説明

発光状態測定装置

【課題】指向性の狭い発光体の近傍に配置したカメラでその発光体全体を測定できる発光状態測定装置を提供する。
【解決手段】光変換手段11の凹面鏡14は発光体5の全体から射出された平行光を入射し、これを集光した後、再び平行光に戻して射出する。撮像手段12は、光変換手段11を介して発光体5を撮像し、解析手段13は撮像手段12が撮像した画像を解析して発光体5の各部の発光状態を検査する。光変換手段11を設けることで、レンズ開口が発光体5より小さい撮像手段12を用いて、発光体5の射出する平行光全体を平行光のまま受光して撮像できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED表示器や信号灯器などの発光体の発光状態を測定する発光状態測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のLED(発光ダイオード)素子を配列して構成された発光体の平均輝度や各部の輝度のばらつき(均整度)を測定するとき、従来は、測定器を1つ1つのLEDに近づけて測定する方法が採られていた。
【0003】
また、1回の測定で複数ポイントに対する輝度測定を可能とするために、測定対象を2次元のCCDカメラで撮像し、設定された複数の測定点について、その画素の階調データから輝度値を換算するようにした輝度測定装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−62219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くのLED素子を1つ1つ個別に測定すると、最初のLED素子を測定した時点と最後のLED素子を測定した時点との時間差が大きく、その間にLED素子の発光量が変化してしまうので、測定誤差が生じてしまう。また、LED素子の輝度を個別に測定すると、発光体全体としての輝度のばらつき(均整度)やLED素子の位置ずれなどを判定できなかった。さらに、個々のLED素子の指向性が狭い場合には、各LED素子を測定する際に測定器が僅かに傾くだけでも受光量が変化して測定誤差が生じやすかった。また、LED素子は発光面積が小さいので、測定位置の僅かな位置ずれが測定誤差につながっていた。
【0006】
これに対し、カメラで発光体を撮像して一度に複数ポイントを測定する方法は、測定時間が短縮されると共に、発光体全体における輝度均整度の測定にも適するなど、多くの利点を有している。しかし、図13に示すように、各LED素子201の指向性が狭い場合に測定用のカメラ202を発光体203の近くに設置すると、カメラレンズの正面に対して側方へ離れた位置にあるLED素子201aの指向性範囲からカメラレンズが外れてしまい、LED素子201aの射出する光がカメラレンズに入射しなくなってしまう。
【0007】
交通信号灯器のように発光体が大型の場合はこの現象が顕著になり、指向性の狭い発光体全体をカメラで撮像するためには、カメラを信号灯器の充分遠方に配置しなければならなかった。このような遠方への配置は、空気中での光の減衰のほか、途中の障害物を排除したり、測定のために広い場所を要したりするなどの問題があり、測定の精度や効率を低下させていた。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、指向性の狭い発光体の近傍に配置したカメラを用いて一度にその発光体の発光状態を広範囲に測定できる発光状態測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は以下に示す各構成の発明により達成される。
【0010】
請求項1に係わる発明は、所定方向から入射する平行光を集光した後、これを平行光に戻して射出するように入射光の光路を変換する光変換手段(11、31)と、
前記光変換手段(11、31)の入射部(14、34)前方の前記所定方向に配置された発光体(5)を、前記光変換手段(11、31)を介して撮像する撮像手段(12)と、
前記撮像手段(12)が撮像した画像から前記発光体(5)の各部の発光状態を解析する解析手段(13、33)と
を有する
ことを特徴とする発光状態測定装置である。
【0011】
上記発明によれば、光変換手段(11、31)は、発光体(5)の存する方向から入射する平行光を集光した後、平行光に戻して射出するので、光変換手段(11、31)を介して発光体(5)を見ると、発光体(5)が小さく縮小されたに等しくなる。したがって、撮像手段(12)で撮像可能な発光体(5)のサイズが光変換手段(11、31)を介することで実質的に大きくなり、発光体(5)と撮像手段(12)とを遠くに離さなくても、撮像手段(12)のレンズ開口より大きい発光体(5)の輝度を測定可能になる。発光状態とは、輝度のほか、発光体全体での平均輝度、測定範囲における輝度均整度、発光箇所の欠落や発光不良、光軸の傾きなどでもよい。
