発光による生細胞及び死細胞のアッセイ
1種の生物発光試薬を用いて、試料中の生細胞及び死細胞を検出する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年4月13日出願の米国特許出願第60/923,376号の出願日の利益を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発光は、特定の生物において、ルシフェラーゼ媒介酸化反応の結果として生じる。多種多様の非常に様々な種、特に、フォティナス・ピラリス(Photinus pyralis)及びフォチュリス・ペンシルバニカ(Photuris pennsylvanica)(北アメリカのホタル)、ピロフォラス・プラギオフタラマス(Pyrophorus plagiophthalamus)(ジャマイカのコメツキムシ)、レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)(ウミシイタケ)及びいくつかの細菌(例えば、キセノルハブデュス・ルミネセンス(Xenorhabdus luminescens)及びビブリオ(Vibrio)種)のルシフェラーゼ遺伝子は、極めて一般的な発光レポーター遺伝子である。ホタルのルシフェラーゼはまた、ATP濃度を測定するための一般的なレポーターであり、その役割において、バイオマスの検出に広く用いられている。発光はまた、他の酵素によっても、それらの酵素を特定の合成基質、例えばアルカリホスファターゼ及びアダマンチルジオキセタンホスフェート、又はホースラディッシュペルオキシダーゼ及びルミノールと混合した場合に産生される。
【0003】
ルシフェラーゼ遺伝子は、発光アッセイの非放射性、感度、及び極めて広い直線的な範囲のため、遺伝子レポーターとして広く用いられている。例えば、わずか10−20モルのホタルルシフェラーゼを検出することができる。その結果、遺伝子活性のルシフェラーゼアッセイは、原核細胞及び真核細胞双方の培養、トランスジェニックの植物及び動物、及び無細胞発現系を含む、事実上あらゆる生物実験系に使用されている。同様に、ATP濃度測定に使用されるルシフェラーゼアッセイは、高感度であり、10−16モル未満の検出が可能である。
【0004】
ルシフェラーゼは、酵素特異的な基質、例えばルシフェリンの酸化を介して光を発生させることができる。ホタルルシフェラーゼ及び他のすべての甲虫ルシフェラーゼでは、発光は、マグネシウムイオン、酸素、及びATPの存在下で生じる。レニラ(Renilla)ルシフェラーゼを含む花虫類動物のルシフェラーゼでは、基質のセレントラジン(coelentrazine)と共に、酸素のみを必要とする。一般的に、遺伝子活性を測定するための発光アッセイにおいて、反応基質及び他の発光活性化試薬が、レポーター酵素を発現すると推測される生物系に導入される。次いで、発光が生じた場合は、それを、ルミノメーター又は任意の適切な放射エネルギー測定装置を使用して測定する。このアッセイは、非常に迅速で高感度であり、放射性試薬を必要とすることなく、迅速且つ容易に遺伝子発現データを提供する。
【0005】
レポーターは、細胞内又は上清内の分子の存在又は活性を検出するために有用である。例えば、プロテアーゼは、血液凝固、炎症、再生、線維素溶解、及び免疫応答におけるタンパク質の代謝回転などの様々な生理過程に関与する、大型且つ重要な酵素群を構成する。多くの疾患状態は、特定のプロテアーゼ及びそれらの阻害剤の活性変化によって引き起こされ、それを特徴とし得る。研究において、又は臨床の場において、これらのプロテアーゼを測定する能力は、疾患状態の調査、治療及び管理にとって重要である。例えば、カスパーゼ−3及びカスパーゼ−7は、システインアスパルチル特異的プロテアーゼ(FIXアスパルテート特異的システインプロテアーゼ、「ASCP」としても知られている)ファミリーのメンバーであり、哺乳動物細胞の細胞死において鍵となるエフェクターの役割を演じている(Thornberryら、1992;Nicholsonら、1995;Tewariら、1995;及びFernandes−Alnemriら、1996)。
【0006】
プロテアーゼを測定するために、多数の発色基質及び蛍光発生基質が用いられてきており(Monseesら、1994;Monseesら、1995)、修飾ルシフェリンが蛍光指示薬の代替物として提供されている(米国特許第5,035,999号及び第5,098,828号)。プロ基質として、ヒドロラーゼに対する認識部位を有する修飾ルシフェリンを使用する方法は、Miska及びGeigerによって初めて記載され(1989年)、この方法では、修飾ルシフェリンを、一定の期間ヒドロラーゼと共にインキュベートし、次いで、混合物のアリコートを、ルシフェラーゼを含む溶液に移し入れることによって、不均一系アッセイを実施していた。Masuda−Nishimuraらは、β−ガラクトシダーゼ基質−修飾ルシフェリンを用いたシングルチューブ(均一)アッセイの使用を報告している(2000年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
培養物中の細胞の実験処理により、4つの主要な結果:細胞毒性(細胞膜完全性の喪失)、細胞静止作用(細胞毒性によらない細胞周期の停止)、増殖又は対照と比較して影響なし、がもたらされ得る。従来の生死判別試薬は、処理後に残った生存細胞の数を提供するが、細胞毒性作用及び細胞静止作用の識別はしない。逆にいえば、細胞毒性アッセイは、細胞膜の完全性を失った細胞の相対数を提供するが、各ウェルの生細胞の残存数は提供しない。インキュベーション時間及び処理時間が長くなるほど、多くの複合体細胞モデルが用いられるので、アッセイはそれらの問題に対処する必要がある。
【0008】
生細胞及び死細胞を検出するために必要とされるものは、改善されたアッセイ、例えば均一アッセイである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、試料中の死細胞集団及び生細胞集団双方を測定できる、単一の読み出し試薬を提供する。一実施形態において、この試薬は、プロテアーゼ基質を含む修飾ルシフェリン(ルシフェリン誘導体)である。一実施形態において、この修飾ルシフェリン試薬を試料に加え、発光を使用して死細胞集団を測定し、次いで、修飾ルシフェリン試薬の化学的性質に影響を与えずに残存生細胞を溶解する試薬を加える。溶解試料中の発光を検出する。死細胞のシグナル寄与を全発光シグナルから差し引き、生細胞のシグナルを得る。発光フォーマットは、死細胞のプロテアーゼ活性とルシフェラーゼとの間のシグナル安定状態に達し、(意図的な溶解後の)第2のシグナルもまた安定状態において収集されるので、減法が可能である。対照的に、死細胞に関係するプロテアーゼは、時間の関数として全蛍光発光シグナルに寄与し続けるので、減法は、生成物蓄積アッセイ(例えば蛍光発光)において、非常に困難である。発光半減期が非常に短い発光アッセイは、同様に煩わしい。半減期のより長い、例えば5分を超える半減期、例えば約30分、約2時間又はそれ以上の半減期、例えば少なくとも5時間の半減期を有するルシフェラーゼの使用(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるPCT/US99/30925を参照されたい)により、ルシフェラーゼ読み出しの「白熱」様特性が提供され、それによってそれらの欠点に対処する。
【0010】
一実施形態において、本発明は、プロテアーゼ基質を含むように修飾されたルシフェリンを使用して、生細胞及び死細胞の数を検出できる、生物発光アッセイを提供する。単一容器、例えばマルチウェルプレートのウェルの中で生細胞及び死細胞の数を検出することが好ましい。本明細書中で使用する場合、「生物発光アッセイ」は、ルシフェラーゼ、適切な対応する基質、例えば、修飾ルシフェリンとプロテアーゼとの反応生成物がルシフェラーゼに対する基質である、プロテアーゼ基質を有するルシフェリンの修飾形態及び1種又は複数種の他の試薬又は補助因子、例えばATP及び/又はマグネシウムを含む。したがって、本発明の生物発光アッセイは、プロテアーゼの量又は存在を直接測定でき、試料中の生細胞及び死細胞の数を間接的に測定し、非ルシフェラーゼ媒介反応によるATPの発生を利用しない。一実施形態において、ルシフェラーゼ媒介反応は、非ルシフェラーゼ媒介反応によるATPの発生を利用しない。
【0011】
例えば、一実施形態において、プロテアーゼ認識部位を含むように修飾された(例えば、共有結合を介して修飾された)アミノルシフェリンなどの、ルシフェラーゼに対する基質を生物発光アッセイに用いて、即ち、ルシフェラーゼが存在する場合、プロテアーゼを検出できる。検出すべきプロテアーゼは、天然の酵素又は例えば融合タンパク質を含む組換え酵素であってよいが、分泌酵素ではなく、例えばそれは細胞質性であり、それらに対する生物発光性基質は生存細胞不透過性であり、即ち、それは生存細胞には(受動的にも、又は能動的にも)実質的には侵入しない。一実施形態において、プロテアーゼはシステインプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ又はアミノペプチダーゼであってよい。
【0012】
本明細書において使用する場合、「生物発光アッセイ試薬」は、生物発光基質並びに任意選択の補助因子(単数又は複数)又は生物発光反応のための酵素などの他の分子(単数又は複数)を含む。一実施形態において、生物発光アッセイ試薬は、AAF−アミノルシフェリン、Z−DEVD−アミノルシフェリン、Z−LETD−アミノルシフェリン、Z−IETD−アミノルシフェリン、Z−DVAD−アミノルシフェリン又はZ−LEHD−アミノルシフェリンであってよい。様々な実施形態の試薬は、アミノルシフェリン、ジヒドロルシフェリン、ルシフェリン6’−メチルエーテル又はルシフェリン6’−クロロエチルエーテルに連結した、他のペプチド又はポリペプチドの基質を含み得る。他の実施形態において、生物発光アッセイ試薬は、式I〜Vのいずれか1つの化合物などの、別のルシフェリン誘導体であってもよい。
【0013】
本発明の方法に用いる試料は、細胞培養物又は細胞を含む生理液試料、例えば血液、脳脊椎液又は尿の試料であってよい。試料中の細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。
【0014】
一実施形態において、本発明は、細胞集団、例えば細胞培養物の集団の中の生細胞及び死細胞の存在又は数を測定するための、プロテアーゼ媒介生物発光反応を分析する方法を提供する。この方法は、細胞を、プロテアーゼ認識部位を含むように修飾されたルシフェリンと接触させるステップを含む。プロテアーゼ認識部位は、細胞膜の完全性が減少(傷ついた)又は喪失した場合、細胞外空間又は上清にのみ存在するプロテアーゼに特異的である。試料が、細胞膜の完全性が減少した細胞を含む場合、プロテアーゼが、細胞外空間又は上清に放出され、プロテアーゼは、ルシフェリンと結合したプロテアーゼ基質を切断し、ルシフェラーゼに対する基質を作り出す。その後、発光を検出する。次いで、試料を、細胞を溶解する試薬又は条件、例えば界面活性剤、凍結/解凍又は超音波処理に供し、発光を検出する。この方法は、2つの反応間を調整する試薬を用いる、2ステップのアッセイを含み得る。一実施形態において、生物発光アッセイではない反応のための試薬を加えてもよく、場合により溶解の前後でその反応の結果を測定又は検出することができる。したがって、この方法は、溶解の前後に他の活性又は分子を検出するステップを含み得る。
【0015】
本発明はまた、モジュレーター、例えば細胞生存の阻害剤の存在又は量を検出するための方法を提供する。一実施形態において、この方法は、プロテアーゼに対する生物発光基質、ルシフェラーゼを含む生物発光アッセイ用の試薬及び検査薬を含む反応混合物を提供するステップを含む。生物発光基質とプロテアーゼとの反応により、ルシフェラーゼに対する基質である生成物が生じ、その生成物とルシフェラーゼとの反応により、発光が生じる。発光の存在又は量を、試験反応と対照反応とにおいて比較する。2つの結果の比較により、モジュレーターの作用が示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】CytoTox−Gloの二重機能性を表す図である。生存率対死細胞の相対的発光及び生細胞の相対的発光のプロットである。
【図1B】CytoTox−Gloの二重機能性を表す図である。パネルAと同じデータであるが、各反応に関する最大シグナルの%をグラフにした。r2をExcelによって適合させた。
【図2A】ノコダゾールの対数対ATPの相対発光及びノコダゾールの対数対生HeLa細胞(24時間処理)の相対的発光のプロットの図である。
【図2B】パクリタキセルの対数対ATPの相対発光及びパクリタキセルの対数対生HeLa細胞(24時間処理)の相対的発光のプロットの図である。
【図3】HeLa細胞(24時間処理)における、パクリタキセルの対数対プロテアーゼの相対的発光及びパクリタキセルの対数対プロテアーゼの相対蛍光発光のプロットの図である。
【図4A】Jurkat細胞(24時間)における、アクチノマイシンDの対数対最大応答のパーセントのプロットの図である。
【図4B】HeLa細胞(24時間処理)における、コルヒチンの対数対プロテアーゼの相対的発光及びコルヒチンの対数対プロテアーゼの相対蛍光発光のプロットの図である。
【図5】Jurkat細胞(6時間)における、カルシウムイオノフォアの対数対生細胞の相対的発光及びカルシウムイオノフォアの対数対死細胞の相対的発光のプロットの図である。
【図6A】HeLa細胞(24時間)における、コルヒチンの対数対生細胞の相対的発光及びコルヒチンの対数対死細胞の相対的発光のプロットの図である。
【図6B】HeLa細胞(24時間)における、パクリタキセルの対数対生細胞の相対的発光及びパクリタキセルの対数対死細胞の相対的発光のプロットの図である。
【図7】Jurkat細胞(6時間)における、スタウロスポリン濃度対生細胞の相対的発光及びスタウロスポリン濃度対死細胞の相対的発光のプロットの図である。
【図8】時間対相対的発光のプロットの図である。
【図9A】正確さを表す図である(同じ用量系列、同じ細胞数、異なる複製ウェル)。イオノマイシンを、RPMI 1640+10%のFBS中で希釈し、希釈系列を2×4で複製した。Jurkat細胞を加え、6時間インキュベートした。AAF−Gloを加え、細胞毒性を室温(RT)で15分後に測定した。溶解試薬を加え、発光を、さらに15分後に再度測定した。
【図9B】精密度を表す図である(同じ用量系列、異なる細胞数)。プレーティング数などの誤りをシミュレートするために、異なる数のJurkat細胞を加えた以外はA)と同じ反応である。結果は、同じEC50で示すが、反応細胞数の桁の違いは、細胞数によるものである。
【図9C】有効性を表す図である(異なる用量系列、同じ細胞数)。1/2及び2倍の用量のイオノマイシンを、10,000細胞/ウェルに用いた以外はA)と同じ反応である。このことは、アッセイの化学的性質が有効性におけるわずかな相違を検出できることを示す。
【図10A】プロテアソーム阻害剤のエポキソミシンを48時間使用した、生存率及び細胞毒性の二重測定を示す図である。
【図10B】生存率の2つの直交測定により、減法と同等のEC50が得られることを示す図である。
【図10C】直交測定(LDHの化学的性質)が死(非生存)細胞の発光測定値と同等であることを示す図である。
【図11A】細胞周期が早期細胞毒性により停止したことを示す図である。生存の測定は、薬剤の用量が高いと細胞周期が停止するため(分裂しない)、薬剤の用量が低いほうが、生存細胞が多いことを示しているが、細胞毒性の測定は、非常に早期の細胞毒性を示している。
【図11B】細胞毒性による生存率の減少を示す図である。生存及び細胞毒性は、細胞毒性を測定するための最適時間のため、レシオメトリックである。
【図11C】後期細胞毒性による生存率の減少を示す図である。生存率が、細胞毒性のため減少している。下降(細胞毒性シグナルの最も高い濃度での低下)は、後期細胞毒性を反映している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書において使用する場合、以下の用語及び表現は指示された意味を有する。本発明の化合物が非対称に置換炭素原子を含み、光学活性体又はラセミ体に単離され得ることは理解されるであろう。ラセミ体の分離による、又は光学活性出発物質からの合成によるような、光学活性体の調製法は当分野において周知である。構造のすべてのキラル型、ジアステレオマー型、ラセミ体及びすべての幾何異性体は本発明の一部である。
【0018】
ラジカル、置換基及び領域に関する以下に記載した特定の値は、単に例示のためであり、それらはラジカル及び置換基に関する他の定義された値又は定義された領域内の他の値を排除するものではない。
【0019】
本明細書において使用する場合、「置換される」という用語は、「置換される」を使用した表現で示される基の1つ又は複数の(例えば、1、2、3、4又は5つ;いくつかの実施形態においては1、2、又は3つ、他の実施形態においては1又は2つの)水素が、示される原子の正常な原子価を超えず、置換によって安定した化合物がもたらされるという条件で、表示された基(単数又は複数)からの選択又は当業者に知られている適切な基と置き換えられることを示すことを意味するものである。示される適切な基には、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアリールスルホニル、複素環スルフィニル、複素環スルホニル、ホスフェート、サルフェート、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシル(アルキル)アミン及びシアノが含まれる。さらに、示される適切な基には、例えば、−X、−R、−O−、−OR、−SR、−S−、−NR2、−NR3、=NR、−CX3、−CN、−OCN、−SCN、−N=C=O、−NCS、−NO、−NO2、=N2、−N3、NC(=O)R、−C(=O)R、−C(=O)NRR−S(=O)2O−、−S(=O)2OH、−S(=O)2R、−OS(=O)2OR、−S(=O)2NR、−S(=O)R、−OP(=O)O2RR、−P(=O)O2RR−P(=O)(O−)2、−P(=O)(OH)2、−C(=O)R、−C(=O)X、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)O−、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NRR、−C(S)NRR、−C(NR)NRRが含まれ得、Xはそれぞれ独立して、ハロゲン(「ハロ」):F、Cl、Br又はIであり、Rはそれぞれ独立して、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、保護基又はプロドラッグ部分である。当業者には容易に理解されるであろうが、置換基がケト(=O)又はチオキソ(=S)などの場合、その場合は置換される原子上の2個の水素原子が置き換わる。
【0020】
「安定化合物」及び「安定構造」は、反応混合物からの、有用な純度での単離に耐えられる、十分堅固な化合物を指すことを意味する。本発明では、安定化合物だけを企図し、特許請求するが、特定の不安定化合物、例えば、容易には単離できない化合物は、本明細書に記載の方法に用いることができる。
【0021】
1つのジアステレオマーは、別のものと比較して優れた特性又は活性を示し得る。必要に応じて、ラセミ材料の分離は、キラルカラムを使用したHPLCによって、又はThomas J.Tuckerら、J.Med.Chem.1994、37、2437〜2444により記載されたように、カンファン酸クロリドなどの分割剤を使用した分割によって達成できる。キラル化合物はまた、キラル触媒又はキラル配位子、例えばMark A.Huffmanら、J.Org.Chem.1995、60、1590〜1594を使用して直接合成することもできる。
【0022】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、例えば、1〜30個の炭素原子、多くの場合1〜12個又は1〜約6個の炭素原子を有する、分岐、非分岐又は環状の炭化水素を指す。例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−メチル−1−プロピル、2−ブチル、2−メチル−2−プロピル(t−ブチル)、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−2−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−1−ブチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどを含む。アルキルは、非置換であっても、置換であってもよい。アルキルはまた、場合により部分的又は全体的に不飽和であってもよい。したがって、アルキル基の列挙は、アルケニル基及びアルキニル基双方を含む。アルキルは、上に記載且つ例示したように一価の炭化水素ラジカルであり得、又は二価の炭化水素ラジカル(即ち、アルキレン)であり得る。
【0023】
「アルケニル」という用語は、モノラジカルな、分岐又は非分岐の部分的に不飽和な炭化水素鎖(即ち、炭素間がsp2二重結合)を指す。一実施形態において、アルケニル基は、2〜10個の炭素原子又は2〜6個の炭素原子を有し得る。別の実施形態において、アルケニル基は、2〜4個の炭素原子を有する。例としては、限定するものではないが、エチレン、又はビニル、アリル、シクロペンテニル、5−ヘキセニルなどを含む。アルケニルは、非置換であっても、置換であってもよい。
【0024】
「アルキニル」という用語は、完全に不飽和である部分(即ち、炭素間がsp三重結合)を有する、モノラジカルな、分岐又は非分岐の炭化水素鎖を指す。一実施形態において、アルキニル基は、2〜10個の炭素原子又は2〜6個の炭素原子を有し得る。別の実施形態において、アルキニル基は、2〜4個の炭素原子を有し得る。この用語は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、1−オクチニルなどの基で例示される。アルキニルは、非置換であっても、置換であってもよい。
【0025】
「シクロアルキル」という用語は、単環又は多重凝縮環を有する、3〜10個の炭素原子の環状アルキル基を指す。このようなシクロアルキル基は、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単環構造又はアダマンタニルなどの多重環構造を含む。シクロアルキルは、非置換であっても、置換であってもよい。シクロアルキル基は、一価であっても二価であってもよく、アルキル基に関して上に記載したように、場合により置換されていてもよい。シクロアルキル基は、場合により1つ又は複数の不飽和部位を含むことができ、例えば、シクロアルキル基は、1つ又は複数の炭素間二重結合、例えばシクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエンなどを含むことができる。
【0026】
「アルコキシ」という用語は、アルキル−O−の基を指し、アルキルは本明細書の上記の通りである。一実施形態において、アルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシなどを含む。アルコキシは、非置換であっても、置換であってもよい。
【0027】
本明細書で使用する場合、「アリール」は、親芳香族環系の単一の炭素原子由来の1つの水素原子を除去した芳香族炭化水素基を指す。このラジカルは、親環系の飽和炭素原子又は不飽和炭素原子であり得る。アリール基は、6〜30個の炭素原子を有し得る。アリール基は、単環(例えばフェニル)又は少なくとも1つの環が芳香族である、多重凝縮(multiple condensed)(縮合(fused))環(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル又はアントリル)を有し得る。代表的なアリール基は、限定するものではないが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどに由来するラジカルを含む。アリールは、アルキル基に関して上に記載したように、非置換であっても又は場合により置換されていてもよい。
【0028】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指す。同様に、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0029】
