説明

発光ダイオード封止材、および、発光ダイオード装置の製造方法

【課題】発光ダイオード装置を、少ない作業工程で簡易かつ精度よく製造することができる発光ダイオード封止材、および、その発光ダイオード封止材を用いた発光ダイオード装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】発光ダイオード封止材1において、発光ダイオード封止層2に、レンズ成形層3を積層する。また、発光ダイオード13が実装された基板12を用意するとともに、レンズ成形型16を用意し、次いで、その基板12およびレンズ成形型16の間において、上記の発光ダイオード封止材1を、レンズ成形層3がレンズ成形型16と対向するように配置し、圧縮成形することにより、発光ダイオード装置11を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード封止材、および、発光ダイオード封止材を用いた発光ダイオード装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギーの光を発光できる発光装置として、白色発光装置が知られている。白色発光装置には、例えば、青色光を発光するLED(発光ダイオード)と、青色光を黄色光に変換でき、LEDを被覆する蛍光体層とが設けられており、白色発光装置は、LEDから発光された青色光と、それが蛍光体層で変換された黄色光との混色によって、高エネルギーの白色光を発光する。
【0003】
そのような発光装置として、例えば、反射枠を備える印刷配線基板と、その基板の反射枠内に実装される複数の青色系半導体発光素子と、反射枠内に充填される、半導体発光素子からの青色系の光を吸収して黄色系の光を発する蛍光体を分散保持する透明性の樹脂と、その樹脂の上に凸レンズ状に積層される、上記の蛍光体を分散保持する透明性の樹脂とを備える照明光源が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−148514号公報(図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1の照明光源を製造するには、まず、反射枠を備える印刷配線基板に、半導体発光素子を搭載した後、反射枠内を樹脂で封止し、その後、封止した樹脂の上に、別途、凸レンズ状に形成した樹脂を積層する。そのため、作業工程が多く、また、レンズの位置決め精度が要求されるので、製造コストが高くなるという不具合がある。
【0006】
本発明の目的は、発光ダイオード装置を、少ない作業工程で簡易かつ精度よく製造することができる発光ダイオード封止材、および、その発光ダイオード封止材を用いた発光ダイオード装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の発光ダイオード封止材は、発光ダイオード封止層、および、前記発光ダイオード封止層に積層されるレンズ成形層を備えていることを特徴としている。
【0008】
このような発光ダイオード封止材では、発光ダイオード封止層により発光ダイオードを封止するとともに、レンズ成形層によりレンズを成形することができる。すなわち、このような発光ダイオード封止材によれば、発光ダイオードを封止した後、レンズを設置する必要がないため、発光ダイオード装置を、少ない作業工程で簡易かつ精度よく製造することができる。
【0009】
また、本発明の発光ダイオード封止材では、前記発光ダイオード封止層が、蛍光体を含有するシリコーン樹脂からなることが好適である。
【0010】
このような発光ダイオード封止材では、発光ダイオード封止層がシリコーン樹脂からなるため、優れた耐光性および耐熱性を確保することができ、さらには、そのシリコーン樹脂が蛍光体を含有するため、発光ダイオード封止層において、効率よく蛍光を発することができる。
【0011】
また、本発明の発光ダイオード封止材では、前記レンズ成形層が、シリコーン樹脂からなることが好適である。
【0012】
このような発光ダイオード封止材では、レンズ成形層がシリコーン樹脂からなるため、優れた耐光性および耐熱性を確保することができる。
【0013】
また、本発明の発光ダイオード封止材は、前記発光ダイオード封止層と前記レンズ成形層との間に、さらに、変形防止層を備えていることが好適である。
【0014】
発光ダイオード封止材を用いて、例えば、圧縮成形などにより発光ダイオードを封止すると、発光ダイオード封止層および/またはレンズ成形層に変形を生じる場合があるが、このような発光ダイオード封止材では、発光ダイオード封止層とレンズ成形層との間に変形防止層が積層されているため、発光ダイオード封止層およびレンズ成形層の変形を抑制することができる。
【0015】
また、本発明の発光ダイオード封止材は、前記発光ダイオード封止層および前記レンズ成形層が、いずれも、硬化触媒により硬化するシリコーン樹脂からなり、前記発光ダイオード封止層が、前記レンズ成形層よりも、硬化触媒を多く含有することが好適である。
【0016】
このような発光ダイオード封止材では、その硬化時において、硬化触媒を多く含有する発光ダイオード封止層が、レンズ成形層よりも、早く硬化する。そのため、このような発光ダイオード封止材によれば、発光ダイオードの封止時における、発光ダイオード封止層およびレンズ成形層の変形を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の発光ダイオード装置の製造方法は、発光ダイオードが実装された基板を用意する工程と、レンズ成形型を用意する工程と、前記基板および前記レンズ成形型の間において、上記の発光ダイオード封止材を、前記レンズ成形層が前記レンズ成形型と対向するように配置し、圧縮成形する工程とを備えることを特徴としている。
【0018】
このような発光ダイオード装置の製造方法によれば、上記の発光ダイオード封止材が用いられているため、圧縮成形することで発光ダイオード封止層により発光ダイオードを封止すると同時に、レンズ成形層によりレンズを成形することができる。すなわち、発光ダイオードを封止した後、レンズを設置する必要がないため、発光ダイオード装置を、少ない作業工程で簡易かつ精度よく製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発光ダイオード封止材、および、本発明の発光ダイオード装置の製造方法によれば、発光ダイオード封止層により発光ダイオードを封止するとともに、レンズ成形層によりレンズを成形することができるため、発光ダイオード装置を、少ない作業工程で簡易かつ精度よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の発光ダイオード封止材の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の発光ダイオード装置の製造方法の一実施形態を示す製造工程図であって、(a)は、発光ダイオードが実装された基板を用意する工程、(b)は、レンズ成形型を用意する工程、(c)は、基板およびレンズ成形型の間において、発光ダイオード封止材を、レンズ成形層がレンズ成形型と対向するように配置する工程を示す。
【図3】図2に続いて、本発明の発光ダイオード装置の製造方法の一実施形態を示す製造工程図であって、(d)は、発光ダイオード封止材を圧縮成形する工程、(e)は、レンズ成形型を脱型し、個片状に切断する工程を示す。
