミルク)をプレートに加え、室温で1時間放置し、次いで洗浄バッファーにて3回洗浄した。ウェル当たり、100マイクロリットルのハイブリドーマ上清を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、ヤギ抗マウスIgGまたはIgM・西洋ワサビペルオキシダーゼ接合体の1/100,000希釈液(5%ミルクを含むPBSにて希釈)を、ウェル当たり100マイクロリットル加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。ウェル当たり100マイクロリットルのTMB液を室温で1−3分インキュベートした。発色反応を、ウェル当たり50マイクロリットルの2M H2SO4を加えて停止させ、プレートを、Perkin−Elmer HTS7000プレートリーダーによって450 nmにおいて読み取った。図1に示すように、AR58A314.1ハイブリドーマは、IgG異性形の抗体を主に分泌した。
【0124】
このハイブリドーマ細胞によって分泌される抗体のサブクラスを決めるために、異性形タイピング実験を、マウスモノクロナール抗体異性形タイピングキット(GE Healthcare, Baire d’Urfe, Quebec)を用いて行った。種々のタイプのペプチド鎖に対して特異的なヤギ抗体を担持する異性形タイピングストリップ(TBS−Tによる1:10希釈液として)を持つ試験管に加えた。試験管を15分攪拌した。次に、ストリップを、攪拌しながら、TBS−Tで2回5分間洗浄した。この試験管に、ペルオキシダーゼ標識、種特異的、抗マウス抗体を15分加え(TBS−Tによる1:500希釈液として)、スティックのヤギ抗体に結合するモノクロナール抗体を検出した。ストリップを、攪拌しながら、再びTBS−Tで2回5分間洗浄した。次に、ストリップに結合した、ペルオキシダーゼ標識抗体を、ペルオキシダーゼ基質システムを用いて検出した。4−クロロ−1−ナフトールの30 mg錠1個を、10 mLの冷エタノールに溶解し、過酸化水素溶液(30パーセントv/v)一滴を、50 mL TBSで希釈した。この二つの溶液を、使用の直前に合わせ、3 mLを、攪拌しながら、攪拌しながら、15分間異性形タイピングストリップに加えた。次に、基質液を捨て、ストリップを、攪拌しながら、5 mLの蒸留水で3回洗浄した。次に、試験管からタイピングスティックを取り出し、結果について分析した。抗癌抗体AR58A314.1は、IgG1、カッパ異性形である。
【0125】
1ラウンドの限界希釈後、細胞ELISAアッセイにおいて、ハイブリドーマ上清を、標的細胞に結合する抗体について試験した。一つのヒト乳癌細胞系統、一つのヒト卵巣癌細胞系統、二つのヒト結腸癌細胞系統、および一つのヒトの正常皮膚細胞系統を試験した。それぞれ、MDA−MB−231(MB−231)、OVCAR−3、SW1116、Lovo、およびCCD−27skである。これらの細胞系統は、米国基準株保存機関(ATCC, Manassas, VA)から入手した。使用前、プレートに撒いた細胞を固定した。MgCl2およびCaCl2を含むPBSにて、プレートを室温で3回洗浄した。PBSで希釈した2%パラフォルムアルデヒド100マイクロリットルを、各ウェルに加え、室温で10分置き、次いで捨てた。再び、MgCl2およびCaCl2を含むPBSにてプレートを室温で3回洗浄した。ブロッキングは、ウェル当たり、洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween 20)に溶解した5%ミルク100マイクロリットルを加え、室温で1時間置いて行った。洗浄バッファーにてプレートを3回洗浄し、ウェル当たり、75マイクロリットルとしてハイブリドーマ上清をプレートに加え、室温で1時間放置した。プレートを洗浄バッファーにて3回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼに接合させた、ヤギ抗マウスIgG抗体の1/25,000希釈液(1%ミルクを含むPBSにて希釈)を、ウェル当たり100マイクロリットル加えた。室温で1時間インキュベーションした後、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、ウェル当たり100マイクロリットルのTMB基質を室温で1−3分インキュベートした。反応を、ウェル当たり50マイクロリットルの2M H2SO4を加えて停止させ、プレートを、Perkin−Elmer HTS7000プレートリーダーによって450 nmにおいて読み取った。図2に表示した結果は、以前に、試験した細胞系統には結合しないことが示されている、私的所有のIgG異性形コントロールにほぼ等しい背景雑音を上回る倍数として表した。ハイブリドーマAR58A314.1からの抗体は、試験した細胞系統のいずれにも検出可能な結合を示さなかった。
【0126】
抗体結合の試験と合わせて、細胞系統:MDA−MB−231(MB−231)、OVCAR−3、SW1116、Lovo、およびCCD−27skにおいて、ハイブリドーマ上清の細胞傷害作用を試験した。Calcein AMを、Molecular Probes (Eugene, OR)から購入した。アッセイは下記に略述する変更を除き、メーカーの指示にしたがって行った。細胞は、アッセイの前に、あらかじめ指定された適切な密度でプレートした。2日後、75マイクロリットルの上清を、ハイブリドーマ・マイクロタイタープレートから細胞プレートに転送し、5パーセントCO2インキュベータにおいて5日間インキュベートした。陽性コントロールとして使用されたウェルは、空になるまで吸引し、100マイクロリットルのアジ化ナトリウム(NaN3)、またはシクロヘキシミド、または抗EGFR(c225;5マイクログラム/L)を加えた。5日間の処理後、プレートを反転して空とし、ブロットして乾燥した。MgCl2およびCaCl2を含む室温DPBS(ダルベッコのリン酸バッファー生食液)を、多数チャンネル押し込みボトルから各ウェルに滴下し、3回叩き、反転して空とし、ブロット乾燥した。MgCl2およびCaCl2を含むDPBSに希釈した蛍光カルセイン染料50マイクロリットルを各ウェルに加え、5パーセントCO2インキュベータにおいて37℃で30分インキュベートした。プレートを、Perkin−Elmer HTS7000蛍光プレートリーダーによって読み取り、データをMicrosoft Excelで分析した。結果は図1に表示される。AR58A314.1ハイブリドーマの上清は、OVCAR−3細胞に対して13パーセント、SW1116細胞に対して13パーセント、およびLovo細胞に対して12パーセントの特異的細胞傷害性をもたらした。OVCAR−3細胞に対する細胞傷害性は、それぞれ、陽性コントロールのアジ化ナトリウムおよびシクロヘキサミドによって得られる細胞傷害性の24および43パーセントであった。SW1116細胞に対する13%の細胞傷害性は、それぞれ、陽性コントロールのc225およびシクロヘキサミドによって得られる細胞傷害性の41および65パーセントであった。最後に、Lovo細胞に対する12パーセントの細胞傷害性は、シクロヘキサミドによって得られる細胞傷害性の26パーセントであった。図1の結果は、AR58A314.1の細胞傷害作用は、癌細胞タイプに対する結合レベルには比例しないことを明らかにした。図1に表示されるように、AR58A314.1は、CCD−27sk正常細胞系統には細胞毒性をもたらさなかった。既知の非特異的細胞傷害剤、シクロヘキサミドおよびNaN3および抗EGFR抗体c225は、一般に、予想通りの細胞傷害性をもたらした。
【0127】
実施例2
インビトロ結合
AR58A314.1モノクロナール抗体は、CL−1000フラスコ(BD Biosciences, Oakville, ON)においてハイブリドーマを培養し、収集および再散布を週に2回繰り返して生産した。抗体は、タンパクGセファロース4高速フロー(Amersham Biosciences, Baie d’Urfe, QC)による標準的抗体精製過程にしたがって精製した。脱免疫化、ヒト化、キメラ化、またはマウスの、モノクロナール抗体を利用することは本発明の範囲内にある。
【0128】
乳癌(MB−231)、結腸癌(DLD−1、Lovo、SW1116、およびSW620)、肺癌(A549)、前立腺癌(PC−3)、卵巣癌(OVCAR−3)、およびすい臓癌(AsPC−1、およびBxPC−3)、および、皮膚(CCD−27sk)および肺(Hs888.Lu)から得られた非癌細胞系統に対する、AR58A314.1の結合をフローサイトメトリー(FACS)によって評価した。細胞系統は全て米国基準菌株保存機関(ATCC, Manassa, VA)から入手した。
【0129】
FACSのために、先ず細胞単層をDPBS(Ca++およびMg++無添加)によって洗浄して調製した。次に、細胞解離バッファー(INVITROGEN, Burlington, ON)を用いて、37℃で細胞を細胞培養プレートから剥離した。遠心および収集後、細胞を、MgCl2、CaCl2、2パーセントのウシ胎児血清を4℃で含むDPBS(染色媒体)に再縣濁し、カウントし、適切な細胞密度となるように分液し、回転沈殿させて細胞ペレットを形成し、試験抗体(AR58A314.1)、またはコントロール抗体(異性形コントロール、抗EGFR)の存在下に4℃で染色媒体中で再縣濁した。異性形コントロールおよび試験抗体は、20マイクログラム/mLで評価し、一方、抗EGFRは、氷上で30分5マイクログラム/mLにおいて評価した。Alexa Fluor 546−接合二次抗体を添加する前に、細胞を染色媒体で一度洗浄した。次に、染色媒体に溶解したAlexa Fluor 546−接合体を添加し4℃で30分置いた。次に、細胞に最後の洗浄を行い、固定媒体(1.5%パラフォルムアルデヒドを含む染色媒体)に再縣濁した。FACSarray(登録商標)システムソフトウェア(BD Biosciences, Oakville, ON)を用い、FACSarrayにサンプルを走らせることによって細胞のフローサイトメトリー捕捉を評価した。細胞の前方(FSC)および側方(SSC)散乱を、FSCおよびSSC検出器に対する電圧および振幅ゲインを調節することによって設定した。蛍光(Alexa−546)チェンネルの検出器は、染色されない細胞が、約1−5単位の蛍光強度中央値の均一ピークを持つように調整した。各サンプルについて、分析のために約10,000ゲート通過事象(染色固定細胞)が得られ、その結果を図3に示す。
【0130】
図2は、異性形コントロールを上回る、平均蛍光強度の増加倍数を示す。AR58A314.1の代表的ヒストグラムを図3にまとめた。AR58A314.1は、結腸癌細胞系統DLD−1、Lovo、SW1116、およびSW620(それぞれ、1.8倍、2.0倍、2.1倍、および8.5倍)、および、卵巣癌細胞系統(OVCAR−3)に対して結合を示した。CCD−27sk正常皮膚、およびHs888.Lu細胞系統に対する結合は、この条件下では検出不能であった。実施例1から、AR58A310.1の、OVCAR−3卵巣癌細胞系統、およびSW1116およびLovo結腸癌細胞系統に対する結合は、細胞ELISAでは検出できないことが明らかであった。しかしながら、FACSを用いると検出可能な結合が示された。これは、FACSの方が、これらの条件下ではより感度の高い結合アッセイであることを示す。
【0131】
実施例3
A549細胞によるインビボ腫瘍実験
実施例1および2は、AR58A314.1が、いくつかの異なる癌表徴に対し検出可能な結合を示すことで、ヒトの癌細胞系統に対し抗癌性を有することを明らかにした。図4および5を参照すると、4から6週齢の雌性SCIDマウスの後頸部皮下に、100マイクロリットルの生理的食塩水に縣濁した1百万個のヒト肺癌細胞(A549)を注入して移植した。これらのマウスを5匹から成る二つの治療群にランダムに分けた。移植後1日目に20 mg/kgのAR58A314.1試験抗体またはバッファーコントロールを、2.7 mM KCl, 1 mM KH2PO4, 137 mM NaCl, および20 mM Na2HPO4を含む希釈液による保存濃度希釈後300マイクロリットル容量として、各群に腹腔内投与した。次に、同様にして、この抗体およびコントロールサンプルを、実験期間の間、週に1度投与した。腫瘍増殖を、約7日に1回キャリパーで測定した。実験は7回の注入後(48日)に完了とした。大きな潰瘍病巣のため、動物がCCACの終末点に達したからである。実験期間の間、週に1度動物の体重を測定した。実験の終了時、全ての動物を、CCACのガイドラインにしたがって安楽死させた。
【0132】
AR58A314.1は、ヒト肺癌の、きわめて侵襲性の高いA549インビボ予防モデルにおいて腫瘍増殖を抑えた。移植後48日目、最終治療投与の5日後、AR58A314.1治療群における腫瘍の平均体積は、バッファーコントロール治療群の腫瘍体積よりも48.6パーセント低かった(図4)。この結果は有意に達しなかった。なぜなら、最終時点における測定値が、実験終了前の、潰瘍病巣によるマウスの脱落によって影響を受けたからである。
【0133】
実験を通じて毒性の臨床的兆候は無かった。週間隔で測定された体重は、健康状態および節約繁栄失敗の代用物とされた。図5において見て取れるように、実験期間中、実験期間中、コントロール群、またはAR58A314.1治療群の体重には有意差は無かった。さらに、実験の終了時にも、この2群の間には体重に差は無かった(p=0.829, t−検定)。
【0134】
したがって、AR58A314.1はよく耐容され、このヒト肺癌異種移植モデルにおいて腫瘍負荷を抑えた。
【0135】
実施例4
BxPC−3細胞によるインビボ腫瘍実験
実施例3は、AR58A314.1が、ヒトの肺癌細胞系統に対し抗癌性を有することを明らかにした。ヒトのすい臓癌細胞系統に対するAR58A314.1の効力を定量するために、該抗体を、BxPC−3ヒトすい臓癌の異種移植モデルについて試験した。図6および7を参照すると、4から6週齢の雌性SCIDマウスの後頸部皮下に、100マイクロリットルの生理的食塩水に縣濁した5百万個のヒトすい臓癌細胞(BxPC−3)を注入して移植した。これらのマウスを5匹から成る二つの治療群にランダムに分けた。移植後1日目に20 mg/kgのAR58A314.1試験抗体またはバッファーコントロールを、2.7 mM KCl, 1 mM KH2PO4, 137 mM NaCl, および20 mM Na2HPO4を含む希釈液による保存濃度希釈後300マイクロリットル容量として、各群に腹腔内投与した。次に、同様にして、この抗体およびコントロールサンプルを、実験期間の間、週に1度合計8回投与した。腫瘍増殖を、約7日に1回キャリパーで測定した。実験期間の間、週に1度動物の体重を測定した。実験の終了時、全ての動物を、CCACのガイドラインにしたがって安楽死させた。
【0136】
AR58A314.1による治療は、ヒトすい臓癌の、BxPC−3インビボ予防モデルにおいて腫瘍増殖の抑制をもたらした。移植後56日目、最終治療投与の6日後、AR58A314.1治療群における腫瘍の平均体積は、バッファーコントロール治療群の腫瘍体積よりも29パーセント低かった(図6)。治療後の追跡期間中(63日目)、AR58A314.1によって誘発される腫瘍増殖抑制は、45.8パーセントに増加した。この結果は、各群内のマウス間に観察される変動のため有意に達しなかった。
【0137】
実験を通じて毒性の臨床的兆候は無かった。週間隔で測定された体重は、健康状態および節約繁栄失敗の代用物とされた。図7において見て取れるように、実験期間中、実験期間中、コントロール群、またはAR58A314.1治療群の体重は低下しなかった。さらに、実験の終了時(48日目;p=0.059, t−検定)、または、治療後の追跡期間にも(63日目;p=0.1479, t−検定)、この2群の間には体重に差は無かった。
【0138】
したがって、AR58A314.1はよく耐容され、このヒトすい臓癌異種移植モデルにおいて腫瘍負荷を抑えた。AR58A314.1は、二つの異なるヒト癌の表徴:すい臓と肺に対して効力を示した。治療効果は、いくつかの、十分認知済みの、ヒトの癌疾患モデルにおいて観察された。これは、ヒトを含む他の哺乳動物における治療においても、この抗体が、薬理的に、製薬学的に有益であることを示唆する。
【0139】
実施例5
ヒトの正常および複数腫瘍組織の染色
ヒトにおけるAR58A314.1抗原の分布を明らかにするためにIHC実験を行った。スライドを、冷却(−20℃)アセトンで10分再固定し、室温に戻した。4種のヒトの正常組織(結腸、肺、前立腺、および乳房)、および16種のヒトの腫瘍組織(結腸、肺、前立腺、および乳房が4種)に対する該抗体の結合を、ヒトの、正常および腫瘍器官組織スクリーニングアレイ(Tri Star, Rockville, MD)を用いて実行した。
【0140】
スライドを、4℃の冷リン酸バッファー生食液(PBS)にて3回、各回それぞれ2分濯ぎ、次いで、3パーセント過酸化水素水で10分間洗浄することによって内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。次に、スライドを、PBSで、3回それぞれ5分濯ぎ、次いで、室温で5分間Universalブロック液(Dako, Tronto, Ontario)においてインキュベートした。AR58A314.1、抗ヒト筋肉アクチン(Clone HHF35, Dako, Toronto, Ontario)、または異性形コントロール抗体(Aspergillus nigerのグルコースオキシダーゼ、すなわち、哺乳類組織には存在せず、誘発可能でもない酵素を指向する抗体;Dako, Toronto, Ontario)を、その作業濃度となるまで、抗体希釈バッファー(Dako, Toronto, Ontario)において希釈し(各抗体について5マイクログラム/mL、ただし、抗アクチンは、0.5マイクログラム/mLとなるように希釈)、室温で1時間インキュベートした。スライドをPBSで3回それぞれ2分間洗浄した。HRP接合二次抗体を支給されたまま(Dako Envision System, Toronto, Ontario)で室温で30分用いて、一次抗体の免疫反応性を検出/可視化した。この工程後、スライドを、PBSで3回それぞれ5分洗浄し、免疫ペルオキシダーゼ染色のためにDAB(3,3′−ジアミノベンジジンテトラヒドラクロリド、Dako, Tronto, Ontario)クロモゲン基質液を室温で10分加えることによって発色反応を発達させた。水道水でスライドを洗浄することによって、クロモゲン反応を停止させた。Meyerのヘマトキシリン(Sigma Diagnostics, Oaksville, ON)によってカウンターステインした後、スライドを、等級別エタノール(75−100%)で脱水し、キシレンで透徹した。登載媒体(Dako Paramount, Toronto, Ontario)を用いてスライドをカバースリップで被った。スライドを、Axiovert200 (Zeiss Canada, Toronto, ON)を用いて鏡検し、Northern Eclipse Imaging Software(Mississauga, ON)を用いてディジタル画像を獲得し、保存した。結果は、組織病理学者が読み取り、評点し、解釈した。
【0141】
図8は、一連のヒトの正常および腫瘍組織に対するAR58A314.1染色の結果のまとめを示す。AR58A314.1抗体は、結腸癌の1/4、および肺癌の2/4に結合を示すが(図9)、試験した正常組織のいずれに対しても結合しなかった。この結果は、FACS結合データ(図2および3)と一致した。すなわち、FACSデータも、この抗体が、正常細胞と比べ、癌細胞に対し特異的に結合することを示した。AR58A314.1結合は、組織切片内の腫瘍細胞に限局し、細胞の局在は、細胞原形質性および膜性であった。これらの結果は、AR58A314.1は、いくつかの異なる腫瘍タイプにおいて発現されることを示唆する。さらに、抗原AR58A314.1は、正常組織においては広く発現されない。これは、該抗体が、ヒトにおいてごく少数の組織に対し特異的に結合することを示唆する。
【0142】
実施例6
ヒト正常組織の染色
ヒトにおけるAR58A314.1抗原の分布を評価するために拡大IHC実験を行った。20種のヒトの正常組織(副腎、卵巣、すい臓、甲状腺、脳(大脳)、脳(小脳)、肺、脾臓、子宮、子宮頸部、乳房、胎盤、心臓、皮膚、骨格筋、腎臓、胃、小腸、肝臓、および唾液腺)に対する該抗体の結合を、ヒトの、正常組織マイクロアレイ(Biochain, CA, USA)を用いて実行した。
【0143】
使用するIHC法、抗体濃度、および異性形コントロールは、抗アクチン(2マイクログラム/mLの濃度を用いた)を除いては、実施例5で述べたものと同様であった。スライドは、Axiovert200 (Zeiss Canada, Toronto, ON)を用いて鏡検し、Northern Eclipse Imaging Software(Mississauga, ON)を用いてディジタル画像を獲得し、保存した。結果は、組織病理学者が読み取り、評点し、解釈した。
【0144】
図10は、一連のヒトの正常組織に対するAR58A314.1染色の結果のまとめを示す。AR58A314.1抗体は、試験組織のいずれに対しても結合を示さなかった(図11)。20種の組織サンプルの内8種は、陰性異性形コントロールに観察される背景染色のために評点が付けられなかった。陽性抗体コントロール、抗アクチンは、筋肉組織に対し予想通りの結合を示した。
【0145】
AR58A314.1は、試験したヒトの正常組織に対し結合を示さなかった。これは、前記実施例における所見と一致し、さらに、この抗体によって標的とされるエピトープの、腫瘍組織・対・正常組織における差別的発現を明らかにする。
【0146】
実施例7
競合的結合因子の単離
一抗体が与えられたならば、当業者であれば、競合的抑制性CDMAB、例えば、同じエピトープを認識する競合抗体を生成することは可能である(Belanger L et al. Clinica Chimica Acta 48:15−18 (1973))。一つの方法は、該抗体によって認識される抗原を発現する免疫原によって免疫化することを必要とする。サンプルとしては、例えば、ただしこれらに限定されないが、組織、単離タンパク(単複)、または細胞系統(単複)が挙げられる。試験抗体の結合を抑制する抗体を特定する競合アッセイ、例えば、ELISA、FACS、または免疫沈降法を用いて、得られたハイブリドーマをスクリーングすることが可能である。別の方法は、ファージディスプレイライブラリー、および、前記抗原を認識する抗体を選択するためのパンニングの利用が考えられる(Rubinstein JL et al. Anal Biochem 314:294−300 (2003)。いずれにしろ、抗体は、その標的抗原の少なくとも一つのエピトープにおいて、元の標識抗体の結合を押し退ける能力に基づいて選ばれる。したがって、このような抗体は、元の抗体と同様に、抗原の少なくとも一つのエピトープを認識するという特徴を所有すると考えられる。
【0147】
実施例8
AR58A314.1モノクロナール抗体可変域のクローニング
AR58A314.1ハイブリドーマ細胞系統によって生産されるモノクロナール抗体の重鎖(VH)および軽鎖(VL)における可変域の配列を決定することは可能である。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖をコードするRNAは、guanidium isothiocyanate (Chirgwin et al. Biochem. 18:5294−5299(1979)による細胞可溶化を含む標準法を用いて被検体ハイブリドーマから抽出することが可能である。このmRNAを用いてcDNAを調製し、次いで、従来技術で既知のPCR方法原理を用いてVHおよびVL遺伝子を単離することが可能である(Sambrook et al., eds.,「分子クローニング(“Molecular Cloning”)」、Chapter 14, Cold Spring Harbor laboratories Press, N.Y. (1989)。重鎖および軽鎖のN−末端アミノ酸配列は、Edman自動配列決定法によって独立に決定することが可能である。CDRおよび側接FRの直鎖も、VHおよびVL断片のアミノ酸配列によって決定することが可能である。次に、AR58A314.1モノクロナール抗体からVHおよびVL遺伝子を単離するために、合成プライマーを設計することが可能であり、かつ、この単離遺伝子を、配列決定のために、適切なベクターに連結することが可能である。キメラおよびヒト化IgGを生成するために、軽鎖および重鎖の可変ドメインを、発現のために、適切なベクターにサブクローンすることが可能である。
【0148】
別の実施態様では、AR58A314.1、またはその脱免疫、キメラ、またはヒト化変異種が、該抗体をコードする核酸をトランスジェニック動物において発現させ、それによって、該抗体の発現、回収が可能となるようにして生産される。例えば、抗体を、回収および精製をやり易くする組織特異的やり方で発現させることが可能である。そのような一実施態様では、本発明の抗体は、哺乳の際に分泌されるように乳腺に発現される。トランスジェニック動物としては、ただしこれらに限定されないが、マウス、ヤギ、およびウサギが挙げられる。
【0149】
(i)モノクロナール抗体
