説明

発光パネル

【課題】有機EL素子で構成される発光部(発光領域)の輝度分布を所望状態にするための新規な構造を備えた発光パネルを提供する。
【解決手段】発光パネル10は、基板11上に設けられた有機EL素子12を発光部としている。有機EL素子12は、ボトムエミッション型で、かつ有機発光層14を保護する保護膜17を備え、温度調整手段18は保護膜17側から輝度調整領域16a〜16dの温度調整を行う。温度調整手段18は熱伝導率の異なる複数の放熱部材19a〜19dで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光パネルに係り、詳しくは第1電極と第2電極との間に有機発光層が設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子を発光部とした発光パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜有機エレクトロルミネッセンス素子を有機EL素子と表記する。)は発光素子として、例えば、ディスプレイや照明装置等の分野で用いられている。有機EL素子の基本的な構造は、ガラス等の透明基板上に陽極、有機発光層、陰極が順に積層された構造である。
【0003】
有機EL素子は、陽極と陰極との間に電圧を印加することで有機発光層に電流が流れて発光する。有機発光層が発した光は、陽極又は陰極のどちらかの電極側より外部に取り出されるのが一般的であり、その場合、少なくとも光を取り出す側の電極には取り出す光に対して透過性を有する透明電極が使用される。透明電極としては、一般に、アルミニウムや銀等の金属電極に比較して体積抵抗率の高い、ITO(インジウム錫酸化物)やZnO(酸化亜鉛)等が用いられる。
【0004】
有機EL素子の輝度は、有機発光層における電流密度に影響され、電流密度が高いほど素子の輝度は高くなる。透明電極にITOを使用した場合、電極の端子(電源接続端子)から近い部分と遠い部分とでは、電気抵抗値の差が大きくなり、有機発光層における電流密度の差も大きくなる。従って、端子に近い部分と遠い部分との輝度の差が大きくなり、有機EL素子全体としての輝度分布の均一性が悪くなる。
【0005】
例えば、長方形状の透明電極に対して長手方向の片側の一辺に沿って端子を設けた場合は、図9(a)に示すように、発光部(発光領域)51の輝度は、端子52に近い側(図9(a)の左側)から次第に低くなる。また、長方形状の透明電極に対して4辺に沿って端子52を設けた場合は、図9(b)に示すように、発光部(発光領域)51の輝度は、周縁から中心に向かって次第に低くなる。
【0006】
従来、有機EL素子を発光素子とした発光パネルにおいて、輝度ムラを抑制できる発光装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された発光装置は、発光部を画像を表示する複数の発光素子で構成し、前記複数の発光素子に印加される電圧を制御する電圧源を備えている。そして、各発光素子間の相対的な輝度の差の情報データと、発光素子の階調数の累積値に対する、劣化による輝度の低下の度合いの情報データとに基づいて、輝度ムラを抑制するように各電圧源から発光素子に供給される電圧を補正するようにしている。
【0007】
また、有機EL素子を設けた発光パネルにおいて、発光に伴う発熱による有機EL素子の劣化を、簡単な手段による冷却で抑制するため、有機EL素子を覆う封止パッケージ内を外側から冷却可能な温度調整手段を設けたものが提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−145257号公報
【特許文献2】特開2004−95458号公報(明細書の段落[0012]〜[0016]、図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の発光装置では、輝度ムラを抑制できる。しかし、発光部を構成する複数の発光素子をそれぞれ独立して制御する構成が必要で、構成が複雑になるとともに、製造工程の増加が生じ、コスト増となる。
【0009】
一方、特許文献2に記載の発光パネルでは、発光に伴う発熱による劣化を、簡単な手段による冷却で抑制するために温度調整手段を設けているが、温度調整手段は有機EL素子全体を冷却して有機EL素子の劣化を抑制するためのものであり、輝度ムラの抑制を図るものではない。
【0010】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、有機EL素子で構成される発光部(発光領域)の輝度分布を所望状態にするための新規な構造を備えた発光パネルを提供することにある。ここで、「所望状態」とは、例えば、発光領域全体の輝度ムラを抑制する状態や、発光部の予め設定された位置(領域)において部分的に明部または暗部が生じて図形等を表示する状態等を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、有機EL素子の発光効率が温度の影響を受け、温度が高い方が発光効率の良いことを見いだし、その現象を利用して本願発明に至った。
そして、前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1電極と第2電極との間に有機発光層が設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子を発光部とした発光パネルであって、前記第1電極と第2電極とで挟まれた前記有機発光層に対応する発光領域の輝度を調整するため、前記発光領域の温度を調整する温度調整手段を備えている。この発明では、発光領域の温度を調整することにより、有機EL素子で構成される発光部(発光領域)の輝度分布を所望状態にすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記輝度の調整は、前記発光領域を複数の領域に区画してその少なくとも一つの領域を輝度調整領域として、前記輝度調整領域の温度を調整することにより行われる。この発明では、目的に応じて輝度調整領域を設定することで、発光部の輝度分布を所望状態にすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記輝度の調整は、前記発光領域を複数の領域に区画してその全ての領域を輝度調整領域として、前記輝度調整領域の温度を調整することにより行われる。