「ハロアルキル」という用語は、同一であっても又は異なっていてもよい、1つ又は複数の、本明細書において定義されたハロ基によって置換された、本明細書において定義されたアルキルを指す。一実施形態において、ハロアルキルは、1、2、3、4又は5個のハロ基で置換されていてよい。別の実施形態において、ハロアルキルは、1、2又は3個のハロ基で置換されていてよい。ハロアルキルという用語はまた、ペルフルオロ−アルキル基も含む。代表的なハロアルキル基は、例としてトリフルオロメチル、3−フルオロドデシル、12,12,12−トリフルオロドデシル、2−ブロモオクチル、3−ブロモ−6−クロロヘプチル、1H,1H−ペルフルオロオクチルなどを含む。ハロアルキルは、アルキル基に関して上に記載したように、場合により置換されていてもよい。
【0030】
「ヘテロアリール」という用語は、1つ、2つ又は3つの芳香族環を含み、芳香族環の中に少なくとも1つの窒素、酸素又は硫黄原子を含む、単環式、二環式又は三環式系として、本明細書において定義され、これは非置換又は例えば、上記の「置換される」の定義のような、1つ又は複数の、特に1〜3個の置換基で置換され得る。典型的なヘテロアリール基は、1個又は複数個のヘテロ原子に加えて、2〜20個の炭素原子を含む。ヘテロアリール基の例には、限定するものではないが、2H−ピロリル、3H−インドリル、4H−キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β−カルボリニル、カルバゾリル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル、インダゾリル、インドリシニル(indolisinyl)、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナンサジニル(phenarsazinyl)、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル及びキサンテニルが含まれる。一実施形態において、「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子及び非ペルオキシド酸素、硫黄及びN(Z)(式中、Zは存在しないか又はH、O、アルキル、アリール又は(C1〜C6)アルキルアリールである)から独立して選択される、1、2、3又は4個のヘテロ原子を含む、5又は6個の環原子を含む単環式芳香族環を表す。別の実施形態において、ヘテロアリールは、それらから誘導された、約8〜10個の環原子のオルト縮合二環式複素環、特にベンズ誘導体、或いはプロピレン、トリメチレン又はテトラメチレンのジラジカルをそれらに縮合させることによって誘導されたものを表す。
【0031】
「複素環」という用語は、酸素、窒素及び硫黄の群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、「置換される」という用語において本明細書で定義した1つ又は複数の基で場合により置換された、飽和又は部分的不飽和な環系を指す。複素環は、1つ又は複数個のヘテロ原子を含む、単環式、二環式又は三環式の基であり得る。複素環基はまた、環に結合したオキソ基(=O)又はチオキソ(=S)基を含み得る。複素環基の限定されない例は、1,3−ジヒドロベンゾフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,4−ジチアン、2H−ピラン、2−ピラゾリン、4H−ピラン、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、モルホリン、ピペラジニル、ピペリジン、ピペリジル、ピラゾリジン、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジン、ピロリン、キヌクリジン及びチオモルホリンを含む。
【0032】
「複素環」という用語は、例示の目的であり、限定するものではないが、Paquette,Leo A.;Principles of Modern Heterocyclic Chemistry(W.A.Benjamin、New York、1968)、特に、1、3、4、6、7及び9章;The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A Series of Monographs(John Wiley & Sons、New York、1950から現在)、特に、13、14、16、19及び28巻;並びにJ.Am.Chem.Soc.1960、82、5566に記載された複素環のモノラジカルを含み得る。一実施形態において、「複素環」は、1つ又は複数個(例えば、1、2、3又は4)の炭素原子が、ヘテロ原子(例えば、O、N又はS)で置き換えられた、本明細書において定義された「炭素環」を含む。
【0033】
複素環の例には、例示の目的であり、限定するものではないが、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化型テトラヒドロチオフェニル(sulfur oxidized tetrahydrothiophenyl)、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル(piperidonyl)、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサンチニル、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンズオキサゾリニル、イサチノイル及びbis−テトラヒドロフラニルが含まれる。
【0034】
例示の目的であり、限定するものではないが、炭素結合複素環は、ピリジンの2、3、4、5又は6位、ピリダジンの3、4、5又は6位、ピリミジンの2、4、5又は6位、ピラジンの2、3、5又は6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール又はテトラヒドロピロールの2、3、4又は5位、オキサゾール、イミダゾール又はチアゾールの2、4又は5位、イソオキサゾール、ピラゾール又はイソチアゾールの3、4又は5位、アジリジンの2又は3位、アゼチジンの2、3又は4位、キノリンの2、3、4、5、6、7又は8位、或いはイソキノリンの1、3、4、5、6、7又は8位において結合する。炭素結合複素環には、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、5−ピリジル、6−ピリジル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、6−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピラジニル、3−ピラジニル、5−ピラジニル、6−ピラジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリルなどが含まれる。
【0035】
例示の目的であり、限定するものではないが、窒素結合複素環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの1位、イソインドール又はイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾール又はβ−カルボリンの9位において結合できる。一実施形態において、窒素結合複素環には、1−アジリジル、1−アゼテジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル及び1−ピペリジニルが含まれる。
【0036】
「炭素環」という用語は、単環式の場合3〜8個の炭素原子、二環式の場合7〜12個の炭素原子及び多環式の場合約30個までの炭素原子を有する、飽和、不飽和又は芳香族の環を指す。単環式炭素環は、通常3〜6個、さらに典型的には5又は6個の環原子を有する。二環式炭素環は、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系のように配置された7〜12個の環原子、或いはビシクロ[5,6]又は[6,6]系のように配置された9又は10個の環原子を有する。炭素環の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキス−1−エニル、1−シクロヘキス−2−エニル、1−シクロヘキス−3−エニル、フェニル、スピリル及びナフチルが含まれる。炭素環は、アルキル基に関して上に記載したように、場合により置換されていてもよい。
【0037】
「アルカノイル」又は「アルキルカルボニル」という用語は、−C(=O)Rを指し、式中、Rは先に定義したアルキル基である。
【0038】
「アシルオキシ」又は「アルキルカルボキシ」という用語は、−O−C(=O)Rを指し、式中、Rは先に定義したアルキル基である。アシルオキシ基の例には、限定するものではないが、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ及びペンタノイルオキシが含まれる。上で定義した任意のアルキル基を使用し、アシルオキシ基を形成できる。
【0039】
「アルコキシカルボニル」という用語は、−C(=O)OR(又は「COOR」)を指し、式中、Rは先に定義したアルキル基である。
【0040】
「アミノ」という用語は、−NH2を指す。アミノ基は、「置換される」という用語に関して本明細書において定義したように、場合により置換されていてもよい。「アルキルアミノ」という用語は、−NR2を指し、式中、少なくとも1つのRはアルキルであり、第2のRはアルキル又は水素である。「アシルアミノ」という用語はN(R)C(=O)Rを指し、式中、それぞれRは独立して水素、アルキル又はアリールである。
【0041】
「アミノ酸」という用語は、D又はL型の天然アミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びVal)の残基並びに非天然アミノ酸(例えば、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸;馬尿酸、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸、スタチン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、シトルリン、α−メチル−アラニン、パラ−ベンゾイルフェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン及びtert−ブチルグリシン)の残基を含む。この用語はまた、従来のアミノ保護基(例えば、アセチル又はベンジルオキシカルボニル)を担持する、天然及び非天然のアミノ酸並びにカルボキシ末端において、(例えば、(C1〜C6)アルキル、フェニル若しくはベンジルエステル或いはアミドとして;或いはα−メチルベンジルアミドとして)保護されている天然及び非天然のアミノ酸も含む。他の適切なアミノ及びカルボキシ保護基は、当業者に知られている(例えば、Greene,T.W.;Wutz,P.G.M.、Protecting Groups In Organic Synthesis、第2版、John Wiley & Sons,Inc.、New York(1991)及びそれらに引用されている参考文献を参照されたい)。
【0042】
「ペプチド」という用語は、2〜35の(例えば、上で定義した)アミノ酸配列又はペプチジル残基を表す。配列は、線形であっても又は環状であってもよい。例えば、環状ペプチドは、配列中の2つのシステイン残基間にジスルフィド架橋を形成することにより調製できる、又はもたらされ得る。好ましくは、ペプチドは、3〜20又は5〜15のアミノ酸を含む。ペプチド誘導体は、米国特許第4,612,302号、第4,853,371号及び第4,684,620号に開示されたように、又は本明細書の以下の実施例に記載されたように調製できる。本明細書中に具体的に列挙されたペプチド配列は、左側がアミノ末端であり、右側がカルボキシ末端として書かれている。
【0043】
「単糖類」という用語は、糖又は他の炭化水素、特に単糖を指す。単糖類は、C6−ポリヒドロキシ化合物、通常C6−ペンタヒドロキシ、多くの場合環状グリカンであり得る。この用語は、既知の単糖及びそれらの誘導体並びに2種以上の単糖類残基を有する多糖類を含む。単糖類は、アミノ酸の定義において上で述べたように、ヒドロキシル基上に保護基を含み得る。単糖類のヒドロキシル基は、1つ又は複数のハロ基又はアミノ基で置換されてもよい。さらに、炭素原子の1個又は複数個は、例えばケト基又はカルボキシル基に酸化されてもよい。
【0044】
「中断される」という用語は、別の基が、「中断」という用語を使用する表現において述べられる特定の炭素鎖の、2つの隣接する炭素原子(及びそれらが結合した水素原子(例えば、メチル(CH3)、メチレン(CH2)又はメチン(CH)))の間に、指示原子それぞれの正常な原子価を超えず、中断により安定化合物がもたらされることを条件として、挿入されることを示す。炭素鎖を中断できる適切な基は、例えば、1つ又は複数の非ペルオキシドオキシ(−O−)、チオ(−S−)、イミノ(−N(H)−)、メチレンジオキシ(−OCH2O−)、カルボニル(−C(=O)−)、カルボキシ(−C(=O)O−)、カルボニルジオキシ(−OC(=O)O−)、カルボキシラト(−OC(=O)−)、イミン(C=NH)、スルフィニル(SO)及びスルホニル(SO2)を含む。アルキル基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5又は約6)の前述の適切な基で中断され得る。中断部位はまた、アルキル基の炭素原子とアルキル基が結合している炭素原子との間であってよい。
【0045】
1つ又は複数の置換基を含む、任意の上記の基に関しては、このような基が、立体的に実践不可能な及び/又は合成的に実現不可能な任意の置換又は置換パターンを、当然ながら含まないことが理解される。さらに、本発明の化合物は、これらの化合物の置換により生じるすべての立体化学異性体を含む。
【0046】
本明細書に記載の化合物内の選択された置換基は、再帰的な程度まで存在する。本文脈において、「再帰的置換基(recursive substituent)」は、ある置換基がそれ自体の別の例として列挙され得ることを意味する。このような置換基の再帰的性質のため、理論的には、非常に多くが任意の所与の請求項に存在し得る。医薬品化学及び有機化学分野の当業者は、このような置換基の総数が、意図する化合物の所望の特性により合理的に制限されることを理解している。このような特性は、限定されない例として、分子量、溶解度又はlogPなどの物理特性、意図する標的に対する活性などの適用特性、及び合成の容易さなどの実用特性を含む。
【0047】
再帰的置換基は本発明の意図する態様である。医薬品化学及び有機化学分野の当業者は、このような置換基の多様性を理解している。再帰的な置換基が本発明の請求項に存在する程度まで、上で説明したように総数が決定されるであろう。
【0048】
本明細書で使用する場合、「リンカー」という用語は、2つの化学基を1つに共有結合でつなぎ、場合により自己切断できる、又は酵素に対する基質への共有結合の場合、その酵素又は別の分子により切断され得る炭素鎖であり、その鎖は場合により、1つ又は複数の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換)芳香族環又はペプチド結合により中断されている。
【0049】
「ルシフェラーゼ」という用語は、特に明記しない限り、天然に存在する又は突然変異ルシフェラーゼを指す。天然に存在する場合、ルシフェラーゼは、生物から当業者により容易に得ることができる。ルシフェラーゼが、天然に存在するルシフェラーゼ、又は天然に存在するルシフェラーゼのルシフェラーゼ−ルシフェリン反応における活性を維持している突然変異体である場合、それは、ルシフェラーゼをコードするcDNAを発現するように形質転換された細菌、酵母、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などの培養物から、又はルシフェラーゼをコードする核酸からルシフェラーゼを産生するためのインビトロの無細胞系から容易に得ることができる。ルシフェラーゼは、Promega Corporation、Madison、Wisから入手できる。
【0050】
本明細書で使用する場合、「生物発光アッセイ」又は「生物発光反応」は、非ルシフェラーゼ酵素と、ルシフェリン若しくはアミノルシフェリンの誘導体との反応の産物が、ルシフェラーゼの基質である、又はルシフェリン若しくはアミノルシフェリンの誘導体を有する、非酵素的反応の産物がルシフェラーゼの基質である、或いはルシフェラーゼと、ルシフェリン若しくはアミノルシフェリンの誘導体との反応が生物発光、即ち測定可能量の光を発生する反応を含む。
【0051】
本明細書で使用する場合、「生物発光」は、酵素と、光を発生する基質との反応の結果産生される光である。このような酵素(生物発光酵素)の例は、ホタルルシフェラーゼ、コメツキムシルシフェラーゼ、レニラ(Renilla)ルシフェラーゼ、ウミホタルルシフェラーゼ、エクリオン(Aequorin)発光タンパク質、オベリン(obelin)の発光タンパク質などを含む。
【0052】
本明細書で使用する場合、「生物発光アッセイ試薬」は、基質並びに補助因子(単数又は複数)又はタンパク質、例えば生物発光反応のための酵素などの他の分子(単数又は複数)を含み得る。
【0053】
「反応混合物」は、特定の反応のためのすべての試薬を含んでもよく、又はこの反応のための試薬の少なくとも1つを欠いていてもよい。例えば、ルシフェラーゼ反応混合物は、ルシフェラーゼに対する基質を除く反応用試薬、例えば、試験試料がルシフェラーゼの基質を有するかどうかを判定するために有用な反応混合物を含むことができる。非ルシフェラーゼ酵素に関する反応混合物は、検出されるべき分子を除く、すべての反応用試薬を含むことができ、例えば混合物は、非ルシフェラーゼ酵素のための補助因子を除くすべての試薬を含み、また混合物は、試験試料中の補助因子の存在を検出するために有用である。
【0054】
本明細書で使用する場合、「ルシフェリンの誘導体」又は「アミノルシフェリンの誘導体」は、非ルシフェラーゼ酵素に対する基質及びルシフェラーゼに対するプロ基質、ルシフェラーゼに対する基質、非ルシフェラーゼ酵素に対する基質及びルシフェラーゼに対する基質である分子、或いは、非酵素反応において産生される分子を検出するために有用である分子である。本発明の誘導体は、1つ又は複数の三環及び/又はD−ルシフェリン若しくはアミノルシフェリンの骨格の1つ又は複数の環に結合した置換基への1つ又は複数の修飾を有する。
【0055】
本発明の方法
本発明の方法は、細胞膜の透過性及び完全性に関与するタンパク質分解活性に基づく。本方法の有利性は、アッセイの読み出しの感度、容易さ及び柔軟性を含む。生存率の測定は、生物発光プロテアーゼ基質、及び細胞膜の完全性が損なわれない限り細胞から放出されないが細胞外環境において活性である細胞内プロテアーゼ、例えば偏在する保存された細胞内プロテアーゼの相対的不透過性に基づく。この実施形態において有用な基質は、N−末端又はC−末端においてブロックされる基質を含む、エキソプロテアーゼ又はエンドプロテアーゼに対する基質を含む。実質的な細胞不透過性プロテアーゼ基質は、死細胞に関するアッセイにおいてエンドポイントを測定するために一般的に用いられる期間、例えば、プロテアーゼ基質を試料に加えた後、5、4、3、2又は1.5時間未満或いは5、15、30、60又は120分を超える時間において、生存細胞において検出不可能な基質である。一実施形態において、生物発光性の実質的な細胞不透過性基質は、アミノ酸或いはジペプチド又はトリペプチドの基質を含む。一実施形態において、生物発光性の細胞不透過性基質は、トリペプチジルペプチダーゼ、カルパイン又はキモトリプシンに対する基質並びにルシフェリンに対するプロ基質である。
【0056】
したがって、本明細書に記載の生細胞及び死細胞のアッセイの使用は、細胞の健康についての逆の相補的な尺度を提供し、条件の変更、例えば、化合物による処理による影響を検出するために用いることができる。さらに、プロテアーゼ活性は、実用的な感度(10,000細胞/ウェルにおける生存率の2〜5%未満の差を検出)を有し、この感度は数分で達成できる。さらに、基質(単数又は複数)を、細胞のウェルにウェルの用量を劇的に変更することなく混合でき、このことにより次のステップのエンドポイントでの化学反応の柔軟性が増大する。
【0057】
したがって、本発明は、試料中の生細胞及び死細胞を検出する方法を提供する。この方法は、試料を、プロテアーゼに対する生物発光性の実質的な細胞不透過性基質と接触させるステップを含む。試料は、場合により、1つ又は複数の試験条件又は薬剤を用いて処理される。プロテアーゼにより媒介される基質との反応は、ルシフェラーゼに対する基質である産物を作り出し、溶解後の、プロテアーゼにより媒介される基質との反応も、同じ基質を作り出す。試料中の発光を、溶解の前後で検出し、それぞれ順番に、試料中の死細胞及び生細胞の数又は存在を検出する。
【0058】
本発明は、同じ試薬、即ち、プロテアーゼにより変化した試薬を使用して、試料中で死細胞及び生細胞を検出するアッセイの方法を提供する。得られた各反応に関するシグナルは、溶解の前後の試料中のプロテアーゼの存在又は量に関係する。
【0059】
一実施形態において、プロテアーゼ及びルシフェラーゼのアッセイは、直列で実施できる。例えば、ルシフェリン誘導体を、プロテアーゼ反応が可能であるが、ルシフェラーゼ反応は不可能である、例えばルシフェラーゼが存在しない条件下で試料に加える。次いで、1つ又は複数のルシフェラーゼ反応用試薬を加え、発光を検出する。次いで、混合物を溶解剤又は溶解をもたらす条件に供する。再度発光を検出する。
【0060】
本発明のアッセイは、試料、例えば、真核細胞、例えば、酵母、トリ、植物、昆虫又は限定するものではないがヒト、サル、ネズミ、イヌ、ウシ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ヤギ又はブタの細胞を含む哺乳動物細胞或いは原核細胞或いは2種以上の異なる生物に由来する細胞を含む試料中の生細胞及び死細胞の検出を可能にする。細胞は、組換え技術を介して遺伝子改変されていなくてもよく(非組換え細胞)、或いは組換えDNAで一過性にトランスフェクトされ、且つ/又はゲノムが組換えDNAで安定して増大し、又は遺伝子が崩壊する、例えば、プロモーター、イントロン若しくはオープンリーディングフレームを崩壊するようにゲノムが改変され、又は1つのDNA断片が別のものと置き換えられている組換え細胞であってもよい。組換えDNA又は置換えDNA断片は、本発明の方法で検出されるプロテアーゼ、このプロテアーゼのレベル又は活性を改変する部分及び/又は分子に関係しない遺伝子産物或いはこのプロテアーゼのレベル又は活性を改変する部分又はこのプロテアーゼに関係しない遺伝子産物をコードできる。
【0061】
一実施形態において、本発明に従った方法は、迅速で、高感度な、細胞のアリコートなどの単一の試料において死細胞及び生細胞を検出する方法を提供する。一実施形態において、この方法は、生物発光アッセイにおいて、プロテアーゼ、例えばエキソプロテアーゼ又はエンドプロテアーゼの存在又は量(活性)を定量化するステップを含む。一実施形態において、本発明は、細胞の単一アリコートにおいて、1種のプロテアーゼの存在又は量を測定する方法に関する。一実施形態において、このプロテアーゼは内因性プロテアーゼである。例えば、一実施形態において、本発明は、原核細胞又は真核細胞の精製された調製品、例えば培養真核細胞、例えば哺乳動物細胞を含む調製物中の少なくとも1つの天然プロテアーゼの活性を観察するための、改善された、感度の高い方法を提供する。一実施形態において、細胞内プロテアーゼに対する細胞不透過性基質を、溶解されていないが、検査薬又は条件に供されることのある細胞を含む試料に加え、発光を検出し、その後、細胞を溶解し、発光を検出する。生物発光シグナルの強度は、プロテアーゼの存在又は量の関数である。
【0062】