モノクロナール抗体(実施例1で概説した)をコードするDNAは、従来法(例えば、該モノクロナール抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に対し特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブ)を用いて簡単に単離、配列決定される。このハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦単離されたならば、このDNAを発現ベクターの中に導入し、次に、宿主細胞、例えば、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または、他の状態であれば免疫グロブリンタンパクを生産しない骨髄細胞に転送し、この組み換え宿主細胞においてモノクロナール抗体の合成を実現させる。このDNAはさらに、ヒトの重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を、マウスの相同的配列に代わって置換することによって修飾してもよい。さらに、キメラまたはハイブリッド抗体は、合成タンパク化学における既知の方法、例えば、架橋剤を含む方法を用いてインビトロで調製してもよい。例えば、免疫トキシンは、ジスルフィド交換反応を用いて、または、チオエーテル結合を形成することによって構築してもよい。このための好適な試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチリミデートが挙げられる。
【0150】
(ii)ヒト化抗体
ヒト化抗体は、非ヒト供給源から、その中に一つ以上のアミノ酸残基を導入させる。これらの、非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「輸入」残基と呼ばれる。これは、通常、「輸入」可変ドメインから取られる。ヒト化は、げっ歯類のCDR(単複)配列によって、ヒト抗体の対応配列を置換することによるWinterおよび共同研究者らの方法によって実行される(Jones et al., Nature 321:522−525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323−327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534−1536(1988); Clark, Immunol. Today 21:397−402 (2000)に総覧される)。
【0151】
ヒト化抗体は、親およびヒト化配列の三次元モデルを用い、親配列および各種概念的ヒト化産物に関する分析プロセスによって調製することが可能である。三次元免疫グロブリンは、普通に市販されており、当業者には親しいものである。選ばれた候補免疫グロブリン配列の、予想される三次元立体配座構造を図示し、表示するコンピュータプログラムが市販されている。これらのディスプレイを精査することによって、候補免疫グロブリン配列の機能における、残基の予想される役割に関する分析、すなわち、その抗原に対する、候補免疫グロブリンの能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、所望の抗体特徴、例えば、標的抗原(単複)に対する親和性の増大が実現されるように、共通の輸送配列の中からFR残基を選択し、組み合わせることが可能である。一般に、CDR配列が、抗原結合に対し、直接に、かつもっとも本質的に関与する。
【0152】
(iii)抗体断片
抗体断片の生産のために各種の技術がこれまで開発されている。これらの断片は、組み換え宿主細胞によって生産することが可能である(Hudson, Curr. Opin. Immunol. 11:548−557 (1997); Little et al., Immunol. Today 21:364−370(2000)において総覧される)。例えば、Fab′−SH断片は、大腸菌から直接回収し、化学的に結合してF(ab′)2断片を形成することが可能である(Carter et al., Biotechnology 10:163−167(1992))。別の実施態様では、F(ab′)2は、F(ab′)2分子の集合を促進するロイシンジッパーGCN4を用いて形成される。別の方法では、Fv、Fab、またはF(ab′)2断片は、組み換え宿主細胞培養体から直接単離することが可能である。
【0153】
実施例9
本発明の抗体を含む組成物
本発明の抗体は、癌を予防/治療するための組成物として使用することが可能である。本発明の抗体を含む癌の予防/治療用組成物は、毒性が低く、液体調剤として、または、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に好適な調剤の製薬組成物として、経口的または、非経口的(例えば、筋肉内、腹腔内、皮下など)に投与することが可能である。本発明の抗体は、それ自体として投与してもよいし、または、適切な組成物として投与してもよい。投与のために使用される組成物は、本発明の抗体またはその塩と共に、製薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含んでもよい。そのような組成物は、経口的または非経口的投与に好適な製薬調製品の形で供給される。
【0154】
非経口的投与用組成物の例としては、注入用調剤、座剤などが挙げられる。注入用調剤としては、静脈内、皮下、皮内、および筋肉内注射、点滴輸液、関節内注射などの剤形が挙げられる。これらの注入用剤形は、周知の方法によって調製してよい。例えば、注入用調剤は、本発明の抗体またはその塩を、注入用として通例的に使用される、滅菌した水性媒体、または油性媒体に溶解、縣濁、または乳化することによって調製してもよい。注入用水性媒体としては、例えば、生理的食塩水、グルコースおよびそのたの補助剤などを含む等張液がある。等張液は、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、HCO−50(水素添加ひまし油のポリオキシエチレン(50モル)アダクト))などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。油性媒体として用いられるのは、例えば、ごま油、大豆油などである。これらは、可溶化剤、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと組み合わせて使用してもよい。このようにして調製される注入剤は、通常、適切なアンプルに充填される。直腸投与用に使用される座剤は、本発明の抗体またはその塩を、座剤用の、通例の基剤と混ぜ合わせることによって調製してよい。経口投与用組成物としては、固体または液体調剤、具体的には、錠剤(糖剤およびフィルム被覆錠剤を含む)、丸剤、顆粒、粉末状調剤、カプセル(軟カプセルを含む)、シロップ、乳液、縣濁液などが挙げられる。このような組成物は、周知の方法によって製造されるが、製剤調製の分野において通例的に使用されるベヒクル、希釈剤、または賦形剤を含んでもよい。錠剤のためのベヒクルまたは賦形剤の例としては、ラクトース、でん粉、スクロース、ステアリン酸マグネシウムなどがある。
【0155】
前述の経口、または非経口用の組成物は、活性成分の用量に適合する単位剤形を持つ製薬調製品として調製される。このような単位用量調剤としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注入剤(アンプル)、座剤などが挙げられる。含まれる前述の化合物の量は、一般に、単位剤形当たり5から500 mgであるが、前述の抗体は、特に注入剤として約5から約100 mgで含まれ、その他の剤形では10から250 mgで含まれることが好ましい。
【0156】
本発明の抗体を含む、前述の予防/治療剤、または調整剤の用量は、投与される被検体、標的疾患、病態、投与ルートなどに応じて変動してよい。例えば、成人の乳癌の治療/予防のために使用される場合、本発明の抗体を、静脈内に、体重kg当たり約0.01から20 mg、好ましくは体重kg当たり約0.1から10 mg、より好ましくは体重kg当たり約0.1から5 mgの用量で、1日当たり1から5回、好ましくは1日当たり1から3回投与するのが有利である。他の非経口的および経口的投与では、該薬剤は、前述の用量と対応する用量で投与することが可能である。病態が特に重大である場合は、用量は、その病態に応じて増してもよい。
【0157】
本発明の抗体は、そのまま、または、適切な組成物の形で投与してよい。投与のために使用される組成物は、前述の抗体またはその塩と共に、製薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含んでもよい。そのような組成物は、経口的、または非経口的投与(例えば、筋肉内注射、皮下注射など)に好適な製薬調製品の形で供給される。前述の各組成物はさらに、他の活性成分を含んでもよい。さらに、本発明の抗体は、他の薬剤、例えば、アルキル化剤(例えば、シクロフォスファミド、イフォスファミドなど)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、5−フルオロウラシルなど)、抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシンなど)、植物性抗腫瘍剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、Taxolなど)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、イリノテカンなどと組み合わせて使用してもよい。本発明の抗体、および前述の薬剤は、患者に対し、同時に投与してもよいし、様々な時間間隔を置いて投与してもよい。
【0158】
特に癌のための、本明細書に記載される治療法はさらに、他の抗生物質、または化学療法剤の投与と一緒に実行されてもよい。例えば、特に結腸癌を治療する場合、EGFRに対する抗体、例えばERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)をさらに投与してもよい。ERBITUX(登録商標)は、乾癬の治療にも有効であることが示されている。併用に好適な他の抗生物質としては、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)特に乳癌を治療する場合、AVASTIN(登録商標)特に結腸癌を治療する場合、SGN−15特に非小細胞肺癌を治療する場合、が挙げられる。他の抗生物質/化学療法剤と組み合わせた、本発明の抗体の投与は、同時に、または別々に、同じか、または異なるルートを介して行われてもよい。
【0159】
利用される化学療法剤/他の抗体処方としては、患者の病態の治療にとって最適であると考えられる限り、いずれの処方であってもよい。異なる悪性腫瘍は、患者毎に決められる、特異的抗腫瘍抗生物質および特異的化学療法剤の使用を要求する可能性がある。本発明の好ましい実施態様では、化学療法は、抗体療法と同時に、または、より好ましくはその後に投与される。しかしながら、本発明は、いかなる特定の投与法、または投与ルートにも限定されないことは強調されなければならない。
【0160】
証拠の主力は、AR58A314.1は、癌細胞系統およびヒトの腫瘍組織の上に存在するエピトープへの連結を通じて抗癌作用を仲介することを示す。さらに、AR58A314.1抗体は、FACS、細胞ELISA、またはIHCによって例示される、ただしこれらに限定されない、技術を利用して、該抗体に特異的に結合するエピトープを発現する細胞および/または組織の検出に使用が可能であることが示された。
【0161】
本明細書に引用される特許および公刊物は全て、本発明の関わる当業者のレベルを示すものである。特許および公刊物は全て、各個別の公刊物が、特異的、個別的に、引用により本明細書に含まれるとされるのと同程度に引用により本明細書に含まれる。
【0162】
本発明のある形態が説明されるけれども、それは、本明細書に記載され、図示される部分の特異的形態または配置に限定されるべきものではないことを理解しなければならない。本発明の範囲から逸脱することなく様々の変更が実行可能であること、および、本発明は、本明細書に図示し、記載されるものだけに限定されると考えてはならないことは、当業者には明白である。当業者であれば、本発明は、言及した目的、および言及した目標および利点ばかりでなく、本明細書に内在する目標および利点を実行し、獲得するのにも十分適応されることを直ちに理解されるであろう。本明細書に記載される、全てのオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物学的関連化合物、方法、手順、および技術は、現在、好ましい実施態様を代表するものであるが、例示を意図するものであって、発明の範囲の限定を意図するものではない。本明細書における使用および他の使用の変更が、当業者に思い浮かぶであろうが、それらは、本発明の精神、および付属の特許請求項の範囲内に包含される。本発明は、特定の好ましい実施態様と関連させて説明されてきたわけであるが、請求される発明は、これらの特異的実施態様にのみ不当に限定されてはらないことを理解しなければならない。実際、本発明を実行するための、記載の方式については、様々の修飾が、当業者には明白であるが、それらは、頭書の特許請求の範囲内に納まることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】は、細胞系統MDA−MB−231(MB−231)、OVCAR−3、SW1116、Lovo、およびCCD−27skに対するハイブリドーマ上清のパーセント細胞傷害性および結合レベルを比較する。
【図2】は、癌および正常細胞系統に対する、AR58A314.1および抗EGFRコントロールの結合を表す。データを表にして、平均蛍光強度を、異性系コントロールを上回る増加倍数として示す。
【図3】は、いくつかの癌および非癌細胞系統を指向する、AR58A314.1および抗EGFR抗体の代表的FACSヒストグラムを含む。
【図4】は、予防的A549肺癌モデルにおける腫瘍増殖に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。垂直破線は、抗体投与期間を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
【図5】は、予防的A549肺癌モデルにおける体重に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
【図6】は、予防的BxPC−3すい臓癌モデルにおける腫瘍増殖に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。垂直破線は、抗体投与期間を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
【図7】は、予防的BxPC−3すい臓癌モデルにおける体重に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
【図8】は、ヒトの腫瘍および正常組織マイクロアレイに対する、AR58A314.1・対・陽性および陰性コントロールの比較である。
【図9】は、ヒトの組織マイクロアレイにおいて、AR58314.1(A)、または異性形コントロール抗体(B)によって得られた、肺腫瘍組織における結合パターン、および、AR58314.1(C)、または抗アクチン(D)によって得られた、肺正常組織における結合パターンを示す代表的顕微鏡写真。AR58A314.1は、腫瘍細胞に対しては陽性染色を、正常組織に対しては陰性染色を示した。倍率は200X。
【図10】は、ヒトの正常組織マイクロアレイに対する、AR58A314.1・対・陽性および陰性コントロールの比較である。
【図11】は、ヒトの正常組織マイクロアレイにおいて、AR58314.1(A)、または陽性コントロール抗体(B)によって得られた、正常心臓組織における結合パターン、および、AR58314.1(C)、または陽性コントロール抗体(D)によって得られた、正常すい臓組織における結合パターンを示す代表的顕微鏡写真。AR58A314.1は、正常組織に対して陰性染色を示した。倍率は200X。
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌疾患修飾抗体(CDMAB)の単離および生産、および、治療および診断プロセスにおける、これらのCDMAB単独の使用、または、一つ以上のCDMAB/化学療法剤の併用におけるCDMABの使用に関する。本発明はさらに、本発明のCDMABを利用する結合アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療薬としてのモノクロナール抗体:癌を抱える各個人は、ユニークであり、その個人のアイデンティテイと同じぐらい、他の癌と異なる癌を有する。にも拘わらず、現今の治療は、同じ段階にある、同じタイプの癌を持つ全ての患者を同じ様に治療する。これらの患者の少なくとも30パーセントは、第1線治療には奏功せず、したがって、次の治療ラウンドに進むが、治療不振、転移、および最終的な死の確率が高まる。もしこれよりも優れた治療法があるとすれば、それは、特定の個人に合わせた治療の特注であろう。この特注に応えられる、現今唯一の治療法は手術である。化学療法および放射線治療は、患者の個別要求に適合させることはできず、かつ、手術そのものも、多くの場合、治癒をもたらすには不十分である。
【0003】
モノクロナール抗体の登場とともに、特注治療のための方法を開発する可能性が現実味を帯びてきた。なぜなら、各抗体は、単一のエピトープを指向することが可能だからである。さらに、ある特定の個人の腫瘍を一意に定義する、エピトープの関連集合体に向けた抗体の組み合わせを生産することが可能である。
【0004】
癌様細胞と正常細胞の間の顕著な差は、癌様細胞が、形質転換細胞に特異的な抗原を含むことであることを認識してから、科学界は、モノクロナール抗体を、これらの癌抗原に対して特異的に結合させることによって、形質転換細胞を特異的に標的するように設計することが可能であると長い間思い続けてきた。このことから、モノクロナール抗体は、癌細胞を排除するための「魔法の弾丸」として役立ち得るとする信念が生まれた。しかしながら、単一モノクロナール抗体では、それがどんなものであれ、癌の全ての事例には役立たないこと、複数のモノクロナール抗体を、一つのクラスとして、指向性癌治療剤として展開することが可能であることが広く認識されている。本開示の発明の教示にしたがって単離されるモノクロナール抗体は、患者にとって有益なやり方で、例えば、腫瘍負荷を下げることによって、癌様疾患の進行を修飾することが示されているが、本明細書では、「癌疾患修飾抗体(CDMAB)」または「抗癌」抗体のように、様々な名前で呼ばれることになる。
【0005】
現在、癌患者は、通常、治療についてほとんど選択肢を持たない。癌治療におけるスケジュール対処法は、地球規模の生存率および罹患率の改善をもたらした。しかしながら、特定の個人にとっては、これらの統計学的改善は、必ずしもその個人的状況の改善とは相関しない。
【0006】
したがって、もしも、開業医が、同じ対象群の中の他の患者とは独立に各腫瘍を治療することを可能とする方法原理が提出されたならば、それは、まさにその個人だけに合わせた独自の治療を施すユニークな方法を可能とすることになろう。もしもこのような治療コースが実現するならば、それは、理想的に、治癒率を高め、さらによい結果を産み、したがって、長く希求されていた要求を満たすものとなろう。
【0007】
歴史的には、ポリクロナール抗体が使用されてきたが、ヒト癌の治療ではごく限られた成功しか得られなかった。リンパ腫および白血病が、ヒトの血漿で治療されたが、長期の寛解または反応はほとんど見られなかった。さらに、再現性が不足しており、化学療法に比べ一段と優る長所が見られなかった。固体腫瘍、例えば、乳癌、メラノーマ、および腎細胞癌も、ヒト血液、チンパンジー血清、ヒト血漿、およびウマ血清によって治療されているが、同様にその結果は予測不明で、無効であった。
【0008】
固体腫瘍に対するモノクロナール抗体について、これまでたくさんの臨床治験が行われている。1980年代、ヒトの乳癌について少なくとも四つの臨床治験が行われたが、特異的抗原に対する抗体、または、組織選択性に基づいて選ばれた抗体を用いたが、少なくとも47名の患者において僅かに1名の反応者しか得られなかった。1998年になって始めて、CISPLATINと組み合わせてヒト化抗Her2/neu抗体(Herceptin(登録商標))を用いた臨床治験が成功を収めた。この治験では、37名の患者が反応評価を受けたが、その内、4分の1は、部分的反応率しか示さず、別の4分の1では、軽度の、または安定的な病気の進行が見られた。反応者の内、進行までの時間の中央値は8.4ヶ月であり、反応持続時間の中央値は5.3ヶ月であった。
【0009】
Herceptin(登録商標)は、Taxol(登録商標)と組み合わせた第1線使用が1998年に承認された。臨床実験結果から、Taxol(登録商標)のみを服用した群に比べ(3.0ヶ月)、抗体治療プラスTaxol(登録商標)を服用した人々(6.9ヶ月)では、病気進行までの時間の中央値に増加が見られた。生存時間中央値にも若干の増加が見られた;Herceptin(登録商標)プラスTaxol(登録商標)治療群・対・Taxol(登録商標)単独治療群の生存時間は、22対18ヶ月であった。さらに、抗体プラスTaxol(登録商標)併用群と、Taxol(登録商標)単独群と比べた場合、完全反応者の数(8対2パーセント)においても、部分的反応者の数(34対15パーセント)においても増加が見られた。しかしながら、Taxol単独と比べた場合、Herceptin(登録商標)プラスTaxol(登録商標)による治療では、より高頻度の心臓毒性が誘発された(それぞれ、13対1パーセント)。さらに、Herceptin(登録商標)治療は、現在その機能も、生物学的に重要なリガンドも知られていない、ヒトの上皮増殖因子受容体2(Her2/neu)を過剰発現する(免疫組織化学(IHC)分析によって定量した場合)患者、転移性乳癌を有する患者の約25%に対してのみ有効であった。したがって、乳癌患者にとっては、依然として満たされない大きな要求がある。Herceptin(登録商標)治療で利益を受けることが可能な人々でも、やはり化学療法は必要であろうし、したがって、すくなくともある程度は、この種の治療の副作用に対処する必要はあろう。
【0010】
結腸直腸癌を調べる臨床治験は、糖タンパクおよび糖脂質の両方を標的とする抗体を含む。腺癌に対して若干の特異性を持つ、17−1Aなどの抗体は、60名を超える患者において第2相臨床治験を経過したばかりであるが、1名の患者しか部分的反応を示さなかった。他の治験では、17−1Aの使用は、シクロフォスファミドを加えたプロトコールにおいて、52名の患者の内、完全反応は1名のみ、僅かな反応が2名に得られたにすぎなかった。これまでのところ、17−1AのIII相臨床治験は、段階IIIの結腸癌に対する補助療法として効力の改善を実証していない。最初、画像化のために承認された、ヒト化マウスモノクロナール抗体の使用もやはり、腫瘍後退をもたらさなかった。
【0011】
やっと最近になって、モノクロナール抗体使用による、結腸直腸癌の臨床実験において、いくつかの陽性結果が得られている。2004年、ERBITUX(登録商標)が、イリノテカン系化学療法に対してほとんど反応しない、EGFR−発現転移性結腸直腸癌を持つ患者に対する、第2線治療用として承認された。2群構成II相臨床実験、および単一群構成実験の結果から、イリノテカンと組み合わせたERBITUX(登録商標)は、それぞれ、23および15パーセントの反応率、および、病気進行までの時間の中央値4.1および6.5ヶ月をもたらすことが示された。同じ2群構成II相臨床実験、および別の単一群構成実験の結果から、ERBITUX(登録商標)単独による治療は、それぞれ、11および9パーセントの反応率、および、病気進行までの時間の中央値1.5および4.2ヶ月をもたらすことが示された。
【0012】
したがって、スイスとアメリカ合衆国の両国で、イリノテカンと組み合わせたERBITUX(登録商標)治療が、アメリカ合衆国で、ERBITUX(登録商標)治療単独が、第1線のイリノテカン治療が不成功であった結腸癌患者に対する第2線治療として承認された。以上、Herceptin(登録商標)同様、スイスにおける治療は、モノクロナール抗体と化学療法の併用だけが承認された。さらに、スイスでも合衆国でも、治療は、患者に対し第2線治療としてのみ承認された。さらに、2004年、AVASTIN(登録商標)が、転移性結腸直腸癌の第1線治療として、5−フルオロフラシル系静注化学療法との併用について承認された。III相臨床実験の結果から、5−フルオロウラシル単独で治療された患者と比べ、AVASTIN(登録商標)プラス5−フルオロウラシルで治療された患者では、生存時間中央値の延長が示された(それぞれ、20ヶ月・対・16ヶ月)。しかしながら、再びHerceptin(登録商標)およびERBITUX(登録商標)と同様、治療は、モノクロナール抗体と化学療法の併用に対してのみ承認された。
【0013】
肺癌、脳癌、卵巣癌、すい臓癌、前立腺癌、および胃癌についても不振な結果が続いている。非小細胞型肺癌に関する、最近もっとも有望な結果が、化学療法剤TAXOTERE(登録商標)と組み合わせて、細胞殺傷性薬剤ドキソルビシンと接合したモノクロナール抗体(SGN−15;dox−BR96、抗Sialyl−Lex)で治療を行った、第II相臨床治験から得られた。TAXOTERE(登録商標)は、肺癌の第2線治療のための、唯一FDA承認を受けた化学療法剤である。初期のデータは、TAXOTERE(登録商標)単独に比べ、全体的生存率の改善を示した。実験のために招集された62名の患者の内、3分の2は、TAXOTERE(登録商標)と組み合わせてSGN−15を服用し、一方、残りの3分の1は、TAXOTERE(登録商標)だけを服用した。TAXOTERE(登録商標)と組み合わせてSGN−15を服用した患者では、全体生存期間の中央値が、TAXOTERE(登録商標)だけを服用した患者の5.9ヶ月に比べ、7.3ヶ月であった。1年時および18ヶ月時における全体生存率は、TAXOTERE(登録商標)単独服用患者では、それぞれ、24および8パーセントであったのに比べ、SNA−15プラスTAXOTERE(登録商標)を服用した患者では、それぞれ29および18パーセントであった。さらに新たな臨床治験が計画されている。
