説明

発光表示パネルの駆動装置および駆動方法

【課題】 ディマー制御によりモニタ用素子に与えるn段階に可変制御される電流値上限を、表示パネルに求められる最大輝度に応じた電流値に設定できるように構成すること。
【解決手段】 ディマー制御に基づいて、カレントミラー回路を構成するトランジスタQ2に接続されたモニタ用素子Exに対して、n段階に可変制御される定電流が供給される。この時発生するモニタ用素子Exの順方向電圧Vfに基づいて、発光表示パネルに供給される駆動電圧VHが生成される。前記カレントミラー回路には、可変抵抗手段VRが接続され、n段階に可変制御される電流値上限を、表示パネルに求められる最大輝度に応じた電流値に設定できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数の発光素子を配列した表示パネルを発光駆動させる駆動装置および駆動方法に関し、特に発光素子の経時変化に対応した輝度補償およびディマー制御を実現させる発光表示パネルの駆動装置および駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯型情報端末機(PDA)などの普及によって、高精細な画像表示機能を有し、薄型かつ低消費電力を実現することができる表示パネルの需要が増大しており、従来より液晶表示パネルがその要求を満たす表示パネルとして多くの製品に採用されてきた。一方、昨今においては自発光型表示素子であるという特質を生かした有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を用いた表示パネルが実用化され、これが従来の液晶表示パネルに代わる次世代の表示パネルとして注目されている。これは素子の発光機能層に、良好な発光特性を期待することができる有機化合物を使用することによって、実用に耐え得る高効率化および長寿命化が進んだことも背景にある。
【0003】
前記した有機EL素子は、基本的にはガラス等の透明基板上に、例えばITOによる透明電極と有機物質からなる発光機能層と金属電極とが順次積層されることで構成されている。そして、前記発光機能層は、有機発光層の単一層、あるいは有機正孔輸送層と有機発光層からなる二層構造、または有機正孔輸送層と有機発光層および有機電子輸送層からなる三層構造、さらにこれらの適切な層間に電子もしくは正孔の注入層を挿入した多層構造になされる場合もある。
【0004】
前記した有機EL素子は、電気的には図1のような等価回路で表すことができる。すなわち、有機EL素子は、発光エレメントとしてのダイオード成分Eと、このダイオード成分Eに並列に結合する寄生容量成分Cpとによる構成に置き換えることができ、有機EL素子は容量性の発光素子であると考えられている。
【0005】
この有機EL素子は、発光駆動電圧が印加されると、先ず当該素子の電気容量に相当する電荷が電極に変位電流として流れ込み蓄積される。続いて当該素子固有の一定の電圧(発光閾値電圧=Vth)を越えると、一方の電極(ダイオード成分Eのアノード側)から発光層を構成する有機層に電流が流れ初め、この電流に比例した強度で発光すると考えることができる。
【0006】
図2は、このような有機EL素子の発光静特性を示したものである。これによれば、有機EL素子は図2(a)に示すように、駆動電流Iにほぼ比例した輝度Lで発光し、図2(b)に実線で示すように駆動電圧Vが発光閾値電圧Vth以上の場合において急激に電流Iが流れて発光する。
【0007】
換言すれば、駆動電圧が発光閾値電圧Vth以下の場合には、EL素子には電流は殆ど流れず発光しない。したがって、EL素子の輝度特性は図2(c)に実線で示すように前記閾値電圧Vthより大なる発光可能領域においては、それに印加される電圧Vの値が大きくなるほど、その発光輝度Lが大きくなる特性を有している。
【0008】
一方、前記した有機EL素子は、長期の使用によって素子の物性が変化し、順方向電圧Vfが大きくなることが知られている。このために、有機EL素子は図2(b)に示したように実使用時間によって、V−I(L)特性が矢印に示した方向(破線で示した特性)に変化し、したがって輝度特性も低下することになる。
【0009】