本明細書に記載のルシフェリン誘導体の使用は、プロテアーゼとの相互作用における光学的性質に測定可能な変化を生じるアッセイをもたらすことができ、この相互作用は、ルシフェリン誘導体の構造を変化させる。ルシフェリン誘導体とプロテアーゼとの反応の生成物は、D−ルシフェリン又はアミノルシフェリンである必要はない。例えば、ルシフェリン誘導体は、化学的リンカーを介してルシフェリン又はアミノルシフェリンに連結したプロテアーゼに対する反応性の化学基を含む基質を含み得る。プロテアーゼによる誘導体の反応性化学基の変換から、基質の一部、化学的リンカーの一部、化学的リンカー又は基質及び化学的リンカーの一部を含む(維持した)生成物を得ることができ、その生成物は、ルシフェラーゼに対する基質である。プロテアーゼとの相互作用後に、場合により、1つ又は複数のさらなる反応、例えばβ脱離を受けて、ルシフェラーゼに対する適切な基質を生じる生成物を得ることができるルシフェリン誘導体をさらに提供する。ルシフェリンの骨格がさらにそのリング構造において修飾されたルシフェリン誘導体、例えばキノリルルシフェリン又はナフチルルシフェリンを提供し、並びにチアゾール環のカルボキシ位に修飾がなされる。
【0063】
いくつかのプロテアーゼの例示的切断部位を、表1に説明する。
表1
【表1】
Xは、1つ又は複数のアミノ酸である。
【0064】
例示的プロテアーゼ基質は、限定するものではないが、Z−LLVY、AAF、Z−LR、Z−FR、GF、F、Y、Z−GAM、D−ALK、GA、GG、Z−RLRGG、Z−LRGG、AAY、PFR、GGL、SY、FR及びRPFHLLVYを含み、例示的プロテアーゼは、限定するものではないが、表2のプロテアーゼを含む。
表2
【表2】
【0065】
一実施形態において、プロテアーゼを、アミノ修飾ルシフェリン又はそれらのカルボキシ保護誘導体を含む基質を使用して検出し、これらの修飾は、プロテアーゼに対する基質を含む。別の実施形態において、この修飾は、3又は4個までのアミノ酸残基であり、これらはプロテアーゼに対する認識部位を含む。一実施形態において、基質は、アミノルシフェリンのアミノ基又はそれらのカルボキシ修飾誘導体に、ペプチド結合を介して、共有結合で連結している。一実施形態において、ペプチド又はタンパク質の基質のN末端を修飾し、例えば、アミノ末端の保護基を使用して、アミノペプチダーゼによる分解を防いでいる。適切なプロテアーゼ又は補助因子が存在しない状態で、このような基質及びルシフェラーゼを含む混合物は、最小のアミノルシフェリンが存在する場合、最小の光を発生する。適切なプロテアーゼの存在下で、基質及びアミノルシフェリンを連結する結合は、酵素により切断され、ルシフェラーゼに対する基質を作り出すことができる。したがって、ルシフェラーゼ、例えば、天然、組換え又は突然変異ルシフェラーゼ並びに任意の補助因子及び適切な反応条件の存在下で光が発生し、これはプロテアーゼの存在又は活性に比例する。
【0066】
一実施形態において、プロテアーゼ及びルシフェラーゼにより媒介される反応が、同時に開始されるか否かにかかわらず、ルシフェラーゼにより媒介される反応が開始した後で発光を検出する。他の実施形態において、反応は基本的に同時に開始する。一実施形態において、プロテアーゼ以外の分子に特異的な反応を開始し、プロテアーゼに基づくアッセイの前に、その分子の存在又は活性を検出し、プロテアーゼの存在又は量の検出の前に、例えば、初回シグナルが、例えば少なくとも50%衰えるまで待つことによって、或いは初回反応に関する失活剤を加えることによって、場合によりこの分子に関する反応を実質的に減少させる。したがって、本発明の生物発光反応は、他のアッセイが細胞の生存率に干渉しない、又は発光の検出(定量化)に干渉しない限り、他のアッセイと組み合わせることができる。したがって、いくつかの実施形態において、反応の1つ又は複数は、例えば、プロテアーゼの検出前に、反応に関する酵素を阻害することによって終了する。好ましくは、1つのアッセイにより発生されるシグナルは、少なくとも1つの他のアッセイにより発生されるシグナルの定量化に、実質的に干渉しない。
【0067】
本方法において有用なルシフェリン誘導体
本発明の誘導体の範囲内にあるルシフェリンの修飾は、1つ又は複数の環原子の置換、1つ又は複数の、環原子に結合した置換基(原子又は基)の1つ又は複数の置換、及び/又は環に対する1つ又は複数の原子の付加、例えば、環の拡大又は付加或いはそれらの組合せが含まれ、これらの修飾の少なくとも1つはプロテアーゼ基質を含む。天然のホタルルシフェリンは、3つの連結した環、6位にOH基を有する6員の「ベンゾ」環(以下「環A」又は「A環」)、6員のベンゾ環に縮合した5員のチアゾール環(以下、「環B」又は「B環」)及び5位においてカルボキシル基で修飾された5員のチアゾール環(以下「環C」又は「C環」)を有する。
【0068】
例えば、A環が修飾されたルシフェリン誘導体は、A環のC原子と別の原子との置換、環の付加、環原子に結合した置換基の、別の原子又は基との置換或いは、それらの任意の組合せを有することができ、これらの1つはプロテアーゼ基質を含むことができる。B環が修飾されたルシフェリン誘導体は、5員環中の原子への付加又は5員環中の原子の置換、例えば、1つ又は複数の原子の挿入を有することができ、それによって、例えば6員環への環の拡大、環の中のN又はSの、異なる原子、例えばC又はOとの置換、環原子に結合した置換基原子又は基との置換、或いはそれらの任意の組合せとなり、これらの1つはプロテアーゼ基質を含むことができる。
【0069】
C環が修飾されたルシフェリン誘導体は、環の中の原子の別の原子との置換、環原子に結合した置換基の、異なる原子又は基との置換、或いはそれらの任意の組合せを有することができ、これらの1つはプロテアーゼ基質を含むことができる。一実施形態において、本発明の誘導体は、複数の位置において修飾された誘導体であり、例えば、この誘導体は、A環に2か所(又はそれ以上)の修飾、B環に2か所(又はそれ以上)の修飾、C環に2か所(又はそれ以上)の修飾、或いはそれらの任意の組合せを有し、これらの1つはプロテアーゼ基質を含む誘導体である。一実施形態において、誘導体は、D−ルシフェリンの環の1つ上の置換基の、プロテアーゼに対する基質、又はリンカー及びプロテアーゼに関する基質との置換を含む。
【0070】
一実施形態において、本発明は式I:
【化1】
[式中、
Yは、N、N−オキシド、N−(C1〜C6)アルキル又はCHであり、
Xは、S、O、CH=CH、N=CH又はCH=Nであり、
Z及びZ’は、独立してH、R、OR、SR、NHR又はNRRであり、
Z”は、O、S、NH、NHR、N=Nであり、
Qは、カルボニル、CH2又は直接結合であり、
W1は、H、ハロ、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C20)アルケニル、ヒドロキシル、(C1〜C6)アルコキシ、又は
W1及びZは、双方とも環A上のケト基であり、環Aにおいて任意選択の二重結合を表す点線の少なくとも1つは存在せず、
W2は、それぞれ独立してH、ハロ、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C4)アルケニル、ヒドロキシル、(C1〜C6)アルコキシであり、
K1、K2、K3及びK4は、それぞれ独立してCH、N、N−オキシド又はN−(C1〜C6)アルキルであり、
環A及び環Bの点線は、任意選択の二重結合を表し、
A’及びB’は、場合により存在する、環Aに縮合した芳香族環であり、これらの1つだけが、縮合三環系を形成するように化合物中に存在し、A’又はB’が存在する場合、基Z’は、場合により存在する、環A’又は環B’のどちらかの置換基であり、
Rは、それぞれ独立して、H、(C1〜C20)アルキル、(C2〜C20)アルケニル、(C2〜C20)アルキニル、(C3〜C20)シクロアルキル、(C1〜C12)アルコキシ、(C6〜C30)アリール、ヘテロアリール、複素環、(C1〜C20)アルキルスルホキシ、(C6〜C30)アリールスルホキシ、ヘテロアリールスルホキシ、(C1〜C20)アルキルスルホニル、(C6〜C30)アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、(C1〜C20)アルキルスルフィニル、(C6〜C30)アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、(C1〜C20)アルコキシカルボニル、アミノ、NH(C1〜C6)アルキル、N((C1〜C6)アルキル)2、トリ(C1〜C20)アンモニウム(C1〜C20)アルキル、ヘテロアリール(C1〜C20)アルキル、四級窒素を有するヘテロアリール、四級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、(C1〜C20)アシル、(C1〜C20)アシルオキシ、(C1〜C20)アルキルチオ、(C6〜C30)アリールチオ、(C1〜C20)アルキルホスフェート、(C1〜C20)アルキルホスホネート、(C6〜C30)アリールホスフェート、(C6〜C30)アリールホスホネート、ホスフェート、サルフェート、単糖類、1〜約10個のアミノ酸鎖であり、又は、場合によりZ”が酸素の場合、M+であり、Mはアルカリ金属であり、
或いはZ又はZ’がNRRであり、RRがNと一緒にヘテロアリール又は複素環基を形成する場合、
式中、任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリール又は複素環基は、(C1〜C20)アルキル、(C2〜C20)アルケニル、(C2〜C20)アルキニル、(C3〜C20)シクロアルキル、(C1〜C20)アルコキシル、(C1〜C20)アルキルカルボニル,(C1〜C20)アルキルカルボキシル、ハロ、ヒドロキシル、−COORx、−SO2Rx、−SO3Rx、ニトロ、アミノ、(C1〜C20)アルキル−S(O)−、(C1〜C20)アルキル−SO2−、ホスフェート、(C1〜C20)アルキルホスフェート、(C1〜C20)アルキルホスホネート、NH(C1〜C6)アルキル、NH(C1〜C6)アルキニル,N((C1〜C6)アルキル)2、N((C1〜C6)アルキニル)2、メルカプト、(C1〜C20)アルキルチオ、(C6〜C30)アリール、(C6〜C30)アリールチオ、トリフルオロメチル、=O、ヘテロアリール又は複素環を含む、1、2、3、4又は5つの置換基で場合により置換されており、式中、置換基はそれぞれ1〜3つのR基で場合により置換されており、
Rxは、H、(C1〜C6)アルキル又は(C6〜C30)アリールであり、
式中、少なくとも1つのZ又はZ’、例えばZ又はZ’のR基は、1〜約10個のアミノ酸の基又は鎖である]
の化合物又はそれらの塩を提供する。
【0071】
様々な実施形態において、YがNである場合、XはSではない。他の実施形態において、XがSである場合、YはNではなく、
Z又はZ’が窒素部分を含む場合、Z又はZ’の窒素部分の1つ又は双方の水素は、(C1〜C20)アルキル又は基Lにより置き換えることができ、Lはアミノ酸ラジカル、20個までのアミノ酸部分を有するペプチドラジカル又はプロテアーゼに対する基質である任意の他の小型分子である。特定の実施形態において、Lがアミノ酸ラジカル又はペプチドラジカルである場合、少なくとも1つのW2はHではない。
【0072】
Zがヒドロキシル基又は窒素部分である場合、ヒドロキシルのH又は窒素部分は、1〜10個のアミノ酸鎖、(HO)2P(O)−OCH2−、スルホ、−PO3H2により、或いは1〜約12個の炭素原子の炭素鎖を介して基Zに結合したセファロスポラン酸により置き換えることができる。特定の実施形態において、環Bがチアゾール環である場合、スルホ又は−PO3H2基は、(C1〜C6)アルキレン基を介して、ヒドロキシル酸素に結合している。
【0073】
Z又はZ’がヒドロキシル基又は窒素部分である場合、或いはZ”−Rがヒドロキシル基である場合、ヒドロキシル又は窒素部分の1つのHは、基L’のリンカーにより置き換えることができ、L’は酵素により遊離のリンカーに取り外しできる基であり、リンカーは、自己切断でき、場合により1つ又は複数の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、場合により置換された芳香族環又はペプチド結合基(アミド)により中断されている炭素鎖である。
【0074】
「リンカー」基は、リンカーの一方の末端において酸素原子又はNH基を介してL’に結合でき、リンカーの他方の末端は、基Z、Z’又はZ”−Rと、エーテル、エステル又はアミド結合を形成できる。
【0075】
ZがORである場合、式(I)は、場合により、1〜4個のO原子、N原子により場合により中断された(C1〜C12)アルキルジラジカルを含むリンカーを介して、2つのA環で接続された二量体、或いは式(I)の二量体の間に架橋を形成するための、場合により置換されたアリール、ヘテロアリール又は複素環基であり、式(I)の二量体を接続する各Z基のR基は、架橋により置換されている。特定の実施形態において、単糖類はK3に直接結合しない。
【0076】
「A−」基は、陰イオンであり、4級窒素が存在する場合に存在する。式(I)の化合物はまた、4級アンモニウム塩を除く他の塩、例えば上記の塩も含む。
【0077】
様々な実施形態において、環A及びBがナフタレン又はキノリン環系を形成する場合、W1は水素ではなく、環Aの置換基がOHの場合、−Q−Z”−Rは−C(O)−NH−NH2ではなく、YがN又はCHであり、XがCH=CHであり、W1がHである場合、ZはK3に結合するOHではなく、且つ/又はYがN又はCHであり、XがCH=CHでありZがHである場合、W1はK3に結合するOHではない。
【0078】
別の実施形態において、本発明は、式(II):
【化2】
(式中、X、Y、Z、Z”、K1〜K4、W1、W2、A−及びRは、式Iの化合物に関して定義された通りである)
の化合物を提供する。
【0079】
別の実施形態において、本発明は式(III):
【化3】
(式中、Z、Z”、W1、A−及びRは、式Iの化合物に関して定義された通りである)
の化合物を提供する。
【0080】
さらに、式(IV):
【化4】
(式中、
Yは、N、N−オキシド、N−低級アルキル又はCHであり、
Xは、S、CH=CH,又はN=Cであり、
Z及びZ’は、独立してH、OR、NHR、NRR又はボロン原子を介して環A又はA’に結合した環状ジオキサボロラン基であり、
Z”は、O、S、NH、NHR又はN=Nであり、
Wは、それぞれ独立してH、ハロ、C1〜6アルキル、C2〜20アルケニル、ヒドロキシル又はC1〜6アルコキシであり、或いは、
W及びZは、双方とも環A上のケト基であり、環Aの点線は存在せず、
K1、K2、K3及びK4は、それぞれ独立して、CH、N、N−オキシド又はN−低級アルキルであり、
環A及び環Bの点線は、任意選択の二重結合を表し、
Rは、それぞれ独立して、H、アミノ、C1〜20アルキル、C2〜20アルケニル、C3〜20アルキニル、C2〜20アルケニルC1〜20アルキル、C3〜20アルキニルC2〜20アルケニル、C3〜20シクロアルキル、C6〜30アリール、ヘテロアリール、C6〜30アリールC1〜20アルキル、C1〜12アルコキシ、C1〜12アルコキシカルボニル、C1〜20アルキルスルホキシ、C6〜30アリールスルホキシ、C6〜30アリールスルホキシC1〜20アルキル、C1〜20アルキルスルホキシC1〜20アルキル、C1〜20アルコキシカルボニル、C6〜30アリールC1〜20アルコキシカルボニル、C6〜30アリールチオC1〜20アルキル、トリC1〜20アンモニウムC1〜20アルキル、ヘテロアリールスルホキシ、ヘテロアリールC1〜20アルキル、4級窒素を有するヘテロアリール、4級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、N−メチル−テトラヒドロピリジニル又はペンタフルオロフェニルスルホニルであり、
式中、任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、複素環、又はアミノ基は、1つ又は複数の、例えば1、2、3、4又は5つの、C1〜20アルキル、C2〜20アルケニル、C3〜20アルキニル、C3〜20シクロアルキル、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、−COOR1、−SO3R1、アミノ、ニトロ、低級アルキルアミノ、低級アルキニルアミノ、イミダゾリニル−メチルアミノ、ジ−低級アルキルアミノ、ジ−低級アルキニルアミノ、ピペリジノ、ピロリジノ、アゼチジノ、アジリジノ、ジ−イミダゾリニルメチルアミノ、メルカプト、C1〜20アルキルチオ、C6〜30アリールチオ、トリフルオロメチル、C1〜20アルキルカルボキシル、C6〜30アリール、C6〜30アリールC1〜20アルコキシル、ヘテロアリール、複素環、複素環C1〜20アルキル又はC6〜30アリールC1〜20アルキルカルボニルにより、場合により置換され得、基Rは、複数存在する場合、それぞれ独立して定義され、
R1は、水素、C1〜6アルキル又はC6〜30アリールであり、
Qは、C(=O)、CH2又は直接結合であり、
nは、0、1又は2であり、
式中、少なくとも1つのZ又はZ’は、例えばZ又はZ’のR基は、1〜約10個のアミノ酸鎖の基又は鎖であり、
A−は陰イオンであり、4級窒素が存在する場合に存在する)
の化合物又はそれらの塩を提供する。
【0081】
特定の実施形態において、Z又はZ”がアミノである場合、アミノ基の水素の1つ又は双方がC1〜20アルキル又は基Lにより置き換えることができ、Lはアミノ酸ラジカル、20個までのアミノ酸部分を有するペプチドラジカル又はプロテアーゼに対する基質である任意の他の小型分子である。Lがアミノ酸ラジカル又はペプチドラジカルである場合、特定の実施形態においてWはHではない。
【0082】
様々な実施形態において、Zがヒドロキシル又はアミノである場合、ヒドロキシル又はアミノのHは、(HO)2P(O)−OCH2−、スルホ、−PO3H2によって、或いは1つ又は複数の炭素原子の炭素鎖を介してZ基に結合したセファロスポラン酸により置き換えることができる。特定の実施形態において、環Bがチアゾール環である場合、スルホ、又はPO3H2基が低級アルキレン鎖を介してヒドロキシル酸素に結合できる。
【0083】
特定の実施形態において、Z又はZ’がヒドロキシル又はアミノである場合、或いはZ”−Rがヒドロキシルである場合、ヒドロキシル又はアミノの1つのHを、L’−リンカー基によって置き換えることができ、L’は酵素により遊離のリンカーに取り外しできる基であり、リンカーは、自己切断できる炭素鎖であり、場合により1つ又は複数の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換)芳香族環又はペプチド結合により中断されており、リンカーは、リンカーの一方の末端において酸素原子又はNH基を介してL’に結合し、リンカーの他方の末端は、基Z、Z’又はZ”−Rと、エーテル、エステル又はアミド結合を形成する。
【0084】
特定の実施形態において、ZがORである場合、式(IV)は、場合により、CH2又はCH2−C6H4−CH2架橋を介して2つのA環において接続された二量体であり得、式(IV)の二量体に接続する、それぞれのZ基のR基は、架橋により置き換えられる。
【0085】
特定の実施形態において、A’及びB’が、環Aに縮合した任意選択の芳香族環であり、それらの1つだけが、縮合三環系を形成するように同時に存在でき、環B’が存在する場合、基Zが存在し、A’が存在する場合、基Zは存在しない。特定の実施形態において、環Aの1つの炭素は、Nオキシド部分により置き換えることができる。特定の実施形態において、XがN=Cである場合、環Cは、N=C部分の炭素原子に、場合により結合できる。特定の実施形態において、Wが結合している化合物がルシフェリン、ルシフェリンメチルエステル又はアミノルシフェリンである場合、或いは環A及びBがナフタレン又はキノリン環系を形成する場合、Wは水素ではない。特定の実施形態において、環Aの置換基がOHである場合、−Q−Z”−Rは−C(O)−NH−NH2ではない。
【0086】
一実施形態において、環Cに結合するW基は存在しない(即ち、「n」の値が0)。別の実施形態において、環Cに結合するW基はH又はFである。
【0087】
一実施形態において、本発明は、式V:
【化5】
(式中、
R1は、水素、ヒドロキシル、アミノ、C1〜20アルコキシ、置換C1〜20アルコキシ、C2〜20アルケニルオキシ、置換C2〜20アルケニルオキシ、ハロゲン化C2〜20アルコキシ、置換ハロゲン化C2〜20アルコキシ、C3〜20アルキニルオキシ、置換C3〜20アルキニルオキシ、C3〜20シクロアルコキシ、置換C3〜20シクロアルコキシ、C3〜20シクロアルキルアミノ、置換C3〜20シクロアルキルアミノ、C1〜20アルキルアミノ、置換C1〜20アルキルアミノ、ジC1〜20アルキルアミノ、置換ジC1〜20アルキルアミノ、C2〜20アルケニルアミノ、置換C2〜20アルケニルアミノ、ジC2〜20アルケニルアミノ、置換ジC2〜20アルケニルアミノ、C2〜20アルケニルC1〜20アルキルアミノ、置換C2〜20アルケニルC1〜20アルキルアミノ、C3〜20アルキニルアミノ、置換C3〜20アルキニルアミノ、ジC3〜20アルキニルアミノ、置換ジアルキルアミノ、C3〜20アルキニルC2〜20アルケニルアミノ、置換C3〜20アルキニルC2〜20アルケニルアミノ、又は1〜約10個のアミノ酸鎖であり、
R2及びR3は、独立してC又はNであり、
R4及びR5は、独立してS、O、NR8であり、
R6はCH2OH、COR11又は−OM+であり、式中、M+はアルカリ金属又は医薬として許容可能な塩であり、
R7は、H、C1〜6アルキル、C1〜20アルケニル、ハロゲン又はC1〜6アルコキシドであり、
R8は、水素、C1〜20アルキル、CR9R10であり、式中、R9及びR10は独立してH、C1〜20アルキル又はフッ素であり、
R11は、H、OH、C1〜20アルコキシド、C2〜20アルケニル又はNR12R13であり、式中、R12及びR13は独立してH又はC1〜20アルキルであり、
式中、1〜約10個のアミノ酸鎖の少なくとも1つは、式Vの化合物中に、この化合物がプロテアーゼ基質であるように存在する)
の化合物を提供する。
【0088】
上記の式Iを含む、一連の実施形態において、R1は、OH又はNH2ではなく、R7はHではなく、R6はCOR11ではなく、R11はOHではなく、R3及びR2は、双方が炭素ではなく、R4及びR5は、双方が同時にSではない。
【0089】
本発明を、以下の限定されない実施例によりさらに説明する。全実施例に関して、適切な対照反応が当業者により容易に設計される。
【0090】
(例I)
単一のプロテアーゼ基質を用いて、生細胞及び死細胞を検出できるかどうかを確定するために、Jurkat細胞を、RPMI 1640+10%FBS中で100,000細胞/mlに調整した。試料を、2つに分割した。1つを、穏やかに超音波処理に供し、細胞毒性を刺激した。他方は未処理のまま放置した。超音波処理(死滅した)分及び未処理(生きている)分を、様々な割合で組み合わせ、100、95、90、75、50、25、10、5及び0%の生存率で表した。各ブレンドを、100μlの複製量(10,000細胞/ウェルと同等)でマイクロタイターウェルに加えた。CytoTox−Glo試薬(2×試薬は、100μMのAAF−アミノルシフェリンの「AAF−Glo基質」、100mMのHepes、50mMのMgSO4 pH7.5を含み、凍結乾燥ルシフェラーゼ、結合剤及びATPを含むルシフェリン検出試薬の「ケーキ(cake)」を再水和するために使用した)を調製し、各ウェルに等量(100μL)/ウェルを加えた。プレートを、室温で15分間インキュベートし、死細胞のシグナルを、BMG PolarStarを使用して測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファー(100mMのHepes及び50mMのMgSO4)で300μg/mLに希釈し、各ウェルに20μL量を加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0091】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した(図1A)。図1Aのデータを、死滅シグナル及び「生細胞」シグナル対生存率の%としてプロットした。図1Bは、図1Aと同じデータであるが、各応答の最大シグナルの%としてグラフ化した。
【0092】
A.ノコダゾールのデータ
Hela細胞を、10,000細胞/ウェルの濃度で、DMEM+10%FBS、50μL量中に播種し、5%CO2において、37℃で一晩接着させた。ノコダゾール(抗腫瘍薬)を、個々のプレートにおいて、DMEM+10%FBS中で2μMから2倍連続希釈し、50μL量を加えた(最も高い最終用量は1000nMである)。細胞を、化合物と共に24時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)/ウェルで加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを回収した。ジギトニンを、AAF−Glo試薬を含むウェルに、30μg/mLになるように加えた。CellTiter−Gloを、ケーキと提供されたバッファーを再水和させることによって調製し、次いで、100μL量/ウェルを加えた。オービタルシェイカーを、700RPMで使用してプレートを振とうして、均一性を確保した。