【0014】
臨床前の段階ではあるが、メラノーマに対するモノクロナール抗体の使用には、限られたものではあるが、ある程度の成功が見られた。これらの抗体の内で臨床治験に達したものはほとんど無く、これまで、承認されたものもなく、第III相臨床治験において有望な結果を示したものも無い。
【0015】
病気治療のための新規薬剤の発見は、30,000個の既知の遺伝子の内、どれが病気の原因発生に寄与する可能性のある関連標的であるか、その特定ができないために妨げられている。腫瘍学研究では、単に、それらが腫瘍細胞において過剰に発現されるという事実に基づいて、薬剤の仮想標的がしばしば選択される。このようにして特定された標的は次に、多数の化合物との相互作用についてスクリーニングされる。仮想抗体治療の場合、これらの候補化合物は、通常、Kohler and Milstein(非特許文献1)によって敷かれた基本原理に基づく、従来の、モノクロナール抗体生産法によって得られる。抗原(例えば、全体細胞、細胞分画、精製抗原)によって免疫化されたマウスから脾臓細胞を収集し、これを、恒久化されたハイブリドーマパートナーと融合させる。得られたハイブリドーマをスクリーニングし、標的に対しもっとも活発に結合する抗体の分泌に関して選別する。癌細胞に対して向けられる、多くの治療および診断抗体、例えば、Herceptin(登録商標)およびRITUXIMABを含む抗体が、この方法を用いて生産され、それらの親和性に基づいて選別されてきた。この戦略における欠点は二つである。先ず、治療的または診断的抗体結合のための適切な標的の選択が、組織特異的発癌プロセスを取り巻く知識の欠乏、および、その結果生じる単純化法、例えば、過剰発現によって行う選択によって制限される。第二に、受容体にもっとも大きい親和度をもって結合する薬剤分子が、常に、もっとも高率に、シグナルを起動または抑制するとする仮設は必ずしも常には該当しない。
【0016】
乳癌および結腸癌の治療においては若干の進歩が見られたとはいうものの、単独剤であれ、併用治療であれ、効果的な抗体治療の特定および開発は、全ての種類の癌について不十分なままである。
【0017】
先行特許:
特許文献1は、患者の腫瘍が、該患者の細胞または組織からクローンされてもよいMHC遺伝子によってトランスフェクトされるプロセスを開示する。次に、このトランスフェクト細胞を用いて、該患者にワクチン接種する。
【0018】
特許文献2は、哺乳動物の腫瘍および正常細胞の細胞内成分に対して特異的であるが、外部成分に対してはそうではないモノクロナール抗体を獲得する工程、該モノクロナール抗体を標識する工程、該標識抗体を、腫瘍細胞を殺傷するための治療を受けたことのある哺乳動物の組織と接触させる工程、および、変性腫瘍細胞の細胞内成分に対する、該標識抗体の結合を測定することによって治療の有効性を定量する工程を含むプロセスを開示する。ヒトの細胞内抗原に向けられる抗体を調製する際、この特許権者は、悪性細胞は、このような抗原の好適な供給源を代表することを認識する。
【0019】
特許文献3は、新規抗体、およびその生産法を提供する。具体的には、この特許は、ヒトの腫瘍、例えば、結腸および肺の腫瘍と関連するタンパク抗原に対し強力に結合する性質を持つが、一方、正常細胞に対する結合の程度ははるかに低い、モノクロナール抗体の形成を教示する。
【0020】
特許文献4は、癌の治療法であって、ヒトの癌患者から腫瘍組織を外科的に取り出すこと、該腫瘍組織を処理して腫瘍細胞を獲得すること、該腫瘍細胞を放射線暴露して、生存はするが発癌性を持たなくすること、および、これらの細胞を用いて、該患者にワクチン接種し、一次腫瘍の回帰を抑制しながら、同時に転移を抑制すること、を含む方法を提供する。この特許は、腫瘍細胞の表面抗原と反応するモノクロナール抗体の開発を教示する。コラム4、45行以下に記載されるように、本特許権者は、ヒトの新形成において活発な特異的免疫療法を発揮するモノクロナール抗体の開発に、自己発生の腫瘍細胞を利用する。
【0021】
特許文献5は、ヒトの上皮癌に特徴的ではあるが、上皮起源組織には依存しない糖タンパク抗原を教示する。
【0022】
特許文献6は、Her2発現細胞においてアポトーシスを誘発する抗Her2抗体、該抗体を生産するハイブリドーマ細胞系統、該抗体を使用する癌治療法、および前記抗体を含む製剤組成物を主題とする。
【0023】
特許文献7は、腫瘍および非腫瘍組織供給源から精製した、ムチン抗原に対するモノクロナール抗体を生産するための、新規ハイブリドーマ細胞系統を記載する。
【0024】
特許文献8は、所望の抗原に対して特異的な抗体を生産するヒトリンパ球を生成する方法、モノクロナール抗体の生産法、および、該方法によって生産されるモノクロナール抗体を主題とする。本特許は、特に、癌の診断と治療に有用な、抗HDヒトモノクロナール抗体の生産を主題とする。
【0025】
特許文献9は、ヒト癌細胞と反応する、抗体、抗体断片、抗体接合体、おおび、単一鎖免疫トキシンに関する。これらの抗体が機能する機序は、該分子は、ヒト癌の表面に存在する細胞膜抗原と反応する点、さらに、該抗体は、癌細胞内部へ進入する能力を持ち、そのため、抗体−薬剤、および抗体−トキシン接合体の形成に特に有用であるという点で二重である。その非修飾形態では、該抗体はさらに、特異的濃度において細胞傷害性を示す。
【0026】
特許文献10は、腫瘍の治療および予防のための自己抗体の使用を開示する。しかしながら、この抗体は、高齢哺乳動物から得られる抗核自己抗体である。その場合、この自己抗体は、免疫系に認められる、一種の天然抗体と言われるべきものである。この自己抗体は「高齢哺乳動物」から得られたものであるので、この自己抗体が、治療される患者から実際に得られたものとする必然的理由はない。さらに、本特許は、高齢哺乳動物から得られた、天然およびモノクロナールの、抗核自己抗体、および、モノクロナールの、抗核自己抗体を生産するハイブリドーマ細胞系統を開示する。
【0027】
【特許文献1】米国特許第5,750,102号
【特許文献2】米国特許第4,861,581号
【特許文献3】米国特許第5,171,665号
【特許文献4】米国特許第5,484,596号
【特許文献5】米国特許第5,693,763号
【特許文献6】米国特許第5,783,186号
【特許文献7】米国特許第5,849,876号
【特許文献8】米国特許第5,869,268号
【特許文献9】米国特許第5,869,045号
【特許文献10】米国特許第5,780,033号
【非特許文献1】1975, Nature, 256, 495−497, Kohler and Milstein
【発明の開示】
【0028】
本出願は、癌様疾患修飾性モノクロナール抗体をコードするハイブリドーマ細胞系統を単離するための、米国特許第6,180,357号に教示される、患者特異的抗癌抗体の生産法原理を利用する。これらの抗体は、一腫瘍に対して特異的に製造することが可能であり、したがって、癌治療の特注化を可能とする。本出願の通用範囲において、細胞殺傷性(細胞傷害性)、または細胞増殖抑制性(細胞静止性)を有する抗癌抗体を、以後、細胞傷害性を持つと呼ぶ。これらの抗体は、癌の段階判定および診断の補助に使用すること、腫瘍の転移の治療に使用することが可能である。従来の薬剤発見のパラダイムにしたがって生成される抗体と違って、このようにして生成される抗体は、従来から悪性組織の増殖/または生存と一体的であることが示されたことがない分子および経路をも標的とする可能性がある。さらに、これらの抗体の結合親和性は、比較的強い親和度の相互作用には反応しない細胞傷害性事象の起動に求められる要求に合致する。さらに、標準的化学療法型薬剤、例えば、核種を、本発明のCDMABに接合し、前記化学療法剤の使用域を収束することは、本発明の範囲内にある。このCDMABは、トキシン、細胞傷害性成分、酵素、例えば、ビオチン接合酵素、または血液系細胞に接合させて、抗体接合体を形成することも可能である。CDMABは単独で使用することも可能であるし、あるいは、一つ以上のCDMAB/化学療法剤と組み合わせて使用することも可能である。
【0029】
個別化された抗癌治療の展望は、患者の管理法にも変化をもたらす。考えられる臨床シナリオは、発見の時点で腫瘍サンプルが得られ、預託される。このサンプルについて、既存の、癌様疾患修飾抗体系列に基づいて、腫瘍のタイプ分けを行うことが可能である。患者の段階判定を行うと好都合であるが、患者をさらに段階判定するのに、手持ちの抗体を使用することが可能である。直ちに既存の抗体で患者を治療することが可能であり、その腫瘍に対して特異的な、一系列の抗体を、本明細書に略述するされる方法を用いて、または、本明細書に開示されるスクリーニング法と組み合わせてファージディスプレイライブラリーを用いて、生産することが可能である。生成される全ての抗体が、抗癌抗体のライブラリーに加えられる。なぜなら、他の腫瘍が、治療されるものと同じエピトープのいくつかを担持する可能性があるからである。本法にしたがって生産される抗体は、これらの抗体に結合する癌を有する、任意の数の患者において癌様疾患を治療するのに有用である可能性がある。
【0030】
抗癌抗体の外に、患者は、多数方式統合治療の一部として、現今推奨の治療を受容するように選択することも可能である。本法によって単離される抗体は、非癌様細胞に対して比較的毒性を持たないという事実から、複数抗体の高用量の併用を、単独で、または通例治療と組み合わせて使用することが可能である。高い治療指数はさらに、治療耐性細胞出現の可能性を下げることになる、短い時間スケールでの再治療を可能とする。
【0031】
患者が初回の治療コースに反応しにくかったり、または転移が起こった場合には、腫瘍に対する特異的抗体の生成過程を、再治療のために繰り返すことが可能である。さらに、抗癌抗体を、その患者から得た赤血球に接合させて、転移治療のために再輸液することが可能である。転移癌に対しては効果的な治療がほとんどなく、転移は通常、死に至る暗い結果の予兆である。しかしながら、転移癌には、通常、よく血管が発達しており、赤血球による抗癌剤の送達は、腫瘍部位に抗体を濃縮する作用を及ぼすことが可能である。転移以前においても、大抵の癌細胞は、その生存を、宿主の血液補給に依存するので、赤血球に接合させた抗癌抗体は、体内の腫瘍に対しても有効である可能性がある。それとは別に、抗体は、他の血液系細胞、例えば、リンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞などに接合させてもよい。
【0032】
5クラスの抗体があり、それぞれが、その重鎖によって与えられる機能と関連する。一般に、裸の抗体による癌細胞の殺作用は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、または補体依存性細胞傷害性(CDC)のどちらかによって仲介されると考えられている。例えば、マウスのIgMおよびIgG2a抗体は、補体系のC−1成分に結合することによってヒトの補体を活性化し、それによって補体活性化の古典経路を活性化し、これが、腫瘍の分解を可能とする。ヒトの抗体では、もっとも効果的な補体活性化抗体は、一般に、IgMおよびIgG1である。IgG2aおよびIgG3異性形から成るマウス抗体は、単球、マクロファージ、顆粒球、およびある種のリンパ球を介して細胞死をもたらすFc受容体を有する、細胞傷害性細胞を招集するのに有効である。IgG1およびIgG3異性形から成るヒト抗体はADCCを仲介する。
【0033】
Fc領域を仲介する細胞傷害性は、エフェクター細胞、対応する受容体、またはタンパク、例えば、NK細胞、T細胞、および補体の存在を必要とする。このようなエフェクター機構が無いと、抗体のFc機能は不活性となる。抗体のFc部分は、インビボでは、抗体の薬理動態に影響を及ぼす特性を付与することがあるが、インビトロではこれが作用しない。
【0034】
我々が抗体を試験する細胞傷害性アッセイでは、いずれのエフェクター機構も存在せず、しかも、アッセイはインビトロで行われる。これらのアッセイは、エフェクター細胞(NK、マクロファージ、またはT細胞)も、または補体も持たない。これらのアッセイは、一緒に添加されるものによって完全に定義されるので、各成分の特徴を解明することは可能である。本発明で使用されるアッセイは、標的細胞、培養体、および血清しか使用しない。標的細胞は、癌細胞または線維芽細胞なので、エフェクター機能を持たない。エフェクター機能特性を持つ外来細胞が無いので、この機能を持つ細胞要素は無い。媒体は、補体を含まず、細胞も全く含まない。標的細胞の増殖を支えるために使用される血清も、販売業者によって開示されるように、補体活性を持たない。さらに、我々の実験室において、我々自身が、使用した血清の中に補体活性の欠如を確認した。したがって、我々の実験は、抗体の作用は、完全に、Fabを仲介する抗原結合の作用によるという事実を実証する。好都合なことに、標的細胞は、Fcに対する受容体を持たないので、Fabだけを見て、これと相互作用を持つ。ハイブリドーマは、標的細胞によって試験される完全な免疫グロブリンを分泌するが、細胞と相互作用を持つ、免疫グロブリンの唯一の部分は、抗原結合断片として活動するFabである。
【0035】
ここに特許請求される抗体、および抗原結合断片に関して、本出願は、出願時、図1のデータによって実証される細胞性細胞傷害性を明らかにした。上に指摘したように、かつ、本明細書において客観的証拠によって確認されるように、この作用は、全く、Fabの腫瘍細胞に対する結合によるものであった。
【0036】
Fcによって招集されるエフェクター機構とは独立に、標的に対する抗体の直接的結合による細胞傷害性を仲介する抗体に関しては、従来技術において、十分な証拠がある。その、もっとも良い証拠は、補充細胞、または補体を持たない(そのような機構を公式的に排除するために)インビトロ実験である。この種の実験が、完全な免疫グロブリン、または、F(ab)′2断片のような抗原結合断片について実行されている。この種の実験において、抗体、または抗原結合断片は、いずれも癌治療市販薬として米国FDAによって承認された、抗Her2および抗EGFR抗体の場合と同様、標的細胞のアポトーシスを直接誘発する。
【0037】
抗体介在性癌殺作用の、もう一つの可能な機序は、細胞膜、およびその関連糖タンパクまたは糖脂質における各種化学的結合の加水分解を触媒するように機能する抗体、いわゆる触媒抗体の使用を通じて行われるものである。
【0038】
抗体介在性細胞殺作用に関してはさらに三つの機序がある。第1は、癌細胞の上に存在する候補抗原に対して免疫反応を生成するように生体を喚起するワクチンとしての抗体の使用である。第2は、増殖受容体を標的とし、それらの機能に干渉するか、または、受容体を下方調整して、該受容体の機能を効果的に欠落させる抗体の使用である。第3は、直接的細胞死を招く可能性のある、細胞表面同士の直接連結、例えば、TRAIL R1またはTRAIL R2などの死亡受容体、またはアルファVベータ3などのインテグリン分子同士の連結に対する抗体の作用である。
【0039】
癌薬剤の臨床的有用性は、患者にとって受容可能なリスクプロフィール下における該薬剤の利益によって量られる。癌治療では、一般に、生存率が、もっとも強く求められる利益であるが、生命の延長の外に、いくつかの広く認識される利益がある。治療が生存率に悪影響を及ぼすことがない限り(望ましい)他の利益として、症状の緩和、不快事象に対する保護、再発までの時間、すなわち無病の生存時間の延長、および進行までの時間の延長が挙げられる。これらの基準は一般的に受け容れられており、米国食品薬品局(F.D.A.)などの規制当局も、これらの利益を生み出す薬品を承認する(Hirschfeld et al. Crinical Reviews in Oncology/Hematology 42:137−143 2002)。これらの基準の外に、この種の利益を予告する他の終末点があることも十分認識されている。米国食品薬品局によって与えられる承認過程が加速されることは、患者利益を予測することがほぼ確かな代用物の存在を一部認めることになる。2003年末現在、この過程の下に16種の薬剤が承認され、この内四つは完全承認を受けた。すなわち、追跡実験でも、代用終末点によって予測された通りの直接的患者利益が実証された。固体腫瘍における薬剤作用を判定するための、一つの重要な終末点は、治療に対する反応を測定することによって腫瘍負荷を評価することである(Therasse et al. Journal of the National Cancer Institute 92(3):205−216 2000)。このような評価のための基準(RECIST基準)が、癌における国際的エキスパートグループである、固体腫瘍における反応評価作業グループによって制定されている。RECIST基準による客観的反応によって示され、適切なコントロールグループと比べて腫瘍負荷に対する作用が実証された薬剤は、最終的に、直接的患者利益をもたらす傾向を持つ。前臨床背景では、一般に、腫瘍負荷の評価および記録は、比較的直接的である。前臨床実験が、臨床背景に翻訳可能である限りにおいて、前臨床モデルにおいて生存の延長を実現した薬剤は、臨床的有用性がもっとも期待される。臨床治療に対し陽性反応をもたらす場合と似て、前臨床背景において腫瘍負荷を緩和する薬剤は、その病気に対し著明な直接的影響をもたらす可能性がある。生存時間の延長は、癌薬剤の治療においてもっとも求められる臨床結果ではあるが、臨床的有用性を持つ他の利益もあり、かつ、病気進行の遅延と相関する可能性がある腫瘍負荷の緩和、生存時間の延長、またはその両方が、直接的利益をもたらし、かつ、臨床作用を持つことは明瞭である(Eckhardt et al. 「開発治療法:標的化合物の臨床治験設計の成功と失敗(“Developmental Therapeutics: Successes and Failures of Clinical Trial Designs of Targeted Compounds”)」、ASCO Education Book, 39th Annual Meeting, 2003, pages 209−219)。
【0040】
本発明は、細胞傷害性アッセイおよび非確立動物モデルにおけるその作用によって特定される、AR58A314.1の開発および使用を記載する。本発明は、標的分子の上に存在する一エピトープまたは複数エピトープに対して特異的に結合し、さらに、悪性腫瘍細胞に対しては、ただし正常細胞に対してはそのようなことはなく、天然の抗体同様、インビトロの細胞傷害性を有し、さらに、天然の抗体同様、腫瘍増殖の抑制を直接仲介する試薬を記載する。さらに別な進歩として、これらの抗体を、抗癌抗体ライブラリーに含めることは、異なる抗癌抗体同士の適切な組み合わせを決定することによって、腫瘍を標的し、腫瘍の増殖および発達を抑制するのにもっとも効果的な抗体を発見することによって、異なる抗原マーカーを発現する腫瘍を標的する可能性を強化することがある。本発明はさらに、ヒト患者においても同様の抗癌性を示す可能性を有するという点でも癌治療における進歩を表す。さらに別な進歩として、これらの抗体を、抗癌抗体ライブラリーに含めることは、異なる抗癌抗体同士の適切な組み合わせを決定することによって、腫瘍を標的し、腫瘍の増殖および発達を抑制するのにもっとも効果的な抗体を発見することによって、異なる抗原マーカーを発現する腫瘍を標的する可能性を強化することがある。
【0041】
まとめると、本発明は、投与されると、哺乳動物においてAR58A314.1抗原を発現する癌の腫瘍負荷を下げることが可能な、治療剤標的としてのAR48A314.1抗原の使用を教示する。本発明はさらに、哺乳動物において該抗原を発現する癌の腫瘍負荷を下げるよう該抗原を標的するための、CDMAB(AR58A314.1)、およびその誘導体、および、その抗原結合性断片の使用を教示する。さらに、本発明は、診断、治療予測、および、本抗原を発現する腫瘍を抱える哺乳動物の予後判定にとって有用となり得る、癌様細胞におけるAR58A314.1抗原検出のための使用を教示する。
【0042】
したがって、ハイブリドーマ細胞、および、それに対して前記ハイブリドーマ細胞系統がコードされる、対応単離モノクロナール抗体、およびその抗原結合断片を分離するために、ある特定の個人、または一つ以上の特定の癌細胞系統から得られた癌様細胞に対して惹起される癌様疾患修飾性抗体(CDMAB)の生産法であって、CDMABが、癌細胞に対しては細胞毒性を持つが、同時に、非癌様細胞に対しては比較的毒性を持たない方法を利用することが本発明の目的である。
【0043】
癌様疾患修飾抗体、リガンド、および、その抗原結合性断片を教示することが、本発明のもう一つの目的である。
【0044】
その細胞傷害性が、抗体依存性細胞毒性によって仲介される、癌様疾患修飾抗体を生産することが、本発明のさらに別の目的である。
【0045】
その細胞傷害性が、補体依存性細胞毒性によって仲介される、癌様疾患修飾抗体を生産することが、本発明のさらに別の目的である。
【0046】
その細胞傷害性が、細胞の化学的結合の加水分解を触媒する、その能力の関数である癌様疾患修飾抗体を生産することが、本発明のさらに別の目的である。
【0047】
癌の診断、予後判定、および監視のための結合アッセイにおいて有用な、癌様疾患修飾抗体およびリガンドを生産することが、本発明のさらに別の目的である。
【0048】
本発明の、他の目的および利点は、本発明のいくつかの実施態様が、具体的説明と例示のために記載される、下記の説明から明らかとなろう。
【0049】
(図面の簡単な説明)
図1は、細胞系統MDA−MB−231(MB−231)、OVCAR−3、SW1116、Lovo、およびCCD−27skに対するハイブリドーマ上清のパーセント細胞傷害性および結合レベルを比較する。
図2は、癌および正常細胞系統に対する、AR58A314.1および抗EGFRコントロールの結合を表す。データを表にして、平均蛍光強度を、異性系コントロールを上回る増加倍数として示す。
図3は、いくつかの癌および非癌細胞系統を指向する、AR58A314.1および抗EGFR抗体の代表的FACSヒストグラムを含む。
図4は、予防的A549肺癌モデルにおける腫瘍増殖に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。垂直破線は、抗体投与期間を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
図5は、予防的A549肺癌モデルにおける体重に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
図6は、予防的BxPC−3すい臓癌モデルにおける腫瘍増殖に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。垂直破線は、抗体投与期間を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
図7は、予防的BxPC−3すい臓癌モデルにおける体重に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
図8は、ヒトの腫瘍および正常組織マイクロアレイに対する、AR58A314.1・対・陽性および陰性コントロールの比較である。
図9は、ヒトの組織マイクロアレイにおいて、AR58314.1(A)、または異性形コントロール抗体(B)によって得られた、肺腫瘍組織における結合パターン、および、AR58314.1(C)、または抗アクチン(D)によって得られた、肺正常組織における結合パターンを示す代表的顕微鏡写真。AR58A314.1は、腫瘍細胞に対しては陽性染色を、正常組織に対しては陰性染色を示した。倍率は200X。
図10は、ヒトの正常組織マイクロアレイに対する、AR58A314.1・対・陽性および陰性コントロールの比較である。
図11は、ヒトの正常組織マイクロアレイにおいて、AR58314.1(A)、または陽性コントロール抗体(B)によって得られた、正常心臓組織における結合パターン、および、AR58314.1(C)、または陽性コントロール抗体(D)によって得られた、正常すい臓組織における結合パターンを示す代表的顕微鏡写真。AR58A314.1は、正常組織に対して陰性染色を示した。倍率は200X。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
一般に、下記の単語または語句は、開示、説明、および特許請求項において使用される場合、表示の定義を有する。
【0051】
「抗体」という用語は、もっとも広い意味で使用され、特異的に、例えば、単一モノクロナール抗体(作用性、拮抗性、および中和性抗体、脱免疫化、マウス、キメラ、またはヒト化抗体を含む)、複数エピトープ特異性を有する抗体組成物、単一鎖抗体、免疫接合体、および抗体断片(下記参照)を含む。
【0052】
