説明

発光装置および電子機器

【課題】新規な構造で、例えば、光を効率よく利用でき、表示体だけでなく光通信などにも適用できる発光装置およびこれらを用いた電子機器を提供する。
【解決手段】エレクトロルミネッセンスによって発光可能な発光層30と、前記発光層30に電界を印加するための一対の電極20、40と、表面に凹部90を有する基板10と、を含み、前記発光層30は、前記基板10の凹部90内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL(エレクトロルミネッセンス)を用いた発光装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、EL(エレクトロルミネッセンス)を用いた面発光型のEL発光素子は、発光が等方的に行われ、かつ素子が平坦基板面上に形成されるため、発光層端面からの出射光のもれが生じやすく、特定の方向についてみると、光の強度が弱く、出射光を効率よく利用できない難点があった。
【特許文献1】特開平10−223368号公報
【特許文献2】特開平9−190883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、新規な構造で、例えば、光を効率よく利用でき、表示体だけでなく光通信などにも適用できる発光装置およびこれらを用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る発光装置は、
エレクトロルミネッセンスによって発光可能な発光層と、
前記発光層に電界を印加するための一対の電極と、
表面に凹部を有する基板と、
を含み、
前記発光層は、前記基板の凹部内に配置されている。
【0005】
かかる発光装置によれば、基板表面の凹部内に発光層を配置するという新規な構造を有するので、面発光型のものに適用すれば、高さ方向において省スペースで平坦な発光装置の実現が可能となる。
【0006】
なお、本明細書中で用いる「基板」とは、例えば、プラスチック基板、ガラス基板やシリコン基板など単一の層で構成されるものに限られず、電極と発光層とを含む発光素子が形成される土台となる部分を含めた基板を指すものとする。よって、基板表面が予め凹部状に加工されている場合に限らず、平坦基板上に凹部を有する新たな層を形成した場合も「表面に凹部を有する基板」に含まれる。
【0007】
本発明に係る発光装置は、以下に示す各種態様を採り得る。
【0008】
(1)前記一対の電極のうちいずれか一方の電極は、少なくとも一部が前記凹部上に配置され、前記発光層で発生した光を反射する機能を有することができる。具体的には、例えば、所定の光反射率を有する電極を、その少なくとも一部において凹部を有するように形成し、その凹部内に発光層を配置することで実現できる。
【0009】
また、前記基板は、前記発光層内で発生した光を反射する機能を有することができる。具体的には、例えば、表面において発光層で発生した光に対して反射性を有する基板の少なくとも一部を凹部として、その凹部内に発光層を配置することで実現できる。
【0010】
また、本発明に係る発光装置は、前記発光層内で発生した光を反射する機能を有する誘電体多層膜を含み、前記誘電体多層膜は、前記基板の凹部上に配置されるように形成することもできる。具体的には、例えば、屈折率が互いに異なる材料を交互に積層することにより生ずる誘電体多層膜の反射機能を利用して、係る積層膜の上部に発光層を配置することで実現できる。
【0011】
上記した光を反射可能な構成によれば、発光層内で等方的に発光した光が、凹部上に設けられた電極、または反射機能を有する基板の凹部で所定の方向(例えば、基板表面に対して一方の方向)に反射して外部へ出射されるので、効率よく出射光を利用することができるようになる。また、かかる反射光によって特定の方向における出射光が増加するため、出射光の指向性が向上し、例えば、光ファイバへの結合光率がよい光通信用デバイスの実現が可能となる。
【0012】
また、発光層が前記基板の凹部内に配置されているため、所望の方向以外に発光した光を所定の方向(例えば、基板表面に対して一方の方向)に出射でき、効率よく出射光を利用することができる。
【0013】
(2)特に、上記した光反射機能を有する基板を採用した場合、発光装置は、前記一対の電極の間に配置され、前記発光層内に通電領域を形成するためのゲート電極を含むように形成することもできる。
【0014】
このような構成によれば、ゲート電極に印加する電圧を制御することによって、発光層で生じる光を選択的に制御することができるようになる。かかるゲート電極は、発光層内に通電領域を形成可能な導電層を含むものであればよく、特に限定されない。
【0015】
(3)また、前記発光層は、光学レンズとして機能するように形成することができる。
【0016】
かかる構成によれば、発光層そのものが光学レンズとして機能することで、高効率でかつ指向性の高い出射光が得られるようになる。
【0017】
さらに、前記発光層の上部には、光学レンズとして機能するレンズ層を形成することもできる。
【0018】
かかる構成においても、発光層を光学レンズとして機能させる場合と同様に、高効率でかつ指向性の高い出射光が得られるようになる。
【0019】
(4)また、本発明に係る発光装置は、
エレクトロルミネッセンスによって発光可能な発光層と、
