説明

発光装置および表示装置

【課題】部品点数や厚さを増大させずに、偏光光を得ることの可能な発光装置およびそれを備えた表示装置を提供する。
【解決手段】基板22上に、透明電極24、有機EL層25および反射電極26を基板22側から順に有する発光素子23が設けられている。基板22の透明電極24側の表面には、X軸方向に可視光の波長の上限以下の幅を有する複数の凸部22Bを含む立体構造22Aが設けられている。透明電極24、有機EL層25および反射電極26には、基板22とは反対側の表面に立体構造22に倣った立体構造24Aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)等の発光素子を備えた発光装置およびそれを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示装置のバックライトには、冷陰極型の蛍光ランプが広く用いられている。冷陰極型の蛍光ランプは、発光波長域や輝度等に関しては優れた特性を有しているものの、面全体を照明するために反射板や導光板等を必要とし、部品コストが嵩んだり、消費電力が高くなったりする等の改善すべき点を有している。そのため、近年、有機EL素子をバックライトとして用いた液晶表示装置が提案されている(特許文献1参照)。有機EL素子は自発光素子であり、薄膜プロセスによって製造可能であり、消費電力が低く、波長選択範囲が広い等の数多くの優れた点を有している。
【0003】
一般に、有機EL素子は、ガラス基板等の透明基板上に、陽極としての透明電極、有機EL層を含む発光層および陰極としての反射電極を積層した構成となっている。透明電極は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等で形成され、反射電極はAl(アルミニウム)等で形成されている。発光層は、例えば、正孔輸送層、有機EL層および電子輸送層の積層構造となっている。
【0004】
このような構成の有機EL素子では、透明電極と反射電極との間に直流電圧を印加することにより、透明電極から注入された正孔(ホール)が正孔輸送層を経て、また反射電極から注入された電子が電子輸送層を経て、有機EL層に導入される。有機EL層では、導入された正孔と電子の再結合が生じることによって所定の波長で光が発生し、発生した光は透明電極および透明基板を介して外部に射出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−125461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の有機EL素子では、発光層で発生した光は材料自体に異方性を持たせない限り一般的に無偏光となっている。そのため、発光層で発生した光の多くが液晶表示パネルの偏光子によって吸収されてしまう。そこで、バックライトと液晶表示パネルとの間に反射型偏光子を設置することが考えられる。しかし、そのようにした場合には、部品点数が増え、表示装置の厚さも増してしまうという問題があった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数や厚さを増大させずに、偏光光を得ることの可能な発光装置およびそれを備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による発光装置は、基板上に、第1電極、発光層および第2電極を基板側から順に有する発光素子を備えたものである。基板は、第1電極側の表面に、可視光の波長の上限以下の幅を有する複数の帯状の凸部を含む第1立体構造を有している。第1電極、発光層および第2電極は、基板とは反対側の表面に第1立体構造の凸部に倣った第2立体構造を有している。
【0009】
本発明による表示装置は、画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、表示パネルを照明する光を発する発光装置とを備えたものである。発光装置は、基板を有すると共に、基板の表示パネルとは反対側の表面上に、第1電極、発光層および第2電極を基板側から順に有している。基板は、第1電極側の表面に、可視光の波長の上限以下の幅を有する複数の帯状の凸部を含む第1立体構造を有している。第1電極、発光層および第2電極は、基板とは反対側の表面に第1立体構造の凸部に倣った第2立体構造を有している。
【0010】
本発明による発光装置および表示装置では、基板の第1電極側の表面に、可視光の波長の上限以下の幅を有する複数の帯状の凸部を含む第1立体構造が設けられている。第1電極、発光層および第2電極には、基板とは反対側の表面に第1立体構造の凸部に倣った第2立体構造が設けられている。これにより、発光層で発生した光が基板表面の第1立体構造や、第1電極、発光層および第2電極の第2立体構造によって偏光光に変換される。