【図4】本発明の発光ダイオード封止材の他の実施形態(変形防止層を備える形態)を示す概略構成図である。
【図5】図4に示す発光ダイオード封止材が用いられる発光ダイオード装置を示す概略構成図である。
【図6】本発明の発光ダイオード封止材の他の実施形態(発光ダイオード封止材において発光ダイオード封止層がレンズ成形層よりも硬化触媒を多く含有する形態)が用いられる発光ダイオード装置を示す概略構成図である。
【図7】本発明の発光ダイオード封止材の他の実施形態(発光ダイオード封止材において発光ダイオード封止層が2層として形成される形態)が用いられる発光ダイオード装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の発光ダイオード封止材の一実施形態を示す概略構成図である。
【0022】
図1において、発光ダイオード封止材1は、発光ダイオード封止層2と、レンズ成形層3とを備えている。
【0023】
発光ダイオード封止層2は、発光ダイオード装置11(後述)において、発光ダイオード13(後述)を封止するために設けられる樹脂層であって、例えば、光を透過できる樹脂などから、平面視略矩形の平板形状に形成されている。
【0024】
樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂など、公知の透明樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0025】
樹脂として、好ましくは、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0026】
樹脂としてシリコーン樹脂を用いれば、優れた耐光性および耐熱性を確保することができる。
【0027】
シリコーン樹脂としては、例えば、熱硬化型シリコーンレジンが挙げられ、そのような熱硬化型シリコーンレジンとしては、例えば、縮合反応および付加反応(具体的には、ヒドロシリル化反応)することができるシリコーン樹脂組成物などが挙げられる。
【0028】
このようなシリコーン樹脂組成物は、加熱によって、縮合反応して、Bステージ状態(半硬化状態)となることができ、次いで、さらなる加熱によって、付加反応して、硬化(完全硬化)状態となることができる組成物である。
【0029】
なお、Bステージ状態では、樹脂が、溶剤に可溶なAステージと、完全硬化したCステージとの間の状態であって、硬化およびゲル化がわずかに進行し、溶剤に膨潤するが完全に溶解せず、加熱によって軟化するが溶融しない状態である。
【0030】
シリコーン樹脂組成物は、例えば、シラノール両末端ポリシロキサン、アルケニル基含有アルコキシシランおよびオルガノハイドロジェンシロキサンを含有している。なお、シラノール両末端ポリシロキサンおよびアルケニル基含有アルコキシシランは、縮合原料(縮合反応に供される原料)であり、オルガノハイドロジェンシロキサンは、付加原料(付加反応に供される原料)である。
【0031】
シラノール両末端ポリシロキサンは、分子の両末端にシラノール基(SiOH基)を含有するシラン化合物であって、具体的には、下記式(1)で示される。
【0032】
【化1】

【0033】
(式(1)中、R1およびR2は1価の炭化水素基であり、nは1以上の整数を示す。R1およびR2は、互いに同一または相異なっている。)
上記式(1)において、R1およびR2は、好ましくは、互いに同一である。
【0034】
R1およびR2で示される1価の炭化水素基は、飽和または不飽和であり、直鎖状、分枝鎖状または環状の炭化水素基などが挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製の容易性または熱安定性の観点から、例えば、1〜20、好ましくは、1〜10である。
【0035】
具体的には、1価の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシルなどの飽和脂肪族炭化水素基、例えば、フェニル、ナフチルなどの芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0036】
1価の炭化水素基として、好ましくは、飽和脂肪族炭化水素基、さらに好ましくは、透明性および耐光性の観点から、メチルが挙げられる。
【0037】
上記式(1)中、nは、好ましくは、安定性および/または取り扱い性の観点から、1〜10000の整数、さらに好ましくは、1〜1000の整数である。
【0038】
シラノール両末端ポリシロキサンとして、具体的には、シラノール両末端ポリジメチルシロキサン、シラノール両末端ポリメチルフェニルシロキサン、シラノール両末端ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。好ましくは、シラノール両末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0039】
シラノール両末端ポリシロキサンは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0040】
シラノール両末端ポリシロキサンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0041】
なお、シラノール両末端ポリシロキサンは、通常、nが相異なる(つまり、分子量が異なる)化合物の混合物である。
【0042】
従って、上記式(1)におけるnは、平均値として算出される。
【0043】
シラノール両末端ポリシロキサンの数平均分子量は、安定性および/または取り扱い性の観点から、例えば、100〜1000,000、好ましくは200〜100,000である。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンで換算されて算出される。後述の数平均分子量についても、上記と同様にして算出される。
【0044】
シラノール両末端ポリシロキサンの配合割合は、縮合原料の総量に対して、例えば、1〜99.99質量%、好ましくは、50〜99.9質量%、さらに好ましくは、80〜99.5質量%である。
【0045】
アルケニル基含有アルコキシシランは、アルケニル基およびアルコキシ基を併有するシラン化合物であって、具体的には、下記式(2)で示されるアルケニル基含有トリアルコキシシランである。
【0046】
−Si(OR (2)
(式(2)中、R3は、直鎖または環状のアルケニル基、R4は、1価の炭化水素基である。R3およびR4は、互いに異なっている。)
R3で示されるアルケニル基の炭素数は、調製の容易性または熱安定性の観点から、例えば、1〜20、好ましくは、1〜10である。
【0047】
具体的には、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などの直鎖状アルケニル基や、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基などの環状アルケニル基などが挙げられる。
【0048】
好ましくは、直鎖状アルケニル基、さらに好ましくは、付加反応の反応性の観点から、ビニル基が挙げられる。
【0049】
R4で示される1価の炭化水素基としては、上記式(1)のR1およびR2で示される1価の炭化水素基と同様のものが挙げられる。好ましくは、メチルが挙げられる。
