説明

発光素子、発光装置および電子機器

【課題】発光効率に優れる発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い発光装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】発光素子1は、陰極3と陽極6との間に、発光層4および正孔輸送層5を介挿してなるものであり、発光層4は、電子(第1のキャリア)を輸送する粒子(無機半導体材料)41と、正孔(前記第1のキャリアと異なる極性の第2のキャリア)を輸送する正孔輸送材料(キャリア輸送材料)42と、発光材料43とを含有してなる。正孔輸送材料42は、粒子41同士の空隙を埋めるように充填されている。また、正孔輸送材料42は、粒子41に結合し得る結合基を少なくとも1つ有するものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、発光装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一層の発光層を含む発光素子は、多彩な発光色の素子が作製可能である(例えば、非特許文献1〜3、特許文献1〜3参照)。
現在、より高性能な発光素子を得るため、材料の開発・改良をはじめ、様々なデバイス構造が提案されており、活発な研究が行われている。
また、この発光素子については既に様々な発光色の素子、また高輝度、高効率の素子が開発されており、表示装置の画素としての利用や光源としての利用など多種多様な実用化用途が検討されている。
そして、実用化に向けて、さらなる発光効率の向上を目指し、種々の研究がなされている。
【0003】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.51(12),21 September 1987,p.913
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.71(1),7 July 1997,p.34
【非特許文献3】Nature 357,477 1992
【特許文献1】特開平10−153967号公報
【特許文献2】特開平10−12377号公報
【特許文献3】特開平11−40358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、発光効率に優れる発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い発光装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光素子は、第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光層と、を含み、
前記発光層は、無機半導体材料と、第1の材料と、第2の材料と、を含み、
前記第1の材料および前記無機半導体材料のうちいずれか一つが発光機能を有することを特徴とする。
これにより、発光効率に優れる発光素子が得られる。
【0006】
本発明の発光素子では、前記第2の材料が前記無機半導体材料および前記第1の材料のうち少なくとも一つの発光に寄与するキャリアの輸送機能を有していることが好ましい。
これにより、発光素子の発光効率がより向上する。
本発明の発光素子では、前記第1の材料が発光機能を有し、前記無機半導体材料が第1のキャリアを輸送する機能を有し、前記第2の材料が第2のキャリアを輸送する機能を有することが好ましい。
これにより、発光素子の発光効率がより向上する。
【0007】
本発明の発光素子では、前記第1のキャリアは、電子であり、前記第2のキャリアは、正孔であることが好ましい。
本発明の発光素子は、かかる構成への適用が好適である。
本発明の発光素子では、前記無機半導体材料は、金属酸化物であることが好ましい。
金属酸化物は、電子輸送能に優れることから好ましい。
【0008】
本発明の発光素子では、前記金属酸化物は、3価元素と5価元素とを含有するものであることが好ましい。
このような金属酸化物は、特に、電子輸送能に優れるものである。
本発明の発光素子では、前記第2の材料は、前記無機半導体材料に結合し得る結合基として、酸性基を少なくとも1つ有することが好ましい。
酸性基は、無機半導体材料(特に、金属酸化物)への結合能が高いことから好ましい。
【0009】
本発明の発光素子では、前記酸性基は、−SOH基、−COOH基または−OP(O)(OH)基であることが好ましい。
これらの酸性基は、結合能に特に優れることから好ましい。
本発明の発光素子では、前記第1の材料は、金属錯体であることが好ましい。
金属錯体は、無機半導体材料へ比較的容易に付着させ易く、また、りん光発光を示すため発光の内部量子収率が高いので好ましい。
【0010】
本発明の発光素子では、前記発光層は、複数の粒子を含み、前記複数の粒子の各々が前記無機半導体材料を含んでいることが好ましい。
これにより、第1の材料あるいは第2の材料と無機半導体材料との接触面積が増大し、正孔と電子との再結合の確率を増加させることができ、発光素子の発光効率が向上する。
本発明の発光素子では、前記複数の粒子の平均粒径が0.5〜10nmであることが好ましい。
これにより、無機半導体材料への第1の材料の付着量をより増大させることができる。
【0011】
本発明の発光素子では、前記第2の材料は、前記複数の粒子の各々の表面に付着しているか、または、前記複数の粒子同士の間に充填されていることが好ましい。
これにより、第1の材料と第2の材料とをより確実に接触させることができる。
本発明の発光素子では、前記第2の材料は、前記無機半導体材料に結合し得る結合基を少なくとも1つ有することが好ましい。
これにより、第2の材料が無機半導体材料により確実に付着(結合)するようになり、無機半導体材料を介して第2の材料と第1の材料とをより確実に接触させることができる。
【0012】
本発明の発光素子では、前記発光層において、前記無機半導体材料と前記第2の材料との比率は、重量比で20:80〜80:20であることが好ましい。
これにより、発光素子の発光効率をより向上させることができる。
本発明の発光素子では、前記発光層において、前記無機半導体材料と前記第1の材料との比率は、重量比で95:5〜75:25であることが好ましい。
これにより、発光素子の発光効率をより向上させることができる。
【0013】
本発明の発光素子では、前記発光層は、その平均厚さが1〜100nmであることが好ましい。
発光層の機械的強度(膜強度)が低下するのを防止しつつ、発光素子の薄型化を図ることができる。
本発明の発光素子では、前記発光層と前記第1の電極との間および前記発光層と前記第2の電極との間の少なくとも一方には、半導体材料および/または絶縁材料を主材料として構成される中間層を有することが好ましい。