【0012】
請求項2に係わる発明は、前記光変換手段(11、31)の入射部(14、34)全体から前記所定方向に平行光を射出した場合にこの平行光が照射される範囲内を測定可能領域とする
ことを特徴とする請求項1に記載の発光状態測定装置である。
【0013】
上記発明によれば、入射部(14、34)の所定方向の真正面となる範囲内が測定可能領域になる。言い換えると、測定対象の発光体(5)と入射部(14、34)とを近づけて密着させた場合に、入射部(14、34)の中に収まる範囲が測定可能範囲になる。
【0014】
請求項3に係わる発明は、前記光変換手段(11)の入射部(14)を、測定対象の発光体(5)全体が前記測定可能領域に収まるように形成した
ことを特徴とする請求項2に記載の発光状態測定装置である。
【0015】
上記発明によれば、測定対象の発光体(5)と入射部(14)とを近づけて密着させた場合に、入射部(14)の中に発光体(5)全体が収まるように入射部(14)の大きさや形状が設定される。これにより、一度に発光体(5)全体を撮像することが可能になる。
【0016】
請求項4に係わる発明は、前記光変換手段(31)の入射部(34)を細長い帯状の形状にし、
前記帯状の入射部(34)に対応して前記発光体(5)上に形成される帯状の測定可能領域がその長手方向と異なる方向へ発光体(5)上で移動するように前記発光体(5)を前記光変換手段(31)に対して相対移動させる移動手段(37)を有し、
前記測定可能領域に対する測定を前記相対移動させながら繰り返すことで、2次元領域を測定する
ことを特徴とする請求項2に記載の発光状態測定装置である。
【0017】
上記発明によれば、細長い帯状形状の入射部(34)と発光体(5)とを相対移動させることで2次元領域に対する測定が行なわれる。移動方向は、測定可能領域と直交する方向が好ましい。
【0018】
請求項5に係わる発明は、前記発光体(5)は、複数の光源(7)を配列したものであり、
前記解析手段(13、33)は、前記撮像手段(12)が撮像した画像から明るさがしきい値以上の画素で構成される画像領域を抽出し、その特徴量が規定範囲にある画像領域を光源(7)に対応する明領域と判定し、各明領域の明るさからその明領域に対応する光源(7)の輝度を求める
ことを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の発光状態測定装置である。
【0019】
上記発明によれば、撮像手段(12)で撮像した画像の中で明るさがしきい値以上の画素で構成される画像領域であってその特徴量(面積や形状など)が規定範囲にあるものを光源(7)に対応する明領域と判定し、各明領域の明るさから各明領域に対応する光源(7)の輝度を求めている。明るさから輝度への換算は、たとえば、当該発光状態測定装置で輝度が既知の光源(7)を測定して画像の明るさと輝度との対応関係を実測することを、輝度を様々に変えて行ない、画像の明るさを輝度に変換する変換特性を予め求めておき、これを利用すればよい。また、面積や形状などの特徴量の規定範囲は、測定対象の光源(7)の形状や大きさ、光変換手段(11、31)での縮小率などに応じて適宜設定すればよい。
【0020】
請求項6に係わる発明は、複数の光源(7)の平均輝度と各光源(7)の輝度とを対比して、前記複数の光源(7)における輝度のばらつきを求める
ことを特徴とする請求項5に記載の発光状態測定装置である。
【0021】
請求項7に係わる発明は、前記発光体(5)は、複数の光源(7)を配列したものであり、
前記解析手段(13、33)は、前記撮像手段(12)が撮像した画像から明るさがしきい値以上の画素で構成される画像領域を抽出し、その特徴量が規定範囲にある画像領域を光源(7)に対応する明領域と判定し、各明領域の位置から光源(7)の位置ずれを判定する
ことを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の発光状態測定装置である。
【0022】
上記発明によれば、各光源(7)に相当する明領域を判定し、これら明領域の位置から光源(7)の位置ずれを判定する。たとえば、位置ずれがない適正状態において光源(7)が一定間隔で配列される場合には、相対位置の大小やばらつき具合から光源(7)の位置ずれを判定できる。また特定の配列パターンで光源(7)が配置されている場合には、その配列パターンと明領域の配列状態とを対比することで光源(7)の位置ずれを判定することができる。