本明細書で用いる「モノクロナール抗体」という用語は、事実上均一な抗体の集団、すなわち、該集団を含む個々の抗体が、少量は存在してもよい、可能な天然の突然変異を除いては同一である集団から得られた抗体を指す。モノクロナール抗体は、特異性が高く、単一抗原部位を指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を含む、ポリクロナール抗体調製品とは違って、各モノクロナール抗体は、抗原上の単一決定基を指向する。その特異性の外に、モノクロナール抗体は、他の抗体によって汚染されることなく合成が可能である点で有利である。「モノクロナール」という形容詞は、事実上均一な抗体集団から得られたものであるという抗体の特徴を示すものであって、何らかの特定の方法による抗体の生産を要求するものと考えてはならない。例えば、本発明にしたがって使用されるモノクロナール抗体は、最初にKohler et al., Nature, 256:495(1975)によって記載されたハイブリドーマ(マウス、またはヒト)法によって製造されてもよいし、または、組み換え法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって製造されてもよい。「モノクロナール抗体」はまた、例えば、Clackson et al., Nature, 352:624−628(1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581−597(1991)に記載される技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0053】
「抗体断片」は、好ましくは抗原結合部位、またはその可変域を含む、生の、未加工抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、完全長未満の抗体、Fab、Fab′、F(ab′)2、およびFv断片;ダイアボディ;直線状抗体;抗体断片(単複)から形成される、単一鎖抗体分子;単一鎖抗体;単一ドメイン抗体分子、融合タンパク、組み換えタンパク、および多重特異性抗体が挙げられる。
【0054】
「未加工」抗体とは、抗原結合可変域の外、軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメインCH1、CH2、およびCH3を含む抗体である。定常ドメインは、生得配列定常ドメイン(例えば、ヒトの生得配列定常ドメイン)、または、そのアミノ酸配列変異体であってもよい。未加工抗体は、一つ以上のエフェクター機能を有することが好ましい。
【0055】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、未加工抗体を、様々の「クラス」に割り当てることが可能である。未加工抗体には、五つの大きなクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、それらの内のいくつかはさらに、「サブクラス」(異性形)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2に分割される。異なる抗体クラスに対応する重鎖ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。これらサブユニットの構造、および、様々のクラスの免疫グロブリンの三次元形態は周知である。
【0056】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(未加工配列Fc領域、またはアミノ酸配列変動Fc領域)の関与する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合;補体依存性細胞傷害性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞仲介細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体のもの、BCR)の下方調整などが挙げられる。
【0057】
「抗体依存性細胞仲介細胞傷害性」および”ADCC”とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が、標的細胞における結合抗体を認識し、次いで、該標的細胞の分解を誘発する、細胞仲介反応を指す。ADCCを仲介する主要細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現が、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457−92 (1991)の464ページの表3にまとめられている。対象分子のADCC活性を評価するために、例えば、米国特許第5,500,362号または5,821,337号に記載されるもののような、インビトロADCCアッセイを行ってもよい。このようなアッセイのために有用なエフェクター細胞としては、抹消造血細胞(PBMC)、およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。それとは別に、またはそれに加えてさらに、対象分子のADCC活性は、インビボで、例えば、動物モデルにおいて、例えば、Clynes et al. PNAS (USA) 95:652−656(1998)に開示されるように評価してもよい。
【0058】
「エフェクター細胞」とは、一つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球である。この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが好ましい。ADCCを仲介する、ヒトの白血球の例としては、抹消血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、および好中球が挙げられるが、PBMCおよびNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、その天然供給源から、例えば、本明細書に記載するように血液またはPBMCから単離されてもよい。
【0059】
抗体のFc領域に結合する受容体を記述するのに、「Fc受容体」または”FcR”という用語を用いる。好ましいFcRは、ヒトの、生得配列FcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体、および、対立遺伝子変異種、およびこれらの受容体の別様のスプライス形を含む受容体が挙げられる。FcγRII受容体は、FcγRIIA受容体(「活性受容体」)およびFcγRIIB受容体(「抑制受容体」)を含む。これらは、同様のアミノ酸配列を有するが、主に、その細胞原形質ドメインにおいて異なる。活性受容体FcγRIIAは、その細胞原形質膜jドメインに免疫受容体チロシン系活性モチーフ(ITAM)を含む。抑制性受容体FcγRIIBは、その細胞原形質膜ドメインに免疫受容体チロシン系制御モチーフ(ITIM)を含む。(M. in Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203−234(1997)の総覧を参照されたい)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457−92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25−34 (1994);および de Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330−41(1995)において総覧される。将来特定されるべきものも含めた、他の、FcRも、本明細書の”FcR”という用語の中に包含される。この用語はさらに、母親のIgGの胎児への転送に与る(Guyer et al., J. Immunol. 117:587(1976)、および Kim et al., Eur. J. Immunol. 24:2429(1994))新生児受容体FcRnを含む。
【0060】
「補体依存性細胞傷害性」または”CDC”とは、ある分子が、補体の存在下に標的を分解する能力を指す。補体活性経路は、補体系の第1成分(C1q)の、認識抗原と複合体を形成する分子(例えば、抗体)に対する結合によって起動される。補体活性化を評価するには、例えば、Gazzano−Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163(1996)に記載されるものと同様のCDCアッセイを行ってもよい。
【0061】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分が、配列において抗体間で大きく異なるという事実を指し、各特定の抗体について、その特定の抗原に対する結合および特異性に関して使用される。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメインの全体に亘って均一には分布していない。可変性は、軽鎖および重鎖可変ドメインの超可変域と呼ばれる三つのセグメントに集中する。可変ドメインの、比較的高度に保存される部分は、枠組み構造領域(FR)と呼ばれる。生得の、重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、主にβシート形態を取る四つのFRを含み、これらは、該シート構造を接続し、ある場合には、その一部を形成するループを形成する三つの超可変域によって接続される。各鎖における超可変域は、FRによってごく接近して保持され、他方鎖の超可変域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に与る(Kabat et al., 「免疫学的に興味深いタンパクの配列(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”)」、5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bestheda, Md. (1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原に対する結合には直接には関与しないが、様々のエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞仲介細胞傷害性(ADCC)における抗体の参加などを示す。
【0062】
本明細書で用いる場合、「超可変域」という用語は、抗原結合に与る、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変域は、一般に、「相補性決定域」または”CDR”のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインにおける残基24−34(L1)、50−55(L2)、および89−97(L3)、および、重鎖可変ドミンにおける残基31−35(H1)、50−65(H2)、および95−102(H3);Kabat et al., 「免疫学的に興味深いタンパクの配列(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”)」、5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bestheda, Md. (1991)、および/または、「超可変ループ」の残基(軽鎖可変域ドメインにおける残基2632(L1)、50−52(L2)、および91−96(L3)、および重鎖可変域ドメインにおける残基26−32(H1)、53−55(H2)、および96−101(H3);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901−917(1987))を含む。「枠組み構造領域」または”FR”の残基は、本明細書に定義する超可変域残基以外の、可変ドメイン残基である。抗体をパパイン消化することによって、それぞれが、単一の抗原結合部位を有する”Fab”断片と呼ばれる、二つの、同一抗原結合断片、および、残余の”Fc”断片が生産される。後者の命名は、それが容易に結晶化(crystallize)する能力を持つことを反映する。ペプシン処理によって、二つの抗原結合部位を有し、依然として抗原に交差連結することが可能なF(ab′)2断片が生成される。
【0063】
“Fv”は、一つの、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む、最小の抗体断片である。この領域は、緊密に、非共有的に連結された、1本の重鎖可変ドメインおよび1本の軽鎖可変ドメインのダイマーから成る。この形態においてこそ、各可変ドメインの三つの超可変域は相互作用を持ち、該VH−VLダイマーの表面上に抗原結合部位を定める。全体として、この六つの超可変域が、抗体に対し抗原結合の特異性を付与する。しかしながら、単一可変ドメイン(すなわち、抗原に対して特異的な超可変域を三つしか含まない、Fvの半分)ですらも、全体結合部位よりも親和性は低いが、抗原を認識し、結合する能力を持つ。Fab断片はさらに、軽鎖の定常ドメインと、重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含む。Fab′は、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端において、抗体ヒンジ領域の一つ以上のシステインを含む数個の残基を付加する点で、Fabとは異なる。Fab′−SHは、定常ドメインのシステイン残基(単複)が、少なくとも一つの遊離チオール基を担持する、Fab′に対する本明細書の表示である。F(ab′)2抗体断片は、もともと、その間にヒンジシステインを有するFab′ペアとして生産された。抗体断片同士の、他の化学的結合も既知である。
【0064】
任意の脊椎動物から得られる抗体の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、二つのはっきりと異なるタイプの内の一つに割り当てることが可能である。
【0065】
「単一鎖Fv」または”scFv”抗体断片は、単一のポリペプチド鎖として現れる、抗体のVHおよびVLドメインを含む。このFvポリペプチドはさらに、VHおよびVLドメインの間に、このscFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能とするように、ポリペプチドリンカーを含むことが好ましい。scFvに関する総覧については、Plueckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer−Verlag, New York, pp. 269−315(1994)を参照されたい。
【0066】
「ダイアボディ」という用語は、二つの抗原結合部位を有する、小型の抗体断片であって、同じポリペプチド鎖(VHおよびVL)中に、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続する重鎖可変ドメイン(VH)を含む断片を指す。同じ鎖の二つのドメイン間にペア形成を許さないほど短いリンカーを用いることで、これらのドメインは、もう一つの鎖の相補ドメインと形成し、二つの抗原結合部位を形成することを強制される。ダイアボディは、さらに徹底的に、例えば、欧州特許第404,097号;国際特許第93/11161号、およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444−6448 (1993)に記載される。
【0067】
「トリアボディ」または「三価トリマー」という用語は、三つの単一鎖抗体の組み合わせを指す。トリアボディは、VLまたはVHドメインのアミノ酸末端によって、すなわち、リンカー配列を全く含まずに構築される。トリアボディは、ポリペプチドが頭から尾へ環状に配されて成る、三つのFv頭部を有する。トリアボディの可能な立体配座は、互いに120度の角度で隔てられて平面内に配される三つの結合部位を含む平面である。トリアボディは、単一特異性、二重特異性、または三重特異性であることが可能である。
【0068】
「単離」抗体とは、その天然環境において特定され、その天然環境の成分から分離および/または回収される抗体である。その天然環境の汚染成分とは、該抗体の診断的または治療的使用に干渉することが予想される物質であって、酵素、ホルモン、およびその他の、タンパク様、または非タンパク様溶質を含んでもよい。単離抗体は、組み換え細胞中に滞在する抗体を含む。なぜなら、抗体の天然環境の少なくとも一成分は存在しないのであるから。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも一つの精製工程によって調製される。
【0069】
対象抗原に「結合する」抗体とは、十分な親和性をもって該抗原に結合することが可能であり、そのため、該抗原を発現する細胞に対する標的行動において治療剤または診断剤として有用である抗体である。抗体が、対象抗原に結合するものである場合、該抗体は、通常、他の受容体とは対照的に、対象抗原に対し優先的に結合し、かつ、非特異的Fc接触などの偶発的結合、または、他の抗原に共通の、翻訳後修飾による結合を含まないが、他のタンパクと著明な交差反応をしないものであってもよい。対象抗原に結合する抗体を検出するための方法は、従来技術で周知であり、例えば、FACS、細胞ELISA、およびウェスタンブロットなどのアッセイ、ただしこれらに限定されないが、を含むことが可能である。
【0070】
本明細書で用いる「細胞」、「細胞系統」、および「細胞培養体」という表現は、相互交換的に使用されるが、これらの表示は全て子孫を含む。全ての子孫は、DNA内容において、故意の、または不慮の突然変異によって正確に同じであるとは必ずしも限らないことが理解される。元の形質転換細胞においてスクリーニング選択されるたものと同じ機能または生物学的活性を有する、突然変異子孫は含まれる。区別的表示が意図される場合は、文脈から明白である。
【0071】
「治療または治療する」とは、その目的が、病的状態または障害を阻止すること、または遅延(低減)することである、治療処置および予防的または防止的策の両方を指す。治療を要する人々としては、すでにその障害を抱える人々の外、その障害を持ちやすい人々、またはその障害を予防しなければならない人々が挙げられる。したがって、本発明において治療しなければならない哺乳動物は、障害を持つと診断されてもよいし、または、その障害にかかり易いか、または感受性を持っていてもよい。
【0072】
「癌」または「癌様」という用語は、通常、無秩序な細胞増殖または死によって特徴づけられる、哺乳類における生理状態を指すか、または記述する。癌の例としては、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病およびリンパ系悪性腫瘍が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。このような癌のさらに具体的な例としては、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮の扁平細胞癌)、小細胞肺癌を含む肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃小腸癌を含む胃癌、すい臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーム、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓または腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、および頭部および頸部癌が挙げられる。
【0073】
「化学療法剤」とは、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロフォスファミド(CYTOXAN(登録商標))など;スルフォン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなど;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなど;エチレンイミンおよびメチラミン、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンフォスフォルアミド、トリエチレンフォスフォルアミド、およびトリメチロロメラミンを含む;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロールナファジン、クロロフォスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸、メルファラン、ノベンビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなど;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなど;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、プロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシンなど;抗体謝剤、例えば、メトトレキセート、および5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類縁体、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセートなど;ブリン類縁体、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど;ピリミジン類縁体、例えば、アンシタビン、アザンチジン、6−アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FUなど;アンドロゲン、例えば、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオン酸塩、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど;抗副腎ホルモン、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど;葉酸補充剤、例えば、フロリン酸など;アセグラトン;アルドフォスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;エリプチニウム酢酸塩;エトグリシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポフォフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(“Ara−C”);シクロフォスファミド;チオプテア;タキサン、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Meyers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Aventis, Rhone−Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類縁体、例えば、シスプラチン、およびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポキシド(VP−16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;および、上記の内の、任意の化学療法剤の製薬学的に受容可能な塩、酸、または誘導体が挙げられる。この定義の中にさらに含まれるものは、腫瘍に対するホルモンの作用を調整または抑制するように活動する抗ホルモン剤、例えば、抗エストロゲン、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ抑制性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston);および、抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、レウプロリド、およびゴセレリン;および、上記の内の、任意の抗ホルモン剤の製薬学的に受容可能な塩、酸、または誘導体が挙げられる。
【0074】
治療のための「哺乳動物」とは、哺乳動物として分類される任意の動物、例えば、ヒト、マウス、SCIDまたはヌードマウス、またはマウスの純系、家庭内飼養および農場動物、および動物園、スポーツ、またはペット動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む動物を指す。本発明では、哺乳動物はヒトであることが好ましい。
【0075】
「オリゴヌクレオチド」とは、既知の方法(例えば、1988年5月4日公刊の欧州特許第266,032号に記載されるような固相技術を用いた、フォスフォトリエステル、亜リン酸塩、またはフォスフォールアミダイト化学、または、Froehler et al., Nucl. Acids Res., 14:5399−5407, 1986によって記載されるデオキシヌクレオシドH−フォスフォネート中間体を介して)によって化学的に合成される、短鎖長の、1本鎖または2本鎖ポリデオキシヌクレオチドである。これらは次にポリアクリルアミドゲルにて精製される。
【0076】
