説明

発光パネル装置に用いるパネル版及びその生産方法

【課題】発光パネル装置に用いる、装飾等のパターンを有するパネル版を、少量生産であってもまた大量生産であっても、低コストで生産する。
【解決手段】透明なプラスチックシートより成るパネル本体の裏面に、任意の図柄、模様などから成る発光パターンを有し、パネル本体の外部より導入した光線を照射して上記発光パターンを発光させる発光パネル装置に用いるパネル版について、照射される光線を受光するために、全体として凹状構造から成る発光パターン19をパネル本体12の裏面に有しており、上記発光パターン19は微細な凹凸構造の集まりから成るものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明なプラスチックシートより成るパネル本体の裏面に、任意の図柄、模様などから成る発光パターンを有し、パネル本体の外部より導入した光線を照射して上記発光パターンを発光させる発光パネル装置に用いるパネル版及びその生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光パネル装置に用いる透明なパネル版を製造する場合、従来は、樹脂成形品の表面に例えばいわゆるレーザー彫刻等の方法により、模様、文字等の装飾要素を、凹凸構造を形成することによって行なっていた。この方法では使用材料に制約があり、加飾部分が白濁する傾向があり、加飾表現上の制約もあり、時間が掛かるため大量生産向きではなく、コストが高いという問題があった。また、表面に彫刻を施した金型を用いて、樹脂成形品を成形し、上記のような装飾要素を形成することも以前から行なわれているが、このような方法では、やはり加飾表現上の制約があり、少量生産に不向きである上にコストも高くつくという問題があった。
【0003】
これに対して、例えば特開平6−72013号や特開平6−106840号では、凹凸模様付きフィルムを使用した立体模様形成成形品に関する発明を開示しており、これらの発明は、フィルムの表面に透明な紫外線硬化樹脂による転写用の凸模様と、その凸模様に施した転写用の印刷インク層を形成し、その凸模様の印刷インクを施した層をキャビティに向けて金型に配置し、インモールド成形を行い、成形品から凸模様を有するフィルムを剥離することによりプラスチック成形品の表面に、紫外線硬化樹脂による印刷インク層を転写する。
【0004】
しかし上記の各発明では、例えば透明な紫外線硬化樹脂による転写用の凸模様とその凸模様に施した転写用の印刷インク層がプラスチック成形品に転写されて残存するので、模様、文字等の装飾要素を、明瞭な凹凸構造として樹脂成形品の表面に形成することはできない。それは、これらの発明が、コンパクトなど化粧用品の容器に装飾性の高い模様を形成することを目的としているためである。従って、明瞭な凹凸構造を、樹脂成形品の表面に形成するためには、上記の発明の目的に反して、転写用の凹凸構造だけが表面に露出するように設けなければならないが、そのために必要となる事項は、上記の発明とは関係がないので、記載されていない。
【0005】
そこで本発明者は、印刷基材の表面に印刷によってインクの凹凸から成る印刷パターンを形成し、上記印刷パターンを有する印刷基材を金型に配置し、透明プラスチックによる型成型を経て表示板を形成し、上記表示板から印刷基材を印刷パターンとともに剥離し、インクの凹凸の転写された凸凹から成る光反射要素を有する表示板本体を使用する装飾パネルを開発し、その技術的成果については出願済みである(特願2006−235418号)。その表示板本体はPMバンと通称され、特に印刷によって装飾要素となる印刷基材を作成でき、加飾表現上の制約がほとんど無いか或いは少なく、自由な表現が可能で、訴求力の強い表示板本体を形成することができる。しかしながら、表示板本体のサイズが異なるごとに金型を起こすというのは、経済的な負担が大きく、特に少量生産に不向きであるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−72013号