これにより、発光素子において、経時的にリーク電流が増大して、発光効率等の特性が低下すること、すなわち、発光素子の寿命(耐久性)が低下することを防止することができる。
【0014】
本発明の発光素子では、前記中間層は、その平均厚さが10nm以下であることが好ましい。
これにより、電極から発光層へのキャリアの注入効率が低下するのを防止しつつ、発光層中の無機半導体材料やキャリア輸送材料が電極に接触するのを確実に防止することができる。
本発明の発光装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い発光装置が得られる。
本発明の電子機器は、本発明の発光装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の発光素子、発光装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の発光素子の実施形態の縦断面を模式的に示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
図1に示す発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)1は、陰極(第1の電極)3と、陽極(第2の電極)6と、陰極3と陽極6との間に、発光層4と正孔輸送層5とが介挿され、さらに、発光層4と陰極3との間に中間層8が設けられてなるものである。そして、発光素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材7で封止されている。
【0016】
基板2は、発光素子1の支持体となるものである。本実施形態の発光素子1は、基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)であるため、基板2および陰極3には、それぞれ、透明性は特に要求されない。
基板2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等で構成される透明基板や、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、不透明な樹脂材料で構成された基板のような不透明基板を用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0017】
なお、発光素子1が基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)の場合、基板2および陰極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)とされる。
陰極3は、後述する発光層4に電子を注入する電極である。この陰極3の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
【0018】
陰極3の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
特に、陰極3の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極3の構成材料として用いることにより、陰極3の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極3の平均厚さは、特に限定されないが、100〜10000nm程度であるのが好ましく、200〜500nm程度であるのがより好ましい。
【0019】
また、陰極3の表面抵抗は低い程好ましく、具体的には、50Ω/□以下であるのが好ましく、20Ω/□以下であるのがより好ましい。表面抵抗の下限値は、特に限定されないが、通常0.1Ω/□程度であるのが好ましい。
一方、陽極6は、後述する正孔輸送層5に正孔を注入する電極である。この陽極6の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
【0020】
陽極6の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような陽極6の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
また、陽極6の表面抵抗も低い程好ましく、具体的には、100Ω/□以下であるのが好ましく、50Ω/□以下であるのがより好ましい。表面抵抗の下限値は、特に限定されないが、通常0.1Ω/□程度であるのが好ましい。
【0021】
正孔輸送層5は、陽極6から注入された正孔を、発光層4まで輸送する機能を有するものである。また、陽極6に、後述する発光層4が含有する無機半導体粒子(粒状の無機半導体材料)41が接触するのを防止する機能、すなわち、後述する中間層8と同様の機能も有する。
この正孔輸送層5の構成材料には、各種の高分子材料や、各種の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
【0022】
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
また、前記化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0023】
一方、p型の低分子材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられる。
正孔輸送層5の構成材料としては、例えば、ポリアリールアミンまたはその誘導体を主成分とする高分子材料が好適に用いられる。
ここで、ポリアリールアミン誘導体の一例としては、下記化1で示すトリフェニルアミン系高分子が挙げられる。
【0024】
【化1】

【0025】
このような正孔輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
正孔輸送層5に接触して、発光層4が設けられている。
本実施形態の発光層4は、図1中に拡大して示すように、電子(第1のキャリア)を輸送する無機半導体粒子41(以下、単に「粒子41」と言う。)と、正孔(第1のキャリアと異なる極性の第2のキャリア)を輸送する正孔輸送材料(キャリア輸送材料)42と、発光材料(発光物質)43とを含有している。
【0026】
具体的には、発光層4は、粒子41の表面に発光材料(第1の材料)43が結合(吸着)し、粒子41同士の間隙が正孔輸送材料(第2の材料)42で充填されて構成されている。
このような発光層4では、陰極3から注入された電子を粒子41を介して輸送するとともに、正孔輸送層5から受け取った正孔を正孔輸送材料42を介して輸送する。そして、発光材料43において正孔と電子とが再結合してエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。