【0023】
請求項8に係わる発明は、前記発光体(5)は各部から特定方向に平行光を射出するものである
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7に記載の発光状態測定装置である。
【0024】
上記発明によれば、測定対象の発光体(5)は指向性が狭く、各部から特定方向に平行光を射出する。平行光は広がらないので、発光体(5)の射出した光を受光するためには、発光体(5)が光を射出する方向の真正面に受光部が存在しなければならない。本発明の発光状態測定装置は、光変換手段(11、31)を介することで撮像手段(12)のレンズ開口より広い範囲を測定可能範囲にするので、このような発光体(5)の測定に好適である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係わる発光状態測定装置によれば、発光体の存する方向から入射する平行光を集光した後、平行光に戻して射出する作用を果たす光変換手段を介して発光体を撮像するので、撮像手段で撮像可能な範囲が実質的に大きくなり、発光体と撮像手段とを遠距離に配置しなくても、発光体を広範囲に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明に係わる発光状態測定装置10の概略構成を示している。
【0028】
発光状態測定装置10は、光変換手段11と、この光変換手段11を介して発光体5を撮像する撮像手段12と、撮像手段12が撮像した画像を解析する解析手段13とを備えている。
【0029】
測定対象の発光体5は、この例では、交通信号灯器であり、直径30cmほどの基板6に光源としてのLED素子7を多数配列したものである。各LED素子7は、指向性が狭く、ほぼ前方にのみ光を射出する。ここでは、半値角が±5度のLED素子を使用している。各LED素子7は同一方向に光を射出するように基板6に取り付けてあり、発光体5はLED素子7のある各部から特定方向(この例では正面)に平行光を射出するように構成されている。
【0030】
光変換手段11は、所定方向から入射する平行光を集光した後、これを平行光に戻して射出するように入射光の光路を変換する機能を果たす。具体的には、凹面鏡14と、反射鏡15と、凹レンズ16とから構成される。
【0031】
凹面鏡14は、光変換手段11の入射部を成し、入射した平行光を集光する機能を果たす。反射鏡15は凹面鏡14で反射され集光された光を凹レンズ16の存する方向へ反射する。凹レンズ16は反射鏡15からの光を平行光に戻して射出する機能を果たす。光変換手段11の構成はこれに限定されず、同様の機能を果たせばよい。たとえば、入射部を成す凸レンズと、この凸レンズで集光された光を平行光にして射出する凹レンズとを組み合わせた構成でもよい。
【0032】
光変換手段11と発光体5とは、発光体5の射出した平行光が光変換手段11の凹面鏡14に前記所定方向から入射するように位置決めされる。また、入射部を成す凹面鏡14の全体から発光体5の存する所定方向に平行光を射出した場合に、この平行光が照射される範囲内に発光体5の全体が収まるように設定してある。すなわち、発光体5の各LED素子7が正面に射出した平行光がすべて凹面鏡14へ入射するようになっている。言い換えると、そのような状態が形成されるように凹面鏡14の大きさ・形状を設定してある。
【0033】
撮像手段12は、2次元の画像を撮像可能なカメラである。ここでは、多数の画素を行列状に配列した2次元CCD(Charge Coupled Device)を受光素子に用いたカメラを使用している。撮像手段12は、入射部(凹面鏡14)全体から発光体5の存する所定方向に平行光を射出した場合に、この平行光が照射される範囲全体を撮像可能な範囲に含んでいる。したがって、撮像手段12は、光変換手段11を介して発光体5全体の画像を一度に撮像できるようになっている。撮像手段12は、各画素の明るさを複数階調で表わした画像データを出力する。ここでは、各画素を8ビット、256階調で表わした画像データが出力される。
【0034】
解析手段13は、撮像手段12が撮像した画像を解析して発光体5の各部の発光状態を解析する機能を果たす。なお、撮像手段12からアナログの画像信号を出力するようにし、解析手段13でこの画像信号をアナログ/デジタル変換してデジタルの画像データを得るように構成してもよい。
【0035】
