説明

発光デバイス及びそれを用いた照明装置

【課題】発光ダイオードからの白色光を別な波長に変換させて、任意の色調の光を効率良く出射させることができ簡易な構造で歩留まりの良い発光デバイスを提供する。
【解決手段】発光デバイス1は、発光ダイオード6から出射される白色光の進行方向で覆うシリコーン樹脂製のカラーキャップ2又はカラーフィルターが、前記白色光を別な波長の光に変換して出射させる蛍光剤、顔料、染料、及び/又はりん光剤を含んでおり、前記白色光が前記カラーキャップ又はカラーフィルターにより色調調整されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードから出射される白色光を別な波長に変換させて、任意の色調の光を出射させる発光デバイス、及びそれを電飾に用いる照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、p−n接合ダイオードへ、順方向に電圧を印加し正孔と電子とを注入しその再結合で生じるエネルギーを光として放出する半導体発光素子である。
【0003】
このような発光ダイオードは、白熱電球、ハロゲンランプ、水銀灯、蛍光灯などの白色系単色照明装置よりも、消費電力が少ない。リビングや浴室でリラックスできる色調に照明したり、演出効果の高い照明をしたりするのに、その光が赤色、緑色又は青色である発光ダイオードが、汎用されている。また発光ダイオードによる赤色、緑色及び青色の光が三色混合されると、白色や中間色のような別な色調となる。
【0004】
光を混合する装置として、例えば特許文献1には、赤色光を出射する赤色発光ダイオード、緑色光を出射する緑色発光ダイオード及び青色光を出射する青色発光ダイオードを含む複数個の点光源と、その光源上部に配置され、その赤色光、緑色光及び青色光が入射される光学シートと、この光学シートによって反射された光の印加を受け、反射部が形成された反射板とを含むバックライトアセンブリが開示されている。
【0005】
また、発光ダイオードが発する赤色光、緑色光又は青色光により励起されて蛍光する蛍光物質を、発光ダイオードの内部の封止材に混入したり、発光ダイオードから離した位置に設置されるカラーフィルターに混入したりして、別な色調の光を出射させる照明装置も知られている。
【0006】
しかし、照明装置を有する製品の多様化や、需要者の様々な嗜好に合わせ、所望の幾多の色調の光にするのに、発光ダイオードの赤色、緑色及び青色の光を異なる光度比で三色混合しても、コーポレートカラーのような微妙な色合いや多様な色合いに調整するのは、困難である。また、蛍光物質の種類や含有量の異なる封止材で封止されたりカラーフィルターを配置したりした多種類の発光ダイオードを色毎に個別に作製するのは、効率が悪い。しかも発光ダイオードと蛍光物質が含有されたカラーフィルターとの間の空気層の所為で、透過する光の損失を招いてしまう。
【0007】
【特許文献1】特開2007−200881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、発光ダイオードからの白色光を別な波長に変換させて、任意の色調の光を効率良く出射させることができ簡易な構造で歩留まりの良い発光デバイス、及びそれを電飾に用いる照明装置を提供することを目的とする。特に、コーポレートカラーのような微妙な色合いや多様な色合いに調整することのできる発光デバイス及び発光装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の発光デバイスは、発光ダイオードから出射される白色光の進行方向で覆うシリコーン製のカラーキャップ又はカラーフィルターが、前記白色光を別な波長の光に変換して出射させる蛍光剤、顔料、染料、及び/又はりん光剤を含んでおり、前記白色光が前記カラーキャップ又はカラーフィルターにより色調調整されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発光デバイスは、請求項1に記載されたもので、前記カラーキャップ又はカラーフィルターに、前記光を透過させるレンズが付されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の照明装置は、請求項1に記載の発光デバイスが複数並べられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の照明装置は、請求項3に記載されたもので、基板上に前記発光デバイスが複数並べられている電飾装置、看板、広告塔、又はエンブレムであることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の照明装置は、請求項3に記載されたもので、前記発光デバイスによりコーポレートカラーの前記別な波長の光を出射していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発光デバイスは、発光ダイオードからの白色光をカラーキャップやカラーフィルターで別な波長に変換させた任意の色調の光が、効率良く調整して出射するというものである。