このような発光層4では、粒子41を介して、発光材料43と正孔輸送材料42とをより確実に接触させることができる。その結果、発光素子1の発光効率をより向上することができる。
【0027】
また、半導体材料としては、化学的安定性に優れた無機材料が知られているが、それら安定性に優れた半導体材料を用いれば、発光素子1の耐久性をより向上させることができる。
また、粒子41の空隙また粒子41の表面に空隙を形成すれば、発光材料43あるいは正孔輸送材料42と粒子41の表面との接触面積が増大し、正孔と電子との再結合の確率を増加させることができ、発光素子1の発光効率が向上する。
これにより、発光サイトが広がることから、発光材料43におけるキャリア密度を低減し、各発光材料が変質・劣化する速度(程度)を緩和することができる。すなわち、発光素子1の耐久性(寿命)の向上を図ることができる。
【0028】
粒子41を構成する無機半導体材料としては、酸化チタン、酸化亜鉛等の各種金属酸化物、各種金属硫化物(ZnS、CdS等)、各種金属セレン化物(CdSe等)、各種金属または半導体炭化物(TiC、SiC等)、各種半導体窒化物(BN等)、GaN、AlN等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、無機半導体材料としては、金属酸化物を主成分とするものが好ましい。金属酸化物は、電子輸送能に優れることから好ましい。
【0029】
また、金属酸化物としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化スズ(SnO)のような単一の金属元素を含有する酸化物であってもよく、複数の金属元素を含有する複合酸化物であってもよいが、複合酸化物、特に、3価元素と5価元素とを含有する複合酸化物を主成分とするが好ましい。このような金属酸化物は、特に、電子輸送能に優れるものである。
【0030】
ここで、3価元素と5価元素とを含有する複合酸化物とは、1つの結晶中に3価元素および5価元素の双方を含む固溶体酸化物のことを言い、下記一般式(1)で表すことができる。なお、3価元素と5価元素との混合比は、任意の値を取ることができる。
(M(M1.5x+2.5y ・・・ (1)
ただし、式中Mは3価元素を表し、Mは5価元素を表し、Oは酸素を表す。xおよびyは、それぞれ0〜1の数を表す。
【0031】
また、Mにより表される3価元素およびMにより表される5価元素は、それぞれ単一元素であってもよいし、2種元素以上の混合物からなってもよい。
3価元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ランタノイド(以上、周期律表の第3族に属する元素)、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム(以上、周期律表の第13族に属する元素)が挙げられるが、第3族に属する元素、特に、スカンジウムが好ましい。
【0032】
一方、5価元素としては、バナジウム、ニオブ、タンタル(以上、周期律表の第5族に属する元素)、窒素、リン、砒素、アンチモン、ビスマス(以上、周期律表の第15族に属する元素)が挙げられが、第5族に属する元素、特に、バナジウムが好ましい。
また、xおよびyは、それぞれ、0.2〜0.8であるのが好ましく、0.4〜0.6であるのがより好ましく、0.48〜0.52であるのがさらに好ましい。
【0033】
なお、一般式(1)で表される複合酸化物は、不純物元素を含有していてもよい。
このような複合酸化物の具体例としては、例えば、ScVO、YVO、LaVO、NdVO、EuVO、GdVO、ScNbO、ScTaO、YNbO、YTaO、ScPO、ScAsO、ScSbO、ScBiO、YPO、YSbO、BVO、AlVO、GaVO、InVO、TlVO、InNbO、InTaO等が挙げられる。
粒子41は、その平均粒径が0.5〜10nm程度であるのが好ましく、1〜7nm程度であるのがより好ましい。これにより、前記効果をより向上させることができる。なお、粒子41は、このような微粒子を1次粒子とする2次粒子であってもよい。
【0034】
ここで、3価元素と5価元素とを含有する複合酸化物の合成法について説明する。
3価元素と5価元素とを含有する複合酸化物の合成法としては、例えば、焼成法、ゾル・ゲル法等が挙げられる。
焼成法は、3価元素の酸化物と5価元素の酸化物とを混合した後、乳鉢等で十分に粉砕/混合し、次いで電気炉等を用いて焼成する方法である。焼成温度は、通常400〜2000℃程度である。
【0035】
また、焼成と粉砕とは、2回以上繰り返して行うようにしてもよい。これにより、複合酸化物をより均質化することができる。
一方、ゾル・ゲル法は、3価元素を含む無機または有機化合物の溶液と、5価元素を含む無機または有機化合物の溶液とを混合し、加水分解・縮合を進ませることにより、複合酸化物を微粒子分散物として得る方法である。
【0036】
溶媒は、少なくとも水を含有するもの、例えば、水または水を含むアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)が好適に用いられる。
上述した2つの溶液を混合する場合、これらの溶液は、一気に混合してもよいし、同時に滴下する方法を用いてもよいが、十分に攪拌するようにする。少なくとも2つの溶液を全量混合し終えるまでは、室温で攪拌するのが好ましい。
【0037】
また、2つの溶液を混合した後、混合液は、加熱するのが好ましい。これにより、複合酸化物の結晶性を高めたり、粒子の成長を促進したりすることができる。
また、この加熱に際しては、圧力容器を用いるのが好ましい。圧力容器としては、例えば、ステンレス製オートクレーブ、チタン製オートクレーブ、内周面がチタンまたはポリテトラフルオロエチレンで構成されたステンレス製オートクレーブ等が挙げられる。
【0038】
オートクレーブは、撹拌装置が付属しているものが好ましい。オートクレーブを用いる場合、加熱温度は、通常100〜300℃程度、加熱時間は、通常1〜50時間程度とするのが好ましい。
3価元素または5価元素を含む無機または有機化合物としては、例えば、これらの元素を含むアルコキシド、アセチルアセトナート、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、オキシ塩化物、臭化物等が挙げられる。
【0039】
3価元素を含む化合物の具体例としては、例えば、硝酸スカンジウム水和物、硝酸ガリウム水和物、硝酸インジウム水和物、硝酸イットリウム水和物、塩化スカンジウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、塩化イットリウム、スカンジウムイソプロポキシド、硝酸アルミニウム、硝酸ネオジム、インジウムエトキシド、イットリウムイソプロポキシド等が挙げられる。
【0040】
