説明

発光多核銅錯体及びこれを利用した有機電界発光素子

【課題】発光多核銅錯体及びこれを利用した有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】本発明の多核銅錯体は、有機電界発光素子の有機膜の形成時に利用可能であり、高効率の燐光材料として黄色ないし赤色波長領域(560〜630nm)で発光するだけでなく、高い輝度と低い駆動電圧を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光多核銅錯体及びこれを利用した有機電界発光素子に係り、さらに詳細には、黄色ないし赤色領域(560〜630nm)の発光が可能な多核銅錯体と、これを有機膜形成材料として採用している有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(有機EL素子)は、蛍光性または燐光性有機化合物薄膜(以下、有機膜という)に電流を流すと、電子と正孔とが有機膜で結合しつつ光が発生する現象を利用した自発光型表示素子であって、軽量、部品が単純、製作工程が簡単な構造を有しており、高画質で、かつ広視野角を確保している。また、高色純度及び動映像を完壁に具現でき、低消費電力、低電圧駆動といった携帯用電子機器に適した電気的特性を有している。
【0003】
一般的な有機EL素子は、基板上部にアノードが形成されており、このアノードの上部に正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及びカソードが順次に形成されている構造である。ここで、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層は、有機化合物からなる有機膜である。前記のような構造を有する有機EL素子の駆動原理は、次の通りである。前記アノード及びカソードの間に電圧を印加すれば、アノードから注入された正孔は、正孔輸送層を経て発光層に移動する。一方、電子は、カソードから電子輸送層を経て発光層に注入され、発光層領域でキャリアが再結合して励起子を生成する。この励起子が、放射減衰することにより、物質のバンドギャップに相当する波長の光が放出される。
【0004】
前記有機EL素子の発光層の形成材料は、その発光メガニズムにより一重項状態の励起子を利用する蛍光物質と、三重項状態を利用する燐光物質とに区別される。このような蛍光物質または燐光物質を単独で、または適切なホスト物質にドーピングして発光層を形成し、電子励起の結果、ホストに一重項励起子および三重項励起子が形成される。このとき、一重項励起子と三重項励起子との統計的生成比率は1:3である(非特許文献1)。
【0005】
発光層の形成材料として蛍光物質を使用する有機EL素子において、ホストで生成された三重項が浪費されるという不利な点を有する一方、発光層の形成材料として燐光物質を使用する場合には、一重項励起子と三重項励起子とをいずれも使用できるので、内部量子効率が100%に到達可能であるという長所を有している(非特許文献2)。したがって、発光層の形成材料として燐光物質を使用する場合、蛍光物質よりはるかに高い発光効率を有することができる。
【0006】
有機分子にIr、Pt、Rh、Pdのような重金属を導入すれば、重金属原子の効果により発生するスピン−軌道カップリングを通じて三重項状態と一重項状態とが混在するようになるが、これによって禁制(禁止)遷移が可能になり、常温でも効果的に燐光が発生しうる。
【0007】
前述したように、燐光を利用した高効率発光材料として、イリジウム、白金などの遷移金属を含む遷移金属化合物を利用した多様な物質が発表されている。しかし、高効率のフルカラー表示素子のための黄色ないし赤色領域(560〜630nm)の燐光物質が依然として要求されている。
【0008】
一方、ピラゾレート配位子は、貨幣金属化学(coin metal chemistry)に重要な役割を担う。これらは、Cu(I)、Ag(I)及びAu(I)のような貨幣金属イオンとエキソ−二座(exo−bidentate)形態で配位して多核錯体を形成する。このような貨幣金属ピラゾレート(Coin metal pyrazolate)は、反応条件及びピラゾリル成分(ピラゾリルモイエティ;pyrazolate moiety)上の置換体によって三量体、四量体、六量体からポリマーまで形成する。ピラゾレート配位子は、電子輸送成分(electron transporting moiety)として有機EL素子の製造時に電子の注入を助けて素子の性能を向上させる効果がある。
【0009】
このような貨幣金属ピラゾレートのうち、フッ素化ピラゾレート配位子を有する多核貨幣金属(multinuclear coin metal)は、非常に興味のある発光特性を表す。フッ素化は、揮発性を増加させて薄膜製造を促進し、改善された熱安定性及び酸化安定性を示し、発光の濃度消光(ケンチング)が減少する。
【0010】
モハマッド(非特許文献3)は、2,4,6−コリジンが銅原子に置換された貨幣金属ピラゾレート錯体(copper pyrazolate complex)を開示しているが、前記錯体は、明るい青色発光を示す。
【0011】
したがって、金属フッ素化ピラゾレート錯体の金属原子に多様な配位子を有して、青色以外の波長領域で優れた発光特性を有する化合物への要求が続いている。
【非特許文献1】Baldo,et al.,Phys.Rev.B,1999,60,14422
【非特許文献2】Baldo,et al.,Nature,Vol.395,151−154,1998
【非特許文献3】Mohammad A.Omary,InorgChem.,2003,42,8612
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする技術的課題は、黄色ないし赤色波長領域(560〜630nm)で効率的に発光できる多核銅錯体を提供することである。
【0013】
また、本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記多核銅錯体を採用した有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記技術的課題を達成するために、本発明は、下記化学式1で表示される多核銅錯体を提供する。
【0015】
【化1】

【0016】
前記式で、A及びBは、同一か、または異なり、それぞれヘテロ原子Xを含み、一つ以上の置換基を有するC−Cのヘテロ芳香族環基を示し、前記置換基は、C−C20のシクロアルキル基、C−C20のアリール基、C−C20のヘテロアリール基、シリル基、ボリル基及び正孔輸送成分(正孔輸送モイエティ;hole transporting moiety)からなる群から選択された一つ以上の基であり、(前記A及びBに含まれる)Xは、同一か、または異なり、それぞれN、P、SまたはOである。
【0017】
また、本発明では、下記化学式2または化学式3で表示される多核銅錯体を提供する。
【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
前記式で、
A及びBは、同一か、または異なり、それぞれヘテロ原子Xを含む置換または非置換のヘテロ芳香族環またはXに結合された置換または非置換の脂肪族または芳香族基であり、A及びBの置換基は、C−C20のシクロアルキル基、C−C20のアリール基、C−C20のヘテロアリール基、シリル基、ボリル基、及び正孔輸送成分(正孔輸送モイエティ;hole transporting moiety)からなる群から選択された一つ以上の基を示し、
(前記A及びBに含まれるまたは結合される)Xは、同一か、または異なり、それぞれN、P、SまたはOであり、
Yは、結合(bond)を示すか、または置換または非置換のC−C20のアルキレン基、置換または非置換のC−C20のアリーレン基、置換または非置換のC−C20のシクロアルキレン基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリーレン基、シリレン基及びボリレン基(borylene group)からなる群から選択されたいずれか一つの基であり、Yの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。
【0021】
【数1】