さらに、有機EL素子の輝度特性は、温度によって概ね図2(c)に破線で示すように変化することも知られている。すなわちEL素子は、前記した発光閾値電圧より大なる発光可能領域においては、それに印加される電圧Vの値が大きくなるほど、その発光輝度Lが大きくなる特性を有するが、高温になるほど発光閾値電圧が小さくなる。したがってEL素子は、高温になるほど小さい印加電圧で発光可能な状態となり、同じ発光可能な印加電圧を与えても、高温時は明るく低温時は暗いといった輝度の温度依存性を有している。
【0010】
前記したように、EL素子は環境温度により、また経時変化により発光輝度が変化するので、この輝度特性を補償するためにモニタ用EL素子を用いてその順方向電圧を取得し、当該順方向電圧に基づいて表示用EL素子を発光駆動する電源電圧を制御するように構成した駆動装置を本件出願人において提案している。前記した例は次に示す特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2004−252036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記した発光表示パネルにおいては、一般的にパネル全体の表示輝度を制御するディマー機能を備えており、このようなディマー機能を実現させる一つの手段として、電流ディマー制御を挙げることができる。この電流ディマー制御は、各画素を構成するEL素子に供給する駆動電流値を制御するものであり、具体的な例として図3に示すような構成を採用することができる。
【0012】
図3に示す構成においては、所望のディマー値に設定しようとする場合においては、選択されたデジタルデータによるディマー情報が、D/Aコンバータ1に供給されてアナログ電圧に変換され、このアナログ電圧により制御される電圧/電流変換手段として機能するトランジスタQ3を備えたカレントミラー回路により、モニタ用EL素子Exに定電流を供給するように構成されている。前記カレントミラー回路においては、電圧源Vccにpnp型トランジスタQ1,Q2の各エミッタが接続されており、各トランジスタQ1,Q2のベースは共通接続されている。そして、電流制御側を構成するトランジスタQ1のベース・コレクタ間は直結された構成にされている。
【0013】
前記トランジスタQ1のコレクタには電圧/電流変換手段として機能するnpn型の前記したトランジスタQ3のコレクタが接続されており、そのエミッタは抵抗R0を介してグランドに接続されている。そして、トランジスタQ3のベースには、前記したD/Aコンバータ1からのアナログ電圧が供給されるように構成されている。
【0014】
したがって、トランジスタQ3はD/Aコンバータ1より供給されるアナログ電圧によって、カレントミラー回路の電流制御側において動作する電流吸い込み回路として機能し、トランジスタQ3により吸い込まれる電流値Iinに対応した電流が、電流被制御側トランジスタQ2のコレクタに接続されたモニタ用素子Exに対して定電流Ioutとして供給されるように作用する。
【0015】
前記したカレントミラー回路の構成によると、前記したディマー値の変更制御に伴い、電流制御側の電流値Iinが段階的に変更され、これに伴いモニタ用素子Exに供給される電流被制御側の定電流Ioutも段階的に変更される。
【0016】
そして、前記モニタ用素子Exに供給される定電流Ioutに基づいて発生する順方向電圧Vfがサンプリングホールド回路2によってホールドされ、そのホールドされた順方向電圧は駆動電圧制御部としてのDC−DCコンバータ3に対して制御電圧として供給されるように構成されている。前記DC−DCコンバータ3は、例えばバッテリーを一次側電源とする昇圧型のコンバータを構成しており、このコンバータによる出力電圧VHが、発光表示パネルの駆動用電源として利用されることになる。
【0017】
したがって、前記コンバータ3によって得られる出力電圧VHは、前記したディマー値の設定に応じた駆動電圧になされると共に、発光表示パネルに配列された発光素子(EL素子)の環境温度および経時変化に対応した発光輝度を補償する駆動電圧になされる。
【0018】
ところで、前記した発光表示パネルを搭載する機器や、表示パネルを使用する環境に応じて表示パネルに求められる最大輝度は異なる。このためにモニタ用素子Exによる順方向電圧に基づいて表示パネルに供給される出力電圧VHを得る図3に示す構成おいては、前記した最大輝度の設定を変えることにより、モニタ用素子Exに供給される定電流値Ioutの上限も異なる値を選択する必要が生ずる。しかしながら、図3に示した構成を採用した場合においては、ディマー制御による定電流値Ioutの可変範囲は固定であり、ディマー制御の一段階毎に制御される電流値の変化幅も一定になされるため、次に説明するような技術的な問題点を抱えている。