【発明の効果】
【0011】
本発明による発光装置および表示装置によれば、発光層で発生した光が基板表面の第1立体構造や、第1電極、発光層および第2電極の第2立体構造によって偏光光に変換される。これにより、発光素子から発せられる光そのものを偏光光とすることができるので、部品点数や厚さを増大させずに、偏光光を得ることができる。その結果、偏光を用いる表示装置(代表的には、後述する液晶プロジェクタ、液晶テレビ、液晶モニター等)や照明装置において、高輝度化、高コントラスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の断面図である。
【図2】図1の照明装置に含まれる発光装置の斜視図および断面図である。
【図3】図2の発光装置の作用について説明するための模式図である。
【図4】電流密度と輝度との関係図である。
【図5】偏向成分と電力効率との関係図である。
【図6】ピッチと消光比との関係図である。
【図7】アスペクト比と消光比との関係図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るプロジェクタの構成図である。
【図9】図2の発光装置の一変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(表示装置)
2.第2の実施の形態(プロジェクタ)
【0014】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置1の概略構成の一例を表したものである。この表示装置1は、液晶表示パネル10(表示パネル)と、液晶表示パネル10の背面側に配置された照明装置20と、これらを支持する筐体30と、液晶表示パネル10を駆動して映像を表示させる駆動回路(図示せず)とを備えている。この表示装置1では、液晶表示パネル10の正面が観察者(図示せず)側に向けられている。
【0015】
(液晶表示パネル10)
液晶表示パネル10は、映像を表示するためのものである。この液晶表示パネル10は、例えば、映像信号に応じて各画素が駆動される透過型の表示パネルであり、液晶層を一対の透明基板で挟み込んだ構造となっている。液晶表示パネル10は、例えば、照明装置20側から順に、偏光子、透明基板、画素電極、配向膜、液晶層、配向膜、共通電極、カラーフィルタ、透明基板(対向基板)および偏光子(いずれも図示せず)を有している。
【0016】
透明基板は、可視光に対して透明な基板、例えば板ガラスからなる。なお、液晶表示パネル10における照明装置20側の透明基板には、画素電極に電気的に接続されたTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)および配線などを含むアクティブ型の駆動回路が形成されている。画素電極および共通電極は、例えばITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)からなる。画素電極は、透明基板上に格子配列またはデルタ配列されたものであり、画素ごとの電極として機能する。他方、共通電極は、カラーフィルタ上に一面に形成されたものであり、各画素電極に対して対向する共通電極として機能する。配向膜は、例えばポリイミドなどの高分子材料からなり、液晶に対して配向処理を行う。液晶層は、例えば、VA(Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モードまたはSTN(Super Twisted Nematic)モードの液晶からなり、駆動回路からの印加電圧により、照明装置20からの射出光の偏光軸の向きを画素ごとに変える機能を有する。なお、液晶の配列を多段階で変えることにより画素ごとの透過軸の向きが多段階で調整される。カラーフィルタは、液晶層を透過してきた光を、例えば、赤(R)、緑(G)および青(B)の三原色にそれぞれ色分離したり、または、R、G、Bおよび白(W)などの四色にそれぞれ色分離したりするカラーフィルタを、画素電極の配列と対応させて配列したものである。フィルタ配列(画素配列)としては、一般的に、ストライプ配列や、ダイアゴナル配列、デルタ配列、レクタングル配列のようなものがある。偏光子は、光学シャッタの一種であり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。偏光子はそれぞれ、偏光軸が互いに90度異なるように配置されており、これにより照明装置20からの射出光が液晶層を介して透過し、あるいは遮断されるようになっている。
【0017】
(照明装置20)