この発明では、輝度ムラを抑制した状態で発光部の輝度分布を所望状態にすることが容易になる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記輝度調整領域の輝度は、初期の輝度が予め設定された輝度となるように調整される。この発明では、温度調整手段は輝度調整領域の輝度を、初期の輝度が予め設定された輝度となるように調整するだけで、輝度の変更を行わないため構成が簡単になる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記輝度調整領域は、発光パネルの使用初期における前記発光領域の輝度分布の均一度が70%以上になるように設定されている。ここで、「輝度分布の均一度が70%以上」とは、発光領域を光出射面側から見たときに、発光領域を複数に分割し、各領域の輝度の最小値を最大値で除算した値に100を掛けた値(%)が70%以上であることを意味する。前記値が大きいほど均一度が向上し、100%のときに均一となる。なお、各領域の面積は、例えば、数平方ミリメートルである。この発明では、輝度調整領域の温度が調整されると、発光領域全体の輝度ムラが少なくなる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記輝度調整領域は、前記発光領域の輝度分布が所望の形状を表示するように設定されている。この発明では、輝度調整領域の温度が調整されると、発光領域に予め設定された形状が表示される。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記温度調整手段は、前記輝度調整領域を少なくとも2種の輝度に変更可能に構成されている。この発明では、所望状態の自由度が増える。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記温度調整手段は、前記輝度調整領域を冷却する。この発明では、輝度調整領域が冷却されるため、有機EL素子の劣化抑制に寄与する。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記温度調整手段は、冷却すべき前記輝度調整領域と対応する部分に放熱部材を接触させることで冷却を行う。この発明では、放熱部材の放熱作用により輝度調整領域が冷却される。従って、冷熱源を設ける構成に比較して温度調整手段の構成が簡単になる。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記放熱部材は、前記輝度調整領域の単位面積当たりの放熱面積が変化するように構成されている。この発明では、輝度分布の均一度を高めたり、あるいは輝度分布に所望のグラデーションを付けるのが容易になる。
【0021】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は請求項10に記載の発明において、前記放熱部材は、前記輝度調整領域と対応する部分に対して接触する作用位置と、離隔した退避位置とに移動可能に設けられている。この発明では、希望する際に輝度調整領域の温度調整を行うことができる。
【0022】
請求項12に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記温度調整手段は、冷却すべき前記輝度調整領域と対応する部分をペルチェ素子によって冷却を行う。この発明では、輝度調整領域を積極的に冷却することができ、単に放熱部材を輝度調整領域に接触させる構成に比較して冷却効果が高くなる。
【0023】
請求項13に記載の発明は、請求項2〜請求項12のいずれか一項に記載の発明において、前記有機エレクトロルミネッセンス素子はボトムエミッション型で、かつ前記有機発光層を保護する保護手段として保護膜を備え、前記温度調整手段は前記保護膜側から前記輝度調整領域の温度調整を行う。この発明では、有機EL素子の外側から輝度調整領域の温度調整を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、有機EL素子で構成される発光部(発光領域)の輝度分布を所望状態にするための新規な構造を備えた発光パネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1(a),(b)に従って説明する。図1(a)は(b)のA−A線における模式断面図、(b)は発光パネルの模式平面図である。なお、図1(a),(b)は、発光パネルの構成を模式的に示したものであり、図示の都合上、一部の寸法を誇張して分かり易くしているために、それぞれの部分の幅、長さ、厚さ等の寸法の比は実際の比と異なっている。他の実施形態においても同様である。また、図1(b)では、保護膜で覆われた部分を分かり易くするため保護膜を2点鎖線で示している。
【0026】
図1(a),(b)に示すように、発光パネル10は、基板11上に設けられた有機EL素子12を発光部としている。有機EL素子12は、基板11上に、第1電極13、有機発光層14及び第2電極15が順に積層されている。第1電極13、有機発光層14及び第2電極15は、それぞれ長方形状に形成されている。有機発光層14は、幅(図1(b)の上下方向)が第1電極13及び第2電極15より広く形成されている。有機EL素子12は、第1電極13と第2電極15とで挟まれた有機発光層14に対応する部分が発光領域16となる。
【0027】
第1電極13は、第2電極15よりも体積抵抗率が高い材料で形成され、長方形の1辺に対応する部分(図1(b)の左側部分)全長にわたって延びる第1端子部13aを備えている。有機発光層14は第1電極13の第1端子部13aと反対側の端部においては第1電極13を覆うように積層されている。第2電極15の第2端子部15aは、第1電極13の第1端子部13aより内側となる位置に、第1端子部13aと平行に設けられている。第2端子部15aと第1電極13との間には、両端子部13a,15aが互いに接触しないように絶縁膜15bが設けられている。
【0028】
有機EL素子12は、有機発光層14が水分(水蒸気)及び酸素の悪影響を受けないように、両端子部13a,15aを除いた部分が、有機発光層14を保護する保護手段としての保護膜17で被覆されている。保護膜17は公知のパッシベーション膜、例えば、窒化ケイ素等のセラミック膜で構成されている。
【0029】
この実施形態では、第1電極13が陽極を構成し、第2電極15が陰極を構成する。有機EL素子12は、有機発光層14からの光が基板11側から取り出される(出射される)所謂ボトムエミッション型に構成されている。そして、基板11には可視光透過性を有する基板が使用され、例えば、ガラス基板が使用される。