本発明によれば、非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリンの、「ヒト化」および/または「キメラ」形態とは、特異的キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖または断片(例えば、抗体のFv、Fab、Fab′、F(ab′)2、またはその他の抗原結合性配列)であって、元の抗体と比べ、ヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、またはヒト抗ヒト抗体(HAHA)反応の低下をもたらすものであり、所望の作用を再現するのに必要な、前記非ヒト免疫グロブリン由来の必要部分(例えば、CDR(単複)、抗原結合領域(単複)、可変ドメイン(単複)など)を含むが、同時に他方では、前記非ヒト免疫グロブリンに匹敵する結合特性を保持する、前記キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖またはその断片である。その大部分において、ヒト化抗体は、ヒトの免疫グロブリン(レシピエント抗体)であるが、該レシピエント抗体の相補性決定域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、および容量を有する、非ヒト動物種、例えば、マウス、ラット、またはウサギ(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換される、ヒト免疫グロブリンである。ある例では、ヒトの免疫グロブリンのFv枠組み構造領域(FR)残基は、対応する、非ヒトFR残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、輸入CDRまたはFR配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の機能をさらに洗練し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つの、通常は二つの可変ドメインの事実上全てを含むが、該可変ドメインにおいて、CDR領域の全て、または事実上全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつ、FR残基の全て、または事実上全てが、ヒト免疫グロブリンの共通配列のものに対応する。ヒト化抗体はさらに、免疫グロブリンの定常域(Fc)、通常、ヒトの免疫グロブリンの定常域の少なくとも一部を含む。
【0077】
「脱免疫化」抗体とは、ある任意の動物種に対して非免疫原性、または比較的低い免疫性を有する、免疫グロブリンである。脱免疫化は、抗体に対して構造的変化を加えることによって実現される。当業者に既知の、いずれの脱免疫化技術であっても採用が可能である。抗体を脱免疫化するための、一つの好適な技術が、例えば、2000年6月15日公刊の国際特許第00/34317号に記載される。
【0078】
「アポトーシス」を誘発する抗体とは、どのようなものでもよい、何らかの手段によって、例えば、ただしこれらに限定されないが、アネキシンVの結合、カスパーゼ活性、DNAの断片化、細胞縮小、小胞体の拡張、細胞の断片化、および/または膜小胞(アポトーシスボディと呼ばれる)の形成によってプログラム細胞死を誘発する抗体である。
【0079】
本明細書で用いる「抗体誘発による細胞傷害性」とは、IDACにおいてアクセス番号141205−02として寄託されるハイブリドーマによって生産される、ハイブリドーマ上清、または抗体から得られる細胞傷害性作用を意味すると理解され、その作用は、必ずしも結合の程度とは関連しない。
【0080】
本明細書を通じて、ハイブリドーマ細胞系統、および、該ハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体は、それぞれ交換的に、私的名称AR58A314.2、または、寄託名IDAC 141205−02と呼ばれる。
【0081】
本明細書で用いる「抗体−リガンド」とは、標的抗原の少なくとも一エピトープに対し結合特異性を示し、未加工抗体分子、抗体断片、および、少なくとも一つの抗原結合域、またはその一部(すなわち、抗体分子の可変部分)を有する任意の分子であってもよい成分であって、例えば、Fv分子、Fab分子、Fab′分子、F(ab′)2分子、二重特異性抗体、融合タンパク、または、任意の遺伝学的に加工された分子であって、IDAC 141205−02(IDAC 141205−02抗原)のように表示されるハイブリドーマ細胞系統によって生産される単離モノクロナール抗体によって結合される抗原の少なくとも一つのエピトープを特異的に認識し、結合する分子であってもよい。
【0082】
本明細書で用いる「癌様疾患修飾性抗体」(CDMAB)とは、患者にとって有益なやり方で、例えば、腫瘍負荷を下げるか、または、腫瘍を抱える個人の生存時間を延長することによって癌様疾患プロセスを修飾するモノクロナール抗体、および、その抗体−リガンドを指す。
【0083】
「CDMAB関連結合剤」とは、そのもっとも広い意味では、少なくとも一つのCDMAB標的エピトープに競合的に結合する、任意の形態の、ヒトまたは非ヒト抗体、抗体断片、抗体リガンドなどを含むと、ただしこれらに限定されないが、理解される。
【0084】
「競合的結合分子」とは、少なくとも一つのCDMAB標的エピトープに対し結合親和性を有する、任意の形態の、ヒトまたは非ヒト抗体、抗体断片、抗体リガンドなどを含むと理解される。
【0085】
治療される腫瘍としては、一次腫瘍および転移腫瘍の外、難治性腫瘍が挙げられる。難治性腫瘍としては、化学療法剤だけ、抗体だけ、放射線だけ、またはそれらの組み合わせによる治療に対し、全く反応しないか、または耐性を持つ腫瘍が挙げられる。難治性腫瘍はさらに、上記の製剤による治療によって抑制されるように見えるが、治療を停止した後、最大5年、場合によって最大10年以上で再発する腫瘍を含む。
【0086】
治療することが可能な腫瘍は、血管形成しないか、まだ血管形成しない腫瘍の外、血管形成する腫瘍も含む。したがって、治療が可能な固体腫瘍の例としては、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、すい臓癌、グリオーマおよびリンパ腫が挙げられる。そのような腫瘍のいくつかの例として、類表皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば、頭部および頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、小細胞および非小細胞肺腫瘍を含む肺腫瘍、すい臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、および肝臓腫瘍が挙げられる。その他の例としては、カポジ肉腫、CNS新生物、神経芽細胞腫、毛細管血管芽細胞腫、髄膜腫および脳転移、メラノーマ、消化管および腎臓癌および肉腫、横紋筋肉腫、グリア芽細胞腫、好ましくは多型グリア芽細胞腫、および平滑筋肉腫が挙げられる。
【0087】
本明細書で用いる「抗原結合領域」は、標的抗原を認識する分子の一部を意味する。
【0088】
本明細書で用いる「競合的に抑制する」とは、IDAC 141205−02として表示される、ハイブリドーマ細胞系統によって生産されるモノクロナール抗体(IDAC 121205−02抗体)が指向する決定部位に対し、通例の相反性抗体競合アッセイ(Belanger L., Sylvestre C. and Dufour D. (1973), 「競合およびサンドイッチ法によるアルファ胎児タンパクの酵素連結免疫アッセイ(“Enzyme linked immunoassay for alpha fetoprotein by competitive and sandwich procedures”)」 Clinica Chimica Acta 48, 15)を用いて認識および結合することが可能であることを意味する。
【0089】
本明細書の用いる「標的抗原」とは、IDAC 141205−02抗原か、またはその部分である。
【0090】
本明細書で用いる「免疫接合体」とは、細胞トキシン、放射能剤、酵素、トキシン、抗腫瘍剤、または治療剤に化学的または生物学的に連結される、任意の分子またはCDMAB、例えば、抗体である。抗体またはCDMABは、細胞トキシン、放射能剤、抗腫瘍剤、または治療剤に対し、その標的に結合可能である限り、任意の位置に連結されてよい。免疫接合体の例としては、抗体トキシン化学的接合体、および抗体トキシン融合タンパクが挙げられる。
【0091】
抗腫瘍剤として使用するのに好適な放射能剤は、当業者には既知である。例えば、1311または221Atが使用される。これらの放射性同位元素は、従来技術を用いて抗体に取りつけられる(例えば、Pedley et al., Br. J. Cancer 68, 69−73 (1993))。それとは別に、抗体に取りつけられる抗腫瘍剤は、薬剤前駆体を活性化する酵素である。薬剤前駆体は投与され、腫瘍部位に達するまで不活性形として留まり、一旦抗体複合体が投与されると、該部位において、細胞トキシン形に変換されるようになっていてもよい。実際には、抗体−酵素接合体が患者に投与され、治療される組織領域に局在させられる。次に、薬剤前駆体が同患者に投与され、それによって、治療される該組織領域において細胞毒性剤への変換が起こる。それとは別に、抗体に接合される抗腫瘍剤は、サイトカイン、例えば、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、または腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)である。この抗体は、サイトカインを腫瘍に向けて照準し、そのため、サイトカインは、他の組織に影響を及ぼすことなく、腫瘍に対する損傷、または腫瘍の破壊を仲介する。サイトカインは、組み換えDNA技術を用い、DNAレベルにおいて抗体に融合される。インターフェロンも使用してよい。
【0092】
本明細書で用いられる「融合タンパク」とは、抗原結合領域が、生物学的活性分子、例えば、トキシン、酵素、蛍光タンパク、発光マーカー、ポリペプチドタグ、サイトカイン、インターフェロン、標的または受容体成分、またはタンパク剤に接合される、任意のキメラタンパクを意味する。
【0093】
本発明はさらに、標的またはリポーター成分が連結される、本発明のCDMABを考慮の対象とする。標的成分は、結合ペアの第1メンバーである。例えば、抗腫瘍剤が、このペアの第2メンバーに接合され、そのため、抗原結合タンパクが結合される部位を指向する。このような結合ペアの一般的例は、アビジンおよびビオチンである。好ましい実施態様では、ビオチンが、本発明のCDMABの標的抗原に接合され、そうすることによって、アビジンまたはストレプタビジンに接合される抗腫瘍剤、または他の成分のための標的を提供する。それとは別に、ビオチンまたは別のそのような成分が、本発明のCDMABの標的抗原に連結され、例えば、診断システムのリポーターとして使用される。該システムでは、検出可能なシグナルの生成因子がアビジンまたはストレプトアビジンに接合される。
【0094】
検出可能なシグナル生成因子は、診断のため、インビボおよびインビトロにおいて有用である。シグナル生成因子は、外的手段、通常は、電磁放射を測定することによって検出可能な測定可能信号を生成する。大抵の場合、シグナル生成因子は、酵素または発色団であるか、または、蛍光、燐光、または化学的発光によって光を発射する。発色団は、紫外域または可視域において光を吸収する染料を含み、酵素触媒反応の基質か、または分解産物であることが可能である。
【0095】
さらに、本発明の範囲内に含められるものは、従来技術で周知の調査法または診断法のための、インビボおよびインビトロにおける本CDMABの使用である。本発明において考慮の対象となる診断法を実行するために、本発明はさらに、本発明のCDMABを含むキットを含んでもよい。このキットは、個人の細胞における、CDMAB標的抗原の過剰発現を検出することによって、ある種の癌に対するリスクを有する個人を特定するのに有用である。
【0096】
診断用アッセイキット
腫瘍の存在を決定するための診断アッセイキットの形において本発明のCDMABを利用することは考慮の対象となる。腫瘍は、一般に、患者において、該患者から得た生物学的サンプル、例えば、血液、血清、尿、および/または、腫瘍バイオプシーにおける、一つ以上の腫瘍特異的抗原、例えば、タンパク、および/または、そのようなタンパクをコードするポリヌクレオチドの存在に基づいて検出される。
【0097】
タンパクは、ある特定の腫瘍、例えば、結腸、乳房、肺、または前立腺腫瘍の有無を示すマーカーとして機能する。さらに、抗原は、他の癌性腫瘍の検出のために有用であることが考えられる。本発明のCDMABから構成される結合剤、またはCDMAB関連結合剤から成る診断アッセイキットを含めることによって、生物サンプルにおいて該結合剤に結合する抗原のレベルを検出することが可能になる。さらに、癌の有無を示す、腫瘍タンパクをコードするmRNAレベルの検出にはポリヌクレオチドプライマーおよびプローブを使用してもよい。結合アッセイが診断的であるために、正常組織に存在するレベルを参照して、抗原の統計的有意レベルと相関させ、結合の認識を癌様腫瘍の存在に関して明確に診断的とするようにデータが生成される。当業者には知られるように、1サンプルにおいてポリペプチドマーカーを検出するのに1結合剤を使用するに当たって、本発明の診断アッセイでは複数の形式が有用であると考えられる。例えば、Harlow and Lane, 「抗体:実験室マニュアル(“Antibodies: A Laboratory Manual”)」、Cold Spring Harbor Laboratory, 1988に具体的に説明されている。さらに考慮の対象とされるのは、前述の診断アッセイ形式の任意の、かつ全ての併用、組み合わせ、または修飾である。
【0098】
ある患者における癌の有無は、通常、(a)患者から得られた生物サンプルを、結合剤に接触させること;(b)該サンプルにおいて、該結合剤に結合するポリペプチドのレベルを検出すること;(c)ポリペプチドのレベルを、指定のカットオフ値と比較すること、によって決められる。
【0099】
例示の実施態様では、アッセイが、固相支持体の上に固定されるCDMAB系結合剤を使用し、それによって、ポリペプチドに結合させ、サンプルの残余物から該ポリペプチドを除去する使用を含むことが考慮の対象とされる。次に、リポーター基を含み、結合剤/ポリペプチド複合体に特異的に結合する検出試薬を用いて、この結合ポリペプチドを検出してもよい。例示の検出試薬としては、該ポリペプチドに特異的に結合するCDMAB系結合剤、または、該結合剤に特異的に結合する抗体または他の因子、例えば、抗免疫グロブリン、タンパクG、タンパクA、またはレクチンが挙げられる。別の実施態様では、競合アッセイの利用が考慮される。すなわち、ポリペプチドはリポーター基によって標識され、結合剤とサンプルのインキュベーション後に、固定結合剤に結合させられる。サンプルの、固定結合剤に対する反応性に応じて、サンプルの成分は、標識ポリペプチドの、結合剤に対する結合を抑制する。このアッセイにおいて使用するのに好適なポリペプチドとしては、該結合剤が、それに対して結合親和性を有する、完全長腫瘍特異的タンパクおよび/またはその部分が挙げられる。
【0100】
この診断キットには、タンパクが付着されてもよいと、当業者に周知の任意の材料の形式を取ってもよい固相支持体が支給される。好適な例として、マイクロタイタープレートの試験ウェル、または、ニトロセルロースまたは適切な膜が挙げられる。それとは別に、支持体は、ビーズまたはディスク、例えば、ガラス、ファイバーガラス、ラテックス、またはプラスチック材料、例えば、ポリスチレンまたはポリ塩化ビニールであってもよい。支持体はまた、磁気粒子、または光ファイバーセンサー、例えば、米国特許第5,359,681号に開示されるようなものであってもよい。
【0101】
結合剤は、特許および科学文献に豊富に記載される、当業者に既知の様々の技術を用いて、固相支持体の上に固定される。「固定」という用語は、吸着のような非共有的連結、および、本発明の背景では、結合剤と、支持体の官能基との間の直接的結合のような共有的付着の両方を指すが、あるいは、架橋剤による連結であってもよい。ある好ましい実施態様では、ただしこれに限定されないが、マイクロタイタープレートにおけるウェル、または膜に対する吸着による固定が好ましい。吸着は、適切なバッファーに溶解させた結合剤を、固相支持体に適切な量の時間接触させることによって実現してもよい。接触時間は、温度に応じて変動してよいが、一般に、約1時間と約1日の間の範囲にある。
【0102】
固相支持体に対する、結合剤の共有的付着は、通常、先ず、支持体を、結合剤における、官能基の両方と反応する二重官能性試薬、例えば、ヒドロキシル基またはアミノ基と反応させることによって実現されると考えられる。例えば、結合剤は、適切なポリマーコーティングを有する支持体に対し、ベンゾキノンを用いて、または、支持体のアルデヒド基を、結合パートナーのアミンおよび活性水素によって縮合することによって共有的に付着されてもよい(例えば、Pierce Immunotechnology Catalog and Handbook, 1991, at A12 A13を参照されたい)。
【0103】
さらに、診断アッセイキットが、二抗体サンドイッチアッセイの形を取ることも考慮の対象とされる。このアッセイは、先ず、抗体を、例えば、固相支持体、通常マイクロタイタープレートのウェル上に固定された、本開示のCDMABを、サンプルと接触させ、サンプル中のポリペプチドを、固定抗体に結合させることによって実行されてもよい。次に、未結合サンプルを、固定されたポリペプチド−抗体複合体から除去し、リポーター基を含む検出試薬(好ましくは、該ポリペプチドの異なる部位に結合することが可能な第2抗体)が添加される。次に、固相支持体に対し結合したまま留まる検出試薬の量が、特異的リポーター基に対して適切な方法によって定量される。
【0104】
ある特異的実施態様では、一旦抗体が前述のように支持体の上に固定されたならば、支持体上の、残余のタンパク結合部位は、当業者に既知の任意のブロッキング剤、例えば、ウシ血清アルブミン、またはTween 20(登録商標)(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)の使用によってブロックされる。次に、固定抗体は、サンプルとインキュベートされ、ポリペプチドが、この抗体に結合させられる。サンプルは、インキュベーション前に、適切な希釈剤、例えば、リン酸バッファー生理的食塩水(PBS)によって希釈することが可能である。一般に、適切な接触時間(すなわち、インキュベーション時間)は、特異的に選択された腫瘍を有する個人から得られたサンプルにおいて、ポリペプチドの存在を検出するのに十分な期間に相当するように選ばれることが考えられる。好ましくは、接触時間は、結合および未結合ポリペプチド間の平衡時に実現される結合レベルの少なくとも約95パーセントを実現するのに十分な長さである。当業者であれば、一定期間において起こる結合レベルを定量することによって、平衡を実現するのに必要な時間は簡単に決めることが可能であることを認識されるであろう。
【0105】
次に、固相支持体を適切なバッファーで洗浄することによって、未結合サンプルを除去することが考慮の対象となる。次に、この固相支持体に対し、リポーター基を含む第2抗体を加えることが考えられる。次に、検出試薬と、固定抗体−ポリペプチド複合体とのインキュベーションが、結合ポリペプチドを検出するのに十分な程長い時間行われることが考えられる。次いで、未結合検出試薬が除去され、結合検出試薬を、リポーター基を用いて検出することが考えられる。リポーター基を検出するために用いられる方法は、選択されたリポーター基の種類に対し必ず特異的である、例えば、放射性基に対しては、シンチレーションカウンティング法またはオートラジオグラフ法が一般的に適切である。染料、発光基、および蛍光基を検出するには、分光光度法を使用してもよい。ビオチンは、異なるリポーター基(一般に、放射性基または蛍光基、または酵素)に結合させたアビジンを用いて検出してもよい。酵素リポーター基は、一般に、基質を添加し、次いで、その反応産物を分光光度分析、またはその他の分析を使用することによって検出してもよい。
【0106】
癌、例えば、前立腺癌の有無を決定するために本発明の診断アッセイキットを利用するには、一般に、固相支持体に結合した状態で留まるリポーター基から検出されるシグナルを、指定のカットオフ値に対応するシグナルと比較することが考えられる。例えば、癌検出のための例示のカットオフ値は、固定抗体を、癌を持たない患者から得られたサンプルとインキュベートした場合に得られる、シグナルの平均値であってもよい。一般に、指定のカットオフ値よりも約3標準偏差分高いシグナルを発生するサンプルは、その癌に関して陽性と見なしてもよい。別の実施態様では、カットオフ値は、Sackett et al., 「臨床病因学、臨床医学の基礎科学(“Clinical Epidemiology. A. Basic Science for Clinical Medicine”)」、Little Brown and Co., 1985, p. 106−7の方法にしたがって、Receiver Operator Curveを用いて決めてもよいと考えられる。このような実施態様では、カットオフ値は、診断試験結果の各可能なカットオフ値に対応する、真の陽性率(すなわち、感度)および擬似陽性率(100パーセント特異性)ペアのプロットから決めることが可能であると考えられる。左上隅にもっとも近いカットオフ値(すなわち、もっとも大きな面積を囲む値)が、もっとも正確なカットオフ値であり、この方法によって決定されるカットオフ値よりも高いシグナルを発生するサンプルは、陽性と見なしてよい。それとは別に、カットオフ値は、擬似陽性値を最小とするために、プロットにそって左に、あるいは、擬似陰性率を最大にするために右に移動させてもよい。一般に、この方法によって決められたカットオフ値よりも高いシグナルを発生するサンプルは、癌に対して陽性と考えられる。
【0107】
本キットによって可能とされる診断アッセイは、結合剤が、ニトロセルロースなどの膜の上に固定される、流通形式またはストリップ試験形式で実行される。流通試験では、サンプル内のポリペプチドは、サンプルが膜を通過する際、固定結合剤に結合する。次に、第2の、標識結合剤は、該第2結合剤を含む溶液が膜を流れる際、結合剤−ポリペプチド複合体に結合する。次に、結合した第2結合剤の検出を、前述のように行ってもよい。ストリップ試験方式では、結合剤が結合される膜の一端が、サンプルを含む溶液に浸される。サンプルは、膜にそって移動し、第2結合剤を含む領域を通過し、固定結合剤の区域に達する。固定抗体の区域における第2結合剤の濃度は、癌の存在を示す。視覚的に読み取ることが可能な、結合部位における線などのパターンの発生は、陽性試験であることを示す。このようなパターンの欠如は、陰性結果を示す。一般に、膜に固定される結合剤の量は、前述の方式にしたがって、2抗体サンドイッチアッセイにおいて陽性シグナルを発生するのに十分なレベルのポリペプチドを、生物サンプルが含む場合に、視認可能なパターンを発生するように選ばれる。本診断アッセイにおいて使用するのに好ましい結合剤は、本明細書に開示される抗体、その、抗原結合性断片、および、本明細書に記載される任意の、CDMAB関連結合剤である。膜の上に固定される抗体の量は、診断アッセイを実現するのに有効である限り、任意の量であってよいが、約25ナノグラムから約1マイクログラムの範囲にあってもよい。通常、このような試験は、ごく微量の生物サンプルについて実行されてよい。
【0108】
さらに、本発明のCDMABは、その標的抗原を特定する能力に基づいて、研究のために実験室で使用されてもよい。
【0109】
本明細書に記載される本発明がさらに十分に理解されるように、下記の説明が記述される。
【0110】
本発明は、IDAC 141205−02抗原を特異的に認識し、結合するCDMAB(すなわち、IDAC 141205−02 CDMAB)提供する。
【0111】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のCDMABは、それが、ハイブリドーマIDAC 141205−02によって生産される単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する免疫特異的結合を競合的に抑制する抗原結合領域を有する限り、任意の形を取ってよい。したがって、IDAC 141205−02抗体と同じ結合特異性を有するものであれば、いずれの組み換えタンパクであっても(例えば、抗体が、リンフォカインまたは腫瘍増殖抑制因子などの第2タンパクと結合される融合タンパク)、本発明の範囲に入る。
【0112】
本発明の一実施態様では、CDMABは、IDAC 141205−02抗体である。
【0113】
別の実施態様では、CDMABは、Fv分子(例えば、1本鎖Fv分子)、Fab分子、Fab′分子、F(ab′)2分子、融合タンパク、二重特異性抗体、ヘテロ抗体、または、IDAC 141205−02抗体の抗原結合領域を持つ、任意の組み換え分子であってもよい抗原結合性断片である。本発明のCDMABは、IDAC 141205−02モノクロナール抗体が指向するエピトープを指向する。
【0114】
本発明のCDMABは、誘導分子を生産するために、分子内のアミノ酸修飾によって修飾してもよい。化学的修飾も可能である。直接的突然変異、アフィニティ成熟法、ファジージディスプレイ、またはチェインシャッフリングによる修飾も可能である。
【0115】
親和性および特異性は、CDRおよび/またはフェニルアラニントリプトファン(FW)残基を突然変異させ、所望の特徴を持つ抗原結合部位をスクリーニングすることによって修飾、または改善することが可能である(例えば、Yang et al., J. Mol. Biol., (1995)254:392−403)。一つの方法は、個々の残基、または残基の組み合わせをランダム化し、そうすることによって、その他の点では同じ抗原結合部位を持つ集団において、特定の位置に2から20個のアミノ酸から成るサブセットが見られるようにする。それとは別に、誤差し易いPCR法によって、一定範囲の残基の上に突然変異を誘発することも可能である(例えば、Hawkins et al., J. Mol. Biol., (1992) 226:889−96)。別の例では、重鎖および軽鎖可変域遺伝子を含むファージディスプレイベクターを、大腸菌の突然変異株において継代させることも可能である(例えば、Low et al., J. Mol. Biol., (1996) 250:359−68)。これらの突然変異発生法は、当業者には既知の多くの方法の例示である。
【0116】
