説明

癌診断方法

癌の初期において癌細胞の存在証拠を血液中から検出できる、癌診断方法を提供する。体液中から体細胞・癌細胞成分として、RNAのみを含む試料を得る工程と、RNAを含む試料から逆転写酵素でcDNAを生成する逆転写酵素反応と蛍光色素を用いたPCRを、プライマーとして、hTERTでは、CGGAAGAGTGTCTGGAGCAAとGGATGAAGCGGAGTCTGGAを用いて行い、PCRにより増幅されたPCR産物をPCR産物と結合した蛍光色素を用い、定量的に計測する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、癌診断方法に関し、特に、早期に癌細胞の存在の有無を診断できる、癌診断方法に関する。
【背景技術】
日本において、毎年、新たに、300,000件の癌の症例が診断されている。
また、日本において、4人から5人に1人が、癌又は癌治療に関連した合併症で死亡している。このため、癌治療又は癌治療に関連した合併症の治療の改善に相当な努力が継続して行われている。
また、癌は早期に発見されると治癒率が高いことから、癌を早期に発見でき、精度の高い癌の診断方法の開発や改良が行われている。
即ち、大部分の癌患者は、その癌又は癌治療に関連した合併症腫瘍によっては死亡しない。癌患者の多くは、転移した癌、即ち、元の腫瘍細胞から分かれて、元の腫瘍細胞が存在している部位とは別の部位に移動する悪性細胞から形成される複数の腫瘍コロニーに負けるのである。
従って、患者の初期の腫瘍が発見・検出でき、そのような初期の腫瘍を、内科的切除術や、内科的抗がん治療、手術、放射線治療、抗がん剤による化学療法、及び、これらの組み合わせにより、縮小したり、除去できれば、患者は、癌を克服したり、延命することができる確立が非常に高くなる。
しかしながら、患者の腫瘍の早期発見・検出が困難であり、また、悪性腫瘍を特徴づける、転移性コロニーは、その検出が困難であり、除去も困難である、という現状があり、臨床的観点から言えば、癌治療は困難なものとなっている、という現状がある。
ところで、癌の転移は、以下に示すような複雑な出来事を含む。
1) 最初の癌の発生位置から周囲組織への癌の拡張。
2) 体腔及び血管中への腫瘍細胞の浸透。
3) 循環系により腫瘍細胞が離れた部位への輸送・放出。
4) 滞留部位における腫瘍細胞の組織への再侵入。
5) 新たな部位における腫瘍細胞の生存と、腫瘍増殖をするための血管形成等の新たな環境への適応。
即ち、腫瘍細胞は、初期の段階で、周囲組織に侵入し、組織バリアを破壊するので、腫瘍細胞は、固形腫瘍の発達の非常に初期段階(即ち、腫瘍が、10個以上10個以下の腫瘍細胞を含む時点)において、組織空間及び毛細血管中に侵入し、結局は、血液中に至るものと仮定される。この時点においては、腫瘍細胞の大部分は、アポトーシスや、免疫担当細胞により排除されたり、免疫担当細胞の殺傷機能により細胞死するか休眠状態となる。
これは、このような段階では、腫瘍細胞は、異所性環境において未だ生き残ることができず、また、成長することができないからである。
ところで、本発明者等の知る限り、このような初期段階の小さな腫瘍を検出する検出方法は未だ開発されていない。
現時点では、腫瘍がある程度大きくなった場合に、特定タイプの癌の診断に使用可能な高感度方法が開発されているに過ぎない。
そのような診断方法としては、例えば、乳房中の2×10個の乳腫瘍細胞を検出できる、乳房撮影が開発されている。
乳癌の場合、その初期段階においては、腫瘍細胞の大部分の流出細胞が死ぬとされている。しかしながら、腫瘍細胞が、10個以上10個まで増殖すると、何世代かにわたり、遺伝子的に不安定な腫瘍細胞のクローンは、更に、遺伝子レベルの変化を遂げ、より迅速に増殖する攻撃的な変異細胞を生じうる。そして、このような変異細胞は、二次腫瘍として生着する可能性が非常に高い。
しかしながら、上述したように、現状では、癌の診断は、初期段階では行えないため、例えば、膵臓、胃、卵巣、腎臓、肺、肝臓などの大部分の癌は、通常、1010個〜1012個の腫瘍細胞が存在するような、癌の非常に後期の段階において行われており、この時点においては、腫瘍が既に周囲組織に侵入し、転移している可能性がある。
