説明

発光ダイオードの固定構造

【課題】発光ダイオードとヒートシンクを確実に密着させて十分な放熱性能が得られる発光ダイオードの固定構造を得る。
【解決手段】開口部10内に発光ダイオード2をセットした状態のホルダー3を、ヒートシンク4に固定し、発光ダイオード2の給電部9が開口部10内の金属配線体14によりヒートシンク4側へ押圧されるようにしたため、発光ダイオード2とヒートシンク4とを密着させることができ、ヒートシンク4による放熱性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードの固定構造、特に車両用ランプ装置に好適な発光ダイオードの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ランプ装置には光源として発光ダイオードを使用するものがある。発光ダイオードは基板の表面に2つの給電部を有し、そこに電気を供給できる状態でハウジングやヒートシンク等に固定される。具体的には、発光ダイオードは、給電可能な配線部を内蔵するアタッチメント本体と、下面支持部材との間に挟持されて保持され、その保持状態のまま、ハウジングやヒートシンク等の必要な箇所に固定される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−66108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、2つの部品で発光ダイオードを挟持して固定する構造のため、発光ダイオードをヒートシンクに固定しようとする場合に、一方の部品が邪魔になり、発光ダイオードとヒートシンクとを大きな面積で確実に密着させることが難しく、ヒートシンクによる十分な放熱性能が得られないおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、発光ダイオードとヒートシンクを確実に密着させて十分な放熱性能が得られる発光ダイオードの固定構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、表面側の一方向両端部に給電部がそれぞれ形成された発光ダイオードと、前記発光ダイオードを固定するためのヒートシンクと、前記発光ダイオードの外形に合致した形状の開口部を有し且つ所定の厚さを有する絶縁性のホルダーと、を備える発光ダイオードの固定構造であって、前記ホルダーの一方向両端部には、当該一方向に直交する他方向に沿って延びる板状の金属配線体がそれぞれインサートされており、前記金属配線体は、開口部において少なくとも側端部が開口部内に突出するとともに、当該金属配線体の前記他方向の一端部が接続端子として前記ホルダーから外部へ突出しており、前記発光ダイオードを前記ホルダーの開口部内に前記ヒートシンク側からセットし、当該ホルダーを固定手段によりヒートシンクの表面側へ固定することで、発光ダイオードの給電部が開口部内の金属配線体を介してヒートシンク側へ押圧されることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発光ダイオードの固定構造において、前記金属配線体は、少なくとも前記開口部内に突出した側端部が前記開口部を前記他方向に貫通していることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発光ダイオードの固定構造において、前記金属配線体にヒートシンク側へ曲げたバネ部を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発光ダイオードの固定構造において、前記バネ部が台形状に曲げられていることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の発光ダイオードの固定構造において、前記金属配線体の接続端子に、ターミナルロック端子の係合部と係合するターミナルロック孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、開口部内に発光ダイオードをセットした状態のホルダーをヒートシンクに固定するだけで、発光ダイオードの給電部が開口部内の金属配線体によりヒートシンク側へ押圧されるため、発光ダイオードとヒートシンクとを密着させることができ、ヒートシンクによる放熱性能を向上させることができる。このとき、発光ダイオードとヒートシンクとの間には何も存在しないため、発光ダイオードの全面をヒートシンクに密着させることができ放熱性能を十分に高めることができる。また、金属配線体と給電部も同様に密着するため、発光ダイオードへの給電性能も向上させることができる。さらに、ホルダーの開口部と発光ダイオードの外形が合致しているため、発光ダイオードの位置決めを確実に行うことができ、光学的性能を向上させることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、金属配線体が開口部を他方向に貫通しているため、開口部内の金属配線体が開口部の両側で保持された状態となり、金属配線体の保持剛性が高まる。したがって、ホルダーの固定手段に応じて金属配線体による給電部の押圧力を高めることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、金属配線体にヒートシンク側へ曲げたバネ部を形成しているため、発光ダイオードの給電部をバネ部の弾性力で押圧することができる。このように、バネ部の弾性力で押圧することで、給電部に対する経時的な押圧力の低下を抑制することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、バネ部が台形状に曲げられているため、給電部との密着面積を大きくすることができる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、金属配線体の接続端子にターミナルロック孔を形成することで、ターミナルロック端子を結合した際に、ターミナルロック端子の係合部がターミナルロック孔に係合するため、ターミナルロック端子の抜けを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る発光ダイオードの固定構造を採用した前照灯の内部構造を示す斜視図、図2は、発光ダイオードの固定構造を示す斜視図、図3は、発光ダイオードの固定構造を示す分解斜視図、図4は、開口部内に発光ダイオードを収納したホルダーを示す平面図、図5は、ホルダー及び発光ダイオードの底面図、図6は、図4のSA−SA断面図、図7は、発光ダイオードをホルダーから外した状態を示す断面図、図8は、図4のSB−SB断面図である。
