説明

発光装置および電子機器

【課題】光の取り出し効率を低下させることなく、簡易な構成で、2画面表示が可能な発光装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る発光装置20は、基板21上に形成された反射層22と、反射層22上に形成された発光層27と、発光層27上に形成され、発光層27からの光の一部を透過させる一方、他を反射可能な半反射層25と、を含む発光素子Uを備える。発光素子Uは、発光層27から出射された光のうち、反射層22の法線方向に対して0度よりも大きな所定の角度θで進行する光を、反射層22と半反射層25との間で共振させて半反射層25側から取り出す光共振器構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子からの出射光を、互いに異なる2方向に出力することで、2つの異なる観察領域のそれぞれに対して表示映像を提供可能な(2画面表示が可能な)発光装置が知られている。例えば特許文献1には、レンチキュラレンズを用いて、2画面表示を実現する発光装置が開示されている。また、例えば特許文献2には、視差バリア(パララックスバリア)を用いて、2画面表示を実現する発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−259192号公報
【特許文献2】特表2008−527440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、レンチキュラレンズを設ける必要があるので、コストが高くなるとともに組立の工数が増大するという問題がある。特許文献2の技術でも、同様の問題がある。さらに、特許文献2の技術では、発光素子からの出射光のうち所望の方向以外に進行する光は視差バリアに吸収されるので、光の取り出し効率が低下してしまうという問題もある。
以上の事情に鑑みて、本発明は、光の取り出し効率を低下させることなく、簡易な構成で、2画面表示が可能な発光装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、基板上に形成された反射層と、反射層上に形成された発光層と、発光層上に形成され、発光層からの光の一部を透過させる一方、他を反射可能な半反射層と、を含む発光素子を備えた発光装置であって、発光素子は、発光層から出射された光のうち、反射層の法線方向に対して0度よりも大きな所定の角度θで進行する光を、反射層と半反射層との間で共振させて半反射層側から取り出す光共振器構造を有することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、発光層から出射された光のうち、反射層の法線方向に対して所定の角度θ(θ>0)で進行する光が、反射層と半反射層との間で共振して半反射層側から取り出される。ここで、発光層から出射された光のうち、反射層の法線方向に対して所定の角度θで進行する光には、反射層の法線方向に対して時計回りの方向に角度θだけ傾いた方向に沿って進行する光と、当該法線方向に対して反時計回りの方向に角度θだけ傾いた方向に沿って進行する光とが含まれる。つまり、本発明によれば、それぞれが互いに異なる方向(正面方向以外の方向)に進行する2つの共振光が、ひとつの発光素子から出射されるので、レンチキュラレンズや視差バリアを設けることなく、2画面表示が可能になる。したがって、光の取り出し効率を低下させることなく、簡易な構成で、2画面表示が可能な発光装置を実現できるという利点がある。
【0007】
本発明に係る発光装置の具体的な態様として、反射層と半反射層との間の間隔をL、発光層から出射された光の波長をλとしたとき、間隔Lは、以下の関係を満たすように設定される。
2L/cosθ=m×λ(mは自然数)
間隔Lが、上述の関係を満たすように設定されることで、発光層から出射された波長λの光のうち、反射層の法線方向に対して所定の角度θで進行する光が、反射層と半反射層との間で共振して半反射層側から取り出されるという具合である。
【0008】
また、角度θで半反射層へ向かって進行する光が、半反射層にて全反射してしまうと、共振光を半反射層から取り出すことができなくなるので、角度θは、当該角度θで半反射層へ向かって進行する光が、半反射層にて全反射しないような角度に設定されることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る発光装置の態様として、各々の発光色が異なる複数の発光素子でひとつの組が構成され、基板上には、複数の組が配置され、複数の発光素子と1対1に対応するとともに、対応する発光素子からの共振光を取り込むように配置された複数のカラーフィルタをさらに備える態様であってもよい。各カラーフィルタは、対応する発光素子から出射された共振光を取り込むように配置されるので、例えば、互いに隣接するとともにそれぞれの発光色が異なる2つの発光素子の各々から共振光が出射されても、それぞれの出射光が混ざって混色が発生することを防止できるという利点がある。