従来は、癌の初期段階における癌診断ができないこと、癌の根治治療が困難なこと、癌転移の複雑さ、化学療法に用いる薬剤の副作用の問題や、癌患者の治療に対する欲求不満を考慮して、治療方針を立て、癌の転移又は再発に対する治療効果をモニターするための診断試験の開発が行われてきた。
そして、最近20数年に亘る研究成果として、種々の診断試験方法が開発され、その有用性が評価されてきている。
より詳しく述べると、最初の試みとして、胎児の消化器で生産される胎児性のガン抗原と考えられていたが、結腸・直腸ガン、膵ガン、胆道系ガンなどの消化器ガンや、肺ガンなどの特定の腫瘍細胞上に出現する、癌胎児性抗原(carcino embryonic antigen;CEA)に関するイムノアッセイの定式化がある。
その後、免疫化学的手法であるラジオイムノアッセイ法(RIA)や、エンザイム・イムノアッセイ(Enzyme−Linked Immuno−Sorbent Assay(酵素免疫測定法(EIA(又はELISAとも称される。)))の出現により、CEAを腫瘍マーカーとして用いたRIA(ビーズ固相法)や、αフェトプロテイン(α−fetoprotein;AFP)を腫瘍マーカーとして用いた逆受身赤血球凝集反応(R−PHA)やRIA(ビーズ固相法)や、前立腺特異性抗原をマーカーとして用いたエンザイ厶・イムノアッセイ(EIA)やRIA(ビーズ固相法)や、CA15−3を腫瘍マーカーとして用いたRIA(ビーズ固相法)や、CA50をマーカーとして用いたエンザイム・イムノアッセイ(EIA)や、CA125をマーカーとして用いたRIA(ビーズ固相法)や、PIVKA II([protein induced by vitamine K absence or antagonist]II)を用いたエンザイム・イムノアッセイ(EIA)などが多数開発されてきた。
しかしながら、これらの診断方法では、CEA、AFP、CA15−3、CA50、CA125、PIVKA IIといった抗原は、通常、血中への出現が予想されず、検出された時には、既に、患者の癌が既に相当進行しており、既に、患者の生存の望みが殆どないので、これらの診断方法は、幾分、実りの無いものである、という評価を受けている。
しかしながら、最近10年間において、ある一つの腫瘍マーカーが、癌の早期検出に有用であると期待され、その臨床応用に向けた研究開発が継続されてきた。
即ち、このある一つの腫瘍マーカーとは、「テロメレース(hTERT)」である。
このテロメレース(hTERT)は、90%の癌腫で産生し且つ発現する悪性腫瘍特異的抗原(酵素)であり、その活性が1994年に発見されて以来(Kim NW.Science.23;266:2011−2015(1994)を参照)、その後、遺伝子の発見及び機能解析が行われてきたが、その特異性にも関わらず、臨床応用に関しては、腫瘍形成、転移後の切除組織中からの検出に留まり、現行の臨床検査のように血液中から簡易に検出することができなかった。また、このテロメレース(hTERT)は、たとえ、検出できても、混入しわずかに産生し発現している他の細胞(リンパ球など)の影響が無視できず、定性的に検出することが正確にはできなかった。
2000年には、乳癌患者の血液からhTERTの定性的検出に関する報告がなされたが(Chen XQ.Clin Cancer Res.6:3823−3826(2000))、感度が60%以下であり臨床応用にはほど遠かった(Kim NW.Science.23;266:第2011頁〜第2015頁(1994)、Chen XQ.Clin Cancer Res.6:第3823頁〜第3826頁(2000)を参照。)。
ところで、有用な診断試験をするためには、非常に高感度且つ信頼できる定量性が必要とされる。
また、血液1ml中における1個の腫瘍細胞の存在が検出できる血液試験が開発できれば、それは、平均して循環している全部で3000個〜4000個の細胞に匹敵する。動物において、腫瘍を生着させるための接種実験において、実際にそのような数の細胞が腫瘍の生着を可能にする。さらに、3000個〜4000個の循環細胞が腫瘍中の全細胞の0.01%である場合、全部で、約4×107個の細胞が含まれることになり、そのような数の細胞を含む腫瘍は、現在のいずれの方法によっても見ることができない。
それゆえ、腫瘍細胞が癌の初期の段階において流出する場合、上記の感度を有する試験が開発できれば、その試験により、癌を検出することができる。
