説明

発光装置、その駆動回路および電子機器

【課題】 各駆動トランジスタの特性のバラツキや駆動トランジスタや発光素子の特性の
変化など様々な要因に拘わらず各発光素子を高い精度で所期の輝度に制御する。
【解決手段】 複数の単位回路Uの各々は、ゲートの電位に応じた駆動電流Ielを生成す
る駆動トランジスタ12と駆動電流Ielに応じた輝度に発光する発光素子14とを含む。
指定回路27は電圧を指定する。各単位回路Uに対応する信号処理回路23は、駆動トラ
ンジスタ12を飽和領域で動作させる電圧V1ないしV4の何れかを指定回路27による指
定に応じて選択したうえで電圧Vselとして出力する選択回路232と、各発光素子14
に指定された階調値に応じた時間密度で電圧Vselとなるデータ信号Vdを駆動トランジス
タ12のゲートに出力するレベルシフタ233とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(以下「OLED(Organic Light Emitting Diode)」とい
う)素子などの発光素子の挙動を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子が発光する時間長を制御することによって各発光素子を所望の階調に制御する
技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、発光素子とその陽極にソースが
接続されたnチャネル型のトランジスタ(以下「駆動トランジスタ」という)とをマトリ
クス状に配列した装置が開示されている。この構成においては、所定の期間のうち発光素
子に指定された階調値に応じた時間長の期間にて駆動トランジスタのゲートにオン電圧(
駆動トランジスタをオン状態とする電圧)が印加される一方、その残余の期間にて駆動ト
ランジスタのゲートにオフ電圧(駆動トランジスタをオフ状態とする電圧)が印加される
。オン電圧の印加によって駆動トランジスタがオン状態に遷移すると、発光素子を発光さ
せる電流(以下「駆動電流」という)が駆動トランジスタを経由して発光素子に供給され
る。一方、オフ電圧の印加によって駆動トランジスタがオフ状態にある場合には駆動電流
の供給の停止によって発光素子は消灯する。
【特許文献1】特開2002−108285号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、各駆動トランジスタには例えば製造プロセスに起因した特性(閾値電圧
やキャリア移動度)のバラツキが発生する場合がある。このように特性が相違する場合に
は、各駆動トランジスタのゲートに同じ電圧を印加したとしても各駆動トランジスタに流
れる駆動電流はバラつく。したがって、本来ならば同一であるべき各発光素子の輝度が実
際には相違するという問題がある。また、駆動トランジスタの特性や発光素子の特性(電
圧−電流特性)は温度や経年に応じて変化する。このような特性の変化によっても駆動電
流にバラツキが生じ、各発光素子の輝度が所期の輝度からズレる場合がある。本発明は、
このような事情に鑑みてなされたものであり、各駆動トランジスタの特性のバラツキや駆
動トランジスタや発光素子の特性の変化など様々な要因に拘わらず各発光素子を高い精度
で所期の輝度に制御するという課題の解決を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、ゲートの電位に応じた駆動電流
を生成する駆動トランジスタと駆動電流に応じた輝度に発光する発光素子とを各々が含む
複数の単位回路と、各々が単位回路に対応する複数の信号処理手段と、各信号処理手段に
対して電圧を指定する指定手段とを具備し、各信号処理手段は、駆動トランジスタを飽和
領域で動作させる電圧を指定手段による指定に応じて可変に出力する電圧調整手段と、電
圧調整手段が出力した電圧を、発光素子に指定された階調値に応じた時間密度で、当該信
号処理手段に対応する駆動トランジスタのゲートに出力する出力手段とを具備する。例え
ば、出力手段は、単位期間のうち発光素子に指定された階調値に応じた時間長の期間にお
いて、電圧調整手段が出力した電圧を駆動トランジスタのゲートに出力する一方、その残
余の期間において、当該駆動トランジスタをオフ状態とする電圧を駆動トランジスタのゲ
ートに出力する。
【0005】
この構成によれば、階調値に応じた時間密度で駆動トランジスタのゲートに出力される
電圧を指定手段による指定に応じて変化させることができるから、指定手段によって指定
される電圧を適宜に選定することによって、各駆動トランジスタの特性のバラツキなど様
々な要因に拘わらず各発光素子を初期の輝度に制御することができる。また、駆動トラン
ジスタは飽和領域で動作するから、各発光素子の特性のバラツキや経時的な変化が発生し
ている場合であっても所期の電流値の駆動電流を生成することができる。
【0006】
本発明の具体的な態様においては、指定手段が、各単位回路の駆動トランジスタの特性
に応じた電圧を当該単位回路に対応した信号処理手段に指定する。より詳細には、指定手
段は、複数の単位回路のうち第1の単位回路および第2の単位回路の各々に共通の階調値
が指定されたときに第1の単位回路および第2の単位回路の各駆動トランジスタによって
生成される駆動電流が略等しくなるように、第1の単位回路に対応する信号処理手段と第
2の単位回路に対応する信号処理手段とに対して別個の電圧を指定する、この態様によれ
ば、駆動トランジスタの特性値(例えば閾値電圧やキャリア移動度やオン抵抗)にバラツ
キや経時的な変化がある場合であっても、目標の駆動電流を高精度に生成して各発光素子
を所期の輝度に発光させることができる。この態様の具体例は第1実施形態として後述さ
れる。
【0007】
なお、電圧調整手段が出力する電圧が各駆動トランジスタの特性値以外の要素に応じて
調整される構成としてもよい(例えば後述する第2実施形態)。例えば、第1に、各単位
回路またはその周囲の温度を検出する温度センサを設け、指定手段が、温度センサが検出