本発明の抗体の親和性を増すもう一つの方法は、チェインシャッフリングを実行することである。これによって、重鎖または軽鎖は、ランダムに、他の重鎖または軽鎖と組み合わされ、より高い親和性を持つ抗体を調製する。さらに、抗体の各種CDRをシャッフルして、他の抗体の、対応するCDRと組み合わせてもよい。
【0117】
誘導体分子は、ポリペプチドの機能的特性を保持することが考えられる。すなわち、このような置換を有する分子であっても依然として、ポリペプチドが、IDAC 141205−02抗原またはその部分に対して結合することを可能とする。
【0118】
これらのアミノ酸置換としては、ただしこれらに限定されないが、従来技術において「保存的」として知られるアミノ酸置換が挙げられる。
【0119】
例えば、「保存的アミノ酸置換」と称されるある種のアミノ酸置換は、しばしばタンパクにおいて、該タンパクの立体配座または機能を変えることなく実行することが可能であるということは、タンパク化学の十分に確立された原理である。
【0120】
このような変化として、他の任意の疎水性アミノ酸に対する、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)の内の任意のものによる置換;グルタミン酸(E)のアスパラギン酸(D)、およびその逆;アスパラギン(N)のグルタミン(Q)による置換、およびその逆;および、トレオニン(T)のセリン(S)による置換、およびその逆が挙げられる。その他の置換も、特定のアミノ酸の環境、およびタンパクの三次元構造におけるその役割に応じて保存的と見なすことも可能である。例えば、グリシン(G)およびアラニン(A)は、アラニンおよびバリン(V)と同様、しばしば相互交換が可能である。比較的疎水性の高いメチオニン(M)は、しばしばロイシンおよびイソロイシンと、ときにバリンと相互交換することが可能である。リシン(K)およびアルギニン(R)は、そこでのアミノ酸残基の重要特性は、その電荷であり、その二つのアミノ酸残基の異なるpKは重要ではない、位置においてしばしば相互交換可能である。特定の環境において「保存的」と考えることが可能な変化はさらに外にもある。
【0121】
実施例1
ハイブリドーマ生産−ハイブリドーマ細胞系統AR58A314.1
ハイブリドーマ細胞系統AR58A314.1は、2005年12月14日、アクセス番号141205−02の下に、International Depository Authority of Canada (IDAC), Bureau of Microbiology, Health Canada, 1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada, R3E 3R2に寄託された。37 CFR 1.808にしたがって、寄託者は、寄託飼料の一般公衆に対する利用可能性に対して課せられた制限は全て、特許承認の同時に問題なく解除されるであろうことを確信する。
【0122】
抗癌抗体AR58A314.1を生産するハイブリドーマを生産するために、凍結結腸腫瘍組織 (Genomics Collaborative, Cambridge, MA)の単一細胞縣濁液を、PBS溶液として調製した。IMMUNEASY(登録商標)(Qiagen, Venlo, Netherlands)アジュバントを、穏やかに混和して使用のために調製した。5から7週齢のBALB/cマウスを、50マイクロリットルの抗原アジュバントに2百万個の細胞を縣濁させた液を皮下に注入することによって免疫化した。初回の免疫化の2および5週後、調製したばかりの抗原アジュバントを用い、50マイクロリットルに2百万個の細胞を縣濁させた液を腹腔内に注入することによってこの免疫化マウスをブーストした。最後の免疫化の3日後、脾臓を融合のために使用した。ハイブリドーマは、単離脾臓細胞を、NSO−1骨髄腫瘍パートナーと融合することによって調製した。融合物からの上清を、ハイブリドーマのサブクローンについて試験した。
【0123】
ハイブリドーマ細胞によって分泌される抗体が、IgGまたはIgM異性形であるかどうかを決めるために、ELISAアッセイを用いた。コーティングバッファー(0.1M炭酸塩/重炭酸塩バッファー、pH9.2−9.6)に2.4マイクログラム/mLの濃度で溶解したヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)を、ウェル当たり100マイクロリットルとしてELISAプレートに加え一晩置いた。洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween 20)にてプレートを3回洗浄した。ウェル当たり、100マイクロリットルのブロッキングバッファー(洗浄バッファーに溶解した5%ミルク)をプレートに加え、室温で1時間放置し、次いで洗浄バッファーにて3回洗浄した。ウェル当たり、100マイクロリットルのハイブリドーマ上清を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、ヤギ抗マウスIgGまたはIgM・西洋ワサビペルオキシダーゼ接合体の1/100,000希釈液(5%ミルクを含むPBSにて希釈)を、ウェル当たり100マイクロリットル加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。ウェル当たり100マイクロリットルのTMB液を室温で1−3分インキュベートした。発色反応を、ウェル当たり50マイクロリットルの2M H2SO4を加えて停止させ、プレートを、Perkin−Elmer HTS7000プレートリーダーによって450 nmにおいて読み取った。図1に示すように、AR58A314.1ハイブリドーマは、IgG異性形の抗体を主に分泌した。
【0124】
このハイブリドーマ細胞によって分泌される抗体のサブクラスを決めるために、異性形タイピング実験を、マウスモノクロナール抗体異性形タイピングキット(GE Healthcare, Baire d’Urfe, Quebec)を用いて行った。種々のタイプのペプチド鎖に対して特異的なヤギ抗体を担持する異性形タイピングストリップ(TBS−Tによる1:10希釈液として)を持つ試験管に加えた。試験管を15分攪拌した。次に、ストリップを、攪拌しながら、TBS−Tで2回5分間洗浄した。この試験管に、ペルオキシダーゼ標識、種特異的、抗マウス抗体を15分加え(TBS−Tによる1:500希釈液として)、スティックのヤギ抗体に結合するモノクロナール抗体を検出した。ストリップを、攪拌しながら、再びTBS−Tで2回5分間洗浄した。次に、ストリップに結合した、ペルオキシダーゼ標識抗体を、ペルオキシダーゼ基質システムを用いて検出した。4−クロロ−1−ナフトールの30 mg錠1個を、10 mLの冷エタノールに溶解し、過酸化水素溶液(30パーセントv/v)一滴を、50 mL TBSで希釈した。この二つの溶液を、使用の直前に合わせ、3 mLを、攪拌しながら、攪拌しながら、15分間異性形タイピングストリップに加えた。次に、基質液を捨て、ストリップを、攪拌しながら、5 mLの蒸留水で3回洗浄した。次に、試験管からタイピングスティックを取り出し、結果について分析した。抗癌抗体AR58A314.1は、IgG1、カッパ異性形である。
【0125】
1ラウンドの限界希釈後、細胞ELISAアッセイにおいて、ハイブリドーマ上清を、標的細胞に結合する抗体について試験した。一つのヒト乳癌細胞系統、一つのヒト卵巣癌細胞系統、二つのヒト結腸癌細胞系統、および一つのヒトの正常皮膚細胞系統を試験した。それぞれ、MDA−MB−231(MB−231)、OVCAR−3、SW1116、Lovo、およびCCD−27skである。これらの細胞系統は、米国基準株保存機関(ATCC, Manassas, VA)から入手した。使用前、プレートに撒いた細胞を固定した。MgCl2およびCaCl2を含むPBSにて、プレートを室温で3回洗浄した。PBSで希釈した2%パラフォルムアルデヒド100マイクロリットルを、各ウェルに加え、室温で10分置き、次いで捨てた。再び、MgCl2およびCaCl2を含むPBSにてプレートを室温で3回洗浄した。ブロッキングは、ウェル当たり、洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween 20)に溶解した5%ミルク100マイクロリットルを加え、室温で1時間置いて行った。洗浄バッファーにてプレートを3回洗浄し、ウェル当たり、75マイクロリットルとしてハイブリドーマ上清をプレートに加え、室温で1時間放置した。プレートを洗浄バッファーにて3回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼに接合させた、ヤギ抗マウスIgG抗体の1/25,000希釈液(1%ミルクを含むPBSにて希釈)を、ウェル当たり100マイクロリットル加えた。室温で1時間インキュベーションした後、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、ウェル当たり100マイクロリットルのTMB基質を室温で1−3分インキュベートした。反応を、ウェル当たり50マイクロリットルの2M H2SO4を加えて停止させ、プレートを、Perkin−Elmer HTS7000プレートリーダーによって450 nmにおいて読み取った。図2に表示した結果は、以前に、試験した細胞系統には結合しないことが示されている、私的所有のIgG異性形コントロールにほぼ等しい背景雑音を上回る倍数として表した。ハイブリドーマAR58A314.1からの抗体は、試験した細胞系統のいずれにも検出可能な結合を示さなかった。
【0126】
抗体結合の試験と合わせて、細胞系統:MDA−MB−231(MB−231)、OVCAR−3、SW1116、Lovo、およびCCD−27skにおいて、ハイブリドーマ上清の細胞傷害作用を試験した。Calcein AMを、Molecular Probes (Eugene, OR)から購入した。アッセイは下記に略述する変更を除き、メーカーの指示にしたがって行った。細胞は、アッセイの前に、あらかじめ指定された適切な密度でプレートした。2日後、75マイクロリットルの上清を、ハイブリドーマ・マイクロタイタープレートから細胞プレートに転送し、5パーセントCO2インキュベータにおいて5日間インキュベートした。陽性コントロールとして使用されたウェルは、空になるまで吸引し、100マイクロリットルのアジ化ナトリウム(NaN3)、またはシクロヘキシミド、または抗EGFR(c225;5マイクログラム/L)を加えた。5日間の処理後、プレートを反転して空とし、ブロットして乾燥した。MgCl2およびCaCl2を含む室温DPBS(ダルベッコのリン酸バッファー生食液)を、多数チャンネル押し込みボトルから各ウェルに滴下し、3回叩き、反転して空とし、ブロット乾燥した。MgCl2およびCaCl2を含むDPBSに希釈した蛍光カルセイン染料50マイクロリットルを各ウェルに加え、5パーセントCO2インキュベータにおいて37℃で30分インキュベートした。プレートを、Perkin−Elmer HTS7000蛍光プレートリーダーによって読み取り、データをMicrosoft Excelで分析した。結果は図1に表示される。AR58A314.1ハイブリドーマの上清は、OVCAR−3細胞に対して13パーセント、SW1116細胞に対して13パーセント、およびLovo細胞に対して12パーセントの特異的細胞傷害性をもたらした。OVCAR−3細胞に対する細胞傷害性は、それぞれ、陽性コントロールのアジ化ナトリウムおよびシクロヘキサミドによって得られる細胞傷害性の24および43パーセントであった。SW1116細胞に対する13%の細胞傷害性は、それぞれ、陽性コントロールのc225およびシクロヘキサミドによって得られる細胞傷害性の41および65パーセントであった。最後に、Lovo細胞に対する12パーセントの細胞傷害性は、シクロヘキサミドによって得られる細胞傷害性の26パーセントであった。図1の結果は、AR58A314.1の細胞傷害作用は、癌細胞タイプに対する結合レベルには比例しないことを明らかにした。図1に表示されるように、AR58A314.1は、CCD−27sk正常細胞系統には細胞毒性をもたらさなかった。既知の非特異的細胞傷害剤、シクロヘキサミドおよびNaN3および抗EGFR抗体c225は、一般に、予想通りの細胞傷害性をもたらした。
【0127】
実施例2
インビトロ結合
AR58A314.1モノクロナール抗体は、CL−1000フラスコ(BD Biosciences, Oakville, ON)においてハイブリドーマを培養し、収集および再散布を週に2回繰り返して生産した。抗体は、タンパクGセファロース4高速フロー(Amersham Biosciences, Baie d’Urfe, QC)による標準的抗体精製過程にしたがって精製した。脱免疫化、ヒト化、キメラ化、またはマウスの、モノクロナール抗体を利用することは本発明の範囲内にある。
【0128】
乳癌(MB−231)、結腸癌(DLD−1、Lovo、SW1116、およびSW620)、肺癌(A549)、前立腺癌(PC−3)、卵巣癌(OVCAR−3)、およびすい臓癌(AsPC−1、およびBxPC−3)、および、皮膚(CCD−27sk)および肺(Hs888.Lu)から得られた非癌細胞系統に対する、AR58A314.1の結合をフローサイトメトリー(FACS)によって評価した。細胞系統は全て米国基準菌株保存機関(ATCC, Manassa, VA)から入手した。
【0129】
FACSのために、先ず細胞単層をDPBS(Ca++およびMg++無添加)によって洗浄して調製した。次に、細胞解離バッファー(INVITROGEN, Burlington, ON)を用いて、37℃で細胞を細胞培養プレートから剥離した。遠心および収集後、細胞を、MgCl2、CaCl2、2パーセントのウシ胎児血清を4℃で含むDPBS(染色媒体)に再縣濁し、カウントし、適切な細胞密度となるように分液し、回転沈殿させて細胞ペレットを形成し、試験抗体(AR58A314.1)、またはコントロール抗体(異性形コントロール、抗EGFR)の存在下に4℃で染色媒体中で再縣濁した。異性形コントロールおよび試験抗体は、20マイクログラム/mLで評価し、一方、抗EGFRは、氷上で30分5マイクログラム/mLにおいて評価した。Alexa Fluor 546−接合二次抗体を添加する前に、細胞を染色媒体で一度洗浄した。次に、染色媒体に溶解したAlexa Fluor 546−接合体を添加し4℃で30分置いた。次に、細胞に最後の洗浄を行い、固定媒体(1.5%パラフォルムアルデヒドを含む染色媒体)に再縣濁した。FACSarray(登録商標)システムソフトウェア(BD Biosciences, Oakville, ON)を用い、FACSarrayにサンプルを走らせることによって細胞のフローサイトメトリー捕捉を評価した。細胞の前方(FSC)および側方(SSC)散乱を、FSCおよびSSC検出器に対する電圧および振幅ゲインを調節することによって設定した。蛍光(Alexa−546)チェンネルの検出器は、染色されない細胞が、約1−5単位の蛍光強度中央値の均一ピークを持つように調整した。各サンプルについて、分析のために約10,000ゲート通過事象(染色固定細胞)が得られ、その結果を図3に示す。
【0130】
図2は、異性形コントロールを上回る、平均蛍光強度の増加倍数を示す。AR58A314.1の代表的ヒストグラムを図3にまとめた。AR58A314.1は、結腸癌細胞系統DLD−1、Lovo、SW1116、およびSW620(それぞれ、1.8倍、2.0倍、2.1倍、および8.5倍)、および、卵巣癌細胞系統(OVCAR−3)に対して結合を示した。CCD−27sk正常皮膚、およびHs888.Lu細胞系統に対する結合は、この条件下では検出不能であった。実施例1から、AR58A310.1の、OVCAR−3卵巣癌細胞系統、およびSW1116およびLovo結腸癌細胞系統に対する結合は、細胞ELISAでは検出できないことが明らかであった。しかしながら、FACSを用いると検出可能な結合が示された。これは、FACSの方が、これらの条件下ではより感度の高い結合アッセイであることを示す。
【0131】
実施例3
A549細胞によるインビボ腫瘍実験
実施例1および2は、AR58A314.1が、いくつかの異なる癌表徴に対し検出可能な結合を示すことで、ヒトの癌細胞系統に対し抗癌性を有することを明らかにした。図4および5を参照すると、4から6週齢の雌性SCIDマウスの後頸部皮下に、100マイクロリットルの生理的食塩水に縣濁した1百万個のヒト肺癌細胞(A549)を注入して移植した。これらのマウスを5匹から成る二つの治療群にランダムに分けた。移植後1日目に20 mg/kgのAR58A314.1試験抗体またはバッファーコントロールを、2.7 mM KCl, 1 mM KH2PO4, 137 mM NaCl, および20 mM Na2HPO4を含む希釈液による保存濃度希釈後300マイクロリットル容量として、各群に腹腔内投与した。次に、同様にして、この抗体およびコントロールサンプルを、実験期間の間、週に1度投与した。腫瘍増殖を、約7日に1回キャリパーで測定した。実験は7回の注入後(48日)に完了とした。大きな潰瘍病巣のため、動物がCCACの終末点に達したからである。実験期間の間、週に1度動物の体重を測定した。実験の終了時、全ての動物を、CCACのガイドラインにしたがって安楽死させた。
【0132】
AR58A314.1は、ヒト肺癌の、きわめて侵襲性の高いA549インビボ予防モデルにおいて腫瘍増殖を抑えた。移植後48日目、最終治療投与の5日後、AR58A314.1治療群における腫瘍の平均体積は、バッファーコントロール治療群の腫瘍体積よりも48.6パーセント低かった(図4)。この結果は有意に達しなかった。なぜなら、最終時点における測定値が、実験終了前の、潰瘍病巣によるマウスの脱落によって影響を受けたからである。
【0133】
実験を通じて毒性の臨床的兆候は無かった。週間隔で測定された体重は、健康状態および節約繁栄失敗の代用物とされた。図5において見て取れるように、実験期間中、実験期間中、コントロール群、またはAR58A314.1治療群の体重には有意差は無かった。さらに、実験の終了時にも、この2群の間には体重に差は無かった(p=0.829, t−検定)。
【0134】
したがって、AR58A314.1はよく耐容され、このヒト肺癌異種移植モデルにおいて腫瘍負荷を抑えた。
【0135】
実施例4
BxPC−3細胞によるインビボ腫瘍実験
実施例3は、AR58A314.1が、ヒトの肺癌細胞系統に対し抗癌性を有することを明らかにした。ヒトのすい臓癌細胞系統に対するAR58A314.1の効力を定量するために、該抗体を、BxPC−3ヒトすい臓癌の異種移植モデルについて試験した。図6および7を参照すると、4から6週齢の雌性SCIDマウスの後頸部皮下に、100マイクロリットルの生理的食塩水に縣濁した5百万個のヒトすい臓癌細胞(BxPC−3)を注入して移植した。これらのマウスを5匹から成る二つの治療群にランダムに分けた。移植後1日目に20 mg/kgのAR58A314.1試験抗体またはバッファーコントロールを、2.7 mM KCl, 1 mM KH2PO4, 137 mM NaCl, および20 mM Na2HPO4を含む希釈液による保存濃度希釈後300マイクロリットル容量として、各群に腹腔内投与した。次に、同様にして、この抗体およびコントロールサンプルを、実験期間の間、週に1度合計8回投与した。腫瘍増殖を、約7日に1回キャリパーで測定した。実験期間の間、週に1度動物の体重を測定した。実験の終了時、全ての動物を、CCACのガイドラインにしたがって安楽死させた。
【0136】
AR58A314.1による治療は、ヒトすい臓癌の、BxPC−3インビボ予防モデルにおいて腫瘍増殖の抑制をもたらした。移植後56日目、最終治療投与の6日後、AR58A314.1治療群における腫瘍の平均体積は、バッファーコントロール治療群の腫瘍体積よりも29パーセント低かった(図6)。治療後の追跡期間中(63日目)、AR58A314.1によって誘発される腫瘍増殖抑制は、45.8パーセントに増加した。この結果は、各群内のマウス間に観察される変動のため有意に達しなかった。
【0137】
実験を通じて毒性の臨床的兆候は無かった。週間隔で測定された体重は、健康状態および節約繁栄失敗の代用物とされた。図7において見て取れるように、実験期間中、実験期間中、コントロール群、またはAR58A314.1治療群の体重は低下しなかった。さらに、実験の終了時(48日目;p=0.059, t−検定)、または、治療後の追跡期間にも(63日目;p=0.1479, t−検定)、この2群の間には体重に差は無かった。
【0138】
したがって、AR58A314.1はよく耐容され、このヒトすい臓癌異種移植モデルにおいて腫瘍負荷を抑えた。AR58A314.1は、二つの異なるヒト癌の表徴:すい臓と肺に対して効力を示した。治療効果は、いくつかの、十分認知済みの、ヒトの癌疾患モデルにおいて観察された。これは、ヒトを含む他の哺乳動物における治療においても、この抗体が、薬理的に、製薬学的に有益であることを示唆する。
【0139】
実施例5
ヒトの正常および複数腫瘍組織の染色
ヒトにおけるAR58A314.1抗原の分布を明らかにするためにIHC実験を行った。スライドを、冷却(−20℃)アセトンで10分再固定し、室温に戻した。4種のヒトの正常組織(結腸、肺、前立腺、および乳房)、および16種のヒトの腫瘍組織(結腸、肺、前立腺、および乳房が4種)に対する該抗体の結合を、ヒトの、正常および腫瘍器官組織スクリーニングアレイ(Tri Star, Rockville, MD)を用いて実行した。
【0140】
スライドを、4℃の冷リン酸バッファー生食液(PBS)にて3回、各回それぞれ2分濯ぎ、次いで、3パーセント過酸化水素水で10分間洗浄することによって内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。次に、スライドを、PBSで、3回それぞれ5分濯ぎ、次いで、室温で5分間Universalブロック液(Dako, Tronto, Ontario)においてインキュベートした。AR58A314.1、抗ヒト筋肉アクチン(Clone HHF35, Dako, Toronto, Ontario)、または異性形コントロール抗体(Aspergillus nigerのグルコースオキシダーゼ、すなわち、哺乳類組織には存在せず、誘発可能でもない酵素を指向する抗体;Dako, Toronto, Ontario)を、その作業濃度となるまで、抗体希釈バッファー(Dako, Toronto, Ontario)において希釈し(各抗体について5マイクログラム/mL、ただし、抗アクチンは、0.5マイクログラム/mLとなるように希釈)、室温で1時間インキュベートした。スライドをPBSで3回それぞれ2分間洗浄した。HRP接合二次抗体を支給されたまま(Dako Envision System, Toronto, Ontario)で室温で30分用いて、一次抗体の免疫反応性を検出/可視化した。この工程後、スライドを、PBSで3回それぞれ5分洗浄し、免疫ペルオキシダーゼ染色のためにDAB(3,3′−ジアミノベンジジンテトラヒドラクロリド、Dako, Tronto, Ontario)クロモゲン基質液を室温で10分加えることによって発色反応を発達させた。水道水でスライドを洗浄することによって、クロモゲン反応を停止させた。Meyerのヘマトキシリン(Sigma Diagnostics, Oaksville, ON)によってカウンターステインした後、スライドを、等級別エタノール(75−100%)で脱水し、キシレンで透徹した。登載媒体(Dako Paramount, Toronto, Ontario)を用いてスライドをカバースリップで被った。スライドを、Axiovert200 (Zeiss Canada, Toronto, ON)を用いて鏡検し、Northern Eclipse Imaging Software(Mississauga, ON)を用いてディジタル画像を獲得し、保存した。結果は、組織病理学者が読み取り、評点し、解釈した。
【0141】
図8は、一連のヒトの正常および腫瘍組織に対するAR58A314.1染色の結果のまとめを示す。AR58A314.1抗体は、結腸癌の1/4、および肺癌の2/4に結合を示すが(図9)、試験した正常組織のいずれに対しても結合しなかった。この結果は、FACS結合データ(図2および3)と一致した。すなわち、FACSデータも、この抗体が、正常細胞と比べ、癌細胞に対し特異的に結合することを示した。AR58A314.1結合は、組織切片内の腫瘍細胞に限局し、細胞の局在は、細胞原形質性および膜性であった。これらの結果は、AR58A314.1は、いくつかの異なる腫瘍タイプにおいて発現されることを示唆する。さらに、抗原AR58A314.1は、正常組織においては広く発現されない。これは、該抗体が、ヒトにおいてごく少数の組織に対し特異的に結合することを示唆する。
【0142】
実施例6
ヒト正常組織の染色
ヒトにおけるAR58A314.1抗原の分布を評価するために拡大IHC実験を行った。20種のヒトの正常組織(副腎、卵巣、すい臓、甲状腺、脳(大脳)、脳(小脳)、肺、脾臓、子宮、子宮頸部、乳房、胎盤、心臓、皮膚、骨格筋、腎臓、胃、小腸、肝臓、および唾液腺)に対する該抗体の結合を、ヒトの、正常組織マイクロアレイ(Biochain, CA, USA)を用いて実行した。
【0143】
使用するIHC法、抗体濃度、および異性形コントロールは、抗アクチン(2マイクログラム/mLの濃度を用いた)を除いては、実施例5で述べたものと同様であった。スライドは、Axiovert200 (Zeiss Canada, Toronto, ON)を用いて鏡検し、Northern Eclipse Imaging Software(Mississauga, ON)を用いてディジタル画像を獲得し、保存した。結果は、組織病理学者が読み取り、評点し、解釈した。
【0144】