【0030】
第1電極13は公知の透明な導電性材料で形成されており、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)や、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化錫)等を用いることができる。
【0031】
第2電極15は、従来用いられている公知の陰極材料等が使用でき、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、クロム等の金属やこれらの合金が用いられる。
有機発光層14は、公知の有機EL材料を用いて形成され、有機EL素子12の目的とする発光色に応じて構成されている。この実施形態では、白色発光を行うように構成されており、有機EL素子12を液晶表示装置のバックライトとして使用する場合、カラーフィルタを使用したフルカラー表示に対応できるようになっている。
【0032】
発光パネル10は、発光領域16の輝度を調整するため、発光領域16の温度を調整する温度調整手段18を備えている。発光領域16は複数(この実施形態では4個)の領域に区画され、その全ての領域が輝度調整領域16a,16b,16c,16dとされて、温度調整手段18は各輝度調整領域16a〜16dの温度調整を可能に設けられている。
【0033】
温度調整手段18は保護膜17側から輝度調整領域16a〜16dの温度調整を行う構成となっている。この実施形態では、温度調整手段18は、輝度調整領域16a〜16dを冷却するように構成されている。温度調整手段18は、冷却すべき輝度調整領域16a〜16dと対応する部分の保護膜17の外面に固着された放熱部材19a,19b,19c,19dで構成されている。放熱部材19a〜19dは全て同じ厚さに形成され、隣接して配設された各放熱部材19a等は、互いに隙間を有する状態で配設されている。
【0034】
輝度調整領域16a〜16dの輝度は、初期の輝度が予め設定された輝度となるように調整される。輝度調整領域16a〜16dは、発光パネル10の使用初期における発光領域16の輝度分布の均一度が70%以上になるように設定されている。具体的には、輝度調整領域16a〜16dは第1端子部13aと平行な状態に設けられ、温度調整手段18は、第1端子部13aに近い輝度調整領域ほど冷却効果が良くなるように構成されている。この実施形態では放熱部材19a〜19dの熱伝導率は、第1端子部13aに最も近い輝度調整領域に設けられた放熱部材19aで最も高く、第1端子部13aから遠い放熱部材ほど低くなるように構成されている。
【0035】
放熱部材19a〜19dとしては、金属あるいは合金が使用される。金属や合金の場合、熱伝導率が大きく異なるものを入手し易い。例えば、100℃における熱伝導率(W/(mK))は、次のようになる。
【0036】
銀:422、銅:395、アルミニウム:240、黄銅:128、ニッケル:83、鉄:72、炭素鋼:48.5、18−8ステンレス:16.5
各輝度調整領域16a〜16dの大きさと、各輝度調整領域16a〜16dに設けられる放熱部材19a〜19dの熱伝導率及び厚さは、放熱部材19a〜19dを設けない状態で有機EL素子12を発光させた場合の輝度分布の状態に基づいて、目的とする輝度分布の状態が得られるように設定される。
【0037】
次に前記のように構成された発光パネル10の作用について説明する。発光パネル10は、例えば、液晶表示装置のバックライトとして使用される。
発光パネル10は、第1端子部13a及び第2端子部15aに図示しない外部駆動回路が接続された状態で使用される。第1端子部13aと第2端子部15aとの間に直流駆動電圧が印加されると、第1端子部13aから第1電極13、有機発光層14、第2電極15へと電流が流れる。この時、有機発光層14が発光し、その光は透明電極である第1電極13を経て基板11側から外部に取り出される。
【0038】
有機EL素子12の輝度は、有機発光層14における電流密度に影響され、電流密度が高いほど有機EL素子12の輝度は高くなる。第1電極13は体積抵抗率が第2電極15に比較して高く、第1端子部13aから近い部分と遠い部分とでは、電気抵抗値の差が大きくなり、有機発光層14における電流密度の差も大きくなる。そして、第1端子部13aが第1電極13の一端側に沿って設けられているため、発光領域16のうち第1端子部13a(以下同様、第2端子部15a)に近い領域ほど電流密度が高くなる。その結果、温度調整手段18による温度調整が行われない状態では、第1端子部13aに近い領域と、第1端子部13aから遠い領域との輝度の差が大きくなりすぎて、発光領域16全体として輝度分布の均一度を70%以上にすることは難しい。
【0039】
しかし、発光パネル10は、発光領域16の温度を調整する温度調整手段18を備えており、温度調整手段18は、輝度調整領域16a〜16dを冷却する。冷却が放熱部材19a〜19dの放熱によって行われるため、冷却効率は、第1端子部13aに最も近い輝度調整領域16aで最も高く、第1端子部13aから最も遠い輝度調整領域16dで最も低くなる。
【0040】
有機EL素子12の発光効率は温度が高い方が良い。従って、冷却による輝度の低下割合は、第1端子部13aに最も近い輝度調整領域16aで最も大きく、第1端子部13aから最も遠い輝度調整領域16dで最も小さくなる。その結果、各輝度調整領域16a〜16dの輝度の差が小さくなり、発光領域16は全体として輝度分布の均一度が70%以上になる。
【0041】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1)発光パネル10は、第1電極13と第2電極15との間に有機発光層14が設けられた有機EL素子12を発光部としており、第1電極13と第2電極15とで挟まれた有機発光層14に対応する発光領域16の輝度を調整するため、発光領域16の温度を調整する温度調整手段18を備えている。従って、発光領域16の温度を調整することにより、有機EL素子12で構成される発光部(発光領域16)の輝度分布を所望状態にすることができる。
【0042】
(2)輝度の調整は、発光領域16を複数の領域に区画してその全ての領域を輝度調整領域16a〜16dとして、輝度調整領域16a〜16dの温度を調整することにより行われる。従って、発光領域16の一部の領域のみを温度を調整する場合に比較して、輝度ムラを抑制した状態で発光部(発光領域16)の輝度分布を所望状態(輝度分布の均一度が70%以上)にすることが容易になる。