【0093】
得られた発光シグナルを、BMG Polarstarを使用して回収した(図2A)。死細胞のシグナルを、ジギトニン処理したシグナルから差し引き、GraphPad Prismを使用して、CellTiter−Gloに対してプロットした。データの有意性は、細胞毒性シグナル(データ非掲載)及びCytoTox−Gloを使用した生細胞のデータが、CellTiter−Gloのデータと非常によく対応することであり、これらは残存細胞の値のみを提供する。
【0094】
B.パクリタキセル及びコルヒチンのデータ
図2Bは、パクリタキセル(有糸分裂阻害剤)に関するデータを示し、最も高い用量は500nMであった。この場合もやはり、CellTiter−Glo及びCytotox−Gloから誘導された値は、機構的に異なった毒性損傷と同様であった。
【0095】
図3は、パクリタキセル(最も高い用量は、500nMである)及びGF−AFC(生細胞基質)を用いたデータを示す。GF−AMCを、50mMのMgSO4を含む100mMのHEPES pH7.5中で、200μMに希釈し、各ウェルに50μL量を加えた。37℃で30分間インキュベートした後で、生細胞の蛍光発光値を、BMG Polarstarを使用して回収した。CytoTox−Glo試薬を、2×試薬として調製し、100μL量で加えた。死細胞の値を、室温で15分間インキュベートした後で、BMG Polarstarを使用して回収した。ジギトニンを、30μg/mLになるように、20μL量を加え、オービタルシェイカーを使用してプレートを振とうした。ジギトニン処理した発光を、BMG Polarstarを使用して測定した。
【0096】
死細胞の発光を、ジギトニン処理した発光から差し引き、GraphPad Prismを使用して生細胞の蛍光発光値に対しプロットした。生細胞のデータは、生存率に関するまったく異なる方法及びマーカーを使用したものと同様であった(図2及び3を比較されたい)。
【0097】
C.アクチノマイシンD及びコルヒチンのデータ
アクチノマイシンD(抗腫瘍抗生物質)を、マイクロタイタープレートにおいて、50μL量中2μMから、RPMI 1640+10%FBS中で2倍連続希釈した。RPMI 1640+10%FBSは、非誘導性の対照として使用した。Jurkat細胞を、10,000細胞/ウェルになるように、50μL量に加えた。オービタルシェイカーにより振とうすることによってプレートを混合し、次いで、37℃において、5%CO2中で24時間インキュベートした。GF−AFCを、50mMのMgSO4を含む100mMのHEPES pH7.5中で、200μMになるように希釈し、各ウェルに50μL量を加えた。37℃で30分間インキュベートした後で、生細胞の蛍光発光値を、BMG Polarstarを使用して回収した。CytoTox−Glo試薬を、2×試薬として調製し、100μL量を加えた。死細胞の値を、室温で15分間インキュベートした後で、BMG Polarstarを使用して回収した。ジギトニンを、30μg/mLになるように、20μL量を加え、オービタルシェイカーを使用してプレートを振とうした。ジギトニン処理した発光を、BMG Polarstarを使用して測定した。
【0098】
死細胞の発光を、ジギトニン処理した発光から差し引き、GraphPad Prismを使用して生細胞の蛍光発光値(最大シグナルの%として)に対しプロットした(図4A)。生細胞のデータは、生存率に関するまったく異なる方法及びマーカーを使用したものと同様であった。
【0099】
図4Bは、コルヒチン(有糸分裂阻害剤)を用いたデータを示す。最も高い用量は500nMである。データは、GF−AFCに関するデータと同様であったが、異なる「生細胞」検出方法及び毒素を使用して得た。
【0100】
D.イオノマイシンのデータ
イオノマイシン(カルシウムイオノフォア、これは、細胞膜を越えたカルシウム流出に作用し、したがって、高濃度ではモデルネクローシス誘導剤である)を、RPMI 1640+10%FBS、50μL量中で、100μMから2倍連続希釈した。Jurkat細胞を、10,000細胞/ウェルになるように、50μL量を加えた。オービタルシェイカーを使用してプレートを短時間振とうし、次いで、37℃において、6時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を、上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)/ウェルを加えた。プレートを、室温で15分間インキュベートし、死細胞のシグナルを、BMG PolarStarを使用して測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで300μg/mLに希釈し、20μL量/ウェルを加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0101】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、死滅シグナル及び「生細胞」シグナル対イオノマイシンの濃度としてプロットした(図5)。生細胞及び死細胞は、同じ発光読み出しを使用すると逆相補的であった。データはまた、さらに別の毒素及び細胞死の機構形態を表した。
【0102】
E.コルヒチン及びパクリタキセルのデータ
HeLa細胞を、10,000細胞/ウェルの濃度で、DMEM+10%FBS、50μL量中に播種し、5%CO2において、37℃で一晩接着させた。コルヒチン(有糸分裂阻害剤)を、個々のプレートにおいて、DMEM+10%FBS中で1000nMから2倍連続希釈し、50μL量を加えた(最も高い最終用量は500nMである)。細胞を、化合物と共に24時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)/ウェルを加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを回収した。ジギトニンを、AAF−Glo試薬を含むウェルに、30μg/mLになるように加えた。オービタルシェイカーを700RPMで使用してプレートを振とうして、均一性を確保した。得られた発光シグナルを、BMG Polarstarを使用して回収した。死細胞のシグナルを、ジギトニン処理したシグナルから差し引き、GraphPad Prismを使用して、死細胞のシグナルに対してプロットした(図6A)。実験を、パクリタキセルを使用して繰り返した(図6B)。
【0103】
F.スタウロスポニン(Staurosponin)のデータ
スタウロスポリン(多重機構のアポトーシス誘導因子)を、マイクロタイタープレートにおいて、50μL量で、RPMI 1640+10%FBS中で20μMから2倍連続希釈した。Jurkat細胞を、10,000細胞/ウェルになるように、50μL量を加えた。オービタルシェイカーを使用してプレートを短時間振とうし、次いで、37℃において、6時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を、上記のように調製し、各ウェルに、等量(100μL)/ウェルを加えた。プレートを、室温で15分間インキュベートし、死細胞のシグナルを、BMG PolarStarを使用して測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで300μg/mLに希釈し、20μL量/ウェルを加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した(図7)。上記のデータを、死滅シグナル及び「生細胞」シグナル対イオノマイシンの濃度としてプロットした。生細胞及び死細胞は、同じ発光読み出しを使用すると逆相補的であった。このことはまた、別の毒素及び細胞死の機構形態を表す。
【0104】
G.追加のJurkatデータ
Jurkat細胞を、洗浄し、新鮮なRPMI 1640+10%FBS中で、50,000細胞/mLになるように調整した。プールを分割し、一方の分画は、穏やかな超音波処理により処理し、細胞毒性を引き起こし、他方の分画は、未処理で放置した。50μLの処理済み及び50μLの未処理を、同じ複製ウェル(最終100μL、5000細胞/ウェル 等量)に加え、50%生存細胞及び50%細胞毒性細胞である試料の集団を表した。対照ウェルには、50μLの未処理細胞及び50μLのRPMI 1640+10%FBS(最終100μL)を入れた。AAF−アミノルシフェリン基質を、50mMのMgSO4を含む100mMのHepesバッファー中で200μMに調製した。この基質/バッファー溶液の5.0mLを使用して、ルシフェリン検出試薬のケーキを再水和した。この試薬を、試料及び対照ウェルに、50μL/ウェルで加えた。発光を、BMG POLARstarで、動態モードにおいて25分間測定し、細胞毒性集団からのシグナルを回収した。プレートを取り外し、ジギトニンを試料及び対照ウェルの双方に、最終濃度が30μg/mLになるように、15μL量を加えた。700RPMで1分間、オービタルシェイカーで振とうすることによって混合した後で、プレートをPOLARstarに戻し、全細胞毒性による発光を、動態モードにおいて、さらに25分間測定した。
【0105】
図8のデータは、この方法が試料中に見出される死細胞及び生細胞双方の集団を、同じ発光測定器を使用して検出するために使用できることを実証している。CytoTox−Gloアッセイの体系化により、約10分後に2,500の死細胞からのシグナル定常状態(死細胞プロテアーゼとルシフェラーゼとの間)が達成される。対照ウェル中の同じ数の生細胞は、少ないが測定可能なバックグラウンドシグナルを提供する。残存生存細胞を溶解するためにジギトニンを加えた後で、シグナルは新たな定常状態に達し、これは、試料ウェル中の死細胞の数(全5000)の比例的な増加を表す。したがって、初回は生存していた細胞は、溶解後に死細胞の値に寄与する。溶解前後のシグナルが定常状態の後で安定するため、任意の試料の、生存細胞の寄与を、減法により測定できる:
生存=全細胞毒性シグナル−初回細胞毒性シグナル
【0106】
「試薬溶解対照」は、ジギトニン媒介細胞毒性が、溶解効率に関して超音波処置と同等であり、2500の生存細胞から放出されるプロテアーゼ活性に影響しないことを示す。
【0107】
(例II)
有効性試験期間の本アッセイの正確さ及び精密度を実証するために、Jurkat細胞を、3つの異なる反応条件に供した。
【0108】
正確さ
正確さを実証するために、イオノマイシンを、50μL量で、RPMI 1640+10%FBS中100μMから2倍連続希釈した。Jurkat細胞を、4ウェルで二重に、10,000細胞/ウェルで播種し、希釈したイオノマイシンと共に6時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)を加えた。細胞を、室温で15分間インキュベートし、死細胞のシグナルを、BMG Polarstarを使用して測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで300μg/mLに希釈し、20μL量/ウェルを加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0109】
細胞溶解後に得られた発光シグナル(全発光可能性)を、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、死滅シグナル及び「生細胞」シグナル対イオノマイシンの濃度としてプロットした(図9A)。各二重検査に関するEC50値は同じであり、このアッセイの正確さを実証している。
【0110】
精密度
精密度を実証するために、異なる細胞数(5,000又は10,000)を使用したことを除いて、上記のような反応条件で二重試験を実施した。図9Bに見られるように、細胞数が異なるにもかかわらず、各二重試験に関するEC50値は同じであり、アッセイの精密度を実証している。
【0111】
精密度は有効性に関するため、さらに精密度を実証するために、1/2又は2倍のイオノマイシンのどちらかを使用したことを除いて、上記のように反応を実施した。図9Cに見られるように、各二重試験に関するEC50値は、1倍濃度のイオノマイシンに関して得られたEC50値の1/2又は2倍のどちらかであった。
【0112】
(例III)
エポキソミシン
DU−145細胞を、5,000細胞/ウェルの濃度で、50μLのMEM+10%FBS中に播種し、一晩接着させた。エポキソミシン(プロテアソーム阻害剤)を、MEM+10%FBS中の5μMから連続希釈し、50μL量を加えた。細胞を、化合物と共に48時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)を加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで希釈し、20μL量を各ウェルに加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0113】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、非生存及び生存のシグナル対エポキソミシンの濃度としてプロットした(図10A)。生存細胞及び非生存細胞は、同じ発光読み出しを使用すると逆相補的であった。このデータはまた、さらに別の毒素及び細胞死の機構形態を表す。
【0114】
細胞生存率の直交測定
本アッセイに由来する値が、他の細胞生存率測定に匹敵することを実証するために、このアッセイを、蛍光発光及び発光細胞生存率法と比較した。GF−AFCを、100mMのHEPES、pH7.5中で、200μMに希釈し、100μL量を、エポキソミシン処理DU−145細胞に加えた。37℃において30分間インキュベートした後で、蛍光発光を、BMG Polarstarを使用して測定した。発光細胞生存率測定のために、CellTiter−Glo(Promega)を、ケーキを、提供されたバッファーで再水和することによって調製し、100μL量を、エポキソミシン処理DU−145細胞を含む並行ウェルに加えた。オービタルシェイカーを使用してプレートを振とうし、均一性を確保した。室温で30分間インキュベートした後で、発光を、BMG Polarstarを使用して測定した。
【0115】
図10Bに見られるように、蛍光発光及び発光細胞生存率アッセイに関して得られた値は、本アッセイを用いて得られた値と同様である(図10A)。
【0116】
細胞毒性の直交測定
本アッセイに由来する細胞毒性の値が、他の細胞毒性測定に匹敵することを実証するために、本アッセイを、蛍光発光細胞毒性法と比較した。CytoTox−ONE(商標)Homogenous Membrane Integrity Assay(これは、乳酸脱水素酵素(LDH)の放出を測定する)を、製造業者(Promega)のプロトコルに従って使用した。簡潔にいうと、CytoTox−ONE(商標)試薬を、基質混合物とアッセイ用バッファーとを混合することによって調製し、100μL量をエポキソミシン処理DU−145細胞に加えた。細胞を、室温で10分間インキュベートした。蛍光発光を、Labsystems Fluoroskan Ascentを使用して測定した。図10Cに見られるように、蛍光発光細胞毒性法に関して得られた値は、本アッセイから得られた値に匹敵した。
【0117】
(例IV)
細胞生存率及び細胞毒性の二重測定が、誤った解釈を軽減することを実証するために、K562細胞を、5,000細胞/ウェルの濃度で、RPMI 1640+10%FBS、50μL量中に播種した。カンポテシン(Campothecin)を、RPMI 1640+10%FBS媒体中で、10μMから2倍連続希釈し、50μL量を加えた。細胞を、5%CO2において、37℃で24時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)を加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで希釈し、20μL量を各ウェルに加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0118】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、非生存及び生存のシグナル対カンポテシンの濃度としてプロットした(図11A)。生存率測定は、化合物濃度が低いと生存細胞が多く、化合物濃度が高いと生存細胞が少ないことを示しており、細胞毒性を示唆している。しかし、細胞毒性の値は、生存率と逆相関しているわけではなく、細胞毒性がほとんどない又はまったくないことを示唆している。生存率のみを測定した場合、化合物が実質的に細胞毒性であったと結論付けることができる。細胞毒性のみを測定した場合、化合物はあまり有効でなかったと結論付けることができる。いずれの解釈も誤りであると思われる。一緒に用いることによって、それらは細胞周期の停止による早期細胞毒性であることが実証される。
【0119】
図11Bにおいて、HeLa細胞を、10,000細胞/ウェルで、DMEM+10%FBS、50μL量中に播種し、5%CO2において、37℃で一晩インキュベートした。ノコダゾールを、個々のプレートにおいて、DMEM+10%FBS中で、2μMから2倍連続希釈し、50μL量(最も高い最終用量は1,000nMである)を加えた。細胞を、化合物と共に24時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)を加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを回収した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで希釈し、20μL量を各ウェルに加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0120】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、非生存及び生存のシグナル対ノコダゾールの濃度としてプロットした。このデータは、細胞毒性の測定の最適な時間のため、生存率及び細胞毒性は、レシオメトリックであることを実証している。
【0121】
図11Cにおいて、HeLa細胞を、10,000細胞/ウェルで、DMEM+10%FBS、50μL量中に播種し、5%CO2において、37℃で一晩インキュベートした。コルヒチンを、DMEM+10%FBS中で、個々のプレートにおいて、1,000nMから2倍連続希釈し、50μL量(最も高い最終用量は500nMである)を加えた。細胞を、化合物と共に24時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)を加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを回収した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで希釈し、20μL量を各ウェルに加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0122】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、非生存及び生存のシグナル対コルヒチンの濃度としてプロットした。このデータは、生存率が、化合物の細胞毒性のために減少していることを実証している。細胞毒性測定におけるシグナル強度の下降は、後期細胞毒性(及び時間依存性細胞毒性バイオマーカーの分解)を反映している。
(参考文献)
【0123】
すべての刊行物、特許及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。前述の明細書において、本発明は、それらの特定の好ましい実施形態に関して記載しているが、多くの詳細は、例示目的で説明しており、本発明がさらなる実施形態を受け入れ可能であり、本明細書において記載された特定の詳細は、本発明の基本原理から逸脱することなく大きく変更できることが当業者には明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年4月13日出願の米国特許出願第60/923,376号の出願日の利益を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発光は、特定の生物において、ルシフェラーゼ媒介酸化反応の結果として生じる。多種多様の非常に様々な種、特に、フォティナス・ピラリス(Photinus pyralis)及びフォチュリス・ペンシルバニカ(Photuris pennsylvanica)(北アメリカのホタル)、ピロフォラス・プラギオフタラマス(Pyrophorus plagiophthalamus)(ジャマイカのコメツキムシ)、レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)(ウミシイタケ)及びいくつかの細菌(例えば、キセノルハブデュス・ルミネセンス(Xenorhabdus luminescens)及びビブリオ(Vibrio)種)のルシフェラーゼ遺伝子は、極めて一般的な発光レポーター遺伝子である。ホタルのルシフェラーゼはまた、ATP濃度を測定するための一般的なレポーターであり、その役割において、バイオマスの検出に広く用いられている。発光はまた、他の酵素によっても、それらの酵素を特定の合成基質、例えばアルカリホスファターゼ及びアダマンチルジオキセタンホスフェート、又はホースラディッシュペルオキシダーゼ及びルミノールと混合した場合に産生される。
【0003】
ルシフェラーゼ遺伝子は、発光アッセイの非放射性、感度、及び極めて広い直線的な範囲のため、遺伝子レポーターとして広く用いられている。例えば、わずか10−20モルのホタルルシフェラーゼを検出することができる。その結果、遺伝子活性のルシフェラーゼアッセイは、原核細胞及び真核細胞双方の培養、トランスジェニックの植物及び動物、及び無細胞発現系を含む、事実上あらゆる生物実験系に使用されている。同様に、ATP濃度測定に使用されるルシフェラーゼアッセイは、高感度であり、10−16モル未満の検出が可能である。
【0004】
ルシフェラーゼは、酵素特異的な基質、例えばルシフェリンの酸化を介して光を発生させることができる。ホタルルシフェラーゼ及び他のすべての甲虫ルシフェラーゼでは、発光は、マグネシウムイオン、酸素、及びATPの存在下で生じる。レニラ(Renilla)ルシフェラーゼを含む花虫類動物のルシフェラーゼでは、基質のセレントラジン(coelentrazine)と共に、酸素のみを必要とする。一般的に、遺伝子活性を測定するための発光アッセイにおいて、反応基質及び他の発光活性化試薬が、レポーター酵素を発現すると推測される生物系に導入される。次いで、発光が生じた場合は、それを、ルミノメーター又は任意の適切な放射エネルギー測定装置を使用して測定する。このアッセイは、非常に迅速で高感度であり、放射性試薬を必要とすることなく、迅速且つ容易に遺伝子発現データを提供する。
【0005】
レポーターは、細胞内又は上清内の分子の存在又は活性を検出するために有用である。例えば、プロテアーゼは、血液凝固、炎症、再生、線維素溶解、及び免疫応答におけるタンパク質の代謝回転などの様々な生理過程に関与する、大型且つ重要な酵素群を構成する。多くの疾患状態は、特定のプロテアーゼ及びそれらの阻害剤の活性変化によって引き起こされ、それを特徴とし得る。研究において、又は臨床の場において、これらのプロテアーゼを測定する能力は、疾患状態の調査、治療及び管理にとって重要である。例えば、カスパーゼ−3及びカスパーゼ−7は、システインアスパルチル特異的プロテアーゼ(FIXアスパルテート特異的システインプロテアーゼ、「ASCP」としても知られている)ファミリーのメンバーであり、哺乳動物細胞の細胞死において鍵となるエフェクターの役割を演じている(Thornberryら、1992;Nicholsonら、1995;Tewariら、1995;及びFernandes−Alnemriら、1996)。
【0006】