前記発光層に電界を印加するための一対の電極と、
基板と、
を含み、
前記発光層は、前記一対の電極に挟まれる状態で配置され、
前記一対の電極のうち少なくともいずれか一方の電極は、前記基板に対して凸面を有するように形成することもできる。
【0020】
特に、前記一対の電極のうちいずれか一方の電極は、発光層で発生した光を反射する機能を有するように形成することができる。
【0021】
かかる構成によれば、発光層内で発生した光を基板を通過させる方向へ光を出射させれば上記の発光装置と同様に指向性の高く、高効率の出射光を得ることができる。また、基板を通過しない方向へ光を出射させれば、前記凸面の形状に従って光は拡散するようになるので視認性の高い表示デバイスの実現が可能になる。
【0022】
ここで、前記凸面は、以下の態様により形成することができる。
【0023】
前記凸面は、前記一対の電極のうちいずれか一方の電極の一部を凸形状とすることにより形成することができる。
【0024】
また、前記凸面は、前記基板上に形成された凸形部材の上に前記一対の電極のうちいずれか一方の電極を配置することにより形成することができる。
【0025】
また、前記凸面は、凸形状に形成された前記発光層の上に前記一対の電極のうちいずれか一方の電極を配置することにより形成することができる。
【0026】
なお、本発明に係る発光装置においては、必要に応じて電荷輸送層として、ホール輸送層や電子輸送層を設けることができる。かかる電荷輸送層を設けることにより、発光層内でのエレクトロルミネッセンスによる発光の効率を向上させることができる。
【0027】
なお、上記した凹部や凸部の断面形状は、例えば、V字形(三角形)、半円形、半楕円形、双曲線形、または内底部(頂上部)を平坦とし、かつ側面が傾斜または湾曲している形状を採用することができ、その他の好適な凹(凸)部形状を採用することができる。
【0028】
(5)本発明に係る電子機器は、上記発光装置を含む。例えば、上記発光装置を表示体とする各種表示装置や、上記発光装置を光源とする各種光通信用装置などが挙げられる。
【0029】
次に、本発明に係る発光装置の各部分に用いることができる材料の一部を例示する。これらの材料は、公知の材料の一部を示したに過ぎず、例示したもの以外の材料を選択できることはもちろんである。
【0030】
(発光層)
発光層の材料は、所定の波長の光を得るために公知の化合物から選択される。発光層の材料としては、有機化合物および無機化合物のいずれでもよいが、種類の豊富さや成膜性の点から有機化合物であることが望ましい。
【0031】
このような有機化合物としては、例えば、特開平10−153967号公報に開示された、アロマティックジアミン誘導体(TPD)、オキシジアゾール誘導体(PBD)、オキシジアゾールダイマー(OXD−8)、ジスチルアリーレン誘導体(DSA)、ベリリウム−ベンゾキノリノール錯体(Bebq)、トリフェニルアミン誘導体(MTDATA)、ルブレン、キナクリドン、トリアゾール誘導体、ポリフェニレン、ポリアルキルフルオレン、ポリアルキルチオフェン、アゾメチン亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、フェナントロリンユウロピウム錯体などが使用できる。
【0032】
より具体的には、有機発光層の材料としては、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135361号公報、同2−135359号公報、同3−152184号公報、さらに同8−248276号公報および同10−153967号公報に記載されているものなど、公知のものが使用できる。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0033】
無機化合物としては、ZnS:Mn(赤色領域)、ZnS:TbOF(緑色領域)、SrS:Cu、SrS:Ce(青色領域)などが例示される。
【0034】
(電極)
陰極、すなわち、発光層に電子を注入するための電極としては、仕事関数の小さい(例えば、4eV以下)電子注入性電極、合金電気導電性化合物およびこれらの混合物を用いることができる。このような電極物質としては、例えば特開平8−248276号公報に開示されたものを用いることができる。
【0035】
陽極、すなわち、発光層にホールを注入するための電極としては、仕事関数の大きい(例えば、4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物またはこれらの混合物を用いることができる。陽極として光学的に透明な材料を用いる場合には、CuI、ITO、SnO2、ZnOなどの導電性透明材料を用いることができ、透明性を必要としない場合には金などの金属を用いることができる。
【0036】
(誘電体多層膜)
誘電体多層膜は、屈折率が互いに異なる材料が交互に積層された構造を有する。このような積層構造としては、例えば酸化シリコン層(SiO2)と窒化シリコン層(SiNX)とが交互に積層された層構造が挙げられる。その他、例えば、TiO2、Ta25、MgF2、およびZnSから選択される2層を交互に積層して誘電体多層膜を形成することができる。
【0037】
(レンズ層)