した温度に応じた電圧を指定する構成としてもよい。この構成によれば、駆動トランジス
タや発光素子の特性が温度に応じて変化する場合であっても、この特性の変化に拘わらず
各発光素子を所期の輝度に発光させることができる。第2に、発光装置が使用された時間
長を特定する時間特定手段(例えば図4の時間特定部32)を設け、指定手段が、時間特
定手段が特定した時間長に応じた電圧を指定する構成としてもよい。この構成によれば、
駆動トランジスタや発光素子の特性が経時的に変化した場合であっても、この特性の変化
に拘わらず各発光素子を所期の輝度に発光させることができる。
【0008】
第3に、複数の発光素子の全体的な明度を指定する明度指定手段(例えば図4の明度指
定部33)を設け、指定手段が、明度特定手段が特定した明度に応じた電圧を指定する構
成としてもよい。この構成によれば、明度指定手段が指定した明度に応じて各発光素子の
実際の輝度を簡易な構成によって確実に調整することができるという利点がある。第4に
、指定手段が、複数の発光素子の各々に指定された階調値に応じた電圧を指定する構成も
採用される。例えば、指定手段は、各発光素子の階調値の平均値や各発光素子の階調値の
最大値に応じた電圧を指定する。この構成によれば、各発光素子の輝度を各々の階調値に
応じて容易に調整することができる。
【0009】
本発明の具体的な態様において、各信号処理手段の電圧調整手段は、各々の電圧値が相
違する複数の電圧を生成する電圧生成回路と、複数の電圧のうち指定手段による指定に応
じた電圧を選択する選択回路とを含む。この態様によれば、電圧生成回路によって生成さ
れた複数の電圧の何れかが指定手段による指定に応じて選択されるから、例えば電圧調整
手段が出力していた電圧が指定手段による指定に応じて変圧される構成と比較して、電圧
調整手段の構成を簡素化することができる。
【0010】
また、本発明の具体的な態様において、指定手段は、電圧調整手段が出力すべき電圧を
記憶する記憶手段(例えば図1のメモリ271)を含み、この記憶手段による記憶の内容
に基づいて各信号処理手段に電圧を指定する。この態様によれば、記憶手段による記憶の
内容を適宜に更新することによって、電圧調整手段から出力される電圧を容易かつ確実に
調整することができる。
【0011】
別の観点からすると、本発明に係る発光装置は、ゲートの電位に応じた駆動電流を生成
する駆動トランジスタと、駆動電流に応じた輝度に発光する発光素子と、電圧を指定する
指定手段と、駆動トランジスタを飽和領域で動作させる電圧を指定手段による指定に応じ
て可変に出力する電圧調整手段と、電圧調整手段が出力した電圧を発光素子に指定された
階調値に応じた時間密度で駆動トランジスタのゲートに出力する出力手段とを具備する。
【0012】
本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、発光
装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソナルコン
ピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示
に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成
するための露光装置(露光ヘッド)としても本発明の発光装置を適用することができる。
【0013】
本発明は、発光装置を駆動するための回路としても特定される。すなわち、本発明に係
る発光装置用駆動回路は、ゲートの電位に応じた駆動電流を生成する駆動トランジスタと
駆動電流に応じた輝度に発光する発光素子とを各々が含む複数の単位回路を具備する発光
装置を駆動する回路であって、各々が単位回路に対応する複数の信号処理手段と、各信号
処理手段に対して電圧を指定する指定手段とを具備し、各信号処理手段は、駆動トランジ
スタを飽和領域で動作させる電圧を指定手段による指定に応じて可変に出力する電圧調整
手段と、電圧調整手段が出力した電圧を、発光素子に指定された階調値に応じた時間密度
で、当該信号処理手段に対応する駆動トランジスタのゲートに出力する出力手段とを含む
。この発光装置用駆動回路によっても、本発明の発光装置と同様の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。本実施
形態における発光装置Dは、感光体の露光によって潜像を形成する方式の画像形成装置(
印刷装置)において感光体を露光するための露光ヘッドとして利用される装置である。図
1に示されるように、発光装置Dは、n個(nは自然数)の単位回路Uが主走査方向に沿
って線状に配列された発光部10と、各単位回路Uを駆動する駆動回路20と、駆動回路
20の動作を制御するための制御回路40とを含む。
【0015】
発光部10を構成するn個の単位回路Uの各々は駆動トランジスタ12と発光素子14
とを含む。発光素子14は、駆動電流Ielに応じた輝度に発光する電流駆動型の素子であ
り、例えば、有機EL(ElectroLuminescent)材料からなる発光層を陽極と陰極との間隙
に介在させたOLED素子である。各発光素子14の陰極は接地(Gnd)される。これら
の発光素子14の各々を選択的に発光させることによって、用紙などの記録材に形成され
るべき画像(顕像)に対応した潜像が感光体の表面に形成される。一方、駆動トランジス
タ12は、ゲートの電位に応じた駆動電流Ielを生成するためのpチャネル型のトランジ
スタ(例えば薄膜トランジスタ)であり、ドレインが発光素子14の陽極に接続される。
各駆動トランジスタ12のソースは、電源の高位側の電位(以下「電源電圧」という)V
ELが印加される電源線17に接続される。
【0016】
制御回路40は、クロック信号など各種の信号の供給によって駆動回路20の動作のタ
イミングを規定するとともに、各発光素子14の階調値を指定する階調データGを駆動回
路20に出力する。本実施形態における階調データGは、階調値「0」から階調値「15
」までの合計16段階の何れかを指定する4ビットのデジタルデータである。駆動回路2