5価元素を含む化合物としては、例えば、オルトバナジン酸ナトリウム、オルトニオブ酸エチル、塩化ニオブ、塩化タンタル、ヒ酸(砒酸)アンモニウム、アンチモン酸ナトリウム、ビスマス酸ナトリウム等が挙げられる。
また、ゾル・ゲル反応時には、必要に応じて触媒を用いるのが好ましい。この触媒には、無機酸または有機酸が好適に用いられる。
【0041】
無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、亜燐酸等が挙げられる。
有機酸としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、燐酸・ホスホン酸、ルイス酸(アルミン酸等)、ヘテロポリ酸等が挙げられる。
なお、触媒としては、前述したような酸の他、例えば、アンモニアのようなアルカリ等を用いることもできる。
このようにして、複合酸化物が得られる。
【0042】
複合酸化物には、必要に応じて、不純物(ドーパント)を添加するようにしてもよい。この不純物元素としては、例えば、周期律表の第4族に属する元素(例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム等)、周期律表の第14族に属する元素(例えばゲルマニウム、スズ、鉛等)、硫黄、セレン、テルル、ハロゲン元素(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)等が挙げられる。
【0043】
なお、不純物(不純物元素)をドープするには、複合酸化物を焼成法により合成する場合は、ドープする不純物を含む酸化物を、合成用原料に混合するようにすればよく、一方、ゾル・ゲル法により合成する場合は、ドープしたい不純物元素またはこれを含む酸化物を、ゾル・ゲル溶液中に添加するようにすればよい。
この場合、複合酸化物中における不純物の添加量は、3価元素の総量に対して、0.01〜10mol%程度であるのが好ましく、0.1〜1mol%程度であるのがより好ましい。
【0044】
正孔輸送材料42には、前記正孔輸送層5で挙げた材料と同様のものを用いることができるが、特に、粒子(無機半導体材料)41に結合し得る結合基を少なくとも1つ有するものが好ましい。これにより、正孔輸送材料42が粒子41により確実に付着(結合)するようになり、粒子41を介して正孔輸送材料42と発光材料43とをより確実に接触させることができる。
【0045】
このような結合基としては、−SOH基、−SOH基、−COOH基、−OP(O)(OH)基、−P(O)(OH)基のような酸性基、オキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート、α−ケトエノレートのようなキレート化基が挙げられる。
これらの中でも、結合基としては、酸性基が好ましく、−SOH基、−COOH基または−OP(O)(OH)基がより好ましい。酸性基は、無機半導体材料(特に、金属酸化物)への結合能が高く、−SOH基、−COOH基または−OP(O)(OH)基は、かかる結合能に特に優れることから好ましい。
【0046】
なお、前記結合基は、アルカリ金属等と塩を形成していてもよく、分子内塩を形成していてもよい。
これらのことを考慮した場合、正孔輸送材料42には、前述したものの中でも、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)が好適に用いられる。
発光層4において、粒子(無機半導体材料)41と正孔輸送材料(キャリア輸送材料)42との比率は、重量比で20:80〜80:20程度であるのが好ましく、40:60〜60:40程度であるのがより好ましい。これにより、発光材料43に電子および正孔が効率よく供給され、発光素子1の発光効率をより向上させることができる。
【0047】
さて、発光材料43には、各種高分子の発光材料、各種低分子の発光材料を単独または任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。
高分子の発光材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物、ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物、ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物等が挙げられる。
【0048】
一方、低分子の発光材料としては、例えば、配位子に下記化2で示す2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を持つ、3配位のイリジウム錯体、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq)、8−ヒドロキシキノリン 亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン プラチナム(II)のような各種金属錯体、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物等が挙げられる。
【0049】
【化2】

【0050】
これらの中でも、発光材料43としては、金属錯体を主成分とするものが好適に用いられる。イリジウムなどの遷移金属を含む錯体は、粒子(無機半導体材料)41へ比較的容易に付着させ易く、また、りん光発光を示すため発光の内部量子収率が高いので好ましい。
発光層4において、粒子(無機半導体材料)41と発光材料43との比率は、重量比で95:5〜75:25程度であるのが好ましく、90:10〜80:20程度であるのがより好ましい。発光層4がかかる量の発光材料43を含有することになり、発光素子1の発光効率をより向上させることができる。
このような発光層4の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、20〜50nm程度であるのがより好ましい。これにより、発光層4の機械的強度(膜強度)が低下するのを防止しつつ、発光素子1の薄型化を図ることができる。
【0051】
封止部材7は、陰極3、発光層4、正孔輸送層5および陽極6を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材7を設けることにより、発光素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
封止部材7の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材7の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材7と陰極3、発光層4、正孔輸送層5および陽極6との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
【0052】