【0010】
また、本発明に係る発光装置の態様として、発光層と反射層との間に配置されて、発光素子の一方の電極として機能する透明導電層をさらに備え、半反射層は、発光素子の他方の電極として機能する態様であってもよい。また、本発明に係る発光装置の態様として、発光層と反射層との間に配置されて、発光素子の一方の電極として機能する透明導電層と、透明導電層と反射層との間に配置されて、光透過性を有する絶縁層と、をさらに備え、半反射層は、発光素子の他方の電極として機能する態様であってもよい。
【0011】
ここで、透明導電層と反射層とが直接接続される態様では、反射層の材料として、透明導電層と反射層との接続抵抗が、透明導電層の導電性を十分に確保可能な範囲内に収まるような材料を選定する必要があるが、透明導電層と反射層との間に絶縁層が配置される態様では、反射層の材料として如何なる材料を選定しても、その選定結果が透明導電層の導電性に影響を及ぼすことはないので、反射層の材料選択の自由度が高まるという利点がある。
【0012】
さらに、本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。例えば、本発明に係る発光装置は、ユーザーの頭部に装着されて映像を表示するヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display)に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るヘッドマウントディスプレイの概略構成を示す平面図である。
【図2】同実施形態に係る発光装置の概要を示す模式的な断面図である。
【図3】発光素子からの出射光の特性を示す図である。
【図4】対比例に係る発光素子からの出射光の特性を示す図である。
【図5】本発明の変形例に係る発光装置の概要を示す模式的な断面図である。
【図6】本発明の変形例に係る発光装置の概要を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1.実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ(以下、「HMD」と呼ぶ)100の概略構成を示す平面図である。HMD100は、人間(ユーザー)の頭部に装着される眼鏡状の表示装置であり、左目に対応するレンズ11Lと、右目に対応するレンズ11Rと、左耳に掛けるツル部12Lと、右耳に掛けるツル部12Rと、表示映像を生成する発光装置20とを含む。レンズ11Lの左端部にはツル部12Lが取り付けられており、レンズ11Rの右端部にはツル部12Rが取り付けられている。HMD100は、ツル部12Lを左耳に掛け、ツル部12Rを右耳に掛け、図示しないノーズパッドを鼻に当てることで、ユーザーの頭部に装着される。
【0015】
後述するように、発光装置20が生成する表示映像は、左右の斜め方向にそれぞれ出射される。ここでは、図1に示すように、左斜めの方向に出射される表示映像(左目に導かれるべき表示映像)を「第1映像光」と呼び、右斜めの方向に出射される表示映像(右目に導かれるべき表示映像)を「第2映像光」と呼ぶ。本実施形態では、第1映像光および第2映像光は同一の映像である。
【0016】
図1に示すように、発光装置20とレンズ11Lとの間には、サブレンズ30Lが配置される。また、サブレンズ30Lとレンズ11Lとの間には導光板40Lが配置され、当該導光板40Lは、レンズ11Lの頭部側に固定されている。また、図1に示すように、発光装置20とレンズ11Rとの間には、サブレンズ30Rが配置される。
一方、図1に示すように、発光装置20とレンズ11Rとの間には、サブレンズ30Rが配置される。また、サブレンズ30Rとレンズ11Rとの間には導光板40Rが配置され、当該導光板40Rは、レンズ11Rの頭部側に固定されている。
【0017】
発光装置20から出射された第1映像光は、まずサブレンズ30Lに到達する。サブレンズ30Lは、当該第1映像光を導光板40Lへ導く。そして、導光板40Lは、当該第1映像光をユーザーの左目へ導く。同様にして、発光装置20から出射された第2映像光は、まずサブレンズ30Rに到達する。サブレンズ30Rは、当該第2映像光を導光板40Rへ導く。そして、導光板40Rは、当該第2映像光をユーザーの右目へ導く。このようにして、ユーザーの左右両目に同一の表示映像が映されるという具合である。