【0015】
発光ダイオードは、青色発光ダイオードからの青色光を蛍光剤で波長変換し混色して白色光を出射させるものや、白色光を直接出射するものを用いることができるので、汎用性がある。
【0016】
通常の発光デバイスは、青色発光ダイオードの光の波長をカラーコンバーターで変換したり、特定の波長をカラーフィルターでカットするものであるが、本発明の発光デバイスは、白色光を出射する発光ダイオードにカラーキャップやカラーフィルターを被せることにより、波長をカットしたり別な波長に変換したりして、色あわせを行い、所望の色に調整されたカラー光源とすることができる。
【0017】
カラーキャップやカラーフィルターに含有させる蛍光剤や顔料や染料の種類や量を適宜選択することにより微妙な色合いの所望の光を出射させることができる。カラーキャップやカラーフィルターが、シリコーン製であるから、光透過性がよく、電力に対する発光効率が良く輝度が高い最近の発光ダイオードで照射されても、黄変したり劣化したりせず耐久性に優れる。
【0018】
発光デバイスが、反射材を有していると発光ダイオードから発する白色光を有効に活用できる。カラーキャップやカラーフィルターに、レンズが付されていると、光の集光、拡散、屈折、反射等により光路を変更できる。
【0019】
この発光デバイスは、簡易な構造であり、堅固で頑丈である。この発光デバイスは、白色光は出射する同一の発光ダイオードを用いカラーキャップやカラーフィルターを変えるだけで、高品質のものを均質に大量生産できるから、歩留まりが良い。
【0020】
この発光デバイスを有する照明装置は、電飾に用いることができ、イルミネーションや宣伝広告の際に用いることができ、微妙な色合いの光を出射して、綺麗に見える。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明の発光デバイス1の実施の態様について、図1を参照しながら説明する。
【0023】
発光デバイス1は、白色光を出射する発光ダイオード6と、同図中に矢印で示しているその白色光の進行方向に配置されているシリコーン樹脂製のカラーキャップ2とを、有している。
【0024】
カラーキャップ2は、発光ダイオード6から発した白色光(a)・(b)を別な波長の光に変換して出射させる蛍光剤、顔料、染料、又はりん光剤を含有して、着色されている。
【0025】
発光ダイオード6は、ホルダー8の窪みの底に配置されている。それの配線7がホルダー8から導出されている。その窪みの表面には金属被膜の反射材5が付されている。その窪みに透明な封止材4が、充填されており、発光ダイオード6とホルダー8とを一体化させている。その封止材4の出射側で、封止材4ごと、ホルダー8がカラーキャップ2で覆って被されている。カラーキャップ2は必要に応じて接着剤でそこに接着される。それによって、発光ダイオード6が、封止材4を介して、カラーキャップ2で覆われている。
【0026】
発光デバイス1は、以下のように動作する。発光ダイオード6を、配線7で通電して発光させると、その光は、同図の実線矢印で代表して示すように、封止材4へ入射する。例えば、発光ダイオード6から発した光は、(a)で示すように、封止材4を透過してカラーキャップ2に当りそこで異なる波長に変換され任意の色調の光となって、カラーキャップ2から出射する。また(b)で示すように、発光ダイオード6から、封止材4を透過し封反射材5へ向かって発した白色光は、反射材5で反射して進行方向を変えカラーキャップ2に当りそこで異なる波長に変換され任意の色調の光となって、僅かに屈折しながらカラーキャップ2から出射する。
【0027】