プロテアーゼを測定するために、多数の発色基質及び蛍光発生基質が用いられてきており(Monseesら、1994;Monseesら、1995)、修飾ルシフェリンが蛍光指示薬の代替物として提供されている(米国特許第5,035,999号及び第5,098,828号)。プロ基質として、ヒドロラーゼに対する認識部位を有する修飾ルシフェリンを使用する方法は、Miska及びGeigerによって初めて記載され(1989年)、この方法では、修飾ルシフェリンを、一定の期間ヒドロラーゼと共にインキュベートし、次いで、混合物のアリコートを、ルシフェラーゼを含む溶液に移し入れることによって、不均一系アッセイを実施していた。Masuda−Nishimuraらは、β−ガラクトシダーゼ基質−修飾ルシフェリンを用いたシングルチューブ(均一)アッセイの使用を報告している(2000年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
培養物中の細胞の実験処理により、4つの主要な結果:細胞毒性(細胞膜完全性の喪失)、細胞静止作用(細胞毒性によらない細胞周期の停止)、増殖又は対照と比較して影響なし、がもたらされ得る。従来の生死判別試薬は、処理後に残った生存細胞の数を提供するが、細胞毒性作用及び細胞静止作用の識別はしない。逆にいえば、細胞毒性アッセイは、細胞膜の完全性を失った細胞の相対数を提供するが、各ウェルの生細胞の残存数は提供しない。インキュベーション時間及び処理時間が長くなるほど、多くの複合体細胞モデルが用いられるので、アッセイはそれらの問題に対処する必要がある。
【0008】
生細胞及び死細胞を検出するために必要とされるものは、改善されたアッセイ、例えば均一アッセイである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、試料中の死細胞集団及び生細胞集団双方を測定できる、単一の読み出し試薬を提供する。一実施形態において、この試薬は、プロテアーゼ基質を含む修飾ルシフェリン(ルシフェリン誘導体)である。一実施形態において、この修飾ルシフェリン試薬を試料に加え、発光を使用して死細胞集団を測定し、次いで、修飾ルシフェリン試薬の化学的性質に影響を与えずに残存生細胞を溶解する試薬を加える。溶解試料中の発光を検出する。死細胞のシグナル寄与を全発光シグナルから差し引き、生細胞のシグナルを得る。発光フォーマットは、死細胞のプロテアーゼ活性とルシフェラーゼとの間のシグナル安定状態に達し、(意図的な溶解後の)第2のシグナルもまた安定状態において収集されるので、減法が可能である。対照的に、死細胞に関係するプロテアーゼは、時間の関数として全蛍光発光シグナルに寄与し続けるので、減法は、生成物蓄積アッセイ(例えば蛍光発光)において、非常に困難である。発光半減期が非常に短い発光アッセイは、同様に煩わしい。半減期のより長い、例えば5分を超える半減期、例えば約30分、約2時間又はそれ以上の半減期、例えば少なくとも5時間の半減期を有するルシフェラーゼの使用(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるPCT/US99/30925を参照されたい)により、ルシフェラーゼ読み出しの「白熱」様特性が提供され、それによってそれらの欠点に対処する。
【0010】
一実施形態において、本発明は、プロテアーゼ基質を含むように修飾されたルシフェリンを使用して、生細胞及び死細胞の数を検出できる、生物発光アッセイを提供する。単一容器、例えばマルチウェルプレートのウェルの中で生細胞及び死細胞の数を検出することが好ましい。本明細書中で使用する場合、「生物発光アッセイ」は、ルシフェラーゼ、適切な対応する基質、例えば、修飾ルシフェリンとプロテアーゼとの反応生成物がルシフェラーゼに対する基質である、プロテアーゼ基質を有するルシフェリンの修飾形態及び1種又は複数種の他の試薬又は補助因子、例えばATP及び/又はマグネシウムを含む。したがって、本発明の生物発光アッセイは、プロテアーゼの量又は存在を直接測定でき、試料中の生細胞及び死細胞の数を間接的に測定し、非ルシフェラーゼ媒介反応によるATPの発生を利用しない。一実施形態において、ルシフェラーゼ媒介反応は、非ルシフェラーゼ媒介反応によるATPの発生を利用しない。
【0011】
例えば、一実施形態において、プロテアーゼ認識部位を含むように修飾された(例えば、共有結合を介して修飾された)アミノルシフェリンなどの、ルシフェラーゼに対する基質を生物発光アッセイに用いて、即ち、ルシフェラーゼが存在する場合、プロテアーゼを検出できる。検出すべきプロテアーゼは、天然の酵素又は例えば融合タンパク質を含む組換え酵素であってよいが、分泌酵素ではなく、例えばそれは細胞質性であり、それらに対する生物発光性基質は生存細胞不透過性であり、即ち、それは生存細胞には(受動的にも、又は能動的にも)実質的には侵入しない。一実施形態において、プロテアーゼはシステインプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ又はアミノペプチダーゼであってよい。
【0012】
本明細書において使用する場合、「生物発光アッセイ試薬」は、生物発光基質並びに任意選択の補助因子(単数又は複数)又は生物発光反応のための酵素などの他の分子(単数又は複数)を含む。一実施形態において、生物発光アッセイ試薬は、AAF−アミノルシフェリン、Z−DEVD−アミノルシフェリン、Z−LETD−アミノルシフェリン、Z−IETD−アミノルシフェリン、Z−DVAD−アミノルシフェリン又はZ−LEHD−アミノルシフェリンであってよい。様々な実施形態の試薬は、アミノルシフェリン、ジヒドロルシフェリン、ルシフェリン6’−メチルエーテル又はルシフェリン6’−クロロエチルエーテルに連結した、他のペプチド又はポリペプチドの基質を含み得る。他の実施形態において、生物発光アッセイ試薬は、式I〜Vのいずれか1つの化合物などの、別のルシフェリン誘導体であってもよい。
【0013】
本発明の方法に用いる試料は、細胞培養物又は細胞を含む生理液試料、例えば血液、脳脊椎液又は尿の試料であってよい。試料中の細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。
【0014】
一実施形態において、本発明は、細胞集団、例えば細胞培養物の集団の中の生細胞及び死細胞の存在又は数を測定するための、プロテアーゼ媒介生物発光反応を分析する方法を提供する。この方法は、細胞を、プロテアーゼ認識部位を含むように修飾されたルシフェリンと接触させるステップを含む。プロテアーゼ認識部位は、細胞膜の完全性が減少(傷ついた)又は喪失した場合、細胞外空間又は上清にのみ存在するプロテアーゼに特異的である。試料が、細胞膜の完全性が減少した細胞を含む場合、プロテアーゼが、細胞外空間又は上清に放出され、プロテアーゼは、ルシフェリンと結合したプロテアーゼ基質を切断し、ルシフェラーゼに対する基質を作り出す。その後、発光を検出する。次いで、試料を、細胞を溶解する試薬又は条件、例えば界面活性剤、凍結/解凍又は超音波処理に供し、発光を検出する。この方法は、2つの反応間を調整する試薬を用いる、2ステップのアッセイを含み得る。一実施形態において、生物発光アッセイではない反応のための試薬を加えてもよく、場合により溶解の前後でその反応の結果を測定又は検出することができる。したがって、この方法は、溶解の前後に他の活性又は分子を検出するステップを含み得る。
【0015】
本発明はまた、モジュレーター、例えば細胞生存の阻害剤の存在又は量を検出するための方法を提供する。一実施形態において、この方法は、プロテアーゼに対する生物発光基質、ルシフェラーゼを含む生物発光アッセイ用の試薬及び検査薬を含む反応混合物を提供するステップを含む。生物発光基質とプロテアーゼとの反応により、ルシフェラーゼに対する基質である生成物が生じ、その生成物とルシフェラーゼとの反応により、発光が生じる。発光の存在又は量を、試験反応と対照反応とにおいて比較する。2つの結果の比較により、モジュレーターの作用が示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】CytoTox−Gloの二重機能性を表す図である。生存率対死細胞の相対的発光及び生細胞の相対的発光のプロットである。
【図1B】CytoTox−Gloの二重機能性を表す図である。パネルAと同じデータであるが、各反応に関する最大シグナルの%をグラフにした。r2をExcelによって適合させた。
【図2A】ノコダゾールの対数対ATPの相対発光及びノコダゾールの対数対生HeLa細胞(24時間処理)の相対的発光のプロットの図である。
【図2B】パクリタキセルの対数対ATPの相対発光及びパクリタキセルの対数対生HeLa細胞(24時間処理)の相対的発光のプロットの図である。
【図3】HeLa細胞(24時間処理)における、パクリタキセルの対数対プロテアーゼの相対的発光及びパクリタキセルの対数対プロテアーゼの相対蛍光発光のプロットの図である。
【図4A】Jurkat細胞(24時間)における、アクチノマイシンDの対数対最大応答のパーセントのプロットの図である。
【図4B】HeLa細胞(24時間処理)における、コルヒチンの対数対プロテアーゼの相対的発光及びコルヒチンの対数対プロテアーゼの相対蛍光発光のプロットの図である。
【図5】Jurkat細胞(6時間)における、カルシウムイオノフォアの対数対生細胞の相対的発光及びカルシウムイオノフォアの対数対死細胞の相対的発光のプロットの図である。
【図6A】HeLa細胞(24時間)における、コルヒチンの対数対生細胞の相対的発光及びコルヒチンの対数対死細胞の相対的発光のプロットの図である。
【図6B】HeLa細胞(24時間)における、パクリタキセルの対数対生細胞の相対的発光及びパクリタキセルの対数対死細胞の相対的発光のプロットの図である。
【図7】Jurkat細胞(6時間)における、スタウロスポリン濃度対生細胞の相対的発光及びスタウロスポリン濃度対死細胞の相対的発光のプロットの図である。
【図8】時間対相対的発光のプロットの図である。
【図9A】正確さを表す図である(同じ用量系列、同じ細胞数、異なる複製ウェル)。イオノマイシンを、RPMI 1640+10%のFBS中で希釈し、希釈系列を2×4で複製した。Jurkat細胞を加え、6時間インキュベートした。AAF−Gloを加え、細胞毒性を室温(RT)で15分後に測定した。溶解試薬を加え、発光を、さらに15分後に再度測定した。
【図9B】精密度を表す図である(同じ用量系列、異なる細胞数)。プレーティング数などの誤りをシミュレートするために、異なる数のJurkat細胞を加えた以外はA)と同じ反応である。結果は、同じEC50で示すが、反応細胞数の桁の違いは、細胞数によるものである。
【図9C】有効性を表す図である(異なる用量系列、同じ細胞数)。1/2及び2倍の用量のイオノマイシンを、10,000細胞/ウェルに用いた以外はA)と同じ反応である。このことは、アッセイの化学的性質が有効性におけるわずかな相違を検出できることを示す。
【図10A】プロテアソーム阻害剤のエポキソミシンを48時間使用した、生存率及び細胞毒性の二重測定を示す図である。
【図10B】生存率の2つの直交測定により、減法と同等のEC50が得られることを示す図である。
【図10C】直交測定(LDHの化学的性質)が死(非生存)細胞の発光測定値と同等であることを示す図である。
【図11A】細胞周期が早期細胞毒性により停止したことを示す図である。生存の測定は、薬剤の用量が高いと細胞周期が停止するため(分裂しない)、薬剤の用量が低いほうが、生存細胞が多いことを示しているが、細胞毒性の測定は、非常に早期の細胞毒性を示している。
【図11B】細胞毒性による生存率の減少を示す図である。生存及び細胞毒性は、細胞毒性を測定するための最適時間のため、レシオメトリックである。
【図11C】後期細胞毒性による生存率の減少を示す図である。生存率が、細胞毒性のため減少している。下降(細胞毒性シグナルの最も高い濃度での低下)は、後期細胞毒性を反映している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書において使用する場合、以下の用語及び表現は指示された意味を有する。本発明の化合物が非対称に置換炭素原子を含み、光学活性体又はラセミ体に単離され得ることは理解されるであろう。ラセミ体の分離による、又は光学活性出発物質からの合成によるような、光学活性体の調製法は当分野において周知である。構造のすべてのキラル型、ジアステレオマー型、ラセミ体及びすべての幾何異性体は本発明の一部である。
【0018】
ラジカル、置換基及び領域に関する以下に記載した特定の値は、単に例示のためであり、それらはラジカル及び置換基に関する他の定義された値又は定義された領域内の他の値を排除するものではない。
【0019】
本明細書において使用する場合、「置換される」という用語は、「置換される」を使用した表現で示される基の1つ又は複数の(例えば、1、2、3、4又は5つ;いくつかの実施形態においては1、2、又は3つ、他の実施形態においては1又は2つの)水素が、示される原子の正常な原子価を超えず、置換によって安定した化合物がもたらされるという条件で、表示された基(単数又は複数)からの選択又は当業者に知られている適切な基と置き換えられることを示すことを意味するものである。示される適切な基には、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアリールスルホニル、複素環スルフィニル、複素環スルホニル、ホスフェート、サルフェート、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシル(アルキル)アミン及びシアノが含まれる。さらに、示される適切な基には、例えば、−X、−R、−O−、−OR、−SR、−S−、−NR2、−NR3、=NR、−CX3、−CN、−OCN、−SCN、−N=C=O、−NCS、−NO、−NO2、=N2、−N3、NC(=O)R、−C(=O)R、−C(=O)NRR−S(=O)2O−、−S(=O)2OH、−S(=O)2R、−OS(=O)2OR、−S(=O)2NR、−S(=O)R、−OP(=O)O2RR、−P(=O)O2RR−P(=O)(O−)2、−P(=O)(OH)2、−C(=O)R、−C(=O)X、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)O−、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NRR、−C(S)NRR、−C(NR)NRRが含まれ得、Xはそれぞれ独立して、ハロゲン(「ハロ」):F、Cl、Br又はIであり、Rはそれぞれ独立して、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、保護基又はプロドラッグ部分である。当業者には容易に理解されるであろうが、置換基がケト(=O)又はチオキソ(=S)などの場合、その場合は置換される原子上の2個の水素原子が置き換わる。
【0020】
「安定化合物」及び「安定構造」は、反応混合物からの、有用な純度での単離に耐えられる、十分堅固な化合物を指すことを意味する。本発明では、安定化合物だけを企図し、特許請求するが、特定の不安定化合物、例えば、容易には単離できない化合物は、本明細書に記載の方法に用いることができる。
【0021】
1つのジアステレオマーは、別のものと比較して優れた特性又は活性を示し得る。必要に応じて、ラセミ材料の分離は、キラルカラムを使用したHPLCによって、又はThomas J.Tuckerら、J.Med.Chem.1994、37、2437〜2444により記載されたように、カンファン酸クロリドなどの分割剤を使用した分割によって達成できる。キラル化合物はまた、キラル触媒又はキラル配位子、例えばMark A.Huffmanら、J.Org.Chem.1995、60、1590〜1594を使用して直接合成することもできる。
【0022】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、例えば、1〜30個の炭素原子、多くの場合1〜12個又は1〜約6個の炭素原子を有する、分岐、非分岐又は環状の炭化水素を指す。例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−メチル−1−プロピル、2−ブチル、2−メチル−2−プロピル(t−ブチル)、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−2−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−1−ブチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどを含む。アルキルは、非置換であっても、置換であってもよい。アルキルはまた、場合により部分的又は全体的に不飽和であってもよい。したがって、アルキル基の列挙は、アルケニル基及びアルキニル基双方を含む。アルキルは、上に記載且つ例示したように一価の炭化水素ラジカルであり得、又は二価の炭化水素ラジカル(即ち、アルキレン)であり得る。
【0023】
「アルケニル」という用語は、モノラジカルな、分岐又は非分岐の部分的に不飽和な炭化水素鎖(即ち、炭素間がsp2二重結合)を指す。一実施形態において、アルケニル基は、2〜10個の炭素原子又は2〜6個の炭素原子を有し得る。別の実施形態において、アルケニル基は、2〜4個の炭素原子を有する。例としては、限定するものではないが、エチレン、又はビニル、アリル、シクロペンテニル、5−ヘキセニルなどを含む。アルケニルは、非置換であっても、置換であってもよい。
【0024】
「アルキニル」という用語は、完全に不飽和である部分(即ち、炭素間がsp三重結合)を有する、モノラジカルな、分岐又は非分岐の炭化水素鎖を指す。一実施形態において、アルキニル基は、2〜10個の炭素原子又は2〜6個の炭素原子を有し得る。別の実施形態において、アルキニル基は、2〜4個の炭素原子を有し得る。この用語は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、1−オクチニルなどの基で例示される。アルキニルは、非置換であっても、置換であってもよい。
【0025】
「シクロアルキル」という用語は、単環又は多重凝縮環を有する、3〜10個の炭素原子の環状アルキル基を指す。このようなシクロアルキル基は、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単環構造又はアダマンタニルなどの多重環構造を含む。シクロアルキルは、非置換であっても、置換であってもよい。シクロアルキル基は、一価であっても二価であってもよく、アルキル基に関して上に記載したように、場合により置換されていてもよい。シクロアルキル基は、場合により1つ又は複数の不飽和部位を含むことができ、例えば、シクロアルキル基は、1つ又は複数の炭素間二重結合、例えばシクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエンなどを含むことができる。
【0026】
「アルコキシ」という用語は、アルキル−O−の基を指し、アルキルは本明細書の上記の通りである。一実施形態において、アルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシなどを含む。アルコキシは、非置換であっても、置換であってもよい。
【0027】
本明細書で使用する場合、「アリール」は、親芳香族環系の単一の炭素原子由来の1つの水素原子を除去した芳香族炭化水素基を指す。このラジカルは、親環系の飽和炭素原子又は不飽和炭素原子であり得る。アリール基は、6〜30個の炭素原子を有し得る。アリール基は、単環(例えばフェニル)又は少なくとも1つの環が芳香族である、多重凝縮(multiple condensed)(縮合(fused))環(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル又はアントリル)を有し得る。代表的なアリール基は、限定するものではないが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどに由来するラジカルを含む。アリールは、アルキル基に関して上に記載したように、非置換であっても又は場合により置換されていてもよい。
【0028】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指す。同様に、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0029】
「ハロアルキル」という用語は、同一であっても又は異なっていてもよい、1つ又は複数の、本明細書において定義されたハロ基によって置換された、本明細書において定義されたアルキルを指す。一実施形態において、ハロアルキルは、1、2、3、4又は5個のハロ基で置換されていてよい。別の実施形態において、ハロアルキルは、1、2又は3個のハロ基で置換されていてよい。ハロアルキルという用語はまた、ペルフルオロ−アルキル基も含む。代表的なハロアルキル基は、例としてトリフルオロメチル、3−フルオロドデシル、12,12,12−トリフルオロドデシル、2−ブロモオクチル、3−ブロモ−6−クロロヘプチル、1H,1H−ペルフルオロオクチルなどを含む。ハロアルキルは、アルキル基に関して上に記載したように、場合により置換されていてもよい。
【0030】
「ヘテロアリール」という用語は、1つ、2つ又は3つの芳香族環を含み、芳香族環の中に少なくとも1つの窒素、酸素又は硫黄原子を含む、単環式、二環式又は三環式系として、本明細書において定義され、これは非置換又は例えば、上記の「置換される」の定義のような、1つ又は複数の、特に1〜3個の置換基で置換され得る。典型的なヘテロアリール基は、1個又は複数個のヘテロ原子に加えて、2〜20個の炭素原子を含む。ヘテロアリール基の例には、限定するものではないが、2H−ピロリル、3H−インドリル、4H−キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β−カルボリニル、カルバゾリル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル、インダゾリル、インドリシニル(indolisinyl)、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナンサジニル(phenarsazinyl)、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル及びキサンテニルが含まれる。一実施形態において、「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子及び非ペルオキシド酸素、硫黄及びN(Z)(式中、Zは存在しないか又はH、O、アルキル、アリール又は(C1〜C6)アルキルアリールである)から独立して選択される、1、2、3又は4個のヘテロ原子を含む、5又は6個の環原子を含む単環式芳香族環を表す。別の実施形態において、ヘテロアリールは、それらから誘導された、約8〜10個の環原子のオルト縮合二環式複素環、特にベンズ誘導体、或いはプロピレン、トリメチレン又はテトラメチレンのジラジカルをそれらに縮合させることによって誘導されたものを表す。
【0031】
「複素環」という用語は、酸素、窒素及び硫黄の群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、「置換される」という用語において本明細書で定義した1つ又は複数の基で場合により置換された、飽和又は部分的不飽和な環系を指す。複素環は、1つ又は複数個のヘテロ原子を含む、単環式、二環式又は三環式の基であり得る。複素環基はまた、環に結合したオキソ基(=O)又はチオキソ(=S)基を含み得る。複素環基の限定されない例は、1,3−ジヒドロベンゾフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,4−ジチアン、2H−ピラン、2−ピラゾリン、4H−ピラン、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、モルホリン、ピペラジニル、ピペリジン、ピペリジル、ピラゾリジン、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジン、ピロリン、キヌクリジン及びチオモルホリンを含む。
【0032】