【0018】
図2は、発光装置20の概要を示す模式的な断面図である。発光装置20は、複数の発光素子Uが基板21の表面上に配列された構成である。本実施形態では、「R(赤色)」、「G(緑色)」、「B(青色)」の各色を発光する3個の発光素子Uでひとつの画素(組)が構成され、基板21の表面上には複数の画素が配置されるという具合である。説明の便宜上、図2においては、ひとつの発光素子Uのみが例示されている。
【0019】
詳細な図示は省略するが、発光装置20は、基板21上の各画素を駆動するための駆動部を備え、当該駆動部には、外部装置(不図示)からの画像信号が供給される。画像信号は、基板21上に配置された各画素の発光色を指定する信号である。より具体的には、画像信号は、各画素の発光色を構成する3種類の原色成分(赤色、緑色および青色)の各々について個別に階調を指定する信号である。駆動部は、当該画像信号に基づいて各画素を駆動し、各画素からの出射光によって表示映像が生成されるという具合である。
【0020】
本実施形態では、発光素子Uにて発生した光は基板21とは反対側に向かって進行する(いわゆるトップエミッション)。したがって、ガラスなどの光透過性を有する板材のほか、セラミックスや金属のシートなど不透明な板材を基板21として採用することが可能である。なお、基板21には、発光素子Uに給電して発光させるための配線が配置されているが、配線の図示は省略する。また、基板21には、発光素子Uに給電するための回路が配置されているが、回路の図示は省略する。
【0021】
さらに、基板21の表面上の空間は、絶縁性の隔壁(不図示)によって発光素子Uごとに仕切られている。ここでは、図2を参照しながら、ひとつの発光素子Uの具体的な構成を説明するが、他の発光素子Uも同様の構成である。図2に示すように、発光素子Uは、基板21上に形成された反射層22と、反射層22上に形成された透明導電層23と、透明導電層23上に形成された発光機能層24と、発光機能層24上に形成された半反射層25とを備える。以下、詳細な内容を説明する。
【0022】
図2に示すように、基板21上には、反射層22が形成される。反射層22は、光反射性を有する材料で構成される。この種の材料としては、例えばAgなどの単体金属、またはAgなどを主成分とする合金が好適に採用される。
【0023】
図2に示すように、反射層22上には、透明導電層23が形成される。透明導電層23は、発光素子Uの陽極として機能し、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide、出光興産株式会社の登録商標)、またはZnOのような透明酸化物導電材料から形成される。本実施形態では、発光素子Uの一方の電極(ここでは陽極)として機能する透明導電層23が、反射層22上に直接形成されるので、反射層22の材料としては、透明導電層23と反射層22との接続抵抗の値が、透明導電層23の導電性を十分に確保できる範囲内に収まるような材料を選定する必要がある。
【0024】
図2に示すように、発光機能層24は、透明導電層23上に形成された正孔輸送層26と、正孔輸送層上に形成された発光層27と、発光層27上に形成された電子輸送層28とを含んで構成される。発光層27は、正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から形成される。本実施形態では、各発光素子Uの発光層27は、R(赤)、G(緑)、B(青)の何れかの色の波長領域の光を発生する有機EL物質から形成される。
【0025】
図2に示すように、電子輸送層28上には、半反射層25が形成される。半反射層25は、発光層27からの光の一部を透過するとともに他を反射可能な性質(半透過反射性)を有し、発光素子Uの陰極として機能する。半反射層25は、例えばAgなどの単体金属、またはAgなどを主成分とする合金が好適に採用される。
【0026】
本実施形態に係る発光素子Uは、発光層27から出射された光のうち、反射層22の法線方向に対して0度よりも大きな所定の角度θで進行する光を、反射層22と半反射層25との間で共振させて(発光強度を強めて)半反射層25側から取り出す光共振器構造を有する。以下、図2を参照しながら、その具体的な内容を説明する。
【0027】