【0043】
(3)輝度調整領域16a〜16dの輝度は、初期の輝度が予め設定された輝度となるように調整される。従って、温度調整手段18は輝度調整領域16a〜16dの輝度を予め設定された輝度に調整するだけで、輝度の変更を行わないため、構成が簡単になる。
【0044】
(4)輝度調整領域16a〜16dは、発光パネル10の使用初期における発光領域16の輝度分布の均一度が70%以上になるように設定されている。従って、輝度調整領域16a〜16dの温度が調整されると、発光領域16全体の輝度ムラが少なくなる。
【0045】
(5)温度調整手段18は、輝度調整領域16a〜16dを冷却する。従って、同じ輝度で有機EL素子12が発光する場合でも、輝度調整領域16a〜16dが冷却されるため、有機EL素子12の劣化抑制に寄与する。
【0046】
(6)温度調整手段18は、冷却すべき輝度調整領域16a〜16dと対応する部分に放熱部材19a〜19dを接触させることで冷却を行う。従って、冷熱源を設ける構成に比較して温度調整手段18の構成が簡単になる。
【0047】
(7)有機EL素子12はボトムエミッション型で、かつ有機発光層14を保護する保護手段として保護膜17を備え、温度調整手段18は保護膜17側から輝度調整領域16a〜16dの温度調整を行う。従って、有機EL素子12の外側から輝度調整領域16a〜16dの温度調整を効率良く行うことができる。
【0048】
(8)放熱部材19a〜19dは、全て同じ厚さで、かつ輝度調整領域16a〜16d毎に異なる熱伝導率の材料で形成されている。従って、基板11と反対側の面も平坦になり、発光パネル10の取り扱いが容易になる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施の形態を図2(a),(b)に従って説明する。この実施形態は、有機EL素子12として、温度調整手段18を設けない状態において、第1電極13のほぼ周縁全体の輝度が最も高く、中心部が最も低くなる構成のものが使用されている点と、それに対応して放熱部材の形状及び配置が変更されている点とが前記第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
図2(a),(b)に示すように、第1電極13は有機発光層14より大きく、第2電極15は有機発光層14より小さく形成されている。第1電極13は、図示しない外部駆動回路に接続するための二つの第1端子部13b,13cを備えている。第2電極15は、一つの第2端子部15aを備えている。二つの第1端子部13b,13c及び第2電極15の第2端子部15aは、基板11上で有機EL素子12の一辺に沿って並び、かつ第2端子部15aが第1端子部13b,13cの間に存在するように配置されている。
【0051】
第1電極13の有機発光層14より外側となる領域上には、第1電極13より体積抵抗率が低い材料で形成された補助電極20が、第1端子部13b,13c上から連続して延びるように設けられている。従って、この実施形態の構成では、第1端子部13b,13cに供給される電流は補助電極20を経て第1電極13に供給されるようになる。なお、この実施形態では、補助電極20の材料に、第2電極15と同様の材料(例えば、アルミニウム)が使用されている。
【0052】
図2(b)に示すように、発光領域16は、発光領域16の中心を中心とする2つの楕円を境として3つの領域に区画され、その全ての領域が輝度調整領域16e,16f,16gとされている。各輝度調整領域16e,16f,16gと対応する部分の保護膜17の外面に、温度調整手段18としての放熱部材19e,19f,19gがそれぞれ固着されている。放熱部材19e,19f,19gは全て同じ厚さに形成され、隣接して配設された各放熱部材は、互いに隙間を有する状態で配設されている。
【0053】
輝度調整領域16e〜16gの輝度は、発光パネル10の使用初期における発光領域16の輝度分布の均一度が70%以上、好ましくは80%以上になるように設定されている。具体的には、中心側の輝度調整領域16eに固着される放熱部材19eが最も熱伝導率が低く、最も外側の輝度調整領域16gに固着される放熱部材19gが最も熱伝導率が高くなるように構成されている。
【0054】
発光パネル10は、第1端子部13b,13c及び第2端子部15aに図示しない外部駆動回路が接続された状態で使用される。第1端子部13b,13cと第2端子部15aとの間に直流駆動電圧が印加されると、第1端子部13b,13cから補助電極20を介して第1電極13、有機発光層14、第2電極15へと電流が流れる。この時、有機発光層14が発光し、その光は透明電極である第1電極13を経て基板11側から外部に取り出される。
【0055】
放熱部材19e〜19gが設けられていなければ、発光領域16の最高輝度部と最低輝度部との輝度の差が大きくなりすぎて、発光領域16全体として輝度分布の均一度を70%以上にすることは難しい。しかし、放熱部材19e〜19gが設けられているため、発光領域16は、全体として輝度分布の均一度が70%以上になる。
【0056】
従って、この第2の実施形態では、輝度調整領域の数及び形状が異なり、それに対応して放熱部材19e〜19gの形状等が異なるが、前記第1の実施形態の効果(1)〜(8)と基本的に同様の効果を有する他に次の効果を有する。
【0057】
(9)第1電極13の周縁部に補助電極20を設けて、第1端子部13b,13cに供給された電源が補助電極20を介して第1電極13の周縁から供給される構成となっている。従って、第1の実施形態に比較して、発光領域16の面積が同じ場合、温度調整手段18を設けない状態における、発光領域16の最高輝度部と、最低輝度部との輝度の差が小さくなる。そのため、発光領域16全体として輝度分布の均一度が70%以上になるように放熱部材19e〜19gを設けるのが容易になる。また、輝度分布の均一度を同じにした場合の平均輝度を高くすることができる。
【0058】
(10)補助電極20は第2電極15と同じ材料で形成されている。従って、有機EL素子12の製造時において補助電極20と第2電極15とを同時に形成することができ、補助電極20を形成する工程を独立して設ける必要はない。
【0059】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を図3に従って説明する。この実施形態は、温度調整手段18の構成が第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