照明装置20は、例えば、図2(A)に示したような発光装置21を直下型の光源として有している。なお、図2(A)は、発光装置21を斜視的に表したものであり、図2(B)は、図2(A)のA-A矢視方向の断面構成の一例を表したものである。発光装置21は、例えば、基板22と、発光素子23とを有している。発光素子23は、基板22の一の表面、具体的には、基板22のうち液晶表示パネル10とは反対側の表面上に形成されている。すなわち、図2(A)の発光装置21を図1の照明装置20として適用した場合に、図1において発光素子23は基板22の下側に配置される。発光素子23は、例えば、有機EL素子からなり、透明電極24、有機EL層25(発光層)および反射電極26を基板22側から順に積層して構成されている。基板22と透明電極24とは互いに接触しており、基板22と透明電極24との間に界面21Bが存在している。基板22のうち発光素子23とは反対側の表面は、発光装置21の光射出面21Aとなっており、液晶表示パネル10と対向配置されている。図2(A)では、光射出面21A上に特に何も設けられていない場合が例示されているが、例えば、プリズムシートなどの光学シートが設けられていてもよい。
【0018】
(基板22)
基板22は、有機EL層25で発生する光に対して透明な材料、例えば、ガラス、プラスチックなどからなる。基板22の透過率は、有機EL層25で発生する光に対しておおむね70%以上となっていることが好ましい。基板22に好適に用いることの可能なプラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)などが挙げられる。基板22は、リジッド性(自己支持性)を有するものであることが好ましいが、フレキシブル性を有するものであってもよい。
【0019】
基板22は、例えば、図2(A),(B)に示したように、透明電極24側の表面に、積層面内の一の方向(X軸方向)に規則性を有する立体構造22A(第1立体構造)を有している。立体構造22Aは、例えば、X軸方向と直交する方向(Y軸方向)に延在する複数の帯状の凸部22BをX軸方向に並列配置して構成されている。凸部22Bは、例えば、図2(B)に示したように、頂部22Cに丸み(凸状の曲面)を有していることが好ましい。頂部22Cが鋭く尖った形状となっている場合には、発光素子23のうち頂部22Cに対応する部分が、カバレッジ不良等により破壊され易くなり、寿命が短くなってしまうからである。頂部22Cだけでなく、さらに、互いに隣り合う2つの凸部22Bによって形成される谷部22Dにも丸み(凹状の曲面)が形成されていてもよい。このように、頂部22Cおよび谷部22Dが丸みを帯びている場合には、立体構造22Aは、X軸方向において波打った形状になっている。
【0020】
なお、頂部22Cおよび谷部22Dの少なくとも一方が平坦となっていてもよい。頂部22Cと谷部22Dとの間の部分の表面は、傾斜面となっていることが好ましいが、積層方向と平行な垂直面となっていてもよい。凸部22Bは、例えば、半円柱状、台形状、多角柱状など、種々の形状をとり得る。また、全ての凸部22Bが同一形状となっていてもよいし、互いに隣り合う凸部22B同士が互いに異なる形状となっていてもよい。また、基板22上の複数の凸部22Bが2種類以上の凸部に分類され、種類ごとに同一形状となっていてもよい。
【0021】
凸部22Bは、厚み方向(Z軸方向)および配列方向(X軸方向)のいずれにおいても、可視光の波長(一般的に、約380nm以上、約780nm以下)の上限(約780nm)以下のスケールとなっている。つまり、立体構造22Aは、ナノオーダーの規則性もしくは周期性を有している。ここで、各凸部22Bは、有機EL層25のうち当該凸部22Bと対向する部分で発生する光の波長帯に対応した幅を有していてもよいし、有機EL層25のうち当該凸部22Bと対向する部分で発生する光の波長帯とは拘りなく一定の幅を有していてもよい。
【0022】
凸部22Bの高さHは、好ましくは、50nm以上275nm以下となっており、例えば、50nm以上192.5nm以下となっている。凸部22Bの幅(配列方向のピッチP)は、好ましくは、150nm以上275nm以下となっている。特に、ピッチPを275nm以下とした場合には、図6に示すように、高い消光比(高い偏光度)の偏光光を得ることが可能となる。また、図7より、消光比が極力大きくなるアスペクト比=1.0を選んだ場合には、凸部22Bの高さHは、275nm以下とするのが好ましい。なお、凸部22Bの高さHおよび幅によって規定される谷部22Dのアスペクト比は、0.2以上2以下であることが好ましい。これは、アスペクト比が2を超えると、基板22上に発光素子23を積層することが困難となってしまうからである。また、アスペクト比が0.2を下回ると、界面21Bおよびその近傍における積層方向の屈折率変化が急峻になってしまい、後述する全反射低減効果がほとんどなくなってしまうからである。
【0023】