【0019】
図4は、前記した問題点を説明するものであり、その横軸はn段階に制御されるディマー制御の度合い、すなわち図4においては一例として10段階(n=10)のディマー制御を行う場合のD/Aコンバータ3の出力を示している。また、図4の縦軸はディマー制御に伴う前記したモニタ用素子Exに供給される定電流Ioutの値を示している。
【0020】
図4に示すように、定電流値Ioutの上限を200μAとして、これに対応して10段階のディマー制御を行うように設定されている場合、表示パネルに求められる最大輝度を落とすことに伴い定電流値の上限を例えば100μAとした場合には、ディマー制御の可能な段数は半減して5段階制御に限定される。またディマー制御の一段階毎の定電流値Ioutの可変幅は、図4に“a”で示したように変わらないため、ディマー制御の制御可能な幅に対する電流値の一段階毎の可変幅が相対的に大きくなり、相対的に一段階毎の電流値の精細な制御が不可能になるという問題が発生する。
【0021】
この発明は、前記した技術的な問題点に着目してなされたものであり、n段階に可変制御される前記電流値の上限を、表示パネルに求められる最大輝度に応じた種々の電流値に設定することを可能にし、n段階に制御されるディマー制御に基づく各段階毎の電流値の可変幅を適切な値に設定することができる発光表示パネルの駆動装置および駆動方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる発光表示パネルの駆動装置は、請求項1に記載のとおり、多数の発光素子を表示用画素として配列し、前記各発光素子を映像信号に基づいて選択的に発光駆動させるように構成した発光表示パネルの駆動装置であって、定電流源からの定電流を供給することにより、前記発光表示パネルに配列された表示用発光素子の順方向電圧に対応する電圧値を取り出すことができるモニタ用素子と、前記モニタ用素子により得られる前記順方向電圧に対応する電圧値に基づいて、前記発光表示パネルに与える駆動電圧を制御する駆動電圧制御部と、前記表示パネルの表示輝度をn段階に設定するディマー情報に応じて、前記定電流源よりモニタ用素子に供給する定電流値をn段階に可変制御する電流値可変手段と、前記n段階に可変制御される定電流値の上限を、点灯駆動させる表示パネルに求められる最大輝度に応じた前記定電流値に設定することができる上限値設定手段とを具備したことを特徴とする。
【0023】
また、前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる発光表示パネルの駆動方法は、請求項12に記載のとおり、多数の発光素子を表示用画素として配列し、前記各発光素子を映像信号に基づいて選択的に発光駆動させるように構成した発光表示パネルと、定電流源からの定電流を供給することにより、前記発光表示パネルに配列された表示用発光素子の順方向電圧に対応する電圧値を取り出すことができるモニタ用素子と、前記モニタ用素子により得られる前記順方向電圧に対応する電圧値に基づいて、前記発光表示パネルに与える駆動電圧を制御する駆動電圧制御部とを備えた発光表示パネルの駆動方法であって、前記表示パネルの表示輝度をn段階に設定するディマー情報に応じて、前記定電流源よりモニタ用素子に供給する定電流値をn段階に可変制御する工程において、前記n段階に可変制御される定電流値の上限を、点灯駆動させる表示パネルに求められる最大輝度に応じた前記定電流値に設定する点に特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明にかかる発光表示パネルの駆動装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図5はその第1の実施の形態を示したものであり、図3に基づいて説明した各部と同一の機能を果たす部分は同一符号で示しており、したがってその詳細な説明は適宜省略する。
【0025】
この図5に示した実施の形態においては、表示パネルの表示輝度をn段階に設定するディマー情報は、符号4で示したディマー設定手段より、CPUを含む演算回路6に供給され、演算回路6よりD/Aコンバータ1に対してディマー設定値としてのデジタルデータが供給されるように構成されている。そして、ディマー情報としてのデジタルデータが、D/Aコンバータ1においてアナログ電圧に変換されて、トランジスタQ3のゲートに供給される。