【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
【化11】

【0030】
【化12】

【0031】
【化13】

【0032】
【化14】

【0033】
上記式中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20のアルキル基、またはC−C20のアリール基であり、前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C10のアルコキシ基、置換または非置換のC−C20のアルケニル基、置換または非置換のC−C20のアルキニル基、置換または非置換のC−C20のヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40のアリール基、置換または非置換のC−C40のアリールアルキル基、置換または非置換のC−C40のアルキルアリール基、置換または非置換のC−C40のヘテロアリール基、及び置換または非置換のC−C40のヘテロアリールアルキル基のうちから選択される基であり、Rの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。前記R11、R12、R13、R14、R15ないしR16が、前記Rを2以上有する基である場合には、これらのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
前記化学式1の化合物は、下記化学式15および化学式16の化合物のうちいずれか一つでありうる。
【0035】
【化15】

【0036】
【化16】

【0037】
【数2】

【0038】
【化17】

【0039】
【化18】

【0040】
【化19】

【0041】
上記式中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20のアルキル基、またはC−C20のアリール基であり、前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C10のアルコキシ基、置換または非置換のC−C20のアルケニル基、置換または非置換のC−C20のアルキニル基、置換または非置換のC−C20のヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40のアリール基、置換または非置換のC−C40のアリールアルキル基、置換または非置換のC−C40のアルキルアリール基、置換または非置換のC−C40のヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40のヘテロアリールアルキル基のうちから選択される基であり、前記Rの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。また、前記Rを2以上有する置換基の場合には、これらのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
前記化学式2の化合物は、下記化学式20〜化学式22の化合物のうちいずれか一つでありうる。
【0043】
【化20】

【0044】
【化21】

【0045】
【化22】

【0046】
前記化学式3の化合物は、下記化学式23〜化学式25の化合物のうちいずれか一つでありうる。
【0047】
【化23】

【0048】
【化24】

【0049】
【化25】

【0050】
前記他の技術的課題を達成するために本発明は、一対の電極の間に有機膜を含む有機EL素子において、前記有機膜が前記の多核銅錯体を含む有機EL素子を提供する。
【発明の効果】
【0051】
本発明による多核銅錯体は、黄色ないし赤色波長領域(560〜630nm)の光を効率的に発光でき、このような多核銅錯体は、有機EL素子の有機膜形成時に利用でき、高効率の燐光材料として黄色ないし赤色波長領域(560〜630nm)で発光するだけでなく、緑色発光物質または青色発光物質と共に使用して白色光を発光することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0053】
本発明は、下記化学式1ないし下記化学式3の多核銅錯体を提供するところ、このような構造の多核銅錯体は、金属ピラゾレート配位子を有し、ピラゾールの優れた電子輸送能力によって素子の性能が向上し、銅原子に置換(配位)されたヘテロ芳香族環基によって電荷輸送能力に優れている。
【0054】
【化26】

【0055】
前記式で、A及びBは、同一か、または異なり、それぞれヘテロ原子Xを含み、一つ以上の置換基を有するC−Cのヘテロ芳香族環基を示し、前記置換基は、C−C20のシクロアルキル基、C−C20のアリール基、C−C20のヘテロアリール基、シリル基、ボリル基及び正孔輸送成分(正孔輸送モイエティ)からなる群から選択された一つ以上の基であり、(前記A及びBに含まれる)Xは、同一か、または異なり、それぞれN、P、SまたはOである。
【0056】
前記式で、“C−Cのヘテロ芳香族環基”という用語は、単一芳香族環のみならず、接合環(fused ring)を有するC−Cのヘテロ芳香族環を含む。例えば、C−Cのヘテロ芳香族環基は、ピリジル基またはピロリル基だけでなく、キノリル基(すなわち、接合されたベンゼン環を有するピリジン類似体残基)またはインドリル基(すなわち、接合されたベンゼン環を有するピロール類似体残基)を含む。なお、キノリル基(すなわち、接合されたベンゼン環を有するピリジン類似体残基(ピリジル基))やインドリル基(すなわち、接合されたベンゼン環を有するピロール類似体残基(ピロリル基))等は、一つ以上の置換基として「接合されたベンゼン環」を有するものである。即ち、キノリル基やインドリル基は、C−C(炭素数2〜6)のヘテロ芳香族環基であるピリジル基やピロリル基に、置換基として「接合されたベンゼン環」を有するものであり、“一つ以上の置換基を有するC−Cのヘテロ芳香族環基”に含まれる。
【0057】
【化27】

【0058】
【化28】

【0059】
前記化学式2または化学式3で、A及びBは、同一か、または異なり、それぞれヘテロ原子Xを含む置換または非置換のヘテロ芳香族環またはXに結合された置換または非置換の脂肪族または芳香族基であり、A及びBの置換基は、C−C20のシクロアルキル基、C−C20のアリール基、C−C20のヘテロアリール基、シリル基、ボリル基、及び正孔輸送成分(正孔輸送モイエティ)からなる群から選択された一つ以上の基を示し、(前記A及びBに含まれるまたは結合される)Xは、同一か、または異なり、それぞれN、P、SまたはOであり、Yは、結合を示すか、または置換または非置換のC−C20のアルキレン基、置換または非置換のC−C20のアリーレン基、置換または非置換のC−C20のシクロアルキレン基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリーレン基、シリレン基及びボリレン基からなる群から選択されたいずれか一つの基であり、Yの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。
【0060】
前記化学式3の化合物において銅原子は、歪曲された平面三角形(distorted trigonal planar)構造の配位数が3である+1酸化状態にある。それぞれのCu(I)は、一つのイミダゾールの負に帯電したN、他の一つのイミダゾールの中性N及びXに配位している。
【0061】
【数3】