【0017】
自動車前部の左右両側に配置されている前照灯は複数の灯具ユニットから構成されている。図1は、その1つの灯具ユニット1を示す基本構造である。発光ダイオード2は上向き状態で、ホルダー3により、ヒートシンク4の上面に固定されている。発光ダイオード2の上部には楕円面を基調としたリフレクタ5が設置されている。発光ダイオード2の発光部6は、このリフレクタ5の第1焦点に合致しており、発光ダイオード2から出射された光Lは、リフレクタ5で前方へ反射される。
【0018】
前方にはプロジェクタレンズ7が配置されており、リフレクタ5で反射された光Lは第2焦点Fを経てからプロジェクタレンズ7に導かれ、そこから車両前方へ照射される。第2焦点F近傍には図示せぬシェードが設けられ、プロジェクタレンズ7から光Lは、そのシェードの形状に応じた配光パターンで車両前方へ照射される。
【0019】
次に、発光ダイオード2の固定構造を説明する。発光ダイオード2は、白色光を出射するもので、車幅方向(一方向)Aの方が、前後方向(他方向)Bよりも長い長方形状の基板8の上に、基板8よりも小さい形状の発光部6を有する構造をしている。基板8は熱伝導性を有し、その上面の車幅方向両側には、それぞれカソード及びアノード用の給電部9が形成されている。
【0020】
発光ダイオード2のヒートシンク4に対する固定には絶縁材料である樹脂製のホルダー3が使用される。このホルダー3は基本的に長方形で、発光ダイオード2の基板8よりも大きい厚さを有する板部材である。
【0021】
ホルダー3の中央部には開口部10が形成され、車幅方向両側には半円状の固定部11が張り出した状態で形成されている。固定部11には、それぞれ円形の固定孔12が形成されている。そして、ヒートシンク4の表面には、この固定孔12に対応するネジ孔13が形成されている。
【0022】
開口部10は、発光ダイオード2の基板8の外形に合致した長方形状をしている。そして、ホルダー3の開口部10における車幅方向両側には、それぞれ短冊板状の金属配線体14がそれぞれ前後方向に貫通した状態でインサート成形されている。
【0023】
本実施形態では、金属配線体14は、その車幅方向外側半分が、ホルダー3の表面と同一面を有する被覆部15により上側から覆われている。
【0024】
また、金属配線体14には、下側に向けて台形状に曲げられたバネ部16が形成されている。本実施形態では、図5に示すように、金属配線体14の下側全幅を開口部10内に露出させることで、バネ部16が開口部10内で自由に変形できるようにしている。そして、このバネ部16の変形による弾性力により、発光ダイオード2の給電部9を押圧することができるようになっている。
【0025】
金属配線体14の後端部はホルダー3から後方(外部)に接続端子17として突出しており、そこにはターミナルロック孔18が形成されている。金属配線体14の前端部19はわずかにホルダー3から前方へ突出している。そして、前端部19付近のホルダー3の内部における金属配線体14には位置決め孔20が形成されている。この位置決め孔20は、金属配線体14をホルダー3にインサート成形する金型(図示せず)にセットする際に使用されるものである。
【0026】
そして、このホルダー3を使用して発光ダイオード2を固定する場合には、まず発光ダイオード2をホルダー3の開口部10内に裏面側から挿入する。本実施形態では、開口部10が発光ダイオード2の基板8と合致した形状をしているため、発光ダイオード2は開口部10内にぴったりとセットされる。ただし、この状態では、発光ダイオード2は開口部10内に完全に挿入されず、その裏面がホルダー3の裏面より若干突出した状態になっている。
【0027】
次に、ホルダー3の固定孔12と、ヒートシンク4のネジ孔13とを合わせて、上から固定手段としてのネジ21を挿入してネジ孔13に締結する。ホルダー3はネジ21の締結力によりヒートシンク4の表面側へ押圧されて当接し、固定状態となる。
【0028】
ホルダー3が固定状態になると、開口部10内のバネ部16が発光ダイオード2の給電部9を押圧し、発光ダイオード2の基板8の裏面が、ヒートシンク4の表面に確実に密着すると共に、バネ部16(金属配線体14)と給電部9との接触状態も確実になる。
【0029】
ホルダー3による発光ダイオード2の固定が終了した後、ホルダー3の後方に突出した接続端部17に、ハーネス22の先端にカシメられたターミナルロック端子23を挿入する。このとき、ターミナルロック端子23に形成された係合部としての切起爪24をターミナルロック孔18に係合させることで、ターミナルロック端子23の抜けを防止している。このように、ターミナルロック端子23を接続端子17に結合することにより、金属配線体14を介して発光ダイオード2の給電部9に給電し、発光ダイオード2の発光部6を発光させている。
【0030】