「複素環」という用語は、例示の目的であり、限定するものではないが、Paquette,Leo A.;Principles of Modern Heterocyclic Chemistry(W.A.Benjamin、New York、1968)、特に、1、3、4、6、7及び9章;The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A Series of Monographs(John Wiley & Sons、New York、1950から現在)、特に、13、14、16、19及び28巻;並びにJ.Am.Chem.Soc.1960、82、5566に記載された複素環のモノラジカルを含み得る。一実施形態において、「複素環」は、1つ又は複数個(例えば、1、2、3又は4)の炭素原子が、ヘテロ原子(例えば、O、N又はS)で置き換えられた、本明細書において定義された「炭素環」を含む。
【0033】
複素環の例には、例示の目的であり、限定するものではないが、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化型テトラヒドロチオフェニル(sulfur oxidized tetrahydrothiophenyl)、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル(piperidonyl)、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサンチニル、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンズオキサゾリニル、イサチノイル及びbis−テトラヒドロフラニルが含まれる。
【0034】
例示の目的であり、限定するものではないが、炭素結合複素環は、ピリジンの2、3、4、5又は6位、ピリダジンの3、4、5又は6位、ピリミジンの2、4、5又は6位、ピラジンの2、3、5又は6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール又はテトラヒドロピロールの2、3、4又は5位、オキサゾール、イミダゾール又はチアゾールの2、4又は5位、イソオキサゾール、ピラゾール又はイソチアゾールの3、4又は5位、アジリジンの2又は3位、アゼチジンの2、3又は4位、キノリンの2、3、4、5、6、7又は8位、或いはイソキノリンの1、3、4、5、6、7又は8位において結合する。炭素結合複素環には、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、5−ピリジル、6−ピリジル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、6−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピラジニル、3−ピラジニル、5−ピラジニル、6−ピラジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリルなどが含まれる。
【0035】
例示の目的であり、限定するものではないが、窒素結合複素環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの1位、イソインドール又はイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾール又はβ−カルボリンの9位において結合できる。一実施形態において、窒素結合複素環には、1−アジリジル、1−アゼテジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル及び1−ピペリジニルが含まれる。
【0036】
「炭素環」という用語は、単環式の場合3〜8個の炭素原子、二環式の場合7〜12個の炭素原子及び多環式の場合約30個までの炭素原子を有する、飽和、不飽和又は芳香族の環を指す。単環式炭素環は、通常3〜6個、さらに典型的には5又は6個の環原子を有する。二環式炭素環は、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系のように配置された7〜12個の環原子、或いはビシクロ[5,6]又は[6,6]系のように配置された9又は10個の環原子を有する。炭素環の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキス−1−エニル、1−シクロヘキス−2−エニル、1−シクロヘキス−3−エニル、フェニル、スピリル及びナフチルが含まれる。炭素環は、アルキル基に関して上に記載したように、場合により置換されていてもよい。
【0037】
「アルカノイル」又は「アルキルカルボニル」という用語は、−C(=O)Rを指し、式中、Rは先に定義したアルキル基である。
【0038】
「アシルオキシ」又は「アルキルカルボキシ」という用語は、−O−C(=O)Rを指し、式中、Rは先に定義したアルキル基である。アシルオキシ基の例には、限定するものではないが、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ及びペンタノイルオキシが含まれる。上で定義した任意のアルキル基を使用し、アシルオキシ基を形成できる。
【0039】
「アルコキシカルボニル」という用語は、−C(=O)OR(又は「COOR」)を指し、式中、Rは先に定義したアルキル基である。
【0040】
「アミノ」という用語は、−NH2を指す。アミノ基は、「置換される」という用語に関して本明細書において定義したように、場合により置換されていてもよい。「アルキルアミノ」という用語は、−NR2を指し、式中、少なくとも1つのRはアルキルであり、第2のRはアルキル又は水素である。「アシルアミノ」という用語はN(R)C(=O)Rを指し、式中、それぞれRは独立して水素、アルキル又はアリールである。
【0041】
「アミノ酸」という用語は、D又はL型の天然アミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びVal)の残基並びに非天然アミノ酸(例えば、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸;馬尿酸、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸、スタチン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、シトルリン、α−メチル−アラニン、パラ−ベンゾイルフェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン及びtert−ブチルグリシン)の残基を含む。この用語はまた、従来のアミノ保護基(例えば、アセチル又はベンジルオキシカルボニル)を担持する、天然及び非天然のアミノ酸並びにカルボキシ末端において、(例えば、(C1〜C6)アルキル、フェニル若しくはベンジルエステル或いはアミドとして;或いはα−メチルベンジルアミドとして)保護されている天然及び非天然のアミノ酸も含む。他の適切なアミノ及びカルボキシ保護基は、当業者に知られている(例えば、Greene,T.W.;Wutz,P.G.M.、Protecting Groups In Organic Synthesis、第2版、John Wiley & Sons,Inc.、New York(1991)及びそれらに引用されている参考文献を参照されたい)。
【0042】
「ペプチド」という用語は、2〜35の(例えば、上で定義した)アミノ酸配列又はペプチジル残基を表す。配列は、線形であっても又は環状であってもよい。例えば、環状ペプチドは、配列中の2つのシステイン残基間にジスルフィド架橋を形成することにより調製できる、又はもたらされ得る。好ましくは、ペプチドは、3〜20又は5〜15のアミノ酸を含む。ペプチド誘導体は、米国特許第4,612,302号、第4,853,371号及び第4,684,620号に開示されたように、又は本明細書の以下の実施例に記載されたように調製できる。本明細書中に具体的に列挙されたペプチド配列は、左側がアミノ末端であり、右側がカルボキシ末端として書かれている。
【0043】
「単糖類」という用語は、糖又は他の炭化水素、特に単糖を指す。単糖類は、C6−ポリヒドロキシ化合物、通常C6−ペンタヒドロキシ、多くの場合環状グリカンであり得る。この用語は、既知の単糖及びそれらの誘導体並びに2種以上の単糖類残基を有する多糖類を含む。単糖類は、アミノ酸の定義において上で述べたように、ヒドロキシル基上に保護基を含み得る。単糖類のヒドロキシル基は、1つ又は複数のハロ基又はアミノ基で置換されてもよい。さらに、炭素原子の1個又は複数個は、例えばケト基又はカルボキシル基に酸化されてもよい。
【0044】
「中断される」という用語は、別の基が、「中断」という用語を使用する表現において述べられる特定の炭素鎖の、2つの隣接する炭素原子(及びそれらが結合した水素原子(例えば、メチル(CH3)、メチレン(CH2)又はメチン(CH)))の間に、指示原子それぞれの正常な原子価を超えず、中断により安定化合物がもたらされることを条件として、挿入されることを示す。炭素鎖を中断できる適切な基は、例えば、1つ又は複数の非ペルオキシドオキシ(−O−)、チオ(−S−)、イミノ(−N(H)−)、メチレンジオキシ(−OCH2O−)、カルボニル(−C(=O)−)、カルボキシ(−C(=O)O−)、カルボニルジオキシ(−OC(=O)O−)、カルボキシラト(−OC(=O)−)、イミン(C=NH)、スルフィニル(SO)及びスルホニル(SO2)を含む。アルキル基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5又は約6)の前述の適切な基で中断され得る。中断部位はまた、アルキル基の炭素原子とアルキル基が結合している炭素原子との間であってよい。
【0045】
1つ又は複数の置換基を含む、任意の上記の基に関しては、このような基が、立体的に実践不可能な及び/又は合成的に実現不可能な任意の置換又は置換パターンを、当然ながら含まないことが理解される。さらに、本発明の化合物は、これらの化合物の置換により生じるすべての立体化学異性体を含む。
【0046】
本明細書に記載の化合物内の選択された置換基は、再帰的な程度まで存在する。本文脈において、「再帰的置換基(recursive substituent)」は、ある置換基がそれ自体の別の例として列挙され得ることを意味する。このような置換基の再帰的性質のため、理論的には、非常に多くが任意の所与の請求項に存在し得る。医薬品化学及び有機化学分野の当業者は、このような置換基の総数が、意図する化合物の所望の特性により合理的に制限されることを理解している。このような特性は、限定されない例として、分子量、溶解度又はlogPなどの物理特性、意図する標的に対する活性などの適用特性、及び合成の容易さなどの実用特性を含む。
【0047】
再帰的置換基は本発明の意図する態様である。医薬品化学及び有機化学分野の当業者は、このような置換基の多様性を理解している。再帰的な置換基が本発明の請求項に存在する程度まで、上で説明したように総数が決定されるであろう。
【0048】
本明細書で使用する場合、「リンカー」という用語は、2つの化学基を1つに共有結合でつなぎ、場合により自己切断できる、又は酵素に対する基質への共有結合の場合、その酵素又は別の分子により切断され得る炭素鎖であり、その鎖は場合により、1つ又は複数の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換)芳香族環又はペプチド結合により中断されている。
【0049】
「ルシフェラーゼ」という用語は、特に明記しない限り、天然に存在する又は突然変異ルシフェラーゼを指す。天然に存在する場合、ルシフェラーゼは、生物から当業者により容易に得ることができる。ルシフェラーゼが、天然に存在するルシフェラーゼ、又は天然に存在するルシフェラーゼのルシフェラーゼ−ルシフェリン反応における活性を維持している突然変異体である場合、それは、ルシフェラーゼをコードするcDNAを発現するように形質転換された細菌、酵母、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などの培養物から、又はルシフェラーゼをコードする核酸からルシフェラーゼを産生するためのインビトロの無細胞系から容易に得ることができる。ルシフェラーゼは、Promega Corporation、Madison、Wisから入手できる。
【0050】
本明細書で使用する場合、「生物発光アッセイ」又は「生物発光反応」は、非ルシフェラーゼ酵素と、ルシフェリン若しくはアミノルシフェリンの誘導体との反応の産物が、ルシフェラーゼの基質である、又はルシフェリン若しくはアミノルシフェリンの誘導体を有する、非酵素的反応の産物がルシフェラーゼの基質である、或いはルシフェラーゼと、ルシフェリン若しくはアミノルシフェリンの誘導体との反応が生物発光、即ち測定可能量の光を発生する反応を含む。
【0051】
本明細書で使用する場合、「生物発光」は、酵素と、光を発生する基質との反応の結果産生される光である。このような酵素(生物発光酵素)の例は、ホタルルシフェラーゼ、コメツキムシルシフェラーゼ、レニラ(Renilla)ルシフェラーゼ、ウミホタルルシフェラーゼ、エクリオン(Aequorin)発光タンパク質、オベリン(obelin)の発光タンパク質などを含む。
【0052】
本明細書で使用する場合、「生物発光アッセイ試薬」は、基質並びに補助因子(単数又は複数)又はタンパク質、例えば生物発光反応のための酵素などの他の分子(単数又は複数)を含み得る。
【0053】
「反応混合物」は、特定の反応のためのすべての試薬を含んでもよく、又はこの反応のための試薬の少なくとも1つを欠いていてもよい。例えば、ルシフェラーゼ反応混合物は、ルシフェラーゼに対する基質を除く反応用試薬、例えば、試験試料がルシフェラーゼの基質を有するかどうかを判定するために有用な反応混合物を含むことができる。非ルシフェラーゼ酵素に関する反応混合物は、検出されるべき分子を除く、すべての反応用試薬を含むことができ、例えば混合物は、非ルシフェラーゼ酵素のための補助因子を除くすべての試薬を含み、また混合物は、試験試料中の補助因子の存在を検出するために有用である。
【0054】
本明細書で使用する場合、「ルシフェリンの誘導体」又は「アミノルシフェリンの誘導体」は、非ルシフェラーゼ酵素に対する基質及びルシフェラーゼに対するプロ基質、ルシフェラーゼに対する基質、非ルシフェラーゼ酵素に対する基質及びルシフェラーゼに対する基質である分子、或いは、非酵素反応において産生される分子を検出するために有用である分子である。本発明の誘導体は、1つ又は複数の三環及び/又はD−ルシフェリン若しくはアミノルシフェリンの骨格の1つ又は複数の環に結合した置換基への1つ又は複数の修飾を有する。
【0055】
本発明の方法
本発明の方法は、細胞膜の透過性及び完全性に関与するタンパク質分解活性に基づく。本方法の有利性は、アッセイの読み出しの感度、容易さ及び柔軟性を含む。生存率の測定は、生物発光プロテアーゼ基質、及び細胞膜の完全性が損なわれない限り細胞から放出されないが細胞外環境において活性である細胞内プロテアーゼ、例えば偏在する保存された細胞内プロテアーゼの相対的不透過性に基づく。この実施形態において有用な基質は、N−末端又はC−末端においてブロックされる基質を含む、エキソプロテアーゼ又はエンドプロテアーゼに対する基質を含む。実質的な細胞不透過性プロテアーゼ基質は、死細胞に関するアッセイにおいてエンドポイントを測定するために一般的に用いられる期間、例えば、プロテアーゼ基質を試料に加えた後、5、4、3、2又は1.5時間未満或いは5、15、30、60又は120分を超える時間において、生存細胞において検出不可能な基質である。一実施形態において、生物発光性の実質的な細胞不透過性基質は、アミノ酸或いはジペプチド又はトリペプチドの基質を含む。一実施形態において、生物発光性の細胞不透過性基質は、トリペプチジルペプチダーゼ、カルパイン又はキモトリプシンに対する基質並びにルシフェリンに対するプロ基質である。
【0056】
したがって、本明細書に記載の生細胞及び死細胞のアッセイの使用は、細胞の健康についての逆の相補的な尺度を提供し、条件の変更、例えば、化合物による処理による影響を検出するために用いることができる。さらに、プロテアーゼ活性は、実用的な感度(10,000細胞/ウェルにおける生存率の2〜5%未満の差を検出)を有し、この感度は数分で達成できる。さらに、基質(単数又は複数)を、細胞のウェルにウェルの用量を劇的に変更することなく混合でき、このことにより次のステップのエンドポイントでの化学反応の柔軟性が増大する。
【0057】
したがって、本発明は、試料中の生細胞及び死細胞を検出する方法を提供する。この方法は、試料を、プロテアーゼに対する生物発光性の実質的な細胞不透過性基質と接触させるステップを含む。試料は、場合により、1つ又は複数の試験条件又は薬剤を用いて処理される。プロテアーゼにより媒介される基質との反応は、ルシフェラーゼに対する基質である産物を作り出し、溶解後の、プロテアーゼにより媒介される基質との反応も、同じ基質を作り出す。試料中の発光を、溶解の前後で検出し、それぞれ順番に、試料中の死細胞及び生細胞の数又は存在を検出する。
【0058】
本発明は、同じ試薬、即ち、プロテアーゼにより変化した試薬を使用して、試料中で死細胞及び生細胞を検出するアッセイの方法を提供する。得られた各反応に関するシグナルは、溶解の前後の試料中のプロテアーゼの存在又は量に関係する。
【0059】
一実施形態において、プロテアーゼ及びルシフェラーゼのアッセイは、直列で実施できる。例えば、ルシフェリン誘導体を、プロテアーゼ反応が可能であるが、ルシフェラーゼ反応は不可能である、例えばルシフェラーゼが存在しない条件下で試料に加える。次いで、1つ又は複数のルシフェラーゼ反応用試薬を加え、発光を検出する。次いで、混合物を溶解剤又は溶解をもたらす条件に供する。再度発光を検出する。
【0060】
本発明のアッセイは、試料、例えば、真核細胞、例えば、酵母、トリ、植物、昆虫又は限定するものではないがヒト、サル、ネズミ、イヌ、ウシ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ヤギ又はブタの細胞を含む哺乳動物細胞或いは原核細胞或いは2種以上の異なる生物に由来する細胞を含む試料中の生細胞及び死細胞の検出を可能にする。細胞は、組換え技術を介して遺伝子改変されていなくてもよく(非組換え細胞)、或いは組換えDNAで一過性にトランスフェクトされ、且つ/又はゲノムが組換えDNAで安定して増大し、又は遺伝子が崩壊する、例えば、プロモーター、イントロン若しくはオープンリーディングフレームを崩壊するようにゲノムが改変され、又は1つのDNA断片が別のものと置き換えられている組換え細胞であってもよい。組換えDNA又は置換えDNA断片は、本発明の方法で検出されるプロテアーゼ、このプロテアーゼのレベル又は活性を改変する部分及び/又は分子に関係しない遺伝子産物或いはこのプロテアーゼのレベル又は活性を改変する部分又はこのプロテアーゼに関係しない遺伝子産物をコードできる。
【0061】
一実施形態において、本発明に従った方法は、迅速で、高感度な、細胞のアリコートなどの単一の試料において死細胞及び生細胞を検出する方法を提供する。一実施形態において、この方法は、生物発光アッセイにおいて、プロテアーゼ、例えばエキソプロテアーゼ又はエンドプロテアーゼの存在又は量(活性)を定量化するステップを含む。一実施形態において、本発明は、細胞の単一アリコートにおいて、1種のプロテアーゼの存在又は量を測定する方法に関する。一実施形態において、このプロテアーゼは内因性プロテアーゼである。例えば、一実施形態において、本発明は、原核細胞又は真核細胞の精製された調製品、例えば培養真核細胞、例えば哺乳動物細胞を含む調製物中の少なくとも1つの天然プロテアーゼの活性を観察するための、改善された、感度の高い方法を提供する。一実施形態において、細胞内プロテアーゼに対する細胞不透過性基質を、溶解されていないが、検査薬又は条件に供されることのある細胞を含む試料に加え、発光を検出し、その後、細胞を溶解し、発光を検出する。生物発光シグナルの強度は、プロテアーゼの存在又は量の関数である。
【0062】
本明細書に記載のルシフェリン誘導体の使用は、プロテアーゼとの相互作用における光学的性質に測定可能な変化を生じるアッセイをもたらすことができ、この相互作用は、ルシフェリン誘導体の構造を変化させる。ルシフェリン誘導体とプロテアーゼとの反応の生成物は、D−ルシフェリン又はアミノルシフェリンである必要はない。例えば、ルシフェリン誘導体は、化学的リンカーを介してルシフェリン又はアミノルシフェリンに連結したプロテアーゼに対する反応性の化学基を含む基質を含み得る。プロテアーゼによる誘導体の反応性化学基の変換から、基質の一部、化学的リンカーの一部、化学的リンカー又は基質及び化学的リンカーの一部を含む(維持した)生成物を得ることができ、その生成物は、ルシフェラーゼに対する基質である。プロテアーゼとの相互作用後に、場合により、1つ又は複数のさらなる反応、例えばβ脱離を受けて、ルシフェラーゼに対する適切な基質を生じる生成物を得ることができるルシフェリン誘導体をさらに提供する。ルシフェリンの骨格がさらにそのリング構造において修飾されたルシフェリン誘導体、例えばキノリルルシフェリン又はナフチルルシフェリンを提供し、並びにチアゾール環のカルボキシ位に修飾がなされる。
【0063】
いくつかのプロテアーゼの例示的切断部位を、表1に説明する。
表1
【表1】
Xは、1つ又は複数のアミノ酸である。
【0064】
例示的プロテアーゼ基質は、限定するものではないが、Z−LLVY、AAF、Z−LR、Z−FR、GF、F、Y、Z−GAM、D−ALK、GA、GG、Z−RLRGG、Z−LRGG、AAY、PFR、GGL、SY、FR及びRPFHLLVYを含み、例示的プロテアーゼは、限定するものではないが、表2のプロテアーゼを含む。
表2
【表2】
【0065】
一実施形態において、プロテアーゼを、アミノ修飾ルシフェリン又はそれらのカルボキシ保護誘導体を含む基質を使用して検出し、これらの修飾は、プロテアーゼに対する基質を含む。別の実施形態において、この修飾は、3又は4個までのアミノ酸残基であり、これらはプロテアーゼに対する認識部位を含む。一実施形態において、基質は、アミノルシフェリンのアミノ基又はそれらのカルボキシ修飾誘導体に、ペプチド結合を介して、共有結合で連結している。一実施形態において、ペプチド又はタンパク質の基質のN末端を修飾し、例えば、アミノ末端の保護基を使用して、アミノペプチダーゼによる分解を防いでいる。適切なプロテアーゼ又は補助因子が存在しない状態で、このような基質及びルシフェラーゼを含む混合物は、最小のアミノルシフェリンが存在する場合、最小の光を発生する。適切なプロテアーゼの存在下で、基質及びアミノルシフェリンを連結する結合は、酵素により切断され、ルシフェラーゼに対する基質を作り出すことができる。したがって、ルシフェラーゼ、例えば、天然、組換え又は突然変異ルシフェラーゼ並びに任意の補助因子及び適切な反応条件の存在下で光が発生し、これはプロテアーゼの存在又は活性に比例する。
【0066】
一実施形態において、プロテアーゼ及びルシフェラーゼにより媒介される反応が、同時に開始されるか否かにかかわらず、ルシフェラーゼにより媒介される反応が開始した後で発光を検出する。他の実施形態において、反応は基本的に同時に開始する。一実施形態において、プロテアーゼ以外の分子に特異的な反応を開始し、プロテアーゼに基づくアッセイの前に、その分子の存在又は活性を検出し、プロテアーゼの存在又は量の検出の前に、例えば、初回シグナルが、例えば少なくとも50%衰えるまで待つことによって、或いは初回反応に関する失活剤を加えることによって、場合によりこの分子に関する反応を実質的に減少させる。したがって、本発明の生物発光反応は、他のアッセイが細胞の生存率に干渉しない、又は発光の検出(定量化)に干渉しない限り、他のアッセイと組み合わせることができる。したがって、いくつかの実施形態において、反応の1つ又は複数は、例えば、プロテアーゼの検出前に、反応に関する酵素を阻害することによって終了する。好ましくは、1つのアッセイにより発生されるシグナルは、少なくとも1つの他のアッセイにより発生されるシグナルの定量化に、実質的に干渉しない。
【0067】
本方法において有用なルシフェリン誘導体
本発明の誘導体の範囲内にあるルシフェリンの修飾は、1つ又は複数の環原子の置換、1つ又は複数の、環原子に結合した置換基(原子又は基)の1つ又は複数の置換、及び/又は環に対する1つ又は複数の原子の付加、例えば、環の拡大又は付加或いはそれらの組合せが含まれ、これらの修飾の少なくとも1つはプロテアーゼ基質を含む。天然のホタルルシフェリンは、3つの連結した環、6位にOH基を有する6員の「ベンゾ」環(以下「環A」又は「A環」)、6員のベンゾ環に縮合した5員のチアゾール環(以下、「環B」又は「B環」)及び5位においてカルボキシル基で修飾された5員のチアゾール環(以下「環C」又は「C環」)を有する。