【特許文献2】特開平6−106840号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に着目して成されたもので、その課題は、発光パネル装置に用いる装飾等の発光パターンを有するパネル版を、少量生産であってもまた大量生産であっても、低コストで提供できるようにすることである。また、本発明の他の課題は、明瞭で、訴求力の高い発光パターンを有するパネル版及びその生産方法を提供することである。また、本発明の他の課題は、発光パターンを形成するために時間が掛からず、コストも高低自由に設定可能な発光パネル装置に用いるパネル版及びその生産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、本発明は、透明なプラスチックシートより成るパネル本体の裏面に、任意の図柄、模様などから成る発光パターンを有し、パネル本体の外部より導入した光線を照射して上記発光パターンを発光させる発光パネル装置に用いるパネル版として、照射される光線を受光するために、全体として凹状構造から成る発光パターンをパネル本体の裏面に有しており、上記発光パターンは微細な凹凸構造の集まりから成るものとするという手段を講じたものである(請求項1記載の発明)。パネル本体が有している凹状構造はパネル本体の内部に突出し光線を受光するために設けられるが、受光をより確実かつ精細化するために、微細な凹凸構造の集まりによって発光パターンが形成されるものとする。なお、本発明のパネル版は、裏面側の発光パターンを正面側から見るように構成されている。
【0009】
このようなパネル版はそれ単独で使用することができ、またそのように使用することを予定しているが、別部材と組み合わせた構成を取ることもあり得る。例えば、表面が印刷された重ねシートを具備し、重ねシートは、その所要部分を発光パターンの図柄、模様との関係において抜き落して、パネル本体の裏面に重ね合わせた構造とすることにより、発光パターンの周囲に重ねシートの印刷された表面があらわれるように構成することができる(請求項2記載の発明)。これにより発光パターンとその背景の態様を組み合わせられるようになり、表示内容の自由度が増すことになる。
【0010】
パネル本体に形成される発光パターンは、内側界面(パネル本体裏面に形成された凹状構造とパネル本体内部の樹脂の境界の内面)の凹凸構造が透視されるもので、全体として凹状構造から成る発光パターンに対応する凸状のパターンを透明なパネル本体の裏面に圧し付けて凹状構造を形成するために、凸状パターンを表面に有する押し版を、上記パネル本体の裏面側に配置する。そして、照射される光線を受光するため、凹状構造から成る発光パターンに微細な凹凸構造を成型するように、微細な凸凹構造を表面に有する基材を透明なパネル本体の裏面と上記押し版の間に配置する。凹凸構造は受光構造であり、パネル本体内部に凹んだ凹状構造であるが、一様な凹部だけで形成されているのではなく凹凸から成るものであるので凹凸構造或いは凸凹構造と呼ぶものである。
【0011】
この微細な凸凹構造は例えば個々の形状が円形や角型などから成る、いわば印刷における網点のようなものであり、内側界面の凹凸構造を与えるために配置するもので、内部に導入した光線に対して反射効率の良いことが望まれる。微細な凸凹構造を構成する網点の面積を大きく取り、或いは上記網点の設置密度を密にすることによって、照射された光線をより多く反射させ、明るい表示にすることができるし、その逆に網点の面積を小さく取り、或いは上記網点の設置密度を粗にすることにより、反射を相対的に弱くすることができる。本発明の装置では、パネル本体の周囲に光源を配置することになり、中心部に近付くほど光線を受けにくくなるが、微細な凸凹構造として、所要の面積を有する網点を所要の密度で配置し、網点は、光線の照射部において面積及び/又は密度を小とし、光線の照射部から遠ざかるにつれて面積及び/又は密度を大とした構成を取ることができる(請求項3記載の発明)。この構成により、パネル本体の全面において発光パターンにほぼ均一な照度を与えることができる。
【0012】
微細な凸凹構造として、インクにより基材に所要の面積を有する網点を所要の密度で印刷により形成することができる(請求項4記載の発明)。微細な凸凹構造は、それを構成する網点を印刷によって形成する場合、例えば厚く肉盛りされるインクを使用するか、或いは薄く肉盛りされるインクを使用するかによって、成型される凹凸構造の深さを調節することも可能である。
【0013】
本発明では、透明なプラスチックシートより成るパネル本体の裏面に、任意の図柄、模様などから成る発光パターンを形成し、上記発光パターンにパネル本体の外部より導入した光線を照射して発光させる発光パネル装置に用いるパネル版の生産方法として、