ここでは、図2に示すように、発光層27から出射された光のうち、反射層22の法線方向に対して0度よりも大きな所定の角度θで半反射層25へ向かって進行し、他の層で反射することなく、半反射層25を直接透過する光をDと表記する。また、発光層27から出射された光のうち、半反射層25および反射層22の各々で反射した後に、角度θで半反射層25へ向かって進行して当該半反射層25を透過する光をR2と表記する。この出射光R2は、まず半反射層25へ向かって進行し、当該半反射層25で反射して反射層22側へ向かって進行する。そして、当該反射層22で再び反射した後、半反射層25へ向かって進行して当該半反射層25を透過するという具合である。さらに、発光層27から出射された光のうち、反射層22で反射した後に、角度θで半反射層25へ向かって進行して当該半反射層25を透過する光をR1と表記する。この出射光R1は、まず反射層22へ向かって進行し、当該反射層22で反射する。そして、反射層22で反射した後、半反射層25へ向かって進行して当該半反射層25を透過するという具合である。
【0028】
上記出射光D、R1およびR2を用いて、上述の光共振器構造を形成するのに必要な条件を説明する。説明の便宜上、出射光Dが半反射層25に到達するまでの光学的距離をLD、出射光R1が半反射層25に到達するまでの光学的距離をLR1、出射光R2が最終的に半反射層25に到達するまでの光学的距離をLR2とそれぞれ表記する。図2に示すように、発光層27と半反射層25との間の間隔(法線方向の光学的距離)をxとすれば、LD=x/cosθと表される。また、半反射層25と反射層22との間の間隔(法線方向の光学的距離)をLとすれば、LR1=2×(L−x)/cosθ+LDと表すことができる。これを変形して、LR1=(2×L−x)/cosθと表される。さらに、LR2=2×LD+LR1と表すことができる。これを変形して、LR2=(2×L+x)/cosθと表される。
【0029】
上述の光共振器構造を形成するためには、LD、LR1およびLR2の各々の差が、発光層27が発する光の波長λの整数倍であることが必要である。したがって、共振条件としては、以下の式(1)〜(3)を満たすことが必要である。なお、以下の式(1)〜(3)におけるn,n’,n’’は自然数である。
LR1−LD=2×(L−x)/cosθ=n×λ ・・・(1)
LR2−LR1=2×x/cosθ=n’×λ ・・・(2)
LR2−LD=2×L/cosθ=n’’×λ ・・・(3)
【0030】
上記式(1)〜式(3)を整理すると、結局、共振条件としては、以下の式(4)を満たすことが必要になる。
2×L/cosθ=m×λ ・・・(4)
m:自然数。
【0031】
したがって、本実施形態では、反射層22と半反射層25との間の間隔Lは、上記式(4)を満たすように設定される。さらに言えば、間隔Lは、発光機能層24の厚みLfと、透明導電層Ltの厚みに応じて決定され、ここでは、上記式(4)が満たされるように、透明導電層23の厚みLtが発光素子Uごとに調整されている。また、上記角度θは、発光層27から出射された光のうち当該角度θで半反射層25へ向かって進行する光が、半反射層25にて全反射しないような角度に設定される。以上より、発光層27から出射された光のうち所定の角度θで進行する光を、反射層22と半反射層25との間で共振させて(発光強度を強めて)半反射層25側から取り出すことができる。
【0032】
ここで、発光層27から出射された光のうち所定の角度θで進行する光には、反射層22の法線方向に対して時計回りの方向に角度θだけ傾いた方向に沿って進行する光と、当該法線方向に対して反時計回りに角度θだけ傾いた方向に沿って進行する光とが含まれる。以上においては、発光層27から出射された光のうち、反射層22の法線方向に対して時計回りの方向に角度θだけ傾いた方向に沿って進行する光を例に挙げて説明したが、発光層27から出射された光のうち、反射層22の法線方向に対して反時計回りの方向に角度θだけ傾いた方向に沿って進行する光についても同様に、反射層22と半反射層25との間で共振して半反射層25側から取り出される。すなわち、本実施形態では、それぞれが互いに異なる方向(正面方向以外の方向)に進行する2つの共振光が、ひとつの発光素子Uから出射されるという具合である。
【0033】
図3は、発光素子Uから出射された光の発光強度の特性を示す図であり、半反射層25から取り出された光(つまりは発光素子Uから外部へ出射される光)のうち、半反射層25の表面から左右の斜め方向にそれぞれ進行する光の発光強度が最大となることが示されている。本実施形態では、各発光素子Uから外部へ出射される光のうち、半反射層25の表面から左斜めの方向に進行する光によって前述の第1映像光が生成され、右斜めの方向に進行する光によって前述の第2映像光が生成されるという具合である。
【0034】
以上に説明したように、本実施形態では、それぞれが互いに異なる方向に進行する2つの共振光が、ひとつの発光素子Uから出射されるので、レンチキュラレンズや視差バリアなどを設けることなく、2画面表示が可能になる。したがって、光の取り出し効率を低下させることなく、簡易な構成で、2画面表示が可能な発光装置を実現できるという利点がある。