【0062】
【化29】

【0063】
【化30】

【0064】
【化31】

【0065】
【化32】

【0066】
【化33】

【0067】
【化34】

【0068】
【化35】

【0069】
【化36】

【0070】
【化37】

【0071】
【化38】

【0072】
【化39】

【0073】
上記式中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20のアルキル基、またはC−C20のアリール基であり、
前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C10のアルコキシ基、置換または非置換のC−C20のアルケニル基、置換または非置換のC−C20のアルキニル基、置換または非置換のC−C20のヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40のアリール基、置換または非置換のC−C40のアリールアルキル基、置換または非置換のC−C40のアルキルアリール基、置換または非置換のC−C40のヘテロアリール基、及び置換または非置換のC−C40のヘテロアリールアルキル基のうちから選択される基であり、Rの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。前記R11、R12、R13、R14、R15ないしR16が、前記Rを2以上有する基である場合には、これらのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0074】
前記化学式1の化合物は、下記化学式15および化学式16の化合物のうちいずれか一つでありうる。
【0075】
【化40】

【0076】
【化41】

【0077】
【数4】

【0078】
【化42】

【0079】
【化43】

【0080】
【化44】

【0081】
上記式中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20のアルキル基、またはC−C20のアリール基であり、
前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C10のアルコキシ基、置換または非置換のC−C20のアルケニル基、置換または非置換のC−C20のアルキニル基、置換または非置換のC−C20のヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40のアリール基、置換または非置換のC−C40のアリールアルキル基、置換または非置換のC−C40のアルキルアリール基、置換または非置換のC−C40のヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40のヘテロアリールアルキル基のうちから選択される基であり、前記Rの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。
【0082】
前記化学式2の化合物は、下記化学式20〜化学式22の化合物のうちいずれか一つでありうる。
【0083】
【化45】