光学レンズとして機能するレンズ層の材料としては、例えば、プラスチック系合成樹脂やガラスなど、公知の光学レンズ用材料から選択することができるが、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、SAN(スチレンアクリロニトリル)、PS(ポリスチレン)、およびPC(ポリカーボネート)などの熱可塑性プラスチック素材や前記PMMA系またはMMA(メチルメタクリレート)系等との共重合素材などが成形性の点で好適である。
【0038】
(ホール輸送層)
必要に応じて設けられるホール輸送層の材料としては、公知の光伝導材料のホール注入材料として用いられているもの、あるいは有機発光装置のホール注入層に使用されている公知のものの中から選択して用いることができる。ホール輸送層の材料は、ホールの注入あるいは電子の障壁性のいずれかの機能を有するものであり、有機物あるいは無機物のいずれでもよい。その具体例としては、たとえば、特開平8−248276号公報に開示されているものを例示することができる。
【0039】
(電子輸送層)
必要に応じて設けられる電子輸送層の材料としては、陰極より注入された電子を有機発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料は公知の物質から選択することができる。その具体例としては、例えば、特開平8−248276号公報に開示されたものを例示することができる。
【0040】
また、発光装置の各層等は、公知の方法で形成することができる。例えば、発光層の各層は、その材質によって好適な成膜方法が選択され、具体的には、蒸着法、スピンコート法、LB法、インクジェット法などを例示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明の実施に好適な面発光型の発光装置を例として、各実施形態を説明する。各実施形態中では、基板表面に対して一方の方向を「基板正面方向」といい、基板表面に対して他方の方向を「基板背面方向」という。
【0042】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる面発光型の発光装置100の一例を模式的に示す断面図である。
【0043】
発光装置100は、基板10の表面に断面がV字形状の凹部90が形成されている。そして、この凹部90の上に、電極である陰極20および陽極40が発光層30を挟むように順次積層されて形成されている。
【0044】
そして、本実施形態にかかる発光装置100では、陰極20、陽極40に電界を印加することにより発光層30内に注入された電子とホールとが結合することにより励起子が生成され、この励起子が失活する際に光が生じる。後述する各実施形態においても同様のメカニズムにより発光が生じる。
【0045】
また、発光装置100において、陰極20は、例えば、アルミニウム合金、金、銀、チタン、クロムなどの光を反射する性質を有する材料を利用して形成され、その表面は光反射面として機能する。よって、前記発光層30で例えば、基板背面方向に発光した光は、陰極20の表面において反射され、基板正面方向に出射される。
【0046】
また、陽極40は、発光層30の上部に積層され、例えば、ITOなどの光を透過する性質を有する透明電極として形成されているので、発光層30から出射される光は陽極40を通過して外部に出射される。
【0047】
ここで、発光層30は、基板10に設けられた凹部90内に形成されているので、基板背面方向に発生した光は、陰極20にて反射され、基板正面方向に出射される。
【0048】
このように本実施形態に係る発光装置100によれば、発光層30内で等方的に発生した光は、基板正面方向に向けて発光したものに限らず、基板背面方向に発光した後に陰極20によって、基板正面方向に反射して出射されるようになり、基板正面方向において高効率かつ指向性に優れた出射光を得ることができる。
【0049】
さらに、凹部90内に発光層30等を配置したことにより、膜厚方向において突出部の存在しない平坦な新規構造を有する発光装置の実現が可能となる。
【0050】
また、発光層30で発生した光の反射のために専用の部材を用意しなくてもよいので、上記発光装置100を容易に実現することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態にかかる面発光型の発光装置200の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す部材と実質的に同じ機能を有する部材には同一符号を付し、主要な相違点を主に説明する。
【0052】
発光装置200は、第1の実施形態と同様の層構造を有するが、陰極20の代わりに基板10が光を反射する機能を有しており、発光層内で基板背面方向に発生した光は、基板10の凹部90の表面において、基板正面方向へと反射されて外部に出射される。
【0053】
従って、本実施形態に係る発光装置200によれば、第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏することができ、さらに第1の実施形態のように電極(20または40)が必ずしも光反射性を有するものでなくてもよいので電極(20、40)の材料の選択性が拡大する。
【0054】