【0035】
いま、半反射層25の表面から正面方向に進行する共振光が、ひとつの発光素子Uから出射される態様(対比例)を想定する。言い換えれば、この対比例は、上述の角度θが0度であって、かつ、反射層22と半反射層25との間の間隔Lが、上記式(4)を満たすように設定される態様である。図4は、対比例に係る発光素子Uから出射された光の発光強度の特性を示す図である。
【0036】
対比例においては、ひとつの発光素子Uから外部へ出射される共振光は、正面方向に進行する共振光のみであるので、ユーザーの左右両目に同一の表示映像を映すとき、ユーザーの左目に導かれるべき表示映像(第1映像光)を生成するための発光素子と、右目に導かれるべき表示映像(第2映像光)を生成するための発光素子とを別々に設ける必要がある。これに対して、本実施形態では、それぞれが互いに異なる方向に進行する2つの共振光が、ひとつの発光素子Uから出射されるので、左目に導かれるべき光と右目に導かれるべき光とをひとつの発光素子Uで作ることができる。すなわち、本実施形態によれば、第1映像光および第2映像光を生成するための発光素子Uの数が、対比例の半分で済むという利点がある。
【0037】
<2.変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。また、以下に示す変形例のうちの2以上の変形例を組み合わせることもできる。
【0038】
(1)変形例1
発光装置20は、例えば図5のように構成されてもよい。図5の態様では、透明導電層23と反射層22との間に配置されて、光透過性を有する絶縁層29をさらに備えている。上述の実施形態では、反射層22の材料として、透明導電層23と反射層22との接続抵抗が、透明導電層23の導電性を十分に確保できる範囲内に収まるような材料を選定する必要があるが、図5の態様では、絶縁層29によって透明導電層23と反射層22とが絶縁されるので、反射層22の材料として如何なる材料を選定しても、その選定結果が透明導電層23の導電性に影響を及ぼすことはない。すなわち、図5の態様によれば、上述の実施形態に比べて、反射層22の材料選択の自由度が高まるという利点がある。例えば上述の実施形態では、Alを採用することができないのに対して、図5の態様では、Alを採用することができるといった具合である。
【0039】
(2)変形例2
上述の実施形態では、各発光素子Uの透明導電層23の厚みLtを個別に調整することで、上述の光共振器構造を実現しているが、これに限らず、例えば各発光素子Uにおける透明導電層23の厚みLtは一定の値に固定され、各発光機能層24の厚みLfが個別に調整されることで、上述の光共振器構造を実現することもできる。この態様によれば、各発光素子Uの透明導電層23の厚みLtを個別に調整する必要が無いので、結果として、発光装置20の製造が容易になるという利点がある。
【0040】
(3)変形例3
例えば、複数の発光素子Uと1対1に対応するとともに、対応する発光素子Uから出射された共振光を取り込むように配置された複数のカラーフィルタをさらに備える態様であってもよい。各カラーフィルタは、対応する発光素子Uから出射された共振光を取り込むように配置されるので、例えば、互いに隣接するとともにそれぞれの発光色が異なる2つの発光素子Uの各々から共振光が出射されても、それぞれの出射光が混ざって混色が発生することを防止できるという利点がある。
【0041】
(4)変形例4
上述の実施形態では、左目に入射されるべき表示映像(第1映像光)と、右目に入射されるべき表示映像(第2映像光)とは同一の映像であるが、これに限らず、例えば第1映像光と第2映像光が互いに異なる映像であってもよい。この態様では、第1映像光と第2映像光との視差によって、HMDの装着者に立体画像を認識させることもできる。つまり、本発明に係る発光装置は、立体画像を装着者に認識させる3D用のヘッドマウントディスプレイに適用することも可能である。
【0042】
この態様では、図6に示すように、基板21上には、第1映像光を生成するための複数の発光素子(図6ではUlと表記)と、第2映像光を生成するための複数の発光素子(図6ではUrと表記)とが配列される。また、各発光素子Ulから出射される2つの共振光のうち左斜め方向に進行する共振光のみを観察側へ導くとともに、各発光素子Urから出射される2つの共振光のうち右斜め方向に進行する共振光のみを観察側へ導くためのスリット50が設けられている。
【0043】