【0084】
【化46】

【0085】
【化47】

【0086】
前記化学式3の化合物は、下記化学式23〜化学式25の化合物のうちいずれか一つでありうる。
【0087】
【化48】

【0088】
【化49】

【0089】
【化50】

【0090】
前記化学式1〜化学式3でA及びBが有しうる置換基は、C−C20のシクロアルキル基として、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基などがあり、C−C20のアリール基として、フェニル基、1,3−ベンゾジオキソール基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基などがあり、C−C20のヘテロアリール基として、チエニル基、チオフェニル基、フラン2(5H)−フラノン基、ピリジル基、ジヒドロピリジル基、フリル基、ピロリル基、クマリン基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、ピリミジニル基、テトラヒドロピリミジニル基、フロピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、2−フェニルピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、1−フェニルピラゾリル基、1−ナフチルピラゾリル基、5−(4−メトキシフェニル)ピラゾリル基、2,5−ビスフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル基、2,3−ベンゾフラニル基、2−(4−ビフェニル)−6−フェニルベンゾオキサゾリル基、イミダゾリジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、1H−インダゾリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、プテリジニル基、ピラニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、チアジアゾリル基、オキサジアゾリル基、キノリジニル基、ベンズイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾフラニル基、ナフチリジニル基、1,2−ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、オキサゾロピリジル基、イソチアゾロピリジル基、ベンゾチエニル基などが挙げられる。
【0091】
前記化学式1〜化学式3でA及びBが有しうる置換基のうち、シリル基としては、トリアリールシリル基、トリアルキルシリル基などが挙げられ、ボリル基としては、ジアルキルボリル基、ジアリールボリル基、ジフルオロボリル基、ジフルオロヘテロアリールボリル基などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0092】
前記化学式1〜化学式3でA及びBが有しうる置換基のうち、正孔輸送成分(正孔輸送モイエティ)としては、キノリル基、置換キノリル基、イミダゾリル基、置換イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、置換ベンズイミダゾリル基、トリアゾリル基、置換トリアゾリル基、オキサゾリル基、置換オキサゾリル基、1,10−フェナントロリル基、置換1,10−フェナントロリル基、キノキサリニル基、置換キノキサリニル基などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0093】
前記化学式2または化学式3でA及びBのXに結合される脂肪族または芳香族基は、C−C20のアルキル基、C−C20のアリール基、C−C20のヘテロアリール基、C−C20のシクロアルキル基などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。これらのうち、C−C20のアリール基、C−C20のヘテロアリール基、C−C20のシクロアルキル基の具体例としては、前記化学式1〜化学式3でA及びBが有しうる置換基として例示したものなどが挙げられるが、それらに何ら制限されるものではない。C−C20のアルキル基としては、n−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−2−エチルプロピル基等を挙げることができる。
【0094】
また、前記化学式2または化学式3でA及びBのXを含む置換または非置換のヘテロ芳香族環基は、前記化学式1で説明したヘテロ芳香族環基、及び一つ以上の置換基を有するC−Cのヘテロ芳香族環基などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0095】
前記化学式2または化学式3のYのうち、C−C20のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、エイルメチレン基などがあり、C−C20のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基などがあり、C−C20のシクロアルキレン基としては、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘプチレン基などがあり、C−C20のヘテロアリーレン基としては、例えば、チエニレン基、チオフェニレン基、ピリジレン基、ジヒドロピリジレン基、フリレン基、ピロリレン基、イミダゾリレン基、ピラゾリレン基、オキサゾリレン基、イソキサゾリレン基、チアゾリレン基、イソチアゾリレン基、イソキサゾリレン基、ピリミジニレン基、テトラヒドロピリミジニレン基、フロピリミジニレン基、ピラジニレン基、ピリダジニレン基、2−フェニルピリジレン基、2−ベンゾチアゾリレン基、2−ベンゾオキサゾリレン基、1−フェニルピラゾリレン基、1−ナフチルピラゾリレン基、5−(4−メトキシフェニル)ピラゾリレン基、2,5−ビスフェニル−1,3,4−オキサジアゾリレン基、2,3−ベンゾフラニレン基、2−(4−ビフェニル)−6−フェニルベンゾオキサゾリレン基、イミダゾリジニレン基、インドリレン基、キノリレン基、イソキノリレン基、プリニレン基、1H−インダゾリレン基、キナゾリニレン基、シンノリニレン基、キノキサリニレン基、フタラジニレン基、プテリジニレン基、ピラニレン基、ベンゾフリレン基、ベンゾチエニレン基、トリアゾリレン基、テトラゾリレン基、チアジアゾリレン基、オキサジアゾリレン基、キノリジニレン基、ベンズイミダゾリレン基、イミダゾピリジレン基、ベンゾフラニレン基、ナフチリジニレン基、1,2−ベンゾイソキサゾリレン基、ベンゾオキサゾリレン基、ベンゾチアゾリレン基、オキサゾロピリジレン基、イソチアゾロピリジレン基、ベンゾチエニレン基などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0096】
前記化学式2または化学式3のYのうち、シリレン基としては、トリアリールシリレン基、トリアルキルシリレン基などが挙げられ、ボリレン基としては、ジアルキルボリレン基、ジアリールボリレン基、ジフルオロボリレン基、ジフルオロヘテロアリールボリレン基などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0097】
前記化学式2または化学式3でYが有しうる置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。これらの置換基に関しては、前記化学式1〜化学式3でA及びBが有しうる置換基、または以下で説明するR11、R12、R13、R14、R15、R16、及びRで説明するものが例示できる。
【0098】
前記化学式4〜化学式14、化学式17〜化学式19のR11、R12、R13、R14、R15及びR16のうち、C−C20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−2−エチルプロピル基などであり、C−C20のアリール基としては、例えば、フェニル基、1,3−ベンゾジオキソール基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基などを挙げることができる。
【0099】
前記R11、R12、R13、R14、R15及びR16で規定されているRのうち、C−C20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−2−エチルプロピル基などであり、C−C20のアリール基としては、例えば、フェニル基、1,3−ベンゾジオキソール基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基などを挙げることができる。C−C10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基などが挙げられる。
【0100】
前記Rのうち、C−C20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、1−メチルビニル基、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基、1−メチルペンテニル基、3−メチルペンテニル基、1−エチルビニル基、1−エチルプロペニル基、1−エチルブテニル基、3−エチルブテニル基などであり、C−C20のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ブチニル基、2−ペンチニル基、1−メチルエチニル基、3−メチル−1−プロピニル基、3−メチル−1−ブチニル基などがあり、C−C20のヘテロアルキル基は、前記C−C20のアルキル基に存在する一つ以上の炭素原子がN、O、S、またはPに置換されたものである。
【0101】
前記Rのうち、C−C40のアリール基としては、例えば、フェニル基、1,3−ベンゾジオキソール基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基などがあり、C−C40のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル基などのフェニルアルキル基;ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基、1−ナフチルプロピル基、2−ナフチルプロピル、3−ナフチルプロピル基などナフチルアルキル基などがあり、C−C40のアルキルアリール基としては、例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基などが挙げられる。
【0102】
前記Rのうち、C−C40のヘテロアリール基は、前記化学式1〜化学式3でA及びBが有しうる置換基のC−C40のヘテロアリール基と同様のものが用いられる。
【0103】
−C40のヘテロアリールアルキル基としては、そのヘテロアリール部は上記ヘテロアリール基と同様であり、そのアルキル部は好ましくは炭素数3〜40の直鎖状または分枝鎖状である、2−ピロリルメチル基、2−ピリジルメチル基、3−ピリジルメチル基、4−ピリジルメチル基、2−チエニルメチル基、2−(2−ピリジル)エチル基、2−(3−ピリジル)エチル基、2−(4−ピリジル)エチル基、3−(2−ピロリル)プロピル基などが挙げられる。
【0104】
前記Rが有しうる置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。これらの置換基に関しては、前記化学式1〜化学式3でA及びBが有しうる置換基、または前記R11、R12、R13、R14、R15、R16、及びRで説明したものが例示できる。
【0105】
本発明による前記化学式1で表示される多核銅錯体は、下記化学式26の{[3,5−CFPz}−Cu}とヘテロ芳香族環化合物とを反応させて製造できる。
【0106】
【化51】

【0107】
化学式1の代表的な化合物の製造方法は、下記反応式1に示す通りである。
【0108】
{[3,5−CFPz}−Cu[ジエチルピリジルボラン}の製造
【0109】
【化52】

【0110】
前記反応は、ベンゼンなどの溶媒中で1:3のモル比で24〜48時間、25〜40℃の反応温度で行われうる。
【0111】
本発明による前記化学式2または化学式3で表示される多核銅錯体は、前記化学式26の{[3,5−CFPz}−Cu}と下記化学式27の化合物とを反応させて製造できる。
【0112】
【化53】

【0113】
前記化学式でA、B、X及びYは、前記化学式2または化学式3で定義した通りである。
【0114】
前記化学式2または化学式3の化合物は、原子価異性体であって、前記反応を通じて共に得られる。このように、二つの化合物が共に得られる理由は、反応に使われる溶媒が2次原子価を2から3にクロスオーバーすることが可能であるためである。
【0115】
前記化学式2または化学式3の代表的な化合物の製造方法は、下記反応式2に示す通りである。
【0116】
{[3,5−CFPz}−Cu[4−(2−イソキノリル)ビフェニルジトルイルアミン]}の製造
【0117】
【化54】