発光デバイス1の別な実施の態様について、図2を参照しながら説明する。発光デバイス1は、図1のカラーキャップ2に代えて、発光ダイオード6から発した白色光を別な波長の光に変換して出射させる蛍光剤、顔料、染料を含有して着色されており封止材4に載置されたカラーフィルター3を用いたものであってもよい。発光デバイス1は、カラーキャップ2やカラーフィルター3に、レンズ9が載置され接着剤で接着されていてもよい。この発光デバイス1は、以下のように動作する。発光ダイオード6を、配線7で通電して発光させると、例えば、発光ダイオード6から発した白色光は、(a)で示すように、封止材4を透過してカラーフィルター3に当りそこで異なる波長に変換され任意の色調の光となって、カラーフィルター3から出射する。また(b)で示すように、発光ダイオード6から、封止材4を透過し封反射材5へ向かって発した光は、反射材5で反射して進行方向を変えカラーフィルター3に当りそこで異なる波長に変換され任意の色調の光となって、屈折しながら集束されてカラーキャップ2から出射する。
【0028】
本発明の照明装置10の実施の態様について、図3を参照しながら説明する。
【0029】
照明装置10は、複数の発光デバイス1が、配線7で互いに接続されつつ、基板上に整然と並べられている。複数の発光デバイス1が並べられて、電飾装置、看板、広告塔、エンブレム等の文字や図形や模様を形作っている。各発光デバイス1毎に、カラーキャップ2やカラーフィルター3の蛍光剤や顔料や染料の種類や量を変えてもよい。照明装置10を通電すると、白色以外の微妙な色合いの色調で電飾される。
【0030】
なお、白色光を出射する発光ダイオードは、GaN系青色発色ダイオードのチップ表面にイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)蛍光剤が分散した樹脂を塗布し、チップから放出された青色光の一部をYAG蛍光剤に吸収させて黄色に変換し、直接外に向かった青色光と混合させて、混色したものであってもよい。ZnSe系材料を用いた白色発色ダイオードであってもよい。これらの発光ダイオードは、市販のものであってもよい。
【0031】
蛍光剤や顔料や染料は、発光ダイオードが発した白色光の波長を変換して別な色調の光にして出射させるものであれば、その種類や量は特に限定されない。
【0032】
無機の赤色発光蛍光剤として、
下記組成式(1)
Li(1−y)EuSm ・・・(1)
(式(1)中、MはNa,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種類、MはYを含みEu及びSmを除く希土類元素から選ばれる少なくとも1種類、MはMo及びWから選ばれる少なくとも1種類、aは0.4≦a≦1の数、bは0.8≦b≦1の数、cは0≦c≦0.2の数、dは0≦d≦0.2の数、b+c+d=1である。)、
下記組成式(2)
Li(1−e)EuW ・・・(2)
(式(2)中、MはNa,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種類、eは0.7≦e<1の数である。)例えばLiEuW
下記組成式(3)
Eu(1−f) ・・・(3)
(式(3)中、MはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種類、MはYを含む希土類元素(Euを除く)から選ばれる少なくとも1種類、MはW及びMoから選ばれる少なくとも1種類、fは0<f≦1の数である。)
下記組成式(4)
0.5Eu(1−g)10 ・・・(4)
(式(4)中、MはMg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種類、MはYを含む希土類元素(Euを除く)から選ばれる少なくとも1種類、M10はW及びMoから選ばれる少なくとも1種類、gは0<g≦1の数である。)例えばCa0.5EuW28
22S:Eu、
La22S:Eu、
3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mnが挙げられる。
【0033】
無機の青色発光蛍光剤として、
BaMg2Al1627:Eu、
(Sr,Ca,Ba)5(PO43Cl:Eu
が挙げられる。
【0034】
無機の緑色発光蛍光剤として、
BaMg2Al1627:Eu,Mn、
Zn2GeO4:Mn、
ZnS:Cu,Al、
下記組成式(5)
LiTb11(1−h) ・・・(5)
(式(5)中、M11はYを含む希土類元素(Tbを除く)から選ばれる少なくとも1種類、好ましくはY又はDy、hは0.8≦h≦1の数である。)が挙げられる。
【0035】
無機の黄色発光蛍光剤として、
CdZnS、