0は、各発光素子14が階調データGに応じた階調(輝度)となるように各単位回路Uを
駆動する。図1に示されるように、駆動回路20は、階調データGを記憶するラインメモ
リ21と、発光素子14の総数に相当するn個の信号処理回路23と、電圧生成回路25
および指定回路27とを含む。
【0017】
ラインメモリ21は、n個の発光素子14の各々に対応した階調データG(G1,G2,
……,Gn)を制御回路40から受信して順次に記憶する。ラインメモリ21に格納され
たn個の階調データGは、制御回路40が指定するタイミングで同時に読み出されて各信
号処理回路23に出力される。第i段目(iは1≦i≦nを満たす整数)の発光素子14
の階調値を指定する階調データGiは、図1の左方から数えて第i段目の信号処理回路2
3に入力される。
【0018】
各信号処理回路23は、各々に対応する単位回路Uに対してデータ信号Vd(Vd[1],
Vd[2],……,Vd[n])を出力する。データ信号Vd[i]は、第i段目の発光素子14を、
所定の期間(以下「単位期間」という)Pのうち階調データGiに応じた時間長の期間に
て発光させるとともにその残余の期間にて消灯させるための信号である。
【0019】
図1に示されるように、信号処理回路23は、パルス生成回路231と選択回路232
とレベルシフタ233とを含む。パルス生成回路231は、階調データGiに応じたパル
ス幅のパルス信号SPを生成する手段である。図2は、階調データGiによって指定される
階調値(「0」から「15」)とパルス生成回路231が生成するパルス信号SPの波形
との関係を示すタイミングチャートである。同図に示されるように、パルス信号SPは、
階調データGiによって指定される階調値が大きいほど、単位期間Pのうちハイレベルを
維持する時間長(すなわちパルス幅)が長くなるように生成される。ただし、最低の階調
値「0」が指定された場合には単位期間Pの全区間にわたってローレベルを維持する信号
となる。また、最高の階調値「15」に対応するパルス信号SPは、単位期間Pのうちブ
ランキング期間Pbを除く総ての区間にわたってハイレベルを維持する。ただし、階調値
「15」に対応するパルス信号SPは、単位期間Pの全区間にわたってハイレベルを維持
する信号であってもよい。
【0020】
図1に示される電圧生成回路25は、各々の電圧値が相違する4種類の電圧V1ないし
V4を例えば抵抗分圧によって生成する回路である。これらの電圧V1ないしV4は、接地
電圧Gndよりも高く電源電圧VELよりも低い電圧であり、各々が駆動トランジスタ12の
ゲートに供給されたときに当該駆動トランジスタ12が飽和領域にてオン状態となるよう
に電圧値が選定されている。飽和領域とは、駆動トランジスタ12に流れる電流(駆動電
流Iel)がそのソース・ドレイン間の電圧に拘わらず略一定となる動作の範囲(つまり駆
動電流Ielがソース・ドレイン間の電圧に依存する線形領域以外の領域)である。換言す
ると、飽和領域とは、駆動トランジスタ12に流れる駆動電流Ielとそのゲート・ソース
間の電圧Vgsとの間に以下の式(1)の関係が成立する範囲としても特定される。なお、式(
1)における「β」は駆動トランジスタ12の利得係数であり、「Vth」は駆動トランジス
タ12の閾値電圧である。
Iel=β/2・(Vgs−Vth)2 ……(1)
【0021】
指定回路27は、電圧V1ないしV4の何れかを信号処理回路23ごとに個別に指定する
手段である。一方、各信号処理回路23の選択回路232は、電圧生成回路25から出力
される電圧V1ないしV4の何れかを指定回路27からの指定に応じて選択したうえで電圧
Vselとして出力する。この電圧Vselは、階調データGiに応じた時間密度で第i段目の
駆動トランジスタ12のゲートに印加される。ここで、電圧V1ないしV4の具体的な電圧
値や指定回路27による指定の方法について詳述する。
【0022】
駆動トランジスタ12の閾値電圧Vthやキャリア移動度といった各種の特性値は製造プ
ロセスなど様々な要因によって駆動トランジスタ12ごとにバラつく。このように特性値
が相違する各駆動トランジスタ12のゲートに対して同一の電圧を供給した場合には、式
(1)からも明白なように、各駆動トランジスタ12に流れる駆動電流Ielが相違すること
になる。
【0023】
このような駆動電流Ielの相違を補償するために、本実施形態においては、電圧V1な
いしV4のうち各駆動トランジスタ12の特性値に応じて選択された電圧Vselを各々のゲ
ートに供給したときに各駆動トランジスタ12に流れる駆動電流Ielの相違(誤差)が、
各々のゲートに対して同一の電圧を印加したときに各駆動トランジスタ12に流れる駆動
電流Ielの相違よりも低減されるように(理想的には各駆動トランジスタ12に流れる駆
動電流Ielが略等しくなるように)、電圧V1ないしV4の各々の電圧値が選定されている

【0024】
例えば、ある駆動トランジスタ12aの閾値電圧Vthが他の駆動トランジスタ12bの閾
値電圧Vthよりも低い場合を想定すると、駆動トランジスタ12aのゲートに電圧V1を印
加したときの駆動電流Ielと駆動トランジスタ12bのゲートに電圧V2を印加したときの
駆動電流Ielとの差分値が、駆動トランジスタ12aおよび駆動トランジスタ12bの各々
のゲートに同一の電圧を印加したときの各駆動電流Ielの差分値よりも低減されるように
(理想的にはゼロとなるように)、電圧V1は電圧V2よりも低い電圧値に設定されるとい
った具合である。したがって、理想的には、駆動トランジスタ12の総数に相当する電圧
(各々の電圧値を各駆動トランジスタ12の特性値に応じて選定した電圧)が電圧生成回
路25によって生成される構成が望ましいが、本実施形態においては説明の便宜のために
、電圧生成回路25によって4種類の電圧のみが生成される場合を想定する。
【0025】
一方、指定回路27はメモリ271を有する。このメモリ271は、電圧生成回路25
が生成する電圧V1ないしV4のうち各信号処理回路23の選択回路232が選択すべき電