また、封止部材7は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
このような発光素子1において、発光層4と陰極3との間には、半導体材料および/または絶縁材料を主材料として構成される中間層(下地層)8が設けられている。
この中間層8には、陽極6から注入された正孔が陰極3に到達するのを防ぐという機能を担わせてもよいし、あるいは、陰極3から注入される電子の発光層4への移動を遅くするという機能も担わせることができる。
中間層8を構成する材料としては、正孔輸送層や発光層等の他の層、電極の種類等、所望の発光色等の特性等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、典型的には半導体材料や絶縁材料等の抵抗値が高い材料であることが好ましい。例えば、前述した無機半導体材料と同様のものを用いてもよい。
【0053】
一方、中間層8を構成する絶縁材料としては、例えば、SiO等の無機絶縁材料やポリエチレンやポリスチレン等の有機絶縁材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような中間層8の平均厚さは、正孔輸送層や発光層等の他の層、電極の種類等、所望の発光色等の特性等に応じて適宜選択されるが、典型的には、10nm以下であるのが好ましく、1〜7nm程度であるのがより好ましい。
このような発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0054】
[1] まず、基板2を用意し、基板2上に陰極3を形成する。
この陰極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射法のような気相成膜法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、ゾル・ゲル法、MOD法のような液相成膜法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0055】
[2] 次に、陰極3上に中間層8を形成する。
この中間層8は、例えば、前述のような気相成膜法や液相成膜法等を用いて形成することができる。
これらの中でも、中間層8は、気相成膜法を用いて形成するのが好ましい。気相成膜法によれば、中間層8をより緻密に形成することができ、その結果、前述したような効果がより顕著なものとなる。
【0056】
[3] 次に、中間層8上に、発光層4を形成する。
この発光層4は、主として粒子41で構成される粒子層を形成し、該粒子層に発光材料43を付着させた後、粒子層の空孔(粒子41同士の間隙)を埋めるように正孔輸送材料42を充填することにより形成することができる。
まず、粒子層を形成する。この粒子層は、例えば、粒子41を含有する分散液(またはコロイド溶液)を中間層8上に供給すること等により形成することができる。
【0057】
分散液の供給方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、エクストルージョン法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法(ワイヤーバーコート法)、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スライドホッパー法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。かかる塗布法によれば、液状被膜を比較的容易に形成することができる。
【0058】
また、分散液を調製する方法としては、例えば、前述したように複合酸化物をゾル・ゲル法等により製造した場合、その製造過程で生じた分散液をそのまま用いる方法、粒子41を製造した後、分散媒に分散する方法等が挙げられる。
用いる分散媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0059】
また、分散液中には、必要に応じて、ポリエチレングリコールのようなポリマー、界面活性剤、酸、キレート剤等を分散助剤として添加するようにしてもよい。これらの中でも、ポリエチレングリコールを添加するのが好ましい。この場合、重量平均分子量の異なるポリエチレングリコールを用いることにより、分散液の粘度を容易に調節することでき、また剥離し難い粒子層を形成することができる。
【0060】
また、分散液の粘度は、粒子41の種類や分散性、分散媒の種類、界面活性剤やバインダー等の添加剤により大きく左右される。
このため、分散液が比較的高粘度(例えば0.01〜500P程度)である場合、塗布方法(供給方法)としては、キャスティング法、エクストルージョン法またはスクリーン印刷法を用いるのが好ましい。
【0061】
一方、分散液が比較的低粘度(例えば0.1P以下)である場合、均一な膜を形成するために、塗布方法(供給方法)としては、スピンコート法、ワイヤーバーコート法またはスライドホッパー法を用いるのが好ましい。
なお、分散液の供給量がある程度多い場合、比較的低粘度の分散液であっても、エクストルージョン法による供給が可能である。
また、粒子層は、単層構成に限定されず、例えば、粒径の異なる粒子41を含有する複数層を設けることにより多層化したり、種類の異なる粒子41(または異なるバインダー、添加剤等)を含有する複数層を設けることにより多層化したりすること等もできる。
【0062】
次いで、必要に応じて、加熱処理を施す。これにより、粒子41同士の界面付近に拡散が生じ、これらを電子的に接触させることができるようになる。また、粒子層の膜強度や中間層(下地層)8との密着性を向上させることができる。
この場合、加熱温度は、40〜700℃程度であるのが好ましく、100〜600℃程度であるのがより好ましい。また、加熱時間は、10分〜10時間程度であるのが好ましい。
【0063】
なお、加熱処理は、できる限り低温で行うのが好ましい。例えば、平均粒径5nm以下の粒子41を用いることや、鉱酸(無機酸)等の存在下で加熱処理を行うことにより、加熱温度の低温化が可能となる。
また、このような加熱処理に代えて、加圧処理を行うようにしてもよい。この場合、粒子41を含有する分散液中に、ポリマー等のバインダーを添加するのを省略することができる。
【0064】
さらに、加熱処理や加圧処理の後には、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理や、三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理等を行うようにしてもよい。
このようにして得られる粒子層は、その機械的強度(膜強度)が著しく低下しない範囲で、空孔率ができる限り大きいのが好ましく、具体的には、20〜75%程度であるのが好ましく、35〜60%程度であるのがより好ましい。これにより、粒子層(発光層4)の機械的強度が低下するのを防止しつつ、粒子層に、より多くの発光材料43を付着させることができるとともに、より多くの正孔輸送材料42を充填することができる。