【0026】
前記トランジスタQ3は、図3に基づいて説明したとおり、トランジスタQ1,Q2からなるカレントミラー回路の電流制御側における電圧/電流変換手段として機能し、前記カレントミラー回路によってモニタ用素子Exに供給する定電流値Ioutを、ディマー設定情報に応じて、n段階に可変制御する電流可変手段としての機能を果たす。
【0027】
なお、図5に示した実施の形態においては、前記演算回路6に対してメモリ5から読み出された発光素子の輝度のばらつき情報が供給されるように構成されている。この輝度のばらつき情報は、表示パネルを含むモジュール出荷前の輝度調整工程において得られる表示パネルに配列された表示用の各EL素子の輝度特性データをメモリ5に格納したものである。
【0028】
すなわち、メモリ5から読み出された発光素子の輝度特性のばらつき情報が演算回路6に供給され、n段階に制御されるディマー設定のデータを補正することにより、電流値可変手段としてのトランジスタQ3のベース電位を制御し、結果として前記輝度のばらつきを収束させるように作用させる。
【0029】
また、図5における前記した電流可変手段としてのトランジスタQ3のエミッタには、可変抵抗手段VRが直列に接続されている。この可変抵抗手段VRは、その抵抗値を変化させることでカレントミラー回路の電流制御側における電流値Iinの上限値を可変するように動作する。すなわち、n段階に可変制御される定電流値Ioutの上限を、点灯駆動させる表示パネルに求められる最大輝度に応じた前記定電流値に設定するように作用する。したがって、ここでは前記可変抵抗手段VRを上限値設定手段と称呼することにする。
【0030】
図6は上限値設定手段としての前記可変抵抗手段VRの作用を説明するものであり、横軸は、すでに説明した図4と同様にn段階(n=10)のディマー制御を行う場合のD/Aコンバータ3の出力を示し、縦軸は同様にディマー制御に伴う前記したモニタ用素子Exに供給される定電流Ioutの値を示している。
【0031】
ところで、表示パネルが搭載される機器等に応じて、同一仕様の表示パネルであっても表示素子の点灯時に必要とされる輝度の上限が異なる場合が発生することはすでに説明したとおりである。そこで、図6においては、ある機器においては比較的高い輝度上限が求められ、その輝度上限に対応して必要とされる定電流Ioutの上限値が200μA(特性A)である場合と、前記に比較して低い輝度上限が求められ、その輝度上限に対応して必要とされる定電流Ioutの上限値が100μA(特性B)である場合を示している。
【0032】
前記した定電流Ioutの上限値は、可変抵抗手段VRの値を選択することにより適宜設定することができ、例えば定電流Ioutの上限値が200μA(特性A)である場合には、前記可変抵抗手段VRとして低い抵抗値を選定することで、D/Aコンバータからのn段階(この例では10段階)のディマー制御を確保することができる。この場合には、ディマー制御の一段階毎において変化する定電流値Ioutの変化幅は、“a”で示した幅になる。
【0033】
また、例えば定電流Ioutの上限値が100μA(特性B)を選択する場合には、前記可変抵抗手段VRとしてより高い抵抗値を選定することで、D/Aコンバータからのn段階のディマー制御を確保し、またディマー制御の一段階毎において変化する定電流値Ioutの変化幅は、“b”で示した幅にすることができる。この場合、変化幅“a”と“b”との関係はa>bとなっており、したがってより精細な定電流値の可変制御特性を得ることができる。
【0034】
前記したように図5で示した構成によると、上限値設定手段としての前記可変抵抗手段VRの値を選定することで、前記した電流値Ioutの上限を表示パネルに求められる最大輝度に応じた種々の電流値に設定することを可能にし、n段階に制御されるディマー制御に基づく各段階毎の電流値の可変幅を適切な値に設定することが可能となる。
【0035】
図7は、図5に示した駆動電圧制御部としてのDC−DCコンバータ3より得られる出力VHを駆動電圧として利用するアクティブマトリクス型発光表示パネルの一例を示したものである。なお、図7に示す表示パネル10においては紙面の都合により、その上下左右端に配置された画素構成のみを示し、それらの中間部分に位置する各画素は省略して示している。