前記第1及び第2の実施形態においては、温度調整手段18は放熱部材19a等の放熱作用で有機EL素子12の温度を調整する構成であったが、この実施形態においては、温度調整手段18が輝度調整領域16a〜16dを積極的に冷却する構成となっている。具体的には、発光パネル10の保護膜17上に温度調整手段18を構成する冷熱源としてのペルチェ素子21が設けられている。この実施形態では、ペルチェ素子21はn形半導体21aと、n形半導体21aを挟んで両側に設けられた電極層としての金属層21b,21cとから構成されている。ペルチェ素子21は、金属層21b側が保護膜17に接触する状態に設けられている。金属層21b,21cは例えばアルミニウムで形成されている。
【0061】
このように構成された発光パネル10は、金属層21b側が吸熱側となるように、即ち、金属層21b側が陰極となるように電源に接続されて使用される。各輝度調整領域16a〜16dに設けられたペルチェ素子21は、それぞれ異なる電流量が供給される状態で使用される。電流量は、第1端子部13aに最も近い輝度調整領域16aに設けられたペルチェ素子21で最も大きく、第1端子部13aから最も遠い輝度調整領域16dに設けられたペルチェ素子21で最も小さくなる状態で使用される。
【0062】
前記のように構成されたペルチェ素子21は、電流が流れると陰極側が吸熱側となり、陽極側が発熱側となる。また、ペルチェ素子21に流れる電流量が大きいほど、吸熱量が大きくなる。従って、各ペルチェ素子21に電流が供給されると、保護膜17側から各輝度調整領域16a〜16dが冷却される。ペルチェ素子21の冷却効率は、冷却しない状態において最も輝度が高い輝度調整領域16aで最も高く、最も輝度が低い領域で最も低くなる。その結果、発光領域16は、全体として輝度分布の均一度が70%以上になる。
【0063】
従って、この第3の実施形態では、前記第1の実施形態の効果(1)〜(5),(7)と同様の効果を有する他に次の効果を有する。
(11)温度調整手段18は、冷却すべき輝度調整領域16a〜16dと対応する部分を冷熱源によって冷却を行う。従って、輝度調整領域16a〜16dを積極的に冷却することができ、単に放熱部材19a〜19dを輝度調整領域16a〜16dに接触させる構成に比較して冷却効果が高くなる。
【0064】
(12)輝度調整領域16a〜16dの冷却用の冷熱源としてペルチェ素子21が使用されており、ペルチェ素子21は、供給される電流量により冷却効果が変わる。従って、各輝度調整領域16a〜16dに同じ構成のペルチェ素子21を設けて、供給電流量の設定を輝度調整領域16a〜16d毎に変えることにより、各輝度調整領域16a〜16dの冷却効率を所望の条件に適するようにするのが、放熱部材19a〜19dの熱伝導率の調整で行うことに比較して容易になる。
【0065】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を図4(a),(b),(c)に従って説明する。この実施形態は、温度調整手段18の構成と、発光領域16を細かく区画した点とが前記第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。図4(a)は発光パネルの模式断面図、(b)は温度伝達部材の配置状態を示す模式平面図、(c)は温度伝達部材の模式斜視図である。
【0066】
この実施形態では、温度調整手段18は、細かくマトリックス状に区画された発光領域16の各輝度調整領域22の温度調整を可能に構成されている。一つの輝度調整領域22は、発光領域16の面積にもよるが、例えば数mmから数10mm四方に形成される。
【0067】
図4(a)に示すように、温度調整手段18は、発光領域16に対応する部分において保護膜17に接触する状態で、それぞれ輝度調整領域22と対応するように配設された温度伝達部材23を備えている。温度伝達部材23は保護膜17より熱伝導率の高い材質、例えば、アルミニウム、銅等の金属で形成され、図4(c)に示すように、四角板状の接触部23aと、接触部23aから垂直に延びるロッド部23bとで構成されている。図4(b)に示すように、隣り合う温度伝達部材23は、接触部23aが互いに接触しない状態で近接して配設されている。
【0068】
各温度伝達部材23は、ロッド部23bを介して熱源24にそれぞれ熱伝達可能な状態で接続されている。この実施の形態では、熱源24としてペルチェ素子が使用されている。
【0069】
ペルチェ素子は、第3の実施形態において説明したように、n形半導体と、n形半導体を挟んで両側に設けられた電極層としての一対の金属層とから構成されている。そして、両金属層の一方に直流電源のプラス端子を接続し、他方にマイナス端子を接続した状態で使用すると、プラス端子に接続された金属層側が発熱側に、マイナス端子に接続された金属層側が吸熱側となる。従って、ペルチェ素子の一方の金属層側に温度伝達部材23のロッド部23bを熱伝達良好な状態で接続しておき、ペルチェ素子に印加される電圧の印加状態の正負を切換えることにより、ペルチェ素子を加熱源及び冷熱源の両方に使用できる。この実施形態では、熱源24は、ペルチェ素子に印加される電圧の印加状態の正負を切換えることにより、加熱源及び冷熱源の両方に使用できるように構成されている。即ち、温度調整手段18は、同じ輝度調整領域22を冷却及び加熱のいずれの状態にするかを選択可能に構成されている。
【0070】
各温度伝達部材23に接続された熱源24を冷却状態にするか加熱状態にするかの制御は、ペルチェ素子への電圧供給回路に設けられた切換えスイッチを切換えることにより行われる。また、切換えスイッチの切換え制御は、予め発光領域16をどのような輝度分布状態にするかを決めておき、その分布状態と各切換えスイッチの切換え状態との関係を制御装置の記憶装置に記憶させておく。そして、希望する輝度分布状態を指定することにより、制御装置により各切換えスイッチの切換え状態が制御される。前記分布状態には、発光領域16全体として輝度分布の均一度が70%以上になる状態の他に、所望図形を表示するのに対応する分布状態(パターン)がある。
【0071】
