説明

発光装置およびパネル装置

【課題】特に装置の薄型化を実現することを目的に光源を発光ボタンの側方に配置する構成において、光源から遠い場所における輝度を確保することにより発光面の輝度むらを防止して美観に優れた発光ボタンを得る。
【解決手段】発光装置9は、LED20と、LED20から放射された光を採り入れて照射方向に光を放射する光学部材21と、光学部材21において光を放射する上面に対し反対側の下面を覆って光学部材21に採り入れられた光を反射させる反射シート22と、光学部材21から放射された光を拡散させるプリズムシート23と、を備えている。光学部材21は、上面と下面との間で形成される肉厚が、LED20から離れるに従って減少する形状を成し、これによりLED20から近い側と遠い側とで上方への放射光強度がバランスされ、輝度むらが少なく均一な放射光強度を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDなどの光源から放射された光を採り入れて外部に放射する光学部材を備えた発光装置、およびこれを備えたパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器においてLEDなどの発光手段はユーザインタフェースの点で重要であり、例えば各種操作設定を行う為の発光ボタンやインジケータなどに多く用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献3記載のインジケータ用導光体においては、発光面の広い範囲をより均一に発光させることを目的として、発光面の近くに光拡散材を配置し、導光体の下から上に向けて照射したLED光が、照射方向(発光面と直交する方向)のみならず発光面に対し鋭角的な角度で出射するよう構成されている。
【特許文献1】特開平6−106817号公報
【特許文献2】特開平11−338394号公報
【特許文献3】特開2005−84460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器においては装置の機能に加えて装置の美観が極めて重要となっており、発光ボタンの技術分野においても、発光面全体が輝度むらなく均一に発光することが装置の付加価値を高めるべくより一層望まれている。
【0005】
しかしながら電子機器においては機能・美観に加えて小型化や低コスト化の要請も極めて強く、このため装置内の部品レイアウトやコストの関係により、発光ボタンの発光面全体を輝度むらなく均一に発光させることがより困難となっている。
【0006】
例えば、発光ボタンの裏側に光源を配置することができないため、発光ボタンの側方に配置する、といった構成を採用せざるを得ない場合が生じ、この場合には光源から遠い側の発光面の輝度が低下するといった問題が生じる。この様な技術的課題は、上記従来の発光ボタンの技術分野においては十分に考慮されていなかった。
【0007】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、特に装置の薄型化を実現することを目的に光源を発光ボタンの側方に配置する構成において、光源から遠い場所における輝度を確保することにより発光面の輝度むらを防止して美観に優れた発光ボタンを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る発光装置は、光源と、前記光源から放射された光を採り入れて外部に放射する光学部材と、前記光学部材において光を放射する側の表面に対し反対側の表面を覆って前記光学部材に採り入れられた光を反射させる反射シートと、を備え、前記光源は、前記光学部材において光を放射する側の表面と、前記反射シートにより覆われる表面と、の間で形成される肉厚の厚み方向と交差する方向の側端部と対向する位置に配置され、前記光学部材は、前記肉厚が前記光源から離れるに従って減少する形状を成していることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、光源は光学部材の側端部と対向する位置に配置され、光学部材は、光を放射する側の表面と、その反対側の反射シートに覆われる表面と、の間で形成される肉厚が、光源から離れるに従って減少する形状を成しており、つまり光を放射する表面と反射シートとの間の距離が光源から離れるに従って近くなるので、これにより光源から近い側と遠い側とで放射光強度がバランスされ、全体として輝度むらの少ない、或いは輝度むらのない発光面を得ることができる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る発光装置は、第1の態様において、前記光学部材から放射された光を拡散させる拡散部材を備えていることを特徴とする。
本態様によれば、前記光学部材から放射された光を拡散させる拡散部材を備えているので、光の指向性を軽減してより一層均一な発光状態を得ることができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る発光装置は、第1のまたは第2の態様において、前記光学部材は、光を拡散させる拡散材を含んだ樹脂部材であることを特徴とする。
本態様によれば、前記光学部材は、光を拡散させる拡散材を含んだ樹脂部材であるので、より一層光の指向性が軽減され、より一層均一な発光状態を得ることができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る発光装置は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、複数の前記光学部材が配列され、隣り合う2つの前記光学部材の間が、前記光学部材において前記反射シートにより覆われる側と前記光源が設けられる基板との間に形成された空間に入り込む形状を成す仕切壁により画設されており、前記仕切壁の下側に形成された空間に、前記光源が配置されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、光源が設けられる基板と光学部材との間に空間が形成され、この空間を利用して光源が配置されるので、隣り合う光学部材の配置間隔を狭めることができ、光学部材を密接配置すること、即ち省スペース化を図ることができる。