【0050】
具体的には、アルケニル基含有アルコキシシランとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシランなどのビニルトリアルコキシシラン、例えば、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ブテニルトリメトキシシラン、ペンテニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ヘプテニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0051】
好ましくは、ビニルトリアルコキシシラン、さらに好ましくは、ビニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0052】
アルケニル基含有アルコキシシランは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0053】
アルケニル基含有アルコキシシランは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0054】
アルケニル基含有トリアルコキシシランの配合割合は、縮合原料の総量に対して、例えば、0.01〜90質量%、好ましくは、0.01〜50質量%、さらに好ましくは、0.01〜10質量%である。
【0055】
シラノール両末端ポリシロキサンのシラノール基(SiOH基)の、アルケニル基含有アルコキシシランのアルコキシシリル基(SiOR基)に対するモル比(SiOH/(SiOR)は、例えば、20/1〜0.2/1、好ましくは、10/1〜0.5/1、さらに好ましくは、実質的に1/1である。
【0056】
モル比が上記範囲を超える場合には、シリコーン樹脂組成物をBステージ状態とする際に、適度な靭性を有するBステージ状物(半硬化物)を得られない場合があり、一方、モル比が上記範囲に満たない場合には、アルケニル基含有アルコキシシランの配合割合が過度に多く、そのため、得られる樹脂層(発光ダイオード封止層2)の耐熱性が不良となる場合がある。
【0057】
また、モル比が上記範囲内(好ましくは、実質的に1/1)であれば、シラノール両末端ポリシロキサンのシラノール基(SiOH基)と、アルケニル基含有アルコキシシランのアルコキシシリル基(SiOR基)とを過不足なく縮合反応させることができる。
【0058】
オルガノハイドロジェンシロキサンは、主鎖のケイ素原子に直接結合する水素原子を含有する化合物であり、例えば、下記式(3)に示され、主鎖の途中(両末端間)のケイ素原子に直接結合する水素原子を含有するヒドリド化合物、または、下記式(4)で示され、主鎖の両末端のケイ素原子に直接結合する水素原子を含有するヒドリド化合物(ヒドロシリル両末端ポリシロキサン)が挙げられる。
【0059】
【化2】

【0060】
(式(3)中、I、II、IIIおよびIVは、構成単位であり、IおよびIVが末端単位、IIおよびIIIが繰り返し単位を示し、R5は、互いに同一または相異なり、1価の炭化水素基である。aは、0または1以上の整数を示し、bは、2以上の整数を示す。)
【0061】
【化3】

【0062】
(式(4)中、R6は、互いに同一または相異なり、1価の炭化水素基である。cは、0または1以上の整数を示す。)
構成単位IにおけるR5、構成単位IIにおけるR5、構成単位IIIにおけるR5および構成単位IVにおけるR5は、好ましくは、互いに同一である。
【0063】
R5で示される1価の炭化水素基は、上記したR1およびR2で示される1価の炭化水素基と同様のものが挙げられる。好ましくは、飽和脂肪族炭化水素基が挙げられ、より好ましくは、メチル、エチルが挙げられ、さらに好ましくは、メチルが挙げられる。
【0064】
構成単位IおよびIVは、両末端の構成単位である。
【0065】
構成単位IIにおけるaは、構成単位IIの繰り返し単位数であり、好ましくは、反応性の観点から、1〜1000の整数、さらに好ましくは、1〜100の整数を示す。
【0066】
構成単位IIIにおけるbは、構成単位IIIの繰り返し単位数であり、好ましくは、反応性の観点から、2〜10000、さらに好ましくは、2〜1000の整数を示す。
【0067】
具体的には、上記式(3)で示されるヒドリド化合物としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン−co−メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン−co−メチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。好ましくは、ジメチルポリシロキサン−co−メチルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【0068】
上記式(3)で示されるヒドリド化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0069】
なお、上記式(3)で示されるヒドリド化合物は、通常、aおよび/またはbが相異なる(つまり、分子量が異なる)化合物の混合物である。
【0070】
従って、構成単位IIにおけるaおよび構成単位IIIにおけるbは、それぞれ、平均値として算出される。
【0071】
上記式(3)で示されるヒドリド化合物の数平均分子量は、例えば、100〜1,000,000である。
【0072】
上記式(4)におけるR6は、好ましくは、互いに同一である。つまり、両末端のケイ素原子に結合するR6と、両末端間のケイ素原子に結合するR6とは、すべて同一である。
【0073】
R6で示される1価の炭化水素基は、上記したR1およびR2で示される1価の炭化水素基と同様のものが挙げられる。好ましくは、メチル、エチルが挙げられる。
【0074】
上記式(4)中、cは、反応性の観点から、好ましくは、1〜10,000の整数、さらに、好ましくは1〜1,000の整数を示す。
【0075】
具体的には、上記式(4)で示されるヒドリド化合物としては、例えば、ヒドロシリル両末端ポリジメチルシロキサン、ヒドロシリル両末端ポリメチルフェニルシロキサン、ヒドロシリル両末端ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。
【0076】
上記式(4)で示されるヒドリド化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
上記式(4)で示されるヒドリド化合物はとしては、通常、cが相異なる(つまり、分子量が異なる)化合物の混合物である。
【0078】
従って、上記した(4)におけるcは、平均値として算出される。
【0079】
式(4)で表されるヒドリド化合物の数平均分子量は、安定性および/または取り扱い性の観点から、例えば100〜1,000,000、さらに好ましくは、100〜100,000である。
【0080】
オルガノハイドロジェンシロキサンの25℃における粘度は、例えば、10〜100,000mPa・s、好ましくは、20〜50,000mPa・sである。粘度は、B型粘度計により測定される。
【0081】