光変換手段11を介して撮像手段12で発光体5を撮像すると、図2に示すように、発光体5を撮像手段12の無限遠に配置して撮像した場合とほぼ等価になる。すなわち、光変換手段11を設けることで、レンズ開口が発光体5より小さい撮像手段12を用いて、発光体5の射出する平行光全体を平行光のまま受光して、発光体5の全体を撮像することができる。
【0036】
図3は、撮像手段12で撮像した発光体5の画像を模擬的に示したものである。発光体5の全体が1枚の画像に収まっていると共に、各LED素子7に相当する画像領域7aは明るく、その他の部分は暗部(図中の斜線部)になっている。
【0037】
図4は、1つのLED素子7に相当する画像を拡大示したものである。格子のひとマスが1画素に対応している。LED素子7の中心に相当する部分が最も明るい画素(図中白色のマス目)となり、LED素子7の中心から離れるほど画素の明るさが低下している。
【0038】
図5は、各画素の明るさを輝度に換算するための変換特性の一例を示している。この変換特性Aは、輝度が既知の光源を発光状態測定装置10で撮像し、その光源の輝度と画素の明るさとの対応関係を調べることを、光源の輝度を変えて何度か繰り返すことで導出される。測定対象の発光体5を撮像して得た画像の中でLED素子7に相当する画素の明るさを調べ、これを図5の変換特性Aで輝度値に変換することで、発光体5の各LED素子7の輝度が測定される。また、こうして求めた各LED素子7の輝度を対比するなどにより、輝度のばらつきを測定できる。さらに、各LED素子7の相対的な位置関係を検査することで、LED素子7の取り付け位置の適否を判定したり、LED素子7の配列状態を既知の配列パターンと比較することで発光体5の種類を判定したりすることもできる。
【0039】
図6は、入射部を成す凹面鏡を細長い帯状形状にした光変換手段31を備えた発光状態測定装置30の構成を示している。基本的構成は発光状態測定装置10と同様であるが、光変換手段31の入射部として細長い帯状の形状を成した帯状凹面鏡34を備えている点と、測定対象の発光体5を移動させる移動手段として移動ステージ37を有する点などが相違する。なお、発光状態測定装置10と同一部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は省略する。
【0040】
光変換手段31は、光変換手段11と同様に、所定方向から帯状凹面鏡34に入射した平行光を集光した後、平行光に戻して射出する機能を果たす。移動ステージ37は、その載置面が前記所定方向と垂直になるように配置されており、移動ステージ37に発光体5を載置すると、発光体5の射出する平行光が帯状凹面鏡34へ前記所定方向から入射するように設定されている。
【0041】
光変換手段31は入射部を成す帯状凹面鏡34が細長い帯状を成しているので、測定可能領域の前記所定方向と直交する断面は帯状凹面鏡34と等しい帯状になる。移動ステージ37は、その載置面上でこの帯状の測定可能領域の長手方向と異なる方向(ここでは直交する方向)に移動する。なお、図6下部には、帯状凹面鏡34と発光体5と移動ステージ37とを、載置面の上方から見た状態を示してある。移動ステージ37は図中の矢印Bで示すように帯状凹面鏡34の長手方向と直交する方向に移動する。帯状凹面鏡34の長さ(測定可能領域の長手方向の長さ)は、当該方向における発光体5の最大長(この場合は直径)より長く設定してある。
【0042】
画像処理装置33は、図1の解析手段13に相当し、撮像手段12が撮像した画像を解析する機能を果たす。画像処理装置33は、CPU(中央処理装置)と解析用プログラムを記憶したROM(リード・オンリ・メモリ)と、ワークメモリや画像メモリなどで構成される。
【0043】
信号灯器電源38は、発光体5に電力を供給すると共に、発光体5へ電力供給中であることを示す電源信号を露光タイミングパルス生成回路39へ出力する。露光タイミングパルス生成回路39は、電源信号の入力に応じて露光タイミングパルスを出力する。撮像手段12は、露光タイミングパルスが入力されると受光素子への露光を開始し、設定された露光時間(可変)の経過後に露光を完了して1枚の画像を撮像し、その画像データを画像処理装置33へ出力する。画像処理装置33は移動ステージ37へ制御信号を出力する。露光タイミングパルスは画像処理装置33にも入力されており、画像処理装置33はこの露光タイミングパルスに同期させて移動ステージ37を移動させるようになっている。
【0044】