このように、立体構造22Aは、幾何光学的には平坦面に近い表面形状となっている。ただし、後述するように、立体構造22Aは、単なる平坦面や、マイクロオーダーの規則性を有する立体構造とは異なる特異な作用を発現する。なお、基板22が樹脂からなる場合には、基板22の立体構造22Aは、例えば、ナノインプリント技術を利用して作製可能である。例えば、立体構造22Aは、支持基板上に、基板22の材料である樹脂を塗布したのち、その樹脂に、立体構造22Aを反転させた立体構造を有する型をプレスすると共に、熱や紫外線を照射することによって作製することが可能である。基板22がガラスからなる場合には、例えば、以下のようにして立体構造22Aを作製することが可能である。まず、ガラス表面に熱硬化樹脂もしくは紫外線硬化樹脂を均一に塗布する。次に、その上から、立体構造22Aを反転させた立体構造を有する型を押し当て、熱あるいは紫外光線を用いて、樹脂表面に型の形状を転写する。次に、リアクティブイオンエッチング法などにより、表面を均一に腐食させ(除去し)、それにより、立体構造22Aをガラス基板上に形成することが可能である。また、例えば、ガラス転移点温度の比較的低いガラス等に、上述した型を押し当て、加熱することにより立体構造22Aをガラス基板上に形成することも可能である。
【0024】
(透明電極24)
透明電極24は、有機EL層25で発生した光に対して透明な材料であって、かつ導電性を有する材料によって構成されている。そのような材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、SnO(酸化スズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)などが挙げられる。透明電極24は、基板22の立体構造22Aの表面に形成されており、基板22とは反対側の表面に立体構造22Aに倣った立体構造24A(第2立体構造)を有している。つまり、立体構造24Aは、おおむね、立体構造22Aと同様の表面形状となっており、凸部22Bに近似した凸部をX軸方向に並列配置してなる立体構造の表面形状となっている。例えば、立体構造24Aにおいて、互いに隣り合う2つの凸部によって形成される谷部24Bの深さ(当該凸部の頂点から谷部24Bの底部までの距離)は、谷部22Dの深さ(凸部22Bの頂点から谷部22Dの底部までの距離)と同等かそれよりも浅い深さとなっており、谷部24Bのアスペクト比は、谷部22Dのアスペクト比と同等かそれよりも小さくなっている。有機EL層25、透明電極24および反射電極26などの良好なカバレッジを確保するためには、谷部24Bの深さは、谷部22Dの深さと同等かそれよりも浅い深さとなっているのが望ましいが、逆に谷部24Bの深さが、谷部22Dの深さより深くなっていてもよい。なお、本明細書等において「倣う」という場合には、各立体構造が同様の表面形状となっている場合のみならず、上記のように各立体構造の谷部の深さに変化を設ける場合も含むものとする。
【0025】
透明電極24の厚さは、基板22上に透明電極24を成膜したときに可視光の波長の上限以下のスケールの立体構造24Aが形成されるような値となっていることが好ましい。透明電極24の厚さは、例えば、50nm以上500nm以下となっていることが好ましく、80nm以上150nm以下となっていることがさらに好ましい。
【0026】
(有機EL層25)
有機EL層25は、例えば、透明電極24側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層を積層してなる積層構造を有している。なお、有機EL層25は、必要に応じて、上で例示した層以外の層を含んでいてもよいし、正孔輸送層および電子輸送層のいずれかまたは両方を含んでいなくてもよい。ここで、正孔注入層は、正孔注入効率を高めるためのものである。正孔輸送層は、発光層への正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層は、透明電極24と反射電極26との間に発生する電界によって電子と正孔との再結合を起こさせ、光を発生させるためものである。電子輸送層は、発光層への電子輸送効率を高めるためのものである。有機EL層25は、一の波長帯(例えば、赤色帯、青色帯または緑色帯)の光を発生するようになっていてもよいし、場所によって波長帯の異なる光を発生するようになっていてもよい。
【0027】