また、腫瘍細胞が腫瘍サイズといくらかの関連性を持って血液中に流出する場合、腫瘍負荷を評価するための定量的試験は、有益である。
また、流出した腫瘍細胞と生体内の免疫細胞との闘いの末、腫瘍細胞や免疫担当細胞内の多種多様なDNAや蛋白質やRNAなどが血液中に流れ出る結果、RNAが検出されるとも考えられる。もしそうであれば、腫瘍特異的RNAの検出は、転移の最も早期での出来事を物語っているのかも知れない。しかしながら、従来は、非常に初期段階の循環腫瘍細胞の存在に関する情報がなかった。
上記のことより、二次腫瘍の確立の前に転移能を有する循環中の細胞を固定するための方法、特に癌の初期において同定する方法が渇望される。癌細胞の存在証拠を血液中から検出でき、正常細胞での発現レベルを認識でき、癌細胞由来のRNAを1〜10コピーレベルの高感度で検出できることは、臨床上、極めて有用な情報を提供することになる。
機器開発の向上に伴い、癌組織の定量化が可能になったことを受けて、そのような高感度な定量法が可能となる時代に入ってきたことで、各種癌細胞由来RNAの定量化の実現の準備は技術的にも整っていると考えられる。
本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであって、特に、癌の初期において癌細胞の存在証拠を血液中から検出できる、癌診断方法を提供することを目的としている。
【発明の開示】
請求の範囲第1項に記載の癌診断方法は、体液中から体細胞・癌細胞成分として、RNAのみを含む試料を得る工程と、RNAを含む試料から逆転写酵素でcDNAを生成する逆転写酵素反応と蛍光色素を用いたPCRを、プライマーとして、hTERTでは、CGGAAGAGTGTCTGGAGCAAとGGATGAAGCGGAGTCTGGAを用いて行い、PCRにより増幅されたPCR産物をPCR産物と結合した蛍光色素を用い、定量的に計測する工程とを備える。
尚、本明細書で用いる用語、「体液」は、血液、リンパ液その他の体液を意味する。
請求の範囲第2項に記載の癌診断方法は、体液中から体細胞・癌細胞成分として、RNAのみを含む試料を得る工程と、RNAを含む試料から逆転写酵素でcDNAを生成する逆転写酵素反応と蛍光色素を用いたPCRを、プライマーとして、AFPでは、CCAGAAACTAGTCCTGGATGTとCGTGGTCAGTTTGCAGCATTを用いて行い、PCRにより増幅されたPCR産物をPCR産物と結合した蛍光色素を用い、定量的に計測する工程とを備える。
本発明に係る癌診断方法は、癌の初期において癌細胞の存在証拠を血液中から検出できるので、早期に医療行為によって癌細胞を根絶することが可能になる。
また、本発明に係る癌診断方法では、血液中からmRNAを含む試料を得るようにしたので、癌組織腫瘍形成、転移後の切除組織中からテロメレース(hTERT)やAFPを検出するような場合に比べ、癌細胞の有無を正確に検出することができる。
また、PCRを行う際に使用するプライマーを工夫することで、癌の初期において癌細胞の存在証拠を血液中から検出できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、PCR法により、本手法で抽出されたRNA中にはTリンパ球分画(CD3、CD8、PCRにより増幅されたPCR産物をPCR産物と結合する蛍光色素を用い、定量的に計測する)しか検出できず、血球成分の除去を確認したことを示す図である。
第2図は、慢性肝疾患(肝炎および肝硬変)から肝ガン発ガンへ増悪するにつれて、多段階的にテロメレース遺伝子およびAFPの発現が検出されていることをコピー数で示しており、各病変間での統計学的有意差が数字で表の上部に示されている。散布図の左傍には95%信頼区間をエラーバーで示し、エラーバーに囲まれた四角は平均値を示している。
第3図は、本発明に係る遺伝子発現(hTERT mRNA)による癌診断方法が、従来の腫瘍マーカーより優れた方法であることを、健常者に対する肝ガン患者の統計学的有意差を用いて示している箱ヒゲ図である。
第4図は、臨床上の各検査項目や検査所見と、定量化した2つの遺伝子発現(hTERT mRNA及びAFP mRNA)を多変量解析した結果を示している図である。