ZnSSeにドナーとアクセプター不純物を添加したII-VI族混晶蛍光剤、
下記組成式(6)
3−iGal512:Ce ・・・(6)
(式(6)中、iは0≦i≦3の数である)のようなYAG:Ceで例示されるYAG系蛍光剤が挙げられる。
【0036】
顔料や染料としてはフタロシアニン系、アゾ系、イソインドリノン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジケトピロロピロール系の顔料や染料、レーキ顔料などの有機顔料、コバルトブルー、群青、酸化鉄などの無機顔料、プラスチックの粉末を蛍光性のある染料で着色した蛍光顔料のような擬似顔料が挙げられる。より具体的には、黄色顔料として、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマンネントイエローNCG、タートラジンレーキ;橙色顔料として、赤口黄鉛、モリブテンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK;赤色顔料として、縮合アゾ顔料、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B;紫色顔料として、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ;青色顔料として、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC;緑色顔料として、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG;白色顔料として、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトが挙げられる。
【0037】
有機蛍光染料としてはペリレン系、ナフタルイミド系、クマリン系、シアニン系、フラビン系、ローダミン系が挙げられる。有機蛍光染料に、チオベンジルニッケル錯体で例示されるチオベンジル遷移金属錯体、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、マロン酸付加フラーレン、マロン酸ジターシャリーブチル付加フラーレンで例示されるフラーレン化合物を共存させてもよい。
【0038】
りん光を発光するりん光剤として、例えば、イリジウム錯体、プラチナ錯体で例示される公知の金属錯体、五重項のような多重項から発光するテルビウム錯体で例示される希土類金属錯体が挙げられる。
【0039】
顔料、染料、蛍光剤、りん光剤を、適宜用いることにより広い範囲の発光色を得ることができる。これらを単独で用いてもよく、複数組合わせて用いてもよい。その使用量が多すぎても少なすぎても十分な発光強度が得られないため、適当量分散させることが好ましいが、特に、半導体発光素子チップから透光性蛍光部材を通過して発光素子ユニットの外部に漏洩する紫外光又は近紫外光の量が少なくなるように使用量を設定することが好ましい。より具体的には、カラーキャップ又はカラーフィルター中に、0.000001〜5重量%用いることが好ましい。蛍光剤、顔料、染料、りん光剤を適宜組合わせて混合することにより、微妙な色彩、例えば発光ダイオードから出射した白色光が、カラーキャップやカラーフィルターを通過して出射し、可視範囲の様々な色調に調整することができる。発光ダイオードを光源とする場合、顔料を用いてカラーキャップ又はカラーフィルターの色彩として、色あわせを行い、所望のカラー光源とする。必要に応じて蛍光体を用いてもよい。顔料、染料は微細なほど良く、例えば粒径0.8μm程度が好ましい。蛍光剤、りん光剤は、ある程度の大きさが必要で、例えば粒径10μm程度が好ましい。
【0040】
カラーキャップ2又はカラーフィルター3の厚さは、0.1〜1mmが好ましく、0.3〜0.35mmであると一層好ましい。
【0041】
カラーキャップ2又はカラーフィルター3は、例えば、蛍光剤、顔料、染料、りん光剤を含むシリコーン原料組成物を硬化させることにより得ることができる。シリコーン原料組成物としては、特に、液状の付加反応硬化型のシリコーン原料組成物が好ましい。液状の付加反応硬化型のシリコーン原料組成物は、無溶媒であるため発泡することなく表面も内部も均一に硬化させることができるので好適である。
【0042】