有機EL層25は、透明電極24の立体構造24Aの表面に形成されており、基板22とは反対側の表面に立体構造24Aにおおむね倣った形状を有している。つまり、有機EL層25は、X軸方向において可視光の波長の上限以下のスケールでうねった形状(立体構造)となっている。これにより、有機EL層25(特に、発光層)において、積層方向から見た単位面積あたりの表面積が、有機EL層25が平坦面上に形成されている場合と比べて大きくなっている。なお、有機EL層25は、透明電極24の表面全体に形成されていてもよいし、パターン状に分布形成されてもよい。パターン形状は特に制限されず、マス状、ストライプ状などの種々の形状が採用可能である。有機EL層25の厚さは、透明電極24上に有機EL層25を成膜したときに上述した可視光の波長の上限以下のスケールのうねりが形成されるようにするためには、例えば、50nm以上780nm以下となっていることが好ましい。
【0028】
(反射電極26)
反射電極26は、有機EL層25で発生した光を高反射率で反射する材料、例えば、アルミニウム、白金、金、クロム、タングステン、ニッケル、またはそれらのいずれかを含む合金などによって形成されている。反射電極26は、有機EL層25の表面(うねった表面)に形成されており、基板22とは反対側の表面に、有機EL層25の表面のうねりにおおむね倣った形状となっている。つまり、反射電極26は、有機EL層25と同様、X軸方向において可視光の波長の上限以下のスケールでうねった形状(立体構造)となっている。
【0029】
次に、本実施の形態の表示装置1の作用および効果について説明する。
【0030】
本実施の形態では、透明電極24と反射電極26との間に電圧が印加されることにより、透明電極24からは正孔が有機EL層25内の発光層へ導入され、反射電極26からは電子が有機EL層25内の発光層へ導入される。発光層において、導入された正孔と電子の再結合により有機EL分子が励起され、所定の波長の光が発生する。発生した光は、透明電極24および基板22を通じて、光射出面21Aから液晶表示パネル10の背面へ面状に射出される。液晶表示パネル10において、照明装置20からの入射光が画像信号に基づいて変調されると共に、カラーフィルタによって色分離され、観察側に射出する。これにより、カラーの画像表示が行われる。
【0031】
ところで、本実施の形態では、基板22の透明電極24側の表面に、X軸方向に可視光の波長の上限以下の規則性を有する立体構造22Aが設けられている。透明電極24、有機EL層25および反射電極26には、基板22とは反対側の表面に立体構造22Aに倣った立体構造24Aが設けられている。一般に、基板22および透明電極24の屈折率差は大きいので、基板22と透明電極24との界面21Bが平坦面となっている場合にはその反射率は高い。しかし、本実施の形態では、界面21Bには可視光の波長の上限以下の規則性を有する立体構造22Aが設けられているので、界面21Bおよびその近傍において、積層方向の屈折率の変化がなだらかとなっている。これにより、界面21Bにおける反射率が低くなるので、図3に示したように、有機EL層25で発生した光Lが界面21Bを透過し、光射出面21Aから外部に射出される割合が大きくなる。
【0032】
また、本実施の形態では、透明電極24の表面にも可視光の波長の上限以下の規則性を有する立体構造24Aが形成されているので、有機EL層25(特に有機EL層25内の発光層)が可視光の波長の上限以下のスケールでうねった形状となる。これにより、発光層が平坦な形状となっている場合と比べて、発光層の表面積が大きくなるので、電流密度も大きくなる。また、透明電極24に可視光の波長の上限以下の規則性を有する立体構造24Aが形成されていることから、電界の局所的に強い部分が発光層内に可視光の波長の上限以下で規則的に発生する。これにより、基板22が平坦となっている場合や、基板22にマイクロオーダーの規則性を有する立体構造を設けた場合と比べて、電流効率(=輝度/電流密度)および電力効率(=輝度/(電流密度×印加電圧))の双方の効率が大幅に向上する。従って、基板22が平坦となっている場合や、基板22にマイクロオーダーの規則性を有する立体構造を設けた場合と比べて、輝度を高くすることができる。
【0033】
例えば、図4に示したように、凸部22Bのピッチが275nmとなっている場合(図4の実線)には、基板22が平坦となっている場合(図4の破線)と比べて、輝度が高くなっていることがわかる。
【0034】
また、本実施の形態では、基板22の透明電極24側の表面に、X軸方向に可視光の波長の上限以下の規則性を有する立体構造22Aが設けられている。透明電極24、有機EL層25および反射電極26には、基板22とは反対側の表面に立体構造22Aに倣った立体構造24Aが設けられている。これにより、有機EL層25(特に有機EL層25内の発光層)で発生した光が基板22の表面の立体構造22Aや、透明電極24、有機EL層25および反射電極26によって偏光光に変換される。これにより、発光素子23から発せられる光そのものを偏光光とすることができる。
【0035】