圧を識別するデータ(以下「電圧指定データ」という)を不揮発に記憶する。指定回路2
7は、各信号処理回路23の選択回路232に対して、その信号処理回路23についてメ
モリ271に記憶された電圧指定データを出力する。各選択回路232は、この電圧指定
データによって指定される電圧を選択したうえで電圧Vselとして出力するのである。
【0026】
なお、電圧指定データの生成およびメモリ271への書込みは、例えば発光装置Dの出
荷前に実施される。より具体的には、総ての単位回路Uについて共通の階調値を指定する
階調データGを駆動回路20に入力することによって各発光素子14を実際に発光させた
うえで、各駆動トランジスタ12の特性値のバラツキを反映する物理量(例えば各発光素
子14の駆動電流Ielや各発光素子14の輝度)を測定する。そして、この測定値に対し
て所定の演算を施したものを電圧指定データとしてメモリ271に予め書き込んでおくと
いった具合である。
【0027】
次に、図1に示されるレベルシフタ233は、パルス生成回路231が生成したパルス
信号SPの電圧値を選択回路232から出力される電圧Vselに応じてシフトする手段であ
る。図3は、レベルシフタ233の具体的な構成を示す回路図である。同図に示されるよ
うに、選択回路232から出力された電圧VselはバッファBを介してレベルシフタ23
3に入力される。
【0028】
レベルシフタ233は、2個のpチャネル型のトランジスタTp(Tp1,Tp2)と2個
のnチャネル型のトランジスタTn(Tn1,Tn2)とを含む。各トランジスタTnのソース
はバッファBの出力端に接続される。各トランジスタTpのソースは電源電位VELが供給
される電源線に接続される。トランジスタTn1のドレインはトランジスタTp1のドレイン
とトランジスタTp2のゲートとに接続され、トランジスタTn2のドレインはトランジスタ
Tp2のドレインとトランジスタTp1のゲートとに接続される。
【0029】
トランジスタTn2のゲートにはパルス生成回路231から出力されたパルス信号SPが
供給され、トランジスタTn1のゲートにはパルス信号SPの論理レベルを反転した信号/S
Pが供給される。トランジスタTn2とトランジスタTp2との接続点がデータ信号Vd[i]の
出力端Toutとなる。この出力端Toutは第i段目の単位回路Uにおける駆動トランジスタ
12のゲートに接続される。
【0030】
以上の構成において、パルス信号SPがハイレベルである場合にはトランジスタTn2が
オン状態となる。また、信号/SPはローレベルとなるからトランジスタTn1はオフ状態と
なる。さらに、トランジスタTn2を介して電圧Vselが供給されることによってトランジ
スタTp1はオン状態となる。このときトランジスタTp2は、トランジスタTp1を介してゲ
ートに電圧VELが印加されることによってオフ状態となる。以上のように、パルス信号S
Pがハイレベルであれば、出力端ToutにはバッファBから供給された電圧Vselがトラン
ジスタTn2を介して出力される。この電圧Vselがゲートに供給されると、第i段目の単
位回路Uにおける駆動トランジスタ12は飽和領域にてオン状態となり、これによって発
光素子14は電圧Vsel(より厳密には駆動電流Iel)に応じた輝度に発光する。
【0031】
一方、パルス信号SPがローレベルである場合にはトランジスタTn2がオフ状態となる
。このとき信号/SPはハイレベルを維持するからトランジスタTn1はオン状態となる。し
たがって、トランジスタTp2は、トランジスタTn1を介してゲートに電圧Vselが印加さ
れることによってオン状態となる。すなわち、パルス信号SPがローレベルであれば、出
力端ToutにはトランジスタTp2を介して電圧VELが出力される。この電圧VELがゲート
に供給されると、第i段目の単位回路Uにおける駆動トランジスタ12はオフ状態となっ
て発光素子14は消灯する。
【0032】
このように、第i段目の信号処理回路23から出力されるデータ信号Vd[i]は、単位期
間Pのうち階調データGiに応じた時間長の期間にて電圧Vsel(すなわち駆動トランジス
タ12をオン状態とする電圧)となり、その残余の期間にて電圧VEL(すなわち駆動トラ
ンジスタ12をオフ状態とする電圧)となる。換言すると、本実施形態におけるパルス生
成回路231およびレベルシフタ233は、選択回路232から出力される電圧Vselを
、階調データGiによって指定された階調値に応じた時間密度で第i段目の単位回路Uに
おける駆動トランジスタ12のゲートに出力する手段(本発明の出力手段)として機能す
る。
【0033】
以上に説明したように、本実施形態においては、各単位回路Uの駆動トランジスタ12
によって生成される駆動電流Ielの相違が低減されるように、駆動トランジスタ12のゲ
ートに供給される電圧Vselが電圧V1ないしV4のなかから選択されるから、総ての駆動
トランジスタ12のゲートに対して共通の電圧が供給される構成と比較して、駆動トラン
ジスタ12における特性値のバラツキの影響を低減して各発光素子14を高い精度で所期
の輝度に発光させることができる。
【0034】
また、本実施形態においては、各駆動トランジスタ12が飽和領域で動作するように電
圧V1ないしV4が選定されている。すなわち、各駆動トランジスタ12に流れる駆動電流
Ielは、ゲート・ソース間の電圧のみによって決定され、そのソース・ドレイン間の電圧
には依存しない。一方、各発光素子14の特性には、製造プロセスや発光装置Dの周囲の
温度あるいは経年に起因したバラツキが生じ得る。このように各発光素子14に特性のバ
ラツキがあると、駆動トランジスタ12のソース・ドレイン間の電圧も単位回路Uごとに
相違する場合がある。加えて、駆動トランジスタ12自体の特性のバラツキや変化によっ
てもそのソース・ドレイン間の電圧は単位回路Uごとにバラつく。このような事情のもと
にあっても、駆動トランジスタ12が飽和領域で動作する本実施形態によれば、駆動電流
Ielがソース・ドレイン間の電圧に依存しないから、発光素子14や駆動トランジスタ1