上記付加反応硬化型のシリコーン原料組成物としては、熱硬化により透明なシリコーンを形成するものであれば特に制限されないが、例えば、オルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金系触媒等の重金属系触媒を含むものが挙げられる。
【0043】
上記オルガノポリシロキサンとしては、下記平均単位式
SiO(4−a)/2
(式中、Rは非置換又は置換一価炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜10、特に1〜8のものである。aは0.8〜2、特に1〜1.8の正数である。)
で示されるものが挙げられる。ここで、Rとしてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、これらの炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたクロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基、或いはシアノ基で置換された2−シアノエチル基等のシアノ基置換炭化水素基などが挙げられ、Rは同一であっても異なっていてもよいが、Rとしてフェニル基を含むもの、特に、全Rのうち5〜80モル%がフェニル基であるものが、カラーキャップ2又はカラーフィルター3の耐熱性及び透明性の点から好ましい。
【0044】
また、Rとしてビニル基等のアルケニル基を含むもの、特に全Rのうちの1〜20モル%がアルケニル基であるものが好ましく、中でもアルケニル基を1分子中に2個以上有するものが好ましく用いられる。このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、末端にビニル基等のアルケニル基を有するジメチルポリシロキサンやジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の末端アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンが挙げられ、特に、常温で液状のものが好ましく用いられる。
【0045】
一方、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、3官能以上(即ち、1分子中にケイ素原子に結合する水素原子(Si−H基)を3個以上有するもの)が好ましく、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられ、特に、常温で液状のものが好ましい。また、触媒としては、白金、白金化合物、ジブチル錫ジアセテートやジブチル錫ジラウリレート等の有機金属化合物、又はオクテン酸錫のような金属脂肪酸塩などが挙げられる。これらオルガノハイドロジェンポリシロキサンや触媒の種類や量は、架橋度や硬化速度を考慮して適宜決定すればよい。
【0046】
カラーキャップ2又はカラーフィルター3に用いられるシリコーンは、その他の公知のもの、例えば特開2004-221308号公報、特開2006-328102号公報、特開2006-328103号公報、特開2006-324596号公報に記載されたものであってもよい。
【0047】
また、シリコーン原料組成物は、上記成分以外に、得られるシリコーン樹脂の強度や透明度を損なわない程度に充填剤、耐熱材、可塑剤等を添加してもよい。
【0048】
シリコーン原料組成物としては、信越化学工業株式会社製のKJR632等の市販品を用いることができる。
【0049】
また、このシリコーンは、前記のシリコーン樹脂と同種で比較的低分子のオルガノポリシロキサンが架橋したシリコーンゴムであってもよい。蛍光剤、顔料、染料、及び/又はりん光剤の分散性、加工のし易さ、及び色のバラツキなどからシリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴム製のカラーキャップ2又はカラーフィルター3を、1−ブロモプロパンやトリクロロエチレンのような有機溶媒で洗浄し、減圧し、又は例えば150〜200℃、好ましくは150〜170℃に加熱し、シリコーンゴム中の低分子シロキサンを揮発させる前処理が施されていることが好ましい。二次加硫処理や、溶媒抽出処理が施されていてもよい。
【0050】