この発光パネル10は、第1端子部13a及び第2端子部15aに図示しない外部駆動回路が接続され、熱源24が電圧供給回路に接続された状態で使用される。希望の輝度分布状態を指定すると、制御装置により、その分布状態に対応した状態に各熱源24が駆動されるように各切換えスイッチが切換えられる。そして、各熱源24の状態に対応して各温度伝達部材23が冷却あるいは加熱され、温度伝達部材23と接触した保護膜17の外側から発光領域16が温度調整されて、発光領域16は所定の輝度分布状態となるように発光する。
【0072】
従って、この実施形態では、第1の実施形態の効果(1),(2),(7)と同様の効果を有する他に次の効果を有する。
(13)輝度調整領域22は、発光領域16をマトリックス状に区画するように設定され、輝度調整領域22毎に温度伝達部材23が接触状態で配設されている。そして、各温度伝達部材23は加熱源及び冷熱源の両方の機能を備えた熱源24に熱伝達可能に接続されている。従って、発光領域16を所望の輝度分布状態とする温度制御を前記実施形態より精度良く行うことができる。
【0073】
(14)熱源24はペルチェ素子で構成され、ペルチェ素子に印加される電圧の印加状態の正負を切換えることにより、加熱源及び冷熱源の両方に使用できるように構成されている。従って、加熱源及び冷熱源の両方に使用できる構成が比較的簡単になる。
【0074】
(15)温度調整手段18は、冷却だけでなく加熱も可能なため、発光領域16全体として輝度分布の均一度が70%以上になる状態とする場合、輝度調整領域22によっては加熱も利用することにより、冷却のみで同じ均一度にする場合に比較して、発光領域16全体として高輝度にすることが可能になる。
【0075】
(16)熱源24の状態を制御する制御装置に、発光領域16全体として輝度分布の均一度が70%以上になる状態の他に、所望図形を表示するのに対応する熱源24の制御パターンが記憶されている。従って、希望のパターンを指定することにより、そのパターンで発光領域16が温度調整されるため、ディスプレイ用にも使用することができる。
【0076】
(17)温度調整手段18は、輝度調整領域22を少なくとも2種の輝度に変更可能に構成されている。従って、発光領域16の輝度分布の所望状態を設定する際の自由度が増える。
【0077】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態を図5に従って説明する。この実施形態は、温度調整手段18の構成が前記第4の実施形態と異なっており、その他の構成は第4の実施形態と同じである。第4の実施形態と同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0078】
この実施形態では温度調整手段18は、保護膜17の輝度調整領域22と対応する部分に対して接触する作用位置と、離隔した退避位置とに移動可能に設けられた放熱部材25を備えている。放熱部材25は、第4の実施形態の温度伝達部材23と同様な形状に形成されている。そして、放熱部材25が作用位置に配置されると、その部分が放熱部材25の放熱作用によって冷却される。
【0079】
放熱部材25を駆動する手段としては、例えば、バイメタル(図示せず)が挙げられる。バイメタルの一端を放熱部材25のロッド部に固定し、他端を図示しないフレームに固定する。そして、バイメタルの作用により放熱部材25を移動させる。移動量は放熱部材25が保護膜17から離れるのに必要な量であればよいので僅かでよい。
【0080】
バイメタルは通電及び通電停止により駆動され、通電及び通電停止は制御装置により制御される。予め発光領域16をどのような輝度分布状態にするかを決めておき、その分布状態(パターン)と各バイメタルの状態、即ち通電及び通電停止との関係を記憶装置に記憶させておく。そして、制御装置からの指令で所定のパターンに対応した通電あるいは通電停止状態となるようにバイメタルの状態が制御される。前記分布状態には、発光領域16全体として輝度分布の均一度が70%以上になる状態の他に、所望図形を表示するのに対応する分布状態がある。
【0081】
従って、この実施形態では、第1の実施形態の効果(1),(2),(5)〜(7)と同様の効果を有する他に次の効果を有する。
(18)輝度調整領域は、発光領域16をマトリックス状に区画するように設定され、輝度調整領域毎に放熱部材25が保護膜17に対して接触、離隔可能に配設されている。従って、発光領域16を所望の輝度分布状態とする温度制御を第1の実施形態より精度良く行うことができる。
【0082】
(19)放熱部材25の状態を制御する制御装置に、発光領域16全体として輝度分布の均一度が70%以上になる状態の他に、所望図形を表示するのに対応する放熱部材25の制御パターンが記憶されている。従って、希望のパターンを指定することにより、そのパターンで発光領域16が温度調整されて図形が表示されるため、ディスプレイ用にも使用することができる。
【0083】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成してもよい。
○ 第1及び第2の実施形態のように放熱部材19a等使用して発光領域16の温度調整を行う構成において、放熱部材19a等の放熱性を変化させる方法として、放熱部材19a等を異なる熱伝導率の材料で形成する代わりに、放熱部材19a等は同じ材料で形成し、放熱部材19a等の厚さを変えて放熱性を変化させてもよい。即ち、放熱性を高くしたい場合は放熱部材19a等の厚さ(保護膜17に接触する面から反対側の面までの距離)を厚くし、放熱性を低くしたい場合は放熱部材19a等の厚さを薄くする。この場合、隣り合う放熱部材等は隙間を持たせた状態で配置する。例えば、第1の実施形態に適用する場合は、図6(a),(b)に示す状態となる。また、第2の実施形態に適用する場合は、図7(a),(b)に示す状態となる。
【0084】
○ 放熱部材19a等は、輝度調整領域の単位面積当たりの放熱面積が変化するように構成してもよい。例えば、第1の実施形態の有機EL素子12を備えた発光パネル10において、第1端子部13aに近い側で放熱面積が最大で、第1端子部13aに近い側から順に前記放熱面積が小さくなるように放熱部材19a等を形成すれば、発光領域16の輝度分布の均一度をより高めることができる。また、発光領域16の輝度分布に所望のグラデーションを付けるのが容易になる。
【0085】
○ 放熱部材19a等の放熱性を変化させる場合、熱伝導率の異なる材料を使用するとともに厚さも変更して放熱部材19a等を形成してもよい。この場合、温度調整手段18を設けない状態における、発光領域16の最高輝度部と、最低輝度部との輝度の差が大きな場合の輝度ムラを抑制するのが容易になる。
【0086】