オルガノハイドロジェンシロキサンは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0082】
オルガノハイドロジェンシロキサンとしては、上記式(3)で示されるヒドリド化合物または上記式(4)で示されるヒドリド化合物を単独使用することができ、あるいは、それらを併用することもできる。オルガノハイドロジェンシロキサンとして、好ましくは、上記式(3)で示されるヒドリド化合物が単独使用される。
【0083】
オルガノハイドロジェンシロキサンの配合割合は、アルケニル基含有アルコキシシランのアルケニル基(上記式(2)のR)とオルガノハイドロジェンシロキサンのヒドロシリル基(SiH基)とのモル比にもよるが、例えば、アルケニル基含有アルコキシシラン100質量部に対して、例えば、10〜10,000質量部、好ましくは、50〜1,000質量部である。
【0084】
また、アルケニル基含有アルコキシシランのアルケニル基(上記式(2)のR)の、オルガノハイドロジェンシロキサンに対するヒドロシリル基(SiH基)モル比(R/SiH)は、例えば、20/1〜0.05/1、好ましくは、20/1〜0.1/1、さらに好ましくは、10/1〜0.1/1、とりわけ好ましくは、5/1〜0.2/1、最も好ましくは、実質的に1/1である。
【0085】
モル比が20/1を超える場合には、シリコーン樹脂組成物をBステージ状態とする際に、適度な靭性を有する半硬化物を得られない場合があり、モル比が0.05/1に満たない場合には、オルガノハイドロジェンシロキサンの配合割合が過度に多く、そのため、得られる樹脂層(発光ダイオード封止層2)の耐熱性および靭性が不十分となる場合がある。
【0086】
また、モル比が1/1未満、0.05/1以上であれば、シリコーン樹脂組成物をBステージ状態とする際に、モル比が20/1〜1/1であるシリコーン樹脂組成物に比べて、Bステージ状態へ迅速に移行させることができる。
【0087】
シリコーン樹脂組成物は、上記したシラノール両末端ポリシロキサン、アルケニル基含有アルコキシシランおよびオルガノハイドロジェンシロキサンを、触媒とともに、配合して、攪拌混合することにより調製される。
【0088】
触媒としては、例えば、縮合触媒(半硬化触媒)および付加触媒(硬化触媒、ヒドロシリル化触媒)などが挙げられる。
【0089】
縮合触媒は、シラノール基とアルコキシシリル基との縮合反応の反応速度を向上させる物質であれば特に限定されず、例えば、塩酸、酢酸、ギ酸、硫酸などの酸、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの塩基、例えば、アルミニウム、チタン、亜鉛、スズなどの金属系触媒などが挙げられる。
【0090】
これらのうち、相溶性および熱分解性の観点から、好ましくは、塩基、さらに好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。
【0091】
縮合触媒の配合割合は、シラノール両末端ポリシロキサン100モルに対して、例えば、0.1〜50モル、好ましくは、0.5〜5モルである。
【0092】
付加触媒は、付加反応、つまり、アルケニル基とSiHとのヒドロシリル化反応の反応速度を向上させる物質であれば、特に限定されず、例えば、白金黒、塩化白金、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金一カルボニル錯体、白金−アセチルアセテートなどの白金触媒、例えば、パラジウム触媒、ロジウム触媒などの金属触媒が挙げられる。
【0093】
これらのうち、相溶性、透明性および触媒活性の観点から、好ましくは、白金触媒、さらに好ましくは、白金−カルボニル錯体が挙げられる。
【0094】
付加触媒の配合割合は、付加触媒の金属量の質量部数として、オルガノハイドロジェンシロキサン100質量部に対して、例えば、1.0×10−4〜1.0質量部、好ましくは、1.0×10−4〜0.5質量部、さらに好ましく、1.0×10−4〜0.05質量部である。
【0095】
なお、上記した触媒は、固体状態のものをそのまま用いてもよく、あるいは、取扱性の観点から、溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液として用いることもできる。
【0096】
溶媒としては、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコールなどが挙げられる。好ましくは、水が挙げられる。
【0097】
シリコーン樹脂組成物を調製するには、例えば、上記した原料(縮合原料および付加原料)と、触媒とを一度に加える。あるいは、まず、各原料および各触媒を異なるタイミングでそれぞれ加えることができる。さらには、一部の成分を一度に加え、残部の各成分を、異なるタイミングでそれぞれ加えることもできる。
【0098】
好ましくは、まず、縮合原料に、縮合触媒を加え、次いで、付加原料および付加触媒を一度に加える。
【0099】
具体的には、シラノール両末端ポリシロキサンおよびアルケニル基含有アルコキシシラン(つまり、縮合原料)に、縮合触媒を、上記した割合で配合して、それらを、例えば、5分間〜24時間攪拌する。
【0100】
また、配合および攪拌時には、縮合原料の相溶性および取扱性を向上させるために、例えば、0〜60℃に設定することもできる。
【0101】
また、原料および縮合触媒の配合時に、それらの相溶性を向上させるための相溶化剤を適宜の割合で加えることもできる。
【0102】
相溶化剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコールなどの有機溶媒が挙げられる。なお、相溶化剤は、縮合触媒が有機溶媒の溶液または分散液として調製されている場合には、その有機溶媒を相溶化剤として供することもできる。
【0103】
相溶化剤の配合割合は、シラノール両末端ポリシロキサンおよびアルケニル基含有アルコキシシランの総量100質量部に対して、例えば、1〜20質量部、好ましくは、5〜10質量部である。
【0104】
その後、反応系(混合物)を、必要により減圧にすることにより、揮発成分(有機溶媒)を除去する。
【0105】
次いで、得られる縮合原料および縮合触媒の混合物に、オルガノハイドロジェンシロキサンおよび付加触媒を配合して、例えば、1〜60分間攪拌する。
【0106】
配合および攪拌時には、混合物およびオルガノハイドロジェンシロキサンの相溶性および取扱性を向上させるために、例えば、0〜60℃に設定することもできる。
【0107】
これにより、シリコーン樹脂組成物を調製することができる。
【0108】
また、発光ダイオード封止層2において、樹脂、好ましくは、シリコーン樹脂は、蛍光体を含有することができる。
【0109】
蛍光体は、例えば、青色光を黄色光に変換することのできる黄色蛍光体などが挙げられる。そのような蛍光体としては、例えば、複合金属酸化物や金属硫化物などに、例えば、セリウム(Ce)やユウロピウム(Eu)などの金属原子がドープされた蛍光体が挙げられる。
【0110】