カラーキャップ2又はカラーフィルター3は、上記シリコーン原料組成物を成形してシリコーン成形体とする従来公知の方法により得ることができ、例えば、射出成形、押出成形、注型成形等により成形することができる。なお、カラーキャップ2又はカラーフィルター3の硬度は、シリコーン樹脂の場合は、JIS K 7215(プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法)の方法により測定されるショアD硬度15°〜90°、特に50°〜80°、シリコーンゴムの場合は、JIS K 6253(ゴム硬度計のデュロメーターAの硬さ試験方法)の方法により測定される硬度で、50°〜80°、特に70°〜80°であることが好ましい。
【0051】
カラーキャップ2又はカラーフィルター3の透過率は、90%以上であることが好ましく、92%以上であると一層好ましい。ポリジメチルシロキサンで成形したカラーキャップ2又はカラーフィルター3の透過率は約94%、ポリジフェニルシロキサンで成形したカラーキャップ2又はカラーフィルター3の透過率は約92%であり、長期に使用してもその透過率は維持される。カラーキャップ2又はカラーフィルター3は、ポリジメチルシロキサンのような硬いシリコーン樹脂で成形されていると、膨張し難いうえ、紫外線などの短波長側で劣化し難く、光学特性を維持するのに適切であるため、一層好ましい。
【0052】
特に、カラーキャップ2又はカラーフィルター3がシリコーンゴム製であると、水分や低分子シロキサンのような揮発成分が残存し易いので、それらを揮発させることが好ましい。
【0053】
カラーキャップ2又はカラーフィルター3の表面に、ポリパラキシリレン類である「パリレンC」(日本パリレン株式会社製の商品名;「パリレン」は登録商標;-[(CH)-CCl-(CH)]- )の被膜を設けてもよい。「パリレンC」の原料ダイマーである粉末状のモノクロロパラキシリレン類2量体を気化室に入れ減圧下で加熱して、蒸発したダイマーが熱分解室に誘導され反応性の高いパラキシリレンモノマーのラジカルとした後、光学部品1の天面部に蒸着させて0.5〜5ミクロン、好ましくは1〜2ミクロンのポリパラキシリレン類コーティング処理をして、被膜する。
【0054】
カラーキャップ2又はカラーフィルター3の表面を被覆するのに「パリレンC」に代えて、パラキシリレンダイマー(DPX)から得られる「パリレンN」(日本パリレン株式会社製の商品名)、テトラクロロパラキシリレンダイマーから得られる「パリレンD」(日本パリレン株式会社製の商品名)を用いてもよい。この原料であるダイマーを低圧下で約600℃に加熱して昇華させて、反応性の高いパラキシリレンラジカルガスを生成させ、蒸着させてポリパラキシリレン類の被膜を形成してもよい。中でも、「パリレンC」で、ポリパラキシリレン類の被膜が蒸着されていると一層好ましい。これらポリパラキシリレン類の屈折率nd23は、例えば「パリレンN」が1.661、「パリレンC」が1.639であり、シリコーン樹脂の屈折率1.43より、高い。そのため、可視光例えば波長λの光を透過させるカラーキャップ2又はカラーフィルター3と、これらパリレンのような被膜の膜厚及びλの整数倍となる光学距離とを適宜選択することにより、表面反射防止等の光学特性を一層向上させることができる。
【0055】
ポリパラキシリレン類の被膜は、原料のダイマーの量や蒸着時間を調節することにより、均一に所望の厚さに調製できる。
【0056】
このようなポリパラキシリレン類の蒸着によれば、基材となるカラーキャップ2又はカラーフィルター3を加熱する必要がないので、カラーキャップ2又はカラーフィルター3を熱変形させてしまう恐れがない。また、ジパラキシリレンラジカルのカラーキャップ2又はカラーフィルター3への付着と重合とが同時に進行して蒸着されているため、製造工程が短く簡易である。
【0057】
ポリパラキシリレン類は、蒸着によりレンズに付された例を示したが、ディッピング、スプレーコーティング、スピンコーティング、スパッタリング、塗布により付されていてもよい。
【0058】
被膜は、カラーキャップ2又はカラーフィルター3のシリコーンとの屈折率の異なるシリコーン樹脂、好ましくは、その屈折率の差が少なくとも0.05であるシリコーン樹脂、好ましくはその屈折率差が0.1〜0.5であるシリコーン樹脂、一層好ましくはカラーキャップ2又はカラーフィルター3のシリコーンよりも低屈折率の透明なシリコーン樹脂で、形成されていてもよい。また、被膜は、異なるシリコーン樹脂を複数用いることにより、カラーキャップ2又はカラーフィルター3よりも少しずつ低屈折率にしてもよい。
【0059】
カラーキャップ2又はカラーフィルター3を接着する接着剤は、光を透過する透明な接着剤であれば特に限定されないが、例えばシリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤が挙げられる。