第5図は、2つの遺伝子発現(hTERT mRNA及びAFP mRNA)の癌診断方法による定量化の感度と特異度を示しているROC曲線である。(ROC曲線は、Receiver operator characteristic curve analysisを示す。)
第6図は、慢性肝疾患から肝ガンへの過程と、従来の腫瘍マーカー(AFP、AFP−L3、DCP)による癌診断方法と、2つの遺伝子発現(hTERT mRNA及びAFP mRNA)による癌診断方法の定量値を含めた各臨床検査結果や検査所見との相関を多変量解析した結果を示す図である。
第7図は、肝ガンにおける従来の腫瘍マーカー(AFP、AFP−L3、DCP)と該方法で用いた2つの遺伝子発現(hTERT mRNA及びAFP mRNA)の結果を、慢性肝疾患から肝ガンへの過程で、感度および特異度について比較した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明に係る癌診断方法の一例を更に詳しく説明する。
本発明に係る癌診断方法では、まず、被験者(患者)の血液を採取する。
次に、血液中からRNAを含む試料を得る。
この工程においては、血液中を循環しているRNAを、他の血液細胞の影響を極力受ける事のないように、選択的に抽出する必要がある。
この目的を達成するために、被験者(患者)から体液を採液してから、迅速に以下のように処理をする。
1) 採血管にEDTAが混入していない場合
患者の同意の下に、採液により得られた体液(約1〜2ml)を700〜800xgで10分間、4℃で遠心分離し、上清を他のRNase freeのチューブに移し、それを1500xgで10分間、4℃で遠心分離し、上清を別のRNase freeのチューブに移し、最後に、1600〜3000xgで10分間、4℃で遠心分離し、RNAを含む原試料として、直ぐに用いるか、使用まで−80℃に貯蔵する。
2) 採血管にEDTAが混入している場合
上記1)と同様にして得られた体液を1500〜1600xgで10分間、4℃で遠心分離し、上清を他のRNase freeのチューブに移し、15,000xg以上で10分間、4℃で遠心分離し、その上清を0.22micro meterのフィルターで濾過して、RNAを含む原試料として、直ぐに用いるか、使用まで−80℃に貯蔵する。
次に、RNAを含む試料を、プライマーとして、hTERTのときは、CGGAAGAGTGTCTGGAGCAAとGGATGAAGCGGAGTCTGGAを用い、PCRを行い、PCRにより増幅されたPCR産物をPCR産物と結合する蛍光色素を用い、定量的に計測する。尚、AFPでは、プライマーとして、CCAGAAACTAGTCCTGGATGTとCGTGGTCAGTTTGCAGCATTを用い、PCRを行い、PCRにより増幅されたPCR産物をPCR産物と結合する蛍光色素を用い、定量的に計測する。
より詳しく説明すると、上記1)又は2)により調製した、RNAを含む試料液100マイクロリットル(μl)に対し175マイクロリットル(μl)の希釈緩衝液(dilution buffer)、lysis buffer(SV total RNA isolation system)、または、TRIzol試薬を用いて、その後、DNase処理を含んだRNA抽出をマニュアル(この例では、SV total RNA isolation systemのマニュアル)に従って執り行う。
2回の溶出により得られたRNase free water 200micro liter中のRNAを、20micro literをRT−PCR反応に用いるか、10micro liter相当の溶媒になるように調製し、その1マイクロリットル(μl)をRT−PCR反応に用いる。
次いで、ワンステップで定量化するために、RNAから逆転写酵素でcDNAを生成する逆転写酵素反応と蛍光色素(この例では、SYBR Green 1、ロッシュ(Roche)社製を用いている。)を用いた定量的PCR法をシングルチューブで行う。
より詳細に説明すると、総反応液量25マイクロリットル(μl)に対し、1マイクロリットル(μl)以上2マイクロリットル(μl)の蛍光色素(この例では、SYBR Green 1、ロッシュ(Roche)社製を用いている。)を用い、マニュアル(この例では、One Step RT−PCR kit(QIAGEN)のマニュアル)に従って反応液を調製し、定量計測器(例えば、LightCycler(ロッシュ(Roche)社製)にセットして、マニュアル(この例では、One Step RT−PCR kit(QIAGEN)のマニュアル)の指示通りに作動させ、原試料中のRNAの発現量を定量化する。