【0068】
例えば、A環が修飾されたルシフェリン誘導体は、A環のC原子と別の原子との置換、環の付加、環原子に結合した置換基の、別の原子又は基との置換或いは、それらの任意の組合せを有することができ、これらの1つはプロテアーゼ基質を含むことができる。B環が修飾されたルシフェリン誘導体は、5員環中の原子への付加又は5員環中の原子の置換、例えば、1つ又は複数の原子の挿入を有することができ、それによって、例えば6員環への環の拡大、環の中のN又はSの、異なる原子、例えばC又はOとの置換、環原子に結合した置換基原子又は基との置換、或いはそれらの任意の組合せとなり、これらの1つはプロテアーゼ基質を含むことができる。
【0069】
C環が修飾されたルシフェリン誘導体は、環の中の原子の別の原子との置換、環原子に結合した置換基の、異なる原子又は基との置換、或いはそれらの任意の組合せを有することができ、これらの1つはプロテアーゼ基質を含むことができる。一実施形態において、本発明の誘導体は、複数の位置において修飾された誘導体であり、例えば、この誘導体は、A環に2か所(又はそれ以上)の修飾、B環に2か所(又はそれ以上)の修飾、C環に2か所(又はそれ以上)の修飾、或いはそれらの任意の組合せを有し、これらの1つはプロテアーゼ基質を含む誘導体である。一実施形態において、誘導体は、D−ルシフェリンの環の1つ上の置換基の、プロテアーゼに対する基質、又はリンカー及びプロテアーゼに関する基質との置換を含む。
【0070】
一実施形態において、本発明は式I:
【化1】
[式中、
Yは、N、N−オキシド、N−(C1〜C6)アルキル又はCHであり、
Xは、S、O、CH=CH、N=CH又はCH=Nであり、
Z及びZ’は、独立してH、R、OR、SR、NHR又はNRRであり、
Z”は、O、S、NH、NHR、N=Nであり、
Qは、カルボニル、CH2又は直接結合であり、
W1は、H、ハロ、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C20)アルケニル、ヒドロキシル、(C1〜C6)アルコキシ、又は
W1及びZは、双方とも環A上のケト基であり、環Aにおいて任意選択の二重結合を表す点線の少なくとも1つは存在せず、
W2は、それぞれ独立してH、ハロ、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C4)アルケニル、ヒドロキシル、(C1〜C6)アルコキシであり、
K1、K2、K3及びK4は、それぞれ独立してCH、N、N−オキシド又はN−(C1〜C6)アルキルであり、
環A及び環Bの点線は、任意選択の二重結合を表し、
A’及びB’は、場合により存在する、環Aに縮合した芳香族環であり、これらの1つだけが、縮合三環系を形成するように化合物中に存在し、A’又はB’が存在する場合、基Z’は、場合により存在する、環A’又は環B’のどちらかの置換基であり、
Rは、それぞれ独立して、H、(C1〜C20)アルキル、(C2〜C20)アルケニル、(C2〜C20)アルキニル、(C3〜C20)シクロアルキル、(C1〜C12)アルコキシ、(C6〜C30)アリール、ヘテロアリール、複素環、(C1〜C20)アルキルスルホキシ、(C6〜C30)アリールスルホキシ、ヘテロアリールスルホキシ、(C1〜C20)アルキルスルホニル、(C6〜C30)アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、(C1〜C20)アルキルスルフィニル、(C6〜C30)アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、(C1〜C20)アルコキシカルボニル、アミノ、NH(C1〜C6)アルキル、N((C1〜C6)アルキル)2、トリ(C1〜C20)アンモニウム(C1〜C20)アルキル、ヘテロアリール(C1〜C20)アルキル、四級窒素を有するヘテロアリール、四級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、(C1〜C20)アシル、(C1〜C20)アシルオキシ、(C1〜C20)アルキルチオ、(C6〜C30)アリールチオ、(C1〜C20)アルキルホスフェート、(C1〜C20)アルキルホスホネート、(C6〜C30)アリールホスフェート、(C6〜C30)アリールホスホネート、ホスフェート、サルフェート、単糖類、1〜約10個のアミノ酸鎖であり、又は、場合によりZ”が酸素の場合、M+であり、Mはアルカリ金属であり、
或いはZ又はZ’がNRRであり、RRがNと一緒にヘテロアリール又は複素環基を形成する場合、
式中、任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリール又は複素環基は、(C1〜C20)アルキル、(C2〜C20)アルケニル、(C2〜C20)アルキニル、(C3〜C20)シクロアルキル、(C1〜C20)アルコキシル、(C1〜C20)アルキルカルボニル,(C1〜C20)アルキルカルボキシル、ハロ、ヒドロキシル、−COORx、−SO2Rx、−SO3Rx、ニトロ、アミノ、(C1〜C20)アルキル−S(O)−、(C1〜C20)アルキル−SO2−、ホスフェート、(C1〜C20)アルキルホスフェート、(C1〜C20)アルキルホスホネート、NH(C1〜C6)アルキル、NH(C1〜C6)アルキニル,N((C1〜C6)アルキル)2、N((C1〜C6)アルキニル)2、メルカプト、(C1〜C20)アルキルチオ、(C6〜C30)アリール、(C6〜C30)アリールチオ、トリフルオロメチル、=O、ヘテロアリール又は複素環を含む、1、2、3、4又は5つの置換基で場合により置換されており、式中、置換基はそれぞれ1〜3つのR基で場合により置換されており、
Rxは、H、(C1〜C6)アルキル又は(C6〜C30)アリールであり、
式中、少なくとも1つのZ又はZ’、例えばZ又はZ’のR基は、1〜約10個のアミノ酸の基又は鎖である]
の化合物又はそれらの塩を提供する。
【0071】
様々な実施形態において、YがNである場合、XはSではない。他の実施形態において、XがSである場合、YはNではなく、
Z又はZ’が窒素部分を含む場合、Z又はZ’の窒素部分の1つ又は双方の水素は、(C1〜C20)アルキル又は基Lにより置き換えることができ、Lはアミノ酸ラジカル、20個までのアミノ酸部分を有するペプチドラジカル又はプロテアーゼに対する基質である任意の他の小型分子である。特定の実施形態において、Lがアミノ酸ラジカル又はペプチドラジカルである場合、少なくとも1つのW2はHではない。
【0072】
Zがヒドロキシル基又は窒素部分である場合、ヒドロキシルのH又は窒素部分は、1〜10個のアミノ酸鎖、(HO)2P(O)−OCH2−、スルホ、−PO3H2により、或いは1〜約12個の炭素原子の炭素鎖を介して基Zに結合したセファロスポラン酸により置き換えることができる。特定の実施形態において、環Bがチアゾール環である場合、スルホ又は−PO3H2基は、(C1〜C6)アルキレン基を介して、ヒドロキシル酸素に結合している。
【0073】
Z又はZ’がヒドロキシル基又は窒素部分である場合、或いはZ”−Rがヒドロキシル基である場合、ヒドロキシル又は窒素部分の1つのHは、基L’のリンカーにより置き換えることができ、L’は酵素により遊離のリンカーに取り外しできる基であり、リンカーは、自己切断でき、場合により1つ又は複数の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、場合により置換された芳香族環又はペプチド結合基(アミド)により中断されている炭素鎖である。
【0074】
「リンカー」基は、リンカーの一方の末端において酸素原子又はNH基を介してL’に結合でき、リンカーの他方の末端は、基Z、Z’又はZ”−Rと、エーテル、エステル又はアミド結合を形成できる。
【0075】
ZがORである場合、式(I)は、場合により、1〜4個のO原子、N原子により場合により中断された(C1〜C12)アルキルジラジカルを含むリンカーを介して、2つのA環で接続された二量体、或いは式(I)の二量体の間に架橋を形成するための、場合により置換されたアリール、ヘテロアリール又は複素環基であり、式(I)の二量体を接続する各Z基のR基は、架橋により置換されている。特定の実施形態において、単糖類はK3に直接結合しない。
【0076】
「A−」基は、陰イオンであり、4級窒素が存在する場合に存在する。式(I)の化合物はまた、4級アンモニウム塩を除く他の塩、例えば上記の塩も含む。
【0077】
様々な実施形態において、環A及びBがナフタレン又はキノリン環系を形成する場合、W1は水素ではなく、環Aの置換基がOHの場合、−Q−Z”−Rは−C(O)−NH−NH2ではなく、YがN又はCHであり、XがCH=CHであり、W1がHである場合、ZはK3に結合するOHではなく、且つ/又はYがN又はCHであり、XがCH=CHでありZがHである場合、W1はK3に結合するOHではない。
【0078】
別の実施形態において、本発明は、式(II):
【化2】
(式中、X、Y、Z、Z”、K1〜K4、W1、W2、A−及びRは、式Iの化合物に関して定義された通りである)
の化合物を提供する。
【0079】
別の実施形態において、本発明は式(III):
【化3】
(式中、Z、Z”、W1、A−及びRは、式Iの化合物に関して定義された通りである)
の化合物を提供する。
【0080】
さらに、式(IV):
【化4】
(式中、
Yは、N、N−オキシド、N−低級アルキル又はCHであり、
Xは、S、CH=CH,又はN=Cであり、
Z及びZ’は、独立してH、OR、NHR、NRR又はボロン原子を介して環A又はA’に結合した環状ジオキサボロラン基であり、
Z”は、O、S、NH、NHR又はN=Nであり、
Wは、それぞれ独立してH、ハロ、C1〜6アルキル、C2〜20アルケニル、ヒドロキシル又はC1〜6アルコキシであり、或いは、
W及びZは、双方とも環A上のケト基であり、環Aの点線は存在せず、
K1、K2、K3及びK4は、それぞれ独立して、CH、N、N−オキシド又はN−低級アルキルであり、
環A及び環Bの点線は、任意選択の二重結合を表し、
Rは、それぞれ独立して、H、アミノ、C1〜20アルキル、C2〜20アルケニル、C3〜20アルキニル、C2〜20アルケニルC1〜20アルキル、C3〜20アルキニルC2〜20アルケニル、C3〜20シクロアルキル、C6〜30アリール、ヘテロアリール、C6〜30アリールC1〜20アルキル、C1〜12アルコキシ、C1〜12アルコキシカルボニル、C1〜20アルキルスルホキシ、C6〜30アリールスルホキシ、C6〜30アリールスルホキシC1〜20アルキル、C1〜20アルキルスルホキシC1〜20アルキル、C1〜20アルコキシカルボニル、C6〜30アリールC1〜20アルコキシカルボニル、C6〜30アリールチオC1〜20アルキル、トリC1〜20アンモニウムC1〜20アルキル、ヘテロアリールスルホキシ、ヘテロアリールC1〜20アルキル、4級窒素を有するヘテロアリール、4級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、N−メチル−テトラヒドロピリジニル又はペンタフルオロフェニルスルホニルであり、
式中、任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、複素環、又はアミノ基は、1つ又は複数の、例えば1、2、3、4又は5つの、C1〜20アルキル、C2〜20アルケニル、C3〜20アルキニル、C3〜20シクロアルキル、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、−COOR1、−SO3R1、アミノ、ニトロ、低級アルキルアミノ、低級アルキニルアミノ、イミダゾリニル−メチルアミノ、ジ−低級アルキルアミノ、ジ−低級アルキニルアミノ、ピペリジノ、ピロリジノ、アゼチジノ、アジリジノ、ジ−イミダゾリニルメチルアミノ、メルカプト、C1〜20アルキルチオ、C6〜30アリールチオ、トリフルオロメチル、C1〜20アルキルカルボキシル、C6〜30アリール、C6〜30アリールC1〜20アルコキシル、ヘテロアリール、複素環、複素環C1〜20アルキル又はC6〜30アリールC1〜20アルキルカルボニルにより、場合により置換され得、基Rは、複数存在する場合、それぞれ独立して定義され、
R1は、水素、C1〜6アルキル又はC6〜30アリールであり、
Qは、C(=O)、CH2又は直接結合であり、
nは、0、1又は2であり、
式中、少なくとも1つのZ又はZ’は、例えばZ又はZ’のR基は、1〜約10個のアミノ酸鎖の基又は鎖であり、
A−は陰イオンであり、4級窒素が存在する場合に存在する)
の化合物又はそれらの塩を提供する。
【0081】
特定の実施形態において、Z又はZ”がアミノである場合、アミノ基の水素の1つ又は双方がC1〜20アルキル又は基Lにより置き換えることができ、Lはアミノ酸ラジカル、20個までのアミノ酸部分を有するペプチドラジカル又はプロテアーゼに対する基質である任意の他の小型分子である。Lがアミノ酸ラジカル又はペプチドラジカルである場合、特定の実施形態においてWはHではない。
【0082】
様々な実施形態において、Zがヒドロキシル又はアミノである場合、ヒドロキシル又はアミノのHは、(HO)2P(O)−OCH2−、スルホ、−PO3H2によって、或いは1つ又は複数の炭素原子の炭素鎖を介してZ基に結合したセファロスポラン酸により置き換えることができる。特定の実施形態において、環Bがチアゾール環である場合、スルホ、又はPO3H2基が低級アルキレン鎖を介してヒドロキシル酸素に結合できる。
【0083】
特定の実施形態において、Z又はZ’がヒドロキシル又はアミノである場合、或いはZ”−Rがヒドロキシルである場合、ヒドロキシル又はアミノの1つのHを、L’−リンカー基によって置き換えることができ、L’は酵素により遊離のリンカーに取り外しできる基であり、リンカーは、自己切断できる炭素鎖であり、場合により1つ又は複数の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換)芳香族環又はペプチド結合により中断されており、リンカーは、リンカーの一方の末端において酸素原子又はNH基を介してL’に結合し、リンカーの他方の末端は、基Z、Z’又はZ”−Rと、エーテル、エステル又はアミド結合を形成する。
【0084】
特定の実施形態において、ZがORである場合、式(IV)は、場合により、CH2又はCH2−C6H4−CH2架橋を介して2つのA環において接続された二量体であり得、式(IV)の二量体に接続する、それぞれのZ基のR基は、架橋により置き換えられる。
【0085】
特定の実施形態において、A’及びB’が、環Aに縮合した任意選択の芳香族環であり、それらの1つだけが、縮合三環系を形成するように同時に存在でき、環B’が存在する場合、基Zが存在し、A’が存在する場合、基Zは存在しない。特定の実施形態において、環Aの1つの炭素は、Nオキシド部分により置き換えることができる。特定の実施形態において、XがN=Cである場合、環Cは、N=C部分の炭素原子に、場合により結合できる。特定の実施形態において、Wが結合している化合物がルシフェリン、ルシフェリンメチルエステル又はアミノルシフェリンである場合、或いは環A及びBがナフタレン又はキノリン環系を形成する場合、Wは水素ではない。特定の実施形態において、環Aの置換基がOHである場合、−Q−Z”−Rは−C(O)−NH−NH2ではない。
【0086】
一実施形態において、環Cに結合するW基は存在しない(即ち、「n」の値が0)。別の実施形態において、環Cに結合するW基はH又はFである。
【0087】
一実施形態において、本発明は、式V:
【化5】
(式中、
R1は、水素、ヒドロキシル、アミノ、C1〜20アルコキシ、置換C1〜20アルコキシ、C2〜20アルケニルオキシ、置換C2〜20アルケニルオキシ、ハロゲン化C2〜20アルコキシ、置換ハロゲン化C2〜20アルコキシ、C3〜20アルキニルオキシ、置換C3〜20アルキニルオキシ、C3〜20シクロアルコキシ、置換C3〜20シクロアルコキシ、C3〜20シクロアルキルアミノ、置換C3〜20シクロアルキルアミノ、C1〜20アルキルアミノ、置換C1〜20アルキルアミノ、ジC1〜20アルキルアミノ、置換ジC1〜20アルキルアミノ、C2〜20アルケニルアミノ、置換C2〜20アルケニルアミノ、ジC2〜20アルケニルアミノ、置換ジC2〜20アルケニルアミノ、C2〜20アルケニルC1〜20アルキルアミノ、置換C2〜20アルケニルC1〜20アルキルアミノ、C3〜20アルキニルアミノ、置換C3〜20アルキニルアミノ、ジC3〜20アルキニルアミノ、置換ジアルキルアミノ、C3〜20アルキニルC2〜20アルケニルアミノ、置換C3〜20アルキニルC2〜20アルケニルアミノ、又は1〜約10個のアミノ酸鎖であり、
R2及びR3は、独立してC又はNであり、
R4及びR5は、独立してS、O、NR8であり、
R6はCH2OH、COR11又は−OM+であり、式中、M+はアルカリ金属又は医薬として許容可能な塩であり、
R7は、H、C1〜6アルキル、C1〜20アルケニル、ハロゲン又はC1〜6アルコキシドであり、
R8は、水素、C1〜20アルキル、CR9R10であり、式中、R9及びR10は独立してH、C1〜20アルキル又はフッ素であり、
R11は、H、OH、C1〜20アルコキシド、C2〜20アルケニル又はNR12R13であり、式中、R12及びR13は独立してH又はC1〜20アルキルであり、
式中、1〜約10個のアミノ酸鎖の少なくとも1つは、式Vの化合物中に、この化合物がプロテアーゼ基質であるように存在する)
の化合物を提供する。
【0088】
上記の式Iを含む、一連の実施形態において、R1は、OH又はNH2ではなく、R7はHではなく、R6はCOR11ではなく、R11はOHではなく、R3及びR2は、双方が炭素ではなく、R4及びR5は、双方が同時にSではない。
【0089】
本発明を、以下の限定されない実施例によりさらに説明する。全実施例に関して、適切な対照反応が当業者により容易に設計される。
【0090】
(例I)
単一のプロテアーゼ基質を用いて、生細胞及び死細胞を検出できるかどうかを確定するために、Jurkat細胞を、RPMI 1640+10%FBS中で100,000細胞/mlに調整した。試料を、2つに分割した。1つを、穏やかに超音波処理に供し、細胞毒性を刺激した。他方は未処理のまま放置した。超音波処理(死滅した)分及び未処理(生きている)分を、様々な割合で組み合わせ、100、95、90、75、50、25、10、5及び0%の生存率で表した。各ブレンドを、100μlの複製量(10,000細胞/ウェルと同等)でマイクロタイターウェルに加えた。CytoTox−Glo試薬(2×試薬は、100μMのAAF−アミノルシフェリンの「AAF−Glo基質」、100mMのHepes、50mMのMgSO4 pH7.5を含み、凍結乾燥ルシフェラーゼ、結合剤及びATPを含むルシフェリン検出試薬の「ケーキ(cake)」を再水和するために使用した)を調製し、各ウェルに等量(100μL)/ウェルを加えた。プレートを、室温で15分間インキュベートし、死細胞のシグナルを、BMG PolarStarを使用して測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファー(100mMのHepes及び50mMのMgSO4)で300μg/mLに希釈し、各ウェルに20μL量を加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0091】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した(図1A)。図1Aのデータを、死滅シグナル及び「生細胞」シグナル対生存率の%としてプロットした。図1Bは、図1Aと同じデータであるが、各応答の最大シグナルの%としてグラフ化した。
【0092】
A.ノコダゾールのデータ
Hela細胞を、10,000細胞/ウェルの濃度で、DMEM+10%FBS、50μL量中に播種し、5%CO2において、37℃で一晩接着させた。ノコダゾール(抗腫瘍薬)を、個々のプレートにおいて、DMEM+10%FBS中で2μMから2倍連続希釈し、50μL量を加えた(最も高い最終用量は1000nMである)。細胞を、化合物と共に24時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)/ウェルで加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを回収した。ジギトニンを、AAF−Glo試薬を含むウェルに、30μg/mLになるように加えた。CellTiter−Gloを、ケーキと提供されたバッファーを再水和させることによって調製し、次いで、100μL量/ウェルを加えた。オービタルシェイカーを、700RPMで使用してプレートを振とうして、均一性を確保した。
【0093】
得られた発光シグナルを、BMG Polarstarを使用して回収した(図2A)。死細胞のシグナルを、ジギトニン処理したシグナルから差し引き、GraphPad Prismを使用して、CellTiter−Gloに対してプロットした。データの有意性は、細胞毒性シグナル(データ非掲載)及びCytoTox−Gloを使用した生細胞のデータが、CellTiter−Gloのデータと非常によく対応することであり、これらは残存細胞の値のみを提供する。
【0094】
B.パクリタキセル及びコルヒチンのデータ
図2Bは、パクリタキセル(有糸分裂阻害剤)に関するデータを示し、最も高い用量は500nMであった。この場合もやはり、CellTiter−Glo及びCytotox−Gloから誘導された値は、機構的に異なった毒性損傷と同様であった。
【0095】
図3は、パクリタキセル(最も高い用量は、500nMである)及びGF−AFC(生細胞基質)を用いたデータを示す。GF−AMCを、50mMのMgSO4を含む100mMのHEPES pH7.5中で、200μMに希釈し、各ウェルに50μL量を加えた。37℃で30分間インキュベートした後で、生細胞の蛍光発光値を、BMG Polarstarを使用して回収した。CytoTox−Glo試薬を、2×試薬として調製し、100μL量で加えた。死細胞の値を、室温で15分間インキュベートした後で、BMG Polarstarを使用して回収した。ジギトニンを、30μg/mLになるように、20μL量を加え、オービタルシェイカーを使用してプレートを振とうした。ジギトニン処理した発光を、BMG Polarstarを使用して測定した。
【0096】
死細胞の発光を、ジギトニン処理した発光から差し引き、GraphPad Prismを使用して生細胞の蛍光発光値に対しプロットした。生細胞のデータは、生存率に関するまったく異なる方法及びマーカーを使用したものと同様であった(図2及び3を比較されたい)。
【0097】
C.アクチノマイシンD及びコルヒチンのデータ
アクチノマイシンD(抗腫瘍抗生物質)を、マイクロタイタープレートにおいて、50μL量中2μMから、RPMI 1640+10%FBS中で2倍連続希釈した。RPMI 1640+10%FBSは、非誘導性の対照として使用した。Jurkat細胞を、10,000細胞/ウェルになるように、50μL量に加えた。オービタルシェイカーにより振とうすることによってプレートを混合し、次いで、37℃において、5%CO2中で24時間インキュベートした。GF−AFCを、50mMのMgSO4を含む100mMのHEPES pH7.5中で、200μMになるように希釈し、各ウェルに50μL量を加えた。37℃で30分間インキュベートした後で、生細胞の蛍光発光値を、BMG Polarstarを使用して回収した。CytoTox−Glo試薬を、2×試薬として調製し、100μL量を加えた。死細胞の値を、室温で15分間インキュベートした後で、BMG Polarstarを使用して回収した。ジギトニンを、30μg/mLになるように、20μL量を加え、オービタルシェイカーを使用してプレートを振とうした。ジギトニン処理した発光を、BMG Polarstarを使用して測定した。
【0098】
死細胞の発光を、ジギトニン処理した発光から差し引き、GraphPad Prismを使用して生細胞の蛍光発光値(最大シグナルの%として)に対しプロットした(図4A)。生細胞のデータは、生存率に関するまったく異なる方法及びマーカーを使用したものと同様であった。
【0099】
図4Bは、コルヒチン(有糸分裂阻害剤)を用いたデータを示す。最も高い用量は500nMである。データは、GF−AFCに関するデータと同様であったが、異なる「生細胞」検出方法及び毒素を使用して得た。
【0100】