【0065】
また、粒子41を金属化合物の溶液(処理液)で処理するようにしてもよい。この処理では、例えば、粒子41に発光材料43を付着させる前に、粒子41に金属化合物の溶液を所定時間接触させること等により行われる。
なお、接触後に粒子41に上記金属化合物が付着していても、付着していなくてもよい。また、かかる処理は、粒子層を形成した後に行うのが好ましい。
【0066】
金属化合物としては、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、ガリウム、インジウム、ゲルマニウムおよびスズからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属のアルコキシドまたはハロゲン化物等が挙げられる。
金属化合物の溶液(処理液)は、通常、水溶液またはアルコール溶液として用いられる。
【0067】
この処理の具体的な方法としては、例えば、粒子41(粒子層)を処理液に浸漬する方法(浸漬法)、処理液を粒子41(粒子層)にシャワー状に一定時間吹き付ける方法(スプレー法)等を用いることができる。
処理を行う際の処理液の温度は、特に限定されないが、−10〜70℃程度であるのが好ましく、0〜40℃程度であるのがより好ましい。
【0068】
また、処理時間も、特に限定されず、前記温度範囲の処理液を用いる場合、1分〜24時間程度であるのが好ましく、30分〜15時間程度であるのがより好ましい。
また、処理後、粒子41(粒子層)を、例えば、蒸留水等の洗浄液で洗浄してもよい。また、粒子41に付着した物質の結合を強めるために焼成等してもよい。この場合の条件は、前述したような加熱処理の条件と同様に設定すればよい。
【0069】
次いで、粒子層に発光材料43を結合(吸着)させる。
これは、例えば、粒子層が形成された基板2を、発光材料43の溶液(または分散液)中に浸漬する方法、発光材料43の溶液(または分散液)を粒子層に、前述したような塗布法により供給する方法等を用いることができる。
この溶液(または分散液)の調製に用いる溶媒(または分散媒)としては、例えば、メタノール、エタノール、t−ブチタノール、ベンジルアルコールのようなアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリルのようなニトリル類、ニトロメタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミドのようなアミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレンのような炭酸エステル類、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノンのようなケトン類、へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンのような炭化水素類等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
【0070】
また、前記溶液(または分散液)中には、界面活性剤を添加して、粒子41に発光材料43とともに吸着させるようにしてもよい。これにより、発光材料43同士の凝集等を防止することができる。
このような界面活性剤としては、例えば、コール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸のような胆汁酸または抱合体(タウリン抱合体)等が挙げられる。
また、粒子41に付着しない余剰の発光材料43は、洗浄により除去するのが好ましい。洗浄液には、例えば、前述したようなアルコール類、ニトリル類等を用いることができる。
【0071】
さらに、発光材料43を粒子41(粒子層)に付着させた後、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンのようなアミン類、テトラブチルアンモニウムヨーダイド、テトラヘキシルアンモニウムヨーダイドのような4級アンモニウム塩、少なくとも1つのウレイド基を有するウレイド化合物、少なくとも1つのシリル基を有するシリル化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を用いて、粒子41(粒子層)を処理してもよい。
なお、前記化合物は、有機溶媒に溶解して用いてもよく、それ自体が液体の場合はそのまま用いてもよい。
【0072】
次いで、粒子41同士の間の間隙(粒子層の空孔)を埋めるように、正孔輸送材料42を供給(充填)する。
これは、発光材料43を粒子41(粒子層)に付着させる操作と同様にして行うことができる。
以上のようにして、発光層4が形成されるが、発光層4は、粒子41、正孔輸送材料42および発光材料43を含有する液状材料を調製し、かかる液状材料を中間層8上に供給し、脱分散媒(乾燥等)することにより、形成することもできる。
【0073】
[4] 次に、発光層4上に、正孔輸送層5を形成する。
この正孔輸送層5も、発光材料43を粒子41(粒子層)に付着(結合)させる操作と同様にして行うことができる。
[5] 次に、正孔輸送層5上に陽極6を形成する。
この陽極6は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
[6] 次に、陰極3、発光層4、正孔輸送層5および陽極6を覆うように、封止部材7を被せ、基板2に接合する。
以上のような工程を経て、本発明の発光素子1が製造される。
【0074】
なお、本実施形態では、発光層4に用いられる無機半導体材料が粒子である場合について説明したが、無機半導体材料は、塊状体(ブロック体)等であってもよく、かかる塊状体は、緻密質または多孔質のいずれであってもよい。
また、本実施形態では、正孔輸送材料(キャリア輸送材料)が粒子41同士の間隙を埋める充填されていたが、正孔輸送材料は、粒子41の表面に選択的に付着させるようにしてもよい。かかる構成によっても、前記と同様の効果が得られる。
【0075】
また、本実施形態では、発光層4と中間層8との間に、別途、電子輸送層を設けるようにしてもよい。
また、本実施形態では、第1のキャリアが電子であり、第2のキャリアが正孔である場合について説明したが、第1のキャリアが正孔、第2のキャリアが電子であってもよい。この場合、発光層4に用いられる無機半導体材料には、例えば上述の無機半導体材料に適宜p型のドーパントを添加したもの、キャリア輸送材料(電子輸送材料)には、例えば、オキサジアゾール系材料、AlQに代表される金属イオンのキノリノール錯体、トリアジン系材料等の電子輸送材料が好適に用いられる。