全体として凹状構造から成る発光パターンに対応する凸状のパターンを透明なパネル本体の裏面に圧し付けて凹状構造を形成するために、凸状パターンを表面に有する押し版を、上記パネル本体の裏面側に配置し、照射される光線を受光するため、凹状構造から成る発光パターンに微細な凹凸構造を成型するように、微細な凸凹構造を表面に有する基材を透明なパネル本体の裏面と上記押し版の間に配置し、
上記押し版を基材とともに透明なパネル本体に加熱条件のもとに圧し付け、表面に微細な凸凹構造を有するパターンを透明なパネル本体の表面に転写するように構成するものとする(請求項3記載の発明)。
【0014】
本発明の発光パネル装置に用いるパネル版の生産方法は、透明なプラスチックシートより成るパネル本体の裏面に、任意の図柄、模様などから成る発光パターンを形成する方法であるといって良い。上記発光パターンはパネル本体の裏面に形成されているが、上記裏面の内側界面に対して、パネル本体の外部より内部に導入した光線を照射し、反射により発光している状態をパネル版正面から透視する構成を取る。
【0015】
前述の微細な凸凹構造に対して、任意の図柄、模様などから成る凸状のパターンを透明なパネル本体の表面に圧し付けるために、上記凸状のパターンを表面に有する押し版を、上記基材を挟む位置に配置する。この凸状のパターンは、上記の図柄や模様などに対応する平面形状を有しており、この平面形状が即ち発光パネル装置の表示の内容となる。例えば、仮に表示が「A」というアルファベット文字である場合、その外形ないしは輪郭に当たる形状を与えるのが凸状のパターンである(図2参照)。凸状パターンはいくつかの方法により形成することができ、例えばエッチング法や彫刻法を適用できるが、前者は深さの設定が難しく、また小さい形状ではエッジのシャープさが不足する傾向となるのに対して、後者ではそれらの難点が克服されるので目的に応じた方法を適用する。なお、曲面に対してはレーザー彫刻が有効である。
【0016】
そして、上記押し版を基材とともに透明なパネル本体に加熱条件のもとに圧し付け、表面に微細な凸凹構造を有するパターンを透明なパネル本体の表面に転写するように構成する。例えば、押し版の「A」という凸状のパターンが、網点の微細な凸凹構造によって形作られ、透明なパネル本体表面に熱転写されて凹状構造が形成されるものである。このように、本発明によれば、透明なプラスチックより成るパネル本体の表面に網点の微細な凸凹構造を熱転写するので、射出成型をしなくても、射出成型の金型にインサートしたインクの凹凸から成る印刷パターンを有する印刷基材と同様に、パネル本体を形成することができる。
【0017】
このように、パネル本体はその透明プラスチック内部を、照明光線を導く導光路とし、かつパネル本体の面に内側界面の凹凸構造を、印刷によって自由に形成することができるものであり、その内側界面の凹凸構造が光反射要素となり、導光路に導かれた照明光線を受けて反射し発光することとなるので、本発明において使用するプラスチックの透明性も重要であり、アクリル樹脂であるとか、コポリエステル樹脂など高い透明度を有する樹脂を使用すると良い結果が得られる。やや輝度は落ちることになるがポリカーボネート樹脂などの透明樹脂も使用可能である。
【0018】
なお、上記パネル本体内に光線を照射して内側界面の凹凸構造を発光させる光線照射部は、パネル本体内部を導光路とする光を反射ロスの少ない状態で導入するために、パネル本体の端部などに配置し、光線をパネル本体内部に照射する部分である。照射する光線としては、自発光光源を直かに配列する構成のほか、離れた自発光光源から光を導く光ファイバーを配列する構成などを採用することも可能である。光線照射部に用いる光源としては、従来の技術の中にも記載されているように様々なものがあるが、総合的に見てLED(発光ダイオード)が最良である。また、赤色、緑色、青色の光を発する3色LEDを1組の光源として少なくとも1組以上有し、上記3色LEDの発光と光度等を制御部にて制御できるものとすると、いわゆるRGBディスプレイが可能になり、あらゆる色調を作り出すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、発光パネル装置に用いる装飾等のパターンを有するパネル版を、少量生産であってもまた大量生産であっても、低コストで提供することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、微細な凸凹構造として、所要の面積を有する網点を所要の密度で配置することにより、発光パターンの全面においてにほぼ均一な照度が得られ、さらに表面が印刷された重ねシートをパネル本体の裏面に重ね合わせる構成を取ることも可能であるから、訴求力の高い発光パターンから成るパネル版を提供することができる。