具体的には、蛍光体としては、例えば、YAl12:Ce(YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)、(Y,Gd)Al12:Ce、TbAl12:Ce、CaScSi12:Ce、LuCaMg(Si,Ge)12:Ceなどのガーネット型結晶構造を有するガーネット型蛍光体、例えば、(Sr,Ba)SiO:Eu、CaSiOCl:Eu、SrSiO:Eu、LiSrSiO:Eu、CaSi:Euなどのシリケート蛍光体、例えば、CaAl1219:Mn、SrAl:Euなどのアルミネート蛍光体、例えば、ZnS:Cu,Al、CaS:Eu、CaGa:Eu、SrGa:Euなどの硫化物蛍光体、例えば、CaSi:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、Ca−α−SiAlONなどの酸窒化物蛍光体、例えば、CaAlSiN:Eu、CaSi:Euなどの窒化物蛍光体、例えば、KSiF:Mn、KTiF:Mnなどのフッ化物系蛍光体などが挙げられる。好ましくは、ガーネット型蛍光体、さらに好ましくは、YAl12:Ceが挙げられる。
【0111】
また、蛍光体は、粒子状であり、その形状は、特に限定されず、例えば、略球形状、略平板形状、略針形状などが挙げられる。
【0112】
また、蛍光体の平均粒子径(最大長さの平均)は、例えば、0.1〜30μm、好ましくは、0.2〜20μmである。蛍光体粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定される。
【0113】
蛍光体は、単独使用または併用することができる。
【0114】
発光ダイオード封止層2を形成する樹脂が蛍光体を含有すれば、発光ダイオード封止層2において、効率よく蛍光を発することができる。
【0115】
そして、例えば、発光ダイオード装置11(後述)において、発光ダイオード13(後述)として青色発光ダイオードなどを用い、その発光ダイオード13(後述)から生じる光と、蛍光体から生じる光とを混色することにより、発光ダイオード装置11(後述)を、例えば、白色光を生じる発光ダイオード装置11(白色発光ダイオード)とすることができる。
【0116】
蛍光体の含有割合は、樹脂(好ましくは、シリコーン樹脂)100質量部に対して、例えば、1〜50質量部、例えば、3〜30質量部である。
【0117】
そして、樹脂に蛍光体を含有させるには、上記した蛍光体および樹脂を配合して、攪拌混合する。攪拌時間は、例えば、0.5〜2時間である。
【0118】
また、樹脂は、必要により、無機粒子を含有することができる。
【0119】
樹脂が無機粒子を含有することにより、樹脂の硬化時における硬化収縮率を低減させ、クラックや部品の精密な形状、寸法を設計通りに再現させることができ、さらには、耐熱性や熱伝導率の向上を図ることができる。
【0120】
このような無機粒子としては、例えば、ガラス、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ(溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカや疎水性超微粉シリカなど)、タルク、クレー、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0121】
これら無機粒子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0122】
好ましくは、シリカが挙げられる。
【0123】
また、無機粒子の粒子径は、目的および用途に応じて、種々選択されるが、透明性の観点から、好ましくは、最大粒子径が50nm以下、より好ましくは、20nm以下である。このような無機粒子として、より具体的には、例えば、ナノシリカ(ナノ微粒子のシリカ)などが挙げられる。
【0124】
無機粒子の含有割合は、樹脂(好ましくは、シリコーン樹脂)100質量部に対して、例えば、1〜50質量部、例えば、3〜30質量部である。
【0125】
また、樹脂が蛍光体と無機粒子とを含有する場合において、それらの含有割合は、蛍光体および無機粒子の総量100質量部に対して、蛍光体が、例えば、10〜50質量部、好ましくは、30〜40質量部であり、無機粒子が、例えば、50〜90質量部、好ましくは、60〜70質量部である。
【0126】
さらに、樹脂には、透過防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤などの公知の添加物を適宜の割合で添加することができる。
【0127】
発光ダイオード封止層2は、例えば、公知の離型紙などに、上記した樹脂を塗工し、加熱することにより、例えば、Bステージ状態として、得ることができる。
【0128】
加熱条件としては、樹脂が、シリコーン樹脂組成物からなる場合には、縮合反応が進行するが、付加反応(ヒドロシリル化反応)が進行しない条件であり、具体的には、加熱温度が、例えば、40〜150℃、好ましくは、50〜140℃で、加熱時間が、例えば、1〜60分間、好ましくは、3〜30分間である。
【0129】
発光ダイオード封止層2の厚みは、例えば、100〜1000μm、好ましくは、300〜500μmである。
【0130】
レンズ成形層3は、発光ダイオード装置11(後述)において、レンズ14(後述)を成形するために設けられる樹脂層であって、例えば、光を透過できる樹脂などから、平面視略矩形の平板形状に形成されている。
【0131】
樹脂としては、例えば、上記した発光ダイオード封止層2に用いられる樹脂と同様の樹脂が挙げられ、具体的には、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂など、公知の透明樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0132】
樹脂として、好ましくは、発光ダイオード封止層2に用いられるシリコーン樹脂と同様のシリコーン樹脂が挙げられる。
【0133】
樹脂としてシリコーン樹脂を用いれば、優れた耐光性および耐熱性を確保することができる。
【0134】
また、レンズ成形層3において、樹脂は、蛍光体を除いて、上記と同様に、無機粒子、公知の添加物などを含有することができる。
【0135】
レンズ成形層3は、例えば、公知の離型紙などに、上記した樹脂を塗工し、加熱することにより、例えば、Bステージ状態として、得ることができる。
【0136】
加熱条件としては、樹脂が、シリコーン樹脂組成物からなる場合には、縮合反応が進行するが、付加反応(ヒドロシリル化反応)が進行しない条件であり、具体的には、加熱温度が、例えば、40〜150℃、好ましくは、50〜140℃で、加熱時間が、例えば、1〜60分間、好ましくは、3〜30分間である。
【0137】
レンズ成形層3の厚みは、例えば、100〜1200μm、好ましくは、600〜900μmである。
【0138】
また、レンズ成形層3の厚みは、発光ダイオード封止層2の厚みに対して、例えば、1〜3倍である。
【0139】
そして、発光ダイオード封止層2とレンズ成形層3とを貼り合わせ、例えば、40〜150℃、好ましくは、50〜140℃で、例えば、1〜60分間、好ましくは、3〜30分間加熱することにより、発光ダイオード封止層2およびレンズ成形層3のBステージ状態を維持しつつ、発光ダイオード封止材1を、得ることができる。
【0140】
発光ダイオード封止材1の厚みは、例えば、200〜2200μm、好ましくは、1000〜1500μmである。
【0141】