【0118】
前記反応は、ベンゼンなどの溶媒中で化学式26の化合物と化学式27の化合物とを2:3のモル比で24〜48時間、25〜40℃の反応温度で行われうる。かかる反応条件では、化学式2の化合物が化学式3の化合物よりさらに優勢に生成されうる。
【0119】
本発明による有機EL素子は、化学式1ないし化学式3で表示される多核銅錯体を利用して有機膜、特に、発光層を形成して製作される。このとき、前記化学式1ないし化学式3で表示される多核銅錯体は、発光層の形成物質である燐光ドーパント材料として非常に有用であり、黄色ないし赤色波長領域(560ないし630nm)で優れた発光特性を示す。
【0120】
前記化学式1ないし化学式3で表示される多核銅錯体を燐光ドーパントとして使用する場合、有機膜が1種以上の高分子ホスト、高分子と低分子との混合物ホスト、低分子ホスト、及び非発光高分子マトリックスからなる群から選択された一つ以上をさらに含むことができる。ここで、高分子ホスト、低分子ホスト、及び非発光高分子マトリックスとしては、有機EL素子用の発光層形成時に一般的に使われるものであれば、いずれも使用可能である。高分子ホストの例としては、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリフルオレンなどがあり、低分子ホストの例としては、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、4,4’−ビス[9−(3,6−ビフェニルカルバゾリル)]−1−1,1’−ビフェニル{4,4’−ビス[9−(3,6−ビフェニルカルバゾリル)]−1−1,1’−ビフェニル}、9,10−ビス[(2’、7’−t−ブチル)−9’,9”−スピロビフルオレニルアントラセン、テトラフルオレンなどがあり、非発光高分子マトリックスの例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0121】
前記化学式1ないし化学式3で表示される多核銅錯体の含有量は、有機膜、例えば発光層の形成材料の総重量100重量部を基準として、1ないし30重量部であることが望ましい。1重量部未満である場合には、発光物質が不足して効率及び寿命が低下して望ましくなく、30重量部を超過する場合には、三重項の消光現象が起こって、効率が低下して望ましくない。そして、このような有機金属錯体を発光層に導入しようとする場合には、真空蒸着法、スパッタリング法、プリンティング法、コーティング法、インクジェット方法などを利用できる。
【0122】
また、前記化学式1ないし化学式3で表示される多核銅錯体は、緑色発光物質または青色発光物質と共に使用して白色光を発光できる。
【0123】
図1A〜図1Fは、本発明の望ましい一実施形態による有機EL素子の積層構造を概略的に示す図である。
【0124】
図1Aを参照すれば、第1電極10の上部に前記化学式1ないし化学式3の多核銅錯体を含む発光層12が積層され、前記発光層12の上部には第2電極14が形成されている。
【0125】
図1Bを参照すれば、第1電極10の上部に前記化学式1ないし化学式3の多核銅錯体を含む発光層12が積層され、前記発光層12の上部に正孔抑制層(HBL)13が積層されており、その上部には第2電極14が形成されている。
【0126】
図1Cの有機EL素子は、第1電極10と発光層12との間に正孔注入層(HIL)11が形成されていることを除いては、図1Bの場合と同様の積層構造を有する。
【0127】
図1Dの有機EL素子は、発光層12の上部に形成された正孔抑制層(HBL)13の代りに、電子輸送層(ETL)15が形成されていることを除いては、図1Cの場合と同様の積層構造を有する。
【0128】
図1Eの有機EL素子は、化学式1ないし化学式3の多核銅錯体を含む発光層12の上部に形成された正孔抑制層(HBL)13の代りに、正孔抑制層(HBL)13と電子輸送層15とが順次に積層されている2層膜を使用することを除いては、図1Cの場合と同様の積層構造を有する。場合によっては、図1Eの有機EL素子で電子輸送層15と第2電極14との間には、電子注入層がさらに形成されることもある。
【0129】
図1Fの有機EL素子は、正孔注入層11と発光層12との間に正孔輸送層16をさらに形成したことを除いては、図1Eの有機EL素子と同様の構造を有している。このとき、正孔輸送層16は、正孔注入層11から発光層12への不純物の侵入を抑制する役割を果たす。
【0130】
前記の積層構造を有する有機EL素子は、一般的な製作方法によって形成可能であり、その製作方法が特別に限定されるものではない。
【0131】
ここで、前記有機膜の厚さは、30〜100nmであることが望ましい。前記有機膜の厚さが30nm未満であれば、効率及び寿命が低下し、100nmを超過すれば、駆動電圧が上昇して望ましくない。
【0132】
一方、前記有機膜としては、発光層の以外にも電子輸送層、正孔輸送層のように有機EL素子で一対の電極間に形成される有機化合物からなる膜を指摘する。
【0133】
前記有機EL素子では、各層の間にバッファ層が形成され、このようなバッファ層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、銅フタロシアニン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、またはこれらの誘導体を使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
前記正孔輸送層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、例えば、TPD(N,N’−bis−(3−methylphenyl)−N,N’−bis−(phenyl)−benzidine)、NPD(N,N’−di(naphthalenyl−1−yl)−N,N’−diphenyl−benzidine)、mCP(1,3−bis(carbazol−9−yl)−benzene)、TCP(1,3,5−tris−(carbazol−9−yl)−benzene)、m−MTDATA(4,4’4”−tris−(N−3methylphenyl−N−phenyl amino)−triphenylamine、TCTA(4,4’4”−tris−(carbazol−9−yl)−triphenylamine)、ポリトリフェニルアミンなどを挙げることができ、望ましくは、ポリトリフェニルアミンを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0135】
前記電子輸送層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、例えば、PBD(2−(4−biphenylyl)−5−(4−tert−butylphenyl)−1,3,4−oxadiazole、TPBI(2,2’,2”−(1,3,5−benzenetriyl)−tris−(1−phenyl−1−H−benzimidazole)、BCP(2,9−dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline)、BPhen(4,7diphenyl−1,10−phenanthroline)、BAlQ(Bis−2−methyl−8−quinolinolato)4−(phenylphenolato)Aluminium)、ポリオキサジアゾールなどを挙げることができ、望ましくは、ポリオキサジアゾールを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0136】
前記正孔抑制(遮断)層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、LiF、BaFまたはMgFなどを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
前記正孔注入層の素材としては通常、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、スターバース型トアミン誘導体類であるTCTA、m−MTDATA、m−MTDAPB、溶解性のある伝導性高分子であるPani/DBSA(Polyaniline/Dodecylbenzenesulfonic acid:ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)またはPEDOT/PSS(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/Poly(4−styrenesulfonate):ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホン酸))、Pani/CSA(Polyaniline/Camphorsulfonicacid:ポリアニリン/カンファースルホン酸)、及びPANI/PSS(Polyaniline)/Poly(4−styrenesulfonate):ポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホン酸))を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0138】
前記電子注入層の素材としては通常、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、LiF、NaCl、CsF、LiO及びBaOを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0139】
本発明の有機EL素子の製作は、特別の装置や方法を必要とせず、通常の発光材料を利用した有機EL素子の製作方法によって製作可能である。
【0140】
前記本発明による化学式1ないし化学式3の多核銅錯体は、約560〜630nmで発光できる。このような多核銅錯体を利用した発光ダイオードは、フルカラー表示用の光源照明、バックライト、屋外掲示板、光通信、内部装飾などに使用可能である。
【実施例】
【0141】
以下、本発明を下記実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明が下記実施例のみに限定されるものではない。
【0142】
参考例1:[3,5(CFPz]Cuの製造
【0143】
【化55】