2の特性が単位回路Uごとに相違していても、各発光素子14を高い精度で所期の輝度に
発光させることができる。
【0035】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第1実施形態においては、発光装置Dの出荷前などに測定された各駆動トランジスタ1
2の特性値に応じて指定回路27による指定の内容が予め決定された構成を例示した。こ
れに対し、本実施形態においては、発光装置Dが実際に使用される状況に応じて指定回路
27による指定の内容(すなわち各選択回路232から出力される電圧Vsel)が随時に
変更される構成となっている。なお、本実施形態のうち第1実施形態と同様の要素につい
ては共通の符号を付してその説明を適宜に省略する。
【0036】
図4は、本実施形態に係る発光装置Dの構成を示すブロック図である。同図に示される
ように、この発光装置Dは、図1に示した各部に加えて、温度センサ31と時間特定部3
2と明度指定部33と管理部36とを含む。なお、時間特定部32や明度指定部33や管
理部36は、各々の機能の実現に専用されるDSP(Digital Signal Processor)などの
ハードウェアによって実現されてもよいし、CPU(Central Processing Unit)などの
コンピュータによるプログラムの実行によって実現されてもよい。
【0037】
温度センサ31は、発光部10(各発光素子14)またはその周囲の温度を検出するセ
ンサである。時間特定部32は、発光装置Dが過去に使用された時間長の累計(電源の投
入時から遮断時までの時間長の総和である。以下では「累積使用時間」という)を計時し
てその結果を保持する。
【0038】
明度指定部33は、発光部10の全体的な明度を指定する手段である。本実施形態にお
ける明度指定部33は、特定の操作子(発光部10の明度を調整するための操作子)に対
する利用者からの操作に応じて発光部10の明度を指定する。さらに、明度指定部33は
、太陽光や室内照明光といった外交の光量に応じて発光部10の明度を指定する。例えば
、明度指定部33は、外光の光量を検出するセンサ(図示略)からの信号に基づいて、外
光の光量が多い場合には低明度を指定する一方、外光の光量が少ない場合には高明度を指
定するといった具合である。
【0039】
管理部36は、温度センサ31が検出した温度や時間特定部32が特定した累積使用時
間といった様々な要素に応じてメモリ271の電圧指定データを更新する。この更新は、
発光装置Dの電源の投入のたびに実行されてもよいし、利用者によって指示が入力される
たびに実行されてもよい。あるいは、発光装置Dの動作を休止するモードに遷移したとき
に電圧指定データが更新されてもよい。管理部36の具体的な動作は以下の(1)ないし(4)
の通りである。
【0040】
(1) 管理部36は、温度センサ31が検出した温度に応じてメモリ271の電圧指定デ
ータを更新する。各温度に対応する電圧指定データは、各温度下で使用された場合であっ
ても各発光素子14がその温度に依存しない目標の輝度に発光するように予め試験的また
は実験的に定められる。管理部36は、各温度とそのときにメモリ271に指示される電
圧指定データとが予め対応付けられたテーブルを保持し、このテーブルに基づいて実際の
温度に応じた電圧指定データを検索したうえでメモリ271に出力する。あるいは、温度
センサ31によって検出された温度に対して所定の演算を実行することによって管理部3
6が更新後の電圧指定データを算定してもよい。
【0041】
(2) 管理部36は、時間特定部32が特定した累積使用時間に応じてメモリ271の電
圧指定データを更新する。各累積使用時間に対応する電圧指定データは、各累積使用時間
が経過した場合であっても各発光素子14がその累積使用時間に依存しない目標の輝度に
発光するように予め試験的または実験的に定められる。管理部36は、各累積使用時間と
電圧指定データとが予め対応付けられたテーブルを保持し、実際に時間特定部32が特定
した累積使用時間に応じた電圧指定データをこのテーブルから検索したうえでメモリ27
1に出力する。あるいは、時間特定部32が特定した累積使用時間に対する所定の演算に
よって管理部36が新たな電圧指定データを算定してもよい。
【0042】
(3) 管理部36は、明度指定部33が指定した明度に応じてメモリ271の電圧指定デ
ータを更新する。明度に応じた電圧指定データは、明度と電圧指定データとを予め対応付
けるテーブルや明度に対する所定の演算処理によって特定される。例えば、明度指定部3
3によって指定された明度が高いほど指定回路27から各選択回路232に指定される電
圧が高くなるように、各信号処理回路23に対応する電圧指定データを更新するといった
具合である。この構成によれば、明度指定部33によって指定される明度が低いほど(す
なわち利用者によって低明度が指定された場合や外光の光量が少ない場合ほど)、各発光
素子14の輝度が低減される。
【0043】
(4) 管理部36は、制御回路40から出力される階調データGに応じてメモリ271の
電圧指定データを更新する。さらに詳述すると、管理部36は、制御回路40から供給さ
れるn個の階調データG(G1ないしGn)の各々が示す階調値の平均値を算定し、この平
均値に応じてメモリ271の電圧指定データを更新する。平均値に応じた電圧指定データ
は、平均値と電圧指定データとを予め対応付けるテーブルや平均値に対する所定の演算処
理によって特定される。なお、ここでは各階調値の平均値に応じて電圧指定データを更新
する場合を例示したが、例えば、n個の階調データGのなかから階調値の最大値を検索し
、この最大値に応じて電圧指定データを更新してもよい。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態によれば、各駆動トランジスタ12のゲートに印加
される電圧Vselが発光部10の温度に応じて調整されるから、駆動トランジスタ12の