このような発光ダイオード封止材1によれば、詳しくは後述するが、発光ダイオード封止層2により発光ダイオード13(後述)を封止するとともに、レンズ成形層3によりレンズ14(後述)を成形することができるため、発光ダイオード装置11(後述)を、少ない作業工程で簡易かつ精度よく製造することができる。
【0142】
次に、本発明の発光ダイオード装置の製造方法の一実施形態について、図2および図3を参照して説明する。なお、上記した各部に対応する部材については、以降の各図において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0143】
この方法では、まず、図2(a)に示すように、発光ダイオード13が実装された基板12を用意する。
【0144】
基板12は、例えば、銅に銀めっきをしたリードフレームから形成されている。
【0145】
基板12の上面には、図示しないが、発光ダイオード13の端子と、発光ダイオード13に電気を供給するための電源の端子(図示せず)とを電気的に接続するための配線が形成されている。
【0146】
発光ダイオード13としては、例えば、主として、青色光を発光する青色発光ダイオード(青色LED)などが挙げられる。
【0147】
発光ダイオード13は、基板12の上面に複数(図2および図3では、2つ現れている)設置され、図示しない配線とワイヤ17を介して電気的に接続(ワイヤボンディング)されている。
【0148】
次いで、この方法では、図2(b)に示すように、レンズ成形型16を用意する。
【0149】
レンズ成形型16は、例えば、ステンレス鋼に硬質クロムをめっきしたものなどからなる成形型であって、レンズ14(後述)に対応する形状、例えば、半球状の窪みを、発光ダイオード13に対応して、複数(図2および図3では、2つ現れている)備えている。
【0150】
次いで、この方法では、図2(c)に示すように、基板12およびレンズ成形型16の間において、上記したBステージ状態の発光ダイオード封止材1(図1参照)を、レンズ成形層3がレンズ成形型16と対向するように配置し、図3(d)に示すように、基板12とレンズ成形型16とで発光ダイオード封止材1を挟みこむように、圧縮成形し、その後、脱型する。
【0151】
実際には、レンズ成形型16の上(窪みが形成されている側)に、発光ダイオード封止材1を載置した後、その上に、発光ダイオード13を備えた基板12を、発光ダイオード13が発光ダイオード封止材1と対向するように載置して、圧縮成形する。
【0152】
圧縮成形においては、圧縮圧力が、例えば、0.1〜5MPa、好ましくは、0.5〜3MPaであり、圧縮時間が、例えば、1〜10分間、好ましくは、2〜6分間である。
【0153】
これにより、レンズ成形層3が、レンズ成形型16に対応した形状に外形形成されるとともに、発光ダイオード13が、発光ダイオード封止層2により封止される。
【0154】
また、例えば、発光ダイオード封止材1がBステージ状態である場合などには、圧縮成形とともに、発光ダイオード封止材1を加熱処理することができる。
【0155】
加熱処理は、通常、発光ダイオード封止材1の発光ダイオード封止層2およびレンズ成形層3が離型可能な程度まで硬化する第1ステップと、レンズ成形型16から離型後に完全硬化する第2ステップとで行う。
【0156】
すなわち、発光ダイオード封止層2およびレンズ成形層3が、ともにシリコーン樹脂組成物から形成される場合には、付加反応(ヒドロシリル化反応)が進行する条件であり、具体的には、加熱条件が、第1ステップでは、例えば、120〜180℃で、2〜20分間、第2ステップでは、例えば、100〜180℃で、30分間〜5時間である。
【0157】
このように圧縮成形(および、必要により加熱処理)することによって、発光ダイオード封止層2が発光ダイオード13を封止した状態、かつ、レンズ成形層3がレンズ成形型16に対応した形状で、発光ダイオード封止材1を硬化させることができる。これにより、封止層15(硬化後の発光ダイオード封止層2)、および、レンズ14(硬化後のレンズ成形層3)を同時に形成することができる。
【0158】
その後、必要により、図3(e)に示すように、各発光ダイオード13をそれぞれ個別化するように、個片状に切断する。これにより、発光ダイオード装置11を得ることができる。
【0159】
そして、このような発光ダイオード装置11の製造方法によれば、上記の発光ダイオード封止材1が用いられているため、圧縮成形することで発光ダイオード封止層2により発光ダイオード13を封止すると同時に、レンズ成形層3によりレンズ14を成形することができる。すなわち、発光ダイオード13を封止した後、レンズ14を設置する必要がないため、発光ダイオード装置11を、少ない作業工程で簡易かつ精度よく製造することができる。
【0160】
図4は、本発明の発光ダイオード封止材の他の実施形態(変形防止層を備える形態)を示す概略構成図である。
【0161】
上記した説明では、発光ダイオード封止層2の一方側表面に、レンズ成形層3を直接積層したが、例えば、発光ダイオード封止層2とレンズ成形層3との間に、さらに、変形防止層を備えることができる。
【0162】
図4において、発光ダイオード封止材1は、発光ダイオード封止層2と、レンズ成形層3と、変形防止層4とを備えている。
【0163】
変形防止層4は、発光ダイオード装置11(後述)において、発光ダイオード封止層2(後述する封止層15を含む)や、レンズ成形層3(後述するレンズ14を含む)の変形を防止するために設けられる樹脂層であって、例えば、光を透過できる樹脂などから、平面視略矩形の平板形状に形成されている。
【0164】
樹脂としては、例えば、上記した発光ダイオード封止層2に用いられる樹脂と同様の樹脂が挙げられ、具体的には、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂など、公知の透明樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0165】
樹脂として、好ましくは、シリコーン樹脂が挙げられ、より好ましくは、液状シリコーンゴムが挙げられる。
【0166】
変形防止層4は、例えば、発光ダイオード封止層2の一方側表面に、上記した樹脂を塗工し、例えば、40〜150℃、好ましくは、50〜140℃において、例えば、1〜60分間、好ましくは、1〜30分間加熱することにより、硬化させて得ることができる。
【0167】
変形防止層4の厚みは、例えば、10〜300μm、好ましくは、50〜200μmである。
【0168】
また、変形防止層4は、ショアA型のデュロメーターで室温で測定した硬度(ショア硬度)が、例えば、A30〜A95、好ましくは、A50〜A70である。
【0169】
そして、例えば、発光ダイオード封止層2および変形防止層4と、レンズ成形層3とを、レンズ成形層3に対して変形防止層4が対向するように貼り合わせ、例えば、40〜150℃、好ましくは、50〜140℃で、例えば、1〜60分間、好ましくは、3〜30分間加熱することにより、発光ダイオード封止層2およびレンズ成形層3のBステージ状態を維持しつつ、発光ダイオード封止材1を、得ることができる。
【0170】
発光ダイオード封止材1の厚みは、例えば、210〜2400μm、好ましくは、1000〜1500μmである。
【0171】