また、本実施形態に係る発光装置200のように基板10に発光層30で発生した光を反射させる際は、前記基板10を、半導体基板(例えば、シリコン基板)を用いることができる。かかる場合、該基板10と陰極20および陽極40とは、基板10上に絶縁層等を設けることにより電気的に絶縁されていることが好ましく、さらに、この絶縁層は、例えば、シリコン基板表面を酸化することにより形成される酸化シリコンなどの酸化膜であることが好ましい。そして、基板10を半導体基板とした場合には、発光装置の駆動回路を同一基板内に集積化することも可能となる。
【0055】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態にかかる面発光型の発光装置300の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す部材と実質的に同じ機能を有する部材には同一符号を付し、主要な相違点を主に説明する。
【0056】
発光装置300は、基板10の凹部90上に屈折率の互いに異なる誘電体を多層に積層した誘電体多層膜50を配置し、さらにその上に陰極20、発光層30および陽極40を積層した構造を有する。よって、本実施形態では、誘電体多層膜が光反射機能を有することにより基板背面方向に発光した光を基板正面方向に反射して外部に出射する。
【0057】
したがって、本実施形態に係る発光装置300によれば、上記実施形態の場合と同様の作用効果を奏することができ、さらに基板(10)の材料および電極(20、40)の材料の選択性が拡大する。
【0058】
(第4の実施形態)
図4は、本発明の第4の実施形態にかかる面発光型の発光装置400の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す部材と実質的に同じ機能を有する部材には同一符号を付し、主要な相違点を主に説明する。
【0059】
発光装置400は、第1の実施形態の場合と同様の構成を有し、さらに上部にレンズ層60が形成されている。このレンズ層60は、光学的に凸レンズとして機能し、例えば、発光層30で発生した光を透過可能な合成樹脂で形成することができる。
【0060】
すなわち、発光装置400では、基板正面方向に向けて出射された光がレンズ層60を通過して外部に出射されるので、第1の実施形態の場合と同様な作用効果を奏することができ、さらに所定の方向において強度とともに指向性にも一段と優れた出射光を得ることができる。また、かかる発光装置400を光通信に適用すれば、例えば、光ファイバへの結合光率がよい光通信用装置の実現が可能となる。
【0061】
なお、本実施形態では、レンズ層60を凸レンズとして機能するように形成した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、凹レンズや、その他各種光学レンズとして機能するように形成することができる。
【0062】
(第5の実施形態)
図5は、本発明の第5の実施形態にかかる面発光型の発光装置500の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す部材と実質的に同じ機能を有する部材には同一符号を付し、主要な相違点を主に説明する。
【0063】
発光装置500は、第1の実施形態の場合と同様に陰極20を光反射面として利用し、その上に発光層30と陽極40を順次積層した構造を有する。そして、発光層30は、光学レンズである凸レンズとして機能するように形成されている。
【0064】
よって、本実施形態にかかる発光装置500では、基板背面方向に発生した光は、陰極20で反射されるとともに、反射光は発光層30の光学レンズ機能によって所定の方向、例えば、基板正面方向に出射される。
【0065】
従って、本実施形態に係る発光装置500によれば、第5の実施形態の場合と同様な作用効果を奏することができ、さらに集光機能の付加のために部材を新たに設ける必要がない。また、かかる発光装置500を光通信に適用すれば、例えば、光ファイバへの結合光率がよい光通信用装置の実現が可能となる。
【0066】
なお、本実施形態のように発光層30を光学レンズとして機能するように形成した場合においても、第4の実施形態のようにレンズ層60を設けてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、発光層30を凸レンズとして機能するように形成した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、凹レンズや、その他各種光学レンズとして機能するように形成することができる。
【0068】
(第6の実施形態)
図6は、本発明の第6の実施形態にかかる面発光型の発光装置600の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す部材と実質的に同じ機能を有する部材には同一符号を付し、主要な相違点を主に説明する。
【0069】
発光装置600は、陰極20、陽極40、および陰極20と陽極40との間に配置されるゲート電極70を発光層30上に設けた構成を有する。ゲート電極70は、導電層71および層間絶縁層72とから構成され、印加した電圧により発光層30内に通電領域を形成する機能を有する。
【0070】