例えば、凸部22Bのピッチが275nmとなっている場合には、図5に示したように、TM(Transverse Magnetic)偏光の電力効率(図5の実線)と、TE(Transverse Electric)偏光の電力効率(図5の破線)との差を大きくすることができる。そして、電力効率の差を大きくすることにより、偏光光の偏光度を上げることができる。なお、TM偏光とは格子に垂直な偏光を意味し、TE偏光とは格子に平行な偏光を意味する。また、例えば、凸部22Bのピッチが275nmとなっているときに、谷部22Dのアスペクト比を0.3から1.0まで変化させた場合には、図6に示したように、赤色波長(590nm)、緑色波長(530nm)、および青色波長(470nm)のいずれの波長においても、消光比を1よりも大きくすることができる。また、例えば、谷部22Dのアスペクト比が0.3となっているときに、凸部22Bのピッチを150nmから400nmまで変化させた場合には、図7に示したように、赤色波長(590nm)、緑色波長(530nm)、および青色波長(470nm)のいずれの波長においても、消光比を1よりも大きくすることができる。すなわち、上記のように、消光比を1より大きく(または小さく)することにより、偏光度が得られる。なお、図6、図7に示した消光比は、正面方向の光(具体的には、放射角度±2.5°の範囲内の光)の強度を積分することにより導出されたものである。
【0036】
このように、本実施の形態では、部品点数や厚さを増大させずに、偏光光を得ることができる。また、発光装置21から偏光光が発せられることにより、発光装置21から発せられた偏光光の偏光方向が液晶表示パネル10の発光装置21側の偏光子の透過軸と平行となっている場合には、例えば、以下に示した効果を得ることができる。すなわち、発光装置21側の偏光子に入射する光が無偏光光である場合と比べて、表示輝度を高くすることができる。また、発光装置21側の偏光子に入射する光が無偏光光である場合と比べて、液晶表示パネル10の発光装置21側の偏光子の透過軸と交差(直交)する偏光成分を少なくすることができ、コントラストを高くすることができる。
【0037】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係るプロジェクタ2について説明する。図8は、本実施の形態のプロジェクタ2の概略構成の一例を表したものである。プロジェクタ2は、上記実施の形態の発光装置21をプロジェクタ2の光源として備えたものである。
【0038】
プロジェクタ2は、例えば、3板式の透過型プロジェクタであり、例えば、図8に示したように、発光装置21、光路分岐部40、空間光変調部50、合成部60および投影部70を備えている。
【0039】
発光装置21は、空間光変調部50の被照射面を照射する光束を供給するものである。なお、必要に応じて、発光装置21の光31が通過する領域(光軸AX上)に、何らかの光学素子が設けられていてもよい。例えば、光軸AX上に、発光装置21からの光31のうち可視光以外の光を減光するフィルタと、空間光変調部50の被照射面上の照度分布を均一にするオプティカルインテグレータとを発光装置21側からこの順に設けることが可能である。
【0040】
光路分岐部40は、発光装置21から出力された光31を波長帯の互いに異なる複数の色光に分離して、各色光を空間光変調部50の被照射面に導くものであり、例えば、図8に示したように、1つのクロスミラー41と、4つのミラー42を含んで構成されている。クロスミラー41は、発光装置21から出力された光31を波長帯の互いに異なる複数の色光に分離する共に各色光の光路を分岐するものである。クロスミラー41は、例えば、光軸AX上に配置されており、互いに異なる波長選択性を持つ2枚のミラーを互いに交差させて連結して構成されている。4つのミラー42は、クロスミラー41により光路分岐された色光(図8では赤色光31R,青色光31B)を反射するものであり、光軸AXとは異なる場所に配置されている。4つのミラー42のうち2つのミラー42は、クロスミラー41に含まれる一のミラーによって光軸AXと交差する一の方向に反射された光(図8では赤色光31R)を後述の空間光変調部50Rの被照射面に導くように配置されている。また、4つのミラー42のうち残りの2つのミラー42は、クロスミラー41に含まれる他のミラーによって光軸AXと交差する他の方向に反射された光(図8では青色光31B)を後述の空間光変調部50Bの被照射面に導くように配置されている。なお、発光装置21から出力された光31のうちクロスミラー41を透過して光軸AX上を通過する光(図6では緑色光31G)は、光軸AX上に配置された空間光変調部50G(後述)の被照射面に入射するようになっている。
【0041】