以上の本実施形態によれば、開口部10内に発光ダイオード2をセットした状態のホルダー3を、ヒートシンク4に固定するだけで、発光ダイオード2の給電部9が開口部10内の金属配線体14によりヒートシンク4側へ押圧されるため、発光ダイオード2とヒートシンク4とを密着させることができ、ヒートシンク4による放熱性能を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、発光ダイオード2とヒートシンク4との間には何も存在しないため、発光ダイオード2の基板8の裏面全体をヒートシンク4に密着させることができ放熱性能を十分に高めることができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、金属配線体14と給電部9も同様に密着するため、発光ダイオード2への給電性能も向上させることができる。本実施形態では、この金属配線体14がそれぞれ前後方向に貫通した状態でホルダー3にインサート成形されているため、発光ダイオード2のヒートシンク4への組み付け精度を向上させることができ、発光ダイオード2への給電性能をより向上させることができる。
【0033】
さらに、ホルダー3の開口部10と発光ダイオード2の外形が合致しているため、発光ダイオード2の位置決めを確実に行うことができ、光学的性能を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、金属配線体14が開口部10を前後方向に貫通しているため、開口部10内のバネ部16が開口部10の両側で保持された状態となり、バネ部16の保持剛性が高まる。したがって、ホルダー3のネジ21による締結力に応じてバネ部16による給電部9の押圧力を高めることができる。
【0035】
さらに、本実施形態によれば、金属配線体14にヒートシンク4側へ曲げたバネ部16が形成されているため、発光ダイオード2の給電部9をバネ部16の弾性力で押圧することができる。さらに、バネ部16の弾性力で押圧することで、給電部9に対する経時的な押圧力の低下を抑制することができる。しかも、バネ部16が台形状に曲げられているため、給電部9との密着面積を大きくすることができ、確実な給電を行うことができるようになる。
【0036】
また、本実施形態によれば、金属配線体14の接続端子17にターミナルロック孔18を形成することで、ターミナルロック端子23を結合した際に、ターミナルロック端子23の切起爪24がターミナルロック孔18に係合するため、より簡単に結合させることができるとともに、ターミナルロック端子23の抜けを防止することができるようになる。また、本実施形態では、金属配線体14をホルダー3の後方から突出させて接続端子17とし、当該接続端子17にターミナルロック端子23を結合しているため、発光ダイオード2の固定構造をより薄くすることができるという利点もある。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0038】
例えば、金属配線体14は、その全幅を開口部10内に露出させてもよいし、金属配線体14の全幅のうち、外側半分をホルダー3内に埋設した状態とし、内側半分の側端部だけを開口部10内に露出させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態にかかる発光ダイオードの固定構造を採用した前照灯の内部構造を示す斜視図。
【図2】本実施形態にかかる発光ダイオードの固定構造を示す斜視図。
【図3】本実施形態にかかる発光ダイオードの固定構造を示す分解斜視図。
【図4】本実施形態にかかる開口部内に発光ダイオードを収納したホルダーを示す平面図。
【図5】本実施形態にかかるホルダー及び発光ダイオードの底面図。
【図6】図4のSA−SA断面図。
【図7】本実施形態にかかる発光ダイオードをホルダーから外した状態を示す断面図。
【図8】図4のSB−SB断面図。
【符号の説明】
【0040】
2 発光ダイオード
3 ホルダー
4 ヒートシンク
6 発光部
8 基板
9 給電部
10 開口部
14 金属配線体
16 バネ部
17 接続端子
18 ターミナルロック孔
21 ネジ(固定手段)
23 ターミナルロック端子
24 切起爪(係合部)
A 車幅方向(一方向)
B 前後方向(他方向)
L 光
F 第2焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側の一方向両端部に給電部がそれぞれ形成された発光ダイオードと、前記発光ダイオードを固定するためのヒートシンクと、前記発光ダイオードの外形に合致した形状の開口部を有し且つ所定の厚さを有する絶縁性のホルダーと、を備える発光ダイオードの固定構造であって、
前記ホルダーの一方向両端部には、当該一方向に直交する他方向に沿って延びる板状の金属配線体がそれぞれインサートされており、
前記金属配線体は、開口部において少なくとも側端部が開口部内に突出するとともに、当該金属配線体の前記他方向の一端部が接続端子として前記ホルダーから外部へ突出しており、
前記発光ダイオードを前記ホルダーの開口部内に前記ヒートシンク側からセットし、当該ホルダーを固定手段によりヒートシンクの表面側へ固定することで、発光ダイオードの給電部が開口部内の金属配線体を介してヒートシンク側へ押圧されることを特徴とする発光ダイオードの固定構造。
【請求項2】
前記金属配線体は、少なくとも前記開口部内に突出した側端部が前記開口部を前記他方向に貫通していることを特徴とする請求項1記載の発光ダイオードの固定構造。
【請求項3】
前記金属配線体にヒートシンク側へ曲げたバネ部を形成したことを特徴とする請求項2記載の発光ダイオードの固定構造。
【請求項4】
前記バネ部が台形状に曲げられていることを特徴とする請求項3記載の発光ダイオードの固定構造。
【請求項5】
前記金属配線体の接続端子に、ターミナルロック端子の係合部と係合するターミナルロック孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の発光ダイオードの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−153080(P2008−153080A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340337(P2006−340337)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】