その際、反応条件として、1)逆転写反応を50℃で30分、2)反応活性化段階として、95℃で15分、その後、3)3ステップのPCR反応を55サイクル程度行う。アニーリング温度はプライマーに依存する。例えば、プライマーとして、hTERTでは、CGGAAGAGTGTCTGGAGCAAとGGATGAAGCGGAGTCTGGAを用いAFPでは、CCAGAAACTAGTCCTGGATGTとCGTGGTCAGTTTGCAGCATTを用いる。得られた計測数は、各腫瘍に応じて統計処理された最適カットオフ価(ガンの種類によっては特異性を高めるために複数のマーカーのカットオフ値を用いる。)と比較分析され、採血された患者における、目的とする癌細胞の有無を判定する。
次に、試験結果を説明する。
第1図は、PCR法により、本発明に係る癌診断方法で抽出されたRNA中には、Tリンパ球分画(CD3、CD8、PCRにより増幅されたPCR産物をPCR産物と結合する蛍光色素を用い、定量的に計測する。)しか検出できず、血球成分の除去を確認したことを示す図である。
第1図より明らかなように、本発明者は、本発明に係る癌診断方法にとって重要な肯定である、血球細胞除去は、血球細胞マーカーであるCD3、CD8、CD19、CD22、CD45、CD68のmRNAなどで確認した。
第2図は、肝疾患(肝炎および肝硬変)から肝ガン発ガンへ増悪するにつれて、多段階的にテロメレース遺伝子およびAFPの発現が検出されていることをコピー数で示しており、各病変間での統計学的有意差が数字で表の上部に示されている。散布図の左傍には95%信頼区間をエラーバーで示し、エラーバーに囲まれた四角は平均値を示している。
また、第3図は、本発明に係る癌診断方法が、従来の腫瘍マーカーによる癌診断方法よりも優れた方法であることを、健常者に対する肝ガン患者の統計学的有意差を用いて示している箱ヒゲ図である。
第2図及び第3図の結果から、本発明に係る癌診断方法では、肝病変の進行および増悪につれて、hTERTmRNAの発現は多段階的に高まっていることが、明らかになった。
第4図は、臨床上の各検査項目や検査所見と、定量化した2つの遺伝子発現(hTERT mRNA及びAFP mRNA)を多変量解析した結果を示している図である。
第4図から、臨床上の検査項目(肝機能についての生化学的検査やウイルス量などの血清学的検査)、検査所見(腫瘍径、腫瘍数、腫瘍の分化度)との多変量解析による比較により、特に、hTERTmRNAの発現は、発ガンということに関しては腫瘍径、腫瘍数、腫瘍の分化度との強い相関があることが、明らかになった。
第5図は、2つの遺伝子発現(hTERT mRNA及びAFP mRNA)による癌診断方法による定量化の感度と特異度を示しているROC曲線である。尚、ROC曲線は、Receiver operator characteristic curve analysisを示す。
第5図から明らかなように、ガン死亡率第4位である肝ガンにおいて、本発明に係る遺伝子発現(hTERT mRNA)による癌診断方法は、感度が88.2%であり、特異度が68.7%であった。
一方、遺伝子発現(AFP mRNA)による癌診断方法は、感度が70.1%であり、特異度が65.8%であった。
また、肝ガンの発ガン過程(ほとんどの肝発ガンはウイルス性慢性肝疾患から発ガンであり、健常者を除いて統計処理する場合)で、本発明に係る遺伝子発現(hTERT mRNA)による癌診断方法の感度は、85.9%であり、また、特異度は、70.0%であり、他の腫瘍マーカーに劣るものではなかった。
第6図は、慢性肝疾患から肝ガンへの過程と、従来の腫瘍マーカー(AFP、AFP−L3、DCP)と、2つの遺伝子発現(hTERT mRNA及びAFP mRNA)による癌診断方法の定量値を含めた各臨床検査結果や検査所見との相関を多変量解析した結果を示す図である。