また、キャリア輸送層および中間層は、それぞれ、必要に応じて設けるようにすればよく、省略してもよいことは言うまでもない。
【0076】
例えば、上述のように粒子41にキャリア輸送性材料を担持させた場合、当該キャリア輸送性材料に対応するキャリア輸送層を省略することができる。
このような発光素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の発光素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置(本発明の発光装置)を構成することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0077】
次に、本発明の発光装置を適用したディスプレイ装置の一例について説明する。
図2は、本発明の発光装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図2に示すディスプレイ装置10は、基体20と、この基体20上に設けられた複数の発光素子1とで構成されている。
【0078】
基体20は、基板21と、この基板21上に形成された回路部22とを有している。
回路部22は、基板21上に形成された、例えば酸化シリコン層からなる保護層23と、保護層23上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)24と、第1層間絶縁層25と、第2層間絶縁層26とを有している。
駆動用TFT24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
このような回路部22上に、各駆動用TFT24に対応して、それぞれ、発光素子1が設けられている。また、隣接する発光素子1同士は、第1隔壁部31および第2隔壁部32により区画されている。
【0079】
本実施形態では、各発光素子1の陰極3は、画素電極を構成し、各駆動用TFT24のドレイン電極245に配線27により電気的に接続されている。また、各発光素子1の陽極6は、共通電極とされている。
そして、各発光素子1を覆うように封止部材(図示せず)が基体20に接合され、各発光素子1が封止されている。
ディスプレイ装置10は、単色表示であってもよく、各発光素子1に用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
このようなディスプレイ装置10(本発明の発光装置)は、各種の電子機器に組み込むことができる。
【0080】
図3は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0081】
図4は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0082】
図5は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0083】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0084】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0085】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0086】
なお、本発明の電子機器は、図3のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図4の携帯電話機、図5のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
以上、本発明の発光素子、発光装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【実施例】
【0087】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.発光素子の製造
(実施例1)
[1] まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。
[2] 次に、この基板上に、真空蒸着法により、平均厚さ300nmのAlLi電極(陰極)を形成した。
なお、AlLi電極の表面抵抗は、約5Ω/□であった。
【0088】
[3] 次に、このAlLi電極上に、真空蒸着法により、平均厚さ3nmの酸化チタン(TiO)層(中間層)を形成した。
[4] 次に、この酸化チタン層上に、平均厚さ40nmの発光層を形成した。
まず、ゾル・ゲル法により合成したTiO粒子(平均粒径:5nm)を用意した。
次いで、このTiO(無機半導体材料)粒子とポリエチレングリコールとを含有するエタノール水溶液を調製した。
【0089】
そして、このエタノール水溶液を、酸化チタン層上にスピンコート法(2000rpm)により塗布した後、乾燥した。
次いで、TiO粒子の集合物に対して、450℃×30分で焼成を行った。これにより、粒子層を得た。
なお、この粒子層の空孔率は、55%であった。
【0090】
次に、焼成後の基板を、前記化2に示す2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を配位子に持つ、3配位のイリジウム錯体(発光材料)と、コール酸とを含有する発光材料含有液(40℃)に8時間浸漬した後、エタノール、アセトニトリルで順次洗浄した。
なお、TiO粒子とイリジウム錯体の比率は、重量比で90:10となるようにした。
次に、PEDOT/PSS(正孔輸送材料)を含有する水分散液に、発光材料を付着させた粒子層を有する基板を浸漬した後、乾燥させた。
なお、TiO粒子とPEDOT/PSSの比率は、重量比で60:40となるようにした。
【0091】
[5] 次に、発光層上に、平均厚さ50nmの正孔輸送層を形成した。
まず、正孔輸送層の構成材料として、前記化1に示すポリフェニルアミン系高分子を含有するキシレン溶液を調製した。
次いで、このキシレン溶液を、発光層上にスピンコート法(2000rpm)により塗布した後、乾燥した。
【0092】
[6] 次に、正孔輸送層上に、スパッタ法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
なお、これと同様にしてガラス基板上に形成したITO電極の表面抵抗は、約40Ω/□であった。
[7] 次に、形成した各層(発光素子)を覆うように、ポリカーボネート製の保護カバー(封止部材)を被せ、紫外線硬化性樹脂により固定、封止した。
【0093】
(実施例2)
発光層においてTiO粒子に代えて、V粒子を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
(実施例3)
発光層においてTiO粒子に代えて、ScVO粒子を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