【0014】
本発明の第5の態様は、各種情報を表示する情報表示部と、各種設定を行う操作設定部と、を備えたパネル装置であって、前記操作設定部は、複数の発光ボタンと、当該発光ボタンを発光させる、第1から第4の態様のいずれかに係る発光装置と、を備えて構成されていることを特徴とする。本態様によれば、パネル装置において、上記第1から第4の態様のいずれかと同様な作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜図6を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。ここで、図1は本発明に係る発光装置9を有するチルトパネルユニット(パネル装置)10を備えた、電子機器の一例としてのインクジェット複合機1の外観斜視図、図2は同外観斜視図であってチルトパネルユニット10をチルトさせた状態を示す図、図3はチルトパネルユニット10の外観斜視図、図4はチルトパネルユニット10の分解斜視図であって各構成部材を上方から視た図、図5はチルトパネルユニット10の分解斜視図であって各構成部材を下方から視た図、図6はチルトパネルユニット10の断面図である。尚、図4〜図6においては、チルトパネルユニット10の全構成要素のうち一部を省略して描いている。
【0016】
図1及び図2において被記録媒体に記録を行う記録装置の一例としてのインクジェット複合機1は、インクジェットプリンタ機構(図示せず)とスキャナ機構(図示せず)とを併せ持った複合機であり、符号1aは上記インクジェットプリンタ機構及びスキャナ機構を備えた装置本体を示し、また符号2は装置本体1aの上部に設けられ、スキャナ機構の原稿台(図示せず)を開閉する原稿台カバー2を示している。
【0017】
符号4は装置底部に設けられ、装置手前側に引き出すことで用紙(図示せず)をセット可能となる用紙カセットを示しており、また符号5は装置手前側に引き出すことで展開状態となり、記録の行われた用紙をスタック可能な状態となる引き出し式用紙スタッカを示している。
【0018】
更に符号3は画像データなどが記憶された記憶媒体(図示せず)を挿入する記憶媒体挿入部を示していて、インクジェット複合機1は、記憶媒体挿入部3に挿入された記憶媒体に記憶された画像データを、外部コンピュータによらず、単独でインクジェット記録可能な所謂スタンドアロン型プリンタとして構成されている。
【0019】
そして装置手前側中央部には、チルトパネルユニット10が設けられている。チルトパネルユニット10は、図3にも示すようにプレビュー画像やユーザインタフェースなどの各種情報を表示する、液晶モニタなどで構成される情報表示部11と、各種設定を行うタッチエリア(ボタン)12aが複数配列されて成る、情報表示部11の両側に配置される操作設定部12、12と、を備えている。
【0020】
チルトパネルユニット10は下部フレーム13に設けられた回転軸13aを介してインクジェット複合機1の装置本体1aに対して回動可能に設けられており、またそのチルト角が、図示を省略するチルト装置によって例えば図2に示すような角度に保持されるようになっていて、ユーザにとって視認性及び操作性の良好な任意の角度で保持できるようになっている。
【0021】
チルトパネルユニット10は、図4及び図5に示すように基板19、ホルダ18、光学ブロック25、補助ホルダ17、識別表示シート16、タッチパネル15、上部フレーム14、のこれらを備えて構成されている。
【0022】
ホルダ18は情報表示部11を保持するとともに、後述する複数の光学部材21を並列配置する為の配置領域が格子状に画設されており、左右に配置領域を画設する仕切壁18bと、上下に配置領域を画設する仕切壁18aと、が設けられている。尚、仕切壁18bは垂直方向(基板19に直交する方向)に延びる形状を成し、仕切壁18aは傾斜面を成すように形成される(詳細は後述)。
【0023】
ホルダ18の下部に設けられた基板19には、光源としてのLED20が、1つの光学部材21の側端部に対して1つ対向配置されるよう複数設けられ、LED20から放射された光が光学部材21に採り入れられ、そして光放射方向(図6の上方向)に放射されるようになっている。
【0024】
上記LED光は、透明シート上にタッチエリア(ボタン枠)12aを示す枠線及びその枠線内に識別文字(図示せず)が記されて成る識別表示シート16の、前記タッチエリア12aを下方(裏側)から均一に照射し、そしてタッチエリア12aを通過したLED光が、更に光透過性の良好なタッチパネル15を通過して外部(ユーザ側)へと放射される。
【0025】
タッチパネル15は、パネル上において押圧された位置を検出する為の公知のタッチパネルであり、インクジェット複合機1の制御部(図示せず)は、タッチパネル15から送信される電気信号により、タッチパネル15上においていずれの位置がタッチされたか、即ち複数画設されたタッチエリア12aのうちいずれのエリアが押圧されたか、を把握できるようになっている。
【0026】
光学ブロック25は、ホルダ18及び補助ホルダ17により保持され、図示を省略する光源(LED)の光を採り入れ、この光を上方(パネル面に垂直な方向)と手前側方向(パネル面に平行な方向)に向けて放射する光学部材であり、光源の点灯或いは点滅により、装置の動作状況などをユーザに知らせるインジケータの一部を構成する。
【0027】
以上がインクジェット複合機1およびチルトパネル10の構成であり、続いて図6をも参照しながら発光装置9について詳説する。発光装置9は、光源となるLED20と、LED20から放射された光を採り入れてユーザ側(図6の上方)に光を放射する光学部材21と、光学部材21において光を放射する側(図6において上側)の表面に対し反対側(図6において下側)の表面を覆って光学部材21に採り入れられた光を反射させる反射シート22と、光学部材21から放射された光を拡散させる拡散部材としてのプリズムシート23と、を備えて構成されている。
【0028】