また、本発明によれば、発光パターンを形成するために時間が掛からず、コストも高低自由に設定可能な発光パネル装置に用いるパネル版の生産方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0021】
装置的構成
図1は本発明の発光パネル装置に用いるパネル版の生産方法に使用する装置の一例を示しており、11は下位に固定配置される基台である。基台11の上には透明なプラスチックシートから成るパネル本体12が配置され、パネル本体12の上には印刷インクの微細な凸凹構造13を表面に有する基材14が配置される。基材14は薄いシートないしはフィルムより成り、その表面に、任意の面積と任意の密度を有する微細な凸凹構造13を印刷によって形成したものである。従って微細な凸凹構造13はインキの有無ないしはインク量の多少によって形成された印刷面であり、この印刷面がパネル本体12(の裏面)に向く配置を取る。
【0022】
印刷インクとしては、UV硬化型樹脂インク、2液硬化型樹脂インク、蒸発乾燥型インク、その他の混合型インク等を使用することができる。また、これらのインクにはUVマット剤、マット剤、ウレタンビーズ、ガラスビーズ、金属粉、パール粉などの粉末材料を添加し、特殊な効果を発揮させることも可能である。
【0023】
15は上位に配置される熱盤であり、図示していない昇降機構により基台11に対して接近、離間可能に設けられている。熱盤15の下面には押し版16が取り付けられ、押し版16には任意の図柄、模様などから成る凸状のパターン17が設けられている。本例における押し版16は金属板材より成り、その表面に凸状のパターン17を、エッチングにより形成したもので、図2に示すように、透明なパネル本体12との間にて基材14を挟む位置に配置される。
【0024】
方法的構成
本発明の発光パネル装置に用いるパネル版を生産するには、任意の図柄、模様などから成る凸状のパターン17の面を下向きに配置されている、押し版16を、パネル本体12の表面に微細な凸凹構造13を接して配置されている、基材14に対して、所要の加熱、加圧条件にて圧し付ける(図3a)。
本例では透明なパネル本体12としてアクリル樹脂製の厚板(0.5mm〜30mm)を使用し、基材14にはポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリカーボネート(PC)から成るシート(12〜200μm)を使用した。
この場合において熱盤15を100〜180℃の温度に設定し、押し版16を下降させ、その凸状のパターン17を基材14に所要の加圧力で、所要秒時(0.5秒〜5秒)圧し付け、それにより微細な凸凹構造13を有するパターン17を透明なパネル本体12の表面に転写した。
加圧力と加圧時間は、パターン17の大きさ或いは加飾面積、複雑度、その他の条件によって変わってくる。加圧力は、おおむね数百キログラム〜100トン/平方センチメートルの範囲で実施した。また、加圧時間は経験値による。
次いで、押し版16を基材14から引き離し(図3b)、冷却硬化を見計らった時間の経過後、基材14をパネル本体12から剥離する(図3c)。かくして、透明なパネル本体12の表面に微細な凸凹構造13の転写された、光線を受ける凹凸構造18から成る発光パターン19を表面に持つ、発光パネル装置に用いるパネル版10を生産した。
【0025】
本発明に係るパネル版及びその種類
生産されたパネル版10の表面には、図3dに示されているように、凹状構造から成る発光パターンとして「A」という文字から成る発光パターン19が、微細な凹凸構造18から成る網点の集合体として形成されている。図3dに示されている例では、一定の面積を有する網点を一定の密度で配置している。しかし、光線の照射距離に応じて受光量を調節し発光パターン19の明るさを均一にすることができる。図4ないし図8にその具体例を示しており、パネル本体12の1辺にのみ光線の照射部を有する図4、図5の例では、網点21、21′は光線の照射部20側において面積を小とし、光線の照射部20から遠ざかるにつれて面積を大とした構成になっている。その詳細は図7に示してあるとおり、光線の照射部近くの網点21は小面積で受光量が小さく、光線の照射部20から遠い網点21′は大面積で受光量が大きくなるように設定されている。