空間光変調部50は、外部から入力された変調信号に応じて、複数の色光を色光ごとに変調して色光ごとに変調光を生成するものである。この空間光変調部50は、例えば、赤色光31Rを変調する空間光変調部50Rと、緑色光31Gを変調する空間光変調部50Gと、青色光31Bを変調する空間光変調部50Bとを含んでいる。空間光変調部50は、さらに、空間光変調部50R,50G,50Bを挟み込む一対の偏光子51,52を有している。
【0042】
空間光変調部50Rは、例えば、透過型の液晶パネルであり、合成部60の一の面との対向領域に配置されている。この空間光変調部50Rは、入射した赤色光31Rを変調信号(画像信号に対応する信号)に基づいて変調して赤画像光32Rを生成し、この赤画像光32Rを空間光変調部50Rの背後にある合成部60の一の面に出力するようになっている。空間光変調部50Gは、例えば、透過型の液晶パネルであり、合成部60の他の面との対向領域に配置されている。この空間光変調部50Gは、入射した緑色光31Gを変調信号(画像信号に対応する信号)に基づいて変調して緑画像光32Gを生成し、この緑画像光32Gを空間光変調部50Rの背後にある合成部60の他の面に出力するようになっている。空間光変調部50Bは、例えば、透過型の液晶パネルであり、合成部60のその他の面との対向領域に配置されている。この空間光変調部50Bは、入射した青色光31Bを変調信号(画像信号に対応する信号)に基づいて変調して青画像光32Bを生成し、この青画像光32Bを空間光変調部50Rの背後にある合成部60のその他の面に出力するようになっている。
【0043】
偏光子51は、空間光変調部50R,50G,50Bの光入射側に配置された偏光子であり、偏光子52は、空間光変調部50R,50G,50Bの光射出側に配置された偏光子である。偏光子51,52は、光学シャッタの一種であり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させるものである。偏光子51,52はそれぞれ、偏光軸が互いに90度異なるように配置されており、これにより発光装置21からの光が空間光変調部50R,50G,50Bを介して透過し、あるいは遮断されるようになっている。
【0044】
合成部60は、複数の変調光を合成して画像光を生成するものである。この合成部60は、例えば、光軸AX上に配置されており、例えば、4つのプリズムを接合して構成されたクロスプリズムである。これらのプリズムの接合面には、例えば、多層干渉膜等により、互いに異なる波長選択性を持つ2つの選択反射面が形成されている。一の選択反射面は、例えば、空間光変調部50Rから出力された赤画像光32Rを光軸AXと平行な方向に反射して投影部70の方向に導くようになっている。また、他の選択反射面は、例えば、空間光変調部50Bから出力された青画像光32Bを光軸AXと平行な方向に反射して投影部70の方向に導くようになっている。また、空間光変調部50Gから出力された緑画像光32Gは、2つの選択反射面を透過して、投影部70の方向に進むようになっている。結局、合成部60は、空間光変調部50R,50G,50Bによってそれぞれ生成された赤色画像光32R、緑色画像光32Gおよび青色画像光32Bを合成して画像光33を生成し、生成した画像光33を投影部70に出力するように機能する。
【0045】
投影部70は、合成部60から出力された画像光33をスクリーン(図示せず)上に投影して画像を表示させるものである。この投影部70は、例えば、光軸AX上に配置されており、例えば、投影レンズによって構成されている。
【0046】
本実施の形態では、発光装置21がプロジェクタ2の発光装置21内の光源として用いられている。これにより、発光装置21内の部品点数や、発光装置21の厚さを増大させずに、偏光光を得ることができるので、プロジェクタ2を小型化することができる。また、発光装置21から偏光光が発せられることにより、発光装置21から発せられた偏光光の偏光方向がクロスプリズムの面と平行となっている場合には、例えば、以下に示した効果を得ることができる。すなわち、発光装置21側の偏光子に入射する光が無偏光光である場合と比べて、表示輝度を高くすることができる。また、発光装置21側の偏光子に入射する光が無偏光光である場合と比べて、クロスプリズムの面と交差(直交)する偏光成分を少なくすることができ、コントラストを高くすることができる。
【0047】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0048】