光学部材21は、透明樹脂材(例えば、アクリル、ポリカーボネート、など)に光を拡散させる拡散材(図示せず)を含んで形成された樹脂部材であり、本実施形態では図5に示すように2つの光学部材21が連結状態となるよう樹脂成形工程により成形される。
【0029】
この光学部材21は、光を放射する側の表面(上面)および反射シート22により覆われる表面(下面)がほぼ平坦面を成しており、且つ反射シート22により覆われる下面が、上面に対し傾斜角を成すように(交差するように)形成されている。これにより、上面と下面との間で形成される肉厚が、LED20から離れるに従って減少する形状を成している。
【0030】
LED20は、光学部材21の厚み方向(図6において上下方向)と交差する方向(図6において左右方向)の側端部と対向する位置に配置され、その光軸(放射光強度分布の中心)が、図6の左方向を向くように配置される。
【0031】
以上によりLED20から放射された光は、光学部材21の側端部から内部へと採り入れられ、反射シート22で反射して上方に向かい、光学部材21の上部平坦面から上方へと放射される。そしてプリズムシート23による光拡散作用と相俟って、タッチエリア12aの領域内を輝度むら及び指向性なく均一に照射する。尚、図6において符号9はプリズムシート23を備えた発光装置を示し、符号9’はプリズムシート23を備えない発光装置を示している。
【0032】
ここで、光学部材21は、上述の通り肉厚がLED20から離れるに従って減少する形状を成しており、即ち上面(光を放射する側の面)と反射シート22との間の距離がLED20から離れるに従って近くなるように形成されている。これにより、LED20から近い側と遠い側とで上方への放射光強度がバランスされ、1つのタッチエリア12a内の全領域において輝度むらの少ない均一な放射光強度を得ることができる。
【0033】
また、反射シート22により覆われる下面が傾斜角を有し、隣合う2つの光学部材21の間には、反射シート22の下側に形成された空間に入り込む形状を成す仕切壁18aが配置され、そしてこの仕切壁18aの下側空間を利用してLED20が配置される。これにより、隣合う光学部材21の配置間隔を狭めることができ、光学部材21を密接配置すること、即ち省スペース化を図ることができる。また、LED20を光学部材21の下側に配置しないので、チルトパネルユニット10の薄型化を図ることができる。
【0034】
尚、以上説明した実施形態では、複数配列された光学部材21の一部についてプリズムシート23を設けているが、全ての光学部材21についてプリズムシート23を設けても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る発光装置を備えたインクジェット複合機の外観斜視図。
【図2】本発明に係る発光装置を備えたインクジェット複合機の外観斜視図。
【図3】本発明に係る発光装置を備えたチルトパネルユニットの外観斜視図。
【図4】本発明に係る発光装置を備えたチルトパネルユニットの分解斜視図。
【図5】本発明に係る発光装置を備えたチルトパネルユニットの分解斜視図。
【図6】本発明に係る発光装置を備えたチルトパネルユニットの断面図。
【符号の説明】
【0036】
1 インクジェット複合機、1a 装置本体、2 原稿台カバー、3 記憶媒体挿入部、4 用紙カセット、5 引き出し式用紙スタッカ、9 発光装置、10 チルトパネルユニット、11 情報表示部、12 操作設定部、12a タッチエリア(ボタン)、13 下部フレーム、13a 回転軸、14 上部フレーム、15 タッチパネル、16 識別表示シート、17 補助ホルダ、18 ホルダ、19 基板、20 LED、21 光学部材、22 反射シート、23 プリズムシート、25 光学ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から放射された光を採り入れて外部へ放射する光学部材と、
前記光学部材において光を放射する側の表面に対し反対側の表面を覆って前記光学部材に採り入れられた光を反射させる反射シートと、を備え、
前記光源は、前記光学部材において光を放射する側の表面と、前記反射シートにより覆われる表面と、の間で形成される肉厚の厚み方向と交差する方向の側端部と対向する位置に配置され、
前記光学部材は、前記肉厚が前記光源から離れるに従って減少する形状を成していることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、前記光学部材から放射された光を拡散させる拡散部材を備えている、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置において、前記光学部材は、光を拡散させる拡散材を含んだ樹脂部材であることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置において、複数の前記光学部材が配列され、
隣り合う2つの前記光学部材の間が、前記光学部材において前記反射シートにより覆われる側と前記光源が設けられる基板との間に形成された空間に入り込む形状を成す仕切壁により画設されており、
前記仕切壁の下側に形成された空間に、前記光源が配置されている、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項5】
各種情報を表示する情報表示部と、
各種設定を行う操作設定部と、を備えたパネル装置であって、
前記操作設定部は、複数の発光ボタンと、当該発光ボタンを発光させる、請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置と、を備えて構成されていることを特徴とするパネル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−15790(P2010−15790A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173949(P2008−173949)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】