【0026】
図6は、透明なパネル本体12の対向する2辺に光線の照射部20、20を配置した例であり、網点21、21′は、夫々の光線の照射部20側にて面積を小とし、光線の照射部から遠ざかるにつれて面積を大とした構成を有するので、2辺の光線照射部20、20から最も遠い中間部分に最も大面積の網点21、21′が来る。図8はその拡大である。上記は、網点の面積の調節、或いは密度の調節により光線の照射距離に応じて受光量を調節し発光パターン19の明るさを均一にすることができることの例であるが、これに止まらず、受光量の調節作用を利用して、明るさの均一化だけではなく明るさに変化を持たせたり、あるいは受光する色合いを変化させたりするなど、積極的な色調の調節を展開することも可能である。
【0027】
網点による面積の調節は、印刷技術におけるグラデーションを想起させるが、印刷技術においては、紙面にインクを置くか、紙面のままにしておくかという二値状態による情報制御として行われるのに対して、本発明の場合には受光能力の調節を行なっており、受光し得る光も1種類とは限らない。網点一つ一つの大きさは、例えば約0.1mm〜1.0mm程で良い。
【0028】
本発明の発光パネル装置用パネル版の生産方法によって得られるパネル版10は、微細な凸凹構造13が転写された凹凸構造18より成る発光パターン19を備え、上記発光パターン19にパネル本体12の外部より導入した光線を照射して反射発光させるために使用する。発光範囲は押し版16の大きさによって決定されるがパネル版としてのサイズ、厚みの制限はほとんどない。よって、部分的な装飾、表示が可能になり、かつまた同一のパネル本体12に何度でも位置を変えて同じ文字、図柄、或いは異なる文字、図柄のパターン17を繰り返し転写して、目的の発光パターン19を形成することができる。
【0029】
さらにパネル版を別部材と組み合わせた構成を取る例3を、図9、図10について説明する。図9において、aは、図3cの冷却硬化を見計らった時間の経過後、基材14をパネル本体12から剥離して、透明なパネル本体12の表面に微細な凸凹構造13の転写された、発光パターン19を有するパネル版10が形成された状態を示している。これに、表面が印刷された重ねシート22を用意して張り合わせる(図9b、図9c)。重ねシート22は、その所要部分を発光パターン19の図柄、模様との関係において抜き落して、パネル本体12の裏面に重ね合わせるために、接着手段22aとして粘着剤層を正面に有している。
【0030】
パネル版10の発光パターン19の周囲には重ねシート22の印刷された表面があらわれる。その状態は図10に詳細に示されており、黒字「A」が透明なパネル版10に形成された発光パターン19、白抜き「A」が重ねシート22の印刷面23に抜き落とされた部分24を示しており、黒字「A」と白抜き「A」は重ねると最下段に示すように一致して、新たな装飾25を構成する。成型品に印刷、箔押し等の加飾を施した後、粘着剤付き印刷シートを重ねて貼り合わせるのは、加飾部分が凸状構造になるため困難であるが、本発明によって得られるパネル版10は発光パターン19が凹状構造であるから貼り合わせ加工を容易に行うことができる。
【0031】
このように本発明によれば、照射される光線を受光するために、微細な凹凸構造の集まりから成り、全体として凹状構造から成る発光パターン19をパネル本体12の裏面に有している透明なプラスチックシートより成るパネル版10を提供することができ、このパネル版10は任意の図柄、模様などから成る発光パターン19を有しているものであれば平面状でも曲面状でも自由に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る発光パネル装置用パネル版は、例えば各種のゲーム機器、自動販売機の装飾パネル、屋内、屋外用電飾看板パネル、屋内、屋外用導光板パネル、屋内、屋外用表示パネル、建材用装飾壁パネル、建材用装飾床パネル、その他電飾用のパネルなどに利用することが可能である。また、各種のプラスチックカード類にチェックの目的等で適用し、必要に応じ端面から光線を照射して上記発光パターンを発光させるとともに、その発光表示を撮影し真偽を見分ける偽造防止用途にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る発光パネル装置用パネル版の生産方法に使用する装置を示す正面図である。