発光ダイオード封止材1を用いて、例えば、圧縮成形などにより発光ダイオード13(後述)を封止すると、発光ダイオード封止層2および/またはレンズ成形層3に変形を生じる場合がある(図3(e)参照)。
【0172】
しかし、このような発光ダイオード封止材1では、発光ダイオード封止層2とレンズ成形層3との間に変形防止層4が積層されているため、図5に示すように、発光ダイオード封止層2およびレンズ成形層3の変形を抑制することができる。
【0173】
図6は、本発明の発光ダイオード封止材の他の実施形態(発光ダイオード封止材において発光ダイオード封止層がレンズ成形層よりも硬化触媒を多く含有する形態)が用いられる発光ダイオード装置を示す概略構成図である。
【0174】
上記した説明では、発光ダイオード封止層2とレンズ成形層3とを、同様のシリコーン樹脂(縮合触媒および付加触媒を同程度含有するシリコーン樹脂)から形成したが、例えば、発光ダイオード封止層2とレンズ成形層3とを、いずれも、硬化触媒により硬化するシリコーン樹脂から形成するとともに、発光ダイオード封止層2に、レンズ成形層3よりも、多くの硬化触媒(付加触媒)を含有させることができる。
【0175】
すなわち、この実施形態では、発光ダイオード封止層2を形成するシリコーン樹脂が、レンズ成形槽3を形成するシリコーン樹脂よりも、多くの硬化触媒を含有する。
【0176】
具体的には、発光ダイオード封止層2の硬化触媒の含有量が、レンズ成形層3の硬化触媒の含有量に対して、質量基準で、例えば、1.5倍以上、好ましくは、3.0倍以上、通常、10倍以下である。
【0177】
このような発光ダイオード封止材1では、その硬化時において、硬化触媒を多く含有する発光ダイオード封止層2が、レンズ成形層3よりも、早く硬化する。
【0178】
そのため、このような発光ダイオード封止材1によれば、図6に示すように、変形防止層4を設けなくとも、発光ダイオード13の封止時における、発光ダイオード封止層2およびレンズ成形層3の変形を抑制することができる。
【0179】
また、上記した説明では、発光ダイオード封止層2およびレンズ成形層3を、それぞれ、単層(1層)として形成したが、例えば、発光ダイオード封止層2を、多層(2層以上)として形成することができ、さらには、レンズ成形層3を、多層(2層以上)として形成することもできる。
【0180】
発光ダイオード封止層2および/またはレンズ成形層3を多層として形成する方法としては、特に制限されず、例えば、複数の層を形成した後、それらを貼り合わせるなど、公知の方法が採用される。
【0181】
図7は、本発明の発光ダイオード封止材の他の実施形態(発光ダイオード封止材において発光ダイオード封止層が2層として形成される形態)が用いられる発光ダイオード装置を示す概略構成図である。
【0182】
例えば、発光ダイオード封止材1において、発光ダイオード封止層2を上層および下層を備える2層として形成する場合には、その発光ダイオード封止材1を用いて得られる発光ダイオード装置11は、封止層15(硬化後の発光ダイオード封止層2)が、上層および下層を備える2層として形成される(図7参照)。
【0183】
このような発光ダイオード封止材1では、発光ダイオード封止層2は、上記と同様、好ましくは、蛍光体を含有する。このような場合において、蛍光体は、少なくとも1層の発光ダイオード封止層2に含有されていればよい。
【0184】
具体的には、図7が参照されるように、発光ダイオード封止層2および封止層15が、上層および下層を備える2層として形成される場合には、下層の発光ダイオード封止層2に蛍光体を含有させる一方、上層の発光ダイオード封止層2には蛍光体を含有させなくともよい。
【0185】
また、このような発光ダイオード封止材1において、上記したように、発光ダイオード封止層2に、レンズ成形層3よりも多くの硬化触媒(付加触媒)を含有させる場合には、少なくとも1層の発光ダイオード封止層2が、レンズ成形層3よりも多くの硬化触媒(付加触媒)を含有すればよい。
【0186】
具体的には、図7が参照されるように、発光ダイオード封止層2および封止層15が、上層および下層を備える2層として形成される場合には、上層の発光ダイオード封止層2または下層の発光ダイオード封止層2のいずれか一方、または、それら両方に、レンズ成形層3よりも多くの硬化触媒(付加触媒)を含有させればよい。
【0187】
このような発光ダイオード封止材1によっても、図7に示すように、変形防止層4を設けることなく、発光ダイオード13の封止時における、発光ダイオード封止層2およびレンズ成形層3の変形を抑制することができる。
【0188】
また、図示しないが、例えば、発光ダイオード封止層2のみを予備加熱することによって、発光ダイオード13の封止時における、発光ダイオード封止層2およびレンズ成形層3の変形を抑制することもできる。
【0189】
具体的には、基板12およびレンズ成形型16の間に、発光ダイオード封止材1を配置する(図2(c)参照)前に、予め、発光ダイオード封止材1の発光ダイオード封止層2のみを加熱し、その硬化を進行させておくことができる。
【0190】
このように、発光ダイオード封止層2が予備加熱されている発光ダイオード封止材1を、図3(d)に示すように、基板12とレンズ成形型16とで挟みこむように圧縮成形すれば、発光ダイオード封止層2にレンズ成形層3よりも多くの硬化触媒(付加触媒)を含有させることなく、発光ダイオード13の封止時における、発光ダイオード封止層2およびレンズ成形層3の変形を抑制することができる。
【0191】
さらには、発光ダイオード封止層2にレンズ成形層3よりも多くの硬化触媒(付加触媒)を含有させ、その発光ダイオード封止層2を予備加熱すれば、発光ダイオード13の封止時における、発光ダイオード封止層2およびレンズ成形層3の変形を、より一層抑制することができる。
【実施例】
【0192】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されない。
【0193】
実施例1
<発光ダイオード封止層の製造>
シラノール両末端ポリジメチルシロキサン(シラノール両末端ポリシロキサン、式(1)中、R1がすべてメチル、nの平均が155)(信越化学工業社製、商品名「X−21−5842」、平均分子量11500)100g(8.70mmol)、ビニルトリメトキシシラン(アルケニル基含有アルコキシシラン)(信越化学工業社製、商品名「KBM−1003)0.86g(5.80mmol)、および、2−プロパノール10mL(シラノール両末端ポリジメチルシロキサンとビニルトリメトキシシランの総量100質量部に対して8質量部)を、攪拌混合した。
【0194】
なお、シラノール両末端ポリジメチルシロキサンのSiOH基とビニルトリメトキシシランのメトキシシリル基のモル比(SiOH/メトキシシリル基)は、1/1であった。
【0195】
次いで、得られた混合物に、縮合触媒として水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(濃度10質量%)0.16mL(0.17mmol、シラノール両末端ポリジメチルシロキサン100モルに対して2.0モル)を加え、室温(25℃)で2時間攪拌した。
【0196】