○ 発光領域16の輝度の調整は、発光領域16を複数の領域に区画した場合、区画された全ての領域を輝度調整領域とする必要はなく、少なくとも一つの領域を輝度調整領域として、輝度調整領域の温度を調整可能な構成であればよい。例えば、第1の実施形態あるいは第2の実施形態において、区画された領域のうち、温度調整をしない状態において最高輝度となる領域以外の一つの領域を輝度調整領域とせずに、他の領域を輝度調整領域として放熱(冷却)による温度調整、即ち輝度調整を行う構成としてもよい。温度調整を冷却ではなく加熱によって行う場合は、温度調整をしない状態において最低輝度となる領域以外の一つの領域を輝度調整領域とせずに、他の領域を輝度調整領域とする。
【0087】
○ 発光領域16の区画は、温度調整を行わない状態の輝度分布、目的とする輝度分布状態及びその要求精度によって決定される。従って、発光領域16全体として輝度分布の均一度が70%以上になる状態に調整する場合でも、発光領域16を2つに区画して所望の輝度分布状態に調整することも可能である。
【0088】
○ 発光パネル10として、発光領域16の輝度調整を、発光領域16全体として輝度分布の均一度が70%以上になる状態に調整するのではなく、所望の形状(図形)を表示する構成としてもよい。例えば、図8に示すように、温度調整手段18として、図形(例えば、矢印)を表示するための放熱部材26を設けるとともに、その周囲の領域に輝度分布の均一度が70%以上になる状態に調整するための放熱部材19a〜19dを設ける構成にしてもよい。
【0089】
○ 第3の実施形態のように、各輝度調整領域16a〜16dと対応する保護膜17上にそれぞれ固定された冷熱源としてペルチェ素子21を使用する場合、各ペルチェ素子21の冷却状態を変更可能、即ちペルチェ素子21の金属層21b,21c間に流れる電流量を変更可能に構成してもよい。例えば、発光パネル10の使用者が、手動操作で各ペルチェ素子21への印加電圧を変更可能に構成する。この場合、使用者が発光領域16の輝度状態の見て、輝度分布の調整をしたいと思った際に、輝度分布の調整が可能になる。
【0090】
○ 第3の実施形態において、冷熱源に代えて加熱源を設けてもよい。加熱源としては、ペルチェ素子21に流れる電流の向きが冷熱源の場合と反対のものを使用したり、抵抗加熱で加熱する構成としたりしてもよい。
【0091】
○ 第5の実施形態において、温度調整手段18は、放熱部材25に代えて、保護膜17の輝度調整領域22と対応する部分に対して接触する作用位置と、離隔した退避位置とに移動可能に設けられ、熱源に熱伝達可能な状態で接続される温度伝達部材23を備えた構成としてもよい。熱源は、加熱源であっても、冷熱源であっても、あるいは加熱源及び冷熱源として切換え可能な熱源であってもよい。第3又は第4の実施形態のように、冷熱源や加熱源が保護膜17に常に接触している構成、あるいは熱源に接続された温度伝達部材23が保護膜17に接触している構成では、加熱源あるいは冷熱源の駆動が停止されても直ぐには保護膜17への熱伝達が中止されない。しかし、温度伝達部材23等が保護膜17から離隔する構成では、直ちに保護膜17への熱伝達が中止される。
【0092】
○ 保護膜17の輝度調整領域22と対応する部分に対して接触する作用位置と、離隔した退避位置とに移動可能に設けられた放熱部材25の移動を手動操作で行うようにしてもよい。
【0093】
○ 保護膜17の輝度調整領域22と対応する部分に対して接触する作用位置と、離隔した退避位置とに移動可能に設けられた温度伝達部材23あるいは放熱部材25を移動させる駆動手段はバイメタルに限らない。例えば、圧電素子を使用したり、マイクロアクチュエータを使用したりしてもよい。
【0094】
○ 第4の実施形態のように、発光領域16がマトリックス状に区画された輝度調整領域22を備え、温度調整手段18が各輝度調整領域22を少なくとも2種の輝度に変更可能な構成の発光パネル10の場合、発光領域16の輝度分布状態を検出する輝度分布状態検出手段を設ける。輝度分布状態検出手段としては、例えば、CCDカメラ又は輝度計を使用できる。そして、その検出結果に基づいて輝度分布状態が目的とする輝度分布状態の範囲からずれている場合、ずれている輝度調整領域22の温度伝達部材23の温度調整を行うようにしてもよい。温度調整は、輝度が低い方にずれていれば熱源24の温度を上げるように調整し、輝度が高い方にずれていれば熱源24の温度を下げるように調整する。
【0095】
○ 有機EL素子12は、第1電極13の体積抵抗率が第2電極15の体積抵抗率と同等であってもよい。第1電極13及び第2電極15を透明電極で構成すると両者の体積抵抗率は同等になる。この場合、温度調整手段18を設けない状態であっても発光領域16全体として輝度分布の均一度が70%以上になっている。そのような構成の有機EL素子12を発光部とした場合、温度調整手段18を図形を表示させるために使用することにより、発光パネル10を案内標識等に使用できる。例えば、放熱部材26を発光パネル10に装着すると、放熱部材26の形状に対応する部分の輝度が低くなって放熱部材26の形状が発光領域16に表示される。放熱部材26を取外し可能に構成し、形状の異なる複数の放熱部材26を準備しておけば、簡単な構成で複数の図形の表示が可能になる。
【0096】
○ 第5の実施形態において、放熱部材25のロッド部にヒートパイプを使用したり、放熱部材25全体をヒートパイプで構成したりしてもよい。
○ 第1及び第2の実施形態等のように比較的広い面積を覆う放熱部材19a等にヒートパイプを接続してもよい。ヒートパイプの本数を変えることにより、放熱性を変更することができ、所望の放熱性を有する放熱部材を得るのが容易になる。
【0097】
○ 端子部を第1電極13の辺の一部において突出するように設けたり、そのような端子部を複数設けたりしてもよい。
○ 有機EL素子12は基板11側から光を出射する構成に限らず、基板11と反対側から光を出射する所謂トップエミッション型の有機EL素子を使用してもよい。この場合、有機EL素子12は、基板11側に第2電極15が形成され、有機発光層14を挟んで基板11と反対側に第1電極13(透明電極)が形成される。そして、温度調整手段18は基板11側に設けられる。基板11は透明な必要はないため、熱伝導率の高い絶縁材で形成するのが好ましい。この場合、有機発光層14を保護する保護手段として保護膜17に代えて、封止ガラスを採用してもよい。
【0098】