ここでは、撮像手段12から出力される1枚の画像データの中から1ライン分の画像データを取り込むと共に、画像上のライン幅に相当する距離だけ移動ステージ37を変位させる動作を露光タイミングパルス毎に繰り返し行なうことで、2次元領域の画像データを取り込むようになっている。なお、取り込む1ラインは、移動ステージ37の載置面上にできる帯状の測定可能領域の中に含まれ、好ましくは測定可能領域の長手方向に沿った1ラインであって測定可能領域の幅方向の中心付近にあるものがよい。
【0045】
このように、入射部に帯状凹面鏡34を用いることで、その重量が凹面鏡14に比べて軽くなって設置が用意になる。また、小型化により製作が容易になり、帯状凹面鏡34の光学的精度を確保し易くなる。
【0046】
図7は、発光状態測定装置10または発光状態測定装置30が行なう検査動作の流れを示している。検査開始の指示を図示省略の操作部などから受けると(ステップS101;Y)、測定対象の発光体5の画像を取り込む(ステップS102)。発光状態測定装置10の場合は、1回の撮像(露光)で発光体5全体の画像を取り込む。発光状態測定装置30の場合は図8に示すように、露光タイミングパルス毎に、1ライン分の画像データを取り込み(ステップS111)、その後、画像上のライン幅に相当する距離だけ移動ステージ37で発光体5を移動させる動作を(ステップS112)、発光体5全体の撮像が完了するまで繰り返し行なう(ステップS113;N)。各ラインは取り込み毎に画像処理装置33の画像メモリに蓄積され、全体の撮像完了時には、発光体5全体の画像データが画像処理装置33の画像メモリに保存される。
【0047】
画像の取り込み後、その画像の中から各LED素子7に相当する画像領域である明領域を切り出す(ステップS103)。そして明領域毎にその重心を求めて位置を確定する(ステップS104)。次に、各明領域を構成する画素の明るさを変換特性Aで輝度に換算して各LED素子7の輝度を求め、さらにそれらの平均輝度を求める(ステップS105)。この平均輝度と各LED素子7の輝度とを比較することで輝度均整度を求める(ステップS106)。
【0048】
こうして求めた各LED素子7の輝度や輝度均整度が予め定められた許容値以内か否かを調べ、すべて許容値以内ならば(ステップS107;Y)検査合格の判定を出力して(ステップS108)次の発光体に対する検査待ちになる(ステップS101)。いずれか1つの検査項目でも許容値を超える場合は(ステップS107;N)検査不合格の判定を出力して(ステップS109)次の発光体に対する検査待ちになる(ステップS101)。なお、不合格の場合は、どの項目で不合格となったかの詳細情報として出力するとよい。このほか、合格/不合格にかかわらず各LED素子7の輝度、平均輝度、輝度均整度などの数値データをディスプレイやプリンタなどから出力可能にするとよい。
【0049】
図9は、LED素子7に該当する画像領域の切り出し処理を示している。この処理は、図7のS103に相当する。発光体5全体の画像の中から、明るさがしきい値以上の画素で構成される画像領域をすべて切り出し抽出する(ステップS121)。その後、これら切り出した画像領域毎に、その画像領域の特徴量が規定範囲に入るか否かを判定し(ステップS123)、規定範囲に入る場合は(ステップS123;Y)その画像領域をラべリングする(ステップS124)。以上の処理をすべての画像領域に対する判定が完了するまで行ない(ステップS122;Y)、未判定の画像領域が存在しなくなったら(ステップS122;N)、切出し処理を終了する。ラベリングされた画像領域は、LED素子7に対応する明領域となる。
【0050】
特徴量には、画像領域の面積や画像領域の形状(幅や高さ)を使用している。画像領域がLED素子7に相当するものか否かを判定可能な指標であれば、その他の特徴量を使用してもかまわない。
【0051】
図10は、各LED素子7の位置を確定する処理の流れを示している。この処理は、図7のS104に相当する。図9の処理でラベリングした各明領域の重心を求め(ステップS131)、さらに明領域全体の重心を求める(ステップS132)。そして、各明領域の重心と全体の重心との相対位置を求める(ステップS133)。ここでは、全体の重心を原点として、各明領域の相対座標を求めている。各明領域の相対座標と設定値(本来あるべき各LED素子7の位置座標)とを比較し、許容範囲内であれば(ステップS134;Y)、そのまま処理を終了し、許容範囲を超える場合は(ステップS134;N)、LED素子7の位置ずれを示すエラー情報を出力して(ステップS135)処理を終了する。
【0052】