次いで、得られた混合物(オイル)に、オルガノハイドロジェンシロキサン(式(3)中、R5が全てメチル、aの平均が10、bの平均が10。25℃における粘度20mPa・s)(信越化学工業社製、商品名「KF−9901」)0.75g、および、付加触媒(ヒドロシリル化触媒)として白金−カルボニル錯体溶液(白金濃度2質量%)0.26mL(オルガノハイドロジェンシロキサン100質量部に対して35質量部、白金換算で0.7質量部)を加えて、シリコーン樹脂組成物を得た。
【0197】
なお、ビニルトリメトキシシランのビニル基とオルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基のモル比(ビニル基/SiH)は、1/1であった。
【0198】
その後、得られたシリコーン樹脂組成物に、YAl12:Ce(YAG:Ce)からなる蛍光体粒子(球形状、平均粒子系17μm)を、シリコーン樹脂組成物100質量部に対して5質量部の割合で添加した。さらに、ナノシリカ粒子(粒子径20nm以下)を、シリコーン樹脂組成物100質量部に対して10質量部の割合で添加した。これにより、蛍光体および無機粒子を含有するシリコーン樹脂組成物を得た。
【0199】
その後、蛍光体および無機粒子を含有するシリコーン樹脂組成物を、離型紙に塗工し、120℃で6分間加熱して、厚み350μmの半硬化状態(Bステージ状態)の発光ダイオード封止層を得た。
<レンズ成形層の製造>
蛍光体粒子を添加しない以外は、上記<発光ダイオード封止層の製造>と同様にして、無機粒子を含有するシリコーン樹脂組成物を得た。
【0200】
その後、無機粒子を含有するシリコーン樹脂組成物を、離型紙に塗工し、120℃で6分間加熱して、厚み750μmの半硬化状態(Bステージ状態)の発光ダイオード封止層を得た。
<発光ダイオード封止材の製造>
上記により得られた発光ダイオード封止層およびレンズ成形層を貼り合わせ、120℃で3分間加熱することにより、厚み1100μmの発光ダイオード封止材を得た。
【0201】
なお、発光ダイオード封止材において、発光ダイオード封止層およびレンズ成形層は、半硬化状態(Bステージ状態)を維持していた。
<発光ダイオード装置の製造>
配線が形成された基板の上面において、100個(10×10配置)の青色発光ダイオードを実装した(図2(a)参照)。
【0202】
次いで、半球状の窪みが100個形成されたレンズ成形型を用意し(図2(b)参照)、そのレンズ成形型と基板との間において、上記により得られた発光ダイオード封止材を、レンズ成形層がレンズ成形型と対向するように配置した(図2(c)参照)。
【0203】
次いで、発光ダイオード封止材を、基板およびレンズ成形型の間に挟み込み、0.5MPaで圧縮成形するとともに、160℃で5分間加熱した(図3(d)参照)。その後、レンズ成形型を脱型し、150℃で1時間加熱し、完全硬化した後、個片状に切断することにより、100個の発光ダイオード装置を製造した(図3(e)参照)。これにより、発光ダイオード封止層により発光ダイオードを封止すると同時に、レンズ成形層によりレンズを成形することができた。
【0204】
実施例2
<発光ダイオード封止材の製造>
実施例1と同様にして、厚み350μmの発光ダイオード封止層を製造した。
<変形防止層の製造>
上記により得られた発光ダイオード封止層の表面に、液状シリコーンゴム(旭化成社製、商品名「LR7665」)を、厚み200μmで塗工し、120℃で3分間熱硬化させることにより、厚み200μmの変形防止層を製造し、発光ダイオード封止層および変形防止層の積層体を形成した。
【0205】
なお、ショアA型のデュロメーターで測定した変形防止層のショア硬度は、A50であった。
<レンズ成形層の製造>
実施例1と同様にして、厚み750μmのレンズ成形層を製造した。
<発光ダイオード封止材の製造>
上記により得られた発光ダイオード封止層および変形防止層の積層体と、レンズ成形層とを、変形防止層とレンズ成形層とが対向するように貼り合わせ、120℃で3分間加熱することにより、厚み1300μmの発光ダイオード封止材を得た。
【0206】
なお、発光ダイオード封止材において、発光ダイオード封止層およびレンズ成形層は、半硬化状態(Bステージ状態)を維持していた。
<発光ダイオード装置の製造>
実施例1と同様にして、発光ダイオード装置を製造した(図5参照)。
【0207】
実施例3
<発光ダイオード封止層の製造>
付加触媒(ヒドロシリル化触媒)として白金−カルボニル錯体溶液(白金濃度2質量%)0.87mL(オルガノハイドロジェンシロキサン100質量部に対して116.7質量部、白金換算で2.3質量部(実施例1における配合量の3.3倍))を配合した以外は、実施例1と同様にして、厚み350μmの半硬化状態(Bステージ状態)の発光ダイオード封止層を得た。
<レンズ成形層の製造>
実施例1と同様にして、厚み750μmの発光ダイオード封止層を得た。
<発光ダイオード封止材の製造>
実施例1と同様にして、厚み1100μmの発光ダイオード封止材を得た。
【0208】
なお、発光ダイオード封止材において、発光ダイオード封止層およびレンズ成形層は、半硬化状態(Bステージ状態)を維持していた。
<発光ダイオード装置の製造>
実施例1と同様にして、発光ダイオード装置を製造した(図6参照)。
【0209】
評価
各実施例において、少ない作業工程で、簡易かつ精度よく、発光ダイオード装置を製造することができた。
【0210】
また、実施例1では、発光ダイオード封止層とレンズ成形層との界面が、レンズ形状にそって湾曲変形したが(図3(e)参照)、実施例2および3では、発光ダイオード封止層とレンズ成形層との界面において変形が確認されず、より精度よく発光ダイオード装置を製造できることが確認できた(図5および図6参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード封止層、および、前記発光ダイオード封止層に積層されるレンズ成形層を備えていることを特徴とする、発光ダイオード封止材。
【請求項2】
前記発光ダイオード封止層が、蛍光体を含有するシリコーン樹脂からなることを特徴とする、請求項1に記載の発光ダイオード封止材。
【請求項3】
前記レンズ成形層が、シリコーン樹脂からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の発光ダイオード封止材。
【請求項4】
前記発光ダイオード封止層と前記レンズ成形層との間に、さらに、変形防止層を備えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光ダイオード封止材。
【請求項5】
前記発光ダイオード封止層および前記レンズ成形層が、いずれも、硬化触媒により硬化するシリコーン樹脂からなり、
前記発光ダイオード封止層が、前記レンズ成形層よりも、硬化触媒を多く含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光ダイオード封止材。
【請求項6】
発光ダイオードが実装された基板を用意する工程と、
レンズ成形型を用意する工程と、
前記基板および前記レンズ成形型の間において、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光ダイオード封止材を、前記レンズ成形層が前記レンズ成形型と対向するように配置し、圧縮成形する工程と
を備えることを特徴とする、発光ダイオード装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate