説明

発光装置およびこれを用いた照明器具

【課題】複数の発光素子を配列して形成した発光装置において、正常な発光素子に安定な点灯状態を維持しつつ、異常のある発光素子をリフレッシュすることのできる発光装置を提供する。
【解決手段】直流電流の供給を受けて発光する複数の発光素子と、発光素子に一定以上の電流を供給する直流電源回路と、発光素子ごとに割当てられ、発光素子に印加される電流の順逆を切替える複数の順逆反転回路とを具備した。この構成によれば、発光素子ごとに割当てられる複数の順逆反転回路を備えているので、直列に接続していても異常である発光素子に確実に逆電圧を印加することができるとともに、正常な発光素子には通常の電圧を印加することができるので、すべての発光素子が不点となることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびこれを用いた照明器具に係り、特に有機エレクトロルミネッセント(EL)素子などの直流駆動型の発光装置におけるリカバリー機能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセント素子は固体蛍光性物質の電界発光現象を利用した発光デバイスであり、近年広く研究が進められている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセント素子は、発光層と正孔輸送層、電子輸送層などを含む有機層と、この有機層を介して対向配置された陽極および陰極とを具備している。通常有機層は100nm程度の非常に薄い層厚を有するものである。従って微小異物の混入や有機層の形成ムラなどに起因して、電極間でリーク不良が発生したり、電極間の絶縁耐圧性不良などが発生するおそれがある。
【0004】
このような不良が発生すると、有機エレクトロルミネッセント素子駆動時に黒点や暗線、黒線が観察されることになり、有機エレクトロルミネッセント素子の表示品位が低下する。また黒点などには至らないまでも、十分な絶縁耐圧を持たない箇所がある場合は、有機エレクトロルミネッセント素子駆動中にリーク電流が発生してしまうというおそれもある。特に近年では、有機エレクトロルミネッセント装置の大型化が進み、このような不良の発生確率が増大する傾向にあり、これが大きな問題となっている。
【0005】
そこで有機エレクトロルミネッセント装置の絶縁不良部を好適に修復するために、有機層のそれぞれに相互に異なる印加条件で逆バイアス電圧を印加することにより絶縁不良部を絶縁化する修復方法が提案されている(特許文献1)。
つまり、特許文献1では、電源電圧停止を検出したとき、逆電圧の印加によって発生するジュール熱によって有機層が変質絶縁化することで、リーク電流を防止し、発光効率の低下を抑制するとしている。
【0006】
また、有機エレクトロルミネッセント素子に所望の直流電圧を供給する直流電源手段と、直流電源手段の電圧供給の停止を検出する検出手段と、直流電源手段の電圧供給が停止されたときに有機エレクトロルミネッセント素子に逆特性の電圧を供給する逆電圧供給手段とを具備した照明装置も提案されている(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】特開2007-207703号公報
【特許文献2】特開2007-149463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、特許文献1の有機エレクトロルミネッセント素子の修復方法においては、有機エレクトロルミネッセント素子が異常電圧を示した場合に、リフレッシュのために順逆反転回路を動作させて逆電圧を印加しても、正常な有機エレクトロルミネッセント素子には電流が流れないことから、正常な有機エレクトロルミネッセント素子を消灯し、個別にリフレッシュのための時間を設ける必要がある。
【0009】
一方、特許文献2においては、直流電源手段の電圧供給の停止が検出されたときに有機エレクトロルミネッセント素子に逆特性の電圧を供給するようにしているため、この場合も、別途リフレッシュのための時間を設ける必要がある。
【0010】
また、多数個の有機エレクトロルミネッセント素子を直列接続した場合、上記のいずれの方法を用いても、正常な有機エレクトロルミネッセント素子には電流が流れないため、逆方向の電圧を印加しても、リフレッシュできないという問題がある。
さらにまた、多数個の有機エレクトロルミネッセント素子を並列接続した場合、異常のある有機エレクトロルミネッセント素子に逆方向電圧を印加した場合に、正常な有機エレクトロルミネッセント素子への印加電圧が変動し、望むような安定した点灯状態を維持することができないという問題があった。
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、複数の発光素子を配列して形成した発光装置において、正常な発光素子に安定な点灯状態を維持しつつ、異常のある発光素子をリフレッシュすることのできる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明の発光装置は、直流電流の供給を受けて発光する複数の発光素子と、発光素子に一定以上の電流を供給する直流電源回路と、発光素子ごとに割当てられ、発光素子に印加される電流の順逆を切替える複数の順逆反転回路とを具備したことを特徴とする。
この構成によれば、発光素子ごとに割当てられる複数の順逆反転回路を備えているので、直列に接続していても異常である発光素子に確実に逆電圧を印加することができるとともに、正常な発光素子には通常の電圧を印加することができるので、すべての発光素子が不点となることがない。
【0012】
また本発明の照明器具は、上記発光装置を具備したことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記照明器具において、前記複数の順逆反転回路は前記直流電源回路に並列接続され、各順逆反転回路が、インピーダンス要素によって構成される順逆の両方向の電流を制御する電流制御部を具備したものを含む。
この構成によれば、並列に接続した場合、異常の生じた発光素子のインピーダンス低下分を補償するインピーダンス要素を逆方向の電流経路に有することで、順逆反転回路への入力インピーダンスを正常時と概ね同じにすることができ、逆方向に順方向と同等の電流を印加した際の直流電源回路の出力電圧を一定にすることができ、正常な発光素子への影響を与えないようにすることができる。
【0014】
また本発明は、上記照明器具において、発光素子に印加される電圧を検知する電圧検知回路を具備し、前記発光素子に流れる電流が順逆双方向で略同一であるものを含む。
この構成によれば、順方向と逆方向の電流をほぼ同じにすることで、異常な負荷の有無によらず、直流電源の出力電流を略一定に安定させることができる。従って回路の最適化(簡易化、低コスト、小型化)が容易となる。すなわち、直流電源の出力電流を略一定に安定にしない場合には、直流電源回路が所定の電流を供給する電流源の場合、並列に接続されたブリッジ群のうち、インピーダンスの低いところのみに電流が流れ、他にはほとんど流れず、出力電圧は下がり、これにより他ブリッジは電流不足になり不点灯となる。また、低インピーダンスブリッジは、ブリッジの数をNとすると、最大で定格のN倍の電流が流れることになる。つまり、所定の電圧を供給する電圧源を用いて、インピーダンスの低いところには、過大な電流が流れ、電源の出力電流はインピーダンス変化割合の逆数倍分だけ増大してしまうことになり、過大出力電流による電源の過熱、故障などの可能性が生じることになる。
【0015】
また本発明は、上記照明器具において、前記順逆反転回路は、発光素子の正常/異常によるインピーダンスの変化に対し、順逆反転回路の入力インピーダンスが略一定となるように順逆方向で異なるインピーダンスをもつ回路要素を具備したものを含む。
【0016】
また本発明は、上記照明器具において、前記回路要素はバイポーラトランジスタであるものを含む。
この構成によれば、順逆反転を切り替えるスイッチと、インピーダンスの低下分を補償するインピーダンス要素を兼用するスイッチとして、バイポーラトランジスタ(BJT)を用いることにより、電圧を持つインピーダンス要素となることで、順逆双方向の電流を揃えることができ、装置を増大させることなく、信頼性の高い制御が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明してきたように、本発明の発光装置によれば、発光素子ごとに割当てられる複数の順逆反転回路を備えているため、直列に接続していても異常である発光素子に確実に逆電圧を印加することができ、正常な発光素子には通常の電圧を印加して、点灯状態を維持しつつ、リフレッシュを行うことができる。
また、並列に接続した場合、異常な発光素子のインピーダンス低下分を補償するインピーダンス要素を逆方向の電流経路に有することで、順逆反転回路への入力インピーダンスを正常時と概ね同じにすることができる。
また、逆方向に順方向と同等の電流を印加した際の直流電源回路の出力電圧を一定にすることができ、正常な発光素子への影響を防ぐことができる。
さらにまた、順方向と逆方向の電流をほぼ同じにすることで、異常な負荷の有無によらず、直流電源の出力電流を略一定に安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施の形態の有機エレクトロルミネッセント装置は、図1に基本回路構成を示すように、直流電源装置100に、それぞれ有機エレクトロルミネッセント素子LP1、LP2、LP3・・・を中心にすえたフルブリッジ回路からなる照明回路L1、L2、L3・・が並列接続されており、各有機エレクトロルミネッセント素子毎に、有機エレクトロルミネッセント素子に印加される電流の順逆を切替える複数の順逆反転回路S1、S2、S3・・・が配設されたことを具備したことを特徴とする。
【0019】
この有機エレクトロルミネッセント装置は図2(a)に示すように、ケース10内に収納された、有機エレクトロルミネッセント素子LP1、LP2・・・と、照明回路20とで構成されている。この照明回路20はプリント基板201上に搭載された電子部品202で構成されている。そして有機エレクトロルミネッセント素子は、その一例を図2(b)に要部拡大断面図で示したように、透光性のガラス基板101の表面に、透明導電膜からなる陽極102、発光機能を有する層(有機発光層)103、陰極104を順に積層形成したものである。105は保護膜(ガラス)である。
【0020】
そして各照明回路は電流制御回路200a(200b、200c・・)と、有機エレクトロルミネッセント素子LP1(LP2、LP3・・)を囲む順逆反転回路S1(S2、S3・・)としてのフルブリッジ回路を構成するスイッチQ11、Q12、Q13、Q14・・・とで構成される。
【0021】
図1に示す基本回路を用いて本発明の有機エレクトロルミネッセント装置の動作について説明する。図1のVa−Vbが発光素子に印加される電圧Vla、発光素子LPに流れる電流をIlaとする。
ここで、Qn1→LPn陽極→LPn陰極→Qn4を介する電流の流れを順方向、
Qn2→LPn陰極→LPn陽極→Qn3を介する電流の流れを逆方向とする。
順方向、逆方向とも、流れる電流は電流制御回路200a、200b、200c・・・によって、所定値、たとえば0.4Aなどの値に制御されるものとする。
【0022】
次に直流電源部100について説明する。直流電源部100は、図3に示すように、
AC電源1とPFC回路2と降圧チョッパ回路4とで構成されている。PFC回路2は、AC電圧からDC電圧に変換する回路である。ここでスイッチング素子Q1は数十kHz〜数百kHzで動作している。なおここではPFC回路を用いたが、PFC回路でなくとも直流電源となる回路方式、又は直流電源そのもののみでもよい。また、降圧チョッパ回路4は、DC電圧からDC電圧に変換する回路である。ここでスイッチング素子Q2は数十kHz〜数百kHzで動作している。なおここでは降圧チョッパ回路を用いたが降圧チョッパ回路でなくとも直流電源となる回路方式、又は直流電源でもよい。
【0023】
次にこの照明回路の動作について説明する。
図4はこの照明回路の動作を示すタイムチャートである。
まず、発光素子である有機エレクトロルミネッセント素子LP1が正常な状態の時はQ11、Q14をオン、Q12、Q13をオフとし、有機エレクトロルミネッセント素子の陽極から陰極に向かって(順方向)電流を流して発光させる。
ここで電圧検出回路は、陽極102と陰極104との間の電圧を検出するもので通常の電圧検出回路を用いる。
【0024】
次に、有機エレクトロルミネッセント素子に異常が発生した場合、主な動作の流れは、以下のとおりである。
T1:図示しない電圧検出回路で有機エレクトロルミネッセント素子の異常(部分的な短絡)を検知する。
T2:有機エレクトロルミネッセント素子に通常と逆向きの(逆方向)電流を流す。このときQ11、Q14をオフ、Q12、Q13をオンとし、有機エレクトロルミネッセント素子の陰極から陽極に向かって(逆方向)電流を流して有機エレクトロルミネッセント素子をリフレッシュさせる。
T3:電圧検出回路で有機エレクトロルミネッセント素子の復帰を検知する(短絡部分が開放)。
T4:再びQ11、Q14をオン、Q12、Q13をオフとし、有機エレクトロルミネッセント素子の陽極から陰極に向かって(順方向)電流を流して発光させる。
【0025】
動作の流れのタイムチャートを図4(a)乃至(d)を参照しつつ詳細に説明する。
図4(a)は、有機エレクトロルミネッセント素子に印加される電圧Vlaを示し、図4(b)は、Qn1,Qn4ゲート信号を示し、図4(c)は、Qn2,Qn3ゲート信号を示し、図4(d)は、有機エレクトロルミネッセント素子を流れる電流Ilaを示す。
T1:有機エレクトロルミネッセント素子の異常を検知する。なんらかの要因で有機エレクトロルミネッセント素子の一部分が短絡することで、短絡部分のみに電流が流れ、不点となったり、一部分のみが発光するなど、異常な状態となる。このときVla(有機エレクトロルミネッセント素子に印加される電圧)は低下する。Vla検出回路によりVlaが低下したことを検知し、マイコンに信号を送る。
T2:有機エレクトロルミネッセント素子に通常と逆向きの電圧を印加する。Vlaが所定の値Vth1に低下したことをトリガとして、Q1、Q4をオフしてQ2、Q3をオンする。
このオン、オフの信号はたとえば、マイコンで生成されたパルスをドライブドライブICを介してスイッチのベースあるいはゲートに与えるものでよい。Q2、Q3のオンにより、有機エレクトロルミネッセント素子には通常とは逆向きの電圧が印加される。このとき、有機エレクトロルミネッセント素子には逆向きの電流(リフレッシュ電流)が流れる。
T3:有機エレクトロルミネッセント素子が正常に復帰したことを検知する逆向きの電流を印加し続けるのは、短絡部分には集中的に過大な電流を流し、その発熱によって短絡部分が断線して開放状態となることを狙うものである。開放状態になると、Vlaは−Vin(Vinは降圧チョッパ出力電圧C2間電圧)まで低下する。
Vla検出回路によりVlaが低下したことを検知し、正常状態への復帰のトリガとする。
【0026】
また、同じく、開放状態になると、有機エレクトロルミネッセント素子に流れる逆方向の電流は減少する。
電流検知回路によりIlaがIth1にまで上昇したことを検知したことも正常状態への復帰のトリガとすることができる。
【0027】
有機エレクトロルミネッセント素子の正常復帰を検知する条件は
i) VlaがVth2以下に低下した場合
ii) IlaがIth1以上に上昇した場合
iii) i)、ii) 両方を満たした場合
以上3つのうちどの条件でもよい。
【0028】
T4:有機エレクトロルミネッセント素子に通常の電流を流す VlaがVth2まで低下する(IlaがIth1以上になる)と、上記T3で示したトリガによって、Q1、Q4をオンしてQ2、Q3をオフする。
有機エレクトロルミネッセント素子には順方向の電流が流れて有機エレクトロルミネッセント素子が発光する。なお、開放になった部分には電流が流れないので部分的に不点灯にはなる。
【0029】
(実施例1)
次に本発明の実施例1の順逆反転回路について説明する。
本実施例の順逆反転回路(200a、200b。200c、・・・)では、図5に等価回路、図6に検出抵抗を用いた電流制御回路の一例を示すように、検出抵抗R12、R11・・・Rn2、Rn1による電圧を検出し、前記実施の形態で説明したように、所定の電圧値と電流値に応じた検出電圧値の比較によって、トランジスタをオンオフして、電流値を一定とする。ここで、正方向電流の印加時はQ24(Qn4)を制御し、逆方向の場合は、Q22(Qn2)を制御する。一方、逆方向の電流はQ23(とQ22)を常時オンとして、R22によって制御する。
ここで、R22をR22=(Vin/正常時のIla)とすることで、順方向と同じ程度の電流を逆方向に流す。
(実施例2)
次に本発明の実施例2について説明する。
図7は、実施例2の順逆制御回路を示す。本実施例は、電流制御と逆方向の電流制御用の電流検出抵抗(電流制御部)を共有した形である。本実施例では、検出抵抗R11、R21・・・Rn1による電圧を検出し、前記実施の形態で説明したように、所定の電圧値と電流値に応じた検出電圧値の比較によって、トランジスタをオンオフして、電流値を一定とする。ここで、正方向電流の印加時はQ24(Qn4)を制御し、逆方向の場合は、Q23(Qn3)を制御する。Q24とR21による順方向の電流制御は実施例1と同様である。ここでは、逆方向の電流は、R21の電流検出によって、Q23をオンオフして行う。負荷のインピーダンスが低減(ほぼゼロ)しているので、VinがQ23にかかる形になる。バイポーラトランジスタのコレクタ−エミッタ間電圧をそれぞれのトランジスタの動作中で、VCE24、VCE23と置くと、(正逆の負荷電流をIL、正方向の電流での点灯時の負荷電圧をVLとして)Vin−(IL×R21)≒VCE23>VCE24=Vin−VL−(IL×R21)となる。
【0030】
(実施の形態2)
なお、本発明の実施の形態2として、前記実施例1の電流制御回路のスイッチQn3の位置にスイッチに代えて、その他、LEDなどの別光源40を配した照明器具も有効である。この照明器具の電流制御回路の例を図8に示す。このLED40は、正常点灯時は有機エレクトロルミネッセント素子を用いた発光素子に加えて点灯し、異常時の逆方向電流印加時にも同様に点灯することで、有機エレクトロルミネッセント素子の修復中にも照明器具としては、すべての光源が消灯してしまわないようにすることができる。
ここでこの電流制御回路では、LEDでの印加電圧をVFとしたとき、(Van−VF)/Rn2=正常時のLED電流=修復中のLED電流が概ね正常時の有機エレクトロルミネッセント素子の順方向電流と等しくなるようにRn2の値を設定するとよい。
【0031】
(実施の形態3)
なお、本発明の実施の形態3として、発光素子をを直列に接続した例を示す。
本発明の実施の形態3の有機エレクトロルミネッセント装置は、図9に基本回路構成を示すように、直流電源装置100に、それぞれ有機エレクトロルミネッセント素子LP1、LP2、LP3・・・を中心にすえたフルブリッジ回路からなる照明回路L1、L2、L3・・が直列接続されており、前記実施の形態1と同様、各有機エレクトロルミネッセント素子毎に、有機エレクトロルミネッセント素子に印加される電流の順逆を切替える複数の順逆反転回路200a、200b、200c・・・が配設されたことを具備したことを特徴とする。
本実施の形態においても、個々の照明回路における、有機エレクトロルミネッセント素子両側の電位差からのランプ電圧検出、異常検出〜修復(ブリッジの反転)〜復帰検出、の過程は前記実施の形態1の発光装置と同様である。
本実施の形態では、個々の照明回路が直列に接続されるので、1箇所の電流制御で有機エレクトロルミネッセント素子に流れる電流は順逆、素子に関係なく一定とすることができる。
【0032】
また、この有機エレクトロルミネッセンス素子100は、その一例を図2(a)および(b)に要部拡大断面図で示したように、透光性のガラス基板101の表面に、透明導電膜からなる陽極102、発光機能を有する層103、陰極104を順に積層形成したものである。この透光性基板101は、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどの透光性のガラス板や、透光性のプラスチック板などを用いることができる。透光性基板101は、光透過性であればよく、無色透明の他、若干着色されているものであっても、すりガラス状のものであってもよい。
【0033】
また、発光機能を有する層103は、いわゆる発光層に加え、陽極102の側にホール輸送層、陰極104の側に電子注入層を積層した多層膜であり、陽極102に正電圧を、陰極4に負電圧を印加することで、電子注入層を介して注入された電子と、ホール輸送層を介して注入されたホールとが、発光層内で結合して発光が起こる。このように発光機能を有する層103で発光した光は、透明導電膜からなる陽極102と透光性基板101を透過し、透光性基板101の表面側から取り出されるものである。この有機エレクトロルミネッセンス素子100は、電池など10V程度の低電圧で高輝度発光が可能である。
【0034】
また陽極102は、発光機能を有する層中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、導電性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が4eV以上のものを用いるのがよい。このような陽極2の材料としては、例えば、Au(金)などの金属、CuI(ヨウ化銅)、ITO(酸化インジウムスズ:インジウムチンオキサイド)、SnO2(酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の透光性の導電材料が使用可能である。陽極102は、例えば、これらの電極材料を、透光性基板101の表面に、真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により成膜及びパターニングすることによって形成される。また、発光機能を有する層103における発光を陽極102を透過させて外部に照射するためには、陽極102の光透過率を70%以上にすることが好ましい。さらに、陽極102のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下とするものである。ここで、陽極102の膜厚は、陽極102の光透過率、シート抵抗等の特性を上記のように制御するために、材料により異なるが、500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲に設定するのが望ましい。
【0035】
また、陰極104は、発光機能を有する層103中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、導電性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が5eV以下のものであることが好ましい。このような陰極104の電極材料としては、例えば、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/Al23混合物、Al/LiF混合物などが挙げられる。陰極104についても陽極と同様、例えば、これらの電極材料を、真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により、成膜後パターニングすることによって得ることができる。また、発光機能を有する層103における発光を陽極102側に照射するためには、陰極4の光透過率を10%以下にすることが好ましい。ここで陰極104の膜厚は、材料により異なるが陰極104の光透過率等の特性を制御するために、通常500nm以下、好ましくは100〜200nmの範囲とするのがよい。
【0036】
ここで発光機能を有する層103のうち、電子輸送層とホール輸送層とに挟まれた発光層に用いる発光材料またはドーピング材料は、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素等があるが、これに限定されるものではない。
【0037】
また、上記発光機能を有する層103は、上記発光層と陽極2との間すなわち陽極側にホール輸送層を積層しており、このホール輸送層を構成する材料としては、ホールを輸送する能力を有し、陽極102からのホール注入効果を有するとともに、発光層に対して優れたホール注入効果を有し、また電子のホール輸送層への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。具体的には、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、及びポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリエチレンジオキサイドチオフェン(PEDOT)等の導電性高分子等の高分子材料が挙げられる。
【0038】
また、上記発光機能を有する層103は、発光層と陰極104との間すなわち陰極104の側に電子注入層を積層しており、この電子注入層を構成する材料としては、電子を輸送する能力を有し、陰極104からの電子注入効果を有するとともに、発光機能を有する層103に対して優れた電子注入効果を有し、さらにホールの電子注入層への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。具体的には、フルオレン、バソフェナントロリン、バソクプロイン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、アントラキノジメタン等やそれらの化合物、金属錯体化合物もしくは含窒素五員環誘導体である。さらに、ポリマー有機エレクトロルミネッセンス素子に使用されるポリマー材料も使用することができる。例えば、ポリパラフェニレン及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体等である。電子注入層は、例えば、バソフェナントロリンとCs(セシウム)を、モル比1:1の割合で共蒸着して形成することができる。
以上説明したように本実施の形態によれば上記有機エレクトロルミネッセント素子を用いることにより、減衰も少なく、ゆらぎを生成し自然光に近いやわらかな演出照明を実現することができる。
なお前記実施の形態では面状発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた例について説明したが、有機エレクトロルミネッセンス素子に限定されることなく、無機エレクトロルミネッセンス素子をはじめ、LEDなど、電極間に電圧を印加することによって発光する素子などにおいて、絶縁不良部を修復することで、リフレッシュできる他の素子にも適用可能であることはいうまでもない。
また、前記実施の形態では、照明器具について説明したが、照明器具に限定されることなく、露光用光源などの各種光源に適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる発光装置100の概略構成を説明するための図
【図2】本発明の実施の形態1にかかる発光装置100の概略構成を説明するための図
【図3】本発明の実施の形態1にかかる直流電源装置を示す図
【図4】本発明の実施の形態1にかかる発光装置100の動作の流れを示すタイムチャート
【図5】本発明の実施例1の順逆反転回路を示す図
【図6】本発明の実施例1の順逆反転回路における電流制御装置を示す図
【図7】本発明の実施例1の順逆反転回路を示す図
【図8】本発明の実施の形態2の照明装置を示す図
【図9】本発明の実施の形態3の照明装置を示す図
【符号の説明】
【0040】
100 直流電源装置
LP1、LP2、LP3・有機エレクトロルミネッセント素子
L1、L2、L3、20 照明回路
S1、S2、S3 順逆反転回路
201 プリント基板
202 電子部品
101 ガラス基板
102 陽極
103 発光機能を有する層
104 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電流の供給を受けて発光する複数の発光素子と、
発光素子に一定以上の電流を供給する直流電源回路と、
発光素子ごとに割当てられ、発光素子に印加される電流の順逆を切替える複数の順逆反転回路とを具備した発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置を具備した照明器具。
【請求項3】
請求項2に記載の照明器具であって、
前記複数の順逆反転回路は前記直流電源回路に並列接続され、
各順逆反転回路が、
インピーダンス要素によって構成される順逆の両方向の電流を制御する電流制御部を具備した照明器具。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の照明器具であって、
発光素子に印加される電圧を検知する電圧検知回路を具備し、
前記発光素子に流れる電流が順逆双方向で略同一である照明器具。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の照明器具であって、
前記順逆反転回路は、
発光素子の正常/異常によるインピーダンスの変化に対し、
順逆反転回路の入力インピーダンスが略一定となるように順逆方向で異なるインピーダンスをもつ回路要素を具備した照明器具。
【請求項6】
請求項5に記載の照明器具であって、
前記回路要素はバイポーラトランジスタである照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−238870(P2009−238870A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80517(P2008−80517)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】