【0060】
カラーキャップ2又はカラーフィルター3には、さらに発光デバイス1の前記効果を妨げない範囲で、添加剤、例えば、紫外線吸収剤やフェノール系酸化防止剤のような酸化防止剤、光を拡散させるための炭酸カルシウムのような拡散剤、分散剤、アミン系シランカップリング剤のようなシランカップリング剤、アミニウム化合物や酸化カルシウムや酸化バリウムのような乾燥剤、ヒンダードアミンのような光安定剤、ヒンダードフェノールのような熱ラジカル捕捉剤や熱安定剤が、添加されていてもよい。
【0061】
発光ダイオードに用いられる封止材4は、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ガラス、シクロオレフィン共重合体(COC)樹脂またはシリコーン樹脂であると、耐熱性がありレンズ特性に優れるので、好ましい。
【0062】
本発明の照明装置によれば、白色光を出射する発光ダイオードとカラーフィルターとを用いて、所望のカラー光源を得ることができる。その具体的な適用例としては、コーポレートカラーを発光する電飾看板やシンボルマークなどの広告塔の照明を挙げることができる。また、発光ダイオードをカラーフィルターで補正できるから、色むら、輝度むらを低減することが可能であり、発光ダイオードやそれを用いた発光デバイスの歩留まりを上げることができる。
【0063】
特にコーポレートカラーなど企業イメージを象徴する色調については、その色調の再現と、色バラツキの低減が要求されることから、白色光を出射する発光ダイオードを、色度と光度とで分類してランク分けし、顔料と蛍光体を含んだカラーフィルターを用いて、コーポレートカラーを再現し尚且つ、色度むら、輝度ムラを低減したコーポレートカラーとすることができる。
【0064】
照明装置1の一例である電飾看板の構造を、図4に示す。照明装置1は、ステンレス板製又は亜鉛鉄板製で形成された箱型で内面反射性のチャンネル文字(箱文字)の箱体12の内側のくぼみに色調と明るさを合わせて配線した発光ダイオード6を有する発光デバイス1を、取り付けたものである。この照明装置1は、夜間の照明においてネオン管のようにチャンネル文字を映し出したり、同図のようにチャンネル文字のくぼみを壁11側に向け壁11に反射光として文字を浮き上がらせたりすることにより、電飾看板をコーポレートカラーやイメージカラーで照明することができるものである。
【0065】
また、光の拡散度合いは、チャンネル文字と壁11との隙間で調整することもできる。カラーフィルターに拡散剤を分散させたり、集光レンズ、拡散レンズと組み合わせることにより、デザイン性のある照明にしてもよい。
【0066】
使用する発光ダイオードは、パワーLEDなどの0.5W以上のLEDが、明るいため望ましい。
【実施例】
【0067】
本発明を適用する白色光を出射する発光ダイオード(白色光出射LED)を光源とする場合の発光デバイス及びそれを有する照明装置を作製した例を実施例に、本発明を適用外の青色発光ダイオード(青色LED)及びそれを有する照明装置を作製した例を比較例にしめす。
【0068】
(実施例)
先ずカラーキャップを調製した。シリコーンゴムKE951U(信越化学工業株式会社製;商品名)に、過酸化物架橋剤を0.5部添加した材料に、フタロシアニングリーン顔料を添加し、熱プレスと金型を用いて、180℃で10分間の成型条件で、発色ダイオードの形状に合わせたグリーン色のシリコーンゴム製カラーキャップを得た。同様にブルーのキャップの場合は、フタロシアニングリーン顔料の代わりに、フタロシアニンブルー顔料を適宜添加して作製した。その濃度は、必要とする色調に合わせ、0.000001w%から5w%で行い、ブルー、ブルーグリーン、グリーンの適切な色調に調節した様々な色調のカラーキャップを得た。
【0069】
使用する顔料は、耐熱性が200℃以上の顔料であれば、他にもアゾ系、キナクリドン系、無機顔料、蛍光体など適宜使用でき、必要に応じこれらの顔料を混合して、イエロー、オレンジ、レッドブルーのような様々な色調のカラーキャップを得た。
【0070】
白色光を出射する発光ダイオードとしてNSPW310(日亜化学工業株式会社製;商品名)に、上記の顔料を用いてカラーフィルターとして、色あわせを行い、所望色調の8種類の発光デバイスを得た。それを用いて照明装置とした。
【0071】