【0036】
図7に示すように表示パネル10には、データドライバ11からのデータ信号が供給されるデータ線A1〜Amが縦方向に配列され、また、ゲートドライバ12からの走査選択信号が供給される走査選択線B1〜Bnが横方向に配列されている。さらに、表示パネル10には、前記各データ線に対応して縦方向に電源供給線P1〜Pmが配列されており、これら電源供給線には、図5に示したDC−DCコンバータ3よりもたらされる駆動電圧VHが供給されるように構成されている。
【0037】
表示パネル10に配列された各画素は、その一例としてコンダクタンスコントロール方式による画素構成が示されている。すなわち、図7に示す左上の画素を構成する各素子に符号を付けて示したとおり、nチャンネル型TFTで構成された制御用トランジスタTr1のゲートは、走査選択線B1に接続され、そのソースはデータ線A1に接続されている。また、制御用トランジスタTr1のドレインは、pチャンネル型TFTで構成された発光駆動トランジスタtr2のゲートに接続されると共に、電荷保持用コンデンサCsの一方の端子に接続されている。
【0038】
そして、発光駆動トランジスタTr2のソースは前記コンデンサCsの他方の端子に接続されると共に、電源供給線P1に接続されている。また、発光駆動トランジスタのドレインには、発光素子としてのEL素子E1のアノードが接続されると共に、当該EL素子E1のカソードは電圧値VKで示すカソード側共通電極に接続されている。
【0039】
前記した画素構成において、制御用トランジスタTr1のゲートに、走査選択線B1を介してゲートドライバ12よりオン電圧が供給されると、制御用トランジスタTr1はソースに供給されるデータ線A1からのデータ電圧に対応した電流を、ソースからドレインに流す。したがって、制御用トランジスタTr1のゲートがオン電圧の期間に、前記コンデンサCsが充電され、その電圧が発光駆動トランジスタTr2のゲートに供給される。
【0040】
それ故、発光駆動トランジスタTr2は、そのゲートとソース間電圧に基づいてオン動作され、前記DC−DCコンバータ3よりもたらされる駆動電圧VHをEL素子E1に印加し、EL素子を発光駆動させる。すなわち、この実施の形態においてはTFTで構成された発光駆動トランジスタTr2は、データドライバから供給されるデータ電圧によってオンまたはオフの二態様のスイッチング動作(線形領域で動作)するように構成されている。
【0041】
一方、制御用トランジスタTr1のゲートがオフ電圧になると、当該トランジスタはいわゆるカットオフとなり、制御用トランジスタTr1のドレインは開放状態となるものの、発光駆動トランジスタTr2はコンデンサCsに蓄積された電荷によりゲート電圧が保持され、次の走査まで前記した駆動電圧VHをEL素子E1に印加する状態を継続し、これによりEL素子E1の発光も維持される。
【0042】
前記したDC−DCコンバータ3よりもたらされる駆動電圧VHは、すでに説明したとおり、前記したディマー値の設定に応じた駆動電圧になされると共に、発光表示パネルに配列されたEL素子の環境温度および経時変化に対応した発光輝度を補償する駆動電圧になされている。したがって、各画素を構成するEL素子E1は、選択的に前記駆動電圧VHを受けて、図2に示すV−I(L)特性をもって発光制御されることになる。
【0043】
図8は、この発明にかかる発光表示パネルの駆動装置の第2の実施の形態を示したものである。なお、図8においては図5に基づいて説明した各部と同一の機能を果たす部分は同一符号で示しており、したがってその詳細な説明は適宜省略する。この図8に示す実施の形態においては、図5に示す構成に対して、さらに最大輝度情報取得手段7および制御手段8が備えられている。
【0044】
前記最大輝度情報取得手段7は、前記した表示パネルが搭載される機器に応じて設定される前記した表示パネルの輝度上限の値、換言すれば、その輝度上限に対応して必要とされる定電流Ioutの上限値に対応した設定値を取得するものである。この最大輝度情報取得手段7からもたらされる設定値は制御手段8に供給され、制御手段8は前記設定値に基づいて、前記可変抵抗手段VRの抵抗値を設定する動作を実行するようになされる。すなわち、制御手段8は最大輝度情報取得手段7からもたらされる例えば数ビットのデジタルデータをデコードし、そのデコード出力により可変抵抗手段VRの抵抗値を設定するように動作する。