特性や発光素子14の特性が温度に応じて変化した場合であっても、各発光素子14を所
期の輝度に発光させることができる。また、各駆動トランジスタ12のゲートに印加され
る電圧Vselが累積使用時間に応じて調整されるから、駆動トランジスタ12の特性や発
光素子14の特性が経時的に変化した場合であっても、各発光素子14を所期の輝度に発
光させることができる。
【0045】
さらに、本実施形態においては、各駆動トランジスタ12のゲートに印加される電圧V
selが可変であるから、以上に説明したように明度指定部33が指定した明度や制御回路
40から供給される階調データGに応じて発光部10の全体的な明暗を簡易な構成によっ
て確実に調整することができるという利点がある。
【0046】
なお、本実施形態においては、以上の(1)から(4)までの各要素に応じてデータ信号Vd[
i]の電圧Vselが調整される場合を例示したが、これらの要素のひとつに応じてデータ信
号Vd[i]の電圧Vselが調整される構成としてもよい。また、以上の説明においては温度
や累積使用時間といった要素に応じてメモリ271の電圧指定データが更新される構成を
例示したが、指定回路27によって選択回路232に指定される電圧Vselがこれらの要
素に応じて変化する構成であれば足り、データの更新という動作は必ずしも必要ではない

【0047】
<C:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば
以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0048】
(1)変形例1
図1に示した各部の具体的な構成は任意に変更される。例えば、各信号処理回路23を
図5の構成としてもよい。同図に示される信号処理回路23(ここでは第i段目の信号処
理回路23を例示する)は、選択回路235とスイッチSWbと制御回路236とを含む
。なお、信号処理回路23を図5の構成とした場合には図1の指定回路27は省略される

【0049】
選択回路235は、各々が電圧V1ないしV4に対応する4個のスイッチSWaを含む。
これらのスイッチSWaの一端はデータ信号Vd[i]の出力端Toutに対して共通に接続され
る。各スイッチSWaの他端は、当該スイッチSWaに対応する電圧(V1ないしV4の何れ
か)が供給される配線に接続される。一方、スイッチSWbは、電源電圧VELが供給され
る電源線に一端が接続されるとともに他端が出力端Toutに接続される。
【0050】
制御回路236は、ラインメモリ21から供給される階調データGiに応じて選択回路
235およびスイッチSWbを制御する手段であり、第1実施形態の指定回路27と同様
に、電圧V1ないしV4の何れかを指定する電圧指定データが書き込まれたメモリ238を
備える。電圧指定データによって指定される電圧は、これを駆動トランジスタ12のゲー
トに印加したときに各単位回路Uにおける駆動電流Ielが略一定となるように、各駆動ト
ランジスタ12の特性値に応じて信号処理回路23ごとに選定される。
【0051】
制御回路236の動作は、単位期間Pのうち階調データGiによって指定される階調値
に応じた時間長の期間(以下「第1期間」という)での動作と、その残余の期間(以下「
第2期間」という)での動作とに区分される。まず、第1期間の始点から終点までにわた
って、制御回路236は、メモリ238の電圧指定データによって指定される電圧に対応
したスイッチSWaをオン状態とし、これ以外のスイッチSWaとスイッチSWbとをオフ
状態とする。したがって、第1期間においては、電圧V1ないしV4の何れかがデータ信号
Vd[i]として単位回路Uに出力される。一方、第2期間の始点から終点までにわたって、
制御回路236は、選択回路235の総てのスイッチSWaをオフ状態としたうえでスイ
ッチSWbをオン状態とする。したがって、第2期間においては、電源電圧VELがデータ
信号Vd[i]として単位回路Uに出力される。すなわち、図5の構成においても、第1実施
形態と同様の波形のデータ信号Vdが生成される。
【0052】
以上のように、電圧Vselを階調データGに応じた時間密度で駆動トランジスタ12の
ゲートに出力する手段の具体的な構成の如何は不問である。本発明における出力手段は、
第1実施形態および第2実施形態におけるパルス生成回路231およびレベルシフタ23
3、および、図5の構成における制御回路236およびスイッチSWbに相当する。
【0053】
また、各実施形態や図5においては、電圧生成回路25が固定的に生成する複数の電圧
V1ないしV4の何れかが選択される構成を例示したが、駆動トランジスタ12の特性に応
じた電圧Vselが電圧生成回路25によって生成されたうえで、当該駆動トランジスタ1
2に対応する信号処理回路23に対して個別に供給される構成としてもよい。すなわち、
本発明において複数の電圧から何れかを選択するという要素は必ずしも必要ではなく、指
定回路27からの指定に応じた電圧を可変的に出力する電圧調整手段(第1実施形態にお
ける電圧生成回路25および各選択回路232に相当する)を備えていれば足りる。
【0054】
(2)変形例2
駆動トランジスタ12の構造は任意であり、薄膜トランジスタであってもいわゆるバル
クトランジスタ(MOS型FET)であってもよい。また、各実施形態においては駆動ト
ランジスタ12をpチャネル型とした場合を例示したが、駆動トランジスタ12をnチャ
ネル型とした構成においても、第1実施形態と同様に、発光素子14の初期的な特性のバ
ラツキや駆動トランジスタ12の特性のバラツキを補償することができる。ただし、駆動
トランジスタ12をpチャネル型とした各実施形態の構成においては、以下に説明するよ
うに、発光素子14の特性の経時的な変化をも補償できるという利点がある。
【0055】
駆動トランジスタ12をnチャネル型とした構成においては、図6(a)に示されるよう
に、駆動トランジスタ12のソースが発光素子14の陽極に接続されることになる。この
構成において例えば発光素子14の閾値電圧が経時的に上昇したとすると、駆動トランジ
スタ12のソースの電圧も必然的に上昇する。したがって、ゲート・ソース間の電圧で決
定される駆動電流Ielは発光素子14の特性の変化に応じて経時的に変化していく。これ
に対し、pチャネル型の駆動トランジスタ12は、図6(b)に示されるように、ドレイン
が発光素子14の陽極に接続されるとともにソースが電源線に接続される。この構成にお
いては、発光素子14の陽極の電圧が経時的に変化したとしても、駆動トランジスタ12
のゲート・ソース間の電圧は何ら変化しない。したがって、pチャネル型の駆動トランジ
スタ12を採用した構成においては、駆動電流Ielが発光素子14の特性の変化に拘わら
ず略一定に維持されるという利点がある。
【0056】
(3)変形例3
各実施形態においては複数の単位回路Uが線状に配列された発光装置Dを例示したが、
複数の単位回路Uがマトリクス状に配列された発光装置Dにも本発明は同様に採用される
。この構成においては、複数の走査線と複数のデータ線との交差に対応する各位置に単位
回路Uが配置される。そして、各単位回路Uが行単位で走査線駆動回路によって順次に選
択される一方、この選択行の各単位回路Uに対し駆動回路20(ここではデータ線駆動回
路)によって各実施形態と同様の動作が実行される。
【0057】
また、各実施形態においては駆動トランジスタ12のゲートに印加される電圧selが単
位回路Uごとに選択される構成を例示したが、駆動トランジスタ12のゲートの電圧が調
整される単位となる範囲はこれに限定されない。例えば、複数の単位回路Uがマトリクス
状に配列された構成においては、走査線またはデータ線に沿った複数の単位回路Uの配列
を単位として駆動トランジスタ12のゲートの電圧が調整される構成(すなわち同行また
は同列に属する複数の単位回路Uの各々については共通の電圧Vselが駆動トランジスタ
12のゲートに印加される構成)としてもよい。
【0058】
(4)変形例4
第1実施形態においては、発光装置Dの出荷前に実施された測定の結果に応じて生成さ
れた電圧指定データがメモリに書き込まれる場合を例示したが、出荷後の随時のタイミン
グにおいて同様の動作が実行される構成としてもよい。この構成においては、各駆動トラ
ンジスタ12の特性を反映する特徴量(例えば各発光素子14に供給される駆動電流Iel
や各発光素子14の輝度)を測定する機器と、これらの測定値の各々を用いた所定の演算
によって各単位回路Uに対応した電圧指定データを生成してメモリ271に記憶する手段
とが設けられる。この測定や電圧指定データの更新は、発光装置Dの電源が投入されるた
びに実行されてもよいし、発光装置Dの動作時に適宜に実行されてもよい。
【0059】
(5)変形例5
以上の説明においてはOLED素子を利用した発光装置Dを例示したが、これ以外の発
光素子を利用した発光装置にも本発明は適用される。例えば、無機EL素子を利用した表
示装置、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、表面導電型電子
放出ディスプレイ(SED:Surface-conduction Electron-emitter Display)、弾道
電子放出ディスプレイ(BSD:Ballistic electron Surface emitting Display)
、発光ダイオードを利用した表示装置など各種の発光装置に本発明は適用される。
【0060】
<D:応用例>
各実施形態においては、画像形成装置の露光装置として利用される発光装置を例示した
が、本発明に係る発光装置の用途は露光に限定されない。例えば、複数の単位回路がマト
リクス状に配列された発光装置は各種の画像を表示する装置として利用される。本発明に
係る発光装置を利用した電子機器を例示すれば以下の通りである。
【0061】
図7は、以上に説明した何れかの形態に係る発光装置Dを表示装置として採用したモバ
イル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2
000は、表示装置としての発光装置Dと本体部2010とを備える。本体部2010に
は、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この発光装置D
は発光素子14にOLED素子を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示でき
る。
【0062】
図8に、各実施形態に係る発光装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機
3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示
装置としての発光装置Dを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、
発光装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0063】
図9に、各実施形態に係る発光装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Dig
ital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001
および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。電源スイ
ッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置Dに
表示される。
【0064】
なお、本発明に係る発光装置Dが適用される電子機器としては、図7から図9に示した
もののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、
ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テ
レビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを
備えた機器等などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図2】階調データとパルス信号の波形との関係を示すタイミングチャートである。
【図3】レベルシフタの構成を例示する回路図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図5】信号処理回路の別例を示す回路図である。
【図6】駆動トランジスタの導電型に応じた効果の相違を説明するための回路図である。
【図7】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
D……発光装置、10……発光部、20……駆動回路、U……単位回路、12……駆動ト
ランジスタ、14……発光素子、23……信号処理回路、25……電圧生成回路、27…
…指定回路、271……メモリ、231……パルス生成回路、232……選択回路、23
3……レベルシフタ、31……温度センサ、32……時間特定部、33……明度指定部、
36……管理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートの電位に応じた駆動電流を生成する駆動トランジスタと前記駆動電流に応じた輝
度に発光する発光素子とを各々が含む複数の単位回路と、
各々が前記単位回路に対応する複数の信号処理手段と、
前記各信号処理手段に対して電圧を指定する指定手段とを具備し、
前記各信号処理手段は、
前記駆動トランジスタを飽和領域で動作させる電圧を前記指定手段による指定に応じて
可変に出力する電圧調整手段と、
前記電圧調整手段が出力した電圧を、前記発光素子に指定された階調値に応じた時間密
度で、当該信号処理手段に対応する前記駆動トランジスタのゲートに出力する出力手段と
を含む発光装置。
【請求項2】
前記指定手段は、前記各単位回路の駆動トランジスタの特性に応じた電圧を当該単位回
路に対応した信号処理手段に指定する
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記指定手段は、前記複数の単位回路のうち第1の単位回路および第2の単位回路の各
々に共通の階調値が指定されたときに前記第1の単位回路および前記第2の単位回路の各
駆動トランジスタによって生成される駆動電流が略等しくなるように、前記第1の単位回
路に対応する信号処理手段と前記第2の単位回路に対応する信号処理手段とに対して別個
の電圧を指定する
請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記各単位回路またはその周囲の温度を検出する温度センサを具備し、
前記指定手段は、前記温度センサが検出した温度に応じた電圧を指定する
請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
発光装置が使用された時間長を特定する時間特定手段を具備し、
前記指定手段は、前記時間特定手段が特定した時間長に応じた電圧を指定する
請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記複数の発光素子の全体的な明度を指定する明度指定手段を具備し、
前記指定手段は、前記明度特定手段が指定した明度に応じた電圧を指定する
請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記指定手段は、前記複数の発光素子の各々に指定された階調値に応じた電圧を指定す

請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記各信号処理手段の電圧調整手段は、
各々の電圧値が相違する複数の電圧を生成する電圧生成回路と、
前記複数の電圧のうち前記指定手段による指定に応じた電圧を選択する選択回路と
を含む請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
前記指定手段は、前記電圧調整手段が出力すべき電圧を記憶する記憶手段を含み、前記
記憶手段による記憶の内容に基づいて前記各信号処理手段に電圧を指定する
請求項1に記載の発光装置。
【請求項10】
ゲートの電位に応じた駆動電流を生成する駆動トランジスタと、
前記駆動電流に応じた輝度に発光する発光素子と、
電圧を指定する指定手段と、
前記駆動トランジスタを飽和領域で動作させる電圧を前記指定手段による指定に応じて
可変に出力する電圧調整手段と、
前記電圧調整手段が出力した電圧を前記発光素子に指定された階調値に応じた時間密度
で前記駆動トランジスタのゲートに出力する出力手段と
を具備する発光装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れかに記載の発光装置を具備する電子機器。
【請求項12】
ゲートの電位に応じた駆動電流を生成する駆動トランジスタと前記駆動電流に応じた輝
度に発光する発光素子とを各々が含む複数の単位回路を具備する発光装置を駆動する回路
であって、
各々が前記単位回路に対応する複数の信号処理手段と、前記各信号処理手段に対して電
圧を指定する指定手段とを具備し、
前記各信号処理手段は、
前記駆動トランジスタを飽和領域で動作させる電圧を前記指定手段による指定に応じて
可変に出力する電圧調整手段と、
前記電圧調整手段が出力した電圧を、前記発光素子に指定された階調値に応じた時間密
度で、当該信号処理手段に対応する前記駆動トランジスタのゲートに出力する出力手段と
を含む発光装置用駆動回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−11177(P2007−11177A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194641(P2005−194641)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】