【図2】同上の装置によるパネル版の生産方法を工程順に説明する斜視図である。
【図3】同じく本発明による発光パネル装置用パネル版の生産方法を工程順に説明する説明図である。
【図4】本発明によって得られるパネル版にグラデーションを施したものの説明図である。
【図5】光線の照射距離に応じて受光量を調節するパネル版の例1の説明図である。
【図6】同じく受光量を調節するパネル版の例2の説明図である。
【図7】図5の要部を拡大して示す平面図である。
【図8】同じく図6の要部を拡大して示す平面図である。
【図9】本発明の第2の例のパネル版の生産過程を示す説明図である。
【図10】同じく第2の例のパネル版の構成を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 パネル版
11 基台
12 透明なパネル本体
13 微細な凸凹構造
14 基材
15 熱盤
16 押し版
17 凸状のパターン
18 転写された微細な凹凸構造
19 発光パターン
20 光線の照射部
21、21′ 網点
22 重ねシート
23 印刷面
24 抜き落とされた部分
25 新たな装飾

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なプラスチックシートより成るパネル本体の裏面に、任意の図柄、模様などから成る発光パターンを有し、パネル本体の外部より導入した光線を照射して上記発光パターンを発光させる発光パネル装置に用いるパネル版であって、
照射される光線を受光するために、全体として凹状構造から成る発光パターンをパネル本体の裏面に有しており、
上記発光パターンは微細な凹凸構造の集まりから成ることを特徴とする
発光パネル装置に用いるパネル版。
【請求項2】
表面が印刷された重ねシートを具備し、重ねシートは、その所要部分を発光パターンの図柄、模様との関係において抜き落して、パネル本体の裏面に重ね合わせた構造とすることにより、発光パターンの周囲に重ねシートの印刷された表面があらわれるように構成された請求項1記載の発光パネル装置に用いるパネル版。
【請求項3】
微細な凸凹構造として、所要の面積を有する網点を所要の密度で配置し、網点は、光線の照射部において面積及び/又は密度を小とし、光線の照射部から遠ざかるにつれて面積及び/又は密度を大とした構成を有する請求項1記載の発光パネル装置用パネル版の生産方法。
【請求項4】
微細な凸凹構造として、インクにより基材に所要の面積を有する網点を所要の密度で印刷により形成した構成を有する請求項1記載の発光パネル装置用パネル版の生産方法。
【請求項5】
透明なプラスチックシートより成るパネル本体の裏面に、任意の図柄、模様などから成る発光パターンを形成し、上記発光パターンにパネル本体の外部より導入した光線を照射して発光させる発光パネル装置に用いるパネル版の生産方法であって、
全体として凹状構造から成る発光パターンに対応する凸状のパターンを透明なパネル本体の裏面に圧し付けて凹状構造を形成するために、凸状パターンを表面に有する押し版を、上記パネル本体の裏面側に配置し、
照射される光線を受光するため、凹状構造から成る発光パターンに微細な凹凸構造を成型するように、微細な凸凹構造を表面に有する基材を透明なパネル本体の裏面と上記押し版の間に配置し、
上記押し版を基材とともに透明なパネル本体に加熱条件のもとに圧し付け、表面に微細な凸凹構造を有するパターンを透明なパネル本体の表面に転写するようにした
発光パネル装置用パネル版の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−25666(P2009−25666A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190043(P2007−190043)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(301049733)株式会社プラネット (6)
【Fターム(参考)】