【0045】
図9は制御手段8から出力されるデコード出力である制御信号によって、可変抵抗手段VRの抵抗値を設定する具体例を示したものである。図9(A)はオン抵抗の異なる複数のトランジスタ、すなわち図に示す形態においては互いのコレクタおよびエミッタを共通接続した3つのnpn型トランジスタQ4〜Q6が用いられている。そして、制御信号によっていずれかのトランジスタがオン動作され、これにより前記した上限値設定手段を構成する可変抵抗手段VRの抵抗値が変更されるように動作する。
【0046】
また、図9(B)は抵抗値の異なる抵抗素子R1〜R3をスイッチS1〜S3によって切り換え選択できるように構成されており、スイッチS1〜S3は制御信号によっていずれかのスイッチが択一的に、もしくは複数のスイッチが共にオンされるように動作する。これにより前記した上限値設定手段を構成する可変抵抗手段VRの抵抗値が変更される。
【0047】
前記した図8および図9に示す構成を採用した駆動装置によると、図6に示した例えばA特性またはB特性、もしくはその中間特性を適宜設定することができ、また図5に示した構成による前記した作用効果もそのまま享受することができる。
【0048】
なお、前記した実施の形態においては、表示パネルに配列される表示用発光素子およびモニタ用の素子として有機EL素子を用いた例を示しているが、これは図2に示したような経時変化および温度依存性を有する他の発光素子を用いた場合においても、同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】有機EL素子の等価回路図である。
【図2】有機EL素子の諸特性を示した静特性図である。
【図3】この発明の解決課題を伴う駆動装置の一例を示した回路構成図である。
【図4】図3に示す構成においてなされるディマー制御の動作を説明する特性図である。
【図5】この発明にかかる駆動装置の第1の実施の形態を示した回路構成図である。
【図6】図5に示す構成においてなされるディマー制御の動作を説明する特性図である。
【図7】図5に示す構成による出力電圧を利用して点灯制御される表示パネルの例を示した回路構成図である。
【図8】この発明にかかる駆動装置の第2の実施の形態を示した回路構成図である。
【図9】図8に示す実施の形態において好適に採用される可変抵抗手段の例を示す回路構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1 D/Aコンバータ
2 サンプリングホールド回路
3 DC−DCコンバータ(駆動電圧制御部)
4 ディマー設定手段
5 メモリ
6 演算回路
7 最大輝度情報取得手段
8 制御手段
10 発光表示パネル
11 データドライバ
12 ゲートドライバ
Cs 電荷保持用コンデンサ
E1 発光素子(有機EL素子)
Ex モニタ用素子(有機EL素子)
Q1,Q2 トランジスタ(カレントミラー回路)
Q3 トランジスタ(電流値可変手段)
Tr1 制御用トランジスタ
Tr2 発光駆動トランジスタ
VR 可変抵抗手段(上限値設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の発光素子を表示用画素として配列し、前記各発光素子を映像信号に基づいて選択的に発光駆動させるように構成した発光表示パネルの駆動装置であって、
定電流源からの定電流を供給することにより、前記発光表示パネルに配列された表示用発光素子の順方向電圧に対応する電圧値を取り出すことができるモニタ用素子と、
前記モニタ用素子により得られる前記順方向電圧に対応する電圧値に基づいて、前記発光表示パネルに与える駆動電圧を制御する駆動電圧制御部と、
前記表示パネルの表示輝度をn段階に設定するディマー情報に応じて、前記定電流源よりモニタ用素子に供給する定電流値をn段階に可変制御する電流値可変手段と、
前記n段階に可変制御される定電流値の上限を、点灯駆動させる表示パネルに求められる最大輝度に応じた前記定電流値に設定することができる上限値設定手段と、
を具備したことを特徴とする発光表示パネルの駆動装置。
【請求項2】
前記電流値可変手段は、前記ディマー情報に応じてn段階に変化するアナログ電圧を受けて、前記モニタ用素子に供給する定電流値をn段階に可変制御する電圧/電流変換手段により構成されていることを特徴とする請求項1に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項3】