図11は、各LED素子7の輝度および平均輝度を求める処理の流れを示している。この処理は、図7のS105に相当する。図9の処理で検出した明領域毎に以下の処理を行なう。明領域に属するいずれか1画素の明るさを、変換特性Aを利用して輝度に換算する(ステップS141)。この処理を、その明領域内のすべての画素について行なう(ステップS142;N)。すべての画素の明るさを輝度に換算し終えたら(ステップS142;Y)、その平均値を求め、これをその明領域に対応するLED素子7の輝度に確定する(ステップS143)。
【0053】
図12は、輝度均整度算出処理の流れを示している。この処理は、図7のS106に相当する。図11の処理で求めた各明領域に対応する輝度から、すべての明領域の輝度の平均値、すなわち、発光体5に配列された全LED素子7の平均輝度を算出する(ステップS151)。次に、明領域毎にその輝度と平均輝度との差分を求めることを(ステップS152)繰り返し行ない(ステップS153;N)、すべての明領域について差分の算出が完了したら(ステップS153;Y)処理を終了する。なお、輝度均整度は、明領域の輝度の分散や標準偏差として求めてもよい。
【0054】
このように、発光体5の画像を撮像手段12で取り込み、画像解析によって各LED素子7の輝度や輝度均整度などを求めて検査するので、多数のLED素子7が配列された発光体5に対する検査を短時間で行なうことができる。その結果、検査中の時間経過によって発光量が変化することに基づく測定誤差が生じ難い。
【0055】
また、発光体5全体の画像を対象に解析するので、輝度均整度や発光体5全体の平均輝度を求めることができ、発光体5の見え方評価に合致した検査が可能になる。
【0056】
さらに、照度計でLED素子7毎に測定する場合には、LED素子7に対する照度計の角度がずれて測定誤差が生じ易いが、発光状態測定装置10、30では発光体5の射出する平行光が光変換手段11、31を介して平行光のまま撮像手段12に入射して撮像されるので、入射角のずれによる測定誤差が少なくなる。また、光変換手段11、31の凹レンズ16から射出される光が平行光になっているので、凹レンズ16と撮像手段12との距離に影響されずに発光体5のサイズが画像上で一定となり、光変換手段11と撮像手段12との距離を適宜に設定しても測定精度に影響が出ないという効果がある。
【0057】
また、撮像手段12で撮像した発光体5の画像を解析手段13や画像処理装置33で解析して輝度や輝度均整度などを求めて検査するので、検査者の技量に負うところが少なく、誰でも簡単に定量的な合否判定が可能になる。
【0058】
なお、LED素子7の大きさが既知の場合には、画像を解析して得た明領域の面積が規定の面積に対してどの位小さいかによってLED素子7の傾斜の程度を判定することができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0060】
たとえば、撮像した画像からLED素子7に相当する明領域を抽出する方法は、実施の形態に例示した方法に限定されない。また、LED素子7の輝度は、重心位置にある画素を代表画素とし、その画素の明るさから求めてもよく、実施の形態で例示した方法に限らない。
【0061】
また、実施の形態では、撮像手段としてCCDカメラを使用したが、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)の画像素子を備えたカメラを使用してもよい。CCDの場合、強い光が入射するとスミアやブルーミングが生じ、画像にじみが出たり、白い帯状のにじみが出たりするが、CMOSの画像素子を使用することでスミアやブルーミングを抑制することができ、他のLED素子に比べて特に輝度の大きなLED素子が基板上に在っても、測定制度への悪影響を防ぐことができる。
【0062】
発光状態測定装置10、30が測定対象にする発光体は交通信号灯器に限定されない。また、発光体を構成する光源はLEDに限定されない。発光状態測定装置10、30は、指向性が狭く、しかも発光面積が撮像手段12のレンズ開口より大きい発光体の測定に適している。
【0063】
なお、各LED素子7の配置のばらつきを検出すれば足りる場合には、各明領域の位置関係がわかればよいので、明るさを輝度に換算する処理を割愛してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係わる発光状態測定装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる発光状態測定装置が有する光変換手段の光学的効果を模擬的に示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる発光状態測定装置の撮像手段が光変換手段を介して撮像した発光体の画像の一例を示す説明図である。