また、第7図は、肝ガンにおける従来の腫瘍マーカー(AFP、AFP−L3、DCP)による癌診断方法と、2つの遺伝子発現(hTERT mRNA及びAFP mRNA)による癌診断方法の結果を、慢性肝疾患から肝ガンへの過程で、感度および特異度について比較した図である。
第6図及び第7図から、肝ガンの腫瘍マーカーの一つであり、最も実績が高かったアルファフェトプロテイン(AFP)を2つの遺伝子発現(hTERT mRNA及びAFP mRNA)による癌診断方法で検出したところ、本発明に係る遺伝子発現(hTERT mRNA)による癌診断方法の方が、従来の遺伝子発現(AFP)による癌診断方法(感度69.3%、特異度60.0%)よりも高い感度(感度85.9%、特異度70.0%)を示すことが、明らかになった。
また、本発明に係る遺伝子発現(AFP mRNA)による癌診断方法の方が、従来の遺伝子発現(AFP)による癌診断方法(感度69.3%、特異度60.0%)よりも高い感度(感度71.6%、特異度67.5%)を示すことが、明らかになった。
このことから、本発明に係る遺伝子発現(hTERT mRNA)による癌診断方法が、転移性の悪性腫瘍全般にわたり、有効であると考えられた。更に、本発明に係る遺伝子発現(hTERT mRNA)による癌診断方法を基礎として、体液中RNAによるガン細胞存在診断が、健診レベルでもスクリーニングが可能になり、一人でも多くの患者が早期発見及び再発発見により、その生命予後が著しく改善されうると考える。
また、本発明に係る遺伝子発現(AFP mRNA)による癌診断方法を基礎として、体液中RNAによるガン細胞存在診断が、健診レベルでもスクリーニングが可能になり、一人でも多くの患者が早期発見及び再発発見により、その生命予後が著しく改善されうると考える。
尚、本明細書の、発明を実施するための最良の形態では、本発明に係る癌診断方法として、血液中からRNAを抽出した例を示したが、本発明に係る癌診断方法では、血液からRNAを抽出する場合に限られず、血液以外の体液からRNAを抽出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明に係る癌診断方法は、癌の初期において癌細胞の存在証拠を血液中から検出できるので、早期に医療行為によって癌細胞を根絶することが可能になる。
また、血液中からmRNAを含む試料を得るようにしたので、癌組織腫瘍形成、転移後の切除組織中からテロメレース(hTERT)やAFPを検出するような場合に比べ、癌細胞の有無を正確に検出することができる。
また、PCRを行う際に使用するプライマーを工夫することにより、癌の初期において癌細胞の存在証拠を血液中から検出できる。
本発明に係る癌診断方法は、医療分野において利用する価値が高い。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液中から、体細胞・癌細胞成分として、RNAのみを含む試料を得る工程と、
前記RNAのみを含む試料から逆転写酵素でcDNAを生成する逆転写酵素反応と蛍光色素を用いたPCRを、プライマーとして、hTERTでは、CGGAAGAGTGTCTGGAGCAAとGGATGAAGCGGAGTCTGGAを用いて行い、前記PCRにより増幅されたPCR産物を前記PCR産物と結合した蛍光色素を用い、定量的に計測する工程とを備える、癌診断方法。
【請求項2】
体液中から、体細胞・癌細胞成分として、RNAのみを含む試料を得る工程と、
前記RNAのみを含む試料から逆転写酵素でcDNAを生成する逆転写酵素反応と蛍光色素を用いたPCRを、プライマーとして、AFPでは、CCAGAAACTAGTCCTGGATGTとCGTGGTCAGTTTGCAGCATTを用いて行い、前記PCRにより増幅されたPCR産物を前記PCR産物と結合した蛍光色素を用い、定量的に計測する工程とを備える、癌診断方法。

【国際公開番号】WO2005/049864
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515698(P2005−515698)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017542
【国際出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(503429951)
【出願人】(502377774)
【Fターム(参考)】