D.イオノマイシンのデータ
イオノマイシン(カルシウムイオノフォア、これは、細胞膜を越えたカルシウム流出に作用し、したがって、高濃度ではモデルネクローシス誘導剤である)を、RPMI 1640+10%FBS、50μL量中で、100μMから2倍連続希釈した。Jurkat細胞を、10,000細胞/ウェルになるように、50μL量を加えた。オービタルシェイカーを使用してプレートを短時間振とうし、次いで、37℃において、6時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を、上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)/ウェルを加えた。プレートを、室温で15分間インキュベートし、死細胞のシグナルを、BMG PolarStarを使用して測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで300μg/mLに希釈し、20μL量/ウェルを加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0101】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、死滅シグナル及び「生細胞」シグナル対イオノマイシンの濃度としてプロットした(図5)。生細胞及び死細胞は、同じ発光読み出しを使用すると逆相補的であった。データはまた、さらに別の毒素及び細胞死の機構形態を表した。
【0102】
E.コルヒチン及びパクリタキセルのデータ
HeLa細胞を、10,000細胞/ウェルの濃度で、DMEM+10%FBS、50μL量中に播種し、5%CO2において、37℃で一晩接着させた。コルヒチン(有糸分裂阻害剤)を、個々のプレートにおいて、DMEM+10%FBS中で1000nMから2倍連続希釈し、50μL量を加えた(最も高い最終用量は500nMである)。細胞を、化合物と共に24時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)/ウェルを加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを回収した。ジギトニンを、AAF−Glo試薬を含むウェルに、30μg/mLになるように加えた。オービタルシェイカーを700RPMで使用してプレートを振とうして、均一性を確保した。得られた発光シグナルを、BMG Polarstarを使用して回収した。死細胞のシグナルを、ジギトニン処理したシグナルから差し引き、GraphPad Prismを使用して、死細胞のシグナルに対してプロットした(図6A)。実験を、パクリタキセルを使用して繰り返した(図6B)。
【0103】
F.スタウロスポニン(Staurosponin)のデータ
スタウロスポリン(多重機構のアポトーシス誘導因子)を、マイクロタイタープレートにおいて、50μL量で、RPMI 1640+10%FBS中で20μMから2倍連続希釈した。Jurkat細胞を、10,000細胞/ウェルになるように、50μL量を加えた。オービタルシェイカーを使用してプレートを短時間振とうし、次いで、37℃において、6時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を、上記のように調製し、各ウェルに、等量(100μL)/ウェルを加えた。プレートを、室温で15分間インキュベートし、死細胞のシグナルを、BMG PolarStarを使用して測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで300μg/mLに希釈し、20μL量/ウェルを加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した(図7)。上記のデータを、死滅シグナル及び「生細胞」シグナル対イオノマイシンの濃度としてプロットした。生細胞及び死細胞は、同じ発光読み出しを使用すると逆相補的であった。このことはまた、別の毒素及び細胞死の機構形態を表す。
【0104】
G.追加のJurkatデータ
Jurkat細胞を、洗浄し、新鮮なRPMI 1640+10%FBS中で、50,000細胞/mLになるように調整した。プールを分割し、一方の分画は、穏やかな超音波処理により処理し、細胞毒性を引き起こし、他方の分画は、未処理で放置した。50μLの処理済み及び50μLの未処理を、同じ複製ウェル(最終100μL、5000細胞/ウェル 等量)に加え、50%生存細胞及び50%細胞毒性細胞である試料の集団を表した。対照ウェルには、50μLの未処理細胞及び50μLのRPMI 1640+10%FBS(最終100μL)を入れた。AAF−アミノルシフェリン基質を、50mMのMgSO4を含む100mMのHepesバッファー中で200μMに調製した。この基質/バッファー溶液の5.0mLを使用して、ルシフェリン検出試薬のケーキを再水和した。この試薬を、試料及び対照ウェルに、50μL/ウェルで加えた。発光を、BMG POLARstarで、動態モードにおいて25分間測定し、細胞毒性集団からのシグナルを回収した。プレートを取り外し、ジギトニンを試料及び対照ウェルの双方に、最終濃度が30μg/mLになるように、15μL量を加えた。700RPMで1分間、オービタルシェイカーで振とうすることによって混合した後で、プレートをPOLARstarに戻し、全細胞毒性による発光を、動態モードにおいて、さらに25分間測定した。
【0105】
図8のデータは、この方法が試料中に見出される死細胞及び生細胞双方の集団を、同じ発光測定器を使用して検出するために使用できることを実証している。CytoTox−Gloアッセイの体系化により、約10分後に2,500の死細胞からのシグナル定常状態(死細胞プロテアーゼとルシフェラーゼとの間)が達成される。対照ウェル中の同じ数の生細胞は、少ないが測定可能なバックグラウンドシグナルを提供する。残存生存細胞を溶解するためにジギトニンを加えた後で、シグナルは新たな定常状態に達し、これは、試料ウェル中の死細胞の数(全5000)の比例的な増加を表す。したがって、初回は生存していた細胞は、溶解後に死細胞の値に寄与する。溶解前後のシグナルが定常状態の後で安定するため、任意の試料の、生存細胞の寄与を、減法により測定できる:
生存=全細胞毒性シグナル−初回細胞毒性シグナル
【0106】
「試薬溶解対照」は、ジギトニン媒介細胞毒性が、溶解効率に関して超音波処置と同等であり、2500の生存細胞から放出されるプロテアーゼ活性に影響しないことを示す。
【0107】
(例II)
有効性試験期間の本アッセイの正確さ及び精密度を実証するために、Jurkat細胞を、3つの異なる反応条件に供した。
【0108】
正確さ
正確さを実証するために、イオノマイシンを、50μL量で、RPMI 1640+10%FBS中100μMから2倍連続希釈した。Jurkat細胞を、4ウェルで二重に、10,000細胞/ウェルで播種し、希釈したイオノマイシンと共に6時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)を加えた。細胞を、室温で15分間インキュベートし、死細胞のシグナルを、BMG Polarstarを使用して測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで300μg/mLに希釈し、20μL量/ウェルを加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0109】
細胞溶解後に得られた発光シグナル(全発光可能性)を、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、死滅シグナル及び「生細胞」シグナル対イオノマイシンの濃度としてプロットした(図9A)。各二重検査に関するEC50値は同じであり、このアッセイの正確さを実証している。
【0110】
精密度
精密度を実証するために、異なる細胞数(5,000又は10,000)を使用したことを除いて、上記のような反応条件で二重試験を実施した。図9Bに見られるように、細胞数が異なるにもかかわらず、各二重試験に関するEC50値は同じであり、アッセイの精密度を実証している。
【0111】
精密度は有効性に関するため、さらに精密度を実証するために、1/2又は2倍のイオノマイシンのどちらかを使用したことを除いて、上記のように反応を実施した。図9Cに見られるように、各二重試験に関するEC50値は、1倍濃度のイオノマイシンに関して得られたEC50値の1/2又は2倍のどちらかであった。
【0112】
(例III)
エポキソミシン
DU−145細胞を、5,000細胞/ウェルの濃度で、50μLのMEM+10%FBS中に播種し、一晩接着させた。エポキソミシン(プロテアソーム阻害剤)を、MEM+10%FBS中の5μMから連続希釈し、50μL量を加えた。細胞を、化合物と共に48時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)を加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで希釈し、20μL量を各ウェルに加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0113】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、非生存及び生存のシグナル対エポキソミシンの濃度としてプロットした(図10A)。生存細胞及び非生存細胞は、同じ発光読み出しを使用すると逆相補的であった。このデータはまた、さらに別の毒素及び細胞死の機構形態を表す。
【0114】
細胞生存率の直交測定
本アッセイに由来する値が、他の細胞生存率測定に匹敵することを実証するために、このアッセイを、蛍光発光及び発光細胞生存率法と比較した。GF−AFCを、100mMのHEPES、pH7.5中で、200μMに希釈し、100μL量を、エポキソミシン処理DU−145細胞に加えた。37℃において30分間インキュベートした後で、蛍光発光を、BMG Polarstarを使用して測定した。発光細胞生存率測定のために、CellTiter−Glo(Promega)を、ケーキを、提供されたバッファーで再水和することによって調製し、100μL量を、エポキソミシン処理DU−145細胞を含む並行ウェルに加えた。オービタルシェイカーを使用してプレートを振とうし、均一性を確保した。室温で30分間インキュベートした後で、発光を、BMG Polarstarを使用して測定した。
【0115】
図10Bに見られるように、蛍光発光及び発光細胞生存率アッセイに関して得られた値は、本アッセイを用いて得られた値と同様である(図10A)。
【0116】
細胞毒性の直交測定
本アッセイに由来する細胞毒性の値が、他の細胞毒性測定に匹敵することを実証するために、本アッセイを、蛍光発光細胞毒性法と比較した。CytoTox−ONE(商標)Homogenous Membrane Integrity Assay(これは、乳酸脱水素酵素(LDH)の放出を測定する)を、製造業者(Promega)のプロトコルに従って使用した。簡潔にいうと、CytoTox−ONE(商標)試薬を、基質混合物とアッセイ用バッファーとを混合することによって調製し、100μL量をエポキソミシン処理DU−145細胞に加えた。細胞を、室温で10分間インキュベートした。蛍光発光を、Labsystems Fluoroskan Ascentを使用して測定した。図10Cに見られるように、蛍光発光細胞毒性法に関して得られた値は、本アッセイから得られた値に匹敵した。
【0117】
(例IV)
細胞生存率及び細胞毒性の二重測定が、誤った解釈を軽減することを実証するために、K562細胞を、5,000細胞/ウェルの濃度で、RPMI 1640+10%FBS、50μL量中に播種した。カンポテシン(Campothecin)を、RPMI 1640+10%FBS媒体中で、10μMから2倍連続希釈し、50μL量を加えた。細胞を、5%CO2において、37℃で24時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)を加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを測定した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで希釈し、20μL量を各ウェルに加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0118】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、非生存及び生存のシグナル対カンポテシンの濃度としてプロットした(図11A)。生存率測定は、化合物濃度が低いと生存細胞が多く、化合物濃度が高いと生存細胞が少ないことを示しており、細胞毒性を示唆している。しかし、細胞毒性の値は、生存率と逆相関しているわけではなく、細胞毒性がほとんどない又はまったくないことを示唆している。生存率のみを測定した場合、化合物が実質的に細胞毒性であったと結論付けることができる。細胞毒性のみを測定した場合、化合物はあまり有効でなかったと結論付けることができる。いずれの解釈も誤りであると思われる。一緒に用いることによって、それらは細胞周期の停止による早期細胞毒性であることが実証される。
【0119】
図11Bにおいて、HeLa細胞を、10,000細胞/ウェルで、DMEM+10%FBS、50μL量中に播種し、5%CO2において、37℃で一晩インキュベートした。ノコダゾールを、個々のプレートにおいて、DMEM+10%FBS中で、2μMから2倍連続希釈し、50μL量(最も高い最終用量は1,000nMである)を加えた。細胞を、化合物と共に24時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)を加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを回収した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで希釈し、20μL量を各ウェルに加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0120】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、非生存及び生存のシグナル対ノコダゾールの濃度としてプロットした。このデータは、細胞毒性の測定の最適な時間のため、生存率及び細胞毒性は、レシオメトリックであることを実証している。
【0121】
図11Cにおいて、HeLa細胞を、10,000細胞/ウェルで、DMEM+10%FBS、50μL量中に播種し、5%CO2において、37℃で一晩インキュベートした。コルヒチンを、DMEM+10%FBS中で、個々のプレートにおいて、1,000nMから2倍連続希釈し、50μL量(最も高い最終用量は500nMである)を加えた。細胞を、化合物と共に24時間インキュベートした。CytoTox−Glo試薬を上記のように調製し、各ウェルに等量(100μL)を加えた。15分間インキュベートした後で、死細胞のシグナルを回収した。ジギトニン(DMSO中20mg/mL)を、CytoTox−Gloバッファーで希釈し、20μL量を各ウェルに加え、完全な細胞溶解を容易にした。発光を、室温で15分間インキュベートした後で測定した。
【0122】
溶解後に得られた発光シグナルを、「生細胞」の寄与を反映させるために、初回の死細胞シグナルを差し引くことによって調整した。データを、非生存及び生存のシグナル対コルヒチンの濃度としてプロットした。このデータは、生存率が、化合物の細胞毒性のために減少していることを実証している。細胞毒性測定におけるシグナル強度の下降は、後期細胞毒性(及び時間依存性細胞毒性バイオマーカーの分解)を反映している。
(参考文献)
【0123】
すべての刊行物、特許及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。前述の明細書において、本発明は、それらの特定の好ましい実施形態に関して記載しているが、多くの詳細は、例示目的で説明しており、本発明がさらなる実施形態を受け入れ可能であり、本明細書において記載された特定の詳細は、本発明の基本原理から逸脱することなく大きく変更できることが当業者には明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の生細胞及び死細胞を検出する方法であって、
a)細胞を有する試料、プロテアーゼに対する生物発光性の生存細胞不透過性基質及び生物発光アッセイ用の試薬を提供し、その結果混合物を提供するステップであって、基質がルシフェリン誘導体であるステップと、
b)混合物中の発光を検出し、それによって試料中の死細胞の数又は存在を検出するステップと、
c)混合物中の細胞を溶解するステップと、
d)溶解混合物中の発光を検出し、それによって試料中の生細胞の数又は存在を検出するステップと
を含む方法。
【請求項2】
試料中の生細胞及び死細胞を検出する方法であって、
a)細胞を有する試料、プロテアーゼに対する生物発光性の生存細胞不透過性基質及び生物発光アッセイ用の試薬中の発光を検出するステップであって、基質がルシフェリン誘導体であるステップと、
b)混合物中の細胞を溶解するステップと、
c)溶解混合物中の発光を検出するステップと
を含む方法。
【請求項3】
試料を、試薬より前に基質と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
試料を、基質より前に試薬と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
試料を、試薬及び基質と同時に接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
試料を、細胞死誘導剤を用いて処理する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
生物発光性の生存細胞不透過性基質が、トリペプチジルペプチダーゼ、カルパイン又はキモトリプシンに対する基質である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
試料が、哺乳動物細胞を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
基質が、Ala−Ala−Phe−アミノルシフェリン又はZ−Leu−Leu−Val−Tyr−アミノルシフェリンである、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ルシフェリン誘導体がアミノルシフェリン誘導体である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
基質が、甲虫ルシフェラーゼに対するプロ基質である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
プロテアーゼ以外の分子の存在又は量を検出するステップをさらに含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
細胞を、界面活性剤を用いて溶解する、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
試料が生理学的試料である、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
プロテアーゼがエンドプロテアーゼである、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
プロテアーゼがエキソプロテアーゼである、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
プロテアーゼに対する基質が15残基以下のペプチドである、請求項1から8まで及び10から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
試料中の生細胞及び死細胞を検出する方法であって、
a)細胞を有する試料、プロテアーゼに対する生物発光性の生存細胞不透過性基質及び生物発光アッセイ用の試薬を提供し、その結果混合物を提供するステップであって、基質がルシフェリン誘導体であるステップと、
b)混合物中の発光を検出し、それによって試料中の死細胞の数又は存在を検出するステップと、
c)混合物中の細胞を溶解するステップと、
d)溶解混合物中の発光を検出し、それによって試料中の生細胞の数又は存在を検出するステップと
を含む方法。
【請求項2】
試料中の生細胞及び死細胞を検出する方法であって、
a)細胞を有する試料、プロテアーゼに対する生物発光性の生存細胞不透過性基質及び生物発光アッセイ用の試薬中の発光を検出するステップであって、基質がルシフェリン誘導体であるステップと、
b)混合物中の細胞を溶解するステップと、
c)溶解混合物中の発光を検出するステップと
を含む方法。
【請求項3】
試料を、試薬より前に基質と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
試料を、基質より前に試薬と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
試料を、試薬及び基質と同時に接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
試料を、細胞死誘導剤を用いて処理する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
生物発光性の生存細胞不透過性基質が、トリペプチジルペプチダーゼ、カルパイン又はキモトリプシンに対する基質である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
試料が、哺乳動物細胞を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
基質が、Ala−Ala−Phe−アミノルシフェリン又はZ−Leu−Leu−Val−Tyr−アミノルシフェリンである、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ルシフェリン誘導体がアミノルシフェリン誘導体である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
基質が、甲虫ルシフェラーゼに対するプロ基質である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
プロテアーゼ以外の分子の存在又は量を検出するステップをさらに含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
細胞を、界面活性剤を用いて溶解する、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
試料が生理学的試料である、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
プロテアーゼがエンドプロテアーゼである、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
プロテアーゼがエキソプロテアーゼである、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
プロテアーゼに対する基質が15残基以下のペプチドである、請求項1から8まで及び10から16までのいずれか一項に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【公表番号】特表2010−523149(P2010−523149A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503075(P2010−503075)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/004748
【国際公開番号】WO2008/127677
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/004748
【国際公開番号】WO2008/127677
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】
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