【図4】1つのLED素子に相当する画像を拡大示した説明図である。
【図5】画素の明るさを輝度に変換する変換特性の一例を示す説明図である。
【図6】帯状凹面鏡を有する光変換手段を使用した発光状態測定装置の構成例を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態に係わる発光状態測定装置が行なう検査動作全体を示す流れ図である。
【図8】図6に示す発光状態測定装置が行なう画像取込処理を示す流れ図である。
【図9】LED位置切り出し処理を示す流れ図である。
【図10】LED位置確定処理を示す流れ図である。
【図11】平均輝度算出処理を示す流れ図である。
【図12】輝度均整度算出処理を示す流れ図である。
【図13】指向性の狭い発光体をカメラで近くから撮像する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
5…発光体
6…基板
7…LED素子
7a…画像領域
10…発光状態測定装置
11…光変換手段
12…撮像手段
13…解析手段
14…凹面鏡
15…反射鏡
16…凹レンズ
30…入射部を帯状にした発光状態測定装置
31…光変換手段
33…画像処理装置
34…帯状凹面鏡
37…移動ステージ
38…信号灯器電源
39…露光タイミングパルス生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向から入射する平行光を集光した後、これを平行光に戻して射出するように入射光の光路を変換する光変換手段と、
前記光変換手段の入射部前方の前記所定方向に配置された発光体を、前記光変換手段を介して撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した画像から前記発光体の各部の発光状態を解析する解析手段と
を有する
ことを特徴とする発光状態測定装置。
【請求項2】
前記光変換手段の入射部全体から前記所定方向に平行光を射出した場合にこの平行光が照射される範囲内を測定可能領域とする
ことを特徴とする請求項1に記載の発光状態測定装置。
【請求項3】
前記光変換手段の入射部を、測定対象の発光体全体が前記測定可能領域に収まるように形成した
ことを特徴とする請求項2に記載の発光状態測定装置。
【請求項4】
前記光変換手段の入射部を細長い帯状の形状にし、
前記帯状の入射部に対応して前記発光体上に形成される帯状の測定可能領域がその長手方向と異なる方向へ発光体上で移動するように前記発光体を前記光変換手段に対して相対移動させる移動手段を有し、
前記測定可能領域に対する測定を前記相対移動させながら繰り返すことで、2次元領域を測定する
ことを特徴とする請求項2に記載の発光状態測定装置。
【請求項5】
前記発光体は、複数の光源を配列したものであり、
前記解析手段は、前記撮像手段が撮像した画像から明るさがしきい値以上の画素で構成される画像領域を抽出し、その特徴量が規定範囲にある画像領域を光源に対応する明領域と判定し、各明領域の明るさからその明領域に対応する光源の輝度を求める
ことを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の発光状態測定装置。
【請求項6】
複数の光源の平均輝度と各光源の輝度とを対比して、前記複数の光源における輝度のばらつきを求める
ことを特徴とする請求項5に記載の発光状態測定装置。
【請求項7】
前記発光体は、複数の光源を配列したものであり、
前記解析手段は、前記撮像手段が撮像した画像から明るさがしきい値以上の画素で構成される画像領域を抽出し、その特徴量が規定範囲にある画像領域を光源に対応する明領域と判定し、各明領域の位置から光源の位置ずれを判定する
ことを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の発光状態測定装置。
【請求項8】
前記発光体は各部から特定方向に平行光を射出するものである
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7に記載の発光状態測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−3255(P2007−3255A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181519(P2005−181519)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】