【0094】
(実施例4)
発光層においてTiO粒子に代えて、ScNbO粒子を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
(実施例5)
発光層においてTiO粒子に代えて、YVO粒子を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
【0095】
(実施例6)
発光層においてTiO粒子に代えて、YNbO粒子を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
(比較例)
前記工程[4]において、酸化チタン層上に、前記イリジウム錯体を真空蒸着法して、平均厚さ40nmの発光層を形成した以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
【0096】
2.評価
各実施例および比較例で製造した発光素子について、それぞれ、発光効率の評価を行った。
この発光効率の評価は、直流電源により、0Vから6Vに電圧を印加し、電流値を測定し、輝度を輝度計により測定することで行った。
その結果、各実施例の発光素子(本発明)では、いずれも、その発光効率が、比較例の発光素子に対して、約1.3倍以上、上昇することが確認された。
また、発光層に複合酸化物粒子を用いた実施例3〜6の発光素子、特に、実施例3の発光素子では、発光効率が高くなる傾向を示した。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の発光素子の実施形態の縦断面を模式的に示す図である。
【図2】本発明の発光装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0098】
1……発光素子 2……基板 3……陰極 4……発光層 41……無機半導体粒子(粒子) 42……正孔輸送材料 43……発光材料 5……正孔輸送層 6……陽極 7……封止部材 8……中間層 10……ディスプレイ装置 20……基体 21……基板 22……回路部 23……保護層 24……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 25……第1層間絶縁層 26……第2層間絶縁層 27……配線 31……第1隔壁部 32……第2隔壁部 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300‥‥ディジタルスチルカメラ 1302‥‥ケース(ボディー) 1304‥‥受光ユニット 1306‥‥シャッタボタン 1308‥‥回路基板 1312‥‥ビデオ信号出力端子 1314‥‥データ通信用の入出力端子 1430‥‥テレビモニタ 1440‥‥パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光層と、を含み、
前記発光層は、無機半導体材料と、第1の材料と、第2の材料と、を含み、
前記第1の材料および前記無機半導体材料のうちいずれか一つが発光機能を有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記第2の材料が前記無機半導体材料および前記第1の材料のうち少なくとも一つの発光に寄与するキャリアの輸送機能を有している請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1の材料が発光機能を有し、前記無機半導体材料が第1のキャリアを輸送する機能を有し、前記第2の材料が第2のキャリアを輸送する機能を有する請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1のキャリアは、電子であり、前記第2のキャリアは、正孔である請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記無機半導体材料は、金属酸化物である請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記金属酸化物は、3価元素と5価元素とを含有するものである請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第2の材料は、前記無機半導体材料に結合し得る結合基として、酸性基を少なくとも1つ有する請求項4ないし6のいずれかに記載の発光素子。
【請求項8】
前記酸性基は、−SOH基、−COOH基または−OP(O)(OH)基である請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
前記第1の材料は、金属錯体である請求項3ないし8のいずれかに記載の発光素子。
【請求項10】
前記発光層は、複数の粒子を含み、前記複数の粒子の各々が前記無機半導体材料を含んでいる請求項1ないし9のいずれかに記載の発光素子。
【請求項11】
前記複数の粒子の平均粒径が0.5〜10nmである請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記第2の材料は、前記複数の粒子の各々の表面に付着しているか、または、前記複数の粒子同士の間に充填されている請求項10または11に記載の発光素子。
【請求項13】
前記第2の材料は、前記無機半導体材料に結合し得る結合基を少なくとも1つ有する請求項1ないし12のいずれかに記載の発光素子。
【請求項14】
前記発光層において、前記無機半導体材料と前記第2の材料との比率は、重量比で20:80〜80:20である請求項1ないし13のいずれかに記載の発光素子。
【請求項15】
前記発光層において、前記無機半導体材料と前記第1の材料との比率は、重量比で95:5〜75:25である請求項1ないし14のいずれかに記載の発光素子。
【請求項16】
前記発光層は、その平均厚さが1〜100nmである請求項1ないし15のいずれかに記載の発光素子。
【請求項17】
前記発光層と前記第1の電極との間および前記発光層と前記第2の電極との間の少なくとも一方には、半導体材料および/または絶縁材料を主材料として構成される中間層を有する請求項1ないし16のいずれかに記載の発光素子。
【請求項18】
前記中間層は、その平均厚さが10nm以下である請求項17に記載の発光素子。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項20】
請求項19に記載の発光装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−237403(P2006−237403A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51979(P2005−51979)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】