かかる発光装置600は、ゲート電極70に電圧を印加することにより、発光層30内に通電領域が形成される。そして、この印加電圧を制御することにより発光層30内を流れる電流を制御し、発光層30での発光を選択的に制御することができる。
【0071】
また、本実施形態では、第2の実施形態と同様に基板10が光反射機能を有しているので、基板背面方向に発生した光は、基板凹部90の表面で反射して基板正面方向に出射される。
【0072】
したがって、本実施形態にかかる発光装置600によれば、第2の実施形態の場合と同様な作用効果が得られるとともに、さらに発光を選択的に制御することができる。
【0073】
なお、本実施形態においては、基板10が光反射機能を有する場合に限らず、第3の実施形態のように誘電体多層膜50や、その他の光反射部材を採用することができる。
【0074】
また、発光層30の上部に第4の実施形態のようなレンズ層60を設けたり、発光層30を第5の実施形態のように集光機能を有するように形成することもできる。このような構成によれば、光通信に適用することにより、例えば、光ファイバへの結合光率がよい光通信用装置の実現が可能となる。
【0075】
(第7の実施形態)
図7は、本発明の第7の実施形態にかかる面発光型の発光装置700の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す部材と実質的に同じ機能を有する部材には同一符号を付し、主要な相違点を主に説明する。
【0076】
発光装置700は、基板10の上に断面が半楕円形の凸型部材80を設け、さらにその上に陽極40を積層することにより、陽極40が基板に対して半楕円形の凸面41を有するように形成されている。また、発光装置700は、かかる陽極40の上に発光層30および光反射機能を有する陰極20を均一な膜厚で順次積層した構成であるので、陰極20が基板10に対して凸面21を有している。さらに、発光装置700は、基板10、凸型部材80は発光層30で発生した光に対して透過性を有するものを用いることにより、基板背面方向から光を出射させる構成を有する。
【0077】
従って、発光層30で発生した光のうち基板正面方向に発生した光は、陰極20の凸面21において反射されて基板背面方向に出射されるので、光を効率よく利用することができる。
【0078】
なお、本実施形態に係る発光装置700を、凸型部材80をレンズ機能を有するように形成すれば、凸形部材80を通過した光は指向性に優れ、所定の方向において強度の高いものとなる。このような構成によれば、光通信に適用することにより、例えば、光ファイバへの結合光率がよい光通信用装置の実現が可能となる。
【0079】
また、本実施形態においては、一対の電極(20、40)のうち少なくともいずれか一方の電極を基板に対して凸面(21または41)を有するように形成するために凸形部材80を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、発光層30を凸形に形成して電極を基板に対して凸面(21または41)を有するように形成した構成などを適宜採用することができる。
【0080】
(第8の実施形態)
図8は、本発明の第8の実施形態にかかる面発光型の発光装置800の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す部材と実質的に同じ機能を有する部材には同一符号を付し、主要な相違点を主に説明する。
【0081】
発光装置800は、基板10の上に断面の一部が基板に対して半楕円形の凸面22を有するように形成された陰極20を配置し、さらにその上に発光層30、陽極40を順次積層した構成を有する。陰極20は、発光層30で発生した光に対して反射性を有しており、陽極40は、係る光に対して透過性を有する。
【0082】
すなわち、かかる発光装置800は、発光層30で発生した光のうち基板背面方向に発生した光を陰極20の凸面22で反射し、基板正面方向に出射させるように形成されているので、発光層30で発生した光を効率よく利用することができるとともに、前記凸面22の形状に従って出射光は拡散するので視認性の高い表示装置の実現が可能になる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について述べたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の要旨範囲内で各種態様をとりうるものとする。以下に、その一部を例示する。
【0084】
(変形例1)
第1、第2、第4の実施形態では陽極40を発光装置が平坦となるように凹部90を埋設したが、これに限られるものではなく、例えば、最上層を均一な膜厚にするなど各種の層構造を採用することができる。
【0085】
(変形例2)
第1から第5の実施形態では、陰極20を発光層30の下部に配置し、陽極40を発光層30の上部に配置する構成を採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、陰極20を発光層30の下部に配置し、陽極40を発光層30の上部に配置してもよい。なお、かかる構成を採用する場合は、陽極40が光を反射するように形成し、陰極20が光を透過可能に形成しておくことが好ましい。
【0086】
(変形例3)