【0144】
ベンゼン20ないし30mLに0.40g(1.90mmole)のCuO及び1g(4.9mmole)の3,5−トリフルオロメチルピラゾールを添加し、48〜72時間60℃で反応させた。反応混合物を冷却させた後に、低圧で濾過して溶媒を蒸発させた。生成された白色粉末をベンゼンとヘキサンとの混合物で再結晶した。
【0145】
H NMR CDCl:ppm 6.97(s,1H,CH),13.07−11.23(broad、NH)
実施例1:化学式22及び化学式25で表示される化合物の合成
{[3,5−CFPz}−Cu[4−(2−イソキノリル)ビフェニルジトルイルアミン]}
【0146】
【化56】

【0147】
前記参考例1で得た{3,5−(CFPz}−Cu}0.16g(0.2mmol)をイソキノリルビフェニルジトルイルアミン0.111g(0.3mmol)とベンゼン30mL中で48時間反応させた。反応が終了した後、反応液をセリット濾過してヘキサンに沈殿させて、前記化学式22及び化学式25の緑黄色固体化合物を得た。緑黄色粉末をヘキサンで数回洗浄し、最後にベンゼンとヘキサン溶液で再沈殿させた。前記最終目的物の構造は、H NMRスペクトルを通じて分析して確認し、その結果は図3に示した。図3において(a)は、化学式22及び化学式25の多核銅錯体に該当し、(b)は、イソキノリルビフェニルジトルイルアミンのNMRスペクトルである。前記二つのNMRスペクトルを比較した結果、ピラゾールに該当するピークが(a)で観察されたので、化学式22及び化学式25の化合物が生成されたことを確認することができる。
【0148】
H NMR CDCl:ppm 8.37(s,1H),8.26(d,1H),8.18(d,1H),8.08(d,1H),7.94(d,1H),7.85(d,1H),7.75(t,1H),7.68(d,1H),7.57(dd、4H),7.2−7.04(m、10H),7.03(s、2H)
19F NMR CDCl:ppm−61.23
前記NMRデータは、前記二つの構造の生成可能性を示す。前記二つの構造は、原子価異性体である。溶媒が、第1構造のうちCu(I)の第2原子価2が第2構造のうち第2原子価3にクロスオーバーすることを助けるので、前記二つの構造が溶液に存在することができる。
【0149】
実施例2:化学式16で表示される化合物{[3,5−CFPz}−Cu[ジエチルピリジルボラン]}の合成
【0150】
【化57】

【0151】
前記参考例1で得た{3,5−(CFPz}−Cu}0.160g(0.2mmol)をジエチルボリルピリジン0.177g(1.2mmol)とベンゼン30mL中で48時間反応させた。反応が終了した後、反応液をセリット濾過してヘキサンに沈殿させて、前記化学式16の無色固体の化合物を得た。無色粉末をヘキサンで数回洗浄し、最後にベンゼンとヘキサンの溶液で再結晶した。前記最終目的物の構造は、H NMRスペクトルを通じて分析して確認した。
【0152】
H NMR CDCl:ppm 8.66(s,1H),8.50(d,1H),7.7(d,1H),7.2(t,1H),1.2(m,4H),0.30(m,6H)
19F NMR CDCl:ppm−61.30
実施例3:化学式21及び化学式23{[3,5−CFPz}−Cu}[1,4−ビス(2−イソキノリル)ベンゼン]で表示される化合物の合成
【0153】
【化58】

【0154】
前記参考例1で得た{3,5−(CFPz}−Cu}0.160g(0.2mmol)をフェニルジイソキノリン0.1g(0.3mmol)とベンゼン30mL中で48時間反応させた。反応が終了した後、反応液をセリット濾過してヘキサンに沈殿させて、前記化学式21及び化学式23の黄色固体化合物を得た。得た黄色粉末をヘキサンで洗浄し、最後にベンゼンとヘキサンの溶液で再沈殿させた。前記最終目的物の構造は、H NMRスペクトル及び質量分析スペクトルを通じて分析して確認し、その結果は図9及び図10に示した。図9において、フェニルジイソキノリン(図9中、P(IQ)2と表記した)に該当するピークの以外にピラゾールに該当するピークが観察されたので、化学式21及び化学式23の化合物が生成されたことを確認することができる。
【0155】
H NMR CDCl:ppm8.61(d,1H),8.20(d,1H),8.03(d,1H),7.94−7.83(m、2H),7.68(t,1H),7.58(s、2H),6.6(s,1H)
19F NMR CDCl:ppm−61.00
前記NMRデータは、前記二つの構造の生成可能性を示す。しかし、低温でベンゼン溶液から遅い蒸発によって得られた単一結晶から得た化合物の結晶構造は、第2構造の生成を示す。これは、図12にORTEP図で示した。
【0156】
実施例4:化学式20及び化学式24に該当する化合物{[3,5−CFPz}−Cu}[1,4−ビス(2−キノリル)ベンゼン]の合成
【0157】
【化59】

【0158】
前記参考例1で得た{3,5−(CFPz}−Cu}0.160g(0.2mmol)をフェニルジイソキノリン0.1g(0.3mmol)とベンゼン30mL中で48時間反応させた。反応が終了した後、反応液をセリット濾過してヘキサンに沈殿させて、前記化学式20及び化学式24の黄色固体化合物を得た。得た黄色固体は、ヘキサンで数回洗浄し、最後にベンゼンとヘキサン溶液で再沈殿させた。
【0159】
実施例5:化学式15で表示される化合物{[3,5−CFPz}Cu[4−(2−イソキノリル)ビフェニルジトルイルアミン]の合成
【0160】
【化60】