例えば、上記実施の形態では、有機EL層25および反射電極26の、基板22とは反対側の表面は、共に基板22の凸部22Bの影響を受けてうねった形状となっていたが、例えば、図9の変形例に示したように、これらの表面が、おおむね平坦(すなわち、緩やかなうねりを有する形状)となっていてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、透明電極24を陽極とし、反射電極26を陰極とする場合について説明したが、陽極および陰極を逆にして、透明電極24を陰極とし、反射電極26を陽極としてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態等では、基板22において複数の立体構造22AがX軸方向に並列配置されていたが、例えば、錐体状の凸部がX軸方向およびY軸方向に2次元配置されていてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、発光素子23が、ボトムエミッション型(基板の下側(発光層等が形成されていない側)から光を取り出す方式。図1参照)となっていたが、トップエミッション型となっていてもよい。この場合には、上記実施の形態等において、透明電極24を反射電極26の材料で構成し、反射電極26を透明電極24の材料で構成すればよい。
【0052】
なお、上記実施の形態においては、本発明に係る発光装置が、プロジェクタに適用される場合について説明したが、偏光を必要とする他の表示装置(液晶テレビ、液晶モニター等)や、各種AV機器、照明装置等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…表示装置、2…プロジェクタ、10…液晶表示パネル、20…照明装置、21…発光装置、21A…光射出面、21B…界面、22…基板、22A,24A…立体構造、22B…凸部、22C…頂部、22D…谷部、23…発光素子、24…透明電極、24B…谷部、25…有機EL層、26…反射電極、30…筐体、31…光、31R…赤色光、31G…緑色光、31B…青色光、32R…赤色画像光、32G…緑色画像光、32B…青色画像光、33…画像光、40…光路分岐部、41…クロスミラー、42…ミラー、50,50R,50G,50B…空間光変調部、51,52…偏光子、60…合成部、70…投影部、AX…光軸、H…凸部の高さ、L…光、P…ピッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第1電極、発光層および第2電極を前記基板側から順に有する発光素子を備え、
前記基板は、前記第1電極側の表面に、可視光の波長の上限以下の幅を有する複数の帯状の凸部を含む第1立体構造を有し、
前記第1電極、前記発光層および前記第2電極は、前記基板とは反対側の表面に前記第1立体構造の凸部に倣った第2立体構造を有する
発光装置。
【請求項2】
前記第1立体構造に含まれる複数の凸部は、互いに同一形状となっている
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1立体構造は、2種類以上の凸部を有し、
前記凸部は、種類ごとに同一形状となっている
請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記複数の凸部は、互いに等しいピッチを有する
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記複数の凸部は、前記発光層の発光波長に対応した幅を有する
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1立体構造のアスペクト比は、0.2以上2以下である
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1電極の第2立体構造は、頂部に丸みを有する
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記基板および前記第1電極は共に、前記発光層で発生する光に対して透明な材料によって形成されている
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルを照明する光を発する発光装置と
を備え、
前記発光装置は、基板を有すると共に、前記基板の前記表示パネルとは反対側の表面上に、第1電極、発光層および第2電極を前記基板側から順に有し、
前記基板は、前記第1電極側の表面に、可視光の波長の上限以下の幅を有する複数の帯状の凸部を含む第1立体構造を有し、
前記第1電極、前記発光層および前記第2電極は、前記基板とは反対側の表面に前記第1立体構造の凸部に倣った第2立体構造を有する
表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−76774(P2011−76774A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224899(P2009−224899)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】