図10は、一連のヒトの正常組織に対するAR58A314.1染色の結果のまとめを示す。AR58A314.1抗体は、試験組織のいずれに対しても結合を示さなかった(図11)。20種の組織サンプルの内8種は、陰性異性形コントロールに観察される背景染色のために評点が付けられなかった。陽性抗体コントロール、抗アクチンは、筋肉組織に対し予想通りの結合を示した。
【0145】
AR58A314.1は、試験したヒトの正常組織に対し結合を示さなかった。これは、前記実施例における所見と一致し、さらに、この抗体によって標的とされるエピトープの、腫瘍組織・対・正常組織における差別的発現を明らかにする。
【0146】
実施例7
競合的結合因子の単離
一抗体が与えられたならば、当業者であれば、競合的抑制性CDMAB、例えば、同じエピトープを認識する競合抗体を生成することは可能である(Belanger L et al. Clinica Chimica Acta 48:15−18 (1973))。一つの方法は、該抗体によって認識される抗原を発現する免疫原によって免疫化することを必要とする。サンプルとしては、例えば、ただしこれらに限定されないが、組織、単離タンパク(単複)、または細胞系統(単複)が挙げられる。試験抗体の結合を抑制する抗体を特定する競合アッセイ、例えば、ELISA、FACS、または免疫沈降法を用いて、得られたハイブリドーマをスクリーングすることが可能である。別の方法は、ファージディスプレイライブラリー、および、前記抗原を認識する抗体を選択するためのパンニングの利用が考えられる(Rubinstein JL et al. Anal Biochem 314:294−300 (2003)。いずれにしろ、抗体は、その標的抗原の少なくとも一つのエピトープにおいて、元の標識抗体の結合を押し退ける能力に基づいて選ばれる。したがって、このような抗体は、元の抗体と同様に、抗原の少なくとも一つのエピトープを認識するという特徴を所有すると考えられる。
【0147】
実施例8
AR58A314.1モノクロナール抗体可変域のクローニング
AR58A314.1ハイブリドーマ細胞系統によって生産されるモノクロナール抗体の重鎖(VH)および軽鎖(VL)における可変域の配列を決定することは可能である。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖をコードするRNAは、guanidium isothiocyanate (Chirgwin et al. Biochem. 18:5294−5299(1979)による細胞可溶化を含む標準法を用いて被検体ハイブリドーマから抽出することが可能である。このmRNAを用いてcDNAを調製し、次いで、従来技術で既知のPCR方法原理を用いてVHおよびVL遺伝子を単離することが可能である(Sambrook et al., eds.,「分子クローニング(“Molecular Cloning”)」、Chapter 14, Cold Spring Harbor laboratories Press, N.Y. (1989)。重鎖および軽鎖のN−末端アミノ酸配列は、Edman自動配列決定法によって独立に決定することが可能である。CDRおよび側接FRの直鎖も、VHおよびVL断片のアミノ酸配列によって決定することが可能である。次に、AR58A314.1モノクロナール抗体からVHおよびVL遺伝子を単離するために、合成プライマーを設計することが可能であり、かつ、この単離遺伝子を、配列決定のために、適切なベクターに連結することが可能である。キメラおよびヒト化IgGを生成するために、軽鎖および重鎖の可変ドメインを、発現のために、適切なベクターにサブクローンすることが可能である。
【0148】
別の実施態様では、AR58A314.1、またはその脱免疫、キメラ、またはヒト化変異種が、該抗体をコードする核酸をトランスジェニック動物において発現させ、それによって、該抗体の発現、回収が可能となるようにして生産される。例えば、抗体を、回収および精製をやり易くする組織特異的やり方で発現させることが可能である。そのような一実施態様では、本発明の抗体は、哺乳の際に分泌されるように乳腺に発現される。トランスジェニック動物としては、ただしこれらに限定されないが、マウス、ヤギ、およびウサギが挙げられる。
【0149】
(i)モノクロナール抗体
モノクロナール抗体(実施例1で概説した)をコードするDNAは、従来法(例えば、該モノクロナール抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に対し特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブ)を用いて簡単に単離、配列決定される。このハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦単離されたならば、このDNAを発現ベクターの中に導入し、次に、宿主細胞、例えば、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または、他の状態であれば免疫グロブリンタンパクを生産しない骨髄細胞に転送し、この組み換え宿主細胞においてモノクロナール抗体の合成を実現させる。このDNAはさらに、ヒトの重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を、マウスの相同的配列に代わって置換することによって修飾してもよい。さらに、キメラまたはハイブリッド抗体は、合成タンパク化学における既知の方法、例えば、架橋剤を含む方法を用いてインビトロで調製してもよい。例えば、免疫トキシンは、ジスルフィド交換反応を用いて、または、チオエーテル結合を形成することによって構築してもよい。このための好適な試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチリミデートが挙げられる。
【0150】
(ii)ヒト化抗体
ヒト化抗体は、非ヒト供給源から、その中に一つ以上のアミノ酸残基を導入させる。これらの、非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「輸入」残基と呼ばれる。これは、通常、「輸入」可変ドメインから取られる。ヒト化は、げっ歯類のCDR(単複)配列によって、ヒト抗体の対応配列を置換することによるWinterおよび共同研究者らの方法によって実行される(Jones et al., Nature 321:522−525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323−327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534−1536(1988); Clark, Immunol. Today 21:397−402 (2000)に総覧される)。
【0151】
ヒト化抗体は、親およびヒト化配列の三次元モデルを用い、親配列および各種概念的ヒト化産物に関する分析プロセスによって調製することが可能である。三次元免疫グロブリンは、普通に市販されており、当業者には親しいものである。選ばれた候補免疫グロブリン配列の、予想される三次元立体配座構造を図示し、表示するコンピュータプログラムが市販されている。これらのディスプレイを精査することによって、候補免疫グロブリン配列の機能における、残基の予想される役割に関する分析、すなわち、その抗原に対する、候補免疫グロブリンの能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、所望の抗体特徴、例えば、標的抗原(単複)に対する親和性の増大が実現されるように、共通の輸送配列の中からFR残基を選択し、組み合わせることが可能である。一般に、CDR配列が、抗原結合に対し、直接に、かつもっとも本質的に関与する。
【0152】
(iii)抗体断片
抗体断片の生産のために各種の技術がこれまで開発されている。これらの断片は、組み換え宿主細胞によって生産することが可能である(Hudson, Curr. Opin. Immunol. 11:548−557 (1997); Little et al., Immunol. Today 21:364−370(2000)において総覧される)。例えば、Fab′−SH断片は、大腸菌から直接回収し、化学的に結合してF(ab′)2断片を形成することが可能である(Carter et al., Biotechnology 10:163−167(1992))。別の実施態様では、F(ab′)2は、F(ab′)2分子の集合を促進するロイシンジッパーGCN4を用いて形成される。別の方法では、Fv、Fab、またはF(ab′)2断片は、組み換え宿主細胞培養体から直接単離することが可能である。
【0153】
実施例9
本発明の抗体を含む組成物
本発明の抗体は、癌を予防/治療するための組成物として使用することが可能である。本発明の抗体を含む癌の予防/治療用組成物は、毒性が低く、液体調剤として、または、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に好適な調剤の製薬組成物として、経口的または、非経口的(例えば、筋肉内、腹腔内、皮下など)に投与することが可能である。本発明の抗体は、それ自体として投与してもよいし、または、適切な組成物として投与してもよい。投与のために使用される組成物は、本発明の抗体またはその塩と共に、製薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含んでもよい。そのような組成物は、経口的または非経口的投与に好適な製薬調製品の形で供給される。
【0154】
非経口的投与用組成物の例としては、注入用調剤、座剤などが挙げられる。注入用調剤としては、静脈内、皮下、皮内、および筋肉内注射、点滴輸液、関節内注射などの剤形が挙げられる。これらの注入用剤形は、周知の方法によって調製してよい。例えば、注入用調剤は、本発明の抗体またはその塩を、注入用として通例的に使用される、滅菌した水性媒体、または油性媒体に溶解、縣濁、または乳化することによって調製してもよい。注入用水性媒体としては、例えば、生理的食塩水、グルコースおよびそのたの補助剤などを含む等張液がある。等張液は、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、HCO−50(水素添加ひまし油のポリオキシエチレン(50モル)アダクト))などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。油性媒体として用いられるのは、例えば、ごま油、大豆油などである。これらは、可溶化剤、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと組み合わせて使用してもよい。このようにして調製される注入剤は、通常、適切なアンプルに充填される。直腸投与用に使用される座剤は、本発明の抗体またはその塩を、座剤用の、通例の基剤と混ぜ合わせることによって調製してよい。経口投与用組成物としては、固体または液体調剤、具体的には、錠剤(糖剤およびフィルム被覆錠剤を含む)、丸剤、顆粒、粉末状調剤、カプセル(軟カプセルを含む)、シロップ、乳液、縣濁液などが挙げられる。このような組成物は、周知の方法によって製造されるが、製剤調製の分野において通例的に使用されるベヒクル、希釈剤、または賦形剤を含んでもよい。錠剤のためのベヒクルまたは賦形剤の例としては、ラクトース、でん粉、スクロース、ステアリン酸マグネシウムなどがある。
【0155】
前述の経口、または非経口用の組成物は、活性成分の用量に適合する単位剤形を持つ製薬調製品として調製される。このような単位用量調剤としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注入剤(アンプル)、座剤などが挙げられる。含まれる前述の化合物の量は、一般に、単位剤形当たり5から500 mgであるが、前述の抗体は、特に注入剤として約5から約100 mgで含まれ、その他の剤形では10から250 mgで含まれることが好ましい。
【0156】
本発明の抗体を含む、前述の予防/治療剤、または調整剤の用量は、投与される被検体、標的疾患、病態、投与ルートなどに応じて変動してよい。例えば、成人の乳癌の治療/予防のために使用される場合、本発明の抗体を、静脈内に、体重kg当たり約0.01から20 mg、好ましくは体重kg当たり約0.1から10 mg、より好ましくは体重kg当たり約0.1から5 mgの用量で、1日当たり1から5回、好ましくは1日当たり1から3回投与するのが有利である。他の非経口的および経口的投与では、該薬剤は、前述の用量と対応する用量で投与することが可能である。病態が特に重大である場合は、用量は、その病態に応じて増してもよい。
【0157】
本発明の抗体は、そのまま、または、適切な組成物の形で投与してよい。投与のために使用される組成物は、前述の抗体またはその塩と共に、製薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含んでもよい。そのような組成物は、経口的、または非経口的投与(例えば、筋肉内注射、皮下注射など)に好適な製薬調製品の形で供給される。前述の各組成物はさらに、他の活性成分を含んでもよい。さらに、本発明の抗体は、他の薬剤、例えば、アルキル化剤(例えば、シクロフォスファミド、イフォスファミドなど)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、5−フルオロウラシルなど)、抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシンなど)、植物性抗腫瘍剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、Taxolなど)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、イリノテカンなどと組み合わせて使用してもよい。本発明の抗体、および前述の薬剤は、患者に対し、同時に投与してもよいし、様々な時間間隔を置いて投与してもよい。
【0158】
特に癌のための、本明細書に記載される治療法はさらに、他の抗生物質、または化学療法剤の投与と一緒に実行されてもよい。例えば、特に結腸癌を治療する場合、EGFRに対する抗体、例えばERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)をさらに投与してもよい。ERBITUX(登録商標)は、乾癬の治療にも有効であることが示されている。併用に好適な他の抗生物質としては、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)特に乳癌を治療する場合、AVASTIN(登録商標)特に結腸癌を治療する場合、SGN−15特に非小細胞肺癌を治療する場合、が挙げられる。他の抗生物質/化学療法剤と組み合わせた、本発明の抗体の投与は、同時に、または別々に、同じか、または異なるルートを介して行われてもよい。
【0159】
利用される化学療法剤/他の抗体処方としては、患者の病態の治療にとって最適であると考えられる限り、いずれの処方であってもよい。異なる悪性腫瘍は、患者毎に決められる、特異的抗腫瘍抗生物質および特異的化学療法剤の使用を要求する可能性がある。本発明の好ましい実施態様では、化学療法は、抗体療法と同時に、または、より好ましくはその後に投与される。しかしながら、本発明は、いかなる特定の投与法、または投与ルートにも限定されないことは強調されなければならない。
【0160】
証拠の主力は、AR58A314.1は、癌細胞系統およびヒトの腫瘍組織の上に存在するエピトープへの連結を通じて抗癌作用を仲介することを示す。さらに、AR58A314.1抗体は、FACS、細胞ELISA、またはIHCによって例示される、ただしこれらに限定されない、技術を利用して、該抗体に特異的に結合するエピトープを発現する細胞および/または組織の検出に使用が可能であることが示された。
【0161】
本明細書に引用される特許および公刊物は全て、本発明の関わる当業者のレベルを示すものである。特許および公刊物は全て、各個別の公刊物が、特異的、個別的に、引用により本明細書に含まれるとされるのと同程度に引用により本明細書に含まれる。
【0162】
本発明のある形態が説明されるけれども、それは、本明細書に記載され、図示される部分の特異的形態または配置に限定されるべきものではないことを理解しなければならない。本発明の範囲から逸脱することなく様々の変更が実行可能であること、および、本発明は、本明細書に図示し、記載されるものだけに限定されると考えてはならないことは、当業者には明白である。当業者であれば、本発明は、言及した目的、および言及した目標および利点ばかりでなく、本明細書に内在する目標および利点を実行し、獲得するのにも十分適応されることを直ちに理解されるであろう。本明細書に記載される、全てのオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物学的関連化合物、方法、手順、および技術は、現在、好ましい実施態様を代表するものであるが、例示を意図するものであって、発明の範囲の限定を意図するものではない。本明細書における使用および他の使用の変更が、当業者に思い浮かぶであろうが、それらは、本発明の精神、および付属の特許請求項の範囲内に包含される。本発明は、特定の好ましい実施態様と関連させて説明されてきたわけであるが、請求される発明は、これらの特異的実施態様にのみ不当に限定されてはらないことを理解しなければならない。実際、本発明を実行するための、記載の方式については、様々の修飾が、当業者には明白であるが、それらは、頭書の特許請求の範囲内に納まることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】は、細胞系統MDA−MB−231(MB−231)、OVCAR−3、SW1116、Lovo、およびCCD−27skに対するハイブリドーマ上清のパーセント細胞傷害性および結合レベルを比較する。
【図2】は、癌および正常細胞系統に対する、AR58A314.1および抗EGFRコントロールの結合を表す。データを表にして、平均蛍光強度を、異性系コントロールを上回る増加倍数として示す。
【図3】は、いくつかの癌および非癌細胞系統を指向する、AR58A314.1および抗EGFR抗体の代表的FACSヒストグラムを含む。
【図4】は、予防的A549肺癌モデルにおける腫瘍増殖に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。垂直破線は、抗体投与期間を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
【図5】は、予防的A549肺癌モデルにおける体重に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
【図6】は、予防的BxPC−3すい臓癌モデルにおける腫瘍増殖に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。垂直破線は、抗体投与期間を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
【図7】は、予防的BxPC−3すい臓癌モデルにおける体重に及ぼすAR58A314.1の作用を示す。データ点は、平均±SEMを表す。
【図8】は、ヒトの腫瘍および正常組織マイクロアレイに対する、AR58A314.1・対・陽性および陰性コントロールの比較である。
【図9】は、ヒトの組織マイクロアレイにおいて、AR58314.1(A)、または異性形コントロール抗体(B)によって得られた、肺腫瘍組織における結合パターン、および、AR58314.1(C)、または抗アクチン(D)によって得られた、肺正常組織における結合パターンを示す代表的顕微鏡写真。AR58A314.1は、腫瘍細胞に対しては陽性染色を、正常組織に対しては陰性染色を示した。倍率は200X。
【図10】は、ヒトの正常組織マイクロアレイに対する、AR58A314.1・対・陽性および陰性コントロールの比較である。
【図11】は、ヒトの正常組織マイクロアレイにおいて、AR58314.1(A)、または陽性コントロール抗体(B)によって得られた、正常心臓組織における結合パターン、および、AR58314.1(C)、または陽性コントロール抗体(D)によって得られた、正常すい臓組織における結合パターンを示す代表的顕微鏡写真。AR58A314.1は、正常組織に対して陰性染色を示した。倍率は200X。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の単離モノクロナール抗体のCDMAB。
【請求項3】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体、または、前記ヒト化抗体から生産される、抗原結合性断片。
【請求項4】
請求項3に記載のヒト化抗体のCDMAB。
【請求項5】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体、または、前記キメラ抗体から生産される、抗原結合性断片。
【請求項6】
請求項5に記載のキメラ抗体のCDMAB。
【請求項7】
細胞傷害性成分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的またはリポーター成分、および造血細胞から成る群から選ばれる一員と接合される、請求項1、2、3、4、5、または6のいずれか1項に記載の単離抗体またはそのCDMAB。
【請求項8】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託される、単離ハイブリドーマ細胞系統。
【請求項9】
ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍から選ばれる組織サンプルにおける癌様細胞に対し抗体誘発の、細胞傷害性を起動するための方法であって:
前記ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍から組織サンプルを準備すること;
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力を持つことを特徴とする、そのCDMABを準備すること;
前記単離モノクロナール抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体、またはそのCDMABを、前記組織サンプルに接触させることを含み、
前記単離モノクロナール抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体、またはそのCDMABの、前記組織サンプルに対する結合が、細胞傷害性を誘発することを特徴とする、前記方法。
【請求項10】
哺乳動物における、抗体誘発による細胞傷害性に対して感受性を持つヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍の低減法であって、前記ヒトの腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原を発現することを特徴とし、前記モノクロナール抗体、または、その前記CDMABを、前記哺乳動物の肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷の低減をもたらすのに有効な量として、前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項11】
前記単離モノクロナール抗体が、細胞傷害性成分に接合されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞傷害性成分が、放射性同位元素であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、補体を活性化することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、抗体依存性細胞性細胞傷害性を仲介することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体であるか、または、前記ヒト化抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体であるか、または、前記キメラ抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体と同じ単数または複数のエピトープに特異的に結合することを特徴とする、モノクロナール抗体。
【請求項18】
哺乳動物におけるヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍の低減法であって、前記ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原の、少なくとも一エピトープを発現することを特徴とし、前記モノクロナール抗体、または、その前記CDMABを、前記哺乳動物の肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷の低減をもたらすのに有効な量として前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