【0161】
前記参考例1で得た{3,5−(CFPz}−Cu}0.16g(0.2mmol)をイソキノリルビフェニルジトルイルアミン0.222g(0.6mmol)とベンゼン30ml中で48時間反応させた。反応が終了した後、反応液をセリット濾過してヘキサンに沈殿させて、前記化学式15の緑黄色固体化合物を得た。得た緑黄色粉末をヘキサンで数回洗浄し、最後にベンゼンとヘキサン溶液で再沈殿させた。前記最終目的物の構造は、H NMRスペクトルを通じて分析して確認した。
【0162】
H NMR CDCl:ppm 8.27(s,1H),8.26(d,1H),8.18(d,1H),8.08(d,1H),7.94(d,1H),7.82(d,1H),7.75(t,1H),7.61(d,1H),7.47(dd,4H),7.0−6.89(m,10H),6.79(s,1H)
19F NMR CDCl:ppm−61.15
前記実施例1ないし4で得た化合物の発光特性は、前記化合物を塩化メチレンに溶解して10−4M溶液にした後、溶液状態での発光特性を調べ、ニート(neat)フィルム上に前記化合物をスピンコーティングして、フィルム状態での発光特性を調べた。
【0163】
前記実施例1ないし4から得た化合物の発光特性及び色座標(CIE)特性を整理して下記表1A、Bに示し、これらのうち、実施例1及び3で得た化合物の発光特性を図5及び図8に示した。
【0164】
【表1A】

【0165】
【表1B】

【0166】
前記表1A、Bから、本発明による多核銅錯体から優れた燐光特性を有するドーパントが形成され、黄色ないし赤色領域(560〜630nm)で発光する燐光材料に適しているということが分かる。
【0167】
特に、前記実施例1及び3で得られた多核銅錯体の熱重量測定分析を行った結果を図4及び図7に示すところ、これらの分解温度が210℃または265℃に該当して熱的安定性に優れていることが分かる。
【0168】
有機EL素子の製作
実施例6
ITOがコーティングされた透明電極基板をきれいに洗浄した後、ITOを感光性樹脂とエッチング液を利用してパターニングしてITO電極パターンを形成し、これをさらにきれいに洗浄した。このように洗浄した結果物上にPEDOT{ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン[CH8000]}を約50nmの厚さでコーティングした後、120℃で約5分間ベークして正孔注入層を形成した。
【0169】
前記正孔注入層の上部に、クロロホルム中のドーパント(前記実施例1で得た多核銅錯体)を発光層形成材料(ドーパント+ホスト)の総重量100重量部を基準として8重量部とホスト(mHost5:PBD:TPD=12:8:3(質量比))をスピンコーティングし、100℃で1時間ベーク処理した後、真空オーブン内で溶媒を完全に除去して厚さ50nmの発光層を形成した。
【0170】
次いで、前記高分子発光層の上部に真空蒸着器を利用して真空度を4×10−6torr以下に維持しながら、TPBIを真空蒸着して45nm厚さの電子輸送層を形成した後、その上部にLiFを0.1/secの速度で真空蒸着して0.8nm厚さの電子注入層を形成した。
【0171】
次いで、Alを10Å/secの速度で蒸着して、150nm厚さのアノードを蒸着して封止することで有機EL素子を完成した。このとき、封止過程は、乾燥した窒素ガス雰囲気下のグローブボックスでBaO粉末を入れて金属缶で密封した後、UV硬化剤で最終処理する過程を通じて行われた。
【0172】
前記EL素子は、多層型素子であって、概略的な構造は図2に示す通りであり、発光面積は6mmであった。
【0173】
実施例7
実施例1で得た多核銅錯体の代わりに実施例3で得た多核銅錯体を使用したことを除いては、実施例6と同様にEL素子を製作した。
【0174】
実施例6及び7で得られた有機EL素子の電界発光特性、色座標(CIE)、電流効率、駆動電圧、輝度特性を下記表2に示した。
【0175】
【表2】

【0176】
前記表2から、本発明による実施例1及び実施例3で得た多核銅錯体を採用する実施例6及び実施例7の電界発光素子は、黄色ないし赤色領域(560〜630nm)で高い輝度を示し、低い電圧でも駆動が可能であり、低い電圧でも高い電流密度を示すことが分かる。
【0177】
前記実施例6及び実施例7で製作された有機EL素子の波長によるEL発光特性の変化及び電圧による電流密度変化を、図6及び図11にさらに具体的に示した。本発明の化合物(多核銅錯体)をドーパントとして使用する場合、これらの特性がいずれも改善されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明は、有機EL素子関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1A】本発明の一具現例による有機EL素子の積層構造を概略的に示す図である。
【図1B】本発明の一具現例による有機EL素子の積層構造を概略的に示す図である。
【図1C】本発明の一具現例による有機EL素子の積層構造を概略的に示す図である。
【図1D】本発明の一具現例による有機EL素子の積層構造を概略的に示す図である。
【図1E】本発明の一具現例による有機EL素子の積層構造を概略的に示す図である。
【図1F】本発明の一具現例による有機EL素子の積層構造を概略的に示す図である。
【図2】本発明によって製造された有機EL素子の一具現例を示す図である。
【図3】実施例1で得られた発光多核銅錯体(a)及びイソキノリンフェニルトリフェニルアミン(b)のNMRスペクトルである。
【図4】実施例1で得られた発光多核銅錯体の熱重量分析結果を示すグラフである。
【図5】実施例1で得られた発光多核銅錯体の吸光スペクトル、PLスペクトル及びPLEスペクトルである。
【図6】実施例1で得られた発光多核銅錯体を利用した有機EL素子のEL特性を示すグラフである。
【図7】実施例3で得られた発光多核銅錯体の熱重量分析結果を示すグラフである。
【図8】実施例3で得られた発光多核銅錯体の吸光スペクトル及びPLスペクトルである。
【図9】実施例3で得られた発光多核銅錯体のNMRスペクトルである。
【図10】実施例3で得られた発光多核銅錯体の質量分析スペクトルである。
【図11】実施例3で得られた発光多核銅錯体を利用した有機EL素子のEL特性を示すグラフである。
【図12】実施例3で得られた発光多核銅錯体のORTEP図である。
【符号の説明】
【0180】
10 第1電極、
11 正孔注入層、
12 発光層、
13 正孔抑制層、
14 第2電極、
15 電子輸送層、
16 正孔輸送層、
20 基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示される多核銅錯体:
【化1】