図6に示すように、各発光素子Ulから出射される2つの共振光のうち、左斜め方向に進行する共振光は観察側へ導かれる一方、右斜め方向に進行する共振光はスリット50によって観察側への進行を遮られる。そして、観察側に導かれた左斜め方向の共振光は、前述したように、サブレンズ30Lおよび導光板40Lを介して、ユーザーの左目に導かれるという具合である。また、図6に示すように、各発光素子Urから出射される2つの共振光のうち、右斜め方向に進行する共振光は観察側へ導かれる一方、左斜め方向に進行する共振光はスリット50によって観察側への進行を遮られる。そして、観察側に導かれた右斜め方向の共振光は、前述したように、サブレンズ30Rおよび導光板40Rを介して、ユーザーの右目に導かれるという具合である。
【0044】
(5)変形例5
上述の各実施形態においては、透明導電層23は発光素子Uの陽極であり、半反射層25は発光素子Uの陰極であるが、透明導電層23を陰極とし、半反射層25を陽極とすることもできる。
また、上述の実施形態では、各発光素子Uの発光層27は、R(赤)、G(緑)、B(青)の何れかの色の波長領域の光を発する有機EL物質から形成されているが、これに限らず、各発光層27が、白色の波長領域の光を発生する有機EL物質から形成することもできる。この態様では、各発光素子Uから取り出したい色のピーク波長λ、間隔Lおよび角度θの関係が上記式(4)を満たすように、各間隔Lが個別に設定されるという具合である。
【符号の説明】
【0045】
11L,11R……レンズ、12L,12R……ツル部、20……発光装置、21……基板、22……反射層、23……透明導電層、24……発光機能層、25……半反射層、26……正孔輸送層、27……発光層、28……電子輸送層、29……絶縁層、30L,30R……サブレンズ、40L,40R……導光板、50……スリット、100……ヘッドマウントディスプレイ、L……反射層と半反射層との間の間隔、U……発光素子、λ……波長。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された反射層と、
前記反射層上に形成された発光層と、
前記発光層上に形成され、前記発光層からの光の一部を透過させる一方、他を反射可能な半反射層と、を含む発光素子を備えた発光装置であって、
前記発光素子は、
前記発光層から出射された光のうち、前記反射層の法線方向に対して0度よりも大きな所定の角度θで進行する光を、前記反射層と前記半反射層との間で共振させて前記半反射層側から取り出す光共振器構造を有する、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記反射層と前記半反射層との間の間隔をL、前記発光層から出射された光の波長をλとしたとき、前記間隔Lは、以下の関係を満たすように設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
2L/cosθ=m×λ(mは自然数)
【請求項3】
前記角度θは、前記発光層から出射された光のうち当該角度θで前記半反射層へ向かって進行する光が、前記半反射層にて全反射しないような角度に設定される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
各々の発光色が異なる複数の前記発光素子でひとつの組が構成され、前記基板上には、複数の前記組が配置され、
前記複数の発光素子と1対1に対応するとともに、対応する前記発光素子からの共振光を取り込むように配置された複数のカラーフィルタをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光層と前記反射層との間に配置されて、前記発光素子の一方の電極として機能する透明導電層をさらに備え、
前記半反射層は、前記発光素子の他方の電極として機能する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光層と前記反射層との間に配置されて、前記発光素子の一方の電極として機能する透明導電層と、
前記透明導電層と前記反射層との間に配置されて、光透過性を有する絶縁層と、をさらに備え、
前記半反射層は、前記発光素子の他方の電極として機能する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の発光装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の発光装置を備えた電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−79575(P2012−79575A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224603(P2010−224603)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】