それらについて、色度を測定した。測定には、色度測定計OL770(Optronic Laboratories社製;商品名)を用い、その電源にはR6244(ADVANTEST社製;商品名)を用い、電流値IFを20mAに設定した。その結果を纏めて表1及び図4に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
図4は、その照明装置の各サンプルのx値とy値とをプロットし実線で繫ぎ、調色可能な範囲を表わしたCIE色度座標の図である。なお、同図中の破線は、目視可能範囲である。
【0074】
(比較例1)
青色発光ダイオードの青色光を励起光源とし、1種類以上の蛍光剤により変換された黄色光を用い、青色光と黄色光をブレンドして、色あわせを行ったものである。必要に応じ顔料を加えると、余計な光がカットされ、調色可能エリアを広げることができる。添加する蛍光剤量は、それの比重が重いため1〜50重量%添加する。それにより、5種類の色調の発光デバイスを得た。それを用いて照明装置とした。それらについて、実施例と同様にして色度を測定した。その結果を纏めて表2及び図5に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
図5は、その照明装置の各サンプルのx値とy値とをCIE色度座標にプロットし実線でつなぎ、調色可能な範囲を表わした図である。なお、同図中の破線は、目視可能範囲である。
【0077】
図4及び図5から明らかな通り、本発明の発光デバイス及び照明装置は、簡便な構成で青色発光ダイオードを混色する場合と略同等の色調に調節することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の発光デバイスは、電飾用の照明装置に用いられる。この照明装置は、会社の営業を示す商標やそのコーポレートカラー、校章のスクールカラー、自動車等の製品に付す商標や記章のように、微妙な色合いを持つものを表示する電飾装置や看板や広告塔、エンブレムに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明を適用する発光デバイスの一例を示す断面図である。
【図2】本発明を適用する発光デバイスの別な一例を示す断面図である。
【図3】本発明を適用する照明装置の一例を示す平面図である。
【図4】本発明を適用する照明装置の一例を示す概要図である。
【図5】本発明を適用する白色を出射する発光ダイオードを用いた発光デバイスによる調色可能範囲を示す図である。
【図6】本発明を適用外の青色発光ダイオードの発光デバイスによる調色可能範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1は発光デバイス、2はカラーキャップ、3はカラーフィルター、4は封止材、5は反射材、6は発光ダイオード、7は配線、8はホルダー、9はレンズ、10は照明装置、11は壁、12は箱体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードから出射される白色光の進行方向で覆うシリコーン製のカラーキャップ又はカラーフィルターが、前記白色光を別な波長の光に変換して出射させる蛍光剤、顔料、染料、及び/又はりん光剤を含んでおり、前記白色光が前記カラーキャップ又はカラーフィルターにより色調調整されてなることを特徴とする発光デバイス。
【請求項2】
前記カラーキャップ又はカラーフィルターに、前記光を透過させるレンズが付されていることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の発光デバイスが複数並べられていることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
基板上に前記発光デバイスが複数並べられている電飾装置、看板、広告塔、又はエンブレムであることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記発光デバイスによりコーポレートカラーの前記別な波長の光を出射していることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−86468(P2009−86468A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258180(P2007−258180)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】