前記式で、
A及びBは、同一か、または異なり、それぞれヘテロ原子Xを含み、一つ以上の置換基を有するC−Cのヘテロ芳香族環基を示し、前記置換基は、C−C20のシクロアルキル基、C−C20のアリール基、C−C20のヘテロアリール基、シリル基、ボリル基及び正孔輸送モイエティからなる群から選択された一つ以上の基であり、
Xは、N、P、SまたはOである。
【請求項2】
下記化学式2または化学式3で表示される多核銅錯体:
【化2】

【化3】

前記式で、
A及びBは、同一か、または異なり、それぞれヘテロ原子Xを含む置換または非置換のヘテロ芳香族環またはXに結合された置換または非置換の脂肪族または芳香族基であり、A及びBの置換基は、C−C20のシクロアルキル基、C−C20のアリール基、C−C20のヘテロアリール基、シリル基、ボリル基、及び正孔輸送モイエティからなる群から選択された一つ以上の基を示し、
Xは、N、P、SまたはOであり、
Yは、結合を示すか、または置換または非置換のC−C20のアルキレン基、置換または非置換のC−C20のアリーレン基、置換または非置換のC−C20のシクロアルキレン基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリーレン基、シリレン基及びボリレン基からなる群から選択されたいずれか一つの基であり、Yの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。
【請求項3】
【数1】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

上記式中、
11、R12、R13、R14、R15及びR16は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20のアルキル基、またはC−C20のアリール基であり、
前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C10のアルコキシ基、置換または非置換のC−C20のアルケニル基、置換または非置換のC−C20のアルキニル基、置換または非置換のC−C20のヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40のアリール基、置換または非置換のC−C40のアリールアルキル基、置換または非置換のC−C40のアルキルアリール基、置換または非置換のC−C40のヘテロアリール基、及び置換または非置換のC−C40のヘテロアリールアルキル基のうちから選択される基であり、前記Rの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。
【請求項4】
前記化学式1の化合物が、下記化学式15および化学式16の化合物のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項1または3に記載の多核銅錯体。
【化15】

【化16】

【請求項5】
【数2】

【化17】

【化18】

【化19】

前記式中、
11、R12、R13、R14、R15及びR16は、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、−OR、−N(R)、−P(R)、−POR、−POR、−POR、−SR、−Si(R)、−B(R)、−B(OR)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO、−SO、−SOR、−SOR、−SOR、C−C20のアルキル基、またはC−C20のアリール基であり、
前記Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C20のアルキル基、置換または非置換のC−C10のアルコキシ基、置換または非置換のC−C20のアルケニル基、置換または非置換のC−C20のアルキニル基、置換または非置換のC−C20のヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C40のアリール基、置換または非置換のC−C40のアリールアルキル基、置換または非置換のC−C40のアルキルアリール基、置換または非置換のC−C40のヘテロアリール基及び置換または非置換のC−C40のヘテロアリールアルキル基のうちから選択される基であり、前記Rの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。
【請求項6】
前記化学式2の化合物が、下記化学式20〜化学式22の化合物のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項2または5に記載の多核銅錯体。
【化20】

【化21】

【化22】

【請求項7】
前記化学式3の化合物が、下記化学式23〜化学式25の化合物のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項2または5に記載の多核銅錯体。
【化23】

【化24】

【化25】

【請求項8】
【数3】

【化26】

【化27】

前記式で、
A及びBは、それぞれヘテロ原子Xを含み、一つ以上の置換基を有するC−Cのヘテロ芳香族環基を示し、前記置換基は、C−C20のシクロアルキル基、C−C20のアリール基、C−C20のヘテロアリール基、シリル基、ボリル基及び正孔輸送モイエティからなる群から選択された一つ以上の基であり、
Xは、N、P、SまたはOである。
【請求項9】
下記化学式26の{[3,5−CFPz}−Cu}を下記化学式27の化合物と反応させることを特徴とする下記化学式2または化学式3の多核銅錯体の製造方法:
【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

前記式で、
A及びBは、同一か、または異なり、それぞれヘテロ原子Xを含む置換または非置換のヘテロ芳香族環またはXに結合された置換または非置換の脂肪族または芳香族基であり、A及びBの置換基は、C−C20のシクロアルキル基、C−C20のアリール基、C−C20のヘテロアリール基、シリル基、ボリル基、及び正孔輸送モイエティからなる群から選択された一つ以上の基を示し、
Xは、N、P、SまたはOであり、
Yは、結合を示すか、または置換または非置換のC−C20のアルキレン基、置換または非置換のC−C20のアリーレン基、置換または非置換のC−C20のシクロアルキレン基、置換または非置換のC−C20のヘテロアリーレン基、シリレン基及びボリレン基からなる群から選択されたいずれか一つの基であり、Yの置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルキル基;非置換または−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のアルコキシ基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロアリール基;非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C20のシクロアルキル基;及び非置換またはC〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOまたは−OHに置換されたC〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択された一つ以上の基である。
【請求項10】
一対の電極の間に有機膜を含む有機電界発光素子において、
前記有機膜が、請求項1ないし請求項7のうちいずれか一項に記載の多核銅錯体を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項11】
前記有機膜が発光層であることを特徴とする請求項10に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
前記多核銅錯体の含有量が、発光層の形成材料の総重量100重量部を基準として1ないし30重量部であることを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
前記有機膜が、1種以上の高分子ホスト、高分子ホストと低分子ホストの混合物、低分子ホスト及び非発光高分子マトリックスからなる群から選択された一つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項14】
前記有機膜が、緑色発光物質または青色発光物質をさらに含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−308499(P2007−308499A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133519(P2007−133519)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】