前記単離モノクロナール抗体が、細胞傷害性成分に接合されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞傷害性成分が、放射性同位元素であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、補体を活性化することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、抗体依存性細胞性細胞傷害性を仲介することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体であるか、または、前記ヒト化抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体であるか、または、前記キメラ抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物におけるヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍の低減法であって、前記ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原の、少なくとも一エピトープを発現することを特徴とし、前記モノクロナール抗体、または、そのCDMABを、少なくとも一つの化学療法剤と組み合わせて、前記哺乳動物の肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷の低減をもたらすのに有効な量として、前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記単離モノクロナール抗体が、細胞傷害性成分に接合されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞傷害性成分が、放射性同位元素であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、補体を活性化することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、抗体依存性細胞性細胞傷害性を仲介することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体であるか、または、前記ヒト化抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体であるか、または、前記キメラ抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
IDACアクセス番号141205−02を有するハイブリドーマ細胞系統AR58A314.1によって生産される単離モノクロナール抗体、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体、または、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体によって特異的に結合される、ヒト腫瘍から選ばれる組織サンプルにおいて癌様細胞の存在を決定する結合アッセイであって:
前記ヒト腫瘍から組織サンプルを準備すること;
IDACアクセス番号141205−02を有するハイブリドーマ細胞系統AR58A314.1によって生産される単離モノクロナール抗体によって認識されるものと同じ、単数または複数のエピトープを認識する、前記単離モノクロナール抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体、またはそのCDMABの内の少なくとも一つを準備すること;
前記少なくとも一つの準備された抗体、またはそのCDMABを、前記組織サンプルに接触させること;および、
前記少なくとも一つの準備された抗体、またはそのCDMABの、前記組織サンプルに対する結合を定量すること、を含み、
それによって、前記組織サンプルにおける前記癌様細胞の存在が示される、
ことを特徴とする、前記結合アッセイ。
【請求項33】
ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷低減のためのモノクロナール抗体の使用であって、前記ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原の、少なくとも一エピトープを発現することを特徴とし、前記モノクロナール抗体、または、そのCDMABを、前記哺乳動物の肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷の低減をもたらすのに有効な量として、前記哺乳動物に投与することを含む、前記使用。
【請求項34】
前記単離モノクロナール抗体が、細胞傷害性成分に接合されることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞傷害性成分が、放射性同位元素であることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、補体を活性化することを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、抗体依存性細胞性細胞傷害性を仲介することを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体であるか、または、前記ヒト化抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体であるか、または、前記キメラ抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷低減のためのモノクロナール抗体の使用であって、前記ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原の、少なくとも一エピトープを発現することを特徴とし、前記モノクロナール抗体、または、そのCDMABを、少なくとも一つの化学療法剤と組み合わせて、前記哺乳動物の肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷の低減をもたらすのに有効な量として、前記哺乳動物に投与することを含む、前記使用。
【請求項41】
前記単離モノクロナール抗体が、細胞傷害性成分に接合されることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞傷害性成分が、放射性同位元素であることを特徴とする、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、補体を活性化することを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、抗体依存性細胞性細胞傷害性を仲介することを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体であるか、または、前記ヒト化抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体であるか、または、前記キメラ抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効な組成物であって:
請求項1、2、3、6、7、8、または17のいずれか1項の抗体またはCDMAB;
前記抗体、またはその抗原結合性断片と、細胞傷害性成分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的またはリポーター成分、および造血細胞から成る群から選ばれる一員との接合体;および、
必要量の、製薬学的に受容可能な担体を、組み合わせて含み、
前記ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効であることを特徴とする、前記組成物。
【請求項48】
ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効な組成物であって:
請求項1、2、3、6、7、8、または17のいずれか1項の抗体またはCDMAB;および、
必要量の、製薬学的に受容可能な担体を、組み合わせて含み、
前記ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効であることを特徴とする、前記組成物。
【請求項49】
ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効な組成物であって:
請求項1、2、3、6、7、8、または17のいずれか1項の抗体またはCDMABと、細胞傷害性成分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的またはリポーター成分、および造血細胞から成る群から選ばれる一員との接合体;および、
必要量の、製薬学的に受容可能な担体を、組み合わせて含み、
前記ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効であることを特徴とする、前記組成物。
【請求項50】
ヒトの癌様腫瘍の存在を検出するためのアッセイキットであって、前記ヒトの癌様腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原の、少なくとも一エピトープを発現することを特徴とし、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、またはそのCDMAB、および、前記モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、ある特定のカットオフレベルにおけるその存在は、前記ヒトの癌様腫瘍の前記存在を診断する意味を持つポリペプチドに対し結合するかどうかを検出する手段をを含む、前記アッセイキット。
【請求項1】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の単離モノクロナール抗体のCDMAB。
【請求項3】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体、または、前記ヒト化抗体から生産される、抗原結合性断片。
【請求項4】
請求項3に記載のヒト化抗体のCDMAB。
【請求項5】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体、または、前記キメラ抗体から生産される、抗原結合性断片。
【請求項6】
請求項5に記載のキメラ抗体のCDMAB。
【請求項7】
細胞傷害性成分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的またはリポーター成分、および造血細胞から成る群から選ばれる一員と接合される、請求項1、2、3、4、5、または6のいずれか1項に記載の単離抗体またはそのCDMAB。
【請求項8】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託される、単離ハイブリドーマ細胞系統。
【請求項9】
ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍から選ばれる組織サンプルにおける癌様細胞に対し抗体誘発の、細胞傷害性を起動するための方法であって:
前記ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍から組織サンプルを準備すること;
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力を持つことを特徴とする、そのCDMABを準備すること;
前記単離モノクロナール抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体、またはそのCDMABを、前記組織サンプルに接触させることを含み、
前記単離モノクロナール抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体、またはそのCDMABの、前記組織サンプルに対する結合が、細胞傷害性を誘発することを特徴とする、前記方法。
【請求項10】
哺乳動物における、抗体誘発による細胞傷害性に対して感受性を持つヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍の低減法であって、前記ヒトの腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原を発現することを特徴とし、前記モノクロナール抗体、または、その前記CDMABを、前記哺乳動物の肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷の低減をもたらすのに有効な量として、前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項11】
前記単離モノクロナール抗体が、細胞傷害性成分に接合されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞傷害性成分が、放射性同位元素であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、補体を活性化することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、抗体依存性細胞性細胞傷害性を仲介することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体であるか、または、前記ヒト化抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体であるか、または、前記キメラ抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体と同じ単数または複数のエピトープに特異的に結合することを特徴とする、モノクロナール抗体。
【請求項18】
哺乳動物におけるヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍の低減法であって、前記ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原の、少なくとも一エピトープを発現することを特徴とし、前記モノクロナール抗体、または、その前記CDMABを、前記哺乳動物の肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷の低減をもたらすのに有効な量として前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
前記単離モノクロナール抗体が、細胞傷害性成分に接合されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞傷害性成分が、放射性同位元素であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、補体を活性化することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、抗体依存性細胞性細胞傷害性を仲介することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体であるか、または、前記ヒト化抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体であるか、または、前記キメラ抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物におけるヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍の低減法であって、前記ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原の、少なくとも一エピトープを発現することを特徴とし、前記モノクロナール抗体、または、そのCDMABを、少なくとも一つの化学療法剤と組み合わせて、前記哺乳動物の肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷の低減をもたらすのに有効な量として、前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記単離モノクロナール抗体が、細胞傷害性成分に接合されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞傷害性成分が、放射性同位元素であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、補体を活性化することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、抗体依存性細胞性細胞傷害性を仲介することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体であるか、または、前記ヒト化抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体であるか、または、前記キメラ抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
IDACアクセス番号141205−02を有するハイブリドーマ細胞系統AR58A314.1によって生産される単離モノクロナール抗体、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体、または、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体によって特異的に結合される、ヒト腫瘍から選ばれる組織サンプルにおいて癌様細胞の存在を決定する結合アッセイであって:
前記ヒト腫瘍から組織サンプルを準備すること;
IDACアクセス番号141205−02を有するハイブリドーマ細胞系統AR58A314.1によって生産される単離モノクロナール抗体によって認識されるものと同じ、単数または複数のエピトープを認識する、前記単離モノクロナール抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体、またはそのCDMABの内の少なくとも一つを準備すること;
前記少なくとも一つの準備された抗体、またはそのCDMABを、前記組織サンプルに接触させること;および、
前記少なくとも一つの準備された抗体、またはそのCDMABの、前記組織サンプルに対する結合を定量すること、を含み、
それによって、前記組織サンプルにおける前記癌様細胞の存在が示される、
ことを特徴とする、前記結合アッセイ。
【請求項33】
ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷低減のためのモノクロナール抗体の使用であって、前記ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原の、少なくとも一エピトープを発現することを特徴とし、前記モノクロナール抗体、または、そのCDMABを、前記哺乳動物の肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷の低減をもたらすのに有効な量として、前記哺乳動物に投与することを含む、前記使用。
【請求項34】
前記単離モノクロナール抗体が、細胞傷害性成分に接合されることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞傷害性成分が、放射性同位元素であることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、補体を活性化することを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、抗体依存性細胞性細胞傷害性を仲介することを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体であるか、または、前記ヒト化抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体であるか、または、前記キメラ抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷低減のためのモノクロナール抗体の使用であって、前記ヒトの肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原の、少なくとも一エピトープを発現することを特徴とし、前記モノクロナール抗体、または、そのCDMABを、少なくとも一つの化学療法剤と組み合わせて、前記哺乳動物の肺、すい臓、卵巣、または結腸腫瘍負荷の低減をもたらすのに有効な量として、前記哺乳動物に投与することを含む、前記使用。
【請求項41】
前記単離モノクロナール抗体が、細胞傷害性成分に接合されることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞傷害性成分が、放射性同位元素であることを特徴とする、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、補体を活性化することを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記単離モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、抗体依存性細胞性細胞傷害性を仲介することを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のヒト化抗体であるか、または、前記ヒト化抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記単離モノクロナール抗体が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体のキメラ抗体であるか、または、前記キメラ抗体から生産される抗原結合性断片であることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効な組成物であって:
請求項1、2、3、6、7、8、または17のいずれか1項の抗体またはCDMAB;
前記抗体、またはその抗原結合性断片と、細胞傷害性成分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的またはリポーター成分、および造血細胞から成る群から選ばれる一員との接合体;および、
必要量の、製薬学的に受容可能な担体を、組み合わせて含み、
前記ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効であることを特徴とする、前記組成物。
【請求項48】
ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効な組成物であって:
請求項1、2、3、6、7、8、または17のいずれか1項の抗体またはCDMAB;および、
必要量の、製薬学的に受容可能な担体を、組み合わせて含み、
前記ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効であることを特徴とする、前記組成物。
【請求項49】
ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効な組成物であって:
請求項1、2、3、6、7、8、または17のいずれか1項の抗体またはCDMABと、細胞傷害性成分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的またはリポーター成分、および造血細胞から成る群から選ばれる一員との接合体;および、
必要量の、製薬学的に受容可能な担体を、組み合わせて含み、
前記ヒトの癌様腫瘍を治療するのに有効であることを特徴とする、前記組成物。
【請求項50】
ヒトの癌様腫瘍の存在を検出するためのアッセイキットであって、前記ヒトの癌様腫瘍が、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、または、前記単離モノクロナール抗体の、その標的抗原に対する結合を競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、そのCDMABに対して特異的に結合する抗原の、少なくとも一エピトープを発現することを特徴とし、アクセス番号141205−02としてIDACに寄託されるハイブリドーマによって生産される単離モノクロナール抗体、またはそのCDMAB、および、前記モノクロナール抗体、またはそのCDMABが、ある特定のカットオフレベルにおけるその存在は、前記ヒトの癌様腫瘍の前記存在を診断する意味を持つポリペプチドに対し結合するかどうかを検出する手段をを含む、前記アッセイキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−528993(P2009−528993A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555585(P2008−555585)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000278
【国際公開番号】WO2007/095745
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(504236592)アリアス リサーチ、インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000278
【国際公開番号】WO2007/095745
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(504236592)アリアス リサーチ、インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】
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