第4、第5の実施形態においては、基板背面方向に発光した光を反射させる構成は、電極(20または40)によるものを採用したがこれに限られず、第2、第3の実施形態に示したように、基板10、誘電体多層膜60やその他の反射部材を採用して実現することもできる。
【0087】
(変形例4)
第1から第5の実施形態では、光を基板正面方向に出射させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、基板10をガラス基板やプラスチック基板などの光透過性を有するものとして、光を基板背面方向に出射させる構成を採用してもよい。
【0088】
(変形例5)
第1から第6の実施形態では、基板の凹部90の断面形状をV字形として説明しているが、これに限られるものではなく、例えば、図9の(A)から(D)に示す基板11〜14のような半楕円形(凹部91)、半円形(凹部92)、内定部を平坦とした台形(凹部93)、内定部を平坦とし、側面が湾曲したお椀形(凹部94)など各種態様を採用することができる。また、第7、第8の実施形態における凸面91についても各実施形態に示したような半楕円形に限られず、例えば、断面が三角形の凸面など上記凹部90〜94と同様の各種態様を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1の実施形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図2】第2の実施形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図3】第3の実施形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図4】第4の実施形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図5】第5の実施形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図6】第6の実施形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図7】第7の実施形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図8】第8の実施形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図9】各実施形態の変形例に用いられる基板を示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10、11、12、13、14 基板、 20 陰極、 30 発光層、 40 陽極、 50 誘電体多層膜、 60 レンズ層、 70 ゲート電極、 71 導電層、 72 層間絶縁層、 80 凸形部材、 90、91、92、93、94 凹部、 21、22、41 凸面、 100、200、300、400、500、600、700、800 発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロルミネッセンスによって発光可能な発光層と、
前記発光層に電界を印加するための一対の電極と、
前記一対の電極の間に配置され、前記発光層内に通電領域を形成するためのゲート電極と、
表面に凹部を有する基板と、
を含み、
前記発光層は、前記基板の凹部内に配置されている、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記一対の電極は、ドレイン電極及びソース電極であって、
前記ゲート電極、ドレイン電極及びソース電極は、いずれも前記発光層の上方に形成されている、発光装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記基板は、前記発光層内で発生した光を反射する機能を有する、発光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記発光層内で発生した光を反射する機能を有する誘電体多層膜を含み、
前記誘電体多層膜は、前記基板の凹部上に配置される、発光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記発光層は、光学レンズとして機能するように形成されている、発光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記発光層の上部に形成され、光学レンズとして機能するレンズ層を含む、発光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の発光装置を含む、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−141861(P2007−141861A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16849(P2007−16849)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【分割の表示】特願2001−326002(P2001−326002)の分割
【原出願日】平成13年10月24日(2001.10.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】