○ 温度調整手段18は、ボトムエミッション型の場合に保護膜17の外側から、トップエミッション型の場合に基板11の外側から発光領域16の温度調整を行う構成に限らない。例えば、ボトムエミッション型の場合に保護膜17と第2電極15との間に、トップエミッション型の場合に基板11と第1電極13との間に放熱部材19a等や冷却用のペルチェ素子21を設けてもよい。
【0099】
○ 有機発光層14は白色発光を行うような構成に限らず、例えば、赤や青や緑や黄色などの単色光若しくは、その組み合わせを発光する構成としてもよい。
○ 発光パネル10はバックライト用に限らず、他の照明装置やディスプレイの発光源として使用してもよい。
【0100】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記温度調整手段はペルチェ素子を備えており、かつ、前記ペルチェ素子に対する電圧の印加状態の正負を切換えることにより、冷却及び加熱のいずれの状態にするかを選択可能に構成されている。
【0101】
(2)請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記温度調整手段は加熱により前記発光領域の温度調整を行う。
(3)請求項1〜請求項13及び前記技術的思想(1),(2)のいずれか一項に記載の発明において、前記第1電極は前記第2電極よりも体積抵抗率が高い材料で形成されている。
【0102】
(4)基板上に、ボトムエミッション型の有機EL素子が形成されるとともに、前記有機EL素子の前記基板と対向する以外の部分が保護膜で覆われた発光パネルの製造方法であって、前記有機EL素子の輝度分布を調べた後、輝度を下げたい領域に対応する前記保護膜の外側に温度調整手段を設ける工程を備えた発光パネルの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】第1の実施形態における発光パネルを示し、(a)は(b)のA−A線における模式断面図、(b)は模式平面図。
【図2】第2の実施形態における発光パネルを示し、(a)は(b)のB−B線における模式断面図、(b)は模式平面図。
【図3】第3の実施形態における発光パネルの模式断面図。
【図4】第4の実施形態における発光パネルを示し、(a)は模式断面図、(b)は温度伝達部材の配置状態を示す模式図、(c)は温度伝達部材の模式斜視図。
【図5】第5の実施形態における発光パネルの模式断面図。
【図6】別の実施形態における発光パネルを示し、(a)は図1(a)に対応する模式断面図、(b)は放熱部材の配置を示す模式図。
【図7】別の実施形態における発光パネルを示し、(a)は図2(a)に対応する模式断面図、(b)は放熱部材の配置を示す模式図。
【図8】別の実施形態における発光パネルの模式平面図。
【図9】(a),(b)は従来技術における発光領域の輝度の状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0104】
10…発光パネル、12…有機EL素子、13…第1電極、14…有機発光層、15…第2電極、16…発光領域、16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,22…輝度調整領域、17…保護膜、18…温度調整手段、19a,19b,19c,19d,19e,
19f,19g,25,26…放熱部材、21…ペルチェ素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極との間に有機発光層が設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子を発光部とした発光パネルであって、
前記第1電極と第2電極とで挟まれた前記有機発光層に対応する発光領域の輝度を調整するため、前記発光領域の温度を調整する温度調整手段を備えている発光パネル。
【請求項2】
前記輝度の調整は、前記発光領域を複数の領域に区画してその少なくとも一つの領域を輝度調整領域として、前記輝度調整領域の温度を調整することにより行われる請求項1に記載の発光パネル。
【請求項3】
前記輝度の調整は、前記発光領域を複数の領域に区画してその全ての領域を輝度調整領域として、前記輝度調整領域の温度を調整することにより行われる請求項1に記載の発光パネル。
【請求項4】
前記輝度調整領域の輝度は、初期の輝度が予め設定された輝度となるように調整される請求項2又は請求項3に記載の発光パネル。
【請求項5】
前記輝度調整領域は、発光パネルの使用初期における前記発光領域の輝度分布の均一度が70%以上になるように設定されている請求項4に記載の発光パネル。
【請求項6】
前記輝度調整領域は、前記発光領域の輝度分布が所望の形状を表示するように設定されている請求項4に記載の発光パネル。
【請求項7】
前記温度調整手段は、前記輝度調整領域を少なくとも2種の輝度に変更可能に構成されている請求項2又は請求項3に記載の発光パネル。
【請求項8】
前記温度調整手段は、前記輝度調整領域を冷却する請求項2〜請求項7のいずれか一項に記載の発光パネル。
【請求項9】
前記温度調整手段は、冷却すべき前記輝度調整領域と対応する部分に放熱部材を接触させることで冷却を行う請求項8に記載の発光パネル。
【請求項10】
前記放熱部材は、前記輝度調整領域の単位面積当たりの放熱面積が変化するように構成されている請求項9に記載の発光パネル。
【請求項11】
前記放熱部材は、前記輝度調整領域と対応する部分に対して接触する作用位置と、離隔した退避位置とに移動可能に設けられている請求項9又は請求項10に記載の発光パネル。
【請求項12】
前記温度調整手段は、冷却すべき前記輝度調整領域と対応する部分をペルチェ素子によって冷却を行う請求項8に記載の発光パネル。
【請求項13】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子はボトムエミッション型で、かつ前記有機発光層を保護する保護手段として保護膜を備え、前記温度調整手段は前記保護膜側から前記輝度調整領域の温度調整を行う請求項2〜請求項12のいずれか一項に記載の発光パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−251193(P2006−251193A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65695(P2005−65695)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】