前記n段階に変化するアナログ電圧は、前記ディマー情報をデジタルデータで受けるD/Aコンバータにより生成するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項4】
前記モニタ用素子に定電流を供給する定電流源は、カレントミラー回路により構成され、当該カレントミラー回路における電流制御側に、前記電流値可変手段が接続されると共に、前記カレントミラー回路における電流被制御側に前記モニタ用素子を接続したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項5】
前記電流値可変手段が、前記カレントミラー回路における電流制御側に直列に接続されたトランジスタにより構成され、前記トランジスタの制御極端子に前記ディマー情報に応じてn段階に変化するアナログ電圧が供給されるように構成したことを特徴とする請求項4に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項6】
前記上限値設定手段が、前記カレントミラー回路における電流制御側に接続された前記電流値可変手段に対して、さらに直列に接続された可変抵抗手段により構成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項7】
前記上限値設定手段を構成する可変抵抗手段は、オン抵抗の異なる複数のトランジスタのうちいずれかをオン動作させるように構成したことを特徴とする請求項6に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項8】
前記上限値設定手段を構成する可変抵抗手段は、抵抗値の異なる抵抗素子をスイッチによって切り換え選択できるように構成したことを特徴とする請求項6に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項9】
前記表示パネルに配列された表示用画素を構成する発光素子の輝度特性のばらつきに対応したデータを格納するメモリ手段がさらに具備され、前記メモリ手段から読み出された発光素子の輝度のばらつき情報に基づいて、前記電流値可変手段を制御することで、前記輝度のばらつきを収束させるように構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項10】
点灯駆動させる表示パネルに求められる最大輝度に対応した情報を取得する最大輝度情報取得手段がさらに具備され、前記最大輝度情報取得手段によって得られる最大輝度に対応した情報に基づいて、前記上限値設定手段によって前記定電流値の上限を設定するように構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項11】
前記表示用画素における発光素子は、有機物質からなる発光機能層を少なくとも一層含む有機EL素子であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項12】
多数の発光素子を表示用画素として配列し、前記各発光素子を映像信号に基づいて選択的に発光駆動させるように構成した発光表示パネルと、定電流源からの定電流を供給することにより、前記発光表示パネルに配列された表示用発光素子の順方向電圧に対応する電圧値を取り出すことができるモニタ用素子と、前記モニタ用素子により得られる前記順方向電圧に対応する電圧値に基づいて、前記発光表示パネルに与える駆動電圧を制御する駆動電圧制御部とを備えた発光表示パネルの駆動方法であって、
前記表示パネルの表示輝度をn段階に設定するディマー情報に応じて、前記定電流源よりモニタ用素子に供給する定電流値をn段階に可変制御する工程において、前記n段階に可変制御される定電流値の上限を、点灯駆動させる表示パネルに求められる最大輝度に応じた前記定電流値に設定することを特徴とする発光表示パネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−276098(P2006−276098A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90575(P2005−90575)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】